JP7162669B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、ラジカル重合性化合物と酸化還元開始剤系とを含む歯科用組成物に関し、該酸化還元開始剤系はホスト分子及び1種以上のゲスト分子を含む1種以上の包接化合物を含み、ここで、ホスト分子は、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択され、1種以上のゲスト分子は、還元剤である。さらに、本発明は、歯科用組成物における酸化還元開始剤系の使用に関する。
包接化合物を形成することにより、液体還元剤を固体に変換することができる。これにより、固体成分のみを含む歯科用組成物の一部又は包装に液体還元剤を加えることが可能となる。
発明の背景
歯科用組成物のための酸化還元開始剤系は周知であり、必須成分として還元剤を含有する。芳香族第三級アミン、ホスフィン及びボランは、多くの場合、歯科用組成物中の還元剤として使用される。歯科用組成物についての主な課題は、酸化還元開始剤系を使用する場合の保存安定性である。ラジカル重合性化合物と酸化還元開始剤系とを含む歯科用組成物は、実際に有用であるために、十分な保存安定性を有することが必要とされる。他方、歯科用組成物は、十分な作業時間を提供しながら、効率的な活性化を可能にする低い速度論的安定性を有しなければならない。作業時間に続いて、歯科用組成物の反応性は、短い凝結時間で歯科用組成物を完全に硬化させるのに十分に高くなければならない。歯科用組成物の熱力学的安定性の向上により、通常、速度論的安定性の向上及び反応性の低下がもたらされることにより、保存安定性を向上させることができる。しかしながら、歯科用組成物の活性化はより困難になるため、凝結時間が悪化する場合がある。他方、歯科用組成物の熱力学的安定性及び速度論的安定性の低下により、歯科用組成物又は酸化還元開始剤系の成分の保存安定性の低下がもたらされる場合がある。
米国特許出願公開第2005/165136号明細書には、ハイブリッドガラス-アイオノマーセメントを含有する2成分(液体及び固体)酸化還元開始剤が開示されている。酸化剤を含有する液体成分は、ビニル含有ターポリマー(全液体の40~60%、wt%)をK(0.1~0.5%)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、0.2~0.8%)、ポリオキシエチレンノニルフェノール(PEONP、0.6%)、ビニル含有アミノ酸(20~30%)及び蒸留水(15~30%)と混合することにより調製された。還元剤を含有する固体成分は、GC Fuji II LC(登録商標)ガラス粉末(GC American Dental Co.)をアスコルビン酸含有マイクロカプセル(ガラス粉末の0.2~0.6%、wt%)と最大速度の渦流を用いて混合することにより調製された。1.0~2.5/1の粉末/液体比(P/L)を処方に使用した。米国特許出願公開第2005/165136号明細書には、分子ホスト-ゲスト錯体は開示されておらず、ホストゲスト錯体を形成する化合物とは異なる明らかな特性を有する。むしろ、米国特許出願公開第2005/165136号明細書では、反応性物質のための巨視的被覆に限定されており、制御が困難な特性を有する組成物を提供している。
欧州特許出願公開第0511635号(A1)明細書には、重合開始剤、開始剤安定化剤、重合性アクリル成分に溶解させたエラストマー、及び開始剤活性化剤を含有する、航空宇宙用途及び自動車用途のための多成分接着剤組成物が開示されている。重合開始剤は、開始剤安定化剤としてのシクロデキストリンと複合体化しているペルオキシド化合物であることができる。ペルオキシド化合物を開始剤安定化剤の内腔内に収容することにより、接着剤系内で重合を開始する能力を変化させることなく、開始剤の熱分解を防止することができることが見出された。
さらに、アミン及びホスフィンが、包接化合物を形成することができることは公知である。
C. Hajji et al., Topics in Organometallic Chemistry, 2006, 20, 149-176, page 169には、ホスフィン及びホスト分子から形成される包接体が開示されている。
J. Mohanty et al., Comprehensive Supramolecular Chemistry II vol. 1, 2017, page 439には、アミン及びホスト分子から形成される包接体が開示されている。
発明の概要
本発明の目的は、ラジカル重合性化合物及び酸化還元開始剤系を含み、優れた保存安定性と十分に長い作業時間及び短い凝結時間とを同時に提供する、歯科用組成物を提供することである。
第1の態様によれば、本発明は、
(i)
ラジカル重合性化合物と、
(ii)
(a)1種以上の包接化合物、及び
(b)酸化剤
を含む酸化還元開始剤系と、
を含む歯科用組成物を提供し、
前記1種以上の包接化合物が、
(a1)ホスト分子、及び
(a2)1種以上のゲスト分子、を含み、
ホスト分子がシクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択され、1種以上のゲスト分子が還元剤である。
第2の態様によれば、本発明は、歯科用組成物、特に、本発明の第1の態様の歯科用組成物における、(a)ホスト分子及び1種以上のゲスト分子を含む1種以上の包接化合物と、(b)酸化剤と、を含み、
ホスト分子がシクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択され、1種以上のゲスト分子が還元剤である、酸化還元開始剤系の、使用を提供する。
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様の歯科用組成物を含む、歯科用組成物を保存するための容器を提供する。
本発明は、(a1)シクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択されるホスト分子と、(a2)還元剤である1種以上のゲスト分子と、を含む特定の包接化合物が、ラジカル重合性化合物を含む歯科用組成物における熱力学的安定性及び速度論的安定性の組み合わせを提供し歯科用組成物の有利な作業時間及び凝結時間を提供する一方で、前記歯科用組成物が優れた保存安定性も有するという認識に基づく。したがって、包接化合物を形成することにより、液体還元剤を固体に変換することができる。これにより、固体成分のみを含む歯科用組成物の一部又は包装に液体還元剤を加えることが可能となる。
図1は、DMSO-d6中でのtBDA-包接体のH-NMRスペクトルを示す。形成された錯体の化学量論をtBDAの芳香族プロトン(4つのプロトン)の6.60~7.25ppm間のピーク面積とβ-シクロデキストリンのH-1グルコシドプロトン(7つのプロトンに対して正規化)の4.45ppmでのピーク面積との比から決定した。 図2は、実施例1及び比較例1~2の貯蔵寿命実験の結果を示す。
好ましい実施態様の詳細な説明
「重合」及び「重合性」という用語は、多数の化合物、例えば、より小さい分子、例えば、モノマーの共有結合により結合して、より大きい分子、すなわち、高分子又はポリマーを形成する結合又は能力に関する。重合性化合物は、直鎖状高分子のみを形成するように結合することができ、又は一般に架橋ポリマーと呼ばれる三次元高分子を形成するように結合することができる。例えば、単官能重合性化合物は、直鎖状ポリマーを形成し、一方、少なくとも2つの官能基を有する重合性化合物は、ポリマーネットワークとしても公知の架橋ポリマーを形成する。重合性化合物の変換率がより高ければ、多官能性重合性化合物の量を減らすことができ又は浸出の問題を軽減することができる。
本明細書で使用する場合、「ラジカル重合性化合物」という用語は、少なくとも1つのラジカル重合性結合、好ましくは、炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「硬化」という用語は、官能性重合性化合物、例えば、モノマー、オリゴマー又はポリマーをも重合して、ポリマーネットワーク、好ましくは、架橋ポリマーネットワークにすることを意味する。
本明細書で使用する場合、「酸化還元開始剤系」という用語は、酸化剤と還元剤との組み合わせ、及び場合により、触媒、例えば、金属塩を含む系を意味する。酸化還元開始剤系は、ラジカルが形成される酸化還元反応を提供する。これらのラジカルにより、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。典型的には、酸化還元開始剤系を、酸化剤及び還元剤を少なくとも部分的に溶解させる水及び/又は有機溶媒と接触させることにより、酸化還元開始剤系が活性化され、すなわち、酸化還元反応が開始される。任意の触媒は、酸化還元反応、すなわち、ラジカル重合性化合物の重合を促進するのに加えることができる。
「作業時間」は、ポリマーと修飾粒子状反応性充填剤とが水の存在下で組み合わされる凝結反応の開始時間と、その意図された歯科又は医療用途のために系に対して更なる物理的作業を行う、例えば、それを錬和する又は形を整えることがもはや実用的ではない時点まで凝結反応が進行する時間との間の時間である。
「凝結時間」は、修復における凝結反応の開始から、修復表面上で後続の臨床的又は外科的処置を行うのが可能となるのに十分な硬化が起こった時間までの間の測定時間である。凝結反応では、重合性二重結合の存在により、重合反応が起こる。重合反応に加えて、ガラスアイオノマーセメントでは、凝結反応は、反応性粒状ガラスの形態にある塩基による、酸基の中和、例えば、重合性化合物の酸基の中和をさらに含む。
本明細書で使用する場合、「保存安定性」という用語は、歯科用組成物が、例えば、約2年の長い保存時間の後であっても、その特性、特に、その作業時間及び凝結時間を維持することを意味する。
本明細書で使用する場合、「包接化合物(clathrate compound)」という用語は「ゲスト分子」が、「ホスト分子」又はホスト分子の格子により形成される籠内にある内包化合物(inclusion compound)を意味する。
本明細書で使用する場合、「ペルオキシド」という用語は、式R-O-O-R(式中、R及びRは、それぞれ独立して、任意の適切な有機基又は無機基を指す)で示される化合物を意味する。例えば、「有機ペルオキシド」は、1つの有機基R又はRがアシル基であるペルオキシエステル、例えば、tert-ブチルペルオキシベンゾエートを含むことができる。アシル基は、本件では、ペルオキソ部分(-O-O-)が結合されている、カルボニル基(-(C=O)-)を有する有機基である。さらに、「有機ペルオキシド」は、有機残基R及びRの両方がアシル基を表すベンゾイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、有機残基R及びRの両方がアルキル残基を表すジ-tert-ブチルペルオキシドのようなジアルキルペルオキシド、有機残基R及びRの両方がカルボニルオキシアルキル基を表すジイソプロピルペルオキシジカーボネートのようなペルオキシジカーボネートも含むことができる。例えば、「無機ペルオキシド」は、過硫酸カリウム又はペルオキシ二硫酸カリウムを含むことができる。
本明細書で使用する場合、「ヒドロペルオキシド」という用語は、式R-O-O-H(式中、Rは、任意の有機基を指す)で示される化合物を意味する。例えば、「有機ヒドロペルオキシド」は、有機基Rがアシル基であるペルオキシ酸、例えば、ペルオキシ安息香酸を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「シクロデキストリン」という用語は、環状オリゴグルコシド(その環には通常、5~10個のグルコース残基を含有する)又はシクロデキストリンの誘導体を意味する。シクロデキストリンの誘導体において、典型的には、シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基は、例えば、エーテル化又はエステル化により適切に誘導体化されている。シクロデキストリンの誘導体の例は、(メタ)アクリル化、アルキル化、ヒドロキシアルキル化又はスルホアルキル化シクロデキストリンである。シクロデキストリンにおいて、典型的には、グルコース残基は、α-1,4結合により連結している。環を形成するグルコース残基の数に応じて、シクロデキストリンは、典型的には、下記タイプ、すなわち6つのグルコース残基から形成されるα-シクロデキストリン、7つのグルコース残基から形成されるβ-シクロデキストリン、8つのグルコース残基から形成されるγ-シクロデキストリン及び9つのグルコース残基から形成されるδ-シクロデキストリンに分けられる。
本明細書で使用する場合、「クラウンエーテル」という用語は、エチレンオキシ単位(-CHCHO-)を有する環状エーテルを意味する。その命名法「[m]-クラウン-n」は、環員の数m及びヘテロ原子の数nに基づいている。例えば、[12]-クラウン-4は、1,4,7,10テトラオキサシクロドデカンであり、[15]-クラウン-5は、1,4,7,10,13-ペンタオキサシクロペンタデカンであり、[18]-クラウン-6は、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカンである。クラウンエーテルは、エチレンオキシ単位からなるだけではない場合がある。例えば、エチレンオキシ単位のエチレン単位に代えて、2つの架橋炭素原子を有する単位、例えば、1,6-ベンゼンジイルが存在する場合がある。たとえば、11,12-ジベンゾ-1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカンであるジベンゾ-[18]-クラウン-6である。さらに、エチレンオキシ単位の酸素原子に代えて、別のヘテロ原子、例えば、窒素原子が存在する場合がある。たとえば、1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザシクロオクタデカンであるジアザ-[18]-クラウン-6である。
本明細書で使用する場合、「ククルビツリル」という用語は、縮合反応によりテトラヒドロイミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン(グリコールウリル)単量体及びホルムアルデヒドから形成される大環状化合物を意味する。ここで、グリコールウリルに由来する単位の窒素原子は、メチレン架橋と結合し、ククルビツリル繰り返し単位を形成する。
Figure 0007162669000001
典型的には、ククルビツリルは、それらの繰り返し単位の数nに基づいて、「ククルビト[n]ウリル」又は略称CB[n]もしくはCBnと呼ばれる。典型的かつ市販されているククルビツリルは、CB[5]、CB[6]、CB[7]及びCB[8]である。
「重合促進剤」という用語は、酸化還元開始剤系の反応性を向上させることができる任意の物質を意味する。ここで、重合促進剤は、ホスト分子により錯化されない。重合促進剤の例は、スルフィン酸、スルフィネート、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アルデヒド、チオ尿素化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、ハロゲン化合物及びチオール化合物を含む。
本発明は、酸化還元開始剤系により重合可能又は共重合可能な歯科用組成物を提供する。
歯科用組成物は、口腔内で使用される歯科材料であることができる。好ましくは、本発明の歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、歯科用結合剤、歯科用プライマー、歯科用浸透剤、小窩及び裂溝シーラント、歯科用減感作組成物、歯髄キャッピング組成物、歯科用コンポジット、歯科用ガラスアイオノマーセメント、歯科用セメント、裸歯頚用のシール及び保護組成物並びに歯科用根管シーラー組成物から選択される。
ラジカル重合性化合物(i)
本発明の歯科用組成物は、(i)ラジカル重合性化合物を含む。歯科用組成物は、1種以上のラジカル重合性化合物(i)を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「ラジカル重合性化合物」という用語は、モノマー、オリゴマー及びポリマーを包含する。
ラジカル重合性化合物(i)は、そのラジカル重合性基に関して特に限定されない。ラジカル重合性化合物(i)は、1つ以上のラジカル重合性基を有することができる。少なくとも1つのラジカル重合性基は、例えば、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合であることができ、それは(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基、好ましくは、(メタ)アクリロイル基から選択することができる。
モノマーの形態のラジカル重合性化合物(i)についての適切な例は、(メタ)アクリレート、アクリル酸のアミド又はメタクリル酸のアミド、ウレタン・アクリレート又はウレタン・メタクリレート、及びポリオールアクリレート又はポリオールメタクリレートからなる群より選択することができる。
(メタ)アクリレートは、好ましくは、下記式(A)、(B)及び(C):
Figure 0007162669000002

