JP7185838B2 - 高強度リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
これらのリチウムイオン二次電池は、正極及び負極のほか、セパレータや電解液などにより構成され、正極及び負極の活物質には、リチウムイオンを脱離・挿入することが可能な材料が用いられている。リチウムイオン二次電池は、現在も、研究・開発が盛んに行われているが、このうち、層状又はスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池では、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として、実用化が進んでいる。
この中でも、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(以降、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルトを主成分とする、リチウム金属複合酸化物を「NMC」とも称する)は、電池のサイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られる材料として注目されており、先述した様に、搭載スペースにある程度の制約を受ける、ハイブリッド車用電源や電気自動車用電源にも好適であり、車載用電源として重要視されている。
例えば、特許文献1では、α-NaFeO2型の結晶構造を有するなど、NMCにおける性状が記載されており、特許文献2では、硫酸リチウムナトリウム(LiNaSO4)の形態で存在している硫酸根を水洗し、その濃度を0.1%未満としたNMCが好ましいと記載されている。
特許文献3では、BET法で測定された時に0.1~3m2/gの比表面積で、レーザー回折・散乱法によるD50値から決定された時に6μmより大きな集塊物サイズで、D90値から決定された時に100μm以下の直径、及び、0.3μm<Dintra(内部細孔径)<D50値/4μmのサイズを有する内部細孔、並びに、少なくとも、0.08ml/gの内部細孔容量を有するNMCが好ましいと記載されている。
また、特許文献4では、リチウムイオンと他の金属イオンを、超臨界又は亜臨界状態の水中で水熱反応させることにより、少なくとも一部が単結晶構造となるNMCの製造方法が記載されており、特許文献5では、最大50時間という長時間焼成を行うことにより、高容量かつ高耐久性のNMCを得る製造方法が記載されている。
更に、特許文献6では、初期充放電効率やサイクル特性の向上を目的に、NMCを圧壊した際の圧壊強度の最小値が、70MPaより大きい粒子で構成されるNMCが記載されており、特許文献7では、40~90℃の反応槽内へ原料溶液を連続投入しながら、pHを9~11に保持して、ニッケルマンガンコバルト複合水酸化物(以降、ニッケル、マンガン、コバルトを主成分とする金属複合水酸化物を「NMC前駆体」とも称する)を共沈させ、NMC前駆体を300~700℃の温度で酸化焙焼し、水洗及び乾燥工程を経てNMCを得る製造方法が記載されている。
また、正極膜塗工プロセスにおいても、正極活物質に高い圧力が付加されるので、粒子強度が弱いと二次粒子が崩壊し、崩壊粒子がロールプレス時のロールに付着して、歩留まりが低下する。更には、ロールに付着しなかった崩壊粒子についても、一次粒子間におけるリチウムの導電性が途切れるために電池性能の悪化を招く。
上記の通り、電池の高容量化・高耐久性化などの電池性能の向上や、歩留まり率の低下を防ぐためには、正極活物質の粒子強度が非常に重要な因子となる。
これに対して、特許文献1~3に記載されているNMCでは、粒子強度について全く触れられておらず、容量・耐久性も十分ではない。特許文献4及び5に記載されているNMCの製造方法では、どちらも多量のエネルギーを必要とし、工業的に好ましくない。また、特許文献6では、示された実施例によれば、作製された粒子の圧壊強度は75~85MPa程度であり、依然として粒子強度が低いため、初期充放電効率やサイクル特性の効果が十分ではない。更に、特許文献7では、開示されているpH制御値では、NMC中に残留する硫酸塩が増加し、電池性能が低下する。しかも、NMC前駆体を熱処理することで、NMCの粒子強度は向上するが、その効果には全く着目していない。なお、酸化焙焼後のNMC前駆体を水洗しており、硫酸塩などの不純物が低減される反面、粒界に存在する不純物が洗い流されることで、一次粒子同士の結束が弱まり、これが二次粒子の粒子強度が低下を招き、電池性能が悪化する。
この様に、特許文献1~7に記載されているNMCでは、環境対応自動車用としてのニーズに見合った正極活物質であるとは言えず、更なる高容量・高耐久性を持つ正極活物質が求められている。
本発明は、係る問題点に鑑み、放電容量や耐久性に加えて、更に安全性を改善した優れたリチウムイオン二次電池を得るために、高い粒子強度を保ちながら、一次粒子平均粒径及び二次粒子平均粒径を最適範囲内に制御しつつ、硫酸根濃度を抑制したリチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム複合酸化物とその製造方法を提供することを課題とする。
前記晶析工程で得られた前記金属複合水酸化物を、400~900℃で酸化焙焼することにより、金属複合酸化物を得る酸化焙焼工程と、
