JP7185874B2 - 抗ウイルス剤としてのラビリントペプチン - Google Patents

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Description

本発明は新規ラビリントペプチン誘導体に関する。これらのラビリントペプチン誘導体は、例えばヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、サイトメガロウイルス(CMV)、デングウイルス(DENV)、チクングニヤウイルス(CHIKV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV;FSMEウイルス)、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、ジカウイルス(ZIKV)、および/またはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって引き起こされる感染症などの感染症の治療に有用である。前記ラビリントペプチン誘導体はまた、ラビリントペプチンの作用機序を分析するのにも有用である。また、感染症、特にRSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染によって引き起こされる感染症を治療する際の使用のためのラビリントペプチンも本発明によって包含される。本発明はさらに、例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVの感染によって引き起こされる感染症を治療するための医薬としての使用のためのラビリントペプチンA1とA2の組み合わせ物に関する。
ランチビオティックは、ブドウ球菌、乳酸菌および放線菌などの細菌からリボゾームにより合成されるペプチドである。ランチビオティックの共通の構造的特徴は、このペプチドに構造的安定性を付与する非標準アミノ酸ランチオニンである。ラビリントペプチンは、新種の炭素環式ランチビオティックであり、1988年にアクチノマヅラ・ナミビエンシス(Actinomadura namibiensis)で同定された(Drug Discovery from Natural Products, Kap. 3, S. 49ff)。それらは、ラビオニンと称される独特な炭素環式の翻訳後修飾アミノ酸を有する、新型のランチビオティックの代表である。ラビオニンの化学構造は図1(B)に示される。
ラビリントペプチンの構造は、2008年に発表された(WO2008/040469およびMeindl, 2010, Angew. Chem. Int. Ed. 49, 1151-1154)。ラビリントペプチン、特にラビリントペプチンA1(LabA1またはLabyA1とも呼ばれる)およびラビリントペプチンA2(LabA2またはLabyA2とも呼ばれる)はいくつかの興味深い生物学的活性を有する。例えば、LabyA2は、マウスモデルにおいて神経因性疼痛に対して素晴らしい有効性を示す。LabyA1は、最近、インビトロにおいてμモル以下の濃度にてHIVおよびHSVの両方を阻害することが示された(Ferir, 2013, PLOS one, 8(5):e64010)。その化合物は、ウイルスエンベロープと相互作用することによってウイルスの侵入を妨げること、および細胞間伝播を予防することが示唆された(Meyerhans, 2015, Nat. Prod. Rep., 2015, 32, 29-48)。LabyA1は、耐性HIVおよびHSVウイルスに対して有効であるが、それは末梢血単核細胞(PBMCs)における炎症反応を引き起こさない。また、デングウイルス(DENV)に対するLabyA1の抗ウイルス活性も記載された(Dominique Schols, HVBD meeting 2013)。ラビリントペプチンの作用機序を特定することは、これらの分子で治療されるさらなる(感染性)疾患の識別への道を開く可能性がある。
それでも、ウイルス感染は、毎年数百万人を死に追いやる世界的な問題である。例えば、北米および欧州の人口の1~3%、および赤道アフリカのいくつかの地域の人口の最大50%がカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、ヒトヘルペスウイルス8、HHV8、またはKS病原体)に感染するか、または感染した。加えて、台湾の乳癌患者の約4%がKSHV感染していることが示された。
ヒトサイトメガロウイルス(CMV、HCMVとも呼ばれる)は、あらゆる地理的位置および社会経済的集団にわたって見られ、工業国において成人の60%~70%、そして新興国においてほぼ100%が感染する。CMV感染症は健康な人々では典型的に気付かないが、例えばHIV感染者、臓器移植受容者、または新生児などの免疫的無防備状態では命にかかわることもある。感染後に、CMVは一生を通じて体内で潜伏状態を維持するので、いつでも再活性化できる。最終的に、それは粘膜表皮癌、そしてもしかすると前立腺癌などの他の悪性腫瘍を引き起こす可能性がある。
デングウイルス(DENV)は、自己制限性デング熱(DF)から出血性デング熱(DHF)またはデング熱ショック症候群(DSS)と呼ばれる命にかかわる症候群まで、ヒトに広範囲に及ぶ疾患を引き起こす。現在、利用可能なDENVに対するヒトワクチンは存在しない。
さらに、ランセット(2015)および疾病対策センター(CDC)は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV、hRSVとも呼ばれる)が5歳未満の小児の罹患率および死亡率の主な原因であり、そして、高齢および免疫不全状態の患者の重大な問題であることを公表している。約70%の小児が、彼らの最初の誕生日以前に感染している。年齢が2歳の時点で、ほとんどすべての小児がRSウイルス感染した。しかしながら、死亡率は比較的低く、リスクのある2歳未満の小児にとって、RSVが危険を伴うのは、より年長の患者にとっても同様である。実際には、CDCよると、約14,000人の主に年配の患者が2014年にRSウイルス感染のため米国で死亡した。現在、下部気道(下部気道感染症、LRTI)のRSウイルス感染に対して効果的な治療がない。RSVの季節的な予防治療またはRSウイルス感染の予防のために承認されたいくつかの薬剤がある。しかしながら、これらのいくつかの薬物が重大な副作用を有する。
チクングニヤウイルス(CHIKV)は、アエデス蚊が刺すことによって伝播される病原性RNAウイルスである。それは、発熱、多発性関節痛、皮疹を引き起こし、通常、短い兆候期間の後に取り除かれる。しかしながら、症状の慢性化は、症状のある患者の一部に現れ、そして、障害、疲労感、および鬱病を併発した有痛性かつ消耗性の、炎症性関節痛を引き起こした。最近、かつ、進行中の大発生は、グローバル化によって促進され、かつ、拡大された媒介生物の使用が科学的および公共の健康意識を高めた。特異的な抗ウイルス治療がなく、また利用可能な保護的ワクチンも存在しない。
ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)は、ダニ媒介性脳炎(TBE)に関連するウイルスである。TBEは、中枢神経系におけるウイルス感染症である。この疾患はほとんどの場合髄膜炎、脳炎、または髄膜脳炎として表れる。TBEは、神経障害として認識されるのが最も一般的であるが、軽い発熱が起こることもある。持続的もしくは永続的な神経精神病学の後遺症は、感染患者の10~20%で観察される。報告症例数はほとんどの国で増加している。この疾患はいったん発症すると不治であるので、TBEに特異的な薬剤治療法は存在しない。症候性脳損傷は、症候群の重症度に基づく入院と対症療法を必要とする。
ジカ-ウイルス(ZIKV)はジカ熱を引き起こす。ジカ-ウイルスは、非分節型の、1本鎖のポジティブセンスRNAゲノムを有し、そして、アエデス蚊によって伝染される。ジカウイルスは、デング熱、黄熱、日本脳炎、および西ナイルウイルスに関連する。ジカ熱(ジカウイルス感染症としても知られている)は、無症状であることも多いが、症状を呈するときは、その症状は通常、軽症であり、デング熱に類似していることがある。症状としては、発熱、眼の充血、関節痛、頭痛、および斑状丘疹状皮疹が挙げられる。しかしながら、妊娠中の女性における感染はまた、新生児を感染させることもあるので、流産や小頭症につながった。ジカ熱に対する有効なワクチンは存在しない。
水泡性口内炎ウイルス(VSV)は、昆虫、ウシ、ウマ、およびブタに感染する病原性RNAウイルスである。VSVはヒトではインフルエンザ様症状を引き起こす動物原性感染症である。そのウイルスは昆虫によって伝播される。利用可能な特定の治療が存在しない。
C型肝炎ウイルス(HCV)は、主に肝臓を侵す感染症であるC型肝炎を引き起こす。ウイルスは、最初に感染したものの約75%~85%で肝臓に存在する。慢性HCV感染は、肝臓疾患、および時折、肝臓硬変症につながることが多い。肝臓硬変症は、肝不全、肝臓癌、または食道および胃静脈瘤の発症の原因となり得る。世界的に、13000~15000万人が、慢性C型肝炎感染症に罹患している("Hepatitis C Fact sheet N°164", WHO, July 2015, Retrieved 4 February 2016)。現在のところ、C型肝炎に対する利用可能なワクチンは存在しない。
よって、特にKSHV、CMV、RSV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVの感染から生じる感染症の治療および/または予防のために、さらなる抗ウイルス薬剤を見つける必要がある。加えて、ラビリントペプチンの作用機序を解く新規手段および方法もまた必要である。
よって、本発明の基礎となる技術的問題は、ウイルス感染の治療および/または予防のため、特にKSHV、CMV、RSV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVの感染の治療および/または予防のための手段と方法の規定;ならびにラビリントペプチンの作用機序を分析するための手段と方法の規定である。
その技術的問題は、特許請求の範囲で特徴づけた実施形態の規定によって解決される。
従って、本発明は、以下のアミノ酸配列:
Figure 0007185874000001
{式中、
Labは、ラビオニンであり;
は、Asn、Asp、およびGluから選択されるアミノ酸であり;
は、Ala、Trp、およびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;
は、GluおよびAspから選択されるアミノ酸であり;
は、ThrおよびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、GlyおよびProから選択されるアミノ酸であり;
は、3~5個のアミノ酸から成る配列から成り;
は、H、(C-C12)アルキニル、C(O)-(C-C12)アルキニル、C(O)-O-(C-C12)アルキニル、およびC(O)NH-(C-C12)アルキニルから選択され;ここで、Rは、末端位置にアルキニル基を担持し;
は、H、[C(O)]-NH-(C-C12)アルキニルまたは[C(O)]-O-(C-C12)アルキニルから選択される;ここで、部分[C(O)]は末端アミノ酸のカルボニル基であり;ここで、Rは、末端位置にアルキニル基を担持し;ここで、RがHであれば、RはHでない}を含むかまたはそれらから成るペプチド(すなわち、ラビリントペプチン誘導体)に関する。
本明細書中で以下に、および添付の実施例に記録されるように、例えば抗ウイルス薬剤またはマーカー分子などの化合物を用いてさらに誘導体化され得るラビリントペプチン誘導体が得られたので、本発明は上記同定された技術的問題を解決する。これらのラビリントペプチン誘導体は、(例えば、抗ウイルス薬剤への連結によって)より効果的な抗ウイルス治療を可能にし、また、(例えば、マーカー分子への連結によって)ラビリントペプチンの作用機序のより詳細な分析も可能にする。以上に触れたように、ラビリントペプチンの作用機序を理解すると、さらなる有効な抗ウイルス薬剤の開発への道が開かれる。
本発明のラビリントペプチン誘導体は、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対して、好ましくはDENVに対して抗ウイルス活性がある。
例えばラビリントペプチンなどの化合物の抗ウイルス活性を試験するためのアッセイは、当該技術分野で一般的に知られている。例えば、本発明のラビリントペプチン誘導体の抗ウイルス活性について試験するために、ラビリントペプチン誘導体を細胞(例えば、Huh-7.5細胞)に追加してもよい。次に、細胞は、試験されるべきウイルス(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、好ましくはDENV)に感染させてもよい。ウイルス陽性細胞の量は免疫細胞化学によって評価され得る。例えば、ウイルスに対する一次抗体、および結合したフルオロフォアを有する二次抗体が適用されてもよい。全細胞の数は、DAPI染色核をカウントすることによって決定され得る。よって、ウイルス陽性細胞のパーセンテージが算出され得る。得られた結果は好ましくは非感染細胞と比較される。
より詳細には、ラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体またはラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の組み合わせ物の抗ウイルス活性を試験するために、Huh-7.5細胞(例えば、1ウェルあたり3×〔10〕^4)は感染の1日前に、完全成長培地中、黒色の96ウェル光学底面プレート[Nunc]内に播種されてもよい。PBSで洗浄した後に、40μlのアッセイ培地(5%のFBS)が、本発明のラビリントペプチン、本発明のラビリントペプチン誘導体(終濃度50、16.7、5.56、1.85、0.62、0.21、0.069μg/ml)またはラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の組み合わせ物(それぞれ25、8.3、2.8、0.93、0.31、0.10、0.034μg/ml)を含む細胞に追加されてもよい。治療は、好ましくは二連でおこなわれる。PBSは対照としての役割を果たす。30分間のインキュベーション後に、細胞に0.5のMOIにてウイルスを感染させて、60μl/ウェルの終量を得てもよい。(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、好ましくはDENV、例えば、DENV、2型 ニューギニアC株)。室温にて2時間のインキュベーション後、細胞はPBSで洗浄され、そして、100μlのアッセイ培地がウェルごとに加えられ得る。感染細胞は、さらに48時間インキュベートされ得る。以降、ウェルから培地が取り出され、そして、4%のPFAで細胞が固定され得る。固定化細胞は、PBSで広範囲に洗浄され、そして、0.25%のTritonX-100で5分間、透過処理され得る。PBS中の5% FBSでのブロッキング後に、ウイルスに対する一次抗体が、2時間適用され得る(例えば、抗デング熱ウイルスE糖タンパク質抗体[DE1](ab41349)[Abcam]、5%のFBS/PBS中、1:100希釈)。洗浄後、二次抗体(例えば、Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗マウスIgG(H+L)[Life Technologies]、5%のFBS/PBS中、1:1000希釈)が1時間適用され得る。最後に、細胞はDAPI(PBS中、500ng/ml)で5分間染色され得る。
蛍光細胞は、自動化顕微鏡ImageXpressMicro[Molecular Devices]およびMetaXpressソフトウェアを使用した高精細画像化によって分析できる。励起波長は360nm(DAPI)および485nm(Alexa Fluor488)に設定され得、そして、発光波長は460nm(DAPI)および516nm(Alexa Fluor488)に設定され得る。6つの部位/ウェルの画像が取得され得る(2列、89μm間隔、3行、67μm間隔)。全細胞/部位の数は、DAPI染色核を自動的にカウントすることによって測定され得る。ウイルス陽性細胞(例えば、DENV陽性細胞)のパーセンテージは、総細胞数に対するAlexa Fluor 488陽性細胞数を自動的に評価することによって計算され得る。6つの部位から得られた値は、平均化され、そして、片対数X/Yチャートにプロットされ得る。IC50値は非線形回帰によって計算され得る。
先に記載のとおり、本発明のラビリントペプチン誘導体において、RまたはRがアルキニルである場合、その時、アルキニル基が末端の位置にある。先に記載したように、Rが尿素誘導体(すなわち、C(O)NH-(C-C12)アルキニル)であってもよく、および/またはRがアミド(すなわち、[C(O)]-NH-(C-C12)アルキニル)またはエステル(すなわち、[C(O)]-O-(C-C12)アルキニル)であってもよい。好ましくは、RはHであり、そして、Rは、Rについて先に言及したアルキニル化合物のうちの1つを担持する。よって、好ましくは、RはHであり、そして、Rは、(C-C12)アルキニル、C(O)-(C-C12)アルキニル、C(O)-O-(C-C12)アルキニル、およびC(O)NH-(C-C12)アルキニルから成る群から選択されるアルキニル化合物である。より好ましくは、RはHであり、そして、Rは、C(O)-(C-C12)アルキニルである。最も好ましくは、RはHであり、そして、Rはヘキサ-5イノイルである。言及されるように、Rがアルキニルである場合、その時、アルキニル基が末端の位置にある。
本発明のラビリントペプチン誘導体には、末端アルキン群(すなわち、アルキニル基)がある。よって、本発明のラビリントペプチン誘導体は、双極子環付加によって、特に「アジド-アルキンヒュスゲン環付加」(Huisgen, 1961, Proceedings of the Chemical Society of London, 357)によってアジドでさらに誘導体化され得る。よって、本発明は、本発明のラビリントペプチン誘導体に関し、ここで、Rおよび/またはRは、アジド標識化合物によって誘導体化される。前記化合物は、抗ウイルス薬剤またはマーカー分子から選択される化合物であってもよい。
先に記載したラビリントペプチン誘導体に連結される抗ウイルス薬剤は、ラビリントペプチン誘導体の抗ウイルス活性をさらに促進し得る。例えば、アジド標識化合物の化合物として使用され得る好適な抗ウイルス薬剤は、アシクロビル、ペンシクロビル、ジドブジン、ブリブジン、シドホビル、HDVD(L-ジオキソランウラシル誘導体)、イドクスウリジン、ファムシクロビル、ソリブジン、バラシクロビル、シドホビル、ブリンシドホビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、マリバビル、CMVIG、レテルモビル、レフルノミド(関節リウマチにおいて病態修飾剤として使用される、代謝拮抗剤はまた、CMV疾患治療および予防の両方で首尾よく承認適応症外使用された)、RSV604(Challa, 2015, Antimicrob Agents Chemother 59(2): 1080-7)、ALS-8176(Challa, 2015, Antimicrob Agents Chemother 59(2): 1080-7)、GS-5806(Gilead(登録商標))、または低分子阻害剤(DeVincenzo, 2014, Proc Natl Acad Sci U S A 107(19): 8800-5.)である。抗ウイルス薬剤はまた、NITD-008またはバラピラビルであってもよい。
本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体にマーカー分子を連結することによって(双極子環付加)、ラビリントペプチンの作用機序が分析され得る。例えば、ラビリントペプチン誘導体をマーカー分子に連結することによって、感染細胞内のラビリントペプチンの位置、および/またはラビリントペプチンとウイルス粒子との相互作用が、分析され得る。そのため、蛍光顕微鏡法、化学蛍光顕微鏡法、化学発光顕微鏡法、電子顕微鏡法、核磁気共鳴ベースのシステムまたは放射性同位元素ベースのシステムなどの画像分析法が使用され得る。
