JP7188545B2 - 頭外定位処理システム及び頭外定位処理方法 - Google Patents

頭外定位処理システム及び頭外定位処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、頭外定位処理システム及び頭外定位処理方法に関する。
特許文献1には、ディスプレイ装置で画像を見ながら、イヤホンやヘッドホンによって
音声を聴く場合において、音像定位を制御するシステムが開示されている。特許文献1の
システムでは、スピーカから両耳に至る伝達関数を時間領域に変換したインパルス応答を
畳み込むフィルタを用いている。さらに、イヤホン又はヘッドホンの左右の出力毎に加算
回路が設けられている。加算回路は、デジタルフィルタからの音声信号を加算している。
加算回路からの音声信号が、DAC(Digital to Analog Converter)でアナログ信号に変
換される。変換後の音声信号は、増幅回路を介して、トランスデューサに供給される。さ
らに、特許文献1では、ディスプレイ又はリスナー頭部の移動距離と回転とに応じて、音
像の定位位置を制御している。
ところで、音像定位技術として、ヘッドホンを用いて受聴者の頭部の外側に音像を定位
させる頭外定位技術がある。頭外定位技術では、ヘッドホンから耳までの特性をキャンセ
ルし、ステレオスピーカから耳までの4本の特性(空間音響伝達特性)を与えることによ
り、音像を頭外に定位させている。
頭外定位再生においては、例えば、2チャンネル(以下、chと記載)のスピーカから
発した測定信号(インパルス音等)を聴取者(リスナー)本人の耳に設置したマイクロフ
ォン(以下、マイクとする)で録音する。これにより、スピーカからマイクまでの特性(
空間音響伝達特性、空間音響伝達関数、頭部伝達関数HRTF等とも称する)そして、測
定信号を集音して得られた空間音響伝達特性に基づいて、処理装置がフィルタを生成する
。頭外定位処理装置は、フィルタを2chのオーディオ信号に畳み込む。
さらに、ヘッドホンから耳までの特性をキャンセルするフィルタを生成するために、ヘ
ッドホンから耳元乃至鼓膜までの特性(外耳道伝達関数ECTF、外耳道伝達特性とも称
する)を聴取者本人の耳に設置したマイクで測定する。
特開2010-147529号公報
頭外定位処理を行う場合、聴取者本人の耳に設置したマイクで特性を測定することが好
ましい。しかしながら、聴取者本人の耳にマイクを適切に設置することは困難である。さ
らに、スピーカからマイクまでの空間音響伝達特性を測定する測定場所も制限される。一
方、聴取者以外の特性を用いた場合、適切に頭外定位処理を行うことができないおそれが
ある。特に、人毎、あるいは耳毎に外耳道の形状が異なるため、他人の外耳道伝達特性に
応じたフィルタを用いた場合、処理を適切に行なうことができない場合がある。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、適切に処理することができる頭外定位処
理装置、処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
本実施形態にかかる頭外定位処理システムは、ユーザが座席に着席する前に、前記ユーザの耳に装着されたマイクを用いて、伝達特性を測定する測定装置と、前記伝達特性に応じたフィルタを用いて頭外定位処理を行う頭外定位処理装置と、前記ユーザの識別情報に基づいて、前記伝達特性に応じたフィルタを、前記頭外定位処理装置に送信するサーバと、を備えたものである。
本実施形態にかかる頭外定位処理方法は、ユーザが乗り物に搭乗する前に、前記ユーザ
の耳に装着されたマイクを用いて、伝達特性を測定するステップと、前記ユーザの識別情
報に基づいて、前記乗り物に設置された頭外定位処理装置に前記伝達特性に応じたフィル
タを送信するステップと、前記頭外定位処理装置が、再生信号に対して前記フィルタを用
いた頭外定位処理を行うステップと、前記識別情報に対応する前記ユーザに対して、前記
頭外定位処理された再生信号をヘッドホン又はイヤホンから出力するステップと、を備え
たものである。
本実施形態にかかるフィルタ生成装置は、ユーザが装着したヘッドホン又はイヤホンか
らマイクまでの外耳道伝達特性を取得する外耳道伝達特性取得部と、スピーカからマイク
までの空間音響伝達特性に対応する第1の特性データと、前記外耳道伝達特性に対応する
第2の特性データとを1セットとして、複数セット分を格納するデータベースを参照する
ことで、前記ユーザの外耳道伝達特性の第1の周波数帯域における周波数特性に基づいて
、第1のセットを選択する第1の選択部と、前記第1の選択部で選択された前記第1のセ
ットに含まれる第2の特性データを取得する第1の取得部と、前記データベースを参照す
ることで、前記ユーザの外耳道伝達特性の第2の周波数帯域における周波数特性に基づい
て、第2のセットを選択する第2の選択部と、前記第2の選択部で選択された前記第2の
セットに含まれる第2の特性データを取得する第2の取得部と、予め設定されたプリセッ
トデータを取得する第3の取得部と、前記第1のセットの前記第2の特性データと、前記
第2のセットの第2の特性データと、前記プリセットデータとに基づいて、前記ユーザの
空間音響伝達特性に応じたフィルタを生成するフィルタ生成部と、を備えたものである。
本実施形態にかかるフィルタ生成方法は、ユーザが装着したヘッドホン又はイヤホンか
らマイクまでの外耳道伝達特性を取得するステップと、スピーカからマイクまでの空間音
響伝達特性に対応する第1の特性データと、前記外耳道伝達特性に対応する第2の特性デ
ータとを1セットとして、複数セット分を格納するデータベースを参照することで、前記
ユーザの外耳道伝達特性の第1の周波数帯域における周波数特性に基づいて、第1のセッ
トを選択するステップと、前記第1のセットに含まれる第2の特性データを取得するステ
ップと、前記データベースを参照することで、前記ユーザの外耳道伝達特性の第2の周波
数帯域における周波数特性に基づいて、第2のセットを選択するステップと、前記第2の
セットに含まれる第2の特性データを取得するステップと、予め設定されたプリセットデ
ータを取得するステップと、前記第1のセットの前記第2の特性データと、前記第2のセ
ットの第2の特性データと、前記プリセットデータとに基づいて、前記ユーザの空間音響
伝達特性に応じたフィルタを生成するステップと、を備えたフィルタものである。
本発明によれば、適切な処理を行うことができる頭外定位処理システム、フィルタ生成
装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
本実施の形態に係る頭外定位処理装置を示すブロック図である。 外耳道伝達特性を測定するための測定装置を示す模式図である。 システムの全体構成を示す図である。 サーバ端末の構成を示す図である。 航空機内に設置された搭乗席と座席端末を示す図である。 測定装置における処理を示すフローチャートである。 サーバ端末における処理を示すフローチャートである。 実施の形態2にかかるフィルタ生成装置の構成を示すブロック図である。 データベースに格納されている第1及び第2の特性データを示す表である。 収音信号における直接音及び反射音を説明するための図である。 実施の形態3にかかる処理装置の構成を示すブロック図である。 5.1chの再生信号での畳み込み処理と音量調整を説明するための図である。 実施の形態4の例1において、LPFをかける処理前後のフィルタを示す図である。 実施の形態4の例2において、残響成分を付加したフィルタを示す図である。
本実施の形態にかかる頭外定位処理の概要について説明する。本実施形態にかかる頭外
定位処理は、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性を用いて頭外定位処理を行うものである
。空間音響伝達特性は、スピーカなどの音源から外耳道までの伝達特性である。外耳道伝
達特性は、ヘッドホン又はイヤホンのスピーカユニットから鼓膜までの伝達特性である。
本実施形態では、ヘッドホン又はイヤホンを装着していない状態で測定された空間音響伝
達特性に応じたフィルタを用いて、頭外定位処理を行うことができる。さらに、ヘッドホ
ン又はイヤホンを装着した状態で測定された外耳道伝達特性に応じたフィルタを用いて、
頭外定位処理を行うことができる。
本実施の形態にかかる頭外定位処理は、パーソナルコンピュータ、スマートホン、タブ
レットPCなどのユーザ端末で実行される。さらに、頭外定位処理を行うユーザ端末は、
航空機、電車(鉄道車両)、船舶、バス等の乗り物に搭載された再生装置であってもよい
。この場合、乗り物の搭乗席に搭乗した搭乗者が頭外定位受聴を行う。ユーザ端末は、プ
ロセッサ等の処理手段、メモリやハードディスクなどの記憶手段、液晶モニタ等の表示手
段、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウスなどの入力手段を有する情報処理装置で
ある。ユーザ端末は、データを送受信する通信機能を有していてもよい。さらに、ユーザ
端末には、ヘッドホン又はイヤホンを有する出力手段(出力ユニット)が接続される。以
下の説明ではヘッドホンを用いる例について説明するが、ヘッドホンの代わりにイヤホン
を用いてもよい。
実施の形態1.