前記酸化焙焼工程で得られた前記金属複合酸化物とリチウム化合物とを混合することにより、リチウム混合物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記リチウム混合物を、酸素濃度を0.1~20容量%に制御して、700~1000℃で焼成することにより、リチウム金属複合酸化物を得る焼成工程と、
を有することを特徴とする高強度リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法である。
1.リチウムイオン二次電池用正極活物質
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
3.リチウムイオン二次電池
本発明における、リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法は、以下の説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて実施形態を多様に改変することが出来る。
1.リチウムイオン二次電池用正極活物質
本発明の実施形態におけるリチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+α(但し、0.95<v<1.22、0.01≦w≦0.35、0.01≦x≦0.50、0.01≦y≦0.15、0≦z≦0.10、0≦α≦0.20であり、Mは、W、V、Mg、Mo、Nb、Ti、Si、Zn、Cu、Feから選ばれる1種以上の元素)で表され、主に一次粒子が凝集された二次粒子からなるリチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子強度が100~230MPaであり、一次粒子平均粒径が0.1~0.5μmであり、二次粒子平均粒径が3~20μmであり、硫酸根濃度が0.5重量%以下であることを特徴としている。
また、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、
(1)少なくとも、ニッケル、マンガン、コバルトを含む溶液と、アルミニウムを含む溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む溶液と、アルカリ溶液と、任意でM元素を含む溶液とを、反応槽に供給し混合することにより、金属複合水酸化物を晶析させる晶析工程。
これらの(1)~(4)の工程を有する製造方法により得られ、(1)~(4)の工程の順で処理が行われる。
(1)の晶析工程において、NMC主成分であるニッケル、マンガン、コバルトのほか、必須元素としてアルミニウムを加え、任意元素として元素Mを加えたNMC前駆体を生成させ、得られたNMC前駆体を、(2)の酸化焙焼工程で金属複合酸化物とし、得られたNMC中間物を、(3)の混合工程でリチウム化合物と混合してリチウム混合物とした後、得られたリチウム混合物を、(4)の焼成工程で処理する際に、二酸化炭素を導入して低酸素濃度で焼成することにより、粒子強度、平均粒径、硫酸根濃度が好ましいNMCとなる。
上記の様に、高容量・高耐久性を持つNMCを、正極活物質として新たに電池に装備することにより、サイクル特性を向上させ、高電圧下での電池の膨化を抑制出来るなど、従来技術よりも遥かに優れたリチウムイオン二次電池を製造することが可能となる。
<組成>
ニッケルは、電池容量の向上に寄与する元素である。高容量を得るために、ニッケル含有量を示す「1-w-x-y-z」の範囲は、0.30~0.95であることが好ましく、0.35~0.80であることがより好ましく、0.40~0.60であることが特に好ましい。「1-w-x-y-z」の値が0.30未満では、電池容量が低下し、その一方で、0.95を超えると、電子伝導率が上昇し過ぎ、短絡などによる熱暴走が発生するために、電池の安全性が十分に確保出来なくなる恐れがある。
マンガンは、熱安定性の向上に寄与する元素である。より良い熱安定性を得るために、マンガン含有量を示す「w」の範囲は、0.01~0.35であることが好ましく、0.10~0.30であることがより好ましく、0.15~0.30であることが特に好ましい。「w」の値が0.01未満では、熱安定性の向上が見られず、その一方で、0.35を超えると、高温での作動時にマンガン溶出量が増加し、サイクル特性が低下する問題が生じる。
コバルトは、サイクル特性の向上に寄与する元素である。正極活物質に、コバルトが適正量含まれることにより、初期放電容量を損なわず、良好なサイクル特性と、高い耐久性を備えることが可能となる。コバルト含有量を示す「x」の範囲は、0.01~0.50であることが好ましく、0.10~0.35であることがより好ましく、0.15~0.35であることが特に好ましい。「x」の値が0.01未満では、十分なサイクル特性を得られず、サイクル後の容量維持率が低下し、その一方で、0.50を超えると、コスト面の負荷が大きくなる。
アルミニウムは、過剰となった電子伝導性を抑制し、安全性を確保するのに大きく寄与する元素である。優れた安全性を確保するために、アルミニウム含有量を示す「y」の値は、0.01~0.15であること好ましく、0.05~0.10であることがより好ましく、0.06~0.08であることが特に好ましい。「y」の値が0.01未満では、安全性の改善が見られず、その一方で、0.15を超えると、アルミニウムが粒子内部で偏析し、リチウムイオンの伝導性を阻害して、サイクル特性が低下する問題が生じる。