で示される化合物から選択することができる。
ここで式中、
20、R 20、R** 20、R*** 20は、独立して、水素原子、-COOM、直鎖C1-18又は分岐鎖C3-18アルキル基(C3-6シクロアルキル基、C6-14アリールもしくはC3-14ヘテロアリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOにより置換されている場合がある)、C~C18シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリールもしくはC3-14ヘテロアリール基、C~C18アリールもしくはC~C18ヘテロアリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOにより置換されている場合がある)を表わし、
21は、水素原子、直鎖C1-18もしくは分岐鎖C3-18アルキル基又はC2-18アルケニル基(該基は、C3-6シクロアルキル基、C6-14アリールもしくはC3-14ヘテロアリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOにより置換されている場合がある)、C~C18シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリールもしくはC3-14ヘテロアリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOにより置換されている場合がある)又はC~C18アリールもしくはC~C18ヘテロアリール基を表わし、
22は、1~45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表わし、ここで、二価の有機残基は、1~7個のC~C12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)又は1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ、並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子を含有することができ、ここで、二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6-14アリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOからなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されている場合があり、好ましくは、R22は、1つ以上の-OH基により置換されている場合があるC~C18アルキレン基又はC~C18アルケニレン基であり、ここで、アルキレン基又はアルケニレン基は、1~4個のC6-10アリーレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)、及び1~8個の酸素原子のうちの少なくとも1つを含有することができ、
23は、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換C~C18炭化水素基、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換の環状C~C18炭化水素基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C~C18アリールもしくはヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C~C18アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C~C30アラルキル基又は二価もしくは多価の置換もしくは非置換C~C45モノ-、ジ-もしくはポリエーテル残基(1~14個の酸素原子を有する)を表わし、
mは整数であり、好ましくは1~10の範囲の整数であり、
ここで、R20、R 20、R** 20、R*** 20、R21及びR22のいずれか1つのMは、それぞれ独立して、水素原子又は金属原子を表わし、
20、R 20、R** 20、R*** 20、R21及びR22のいずれか1つのMは、それぞれ独立して、金属原子を表わす。
20、R 20、R** 20及びR*** 20について、直鎖C1-18又は分岐鎖C3-18アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル又はヘキシルであることができる。R21及びR 21について、C1-18アルキル基又はC2-18アルケニル基は、例えば、エチル((又はエテニル)、n-プロピル(又はn-プロペニル)、i-プロピル(又はi-プロペニル)イル、n-ブチル(又はn-ブテニル)、イソブチル(又はイソブテニル)、tert-ブチル(又はtert-ブテニル)、sec-ブチル(又はsec-ブテニル)、ペンチル(又はペンテニル)又はヘキシル(又はヘキセニル)であることができる。
20、R 20、R** 20、R*** 20及びR21について、アリール基は、例えば、フェニル基又はナフチル基であることができ、C3-14ヘテロアリール基は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含有することができる。
22について、「二価の有機残基が、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、二価の有機残基に含有される場合がある基が、共有結合により二価の有機残基に組み込まれることを意味する。例えば、BisGMAでは、フェニルの形態にある2つのアリール基及び酸素の形態にある2つのヘテロ原子が、R22の二価の有機残基に組み込まれている。あるいは、更なる例として、UDMAでは、2つのウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)が、R22の二価の有機残基に組み込まれている。
式(B)において、破線の結合は、R20及びR*** 20がCOに対して(Z)又は(E)配置にある場合があることを示す。
好ましくは、式(A)、(B)及び(C)において、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子、直鎖C1-14又は分枝鎖C3-16アルキル基(C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C3-6シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、式(B)において、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子、直鎖C1-8又は分枝鎖C3-8アルキル基(C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C4-6シクロアルキル基(C1-6アルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)又はC6-10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子、直鎖C1-4又は分枝鎖CもしくはCアルキル基(シクロヘキシル基又はフェニル基により置換されている場合がある)又はシクロヘキシル基(C1-4アルキル基により置換されている場合がある)を表わす。最も好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子又は直鎖C1-4又は分枝鎖CもしくはCアルキル基を表わす。
好ましくは、式(A)において、R21は、水素原子、直鎖C1-16もしくは分岐鎖C3-16アルキル基又はC2-16アルケニル基(C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C3-6シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、R21は、水素原子、直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10アルキル基又はC2-10アルケニル基(C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C4-6シクロアルキル基(C1-6アルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)又はC6-10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R21は、水素原子、直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10アルキル基又は直鎖C2-10もしくは分岐鎖C3-10アルケニル基(シクロヘキシル基又はフェニル基により置換されている場合がある)又はシクロヘキシル基(C1-4アルキル基により置換されている場合がある)を表わす。さらにより好ましくは、R21は、非置換C1-10アルキル基又はC2-10アルケニル基、さらにより好ましくは、非置換C2-6アルキル基又はC3-6アルケニル基、最も好ましくは、エチル基又はアリル基を表わす。
式(A)、(B)及び(C)で示される(メタ)アクリレート化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(「ビス-GMA」、CAS-No.1565-94-2)、4,4,6,16(又は4,6,6,16-テトラメチル-10,15-ジオキソ-11,14-ジオキサ-2,9-ジアザヘプタデカ-16-エン酸、2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル(CAS no.72869-86-4)_(UDMA)、グリセロールモノ-及びジアクリレート、例えば、1,3-グリセロールジメタクリレート(GDM)、グリセロールモノ-及びジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(ここで、エチレンオキシド繰り返し単位数は、2~30で変動する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ここで、エチレンオキシド繰り返し単位数は、2~30で変動する)、特に、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラアクリレート並びにペンタエリスリトール及びジペンタエリトリトールのメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサンチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサエチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-2-メタクリルオキシエチルジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス--2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシ-フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリレート]プロパン及び2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリレート]プロパンからなる群より選択することができる。
最も好ましくは、式(B)で示される化合物は、
Figure 0007162669000003

からなる群より選択される。
特に好ましいモノ-又はビス-又は(メタ)アクリルアミド及びポリ[(メタ)アクリルアミド]は、下記式(D)、(E)及び(F):
Figure 0007162669000004

を有する。
ここで式中、
24、R 24、R** 24、R*** 24は、式(A)、(B)及び(C)について上記定義されたR20、R 20、R** 20、R*** 20と同じ意味を有し、R25、R 25は、独立して、式(A)について上記定義されたR21と同じ意味を有する残基を表わし、R27及びm’は、式(C)について上記定義されたR23及びmと同じ意味を有する。
式(E)において、R26は、1~45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換有機残基を表わし、ここで、前記有機残基は、1~7個のC3-12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)、1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ、並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子を含有することができ、ここで、二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6-14アリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOからなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されている場合がある。好ましくは、R26は、C~C18アルキレン基又はC~C18アルケニレン基であり、ここで、アルキレン基又はアルケニレン基は、1~4個のC6-10アリーレン基及びC3-8シクロアルキレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ、並びに1~8個の酸素原子又は窒素原子を含有することができる。
26について、「二価の有機残基は、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、式(B)で示される化合物のR22について上記定義されたのと類似する意味を有する。
式(D)、(E)、(F)において、破線の結合は、R24及びR*** 24がCOに対して(Z)又は(E)配置にある場合があることを示す。
式(D)で示される化合物において、R25及びR25 は共同して環を形成することができ、ここではR25及びR25 がC-C結合により連結し、又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基及びアミド基からなる群より選択された官能基により連結している。
式(D)、(E)、(F)の好ましいメタクリルアミドは、下記式:
Figure 0007162669000005

を有する。
式(D)、(E)、(F)の好ましいアクリルアミドは、下記式:
Figure 0007162669000006

を有する。
ビス-(メタ)アクリルアミド:
構造式
Figure 0007162669000007

を有するN,N’-ジアリル-1,4-ビスアクリルアミド-(2E)-ブタ-2-エン(BAABE)及び
構造式
Figure 0007162669000008

を有するN,N’-ジエチル-1,3-ビスアクリルアミド-プロパン(BADEP)
が最も好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有するラジカル重合性化合物(i)は、少なくとも1つのラジカル重合性二重結合を有する重合性モノマーを含有するリン酸エステル基から選択することもできる。好ましくは、このような重合性モノマーを含有するリン酸エステル基は、下記式(G):
Figure 0007162669000009

を有し、
ここで式中、
部分Yは、それぞれ独立して、水素原子又は下記式(Y)、(Y**)又は(Y***):
Figure 0007162669000010

を表し、
式中、
は、COORα、COSRs、CON(Rα、CONRαs又はCONHRαであり、ここで、Rα及びRsは、独立して、水素原子、C3-8シクロアルキル基により場合により置換されていているC1-18アルキル基、場合により置換されているC3-8シクロアルキル基、場合により置換されているC4-18アリールもしくはヘテロアリール基、場合により置換されているC5-18アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール基、又は場合により置換されているC7-30アラルキル基を表わし、ここで、2つの α 残基は、それらが結合している隣接する窒素原子と共に、5~7員の複素環を形成することができ、該複素環は、更なる窒素原子又は酸素原子を含有することができ、ここで、場合により置換されている基は、1~5個のC1-5アルキル基により置換されていることができ、
及びRは、独立して、水素原子、場合により置換されているC1-18のアルキル基、場合により置換されているC3-18のシクロアルキル基、場合により置換されているC5-18アリール又はヘテロアリール基、場合により置換されているC5-18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、場合により置換されているC7-30アラルキル基を表わし、ここで、場合により置換されている基は、1~5個のC1-5アルキル基により置換されていることができ、
は、2~45個の炭素原子を含有する(a+b)価の有機残基(式中、式(D)におけるYが丸括弧内にある場合、bは1である)を表わし、場合により、ヘテロ原子、例えば、酸素、窒素及び硫黄原子を含有し、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子並びに芳香族炭素原子から選択されるa+b個の炭素原子を含み、a+b個の炭素原子はそれぞれ、ホスフェート、又は式(Y)、(Y**)及び(Y***)のいずれか1つで示される部分と連結し、aは、1~10、好ましくは、1~5の整数であり、bは、1~10、好ましくは1~5の整数であり、ただし、少なくとも1つのYは、水素原子ではない。このような化合物(ここで、Y=Y)の調製は、欧州特許出願公開第1548021号(A1)明細書から公知である。
さらに、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有するラジカル重合性化合物(i)は、下記式(H):
Figure 0007162669000011

で示される重合性酸性化合物を含有するホスホン酸基から選択することもできる。
ここで式中、
部分Yは、下記式(Y **)又は(Y ***):
Figure 0007162669000012

を表し、
ここで式中、
は、独立して、Zについて定義されたものと同じ意味を有し、
及びRは、独立して、R及びRについて定義されたものと同じ意味を有し、
は、2~45個の炭素原子を含有する(c+d)価の有機残基を表わし、場合により、ヘテロ原子、例えば、酸素、窒素及び硫黄を含有し、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子並びに芳香族炭素原子から選択されるc+d個の炭素原子を含み、c+d個の炭素原子はそれぞれ、ホスホネート、又は式(Y )、(Y **)及び(Y ***)のいずれか1つで示される部分と連結し、
c及びdは、独立して、1~10の整数を表わす。
式(G’)で示される化合物からは、下記式:
Figure 0007162669000013