(頭外定位処理装置)
本実施の形態にかかる音場再生装置の一例である頭外定位処理装置100を図1に示す
。図1は、頭外定位処理装置100のブロック図である。頭外定位処理装置100は、ヘ
ッドホン43を装着するユーザUに対して音場を再生する。そのため、頭外定位処理装置
100は、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRについて、頭外定位処理を行う
。LchとRchのステレオ入力信号XL、XRは、CD(Compact Disc)プレイヤーな
どから出力されるアナログのオーディオ再生信号、又は、mp3(MPEG Audio Layer-3)等の
デジタルオーディオデータである。なお、オーディオ再生信号、又はデジタルオーディオ
データをまとめて再生信号と称する。すなわち、LchとRchのステレオ入力信号XL
、XRが再生信号となっている。
なお、頭外定位処理装置100は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、一部
の処理が異なる装置で行われてもよい。例えば、一部の処理がスマートホンなどにより行
われ、残りの処理がヘッドホン43に内蔵されたDSP(Digital Signal Processor)など
により行われてもよい。
頭外定位処理装置100は、頭外定位処理部10、フィルタ部41、フィルタ部42、
及びヘッドホン43を備えている。頭外定位処理部10、フィルタ部41、及びフィルタ
部42は、具体的にはプロセッサ等により実現可能である。
頭外定位処理部10は、畳み込み演算部11~12、21~22、及び加算器24、2
5を備えている。畳み込み演算部11~12、21~22は、空間音響伝達特性を用いた
畳み込み処理を行う。頭外定位処理部10には、CDプレイヤーなどからのステレオ入力
信号XL、XRが入力される。頭外定位処理部10には、空間音響伝達特性が設定されて
いる。頭外定位処理部10は、各chのステレオ入力信号XL、XRに対し、空間音響伝
達特性のフィルタ(以下、空間音響フィルタとも称する)を畳み込む。空間音響伝達特性
は被測定者の頭部や耳介で測定した頭部伝達関数HRTFでもよいし、ダミーヘッドまた
は第三者の頭部伝達関数であってもよい。
4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを1セットとしたものを空間
音響伝達関数とする。畳み込み演算部11、12、21、22で畳み込みに用いられるデ
ータが空間音響フィルタとなる。空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを所
定のフィルタ長で切り出すことで、空間音響フィルタが生成される。
空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのそれぞれは、インパルス応答測定
などにより、事前に取得されている。例えば、ユーザUが左右の耳にマイクをそれぞれ装
着する。ユーザUの前方に配置された左右のスピーカが、インパルス応答測定を行うため
の、インパルス音をそれぞれ出力する。そして、スピーカから出力されたインパルス音等
の測定信号をマイクで収音する。マイクでの収音信号に基づいて、空間音響伝達特性Hl
s、Hlo、Hro、Hrsが取得される。左スピーカと左マイクとの間の空間音響伝達
特性Hls、左スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性Hlo、右スピーカと左マ
イクとの間の空間音響伝達特性Hro、右スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性
Hrsが測定される。
そして、畳み込み演算部11は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達
特性Hlsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部11は、畳み込み演算
データを加算器24に出力する。畳み込み演算部21は、Rchのステレオ入力信号XR
に対して空間音響伝達特性Hroに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部
21は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。加算器24は2つの畳み込み演算
データを加算して、フィルタ部41に出力する。
畳み込み演算部12は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hl
oに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部12は、畳み込み演算データを
、加算器25に出力する。畳み込み演算部22は、Rchのステレオ入力信号XRに対し
て空間音響伝達特性Hrsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部22は
、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。加算器25は2つの畳み込み演算デー
タを加算して、フィルタ部42に出力する。
フィルタ部41、42にはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットとマイク間の特
性)をキャンセルする逆フィルタLinv、Rinvが設定されている。そして、頭外定
位処理部10での処理が施された再生信号(畳み込み演算信号)に逆フィルタLinv、
Rinvを畳み込む。フィルタ部41で加算器24からのLch信号に対して、Lch側
のヘッドホン特性の逆フィルタLinvを畳み込む。同様に、フィルタ部42は加算器2
5からのRch信号に対して、Rch側のヘッドホン特性の逆フィルタRinvを畳み込
む。逆フィルタLinv、Rinvは、ヘッドホン43を装着した場合に、ヘッドホンユ
ニットからマイクまでの特性をキャンセルする。マイクは、外耳道入口から鼓膜までの間
ならばどこに配置してもよい。
フィルタ部41は、処理されたLch信号YLをヘッドホン43の左ユニット43Lに
出力する。フィルタ部42は、処理されたRch信号YRをヘッドホン43の右ユニット
43Rに出力する。ユーザUは、ヘッドホン43を装着している。ヘッドホン43は、L
ch信号YLとRch信号YR(以下、Lch信号YLとRch信号をまとめてステレオ
信号ともいう)をユーザUに向けて出力する。これにより、ユーザUの頭外に定位された
音像を再生することができる。
このように、頭外定位処理装置100は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、
Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタLinv,Rinvを
用いて、頭外定位処理を行っている。以下の説明において、空間音響伝達特性Hls、H
lo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタLin
v,Rinvとをまとめて頭外定位処理フィルタとする。2chのステレオ再生信号の場
合、頭外定位フィルタは、4つの空間音響フィルタと、2つの逆フィルタとから構成され
ている。そして、頭外定位処理装置100は、ステレオ再生信号に対して合計6個の頭外
定位フィルタを用いて畳み込み演算処理を行うことで、頭外定位処理を実行する。頭外定
位フィルタは、ユーザU個人の測定に基づくものであることが好ましい。例えば,ユーザ
Uの耳に装着されたマイクが収音した収音信号に基づいて、頭外定位フィルタが設定され
ている。なお、メモリ容量を削減するため、フィルタ同士を演算し、4つのフィルタにま
とめてもよい。
このように空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタはオーディオ信号用のフ
ィルタである。これらのフィルタが再生信号(ステレオ入力信号XL、XR)に畳み込ま
れることで、頭外定位処理装置100が、頭外定位処理を実行する。つまり、頭外定位処
理装置100は、頭外に音像が定位された音場を再生する再生装置となる。
(測定装置)
次に、図2を用いて、伝達特性を測定する測定装置について説明する。図2は、測定装
置200の測定構成を模式的に示す図である。なお、測定装置200は、図1に示す頭外
定位処理装置100と共通の装置であってもよい。あるいは、測定装置200の一部又は
全部が頭外定位処理装置100と異なる装置となっていてもよい。
図2に示すように、測定装置200は、ステレオスピーカ5と、ステレオマイク2と、
ヘッドホン43と、処理装置201とを有している。ステレオスピーカ5が測定環境に設
置されている。測定環境は、被測定者1の自宅の部屋やオーディオシステムの販売店舗や
ショールーム等でもよい。また、測定環境は空港、駅、港湾、バスターミナルなど、乗り
物に搭乗する際に利用する各種施設に設置されていてもよい。
本実施の形態では、測定装置200の処理装置201が、測定結果に応じて、頭外定位
フィルタを適切に生成するための演算処理を行っている。処理装置201は、測定信号生
成部211と、収音信号取得部212と、フィルタ生成部213と、を備えている。処理
装置201は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートホン等であ
り、メモリ、及びCPUを備えている。メモリは、処理プログラムや各種パラメータや測
定データなどを記憶している。CPUは、メモリに格納された処理プログラムを実行する
。CPUが処理プログラムを実行することで、測定信号生成部211、収音信号取得部2
12、フィルタ生成部213の各処理が実行される。
測定信号生成部211は、外耳道伝達特性又は空間音響伝達特性を測定するための測定
信号を生成する。測定信号は、例えば、インパルス信号やTSP(Time Strec
hed Pulse)信号等である。ここでは、測定信号としてインパルス音を用いて、
測定装置200がインパルス応答測定を実施している。
空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを測定する場合、測定装置200は
、ステレオスピーカ5を用いた測定を行う。つまり、被測定者1がヘッドホン43を装着
せずに、ステレオマイク2のみを装着する。そして、ステレオスピーカ5から測定信号を
出力し、ステレオマイク2が測定信号を収音する。空間音響伝達特性Hls、Hlo、H
ro、Hrsを測定する場合、ヘッドホン43は使用されない。
外耳道伝達特性を測定する場合、測定装置200は、ヘッドホン43を用いた測定を行
う。つまり、被測定者1がステレオマイク2、及びヘッドホン43を装着する。そして、
ヘッドホン43から測定信号を出力し、ステレオマイク2が測定信号を収音する。外耳道
伝達特性を測定する場合、ステレオスピーカ5は使用されない。
まず、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrs(以下、単に伝達特性Hls
、Hlo、Hro、Hrsともいう)の測定と、空間音響フィルタの生成について説明す
る。ステレオスピーカ5は、左スピーカ5Lと右スピーカ5Rを備えている。例えば、被
測定者1の前方に左スピーカ5Lと右スピーカ5Rが設置されている。左スピーカ5Lと
右スピーカ5Rは、インパルス応答測定を行うための測定信号を出力する。以下、本実施
の形態では、音源となるスピーカの数を2(ステレオスピーカ)として説明するが、測定
に用いる音源の数は2に限らず、1以上であればよい。すなわち、1chのモノラル、また