アジド標識化合物の化合物として使用され得る好適なマーカー分子は、次に記載のものである。特に、本明細書中における用語「(単数もしくは複数の)マーカー分子」または「(単数もしくは複数の)マーカー」は、互換的に使用され、検出可能なシグナルを、好ましくは直接的または間接的に生じさせることができる標識またはマーカーを指す。例えば、マーカー分子は、放射性同位元素、フルオロフォアまたは化学発光(発色団)化合物、酵素、造影剤、磁気または常磁性標識、または金属イオンであってもよい。「(単数もしくは複数の)マーカー分子」という用語はフルオロフォアを含む。「フルオロフォア」という用語は、ジメチルアミノクマリン誘導体、好ましくは7-ジメチルアミノクマリン-4-酢酸スクシンイミジルエステル、ダンシル、5/6-カルボキシフルオレセインおよびテトラメチルローダミン、BODIPY-493/503、BODIPY-FL、BODIPY-TMR、BODIPY-TMR-X、BODIPY-TR-X、BODIPY630/550-X、BODIPY-650/665-X、Alexa350、Alexa488、Alexa532、Alexa546、Alexa555、Alexa635、Alexa647、Cyanine3(Cy3)、Cyanine3B(Cy3B)、Cyanine5(Cy5)、Cyanine5.5(Cy5.5)、Cyanine7(Cy7)、Cyanine7.5(Cy7.5)、Atto488、Atto532、Atto600、Atto655、DY-505、DY-547、DY-632、DY-647;蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)および異なった吸収/発光特性を有するGFPの修飾形など、から成る群から選択される化合物を含む。本明細書中における「マーカー分子」はまた、これらの錯体が蛍光ナノ結晶(量子ドット)として使用されるので、特定の稀土類金属(例えば、ユーロピウム、サマリウム、テルビウムまたはジスプロシウム)の錯体であってもよい。より好ましくは、「マーカー分子」は、ジメチルアミノクマリン誘導体、好ましくは7-ジメチルアミノクマリン-4-酢酸スクシンイミジルエステル、ダンシル、5/6-カルボキシフルオレセインおよびテトラメチルローダミン、BODIPY-493/503、BODIPY-FL、BODIPY-TMR、BODIPY-TMR-X、BODIPY-TR-X、BODIPY630/550-X、BODIPY-650/665-X、Alexa350、Alexa488、Alexa532、Alexa546、Alexa555、Alexa635、Alexa647、Cyanine3(Cy3)、Cyanine3B(Cy3B)、Cyanine5(Cy5)、Cyanine5.5(Cy5.5)、Cyanine7(Cy7)、Cyanine7.5(Cy7.5)、Atto488、Atto532、Atto600、Atto655、DY-505、DY-547、DY-632、およびDY-647から成る群から選択されるフルオロフォアである。光学画像化部分の好ましい例は、カルバシアニン、オキサシアニン、チアシアニン、およびアザシアニンから成る群以外のシアニン色素である。シアニン色素は、いずれかの末端で終端となった、単独および複数の、好ましくは二重の炭素-炭素結合を、その一方が四級化されたアミノ基によって交替することによって連結された、奇数の炭素原子を含むポリエン鎖によって規定された化合物である。シアニンおよび類似体アリール-リンカー-アリール発色団は、ペンダントまたは融合環置換基を任意選択で担持する。シアニン色素は、広範囲のスペクトル特性および利用可能な構造的な変化のため特に有用である。さまざまなシアニン色素が周知であり、かつ、試験されて、それらは、低毒性を有し、かつ、市販されている。シアニン色素は、良好な水溶解度を有する非常に強い色素の単独ファミリーである。それらは、pH3~10の間でpH無反応であり、低い非特異的結合を示し、およびフルオレセインより光安定性である。
本明細書中、アジド標識化合物に使用される「マーカー分子」はまた、放射性マーカーであってもよい。診断放射性医薬品に好適な放射性同位元素の例は以下に示される。陽電子断層撮影(PET)のために使用できる放射性同位元素は、例えば、18F、11C、64Cu、13N、15O、または68Gaである。γ線/光子(SPECT/シンチグラフィ)に使用できる放射性同位元素の例は、例えば99mTc、123I、125I、131I、111In、57Co、153Sm、133Xe、51Cr、81mKr、201Tl、67Ga、または75Seである。質量サイトメトリのために、金属ベースのマーカーが使用され得る。放射性同位元素マーカー(特に先に記載した金属)は、例えば、金属キレート剤(例えば、DOTAまたはNOGADA部分)を使用することによって停止を含むアジドに取り付けられる場合がある。
本発明との関連において、アジド標識化合物の「化合物」はまた、抗体、例えば本発明のラビリントペプチン誘導体を特定の細胞、組織または臓器に誘導する抗体でもあり得る。例えば、その抗体は、ラビリントペプチン誘導体を肝臓に(例えば、肝細胞に)誘導する。DENV感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を免疫系の細胞に(例えば、T細胞またはランゲルハンス樹状細胞に)誘導し得る。ヘルペスウイルスの感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を神経細胞に(例えば、希突起膠細胞またはニューロンに)誘導し得る。RSVの感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を肺に(例えば、肺胞に)誘導し得る。CHIKVの感染の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を、筋肉、関節または神経組織に誘導し得る、例えばTIM-1などの接合因子を指図する。TBEVの感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を中枢神経組織(脳、脊髄)の細胞に誘導し得る。ZIKVの感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を皮下組織、中枢神経系、骨格筋または心筋に誘導し得る。HCVの感染症の治療のために、抗体は、ラビリントペプチン誘導体を肝臓に(例えば、肝細胞に)誘導し得る。
添付の実施例は、アジド標識ビオチンを用いたLabyA1およびLabyA2の誘導体化を示す。よって、本発明の好ましい態様において、アジド標識化合物はアジド標識ビオチンである。
よって、本発明は、ラビリントペプチン誘導体を提供するが、ここで、Rおよび/またはRの末端アルキニル基とアジド標識化合物との間の双極子環付加を介して、前記化合物が付加されて、R1’および/またはR2’を得る。または、言い換えれば、本発明により、化合物は、双極子環付加を介してラビリントペプチン誘導体に付加され得る。この双極子環付加は、Rおよび/またはRの末端のアルキニル基とアジド標識化合物のアジド基との間で起こる。この双極子環付加は、RをR1’に変換し、および/またはRをR2’に変換する。潜在RおよびR、ならびに対応するR1’およびR2’の要約を以下に示す。
先に記載したように、Rは、(C-C12)アルキニル、C(O)-(C-C12)アルキニル、C(O)-O-(C-C12)アルキニル、またはC(O)NH-(C-C12)アルキニル{式中、Rは末端位置にアルキニル基を担持する}であり得る。先にも記載したように、Rは、[C(O)]-NH-(C-C12)アルキニルまたは[C(O)]-O-(C-C12)アルキニル{式中、[CO]は末端アミノ酸のカルボニル基であり、かつ、式中、Rは末端位置にアルキニル基を担持する}であり得る。
これらのRおよびR基のそれぞれに対応するR1’およびR2’基が以下の表1および2に示されている。
表1:潜在R基と対応するR1’
Figure 0007185874000002
表2:潜在R基と対応するR2’
Figure 0007185874000003
よって、本発明のラビリントペプチン誘導体では、Rおよび/またはRの末端アルキニル基とアジド標識化合物との間の双極子環付加が起こり、化合物(例えば、抗ウイルス薬剤またはマーカー分子)がRおよび/またはRに結合するトリアゾールを得てもよかった。前記化合物は、先に記載したように、抗ウイルス薬剤またはマーカー分子のいずれであってもよい。よって、本発明はラビリントペプチン誘導体(例えば、LabyA1またはLabyA2の誘導体)に関し、そしてそれは、抗ウイルス薬剤またはマーカー分子を含む。または、言い換えれば、本発明は、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体に関し、そしてそれは、Rの代わりにR1’、および/またはRの代わりにR2’を含む。好ましくは、前記ラビリントペプチン誘導体は、Rの代わりにR1’を含み、かつ、RはHである。
添付の実施例は、本発明のラビリントペプチン誘導体には、例えば、DENV感染症に対して抗ウイルス活性があることを実証する。よって、本発明の一態様は、医薬としての使用のための本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体に関する。本発明のラビリントペプチン誘導体を含む医薬組成物もまた、本発明に包含され、ここで、その医薬組成物は医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤をさらに含む。本発明はさらに、感染症、特にウイルス感染を治療および/または予防する際の使用のための、本発明のラビリントペプチン誘導体または本発明の医薬組成物に関する。
よって、本発明のラビリントペプチン誘導体または医薬組成物は、現在存在しているウイルス感染の治療またはウイルス浸潤の出現の予防の両方に使用できる。本発明のラビリントペプチン誘導体または本発明の医薬組成物が現在存在しているウイルス感染を治療するのに使用されることが、本明細書において好ましい。前記ウイルス感染は、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つ、好ましくはDENVの感染であり得る。前記感染症(すなわち、前記感染性疾患)はまた、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択される少なくとも2つのウイルスの感染症の組み合わせが原因となってもよい。
従って、本発明は、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つ、好ましくはDENVの感染を治療および/または予防する方法に関し、ここで、その方法は、斯かる治療を必要としている対象に本発明のラビリントペプチン誘導体または前記ラビリントペプチン誘導体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。
例えば、本発明の一態様は、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSVおよびZIKVから選択されるウイルスのいずれか1つ、好ましくはDENVの感染を治療および/または予防する方法に関し、ここで、その方法は、斯かる治療を必要としている対象に本発明のラビリントペプチン誘導体または前記ラビリントペプチン誘導体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。
本明細書中の「ウイルス感染」または「ウイルスの感染」は感染症を意味し、そしてそれは、ウイルスの感染が原因である。
LabyA1およびLabyA2の抗ウイルス活性は従来技術により示された。特に、マイコウイルス(RNAウイルス/インフルエンザA型)、単純ヘルペスウイルス1および2、アデノウイルス(DNAウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、およびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)に対するこれらの物質の抗ウイルスの活性が示された(WO2008/040469A1;Ferir, 2013, PLOS one, 8(5):e64010;およびMeyerhans, 2015, Nat. Prod. Rep., 2015, 32, 29-48)。加えて、先に記載したように、HIVおよびDENVに対するLabyA1の活性は当該技術分野で知られている。しかしながら、従来技術はまた、ラビリントペプチンの抗ウイルス作用が、高度にウイルス特異的であることも開示する。特に、Ferirら(2013, PLOS one, 8(5):e64010)は、インフルエンザウイルスH、N、H、およびインフルエンザBウイルスに対して抗ウイルス活性を示したものは、試験したランチビオティックになかったことを開示する。加えて、この文書は、LabyA1がウイルス自身と相互作用し、CD4T細胞と相互作用していないことを実証するデータを示す。これらのデータは、ラビリントペプチンが特定の選択されたウイルス種と特異的かつ直接的な相互作用によって作用することを示唆する。対照的に、本発明との関連において、驚いたことに、LabyA1およびLabyA2がCMV、KSHV、RSV、TBEV、ZIKV、およびHCVに対して非常に高い抗ウイルス活性を有し、ならびにLabyA1にまた、CHIKVおよびVSVに対しても非常に高い抗ウイルス活性を有することがわかった。これらのウイルスは、従来技術により活性が示されているすべてのウイルスと完全に異なっている。RSVは、LabyA1またはLabyA2の活性が従来技術により示されているすべてのウイルスとは全く関係ないパラミクソウイルスのウイルスのファミリーに属する。CHIKVは、トガウイルスのファミリーに属し;VSVはラブドウイルスのファミリーに属し;そして、HCVはフラビウイルスのファミリーに属する。これらのファミリーもまた、ラビリントペプチンの活性が従来技術により示されているウイルスと全く関係がない。(それに関するLabyA1およびLabyA2の抗ウイルス活性が既に実証された)HSVと同じく、KSHVおよびCMVはヘルペスウイルスのファミリーの代表である。しかしながら、KSHVおよびCMVは、異なる生物学的および病態生理学的な特性を有する。HSVは、そのメンバーが向神経性(神経系組織に感染する)であり、かつ、短い増殖周期(~18時間)を有するアルファヘルペスウイルス亜科のサブファミリーに属する。それらの一次標的細胞は、粘膜上皮細胞である。それらはニューロンで存続し得る。対照的に、KSHVおよびCMVは、それぞれガンマヘルペスウイルス亜科およびベータヘルペスウイルス亜科のサブファミリーに属する。ベータヘルペスウイルス亜科は、リンパ球向性であり、かつ、長い増殖周期を有する。それらは、制限された寄生範囲を有するので、感染細胞は拡大されるようになる(サイトメガロ)。アルファヘルペスウイルス亜科と比較して、それらは、ニューロンではなく、白血球におけるそれらの潜伏を確立する。ガンマヘルペスウイルス亜科もまた、リンパ球向性であって、TまたはBリンパ球のいずれかに特異的である。ガンマヘルペスウイルス亜科およびベータヘルペスウイルス亜科は両方とも発癌性であり得るが、それに対して、アルファヘルペスウイルス亜科は発癌性ではない。ラビリントペプチンは、高度に特異的な作用機序を有すると記述されている。そのため、LabyA1およびLabyA2が、ラビリントペプチンの抗ウイルス活性が当該技術分野で記載されていたウイルスと比較して、完全に異なる、選択ウイルスに対して抗ウイルス作用を有するという知見は、完全に予想されていない。
よって、本発明の別の態様は、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防における使用のためのペプチド(すなわち、ラビリントペプチン)に関し、ここで、前記ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
Figure 0007185874000004
{式中、
Labは、ラビオニンであり;
は、Asn、Asp、およびGluから選択されるアミノ酸であり;
は、Ala、Trp、およびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;
は、GluおよびAspから選択されるアミノ酸であり;
は、ThrおよびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、GlyおよびProから選択されるアミノ酸であり;
は、3~5個のアミノ酸から成る配列から成る}を含むか、またはそれらから成る。
本発明のラビリントペプチンには、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対する(例えば、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、および/またはZIKVに対する)、好ましくはRSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、ZIKV、および/またはHCVに対する;より一層好ましくはRSV、KSHV、CMV、ZIKV、および/またはHCVに対する;より一層好ましくはKSHV、CMV、ZIKV、および/またはHCVに対する;より一層好ましくはCMV、および/またはHCVに対する;そして、最も好ましくはCMVに対する、抗ウイルス活性がある。
アミノ酸ラビオニン(または、ラビオニン)、ならびにラビリントペプチンにおけるそれらの出現もまた、当該技術分野で公知であり、そして、例えば、Habich, Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49: 1151-1154.に記載されている。特に、ラビオニンは、ランチオニンとの類似において、実際には3つの残基にわたるアミノ酸である(図1を参照)。C-α原子は架橋に伸びている。ラビオニンの構造は図1に示されている。
本発明の別の態様は、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する際の使用のための、本発明のラビリントペプチンを含む医薬組成物に関し、ここで、医薬組成物は、医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤をさらに含む。よって、本発明は、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する方法に関し、ここで、その方法は、斯かる治療を必要とする対象に、本発明のラビリントペプチンまたは前記ラビリントペプチンを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。前記ラビリントペプチンまたは前記医薬組成物は、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つのウイルス感染によって引き起こされる現在存在している感染症を治療するか、またはRSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択される少なくとも2つのウイルスの感染症の組み合わせによって引き起こされる現在存在しているウイルス浸潤を治療するのに使用されることが、本明細書では好ましい。
好ましくは、医薬組成物または治療法が、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVから選択される(例えば、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、および/またはZIKVから選択される)、より好ましくはRSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、ZIKV、および/またはHCV;より一層好ましくはRSV、KSHV、CMV、ZIKV、および/またはHCVから選択される;より一層好ましくはKSHV、CMV、ZIKV、および/またはHCVから選択される;より一層好ましくはCMVおよび/またはHCVから選択される;そして、最も好ましくはCMVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染症を治療および/または予防するのに使用される。