が特に好ましい。
ここで式中、
は、上記のように定義され、Lは、場合により置換されているアルキレン基であり、より好ましくは、Zは、メチルであり、Lは、C~C16アルキレン基であり、さらにより好ましくは、Lは、C~C12アルキレン基である。
さらに、1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物(i)は、欧州特許出願公開第2705827号明細書及び欧州特許出願公開第2727576号明細書に開示されている加水分解安定多官能性重合性モノマーから選択することができる。
特に好ましいラジカル重合性化合物(i)は、式(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)で示される化合物、より好ましくは、式(D)、(E)、(F)で示される化合物、最も好ましくは、式(E)で示される化合物から選択される。
ポリマーの形態にあるラジカル重合性化合物(i)は、好ましくは、重合性多酸性ポリマーから選択される。
「重合性多酸性ポリマー」という用語と共に使用する場合、「重合性」という用語は、付加重合において共有結合により結合可能なポリマーを意味する。「重合性多酸性ポリマー」は、歯科用組成物を硬化させる際に、架橋剤、及び例えば、重合性(炭素-炭素)二重結合を有するモノマーと結合して、グラフトポリマー及び/又は架橋ポリマーを形成することができる。
「重合性多酸性ポリマー」という用語と共に使用する場合、「多酸性」という用語は、ポリマーが反応性ガラスとの接合反応に関与することができる複数の酸性基、好ましくは、カルボン酸基を有することを意味する。カルボン酸基は、好ましくは、骨格中に存在し、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はイタコン酸から得られる。追加の酸性度は、式(II)で示される基におけるカルボン酸基及び式(III)で示される任意の繰り返し単位におけるカルボン酸基により導入することができる。
特に好ましいラジカル重合性多酸性ポリマーは、下記式(I):
Figure 0007162669000014

で示される繰り返し単位を有する。
ここで式中、
は、下記式(II):
Figure 0007162669000015

で示される基を表わす。
式(II)及び(VI)において、ギザギザの結合は、Rがカルボニル基に対してcis又はtrans配置にある場合があることを示す。さらに、式(II)において、破線は、式(I)で示される繰り返し単位のアミド部分の窒素へのRの結合を示す。式(V)において、破線は、式(IV)で示される繰り返し単位のアミド部分の窒素へのRの結合を示す。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーは水溶性であり、接合反応において粒状ガラスと反応性である。ここで、ラジカル重合性多酸性ポリマーは、ポリマー骨格と、1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する加水分解安定ペンダント基Rとを有する。
驚くべきことに、歯科用組成物、例えば、樹脂変性歯科用接合組成物は、保存中又は患者の口内での硬化後に劣化を受けることが見出された。ここで、この劣化は、加水分解性部分を含有する従来の樹脂成分の加水分解劣化を含む。式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーを使用することにより、従来の歯科用組成物、例えば、従来技術から公知の樹脂変性歯科用接合組成物の欠点を克服することができることが認識された。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーの重合性ペンダント基Rは、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーと反応することができ、それにより、グラフトポリマーが形成される。グラフト化された側鎖は、接合反応に関与することができる更なるカルボン酸基を含有し、それにより、硬化した組成物の強度をさらに向上させることができる。
式(II)において、Arは、さらに置換されていることができる芳香族基である。芳香族基は、特に限定されず、任意の有機芳香族基、すなわち、π電子の数が4n+2(ここで、nは、ゼロ又は任意の正の整数である)に等しい環状部分であることができる。好ましくは、Arは、アレーン又はヘテロアレーンから得られる。アレーンは、単環式又は多環式芳香族炭化水素である。ヘテロアレーンは、芳香族系に特徴的な連続π電子系及びヒュッケル則に対応する多数の面外π電子(4n+2)を維持するように、1つ以上のメチン(-C=)及び/又はビニレン(-CH=CH-)基をそれぞれ3価又は2価のヘテロ原子で置き換えることにより、アレーンから形式的に得られる複素環化合物である。
o+nが2である場合、Arは、好ましくは、C6-14アレーントリイル又はC3-14ヘテロアレーントリイル基であり、1つ以上の置換基によりさらに置換されていることができる。o+nが3である場合、Arは、好ましくは、C6-14アレーンテトライル又はC3-14ヘテロアレーンテトライル基であり、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができる。o+nが4である場合、Arは、好ましくは、C6-14アレーンエペンタイル又はC3-14ヘテロアレーンペンタイル基であり、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができる。o+nが5である場合、Arは、好ましくは、C6-14アレーンヘキサイル又はC3-14ヘテロアレーンヘキサイル基であり、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができる。
更なる置換基は、直鎖又は分岐鎖C~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C~C10アルケニル基、-COOM、-POM、-O-PO及び-SOMからなる群より選択される。ここで、Mは、水素原子又は金属原子を表わす。より好ましくは、Arは、C6-10アレーントリイル又はC3-9ヘテロアレーントリイル基であり、これらは、直鎖又は分枝鎖C~Cアルキル基及び直鎖又は分枝鎖C~Cアルケニル基から選択される1つ以上の更なる置換基により置換されていることができる。さらにより好ましくは、Arは、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、トルエントリイル基、キシレントリイル基及びスチレントリイル基から選択され、ヘテロアリール基は、ピリジントリイル基である。なお、さらにより好ましくは、Arは、ベンゼントリイル基である。最も好ましくは、Arは、水酸基がメチレン基に結合するRに対してパラ位で式(II)に存在するベンゼントリイル基である。
式(II)において、R及びRは、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子、又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-6アルキル基を表わす。好ましくは、R及びRは、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表わす。より好ましくは、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、Rは、水素原子を表わす。最も好ましくは、R及びRは両方とも、水素原子を表わす。
式(II)において、nの値に応じて、1つ以上のRが存在することができる。2つ以上のRが存在する場合、Rは、同じか又は異なることができる。Rは、水素原子、カルボン酸基、COOR基、CONHR基又はCONR 基を表わす。R、R及びRは、C1-6アルキル基を表わす。好ましい実施態様によれば、Rは、水素原子を表わす。
式(II)において、Rは、アリール基を活性化する電子供与基を表わす。したがって、各Rは、Ar基の環原子に直接結合している。Rは、ハロゲン原子、又は-OH、-OR、-NRH、-NR、-SH及びSRから選択される基であることができる。ここで、R、R、R、R及びRは、C1-6アルキル基を表わす。好ましくは、Rは、ヒドロキシル基である。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることができる。oが、2である場合、Rは、両方ともOHであることはできない。
式(II)において、oは、1又は2の整数である。好ましくは、oは、1である。式(II)において、nは、1~4の整数である。好ましくは、nは、1又は2の整数である。式(II)において、o+nは、好ましくは、5以下、より好ましくは、4以下、特に、3である。
式(II)において、Arは、フェニル基であるのが好ましい。具体的には、Rは、好ましくは、下記式(II’):
Figure 0007162669000016

で示される基を表わす。
ここで式中、R、R及びnは、上記定義されたとおりである。
は、下記式(II’’)又は(II’’):
Figure 0007162669000017

で示される基であるのが特に好ましい。
さらに、式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーは、下記式(III):
Figure 0007162669000018

で示される酸性繰り返し単位をさらに含むのが好ましい。
式(III)において、Rは、水素原子、又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-6アルキル基を表わす。好ましくは、Rは、水素原子、又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-3アルキル基を表わし、より好ましくは、Rは、水素原子又はメチル基を表わす。最も好ましくは、Rは、水素原子を表わす。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーにおいて、式(III)で示される繰り返し単位と式(I)で示される繰り返し単位とのモル比([式(III)]/[式(I)])は、好ましくは、1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にある。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーは、好ましくは、10,000~250,000、より好ましくは、20,000~150,000、最も好ましくは、30,000~100,000の範囲にある分子量Mを有する。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーは、加水分解安定性であり、これは、50℃の温度で保存した場合、pH2.5で1か月以内に加水分解する基を含有しないことを意味する。
特に好ましい実施態様によれば、ラジカル重合性多酸性ポリマーは、下記式(I):
Figure 0007162669000019

で示される繰り返し単位を有し、
ここで式中、Rは、下記式(II’):
Figure 0007162669000020

で示される基を表わし、
ここで式中、
及びRは、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はC1-4アルキル基を表わし、好ましくは、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子であり、
nは、1~3の整数であり、好ましくは、nは、1又は2の整数である。

ここで、ラジカル重合性多酸性ポリマーは、下記式(III):
Figure 0007162669000021

で示される酸性繰り返し単位をさらに含む。
ここで式中、Rは、水素原子又はC1-4アルキル基を表わし、好ましくは、Rは、水素原子又はメチル基を表わす。
ここで、式(III)で示される繰り返し単位と式(I)で示される繰り返し単位とのモル比([式(III)]/[式(I)])は、100:1~5:1、好ましくは、50:1~10:1の範囲にあり、分子量Mは、20,000~150,000、好ましくは、30,000~100,000の範囲にある。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーを製造するための方法は、下記式(IV):
Figure 0007162669000022

[式中、Rは、下記式(V):
Figure 0007162669000023

(式中、
Arは、さらに置換されていることができる芳香族基であり、
は、ハロゲン原子、又は-OH、-OR、-NRH、-NR、-SH及びSRから選択される基であることができ、ここで、R、R、R、R及びRは、C1-6アルキル基を表わし、
oは、1又は2の整数であり、ただし、oが、2である場合、Rは両方とも、OHであることができないという条件である)
で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを、
下記式(VI)
Figure 0007162669000024

[式中、
Xは、離脱基であり、
R、R及びRは、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子、又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-6アルキル基を表わす]
で示される化合物と反応させることを含む。
式(VI)で示される化合物において、脱離基Xは、好ましくは、求電子芳香族置換によるC-C結合形成を受けやすい脱離基である。より好ましくは、脱離基Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヒドロキシル基からなる群より選択される。最も好ましくは、脱離基Xは、ヒドロキシル基である。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーと式(VI)で示される化合物とのポリマー類似反応についての反応条件は、特に限定されない。
好ましくは、この反応は、溶媒の存在下で行われる。より好ましくは、溶媒は、水である。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(VI)で示される化合物と反応させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、この反応は、20~90℃の温度で行われる。最も好ましくは、反応温度は、40~80℃の範囲にある。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(VI)で示される化合物と反応させるための反応時間は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、1~72時間、最も好ましくは、12~50時間の範囲にある。
式(VI)で示される化合物に対する式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、特に限定されない。好ましくは、式(VI)で示される化合物に対する式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、1:5~1:1000、より好ましくは、1:100~1:800、最も好ましくは、1:300~1:700である。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーと式(VI)で示される化合物との反応は、触媒、好ましくは、有機酸又は無機酸の形態にある触媒の存在下で行うことができる。より好ましくは、触媒は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、シュウ酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、塩酸又はシュウ酸である。触媒の量は、式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマー及び式(VI)で示される化合物のモル量に基づいて、0.01~100mol%、好ましくは、10~90mol%、より好ましくは、30~80mol%から選択することができる。
式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーの形態にある反応生成物のRにおける式(II)で示される基の数nは、式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(VI)で示される化合物と反応させるための反応条件を適切に選択することにより設定することができる。例えば、n=1とする場合には、触媒として、シュウ酸を適用することができ、反応温度は、好ましくは、60~80℃の範囲内にある。n=2とするには、触媒として、塩酸を適用することができ、反応温度は、好ましくは、35~55℃の範囲内にある。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(VI)で示される化合物と反応させることにより得られる反応生成物は、定法に従って精製することができる。好ましくは、式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーの形態にある反応生成物を反応混合物から分離し、水に対する透析により精製し、より好ましくは、透析を2000g/molまでの分子量を有する分子のサイズ排除により行う。透析による精製又は周知のポリマー化学的精製法、例えば、沈殿、液-液抽出により、式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーは、高い収率及び純度の両方で得られる。
特に好ましい実施態様によれば、式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーを調製するための方法は、下記式(IV):
Figure 0007162669000025

[式中、Rは、下記式(V):
Figure 0007162669000026

で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを、
下記式(VIa)
Figure 0007162669000027

[式中、Xは、ヒドロキシル基であり、Rは、水素原子又はメチル基、好ましくは、水素原子であり、Rは、水素原子である]
で示される化合物と、溶剤としての水中において、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、シュウ酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される触媒(好ましくは、触媒は、塩酸又はシュウ酸である)の存在下で反応させる工程を含む。ここで、触媒の量は、式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマー及び式(VIa)で示される化合物のモル量に基づいて、10~90mol%、好ましくは、30~80mol%であり、ここで、反応温度は、40~80℃の範囲にあり、式(VIa)で示される化合物に対する式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、1:100~1:800、好ましくは、1:300~1:700である。
式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーの形態にある出発物質は、下記式(VII):
Figure 0007162669000028

[式中、Arは、式(II)について上記定義された芳香族基である]
で表わされるモノマーを重合させることにより提供することができる。代替的には、芳香族基の置換パターンは、所望のコポリマーに適合させることができる。
好ましくは、式(IV)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーの形態にある出発物質は、式(IV)及び(III)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーである。該コポリマーは、下記式(VII):
Figure 0007162669000029