は、5.1ch、7.1ch等の、いわゆるマルチチャンネル環境においても同様に、本実施の形態
を適用することができる。
ステレオマイク2は、左のマイク2Lと右のマイク2Rを有している。左のマイク2L
は、被測定者1の左耳9Lに設置され、右のマイク2Rは、被測定者1の右耳9Rに設置
されている。具体的には、左耳9L、右耳9Rの外耳道入口から鼓膜までの位置にマイク
2L、2Rを設置することが好ましい。マイク2L、2Rは、ステレオスピーカ5から出
力された測定信号を収音して、収音信号を取得する。マイク2L、2Rは収音信号を処理
装置201に出力する。被測定者1は、人でもよく、ダミーヘッドでもよい。すなわち、
本実施形態において、被測定者1は人だけでなく、ダミーヘッドを含む概念である。
ステレオマイク2の左マイク2L、右マイク2Rがそれぞれ測定信号を収音し、収音信
号を処理装置201に出力する。収音信号取得部212は、左マイク2L、右マイク2R
で収音された収音信号を取得する。なお、収音信号取得部212は、マイク2L、2Rか
らの収音信号をA/D変換するA/D変換器を備えていてもよい。収音信号取得部212
は、複数回の測定により得られた信号を同期加算してもよい。
左スピーカ5Lがインパルス音を出力することで、収音信号取得部212は、伝達特性
Hlsに対応する収音信号と、伝達特性Hloに対応する収音信号を取得する。その後、
右スピーカ5Rがインパルス音を出力することで、収音信号取得部212は、伝達特性H
rsに対応する収音信号と、伝達特性Hroに対応する収音信号を取得する。なお、左ス
ピーカ5Lによる測定と、右スピーカ5Rによる測定との順番は反対でもよい。
上記のように、左右のスピーカ5L、5Rで出力されたインパルス音をマイク2L、2
Rで測定することでインパルス応答が測定される。処理装置201は、インパルス応答測
定に基づいて取得した収音信号をメモリなどに記憶する。これにより、左スピーカ5Lと
左マイク2Lとの間の伝達特性Hls、左スピーカ5Lと右マイク2Rとの間の伝達特性
Hlo、右スピーカ5Rと左マイク2Lとの間の伝達特性Hro、右スピーカ5Rと右マ
イク2Rとの間の伝達特性Hrsが測定される。すなわち、左スピーカ5Lから出力され
た測定信号を左マイク2Lが収音することで、伝達特性Hlsが取得される。左スピーカ
5Lから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、伝達特性Hloが取得さ
れる。右スピーカ5Rから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、伝達特
性Hroが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を右マイク2Rが収音す
ることで、伝達特性Hrsが取得される。
そして、フィルタ生成部213は、収音信号に基づいて、左右のスピーカ5L、5Rか
ら左右のマイク2L、2Rまでの伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じたフィ
ルタを生成する。フィルタ生成部213は、伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを
所定のフィルタ長で切り出して、所定の演算処理を行う。このようにすることで、処理装
置201は、頭外定位処理装置100の畳み込み演算に用いられる空間音響フィルタを生
成する。
次に、外耳道伝達特性の測定と、逆フィルタLinv、Rinvの生成について説明す
る。被測定者1が、左右の耳9L、9Rにマイク2L、2Rを装着した状態で、ヘッドホ
ン43を装着する。すなわち、被測定者1は左右のマイク2L、2Rの上から、ヘッドホ
ン43を装着する。左マイク2L、及び右マイク2Rは、ヘッドホン43に干渉しないよ
うに構成されている。すなわち、左マイク2L、及び右マイク2Rは左耳9L、右耳9R
の適切な位置に配置された状態で、被測定者1がヘッドホン43を装着することができる
測定信号生成部211が生成した測定信号は、ヘッドホン43の左ユニット43L、右
ユニット43Rからそれぞれ出力される。左マイク2Lは、ヘッドホン43の左ユニット
43Lから出力された音を収音する。右マイク2Rは、ヘッドホン43の右ユニット43
Rから出力された音を収音する。
このように、マイク2L、2Rは、ヘッドホン43から出力された測定信号を収音して
、収音信号を検出する。収音信号取得部212は、マイク2L、2Rからの収音信号を取
得する。なお、外耳道伝達特性と空間音響伝達特性の測定は、別の処理装置201を用い
て、別の場所で行われてもよい。したがって、ステレオスピーカ5が設けられている測定
環境以外の場所でも、外耳道伝達特性を測定することが可能である。
処理装置201は、インパルス応答測定に基づく収音信号をメモリなどに記憶する。こ
れにより、左ユニット43Lと左マイク2Lとの間の伝達特性(すなわち、左耳9Lの外
耳道伝達特性ECTFL)と、右ユニット43Rと右マイク2Rとの間の伝達特性(すな
わち、右耳9Rの外耳道伝達特性ECTFR)が取得される。処理装置201は、測定デ
ータを記憶するメモリなどを有している。
処理装置201は、外耳道伝達特性ECTFL、ECTFRに基づいて、逆フィルタL
inv、Rinvをそれぞれ算出する。例えば、処理装置201は、離散フーリエ変換や
離散コサイン変換などにより、外耳道伝達特性の周波数振幅特性及び周波数位相特性を算
出する。そして、処理装置201は、周波数振幅特性の逆特性を求める。なお、処理装置
201は、周波数帯域毎に、周波数振幅特性、又はその逆特性等を補正してもよい。処理
装置201は、逆離散フーリエ変換等により、逆特性と位相特性とを用いて時間信号を算
出する。処理装置201は、時間信号を所定のフィルタ長で切り出すことで、逆フィルタ
を算出する。上記のように、逆フィルタはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットと
マイク間の特性)をキャンセルするフィルタである。なお、逆フィルタの算出方法につい
ては、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
処理装置201は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じたフィル
タ、及び左右の逆フィルタLinv、Rinvを保存する。処理装置201と頭外定位処
理装置100とが異なる装置の場合、処理装置201は、フィルタ、及び逆フィルタを頭
外定位処理装置100に送信する。なお、ヘッドホン43又はステレオスピーカ5と、処
理装置201との接続は、Bluetooth(登録商標)などを用いた無線接続であっ
てもよい。
ここで、頭外定位処理受聴を行うユーザUに対して、測定装置200が測定を行うこと
で、ユーザUに適した頭外定位フィルタを生成することができる。つまり、ユーザUを被
測定者1として、測定装置200が、空間音響伝達特性、及び外耳道伝達特性を行うこと
で、ユーザU固有の頭外定位フィルタ(以下、単にフィルタとも称する)を生成すること
ができる。
(システム構成)
次に、フィルタ生成、及び頭外定位処理を行うシステム構成について、図3を用いて説
明する。図3は、システムの全体構成を模式的に示す図である。システム1000は測定
装置200と、サーバ端末600と、を備えている。図3では、航空機500の搭乗者に
対して、頭外定位処理を行うためのシステム1000が示されている。つまり、図1で示
したユーザUが航空機500の搭乗者となる。ここでは、フィルタと搭乗者の識別情報と
を対応付けて格納することで、搭乗者毎にフィルタを設定することができる。従って、搭
乗者毎に異なるフィルタを用いて、頭外定位処理を行うことができる。
測定装置200は、図2で示した測定装置200と同様である。ここでは、測定装置2
00は、空港に設置されている。例えば、測定装置200は、航空会社のラウンジ等に設
置されていてもよい。ラウンジを測定環境とする場合、ラウンジには、ステレオスピーカ
5、ヘッドホン43、及び処理装置201等が設置されている。さらに、ラウンジには、
測定装置200を設置するためのデスクなどが設けられていてもよい。処理装置201は
、図1で示した頭外定位処理装置100の頭外定位処理機能を有していてもよい。
測定装置200には、入力手段221と、表示手段222と、通信手段223と、アン
テナ224が設けられている。入力手段221は、キーボード、マウス、タッチパネルな
どを備えており、搭乗者又は操作者からの入力を受け付ける。あるいは、音声入力を受け
付ける場合、入力手段221は、マイク及び音声認識機能を備えている。表示手段222
は、モニタなどを備えており、入力画面や測定画面を表示する。
搭乗者は、表示手段222に表示された入力画面を確認しながら、入力手段221を操
作することで、搭乗者を識別するための識別情報を入力する。識別情報は搭乗者毎に与え
られている固有の情報である。例えば、搭乗者が搭乗する航空機500の航空会社におけ
るマイレージクラブの会員番号(会員ID)を、識別情報として用いることができる。こ
の場合、入力手段221は、マイレージカードをスキャンするカードスキャナなどであっ
てもよい。入力手段221は、スマートホンの画面に表示した識別情報やスマートホンに
内蔵されたICチップに記憶された識別情報などを読み取る装置であってもよい。
図2で説明したように、測定装置200は、測定を行って、フィルタを生成する。ここ
で、ヘッドホン43は、航空機500に搭載されたヘッドホンと同じタイプのものである
。ヘッドホン43は、航空会社から貸与される。あるいは、搭乗者がヘッドホン43を購
入することも可能となっている。また、複数のヘッドホン43を用意しておいて、測定に
使用したヘッドホン43を搭乗者が機内に持ち込むようにしてもよい。フライト毎にヘッ
ドホン43の機種が異なる場合、測定環境に、それぞれの機種のヘッドホン43を用意し
ておくことが好ましい。
測定装置200は、生成したフィルタをサーバ端末600に送信する。測定装置200
は、識別情報に対応付けてフィルタをサーバ端末600に送信する。これにより、サーバ
端末600は、搭乗者の識別情報とフィルタとを受信する。サーバ端末600は、機内に
配置されていてもよく、機外に配置されていてもよい。
例えば、通信手段223は、フィルタや識別情報のデータに対して、変調などを行う変
調回路等を有している。通信手段223で変調されたデータが、アンテナ224から送信
される。サーバ端末600のアンテナ601は、アンテナ224から送信されたデータを
受信する。
図4は、サーバ端末600を模式的に示す図である。受信手段602は、受信したデー
タを復調する復調回路等を備えている。サーバ端末600は、識別情報に応じて、フィル
タを航空機500内の座席端末511に設定する。
航空機500は、複数の搭乗席と、複数の座席端末511と、が備えている。つまり、
航空機500内では、搭乗席毎に座席端末511が設けられている。図5に搭乗席と座席
端末511の一例を示す。図5では、搭乗席521に搭乗者であるユーザU(搭乗者)が
座っている。ユーザUがヘッドホン43を装着している。機内においてユーザUが装着す
るヘッドホン43は、測定を行ったヘッドホン43と同じ機種のものとなっている。
座席端末511は、例えば、搭乗席521の下や肘掛け等に設置されている。ここでは
、搭乗席521毎に座席端末511が設置されている。そして、座席端末511に設けら
れたイヤホンジャック(不図示)には、ヘッドホン43が接続されている。座席端末51
1が図1で示した頭外定位処理装置100に対応する。