本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体は、最大50個のアミノ酸、より好ましくは最大40個のアミノ酸、より一層好ましくは最大30個のアミノ酸の長さを有し得る。よって、本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、前記ラビリントペプチン誘導体を含む医薬組成物、または本明細書中に示した方法に関し、ここで、前記ペプチド(すなわち、前記ラビリントペプチン誘導体)は最大30個のアミノ酸の長さを有する。類似して、本発明は、本明細書中に示したラビリントペプチン、前記ラビリントペプチンを含む本明細書中に示した医薬組成物、または本明細書中に示した方法に関し、ここで、前記ペプチド(すなわち、前記ラビリントペプチン)は最大30個のアミノ酸の長さを有する。本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体が最大25個のアミノ酸の長さを有することが、より一層好ましい。最も好ましくは、本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体は18~20個のアミノ酸を有する。
前述のように、それぞれ、配列番号1および2に示される本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体において、Xは3~5個のアミノ酸の配列から成る。例えば、Xは以下に示したアミノ酸配列X8-1~X8-5
8-1は、不存在であるか、またはTrpまたはTyrから選択されるアミノ酸であり;
8-2は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
8-3は、不存在であるか、またはProおよびGlyから選択されるアミノ酸であり;
8-4は、Phe、Met、Leu、およびTyrから選択されるアミノ酸であり;および
8-5は、デヒドロブチリン、Ala、Thr、Asn、およびSerから選択されるアミノ酸である、から成り得る。
デヒドロブチリン(Dhb)(ジデヒドロブチリンとも呼ばれる)は、ランチビオティックファミリーの抗微生物性ペプチドを含むペプチドの範囲内に存在する天然のアミノ酸である。実際は、ペプチド鎖へのデヒドロブチリンの部位選択的導入は、β脱離がそのあとに続くリン酸化によってトレオニン残基が脱水される、酵素的翻訳後修飾により生じる。LabyA1内に存在するデヒドロブチリンの構造は、図2に示されている。
本明細書中に示したラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体に関する例では、Xはアミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成る。あるいは、Xは、アミノ酸配列Leu-Phe-Ala。から成ってもよい。
本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、医薬組成物、または方法に関し、ここで、
は、AsnまたはAspであり;
は、AlaまたはTrpであり;
は、ValまたはLeuであり;
は、Trpであり;
は、Gluであり;
は、Thrであり;
は、Glyであり;および
は、アミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成る、またはアミノ酸配列Leu-Phe-Alaから成るアミノ酸配列である。
本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体に含まれるラビリントペプチンは、LabyA2を含んでも、またはそれらから成ってもよい。よって、本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、本明細書中に示した医薬組成物、または本明細書中に示した方法に関し:ここで、
は、Aspであり;
は、Trpであり;
は、Leuであり;
は、Trpであり;
は、Gluであり;
は、Thrであり;
は、Glyであり;
は、アミノ酸配列Leu-Phe-Alaから成るアミノ酸配列である。
本発明の好ましい態様において、本発明のラビリントペプチンは、例えば、図4に示されているLabyA2である。より好ましくは、本発明のラビリントペプチンは、天然型LabyA2の立体化学を有する、図3(B)に示されているLabyA2である。本発明のラビリントペプチン誘導体は、例えば、図4に示されているLabyA2を含むこともまた好ましい。より好ましくは、本発明のラビリントペプチン誘導体は、天然型のLabyA2の立体化学を有する、図3(B)に示されているLabyA2を含む。
本発明の好ましい態様は、RSV、KSHV、TBEV、VSV、CMV、ZIKV、およびHCVから選択される(例えば、RSV、KSHV、TBEV、VSV、CMV、およびZIKVから選択される)、好ましくは、KSHV、CMV、ZIKV、およびHCVから選択される、より好ましくはCMV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つ、そして、より一層好ましくはHCVであるウイルスの感染を治療および/または予防する際の使用のためのLabyA2に関する。
しかしながら、本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体に含まれるラビリントペプチンはまたは、LabyA1を含むか、またはそれらから成ることが、さらに好ましい。よって、本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、本明細書中に示した医薬組成物、または本明細書中に示した方法に関し、ここで、
は、Asnであり;
は、Alaであり;
は、Valであり;
は、Trpであり;
は、Gluであり;
は、Thrであり;
は、Glyであり;および
は、アミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成るアミノ酸配列である。
本発明のより一層好ましい態様において、本発明のラビリントペプチンは、例えば、図4に示されているLabyA1である。より一層好ましくは、本発明のラビリントペプチンは、天然型のLabyA1の立体化学を有する、図3(A)に示されているLabyA1である。本発明のラビリントペプチン誘導体が、例えば、図4に示されているLabyA1を含むこともまた、さらに好ましい。より一層好ましくは、本発明のラビリントペプチン誘導体は、天然型のLabyA1の立体化学を有する、図3(A)に示されているLabyA1を含む。
本発明の好ましい態様は、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、ZIKV、およびHCVから選択される(例えば、RSV、KSHV、TBEV、CMV、VSV、CHIKV、およびZIKVから選択される)、好ましくはRSV、KSHV、TBEV、CMV、VSV、CHIKV、ZIKV、およびHCVから選択される、より好ましくはKSHV、CMV、CHIKV、ZIKV、およびHCVから選択される、より一層好ましくはCMV、CHIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する際の使用のためのLabyA1に関する。
本発明との関連において、驚いたことに、LabyA1とLabyA2との組み合わせ物の抗ウイルス活性が、個別分子のものより有意に高いことが示された。LabyA1とLabyA2の組み合わせ物の斯かる相乗効果は、従来技術により開示または示唆されたことがない。それとは正反対に、抗HIVの欠如および中程度の抗HSV活性のみのため、更なる抗ウイルス性試験にとって、LabyA2がそれほど魅力的でない候補であると記載された(Ferir, 2013, PLOS one, 8(5):e64010)。しかしながら、本発明との関連において、LabyA1との組み合わせ物において、LabyA2は非常に高い抗ウイルス活性をもたらすことが、驚いたことに、かつ、予想外に見出された。この相乗効果は予見できなかった。
よって、本発明は、医薬としての使用のための少なくとも2つのラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体の組み合わせ物に関する。特に、本発明の一態様は、医薬としての使用のための(i)と(ii)の組み合わせ物に関し、ここで、(i)および(ii)は:
(i)Xが、Asnであり;
が、Alaであり;
が、Valであり;
が、Trpであり;
が、Gluであり;
が、Thrであり;
が、Glyであり;および
が、アミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成るアミノ酸配列である、本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体、ならびに
(ii)Xが、Aspであり;
が、Trpであり;
が、Leuであり;
が、Trpであり;
が、Gluであり;
が、Thrであり;
が、Glyであり;
が、アミノ酸配列Leu-Phe-Alaから成るアミノ酸配列である、本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体、
である。
本発明との関連において、驚いたことに、LabyA1とLabyA2の組み合わせ物の抗ウイルス活性は、LabyA1とLabyA2の比が1:1である場合に増強される場合さえあることが示された。よって、本発明は、本明細書中に示した組み合わせ物に関し、ここで、ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の比(i)、およびラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体(ii)は、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より一層好ましくは2:1~1:2、そして、最も好ましくは1:1である。または、言い換えると、ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の濃度の比(i)、およびラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体(ii)は、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より一層好ましくは2:1~1:2、そして、最も好ましくは1:1であり、ここで、濃度は、例えば、μMで測定される。
例えばラビリントペプチンなどの化合物の抗ウイルス活性を試験するためのアッセイは当該技術分野で一般的に知られている。例えば、本発明の組み合わせ物の抗ウイルス活性について試験するために、その組み合わせ物が、細胞(例えば、Huh-7.5細胞)に添加され得る。次に、その細胞を、試験すべきウイルス(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、HCV、好ましくはDENV、TBEV、および/またはZIKV)に感染させ得る。ウイルス陽性細胞の量は免疫細胞学によって評価され得る。例えば、ウイルスに対する一次抗体と結合フルオロフォアを有する二次抗体が適用され得る。全細胞数は、DAPI染色核をカウントすることによって測定され得る。このようにして、ウイルス陽性細胞のパーセンテージが計算され得る。得られた結果は非感染細胞と比較されることが好ましい。
本発明の別の態様は、本発明の組み合わせ物を含む医薬組成物に関し、ここで、医薬組成物はさらに医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤を含む。本発明の組み合わせ物または前記組み合わせ物を含む医薬組成物が、ウイルス感染を治療および/または予防するのに使用され得る。前記ウイルス感染は、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択される(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、およびZIKVから選択される)、好ましくはDENV、TBEV、およびZIKVから選択されるウイルスのいずれかの感染であり得る。よって、本発明の一態様は、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択される(例えばRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、およびZIKVから選択される;好ましくはDENV、TBEV、およびZIKVから選択される)ウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する方法に関し、ここで、その方法は、斯かる治療を必要としている対象に本発明の組み合わせ物または前記組み合わせ物を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。好ましくは、本発明の組み合わせ物、前記組み合わせ物を含む医薬組成物、または本発明の方法は、現在存在している感染症(すなわち、現在存在しているウイルス感染)を治療するのに使用される。
本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、医薬組成物、または方法に関し、ここで、そのラビリントペプチン、組み合わせ物または医薬組成物が、少なくとも1つの他の活性物質と同時投与される。前記活性物質は、CMV阻害剤、KSHV阻害剤、RSV阻害剤、DENV阻害剤、CHIKV阻害剤、TBEV阻害剤、VSV阻害剤、ZIKV阻害剤、および/またはHCV阻害剤であり得る。
好適なCMV阻害剤およびKSHV阻害剤は、当該技術分野で知られており、そして、例えば、Coen, 2014, Viruses 6(11): 4731-59に記載されている。例えば、好適なCMVおよびKSHV阻害剤としては、アシクロビル、ペンシクロビル、ジドブジン、ブリブジン、シドホビルHDVD(Lジオキソランウラシル誘導体)、イドクスウリジン、ファムシクロビル、ソリブジン、バラシクロビル、シドホビル、ブリンシドホビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、マリバビル、CMVIG、レテルモビル、レフルノミド(関節リウマチにおいて病態修飾剤として使用される、代謝拮抗剤はまた、CMV疾患治療および予防の両方で首尾よく承認適応症外使用された)、およびホミビルセンが挙げられる。
本発明との関連において有用なRSV阻害剤としては、パリビズマブ(モタビズマブ)などのモノクローナル抗体が挙げられる。この抗体は、RSVにとって、現在利用可能な唯一の特異的治療選択肢である(Roymans, 2010 Future Med Chem 2(10): 1523-7.)。本発明により使用できる他のRSV阻害剤は、RSV604などの核タンパク質(Nタンパク質)阻害剤(Challa, 2015, Antimicrob Agents Chemother 59(2): 1080-7);およびALN-RSV01などのRNA干渉分子(すなわち、RSVのNタンパク質を標的化する低分子干渉RNA)である。斯かる低分子干渉RNAは、リスクの高い成人集団のための治療選択肢である(eVincenzo, 2010; Roymans, 2010, Future Med Chem 2(10): 1523-7.)。本発明との関連において適用され得る他のRSV阻害剤は、ALS-8176などのヌクレオシド阻害剤(Challa, 2015, Antimicrob Agents Chemother 59(2): 1080-7);または、GS-5806(Gilead(登録商標))などのウイルス融合阻害剤(DeVincenzo, 2014, Proc Natl Acad Sci U S A 107(19): 8800-5.)である。
本発明との関連において使用され得るDENV阻害剤としては、CYD-TDV(遺伝子組み換え、生、弱毒化四価デング熱ワクチン)などのワクチンが挙げられる。CYD-TDVは、現在、臨床試験中である(Hadinegoro, 2015, N Engl J Med 373(13): 1195-206.)。本明細書中で、「DENV阻害剤」とはさらに、NITD-008またはバラピラビルなどのヌクレオシド類似体をさらに含み得る(Lim, 2013, Antiviral Res 100(2): 500-19.)。
本発明との関連において使用され得るTBEVの有望な阻害剤の一つが、7-デアザ-2-C-メチルアデノシン(7-デアザ-2-CMA)である。
別の例において、本明細書中に示したラビリントペプチン、組み合わせ物または医薬組成物は、HCV阻害剤と、例えばHCV NS3/4Aプロテアーゼ(テラプレビル、ボセプレビル、シメプレビル、パリタプレビル、アスナプレビル、バニプレビル、ベドロプレビル、ソバプレビル、グラゾプレビルまたはACH-2684)、NS5Aリン酸化タンパク質(ダクラタスビル、レジパスビル、オムビタスビル、エルバスビル、GS-5816またはACH-3102)またはRNA依存性RNAポリメラーゼNS5B(ソホスブビル、MK-3682、ACH-3422、AL-335、ダサブビル、ベクラブビル、またはGS-9669)のいずれかを標的化する(単数もしくは複数の)直接作用抗ウイルス剤の1つまたはその組み合わせ物と同時投与される。そのうえ、HCV感染との関連において宿主を標的化する抗ウイルス薬との同時投与が想像できる。これらは、例えば、ミラビルセンのようなmiR-122標的化治療薬、またはアリスポリビル、NIM811、もしくはSCY-635のようなシクロフィリン拮抗薬を含む。
本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、または医薬組成物は、好適な経路によって投与され得る。本発明の一態様は、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、医薬組成物、または方法に関し、ここで、そのペプチド、組み合わせ物または医薬組成物は、経口的、静脈内、皮下または筋肉内に投与されるべきである。好ましくは、その投与は、静脈内、皮下または筋肉内である。例えば、その投与は、静脈内であってもよい。しかしながら、皮下または筋肉内投与には、これらの投与様式が静脈内投与より実用的であるという利点がある。投与が経口的である場合、その製剤が経口生物学的利用能を与えることが想定される。
添付した実施例は、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体または組み合わせ物に高い抗ウイルス活性があることを実証した。よって、本発明の一態様は、本発明のラビリントペプチン、本発明のラビリントペプチン誘導体、本発明の組み合わせ物、本発明の医薬組成物、または本発明の方法に関し、ここで、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、または医薬組成物の抗ウイルス活性のIC50値は、少なくとも50μM、好ましくは少なくとも26μMである。好ましくは、本発明のラビリントペプチンはLabyA1であり、そして、そのIC50値は少なくとも25μM、より好ましくは少なくとも4μMである。本発明の組み合わせ物に関して、IC50値は好ましくは少なくとも9μM、より好ましくは少なくとも1.5μMである。本発明のラビリントペプチン誘導体に関して、治療されるウイルス感染は、好ましくはDENVの感染であり、そして、そのIC50値は好ましくは少なくとも7.5μMである。より好ましくは、本発明のラビリントペプチン誘導体はLabyA1の誘導体であり、そして、治療されるウイルス感染はDENVの感染であり、そして、そのIC50値は少なくとも2μMである。
本発明の別の態様は、本発明のラビリントペプチン、本発明のラビリントペプチン誘導体、本発明の組み合わせ物、本発明の医薬組成物、または本発明の方法に関し、ここで、治療されるべきウイルス感染はCMV、ZIKVまたはHCVの感染であり、そして、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、または医薬組成物の抗ウイルス活性のIC50値は、少なくとも5.5μMである。好ましくは、本発明のラビリントペプチンはLabyA1であり、治療および/または予防されるべきウイルス感染はCMVまたはHCVの感染であり、そして、IC50値は少なくとも1.5μMである。