[式中、Arは、上記定義された芳香族基である]
で表わされるモノマーを、
下記式(VIII)
Figure 0007162669000030

[式中、Rは、式(III)について上記されたように定義される]
で表わされるモノマーと共重合させることにより得ることができる。
式(VII)で表わされるモノマーに場合により含まれる、及び/又は式(VIII)で表わされるモノマーに場合により含まれる、カルボン酸基は、場合により保護されていることができる。
場合により保護されているカルボン酸基の保護基は、有機化学(参照.P.G.M. Wuts and T.W. Greene, Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Edition, John Wiley and Sons Inc., 2007)の当業者に公知のカルボキシル保護基である限り、特に限定されない。好ましくは、カルボキシル保護基は、トリアルキルシリル基、アルキル基及びアリールアルキル基から選択される。より好ましくは、カルボキシル保護基は、アルキル基又はアリールアルキル基から選択される。最も好ましくは、カルボキシル保護基は、tert-ブチル基及びベンジル基から選択される。好ましい一実施態様では、カルボキシル保護基は、tert-ブチル基である。
場合により保護されているカルボン酸基は、式(VII)で表わされるモノマーの重合又は共重合の前に、これらと同時に又はこれらに続けて脱保護することができる。
場合により保護されているカルボン酸基の脱保護のための条件は、使用される保護基に応じて選択される。好ましくは、保護されているカルボン酸基は、水素化分解又は酸もしくは塩基による処理により脱保護される。
場合により保護されているカルボン酸基の脱保護が、式(VII)で表わされるモノマーの重合又は共重合と同時に行われる場合、脱保護条件及び重合又は共重合のための条件は、両反応が効率的に進行することができるように選択されなければならないことが、当業者により理解されるであろう。
式(VII)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応条件は、特に限定されない。したがって、溶媒の存在下又は非存在下で反応を行うことができる。好ましくは、この反応を溶媒の存在下で行う。適切な溶媒は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンの群から選択することができる。好ましくは、溶媒は、ジオキサンである。
式(VII)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、この反応を-10℃~溶媒の沸点の温度で行う。より好ましくは、反応温度は、0~110℃、さらにより好ましくは、40~100℃、最も好ましくは、60~90℃の範囲にある。
式(VII)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させる反応時間は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、10分~48時間、より好ましくは、1時間~36時間、さらに好ましくは、2~24時間、最も好ましくは、3~12時間の範囲にある。
式(VII)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応を、好ましくは、重合開始剤の存在下で行う。好ましくは、重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド及び4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択される。最も好ましくは、重合開始剤は、AIBNである。重合開始剤の量は、特に限定されない。適切には、該量は、モノマーの総量に基づいて、0.001~5mol%の範囲にある。
式(VII)で表わされるモノマーと式(VIII)で表わされるモノマーとを共重合させるための反応を、好ましくは、式VIIで表わされるモノマー及び式VIIIで表わされるモノマーを1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にあるモル比([式(VII)]/[式(VIII)])で提供することにより行う。
式(IV)及び(III)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーにおいて、式(III)で示される繰り返し単位及び式(IV)で示される繰り返し単位のモル比([式(III)]/[式(IV)])は、好ましくは、1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にある。
式(VII)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させることにより得られる反応生成物を沈殿及びろ過又は凍結乾燥、好ましくは、沈殿及びろ過により単離することができる。この反応生成物を定法に従って精製することができる。驚くべきことに、この反応生成物は、この反応生成物を単に溶解及び沈殿させる、好ましくは、2回、溶解及び沈殿させることにより、高い収率及び純度の両方で得ることができることが見出された。したがって、この反応生成物の入念な精製を省くことができる。例えば、粗製の反応生成物を適切な有機溶媒、例えば、ジオキサン中に溶解させ、適切な有機溶媒、例えば、アセトニトリルを加えることにより沈殿させることができる。
式(IV)及び(III)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーは、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー又はそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、アクリル酸誘導体コポリマーは、統計コポリマーである。
好ましくは、式(IV)及び(III)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体共重合体において、Rは、下記式(V’):
Figure 0007162669000031

[式中、Rは、水素原子を表わす]
で示される基を表わす。
式(VII)で表わされるモノマーは、下記式(IX)
Figure 0007162669000032

[式中、Zは、脱離基である]
で示される化合物を、
式(X)
Figure 0007162669000033

[式中、Arは、式(II)について上記定義された芳香族基である]
で示される化合物と反応させることにより調製することができる。
好ましくは、式(IX)で示される化合物の脱離基Zは、求電子芳香族置換によるC-C結合形成を受けやすい脱離基である。より好ましくは、脱離基Zは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヒドロキシル基からなる群より選択される。最も好ましくは、脱離基Zは、ヒドロキシル基である。
式(IX)で示される化合物を式(X)で示される化合物と反応させるための反応条件は、特に限定されない。
該反応を溶媒の非存在下又は存在下で、好ましくは、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、好ましくは、アセトン、THF、酢酸エチル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンからなる群より選択される。最も好ましくは、溶媒は、アセトンである。
式(IX)で示される化合物を式(X)で示される化合物と反応させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、該反応を-10~70℃の温度で行う。より好ましくは、反応温度は、10~60℃、最も好ましくは、30~50℃の範囲にある。
式(IX)で示される化合物と式(X)で示される化合物との反応を触媒の存在下で、好ましくは、有機酸又は無機酸の形態にある触媒の存在下で行うことができる。より好ましくは、触媒は、無機ルイス酸、すなわち、無機電子受容体である。さらに好ましくは、触媒は、AlCl、BF、FeCl、FeCl、FeBr、FeBr、FeSO、Fe(SO、ZnCl、ZnBr、ZnSOからなる群より選択される。さらにより好ましくは、触媒は、AlCl、BF及びFeClからなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、AlClである。触媒の量は、式(IX)で示される化合物のモル量に基づいて、0.01~150mol%、好ましくは、30~130mol%、より好ましくは、60~120mol%、最も好ましくは、90~110mol%から選択することができる。
さらに、式(IX)で示される化合物を式(X)で示される化合物と反応させる場合、式(IX)で示される化合物の重合及び/又は自動酸化を抑制する酸化防止剤を加えることができる。好ましくは、酸化防止剤は、3,5-ジ-tert-4-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、4-tert-ブチルカテコール、フェノチオアジン、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)及びヒドロキシトルエンからなる群より選択される。最も好ましくは、酸化防止剤は、フェノチオアジンである。酸化防止剤の量は、式(IX)で示される化合物の総重量に基づいて、0.001~2%、好ましくは、0.02~0.5%から選択することができる。
式(IX)で示される化合物と式(X)で示される化合物との反応は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、10分~48時間、より好ましくは、1時間~36時間、最も好ましくは、2~24時間の範囲にある。
式(IX)で示される化合物を式(X)で示される化合物と反応させることにより得られる生成物を有機溶媒、好ましくは、クロロホルム又はジクロロメタンで抽出することにより、粗製の反応混合物から単離することができる。この生成物を定法に従って、好ましくは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
酸化還元開始剤系(ii)
本発明の歯科用組成物は、酸化還元開始剤系(ii)を含む。
酸化還元開始剤系(ii)は、
(a)以下の(a1)及び(a2)を含む1種以上の包接化合物
(a1)ホスト分子
(a2)還元剤である1種以上のゲスト分子、並びに
(b)酸化剤
を含む。
酸化還元開始剤系(ii)において、ホスト分子は、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択され、1種以上のゲスト分子は、還元剤である。
ホスト分子(a1)について、シクロデキストリンは、好ましくは、天然の非還元オリゴ糖である。該オリゴ糖において、グルコースは、α-1,4結合を介して環状形態に連結している。このような天然シクロデストリンは、好ましくは、5~8個のグルコース部分を含有する。
1種以上のゲスト分子(a2)は、還元剤から選択される。還元剤(a2)は、特に限定されず、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドと酸化還元反応で反応可能な任意の有機又は無機還元剤であることができる。好ましくは、還元剤は、室温(例えば、25℃)で液体である。
有利には、包接化合物(a)を形成することにより、液体還元剤を固体に変換することができる。これにより、固体成分のみを含む歯科用組成物の一部又は包装に液体還元剤を加えることが可能となる。
包接体合成により、ホスト分子とゲスト分子との間に規定された化学量論を有する構造の形成がもたらされる。
好ましくは、還元剤は、芳香族第三級アミン、芳香族第三級ホスフィン又はボランである。好ましくは、還元剤は、室温(例えば、25℃)で液体である。好ましくは、包接化合物は、室温(例えば、25℃)で固体であり、ここで、包接体は、2剤系歯科用組成物の粉末成分に包含される。
より好ましくは、還元剤は、芳香族第三級アミンであり、最も好ましくは、還元剤は、下記式(XI):
Figure 0007162669000034

で示される芳香族第三級アミンである。
ここで式中、
及びR10は、同じか又は異なることができ、独立して、直鎖、分岐鎖もしくは環状C1-8アルキルを表わすか、又はR及びR10は、それらが結合している窒素原子と共に、3~8員の飽和複素環を形成しており、
11は、有機基、例えば、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を含むことができるC1-10ヒドロカルビル基等を表わし、好ましくは、R11は、直鎖、分枝鎖もしくは環状C1-8アルキル、C1-8チオアルキル又はC1-8アルキルオキシ基、C1-8アリール基、COOC1-8、CN、OC1-8、ハロゲン、アミド又は芳香脂肪族基である。
特に好ましい芳香族第三級アミンは、4-N,N-ジメチルアミノベンゾニトリル、メチルN,N-ジメチルアミノベンゾエート、エチルN,N-ジメチルアミノベンゾエート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート及びイソアミル4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエタノールトルイジン、ジメチルアミノアニソール、1又は2-ジメチルアミノナフタレン、4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンからなる群より選択される。特に、芳香族第三級アミンは、メチル4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート、エチル4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート、4-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、イソアミル4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート及び4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンからなる群より選択される。最も好ましくは、芳香族第三級アミンは、4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンである。
好ましくは、芳香族第三級アミンは、室温(例えば、25℃)で液体である。好ましくは、包接化合物は、室温(例えば、25℃)で固体である。ここで、該包接体は、2剤系歯科用組成物の粉末成分に包含される。したがって、歯科用組成物の酸化還元開始剤系において、還元剤の活性を何ら失うことなく、粉末組成物に液体還元剤を含ませることが可能である。
好ましい芳香族第三級ホスフィン化合物は、下記式(XII):
-R
(XII)
を有する。
ここで式中、
は、下記式(XIII)
(Ar)P-
(XIII)
[式中、
は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表わし、
Arは、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基を表わす]
で示される基であり、
は、アリール基であり、該アリール基は、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、C1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ以上の基により置換されていることができ、
ここで、基R及びArは、ヒドロキシル基、オキソ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、水素原子及びC1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ以上の基により置換されていることができ、
は、ヒドロキシル基、オキソ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、水素原子及びC1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ以上の基により置換されていることができる。
式(XII)において、Rについて、一価のヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基又はアリール基であることができる。
Arは、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基を表わす。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基及びスチリル基から選択することができる。ヘテロアリール基は、ピリジル基であることができる。
は、置換又は非置換で二価のヒドロカルビル基である。同基は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される結合を含有することができる。Lについて、二価のヒドロカルビル基は、アルキルジイル基、シクロアルキルジイル基、シクロアルキルアルキル-ジイル基、アリールアルキル-ジイル基又はアリールジイル基であることができる。シクロアルキルアルキル-ジイルにおいて、一方の原子価は、シクロアルキル部分又はアルキル部分それぞれに結合していることができ、又は両方の原子価は、シクロアルキル部分又はアルキル部分のいずれかに結合していることができる。アリールアルキル-ジイル基において、アリール部分もしくはアルキル部分はそれぞれ、一価であることができ、又はアリール部分もしくはアルキル部分のいずれかが二価であり、一方、他方の部分は非価である。シクロアルキルアルキル-ジイルにおいて、シクロアルキル部分もしくはアルキル部分はそれぞれ、一価であることができ、又はシクロアルキル部分もしくはアルキル部分のいずれかが二価であり、一方、他方の部分は非価である。
下記定義は、一価及び二価のヒドロカルビル基の両方に適用され、したがって、二価のヒドロカルビル基の定義には、接尾辞「ジイル」及び「-ジイル」が、括弧で囲まれる。
アルキル(ジイル)基は、直鎖又は分枝鎖C1-20アルキル(ジイル)基、典型的には、C1-8アルキル(ジイル)基であることができる。C1-6アルキル(ジイル)基の例は、1~6個の炭素原子、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル(ジイル)基、例えば、メチル(ジイル)、エチル(ジイル)、n-プロピル(ジイル)、イソプロピル(ジイル)、n-ブチル(ジイル)、イソブチル(ジイル)、sec-ブチル(ジイル)、tert-ブチル(ジイル)、n-ペンチル(ジイル)、イソペンチル(ジイル)及びn-ヘキシル(ジイル)を含むことができる。
シクロアルキル(ジイル)基は、C3-20シクロアルキル(ジイル)基であることができる。シクロアルキル(ジイル)基の例は、3~14個の炭素原子を有するもの、例えば、シクロプロピル(ジイル)、シクロブチル(ジイル)、シクロペンチル(ジイル)及びシクロヘキシル(ジイル)を含むことができる。シクロアルキルアルキル(ジイル)基は、4~20個の炭素原子を有するものを含むことができる。
シクロアルキルアルキル(-ジイル)基は、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル(ジイル)基と、3~14個の炭素原子を有するシクロアルキル(ジイル)基との組み合わせを含むことができる。シクロアルキルアルキル(-ジイル)基の例は、例えば、メチルシクロプロピル(-ジイル)、メチルシクロブチル(-ジイル)、メチルシクロペンチル(-ジイル)、メチルシクロヘキシル(-ジイル)、エチルシクロプロピル(-ジイル)、エチルシクロブチル(-ジイル)、エチルシクロペンチル(-ジイル)、エチルシクロヘキシル(-ジイル)、プロピルシクロプロピル(-ジイル)、プロピルシクロブチル(-ジイル)、プロピルシクロペンチル(-ジイル)、プロピルシクロヘキシル(-ジイル)を含むことができる。
アリールアルキル(-ジイル)基は、C7-20アリールアルキル(-ジイル)基、典型的には、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル(ジイル)基と6~10個の炭素原子を有するアリール(-ジイル)基との組み合わせであることができる。アリールアルキル(-ジイル)基の具体例は、ベンジル(-ジイル)基又はフェニルエチル(-ジイル)基である。
アリール(ジイル)基は、6~10個の炭素原子を有するアリール(ジイル)基を含むことができる。アリール(ジイル)基の例は、フェニル(ジイル)及びナフチル(ジイル)である。アリール(ジイル)基は、1~3個の置換基を含有することができる。このような置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基を含むことができる。ここで、ハロゲン原子の実例は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素であることができる。C1-4アルキル(ジイル)基は、例えば、メチル(ジイル)、エチル(ジイル)、n-プロピル(ジイル)、イソプロピル(ジイル)及びn-ブチル(ジイル)である。C1-4アルコキシ(ジイル)基の実例は、例えば、メトキシ(ジイル)、エトキシ(ジイル)及びプロポキシ(ジイル)である。これらの置換基におけるアルキル(ジイル)部分は、直鎖、分岐鎖又は環状であることができる。
好ましくは、ヒドロカルビル基は、フェニル(ジイル)基及びナフチル(ジイル)基から選択されるアリール(ジイル)基であり、これらの基は、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される1~3個の基により場合により置換されていることができ、又はここで、ヒドロカルビル基は、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基又は直鎖もしくは分岐鎖アルキニル基から選択される非芳香族ヒドロカルビル基である。
1-8アルキル(ジイル)基及びC3-14シクロアルキル(ジイル)基は、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、フェニル基及びヒドロキシ基から選択される1つ以上の基により、場合により置換されていることができる。C1-4アルキル基についての例は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルを含むことができる。C1-4アルコキシ基についての例は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ及びtert-ブトキシを含むことができる。
さらに、式(XII)において、ヒドロカルビル基のいずれかは、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はヒドロキシ基から選択される1つ以上の基により置換されていることができる。したがって、ヒドロカルビル基において、一部又は全ての水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ)により置き換えられ、例えば、ハロ置換アルキル基、例えば、クロロメチル、クロロプロピル、ブロモエチル及びトリフルオロプロピル並びにシアノエチルが挙げられる。
ヒドロカルビル基が、アルキル(ジイル)鎖を含有する場合、アルキル(ジイル)鎖における1つ以上の炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、アミド基、エステル基又はウレタン基により置き換えられていることができる。ヒドロカルビル基が、2つ以上の炭素原子を有するアルキル基である場合、アルキル基は、アルキレンを含有する。したがって、ヒドロカルビル基が、n-ヘキシル基である場合、末端メチル基を除くアルキレン鎖の炭素原子のいずれかが、酸素原子、硫黄原子、アミド基、エステル基、ウレタン基又はNH基により置き換えられていることができる。したがって、1つ以上の酸素原子の場合の具体例として、下記基:
Figure 0007162669000035

