JP7179299B2 - スパースモデリングを利用した痛みの分類および瞬間痛の判別 - Google Patents

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Description

本発明は、推定対象から得られる脳波などの生体信号をスパースモデリングで分析し、痛みの質および量を少ない情報で分類することに関する。より特定すると、本発明は、個人差がある痛みレベル(例えば、弱い痛み、強い痛みなど)を客観的に分類または判別することに関する。
本発明はさらに、脳波を用いて瞬間痛を判別する技術に関する。より詳細には、刺激後特定の時間経過後の信号を判定することで、瞬間痛が生じていることを判別する技術に関する。
痛みは、本質的には主観的なものであるが、治療を行う上では客観的に評価されることが望まれる。痛みが過小評価されることにより、患者が不利益を被る場面が多くみられる。そこで、脳波を用いて痛みを客観的に推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、痛みの強さは主観的なものであり、客観的な評価が難しい。特に我慢できない痛みなのか、ある程度許容される痛みなのか、主観的に「痛い」というだけでは表現することができず、個人における表現も多様であるため客観的な評価が困難であるが、治療効果を見る場合は、痛みの分類を行うことが望ましいが、そのような技術は提供されていない。
また、種々の感覚は、一方向のベクトルで表されることが多く、例えば、疼痛をみると、痛いかまたは痛くないかで区別することが多い。瞬間痛についてはその判別が難しいとされている。
特表2010-523226号公報
本発明は、スパースモデリングを用いて、推定対象が有する痛みを客観的かつ正確に推定し、さらにその質および量を簡易に分類することができる痛み推定方法および装置を提供する。本発明はまた、そのような痛み分類のための疼痛分類値を生成する技術を提供する。
また、本発明者らは鋭意研究をした結果、瞬間痛を判別することができる判別技術を見出した。
発明は、例えば、以下を提供する。
この発明の一つの局面に従うと、痛みの判別または評価のシステムの作動方法であって、前記システムは、脳波データまたはその分析データを入力する脳波データ入力部と、前記脳波データまたはその分析データを解析する解析部とを含み、前記作動方法は、前記解析部が、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、前記解析部は、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する。
好ましくは、前記脳波データまたはその分析データは、中期時間帯から2000msecの範囲の全部または一部の脳波データまたはその分析データを含む。
好ましくは、前記中期時間帯は、250msec~600msecの間の範囲の値を含む。
好ましくは、前記全部または一部は少なくとも100msec分の範囲を含む。
好ましくは、前記少なくとも100msec分の範囲において、該少なくとも100msec分の範囲との間に統計学的に有意な相違がみられる場合、持続性がみられると判定する。
好ましくは、前記脳波データまたはその分析データは電位もしくは持続時間またはそれらの組み合わせである。
好ましくは、前記痛みの判別は、痛みの不快度の判別である。
好ましくは、さらに、前記比較したデータを、シグモイド関数フィッティングを用いて分析する工程を包含する。
好ましくは、前記判別は、脳波データまたはその分析データの陽性成分について判断することを特徴とする。
好ましくは、前記陽性成分は、中期時間帯以降にも持続する場合に、疼痛があると判断されることを特徴とする。
この発明の他の局面に従うと、痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する工程を含む。
この発明のさらに他の局面に従うと、痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する工程を含む。
この発明のさらに他の局面に従うと、痛みの判別または評価のシステムであって、該システムは、脳波データまたはその分析データを入力する脳波データ入力部と、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する解析部とを備え、前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、前記解析部は、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定を行う。
本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明は、より少ないパラメータで簡易に疼痛を分類することができる。好ましい実施形態では、入手し得たパラメータで種々の痛みの質を区別することができ、これを用いることで、痛みを分類し、あるいは最小限度で各種処置を行うことができ、あるいは、治療効果を分類することができる。
本発明はまた、瞬間痛を判別することができる。本発明は、瞬間痛と遅延痛とを判別することができ、よりきめ細やかで主観に合致した治療や手術を行うことができ、医療関連産業において有用性がある。
図1Aは、電気刺激と痛みレベル(VAS)との関係を示すグラフである。 図1Bは、電気刺激と痛みレベル(一対比較)との関係を示すグラフである。 図1Cは、電気刺激と脳波振幅との関係を示すグラフである。 図1Dは、脳波波形の一例を示すグラフである。 図1Eは、電気刺激による痛みレベル(VAS)と脳波振幅との関係を示すグラフである。 図1Fは、電気刺激による痛みレベル(一対比較)と脳波振幅との関係を示すグラフである。 図1Gは、熱刺激による痛みレベル(VAS)と脳波振幅との関係を示すグラフである。 図2は、熱刺激による痛みレベル(一対比較)と脳波振幅との関係を示すグラフである。 実施例1の熱刺激実験パラダイムを示す。熱刺激は、ベースライン温度を35℃とし、レベル1の40℃からレベル6の50℃まで、2℃ずつ上昇した。各レベルは3刺激を含み、各刺激は15秒間続いた。 図4は、本発明のフローを示すフローチャートの一例であり、スパースモデル解析の流れを示す。 実施例1の特徴量係数のサーモグラムを示す。判別検定は1000回行った(X軸)。特徴量は平均振幅絶対値(4個)、周波数パワー(20個)の計24個を含んでいた。1000回の判別精度の検定において、貢献度が高い特徴量の係数平均値は一定して高く、例えば、前頭部のδ帯域の変化域係数は「-2.17」という数値を示している。 実施例1のテストデータの判別精度分布を示す。1000回の検定の平均判別精度は、約80%であり、痛みレベルのラベル(強弱)をランダム化して、判別精度を推定した場合の平均判別精度に比べ、約30%高い数値を示している。 実施例2の判別モデル作成時の特徴量係数のサーモグラムを示す。40名の被験者データから、無作為に1名のデータ(4サンプル)を除き、156サンプルデータを用いて、10分割交差検証により、判別モデルで用いる特徴量係数を算出した。 実施例2の判別モデル作成時の10分割交差検証における切片値の推移を示す。 実施例2の判別モデル作成時の10分割交差検証における判別精度の推移を示す。 実施例2の10分割交差検証よりに作成された、疼痛判別用の重回帰モデルを示す。判別モデルにより推定された痛み指数は、閾値(例えば、50%)により痛みレベルにカテゴリー化される。 実施例2の疼痛判別モデルにより算出されたある被験者の痛み推定値、ならびに閾値(50%)による痛みレベル判別精度を示す。 図12は、本発明のフローを示すフローチャートの一例である。 図13は、本発明の機能構成を示すブロック図の一例である。 図14は、本発明の機能構成を示すブロック図の一例である。 図15は、図14におけるスパースモデル解析との連環を示した図である。 図16は、本発明の機能構成を示すブロック図の別の一例である。 図17は、誘発脳波成分および事象関連電位成分に関する模式図を示し、P1、P2、N1、N2、P3の例が示される。 図18は、本発明で見いだされた左前頭部(F3)の持続性信号(特性)の例を示す。通常、課題が難しくなったりすることで、P300などの中期陽性、後期陽性成分などのピーク時間は変わることがある。持続性ではない場合、はっきりピークがあり、ベースライン(電位ゼロライン)に戻る。本発明の持続性成分は、確かに400msecぐらいから始まっているが、効果が非常に長く続いており、ピークが400msec周辺でみられず、1500msec周辺までずれこんでいる。また、この持続性成分をテンプレート化し、オンラインで脳波データに回帰し、近似指数(R値や相関係数)が高い時点を調べることで、偶発的な瞬間痛の発生時点を特定し得る。 図19、本発明で瞬間痛の判別に有効であることが明らかにされた持続性ERPの特定方法、ならびに統計的検証方法を示す。参照刺激に対し、痛み刺激が持続してかい離する時点ならびに持続時間を特定し、その区間を、例えば、100msecごとに分割してt検定やANOVAなどの代表値の比較方法を用いて検証する。 図20は、本発明の実施例で用いた瞬間痛実験方法を示す。本実施例では、「痛みオドボールパラダイム」を用いた。このパラダイムは、頻度が高い(約70%)参照刺激(39℃)と頻度が低い(約30%)痛み強の逸脱刺激(52℃)をランダムに呈示する。同時に脳波を記録し、参照刺激と逸脱刺激の加算平均波形を算出して、図19に示したような方法に基づき、比較を行う。 図21は、逸脱刺激(52℃)で見られた持続性信号(特性)である持続性陽性電位効果を示す。52℃刺激が付加されてから400(F3、F4)、もしくは600(C3、C4)~2000msec間で「持続性陽性電位効果」が見られた。一方で、視覚や聴覚の類似した逸脱課題でみられるミスマッチ電位やP300は、200~600msecで有意にみられなかった。瞬間痛パラダイムは、痛みオドボールパラダイムを用い、39℃の標準刺激70%、52℃の逸脱刺激30%をランダムに呈示した。被験者は、刺激に注意を向け続けるために、痛み刺激の回数を数えるよう指示された。 図22は、標準刺激(39℃)および逸脱刺激(52℃)の痛み不快度の主観評価を示す。52℃刺激の方が、39℃刺激より不快度が有意に高い。実験パラダイムは、39℃と52℃の刺激をランダムに複数回呈示し、被験者は、刺激呈示されたら、痛みの不快度を連続的に評価した。 図23は、瞬間痛判別値(シグモイド関数における変調点)を示す。瞬間痛判別値を用いて痛み強弱を分類したところ、71%の判別精度を示した。なお、瞬間痛判別値は持続性特性に基づく値である。 図24は、瞬間痛2レベルの判別・推定プロセスの概略を示す。本発明のプロセスでは、サンプルデータの収集(例、160サンプル(2レベル×80名)、4特徴量(F3、F4、C3、C4))を行い、訓練用・テスト用データの分割(8:2)を行い、訓練用データを用いた判別モデル作成(例.10分割交差検証、LASSO(正則化)アルゴリズムを用いて、最適なλ値を求め、特徴量(4つ)の係数、ならびにモデルの切片を決める。)を行い、判別モデルによりテストデータの判別・推定(テストデータのラベル(痛みなし、強)の判別・推定を行い、判別精度を算出)を行う。 図25は、図24の判別・推定プロセスにより、4個の持続性ERP特徴量(1000~1600msecの振幅)を用いた、瞬間痛の判別精度を示す。図24のプロセスでは、1000回のモデル検証を行うため、1000回の判別率が算出される。実際の瞬間痛レベルの判別精度は約70%であり、偶然レベルの判別精度、約51%に比べ、20%近く高い数値となっていた。推定値は、図24により求められたβ係数と切片を用いた重回帰式を用いて算出され、算出された値は、中間値、すなわち判別値を用いて、瞬間痛ありなしに2項分類され、実際の痛みレベルで照合される。 図26は、図24の判別・推定プロセスにより、4個の非持続性ERP特徴量(200~600msecの振幅)を用いた、瞬間痛の判別精度を示す。この分析では、図25に示した実施例と同じ判別テスト過程を用いて、持続性特性を示さない時間区間200~600msecの非持続性特徴量を用いて、瞬間痛ありなしの2項分類を行った。判別精度は、持続性特性を示す時間区間の特徴量を用いた場合に比べ、約10%判別精度が低下した。ランダムデータの判別精度は、この時間区間と持続性区間では類似した判別精度(約50%)を示している。 図27は、本発明の実施における代表的なフローチャートである。 図28は、本発明の機能構成を示すブロック図の一例である。 図29は、本発明の機能構成を示すブロック図の一例である。 図30は、本発明の機能構成を示すブロック図の別の一例である。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
最初に本発明において使用される用語および一般的な技術を説明する。
本明細書において、「対象」(英文ではobject)とは、患者(patient)または被検者もしくは被験者(subject)と同義に用いられ、疼痛測定および脳波測定などの本開示の技術が対象とする任意の生体または動物をいう。対象としては、好ましくは、ヒトであるがこれに限定されない。本明細書において、痛みの推定を行う場合、「推定対象」とすることがあるが、これは対象などと同じ意味である。
本明細書において「脳波」は当該分野で通常用いられるのと同義であり、頭皮上に1対の電極を置いて脳の神経活動にともなう電位差によって発生する電流をいう。脳波には、電流の時間的変化を導出記録した脳電図(electroencephalogram,EEG)を包含する。安静時には振幅約50μV、周波数10Hz前後の波が主成分をなすとされる。これをα波という。精神活動時にはα波は抑制され,振幅の小さい17~30Hzの速波が現われるとされ、これはβ波という。浅い睡眠の時期にはα波はしだいに減少して4~8Hzのθ波が現われるとされる。深い睡眠中は1~4Hzのδ波が現われるとされる。これらの脳波は特定の振幅および周波数(パワー)で記述することができ、本発明では、振幅の解析が重要でありうる。
本明細書において「脳波データ」には、脳波に関する任意のデータであり(「脳活動量」、「脳特徴量」等ともいう)、振幅データ(EEG振幅、周波数特性など)が含まれる。これらの脳波データを分析した「分析データ」は、脳波データと同様に用いることができることから、本明細書では、「脳波データまたはその分析データ」とまとめて呼ぶことがある。分析データとしては、例えば、平均振幅(例えば、Fz、Cz、C3、C4)、周波数パワー(例えば、Fz(δ)、Fz(θ)、Fz(α)、Fz(β)、Fz(γ)、Cz(δ)、Cz(θ)、Cz(α)、Cz(β)、Cz(γ)、C3(δ)、C3(θ)、C3(α)、C3(β)、C3(γ)、C4(δ)、C4(θ)、C4(α)、C4(β)、C4(γ)など)等を挙げることができる。もちろん、脳波データまたはその解析データとして通常使用される他のデータを排除するものではない。
本明細書において「振幅データ」とは、「脳波データ」の一種であり、脳波の振幅のデータをいう。単に「振幅」ということもあり、「EEG振幅」ともいう。このような振幅データは、脳活動の指標であることから、「脳活動データ」「脳活動量」などと称されることもある。振幅データは、脳波の電気信号を測定することによって得ることができ、電位(μV等で表示され得る)で表示される。振幅データとしては、平均振幅を使用することができるがこれに限定されない。
本明細書において、「周波数パワー」とは、波形の周波数成分をエネルギーとして表したものであり、パワースペクトルともいう。周波数パワーは、高速フーリエ変換(FFT)(離散フーリエ変換(DFT)を計算機上で高速に計算するアルゴリズム)を利用して、時間領域のノイズの含まれる信号内に埋もれた信号の周波数成分を抽出し、これを計算することで算出することができる。信号のFFTは、例えば、MATLABの関数periodogramを用いて、その出力を正規化してパワースペクトル密度PSD、またはパワーの測定元となるパワースペクトルを算出することができる。PSDは、時間信号のパワーが周波数についてどのように分布しているかを示すもので、単位はワット/Hzである。PSDの各点を、その点が定義された周波数範囲にわたって(つまり、PSDの分解能帯域幅にわたって)積分して、パワースペクトルを計算する。パワースペクトルの単位はワットである。パワーの値は、周波数範囲にわたって積分せずに、直接パワースペクトルから読み取ることができる。PSDもパワースペクトルも実数なので、位相情報は何も含まれていないことになる。このように周波数パワーの計算はMATLABの標準的な機能で算出することができる。
本明細書において、「痛み」および「疼痛」は同義であり、身体部分に傷害・炎症など一般に強い侵害のあるとき、これを刺激として生ずる感覚をいう。ヒトでは、強い不快感情を伴う感覚として一般感覚にも含まれる。加えて、皮膚痛覚などはある程度は外部受容の性格もそなえ、他の皮膚感覚や味覚と協同して、外物の硬さ・鋭さ・熱さ(熱痛)・冷たさ(冷痛)・辛さなどの質の判断に役立つとされる。ヒトの痛覚は皮膚・粘膜以外に身体のほとんどあらゆる部分(例えば、胸膜、腹膜、内臓(内臓痛覚、脳を除く)、歯、眼および耳など)に起こり得、いずれも脳において脳波またはその変動として感知され得る。この他、内臓痛に代表される内部痛覚もまた、痛覚に包含される。内臓痛に対して上述した痛覚は体性痛という。体性痛および内臓痛に加えて、実際に障害されている部位と異なる部位の表面が痛くなるような現象である「関連痛」という痛覚も報告されており、本発明は、これも分類することができ、また、これらの多様な疼痛タイプを快不快という観点で分類することができる。
痛覚には、感受性(痛閾)に個人差があり、痛刺激の起こり方や受容器部位の相違により、質的相違があり、鈍痛や鋭利痛などの分類があるが、本開示ではいずれの種類の痛覚でも測定、推定および分類することができる。また、速い痛覚(A痛覚)および遅い痛覚(B痛覚)、(速い)局所的痛みおよび(遅い)瀰漫性痛みにも対応可能である。本発明は、痛覚異常過敏などの痛覚の異常症などにも対応し得る。痛みを伝える末梢神経には「Aδ繊維」と「C繊維」の2つの神経繊維が知られており、例えば手をたたくと、始めの痛みはAδ繊維の伝導により、局在が明確な鋭い痛み(一次痛;鋭利痛)が伝わる。その後、C繊維の伝導により、局在が不明確なじんじんとした痛み(二次痛;鈍痛)を感じるとされている。痛みは4~6週間以内持続する「急性疼痛」、と4~6週間以上持続する「慢性疼痛」に分類される。
痛みは、脈拍や体温、血圧、呼吸と並ぶ重要なバイタルサインであるが、客観的データとして表示することは難しい。代表的な痛みスケールVAS(Visual Analogue Scale)やfaces pain rating scaleは主観的な評価法であり、患者間の痛みを比較することはできない。他方で、本発明者は、痛みの客観的評価のための指標として、末梢循環系の影響を受けにくい脳波に着目し、その痛み刺激に対する振幅/潜時の変化を観測し、これにスパース解析を適用すれば、どのような種類の疼痛かの判別および分類が可能であることが導かれた。また、本発明者らは、その痛み刺激に対する振幅/潜時の変化を観測すれば、痛みの種類(快不快)をも分類することを導いた。瞬間刺激も持続刺激もこの分類が可能である。
