JP7162215B2 - 膜電極接合体 - Google Patents

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Description

本発明は、膜電極接合体に関し、より詳しくは、燃料電池に備えられる膜電極接合体に関する。
現在まで、燃料電池としては、アルカリ型(AFC)、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)などの各種のものが知られている。なかでも、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で運転できることから、例えば、自動車用途などの、各種用途での使用が検討されている。
固体高分子型燃料電池としては、例えば、アニオン交換形燃料電池が知られている。アニオン交換形燃料電池は、例えば、アニオン交換性の高分子膜からなる電解質層と、電解質層を挟んで対向配置されるアノード電極(燃料側電極)およびカソード電極(酸素側電極)とを備える膜電極接合体を備えている。
一方、アニオン交換形燃料電池は、耐久性が十分ではない場合があり、とりわけ、燃料電池が酸化により損傷し、耐久性を低下させる場合がある。
そこで、燃料電池の耐久性を向上させるため、例えば、アニオン伝導性物質としての層状複水酸化物と、導電性担体と、導電性担体に担持された触媒とを含有するアルカリ燃料電池用電極が提案されている。より具体的には、硝酸マグネシウム六水和物20mmolと、硝酸アルミニウム九水和物10molと、ヘキサメチレンテトラミン26mmolとを密封および加熱し、水洗および真空乾燥させてマグネシウム・アルミニウム層状複水酸化物を製造すること、さらに、そのマグネシウム・アルミニウム層状複水酸化物を導電シートに貼り付け、カソード電極として使用することが、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
このようにマグネシウム・アルミニウム層状複水酸化物をカソード電極に含有させることにより、燃料電池の耐酸化性の向上を図ることができる。
特開2010-113889号公報
一方、燃料電池では、カソード電極側で水酸化物ラジカル(OHラジカル)が発生する場合があり、その水酸化物ラジカルによって、高分子膜が酸化され、損傷する場合がある。そのため、高分子膜の酸化による損傷を抑制でき、耐久性に優れる燃料電池が、要求されている。
本発明は、耐久性および発電効率に優れる膜電極接合体である。
本発明[1]は、電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給されるアノード電極、および、酸素が供給されるカソード電極とを備え、前記電解質層は、アニオン交換性高分子膜と、前記アニオン交換性高分子膜の前記カソード電極側の表面に配置される無機保護膜とを備え、前記無機保護膜は、前記無機保護膜の総量に対して90質量%以上の割合で、層状複水酸化物を含有する、膜電極接合体を含んでいる。
本発明の膜電極接合体では、電解質層は、アニオン交換性高分子膜と、アニオン交換性高分子膜のカソード電極側の表面に配置される無機保護膜とを備えており、その無機保護膜は、無機保護膜の総量に対して90質量%以上の割合で層状複水酸化物を含有する。
つまり、本発明の膜電極接合体では、アニオン交換性高分子膜のカソード電極側の表面に、層状複水酸化物を含有する無機保護膜が形成されている。そのため、カソード電極側において水酸化物ラジカル(OHラジカル)が発生しても、その水酸化物ラジカルとアニオン交換性高分子膜との接触が、無機保護膜によって阻害され、アニオン交換性高分子膜の劣化を抑制できる。
しかも、本発明の膜電極接合体では、無機保護膜が90質量%以上の割合で層状複水酸化物を含有するため、イオン導電性に優れており、優れた発電効率を得ることができる。
図1は、本発明の膜電極接合体の一実施形態を示す概略構成図である。 図2は、図1における電解質層を形成するための概略工程図であって、図2Aは、アニオン交換性高分子膜および枠状治具を準備する準備工程、および、図2Bは、枠状治具によってアニオン交換性高分子膜を把持する把持工程を、それぞれ示す。 図3は、図2に続いて、図1における電解質層を形成するための概略工程図であって、図3Aは、枠状治具およびアニオン交換性高分子膜を原料水溶液中に浸漬させる浸漬工程、および、図3Bは、アニオン交換性高分子膜の一方側の表面に層状複水酸化物を形成する形成工程を、それぞれ示す。
図1において、燃料電池1は、アニオン交換形燃料電池として構成されている。
すなわち、燃料電池1は、例えば、後述する燃料が直接供給されるアニオン交換形燃料電池として構成される。
なお、燃料電池1は、通常、複数の燃料電池セルSを備え、複数の燃料電池セルSが積層されたスタック構造として構成されている。図1においては、図解しやすいように1つの燃料電池セルSのみを示している。
燃料電池セルSは、本発明の一実施形態としての膜電極接合体15を備えている。
膜電極接合体15は、アノード電極2、カソード電極3および電解質層4を備えている。膜電極接合体15において、アノード電極2およびカソード電極3は、それらの間に電解質層4を挟んで、対向配置されている。換言すれば、膜電極接合体15は、電解質層4と、電解質層4を挟んで対向配置されるアノード電極2およびカソード電極3とを備えている。