を挙げることができる。
式(XII)において、基R及び/又はAr並びにR及び/又は は、重合性二重結合、好ましくは、炭素-炭素二重結合により置換されていることができる。重合性炭素-炭素二重結合の例は、ビニル、共役ビニル、アリル、アクリル、メタクリル及びスチリルを含む。好ましくは、重合性二重結合は、メタクリル、アクリル及びスチリルからなる群より選択される。より好ましくは、二重結合は、スチリルである。
好ましくは、R及びArは、独立して、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基及びスチリル基から選択される芳香族ヒドロカルビル基である。
に関して、この部分は、アリール基である。該アリール基は、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、C1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ以上の基により置換されていることができる。好ましい実施態様によれば、Rは、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、C1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ以上の基により置換されているアリール基である。より好ましくは、Rは、ヒドロキシル基、アミノ基、-NR基(ここで、R及びRは、同じか又は異なることができ、C1-6アルキル基から選択される)、カルボキシル基及び重合性二重結合を有する基から選択される1つ又は2つの基により置換されているフェニル基である。
さらにより好ましくは、芳香族ホスフィン化合物は、式(XII)で示される化合物である。ここで、Zは、下記式:
Figure 0007162669000036

で示される基である。
式(XIX)で示される化合物についての具体例は、トリフェニルホスフィン(TPP)、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン(DPPS)、4-(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、4-(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、3-(ジフェニルホスフィノ)プロピオン酸、4-(ジフェニルホスフィノ)N,N’-ジメチルアニリン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゾフェノン(BDPPEP)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(BDPPE)、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィンを含む。好ましくは、式(XIX)で示される化合物は、トリフェニルホスフィン(TPP)又は4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン(DPPS)、より好ましくは、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン(DPPS)である。
上記列記された式(XII)で示される芳香族第三級化合物のうち、4-(ジフェニルホスフィノ)スチレン(DPPS)が特に好ましい。この化合物により、トリフェニルホスフィン(TPP)で得られた既に有利な結果と比較して、特に改善された光漂白結果が提供されるためである。
式(XII)で示される化合物は、公知の化合物であることができる。該化合物は、市販されているか、又は例えば、国際公開第2016/156363号(A1)に記載されているように、公開された手順に従って調製することができる。
好ましいボラン化合物は、下記式(XIV):
121314
(XIV)
を有する。
ここで式中、R12、R13及びR14は、同じか又は異なることができ、独立して、C1-8アルキル基又はC4-10アリールもしくはヘテロアリール基を表わす。
酸化剤は、好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドである。
好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキシル)カーボネート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチル-ヘキサノエート及びペルオキシ二硫酸カリウムから選択される。より好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート及びペルオキシ二硫酸カリウムから選択される。最も好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、ペルオキシ二硫酸カリウムである。
場合により、酸化還元開始剤系(ii)は、1種以上の無機触媒及び/又は有機重合促進剤を含む。
好ましくは、触媒は、金属塩、より好ましくは、遷移金属塩である。さらにより好ましくは、触媒は、V、Fe、Cu、Ti、Mn、Ni及びZnの遷移金属塩である。最も好ましくは、触媒は、Fe又はCuの遷移金属塩である。四価及び/又は五価のバナジウム化合物が好ましく、酸化バナジウム(IV)、バナジル(IV)アセチルアセトネート、バナジル(IV)オキサレート、バナジル(IV)サルフェート、オキソビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)バナジウム(IV)、ビス(マルトラト)オキソバナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、メタバナジウム酸ナトリウム(V)及びメタバナジウム酸アンモニウム(V)を含む。銅化合物の例は、銅アセチルアセトネート、酢酸銅(II)、オレイン酸銅、塩化銅(II)及び臭化銅(II)を含む。
好ましくは、重合促進剤は、スルフィン酸、スルフィネート、サルファイト、亜硫酸水素塩、アルデヒド、チオ尿素化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、ハロゲン化合物及びチオール化合物から選択される。
重合促進剤として使用することができるスルフィン酸及びスルフィネートの例は、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム及び2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムを含む。これらの中でも、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム及び2,4,6-トリソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
重合促進剤として使用することができるサルファイトや亜硫酸水素塩の例は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素カリウムを含む。
重合促進剤として使用することができるアルデヒドの例は、テレフタルアルデヒド、及びベンズアルデヒド誘導体、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-メチルオキシベンズアルデヒド、p-エチルオキシベンズアルデヒド及びp-n-オクチルオキシベンズアルデヒドを含む。
重合促進剤として使用することができるチオ尿素化合物の例は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジ-n-プロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ-n-プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ-n-プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素、3,3-ジメチルエチレンチオ尿素及び4,4-ジメチル-2-イミダゾリンチオンを含む。
重合促進剤の含有量は、本発明の歯科用重合性組成物全体に対して、好ましくは、0.01~5wt%、より好ましくは、0.05~3wt%である。
1種以上の包接化合物(a)について、ゲスト分子(a2):ホスト分子(a1)のモル比は、1:0.5~1:3の範囲にあるのが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、2剤系又は多剤系歯科用組成物であることができる。
本明細書で使用する場合、「2剤系」又は「多剤系」という用語は、歯科用配合物の成分が2つ以上の別個の包装に含まれることを意味する。例えば、成分の第1の部分は、第1の包装に含まれ、一方、成分の第2の部分は、第2の包装に含まれ、成分の第3の部分は、第3の包装に含まれ、成分の第4の部分は、第4の包装に含まれ、以下同様である。
好ましくは、歯科用組成物は、2剤系歯科用組成物である。
2剤系歯科用組成物について、第1の部分は、少なくとも酸化還元開始剤系(ii)と、場合により、更なる固体成分、例えば、歯科用充填剤、例えば、粒状ガラス充填剤とを含むのが好ましい。第2の部分は、好ましくは、少なくともラジカル重合性化合物(i)と、場合により、水及び有機溶媒とを含む。
歯科用組成物が2剤系又は多剤系の形態にあるかどうかにかかわらず、1種以上の包接化合物(a)及び還元剤(b)を含む酸化還元開始剤系(ii)は、1つの包装中の混合物として保存されるのが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、23℃で少なくとも2分で4分未満の作業時間を有するのが好ましい。
さらに、本発明の歯科用組成物は、37℃で2~6分の凝結時間を有するのが好ましい。
本発明者らは、驚くべきことに、還元剤が包接化合物(a)の形態で安定化されている酸化還元開始剤系を有する歯科用組成物を提供することにより、優れた保存安定性が提供されるだけでなく、優れた作業時間及び凝結時間も提供されることを見出した。これにより、有機ペルオキシド及び有機ヒドロペルオキシドに基づく従来の歯科用組成物と比較して、本発明の歯科用組成物の顕著に容易な適用が可能となる。
酸化還元開始剤系(ii)は、歯科用組成物の唯一の開始剤系であることができる。
代替的には、歯科用組成物は、酸化還元開始剤系(ii)及び光開始剤系を含有する二重硬化開始剤系を含むことができる。光開始剤系は、1種以上の光開始剤を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「光開始剤」という用語は、活性化された場合、例えば、光への曝露又は光化学プロセスにおける共開始剤との相互作用により活性化された場合、フリーラジカルを形成する任意の化合物を意味する。
「化学線」は、光化学作用を生じさせることができ、少なくとも150nmかつ1250nm以下、典型的には、少なくとも300nmかつ750nm以下の波長を有することができる任意の電磁放射である。
「光硬化」という用語は、官能性重合性化合物、例えば、モノマー、オリゴマー又はさらにポリマーの、架橋ポリマーネットワークへの光開始剤による重合を意味する。
例えば、適切な光開始剤系は、二成分系又は三成分系の形態にあることができる。二成分系は、光開始剤及び電子供与体化合物を含むことができ、三成分系は、例えば、米国特許第5,545,676号明細書に記載されているように、光開始剤、電子供与体化合物及びヨードニウム、スルホニウム又はホスホニウム塩の形態にある共開始剤を含むことができる。
例えば、適切な光開始剤は、約400nm~約520nm(好ましくは、約450nm~約500nm)の範囲内の光をいくらか吸収するモノケトン及びジケトンである。特に適切な化合物は、約400nm~約520nm(さらにより好ましくは、約450~約500nm)の範囲内のいくらかの光吸収を有するアルファジケトンを含む。例えば、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン及び他の1-アリール-2-アルキル-1,2-エタンジオン並びに環状アルファジケトンが挙げられる。適切な電子供与体化合物は、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエート又はジメチルアミノベンゾニトリルを含む。
光開始剤系に適した別の光開始剤は、典型的には、約380nm~約1200nmの作用波長範囲を有するホスフィンオキシドにより表わされる。約380nm~約450nmの作用波長範囲を有するホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤の例は、アシル及びビスアクリルホスフィンオキシド、例えば、米国特許第4,298,738号明細書、米国特許第4,324,744号明細書及び米国特許第4,385,109号及び欧州特許出願公開第0173567号明細書に記載されているものを含む。アシルホスフィンオキシドの具体例は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドを含む。約380nm超~約450nmの波長範囲で照射された場合にフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの混合物(重量比25:75)(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの混合物(重量比1:1)(DAROCUR 4265)及びエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR8893X)を含む。典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、触媒有効量、例えば、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~5.0重量%で組成物に存在する。
第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用することができる。適切な第三級アミン還元剤の例は、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸N-ブトキシエチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを含む。脂肪族第三級アミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート及びトリエタノールアミントリメタクリレートを含む。
アミン還元剤は、組成物の全重量に基づいて、0.1重量%~5.0重量%の量で組成物に存在することができる。
光開始剤系は、共開始剤をさらに含むことができる。
「共開始剤」という用語は、光化学プロセスにおいて、光開始剤等の別の分子に化学変化を生じさせる分子を指す。
好ましくは、共開始剤は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びテトラアリール又はテトラアルキルホスホニウム塩から選択される。
例えば、ジアリールヨードニウム塩は、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム(DPI)テトラフルオロボレート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)テトラフルオロボレート、フェニル-4-メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4-ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3-ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、DPIヘキサフルオロホスフェート、Me2-DPIヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアルセネート、ジ(4-フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル-2-チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5-ジメチルピラゾリル-4-フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアンチモネート、2,2’-DPIテトラフルオロボレート、ジ(2,4-ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2-ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びDPIヘキサフルオロホスフェートからなる群より選択することができる。
特に好ましいジアリールヨードニウム化合物は、ジフェニルヨードニウム(DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure(登録商標)250、BASF SEから入手可能な市販品)、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート及び4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムボレートを含む。
特に好ましい実施態様によれば、ヨードニウム化合物は、DPIヘキサフルオロホスフェート及び/又は4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
好ましいトリアリールスルホニウム塩は、下記式:
Figure 0007162669000037