本明細書において、「瞬間痛」とは、単発刺激に同期して50~200msで現れる誘発電位に信号が出現する痛みの種類で、針で刺すような痛みをいう。他方、突出痛は、緩和領域で使われる用語で、瞬間痛とは異なり、突出痛は、一時的に強い痛みが出ることで、本明細書において使用される持続痛をも含む概念である。
なお、突出痛は「持続痛の有無や程度、鎮痛薬使用の有無に関わらず発生する一過性の痛み、または痛みの増強」と定義される。
持続痛は、一般に、単発の痛みではないか、単発の痛みが連続して発生することで単発性として知覚されず、誘発電位も単発刺激との同期性の認識が難しく、加えて事象関連電位のような形で信号が出てこない痛みをいい、ほとんどの臨床の痛みはこのカテゴリーに包含される。動物レベルでも同様であるが、瞬間痛は振幅の増大として取れる変化で、持続痛は振幅の減少として現れることのある痛みともいいうる。
本発明では、持続痛とは異なる瞬間痛を峻別し、適切な治療の判断に資することができることが重要な点の一つである。したがって「治療」という概念を軸に「痛み」の類別化を明確にできることも重要である。図18に示すように、瞬間痛に同期した持続性脳波特徴量は2000msecの範囲で、ゆるやかな陽性方向へのシフトを示す。したがって、この変化パターンを図18に示すようにテンプレート化し、オンラインで連続的に回帰し近似度の高い時点を特定することで、瞬間痛が発生した時点を特定し得る。
本発明では、痛みの判定に関して、少ないパラメータでも有効に痛みを判定し、分類することができることが重要な点の一つである。
本発明では、強度自体よりも「治療が必要な」痛みかどうかということを区別できることが重要な点の一つである。したがって「治療」という概念を軸に「痛み」の類別化を明確にできることも重要である。例えば、「快不快」や「耐えられない」といった痛みの「質的」分類につながるものであるといえる。例えば、「疼痛分類値」の位置づけと、変曲点や分類値の幅やその関係性も定義することができ、n=2の場合の他、n=3以上の場合もあり得ると想定される。また3つ以上の場合は、「痛くない」「痛気持ちいい」「痛い」にわけることができる。例えば、「耐えられない、治療が必要」な痛み、「中間」、「痛いけど気にならない」という判別が可能である。本発明のスパースモデリングで算出された回帰モデルを用いた判別は、「耐えられない」と「痛いけど耐えられる、治療必要なし」であることが識別できる。
本明細書において「主観的疼痛感覚レベル」とは、対象が有する疼痛感覚レベルをいい、コンピュータ化された可視化アナログスケール(COVAS)等の慣用技術または他の公知技術、例えば、Support Team Assessment Schedule(STAS-J)、Numerical Rating Scale(NRS)、Faces Pain Scale(FPS)、Abbey pain scale(Abbey)、Checklist of Nonverbal Pain Indicators(CNPI)、Non-communicative Patient’s Pain Assessment Instrument (NOPPAIN)、Doloplus 2などで表現することができる。このような主観的疼痛感覚レベルは瞬間痛の評価にも応用することができる。
本明細書において「刺激」とは、対象に対して何らかの反応を生じさせるものをいい、対象が生物の場合、生物やそのある部分の生理学的活性に、一時的な変化をもたらす要因をいう。「刺激」の具体的な例として例示される痛覚に関した事象の場合は、痛覚を生じさせ得る任意の刺激を含む。例えば、電気刺激、冷刺激、熱刺激、物理的刺激、化学的刺激などが含まれる。本発明において、疼痛分類値を生成するために用いられる刺激はどのような刺激であってもよいが、温度刺激(冷刺激または温刺激)、または電気刺激が通常用いられる。刺激レベルは、3種類以上使用することが通常であり、好ましくは4種類以上、より好ましくは5種類以上、さらに好ましくは6種類以上、あるいはそれより多い種類の刺激を用いることができる。温度であれば、例えば、低温刺激の場合、例えば10℃~-15℃の範囲で適宜の感覚で減少させることができ、6点取得する場合は5℃ごとに減少させることで、6種類の温度レベルの刺激を生成することができる。刺激の評価は、例えば、コンピュータ化された可視化アナログスケール(COVAS)等の慣用技術または他の公知技術、例えば、Support Team Assessment Schedule(STAS-J)、Numerical Rating Scale(NRS)、Faces Pain Scale(FPS)、Abbey pain scale(Abbey)、Checklist of Nonverbal Pain Indicators(CNPI)、Non-communicative Patient’s Pain Assessment Instrument (NOPPAIN)、Doloplus 2などを用いて、主観的疼痛感覚レベルと対応させることができる。刺激の強度として採用され得る値としては、例えば、侵害受容閾値(nociceptive threshold;侵害受容線維に神経インパルスを生じさせる閾値)、痛覚判別閾値(pain detection threshold;ヒトが痛みとして知覚できる侵害刺激の強度)および痛覚許容限度閾値(pain tolerance threshold;ヒトが実験的に許容できる侵害刺激の中でもっとも強い刺激強度)等を挙げることができる。
心理学的な条件の場合、刺激としては、例えば、五感(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚)などで感じることができ、脳において情報処理がなされる任意の要因や、社会的ストレスなどの精神的に感知することができる任意の要因などを挙げることができる。
本明細書において「誘発脳波成分」(evoked (brainwave)potential)とは、外因性(exogenous)の刺激に対して誘発される脳波の成分を言い、陽性および陰性の脳波が存在する。例えば、陽性のものとしてはP1(P100)(波)が挙げられ、陰性のものとしてはN1(N100)(波)またはN125が挙げられる(Donchin, E., Ritter, W., & McCallum, C. (1978). Cognitive psychophysiology: The endogenous components of the ERP. In E. Callaway, P. Tueting, & S. Koslow (Eds.), Brain event-related potentials in man (pp. 349-441). New York: Academic Pressを参照)。物理的な刺激に対する処理過程を反映するが、事象関連電位はより高次の処理過程、とりわけ記憶、予測、注意、心理状態の変化によって発生するとされている。
本明細書において「事象関連電位成分」(event-related potential、 ERP)とは、内因性の脳波の成分を言い、陽性および陰性の脳波が存在する。例えば、陽性のものとしてはP2(P200)(波)が挙げられ、陰性のものとしてはN2(N200)(波)が挙げられる。事象関連電位成分は、時系列としては誘発脳波成分の後に生じる(Donchinら、同上)。思考や認知の結果として、何らかの形で計測された脳の反応であるといえる。より詳細には、内的・外的刺激に対する類型的な電気生理学的反応であるといえる。ERPは脳波によって計測される。脳磁図(MEG)による同様の概念はevent-related field (ERF)と呼ばれ、ERPと同様の分析を行うことができる。
本明細書において、「P100」、もしくは「P1」は、陽性の誘発脳波成分をいい、第1陽性誘発脳波成分ともいわれる。
本明細書において、「N100」もしくは「N1」は、陰性の誘発脳波成分をいい、第1陰性誘発脳波成分ともいわれる。P100の後に発生する。
本明細書において、「P200」、もしくは「P2」は、陽性の初期事象関連電位成分ともいわれる。通常P1、N1の後に発生する。
本明細書において、「N200」もしくは「N2」は、初期の陰性事象関連電位成分であり、P200の後に発生する。
本明細書において、「P300」、もしくは「P3」、陽性の中期事象関連電位成分をいう。通常P200、N200の後に発生する。従来のP300はピークがあり、一過性の電位成分として観察されていた。本発明では、P300と重なる位置またはそれより後に、持続性の特性を有する電位成分が見いだされ、これが瞬間痛と関連することが見いだされた。このようなことは、従来の知見からは予想できなかったものであり、しかも、治療に有用な指標を提供するものである。従って、本発明において見出された持続性成分は「持続性P300」を含む「持続性陽性成分」と称してもよい。
「誘発脳波成分」、および「初期の事象関連電位成分」は、いずれも250msecまでに生じることが多く、「誘発脳波成分」が先に生じ、「事象関連電位成分」が後続することが通常であるが、本発明の目的との関係では250msecより遅くに生じた場合は、250msecを始期として測定範囲を定めることができる(Cul et al.(2007). Brain Dynamics Underlying the Nonlinear Threshold for Access to Consciousness. PLoS Biol 5(10): e260を参照)。N100やP200などの誘発、ならびに事象関連電位成分は、刺激受容状況や覚醒度の低下などからはっきり観察されないこともあるが、大脳新皮質機能が失われた植物状態でない限り存在自体はしていることから、測定においては、便宜的に250msecを始期としてもよい。P200成分は、選択的注意を反映している成分で、中期時間帯で現れ始める高次認知の脳波成分の入口のような成分である。P1、N1、P2、N2、P3等の時間的関係は、図17に例示する。図17は、誘発電位から、事象関連電位の時間帯(P2以降)の時間変化である。P1の前の誘発電位の前(<100msec)にはより細分化された脳深奥の反応(P50、P25など)がある。したがって、本発明の測定対象は、陰性、ならびに陽性の外因性(exogenous)誘発脳波成分」、「初期の陰性ならびに陽性の内因性(endogenous)事象関連電位成分」および250msecのうち最も早い時点から2000msecと定義することもできる。
P300(P3)は、P100、P200に続く第三の陽性ERP成分という位置づけとされる。ピーク潜時は、300msec周辺に現れることが多いが、認知負荷や処理内容に関連して数百ミリ秒遅れることもある。また、2つのタイプのP300があるといわれている。1つは、新奇的な刺激に対する反応であるP3aと呼ばれるもので、言ってみれば、新奇性刺激に対する驚愕反応であり、前頭部優位に表れる。他方、P3bと呼ばれるものもあり、これは注意のターゲットに対する意識的反応で、注意が向いていなければ観察されないものである。中央頭頂部優位に現れ、P3aより少し遅いピーク時間を持つ。理論に束縛されることを望まないが、本発明において用いられる持続性陽性成分とP300とは直接的には関係せず、本発明の陽性成分は、3番目の陽性成分という意味では、「持続性P300」と呼びうるものである。
さらに、P300は、早い誘発電位(N100)などの脳活動と異なり、刺激特性に対して連続的変化する性質を持たないという報告がある。例えば、刺激強度が強くなると誘発成分N100の喚起度成分は「連続的」に電位が変化するのに対し、P300は、意識的反応がある、なしの離散性をゆるやかに近似する「シグモイド関数パターン」を示す(Cul et al.(2007). Brain Dynamics Underlying the Nonlinear Threshold for Access to Consciousness. PLoS Biol 5(10): e260)。この知見を痛みの本発明の場合に適用すると、この成分が見られることが、「痛みの意識がある」ことを示し、かつ、単純なP300活動ではなく、持続性特性を示すという点が重要な知見であるといえる。
P300のような中期の事象関連電位は大体300から400msecでピーク電位を迎えるといわれているが、処理情報の内容や負荷により変化する。一般的には、陽性方向へのシフトは300msec前から始まり300から400msecでピークを迎える非持続性を示すが、本発明で示されるように、持続性が予想外に続き、刺激呈示後2000msec経てもベースラインにもどらないことがある。いつまで経っても戻らず、今回は実にそれが、例えば、2秒間も続いたという点が予想外の事象であり、これが、疼痛の判別に使用できることは予想されていなかった。また、持続性陽性成分が重要な点の一つであることもまた、予想外の特徴である。
本明細書において「対象刺激」とは、測定対象となる刺激(例えば、痛みのもととなる刺激)をいう。現実の診断では、自然に、不規則に起こるような、外的、もしくは内的に発生する痛み刺激の場合もあり、また、検査目的でリファレンスとして人工的に呈示する外的な痛み刺激でありうる。
本明細書において「参照刺激」とは、疼痛などの測定の比較の基準となる刺激をいう。参照刺激としては、例えば、痛み刺激と同じ種類の物理的特性を持ちながら、痛みを生じないような刺激である。この生体反応を基準とすることで、物理的特性の最小の違いに基づき、痛みにかかわる生体反応信号を特定することができる。例えば、本申請書の実施例で用いた39℃の熱刺激は、痛みを生じる熱刺激(例えば、52℃の高温刺激)の特性を調べるための参照刺激として使われている。ただし、参照刺激は熱刺激に限定されず、電気刺激も挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書において「中期時間帯」とは、初期の事象関連電位成分が生じる時点から、後期事象関連電位(P600や後期陽性成分など)が生じるまでの時間帯をいう。おおよそ250msec~600msecの間の範囲の値を含み、誘発電位(N100やP100)が見られる早期時間帯が終了し、250msec以降の時間帯で、P300、N400などの認知処理成分が出現する時間帯であり、後期陽性成分、もしくはP600が現れるまでの時間帯(600msec周辺)までを含み得る。中期時間帯は、例えば、300msec、400msec、500msec、600msec、ならびにその間隙の連続的時間帯(例えば、315msec、350msec等を含む)を含み得る。
本明細書において「持続性特性」または「持続性ERP」とは、ピークや谷などが生じない、もしくはピークの出現が長時間遅れるような、なだらかに信号が継続する状態をいう。代表的には、少なくとも100msec継続してピークなどを迎えずに信号が継続することをいう。後ほど繰り返し記述するように、持続性成分の特定には、以下のような複数の技術的方法がある。1)刺激が呈示された後に、参照刺激の活動(脳波波形)からの逸脱が起こってはいるが、それが刺激呈示直後から起こっている場合は、痛みの知覚や認知に関係あるような成分ではなく、アーチファクトの可能性がある。2)各刺激呈示の脳波波形を見て、脳波の基線自体が著しく上方向や下方向にシフトしており、線形補正により基線をベースラインに戻したときに消失するような場合は、持続性成分とは呼ばない。3)0.02Hz、もしくは0.01Hz、0.1Hzなどの低域周波数帯域成分を遮断した場合、持続性成分は持続時間に応じて消失する。したがって、1、2に該当せず、そのような低域周波数成分を遮断して消える場合は、持続性ERPと特定してもよい。4)オフライン解析時点において、持続性成分の振幅、周波数パワーなどを含む特徴量と痛み強度などの刺激特性や対象者の検査における行動特性や心理特性と有意な相関関係も見出されるような場合は、さらに、持続性成分が刺激に関連する信号であると判断してもよい。
なお、代表的には、山のように活動のピーク(例えば、0.2秒(200msec)程度の幅できれいに現れるようなもの)を有する場合は、持続性には含めない。逆にいえば、「効果が急こう配に出現ならびに消失せず、ピークがないか、もしくは、ピークが分かりづらい」場合は持続性があると判定することができる。「山(はっきりとしたピークがある)」と「持続性」は、図18などの例を見れば明らかなように、明確な相違があり判定することができる。刺激呈示後、少なくとも400msecあたりから効果が現れ、山のようなはっきりしたピークが現れないか、もしくはかなり遅くゆっくりと現れるような場合、持続性と経験上呼ばれる。基準となる条件の脳活動からシフトして逸脱し、それが少なくとも100msecを超え、好ましくは200msec以上、好ましくは300msec以上、好ましくは500msec以上、さらに好ましくは1000msec以上続く場合に、持続性状態とよぶ。対象となる測定範囲の時間区間で、一定時間以上またはすべてで陽性の効果が見られる場合、持続性状態といえる。例えば、100msecぐらいにこの区間を区切り、全部、もしくはより多くの区間で条件差が見られれば、持続性と解釈することができる。例えば、本明細書では、少なくとも100msec分の範囲との間に統計学的に有意な相違がみられる場合、持続性がみられると判定することができる。また、持続性成分は、周波数のフィルター処理にも敏感であり、例えば、予測を反映する持続性陰性ERPであるCNV(contingent negative variation:随伴性陰性変動)は3秒以上続き、一般的に0.02Hz以上の低周波数帯域を解析に含める。すなわち、この成分を客観的に判断する場合は、遮断する低域周波数帯域を高くした場合に消失するかどうかで判断し得る。あるいは、例えば、図19に示されるように、参照刺激に対し、痛み刺激が持続してかい離する時点ならびに持続時間を特定し、その区間を、例えば、100msecごとに分割してt-検定やANOVAなどの代表値の比較方法を用いて検証することで、持続性ERPの特定方法、ならびに統計的検証を行うことができる。
1つの実施形態では、持続性特性については、比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうか、および該異なる持続時間が存在する場合、異なってから再度同じ値となるかどうかを測定すること、および該持続時間が存在し、再度該同じ値とならない場合、不快な痛みが存在すると判定することができる。持続時間の例としては、例えば、100msecを超え、好ましくは200msec以上、好ましくは300msec以上、好ましくは500msec以上、さらに好ましくは1000msec以上続くことをいうが、これらに限定されない。参照刺激は、対象において生じる反応が知られた刺激であり、例えば、音声刺激であれば、1000Hzなどの基準となる刺激であったり、視覚刺激であれば、図形などの単純刺激であったり、電気刺激であれば、弱い強度の刺激であり、物理的、心理的特性が不快感や違和感を生じさせないような刺激を挙げることができる。