本発明の更なる態様は、本発明のラビリントペプチン、本発明のラビリントペプチン誘導体、本発明の組み合わせ物、本発明の医薬組成物、または本発明の方法に関し、ここで、治療されるべきウイルス感染はDENVの感染であり、そして、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、または医薬組成物の抗ウイルス活性のIC50値は少なくとも8μMである。好ましくは、本発明のラビリントペプチンはLabyA1であり、そして、治療および/または予防されるべきウイルス感染はDENVの感染であり、そして、IC50値は少なくとも2μMである。
本発明の更なる態様は、本発明のラビリントペプチン、本発明のラビリントペプチン誘導体、本発明の組み合わせ物、本発明の医薬組成物、または本発明の方法に関し、ここで、本発明のラビリントペプチンはLabyA1であり、そして、治療および/または予防されるべきウイルス感染はCHIKVの感染であり、そして、IC50値は少なくとも2μMである。
表3は、LabyA1、LabyA2、LabyA1とLabyA2との組み合わせ物(LabyA1/A2)、LabyA1誘導体「LabyA1-hexyn」(本明細書中では「LabyA1-Hexyn」とも呼ばれる)、LabyA2誘導体「LabyA2-hexyn」(本明細書中では「LabyA2-Hexyn」とも呼ばれる)、ならびにLabyA1-hexynとLabyA2-hexynとの組み合わせ物(LabyA1/A2-hexyn)の抗ウイルス活性のIC50値を示す。
表3:ラビリントペプチン、ラビリントペプチンとラビリントペプチン誘導体の組み合わせ物の抗ウイルス活性のIC50値(μMおよびμg/ml単位)
Figure 0007185874000005
RSVに関して、添付の実施例もまた、どうにかより高いIC50値を示す(図16Aおよび16Bを参照)。しかしながら、これらのより高い値は、間接的ハイスループットスクリーニングアッセイを使用することによって得られた(図15)。この間接的ハイスループットスクリーニングアッセイでは、化合物の抗ウイルス活性は、溶菌性ウイルスであるRSVの抗原投与によって細胞生存を助ける化合物の能力に基づいておおまかに概算される。このアッセイに使用される宿主細胞はルシフェラーゼレポーター遺伝子を構成的に発現するので、細胞生存の変化はルシフェラーゼアッセイで定量化できる。しかしながら、このアッセイの間接的性質のため、IC50値の精度は制限される。図16Cにまとめられた他の実験では、RSVに対するラビリントペプチンのIC50は、感染細胞におけるRSV依存性タンパク質発現を測定する、直接的な定量的アッセイを使用することによって、正確に測定された。具体的には、このアッセイにおいて、細胞には、試験されるべき化合物(例えば、ラビリントペプチン)の存在または不存在下、RSV(すなわち、hRSV)が植え付けられる。それに続いて、感染効率が、hRSVのPタンパク質検出に基づく細胞内FACS染色を使用することによって、例えば、マウスモノクローナル抗体を使用することによって、測定される。このアプローチを使用すると、RSV感染細胞の数を直接測定することが可能であり;その結果、IC50を正確に定量化することが可能である。
添付の実施例で実証されるように、ラビリントペプチン(特にLabyA1)は、CMVに対して高い抗ウイルス活性を有する。よって、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物、医薬組成物、または方法の好ましい態様において、治療されるウイルス感染は、CMV(すなわち、HCMV)の感染である。
先に触れたように、添付の実施例は、LabA1およびLabyA2の組み合わせ物がウイルスの治療で相乗効果をもたらすことを示す。例えば、DENV、TBEVまたはZIKVに対する抗ウイルス活性におけるLabyA1およびLabyA2の相乗活性が示されている。よって、特に本明細書中に示した組み合わせ物との関連において、ウイルス感染は好ましくはDENV、TBEV、および/またはZIKVの感染である。
「(単数もしくは複数の)(本)発明のラビリントペプチン」、「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン」という用語は本明細書中で互換的に使用される。これらの用語は、当該技術分野で知られている方法を使用して計測され得る、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVに対する抗ウイルス活性を示す配列番号2で規定されるペプチド(すなわち、化合物)を指す。例えば、本発明のラビリントペプチンの抗ウイルス活性について試験するために、本発明のラビリントペプチンが細胞(例えば、Huh-7.5細胞)に添加され得る。次に、その細胞が、試験されるべきウイルス(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV)に感染し得る。ウイルス陽性細胞の量は、免疫細胞学によって評価され得る。例えば、ウイルスに対する一次抗体および結合フルオロフォアを有する二次抗体が適用され得る。全細胞数は、DAPI染色核をカウントすることによって測定され得る。このようにして、ウイルス陽性細胞のパーセンテージが計算され得る。得られた結果は非感染細胞と比較されることが好ましい。
特に、「(単数もしくは複数の)(本)の発明のラビリントペプチン」、「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン」という用語は、(NからC末端への)アミノ酸配列:
Figure 0007185874000006
{式中、
Labは、ラビオニンであり;
は、Asn、Asp、およびGluから選択されるアミノ酸であり;
は、Ala、Trp、およびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;
は、GluおよびAspから選択されるアミノ酸であり;
は、ThrおよびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、GlyおよびProから選択されるアミノ酸であり;および
は、3~5個のアミノ酸から成る配列から成る}を含むか、またはそれらから成るペプチド(すなわち、化合物)を指す。
配列番号2のアミノ酸配列は、N末端で始まり、そして、C末端で終わる、すなわち、配列番号2の配列は、NからC末端へと表示される。
位置X、X、X、X、X、X、およびXの好ましいアミノ酸は、先に本明細書中に記載される。配列番号2の中で、「-」は化学結合である。「-」が「X」と「X」の間(例えば、X-X、X-X、X-X、またはX-X)、または「X」と「Lab」の間(例えば、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-Cys」、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-X」)に配置される場合、「-」がペプチド結合/連結であることが好ましい。「-S-S-」はジスルフィド架橋(S-S結合とも呼ばれる)である。「-S-」はLabのランチオニン部分を表す2つのアラニン部分のβ-C原子の間のチオエーテル架橋である。
(N末端から数えて)配列番号2の1位と4位のラビオニン、および(N末端から数えて)配列番号2の10位と13位のラビオニンは、メチレン架橋(すなわち、-CH-)を介して連結される。特に、メチレン基は、配列番号2の1位と4位のラビオニンのαC原子を連結する。別のメチレン基は、配列番号2の10位と13位のラビオニンのαC原子を連結する。
先に触れたように、本発明の好ましい態様は、組み合わせ物またはLabyA1およびLabyA2(すなわち、本発明の組み合わせ物)に関する。本発明のラビリントペプチンに関して、LabyA1およびLabyA2が好まれる;LabyA1がさらに好まれる。LabyA1の(内部架橋を含めた)アミノ酸配列は、以下の配列番号3:
Figure 0007185874000007
に示され、ここで、Dhbはデヒドロブチリン(ジデヒドロブチリンとも呼ばれる)であり、そして、Labはラビオニンである。Dhbの構造は、図2に示される。
LabyA2の(内部の架橋を含めた)アミノ酸配列は、以下の配列番号4:
Figure 0007185874000008
に示され、ここで、Labはラビオニンである。
本発明のラビリントペプチンはまた、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドも含み、ここで、そのペプチドは、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対するLabyA1の抗ウイルス活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%を有する。本発明のラビリントペプチンは、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも94%の配列同一性を有するペプチドをさらに含み、ここで、そのペプチドは、好ましくはRSV、KSHV、CMV、DENV、TBEV、ZIKV、および/またはHCVに対するLabyA2の抗ウイルス活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%を有する。
本発明のラビリントペプチンはまた、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対して抗ウイルス活性を示すペプチドが類似体およびペプチド模倣体またはペプチドの模倣体も含む。
本発明のラビリントペプチンとしては、任意の立体化学形態の、あるいは任意の割合での任意の立体化学形態の混合物での配列番号2、3、または4のペプチドが挙げられる。別段示されない限り、配列番号2、3、または4のペプチドのキラル中心は、R立体配置でも、S立体配置でも示され得る。本発明は、光学的に純粋な化合物と、エナンチオマ混合物やジアステレオマー混合物などの立体異性混合物の両方に関する。好ましくは、本発明のラビリントペプチンには、図3に示されているように、天然型LabyA1またはLabyA2の立体化学を有する。
本発明のラビリントペプチンが、(例えば、配列番号2によって)本明細書中に記載されている。しかしながら、本発明のラビリントペプチンはまた、Krawczyk, Chemistry & Biology, 2013, 20(1), 111-122;およびWO2013/092672に開示されている修飾ラビリントペプチンも含む、但し、これらの修飾ラビリントペプチンは、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対する抗ウイルス活性を有する。
加えて、「(単数もしくは複数の)(本)発明のラビリントペプチン」、「本明細書中に示したラビリントペプチン」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン」という用語はまた、配列番号2、3または4に規定されるように、ペプチドの医薬的な許容される塩に関する。これにより、医薬的な許容される塩はまた、「本発明のラビリントペプチン」という用語に含まれる。
「(単数もしくは複数の)(本)発明のラビリントペプチン誘導体」、「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」という用語は本明細書中で互換的に使用される。これらの用語は、当該技術分野で知られている方法を使用して計測され得る、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、好ましくはDENVに対する抗ウイルス活性を示す配列番号1で規定されるペプチド(すなわち、化合物)を指す。例えば、本発明のラビリントペプチン誘導体の抗ウイルス活性について試験するために、本発明のラビリントペプチン誘導体が細胞(例えば、Huh-7.5細胞)に添加され得る。次に、その細胞が、試験されるべきウイルス(例えば、RSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、好ましくはDENV)に感染し得る。ウイルス陽性細胞の量は、免疫細胞学によって評価され得る。例えば、ウイルスに対する一次抗体および結合フルオロフォアを有する二次抗体が適用され得る。全細胞数は、DAPI染色核をカウントすることによって測定され得る。このようにして、ウイルス陽性細胞のパーセンテージが計算され得る。得られた結果は非感染細胞と比較されることが好ましい。
特に、「(単数もしくは複数の)(本)の発明のラビリントペプチン誘導体」、「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」という用語は、(NからC末端への)アミノ酸配列:
Figure 0007185874000009
{式中、
Labは、ラビオニンであり;
は、Asn、Asp、およびGluから選択されるアミノ酸であり;
は、Ala、Trp、およびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;
は、GluおよびAspから選択されるアミノ酸であり;
は、ThrおよびSerから選択されるアミノ酸であり;
は、GlyおよびProから選択されるアミノ酸であり;
は、3~5個のアミノ酸から成る配列から成り;
は、H、(C-C12)アルキニル、C(O)-(C-C12)アルキニル、C(O)-O-(C-C12)アルキニル、およびC(O)NH-(C-C12)アルキニルから選択され;ここで、Rは、末端位置にアルキニル基を担持し;
は、H、[C(O)]-NH-(C-C12)アルキニルまたは[C(O)]-O-(C-C12)アルキニルから選択され;ここで、部分[C(O)]は末端アミノ酸のカルボニル基であり;ここで、Rは末端位置にアルキニル基を担持し;ここで、RがHである場合、RはHでない}を含むか、またはそれらから成るペプチド(すなわち、化合物)を指す。
配列番号1のアミノ酸配列は、N末端で始まり、そして、C末端で終わる、すなわち、配列番号1の配列は、NからC末端へと表示される。
位置X、X、X、X、X、X、およびXの好ましいアミノ酸は、先に本明細書中に記載される。配列番号1の中で、「-」は化学結合である。「-」が「X」と「X」の間(例えば、X-X、X-X、X-X、またはX-X)、または「X」と「Lab」の間(例えば、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-Cys」、「Lab-X」、「X-Lab」、「Lab-X」)に配置される場合、「-」がペプチド結合/連結であることが好ましい。「-S-S-」はジスルフィド架橋(S-S結合とも呼ばれる)である。「-S-」はLabのランチオニン部分を表す2つのアラニン部分のβ-C原子の間のチオエーテル架橋である。
(N末端から数えて)配列番号1の1位と4位のラビオニン、および(N末端から数えて)配列番号1の10位と13位のラビオニンは、メチレン架橋(すなわち、-CH-)を介して連結される。特に、メチレン基は、1位と4位のラビオニンのαC原子を連結する。別のメチレン基は、配列番号1の10位と13位のラビオニンのαC原子を連結する。
本発明のラビリントペプチン誘導体内の好ましいラビリントペプチンは、LabyA1およびLabyA2であり、LabyA1が最も好まれる。LabyA1の(内部架橋を含めた)アミノ酸配列は、先の配列番号3に示される。
よって、好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、以下の式(I):
Figure 0007185874000010
に示されているLabyA1の誘導体である。
より一層好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、以下の式(II):
Figure 0007185874000011
に示されているLabyA1の誘導体である。
より一層好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、図4に示されている「LabyA1-Hexyn」である。
別の好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、以下の式(III):
Figure 0007185874000012
に示されているLabyA2の誘導体である。
より一層好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、以下の式(IV):
Figure 0007185874000013
に示されているLabyA2の誘導体である。
より一層好ましい態様において、本発明のラビリントペプチン誘導体は、図4に示されている「LabyA2-Hexyn」である。
配列番号1に関して示されたRおよびRに関する説明を、必要な変更を加えて、同様に式I~IVについても適用する。
本発明のラビリントペプチン誘導体はまた、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドを(Rおよび/またはRに加えて)含むラビリントペプチン誘導体も含み、ここで、そのペプチドは、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、より好ましくはDENVに対するLabyA1の抗ウイルス活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%を有する。本発明のラビリントペプチン誘導体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも94%の配列同一性を有するペプチドを(Rおよび/またはRに加えて)含むラビリントペプチン誘導体をさらに含み、ここで、そのペプチドは、好ましくはRSV、KSHV、CMV、DENV、TBEV、ZIKV、および/またはHCV、より好ましくはDENVに対するLabyA2の抗ウイルス活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%を有する。
本発明のラビリントペプチン誘導体はまた、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対して抗ウイルス活性を示すペプチドが類似体およびペプチド模倣体またはペプチドの模倣体も含む。
本発明のラビリントペプチン誘導体としては、任意の立体化学形態の、あるいは任意の割合での任意の立体化学形態の混合物での配列番号1のペプチドを含むラビリントペプチン誘導体が挙げられる。別段示されない限り、配列番号1のペプチドのキラル中心は、R立体配置でも、S立体配置でも示され得る。本発明は、光学的に純粋な化合物と、エナンチオマ混合物やジアステレオマー混合物などの立体異性混合物の両方に関する。好ましくは、本発明のラビリントペプチン誘導体は、図3に示されているように、天然型LabyA1またはLabyA2の立体化学を有するペプチドを(Rおよび/またはRに加えて)含む。
本発明のラビリントペプチン誘導体が、(例えば、配列番号1によって)本明細書中に記載されている。しかしながら、本発明のラビリントペプチン誘導体はまた、Krawczyk, Chemistry & Biology, 2013, 20(1), 111-122;およびWO2013/092672に開示されている修飾ラビリントペプチンも(Rおよび/またはRに加えて)含み得る、但し、これらの修飾ラビリントペプチンは、特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対する抗ウイルス活性を有する。
加えて、「(単数もしくは複数の)(本)発明のラビリントペプチン誘導体」、「本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」、および「(単数もしくは複数の)本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体」という用語はまた、配列番号1に規定されるように、ペプチドの医薬的な許容される塩に関する。これにより、医薬的な許容される塩はまた、「本発明のラビリントペプチン誘導体」という用語に含まれる。