座席端末511は、搭乗席521毎に設置されている。つまり、複数の搭乗席521と
複数の座席端末511は、1対1に対応付けられている。サーバ端末600は、搭乗席5
21の座席番号と、座席端末511の端末番号を対応付けて、保存している。座席端末5
11の端末番号は、例えば、座席端末511のIPアドレス等の固有の情報である。さら
に、航空機500では、搭乗者毎に搭乗する搭乗席521が指定されている。つまり、サ
ーバ端末600は、搭乗者の識別情報と搭乗席とを対応付けて、保存している。
例えば、航空会社は、搭乗者の識別情報と、フライト番号と、座席番号と、端末番号と
、を管理している。よって、サーバ端末600は、識別情報を参照することで、搭乗者が
搭乗する航空機とその搭乗席を特定することができる。そして、サーバ端末600は、特
定した搭乗席521に対応する座席端末511にフィルタを送信する。
このように、測定装置200は、搭乗者を識別するための識別情報に対応付けて、フィ
ルタをサーバ端末600に送信する。そして、サーバ端末600は、識別情報を参照して
、搭乗者の搭乗席521の座席端末511にフィルタを送信する。これにより、システム
1000は、搭乗者毎に適切なフィルタを設定することができる。
次に、測定装置200における処理について、図6を用いて説明する。図6は、測定装
置200における処理を示すフローチャートである。まず、搭乗者(ユーザU)の操作に
よって、処理装置201に搭乗者のID(識別情報)が入力される(S1)。処理装置2
01は、識別情報を記憶する。そして、処理装置201が識別情報に対応する搭乗者のフ
ライト番号と座席番号を確認する(S2)。例えば、処理装置201は、サーバ端末60
0の情報を参照して、フライト番号と座席番号を確認する。処理装置201が、フライト
番号又は座席番号を確認できない場合(S2のNO)、エラーメッセージを表示し(S3
)、終了する。つまり、処理装置201は、搭乗者の識別情報に対応するフライト番号と
座席番号を特定することができないため、エラーメッセージを表示した上で、処理を終了
する。
処理装置201が、フライト番号又は座席番号を確認できた場合(S2のYES)、測
定装置200が、空間音響伝達特性及び外耳道伝達特性の測定を行う(S4)。なお、空
間音響伝達特性及び外耳道伝達特性を測定する順番は、特に限定されるものではない。そ
して、処理装置201が、測定結果に基づいて、フィルタを生成する(S5)。ここでは
、処理装置201は、4つの空間音響フィルタ、及び左右の逆フィルタLinv、Rin
vを含む頭外定位処理フィルタを保存する。
次に、S5で生成されたフィルタを用いて、頭外定位処理装置100がユーザUに頭外
定位処理された再生信号を試聴させる(S6)。つまり、ユーザUがヘッドホン43を装
着して、頭外定位受聴を行なう。これにより、頭外に音像が定位された音場を再生するこ
とができる。ここで、頭外定位処理装置100は、S4での測定やS5でのフィルタ生成
を行った処理装置201と共通の装置であってもよく、別の装置であってもよい。処理装
置201と頭外定位処理装置100とが、物理的に別の装置となっている場合、処理装置
201は、無線又は有線で、頭外定位処理装置100にフィルタを送信する。
そして、処理装置201又は頭外定位処理装置100が、この音場を採用するか否かを
判定する(S7)。処理装置201又は頭外定位処理装置100は、ユーザ入力に応じて
、この音場を採用するか否かを判定する。例えば、表示手段222が、試聴した音場でよ
いか否かを確認するためのメッセージと選択ボタンなどをモニタ上に表示させる。あるい
は、処理装置201は、音声メッセージで問い合わせを行うようにしてもよい。
ユーザUは、入力手段221を操作することで、試聴した音場を採用するか否かを選択
することができる。つまり、ユーザUは、頭外定位受聴の受聴結果に応じて、音場が適切
であるか否かを指定する。ユーザUは、頭外定位処理された音場に違和感などを覚えた場
合、この音場を採用しないように、入力を行う。頭外定位再生された音場が好みの音場で
ある場合、ユーザUは、この音場を採用するように、入力を行う。ユーザUは、音場を試
聴した聴感に応じて、音場(フィルタ)の採用又は不採用のボタンを選択(例えばクリッ
クやタップなど)する。そして、処理装置201がユーザ入力に基づいて、音場を採用す
るか否かを判定する。
この音場を採用しないと判定した場合(S7のNO)。処理装置201は、再測定の要
求があるか否かを判定する(S8)。処理装置201又は頭外定位処理装置100は、ユ
ーザ入力に応じて、再測定の要求があるか否かを判定する。例えば、表示手段222が、
再測定ボタンと終了ボタンなどをモニタ上に表示させる。あるいは、処理装置201は、
音声メッセージで再測定の問い合わせを行うようにしてもよい。
ユーザUは再測定を行なう場合、再測定ボタンを選択する。ユーザUは、再測定を行な
わない場合、終了ボタンを選択する。処理装置201は、ユーザ入力を受け付けると、ユ
ーザ入力に基づいて、再測定を行なうか否かを判定する。もちろん、音声メッセージを用
いた入出力であってもよい。
S8において、再測定要求が無いと判定された場合(S8のNO)、処理装置201は
、処理を終了する。S8において、再測定要求が有ると判定された場合(S8のYES)
、S4に戻り、再測定を行う。そして、再測定結果に基づいて、測定装置200がフィル
タを生成する(S5)。そして、頭外定位処理装置100が再測定により得られたフィル
タを用いて、再度、試聴を実施する。(S6)。
S7において、処理装置201が、この音場を採用すると判定した場合(S7のYES
)、ユーザUによる料金の支払いを受け付ける(S9)。ここで、料金はクレジットカー
ド、又は現金による支払いに限らず、航空会社のマイル(マイレージ)等のポイントによ
る支払いでもよい。そして、処理装置201は、フィルタ及び識別情報を含む個人データ
をサーバ端末600に送信する(S10)。これにより、処理が終了する。
次に、サーバ端末600における処理について、図7を用いて、説明する。図7は、サ
ーバ端末600における処理を示すフローチャートである。まず、サーバ端末600は、
搭乗者のID(識別情報)を受信したか否かを判定する(S11)。ここでは、サーバ端
末600が、図6のS1において入力された識別情報を処理装置201から受信したか否
かを判定する。サーバ端末600が、識別情報を受信していない場合(S11のNO)、
受信するまで処理を繰り返す。
サーバ端末600は、識別情報を受信した場合(S11のYES)、識別情報に対応す
るフライト番号、座席番号、座席端末番号を検索して、処理装置201に送信する(S1
2)。サーバ端末600は、航空会社が管理しているフライト情報等を参照して、識別情
報の搭乗者が搭乗するフライト番号、座席番号、座席端末番号を特定する。なお、処理装
置201では、S12で送信されたフライト番号、座席番号に基づいて、図6のS2での
判定を行っている。
次に、サーバ端末600は、支払い意思通知を受信したか否かを判定する(S13)。
ここでは、サーバ端末600は、図6のS9での料金支払いが行なわれているか否かを判
定する。サーバ端末600は、料金の支払い意思通知を受信していない場合(S13のN
O)、支払い意思通知を受信するまで待機する。
サーバ端末600は、料金の支払い意思通知を受信した場合(S13のYES)、支払
い処理を実行する(S14)。そして、サーバ端末600は、支払いを完了したか否かを
判定する(S15)。サーバ端末600は、支払いを完了していない場合(S15のNO
)、エラーメッセージを表示手段222に表示させる(S16)。つまり、サーバ端末6
00は、ポイント残高が不足している場合などに、エラーメッセージを処理装置201に
送信する。これにより、処理装置201の表示手段222がエラーメッセージをユーザU
に対して表示する。
支払いを完了した場合(S15のYES)、サーバ端末600は、個人データを受信す
る(S17)。つまり、図6のS10で処理装置201が送信した個人データをサーバ端
末600が受信する。個人データは、識別情報とフィルタとを含んでいる。そして、サー
バ端末600は、識別情報を参照して、座席端末511にフィルタを転送する。つまり、
識別情報に対応する搭乗席の座席端末511に、フィルタを送信する(S18)。これに
より、搭乗者に応じたフィルタが、座席端末511に設定される。
搭乗者が航空機に搭乗した後に、頭外定位処理機能をオンとすると、座席端末511が
フィルタを用いて頭外定位処理を行う。つまり、座席端末511が図1の頭外定位処理装
置100として機能する。これにより、ヘッドホン43が、頭外定位処理された再生信号
を搭乗者に対して出力する。このように、搭乗者に対して測定された空間音響伝達特性、
及び外耳道伝達特性に応じたフィルタを用いて、搭乗者が頭外定位受聴を行なうことがで
きる。このようにすることで、適切なフィルタを用いて、頭外定位受聴を行うことができ
る。
よって、搭乗者は、搭乗席521に着席している間において、リラックスして、再生信
号を受聴することができるため、長時間の移動でも快適に過ごすことができる。識別情報
とフィルタが紐付いているため、乗り継ぎ後の航空機でも、搭乗者は、同様に頭外定位受
聴を楽しむことができる。さらに、フライト到着後において、生成されたフィルタを識別
情報に対応付けて、サーバ端末600に保存しておくことも可能である。このようにする
ことで、次回以降のフライト時において、搭乗者に対する測定の一部又は全部を省略する
ことができる。さらに、残存するマイルの利用を促進することができる。
さらに、航空機に搭載されているエンターテインメントシステムにおいて、頭外定位処
理を行なうことができる。よって、搭乗者は、音楽の再生信号だけでなく、映画やゲーム
などの再生信号を頭外定位受聴することができる。
以上まとめると、本実施の形態1にかかるシステム1000は、測定装置200と、座
席端末511と、サーバ端末600とを備えている。測定装置200は、ユーザUが乗り
物に搭乗する前に、ユーザの耳に装着されたマイクを用いて、伝達特性を測定する。座席
端末511は、乗り物に設置され、伝達特性に応じたフィルタを用いて頭外定位処理を行
う頭外定位処理装置である。サーバ端末は、ユーザの識別情報に基づいて、伝達特性に応
じたフィルタを、座席端末511に送信する。これにより、搭乗者(ユーザU)に対して
適切に頭外定位処理を行うことができる。
なお、上記の説明では、航空機の搭乗者が頭外定位受聴を行う例について説明したが、
搭乗者が搭乗する乗り物は、航空機に限られるものではない。先に述べた電車、バス、船
舶等の搭乗者に対して、ヘッドホン43が頭外定位処理された再生信号を出力してもよい
。電車やバス、船舶などの場合は、駅やバスターミナル、港湾の待合室などに、測定装置
200を設置しておけばよい。さらには、乗り物は、アミューズメントパークのアトラク
ション等であってもよい。この場合、頭外定位処理装置100は、実際に移動する乗り物
に限らず、その場に滞在したままの乗り物に搭載されていてもよい。
頭外定位処理装置となる端末が搭乗者の識別情報と対応付けられていればよい。そして
、それぞれの搭乗者が搭乗席において、ヘッドホンやイヤホンを装着する。そして、再生
装置が搭乗席毎に設置されており、再生装置が搭乗者に適したフィルタを用いて、頭外定
位処理を行う。もちろん、一部の搭乗者については、頭外定位処理を行わなくてもよい。
さらには、複数の搭乗者に対して共通の再生信号を用いてもよい。この場合、再生信号を
再生する装置は共通となっており、頭外定位フィルタを用いた処理が、搭乗者毎に実施さ
れていればよい。また、ヘッドホン又はイヤホンは、測定環境に設置されたものに限らず
、ユーザUが持参したものでもよい。
実施の形態2.
