本発明の導電性塗料は、(A)バインダー成分、(B)金属粒子、(C)硬化剤、及び(D)溶剤を少なくとも含む。本発明の導電性塗料は、上記成分(A)~(D)以外のその他の成分を含んでいてもよい。
[(A)バインダー成分]
(A)バインダー成分は、(a)エポキシ樹脂、(b)ゴム変性エポキシ樹脂、及び(c)アクリル樹脂を少なくとも含む。(A)バインダー成分は、導電性塗料をパッケージに塗布した後少なくとも一種の硬化性成分が硬化することで形成されるシールド層において他の成分をバインドし、シールド層のマトリックスを形成する役割を有する。
(a)エポキシ樹脂は、形成されるシールド層に耐熱性を付与する。(a)エポキシ樹脂は、加熱により硬化してシールド層のバインダー樹脂として作用する観点から、熱硬化性を有することが好ましい。また、(b)エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有することが好ましい。特に、分子内に2以上のエポキシ基を有することが好ましく、分子内に2以上のグリシジル基を有することがさらに好ましい。(a)エポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
なお、本明細書において、(a)エポキシ樹脂には、(b)ゴム変性エポキシ樹脂に該当するものは含まれないものとする。
(a)エポキシ樹脂は、常温で固体のエポキシ樹脂であってもよく、常温で液体のエポキシ樹脂であってもよいが、導電性塗料をパッケージに塗布した際の液だれ等を抑制して均一にパッケージ表面に塗布することができ、パッケージ側面と上面におけるシールド層の厚みを均一とすることができる観点で、常温で固体のエポキシ樹脂が好ましい。
なお、本明細書において、常温で固体のエポキシ樹脂を「固体エポキシ樹脂」と称する場合がある。また、常温で液体のエポキシ樹脂を「液体エポキシ樹脂」と称する場合がある。また、本明細書において、「常温で固体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を示さない状態であることを意味するものとする。また、「常温で液体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を示す状態であることを意味するものとする。
上記固体エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記固体エポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
上記液体エポキシ樹脂としては、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂、液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂などが挙げられる。
(a)エポキシ樹脂は、エポキシ当量が150~280g/eqであることが好ましい。エポキシ当量が150g/eq以上であると、形成されるシールド層にクラックや反り等の不具合が起こりにくい。エポキシ当量が280g/eq以下であると、シールド層の耐熱性がより優れる。
(A)バインダー成分中の(a)エポキシ樹脂の含有割合は、特に限定されないが、(A)バインダー成分の総量100質量%に対して、3~50質量%が好ましく、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。上記含有割合が3質量%以上であると、シールド層の耐熱性がより優れる。また、硬化の際に黒色化が進行し、形成時のシールド層のL*値が低くなる傾向がある。さらに、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。上記含有割合が50質量%以下であると、(b)ゴム変性エポキシ樹脂及び(c)アクリル樹脂を充分に含有することができ、これらバインダー成分の効果を充分に得ることができる。上記(a)エポキシ樹脂の含有割合は、本発明の導電性塗料中の全ての(a)エポキシ樹脂の合計の含有割合である。
(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、形成されるシールド層に柔軟性を付与し、(a)エポキシ樹脂による耐熱性を維持しつつ、パッケージへの密着性を向上させ、またクラックの発生を抑制することができる。また、形成時のシールド層のL*値を低くすることができ、且つ、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、加熱により硬化してシールド層のバインダー樹脂として作用する観点から、熱硬化性を有することが好ましい。また、分子内(特に、分子内の末端)にエポキシ基を有することが好ましい。この場合、硬化の際に黒色化が進行し、形成時のシールド層のL*値がより低くなる傾向がある。(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中にゴム成分を含む。上記ゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、NBR、SBR、IR、EPRなどが挙げられる。上記ゴム成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、中でも、NBRにより変性されたエポキシ樹脂(NBR変性エポキシ樹脂)が好ましい。