更に、本発明におけるNMCでは、任意で元素Mを含有させることが出来る。元素Mを、正極活物質に含有させることで、リチウムイオン二次電池の耐久性など、電池特性をより向上させることが可能となる。上記の元素Mには、W、V、Mg、Mo、Nb、Ti、Si、Zn、Cu、Feから選択される1種以上の元素を用いることが出来る。これらの元素Mの選択は、リチウムイオン二次電池の用途のほか、要求される性能などに応じて適宜選択される。任意に添加される元素M含有量を示す「z」の範囲は、0~0.10であることが好ましく、0.02~0.08であることがより好ましく、0.04~0.06であることが特に好ましい。「z」の値が0.10を超えると、レドックス(Redox)反応の効率が低下するために、電池容量も低下する。
また、元素Mは、後述する様に、晶析工程において、ニッケル、マンガン、コバルト、アルミニウムと共に晶析させ、得られるNMC前駆体の粒子中に均一分散させることも出来るが、晶析工程後に、NMC前駆体の粒子表面に被覆させてもよい。更に、混合工程の際に、NMC中間物と共に、リチウム化合物と混合することも可能であり、これらの方法を併用してもよい。いずれの方法を用いる場合であっても、上記の一般式における組成から逸脱しない様に、含有量を調整することが必要となる。
<粒子強度>
粒子強度は、100~230MPaであることが好ましく、120~200MPaであることがより好ましく、150~180MPaであることが特に好ましい。粒子強度が100MPa未満では、充放電後のNMC粒子に多くの「割れ」が発生し、容量低下や電池の膨化が起こることがあり、その一方で、230Mpaを超えると、電池の正極膜を作成する際、充填性が悪くなり、正極膜を作製出来なくなることがある。また、充填性が悪い正極膜で、充放電サイクルを行うと、容量低下が大きくなり、サイクル特性が極端に悪くなる。
<平均粒径>
一次粒子平均粒径は、0.1~0.5μmであることが好ましい。これにより、電池の正極に用いた際に、高い電池容量及び高いサイクル特性を得ることが可能となる。一次粒子平均粒径が0.1μm未満になると、高いサイクル特性が得られないことがあり、その一方で、0.5μmを超えると、電池容量や出力特性が低下し、十分な電池特性が得られないことがある。
また、二次粒子平均粒径は、3~20μmであることが好ましく、6~12μmであることがより好ましい。これにより、電池の正極に用いた際に、高い電池容量のほか、正極に対する高い充填性を両立させることが可能となる。二次粒子平均粒径が3μm未満になると、正極に対する高い充填性が得られないことがあり、その一方で、20μmを超えると、電池容量や出力特性が低下し、十分な電池特性が得られないことがある。
なお、平均粒径に関する評価方法には、特に限定は無く、例えば、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布などから求めることが出来る。
<硫酸根濃度>
硫酸根濃度は、0.5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。硫酸根濃度が0.5重量%を超えると、リチウムイオンの拡散を阻害して電池容量が低下すると共に、硫酸根自体は、充放電反応には殆ど寄与しないため、電池の構成において、正極材料の不可逆容量に相当する分は、負極材料を余計に電池に使用せざるを得ない。その結果、電池全体としての重量当り、若しくは体積当りの容量が小さくなり、不可逆容量として負極に余分なリチウムが蓄積されることから、安全性の面からも問題となる。
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
本発明におけるNMC製造方法は、以下に記載する(1)~(4)の工程を備え、かつ、(1)~(4)の工程の順で、処理が行われる。これらの工程を経ることにより、高い粒子強度を保ちながら、一次粒子平均粒径及び二次粒子平均粒径を最適範囲内に制御しつつ、硫酸根濃度を抑制したリチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム複合酸化物が得られる。
(1)晶析工程
通常、NMC前駆体を晶析法により作製する場合には、連続晶析法が用いられる。この方法は、組成の等しいNMC前駆体を、大量に、かつ、簡便に作製出来る方法である。一般的に晶析法で得られるNMC前駆体粒子は、主に一次粒子が凝集した二次粒子で構成される。しかしながら、この連続晶析法では、得られたNMC前駆体粒子の粒度分布が、比較的幅広い正規分布となり易く、必ずしも粒径の揃った粒子にならないという問題がある。粒度分布が幅広いNMC前駆体粒子を原料として作製したNMCでは、リチウムイオン二次電池を組み立てた場合、3μm未満の微粉が混在する恐れがあり、サイクル特性悪化の要因となり易い。また、粒度分布が不揃いになると、反応抵抗が増大し、電池出力に悪影響を及ぼす可能性がある。
従って、晶析工程では、例えば、「核生成」の段階と「粒子成長」の段階とを、明確に分離することにより、粒径の均一化を図り、粒度分布の狭いNMC前駆体を得ることが好ましい。
<核生成段階>