(空間音響フィルタの生成)
また、実施の形態1では、測定装置200が、空間音響伝達特性と、外耳道伝達特性の
両方を測定するものとして説明したが、一部の測定を行うことができない場合がある。測
定環境の制限などから、頭外定位受聴を行うユーザUに対して、空間音響伝達特性Hls
、Hlo、Hro、Hrsと、左右の外耳道伝達特性ECTFL、ECTFRの全てを測
定できないことがある。特に、空間音響伝達特性の測定では、ユーザUから離れた位置に
1台又は複数台のスピーカを設置する必要がある。よって、空港等に広くて静かな測定環
境を用意できない場合がある。
一方、外耳道伝達特性は、ヘッドホンを装着した状態で測定される。このため、外耳道
伝達特性の測定では、空間音響伝達特性の測定ほど、広くて静かな測定環境は要求されな
い。よって、搭乗者に対して、外耳道伝達特性の測定のみを行うことで、頭外定位フィル
タの全てを取得できることが好ましい。つまり、スピーカを用いた空間音響伝達特性の測
定を行わずに、搭乗者に適した空間音響フィルタを生成することが望まれる。以下、外耳
道伝達特性の測定結果から、搭乗者に適した空間音響フィルタを生成する方法について、
説明する。
外耳道伝達特性ECTFL、ECTFRの測定結果に基づいて、空間音響フィルタを生
成するフィルタ生成装置について、図8を用いて説明する。図8は、フィルタ生成装置9
00の構成を示すブロック図である。なお、フィルタ生成装置900は、処理装置201
と同一の装置であってもよく、異なる装置であってもよい。さらには、フィルタ生成装置
900は、物理的に単一な装置に限られるものではない。例えば、フィルタ生成装置90
0と、処理装置201とが異なる装置の場合、後述する処理の一部が処理装置201にお
いて実施されていてもよい。また、データベース901は、異なる装置に格納されていて
もよく、複数の装置に分散して格納されていてもよい。
フィルタ生成装置900は、データベース901と、第1の選択部902と、第1の取
得部903と、第2の選択部904と、第2の取得部905と、第3の取得部906と、
第1の調整部907と、第1の合成部908と、第2の調整部911と、第2の合成部9
12と、生成部920と、外耳道伝達特性取得部930と、を備えている。
外耳道伝達特性取得部930は、ユーザUの外耳道伝達特性の測定結果を取得する。な
お。フィルタ生成装置900が処理装置201と別の装置とする場合、外耳道伝達特性取
得部930は、有線通信又は無線通信により、ユーザUの外耳道伝達特性が送信されてい
る。
データベース901は、複数人分の特性データを格納している。つまり、複数の被測定
者1に対して、予め、空間音響伝達特性及び外耳道伝達特性の測定が行われている。そし
て、データベース901は、複数人に対する測定結果に基づく空間音響伝達特性及び外耳
道伝達特性のデータを特性データとして格納している。具体的には、データベース901
は、第1の特性データと、第2の特性データと、を1セットとして、複数セット分のデー
タを格納している。例えば、N人(Nは2以上の整数)の被測定者1に対して、外耳道伝
達特性の測定が事前に行われている。よって、データベース901は、左耳に関してNセ
ット分の特性データを格納し、右耳に関してNセット分の特性データを格納する。
第1の特性データは、音源となるスピーカからマイクまでの空間音響伝達特性に対応す
るデータである。第1の特性データは、例えば、空間音響伝達特性の周波数特性である。
具体的には、第1の特性データは、周波数領域の振幅特性を備えている。もちろん、第1
の特性データは、振幅特性の代わりにパワー特性を備えていてもよい。また、第1の特性
データは、空間音響伝達特性の直接音部分の周波数振幅特性を有していることが好ましい
。第1の特性データは時間領域の信号を有していてもよい。例えば、時間領域の信号は測
定装置200のマイク2L、2Rで収音された収音信号である。あるいは、時間領域の信
号は、マイク2L、2Rで収音された収音信号を所定のフィルタ長で切りだした信号であ
ってもよい。
第2の特性データは、外耳道伝達特性に対応するデータである。第2の特性データは、
例えば、外耳道伝達特性の周波数特性である。具体的には、第2の特性データは、周波数
領域の振幅特性を備えている。もちろん、第2の特性データは、振幅特性の代わりにパワ
ー特性を備えていてもよい。さらには、第2の特性データは、周波数領域の位相特性を有
していてもよい。第2の特性データは時間領域の信号を有していてもよい。例えば、時間
領域の信号は測定装置200のマイク2L、2Rで収音された収音信号である。あるいは
、時間領域の信号は、マイク2L、2Rで収音された収音信号を所定のフィルタ長で切り
だした信号であってもよい。
処理装置201又はフィルタ生成装置900等が、時間領域の収音信号に対して、離散
フーリエ変換や離散コサイン変換などを施すことで、周波数振幅特性等が求められる。ま
た、収音信号を所定のフィルタ長で切り出すことで得られたフィルタに対して、離散フー
リエ変換や離散コサイン変換などを施すことで、周波数振幅特性を求めてもよい。あるい
は、データベース901は、第1の特性データ、及び第2の特性データとして、時間領域
の収音信号やフィルタを記憶しており、フィルタ生成処理を行う毎に高速フーリエ変換(
FFT)等を行うことで、周波数振幅特性を求めてもよい。
データベース901に格納された第1及び第2の特性データについて、図9を用いて説
明する。1人目(1セット目)の被測定者1について、空間音響伝達特性Hls、Hlo
、Hro、Hrsに関するデータをそれぞれ第1の特性データHls_DB1、Hlo_
DB1、Hro_DB1、Hrs_DB1とする。N人目等についても、それぞれ第1の
特性データHls_DBN、Hlo_DBN、Hro_DBN、Hrs_DBN等と称す
る。データベース901に格納されたN人分の第1の特性データHls_DB1~Hls
_DBNをまとめて、第1の特性データHls_DBと称する。同様に、第1の特性デー
タHlo_DB1~Hlo_DBN、Hro_DB1~Hro_DBN、Hrs_DB1
~Hrs_DBNについても、同様に、N人分のデータをまとめて、第1の特性データH
lo_DB、Hro_DB、Hrs_DBと称する。
1人目の被測定者1について、外耳道伝達特性ECTFL、ECTFRに関するデータ
をそれぞれ第2の特性データECTFL_DB1、ECTFR_DB1とする。N人目等
の被測定者1についても、外耳道伝達特性ECTFL、ECTFRに関するデータを第2
の特性データECTFL_DBN、ECTFR_DBN等と称する。また、データベース
901に格納されたN人分の第2の特性データECTFL_DB1~ECTFL_DBN
をまとめて、第2の特性データECTFL_DBと称する。N人分の第2の特性データE
CTFR_DB1~ECTFR_DBNをまとめて、第2の特性データECTFR_DB
と称する。
データベース901は、1人目の被測定者1の左耳に関する第1の特性データHls_
DB1、Hro_DB1と、第2の特性データECTFL_DB1を1セットにして記憶
する。同様に、データベース901は、N人目の被測定者1の左耳に関する第1の特性デ
ータHls_DBN、Hro_DBNと、第2の特性データECTFL_DBNとを、1
セットとして記憶する。また、データベース901は、1人目の被測定者1の右耳に関す
る第1の特性データHlo_DB1、Hrs_DB1と、第2の特性データECTFR_
DB1を1セットにして記憶する。データベース901は、N人目の被測定者1の右耳に
関する第1の特性データHlo_DBN、Hrs_DBNと、第2の特性データECTF
R_DBNとを1セットとして記憶する。
したがって、1セットは、少なくとも3つの周波数振幅特性を備えている。データベー
ス901は、同じ被測定者1であっても異なる耳の特性データは異なるセットとして格納
する。もちろん、スピーカのチャネル数に応じて、1セットに含まれる第1の特性データ
の数が変化する。また、データベース901は、第1及び第2の特性データを識別情報に
対応付けて記憶してもよい。
さらに、第1の特性データHls_DB、Hlo_DB、Hro_DB、Hrs_DB
は、それぞれ2種類の周波数振幅特性を備えていることが好ましい。例えば、第1の特性
データHls_DB1は、直接音部分の周波数振幅特性と、直接音部分及び反射音部分の
周波数振幅特性を有していることが好ましい。直接音部分及び反射音部分の周波数振幅特
性は、直接音と反射音とを含む時間領域の収音信号をFFTすることで求めることができ
る。直接音部分の周波数振幅特性は、反射音を含まずに直接音のみを含む時間領域の収音
信号をFFTすることで求めることができる。なお、直接音は、音源(スピーカ)から直
接耳(マイク)に到達する音であり、反射音は、音源から壁面などで反射して、耳に到達
する音である。反射音は、直接音の後にマイクに到達する。他の第1の特性データHlo
_DB1、Hro_DB1、Hrs_DB1等についても同様とする。
例えば、図10のように、空間音響伝達特性の測定で、0~4095サンプルの収音信
号を収音している場合について説明する。この場合、0~4095サンプルの収音信号の
全体をフーリエ変換することで直接音及び反射音の周波数振幅特性が得られる。0~40
95サンプルの収音信号から0~X(Xは1以上の整数)サンプルの直接音信号(図10
の点線部分)を切り出して、切り出した直接音信号をフーリエ変換することで、直接音の
周波数振幅特性が得られる。
このように、データベース901において、第1の特性データHls_DB1は、直接