ゴム変性を行うエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記(a)エポキシ樹脂として例示されたエポキシ樹脂などが挙げられる。(b)ゴム変性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。この場合、熱硬化時に(b)ゴム変性エポキシ樹脂中の二重結合が分解し、黒色化が進行することで形成時のシールド層のL*値がより低くなり、且つ、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でもより変色しにくい。また、(c)アクリル樹脂と併用することで(b)ゴム変性エポキシ樹脂の二重結合の分解速度が速くなり、硬化時のシールド層の黒色化がより促進される。
(b)ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200~600g/eqであることが好ましく、より好ましくは300~500である。エポキシ当量が200g/eq以上であると、形成されるシールド層のパッケージへの密着性により優れる。また、エポキシ当量が600g/eq以下であると、シールド層の耐熱性がより優れる。
(A)バインダー成分中の(b)ゴム変性エポキシ樹脂の含有割合は、(A)バインダー成分の総量100質量%に対して、40~70質量%であり、好ましくは45~68質量%、より好ましくは50~65質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、形成時のシールド層のL*値を低くすることができ、且つ形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。上記(b)ゴム変性エポキシ樹脂の含有割合は、本発明の導電性塗料中の全ての(b)ゴム変性エポキシ樹脂の合計の含有割合である。
(c)アクリル樹脂は、形成されるシールド層のパッケージへの密着性を向上させ、また、(B)金属粒子の分散性を優れるものとすることができる。さらに、(b)ゴム変性エポキシ樹脂(特に、二重結合を有するゴム変性エポキシ樹脂)との併用により、形成時のシールド層のL*値を低くすることができ、且つ、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。(c)アクリル樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(c)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート化合物を必須の単量体成分として構成された重合体、すなわち、(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位を少なくとも有する重合体(又は共重合体)である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。そして「(メタ)アクリレート化合物」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物を示す。「(メタ)アクリル」についても同様である。上記(メタ)アクリレート化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(c)アクリル樹脂は、例えば、アクリル樹脂を構成する単量体成分の総量(100質量%)中の(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有割合は、特に限定されないが、例えば50質量%以上(50~100質量%)であり、好ましくは60質量%以上(60~100質量%)、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
上記(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸;カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類などが挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートも挙げられる。さらに、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物なども挙げられる。