持続性特性の判定において、事象関連電位の場合は、参照刺激の脳活動を基準に、該当する痛みの脳活動効果を特定する。したがって、すでに痛みが起こっていて、かつ持続的であるような場合は、この特徴量だけで判別するのではなく、さらなる特徴量の分析も必要であり得る。他方で、痛覚の敏感性の個人差などは、本発明のこの指標で調べることができる。例えば、痛みをモニタリングする前に、瞬間的な痛み刺激を2種類、「痛くない参照刺激」と「痛い刺激」を10回ぐらいずつランダムに呈示し、痛み刺激の持続性効果(z値変換したもの)をシグモイド判別器などにかけて、どの痛みカテゴリに該当するかを特定することができる。その感度を元に、痛みモニタリングを行うときに使う判別アルゴリズムの重みづけ係数の修正に使うことができると想定される。また好ましい実施形態では、対象となる特徴量としては、電位、もしくは持続時間、もしくはその組み合わせの特徴量が好ましい。個人の痛み評価とこの特徴量が有意な相関を示せば、個人差があることを示すことができる。実施例においても、シグモイド関数近似のグラフでは、30%ぐらいのサンプルが強い痛みの判別においてエラーになっていることから、エラー群と正解群の違いが個人差であるとも言える。
P300のような中期の事象関連電位は、おおよそ300から400msecでピーク電位を迎えることが知られているが、これは、処理情報の内容や負荷により変化するといわれている。したがって、一般的には、陽性方向へのシフトは300msec前から始まり300から400msecでピークを迎える非持続性を示すが、本実施例で示すように持続性が予想外に続き、刺激呈示後2000msec経てもベースラインにもどらないことがあり(図18参照)、これをとらえることで、瞬間痛などの疼痛をとらえることができた点は従来知られておらず、驚くべき効果である。本発明で好ましい実施形態では、持続性陰性成分ではなく、陽性成分であるという「極性」の違いにも着目することが望ましい。
あるいは、持続性特性があるかどうかを判定するには、以下をチェックする。
1)刺激が呈示された後に、参照刺激の活動(脳波波形)からの逸脱が起こってはいるが、刺激呈示直後から起こっている場合は、痛みの知覚や認知に関係あるような成分ではなく、アーチファクトの可能性がある。2)各刺激呈示の脳波波形を見て、脳波の基線自体が著しく上方向や下方向にシフトしており、線形補正により基線をベースラインに戻したときに消失するような場合は、持続性成分とは呼ばない。3)0.02Hz、もしくは0.01Hz、0.1Hzなどの低域周波数帯域成分を遮断した場合、持続性成分は持続時間に応じて消失する。したがって、1、2に該当せず、上記の低域周波数成分を遮断して消える場合は、持続性ERPと特定してもよい。4)オフライン解析時点において、持続性成分の振幅、周波数パワーなどを含む特徴量と痛み強度などの刺激特性や対象者の検査における行動特性や心理特性と有意な相関関係も見出されるような場合は、さらに、持続性成分が刺激に関連する信号であると判断してもよい。
本明細書において「スパース」または「スパースモデリング」とは、科学的、数理的モデリングの一種であって、少ない情報から全体像をあぶりだす手法を言う。スパースとはスカスカ、少ない、を意味するものである。その基本的な考え方は(1)高次元データの説明変数が次元数よりも少ない(スパース(疎)である)と仮定し、(2)正則化、すなわち罰則項(例えば、L1正則化におけるλ係数の導入)を設けて、説明変数の個数がなるべく小さくなることと、データへのなめらかなモデル適合とを同時に要請することにより、(3)人手に頼らない自動的な説明変数の選択を可能にする手法である。
本明細書において関数への「フィッティング」は、ある測定値やそこから得られた曲線について、目的とする関数に近似させるようにあてはめる技術をいい、任意の手法に基づいて実施することができる。例えば、最小二乗フィッティングや非線形回帰フィッティング(MATLABのnlinfit関数など)などを挙げることができる。近似させた曲線については、回帰係数を算出して、その曲線が本発明において使用し得るかどうか、好ましいかどうかを判断することができる。回帰係数としては、回帰式モデルが有意であり、調整済み決定係数(R)が0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.85以上、0.9以上など、数値が「1」に近いほど望ましく、高い数値ほど信用性が高い。または、特定の閾値を用いて、推定値と実測値をカテゴリー化し、両者を照合によりフィッティングの精度を検証することもできる(本発明でいう解析で判別精度というのはこのことをいう)。
本明細書において「交差検証」は「交差検定」(いずれも、Cross-validation)ともいい、統計学において標本データを分割し、その一部をまず解析して、残る部分でその解析のテストを行い、解析自身の妥当性の検証・確認に当てる手法を指す。10分割する場合、10分割交差検証といい、5分割の場合は5分割交差検証という。データの解析(および導出された推定・統計的予測)がどれだけ本当に母集団に対処できるかを良い近似で検証・確認するための手法である。最初に解析するデータを「学習データ」または「訓練事例集合(training set)」などと呼び、他のデータを「テスト事例集合(testing set)」または「テストデータ」などと呼ぶ。本明細書において例示される10分割交差検証の10分割は、例の一つで、1個抜き交差検証というのも利用され得る。これらを総称して「分割交差検証(検定)」と呼ばれることもある。スパースモデリングを行う際は、交差検証により罰則項で用いる適切なλ(好ましくは最適λ)値を特定し、特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定する。ここで、「λ値」とは、正則化において機能するハイパーパラメータであり、モデルの適合度をなめらかにし、汎化能力を高めるために使われる。正則化には、L1正則化やL2正則化があるが、本発明において好ましい実施形態の一つで用いられるLASSO(Least absolute shrinkage and selection operator)では、L1正則化が使われる。λ係数は正の係数であり、交差検定により適切な(好ましくは、最適な)解が決められる。具体的な例としては、MATLABのLASSO関数は、以下の最小化問題を解く。
Figure 0007179299000001
Min: 最小化
Dev:逸脱度(切片β0と回帰係数βを用いた回帰モデル推定値の観測値からの外れ
N:サンプル数
λ:正の値を取る正則化パラメータ

ここで、偏回帰係数とは、回帰分析において得られる回帰方程式の各説明変数の係数をいい、切片は、座標平面上の曲線などのグラフと座標軸の交点をいう。
スパースモデリングは、大関ら(2015 年度大阪市立大学・電子・物理工学特別講義(改訂版:2015.09.09))に説明されており、ここで説明されるスパースモデル解析およびLASSOの説明を応用することができる。なお、本文献は、その全体が本明細書において参考として援用される。
スパースモデル解析で用いられるノルム選択で、得られた解がスパースな解であるかを決定するために圧縮センシングを用いることができる。ここでノイズが観察される場合はノイズ有圧力センシングを用いることができる。ノイズ有圧力センシングは、LASSO(Least Absolute Shrinkageand Selection Operators ; R. Tibshirani: J. R. Statist.Soc. B, 58ラ(1996)26)と呼ばれる手法を用いることができる。
スパースモデル解析では、データ入力、判別/推定部のアルゴリズム決定および判別/推定の出力を複数回(例えば、1000回、またはそれ以上あるいはそれ以下)行って、適切な値に(好ましくは、最適化)することができる。例えば、2000回、3000回、5000回、10000回行ってもよい。
適切な(好ましくは最適な)λ係数を用いて、特徴量のパラメータ(係数)とアルゴリズムの定数(切片)を決定し、テストデータの判別推定をする際に、これを1000回繰り返し行い、その平均が判別精度となる。従来技術の精度判別とは、かなり厳密性が異なるといえる。また、一般を対象に生成した回帰モデルを用いる場合は、個人ごとにキャリブレーションを行うことが好ましい。このモデルで使う特徴量のパラメータ(係数)やアルゴリズムの定数(切片)を個人ごとに補正する技術を追加することができる。
本発明においてモデリングをする際にスパースモデル解析を行う場合、以下の点に留意して行うべきである。例えば、LASSOでは、すべての係数にλ値を同じようにかけて正則化するため、用いる特徴量が同じ単位で扱われる必要がある。したがって、特徴量の正規化を行い統制する必要がある。
本明細書において痛みの「分類」は、種々の観点で行うことができる。代表的な例としては、推定対象が「痛い」か「痛くない」かを分類することを含むが、これ以外に、痛みを感ずるかどうか、および強い痛みと弱い痛みの量的区別を含むが、これに限定されず、質的区別(「我慢できる」痛みと「我慢できない」痛み)も含まれる。
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
また、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
そこで、本発明者は、複数種類の痛みを複数の方法で評価することにより、痛みと脳波との関係を解明した。以下に、本発明者が解明した痛みと脳波との関係について、図面を参照しながら説明する。
まず、電気刺激による痛みと脳波との関係について説明する。以下に示すデータは、複数の被検者のうちの代表的な一の被検者のデータを示す。
図1Aは、電気刺激と痛みレベル(VAS)との関係を示すグラフである。図1Bは、電気刺激と痛みレベル(一対比較)との関係を示すグラフである。図1Cは、電気刺激と脳波振幅との関係を示すグラフである。図1Dは、脳波波形の一例を示すグラフである。
図1A、図1Bおよび図1Cの横軸は、電気刺激の電流値を示す。図1Aの縦軸は、VASにより被検者から申告された痛みレベルを示す。また、図1Bの縦軸は、一対比較により被検者から申告された痛みレベルを示す。図1Cの縦軸は、脳波の振幅値を示す。図1Dにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は、信号レベルを示す。
一対比較は、2つの大きさの電気刺激を一組として、複数組の電気刺激の各々に対して、どちらの電気刺激の方がどれだけ痛いかを被検者が数値により申告する方法である。この場合、2つの痛みの比較により痛みレベルが申告されるので、痛みレベルに対する、被検者の過去の経験の影響を軽減することができる。
図1Aおよび図1Bに示すように、VASおよび一対比較のどちらの方法であっても、電気刺激の電流値(つまり、刺激の強さ)と痛みレベルとの関係は、概ねシグモイド(S字)曲線によって表される。なお、シグモイド曲線の形状(例えば、上限値および下限値など)は、被検者によって異なる。
また、図1Cに示すように、電気刺激の電流値と脳波の振幅値との関係も、概ねシグモイド曲線によって表される。ここでは、脳波の振幅値は、最大ピーク値と最小ピーク値との差異値(つまり、ピークピーク値(peak-to-peak value))が用いられている。例えば、図1Dでは、3つの差異値(N1-P1、N2-P2、N1-P2)のうち最大の差異値(N1-P1)が振幅値として用いられる。
このように、電気刺激の強さおよび痛みレベルの関係と、電気刺激の強さおよび脳波の振幅値の関係とのいずれもがシグモイド曲線で表現される。つまり、痛みレベルおよび脳波の振幅は、ともに、電気刺激に対して上限および下限を有し、電気刺激の強さに対して同様の変化を示す。そこで、脳波の振幅値と痛みレベルとの関係を分析したところ、脳波の振幅値と痛みレベルとの関係は、図1Eおよび図1Fに示すように表された。
図1Eは、電気刺激による痛みレベル(VAS)と脳波振幅との関係を示すグラフである。図1Fは、電気刺激による痛みレベル(一対比較)と脳波振幅との関係を示すグラフである。図1Eおよび1Fにおいて、横軸は、脳波の振幅を示し、縦軸は、痛みレベルを示す。
図1Eおよび図1Fに示すように、VASおよび一対比較のいずれの場合であっても、電気刺激による痛みレベルと脳波の振幅値とは線形性を有する。つまり、脳波の振幅値は、痛みレベルに対して比例する。
なお、本開示において、線形とは、厳密な線形に加えて、実質的な線形も含む。つまり、線形は、所定の誤差の範囲で線形に近似可能な関係を含む。所定の誤差の範囲は、例えば、回帰分析における決定係数Rによって定義される。決定係数Rは、残差の二乗和(Residual Sum of Squares)を平均値からの観察値の差の二乗和(Total Sum of Squares)で除算した結果を1から減算した値である。所定の誤差の範囲は、例えば、Rが0.5以上となる範囲である。
熱刺激による痛みと脳波との関係についても、電気刺激の場合と同様に、痛みレベルと脳波振幅とは線形性を有する。
図1Gは、熱刺激による痛みレベル(VAS)と脳波振幅との関係を示すグラフである。図2は、熱刺激による痛みレベル(一対比較)と脳波振幅との関係を示すグラフである。図1Gおよび図2において、横軸は、脳波の振幅を示し、縦軸は、痛みレベルを示す。
図1Gおよび図2に示すように、VASおよび一対比較のいずれの場合であっても、熱刺激による痛みレベルと脳波の振幅値とは線形性を有する。また、被検者によって脳波の振幅値の上限値および下限値にはばらつきがあるが、発明者の実験により、振幅値の上限値は約60μVを超えないことがわかった。
以上のように、発明者は、複数種類の痛みを複数の方法で評価した痛みレベルと脳波の振幅値との関係を分析した結果、脳波の振幅と痛みとが特定の関係を有することを解明した。加えて、本発明は、脳波の振幅および痛みの特定の関係に基づいて痛みの大きさを推定するスパースモデリングが活用できることを見出した。
<痛み判別・分類>
1つの局面において、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法を提供する。この方法は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め(最小二乗法で誤差が少なくなるようにする手法、好ましくは最も誤差が少なくなる手法)、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む。a)~c)までは、回帰モデルを生成する段階であり、生成された回帰モデルに基づいて、d)~f)は被験者(対象)からの脳波データまたはその分析データを当てはめて痛みレベルを算出する段階であり、このような手順を経て精度の良い痛みの判別を行うことができる。医療機器として本発明の技術を利用するときは算出された痛みレベルは、必要に応じて、利用者にわかりやすいように表示することが好ましい。なお、適切なλ値として許容できる誤差の数値は各事例に応じて当業者は適切に決定することができ、例えば、交差検証により特定のλ値の範囲内(例えば、0.0001~0.01、あるいは0.00001、0.0001、0.001、0.01など、あるいはこれらの任意の間の範囲)になるように決定することができる。なお、最適λは、最小二乗法で誤差が最小値になるように設定ないし算出された値であり、任意の公知の手法を用いて当業者は容易に決定することができる。
1つの局面では、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する装置を提供する。この装置は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得するモデルデータ取得部と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出するモデル特徴量抽出部と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する回帰モデル生成部と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する測定データ取得部と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する測定特徴量抽出部と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する痛みレベル算出部と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する痛みレベル表示部とを含む。
別の局面において、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムで実行される方法は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む。あるいは、本発明は、上記プログラムを格納した記録媒体を提供する。代表的には、A)モデル用データ取得部では、工程a)が実施され、B)モデル用脳波特徴量抽出部では、工程b)が実施され、C)回帰モデル生成部では、工程c)が実施され、測定用データ取得部(脳波データ取得部と同じであって良い)では、工程d)が実施され、測定用脳波特徴量抽出部(モデル用脳波特徴量抽出部と同じであってよい)では、工程e)が実施され、痛みレベル算出部(回帰モデル生成部の機能を持っていてもよく、疼痛分類値生成部ともいわれる)では、工程f)が実施され、痛みレベル表示部では、工程g)が実施される。
別の局面において、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを推定する方法であって、a)スパースモデル解析に脳波特徴量を投入して得られた痛みの量的および質的レベルの少なくとも1つの近似量を提供する工程と、b)該推定対象から脳波データまたはその分析データを得る工程と、c)該脳波データまたはその分析データから脳波特徴量を抽出する工程と、d)該近似量に基づいて該脳波特徴量から該推定対象の痛みレベルを推定または判別する工程とを含む、方法を提供する。
対象の痛み判別を行うときに、好ましくは、実際に判別するときに、データを収集し、それを用いて回帰モデルを一から作るということはせず、あらかじめ、モデルデータや臨床データから作ったベースとなる回帰モデルに、対象者のリアルなデータを投入して判別/推定する。この場合、最初に、リファレンス刺激で、痛みの強いものと弱いものを複数回呈示し(10回×2種類など)、それを判別モデルで推定し、精度を確かめつつ、特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を補正することが好ましい。
また、モデル作成の際は、データ取得工程がかなり重要であり、できる限り、大人数で、年齢層もばらつき、また、臨床群でも通用するようなデータ取得を行うことが好ましい。
本発明では、痛みレベルを回帰モデルで算出する(フィッティングを行う)ことで、被験者が有する痛みを「推定」または「判別」を行うことができる。この際、回帰モデルから疼痛分類値を生成してもよい。痛みレベルが分かり、強い・弱いが分かると、強い刺激を与えないように施術することができたり、鎮痛剤などの治療効果が客観的に分かったりする作用効果が得られることが理解される。
