JP7170484B2 - 導電性組成物およびそれを用いた導電体並びに積層構造体 - Google Patents
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Description
前記銀粉が表面処理されたものであり、
前記銀粉は、その平均一次粒子径が1.0μm以下で、かつみかけ空隙率が50~95%であり、
導電性組成物中において、前記銀粉および前記塩化銀粒子の二次粒子の粒度分布における累積95%粒子径(D95粒子径)が、3.0~25.0μmであることを特徴とするものである。
本発明の導電性組成物を構成する銀粉は、表面処理されたものであり、その平均一次粒子径が1.0μm以下、好ましくは0.1~1.0μmであり、みかけ空隙率が50~95%、好ましくは60~95%のものを使用する。このような銀粉を用いて、組成物中での銀粉の二次粒子の粒度分布が後記するような範囲となるような凝集状態とすることにより、伸縮の繰り返しや伸張を大きくした場合であっても、電気抵抗の安定性を維持することができる。なお、本発明において、銀粉の平均一次粒子径とは、粉体状態にある銀粉を走査型電子顕微鏡にて10,000倍の倍率で観察し、ランダムに10個の一次粒子を抽出し、その粒子径を測定した際のそれらの粒子径の平均値を意味する。また、銀粉のみかけ空隙率は、銀粉の一次粒子が連結して適度な空隙が存在する凝集構造(二次粒子)の状態を表す指標となるものであり、以下のようにして測定することができる。
すなわち、
銀の密度をρ0(g/cm3)とし、
質量M(g)の銀粉に、1kg重の荷重をかけたときの銀粉体積をV(cm3)とした場合に、みかけ密度ρ(g/cm3)は、
ρ=M/V
と定義され、みかけ密度から、下記式によりみかけ空隙率(P)を算出することができる。
P=(1-ρ/ρ0)×100
なお、銀の密度ρ0は10.49g/cm3であり、1kg重荷重時の銀粉体積Vは、荷重を付加してから1時間経過した後の銀粉体積とする。
本発明による導電性組成物は、上記した銀粉に加えて塩化銀粒子を含む。銀粉と塩化銀粒子とを併用することにより、生体適合性に優れた電極材料とすることができる。
本発明による導電性組成物に含まれるエラストマーは、室温においてゴム弾性を有する材料であれば特に制限なく使用することができ、例えばゴム、熱可塑性エラストマー、官能基含有エラストマー、ブロック共重合体等を好適に使用することができる。
引っ張り破断伸び率(%)=(破断点伸び(mm)-初期寸法mm)/(初期寸法mm)×100
なお、本発明の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー以外の熱可塑性樹脂等の他の有機バインダーを併用してもよい。
上述した導電性組成物は、固化させて導電体とすることができる。例えば、導電性組成物からなる塗布膜を形成し、乾燥、固化させることにより導電体の層とすることができる。導電性組成物の固化は、導電性組成物を乾燥または熱処理することで行われる。熱処理の例は、熱風乾燥または熱硬化である。熱処理に先立ち、成形を行ってもよい。例えば、導電体の層は、基材上に上記の導電性組成物を所望の形状となるように塗布した後、固化させることにより導電体の層を得ることができる。導電体の層は、使用される用途に応じた種々の形状であってよい。例えば、導体回路および配線などに好適に適用できる。
人間を含めた動植物から発生する活動電位/生体情報を取得/伝達する為に身に着けるウェアラブル生体センサー用配線材料として、本発明の導電体を適用することができる。センサーの装着箇所は、人間を含めた動植物の表層組織に密着ないしは近接する場所であることが必須となるが、表層組織は伸び縮みが発生する。従来の硬質基板やフレキシブル基板では、伸び縮みする装着箇所への追従性が無く、センサーの装着箇所も限定的となり、結果として得られる生体情報も限られていた。本発明の導電体によれば、人間を含めた動植物の表層組織にもセンサー用配線材料を適用できるため、伸び縮みが発生する箇所にも装着可能なウェアラブル生体センサーとすることができる。
近年、布帛生地をセンサーとして用いるいわゆる「スマートテキスタイル」という分野広がりを見せつつある。本発明の導電体を用いて伸縮性があり熱圧着等が可能な基材上に配線形成を行なった配線板ないしセンサーは、伸縮時での電気抵抗の安定性に優れているため、伸縮性を持つ布帛生地の表面に貼りつけることで、エレクトロニクス・デバイスの機能を持った布帛生地、すなわちスマートテキスタイルの開発が可能となる。スマートテキスタイルとしては、感圧センサーやタッチセンサー、アンテナ配線等の機能を布帛生地に付与することができる。
従来のFIM(フィルム・インサート・モールド成型)工法による電子機器の筐体等向けのプラスチック成型品では、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムをベース基材とし、意匠印刷の後、熱プレス加工したものが採用されている。本発明の導電体を伸縮性の基材上に設けた積層構造体からなる導体配線は伸長時の断線が無く、抵抗値変化が抑制されている特性を持つため、プラスチック成型品の意匠印刷時に導体配線を形成し、その後の熱プレス(部分的に伸びが発生)による成型加工を行なうことで3D形状の配線を内蔵したエレクトロニクス・デバイスを実現することができる。
本発明の導電体の層を伸縮性の基材上に設けた積層構造体からなる導体配線は、伸縮変形可能な配線板シートとして利用することができる。例えば、このような導体配線を成型加工品などの立体的形状を持つ対象物の表面へ、配線の断線を発生させること無く、伸張ないし変形させながら対象物に貼りつけることが可能となる。したがって、本発明の導電体の層を伸縮性の基材上に設けた積層構造体は、感圧センサーやタッチセンサー、またはアンテナ配線用として好適に利用することができる。