(c)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート化合物以外の単量体成分由来の構成単位を有していてもよい。このような単量体成分としては、特に限定されないが、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレン等のα-オレフィンなどが挙げられる。
(c)アクリル樹脂は、架橋性官能基を含まず、且つ、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位が0質量%以上25質量%未満の重合体であることが好ましい。中でも、質量平均分子量が1000~7000の範囲であり、且つ、ガラス転移温度が-30℃以下のものがより好ましい。これにより、シールド層の柔軟性に優れ、シールド層のクラックをより起こりにくくし、また耐熱性により優れる。さらに、形成時のシールド層のL*値をより低くすることができ、且つ、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。
(A)バインダー成分中の(c)アクリル樹脂の含有割合は、(A)バインダー成分の総量100質量%に対して、10~40質量%であり、好ましくは12~30質量%、より好ましくは15~25質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、形成時のシールド層のL*値を低くすることができ、且つ形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でも変色しにくい。また、上記含有割合が10質量%以上であると、導電性塗料の保存安定性が優れ、形成されるシールド層のパッケージへの密着性を向上させ、また、(B)金属粒子の分散性を良好なものとすることができ、さらに硬化時の液だれを抑制することができる。また、上記含有割合が40質量%以下であると、パッケージとシールド層との密着性が良好となりやすい。上記(c)アクリル樹脂の含有割合は、本発明の導電性塗料中の全ての(c)アクリル樹脂の合計の含有割合である。
(A)バインダー成分は、上記の(a)~(c)以外のその他のバインダー成分を含んでいてもよい。上記その他のバインダー成分としては、導電性塗料の物性を向上させることを目的として、例えば、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂などの改質剤が挙げられる。(A)バインダー成分に改質剤をブレンドする場合の配合比は、シールド層とパッケージとの密着性の観点から、(A)バインダー成分の総量100質量%に対して、40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の導電性塗料は、(A)バインダー成分において、(a)エポキシ樹脂を配合し、さらに、(b)ゴム変性エポキシ樹脂、及び(c)アクリル樹脂を特定の割合でバランスよく使用することにより、形成時のシールド層のL*値を低くしながら、厳しい加熱条件下でも変色しにくくすることができる。例えば、(b)ゴム変性エポキシ樹脂や(c)アクリル樹脂の含有割合が、本発明で規定する範囲よりも少ない場合及び多い場合のいずれであっても、厳しい加熱条件下ではシールド層の変色が起こりやすい。
[(B)金属粒子]
(B)金属粒子は、導電性を有し、形成されたシールド層に導電性及びシールド性を付与する。金属粒子を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(B)金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。(B)金属粒子としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。表面が銀である金属粒子は、(b)ゴム変性エポキシ樹脂との組み合わせにより、銀の酸化が促進されることによるものと推測され、形成時のシールド層のL*値が顕著に低くなり、且つ、形成されたシールド層はその後厳しい加熱条件下でもより変色しにくい。導電性に優れ、金属粒子の酸化及び凝集を抑制し、且つ金属粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。(B)金属粒子は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(B)金属粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、導電性塗料の塗布安定性がより高く、得られるシールド層の抵抗値がより低く、シールド性がより向上したシールド層が得られる観点から、フレーク状が好ましい。