本明細書において「疼痛分類値」とは、疼痛の種類を分類するために特定された脳波データ(例えば、振幅)またはその分析値またはその範囲をいう。本開示では、「疼痛分類値」を生成する(そして、それゆえ疼痛を予測する)部分または装置、機器を「疼痛分類器」または「疼痛予測器」などと称することがある。本開示では、推定対象を刺激し、それから得られる脳波の振幅データ等のデータを、その刺激強度または該刺激強度に対応する主観的疼痛感覚レベルをプロットして回帰モデルに当てはめてフィッティングさせることによって得られる回帰モデル曲線に基づいて、例えば、一定の変化がみられる点等を利用して決定することができるがこれに限定されない。疼痛分類値は、いったん生成した後、キャリブレーションを行い改善することができる。疼痛分類値は、pain classifierやpain predictorなどと表記されることもあるが、いずれも同義である。「痛み強レベル内における変動なのか」または「痛み強レベルを逸脱した、痛み低レベルを示す質的変動なのか」は、「疼痛分類値」を用いれば区別できる。痛み強レベル内変動を超えた逸脱反応があると、痛み強レベル内の変動とは、本発明の疼痛分類値を用いれば識別することができる。痛み強レベル内の変動であれば、誤差ではなく、識別することができ、これを超えた場合、逸脱反応として処理されることとなり得る。
以下スキーム図を用いて痛みレベル算出の手法を説明する(図12)。
工程a)であるモデル用の刺激強度(判別モデル作成用の痛み刺激の呈示、S100)に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する(判別モデル作成用データの取得)工程(S200)では、推定対象が複数レベル(強さまたは大きさ)の刺激(例えば、冷温刺激、電気刺激など)で刺激され脳波が取得される。刺激強度の種類の数は関数パターンの作成に必要である数であり得、例えば、通常少なくとも弱・中・強の3種類必要である。1種類または2種類であっても、前もって入手された情報と組み合わせることにより、スパースモデリングへの適用が可能であることもあるから、必ずしもこの種類数必要というわけではない。他方で、新たに適用を行う場合は、通常少なくとも3種類、好ましくは4種類、5種類、6種類またはそれより多い種類レベルの刺激で刺激することが有利であり得る。3種類あれば、弱・中・強がわかることから、好ましく、それより多ければ、関数パターンがより詳細に分かるので、理想的と言えるがそれに限定されない。ここで、推定対象への負担を極力少なくするべきであることから、刺激強度は該推定対象に対する侵襲性が高い(別の言葉でいえば、被験者が我慢できない強度)数は最低限またはゼロであることが好ましい。他方で、推定対象に対する侵襲性が高い刺激は、より正確なフィッティングのために必要であり得ることから、目的に応じて最低限の数を入れることができる。例えば、そのような侵襲性が高いレベルの種類の数は、少なくとも1種類、少なくとも2種類または少なくとも3種類であってもよく、推定対象が許容し得る場合4種類以上であってもよい。脳波データまたはその分析データは、脳活動デー夕、脳活動量などともいう。例えば、振幅データ(「EEG振幅」)、周波数特性、などを含む。このような脳波データは、当該分野で周知の任意の手法を用いて取得することができる。脳波データは、脳波の電気信号を測定することによって得ることができ、振幅データなどとして電位(μv等で表示され得る)で表示される。周波数特性はパワースペクトル密度などで表示される。
好ましい実施形態では、本発明を実施するために、脳波データは、1)できるだけ少ない電極(2つ程度)で、2)毛髪のある頭皮を極力避け、3)寝ている状態でも記録できるような簡便な方法で実施することが好ましいが、必要に応じて電極の数は増加させてもよい(例えば、3つ、4つ、5つなどでもよい)。
工程b)は、該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程である。脳波特徴量は、平均振幅(Fz,Cz,C3,C4)、Fz:δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(30-100Hz)、Cz:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(30-100Hz)>、C3:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(30-100Hz)>、C4:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(30-100Hz)>などを用いることができ、上記の周波数パワー等も利用可能である。
工程c)は、目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程である。いわゆるスパースモデル解析を行う工程である(S300)。ここでは痛みレベルを設定し、工程b)で得られた脳波特徴量を用いて、回帰モデル(疼痛分類器/予測器(モデル回帰式))を作成する(S400)。回帰モデルは、当該分野で公知の任意の手法を用いて行うことができる。このような具体的な解析手法としては、LASSOがあり、以下のようなモデル適合の最適化問題を解く。
スパースモデリングを行う際は、交差検証により罰則項で用いる適切なλ(好ましくは最適λ)値を特定し、特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定する。ここで、「λ値」とは、正則化において機能するハイパーパラメータであり、モデルの適合度をなめらかにし、汎化能力を高めるために使われる。正則化には、L1正則化やL2正則化があるが、LASSOでは、L1正則化が使われる。λ係数は正の係数であり、交差検証により適切な(好ましくは、最適な)解が決められる。具体的な例としては、MATLABのLASSO関数は、以下の数式を交差検証により解く。
Figure 0007179299000002
Min: 最小化
Dev:逸脱度(切片β0と回帰係数βを用いた回帰モデル推定値の観測値からの外れ
N:サンプル数
λ:正の値を取る正則化パラメータ
工程d)は、該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程である。工程c)と同様の手法で測定用のデータを取得する(S500)。
工程e)は、該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程である。工程e)は、工程b)と同様の手法で測定用脳波特徴量を抽出する。ここで、特徴量を抽出するのは、前提として脳波信号の処理(フィルターなど)、2次的処理(信号処理)により特徴量抽出するものである。
工程f)は、測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程である。ここでは、測定用の脳波特徴量を回帰モデルに代入して値を算出し、その値に対応する痛みレベルを分類または算出することができる(S600)。
工程g)は、必要に応じて該痛みレベルを表示する工程である。ここでは、算出された痛みレベルを数字やグラフィクスを用いて表示したり、あるいは、音声で提示することもできる。同一の被験者が対象者になる場合、以前の分類値データを用いて、分類値を継承、もしくは更新するような工程を含んでいてもよい。
本発明の装置において、A)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得するモデルデータ取得部は、工程a)が実施されるように構成される。すなわち、刺激強度を複数種類提供することができる手段や機能を有し、そのような刺激を、対象に対して付与することができるように構成され、さらに、推定対象の脳波データを取得するように構成される。脳波データ取得部は、工程a)を実施するほか、他の機能を有していてもよい(例えば、工程d))。
B)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出するモデル特徴量抽出部では、モデル特徴量を取得するように構成される。モデル特徴量抽出部は、工程b)を実施するほか、他の機能を有していてもよい(例えば、工程e))。
C)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する回帰モデル生成部では、回帰モデルの生成を行う機能を有し得る。通常、C)回帰モデル生成部では、工程c)が実施され、場合によっては、工程f)が実施されることとなる。この2つの機能は、別々の装置、デバイス、CPUまたは端末などで実現されてもよく、1つの部分として実現されてもよい。通常は、1つのCPUまたは計算装置において、これらの計算を実現するプログラムが組み込まれたか組み込まれ得る構成となっている。
図4は、図12の一例であり、実施例で例示したスパースモデリングのより詳細な手順である。
S1000では、データ入力がされ、特徴量データおよび痛みレベルデータが入力される。
S2000では、データの分割がされる。ここでは、学習データとテストデータに分割され、学習データはモデル決定に使用されテストデータはモデル精度のテストに使用される。
S3000では、学習データを用いた交差検証(図では10分割交差検証が例示されている)による適切な(好ましくは最適な)λ値の決定を行う(例えば、LASSO解析)。
S4000では、特徴量のパラメータ(偏回帰係数)および回帰式モデルの定数(切片)を決定する。
S5000では、テストデータの痛みレベルの推定および実際の痛みレベルの照合を行う。照合は、たとえば、既存の回帰モデルがあり、その推定値が、痛み強≧0.3以上、痛み弱<0.3未満とする。そこで、≧0.3以上の場合「2」、<0.3の場合「1」とする。ここで、実際の痛みレベルも「強=2」と「弱=1」で表現されているので、両者を照合して一致しているなら正解として、判別精度を算出する。
S6000では判別精度(%)の算出を行う。S6000からS2000に戻り事後複数回(図4では1000回)繰り返し精度を計算する。
図13には、本発明の装置の模式図が記載される。このうち測定装置の実施形態を説明する。リファレンス刺激部1000は脳波データ取得部2000とともにまたは別々に提供される。実際の痛みの判別/推定過程(実線)に関しては、脳波データ取得部は脳波計2500から脳波データを取得する、工程a)を実施する。脳波特徴量抽出部2600では、脳波の生データから脳波特徴量が抽出される。痛みレベル判別/推定部3200では、判別モデル生成部3000のスパースモデル解析により前もって得られた判別モデルによる痛みレベルのフィッティング、もしくは推定がなされる。搭載された判別アルゴリズムの確認や補正プロセス(点線矢印)の場合、脳波データ取得部2000では、リファレンス刺激部1000から対象(1500)に発出された刺激に同期した脳波データを獲得する。また、リファレンス刺激部1000は、リファレンス刺激強度レベルデータを、判別アルゴリズムの補正のために(痛みレベル)判別/推定部3200に送る。痛みレベル判別/推定部3200の推定値は、疼痛可視化部4000で可視化される。例えば、閾値による推定値のカテゴリー化(0=弱い、1=強い)等がなされる。
図14は、1つの実施形態の痛み判別・分類システム5100の機能構成を示すブロック図である(なお、この構成図のいくつかは任意の構成部分であり省略され得ることに留意されたい)。システム5100は、脳波測定部5200を備え、この脳波測定部は脳波記録センサー5250および必要に応じて脳波増幅部5270を内部に備えるか、外部で接続し、痛み判別/推定装置部5300にて痛みの回帰モデルの信号処理および判別/推定が行われる。痛み判別/推定装置部5300では、脳波信号処理部5400で脳波信号を処理し、(必要な場合は、脳波特徴量抽出部5500で脳波特徴量を抽出し、)痛みレベル判別/推定部5600で痛みを判別/推定し、(必要に応じて)痛みレベル可視化部5800で痛みを可視化する。痛みレベル判別/推定部5600は、判別モデル作成部が既存のデータベースとスパースモデル解析を用いて特定されたアルゴリズムを搭載し、リアルタイムの痛みレベルを判別/推定する。また、内部、もしくは外部に、刺激装置部5900を備え、この刺激装置部5900は、リファレンス刺激呈示装置部(端子)5920を備え、患者の痛みレベル判別のために寄与する。刺激装置部は、リファレンス刺激発生部5940も含む。必要に応じてリファレンス刺激レベル可視化部5960を備えていてもよい。判別部の内部で本発明のスパースモデル分析、またはそれにより得られた判別用回帰モデルが格納される。この具体的なチャートは図4に示される。
図15は、スパースモデリングが関与する様子をより詳細に示したものである。
このように痛み判別・分類システム5100は、脳波測定部5200と、痛み判別/推定装置部5300とを備え、必要に応じて刺激装置部(リファレンス刺激部)5900を備える。痛みレベル判別/推定部5600は、例えば、プロセッサおよびメモリを備えるコンピュータによって実現される。この場合、痛みレベル判別/推定部5600は、判別モデル生成部3000が作成したプログラム(判別アルゴリズム)がプロセッサによって実行されたときに、プロセッサを、必要に応じて脳波増幅部5270、脳波信号処理部5400、(必要に応じて)痛みレベル判別/推定部5600、(必要に応じて)痛みレベル可視化部5800などとして機能させる。必要に応じてリファレンス刺激発声および可視化もさせる。また、本発明のシステム5100または装置5300は、例えば、専用電子回路によって実現されてもよい。専用電子回路は、1つの集積回路であってもよいし、複数の電子回路であってもよい。脳波データ取得部および疼痛分類値生成部は、この痛み推定装置と同様の構成をとっていてもよい。
脳波測定部5200は、脳波計(脳波記録センサー5250)を介して推定対象から複数回の脳波測定を行うことにより複数の脳波データを取得する。推定対象とは、痛みによって脳波に変化が生じる生体であり、人に限定される必要はない。
痛みレベル判別/推定部5600は、装置内部、もしくは外部にある判別モデル生成部3000が作成した判別/推定用の回帰モデルを生成するかまたは格納する。スパースモデル解析で生成した判別アルゴリズム(回帰モデル)は、複数の脳波データの振幅から、痛みの大きさを推定または分類するためのものである。つまり、痛みレベル判別/推定部5600は、脳波データから対象の疼痛を推定または分類するための回帰モデルを生成または格納することができる。
脳波記録センサー5250は、推定対象の脳内で発生する電気活動を頭皮上の電極で計測する。そして、脳波記録センサー5250は、計測結果である脳波データを出力する。脳波データは必要に応じて増幅することができる。
次に、以上のように構成された装置の処理または方法について説明する。図12は、一連の処理を示すフローチャートである。モデル回帰式の生成の局面では、S100~S400までが関与する。S400で痛みレベル判別/分類装置が生成される。
リファレンス刺激部1000(図13参照)を通じて、対象に対して複数レベル(大きさ)の刺激強度の刺激を付与する(S100)。
次に、脳波データ(振幅データなどの脳波振幅基準データ)を取得する(S200)。脳波データの取得は、図13でいうと、脳波データ取得部2000により行われる。図14に即していうと、脳波測定部5200により、脳波計(脳波記録センサー)5250を介して推定対象から複数回の脳波測定を行うことにより複数の脳波データを取得し、脳波データ(例えば、振幅データ)とする。脳波測定部5200は、複数の時刻に脳波測定を行ってもよい。判別モデル生成部3000(図13参照)において、スパースモデル解析を行う(S300)。スパースモデル解析によるフィッティングを行って、必要に応じて回帰係数が適切な値と判断される場合に、この回帰モデル(判別モデルともいう)を用いて、痛みレベル判別/推定部3200(図13参照)が痛みレベル分類を行うことができる(S400)。回帰モデルの生成後、必要に応じて、リファレンス刺激部1000(図13参照)により、較正(キャリプレーション)を行うことができる。
本発明のスパースモデリングは、以下のように表現することもできる。すなわち、1つの局面では、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを分類するための判別アルゴリズムであって、a)複数のレベルの刺激強度で、該推定対象を刺激する工程と、b)該刺激強度に対応する該推定対象の脳波データを取得する工程と、c)該脳波データから脳波特徴量を抽出する工程と、d)該スパースモデル解析に該特徴量を投入し、痛みの量的、ならびに質的レベルに近似させ、痛みレベルを推定、ならびに判別する工程、ならびにアルゴリズム決定(特徴量係数、切片を含む)の工程とを含む、アルゴリズムを提供する。
あるいは、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する装置を提供し、この装置は、a)複数のレベルの刺激強度で、該推定対象を刺激する刺激部と、b)該刺激強度に対応する該推定対象の脳波データまたはその分析データを取得するデータ取得部と、c)該脳波データまたはその分析データから脳波特徴量を抽出する脳波特徴量抽出部と、d)スパースモデル解析に該特徴量を投入し、痛みの量的レベルおよび質的レベルの少なくとも1つに近似させ、痛みレベルを推定または判別する痛みレベル判別/推定部とを含む。
別の局面において、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または推定する方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムが実行する方法は、a)複数のレベルの刺激強度で該推定対象を刺激する工程とb)該刺激強度に対応する該推定対象の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、c)該脳波データまたはその分析データから脳波特徴量を抽出する工程と、d)スパースモデル解析に該特徴量を投入し、痛みの量的レベルおよび質的レベルの少なくとも1つに近似させ、痛みレベルを推定または判別する工程とを含む。あるいは、本発明は、上記プログラムを格納した記録媒体を提供する。
本発明を用いることによって、多様な痛みの種類、ならびに痛みのパターンに対応できる一般性を持つようになる。また、本発明は、上記で作成、もしくは搭載した既知の判別アルゴリズムを提供することにより、既知の対象者の痛みレベル判別に有効なだけではなく、未知の対象者の痛み判別も予測、ならびに分類することができる。この場合、既知の対象者の痛みデータベースに基づいて決定した、判別/推定アルゴリズムのパラメータ(回帰係数、切片、閾値など)と未知の対象者のリアルタイムの痛み特徴量を用いて推定値を得て、それを特定の閾値を用いて痛みのレベル化を行う。例えば、LASSO解析法より特定された回帰モデルでは、以下のような既知の判別アルゴリズムを未知の該対象測定データに適応することが可能である。
Figure 0007179299000003
i. 痛みレベル低:Esti <Threshold
ii. 痛みレベル高:Esti >Threshold

Est: 推定値
Test: 測定特徴量
β: 偏回帰係数
C: 切片
i: 観測数
j: 特徴量数
本発明はまた、判別アルゴリズムを提供することで、既知の対象者の痛みレベル判別するために、出来る限り少ない脳波特徴量で、既知、ならびに未知の対象者の痛み判別を分類、もしくは予測することができる。
このような特徴量としては、以下を挙げることができる。
(代表的特徴量)
・平均振幅(Fz,Cz,C3,C4)
・Fz:δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(31-100Hz)
・Cz:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(31-100Hz)>