「ペプチド類似体」(「ペプチド模倣体」または「ペプチドの模倣体」とも呼ばれる)は、「鋳型」ペプチドのそれに類似する特性を持つ非ペプチド薬剤として医薬技術では一般に使用される。ペプチド類似体/ペプチド模倣体は、生物学的に活性のあるペプチドの骨格構造および物理化学的な特性を再現する。生物学的に活性のあるペプチドに構造的に関連するペプチド模倣体は、同等のまたは向上した生物活性(例えば、向上した治療効果および/または予防効果)を生成するのに使用され得る。一般に、ペプチド模倣体は、鋳型ペプチド、すなわち、生物活性または薬学活性を有し、天然に存在するアミノ酸を含むが、当該技術で周知の方法(例えばSpatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983; Spatola, Life Sei. 38:1243-1249, 1986; Hudson, Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979;およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein eds, Marcel Dekker, New-Yorkを参照)によって、例えば、-CHNH-、-CHS-、-CH-CH-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-CHSO-、-CH(OH)CH-、-COCH-のような結合により置き換えられた1以上のペプチド結合を有するペプチドに構造的に類似する。そのようなペプチド模倣体は、さらに経済的な製造、さらに大きな化学的安定性、高い薬学特性(例えば、半減期、吸収、有効性、効率など)、低い抗原性などを含む特定の利点を有し得る。
用語「アミノ酸」または「残基」には本明細書で使用されるとき、天然に存在するアミノ酸のL異性体およびD異性体の双方と同様に、他のアミノ酸(例えば、天然に存在しないアミノ酸、核酸によってコードされないアミノ酸)が含まれる。天然に存在するアミノ酸の例は、アラニン(Ala;a)、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C)、グルタミン(Gln;Q)、グルタミン酸(Glu;E)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、トレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、バリン(Val;V)である。翻訳後修飾される天然に存在するアミノ酸は、デヒドロブチリン(Dhb)およびラビオニン(Lab)である。本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体に含まれるラビリントペプチンは、天然に存在するアミノ酸から成ってもよい。本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体に含まれるラビリントペプチンは、Lアミノ酸から成ってもよい。本明細書中では、アミノ酸は、当該技術分野一般的に使用されるように、また、本明細書中で先に記載したように、一字コードまたは三文字コードによって簡略化される。
天然に存在し、遺伝的にコードされないアミノ酸および合成アミノ酸には、β-アラニン、3-アミノ-プロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸(Aib)、4-アミノ-酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えば、L-オルニチン、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモアルギニン(Harg)、N-アセチルリジン、2-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸(D-またはL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、システイン酸、ε-アミノヘキサン酸、δ-アミノ吉草酸、または2,3-ジアミノ酪酸(D-またはL-)などが挙げられる。非天然アミノ酸としては、例えばβ-アミノ酸(βおよびβ)、ホモアミノ酸、3-置換アラニン誘導体、環置換フェニルアラニンおよびチロシン誘導体、直鎖コアアミノ酸、ならびにN-メチルアミノ酸が挙げられる。これらのアミノ酸は生化学/ペプチド化学の当該技術で周知である。
「アミノ酸」という用語はまた、類似の側鎖官能性を提供する合成アミノ酸も指す。例えば、芳香族アミノ酸は、D-またはL-ナフチルアラニン、D-またはL-フェニルグリシン、D-またはL-2-チエニルアラニン、D-またはL-1-、2-、3-または4-ピレニルアラニン、D-またはL-3-チエニルアラニン、D-またはL-(2-ピリジニル)-アラニン、D-またはL-(3-ピリジニル)アラニン、D-またはL-(2-ピラジニル)アラニン、D-またはL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン、D-p-フルオロフェニルアラニン、D-またはL-p-ビフェニルアラニン、D-またはL-p-メトキシビフェニルアラニン、アルキル基が置換または非置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチルおよびイソペンチルから成る群から選択されるD-またはL-2-インドール(アルキル)アラニンおよびD-またはL-アルキルアラニンによって置き換えられ得る。ホスホノ-または硫酸化アミノ酸によって提供されるように、負の電荷を処理するのに非カルボン酸アミノ酸を作製することができ、それは非限定例であると見なされるべきである。
「アミノ酸」という用語にはまた、アルキル基を天然のアミノ酸と組み合わせることによって作製される非天然のアルキル化アミノ酸も挙げられる。例えば、リジンおよびアルギニンのような塩基性の天然のアミノ酸はアミン(NH)官能性にてアルキル基によって置換され得る。さらに他の置換には、アスパラギンまたはグルタミンのニトリル誘導体(例えば、CONH官能性の代わりにCN-部分を含有する)およびメチオニンのスルホキシド誘導体が挙げられる。
本発明のラビリントペプチンまたは本発明のラビリントペプチン誘導体では、すべてのアミノ酸がL-アミノ酸であってもよい。あるいは、すべてのアミノ酸がD-アミノ酸であってもよい。別の可能性において、ペプチド/ペプチド化合物は、L-アミノ酸とD-アミノ酸の混合物を含んでもよい。例えば、本明細書中に示したラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体は、N末端部分および/またはC末端部分(例えば、最後の2、3のN末端および/またはC末端残基の範囲内)に位置する少なくとも1つのD-アミノ酸を含んでもよい。1以上のD-アミノ酸の存在は通常、プロテアーゼ/ペプチダーゼの切断への感受性の低下のために(例えば、インビボにおいて)高い安定性を有するが、生物活性を保持するペプチドを生じる。
本発明のラビリントペプチンおよび/またはラビリントペプチン誘導体は、それぞれ配列番号1または2で規定される化合物に加えて、アミノおよび/またはカルボキシ末端に共有結合で連結された1もしくは複数のアミノ酸を含んでもよい。よって、本発明のラビリントペプチンおよび/またはラビリントペプチン誘導体は、そのN(すなわち、アミノ)末端またはC(すなわち、カルボキシ)末端、またはその両方にて、別のアミノ酸配列に連結した、それぞれ配列番号1または2を含むキメラまたは融合タンパク質であってもよい。よって、本発明のある態様は、そのN-末端および/またはC末端に0~10個のアミノ酸、好ましくは0~5個のアミノ酸、より好ましくは0~3個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を含む、本明細書中に示したラビリントペプチン(すなわち、配列番号2)に関する。同様に、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体は、そのC末端またはN末端に0~10個のアミノ酸、好ましくは0~5個のアミノ酸、より好ましくは0~3個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を含む本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体(すなわち、配列番号1)であり得る。例えば、本発明のラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体は、特定の細胞、組織、および/または臓器に対してラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を標的化するペプチド部分および/または抗体を含んでもよい。例えば、そのペプチド部分および/または抗体は、肝臓に(例えば、肝細胞に)ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。DENV感染症の治療のために、そのペプチド部分および/または抗体は、免疫系細胞に(例えば、T細胞またはランゲルハンス樹状細胞に)ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。ヘルペスウイルスの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、神経細胞に(例えば、希突起膠細胞またはニューロンに)ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。RSVの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、肺に(例えば、肺胞に)ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。CHIKVの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、関節または神経組織にラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。TBEVの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、中枢神経組織(脳、脊髄)の細胞にラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。ZIKVの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、皮下組織、中枢神経系、骨格筋または心筋にラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。HCVの感染の治療のために、ペプチド部分および/または抗体は、肝臓に(例えば、肝細胞に)ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体を誘導し得る。
本発明のラビリントペプチンまたはラビリントペプチン誘導体は、直接的または(スペーサーまたはリンカーを通して)間接的に互いに共有結合で連結した、それぞれ、配列番号1または配列番号2のうちの2以上の化合物を含んでもよい。例えば、本発明のラビリントペプチンは、2以上の連結LabyA1サブユニット、2以上の連結LabyA2サブユニット、または1もしくは複数のLabyA2サブユニットに連結した1もしくは複数のLabyA1サブユニットを含む融合タンパク質であり得る。
本明細書中に提供されるラビリントペプチンもまた、本発明に包含され、ここで、そのNおよび/またはC末端アミノ酸は修飾されている。同様に、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体では、C末端またはN末端アミノ酸が修飾され得る。可能な薬物療法としては、脂肪酸(例えば、C6~C18)の共有結合、アルブミンのようなタンパク質の結合(例えば、米国特許第7,268,113号を参照);グリコシル化、ビオチン化、またはペグ化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル(Acm)基の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬剤の共有結合、マーカー(例えば、蛍光マーカーまたは放射性マーカー)の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、およびユビキチン化が挙げられる。
先に記載したように、本明細書中の「(本)発明のラビリントペプチン」および「(本)発明のラビリントペプチン誘導体」という用語はまた、本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の塩、例えば配列番号1または2に記載の化合物の医薬的に許容され得る塩を含む。本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の医薬的に許容され得る塩は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (17th edition, page 1418 (1985))に記載されるように、それらの有機塩及びそれらの無機塩の両方であると理解される。それらの物理的及び化学的安定性並びにそれらの溶解性のために、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩が、特に酸性基について好ましく;塩酸、硫酸もしくはリン酸、又はカルボン酸もしくはスルホン酸、例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸及びp-トルエンスルホン酸の塩が、特に塩基性基について好ましい。本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容され得る塩」という用語は、(特にRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCV、好ましくはDENVに対して)親化合物の抗ウイルス活性を維持し、かつ、生物学的にまたはその他の点で好ましくないことはない(例えば、毒性でない)本発明のラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の塩を指す。斯かる塩は、ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の最終的な単離および精製中にその場で調製されるか、または遊離塩基性官能基を好適な酸と反応させることによって別々に調製される。
本発明のラビリントペプチン(例えば、LabyA1、および/またはLabyA2)は次のように製造され得る。公的に入手可能な基準株アクチノマヅラ・ナミビエンシス(Actinomadura namibiensis)(DSM6313)のバイオマスの発酵は、先に記載したように行われ得る(Meindl, 2010, Angew Chem Int Ed Engl 49: 1151-1154)。その後、発酵槽からのバイオマスを、水(例えば、2L)中に懸濁し、アセトン(例えば、2×2L)およびメタノール(例えば、1×2L)で抽出し得る。次に、合わせた有機層を減圧下で留去し得る。得られた未精製化合物を、水(例えば、1L)中に懸濁し、tert-ブチルメチルエチル(例えば、2×1L)で抽出し得る。その後、有機層を捨ててもよく、そして、水層を留去して、(例えば、20gの)原料を得てもよい。未精製の化合物を(例えば、2gのバッチで)精製にかけてもよい。溶出液として0.1% HCOOHを含む水中のアセトニトリル(10-90%)を使用したC18-WP(40g、20μ)カラムを備えたフラッシュクロマトグラフィーシステム(例えば、GRACE製のReveleris X2)により、精製を実施してもよい。精製後、本発明のラビリントペプチン(例えば、LabyA1および/またはLabA2)の未精製混合物の量は、溶出液として0.1% HCOOHを含む水中のアセトニトリル(10-90%)を用いたGemini5μC18カラム(寸法:250mm×20mm)を使用した逆相HPLC法によってさらに精製され得る2gまで減量され得る。ピークは、220nmでのUV検出法に基づいて分画化され得る。回収した所望の化合物(すなわち、本発明のラビリントペプチン)は、凍結乾燥され得る。この手順は、約40mgのLabyA1および約6mgのLabyA2をもたらし得る。
本発明のラビリントペプチンはまた、ラビリントペプチンの遺伝子組み換え製造が開示されているWO2013/092672A2に記載のとおり製造されてもよい。よって、本発明のラビリントペプチンは、ラビリントペプチンをコードする核酸を含む宿主細胞における発現によって製造され得る(組み換え発現)。あるいは、LabyA1および/またはLabyA2は、WO2008/040469A1、WO2009/121483A1またはWO2009/121483A1に記載のアクチノマヅラ・ナミビエンシス(すなわち、野生型アクチノマヅラ・ナミビエンシス)から単離され得る。そのため、WO2009/121483A1またはWO2009/121483A1で開示されているアクチノマヅラ・ナミビエンシス株DSM6313が使用され得る。本発明のラビリントペプチンはまた、Meindl(2010, Angew Chem Int Ed Engl 49: 1151?1154)に記載のように単離および精製されてもよい。要するに、本発明のラビリントペプチンは、抽出、クロマトグラフィ、および最終精製ステップとしての調製用HPLCによって精製され得る。
別のラビリントペプチン種は、それらの異なる極性に基づいて、例えばMCI(吸着樹脂、Mitsubishi, Japan)もしくはAmberlite XAD(TOSOHAAS)の、又は他の疎水性材料、例えばRP-8もしくはRP-18相の、逆相クロマトグラフィによって分離される。さらに、分離は、例えばシリカゲル、酸化アルミニウムなどの、順相クロマトグラフィによって行われ得る。
本発明のラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体はまた、化学合成(例えば、固相ペプチド合成)によっても調製され得る。ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体の品質は、UVおよびNMR分光法によって確認され得る。
本発明のラビリントペプチン誘導体(例えば、図4に示されているLabyA1-HexynまたはLabyA2-Hexyn)は、次のように製造されてもよい。ジメチルホルムアミド(例えば、1ml)中の2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(例えば、1mg、0.006mmol)の溶液に、n-メチルモルホリン(例えば、2μL、0.015mmol)を室温にて加え得る。室温にて1時間の撹拌後に、加えるべき化合物(例えば、5-ヘキシン酸、Rがヘキサ-5イノイルでなければならない場合;例えば、0.5μL、0.004mmol)を加え得る。30分間の撹拌後に、非誘導体化ラビリントペプチン(例えば、6mg、0.003mmol)を反応混合物に加えて、室温にて16時間撹拌した。反応混合物を、溶出液として0.1% HCOOHを含む水中のアセトニトリル(10-90%)を用いたGemini5μC18カラム(寸法:250mmの×20mm)を使用した逆相HPLCによって精製してもよい。ピークは、220nmにてUV検出法に基づいて分画化され得る。回収した誘導体化ラビリントペプチンは、凍結乾燥され、2mg(31.7%)が得られた。生成物は高分解能質量分析法によって特徴づけされ得る。
本発明はまた、本発明のラビリントペプチンをコードする核酸、上記の核酸および/またはベクターを含む細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。よって、本発明は、例えば、当該技術で周知の培養培地、作出法、単離法および精製法を用いた、本発明のラビリントペプチンの発現/作出のための、組み換え発現系、ベクターおよび宿主細胞を提供する。先に示したように、本発明のラビリントペプチンは、例えば、逆相クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などのような当該技術で周知の技法によって精製することができる。アフィニティクロマトグラフィ精製については、例えば、本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体に特異的に結合する抗体が使用され得る。