(B)金属粒子の平均粒径(D50)は、1~30μmであることが好ましく、より好ましくは1~10μmである。上記平均粒径が1μm以上であると、(B)金属粒子の分散性が良好で凝集が抑制でき、また酸化されにくい。上記平均粒径が30μm以下であると、パッケージのグランド回路との接続性が良好である。
(B)金属粒子がフレーク状である場合、(B)金属粒子のタップ密度は4.0~6.5g/cm3であることが好ましい。タップ密度が上記範囲内であると、シールド層の導電性がより良好となる。
また、(B)金属粒子がフレーク状である場合、(B)金属粒子のアスペクト比は2~10であることが好ましい。アスペクト比が上記範囲内であると、シールド層の導電性がより良好となる。
(B)金属粒子の含有量は、(A)バインダー成分の総量100質量部に対して、500~2500質量部であり、好ましくは700~2300質量部、より好ましくは1000~2000質量部である。上記含有量が500質量部以上であると、シールド層の導電性が良好となる。上記含有量が2500質量部以下であると、シールド層とパッケージとの密着性、及び硬化後の導電性塗料の物性が良好となり、後述するダイシングソーで切断した時にシールド層の欠けが生じにくくなる。 また、(B)金属粒子として銀被覆粒子を用いる場合、銀によるL*値の上昇を制限することができる。
[(C)硬化剤]
(C)硬化剤は、(A)バインダー成分中の少なくとも一種の硬化性成分を硬化させる役割を有する。(C)硬化剤は、エポキシ基と反応性を有する官能基を有することが好ましい。(C)硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(C)硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤などが挙げられる。(C)硬化剤としては、中でも、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
上記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラックフェノール、ナフトール系化合物などが挙げられる。
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
上記アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
上記カチオン系硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン塩、p-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等のオニウム系化合物などが挙げられる。
ラジカル系硬化剤(重合開始剤)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
(C)硬化剤の含有量は、(A)バインダー成分の総量100質量部に対して、1~150質量部であり、好ましくは10~100質量部、より好ましくは20~80質量部である。上記含有量が1質量部以上であると、(A)バインダー成分中の硬化性成分が充分に硬化し、シールド層のパッケージへの密着性に優れ、また、シールド層の導電性が良好となって、シールド効果に優れたシールド層が得られやすい。上記含有量が150質量部以下であると、シールド層の導電性が良好となって、シールド効果に優れたシールド層が得られやすい。
[(D)溶剤]
(D)溶剤は、(A)バインダー成分及び(C)硬化剤を溶解させ、また導電性塗料において(B)金属粒子の分散媒として機能するものであり、スプレー塗布などの導電性塗料の塗布が可能となるための必須成分である。(D)溶剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
(D)溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、アセトフェノン等のケトン;メチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;メチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル、酢酸メチル等のエステルなどが挙げられる。
(D)溶剤の含有量は、特に限定されないが、(A)バインダー成分の総量100質量部に対して、20~800質量部であることが好ましく、より好ましくは50~750質量部、さらに好ましくは100~700質量部である。上記含有量が20質量部以上であると、導電性塗料中で(B)金属粒子をより充分に分散させることができ、また、導電性塗料の粘度をより塗布(特に、スプレー塗布)に適したものとすることができる。また、銀被覆粒子を用いた場合、被覆された金属粒子からの金属成分(例えば銅成分)の漏れ出しによるものと推測されるが、形成時のシールド層のL*値がより低くなり、且つ、形成されたシールド層はその後厳しい加熱条件下でもより変色しにくい。上記含有量が800質量部以下であると、シールド層のパッケージに対する密着性により優れる。また、導電性塗料の粘度をより塗布(例えばスプレー塗布)に適したものとすることができる。