・C3:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(31-100Hz)>
・C4:5帯域<δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(31-100Hz)>など
上記の周波数パワー等も利用可能である。
本発明は別の局面において、毎回回帰モデルを作成しないことを前提にして痛みレベルを判別/推定する技術を提供することができる。このような場合、本発明の方法は、c)該推定対象の痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルを提供する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む。ここで、推定対象の痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルは、その推定対象に対して予め痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルを算出しておき、適宜の記録装置または記録媒体に格納することによって、準備することができる。あるいは、このような回帰モデルは、ある程度標準化されたモデルとして提供されてもよい。このような場合は、同じ推定対象に対するスパースモデル解析を必ずしも行わなくてもよく、類似の年齢層や他の属性が類似または同じ被験者を対象に算出された回帰モデルを使用してもよい。この場合には、下記<回帰モデル生成>に述べるような回帰モデルの生成方法を用いることができる。
あるいは、本発明は、予め回帰モデル(判別モデルともいう)が提供された、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する装置を提供する。この装置では、c)該推定対象の痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルを提供する回帰モデル提供部と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する測定データ取得部と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する測定特徴量抽出部と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する痛みレベル算出部と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する痛みレベル表示部とを含む。
あるいは、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法をコンビュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムで提供される方法は、c)該推定対象の痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルを提供する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む。あるいは、本発明は、上記プログラムを格納した記録媒体を提供する。回帰モデルは、<回帰モデル生成>の節に記載されるような任意の手法で算出することができるが、別途の手法で生成したかあるいは予め生成していたものでもよい(図12、S400までを別に行っておく場合)。
工程d)は、該推定対象の脳波データ(例えば振幅データ)を得る工程である(S500)。この工程は、何らかの刺激を受けているあるいは処置されているかどうかにかかわらず、測定を意図する対象から、脳波データを得る工程であり、脳波データを取得できる手法であれば、どのような手法であってもよい。a)工程で使用される脳波データ取得と同じ手法を用いることができ、通常は同一の手法を用いる。
この後、本発明では工程e)において、脳波特徴量を抽出する。b)工程で使用される脳波特徴量抽出と同じまたは異なる手法を用いることができ、通常は同一の手法を用いる。
工程f)は、該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程である(疼痛分類、S600)。回帰モデルは、推定対象の痛みレベルと紐づけられて「痛み分類器」、もしくは「痛み予測器」と呼ばれる。例えば、痛みに関わる脳波振幅が減少パターンを示し、痛みの疼痛分類値が「強い痛み」と「弱い痛み」とを分類する場合、その値より低い脳波データ(例えば、振幅データ)が検出された場合は、「強い痛み」と分類され、大きな脳波データ(例えば、振幅データ)が検出された場合は「弱い痛み」と分類される。例えば、痛み分類器の値が、標準化された脳波絶対振幅「0.7」を示す場合、オンラインで記録される脳波振幅データを既存データをもとに絶対値化、ならびに標準化した後、「0.8」の場合は「弱い痛み」を感じていると分類され、また「0.2」の場合は、「強い痛み」を感じていると分類される。
1つの実施形態では、脳波データ(例えば、振幅データ)の前記回帰モデルへの当てはめは、元の平均値、もしくは正規化された平均値で行うことができる。このような平均値は、例えば、15秒~120秒の間の平均値であってもよい。
図13に基づいてこの局面を説明する。図13では、痛みレベル判別/推定部3200の他、脳波データ取得部2000が参照される。この場合、<回帰モデル生成>の節で説明するように、脳波データは、対象1500から脳波計2500を介して取得することができる。すなわち、脳波データ取得部2000は、対象(1500)に連結され得るように構成され、脳波データ取得部2000では、対象(1500)から得られる脳波データを取得するように、対象(1500)に連結されたか、またはされ得る脳波計を備えるか脳波計に連結されるように構成される(2500)。痛みレベル算出部とも呼ばれる痛みレベル判別/推定部3200では、判別モデル生成部3000が産出した回帰モデルが格納されているか、別途生成した回帰モデルを受容するように構成され、必要に応じて参照することができるように構成される。そのような連結の構成は、有線であっても無線であってもよい。リファレンス刺激部1000からは人工的な痛み刺激レベルデータをモデル補正のために痛みレベル判別・推定(分類)部3200に送ることができる。判別モデル生成部3000において、本発明のスパースモデル解析による判別モデルが導入または算出される。
図14は、1つの実施形態の痛みレベル判別・推定又は回帰モデル生成システム5100の機能構成を示すブロック図である。システム5100は、脳波測定部5200を備え、この脳波測定部は脳波記録センサー5250および必要に応じて脳波増幅部5270を内部に備えるか、外部で接続し、痛みレベル判別/推定装置部5300にて痛みの信号処理および判別/推定が行われる。痛みレベル判別/推定装置部5300では、脳波信号処理部5400で脳波信号を処理し、(必要に応じて)痛み判別/推定部5600で、回帰モデルを格納し、これに基づいて痛みを判別・推定し、(必要に応じて)痛みレベル可視化部5800で痛みを可視化する。また、内部、もしくは外部に、刺激装置部5900を備え、この刺激装置部5900は、リファレンス刺激呈示装置部(端子)5920を備え、患者の痛みレベル判別/推定器補正のために寄与する。刺激装置部は、リファレンス刺激発生部5940(必要に応じて)を備える。
このように痛みレベル判別/推定システム5100は、脳波測定部5200と、痛み判別/推定装置部5300とを備える。回帰モデルを格納する痛み判別/推定装置部5300は、例えば、プロセッサおよびメモリを備えるコンピュータによって実現される。この場合、痛み判別/推定装置部5300は、メモリに格納されたプログラムがプロセッサによって実行されたときに、プロセッサを必要に応じて脳波増幅部5270、脳波信号処理部5400、(必要に応じて)痛み判別/推定部5600、(必要に応じて)痛みレベル可視化部5800などとして機能させる。必要に応じてリファレンス刺激発生および可視化もさせることができる。また、本発明のシステム5100または装置5300は、例えば、専用電子回路によって実現されてもよい。専用電子回路は、1つの集積回路であってもよいし、複数の電子回路であってもよい。脳波データ取得部および疼痛分類値生成部は、この痛みレベル推定装置と同様の構成をとっていてもよい。
脳波測定部5200は、脳波計(脳波記録センサー5250)を介して推定対象から複数回の脳波測定を行うことにより複数の脳波データを取得する。推定対象とは、痛みによって脳波に変化が生じる生体であり、痛覚神経を有する生物(例えば、哺乳類、鳥類等の脊椎動物(畜産用の動物やペット動物なども含む))であればよく、人に限定される必要はない。
痛みレベル判別/推定部5600は、回帰モデルに基づいて、複数の脳波データの振幅から、痛みレベルを判別または分類する。つまり、痛み判別/推定部5600は、回帰モデルに基づいて、脳波データから対象の疼痛を判別または分類する。
脳波記録センサー(脳波計)5250は、推定対象の脳内で発生する電気活動を頭皮上の電極で計測する。そして脳波記録センサー5250は、計測結果である脳波データを出力する。脳波データは必要に応じて増幅することができる。
図15に、図14の基本ブロック図として説明した痛み判別/推定装置とスパースモデル解析との関係性を付記したものを示す。ここでは判別モデル作成部3000が表示され、ここではスパースモデル解析による判別モデル(回帰モデルとも称される)に基づく痛みレベルの推定ベースが付与される。痛み判別補正部5700は任意の部分であるが、ここでは「強」「弱」のリファレンス刺激を複数回与えその判別精度により特徴量の係数を補正することができる。痛みレベル可視化部5800では、閾値を設定して痛みレベルを数段階で表現することができる。
次に、以上のように構成された装置の処理または方法について説明する。図12は、一連の処理を示すフローチャートである。この局面では、S400~S600までが関与しうる。S400で、回帰モデル(判別モデルともいう。また、疼痛分類器/疼痛予測器ともいう)が生成された後の工程である。あるいは、別途回帰モデルが入手可能な場合(以前までに取得して格納しである場合など)であり、その場合は、S400から始まる。
この回帰モデルは、異なる判別モデル作成部3000(図13参照)で作成され、痛みレベル判別/推定部3200(図13参照)に予め格納されていてもよく、値データを受容できるように痛みレベル判別/推定部3200が構成されていてもよい。あるいは判別モデル生成部3000が付属する場合は、その生成部に格納されていてもよく、別途記録媒体が配置されていてもよい。通信でこの値を受容することもできる。
次に、対象から脳波データを取得する(S500)。この脳波データの取得はS200で説明したものと同様の技術を用いることができ、同様の実施形態を採用することができるが、S200と同じ装置またはデバイスを用いる必要はなく、異なっていても同じであってもよい。
次に、S500で得られた脳波データ(例えば、振幅データ)を、スパースモデル解析で生成された回帰モデルに当てはめて、その脳波データに対応する痛みレベルの分類を行う(S600)。このような疼痛分類は、予め所定の値が出た場合に特定の文言(強い痛み、弱い痛み等)を表示するあるいは発声するように構成されてもよく、実際の値と回帰モデルとを並列して表示させユーザー(臨床医)が検討できるようにしてもよい。1つの例示的な実施形態を、図16に示す。図16で示されるように、スパースモデル解析で生成された回帰モデルは判別モデル生成部3000に格納され、痛み判別/推定装置において利用される。本発明のスパースモデル解析で得た結果は判別モデル生成部3000に導入される。リファレンス刺激部5900から個人の痛み感度を特定し、判別アルゴリズムを補正するためのデータが送られる。判別/推定部5600では、作成されたモデルを用いて痛みレベルを判別/推定する。可視化部5800では、閾値を任意に決めて、痛みを数段階で表現することができる。
<回帰モデル生成>
別の局面では、本発明は、回帰モデルを作成する技術を提供する。ここで、本発明は、該推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または推定するための回帰モデルを生成するための方法を提供する。この方法は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量(独立変数)と該痛みレベル(従属変数)とをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程とを含む。
あるいは、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類するための回帰モデルを生成する装置を提供する。この装置は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得するモデルデータ取得部と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する特徴量抽出部と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する回帰モデル生成部とを含む。
あるいは、本発明は、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類するための回帰モデルを生成するための方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムで実行される方法は、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程とを含む。あるいは、本発明は、上記ブログラムを格納した記録媒体を提供する。
図13に基づいてこの局面を説明する。図13では、判別モデル生成部3000の他、脳波データ取得部2000が参照される。この場合、<回帰モデル生成>の節で説明したように、脳波データは、対象から脳波計を介して取得することができる。すなわち、脳波データ取得部2000は、対象1500に連結され得るように構成され、脳波データ取得部2000では、対象(1500)から得られる脳波データを取得するように、対象(1500)に連結されたかまたはされ得る脳波計を備えるか脳波計に連結されるように構成される(2500)。
なお、上記実施形態では、脳波振幅の上限値Amaxに対応する痛みの大きさの値Pmaxが1となり、脳波振幅の上限値Aminに対応する痛みの大きさの値Pminが0となるように、痛みの大きさの値の範囲を設定したが、これに限定されない。例えば、0~100で痛みの大きさが表されてもよい。この場合、痛みレベル判別/推定部3200は、痛みの大きさの値Pxを以下の式で推定すればよい。
Figure 0007179299000004
なお、Amax、Aminは脳波振幅ではあるが、回帰モデルで算出された推定値でもよく、この場合、以下のようになる。
Figure 0007179299000005
Estx: 特徴量から算出されたモデル推定値
Modmin:既存モデルにより決まった判別推定用最小値
Modmax: 既存モデルにより決まった判別推定用最大値

また、上記では、複数の脳波データを分析することにより疼痛分類値の生成例として、曲線あてはめ(curve fitting)を説明したが、これに限定されない。例えば、小さな刺激に対応する脳波振幅から大きな刺激に対する脳波振幅を推定するための学習モデルを用いて、大きな刺激に対応する値が特定されてもよい。この場合、推定対象に対して大きな刺激を与えなくてもよいので、推定対象の身体的な負担を軽減することができる。また、脳波振幅の上限値は、予め定められた値が用いられてもよい。例えば、予め定められた値は、例えば50μV~100μVであり、実験的又は経験的に定められればよい。このように通常の解析では、アーチファクト除去方法として、プラスマイナス50μVから100μVぐらいのデータを排除するが、このようなアーチファクト除去は必要に応じて本発明でも実施してもよい。
また、刺激装置部5900(図14参照)が推定対象に与える刺激は、電気刺激および熱刺激に限定されない。刺激の大きさに応じて推定対象が感じる痛みの大きさが変わるのであれば、どのような種類の刺激が与えられてもよい。
また、上記各実施の形態における痛み推定装置が備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。例えば、痛み判別・推定装置部5300は、必要に応じて(脳波)測定部5200と必要に応じて刺激装置部5900とを有するシステムLSIから構成されてもよい。

なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の痛み推定装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
すなわち、このプログラムは、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法をコンピュータに実行させる。
あるいは、a)複数のレベルの刺激強度で、該推定対象を刺激する工程と、b)該刺激強度に対応する該推定対象の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、c)該脳波データまたはその分析データから脳波特徴量を抽出する工程と、d)スパースモデル解析に該特徴量を投入し痛みの量的レベルおよび質的レベルの少なくとも1つに近似させ、痛みレベルを推定または判別する工程を含む、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法をコンビュータに実行させる。
あるいは、c)該推定対象の痛みレベルのスパースモデル解析の回帰モデルを提供する工程と、d)該推定対象(測定用)の脳波データまたはその分析データを取得する工程と、e)該測定用脳波データまたはその分析データから測定用脳波特徴量を抽出する工程と、f)該測定用脳波特徴量を回帰モデルに当てはめて対応する痛みレベルを算出する工程と、g)必要に応じて該痛みレベルを表示する工程とを含む、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または分類する方法をコンビュータに実行させる。
あるいは、a)モデル用の刺激強度に対応するモデル用脳波データまたはその分析データを取得する工程と、b)該脳波データまたはその分析データからモデル用脳波特徴量を抽出する工程と、c)目的とする痛みレベルを設定し、該モデル用脳波特徴量と該痛みレベルとをスパースモデル解析に導入し、適切なλ(好ましくは最適λ)を求め、該適切なλ(好ましくは最適λ)に対応する該モデル用脳波特徴量のパラメータ(偏回帰係数)およびアルゴリズムの定数(切片)を決定し回帰モデルを生成する工程とを含む、推定対象の脳波に基づいて該推定対象が有する痛みを判別または推定するための回帰モデルを生成するための方法をコンビュータに実行させる。
(瞬間痛の判定)
1つの局面において、本発明は、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を包含する、痛みの判別または評価の方法を提供する。従来は、誘発脳波成分(P100)が観測されてから、P300成分までの観測を行うことで、疼痛を判定することが通常であった。本発明では、中期事象関連電位成分P300よりも後の領域も観察することで、疼痛の詳細な解析が可能となり、持続痛では同期性をとらえるのが難しい脳波特徴量を用いて、瞬間痛の生起、ならびに段階性を峻別することができるようになったことが一つの重要な点であるといえる。