まず、水溶性のニッケル塩、マンガン塩、コバルト塩を、所定割合で水に溶解し、ニッケル、マンガン、コバルトを含む原料溶液Aを作製する。ここで用いるニッケル塩、マンガン塩、コバルト塩は、硫酸塩であることが好ましい。続いて、水溶性のアルミニウム塩を、所定割合で水に溶解し、アルミニウムを含む原料溶液Bを作製する。ここで用いるアルミニウム塩は、硫酸塩よりも、アルミン酸塩であることが好ましい。次に、作製した原料溶液A及びBと、アンモニア水などのアンモニウムイオン供給体を含む溶液とを、撹拌しながら晶析反応槽へ供給し、反応槽内に反応溶液を形成しつつ、かつ、水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液を同時に供給して、反応溶液のpHが一定となる様に制御する。
また、元素Mを含む溶液を、任意に原料溶液A及びBに加えてもよいが、この溶液を加えることで析出が生じる場合には、各原料溶液とは別の経路から同時に反応槽内へ供給する。そして、一定のpHとなる様に、アルカリ溶液の添加量を制御することにより、形成した反応溶液内で、NMC前駆体の微小な「核」を、選択的に生成させることが可能となる。
反応溶液のpH(液温25℃基準)は、12.0以上であることが好ましいが、より好ましくは12.0~14.0となる様に制御する。これにより、反応溶液中に、NMC前駆体の微小な「核」を選択的に生成させることが出来る。このpHが、12.0未満では、「核」の成長も同時に起こってしまうために、「核」の総数が不足して粒径が粗大化し、粒度分布が幅広くなり易い。「核」の総数は、核生成におけるpHやアンモニウムイオン濃度、及び、供給される各原料溶液の量により制御が可能である。
反応溶液のアンモニウムイオン濃度は、3~15g/Lの範囲内で、一定に保持されることが好ましい。アンモニウムイオン濃度が不安定になると、金属イオンの溶解度も変化するために、整ったNMC前駆体粒子の形成が阻害され、ゲル状の「核」が生成し易くなるので、粒度分布が幅広くなり易い。更に、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、錯化剤として機能せず、その一方で、15g/Lを超えると、NMC前駆体粒子が緻密に形成され過ぎ、最終製品であるNMCも緻密な構造となり、比表面積が低下する恐れがあるので、好ましくない。
反応溶液の温度は、35~60℃に設定することが好ましい。35℃未満では、温度が低く、供給する金属イオンの溶解度が不足し、核生成が起こり易くなり、核生成の制御が難しくなる。その一方で、60℃を超えると、アンモニアの揮発ロスが促進されることにより、錯化剤としてのアンモニウムイオン濃度が低下し、上記と同じく、金属イオンの溶解度が不足する。
その他、核生成段階の晶析時間については、目的とするNMC前駆体粒子の平均粒径により、任意に設定することが出来る。
<粒子成長段階>
粒子成長段階では、反応溶液のpH(液温25℃基準)を、10.5~12.0の範囲に制御し、アルカリ溶液を反応槽内へ供給し、核生成段階よりも低いpHとする。核生成段階の後で、pHをこの範囲内に制御することにより、核生成段階で生成した「核」の成長のみを、優先的に起こさせ、新たな核生成を抑制して、NMC前駆体粒子における粒度分布の幅を狭くすることが出来る。pHが10.5未満では、反応溶液に残存する金属イオンが増加するために、生産効率が悪化し、その一方で、12.0を超えると、粒子成長だけでなく核生成も進行するので、粒度分布が幅広くなり易い。また、硫酸塩を原料溶液に用いる場合は、NMC前駆体粒子に残留する硫酸根濃度が高くなるために、好ましくない。なお、反応溶液のアンモニウムイオン濃度や温度については、核生成段階と同様の範囲内で制御すればよい。
また、核生成段階の後、或いは、粒子成長段階の途中で、反応溶液の一部を反応槽の外に排出することにより、反応溶液におけるNMC前駆体粒子の濃度を高めた後、引き続き、粒子成長を行うことも可能である。これにより、NMC前駆体粒子の粒度分布をより狭くすることができ、粒子密度も高めることが出来る。
その他、核生成段階及び粒子成長段階における、反応槽内の雰囲気を制御することで、NMC前駆体、ひいてはMNCの粒子構造を制御することが可能となる。即ち、反応槽内の酸素濃度を制御することにより、NMC前駆体粒子を構成する、一次粒子の大きさを調整することができ、NMC前駆体粒子の緻密性を調整することが出来る。従って、反応槽内の酸素濃度を低くして、非酸化性雰囲気とすることで、NMC前駆体粒子の緻密性が高くなり、最終的に得られるNMCも緻密性が高くなり、中実構造を有する様になる。その一方で、反応槽内の酸素濃度を高くして、酸化性雰囲気とすることで、NMC前駆体粒子の緻密性が低くなり、最終的に得られるNMCは中空構造や多孔構造を有する様になる。特に、核生成段階と粒子成長段階の初期において反応槽内を酸化性雰囲気とし、その後、非酸化性雰囲気に制御することにより、NMC前駆体粒子の中心部の緻密性を低く、外周部の緻密性を高くすることが出来る。この様なNMC前駆体粒子から得られる正極活物質は、十分な大きさの中空部を有する中空構造となる。中空部の大きさは、酸化性雰囲気とする時間と、非酸化性雰囲気とする時間とを調整することにより、制御することが出来る。
(2)酸化焙焼工程
酸化焙焼工程は、晶析工程で得られたNMC前駆体を、酸化性雰囲気として、400~900℃の温度で3~10時間加熱することにより、NMC中間物を得る工程である。酸化焙焼温度の保持時間は3~10時間であることが好ましく、5~7時間であることがより好ましい。3時間未満では、NMC中間物の一次粒子平均粒径が小さくなることで、最終製品であるNMCの一次粒子平均粒径が0.1μm以下となり、粒子強度の低下を招く。その一方で、10時間を超えると、NMC中間物の比表面積が2.0m2/g以下となり、後の焼成工程においてリチウムと遷移金属との反応性が悪化し、電池容量が低下するほか、焼成時間の延長により生産性が悪化する。