本発明の導電性塗料は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記の成分(A)~(D)以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の塗料に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記その他の成分を含む場合、本発明の導電性塗料中の成分(A)~(C)の合計の含有割合は、本発明の導電性塗料のうち(D)溶剤を除く総量100質量%に対して、例えば50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。
本発明の導電性塗料の粘度は、用途や塗布に使用する機器に応じて適宜調整することができる。本発明の導電性塗料の粘度は、導電性塗料が低粘度であれば円錐平板型回転粘度計(いわゆるコーン・プレート型粘度計)で測定することができ、高粘度であれば単一円筒型回転粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)で測定することができる。
円錐平板型回転粘度計で測定する場合、本発明の導電性塗料の粘度は、特に限定されないが、100mPa・s以上が好ましく、より好ましくは150mPa・s以上である。上記粘度が100mPa・s以上であると、塗布面が水平でない場合にも塗布時の液だれを抑制して導電層を均一に形成しやすい。100mPa・s付近の低粘度の場合、所望の厚さの均一な塗膜を得るには、1回の塗布量を少なくして薄膜を形成し、その上にまた薄膜を形成する操作をくり返す、いわゆる重ね塗りを行う方法が有効である。円錐平板型回転粘度計で測定する場合、例えば、ブルックフィールド(BROOK FIELD)社のコーンスピンドルCP40(コーン角度:0.8°、コーン半径:24mm)を用いて、0.5rpmの回転速度で測定することができる。
また、単一円筒型回転粘度計で測定する場合、本発明の導電性塗料の粘度は、特に限定されないが、30dPa・s以下が好ましく、より好ましくは25dPa・s以下である。上記粘度が30dPa・s以下であると、スプレーノズルの目詰まりを防ぎ、ムラなく塗膜を形成しやすい。単一円筒型回転粘度計で測定する場合、例えば、ローターNo.5を用いて10rpmの回転速度で測定することができる。
本発明の導電性塗料をパッケージ表面(例えば、銅箔等で形成されたグランド回路表面)に塗布し(A)バインダー成分中の硬化性成分を硬化させ、(D)溶剤を揮発させることにより、シールド層などの導電層を形成することができる。なお、本明細書において、本発明の導電性塗料を用いて形成されたシールド層を「本発明のシールド層」と称する場合がある。
本発明の導電性塗料を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、フレクシャー印刷、グラビア印刷、スプレー塗布(噴霧)、刷毛塗り、バーコート塗布、トランスファモールド成形、ポッティング法、真空印刷法、スパッタリングなどが挙げられる。中でも、均一な塗布が容易であり、且つスプレー塗布によっても良好なシールド性を有し、パッケージとの密着性が良好である観点から、スプレー塗布が好ましい。
上記硬化性成分を硬化させる際の条件は、特に限定されず、公知乃至慣用の導電性塗料の硬化条件から適宜選択することができる。
本発明の導電性塗料を、190℃で30分間の加熱条件で硬化させて得られる導電層のL*値(「L*値(190℃30分)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、61.0以下が好ましく、より好ましくは60.0以下、さらに好ましくは59.5以下である。上記L*値が61.0以下であると、シールド層が従来のものよりも黒く、さらに、形成直後のシールド層のL*値が低いため、その後厳しい加熱条件下でもL*値がさらに低下しにくく変色しにくい。なお、本明細書において、L*値は、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)である。
本発明の導電性塗料を、190℃で24時間の加熱条件で硬化させて得られる導電層のL*値(「L*値(190℃24時間)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、60.0以下が好ましく、より好ましくは59.0以下、さらに好ましくは58.0以下である。上記L*値(190℃24時間)は、シールド層形成後経時でのL*値の指標となる過酷試験値である。