1つの実施形態において、前記誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の脳波データにおいて、持続性特性があるかどうかを判定基準に含める。なお、この初期事象関連電位成分より後に、ピークを伴う電位成分があれば、従来のP300と判定する。
1つの実施形態では、前記脳波データまたはその分析データは、中期時間帯から2000msecの範囲の全部または一部の脳波データまたはその分析データを含む。
本発明の実施形態において、中期時間帯は、おおむね事象関連電位成分に該当し、P200、N200およびP300が生じる範囲が含まれる。代表的には、中期時間帯は、250msec~600msecの間の範囲の値を含み得る。そして、この中期時間帯は、連続的にあるいは、網羅的に含んでいてもよく、あるいは250~600msec、300~600msecに及んでもよい。あるいは、P200の後であれば、任意の数値範囲であり得る。
1つの実施形態では、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の脳波データ全部または一部は少なくとも100msec分の範囲を含む。1つの実施形態では、中期時間帯は、300msec、もしくはその前から、連続的に600msec周辺までを網羅する時間幅である。
1つの実施形態では、前記少なくとも100msec分の範囲において、該少なくとも100msec分の範囲との間に統計学的に有意な相違がみられる場合、持続性があると判定する。視察で差があっても統計学的に有意差がない場合でも相違があると判定することもできるが、好ましい実施形態では、統計学的な有意差があることが有利であり、別の実施形態では、また、250~2000msecで見た目があきらかに持続性であれば、断片的にしか有意差がないとしても、持続性と言える。
1つの実施形態では、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データ、またはその分析データの値と異なる持続時間、および該異なる持続時間が存在する場合、異なってから再度同じ値となるかどうかを測定すること、および該持続時間が存在し、再度該同じ値とならない場合、不快な痛みが存在すると判定する。具体的には以下のとおりである。例えば、持続性成分の認定のために、まずは、下記のような信号処理により検証を行う。
1)刺激が呈示された後に、参照刺激の活動からの逸脱が起こっているか。もし、刺激呈示時点から起こっている場合は、痛みの知覚や認知に関係あるような成分ではなく、アーチファクトの可能性がある。2)各刺激呈示の脳波波形を見て、脳波の基線自体が著しく上方向や下方向にシフトしており、線形補正により基線をベースラインに戻したときに消失するような場合は、持続性成分とは呼ばない。3)0.02Hz、もしくは0.01Hz、0.1Hzなどの低域周波数帯域成分をカットした場合、持続性成分は持続時間に応じて消失する。したがって、1、2に該当せず、そのような低域周波数成分をカットして消える場合は、持続性ERPと特定してもよい。上記の過程で、持続性成分が確証された後は、図19に示した通り、持続性ERPの開始点、持続時間を確定するために、時間枠を設定して、t検定やANOVAなどの推測統計検定を行い、参照刺激と痛み刺激の有意差を特定する。
1つの実施形態では、前記脳波データ、またはその分析データは電位もしくは持続時間、またはそれらの組み合わせである。
さらなる実施形態では、前記痛みの判別は、痛みの不快度の判別である。理論に束縛されることを望まないが、本発明は、「識別性疼痛」が該当するかすなわち、特定の身体部位から発するものと外部刺激によりおこる痛みなども識別し得る可能性がある。
1つの実施形態では、前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較される。
好ましい実施形態の一つでは、本発明の方法はさらに、前記比較したデータを、シグモイド関数フィッティングを用いて分析する工程を包含する。すなわち、瞬間痛なし、ありの順番で、全被験者のサンプルデータ(個人内で標準化)を並べる。サンプルデータに近似した関数(例.シグモイド関数やステップ関数)を作成する。この関数近似には、MATLABコードのnlinfitなどを使うことができる。
1つの実施形態では、前記判別は、脳波データまたはその分析データの陽性成分について判断することを特徴とする。具体的な実施形態では、前記陽性成分は、中期時間帯以降にも持続する場合に、疼痛があると判断されることを特徴とする。特に、遅い持続性効果こそが、後からじりじりくるような不快な痛みを反映するものと考えられ、C繊維の神経反応であると推定される。
通常、P300のような中期の事象関連電位は大体300から400msecでピーク電位を迎える。ただし、これは、処理情報の内容や負荷により変化し得る。従って、一般的には、陽性方向へのシフトは300msec前から始まり300から400msecでピークを迎える非持続性を示す。しかしながら、本発明で示されるように、持続性が予想外に続き、刺激呈示後2000msecを経てもベースラインにもどらないことがあり、これを指標として疼痛を詳細に判別することができる。いつまで経っても戻らず、本発明では、実にそれが2秒間も続く例が見られたことは予想外の観察であり、持続性陽性成分が疼痛において重要な指標になることは予想外の発見である。特に、中期以降でも持続するERP成分は、痛み刺激が単発的であっても不快であり、刺激が消えても不快感が意識的に続くことを示しており、侵害受容性疼痛のような急性の痛み、ならびにそれに伴う痛みストレスを判定し得る。
以下各工程を説明する。
以下スキーム図を用いて本発明の手法を説明する(図27)。
ステップS10100:参照刺激下のデータ収集
S10100は任意の工程であり、ベースライン(基準)となるデータを提供するステップである。瞬間痛にかかわる脳波特徴量を抽出するには、痛み刺激のタイプや刺激特性が最大限同じになるようにし、痛みがあるなし、もしくは強弱という痛み特性において最小に異なるように設定することが望ましい。例えば、高温刺激を使う場合、痛みを評価するときに基準とする参照刺激は、例えば、痛くない、もしくは痛みが弱い刺激を用いて、複数回呈示し、脳波データまたはその分析データを収集する。参照刺激は、後述する対象刺激と混ぜて呈示される標準(背景)刺激であり、対象者が標準刺激の短期記憶を形成するために、頻度が圧倒的に多くなければならず、全体の約7割を占める。予め取得した脳波データまたはその分析データを提供するまたは格納したものを読み込むこともこのデータ収集の工程と等価に解釈される。
ステップS10200:対象刺激の付与およびデータ取得
S10200では、対象刺激を参照刺激にランダムに混ぜて複数回、付与し、あるいは、天然で与えられる刺激を対象刺激とみなし、その刺激に対する脳波データまたはその分析データを収集するステップである。このステップでは、対象に対して何らかの刺激(例えば、痛みを催す刺激)を付与し、あるいは天然に生じる刺激を対象刺激とみなし、モデル用または実際の測定対象の脳波データまたはその分析データを測定または入手する。刺激の付与は、モデル系の場合、種々の刺激(例えば、冷温刺激、電気刺激など)で刺激され、該刺激強度に対応する該推定対象の脳波データ(脳活動データ、脳活動量などともいう。例えば、振幅データ(EEG振幅)、周波数特性などを含む)を取得する。このような脳波データは、当該分野で周知の任意の手法を用いて取得することができる。脳波データは、脳波の電気信号を測定することによって得ることができ、振幅データなどとして電位(μV等で表示され得る)で表示される。周波数特性はパワースペクトル密度などで表示される。脳波データ、またはその分析データは、適宜の手法に基づいて、相違点を、刺激タイプや刺激呈示環境などの、刺激および環境に関するパラメータを含む条件パラメータ(例えば、痛み刺激不快度など)と関連付けることができる。
ステップS10300:誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部で、参照刺激と対象刺激との脳波データまたはその分析データと比較(図19参照)
誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の範囲で、参照刺激と対象刺激が乖離する時点を特定し、両者の脳波データまたはその分析データとを比較する。換言すれば、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較するステップである。好ましくは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の脳波データにおいて、持続性特性があるかどうかを判定する。持続性特性が統計的に確認されると、特定の疼痛の種類が存在し、痛み刺激が物理的に消失しても、痛みの不快度が続いていると判別できる。嫌な痛みや瞬間痛が峻別可能である。好ましい測定では中期時間帯から2000msecの範囲の全部または一部の脳波データまたはその分析データの測定を行う。このような測定は、本発明の方法を実現するシステムやプログラムにおいて、任意に備わる制御機構によって調整されうる。中期時間帯は、250msec~600msecで設定してもよいが、個人差があり得、また同一人内でも相違があり得ることから、適宜キャリブレーションし、あるいは、一度測定して適宜変更してもよい。中期時間帯は、事象関連電位成分の範囲であり、この範囲は、当該分野で公知の任意の手法を用いて算出することができる。
相違の判断は、統計学的手法によって実現することができ(図19参照)、そのような手法は、本発明を実現するシステムまたはプログラムにおいて任意に組み込むことができるか、外部より提供されることができる。例えば、対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間、および該異なる持続時間が存在する場合、異なってから再度同じ値となるかどうかを測定すること、および該持続時間が存在し、再度該同じ値とならない場合、不快な痛みが存在すると判定するが、これもまた、本発明を実現するシステムまたはプログラムにおいて任意に組み込むことができるか、外部より提供されることができる。脳波データまたはその分析データは電位もしくは持続時間またはそれらの組み合わせが好ましいが、他のパラメータを用いてもよく、本発明は任意に選択できるように構成され得る。
比較データは、さらに、シグモイド関数フィッティングを用いて分析してもよい。脳波特徴量を用いて、条件パラメータに合わせて2、もしくは3分類以上を行うために判別/推定モデルを作成するが、一つの方法としてはプロット図を作成し、シグモイド関数パターンなどの適宜なフィッティング関数に当てはめ(フィッティングさせ)る。当てはめは、当該分野で公知の任意の手法を用いて行うことができる。このような具体的なフィッティング関数としては、ステップ関数、ボルツマン関数、二重ボルツマン関数、Hill関数、ロジスティック用量応答、シグモイドリチャード関数、シグモイドワイブル関数などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、標準ロジスティック関数は、シグモイド関数と呼ばれ、標準関数、もしくは変形が一般的であり、好ましい。必要に応じて該シグモイド関数パターンなどの適宜の関数パターンへの当てはめの回帰係数が所定以上の場合、該シグモイド曲線等に基づいて、疼痛の判定のための閾値を設定することができる。ここでは、シグモイド曲線の場合、変調点に基づいて生成することができるがこれに限定されない。必要に応じて、疼痛の種類、レベルの分類が最大限になるように疼痛分類値を較正(キャリブレーション)してもよい。閾値は、疼痛の種類、レベルの算出または分類へと応用することができ、治療の効果の判定に利用することができる。
したがって、1つの具体的な実施形態では、前記関連付けは、条件、例えば前記環境および前記刺激に基づいて、疼痛の相違を設定し、該相違に関する特徴量を見出すことを含み、および前記疼痛判定手段の生成は、該特徴量を用いて、該刺激の相違に識別するラベルを付すことを含む。特定の実施形態では、前記疼痛判定手段の生成は、シグモイド関数フィッティングまたは機械学習によって達成される。
ステップS10400:持続性特性の有無を判定し、疼痛を分析、判別
ここは任意の工程であり、持続性特性の有無を判定し疼痛を分析する。中期時間帯以後の範囲の脳波データまたはその分析データの測定および解析によって、疼痛が判定できること自体が予想外であることに加え、その範囲で持続性特性がみられることが特定の疼痛と関係していることが見いだされたことも予想外である。
なお使用される脳波特徴量は、振幅、潜時、効果の持続時間、分布、周波数パワーなど、時間的、空間的、もしくは両者の相互作用から構成される複雑な特性を持つ。したがって、特徴量を統計学的に比較したり(t検定や分散分析(ANOVA))、連続的な関係(相関関係や回帰)を調べたりすることで、刺激や環境条件と特徴量の関係を特定することができる。
得られた脳波データを、必要に応じて、フィルター処理、眼球運動補正、アーチファクト除去などの基本的な信号処理を行うことができ、条件パラメータに関連付けて該当部分の信号を抽出し、脳波特徴量を作成することができる。例えば、平均値(算術平均、幾何平均)、他の代表値(中央値、最頻値)、エントロピー、周波数パワー、ウェーブレット、もしくは平均、ならびに単一試行の事象関連電位の成分などを用いてもよい。
持続性特性などの特徴が見いだされると、疼痛と関連付けることができ、対象の疼痛を判定する手段を生成することができる。ここでは、必要に応じて、関連づいた脳波特徴量を用い、フィッティングで得られたモデル曲線において、閾値や判定指数を設定することができ、閾値電位や陽性電位の量やレベルなどの数値で閾値を設定して、これを判定指数とすることができる。
必要に応じて、関連付けで特定された特徴量を用いて、既存、もしくは未知の刺激や環境に対する疼痛を判別/推定するモデルを作成することができる。
脳波特徴量を用いて、条件パラメータに合わせて疼痛の2、もしくは3分類以上を行うために判別/推定モデルを作成することもできるが、例えば、一つの方法としてはプロット図を作成し、シグモイド関数パターンなどの適宜なフィッティング関数に当てはめ(フィッティングさせ)ることができる。当てはめは、当該分野で公知の任意の手法を用いて行うことができる。このような具体的なフィッティング関数としては、ステップ関数、ボルツマン関数、二重ボルツマン関数、Hill関数、ロジスティック用量応答、シグモイドリチャード関数、シグモイドワイブル関数などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、標準ロジスティック関数は、シグモイド関数と呼ばれ、標準関数、もしくは変形が一般的であり、好ましい。
必要に応じて該シグモイド関数パターンなどの適宜の関数パターンへの当てはめの回帰係数が所定以上の場合、該シグモイド曲線等に基づいて、快不快の判定のための閾値を設定することができる。ここでは、シグモイド曲線の場合、変調点に基づいて生成することができるがこれに限定されない。必要に応じて、快不快のレベルの分類が最大限になるように疼痛分類値を較正(キャリブレーション)してもよい。閾値は、疼痛の分別、レベルの算出または分類へと応用することができ、治療の効果の判定に利用することができる。
したがって、1つの具体的な実施形態では、前記関連付けは、条件、例えばある刺激に基づいて、疼痛の分類または相違を設定し、該分類または相違に関する特徴量を見出すことができ、および前記疼痛判定手段の生成は、該特徴量を用いて、該刺激の相違に識別するラベルを付すことを含む。特定の実施形態では、前記疼痛判定手段の生成は、シグモイドフィッティングまたは機械学習によって達成することができる。
実際の医療装置では、S10100~S10400の1または2以上のステップを行うように構成されてもよいが、予めこの判定器または判定値を設定しておいてもよく、その場合、S10300は、参照刺激の既存データセットを用いて、基準となる特徴量を設定する。その方法としては、参照刺激が呈示されていない休息区間の活動量をもとに、参照刺激にかかわる特徴量のz値を算出し、データとして前もって格納する。新たに対象刺激のデータを記録した場合、同様に対象刺激のz値を算出し、既存の参照刺激値とのデータ比較を行うことになる。
同一の被験者が対象者になる場合、以前の疼痛判定手段(値など)を用いて、判定器や判定値を継承、もしくは更新するような工程を含んでいてもよい。
また、対象から試験用の、未知の状態に関わる脳波データまたはその分析データを入手し、該疼痛判定手段に適用し、該対象の疼痛を判定することができる。この場合、判定器や閾値をもとに、実際に測定した対象の未知の状態に関わる測定値、例えば、脳波データまたは分析データから、その判定器や閾値に対応する数値を算出し、これを判定器や閾値と比較して疼痛の有無、種類の分別またはそのレベルを決定することができる。
該対象の脳波データ(例えば振幅データ)を得るステップでは、何らかの刺激を受けている、あるいは処置されているかどうかにかかわらず、測定を意図する対象から、対象の状態が未知の脳波データを得る。脳波データを取得できる手法であれば、どのような手法であってもよい。本発明で使用される脳波データ取得と同じ手法を用いることができ、通常は同一の手法を用いる。そして、疼痛判定器や判定値に適用し、該対象の疼痛を判定する。所定の疼痛判定手段または値は、対象に関して判別/推定するレベルと紐付けられて「疼痛判定器」、もしくは「不疼痛判定予測器」と呼ばれる。閾値よりも疼痛が強い側の数値では疼痛(あるいは特定の種類の疼痛)があると判定または予測し、弱い側での数値では疼痛(または特定の種類の疼痛)がないと判定または予測する。
1つの実施形態では、前記脳波データまたはその分析データは、データ記録位置として国際10-20基準、もしくはその拡張基準に準拠したF3、F4、C3、C4、P3、P4などの前頭部から頭頂部、さらには後頭部にかけた頭皮上位置を電極位置として含み、あるいは、特定の均一な距離(例.2.5cmなど)でおかれた位置を網羅してもよく、記録であってもよい。前記脳波データまたはその分析データは、これらの組合せから選択される、少なくとも1つの脳波特徴量を含む。
さらに別の実施形態では、前記脳波特徴量は、Fp1、Fp2、Fpz、F3、F4、Fz、C3、C4、Cz、P3、P4およびPzからなる群より選択される少なくとも1つを含み、例えば、平均振幅Fz、C3およびC4、ならびに周波数Fz(δ)、Fz(β)、Cz(δ)、C3(θ)およびC4(β)を含む。Cz(振幅)、C3(α)、Cz(β)、Fz(δ)、Cz(γ)を含むことが好ましいがこれに限定されない。
図28には、本発明の装置の模式図が記載される。このうちこの実施形態は疼痛判定器(手段)の生成の場合で、11000~13000が関与する。刺激呈示部11000はA)に該当し、これは、刺激が呈示される環境や刺激タイプに関する情報が脳波データ取得部12000、および疼痛判定値生成部13000に連絡される。脳波データ取得部12000では、刺激呈示部から対象(11500)に発出された刺激に同期した脳波データを得られるように、対象(11500)に連結されたか、またはされ得る脳波計を備えるか脳波計に連結されるように構成される(12500)。