音の周波数振幅特性と、直接音及び反射音の周波数振幅特性とをそれぞれ含んでいること
が好ましい。同様に、第1の特性データHlo_DB1、Hro_DB1、Hrs_DB
1は、直接音部分の周波数振幅特性と、直接音及び反射音部分の周波数振幅特性とをそれ
ぞれ含んでいることが好ましい。もちろん、2~N人目についても同様とする。
図2で示した測定装置200は、頭外定位受聴を行うユーザUに対して外耳道伝達特性
ECTFL、ECTFRを測定する。ユーザUに対する測定結果が外耳道伝達特性取得部
930に入力される。以下、搭乗者となるユーザUに対して測定された外耳道伝達特性E
CTFL、ECTFRを外耳道伝達特性ECTFL_U、外耳道伝達特性ECTFR_U
とする。
フィルタ生成装置900は、外耳道伝達特性ECTFL_Uに対して、フィルタ生成処
理を行う。これにより、フィルタ生成装置900は、ユーザUの左耳に対する空間音響伝
達特性Hls、Hroに関するフィルタ(以下、フィルタF_Hls_U、F_Hro_
Uと称する)をそれぞれ生成する。つまり、フィルタ生成装置900は、外耳道伝達特性
ECTFL_Uに基づいて、2つのフィルタF_Hls_U及びフィルタF_Hro_U
を生成する。このとき、フィルタ生成装置900は、複数の被測定者1の左耳に関するセ
ットのみを参照してもよく、両耳に関するセットを参照してもよい。
同様に、フィルタ生成装置900は、外耳道伝達特性ECTFR_Uに対して、フィル
タ生成処理を行う。これにより、フィルタ生成装置900は、ユーザUの右耳に対する空
間音響伝達特性Hlo、Hrsに関するフィルタ(以下、フィルタF_Hlo_U、F_
Hrs_Uと称する)をそれぞれ生成する。つまり、フィルタ生成装置900は、外耳道
伝達特性ECTFR_Uに基づいて、2つのフィルタF_Hlo_U、F_Hrs_Uを
生成する。このとき、フィルタ生成装置900は、複数の被測定者1の右耳に関するセッ
トのみを参照してもよく、両耳に関するセットを参照してもよい。
なお、フィルタF_Hls_U、F_Hro_Uの処理と、フィルタF_Hlo_U、
F_Hrs_Uの処理は同様である。よって、以下の説明では、外耳道伝達特性ECTF
L_Uに基づいて、フィルタF_Hls_U、F_Hro_Uを生成する処理について説
明する。
第1の選択部902は、データベース901を参照することで、外耳道伝達特性ECT
FL_Uに基づいて、第1のセットを選択する。例えば、第1の選択部902は、第1の
周波数帯域(例えば、1kHz~4kHz)において、外耳道伝達特性ECTFL_Uの
周波数振幅特性を、第2の特性データECTFL_DBと比較する。具体的には、第1の
選択部902は、第2の特性データECTFL_DB1~ECTFL_DBNのそれぞれ
について、外耳道伝達特性ECTFL_Uとの相関値を算出する。第1の選択部902は
、第1の周波数帯域における周波数振幅特性の相関値を求める。そして、第1の選択部9
02は、最も相関値が大きい第2の特性データECTFL_DBk(kは1以上N以下の
任意の整数)を含むセットを選択する。第1の選択部902が選択したセットを第1のセ
ットとする。
第1の取得部903は、データベース901から、第1のセットに含まれる第1の特性
データHls_DBk、Hro_DBkを取得する。第1の取得部903は、直接音部分
の周波数振幅特性を第1の合成部908に出力し、直接音及び反射音部分の周波数振幅特
性を第1の調整部907に出力する。
第2の選択部904は、データベース901を参照することで、外耳道伝達特性ECT
FL_Uに基づいて、第2のセットを選択する。例えば、第2の選択部904は、第2の
周波数帯域(例えば、4kHz~15kHz)において、外耳道伝達特性ECTFL_U
の周波数振幅特性を、第2の特性データECTFL_DBと比較する。第2の選択部90
4は、第2の特性ECTFL_DB1~ECTFL_DB1のそれぞれについて、外耳道
伝達特性ECTFL_Uとの相関値を算出する。第2の選択部904は、第2の周波数帯
域における周波数振幅特性の相関値を求める。そして、第2の選択部904は、最も相関
値が大きい第2の特性データECTFL_DBm(mは1以上N以下の整数)を含むセッ
トを選択する。第2の選択部904が選択したセットを第2のセットとする。
第2の取得部905は、データベース901から、第2のセットに含まれる第1の特性
データHls_DBm、Hro_DBmを取得する。第2の取得部905は、直接音部分
の周波数振幅特性を第1の合成部908に出力し、直接音及び反射音部分の周波数振幅特
性を第1の調整部907に出力する。
第1の調整部907は、第1の特性データHls_DBk、Hro_DBkと、第1の
特性データHls_DBm、Hro_DBmとの振幅レベルを調整するためのゲイン値を
求める。例えば、調整用周波数帯域(200Hz~1kHz)において、第1の特性デー
タHls_DBkと第1の特性データHls_DBmとの間で振幅のレベルが等しくなる
ようなゲイン値を第1の調整部907が求める。そして、一方、または両方の第1の特性
データにゲイン値を乗じることで、第1の特性データの振幅レベルを上下させることがで
きる。具体的には、調整用周波数帯域における離散的な振幅の総和が等しくなるように、
振幅特性にゲイン値(係数)を乗じることで、振幅レベルが調整される。
具体的には、調整用周波数帯域において、第1の特性データHls_DBkの振幅レベ
ルが第1の特性データHls_DBmの振幅レベルよりも高い場合、第1の調整部907
は、第1の特性データHls_DBkの振幅レベルを下げるためのゲイン値を求める。あ
るいは、第1の特性データHls_DBkの振幅レベルが第1の特性データHls_DB
mの振幅レベルよりも高い場合、第1の調整部907は、第1の特性データHls_DB
mの振幅レベルを上げるためのゲイン値を求める。もちろん、第1の調整部907は、両
方の振幅レベルが所定の範囲に含まれるように、2つのゲイン値を算出してもよい。この
場合、第1の特性データHls_DBm、第1の特性データHls_DBkのそれぞれに
ゲイン値が乗じられる。なお、第1の調整部907は、第1の特性データHls_DBk
、Hro_DBkについて、ゲイン値を共通としてもよく、それぞれに異なるゲイン値を
求めてもよい。
上記のように、第1の特性データは、複数の被測定者1に対して行われた測定結果によ
るものである。それぞれの測定において、スピーカの音量やマイク感度が同じとなってい
るとは限らない。さらには、測定環境が異なっていたり、異なるスピーカやマイクが使用
されていたりすることもある。したがって、第1の調整部907は、異なるセットの第1
の特性データの振幅レベルを調整する。例えば、第1の調整部907は2つの周波数振幅
特性のバランスを調整するためのゲイン値を算出する。これにより、異なるセットの第1
の特性データの振幅レベルのバランスを調整することができる。ここでは、直接音及び反
射音の周波数振幅特性において、ゲイン値を算出している。
そして、第1の調整部907は、振幅レベルを調整するためのゲイン値を第1の合成部
908に出力する。第1の合成部908は、第1の特性データにゲイン値を乗じて、レベ
ル調整を行った後、第1の特性データHls_DBkと、第1の特性データHls_DB
mとを合成する。第1の合成部908は、第1の特性データにゲイン値を乗じて、レベル
調整を行った後、第1の特性データHro_DBkと、第1の特性データHro_DBm
とを合成する。
ここでは、第1の合成部908は、直接音を合成する。すなわち、合成する第1の特性
データHls_DBk、Hro_DBk及び第1の特性データHls_DBm、Hro_
DBmは、直接音の周波数振幅特性となっている。第1の合成部908は、第1の周波数
帯域(1kHz~4kHz)における第1の特性データHls_DBmの振幅値を第1の
特性データHls_DBkの振幅値に置き換える。第1の合成部908は、第1の周波数
帯域における第1の特性データHro_DBmの振幅値を第1の特性データHro_DB
kの振幅値に置き換える。第1の合成部908は、置換後の周波数振幅特性を第1の合成
データHls_com1、Hro_com1として、第2の調整部911に出力する。
第1の合成データHls_com1、Hro_com1において、第1の周波数帯域の
振幅値は、第1の特性データHls_DBk、Hro_DBkに基づくものとなっており
、第1の周波数帯域以外の振幅値は、第2の特性データHls_DBm、Hro_DBm
に基づくものとなっている。あるいは、第1の合成データHls_com1、Hro_c
om1において、第2の周波数帯域の振幅値は、第1の特性データHls_DBm、Hr
o_DBmに基づくものとし、第2の周波数帯域以外の振幅値は、第1の特性データHl
s_DBk、Hro_DBkに基づくものとするようにしてもよい。第1の合成部908
は、第1の特性データHls_DBm、Hro_DBmと第1の特性データHls_DB
k、Hro_DBkのバランスを取りながら、すなわち、調整用周波数帯域のレベルが所
定の範囲に含まれるように周波数振幅特性を合成してもよい。
第3の取得部906は、データベース901を参照して、予め設定された第1の特性デ
ータHls_DBps、Hro_DBps(以下、プリセットデータHls_DBps、
Hro_DBpsとする)を取得する。プリセットデータHls_DBps、Hro_D
Bpsは、第1の特性データHls_DB、Hro_DBのうちの、代表的な1人分(1
セット分)のデータである。
ここで、プリセットデータHls_DBps、Hro_DBpsは、左右の位相特性や