酸化焙焼雰囲気は、酸化性雰囲気とするが、酸素濃度が18~100容量%であることが好ましい。即ち、大気雰囲気、かつ、酸素気流中で行なわれることが好ましい。コスト面を考慮すると、空気気流中で行なうことが特に好ましく、酸素濃度が18容量%未満であると、酸化が十分でなく、一次粒子の異常成長を引き起こす恐れがある。
(3)混合工程
混合工程は、酸化焙焼工程で得られたNMC中間物に、リチウムを除いた金属元素の原子数(Me)の合計に対するリチウム(Li)の原子数の比(Li/Me)が、0.95~1.20となる様に、リチウム化合物を混合してリチウム混合物を得る工程である。Li/Meが0.95未満では、得られたNMCを用いたリチウムイオン二次電池において、正極の反応抵抗が大きくなるために、電池の出力が低くなり、その一方で、1.20を超えると、得られたNMCの初期放電容量が低下すると共に、正極の反応抵抗も増加する。
(4)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を、二酸化炭素を流し、空気中より酸素濃度を低下させた低酸素雰囲気において、700~1000℃の温度で、5~20時間加熱することにより、最終製品のNMCを得る工程である。焼成温度が700℃未満では、NMC中間物と、リチウム化合物の反応が進み難く、NMC中間物へのリチウム拡散が不足し、余剰リチウムと、未反応のNMC中間物が残るほか、結晶構造も十分に整わないので、電池容量や出力特性の低下が生じる。その一方で、焼成温度が1000℃を超えると、NMC粒子間で激しく焼結が起こり、焼結塊となって解砕処理による粒度調整を阻害するために、20μm以上の粒子が発生し、電池の充填性が大きく悪化し、電池容量の低下が生じる。
焼成温度の保持時間は、5~20時間であることが好ましく、5~10時間であることがより好ましい。5時間未満では、NMCの生成が不十分となり、その一方で、20時間を超えると、NMC粒子間で激しく焼結が生じ、電池容量が低下するほか、焼成時間延長により生産性が悪化する。
3.リチウムイオン二次電池]
次に、本発明の実施形態により製造されるNMCを正極活物質として用いた、リチウムイオン二次電池について説明する。上記のリチウムイオン二次電池(以降、「二次電池」とも称する)においては、正極、負極、セパレータ及び非水系電解液など、一般的なリチウムイオン二次電池と同様の構成部材を備える。
(1)構成部材
<正極>
先述したNMCを正極活物質として用いて、例えば、以下の様にしてリチウムイオン二次電池用の正極を作製する。
<負極>
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを使用することが出来る。また、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく、圧縮して形成したものを使用することが出来る。
<セパレータ>
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有する。この様なセパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることが出来るが、上記の様な機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
<非水系電解液>
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート及びトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、更に、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、或いは、2種以上を混合して用いることが出来る。
<リチウムイオン二次電池>
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることが出来る。いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させて、正極集電体と外部に通じる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通じる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
<非水系電解質二次電池の特性)
本発明の実施形態に係る非水系電解質二次電池は、上述した様に、本実施形態に係るNMCを正極活物質として用いるために、負極抵抗を低減することで、電池容量、出力特性及びサイクル特性に優れている。しかも、このリチウムイオン二次電池は、従来のNMC粒子を正極活物質として用いた二次電池と比較した場合でも、粒子強度だけでなく、熱安定性や安全性などに優れている。
<用途>