本発明はまた、上記ラビリントペプチンおよび/またはラビリントペプチン誘導体、および/または組み合わせ物を含む医薬組成物を提供する。前記医薬組成物はさらに、少なくとも1つの医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤を含む。本明細書で使用されるとき、「薬学上許容可能な」という用語(「生物学上許容可能な」とも呼ばれる)は、インビボにおいて毒性のまたは有害な生物学的効果がない(限定される)ことを特徴とする物質を指す。用語「薬学上許容可能な担体および/または希釈剤」は医薬組成物の調製で一般に使用される添加剤を指し、それには、例えば、溶媒、分散媒、生理食塩水溶液、界面活性剤、可溶化剤、潤滑剤、乳化剤、コーティング、抗菌および抗真菌剤、キレート剤、pH調節剤、緩和剤、還元剤、抗酸化剤、等張剤、吸収遅延剤などが挙げられる(例えば、Rowe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, Pharmaceutical Press; 6th edition, 2009を参照)。
先に記載したように、本明細書中に示した医薬組成物/ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物は、例えば注入液剤または輸液剤、μカプセル剤、インプラント剤またはロッド剤の形態で、例えば静脈内、筋肉内または皮下に、非経口的に投与され得る。本発明の医薬組成物/ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物はまた、例えば、丸薬、錠剤、ラッカー錠剤、コーティング錠剤、顆粒剤、ゼラチン硬および軟カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤またはエアゾール混合物の形態で、経口的に投与されてもよい。しかしながら、本発明の医薬組成物/ラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物はまた、例えば、坐剤の形態で、経直腸的に、例えば、軟膏剤、液剤またはチンキ剤の形態で、経皮的または局所的に、あるいは、例えば、エアゾール剤または鼻腔用スプレー剤の形態で、他の様式で投与されてもよい。
本発明の医薬組成物は、自体公知でかつ当業者によく知られている様式で調製される。例えば、薬学上許容可能な不活性無機および/または有機担体物質および/または添加物が、上述の、任意の立体化学形態、または任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、(単数もしくは複数の)本発明のラビリントペプチンおよび/または(単数もしくは複数の)ラビリントペプチン誘導体および/または本発明の組み合わせ物、またはそれらの生理学的に許容される塩に加えて使用される。丸剤、錠剤、コーティング錠剤およびゼラチン硬カプセル剤の作製には、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などを使用することが可能である。ゼラチン軟カプセル剤および坐剤用の担体物質は、例えば、脂肪、ワックス、半固体および液体ポリオール、天然または硬化油などである。液剤(例えば、注射用液剤)または乳剤もしくはシロップ剤の作製用の好適な担体物質は、例えば、水、生理食塩水、アルコール、グリセリン、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、植物油などである。μカプセル剤、インプラント剤またはロッド剤用の好適な担体物質は、例えばグリコール酸と乳酸とのコポリマーである。
本明細書中、「有効量」という用語は、所望の抗ウイルス活性、すなわち、所望の予防薬/治療結果(すなわち、先に記載したウイルス感染の予防および/または治療)を達成に必要な投薬量および期間での有効な量を指す。本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、本明細書中に示した組み合わせ物または本明細書中に示した医薬組成物の有効量は、例えば、個体の疾患の状態、年齢、性別および体重などの因子に従って変化し得る。よって、投与計画を調整して最適な予防/治療の応答を提供し得る。有効量はまた、予防上/治療上の有益な効果が化合物の毒性のまたは有害な効果に勝るものでもある。特定の対象については、個体の必要性および組成物を投与するまたは投与を監督する人の専門的な判断に従って特定の投与計画が時間をかけて調整され得る。
例えば、本発明の医薬組成物は、約0.5~約90重量%の本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、または本明細書中に示した組み合わせ物、および/またはそれらの生理学的に許容される塩および/またはそれらのプロドラッグを含み得る。本明細書中に示した医薬組成物中の有効成分(すなわち、本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、または本明細書中に示した組み合わせ物)の量は、約0.5~約1000mg、好ましくは約1~約500mgであり得る。
本明細書中に示した有効成分(すなわち、本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、または本明細書中に示した組み合わせ物)の用量は、広い限度範囲内で変動し得、通例でありかつ医師に公知であるように、各個体の症例における個体の状態に適合すべきである。それは、例えば使用される特定の化合物、治療しようとする疾患の性質および重症度、投与の様式およびスケジュール、または急性もしくは慢性の状態を治療するかどうか、または予防を行なうのかどうかに依存する。好適な用量は、医学の分野においてよく知られた臨床的アプローチを使用して確立し得る。例えば、(例えば、体重約75kgの成人において)所望の結果を達成するための一日用量は、約0.01~約100mg/kg、好ましくは約0.1~約50mg/kg、特に約0.1~約10mg/kg(各場合において、体重1kg当たりのmg)である。一日用量は、特に比較的多量の投与の場合に、いくつかの、例えば2、3または4つの部分の投与へ分割し得る。通常であるように、個体の反応に依存して、示した一日用量から上方または下方へ外す必要があり得る。
本発明との関連において、治療されるべき対象(すなわち、患者)の体内における本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体または組み合わせ物の濃度は、50μMを超えてはいけない。本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物または医薬組成物の投与後の、対象(すなわち、患者)の体内の前記ラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、または組み合わせ物の濃度が、0.125μM~50μM、好ましくは0.5μM~50μMであることが想定された。これは、特にラビリントペプチンがLabyA1である場合、またはラビリントペプチン誘導体に含まれるラビリントペプチンがLabyA1である場合、適用される。
治療されるべき対象において、本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体または組み合わせ物の濃度は、それぞれの化合物の細胞傷害性濃度より低いことが想定される。本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体または組み合わせ物の細胞傷害性濃度(CC50)を測定するために、以下のアッセイが適用され得る。
ホタルルシフェラーゼ(FF-luc)のレポーター遺伝子を安定して発現する細胞(例えば、HEp-2細胞)は、96ウェルプレート内の培地、例えば、Gibco(登録商標)Advanced MEM中に播種され得る。高い濃度の、試験すべきラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体または組み合わせ物(例えば、最大100μM)の存在下、37℃にて72時間のインキュベーション後に、細胞は溶解され、FF-luc(RLU)の消失が計測され得る。そのため、プレートルミノメータ(Berthold)が使用され得る。生存細胞の数は、残留ルシフェラーゼ発現に間接的に比例する。
活性成分(すなわち、本明細書中に示したラビリントペプチン、本明細書中に示したラビリントペプチン誘導体、または本明細書中に示した組み合わせ物)ならびに担体および/または希釈剤に加えて、本発明の医薬組成物は、例えば、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定化剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、着香料、芳香剤、増粘剤、緩衝剤物質、溶剤、可溶化剤、デポー効果を達成するための薬剤、浸透圧を変更するための塩、コーティング剤および/または抗酸化剤のうちの1もしくは複数の添加剤を含む。
用語「治療」、「治療すること」などは、所望の薬理(すなわち、抗ウイルス)効果、例えば、ウイルスの侵入またはウイルス複製の阻害、を得ることを意味することを意図する。「治療」および「治療すること」は、対象(例えば、ヒト患者)への本明細書中に示したラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物または医薬組成物の投与が、対照対象と比較して低減されたウイルス陽性細胞数をもたらすことを意味すると想定している。前記対照対象は、前記ラビリントペプチン、ラビリントペプチン誘導体、組み合わせ物または医薬組成物を与えられなかった対象(例えば、ヒト患者)である。よって、本明細書中の用語「治療」または「治療すること」は、先に触れたウイルスの感染の部分的または完全な治癒に関する。先に記載したとおり、本明細書中の「ウイルス感染(「virus infection」または「viral infection」)」は、ウイルス感染によって引き起こされる疾患/障害すなわち感染症を指す。例えば、前記疾患/障害はウイルス感染の症状によって引き起こされ得る。用語「治療」または「治療すること」は、対象、特にヒトにおける疾患の任意の治療;なお、VSVの場合には、動物、好ましくはウシ、ブタまたはウマの治療、そして、疾患(すなわち、ウイルス感染)の阻害、疾患の(すなわち、ウイルス感染の)発生/悪化の停止または減速;または疾患の緩和(例えばウイルス感染に関連する/引き起こされる症状の軽減)に関する。用語「治療」または「治療すること」としてはまた、漸近的ウイルス感染、例えば、HCV、ZIKVまたはCMVの漸近的ウイルス感染への治療的介入も挙げられる。漸近的ウイルス感染の治療としては、例えば、感染対象においてウイルス陽性細胞の量、ウイルス粒子および/またはウイルス複製の量を低減することを含む。「予防」、「予防すること」などの用語は、ウイルス感染またはその症状を完全にまたは部分的に予防することに関して予防効果が得られることを意味する。本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物/医薬組成物は、(ウイルス感染の出現を予防するのではなく)現在存在しているウイルス感染を治療することに使用されるのが好ましい。
先に触れた「予防」および/または「治療」は、1以上の追加の活性剤/治療剤との併用でまたは他の治療法との併用で、上述のラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物/医薬組成物または薬学上許容可能なその塩または医薬組成物の投与を含む。予防剤/治療剤および/または組成物の組み合わせは、従来の剤形にて投与されてもよくまたは同時投与されてもよい(例えば、連続して、同時に、異なる時に)。本発明の文脈での同時投与は、改善された臨床転帰を達成するための協調治療の経過にて1を超える治療剤の投与を指す。そのような同時投与は、同一の広がりを持ち、すなわち、重複した時間の間に生じ得る。例えば、第2の剤を投与する前に、同時に、前後に、または後に第1の剤を患者に投与し得る。本発明の一態様において、剤は単一組成物にて組み合わせられ/製剤化されるので、同時に投与され得る。本発明の他の態様において、当該疾病を予防するまたは治療するのに現在使用されている1以上の剤との併用で本発明の(単数もしくは複数の)活性剤が使用され/投与される。従って、実施形態では、ペプチド組成物は、抗癌療法、例えば、化学療法剤、血管形成阻害剤、ホルモン療法、放射線療法、光力学療法、手術、免疫療法、ワクチンまたは移植との併用で投与され/使用される。従って、本発明の想定する態様において、本発明のラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物/医薬組成物は、抗ウイルス治療法と組み合わせて投与/使用される。本明細書中に示したラビリントペプチン/ラビリントペプチン誘導体/組み合わせ物/医薬組成物との共同療法で使用され得る潜在抗ウイルス治療法が、本明細書中に記載されている。
本明細書中に使用される場合、用語「対象」(「患者」とも呼ばれる)は、例えば哺乳動物など、例えばラクダ、ネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ブタ、ウシ(cattle、例えばbovine cowなど)、ヒツジおよびヒトなどの温血動物を意味すると解釈される。対象が哺乳動物であることが好ましい。対象がヒトであることが最も好ましい。特に、VSVの感染の場合には、対象はまた動物でもあり、好ましくはウシ、ブタまたはウマであってもよい。
本発明との関連において、「同一性」、「パーセントの同一性」、または「X%同一」とは、アミノ酸配列が、配列番号3の配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも95%;または、配列番号4の配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも94%の同一性を有することを意味し、ここで、それが低いほど、より高い同一性値が好まれる。本発明によれば、2以上のアミノ酸配列との関連において「(単数もしくは複数の)同一性」または「(単数もしくは複数の)パーセントの同一性」という用語は、同じであるか、または同一であるアミノ酸が指定されたパーセンテージを占める(例えば、配列番号3のアミノ酸配列に対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも95%の同一性を有する;または配列番号4の配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびより一層好ましくは少なくとも94%の同一性を有する);かつ、機能的である2以上の配列を指し、ここで、機能とは、比較ウィンドウにわたって、または当該技術分野で知られている配列比較アルゴリズムを使用して、または手動整列および目視検査によって計測した場合に設計した領域にわたって、比較および整列したときには、好ましくはRSV、KSHV、CMV、DENV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、および/またはHCVに対して抗ウイルス活性を含む。
好ましくは、記載した同一性は、長さが少なくとも約10アミノ酸、好ましくは少なくとも15アミノ酸、より好ましくは少なくとも20アミノ酸の領域、そして、最も好ましくは配列番号3または4のすべてのアミノ酸にわたって存在する。
当業者は、当該技術分野で公知の、例えばCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson, 1994, Nucl Acids Res, 2: 4673-4680)またはFASTDB(Brutlag, 1990, Comp App Biosci, 6: 237-245)に基づくものなどのアルゴリズムを使用して配列間/中のパーセント同一性をどのように決定するか知るであろう。BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズム(Altschul, 1997, Nucl Acids Res 25: 3389-3402; Altschul, 1993, J Mol Evol, 36: 290-300; Altschul, 1990, J Mol Biol 215: 403-410)もまた当業者が利用可能である。例えば、Basic Local Alignment Search Tool、BLAST(Altschul, 1997, loc. cit.; Altschul, 1993, loc. cit.; Altschul, 1990, loc. cit.)を表すBLAST2.0は、局所的な配列整列を検索するために使用できる。先に述べたとおり、BLASTは、ヌクレオチドとアミノ酸の両方の整列を作成して、配列の類似性を決定する。整列の局所的な性質のため、BLASTは、完全な一致を測定する際に、または類似配列を同定する際に、特に有用である。
BLAST(Altschul, 1997, loc. cit.; Altschul, 1993, loc. cit.; Altschul, 1990, loc. cit.)を使用する類似のコンピュータ技術が、例えばGenBankまたはEMBLなどのヌクレオチドデータベースにおいて同一分子または関連分子を検索するのに使用される。
以下の制限されることのない図面および実施例の参照によって、本発明はさらに説明される。図面を以下を示す。