上記L*値(190℃30分)と上記L*値(190℃24時間)の差[L*値(190℃30分)-L*値(190℃24時間)]であるΔLは、15.0以下が好ましく、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは6.0以下である。上記ΔLが15.0以下であると、形成されたシールド層は厳しい加熱条件下でもよりいっそう変色しにくく、経時後でも外観が良好である。
本発明のシールド層は良好なシールド性を有する。このため、本発明の導電性塗料を、190℃で30分間の加熱条件で硬化させて得られる導電層の比抵抗値は、1.2×10-5Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×10-5Ω・cm以下である。
本発明の導電性塗料を用いて、基板、上記基板上に搭載された電子部品、及び上記電子部品を封止する封止材を含むパッケージと、上記パッケージ表面を被覆するシールド層とを有するシールドパッケージを製造することができる。なお、当該シールドパッケージにおいて、上記シールド層が本発明のシールド層である。
図1は、本発明の導電性塗料を用いて形成されたシールド層がパッケージ表面に形成されたシールドパッケージの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すシールドパッケージ1は、基板11、基板11上に搭載された電子部品12、及び電子部品12を封止する封止材14とを含むパッケージと、上記パッケージ表面を被覆するシールド層15とを有する。なお、シールドパッケージ1において、シールド層15は本発明の導電性塗料から形成されたシールド層である。また、基板11上には、銅箔などからなるグランド回路パターン13が設けられている。
上記パッケージ(シールド層形成前のパッケージ)は、基板上に複数の電子部品を搭載し、上記基板上に封止材を形成する封止剤を充填して硬化させることにより上記電子部品を封止材により封止して得ることができる。その後、例えば、上記複数の電子部品間で封止材を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって基板上の各電子部品のパッケージを個片化させる。
そして、上記パッケージの表面に、本発明の導電性塗料を例えばスプレー塗布により塗布し、導電性塗料が塗布されたパッケージを加熱して、上記導電性塗料を硬化させることによりシールド層を形成する。その後、上記基板を上記溝部に沿って切断することにより個片化したシールドパッケージを得ることができる。
上記シールドパッケージを製造する方法の一実施形態について、図面を用いて説明する。
まず、図2(a)に示すように、基板11に複数の電子部品(IC等)12を搭載し、これら複数の電子部品12間にグランド回路パターン(銅箔)13が設けられたものを用意する。
次に、同図(b)に示すように、これら電子部品12及びグランド回路パターン13上に封止剤を充填して硬化させて封止材14を形成し、電子部品12及びグランド回路パターン13を封止する。
次に、同図(c)において矢印で示すように、複数の電子部品12間で封止材14を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって基板11の各電子部品のパッケージを個片化させる。符号Aは、それぞれ個片化したパッケージを示す。溝を構成する壁面からはグランド回路の少なくとも一部が露出しており、溝の底部は基板を完全には貫通していない。
一方で、(A)バインダー成分、(B)金属粒子、(C)硬化剤、及び(D)溶剤、さらに、必要に応じて使用されるその他の成分を混合し、導電性塗料を用意する。
次いで、導電性塗料を公知のスプレーガン等によって霧状に噴射し、パッケージ表面及び壁面から露出したグランド回路が導電性塗料で被覆されるようにまんべんなく塗布する。このときの噴射圧力や噴射流量、スプレーガンの噴射口とパッケージ表面との距離は、必要に応じて適宜設定される。
次に、導電性塗料が塗布されたパッケージを加熱して溶剤を充分に除去した後、さらに加熱して導電性塗料に含まれる(A)バインダー成分中の硬化性成分(例えば(a)エポキシ樹脂など)を充分に硬化させ、同図(d)に示すように、パッケージ表面にシールド層(導電層)15を形成する。このときの加熱条件は適宜設定することができる。図3はこの状態における基板を示す平面図である。符号B1~B9は個片化される前のシールドパッケージをそれぞれ示し、符号a1~a4及びb1~b9はこれらシールドパッケージ間の溝をそれぞれ表す。
次に、図2(e)において矢印で示すように、個片化前のシールドパッケージ間の溝の底部に沿って基板をダイシングソー等により切断することにより個片化されたシールドパッケージBが得られる。