アノード電極2は、電解質層4の一方面の表面(以下、単に一方面とする場合がある。)に対向接触されている。このアノード電極2は、例えば、触媒を担持した触媒担体などの電極材料により、形成されている。また、触媒担体を用いずに、電極材料として触媒粒子を用い、その触媒粒子を、直接、アノード電極2として形成してもよい。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))などの周期表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 2007)に従う。以下同じ。)第8~10(VIII)族元素や、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの周期表第11(IB)族元素、さらには亜鉛(Zn)などの金属単体や、それらの合金などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、鉄族元素が挙げられ、より好ましくは、ニッケルが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
触媒担体としては、例えば、カーボンなどの多孔質物質が挙げられる。
触媒を触媒担体に担持させる場合、触媒と触媒担体との総量に対して、触媒担体の担持割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
アノード電極2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
また、アノード電極2を形成するには、特に制限されないが、例えば、上記触媒とイオン交換樹脂とを混合し、必要によりアルコールやエーテルなどの適宜の溶媒を添加して粘度を調整することにより、上記触媒の分散液(アノード電極インク)を調製する。次いで、その分散液を、電解質層4の一方面の表面に塗布および乾燥させる。これにより、電解質層4の厚み方向一方側の表面に、上記触媒とイオン交換樹脂とを含むアノード電極2を形成することができる。なお、イオン交換樹脂として、好ましくは、アニオン交換樹脂が挙げられる。
また、アノード電極2において、触媒の担持量は、例えば、0.05mg/cm以上、好ましくは、0.1mg/cm以上であり、例えば、10mg/cm以下、好ましくは、5mg/cm以下である。
カソード電極3は、電解質層4の他方の表面(以下、単に他方面とする場合がある。)に対向接触されている。このカソード電極3は、特に限定されないが、例えば、金属触媒が担持される多孔質電極として形成されている。
上記金属触媒は、遷移金属が含まれており、例えば、遷移金属と錯体形成有機化合物とが錯体を形成することにより、形成されているか、または、例えば、遷移金属が導電性高分子からなる担体に担持されることにより、形成されている。
遷移金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、鉄、銀、コバルトが挙げられ、より好ましくは、鉄が挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができ、これらの合金も使用することができる。
錯体形成有機化合物は、金属原子に配位することによって、当該金属原子と錯体を形成する有機化合物であって、例えば、ピロール、ポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン、ジベンゾテトラアザアヌレン、フタロシアニン、コリン、クロリン、フェナントロリン、サルコミン、ナイカルバジン、アミノアンチピリン(AAPYr)などの錯体形成有機化合物またはこれらの重合体が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ピロールの重合体であるポリピロール、フェナントロリン、サルコミン、ナイカルバジン、アミノアンチピリンが挙げられ、とりわけ好ましくは、ナイカルバジンが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
導電性高分子としては、上記した錯体形成有機化合物と重複する化合物もあるが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリトリフェニルアミン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリイソチアナフテン、ポリピリジンジイル、ポリチエニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルラン、ポリアセン、ポリフラン、ポリアズレン、ポリインドール、ポリジアミノアントラキノンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
金属触媒を形成するには、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
カソード電極3の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。
このような金属触媒からカソード電極3を形成するには、特に制限されないが、上記したアノード電極2と同様にして、例えば、まず、上記金属触媒とイオン交換樹脂とを混合し、必要によりアルコールやエーテルなどの適宜の溶媒を添加して粘度を調整することにより、上記金属触媒の分散液(カソード電極インク)を調製する。次いで、その分散液を、電解質層4の他方面の表面に塗布および乾燥させる。これにより、電解質層4の他方側の表面に、上記金属触媒とイオン交換樹脂とを含むカソード電極3を形成することができる。なお、イオン交換樹脂として、好ましくは、アニオン交換樹脂が挙げられる。
また、カソード電極3において、金属触媒の担持量は、例えば、0.05mg/cm以上、好ましくは、0.1mg/cm以上であり、例えば、10mg/cm以下、好ましくは、5mg/cm以下である。
電解質層4は、アニオン交換性高分子膜16と、無機保護膜17とを備えている。
アニオン交換性高分子膜16としては、アニオン成分(例えば、水酸化物イオン(OH)など)が移動可能な媒体であれば、特に限定されず、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