本発明の実施形態に係る非水系電解質二次電池は、上述の様に、電池容量、出力特性及びサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(スマートフォンやタブレット、ミニノートパソコンなど)の電源として好適に利用することが出来る。また、本発明の実施形態に係る非水系電解質二次電池は安全性にも優れており、小型化及び高出力化が可能であるばかりでなく、高価な保護回路を簡略することが可能であるために、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に利用することが出来る。
なお、実施例(及び比較例)における評価方法は、下記の通りであり、得られた評価結果は、表1に示した。
(1)NMC(正極活物質)
1)組成
組成は、試料1gを無機酸で加熱分解処理し、純水で100mlに定容することにより、分析検体液とした後、分析検体液を適宜希釈し、マルチ型ICP発光分光分析装置であるICPE-9000(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
2)粒子強度
粒子強度は、微小強度評価試験機MCT-500(株式会社島津製作所製)を用いて、1個のNMC粒子に圧子で荷重を加え、破壊された際の粒子強度を算出した。具体的には、シリコン板の上にNMC粒子を静止させ、圧子の中心部に合わせて位置を微調整し、圧子を、NMC粒子に大きな荷重が掛からない程度に接触させて、測定を行った。測定条件は、試験力を150mN、負荷速度を2.0mN/秒とし、10個の粒子の平均値を求めた。
3)平均粒径
平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置であるマイクロトラックMT3300EX2(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した体積基準分布から求めた。なお、試料への超音波照射強度を調整することにより、一次粒子平均粒径と、二次粒子平均粒径との分別測定を行った。
4)硫酸根濃度
硫酸根含有量は、酸分解-ICP発光分光分析法で全硫黄含有量を分析し、この全硫黄含有量を、硫酸根(SO4 2-)に換算することにより求めた。なお、測定にはマルチ型ICP発光分光分析装置である、ICPE-9000(株式会社島津製作所社製)を用いた。
(2)リチウムイオン二次電池
1)初期放電容量
初期放電容量は、コイン電池又は小型角型電池を、作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open-circuit-voltage)が安定後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電した時の容量とした。また、放電容量測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器R6741A(株式会社アドバンテスト製)を用いた。
2)サイクル特性
上述した充放電試験を繰り返し、初期放電容量に対する500回目の放電容量を測定することで、500サイクルの容量維持率を算出した。
3)膨化量
リチウムイオン小型角型電池の膨化量を、以下の式を用いて算出した。
膨化量(%)=(500サイクル後の電池厚み)/(1サイクル目の電池厚み)×100
まず、60L反応槽内に、水を半分の量まで入れ、大気雰囲気中で撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、25重量%水酸化ナトリウム溶液と、25重量%アンモニア水を適量加えて、槽内の液のpH(液温25℃基準)を12.8に、アンモニウムイオン濃度を10g/Lに調整した。次に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを溶解・混合した、2.0mol/L原料溶液(金属元素モル比でNi:Co:Mn=55:20:25)を、0.13L/分で給液し、反応溶液とした。これと同時に、25質量%水酸化ナトリウム溶液、及び、25質量%アンモニア水を一定速度で加えて、pHを12.8(核生成pH)に制御しながら2分30秒間晶析を行った。その後、窒素ガスを供給し、反応槽内の酸素濃度を2容量%以下まで低下させながら、pHが11.6(核成長pH)となるまで、25質量%水酸化ナトリウム溶液の給液のみ一時停止し、pHが11.6に到達した後、25質量%水酸化ナトリウム溶液の給液を、アルミン酸ナトリウム溶液の添加量に合わせて調整し、再開した。pHを11.6に制御したまま、4時間晶析を継続し、晶析を終了させた。晶析の終了後、生成物を水洗、濾過、乾燥させて、Ni0.54Mn0.24Co0.19Al0.03(OH)2で表されるNMC前駆体を得た。
<酸化焙焼工程>
晶析工程で得られたNMC前駆体をマグネシア製の加熱容器に入れ、密閉式電気炉を用いて、大気雰囲気で、酸化焙焼温度を400℃、酸化焙焼時間を5時間の条件で処理後、酸化焙焼物を室温となるまで冷却して、Ni0.54Mn0.24Co0.19Al0.03Oで表されるNMC中間物を得た。
<混合工程>
酸化焙焼工程で得られたNMC中間物と、Li/Me=1.03となる様に秤量した炭酸リチウムを、シェーカーミキサー装置であるTURBULA-TypeT2C(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。
<焼成工程>
混合工程で得られたリチウム混合物をマグネシア製の加熱容器に入れ、密閉式電気炉を用いて、炉内に二酸化炭素を0.5~20L/分の条件で供給し、炉内の酸素濃度を18容量%として低酸素雰囲気に保ちながら、焼成温度を850℃、焼成時間を10時間の条件で処理後、焼成物を室温となるまで冷却し、解砕を行い、Li1.03Ni0.54Mn0.24Co0.19Al0.03O2で表されるNMC(正極活物質)を得た。