図29は、1つの実施形態の疼痛判定システム15100の機能構成を示すブロック図である(なお、この構成図のいくつかは任意の構成部分であり省略され得ることに留意されたい)。システム15100は、脳波測定部15200を備え、この脳波測定部は脳波記録センサー15250および必要に応じて脳波増幅部15270を内部に備えるか、外部で接続し、疼痛判定装置15300にて疼痛の信号処理、および判別/推定が行われる。疼痛判定装置15300では、脳波信号処理部15400で脳波信号を処理し、(必要な場合は、脳波特徴量抽出部15500で脳波特徴量を抽出し)疼痛判定部15600で疼痛、または疼痛のレベル、種類などを判別/推定し、(必要に応じて)判別レベル可視化部15800で不快度を可視化する。また、内部、もしくは外部に、刺激装置部15900を備え、この刺激装置部15900は、対象の疼痛および疼痛判別器作成と実際の未知の疼痛のレベルの判別のために刺激情報(刺激タイプや環境情報などを)を送る。刺激装置部15900は、刺激呈示部15920の他必要に応じて刺激情報可視化部15960を備え、刺激や環境に係る画像や数字などの情報を表示してもよい。また、疼痛判定システムは、判別器や判定値を生成する生成部15700を装置15300の外部、もしくは内部に備えていてもよい。
このように疼痛判定システム15100は、脳波測定部15200と、疼痛判定装置15300とを備え、必要に応じて刺激装置部15900を備える。疼痛判定装置15300は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実現される。この場合、疼痛判定装置15300は、メモリに格納されたプログラムがプロセッサによって実行されたときに、プロセッサを、必要に応じて脳波増幅部15270、脳波信号処理部15400、(必要に応じて)疼痛判定部15600、(必要に応じて)判別レベル可視化部15800などとして機能させる。必要に応じて刺激や環境情報の可視化もさせる。また、本発明のシステム15100または疼痛判定装置15300は、例えば、専用電子回路によって実現されてもよい。専用電子回路は、1つの集積回路であってもよいし、複数の電子回路であってもよい。脳波データ取得部および疼痛判定値生成部は、この疼痛判定装置と同様の構成をとっていてもよい。
脳波測定部15200は、脳波計(脳波記録センサー15250)を介して推定対象から複数回の脳波測定を行うことにより複数の脳波データを取得する。推定対象とは、刺激や環境によって脳波に変化が生じる生体であり、ヒトに限定される必要はない。
疼痛判定部15600は、判定値を用いて疼痛を判別/推定する。判別器や判定値が外部、もしくは内部であらかじめ生成されない場合は、生成も行う。判別器や判定値を生成する部門は、疼痛判定値生成部15700として装置15300の外部、もしくは内部に備えることができる。疼痛判定値は、複数の脳波データの振幅から、疼痛を推定または分類するためのものである。つまり、疼痛判定部15600、もしくは疼痛判定値生成部15700は、脳波データから対象の疼痛を推定または分類するための判定値を生成することができる。
脳波記録センサー15250は、推定対象の脳内で発生する電気活動を頭皮上の電極で計測する。そして、脳波記録センサー15250は、計測結果である脳波データを出力する。脳波データは必要に応じて増幅することができる。
図28に基づいてさらに説明する。判定部まで備える局面を説明する。図28では、疼痛判定部14000の他、脳波データ取得部12000が参照される。点線は判別モデル作成の手順を示し、実線は、実際の疼痛レベルの判別/推定を行う手順を示す。この場合、(疼痛判定値生成)の節で説明したように、脳波データは、対象11500から脳波計を介して取得することができる。すなわち、脳波データ取得部12000は、対象11500に連結され得るように構成され、脳波データ取得部12000では、対象(11500)から得られる脳波データを取得するように、対象(11500)に連結されたか、され得る脳波計を備えるか脳波計に連結されるように構成される(12500)。疼痛判定部14000では、予め疼痛判定値が格納されているか、別途生成したデータを受容するように構成され、必要に応じて参照することができるように構成される。そのような連結の構成は、有線であっても無線であってもよい。あらかじめ格納される疼痛判定値は、疼痛判定値生成部13000において、例えば、特徴量の判別器(シグモイド関数フィッティングなど)に基づき生成される。
図29は、1つの実施形態の疼痛判定システム15100の機能構成を示すブロック図である。システム15100は、脳波測定部15200を備え、この脳波測定部は脳波記録センサー15250および必要に応じて脳波増幅部15270を内部に備えるか、外部で接続し、疼痛判定装置15300にて痛みの信号処理および判別/推定が行われる。疼痛判定装置15300では、脳波信号処理部15400で脳波信号を処理し、(必要に応じて)疼痛判定部15600で痛みを推定/判別し、(必要に応じて)判別レベル可視化部15800で痛みを可視化する。また、内部、もしくは外部に、刺激装置部15900を備え、この刺激装置部15900は、対象の疼痛判別器作成のために寄与する。判定値は、疼痛判定値生成部15700であらかじめ作成されてもよい。
このように疼痛判定システム15100は、脳波測定部15200と、疼痛判定装置15300とを備える。疼痛判定装置15300は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実現される。この場合、疼痛判定装置15300は、メモリに格納されたプログラムがプロセッサによって実行されたときに、プロセッサを必要に応じて脳波増幅部15270、脳波信号処理部15400、(必要に応じて)疼痛判定部15600、(必要に応じて)判別レベル可視化部15800などとして機能させる。必要に応じてリファレンス刺激発生および可視化もさせることができる。また、本発明のシステム15100または装置15300は、例えば、専用電子回路によって実現されてもよい。専用電子回路は、1つの集積回路であってもよいし、複数の電子回路であってもよい。脳波データ測定部および疼痛判定値生成部13000(図28参照)は、この疼痛推定装置と同様の構成をとっていてもよいし、外部に構成されてもよい。
脳波測定部15200は、脳波計(脳波記録センサー15250)を介して推定対象から複数回の脳波測定を行うことにより複数の脳波データを取得する。推定対象とは、痛みによって脳波に変化が生じる生体であり、ヒトに限定される必要はない。
疼痛判定部15600は、疼痛判定値生成部13000(図28参照)により作成された疼痛分類値に基づいて、複数の脳波データの振幅から、痛みの大きさを推定または分類する。つまり、疼痛判定部15600は、判定値に基づいて、脳波データから対象の疼痛を推定または分類する。
脳波記録センサー15250は、推定対象の脳内で発生する電気活動を頭皮上の電極で計測する。そして脳波記録センサー15250は、計測結果である脳波データを出力する。脳波データは必要に応じて増幅することができる。
次に、以上のように構成された装置の処理または方法について説明する。図27は、一連の処理を示すフローチャートである。この局面では、S10100~S10400までが関与する。
疼痛判定値は、作成後、疼痛判定部14000(図28参照)に予め格納されていてもよく、また、値データを受容できるように疼痛判定部14000が構成されていてもよい。あるいは疼痛判定値生成部13000が付属する場合は、その生成部に格納されてもよく、別途記録媒体が配置されていてもよい。通信でこの値を受容することもできる。
次に、対象から脳波データを取得する(S10200)(図27参照)。この脳波データの取得は参照データ等と同様の技術を用いることができ、同様の実施形態を採用することができるが、常に同じ装置またはデバイスを用いる必要はなく、異なっていても同じであってもよい。
次に、S10200で得られた脳波データ(例えば、振幅データ)を、疼痛判定値に当てはめて、その脳波データに対応する疼痛の判別/推定を行う(S10300)(図27参照)。このような疼痛判定は、予め所定の値が出た場合に特定の文言(心地よい痛み、不快な痛み等)を表示するあるいは発声するように構成されてもよく、実際の値と疼痛判定値とを並列して表示させユーザー(臨床医)が検討できるようにしてもよい。
図30は、図29のブロック図に、判別器生成(例えば、シグモイド関数フィッティングによる判別値の決定)の過程を含めて拡張し、作業内容を記入した疼痛判定システム15100の図である。システム15100は、脳波測定部15200を備え、脳波計15220に連結され、収集した脳波データから特徴量抽出部15500で平均値などの脳波特徴量を必要に応じて得る。あらかじめ疼痛判定値が生成される場合は、疼痛判定装置15300の外部、もしくは内部にある疼痛判定値生成部13000で、判別器、例えば、シグモイド関数フィッティングや持続性特性の判定用パラメータの生成により、疼痛判定値が生成され、疼痛判定部15600に送られ、格納される。実際の未知の刺激タイプ、もしくは環境の疼痛判定では、刺激呈示部15920の刺激呈示、もしくは表示と同期した脳波データが脳波計15220から測定部15200に送られた後、特徴量抽出部15500で脳波特徴量が作られ、疼痛判定部15600に送られ、疼痛判定値を用いて、未知の刺激や環境の疼痛を判別/推定する。(必要に応じて)判別レベル可視化部15800で疼痛を可視化する。このような一連の過程は、プロセッサ及びメモリを備えたコンピュータや携帯端末で実現されたり、専用電子回路によって実現されてもよい。専用電子回路は、1つの集積回路であってもよいし、複数の電子回路であってもよい。また、ソフトウェアで実現され、必要なハードウェアを制御することで実現しても良い。
(他の実施の形態)
以上、本発明の1つまたは複数の態様に係る痛み推定装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記各実施の形態において、脳波データの振幅値として、ピークピーク値が用いられうるが、これに限定されない。例えば、振幅値として、単なるピーク値が用いられてもよい。
なお、上記実施形態に準じて、脳波振幅の上限値Amaxに対応する痛みの大きさの値Pmaxが1となり、脳波振幅の下限値Aminに対応する痛みの大きさの値Pminが0となるように、痛みの大きさの値の範囲を設定し判定レベルを可視化部15800で表示することも想定し得るが、これに限定されない。例えば、0~100で痛みの大きさが表されてもよい。この場合、疼痛判定部5600は、痛みの大きさの値Pxを以下の式で推定し得る。
Px=Pmax×(Ax-Amin)/(Amax-Amin)
また、上記では、複数の脳波データを分析することにより不快な痛みの判定値の生成例として、曲線あてはめ(curve fitting)を説明したが、これに限定されない。また、脳波振幅の上限値は、予め定められた値が用いられてもよい。瞬間痛にかかわる事象関連の脳波特徴量を算出する過程において、外部、ならびに生体アーチファクトを除去するために、予め定められた除外値は、例えば50μV~100μVであり、実験的又は経験的に定められればよい。このように通常の解析では、アーチファクト除去方法として、プラスマイナス50μVから100μVぐらいのデータを排除するが、このようなアーチファクト除去は必要に応じて本発明でも実施する。
また、刺激呈示部15920(図30参照)が対象15099に与える刺激は、刺激タイプや呈示環境に応じて対象15099が感じる疼痛の大きさが変わるのであれば、どのような種類の刺激が与えられてもよい。しかしながら、本発明における瞬間痛の脳波特徴量の抽出のためには、基準であり、背景刺激である参照刺激と痛み強刺激、もしくは不快痛刺激を、例えば、7対3の割合で呈示するような検査パラダイム(痛みオドボールパラダイム
)が使われる。
また、上記各実施の形態における疼痛判定装置が備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。例えば、図30に示すように、疼痛判定装置15300は、必要に応じて測定部15200と必要に応じて刺激呈示部15920とを有するシステムLSIから構成されてもよい。
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
また、本発明の一態様は、このような疼痛判定値生成、疼痛判定装置だけではなく、痛み推定装置に含まれる特徴的な構成部をステップとする疼痛分類値生成、痛み判別・分類方法であってもよい。また、本発明の一態様は、疼痛判定値生成、疼痛判定方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の痛み推定装置などを実現するソフトウェアは、本明細書において上述したプログラムであり得る。
したがって、本発明は、痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を包含する、プログラムを提供する。
別の局面では、本発明は、痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を包含する、記録媒体を提供する。
別の局面では、本発明は、痛みの判別または評価のシステムであって、該システムは、脳波データまたはその分析データを入力する脳波データ入力部と、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する解析部とを包含する、システムを提供する。このシステムは、医療装置またはその一部として機能し得る。
(注釈)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例で用いる対象の取り扱いは、大阪大学において規定される基準を遵守し、臨床研究が関係する場合はヘルシンキ宣言およびICH-GCPに準拠して行った。
(実施例1:熱痛み刺激でのスパースモデル解析)
本実施例では、熱痛み刺激実験データのスパースモデル解析を行った。
(参加者)
20代から70代の40人の成人健常者が、本実験に参加した。参加者らは、実験前にインフォームドコンセントに同意した。全参加者は、神経性および/もしくは精神性の疾患、または臨床薬物治療条件下における急性および/もしくは慢性疼痛を経験していないことを自己報告した。本研究を、大阪大学大学院の学部の倫理委員会ならびにヘルシンキ宣言による承認下で実施した。
(手順)
本発明者らは、熱刺激呈示パラダイムを使用した。このパラダイムは、熱刺激を使用し、ベースライン温度35℃、レベル1の40℃からレベル6の50℃まで、2℃ずつ上昇した。各刺激レベルの試行ブロックは、3回の刺激から構成され、各刺激は5秒の上昇および下降の待機時間を有し、5秒のプラトーにわたって持続した。各刺激間は、5秒間の刺激間間隔を有した。ブロック間の休憩は、100秒で固定した。参加者は、左前腕腹側に熱刺激プローブを装着し、安楽椅子に横たわって、熱刺激を受けた。また、参加者らは、コンピュータ化された可視化アナログスケール(COVAS)上で、0から100の範囲(0:「無痛」;100:「耐えられない疼痛」)で疼痛強度を連続的に評価した。COVASデータを刺激強度の変更と同時に記録した。
(EEGデータ記録)
休憩のためのブロック間の間隔を100秒に固定した。両方のパラダイムにおいて、市販されているBio-Amplifier(EEG 1200; Nihon Koden)を使用して、5つの頭皮Ag/AgCl頭皮電極(Fpl,Fz、Cz、C3、C4)からEEGを記録した。最も前部の電極であるFplをEOG活性を記録するために使用した。参照電極を両方の耳たぶに付着させ、外側電極を額中央に置いた。サンプリングレートは、1,000Hzであり、0.3~120Hzの範囲のバンドパスフィルタを用いて増幅した。全部の電極についてのインピーダンスは15kQ未満であった。
(EEG分析)
頭皮上の4電極(Fz、Cz、C3、C4)を脳波解析対象とした。Fplの額電極は眼球運動処理用に用いた。脳波データは、条件ごとに切り出す前に、以下の回帰フィルターを用いて、EOGを解析電極から除去した。Fplデータは、左眼に最も近接しており、眼球運動に重度に影響されるため、FplデータをEOGデータとして使用した。
生EEG=β×EOG+C
推定EEG=生EEG-β×EOG
β:部分的回帰係数
C:切片
推定EEG:推定されたEEG
VEOGの減衰後、外部電気ノイズを省くために、60Hzのノッチフィルターをかけた。また、100μVを超える電位が混入した時間帯はデータから除外した。その後、各刺激呈示前5秒から刺激呈示後15秒の脳波データを切り出し(18エポック)、刺激呈示前の電位を用いてベースライン補正を行った。ベースライン補正後、振幅を絶対値化し、各電極ごとに、全条件、全刺激の最大値を用いて電位の標準化を行った。最後に、刺激呈示後15秒間の平均振幅を算出し、痛みレベル弱の特徴量としてレベル1,2の平均電位と痛みレベル強の特徴量としてレベル5,6の平均電位を抽出した。
(周波数分析)
頭皮上の4電極(Fz、Cz、C3、C4)を脳波解析対象とした。最初に、60Hzのノッチフィルターをかけ、外部電気ノイズを減衰した。刺激呈示後15秒の脳波データを切り出し(18エポック)、フーリエ変換を行い、δ(1-3Hz)、θ(4-7Hz)、α(8-13Hz)、β(14-30Hz)、γ(31-100Hz)の周波数パワー(実数部
のlog値)を算出した。
[数6]
周波数パワー=1og(abs(FFT))
log:log10
abs:絶対値
FFT:各帯域のフーリエ変換データ
電極ごとに、全条件、全刺激の周波数パワーの最大値を用いて標準化を行った。痛みレベル弱の特徴量としてレベル1,2の周波数パワーと痛みレベル強の特徴量としてレベル5,6の周波数パワーを抽出した。これらのEEG、周波数解析により、Fz、Cz、C3およびC4で、合計24個のモデリングに使用する特徴量を得た。
(熱痛み刺激強弱を区別するスパースモデル解析)
24個の特徴量(4個の時間一ドメインデー夕、20個の周波数ドメインデータ)および熱痛み刺激2レベルのラベル(1=「弱」;2=「強」;n=160)を使用して、本発明者らは、LASSOアルゴリズムを用いてスパースモデル解析(重回帰分析)を行った。図4に示すように、モデル作成用データとテストデータを8:2の比率で分割し、モデルデータを用いて10分割交差検定を行い、回帰式の特徴量係数(偏回帰係数)と切片を決定するために、最適なλ値を算出した。λ値、ならびに偏回帰係数、切片の決定後、テストデータの特徴量を用いて、痛みレベルの推定値を算出した。推定値は、全体の50%以下を「1」、すなわち「痛み弱」とし、全体の50%より大きい推定値を「2」(痛み強)とし、実際の痛みラベルと照合して、判別精度を求めた。学習とテストデータをランダムに選択するプロセスを1000回行い、特徴量係数、判別精度の平均値、ならびに分布を算出した。また、テストデータのラベルをランダムに入れ替えて、判別精度の偶然レベルも算出し、実際の判別精度と比較した。
(結果)