で示されるS-(フェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェートである。
特に好ましいホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラキス-(ヒドロキシメチル)-ホスホニウム(THP)塩又はテトラキス-(ヒドロキシメチル)-ホスホニウムヒドロキシド(THPOH)塩である。ここで、テトラアルキルホスホニウム塩のアニオンは、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、リン酸アニオン、硫酸アニオン、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン及びヨウ化物アニオンからなる群より選択される。
更なる任意成分
本発明の歯科用組成物は、上記された成分に加えて、更なる任意成分を含むことができる。
例えば、本発明の歯科用組成物は、水を含むことができる。
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、5~20重量%の水を含むことができる。
本発明の歯科用組成物は、(iii)1種以上の歯科用充填剤を含むことができる。好ましくは、歯科用充填剤(iii)は、粒状ガラス充填剤、シラン化ガラスフレーク、造粒予備重合充填剤、粉砕予備重合充填剤及び充填剤凝集体から選択される。
「粒状ガラス充填剤」という用語は、熱溶融プロセスによりガラスに変換され、種々のプロセスにより粉砕された、主に金属酸化物の固体混合物を指す。ガラスは、粒子状形態である。さらに、粒状ガラス充填剤は表面改質、例えば、シラン化又は酸処理により、表面改質することができる。
歯科用充填剤について、ガラス成分は、「不活性ガラス」、「反応性ガラス」及び「フッ化物放出ガラス」から選択することができる。
「不活性ガラス」という用語は、接合反応において酸性基を含有するポリマーと反応し得ないガラスを指す。不活性ガラスは、例えば、the Journal of Dental Research June 1979, pages 1607-1619、又はより近年では、米国特許第4814362号明細書、米国特許第5318929号明細書、米国特許第5360770号明細書及び米国特許出願公開第2004/0079258号(A1)明細書に記載されている。具体的には、米国特許出願公開第2004/0079258号明細書から、強塩基性酸化物、例えば、CaO、BaO、SrO、MgO、ZnO、NaO、KO、LiO等が弱塩基性酸化物、例えば、スカンジウム又はランタニド系列の酸化物に置き換えられている不活性ガラスが公知である。
「反応性ガラス」という用語は、接合反応において酸性基を含有するポリマーと反応し得るガラスを指す。ガラスは、粒子状である。本発明の目的で、任意の従来の反応性歯科用ガラスを使用することができる。粒状反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノシリケートガラス、カルシウムアルミノフルオロシリケートガラス、カルシウムアルミノフルオロボロシリケートガラス、ストロンチウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロボロシリケートガラスから選択される。適切な反応ガラスは、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛及び/もしくは酸化マグネシウムの形態であることができ、並びに/又は例えば、米国特許第3,655,605号明細書、米国特許第3,814,717号明細書、米国特許第4,143,018号明細書、米国特許第4,209,434号明細書、米国特許第4,360,605号明細書及び米国特許第4,376,835号明細書に記載されているようなイオン浸出性ガラスの形態であることができる。
「フッ化物放出ガラス」という用語は、フッ化物を放出可能なガラスを指す。フッ化物放出能力は、ガラス形成用酸化物の混合物に、フッ化物含有無機粒子を加えることにより提供することができる。ただし、前記ガラスが、フッ化物放出性、好ましくは、持続的なフッ化物放出性を有することを条件とする。このような無機粒子は、フッ化ナトリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム及びカルシウム含有フルオロアルミノシリカートガラスからなる群より選択することができる。
好ましくは、粒状ガラス充填剤は、上記定義された反応性ガラス又はフッ化物放出ガラス、より好ましくは、反応性ガラスである。
最も好ましくは、粒状ガラス充填材は、
1)20~45重量% シリカ、
2)20~40重量% アルミナ、
3)20~40重量% 酸化ストロンチウム、
4)1~10重量% P及び
5)3~25重量% フッ化物
を含む反応性粒状ガラス充填材である。
本発明の歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは、20~90重量%、より好ましくは、30~80重量%の粒状ガラス充填剤を含む。
粒状ガラス充填剤は、通常、例えば、電子顕微鏡により、又はMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 3000装置により具体化されるような従来のレーザー回折粒子サイズ測定法を使用することにより測定した場合、0.005~100μm、好ましくは、0.01~40μm、より好ましくは、0.05~20μm、最も好ましくは、0.1~3μmの平均粒径を有する。
粒状ガラス充填剤は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)粒径分布を有することができる。ここで、多峰性粒状ガラス充填剤は、異なる平均粒径を有する2つ以上の粒状画分の混合物を表わす。
本明細書で使用する場合、「シラン化された」という用語は、歯科用充填剤が、その表面上にシランカップリング剤を有することを意味し、例えば、歯科用充填剤の表面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆う被覆の形態で、その表面上にシランカップリング剤を有することを意味する。
典型的には、シランカップリング剤は、式(Y)
(R10,R11,R12)Si(R
(Y)
で示されるオルガノシランが適用される。
ここで式中、
nは、1~3であり、置換基R10、R11、R12の数は、4-nであり、ここで、R10、R11、R12の少なくとも1つは、重合性基を表わし、Rは、2つ又は3つの基Rが存在する場合、同じか又は異なることができ、被覆されるべき充填材料の表面と反応可能な加水分解性基を表わす。
は、アルコキシ基、エステル基、ハロゲン原子及びアミノ基からなる群より選択することができる。ここで、アルコキシ基は、好ましくは、直鎖状C1-8又は分枝鎖もしくは環状C3-8アルコキシ基であり、エステル基は、好ましくは、直鎖C1-8又は分枝鎖もしくは環状C3-8アルキル基を有するカルボキシレートである。最も好ましくは、加水分解性基Rは、アルコキシ基を表わす。
基R10、R11及びR12は、同じか又は異なることができ、非反応性基及び/又は重合性基を表わす。ただし、R10、R11及びR12うちの少なくとも1つが、重合性基を表わすということを条件とする。R10、R11及びR12についての非反応性基は、アルキル基、好ましくは、直鎖C1-8又は分枝鎖もしくは環状C3-8アルキル基で表わすことができる。R10、R11及びR12についての重合性基は、好ましくは、(メタ)アクリル基、ビニル基又はオキシラン基からなる群より選択され、より好ましくは、(メタ)アクリル基又はビニル基であり、最も好ましくは(メタ)アクリル基であり、該(メタ)アクリル基は例えば、メタクリルオキシ又はメタクリルオキシアルキル(ここで、アルキルは、直線C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8アルキル基を意味する)の形態にあることができる。
特に好ましいオルガノシランは、例えば、3-メタクリルオキシトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)-ビニルシランもしくはトリス(アセトキシ)-ビニルシラン、又は欧州特許出願公開第0969789号(A1)明細書に開示されている特定の群のオルガノシランのいずれか1つ、すなわち、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルジメトキシ-モノクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリ-クロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメチル-シラン及び3-メタクリルオキシプロピルモノクロロジメチルシランである。
式(Y)で示されるオルガノシランの代わりに又はそれに加えて、いわゆる、ダイポーダルオルガノシランを適用することができる。ダイポーダルオルガノシランは、典型的には、式(Z)
((R10,R11,R12)Si-R13CH-R
(Z)
で示される化合物である。
ここで式中、R10、R11、R12及びRは、式(Y)で示されるオルガノシランについて上記定義されたものと同じ意味を有し、R13は、アルキレン基、好ましくは、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8アルキレン基を表わす。
本明細書で使用する場合、「フレーク」という用語は、ガラスがフレークの形態にある、すなわち、長径が厚みより少なくとも2倍長いことを意味する。平均厚みに対する平均長径の比は、本明細書において「平均アスペクト比」と呼ばれる。
前述の充填材凝集体は、1~70μmのメジアン粒径(D50)を有する複合充填剤粒子を提供するために、以下の工程:
(a)粒状充填剤、好ましくは、1~1200nmのメジアン粒径(D50)を有する前記粒状ガラス充填剤を、重合性薄膜形成剤を含有する被覆組成物で被覆して、粒状充填剤の表面にポリマー被覆層を形成する工程であって、前記ポリマー被覆層は、被覆層の表面に反応性基を有することができ、前記反応性基は、付加重合性基及び段階成長重合性基から選択され、それにより、被覆された粒状充填剤を形成する工程と、続けて又は同時に、
(b)被覆された粒状充填剤の顆粒を提供するために、被覆された粒子充填剤を凝集させる工程であって、場合により更なる架橋剤の存在下で、かつ場合により、反応性基を有さない更なる粒状充填剤の存在下で凝集させてもよく、前記顆粒は、被覆された粒状充填剤粒子を含み、及び前記顆粒は、少なくとも1つの被覆層により互いに分離され、互いに接続された任意の更なる粒状充填剤粒子を含有してもよく、ここで、少なくとも1つの被覆層は、反応性基を反応させることにより、及び場合により、更なる架橋剤を反応させることにより、得られる架橋基により架橋していることができる工程と、
(c)場合により、被覆された粒状充填剤の顆粒を粉砕し、分級し及び/又はふるい分けする工程と、
(d)場合により、被覆された粒状充填剤の顆粒をさらに架橋する工程、を含む。
ここで、反応性基は、反応性基を反応させることにより、及び場合により、更なる架橋剤を反応させることにより、得られる架橋基に変換され、ここで、粒状充填剤は、欧州特許出願公開第2604247号(A1)明細書にさらに記載されているように、複合充填剤粒子の体積基準の主成分である、方法により得ることができる。
造粒され、粉砕された予備重合充填剤を得るために、前記方法の工程(b)を省略し、適切な造粒粒径又は粉砕粒径を達成するために、適切な粉砕装置により、粉砕工程(c)を、適用する。
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、歯科用充填剤を組成物の総重量に基づいて、1~85重量%の量で歯科用充填剤を含有する。
特に好ましい実施態様によれば、本発明の歯科用組成物は、
(iii-1)0.1~3μmの平均粒径を有する1種以上の粒状ガラス充填剤、及び
(iii-2)1種以上のシラン化ガラスフレーク
を含有する歯科用充填剤(iii)を含み、
(a)ここで、シラン化ガラスフレークが、50nm~1000nmの平均厚みを有し、
(b)ここで、シラン化ガラスフレークが、2:1~50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚み)を有する。
本明細書で使用する場合、「平均厚み」は、以下のように決することができる。すなわち、100個以上のガラスフレークサンプルの厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)により測定する。ついで、測定された厚みの合計を、厚さを測定したガラスフレーク数で割る。
歯科用充填剤(iii)において、粒状ガラス充填剤(iii-1)は、0.1~3μm、好ましくは、0.2~2μm、より好ましくは、0.3~1.5μm、最も好ましくは、0.5~1.2μmの平均粒径を有する。粒状ガラス充填剤(iii-1)の平均粒径が、0.1μm未満であると、歯科用組成物の取扱い性が低下する場合がある。粒状ガラス充填剤(iii-1)の平均粒径が、3.0μmを超えると、硬化した歯科用組成物の光沢特性が低下する場合がある。
好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)は、反応性ガラス又はフッ化物放出ガラスである。より好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)は、反応性ガラスである。
好ましくは、歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.5~60重量%、好ましくは、1~50重量%、より好ましくは、3~40重量%の量で粒状ガラス充填剤(iii-1)を、含有する。
粒状ガラス充填剤(iii-1)は、好ましくは、少なくとも0.5、より好ましくは、少なくとも0.9、最も好ましくは、少なくとも0.95の球形度を有する。
本明細書で使用する場合、「球形度」という用語は、粒状ガラス充填剤(iii-1)の形態における所与の粒子と同じ体積を有する球の表面積の、粒状ガラス充填剤(iii-1)の形態における前記粒子の表面積に対する比を意味する。
好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)はシラン化されており、より好ましくは、上記定義されたオルガノシランによりシラン化されている。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、好ましくは、50nm~1000nmの平均厚み及び/又は2:1~50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚み)を有する。シラン化ガラスフレークの上記された平均厚みは、50~1000μmであるが、異なる厚みを有するシラン化ガラスフレークの画分の重量比は、サンプルにおいて変化する場合がある。ここで、好ましくは、シラン化ガラスフレークは、30nm~1500nmの厚み、より好ましくは、40nm~1000nmの厚みを有するシラン化ガラスフレークの画分を、少なくとも90重量%の量で含む。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)の平均厚み及び平均アスペクト比の特定の選択により、優れた光沢及び光沢保持性を得ることができ、これを長期間保証することができる。本発明によれば、硬化した歯科用組成物のポリマーマトリックス内におけるシラン化ガラスフレーク(iii-2)の自己整列が可能である。ここで、ガラスフレークは、部分的に重複して配置される場合がある。平坦で重なり合った自己整列により、硬化した歯科用組成物の滑らかな表面が提供される。したがって、歯科用組成物は、球又は繊維の形態にあるガラスを含有する従来の組成物と比較して、改善された初期光沢を有するであろう。
本明細書で使用する場合、「光沢」という用語は、面がどのくらい良好又は不良に光を鏡面反射するかを示す光学特性を意味する。光沢は、素材の屈折率、入射光の角度及び表面形状の影響を受ける。見かけの光沢は、鏡面反射の量により決まる。すなわち、表面から等量で反射され、かつ入射光のうちの1つに対称な角度で反射される光の量により決まる。鏡面反射は、光学の分野において周知のFresnel方程式により計算することができる。マイクロメートル範囲の表面粗さが、鏡面反射レベルに影響を及ぼす。低強度の鏡面反射光は、表面が粗く、光を他の方向に散乱させることを意味する。具体的には、完全に非反射性の表面は、ゼロ光沢単位(G.U.)を有する。一方、完全な鏡面は、60°の測定角度で1000GU.を有するであろう。典型的には、光沢測定のために、60°の測定角度が適用される。この角度が、視覚的観察に最も近い相関を提供するのに使用するのに最良の角度であると考えられるためである。10G.U.以下は、低光沢と考えられ、10~70G.U.は、半光沢と考えられ、70G.U.超の光沢は、高光沢と考えられる。本発明の硬化した歯科用組成物硬化物から調製される歯科用修復物について、半光沢(10~70G.U.)及び高光沢(70G.U.超)が好ましい。ここで、高光沢が特に好ましい。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)の特定の選択により、改善された初期光沢が提供されるだけでなく、比較的長期間の光沢保持も可能となる。
本明細書で使用する場合、「光沢保持」という用語は、硬化した歯科用組成物が材料除去法、例えば、サンディング又は研磨仕上げによる加工に曝された場合でも、又は同様に、硬化した歯科用組成物が典型的な日常の負荷、例えば、患者による歯磨き、口腔内の唾液及び歯ぎしり又は食いしばり曝された場合でも、比較的長期間にわたってその初期光沢を保持することを意味する。ガラスフレークの平坦で重なり合った整列が、前述の負荷に対してより安定であることは容易に理解される。この構成では、ガラスフレーク粒子が機械的荷重により除去される可能性が低いためである。すなわち、硬化した歯科用組成物の表面は、比較的長期間滑らかなままであろう。さらに、化学物質抵抗性に関して、例えば、唾液及び/又は食品由来の酸を考慮すると、ガラスフレークの平坦で重なり合った整列により、硬化した歯科用組成物及びその背後にある歯を、化学的影響、例えば、酸性度による劣化から保護するある種の障壁が形成される。
加えて、シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、未硬化歯科用組成物の有利な粘度を提供することができる。特に、シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、歯科用組成物のチキソトロピー挙動を提供することができる。
本発明によれば、粒状ガラス充填剤(iii-1)とシラン化ガラスフレーク(iii-2)との組み合わせは、歯科用組成物の粘度を所望の範囲内に調整するのに適している。また、シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、ガラスフレークの平坦で重なり合った整列の形態にある有利な配置のために、硬化した歯科用組成物の機械的特性及び長期間の機械的抵抗性の点でも有利であることができる。この配置は、均一な強化及び高い寸法安定性を提供することができる。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)と粒状ガラス充填剤(iii-1)との組み合わせは、硬化した歯科用組成物についてバランスのとれた特性を達成するために具体的に選択される。シラン化ガラスフレーク(iii-2)と粒状ガラス充填剤(iii-1)との特定の組み合わせにより、優れた光沢、光沢保持及び長期化学物質抵抗性と、優れた機械的特性及び長期間の機械的抵抗性とを達成することができる。小さくナノサイズのシラン化ガラスフレーク(iii-2)は、最大3μmのかなり大きい場合がある粒状ガラス充填剤(iii-1)間及びその周囲に容易に配置される。それにより、小さくナノサイズのシラン化ガラスフレーク(iii-2)は、上記された平坦で重なり合った整列の形態で自己整列することができる。この整列により、ある種のバリア又は遮蔽効果を提供することができる。すなわち、大きな粒状ガラス充填剤(iii-1)粒子は、機械的力又は化学的影響により硬化した歯科用組成物から除去されるのを防止する。シラン化ガラスフレーク(iii-2)の平坦で重なり合った整列により遮蔽されるためである。この遮蔽の結果として、大きな粒状ガラス充填剤(iii-1)の代わりに、せいぜい、小さくナノサイズのシラン化ガラスフレーク(iii-2)が、硬化した歯科用組成物から除去される程度である。この遮蔽効果により、優れた光沢保持が達成される。大きな粒子が除去された結果、光沢が著しく劣化し、表面が著しく不規則になった硬化組成物と比較して、小さな粒子の除去後、硬化した歯科用組成物の表面は、依然として滑らかであり、優れた光沢を有するであろう。さらに、前記遮蔽効果により、良好な機械的抵抗性及び化学物質抵抗性の両方の提供も実現可能である。遮蔽効果により、侵襲的な化学的影響、例えば、酸性流体が大きな粒子に浸透するのが防止されるためである。酸性流体の浸透は、機械的な力が加えられた時に粒子の除去をもたらし、それにより、光沢及び長期間の機械的抵抗性が劣化する場合がある。
例えば、米国特許出願公開第2006/0241205号(A1)明細書に教示されているように、粒状ガラス充填材(iii-1)が、ガラスフレーク(iii-2)より小さい場合、上記された遮蔽効果が達成される可能性は低いことが容易に理解される。ガラスフレークが、構造充填剤、例えば、(球状)ガラス充填剤粒子の形態にある構造充填剤より大きいため、(球状)ガラス充填剤粒子の間及びその周囲に容易に配置することができず、むしろ、(球状)ガラス充填剤粒子及びガラスフレークの別々の層を形成してしまうだろう。大きなガラスフレークが、小さな(球状)ガラス充填剤粒子の間に平坦で重なり合った整列で配置することはできないだろうからである。一方、大きなガラスフレークの層が(球状の)ガラス充填剤粒子を覆う場合、大きなガラスフレークは、機械的な力又は化学的影響により、硬化した歯科用組成物の表面から容易に除去されてしまう場合がある。このため、光沢並びに化学物質抵抗性及び機械的抵抗性の劣化は、本発明の歯科用組成物と比較して著しく高いだろう。
好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)は、0.3~2、より好ましくは、0.4~1.2の平均粒径を有する。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)について、80nm~1000nmの平均厚みを有するのが好ましい。
最も好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)は、0.4~1.2の平均粒径を有し、シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、(a)50nm~1000nmの平均厚み及び(b)2:1~50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚み)を有する。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)のガラスは、好ましくは、酸化物として、下記成分(重量%)
SiO=64~70
=2~5
ZnO=1~5
NaO=8~13
MgO=1~4
CaO=3~7
Al=3~6並びに
O及びTiO 最大3%
を含む。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)のガラスは、好ましくは、不活性ガラスである。ここで、「不活性ガラス」という用語は、粒状ガラス充填剤(iii-1)について上記されたものと同じ意味を有する。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、好ましくは、少なくとも20:1のアスペクト比を有するガラスフレークを粉砕し、続けて、粉砕ガラスフレークをシラン化することにより得ることができる。ガラスフレークの粉砕は、特に限定されず、歯科用充填材を粉砕するのに典型的に適用される任意の装置、例えば、ボールミル装置により行うことができる。
このようにして得られた粉砕ガラスフレークを、重合性化合物(ii)と反応性の1つ以上の重合性基を有するシランによりシラン化することができる。歯科用組成物の充填剤材料をシラン化するためのシランは周知であり、歯科用途のための多種多様なものが、例えば、J. M. Antonucci, Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology, 2005, vol. 110, no. 5, pages 541 to 558に記載されている。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、好ましくは、光散乱により決定される粒径分布を有する。ここで、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも75%、さらにより好ましくは、少なくとも80% 粒子が、50μm未満の粒径を有する。
シラン化ガラスフレーク(iii-2)は、1.46~1.60の範囲の屈折率を有するのが好ましい。
粒状ガラス充填剤(iii-1)及びシラン化ガラスフレーク(iii-2)は、好ましくは、粒状ガラス充填剤(iii-1)の平均粒径とシラン化ガラスフレーク(iii-2)の平均厚みとの比を10:1~1:1、より好ましくは、7:1~1.2:1、最も好ましくは、4:1~1.4:1の範囲内で選択することにより、適切に選択することができる。
好ましくは、歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.5~40重量%、より好ましくは、1~30重量%、さらにより好ましくは、3~20重量%の量で、シラン化ガラスフレーク(iii-2)を含有する。
歯科用組成物において、粒状ガラス充填剤(iii-1)の重量とシラン化ガラスフレーク(iii-2)の重量との比は、好ましくは、80:1~0.5:1、より好ましくは、40:1~1:1、さらにより好ましくは、20:1~1.5:1、さらにより好ましくは、10:1~2:1、最も好ましくは、5:1~2.5:1の範囲にある。
本発明の歯科用組成物は、樹脂変性歯科用接合組成物であるのが好ましい。
「樹脂変性歯科用接合組成物」という用語は、酸/塩基反応で反応する反応性ガラスを含有し、さらに、水溶性重合性樹脂成分を含有する、ガラスアイオノマー組成物を意味する。典型的には、水溶性重合性樹脂成分は、ポリアルケン酸、好ましくは、(メタ)アクリル酸及びその誘導体由来の単位を含むポリマーである。好ましくは、水溶性重合性樹脂成分は、1つ以上の重合性基を有する側鎖を有し、典型的には、光開始剤の存在下での光硬化及び/又は酸化還元開始剤系により硬化させることができる。
より好ましくは、本発明の歯科用組成物は、1種以上の上記された式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマーを含む樹脂変性歯科用接合組成物である。
最も好ましくは、歯科用組成物は、以下:
(i)
(i-1)式(I)で示される繰り返し単位を有するラジカル重合性多酸性ポリマー、
(i-2)場合により、1つのラジカル重合性二重結合及び場合によりカルボン酸基を有する加水分解安定水溶性モノマー(好ましくは、該モノマーは、最大200Daの分子量を有する)、
(i-3)場合により、2つ以上のラジカル重合性二重結合及び場合によりカルボン酸基を有する加水分解安定水溶性モノマー、
の形態にあるラジカル重合性化合物と、
(ii)上記された酸化還元開始剤系と、
(iii)上記された反応性粒状ガラス充填材から選択される歯科用充填材と、を含む水性樹脂変性歯科用接合組成物である。
(i-1)のラジカル重合性多酸性ポリマーは、(iii)の粒状ガラス充填剤の存在下での凝結(setting)反応又は硬化(curing)反応を起こすために、ヒドロキシル基及び任意のカルボン酸基が、数又は重量%で十分でなければならない。好ましくは、(i-1)のラジカル重合性多酸性ポリマーは、水性樹脂変性歯科用接合組成物中に、組成物の総重量に基づいて、5~80重量%、より好ましくは、10~50重量%、さらに好ましくは、15~40重量%の量で存在する。
(iii)によれば、粒状ガラス充填剤は、上記された反応性粒状ガラス充填剤を含むか又はそれからなる。
粒状ガラス充填剤は、(i-1)、(i-2)、(i-3)及び/又は(ii)の成分により表面改質されていることができる。特に、水性条件下で重合開始剤系(ii)の1種以上の成分と酸との接触を避けるために、反応性粒状ガラスを、酸化還元開始剤系(ii)の1種以上の成分により表面改質することができる。
反応性粒状ガラスは、代替的に又は付加的に、表面改質剤により表面改質されていることができる。好ましくは、表面改質剤は、上記定義されたシランである。シランは、反応性粒状ガラスに適切な疎水性を提供する。これにより、水性樹脂変性歯科用接合組成物における(i-1)、(i-2)、(i-3)及び(ii)の有機成分との有利で均一な混合が可能となる。
(i-2)によれば、1つのラジカル重合性二重結合を有するモノマーは、加水分解安定かつ水溶性である。水性樹脂変性歯科用接合組成物は、(i-2)の1種以上のモノマーを含有することができる。
(i-3)によれば、1つのラジカル重合性二重結合を有するモノマーは、加水分解安定かつ水溶性である。水性樹脂変性歯科用接合組成物は、(i-3)の1種以上のモノマーを含有することができる。
(i-1)のラジカル重合性多酸性ポリマー並びに(i-2)及び(i-3)のモノマーに関連して使用される「加水分解安定」という用語は、これらの化合物が酸性媒体、例えば、歯科用組成物中において加水分解に対して安定であることを意味する。特に、(i-1)、(i-2)及び(i-3)の化合物は、50℃の温度、pH2.5の水性媒体中において、1か月以内に加水分解する基、例えば、エステル基を含有しない。
(i-2)及び(i-3)のモノマーに関連して本明細書で使用する場合、「重合性二重結合」という用語は、付加重合、特に、遊離ラジカル重合可能な任意の二重結合、好ましくは、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合を意味する。
さらに、この関連で使用される「水溶性」という用語は、少なくとも0.1g、好ましくは、0.5g の(i-2)又は(i-3)のモノマーが20℃の水100gに溶解することを意味する。
(i-2)及び(i-3)の加水分解安定水溶性モノマーは、水性樹脂変性歯科用接合組成物の有用な任意成分である。(i-2)及び(i-3)のモノマーが、(ii)の重合開始剤系の存在下で(i-1)の重合性ポリマーと重合するためである。それにより、(i-2)及び(i-3)のモノマーは、それ自体及び/又は(i-1)の重合性化合物の重合性ペンダント基と重合することができる。したがって、(i-2)及び/又は(i-3)のモノマーから形成されるポリマーの形成に加えて、(i-2)及び/又は(i-3)のモノマーが、(i-1)の重合性化合物の重合性ペンダント基Rと反応し、それにより、グラフトポリマーが形成されるグラフト重合が存在する。さらに、(i-2)及び/又は(i-3)のモノマーから形成されるグラフト側鎖は、(i-1)の別の重合性ポリマーのペンダント重合性基とさらに反応することができ、それにより、架橋ポリマーを得ることができる。
下記スキームにおいて、(i-2)のモノマーによるグラフト重合は、例えば、(i-1)のラジカル重合性多酸性ポリマーの式(I)で示される繰り返し単位により示される。ここで、アクリル酸は、(i-2)のモノマーとして単に例示的に選択される。文字「n」及び「m」は、少なくとも1の整数を指す。
Figure 0007162669000038
本発明によれば、(i-2)及び/又は(i-3)の1つのモノマー又は2つ以上のモノマーの混合物を、成分(i-2)及び/又は(i-3)として使用することができる。(i-2)又は(i-3)の適切なモノマーは、加水分解安定である。具体的には、(i-2)又は(i-3)のモノマーは、50℃の温度、pH2.5で1か月以内に加水分解する基を含有しない。特に、(i-2)又は(i-3)の適切なモノマーは、エステル基を何ら含有しない。
さらに、(i-2)の適切なモノマーは、1つのラジカル重合性二重結合を含有する。(i-3)の適切なモノマーは、2つ以上のラジカル重合性二重結合を含有する。適切なラジカル重合性二重結合は、炭素-炭素二重結合である。加えて、(i-2)又は(i-3)のモノマーは、カルボン酸基を含有することができる。
好ましい実施態様では、(i-2)のモノマーは、下記式(XV):
Figure 0007162669000039