<電池の作製>
得られたNMCを52.5mg、アセチレンブラックを15mg、ポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)を7.5mg、それぞれ秤量して混合し、100MPaの圧力で、厚さ100μmに成形し、図1に示す正極(評価用電極)(1)を作製した。更に、この正極(1)を、真空乾燥機により、120℃で12時間乾燥した後、正極(1)を用いた2032型コイン電池を、露点が-80℃に管理されたアルゴンガス雰囲気のグローブボックスの中で作製した。負極(2)には、厚さ1mmのリチウム金属、又は、カーボンを用い、電解液には、1molの過塩素酸リチウム(LiClO4)を支持電解質とする、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータ(3)には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、2032型コイン電池は、ガスケット(4)とウェーブワッシャー(5)を有し、正極缶(6)と負極缶(7)とで電池に組み立てた。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を500℃とした。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を600℃とした。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を600℃とした。
<焼成工程>
炉内の酸素濃度を0.2容量%とした。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を700℃とした。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を800℃とした。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を900℃とした。
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を600℃とした。
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を600℃とした。
<焼成工程>
炉内の酸素濃度を0.2容量%とした。
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を800℃とした。
<晶析工程>
元素Mとして、モリブデン、ニオブを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。また、モリブデン、ニオブは、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を800℃とした。
<晶析工程>
元素Mとして、バナジウム、マグネシウムを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.06となる様に添加した。また、バナジウム、マグネシウムは、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.06となる様に添加した。
<晶析工程>
元素Mとして、チタン、珪素を、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.06となる様に添加した。また、チタン、珪素は、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.06となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を800℃とした。
<晶析工程>
元素Mとして、亜鉛、銅、鉄を、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.09となる様に添加した。また、亜鉛、銅、鉄は、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.09となる様に添加した。
[比較例1]
下記の条件以外は、実施例1と同様の手順を行った。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼を行わなかった。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例2]
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を300℃とした。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例3]
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を1000℃とした。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例4]
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼を行わなかった。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例5]