従来の導電性ペーストを使ったフレキシブル配線シートないし配線基板では、爪折りという極端な折り曲げを行なった際、配線の断線が発生するという事象が発生する。この点本発明の導電体を使用した場合、伸び特性を持たせた導電材料であることから、これまでの導電ペーストでは対応仕切れなかった領域の折り曲げ性にも対応することができ、爪折り時でも、配線の断線は発生しないフレキシブル配線シートないし配線基板を実現することができる。
導電性組成物を調製するための銀粉として、以下の3種の銀粉を準備した。
銀粉A:平均一次粒子径0.3μm、みかけ空隙率が92%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
銀粉B:平均一次粒子径0.5μm、みかけ空隙率が63%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
銀粉C:平均一次粒子径1.3μm、みかけ空隙率が44%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
塩化銀粒子A:平均一次粒子径3.8μm、みかけ空隙率が57%の塩化銀粒子。
また、各銀粉および塩化銀粒子のみかけ空隙率Pは以下のようにして算出した。すなわち、銀粉または塩化銀粒子を円筒状の容器に充填し、容器を数回振動させて銀粉または塩化銀粒子の上面が一定の高さになるまで銀粉または塩化銀粒子を補充し、容器に充填された銀粉または塩化銀粒子の量をM(g)とし、容器内径にあわせた外径を有する円柱を用いて銀粉または塩化銀粒子の上面に1kg重の荷重をかけ、1時間放置した後の銀粉または塩化銀粒子の体積(円筒状容器の底面積と、容器底から銀粉または塩化銀粒子の上面までの高さの積)をV(cm3)として、ρ=M/Vで定義されるみかけ密度ρ(g/cm3)を算出し、銀の真密度ρ0(10.49g/cm3)または塩化銀の真密度ρ0(5.56g/cm3)を用いて、下記式:
P=(1-ρ/ρ0)×100
で表される銀粉または塩化銀粒子のみかけ空隙率P(%)を算出した。
導電性組成物を調製するためのエラストマーとして、以下の2種を準備した。
・エラストマーA(クラレ株式会社製、LA2330)
・エラストマーB(クラレ株式会社製、LA2250)
・ポリエステルC(東洋紡株式会社製、バイロン290)
上記したエラストマーAおよびBについては、エラストマーをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、固形分50質量%となるように樹脂溶液を調製した。また、ポリエステルCについては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、固形分30質量%となるように樹脂溶液を調製した。
(1)比抵抗の測定
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して導電体を得た。基材としては、PETフィルムを使用した。得られた導電体の両端の抵抗値を4端子法で測定し、さらに線幅、線長および厚さを測定し、比抵抗(体積抵抗率)を求めた。結果を表1に示す。
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、線幅1mm、厚さ20μm、長さ40mmの導電体を基材上に形成した。基材としては、ウレタンフィルム(武田産業株式会社製、TG88-I、厚さ70μm)を使用した。2.5%の伸縮状態(撓みが無い状態)から30%の伸縮を250秒かけて100往復繰り返し、断線の有無を評価した。
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、線幅1mm、厚さ20μm、長さ40mmの導電体を基材上に形成した。基材としては、ウレタンフィルム(武田産業株式会社製、TG88-I、厚さ70μm)を使用した。0%の非伸縮状態から50%の伸縮を700秒かけて100往復繰り返し、断線の有無を評価した。
また、平均一次粒径が1.0μm以下、みかけ空隙率が50~95%の範囲にない銀粉を用いた場合(比較例2、比較例3および比較例5)は、初期の導電性も不十分であり、伸縮の繰り返しや伸ばした場合も導電性が急激に低下してしまうことが分かる。
さらに、エラストマーに代えてポリエステルを使用した導電性組成物(比較例4)は、平均一次粒径が1.0μm以下、みかけ空隙率が50~95%である銀粉と塩化銀粒子とエラストマーとを用い、銀粉および塩化銀粒子のD95粒子径が3.0~25μmの範囲となるように混練しても、初期の導電性は良好であるものの、伸縮の繰り返しや伸ばした場合に、導電性が急激に低下してしまうことが分かる。
Claims (8)
- エラストマーと銀粉と塩化銀粒子とを含む導電性組成物であって、
前記銀粉が、脂肪酸又はその塩、有機金属、ゼラチンのうち少なくともいずれか1種により表面処理されたものであり、
前記銀粉は、その平均一次粒子径が1.0μm以下で、かつみかけ空隙率が50~95%であり、
導電性組成物中において、前記銀粉および塩化銀粒子の二次粒子の粒度分布における累積95%粒子径(D95粒子径)が、3.0~25.0μmであることを特徴とする、導電性組成物。 - 前記銀粉および前記塩化銀粒子の合計量が、導電性組成物全体に対して固形分量で60~95質量%含まれる、請求項1に記載の導電性組成物。
- 前記塩化銀粒子が、前記銀粉および前記塩化銀粒子の合計量に対して70質量%まで含まれてなる、請求項1または2に記載の導電性組成物。
- 前記塩化銀粒子はその平均一次粒子径が0.1~10μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性組成物。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性組成物を固化させてなることを特徴とする、導電体。
- 基材上に、請求項5に記載の導電体の層を設けてなることを特徴とする、積層構造体。
- 請求項5に記載の導電体の層または請求項6に記載の積層構造体を備えてなることを特徴とする、電子部品。
- 生体電極として使用される、請求項7に記載の電子部品。
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