このようにして得られる個片化されたシールドパッケージBは、パッケージ表面(上面部、側面面部及び上面部と側面部との境界の角部のいずれも)に均一なシールド層が形成されているため、良好なシールド特性が得られる。またシールド層とパッケージ表面及びグランド回路との密着性に優れているため、ダイシングソー等によってパッケージを個片化する際の衝撃によりパッケージ表面やグランド回路からシールド層が剥離することを防ぐことができる。 そして、シールド層が設けられたシールドパッケージ表面は、厳しい加熱条件下であっても変色しにくい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の相対的な配合量であり、特記しない限り「質量部」で表す。また、「-」はその成分を配合しないことを示す。
実施例1~8、比較例1~6
表に記した各成分を配合して混合し、実施例及び比較例の各導電性塗料を調製した。使用した各成分の詳細は以下の通りである。
<(a)エポキシ樹脂>
固体エポキシ樹脂:三菱化学(株)製、商品名「JER157S70」
<(b)ゴム変性エポキシ樹脂>
ゴム変性エポキシ樹脂:(株)ADEKA製、商品名「EPR-1415-1」(NBR変性エポキシ樹脂)
<(c)アクリル樹脂>
アクリル樹脂:東亞合成(株)製、商品名「ARUFON UP-1000」
<(B)金属粒子>
銀被覆銅粒子:フレーク状銀被覆銅粒子(平均粒径5μm、アスペクト比5)
銀粒子:フレーク状銀粒子(平均粒径5μm、アスペクト比5)
銀被覆銅合金粒子:フレーク状銀被覆銅合金粒子(平均粒径5μm、アスペクト比5)
<(C)硬化剤>
硬化剤:ポリイソシアネート化合物(DIC(株)製、商品名「DN-992」)
<(D)溶剤>
溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール(キシダ化学(株)製)
(評価)
実施例及び比較例で得られた各導電性塗料について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
(1)比抵抗値
ガラスエポキシ基板上に、幅5mmのスリットを設けた厚さ55μmのポリイミドフィルムを貼り付けて印刷版を作製し、実施例及び比較例で得られた各導電性塗料を当該印刷版を用いてライン印刷(長さ60mm、幅5mm、厚さ約100μm)し、190℃で30分間加熱することにより硬化させた。その後、ポリイミドフィルムを剥離した。以上のようにして、ガラスエポキシ基板上に導電層を作製した。上記導電層について、テスターを用いて両端の電気抵抗値Rを測定し、断面積(S、単位:cm2)と長さ(L、単位:cm)から次式(1)により比抵抗値(Ω・cm)を計算した。
比抵抗値=S/L×R (1)
(2)アセトンラビング試験
上記(1)比抵抗値の試験で作製した導電層と同様にして導電性塗料を用いた硬化物サンプルを作製した。アセトンをしみ込ませたペーパータオルを、上記硬化物サンプル上で10往復させた。そして、硬化物サンプルにおいて、下記式(2)により、導電性塗料の硬化物が剥がれた率(%)を測定した。本評価では、導電性塗料の硬化物サンプルの剥がれた率が低い程、導電性塗料はよく硬化していることを示している。
導電性塗料が剥がれた率=
{1-[ペーパータオルで処理した後に残留している硬化物サンプルの面積]/[ペーパータオルで処理する前の硬化物サンプルの面積]}×100 (2)
(3)クロスカット試験
シールド層とパッケージ表面又はグランド回路との密着性を、JIS K 5600-5-6:1999(クロスカット法)に基づき評価した。具体的には、グランド回路との密着性評価用の銅張積層板と、パッケージ表面との密着性評価用のモールド樹脂とを用意した。銅張積層板及びモールド樹脂それぞれに、幅5cm、長さ10cmの開口部が形成されるようにポリイミドテープでマスキングして試験用サンプルを準備した。各実施例及び比較例に係る導電性塗料を、図4に模式的に示す塗布装置(スプレーイングシステムスジャパン合同会社製、スプレーカートIII、スプレーノズル:YB1/8MVAU-SS+SUMV91-SS)を用いて上記試験用サンプルの開口部を含む領域にスプレー塗布した。その後、190℃で30分間加熱することにより導電性塗料を硬化させ、ポリイミドテープを剥離し、銅張積層板上及びモールド樹脂上それぞれに厚み約20μmの塗膜を形成した。塗膜が形成された銅張積層板及びモールド樹脂上でクロスカット試験を行った。そして、密着性の評価を次の基準で行った。
○:銅張積層板及びモールド樹脂の両方において、カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがなかった。
×:銅張積層板及びモールド樹脂の少なくとも一方において、カットの交差点において塗膜の小さなはがれが生じていた、もしくは、カットの縁部分、交差点、全面的にはがれが生じていた。