で表わされる化合物である。
式(XV)において、Rは、水素原子又は直鎖もしくは分岐鎖C1-3のアルキル基であり;Rは、水素原子、又は直鎖もしくは分岐鎖C1-6のアルキル基であり、該アルキル基は、-COOH基により置換されていることができる。式(XV)において、破線は、Rがcis又はtrans配向のいずれかにあることを示す。好ましくは、Rは、水素原子であり;Rは、水素原子、又は-COOH基により場合により置換されているC1-3アルキル基である。より好ましくは、Rは、水素原子であり;Rは、水素原子、又は-COOH基により場合により置換されているメチル基であり、すなわち、式(XV)で示される化合物は、アクリル酸又はイタコン酸である。最も好ましくは、式(XV)で示される化合物は、アクリル酸である。
好ましくは、式(XV)において、残基R及びRは、(i-2)の1つのラジカル重合性二重結合を有するモノマーの分子量が最大200Da、より好ましくは、最大150Da、最も好ましくは、最大100Daであるという条件で選択される。
さらに、1つのラジカル重合性二重結合を有する加水分解安定水溶性モノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、及びN-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミドあることができる。また、特定の実施態様では、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びヒドロキシプロピルメタクリレートも使用することができる。
(i-3)のモノマーは、好ましくは、ビスアクリルアミド、ビスアリルアクリルアミド、及びビスシクロアルキルアクリルアミド化合物から選択される化合物、より好ましくは、上記された式(E)で示される化合物である。
(i-2)又は(i-3)のモノマーは、好ましくは、最終的な水性樹脂変性歯科用接合組成物の良好な加工性及び適用性の観点から、特に、粘度の観点から選択される。したがって、(i-2)又は(i-3)のモノマーの粘度は、好ましくは、0.1~100mPa・s、より好ましくは、0.3~50mPa・s、さらにより好ましくは、0.5~25mPa・s、さらにより好ましくは、0.8~10mPa・s、特に、0.9~3mPa・sの範囲にある。
カルボン酸基を含む(i-2)又は(i-3)のモノマーが特に有利である。このようなモノマーにより、水性樹脂変性歯科用接合組成物における酸性ポリマーに更なるカルボン酸基が導入され、この導入により、(iii)の反応性粒状ガラスの存在下でさらに改善された凝結又は硬化反応をもたらす接合反応を受けることができるためである。
好ましくは、(i-2)又は(i-3)のモノマーは、水性樹脂変性歯科用接合組成物中に、水性樹脂変性歯科用接合組成物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、より好ましくは、1~15重量%、さらにより好ましくは、2~10重量%の量で含有される。(i-2)又は(i-3)のモノマーが存在しない場合、長期間の機械的抵抗性が低くなる場合がある。他方、(i-2)又は(i-3)のモノマーの量が、20重量%を超える場合、本発明の水性樹脂変性歯科用接合組成物から得られる硬化した歯科用ガラスセメントの収縮が起こる場合がある。
本発明の歯科用組成物について、重合性アクリルモノマーに場合により溶解されるエラストマーは除外されるのが好ましい。より好ましくは、本発明の歯科用組成物について、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンと少量のプロピレン又は4~10個の炭素原子を有する他のオレフィンとのクロロスルホン化コポリマー、又は塩化スルホニルと塩素化ポリエチレンとの混合物から選択されるエラストマーは除外される。このようなエラストマーは、歯科用組成物に適した成分ではないが、典型的には、例えば、欧州特許出願公開第0511635号(A1)明細書に開示されているように、航空宇宙分野及び自動車分野等の産業目的のための多成分接着剤組成物に適用される。
酸化還元開始剤系の使用及び歯科用組成物を保存するための容器
(a)ホスト分子及び1種以上のゲスト分子を含む1種以上の包接化合物であって、ここで、ホスト分子が、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ククルビツリル及びカリックスアレーンから選択され、1種以上のゲスト分子が、還元剤である、1種以上の包接化合物と、
(b)酸化剤と、
を含む酸化還元開始剤系を、歯科用組成物、特に、上記された歯科用組成物に使用することができる。
加えて、上記された歯科用組成物は、歯科用組成物を保存するための容器に含ませることができる。
好ましくは、歯科用組成物を保存するための容器が、歯科用組成物を分注するための混合カプセル装置において使用されるように適合される。例えば、混合カプセル装置は、2つ以上の物理的に分離された区画を含む。ここで、各区画内に、上記された多剤系歯科用組成物の包装を収容する容器を挿入することができる。
以下に、本発明を、実施例を参照してさらに詳細に説明するものとする。本発明は、以下に記載された実施例に限定されるものではない。
定義及び略語
[硬化時間]
作業時間:粉末とガラスとを、示されたP/L比で混合し始めてから測定した時間であり、特性に悪影響を及ぼすことなく材料を操作することが可能である間の時間。
凝結時間:押付けた状態でも混合物が変形しない時点。
[曲げ強度/E-モジュラス]
実施例1及び比較例1~3で得られた歯科用ガラスアイオノマー組成物を、試験片の調製のために、サイズ(25±2)mm×(2.0±0.1)mm×(2.0±0.1)mmを有するステンレス鋼型に充填した。このようにして得られた歯科用ガラスアイオノマー組成物を、歯科用硬化光(光硬化、LC)を使用して、外部駆動源(自己硬化、SC)無しに硬化させた。得られた硬化された歯科用ガラスアイオノマー組成物について、曲げ強度をISO 4049に従って測定した。
[略称]
tBDA:4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン
tBDAC:4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン/β-シクロデキストリン包接体
tBDA-HCl:4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン塩酸塩
tBDA-Mal:4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンマレイン酸塩
NapTS:p-トルエンスルフィン酸ナトリウム
KPS:過硫酸カリウム
CQ:カンファーキノン
実施例
合成例1
4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン/β-シクロデキストリン包接体(tBDAC)の合成
200g(0.176mol) β-シクロデキストリンを水 12000mLに溶解させた。このスラリーをβ-シクロデキストリンが溶解するまで急速に撹拌した。その後、48.86g(0.264mol、1.5倍過剰)の 4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン(tBDA)をこの溶液に加えた。乳白色沈殿物の形成が、tBDAの添加直後に観察された。得られた混合物を48時間急速に撹拌した。この沈殿物を、ガラスフリットを使用するろ過により回収し、水 2000mL、続けて、アセトン 2000mLで洗浄した。37℃の真空オーブン中で48時間乾燥させた後、生成物を180μmのメッシュサイズを有する網を通してふるい分けした。得られた1H NMRは、tBDAとβ-シクロデキストリンの間の1:1錯体を示していた(図1を参照のこと)。tBDA-包接体の収量は、208g(理論収量の約90%)であった。200g(0.176mol) β-CDを水 8000mLに溶解させた。この溶液を急速に撹拌し、β-CDが溶解するまで加熱した。室温に冷却した後、40.22g(0.264mol) クメンヒドロペルオキシド(CHP)をこの溶液に加えた。得られた溶液を急速に約20時間撹拌した。乳白色沈殿物の形成が観察された。この沈殿物をろ過により回収し、メチル tert-ブチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥させた。形成された錯体の化学量論量を、CHPの芳香族プロトンとβ-CDのH-1グルコシドプロトンとについてのピーク面積の比から決定した。この錯体の収量は、180g(0.14mol、収率80%)であった。得られたH-NMRは、CHPとβ-CDとの間の1:1錯体を示していた。
合成例2
4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンマレイン酸塩(tBDA-Mal)の合成
5.0g(28.2mmol) tBDAを2-プロパノール 50ml中に室温で溶解させた。撹拌しながら、4.3g(36.7mmol) マレイン酸を加えた。この混合物を一晩撹拌した。懸濁液が形成され、固体をろ過した。白色固体を真空下、室温で乾燥させた。
1HNMR [ppm] in DMSO: 7.23 及び 7.25 (2H, d; Ha, Ha’); 6.76 及び 6.79 (2H, d; Hb, Hb’); 6.25 (2H, s; 2xHc); 2.88 (6H,s; 2xNMe); 1.24 (9H, s; t-Bu)
融点:130℃
Figure 0007162669000040
合成例3
4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン塩酸塩(tBDA-HCl)の合成
3.2g tBDAを2-プロパノール 50mL中に室温で溶解させた。撹拌しながら、ジオキサン中の4M HCl溶液 5.7mL(22.9mmol HCl)を加えた。この混合物を週末にわたって撹拌した。懸濁液が形成され、固体をろ過した。白色固体を真空下、室温で乾燥させた。
1HNMR [ppm] in DMSO: 7.71 及び 7.69 (2H, d;Ha, Ha’); 7.57 及び 7.55 (2H, d; Hb, Hb’); 3.09 (6H,s; 2xNMe); 1.29 (9H, s; t-Bu)
融点:215℃
適用例1及び比較例1~3
組成物
本発明の実施例1及び比較例1~3の水性歯科用ガラスアイオノマー組成物を以下の表1に列記された成分の液体剤組成物及び粉末剤組成物を形成し、それぞれ合計して100wt%にし、両剤を示された粉末/液体(P/L)比で混合することにより調製した。
Figure 0007162669000041
Figure 0007162669000042
貯蔵寿命
材料の予備貯蔵寿命を評価するために、酸化還元活性化合物を含む粉末剤を50℃で最長56日間(2か月)保存した。適用例1及び比較例1~2の作業時間及び凝結時間を適切な間隔で測定した。tBDAとβ-シクロデキストリンとの間のホスト-ゲスト錯体(tBDAC)を含む実施例1のみが、50℃で2か月間の十分な貯蔵寿命を示した。対照的に、比較例1及び2は、言及された条件で2~11日間保存した後は機能せず、硬化速度が非常に低下-/増加した(図2)。