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を300℃とした。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例6]
<晶析工程>
元素Mとして、タングステンを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼温度を1000℃とした。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
[比較例7]
<晶析工程>
元素Mとして、モリブデン、ニオブを、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.03となる様に添加した。また、モリブデン、ニオブは、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.03となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼を行わなかった。
<焼成工程>
炉内を大雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
(比較例8)
<晶析工程>
元素Mとして、亜鉛、銅、鉄を、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+αのZ値が0.09となる様に添加した。また、亜鉛、銅、鉄は、それぞれ等量とし、その合計量がZ値において0.09となる様に添加した。
<酸化焙焼工程>
酸化焙焼を行わなかった。
<焼成工程>
炉内を大気雰囲気(酸素濃度が20容量%を超えた状態)とした。
上記の表1から分かる様に、実施例1~15のNMCは、製造工程において、酸化焙焼温度や焼成雰囲気などの条件が、全て好ましい範囲であったために、粒子強度をはじめ、一次粒子平均粒径や二次粒子平均粒径、硫酸根濃度が、揃って良好な値を示していた。この結果は、放電容量や耐久性に加えて、更に安全性を改善した優れたリチウムイオン二次電池を得るために、最適なリチウムイオン二次電池用正極活物質が開発されたことを物語っている。故に、実施例1~15のNMCを用いて、リチウムイオン二次電池を作製し、その特性について評価したところ、初期放電容量が155mAh/g以上、サイクル特性での容量維持率が75%以上、膨化率が105%以下と、こちらも非常に良好な値を示していた。
これに対して、比較例1~8のNMCは、製造工程において、酸化焙焼工程を経ていなかったり、酸化焙焼温度などが好ましい条件では無かったりしたことから、粒子強度のほか、一次粒子平均粒径や二次粒子平均粒径、及び、硫酸根濃度、これらのいずれかが十分な値とならなかった。しかも、比較例1~8のNMCを用いて、リチウムイオン二次電池を作製し、その特性について評価したところ、こちらは、初期放電容量、サイクル特性での容量維持率、膨化率、これら全てが実施例と比べて遥かに劣っていた。
2 負極(リチウム金属、又は、カーボン)
3 セパレータ
4 ガスケット
5 ウェーブワッシャー
6 正極缶
7 負極缶
Claims (1)
- 膨化量が105%以下であるリチウムイオン二次電池の正極において用いられる高強度リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記高強度リチウムイオン二次電池用正極活物質が、一般式:LivNi1-w-x-y-zMnwCoxAlyMzO2+α(但し、0.95<v<1.22、0.01≦w≦0.35、0.01≦x≦0.50、0.01≦y≦0.15、0≦z≦0.10、0≦α≦0.20であり、Mは、W、V、Mg、Mo、Nb、Ti、Si、Zn、Cu、Feから選ばれる1種以上の元素)で表され、主に一次粒子が凝集された二次粒子からなるリチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子強度が100~230MPaであり、一次粒子平均粒径が0.1~0.5μmであり、二次粒子平均粒径が3~20μmであり、硫酸根濃度が0.5重量%以下であり、
少なくとも、ニッケル、マンガン、コバルトを含む溶液と、アルミニウムを含む溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む溶液と、アルカリ溶液と、任意でM元素を含む溶液とを、反応槽に供給し混合することにより、金属複合水酸化物を晶析させる晶析工程と、
前記晶析工程で得られた前記金属複合水酸化物を、400~900℃で酸化焙焼することにより、金属複合酸化物を得る酸化焙焼工程と、
前記酸化焙焼工程で得られた前記金属複合酸化物とリチウム化合物とを混合することにより、リチウム混合物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記リチウム混合物を、酸素濃度を0.1~20容量%に制御して、700~1000℃で焼成することにより、リチウム金属複合酸化物を得る焼成工程とを有することを特徴とする高強度リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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