(A)ランチオニンおよび(B)ラビオニンの化学構造 デヒドロブチラートの化学構造 それらの立体化学を示すLabyA1およびLabyA2の化学構造 LabyA1、LabyA2、LabyA1-Hexyn、およびLabyA2-Hexynの化学構造 ラビリントペプチンによるCMV感染の用量依存的阻害。GFP発現性CMV(すなわち、HCMV)菌株を感染させた、および指示した濃度のラビリントペプチンA1およびA2で処置されたNHDF細胞(三連)の培養物のGFPシグナル(相対ユニット+/-SD)を、感染後4日目で測定した。物質のIC50値は、Graphpad Prismの非線形当てはめログ(阻害剤)対応答(3つのパラメーター)分析を使用して計算された。2つの実験のうちの1つの代表的結果が示されている。 ラビリントペプチンは、初期相においてCMV感染を阻害する。NHDF細胞を、GFP発現性CMV菌株に感染させ、そして、試験化合物を、示した時点で添加した。感染96時間後に、感染培養物(三連)の細胞におけるGFP発現が計測された。LabyA1およびA2の濃度は、それぞれ、3μMおよび7μMであった。データは、三連培養で計測された値の平均(+/-SD)である。2つの実験のうちの1つからの代表的なデータが示されている。 ラビリントペプチンの作用機序。CMV粒子またはNHDF細胞を、ラビリントペプチン、PAAまたはDMSOと共に1時間プレインキュベートするか、または無処置のままにした。次に、サンプルの培地を、先の実験で有効であることがわかったラビリントペプチンの濃度を下回る、16倍希釈し、続いて、CMV植菌を3時間おこない、そして、最後に新しい培地に置き換えた。対照のために、培養物を、有効量の物質または16倍希釈した濃度にて永続的に処理した。細胞のEGFP発現(五連の平均)は感染4日後に計測された。実験は3回繰り返し、類似の結果を伴った。 TOA実験のデザインを示す図表。 作用機序アッセイの概要。 DENV感染に対するラビリントペプチンA1とA2の相乗効果。Huh-7細胞を、濃度を変えたLabyの存在下でインキュベートし、そして、30分後にDENVに晒した。感染48時間後に、高精細な蛍光画像法を介してDENV-エンベロープタンパク質発現(AlexaFluor488免疫染色)を評価することによって、DENV陽性細胞の数を測定した。全細胞数を、DAPI核染色を評価することによって測定した。IC50値は、LabyA1(IC50=3.7μg/ml)が、LabyA2(IC50=15.4μg/ml)に比べてウイルス感染のより強力な阻害剤であることを示す。LabyA1とLabyA2が1:1の組み合わせで適用されたとき、それらの抗ウイルス活性はさらに改善される(IC50=2.6μg/ml)。(値は±SEM、n=5) Laby-Hexyn誘導体は抗DENV活性を維持する。Huh-7細胞を、濃度を変えたLaby-Hexyn誘導体の存在下でインキュベートし、そして、30分後にDENVに晒した。感染48時間後に、高精細な蛍光画像法を介してDENV-エンベロープタンパク質発現(AlexaFluor488免疫染色)を評価することによって、DENV陽性細胞の数を測定した。全細胞数を、DAPI核染色を評価することによって測定した。IC50値は、Laby-Hexyn誘導体がそれらの抗DENV活性を維持することを示す:IC50(LabyA1-Hexyn)=3.7μg/ml、IC50(LabyA2-Hexyn)=14.2μg/ml、IC50(LabyA1-Hexyn/LabyA2-Hexynの1:1の組み合わせ物)=2.0μg/ml。(値は±SEM、n=3である) インビトロにおける固定化Laby-Hexyn誘導体へのビオチン-アジドの双極子環付加。2μgのLaby誘導体を、Nunc Maxisorp96ウェルプレート上に固定した。PBS中の1% BSAを用いたブロッキング後に、ビオチン-アジドを含むもしくは含まない双極子環付加のための反応ミックスを、2時間かけて適用した。続いて、反応の成功を、アビジン標識HRPを伴ったウェルの1時間のインキュベーションと、その後の基質溶液C[BioLegend]の添加によって誘発される呈色反応によって確認した。呈色反応を、50μlのHPO(1M)の添加によって停止させ、そして、OD450nmを観察した。(値は±SEM、n=2) 実施例4のスクリーニングシステムの略図 実施例4のスクリーニングシステムのアッセイバリデーション。細胞生存を、クリスタルバイオレットで染色することによって評価される。 実施例4のスクリーニングシステムのアッセイバリデーション。RSVおよびリバビリンの存在下での細胞生存を示す。 ラビリントペプチンは、RSV誘発性細胞死およびRSウイルス感染を阻害する。A:RSVおよびLabyA1の存在下での細胞生存;B:RSVおよびLabyA2の存在下での細胞生存; ラビリントペプチンは、RSV誘発性細胞死およびRSウイルス感染を阻害する。C:ラビリントペプチンは、RSV感染症を阻害する。 A:薬理学的および免疫学的阻害、ならびに細胞制限のためのチクングニヤウイルス糖タンパク質媒介性およびVSV糖タンパク質媒介性細胞侵入過程の感受性の特徴づけ。 B:ラビリントペプチンA1。 TBEV感染症に対するラビリントペプチンの効果。 ZIKV感染症に対するラビリントペプチンの効果。 HCV感染に対するラビリントペプチンの効果。A:HCV JcR2aに対するラビリントペプチンA1抗ウイルス活性。 HCV感染に対するラビリントペプチンの効果。B:HCV JcR2aに対するラビリントペプチンA2抗ウイルス活性。 ラビリントペプチンA1およびA2の細胞傷害性濃度(CC50)。
実施例は、本発明を例示する。
実施例1:材料と方法
用量応答アッセイ
抗ウイルス性アッセイは、NHDF細胞におけるCMV駆動性GFP発現の阻害に基づいている。簡単に言えば、NHDF細胞(1ウェルあたり~1.6×10)を、感染の1日前に96ウェルプレート内に播種した。様々な濃度のラビリントペプチンA1(終濃度10、5、2、1、および0.5μM)およびラビリントペプチンA2(終濃度15、10、5、2、および1μM)を、三連で200μl/ウェルの全容積まで細胞に与えた。PAA(180μM)を陽性対照として加えた。DMSOで希釈された物質の対照として、DMSOを、細胞に加えられる物質でおこなわれる最高濃度で感染細胞または非感染細胞のいずれかに加えた。1時間のインキュベーション後に、CMV(すなわち、HCMV)実験室株AD169に基づくGFP発現性CMV(すなわち、HCMV)菌株pHG-1(Borst, J. Virol. 2005 (79): 3615-26; herein called HT8-GFP)を、0.5のMOIにて細胞に追加し、細胞がさらに4日間インキュベートした。感染4日後に、ウェルから培地を取り出し、計測前に、細胞を3%のPFAで固定し、PBSで洗浄し、それに続いてPBSを加えた。細胞からのGFP発現を、BioTek Synergy2を使用して計測した;励起波長のプロトコールを485/20nmに設定し、かつ、発光波長は516/20nmであった。
時間依存性薬物添加(TOA)実験
TOA実験を、96ウェルプレート内で1ウェルあたり1.6×10個のNHDF細胞を使用しておこなった。ラビリントペプチンA1(3μm)、A2(7μm)、DMSO(0.1%)またはPAA(180μM)をウイルス添加の-1、0、1、3、6、24、48、72時間で培養物に追加した。細胞を、0時間に0.5の感染多重度(MOI)でHT8-GFPに感染させた。感染の96日後に、細胞のGFP発現を上記のとおり計測した。
作用機序アッセイ
8×10PFUのHT8-GFP発現AD169菌株および1.6×10NHDF細胞/ウェルを、それぞれ3μMおよび7μMのTOA LabyA1およびA2と共に1時間プレインキュベートし、次に、細胞にそれらを加えるか、または5つのウェルでウイルスへの感染前に、16倍希釈した。感染の3時間後に、培地を新しい培地に交換し、そして、対照のために、インキュベーション、ウイルスおよび細胞を、DMSO(物質の最高濃度)およびPAA(180μM)と共に1時間プレインキュベートし、それに続いて、それらを16倍希釈し、そして、3時間にわたりウェルに加え、次に、新しい培地に交換した。
KSHV感染症に対するラビリントペプチンの用量依存性効果
3×10個のHEK293細胞を、96ウェルプレート内の成長培養(DMEM;10%のFBS)中に播種し、37℃および5%のCOにて24時間インキュベートした。培地の除去後、20μlの、0.01のMOIの(細胞株BJAB-rKSHV(Kati, J Virol. 2013, 87(14):8004-16; Kati, J Virol Methods. 2015; 217:79-86)から生じた)KSHV溶液と一緒に180μlの成長培地を各ウェルに適用した。同時に、示した量のLabyA1またはLabyA2を加えた。48時間のインキュベーション後に、GFP発現性HEK293細胞を蛍光顕微鏡下でカウントした。図面の所定のデータ点は三連の平均である。結果を、以下の表4に示す。
用量応答アッセイ
Huh-7.5細胞(1ウェルあたり3×10)を、感染の前日に、黒色96ウェル光学底面プレート[Nunc]内の成長培地中に播種した。PBSで洗浄した後に、LabyA1、LabyA2(終濃度50、16.7、5.56、1.85、0.62、0.21、0.069μg/ml)またはLabyA1およびLabyA2の組み合わせ物(25、8.3、2.8、0.93、0.31、0.10、それぞれ0.034μg/ml)を含む40μlのアッセイ培地(5%のFBS)を細胞に追加した。処理を二連でおこなった。PBSは対照としての役割を果たした。30分間のインキュベーション後に、細胞を、0.5のMOIにてデングウイルス(2型ニューギニアC株)に感染させて、60μl/ウェルの終量を得た。室温にて2時間のインキュベーション後、細胞はPBSで洗浄され、そして、100μlのアッセイ培地がウェルごとに加えた。感染細胞は、さらに48時間インキュベートされ得る。以降、ウェルから培地が取り出され、そして、4%のPFAで細胞が固定した。固定化細胞は、PBSで広範囲に洗浄され、そして、0.25%のTritonX-100で5分間、透過処理した。PBS中の5% FBSでのブロッキング後に、一次抗体が、2時間適用した(抗デング熱ウイルスE糖タンパク質抗体[DE1](ab41349)[Abcam]、5%のFBS/PBS中、1:100希釈)。洗浄後、二次抗体(例えば、Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗マウスIgG(H+L)[Life Technologies]、5%のFBS/PBS中、1:1000希釈)が1時間適用した。最後に、細胞はDAPI(PBS中、500ng/ml)で5分間染色した。
蛍光細胞は、自動化顕微鏡ImageXpressMicro[Molecular Devices]およびMetaXpressソフトウェアを使用した高精細画像化によって分析した。励起波長は360nm(DAPI)および485nm(Alexa Fluor488)に設定し、そして、発光波長は460nm(DAPI)および516nm(Alexa Fluor488)に設定した。6つの部位/ウェルの画像を取得した(2列、89μm間隔、3行、67μm間隔)。全細胞/部位の数は、DAPI染色核を自動的にカウントすることによって測定した。ウイルス陽性細胞(例えば、DENV陽性細胞)のパーセンテージは、総細胞数に対するAlexa Fluor 488陽性細胞数を自動的に評価することによって計算した。6つの部位から得られた値は、平均化され、そして、片対数X/Yチャートにプロットした。IC50値は非線形回帰によって計算した。
LabyA1-Hexyn誘導体の合成
ジメチルホルムアミド(例えば、1ml)中の2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(1mg、0.006mmol)の溶液に、n-メチルモルホリン(2μL、0.015mmol)を室温にて加えた。室温にて1時間の撹拌後に、5-ヘキシン酸(0.5μL、0.004mmol)を加えた。30分間の撹拌後に、ラビリントペプチンA1(6mg、0.003mmol)を反応混合物に加えて、室温にて16時間撹拌した。反応混合物を、溶出液として0.1% HCOOHを含む水中のアセトニトリル(10-90%)を用いたGemini5μC18カラム(寸法:250mmの×20mm)を使用した逆相HPLCによって精製してもよい。ピークは、220nmにてUV検出法に基づいて分画化した。回収した所望の化合物を、凍結乾燥し、2mg(31.7%)を得た。生成物を高分解能質量分析法によって特徴づけした。
HRMS(Q-tof):計算値C981262326[M+H]2168.8127、実測値2168.7821。
LabyA2-Hexyn誘導体の合成
ジメチルホルムアミド(例えば、1ml)中の2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(1mg、0.006mmol)の溶液に、n-メチルモルホリン(2μL、0.015mmol)を室温にて加えた。室温にて1時間の撹拌後に、5-ヘキシン酸(0.5μL、0.004mmol)を加えた。30分間の撹拌後に、ラビリントペプチンA2(6mg、0.003mmol)を反応混合物に加えて、室温にて16時間撹拌した。反応混合物を、溶出液として0.1% HCOOHを含む水中のアセトニトリル(10-90%)を用いたGemini5μC18カラム(寸法:250mmの×20mm)を使用した逆相HPLCによって精製してもよい。ピークは、220nmにてUV検出法に基づいて分画化した。回収した所望の化合物を、凍結乾燥し、1.5mg(23.8%)を得た。生成物を高分解能質量分析法によって特徴づけした。
HRMS(Q-tof):計算値C911172025[M+H]2017.7381、実測値2017.7376
固定化Laby-Hexyn誘導体に対するビオチン-アジドの双極子環付加
すべてのその後の洗浄ステップを、200μlのPBSで3回おこなった。2μgのLabyA1-Hexyn、LabyA2-HexynまたはLabyA1を、コーティングバッファーA[BioLegend]で希釈し、96ウェルプレート(Nunc Maxisorp)に4℃にて16時間、三連で吸着させた。PBSで洗浄した後に、ウェルを、PBS中の(阻害バッファー)1% BSA(w/v)で室温にて1時間ブロッキングした。ウェルズを再びPBSで洗浄し、そして、100μlの環付加反応ミックス(2mMのCuSO、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、100μMのビオチン-アジド[アジド-PEG3-ビオチン複合体、Sigma])、ブロッキングバッファー中に希釈)を適用した。ビオチン-アジドを含まない環付加反応ミックスは、対照としての役割を果たす。反応を室温にて2時間おこなった。PBSで洗浄した後、ウェルを、100μlのアビジン標識ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)[BioLegend]含有ブロッキング溶液と共に1時間インキュベートした。最後に、ウェルをPBSで洗浄し、100μlの基質溶液C[BioLegend]を各ウェルに適用した。呈色反応を、50μlのHPO(1M)の添加によって15分後に停止した。OD450nmを、自動化プレートリーダ[Biotek]を使用して測定した。
チクングンヤウイルスアッセイ
HEK293T細胞を、96ウェルプレート(2×10細胞/ウェル)に播種し、標準条件下で培養した。翌日、ルシフェラーゼをコードするVSV-G-およびCHIKV gp-偽型レンチウイルス粒子を、指示した濃度のラビリントペプチンA1またはDMSOで処理した。細胞を、ラビリントペプチンA1処置またはDMSO処置ベクター粒子で形質導入し、そして、48時間培養した。その後、形質導入細胞のルシフェラーゼ活性を、蛍光計量的に計測した。IC50値を、GraphPad Prism5を使用して計算した;実施例5および図17を参照。
実施例2:CMV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の効果
CMV感染に対するラビリントペプチンの用量依存性効果
CMV(すなわち、HCMV)感染に対するラビリントペプチンの潜在効果を測定するために、0.5PFU/細胞の感染多重度にてGFP発現CMV株で感染させる1時間前に、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養物を、様々な濃度のラビリントペプチンA1およびA2で処置した。4日間後、細胞のGFP発現を、ウイルス遺伝子発現の読み出しとして計測した。DMSO処理細胞(DMSOはラビリントペプチンの希釈剤である)および未処理細胞は、感染の陽性対照として、および非感染細胞は陰性対照としての役割を果たす。ホスホノ酢酸(PAA)を用いた感染細胞培養物の処理は、ウイルス複製の阻害について陽性対照を使用した。
ラビリントペプチンは、用量依存的様式によるCMVと共に植え付けた細胞におけるウイルス駆動GFP発現を阻害した(図5)。ラビリントペプチンA1およびA2のIC50値は、それぞれ約1.3および5.4μMであった。
CMVのライフサイクル中のラビリントペプチンの阻害効果のタイムポイント
ラビリントペプチンが効果を発揮するCMV感染サイクルの相に対して発想を得るために、時間依存性添加を実施した。(それぞれ、3および7μMの終濃度にて)ラビリントペプチンA1およびA2を、CMVの植菌の前、同時またはそれに続いて細胞培養物に添加した(図6を参照)。成功したウイルス感染の読み出しとしてGFP発現を、感染後4日目に計測した。DMSO処理培養物は対照としての役割を果たす。
ウイルス遺伝子発現の最も強い阻害(ほとんど完全阻害)を、物質を培養のウイルス植菌の前または同時に添加したときに観察した。約50%の阻害は、化合物を植菌の1時間後に加えたときに起こり、そして、約25%の阻害は、移植後3および6時間での添加時に起こった。後者の時点にて、ウイルス感染は最小限だけ阻害される場合がある。
これらの結果は、ラビリントペプチンがウイルス感染の初期段階、またはもしかするとウイルス粒子に直接作用することを示唆する。当業者は、示した実験において、細胞内へのCMVの侵入が同時でなかったことを指摘する必要がある。植え付けられたウイルスの実質的な部分は、感染の1時間後に侵入したが、他の粒子は、細胞表面に結合したままであり、細胞の侵入だけがそれに続く場合がある。
ウイルス粒子に対するラビリントペプチンA1およびA2の推定効果
物質が主にウイルス粒子または細胞に作用するか知るために、以前の実験で有効であることがわかった(>98%の感染予防)ラビリントペプチンA1およびA2の濃度(それぞれ3μMおよび7μMのLabyA1およびA2)を使用して前処理を実施した。
1時間のインキュベーションに続いて、ウイルスのサンプルまたは細胞培養における培地を16倍希釈し、用量-応答曲線(図5を参照)に従って効果を発揮しない化合物の濃度を得た。次に、前処理ウイルスを細胞に追加したか(図7、「ウイルス前処理」群)、または未処理ウイルスを前処理細胞に加えて(図7、「細胞前処理」群)、続いて、3時間インキュベーションし、そして、新しい培地で種菌を置き換えた。GFP発現を感染の96時間後に測定した。並行して、培養物を、CMV植菌と同時に、有効用量の化合物または16倍希釈濃度(図7、希釈)で処理して、その化合物による阻害または16倍希釈による喪失について確かめた。PAAおよびDMSOを、対照として使用した。
ラビリントペプチンA1およびA2を用いたウイルスの前処理により、ウイルス遺伝子発現をそれぞれ~50%および~90%阻害した。基本的に、細胞の前処理によって観察された阻害はなかった。高濃度のラビリントペプチンA1およびA2を用いた感染サイクルを通じた感染細胞の処置は、予想されるように約100%の阻害をもたらしたが(図7、群「永続的に処置、有効用量)、その一方、16倍希釈濃度を用いた永続的療法(図7、群「永続的処置、16倍希釈」)の後には、わずかな阻害だけが見られた。PAA-感染後期にウイルスDNAポリメラーゼに作用する可溶成分として-は、培地中に永続的に存在するときのみ(予想どおり16倍希釈濃度を適用したときにはある程度まで)阻害を発揮したが、ウイルスまたは細胞の前処理後にそれが取り除かれたとき、阻害を発揮しなかった。
その結果は、ラビリントペプチンが主にウイルス粒子に作用することを示唆する。永続的処理において見られた効果と比較して、どういうわけか低減したラビリントペプチンA1を用いた前処理の阻害効果は、阻害が部分的に可逆的であるか、またはCMVの細胞付着相または侵入相の間にその物質がさらに有効になることを示唆している可能性がある。
実施例3:DENV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の効果
DENV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の相乗効果
DENV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の潜在相乗効果を測定するために、用量応答アッセイをおこなった。Huh-7.5細胞(ヒト肝癌細胞株)の培養物を、様々な濃度のLabyA1、LabyA2または等価のLabyA1およびLabyA2の組み合わせ物のいずれかで30分間処理した。それに続いて、細胞を、0.5PFUのMOIで室温にて2時間、DENV(2型ニューギニアC株)に感染させた。未結合ウイルス粒子を取り除き、そして、感染細胞を48時間インキュベートした。これ以降、細胞を、PBS中の4% PFAを使用して固定し、DENVエンベロープタンパク質の発現について免疫染色した。このために、抗デングウイルスE糖タンパク質抗体とAlexa Fluor 488結合二次抗体の組み合わせを適用した。さらに、細胞核をDAPIで染色した。全細胞数、ならびにAlexa Fluor 488陽性細胞(=DENV陽性細胞)のパーセンテージを、高精細な蛍光画像法で測定した。
IC50値は、LabyA1(IC50=3.7μg/ml)が、LabyA2(IC50=15.4μg/ml)に比べて、ウイルス感染のより強力な阻害剤であることを示唆する。LabyA1とLabyA2を1:1の組み合わせで適用したとき、それらの抗ウイルス活性はさらに改善される(IC50=2.6μg/ml)(図10)。
Laby-Hexyn誘導体は抗DENV活性を維持する