振幅レベルのバランスが取れている被測定者1の第1の特性データであることが好ましい
。つまり、プリセットデータHls_DBps、Hlo_DBps、Hro_DBps、
Hrs_DBpsは同一の被測定者1の第1の特性データとなる。さらに、1kHz以下
の周波数振幅特性に大きなディップがない第1の特性データがプリセットデータとして設
定されていることが好ましい。また、100kHzの4つの空間音響伝達特性Hls、H
lo、Hro、Hrsにおいて、100kHz以下の周波数振幅特性が揃っている被測定
者1の第1の特性データをプリセットデータとすることが好ましい。プリセットデータは
、システムの管理者等により予め設定されている。
さらに、プリセットデータの候補を複数セット分用意して、外耳道伝達特性ECTFL
_Uに基づいて、1セット分のプリセットデータを選択してもよい。この場合、プリセッ
トデータの候補となる複数セットの中で、外耳道伝達特性ECTFL_Uとの相関値が最
も高くなる第2の特性データを有する1セットを選択してもよい。
第3の取得部906は、プリセットデータHls_DBps、Hro_DBpsを取得
して、第2の合成部912、及び第2の調整部911に出力する。プリセットデータHl
s_DBps、Hro_DBpsは直接音部分の周波数振幅特性であるが、直接音及び反
射音部分の周波数振幅特性となっていてもよい。
第1の合成データHls_com1、Hro_com1と第1のプリセットデータHl
s_DBps、Hro_DBpsの振幅レベルを調整するためのゲイン値を算出する。第
2の調整部911は、第1の調整部907と同様に、調整用周波数帯域(200Hz~1
kHz)において、第1の合成データHls_com1とプリセットデータHls_DB
psとの間で振幅のレベルが等しくなるようなゲイン値を第2の調整部911が求める。
そして、ゲイン値が第1の合成データ及び第1のプリセットデータの少なくとも一方に乗
じられることで、振幅レベルが調整される。第2の調整部911は、第1の調整部907
と同様の処理を行うため、説明を省略する。
第2の調整部911は、ゲイン値を第2の合成部912に出力する。第2の合成部91
2は、ゲイン値を用いてレベル調整を行った後、第1の合成データHls_com1と、
プリセットデータHls_DBpsとを合成する。第2の合成部912は、ゲイン値を用
いてレベル調整を行った後、第1の合成データHro_com1と、プリセットデータH
ro_DBpsとを合成する。これにより、第2の合成データHro_com2、Hro
_com2が生成される。
第2の合成部912は、直接音を合成する。すなわち、第1の合成データHls_co
m1、Hro_com1及びプリセットデータHls_DBps、Hro_DBpsは、
直接音の周波数振幅特性となっている。第2の合成部912は、第3の周波数帯域(最低
周波数~1kHz)における第1の合成データHls_com1の振幅値をプリセットデ
ータHls_DBpsの振幅値に置き換える。第2の合成部912は、第3の周波数帯域
(最低周波数~1kHz)における第1の合成データHro_com1の振幅値をプリセ
ットデータHro_DBpsの振幅値に置き換える。なお、最低周波数はFFTで得られ
る周波数特性における最も低い周波数であり、例えば、1Hzとなる。
第2の合成データHls_com2、Hro_com2において、第3の周波数帯域(
最低周波数~1kHz)の振幅値は、プリセットデータHls_DBps、Hro_DB
psに基づくものとなっている。第2の合成データHls_com2、Hro_com2
において、第1の周波数帯域(1kHz~4kHz)の振幅値は、第1の特性データHl
s_DBk、Hro_DBkに基づくものとなっている。第2の合成データHls_co
m2、Hro_com2において、第2の周波数帯域(4kHz~15kHz)の振幅値
は、第2の特性データHls_DBm、Hro_DBmに基づくものとなっている。なお
、第1の周波数帯域、第2の周波数帯域、及び第3の周波数帯域以外の第4の周波数帯域
(15kHz~最高周波数)の振幅値は、第2の特性データHls_DBm、Hro_D
Bmに基づくものとすることができるが、プリセットデータHls_DBps、Hro_
DBpsに基づくものとしてもよい。最高周波数はFFTで得られる周波数特性における
最も高い周波数である。ここで、FFTのフレームサイズをframe_sizeとする
と、最も高い周波数は、(FS/frame_size)*(frame_size/2-
1)で求めることができる。また、各周波数帯域における振幅レベルは第1の調整部90
7、又は第2の調整部911で求めたゲイン値で調整されている。よって、適切に周波数
振幅特性を合成することができる。
第2の合成部912は、第2の合成データHls_com2、Hro_com2は生成
部920に出力する。生成部920は、第2の合成データHls_com2、Hro_c
om2に基づいて、フィルタF_Hls_U、F_Hro_Uを生成する。例えば、生成
部920は、第2の合成データHls_com2、Hro_com2を、それぞれ逆フー
リエ変換等することで、時間領域における第2の合成データHls_com2_Time
、Hro_com2_Timeを算出する。なお、逆フーリエ変換において用いられる位
相特性は、第2のセットのものとすることができるが、プリセットデータのものであって
もよい。
これにより、生成部920は、フィルタF_Hls_U、F_Hro_Uの直接音部分
を求めることができる。そして、生成部920は、第2の合成データHls_com2_
TimeにプリセットデータHls_DBpsを合成する。また、生成部920は、第2
の合成データHro_com2_Timeに、プリセットデータHro_DBpsの反射
音部分を合成する。例えば、フィルタF_Hls_U、F_Hro_Uの直接音部分(つ
まり、0~Xサンプル)は、第2の合成データHls_com2_Time、Hro_c
om2_Timeとなっている。反射音部分((X+1)~4095サンプル)は、時間
領域のプリセットデータHls_DBps、Hro_DBpsの反射音部分((X+1)
~4095サンプル)を切り出したものとなっている。なお、フィルタF_Hls_U、
F_Hro_Uの反射音部分は、プリセットデータHls_DBps、Hro_DBps
のものとするが、第2のセットのものとなっていてもよい。なお、プリセットデータにつ
いては、データベース901が、予め時間領域の第1の特性データを格納しておくことが
好ましい。
上記の処理により、フィルタ生成装置900が、フィルタF_Hls_U、F_Hro
_Uを生成することができる。また、同様の処理によって、フィルタ生成装置900は、
フィルタF_Hlo_U、F_Hrs_Uを生成する。これにより、ユーザUが外耳道伝
達特性のみしか測定できない場合であっても、ユーザUに適したフィルタF_Hls_U
、F_Hlo_U、F_Hro_U、F_Hrs_Uを生成することができる。
なお、上記説明における第1~第3の周波数帯域の上限周波数及び下限周波数、信号の
サンプル数、最高周波数、最低周波数の値は、例示的な値であり、特に限定されるもので
はない。また、第1の合成部908と第2の合成部912との処理順は特に限定されるも
のではない。例えば、プリセットデータと第2のセットの第1の特性データとを合成した
後に、第1のセットの第1の特性データを合成してもよい。あるいは、プリセットデータ
と第2のセットの第1の特性データと第1のセットの第1の特性データとをまとめて合成
してもよい。また、周波数領域における振幅値の代わりにパワー値を用いてもよい。
なお、実施の形態2では、頭外定位受聴を行うユーザは、航空機などの乗り物の搭乗者
に限られるものではない。つまり、スマートホンやタブレット端末などのユーザが所有す
るユーザ端末において、頭外定位処理を行う場合に、実施の形態2の処理を適用すること
ができる。従って、識別情報は不要となる。
以上まとめると、実施の形態2に係るフィルタ生成装置900は、外耳道伝達特性取得
部930と、第1の選択部902と、第1の取得部903と、第2の選択部904と、第
2の取得部905と、第3の取得部906と、生成部920と、を備えている。外耳道伝
達特性取得部930は、ユーザが装着したヘッドホン又はイヤホンからマイクまでの外耳
道伝達特性を取得する。第1の選択部902は、スピーカからマイクまでの空間音響伝達
特性に対応する第1の特性データと、外耳道伝達特性に対応する第2の特性データとを1
セットとして、複数セット分を格納するデータベース901を参照することで、ユーザの
外耳道伝達特性の第1の周波数帯域における周波数特性に基づいて、第1のセットを選択
する。第1の取得部903は、第1の選択部で選択された第1のセットに含まれる第2の
特性データを取得する。第2の選択部904は、データベース901を参照することで、
ユーザの外耳道伝達特性の第2の周波数帯域における周波数特性に基づいて、第2のセッ
トを選択する。第2の取得部905は、第2の選択部903で選択された第2のセットに
含まれる第2の特性データを取得する。第3の選択部906は、予め設定されたプリセッ
トデータを取得する。生成部920は、第1のセットの第2の特性データと、第2のセッ
トの第2の特性データと、プリセットデータとに基づいて、ユーザの空間音響伝達特性に
応じたフィルタを生成する。これにより、適切な処理を行うことができるフィルタを生成
することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、5.1chの再生信号を用いて、頭外定位処理を行っている。5.