図5は、回帰式で用いられた特徴量の偏回帰係数の、1000回の判別精度検定における変化と、係数の平均値、ならびに標準偏差を示している。貢献度の高い特徴量は、C4のαパワー(-2.38)、Fzのδパワー(-2.17)、C3のβパワー(2.10)、Fzのβパワー(-2.03)、Czのδパワー(1.88)、C4のθパワー(1.86)、Czのαパワー(-1.86)、Fzのθパワー(1.57)などの周波数特徴量であった。図6に示したように、1000回の判別精度の分布は、80%台が約350回におよび、全体の30%強となっていた。平均判別精度は、78.2±7.6%であり、これは、テストデータの痛みレベルをランダム化した時の偶然レベルの判別精度(50±8.7%)に比べ、約30%高くなっていた。
(実施例2:予め生成した回帰モデル(判別モデル)での利用)
本実施例では、実際の痛みレベル判別装置の実施例を示す。
実地には図16に示すように、判別モデル生成部を痛み判別/推定装置に連結またはアクセス可能に接続しておくことが望ましい。本発明で得られたスパースモデリングによる判別モデルを利用することで、このような痛み判別/推定装置が提供される。
実施例1に準じて、あらかじめ生成した疼痛判別/推定モデルによる、未知の該推定対象の痛みレベル判別/推定方法を示す。このようにあらかじめ作成された判別モデルを疼痛判別/推定部に格納するか、アクセス可能な状態にしておく。被験者、データ解析方法は、実施例1と同じであるが、モデル作成用データは、無作為に対象者1名(4サンプル)を除外して作成し、除外された対象者1名を未知の該推定対象として、判別/推定モデルに投入した。
(結果)
図7に示すように、判別モデル作成用のスパースモデル解析により、C4のδパワー(2.50)、C3のβパワー(2.43)、C4のαパワー(-2.39)、Fzのβパワー(-2.38)、Czのδパワー(2.22)、Fzのδパワー(-2.16)、Fzのαパワー(-2.13)、Fzのθパワー(1.51)の特徴量がモデルにおいて貢献度が高くなっていた。図8に示すように、モデル作成時の切片値は、0.03~0.05の範囲で推移し、中央値、平均値ともに約0.043であった。図9は、10分割交差検証の判別精度の推移を示す。精度(最大値「1」)は、0.6~0.9の範囲に収まり、中央値、平均値はともに、0.733であった。最適なλ値は、共通して0.0027であった。以上の結果から、特徴量係数、切片の平均値を用いて、図10のような痛みレベル判別/推定モデルを作成した。推定値は、50%の閾値水準を用いて、50%以下を「痛みレベル弱」、50%より高い場合を「痛みレベル強」とカテゴリー化して、実際の痛みレベルと照合する。図11は、除外された未知の該推定対象者1名の痛みレベル判別/推定式、ならびに出力結果を示す。この対象者の場合、判別/推定モデルにより、脳特徴量から適格に痛みレベルが判別/推定可能であることを示す。
(実施例3:瞬間痛の判別)
本実施例では、瞬間痛の判別を痛みオドボール課題を用いて行った。瞬間痛の刺激としては、高温刺激を用いた。また、脳波検査終了後、用いた痛み刺激の不快度を主観報告にて調べた。
(方法)
(参加者)
20代から70代の80名の健常な成人被験者の同じグループが、高温刺激を用いた痛みオドボールパラダイム実験に参加した。参加者らは、実験前にインフォームドコンセントに同意した。全参加者は、神経性および/もしくは精神性の病気、または臨床薬物治療条件下における急性および/もしくは慢性疼痛を経験していないことを自己報告した。本実施例を、大阪大学医学部付属病院の倫理委員会ならびにヘルシンキ宣言による承認下で実施した。
(実験刺激、ならびに手続)
図20に実験方法の概要を示す。温度刺激システム(Pathway:Medoc Co.,Ltd.,RamatYishai, Israel)を使用して、高温刺激を参加者の右前腕に与えた。ベース温度を32℃に設定し、参照刺激(39℃:75試行)と痛み強の逸脱刺激(52℃:21試行)をランダムに呈示した。参照、ならびに逸脱刺激は、立ち上がり2秒でパルス状に発生し、刺激間間隔は1秒であった。被験者は、検査中、痛み刺激の数を声を出さずに数え、終了後、報告した。加えて、脳波実験の終了後、参照刺激と逸脱刺激が複数回、ランダムにおこる試行を行い、不快度をコンピュータ化された可視化アナログスケール(COVAS)上で、0から100の範囲(0:「無痛」;100:「耐えられない疼痛」)で評価した。COVASデータを刺激強度の変更と同時に記録した。
(EEGデータ収集)
脳波データは、頭皮上Ag/AgCl7電極(Fp1、Fp2、F3、F4、C3、C4、Pz)から市販の脳波計を用いて記録した。導出電極は耳朶とし、左右それぞれの電極を同側の耳朶電極に連結した。帯域周波数は0.3~120Hz、サンプリング周波数は1000Hzとした。インピーダンスは15KΩ以下を維持するようにした。
(EEG分析)
(振幅の特徴量抽出)
連続的に記録したEEGデータは、眼球運動ノイズ(EOG)を減衰するため、以下の回帰フィルターを適用した:
[数1]
生EEG=β×EOG+C
推定EEG=生EEG-β×EOG
β:回帰係数
C:切片
推定EEG:推定されたEEG
眼球運動データとして、両眼に最も近いFp1とFp2データをEOGデータ(Fp1+Fp2)として使用した。EOGの補正後、帯域通過フィルター(0.3~40Hz)を適用し、低周波、ならびに高周波成分を減衰させた。刺激呈示前200msecから刺激呈示後2000msecのエポック波形を、各刺激条件ごとに切り出した。ベースライン補正を刺激呈示前の平均電位を用いて行った後、±50μVでアーチファクト除去を行い、加算平均を行った。
(主観評価解析)
主観評価用パラダイムを用いて、参照、ならびに痛み強刺激の不快度の主観評価得点を算出した。各条件刺激は3回ずつランダムに呈示し、次の刺激が始まる前1秒から、次に刺激が始まる前での最大値を求め、平均値を求めた。通常、痛みの主観評価は、刺激呈示から遅れて上昇したり、下降したりするので、確実に刺激評価を得るために、上記のような時間設定を用いた。
(統計解析)
(持続性特性分析)
80名の全体加算平均波形から、中期ERP時間帯が終わり後期時間帯が始まる600msecから2000msecまでの平均振幅を用いて、参照刺激と痛み強の逸脱刺激をt検定で比較した。また、効果の比較対象として、200~600msecの平均振幅も両刺激間でt検定を用いて比較した。
(結果と考察)
図21は、本発明で見いだされた持続性信号(特性)の例を示す。一見してわかるように、2000msecのエポック終了時点まで、逸脱刺激(52℃)の波形が、参照刺激(39℃)に比べ、陽性方向に持続してシフトしている。右前頭部F4の波形を見ると、400msecぐらいからその持続性効果は最も早く始まっており、効果が非常に長く続いている。前頭部の2電極の平均電位(600~2000ms)を用いて、対応のあるt検定を行ったところ、両条件間には有意差が確認された(t=2.523、p=0.014)。一方、600msec以前の中期時間帯(200~600msec)には、条件間で有意差が見られなかった(t=0.331、p=0.742)。以上の結果から、逸脱刺激は、中後期時間帯から持続性効果を示したことが理解できる。
図22は、参照刺激(39℃)および逸脱刺激(52℃)の痛み不快度の主観評価を示す。52℃刺激の方が、39℃刺激より不快度が有意に高くなっていた(t=14.38、p<0.0001)。したがって、上記のEEG解析における持続性陽性効果は、痛み強刺激の不快度の増大を反映した結果であることが理解できる。
(実施例4:持続性ERP特徴量を用いた瞬間痛2レベルの判別・推定プロセス)
実施例1において観察された持続性ERP特徴量とLASSO(正則化)アルゴリズムを用いて、瞬間痛の判別推定をおこなった。
(材料および方法)
実験パラダイム、EEGデータ収集、ならびに解析方法は、実施例1に準ずる。本実施例では、新たにLASSO(Least absolute shrinkage and selection operator)アルゴリズムを用いてスパースモデル解析を行い、重回帰モデルの最適な係数、ならびにモデル切片を算出して、瞬間痛の2レベルの判別推定を行った。
図24に示すように、収集したデータ(160サンプル=2レベル×80名)を「訓練用(学習)データ」と「テスト用データ」に分割した。訓練用データを用いて、LASSOアルゴリズムと10分割交差検定とを用いて最適なλ値を算出した後、4特徴量の偏回帰係数、および切片を決定した。4特徴量は、F3、F4、C3、C4電極おける持続性電位が顕著に観察される1000msecから1600msecの、参照刺激と痛み強刺激の平均電位(個人内で標準化)を用いた。λ値は、正則化において機能するハイパーパラメータであり、モデルの適合度をなめらかにし、汎化能力を増大させる機能を担う。正則化には、L1正則化が使われ、MATLABのLASSO関数は、以下の最小化問題を解く。
[数1]
Min(Dev(β0, β) + λΣ|βj|)
Min: 最小化
Dev:逸脱度(切片β0と回帰係数βを用いた回帰モデル推定値の観測値からの外れ
N:サンプル数
λ:正の値を取る正則化パラメータ
本実施例では、上記のプロセスを1000回繰り返して行い、判別精度の事後分布を得た。また、観測データの判別精度が、ランダムな判別精度よりも高いことを示すために、同じプロセスを用いて、痛みの2ラベルをランダム化して、偶然レベルの判別精度も算出し、比較検討した。
(結果)
図25に、持続性ERP特徴量を用いた、瞬間痛2レベルの判別推定結果を示す。1000回のLASSO解析により得た4特徴量の係数、ならびに切片を用いた判別モデルは、以下の通りに集約できる。
[数2]
Y = 0.1659 × F3 + 0.171 × F4 - 0.0079 × C3 - 0.0841 × C4 + 0.6671
1000回の判別分析の特定モデルに、テストデータを投入した場合の出力結果の例として、瞬間痛分類値を示した。分類値「1.4424」を閾値として、閾値未満の場合は、痛み弱、もしくはなし(参照刺激)とし、閾値以上の場合は、痛み強として、実際の痛みレベルと照合を行うことで、判別精度が算出された。1000回のテストデータの判別結果は、図25右のグラフである。平均判別精度は「66.7%」であった。この判別精度は、判別ラベルをランダム化した場合の判別精度「50.8%」に比べ、約16%高い数値を示しており、持続性ERP特徴量が、瞬間痛の判別に有効であることを示している。
(実施例5:非持続性ERP特徴量を用いた判別モデルの対比例)
実施例4における、持続性特徴量を用いた瞬間痛判別における有効性をさらに、検討するために、実施例3における非持続性ERP特徴量とLASSO(正則化)アルゴリズムを用いて、瞬間痛の判別推定をおこなった。
(材料および方法)
実験パラダイム、EEGデータ収集、ならびにEEG解析方法、ならびに判別推定分析は、実施例4に準ずる。本実施例では、判別推定に用いる特徴量として、200msecから600msecの非持続性脳波区間を用いた。
(結果)
図26に、非持続性ERP特徴量を用いた、瞬間痛2レベルの判別推定結果を示す。LASSO解析(1000回のテスト用データ検証)により得た4特徴量の係数、ならびに切片を用いた判別モデルは、以下の通りに集約できる。
[数3]
Y = -0.0704×F3 + 0.1479 × F4 + 0.2220 × C3 -0.2485 × C4 + 1.4917

特定の判別モデルに、特定のテストデータを投入した場合の出力結果の例として、瞬間痛分類値例を示した。分類値は「1.4670」であり、持続性特徴量の例と「0.02」程度の差であり、近似していた。閾値未満の場合は、痛み弱、もしくはなし(参照刺激)とし、閾値以上の場合は、痛み強として、実際の痛みレベルと照合を行うことで、判別精度を算出した。1000回の判別分析の結果は、図26右のグラフである。平均判別精度は「57.3%」であった。この判別精度はチャンスレベル(50%)より高く、判別ラベルをランダム化した場合の判別精度「49.2%」に比べ約8%高いものの、持続性ERP特徴量を用いたときの判別精度(66.7%)にくらべ、約10%、低い判別精度であった。
以上の結果から、本実施例でも、持続性ERP特徴量が瞬間痛2レベルの判別に有効であることが示された。さらに、瞬間的な痛みでも、すぐに表れる早期時間帯の脳活動ではなく、中後期時間帯に現れる意識化された痛みに関連する特徴量が重要であることは、身体的侵襲が心理的侵襲に変化する時点を捉えることが痛み判別に有効であることを示している。
(注釈)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に提出された特願2017-137723(2017年7月14日出願)および特願2017-193501(2017年10月3日出願)に対して優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が本明細書において、参考として援用される。
本発明は、痛みを精確に分類することができ、強い痛みを与えないでも痛みを推定することができ、痛みに関する診断、治療をよりきめ細やかに行うことができる。
本発明はまた、瞬間痛を判定することができ、瞬間痛に関する診断、治療をよりきめ細やかに行うことができる。
1000:リファレンス刺激部
1500:対象
2000:脳波データ取得部
2500:脳波計
2600:脳波特徴量抽出部
3000:判別モデル生成部
3200:痛みレベル判別/推定(分類)部
4000:痛み可視化部
5100:痛みレベル判別・推定システム
5200:脳波測定部
5250:脳波記録センサー
5300:痛み判別/推定装置部
5400:脳波信号処理部
5500:脳波特徴量抽出部
5600:痛み判別/推定部
5700:痛み判別補正部
5800:痛みレベル可視化部
5900:刺激装置部
5920:リファレンス刺激呈示端子
5940:リファレンス刺激発生部
5960:リファレンス刺激レベル可視化部
11000:刺激呈示部
11500:対象
12000:脳波データ取得部
12500:脳波計
13000:疼痛判定値生成部
14000:疼痛判定部
15099:対象
15100:疼痛判定システム
15200:脳波測定部
15220:脳波計
15250:脳波記録センサー
15270:脳波増幅部
15300:疼痛判定装置
15400:脳波信号処理部
15500:脳波特徴量抽出部
15600:疼痛判定部
15700:疼痛判定値生成部
15800:判定レベル可視化部
15900:刺激装置部
15920:刺激呈示部
15960:刺激情報可視化部

Claims (13)

  1. 痛みの判別または評価のシステムの作動方法であって、前記システムは、脳波データまたはその分析データを入力する脳波データ入力部と、前記脳波データまたはその分析データを解析する解析部とを含み、前記作動方法は、
    前記解析部が、対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、
    前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、
    前記解析部は、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する、
    痛みの判別または評価のシステムの作動方法。
  2. 前記脳波データまたはその分析データは、中期時間帯から2000msecの範囲の全部または一部の脳波データまたはその分析データを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
  3. 前記中期時間帯は、250msec~600msecの間の範囲の値を含む、請求項に記載のシステムの作動方法。
  4. 前記全部または一部は少なくとも100msec分の範囲を含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
  5. 前記少なくとも100msec分の範囲において、該少なくとも100msec分の範囲との間に統計学的に有意な相違がみられる場合、持続性がみられると判定する、請求項に記載のシステムの作動方法。
  6. 前記脳波データまたはその分析データは電位もしくは持続時間またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステムの作動方法。
  7. 前記痛みの判別は、痛みの不快度の判別である、請求項1に記載のシステムの作動方法。
  8. さらに、前記比較したデータを、シグモイド関数フィッティングを用いて分析する工程を包含する、請求項1~のいずれか一項に記載のシステムの作動方法。
  9. 前記判別は、脳波データまたはその分析データの陽性成分について判断することを特徴とする、請求項1に記載のシステムの作動方法。
  10. 前記陽性成分は、中期時間帯以降にも持続する場合に、疼痛があると判断されることを特徴とする、請求項に記載のシステムの作動方法。
  11. 痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
    対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、
    前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、
    前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する工程を含む、
    プログラム。
  12. 痛みの判別または評価の方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
    対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する工程を備え、
    前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、
    前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定する工程を含む、
    記録媒体。
  13. 痛みの判別または評価のシステムであって、該システムは、
    脳波データまたはその分析データを入力する脳波データ入力部と、
    対象刺激が付加されてから、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの間の全部または一部の脳波データまたはその分析データを、参照刺激が付加されてから同じ時間の後の脳波データまたはその分析データと比較する解析部とを備え、
    前記脳波データまたはその分析データは、誘発脳波成分、初期事象関連電位成分、および250msecのうち最も早い時点から2000msecの全体にわたって比較され、
    前記解析部は、前記比較において、前記対象刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値が、前記参照刺激により得られた脳波データまたはその分析データの値と異なる持続時間かどうかを判定し、該異なる持続時間が存在する場合、脳波の波形の線形補正により前記波形の基線をベースラインに戻したときに異なる持続時間の状態が消失せず、所定の低域周波数成分を遮断したときには消失するときは、持続性特性を有して、不快な痛みが存在すると判定を行う、
    システム。
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