作用機序の研究を実施するために、我々は、N末端Hexyn基を担持するLaby誘導体を作製した。これらは、例えば、アジド標識フルオロフォアの双極子環付加によってインビトロおよびインビボにおいてさらに誘導体化される可能性がある。DENV感染に対するLaby-Hexyn誘導体の生物学的活性を測定するために、用量応答アッセイを先に示したようにおこなった。得られたIC50値は、非結合Labyに関して得られたIC50値に類似しているので、これにより、Laby-Hexyn誘導体がそれらの抗DENV活性を維持することを示唆する:IC50(LabyA1-Hexyn)=3.7μg/ml、IC50(LabyA2-Hexyn)=14.2μg/ml、IC50(LabyA1-Hexyn/LabyA2-Hexynの1:1組み合わせ物)=2.0μg/ml(図11)。
固定化Laby-Hexyn誘導体へのビオチン-アジドの双極子環付加
双極子環付加がLaby-Hexyn誘導体を用いてインビトロにおいて動作するか否かを試験するために、これらを96ウェルプレート(Nunc Maxisorp)上に固定した。2μgのLabyA1-Hexyn、LabyA2-HexynまたはLabyA1を、コーティングバッファーA[BioLegend]で希釈し、そして、4℃にて16時間、96ウェルプレートの1つのウェルに三連で吸着させた。ビオチン-アジドの環付加反応を、材料と方法で示したようにおこなった。ビオチン-アジドを含んでいない環付加反応ミックスは、対照としての役割を果たす。
顕著なOD450nmによって示されるデータが、固定化Laby-Hexyn誘導体に対するビオチン-アジドの双極子環付加が良好に動作することを実証する。対照的に、双極子環付加は、非アルキニル化Labyによって動作しない(図12)。
実施例4:RSV誘発性細胞死およびRSウイルス感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の効果
ラビリントペプチンA1およびA2がRSV誘発性細胞死を阻害する
細胞ベースのスクリーニングシステムを使用して、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV、hRSVとも呼ばれる)に対するラビリントペプチンA1およびA2の抗ウイルス効果を測定した。スクリーニングシステムの略図を図13に示す。
ホタルルシフェラーゼ(FF-luc)のレポーター遺伝子を安定して発現するHEp-2細胞を、96ウェルプレート内の200μlの適当な培地中に播種する。非感染細胞と感染細胞の間の有用な測定ウィンドウを得るために、インキュベーション時間を、3のMOIを用いた37℃にて72時間にセットした。72時間後に、細胞を溶解し、そして、FF-lucによって生じた発光をプレートルミノメータを使用して計測した(RLU単位)。様々な濃度のラビリントペプチンA1およびA2の存在下で、細胞をRSVに感染させた。RSVは溶菌性ウイルスであり、感染細胞を殺滅する。そのため、RSVの無制限な感染および蔓延は、細胞死をもたらし、この結果として、ルシフェラーゼ遺伝子発現の減少につながるであろう。生存細胞の数を、ウイルス感染/複製効率に間接的に比例する。言い換えれば、より多くの細胞が生き残れば生き残るほど、より少ないRSVが細胞を感染させることができた。細胞生存は、総生存細胞の測定によって(例えば、生き残っている細胞を染色するクリスタルバイオレットで染色することによって;図14と比較)評価および定量化できる。そのうえ、細胞生存は残留ルシフェラーゼ発現に比例する。我々のアッセイの正当性を確認するために、我々は、細胞培養においてRSV複製を阻害することが知られている、グアノシンヌクレオシド類似物質であるリバビリンを使用した(図15)。半減阻害濃度(IC50)を、6つの独立した実験においてラビリントペプチンA1、IC50=3.87μM(図16A)、そして、3つの独立した実験においてラビリントペプチンA2、IC50=47.93μM(図16B)を計算した。
ラビリントペプチンA1およびA2は、RSV感染を阻害する
野生型RSV(すなわち、hRSV)感染および細胞内RSV-P染色を、ラビリントペプチンA1およびA2のIC50を測定するのに使用した(図16Cを参照)。
そのため、12ウェルプレートに播種した1×10個のHEp2細胞に、水平振盪機により1の感染多重度(MOI)にて野生型RSVを4時間、植え付けた。植菌は、様々な濃度のラビリントペプチンA1またはA2と一緒におこなった。4時間後に、細胞を、無菌PBSで洗浄し、37℃にてインキュベートした。感染の18時間後に、トリプシン処理することによって細胞を剥がし、そして、固定化バッファー(0.5%のパラホルム、リン酸緩衝食塩水[PBS]中の1%のウシ胎仔血清[FCS])中、4℃にて30分間固定した。それに続いて、細胞を、4℃にて20分、サポニン含有透過化バッファー(0.1%のサポニン、PBS中の1%のFCS)で透過処理した。その後、細胞を、透過化バッファーで1:500に希釈したRSV-P特異的抗体(26D6G5C6)を用いて4℃にて30分間染色した。それに続いて、細胞をPBSで洗浄し、そして、結合抗体を、透過化バッファーで1:200に希釈したマウス特異的Alexa488二次抗体(Thermo Fisher Scientific)を用いた4℃にて30分間のインキュベーションによって検出した。染色した細胞を、PBSで二度洗浄し、Accuri C6およびFlowJoソフトウェアを使用して分析した。
半減阻害濃度(IC50)を、ラビリントペプチンA1、IC50=0.39μMおよびラビリントペプチンA2、IC50=4.97μMについて計算した(図16Cを参照)。
実施例5:薬理学的および免疫学的な阻害と細胞制限に対するチクングニヤウイルス(CHIKV)糖タンパク質媒介性
および口内炎インディアナウイルス(VSV)糖タンパク質媒介性細胞侵入過程の感受性の特徴づけ
ここで、CHIKVまたはVSV糖タンパク質媒介性侵入過程の特性、および薬理学的および免疫学的阻害、ならびに細胞抗ウイルス性IFITMタンパク質による制限に対するそれらの感受性を試験するために、それらの表面上のCHIKV糖タンパク質E1およびE2またはVSV糖タンパク質を担持するレンチウイルスベクターを使用する。
ラビリントペプチンA1を用いた293T細胞の処理は、0.5~1.7μMのIC50値を得る;図17を参照、糖タンパク質を発現するCHIKV偽型を用いた抗原投与による導入効率の用量依存的阻害をもたらした。CHIKV糖タンパク質における亜系特異的突然変異の導入は、レンチウイルスベクターの侵入効率を大きく調節することなく、そして、すべての変異体がCHIKV E2を標的化するモノクローナル抗体による中和への感受性を維持した。レンチウイルスベクターのCHIKV糖タンパク質媒介性細胞侵入を制限する細胞IFITMタンパク質の能力を、個々のC末端HAタグ付与ヒトIFITMタンパク質を安定して発現する293T細胞株において調べた。興味深いことに、標的細胞のIFITM1-HA、IFITM2-HA、およびIFITM3-HAの発現は、ベクター発現細胞と比較して、それぞれ、導入効率の2分の一の低減をもたらした。それらの抗ウイルス活性のために保存部分のパルミトイル化およびユビキチン化を含めた、IFITMタンパク質の適当な翻訳後修飾形の必要性、ならびにIFITMタンパク質の抗ウイルス能力の種特異性は、現在、調査されている。興味深いことに、選択されたCHIKV糖タンパク質変異形は、IFITMのタンパク質媒介性制限に対する高い感受性を示すように思える。
VSV糖タンパク質媒介性侵入過程、ならびにラビリントペプチンA1による阻害に対するその感受性を、先にCHIKVについて記載したものと同じ様式で分析した。ラビリントペプチンA1を用いた293T細胞の処理は、VSV糖タンパク質発現偽型を用いた抗原投与の導入効率の用量依存的阻害をもたらし、図17に示したようなIC50値をもたらした。
実施例6:TBEV感染に対するラビリントペプチンの効果
1.5×10個のVero B4細胞を、96ウェルプレートの培養培地(DMEM;10%のFBS)中に播種し、37℃および5%のCOにて24時間インキュベートした。培地除去後に、LabyA1、LabyA2またはLabyA1/LabyA2の1:1混合物を、26.5μlの培地中の細胞に添加した。37℃にて30分間のインキュベーション後に、細胞を、0.01のMOIにて1時間、TBEV(Toro単離株)に感染させた。得られた1ウェルあたり64μlの全容積において、Labyの最高濃度は50μg/mlであり、連続3倍希釈で最低0.07μg/mlが適用される。種菌除去後に、感染細胞を、アビセルとDMEMの混合物中で3日間培養した。最後に、感染細胞を、6%のホルムアルデヒドで固定した。TritonXでの透過処理後に、TBEVエンベロープタンパク質を、それぞれの一次抗体およびHRP連結二次抗体によって検出した。酵素反応を、TrueBlue Peroxidase基質を使用しておこなった。細胞培養プレートの写真を、ChemiDoc Imaging System[BioRad]を用いて撮影した;図18を参照。IC50値を、ウェルの目視検査によって評価した。画像では、感染領域が黒色に見え、そして、非感染領域は白く見える;図18を参照。
LabyA1のIC50値は、それぞれ24.10μMおよび50μg/mlであり;
LabyA2のIC50値は、それぞれ>25.99μMおよび>50μg/mlであり;そして、LabyA1とLabyA2の組み合わせ物のIC50値は、それぞれ8.34μMおよび16.67μg/mlであった;表4を参照。
実施例7:ZIKV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の効果
Huh-7.5細胞(ヒト肝癌細胞株)の培養物を、様々な濃度のLabyA1、LabyA2またはLabyA1とLabyA2の等価組み合わせ物のいずれかで30分間処理した。続いて、細胞を0.5PFUのMOIで室温にて2時間、ZIKV(菌株MR766-NIID)に感染させた。非結合ウイルス粒子を除去し、そして、感染細胞を48時間インキュベートした。これ以降、ウイルスRNAを、製造業者のマニュアルに従ってNucleoSpin(登録商標)96ウイルスキット[Macherey-Nagel]を使用して細胞培養上清(150μl)から単離した。RNAを、吸光度によって定量化し、そして、2.5μgを、RTプライマー[5’-GGTTTCCCAGCTTCTCCTGG-3’]を用いてRevertAid Reverse Transcriptase[Thermo]によって逆転写した。100ngの逆転写RNAを、LightCycler(登録商標)480 SYBR Green I Master[Roche]およびZIKV特異的フォワードおよびリバースプライマー対(それぞれ、5’-AAAAACCCCATGTGGAGAGG-3’および5’-CATTCCTTCAGTGTGTCACC-3’)を用いたLightCycler(登録商標)480を使用したSYBRグリーンベースの定量的RT-PCRにかけた。ZIKVゲノムコピー同等物(GCE)の絶対数を、ZIKVゲノムのそれぞれの増幅断片を担持している既知濃度のプラスミドから作成した検量線を介して決定した。値は±SEMである;n=4。LabyA1(IC50=4.6μg/ml);LabyA2(IC50=5.4μg/ml);組み合わせ物LabyA1とLabyA2(IC50=3.5μg/ml)。
実施例8:HCV感染に対するラビリントペプチンA1およびA2の効果
Huh7.5ホタルルシフェラーゼ発現細胞(Huh7.5Fluc)細胞を、96ウェルプレート内に播種し(1010細胞/ウェル)、そして、5%のCOを供給しながら37℃にて一晩インキュベートした(約18時間)。Huh7.5Fluc細胞は、細胞生存率を計測するのに使用されるホタルルシフェラーゼタンパク質を安定して発現する肝細胞癌細胞株である。
翌日、様々な濃度のラビリントペプチンを、培養中に産生されたHCV JcR2aを含む培地に加え(ウイルスを含む445.5μLの培地を8本のエッペンドルフに移し、そしてそのそれぞれは、所望の終濃度を達成するために様々な濃度にて4.5μLの化合物を含んでいた;すなわち、50μM、25μMなど)、9番目のエッペンドルフ(陽性対照)はDMSO溶媒を含んでいた。C型肝炎ウイルスJcR2aレポーター構築物を使用した(遺伝子型2、細胞株A、そのオープンリーディングのフレーム内に融合したRenillaルシフェラーゼ遺伝子を有するchemiric構築物。ウイルスゲノム翻訳および複製はRenillaルシフェラーゼ発現に相関している)。
次に、ウイルス/化合物調製物を、二連で細胞に植え付け、そして、5%のCOを供給しながら37℃にて4時間インキュベートした。4時間後に、ウイルス/化合物を含んでいる培地をセルから吸引し、それに続いて、細胞を1ウェルあたりの200μLの無菌のPBSで洗浄し、すべての残存ウイルスまたは化合物を除去した。
細胞に200μL/ウェルのDMEMで補給し、5%のCOを供給しながら37℃にて48時間インキュベートした。48時間後に、培地をウェルから吸引し、次に、細胞を200μLのPBSで2回洗浄した。次に、細胞を、1×不活性溶解バッファーで溶解し、そして、溶解物をBertholdプレートルミノメータで分析した。
細胞内へのウイルス侵入を、Renillaルシフェラーゼ発現を計測することによって定量化した。化合物で処理したウェルからの読み出しを、DMSO対照で処理したウェルからの読み出しに対して標準化した。ホタルルシフェラーゼを安定発現しながらの、Renillaルシフェラーゼの発現の減少は、細胞内へのウイルス侵入を阻害する化合物の能力に関係する。
図20Aからわかるように、LabyA1は、1.05μMのIC50および9.163μMのIC90にてHCVウイルス侵入を阻害する。図20Bは、LabyA2が、1.728μMのIC50および24.9μMのIC90でHCVウイルス侵入を阻害することを示す。試験したLabyA1およびLabyA2濃度にて、細胞毒性は観察されなかった。
実施例9:細胞ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)システム
細胞ベースのスクリーニングシステムを、ラビリントペプチンA1およびA2の細胞傷害濃度(CC50)を測定するのに使用した。
ホタルルシフェラーゼ(FF-luc)のレポーター遺伝子を安定して発現する、1×10個のHEp-2細胞を、96ウェルプレート内の200μlの適当な培地中に播種した。最大100μMの高濃度のラビリントペプチンA1またはA2の存在下、37℃にて72時間のインキュベーション後に、細胞を35μlの溶解バッファーで溶解し、そして、FF-luc(RLU)の消失を、プレートルミノメータ(Berthold)を使用して計測した。生存細胞数を、残留ルシフェラーゼ発現に間接的に比例する。
半減細胞傷害性濃度(CC50)を、ラビリントペプチンA1、CC50=79.70μMについて計算した。100μMの濃度まで検出可能なラビリントペプチンA2の細胞傷害性効果はなかった。
実施例10:ラビリントペプチンの抗ウイルス効果の概要
表4は、LabyA1、LabyA2、LabyA1とLabyA2の組み合わせ物(LabyA1/A2)、LabyA1誘導体「LabyA1-hexyn」(本明細書中で「LabyA1-Hexyn」とも呼ばれる)、LabyA2誘導体「LabyA2-hexyn」(本明細書中で「LabyA2-Hexyn」とも呼ばれる)、ならびにLabyA1-hexynとLabyA2-hexynの組み合わせ物(LabyA1/A2-hexyn)の抗ウイルス活性のIC50値を示す。
表4:ラビリントペプチン、ラビリントペプチンとラビリントペプチン誘導体の組み合わせ物の抗ウイルス活性のIC50値(μMおよびμg/ml単位)
Figure 0007185874000014
本発明は、以下のアミノ酸配列を参照する:
配列番号1:本発明のラビリントペプチンのアミノ酸配列
配列番号2:本発明のラビリントペプチン誘導体のアミノ酸配列
配列番号3:LabyA1のアミノ酸配列
配列番号4:LabyA2のアミノ酸配列
配列番号5:RTプライマー
5’-GGTTTCCCAGCTTCTCCTGG-3’
配列番号6:ZIKV特異的フォワードプライマー
5’-AAAAACCCCATGTGGAGAGG-3’
配列番号7:ZIKV特異的リバースプライマー
5’-CATTCCTTCAGTGTGTCACC-3’

Claims (5)

  1. 以下のアミノ酸配列:
    Figure 0007185874000015
    {式中、
    Labは、ラビオニンであり;
    は、Asn、Asp、およびGluから選択されるアミノ酸であり;
    は、Ala、Trp、およびSerから選択されるアミノ酸であり;
    は、Val、Leu、およびIleから選択されるアミノ酸であり;
    は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;
    は、GluおよびAspから選択されるアミノ酸であり;
    は、ThrおよびSerから選択されるアミノ酸であり;
    は、GlyおよびProから選択されるアミノ酸であり;
    は、3~5個のアミノ酸から成る配列から成り;
    は、H、(C-C12)アルキニル、C(O)-(C-C12)アルキニル、C(O)-O-(C-C12)アルキニル、およびC(O)NH-(C-C12)アルキニルから選択され;ここで、Rは、末端位置にアルキニル基を担持し;
    は、H、[C(O)]-NH-(C-C12)アルキニルまたは[C(O)]-O-(C-C12)アルキニルから選択される;ここで、部分[C(O)]は末端アミノ酸のカルボニル基であり;ここで、Rは、末端位置にアルキニル基を担持し;ここで、RがHであれば、RはHでない}を含むかまたはそれらから成る、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、サイトメガロウイルス(CMV)、デングウイルス(DENV)、チクングニヤウイルス(CHIKV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV;FSMEウイルス)、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、ジカウイルス(ZIKV)、および/またはC型肝炎ウイルス(HCV)から選択されたウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する際の使用のためのペプチドを含む医薬組成物。
  2. 前記医薬組成物が、RSV、KSHV、CMV、CHIKV、TBEV、VSV、ZIKV、およびHCVから選択されるウイルスのいずれか1つの感染を治療および/または予防する際の使用のためのものであり、かつ、医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記ペプチドが、最大30アミノ酸の長さを有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 以下の(i)または(ii)が適用される、
    (i)
    が、AsnまたはAspであり;
    が、AlaまたはTrpであり;
    が、ValまたはLeuであり;
    が、Trpであり;
    が、Gluであり;
    が、Thrであり;
    が、Glyであり;および
    が、アミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成る、またはアミノ酸配列Leu-Phe-Alaから成るアミノ酸配列である、
    又は
    (ii)
    が、Asnであり;
    が、Alaであり;
    が、Valであり;
    が、Trpであり;
    が、Gluであり;
    が、Thrであり;
    が、Glyであり;および
    が、アミノ酸配列Trp-Val-Pro-Phe-デヒドロブチリンから成るアミノ酸配列である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. が、Aspであり;
    が、Trpであり;
    が、Leuであり;
    が、Trpであり;
    が、Gluであり;
    が、Thrであり;
    が、Glyであり;および
    が、アミノ酸配列Leu-Phe-Alaから成るアミノ酸配列である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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