Claims (12)

  1. (i)
    ラジカル重合性化合物と、
    (ii)
    (a)1種以上の包接化合物、及び
    (b)酸化剤、を含む酸化還元開始剤系と、
    を含む歯科用組成物であって、
    前記1種以上の包接化合物が、
    (a1)ホスト分子及び
    (a2)1種以上のゲスト分子、
    を含み、
    ここで、前記ホスト分子は、シクロデキストリンであり、前記1種以上のゲスト分子は、還元剤であり、前記還元剤は、芳香族第三級アミンである、歯科用組成物。
  2. 還元剤が、下記式(I):
    Figure 0007162669000043

    で示される第三級アミンであり、
    ここで式中、
    及びRが、同じか又は異なることができ、独立して、直鎖状C1-8もしくは分岐鎖のC3-8アルキル基、又は環状C3-8アルキル基を表わし、又はR及びRが、それらが結合している窒素原子と共に3~8員の飽和複素環を形成しており、
    が、有機基を表わす、請求項記載の歯科用組成物。
  3. 前記還元剤が、4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリンである、請求項1又は2記載の歯科用組成物。
  4. シクロデキストリンが、天然の非還元オリゴ糖又はその誘導体であり、これらにおいて、グルコースが、α-1,4-結合を介して環状に連結している、請求項1又は2記載の歯科用組成物。
  5. 天然のシクロデキストリンが、5~8個のグルコース部分を含有する、請求項記載の歯科用組成物。
  6. ゲスト分子:ホスト分子のモル比が、1:0.5~1:3の範囲にある、請求項1~のいずれか一項記載の歯科用組成物。
  7. 酸化剤が、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキシル)カーボネート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチル-ヘキサノエート、ペルオキシ二硫酸カリウムから選択されるペルオキシドである、請求項1~のいずれか一項記載の歯科用組成物。
  8. 樹脂変性歯科用接合組成物である、請求項1~のいずれか一項記載の歯科用組成物。
  9. 2剤系歯科用組成物である、請求項1~のいずれか一項記載の歯科用組成物。
  10. 1種以上の包接化合物及び酸化剤を含む酸化還元開始剤系が、単一の包装中に混合物として保存されている、請求項1~のいずれか一項記載の歯科用組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか一項記載の歯科用組成物を含む、歯科用組成物を保存するための容器。
  12. 歯科用組成物を分注するための混合カプセル装置に使用されるように適合されている、請求項11記載の容器。
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