1chの場合、6個のスピーカがある。つまり、測定装置200の測定環境には、センタ
ースピーカ(正面スピーカ)、右前方スピーカ、左前方スピーカ、右後方スピーカ、左後
方スピーカ、低音サブウーファースピーカが配置されている。従って、図2に示した測定
装置200に、センタースピーカ、左後方スピーカ、右後方スピーカ、サブウーファース
ピーカが追加されている。センタースピーカは、被測定者1の正面前方に配置される。セ
ンタースピーカは、例えば、左前方スピーカと右前方スピーカとの間に配置される。
左前方スピーカから左耳、及び右耳までの空間音響伝達特性を、実施の形態1と同様に
Hls、Hloとする。右前方スピーカから左耳、及び右耳までの空間音響伝達特性を、
実施の形態1と同様にHro、Hrsとする。センタースピーカから左耳及び右耳までの
空間音響伝達特性をCHl、CHrとする。左後方スピーカから左耳及び右耳までの空間
音響伝達特性をSHls、SHloとする。右後方スピーカから左耳、及び右耳までの空
間音響伝達特性を、SHro、SHrsとする。低音出力用のサブウーファースピーカか
ら左耳及び右耳までの空間音響伝達特性をSWHl、SWHrとする。
従って、空間音響伝特性Hls、Hlo、CHl、CHr、Hro、Hrs、SHls
、SHlo、SHro、SHrs、SWHl、SWHrに対応する12個のフィルタを用
いて、畳み込み演算処理が実施される。空間音響伝特性Hls、Hlo、CHl、CHr
、Hro、Hrs、SHls、SHlo、SHro、SHrs、SWHl、SWHrに対
応するフィルタを、F_Hls、F_Hlo、F_CHl、F_CHr、F_Hro、F
_Hrs、F_SHls、F_SHlo、F_SHro、F_SHrs、F_SWHl、
F_SWHrとする。
図11は、本実施の形態にかかる処理装置700の構成を示すブロック図である。処理
装置700は、図2に示す処理装置201に対応するものであり、フィルタを生成する。
さらに、処理装置700は、図1で示したような頭外定位処理を行うものである。ここで
は、処理装置700は、12個のフィルタF_Hls、F_Hlo、F_CHl、F_C
Hr、F_Hro、F_Hrs、F_SHls、F_SHlo、F_SHro、F_SH
rs、F_SWHl、F_SWHrを用いて、畳み込み演算処理を行う。もちろん、実施
の形態1のシステムのように、フィルタを生成する装置と、頭外定位処理を行う装置が異
なる装置となっていてもよい
処理装置700は、音源ファイル701と、測定手段702と、フィルタ生成手段70
3と、畳み込み手段704と、再生手段705と、送受信手段706と、メモリ707と
、センタch用残響除去手段708と、センタch用音量可変手段709と、を備えてい
る。さらに、処理装置700には、セリフ音量制御手段711が接続されている。
測定手段702は、空間音響伝達特性を測定する。測定手段702は、6個のスピーカ
に対して、それぞれインパルス測定を行う。具体的には、図2に示した測定信号生成部2
11のように、各スピーカにインパルス音を出力する。さらに、測定手段702は、収音
信号取得部212のように、マイク2L、2Rからの収音信号を取得する。
フィルタ生成手段703は、フィルタ生成部213と同様に、収音信号に基づいて、フ
ィルタを生成する。ここでは、6個のスピーカ及び2個のマイクを用いて測定が行われて
いるため、12個のフィルタが生成される。メモリ707は、12個のフィルタを格納す
る。なお、送受信手段706は、例えば、図3で示したサーバ端末600にフィルタを送
信してもよい。これにより、データベースにフィルタが格納される。
5.1chの再生信号を再生している場合、ユーザUがセリフ音量を個別に調整するこ
とができるようになっている。つまり、セリフの音声信号を出力するセンタースピーカの
音量のみが独立して調整可能になっている。セリフ音量制御手段711は、ユーザUから
の入力を受け付けて、セリフ音量(センタchの音量)を制御する。例えば、セリフ音量
制御手段711は、音量調整用のボタンやレバーを表示させる。そして、頭外定位受聴結
果に応じて、ユーザUが、セリフ音量を上げたり、下げたりする。セリフ音量制御手段7
11は、セリフ音量を示す音量信号をセンタch用音量可変手段709に出力する。セン
タch用音量可変手段709は可変増幅器を有しており、入力に応じて増幅率を可変する
。音量信号は、例えば音量の大きさを示すVolの数値または音量の増幅率を用いてもよ
い。
センタch用残響除去手段708は、音量信号に基づいて、センタchの残響を削除す
るための処理を行う。ここでは、センタch用残響除去手段708は、センタchのフィ
ルタF_CHl、F_CHrに対して窓掛けを行う。窓掛け後のフィルタをF_WCHl
、F_WCHrとする。
例えば、センタchの音量が閾値以上の場合、センタch用残響除去手段708は、フ
ィルタF_CHl、F_CHrの後半部分のデータをゼロにする窓関数を用いて窓掛けを
行う。このようにすることでノイズを減少することができ、自然な響きを得ることができ
る。また、所定時間までは一定であり、所定時間後、徐々に減少するような窓関数をセン
タch用残響除去手段708が用いてもよい。窓掛け後のフィルタF_WCHl、F_W
CHrを用いることで、セリフ部分の残響を抑制することができる。また、音量が閾値未
満の場合、窓掛けを行わなくてもよいが、便宜上矩形窓を用いて窓掛けを行ったものとす
る。
さらに、セリフ音量に応じて、窓関数を変化させるようにしてもよい。セリフ音量が大
きくなるにつれて、窓の長さが長くなるような窓関数を用いることが可能である。或いは
、セリフ音量が大きくなるにつれて、窓の長さが短くなるような窓関数を用いることも可
能である。
音源ファイル701には、5.1chの再生信号が格納されている。5.1chの再生
信号は、畳み込み手段704に入力される。畳み込み手段704は、6個の再生信号に対
して、12個のフィルタを用いて畳み込み演算処理を行う。
畳み込み手段704は、フィルタF_Hls、F_Hlo、F_WCHl、F_WCH
r、F_Hro、F_Hrs、F_SHls、F_SHlo、F_SHro、F_SHr
s、F_SWHl、F_SWHrを用いて、畳み込み演算を行う。図12は、5.1ch
の再生信号の場合の畳み込み演算とセリフ音量調整を説明するための図である。
左前方chの再生信号をL(t)、センタchの再生信号をC(t)、右前方chの再
生信号をR(t)とする。左後方chの再生信号をSL(t)、右後方チャネルの再生信
号をSR(t)、サブウーファーchの再生信号をLFE(t)とする。そして、それぞ
れの再生信号には、対応するフィルタを畳み込む。例えば、センタchの再生信号C(t
)には、フィルタF_WCHl、F_WCHrがそれぞれ畳み込まれている。
そして、加算器24は、フィルタF_Hls、F_WCHl、F_Hro、F_SHl
s、F_SHro、F_SWHlが畳み込まれた6つの畳み込み信号を加算して、加算信
号HRl(t)を生成する。加算器24は、加算信号HRl(t)をフィルタ部41(図
1参照)に出力する。加算器25は、フィルタF_Hlo、F_WCHr、F_Hrs、
F_SHlo、F_SHrs、F_SWHrが畳み込まれた畳み込み信号を加算して、加
算信号HRr(t)を生成する。加算器25は、加算信号HRr(t)をフィルタ部42
(図1参照)に出力する。再生手段705は、加算信号HRl(t)、HRr(t)にそ
れぞれ逆フィルタLinv,Rinvを畳み込む。そして、逆フィルタが畳み込まれた加
算信号HRl(t)、HRr(t)がヘッドホン43から出力される。
ここで、フィルタF_WCHl、F_WCHrが畳み込まれた畳み込み信号は、可変増
幅器721を介して、加算器24、25に入力されている。セリフ音量制御手段711は
、入力された音量に応じて、可変増幅器721の振幅増幅率を変化させる。これにより、
センタchによるセリフ音量をユーザUの好みに応じて調整することができる。よって、
頭外定位処理をより適切に行うことができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、頭外定位受聴において、頭外定位処理装置100がユーザをよりリ
ラックスさせるための処理を行っている。例えば、頭外定位処理装置100がフィルタの
ダイナミックレンジを圧縮したり、再生信号の供給方法を変更したりすることで、BGM
(Back-Ground Music)のように聴こえる様な処理を行っている。
例1.
例1では、フィルタの高周波数帯域を圧縮することで、フィルタが生成されている。具
体的には、フィルタ生成装置が、測定した空間音響伝達特性のそれぞれに対して、ローパ
スフィルタ(LPF)をかけている。例えば、2kHzをカットオフ周波数とするLPF
をかけた例を図13に示す。図13には、フィルタF_HlsにLPFをかける処理前後
の音圧レベルを示している。LPFをかけたフィルタを用いて頭外定位処理を行うことで
、ユーザUはよりリラックスすることができる。
例2.
例2では、フィルタ生成装置が、各フィルタにおいて、直接音の振幅を変えたものを残
響成分として付加している。具体的には、フィルタ生成装置が、測定された伝達特性の直
接音信号を切り出し、直接音信号の振幅を変えた信号を残響成分として、直接音信号の後
に付加することでフィルタが生成されている。図14は、図10に示した収音信号に対し
て、残響成分を付加した後のフィルタF_Hlsを示すものである。図10では、7個の
残響成分D1~D7が追加されている。それぞれの残響成分は、直接音信号の振幅を個別
に調整したものである。なお、追加する残響成分の数は、特に限定されるものではない。
このようなフィルタを用いて頭外定位処理を行うことで、ユーザUはよりリラックスする
ことができる。
上記処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい
。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-t
ransitory computer readable medium)を用いて格
納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様
々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)
を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルデ
ィスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディス
ク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、
半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)
、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Rando
m Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時
的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readabl
e medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可
読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は
、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュ
ータに供給できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発
明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能
であることは言うまでもない。
U ユーザ
1 被測定者
10 頭外定位処理部
11 畳み込み演算部
12 畳み込み演算部
21 畳み込み演算部
22 畳み込み演算部
24 加算器
25 加算器
41 フィルタ部
42 フィルタ部
43 ヘッドホン
200 測定装置
201 処理装置
211 測定信号生成部
212 収音信号取得部
213 フィルタ生成部
511 座席端末
521 搭乗席

Claims (5)

  1. ユーザが座席に着席する前に、前記ユーザの耳に装着されたマイクを用いて、伝達特性を測定する測定装置と、
    前記伝達特性に応じたフィルタを用いて頭外定位処理を行う頭外定位処理装置と、
    前記ユーザの識別情報に基づいて、前記伝達特性に応じたフィルタを、前記頭外定位処理装置に送信するサーバと、を備えた頭外定位処理システム。
  2. 複数の前記座席と複数の頭外定位処理装置とが対応付けて設置されており、
    前記サーバは前記識別情報を参照して、前記ユーザの座席を特定し、特定した前記座席に対応する前記頭外定位処理装置に、前記フィルタを送信する請求項1に記載の頭外定位処理システム。
  3. 前記ユーザが試聴を行った後に、前記ユーザによる支払いを受け付ける請求項1、又は2に記載の頭外定位処理システム。
  4. 前記ユーザが装着したヘッドホン又はイヤホンから前記マイクまでの外耳道伝達特性を測定し、
    スピーカから前記マイクまでの空間音響伝達特性に対応する第1の特性データと、前記外耳道伝達特性に対応する第2の特性データとを1セットとして、複数セット分を格納するデータベースを参照することで、前記ユーザの前記外耳道伝達特性に基づいて、前記ユーザの前記空間音響伝達特性に応じたフィルタを取得する請求項1~3のいずれか1項に記載の頭外定位処理システム。
  5. ユーザが座席に着席する前に、前記ユーザの耳に装着されたマイクを用いて、伝達特性をするステップと、
    前記ユーザの識別情報に基づいて、前記座席に設置された頭外定位処理装置に前記伝達特性に応じたフィルタを送信するステップと、
    前記頭外定位処理装置が、再生信号に対して前記フィルタを用いた頭外定位処理を行うステップと、
    前記識別情報に対応する前記ユーザに対して、前記頭外定位処理された再生信号をヘッドホン又はイヤホンから出力するステップと、を含む頭外定位処理方法。
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