なお、図4において、符号21はタンク(塗料容器)を示し、符号22はチューブを示し、符号23はノズルを示し、符号24は回転台を示し、符号25は撹拌装置を示し、符号26は気体導入管を示し、符号27は試験用サンプルを示す。タンク21はほぼ円筒形で容量3Lの容器であり、撹拌羽根を有する撹拌装置25が備えられ、気体導入管26から窒素等の気体を導入して内部を加圧するようになされている。チューブ22は長さ3m、内径4mmであり、タンク21とノズル23とを相互に接続している。チューブ22は一部にたるみ(22a)を有し、たるみ部分の高低差(図4におけるt)は3cmである。ノズル23の長さは78mm、噴射口径は0.5mmである。回転板24の上面からノズル23の先端部までの距離は8cmである。
(4)変色試験
上記(1)比抵抗値の試験で作製した導電層のL*値を色差計を用いて測定し、この値をL*値(190℃30分)とした。また、加熱条件を190℃24時間としたこと以外は上記(1)比抵抗値の試験で作製した導電層と同様にして導電層を作製し、当該導電層のL*値を色差計を用いて測定し、この値をL*値(190℃24時間)とした。なお、上記色差計として、ポータブル積分球分光測色計(商品名「Ci6x」、エックスライト社製)を用いた。なお、L*値(190℃30分)とL*値(190℃24時間)の差をΔLとして算出し、変色評価について、ΔLが10以下であれば変色が抑制されているため「○」と評価し、10を超える場合を「×」と評価した。
(5)厚みの均一性
個片化前のパッケージのモデルとして、溝幅1mm、深さ2mmのザグリ加工を縦横それぞれ10列ずつ施し、1cm角のパッケージに見立てた島部が縦横9列形成されたガラスエポキシ基板を使用した。実施例及び比較例で得られた各導電性塗料を、市販のスプレーガン(アネスト岩田(株)製、商品名「LPH-101A-144LVG」)を用いて、下記に示す条件でパッケージの表面に噴霧し、25℃で30分間静置して溶剤を揮発させた。次いで、100℃で10分間加熱し、さらに190℃で30分間加熱して導電性塗料を硬化させてシールド層を形成した。
<スプレー条件>
塗布量:流量200L/分で9秒間塗布
供給圧力:0.5MPa
パッケージ表面の温度:25℃
パッケージ表面からノズルまでの距離:約20cm
パッケージ表面に形成されたシールド層の厚みを、シールド層を形成したパッケージの断面における角部及び壁面部におけるシールド層の厚みの差により算出した。具体的には、図5に示すように、パッケージ側面に形成されたシールド層の厚みをD1(但し、D1は側面の高さ方向中央部で測定し、上面から測定位置までの距離L1と底面から測定位置までの距離L2とが等しいものとする)とし、パッケージ角部に形成されたシールド層の厚み(水平面から上方に45°の角度で測定)をD2として、次式(3)により算出される比率(%)を均一性の指標とした。この比率が60%以下であればシールド層として適切に使用できるため「○」と評価し、60%を超える場合を「×」と評価した。
比率(%)=((D1-D2)/D1)×100 (3)
シールド層の厚みの差がゼロに近いほどシールド層の厚みが均一となるが、従来の導電性塗料では角部にシールド層を形成させようとすると壁面部の厚みが増してしまい、シールド層の抵抗値にムラが生じてしまう。一方で壁面部の厚みを薄くしようとすると角部にシールド層が形成されず、シールド効果が得られなくなってしまう。各実施例では、角部と壁面部とでシールド層の厚みの差の比率がいずれも60%以下であり、シールド層として適切に使用できることが確認できた。
(6)シールド層の導電性
上記(5)厚みの均一性評価において作製したシールド層の導電性を、抵抗値で測定した。具体的には、上記ザグリ加工して形成した立方体状の島部によって構成される列の中から任意の1列を選択し、その列の両端部の島部間(図3におけるB1及びB9間)の抵抗値を測定した。抵抗値が100mΩ以下であれば、シールド層として適切に使用できるため「○」と評価し、100mΩを超える場合を「×」と評価した。
本発明の導電性塗料(実施例)は、良好なシールド性を有し、パッケージとの密着性が良好であり、厳しい加熱条件下でも変色しにくい導電層を形成することができた。一方、(b)ゴム変性エポキシ樹脂及び(c)アクリル樹脂の含有量が多い場合や少ない場合(比較例1、2)、厳しい加熱条件下では変色度合いが大きかった。(C)硬化剤の含有量が少ない場合(比較例3)、導電層の比抵抗値が大きくシールド性が劣っており、またアセトンラビング試験及びクロスカット試験の結果が不良であり、パッケージとの密着性が劣っていた。また、(C)硬化剤の含有量が少なく導電性塗料が低粘度であるため、シールド層の厚みの均一性に劣っていた。(C)硬化剤の含有量が多い場合(比較例4)、シールド層の比抵抗値が大きくシールド性が劣っていた。(B)金属粒子の含有量が少ない場合(比較例5)、導電層の比抵抗値が大きくシールド性が劣っており、また厳しい加熱条件下での変色度合いも大きかった。(B)金属粒子の含有量が多い場合(比較例6)、アセトンラビング試験及びクロスカット試験の結果が不良であり、パッケージとの密着性が劣っていた。また、比較例5では、(D)溶剤が多く導電性塗料が低粘度であるため、シールド層の厚みの均一性に劣っていた。