アニオン交換性高分子膜16を形成する固体高分子としては、例えば、ポリスチレンおよびその変性体などの炭化水素系の固体高分子膜などが挙げられる。また、アニオン交換性高分子膜16を形成する固体高分子は、その分子構造において、架橋構造を有していてもよい。なお、アニオン交換性高分子膜16を形成する固体高分子のガラス転移温度(Tg)は、例えば、80~200℃、好ましくは、100~200℃である。
アニオン交換性高分子膜16は、市販品として入手可能であり、例えば、セレミオン(旭硝子社製)、ネオセプタ(アストム社製)、A201(トクヤマ製)などが挙げられる。
アニオン交換性高分子膜16の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下である。
無機保護膜17は、アニオン交換性高分子膜16を保護するために金属酸化物から形成される無機膜である。無機保護膜17は、少なくとも、アニオン交換性高分子膜16のカソード電極3側の表面に配置される。さらに、無機保護膜17は、必要に応じて、アニオン交換性高分子膜16のアノード電極2側の表面に配置されていてもよい。
好ましくは、無機保護膜17は、アニオン交換性高分子膜16のカソード電極3側の表面のみに配置される。
無機保護膜17は、無機保護膜17の総量に対して90質量%以上の割合で層状複水酸化物を含有する。
複水酸化物とは、2種以上の金属水酸化物が複合して生成した高次化合物であると定義される。
また、層状複水酸化物とは、複水酸化物が二次元的に配列した板状の結晶を有し、かつ、その板状の結晶が2つ以上積層している高次化合物であると定義される。
層状複水酸化物としては、例えば、下記式(I)で示される不定比化合物が挙げられる。
[M2+ 1-x3+ (OH)][An- x/n・yHO] (I)
(式中、xは0<x<1を満たす実数を示し、yは実数を示す。また、M2+は2価金属イオンを示し、M3+は3価金属イオンを示し、An-は対アニオンを示す。)
上記式(I)において、M2+で示される2価金属イオンとしては、例えば、Li2+などの2価アルカリ金属イオン、例えば、Mg2+、Ca2+などの2価アルカリ土類金属イオン、例えば、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などの2価遷移金属イオンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
2価金属イオンとして、好ましくは、2価アルカリ土類金属イオンが挙げられ、より好ましくは、Mg2+が挙げられる。
上記式(I)において、M3+で示される3価金属イオンとしては、例えば、Fe3+、Co3+、Mn3+などの3価遷移金属イオン、例えば、Al3+などの3価貧金属イオンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
3価金属イオンとして、好ましくは、3価貧金属イオンが挙げられ、より好ましくは、Al3+が挙げられる。
上記式(I)において、An-で示される対アニオンとしては、例えば、硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
対アニオンとして、好ましくは、硝酸イオンが挙げられる。
上記式(I)において、xで示される実数は、0を超過し、好ましくは、0.1以上、より好ましくは、0.2以上であり、1未満、好ましくは、0.5以下、より好ましくは、0.4以下である。
上記式(I)において、yで示される実数は、例えば、0以上、好ましくは、1以上であり、例えば、10以下である。
なお、層状複水酸化物は、上記式(I)の層状複水酸化物(2価金属イオンおよび3価金属イオンを1種類ずつ有する層状複水酸化物)に限定されず、例えば、1価金属イオンおよび2価金属イオンを併有する層状複水酸化物であってもよく、例えば、2価金属イオン1種類および4価金属イオン2種類を併有する層状複水酸化物であってもよい。すなわち、互いに価数の異なる金属イオンを1種類以上有する公知の層状複水酸化物を用いることができる。なお、価数が互いに異なれば、同元素の金属イオンを含んでいてもよい。
層状複水酸化物として、好ましくは、上記式(I)の層状複水酸化物(2価金属イオンおよび3価金属イオンを1種類ずつ有する層状複水酸化物)が挙げられる。
そのような層状複水酸化物として、より具体的には、例えば、マグネシウム・アルミニウム複水酸化物、ニッケル・アルミニウム複水酸化物、2価コバルト・3価コバルト複水酸化物、2価鉄-3価鉄複水酸化物、コバルト-鉄複水酸化物、コバルト-アルミニウム複水酸化物などが挙げられる。これら層状複水酸化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
層状複水酸化物として、好ましくは、マグネシウム・アルミニウム複水酸化物、ニッケル・アルミニウム複水酸化物が挙げられ、より好ましくは、マグネシウム・アルミニウム複水酸化物が挙げられる。
マグネシウム・アルミニウム複水酸化物は、例えば、下記式(II)で示される。
[Mg2+ 1-xAl3+ (OH)][An- x/n・yHO] (II)
(式中、xは0<x<1を満たす実数を示し、yは実数を示す。また、An-は対アニオンを示す。)
なお、層状複水酸化物は、層状構造を有し、その層間にアニオンを取り込む性質(いわゆる、インターカレーション)を有する。また、層状構造のうち、水酸化物基本層は、2価金属イオンの一部を3価金属イオンが置換(固溶)することにより正電荷を持ち、その電荷を補うために層間へ陰イオンを取り込んで電気的中性を保つ。
層状複水酸化物の平均粒子径は、金属イオンの種類などにより異なるが、例えば、0.1μm以上10μm以下であり、また、層間隔は、例えば、1nm以上100nm以下である。
層状複水酸化物の含有割合は、無機保護膜17の総量に対して、90質量%以上、好ましくは、92質量%以上、より好ましくは、95質量%以上、さらに好ましくは、98質量%以上であり、通常、100質量%以下である。
また、無機保護膜17は、層状複水酸化物の他の金属酸化物(以下、その他の金属酸化物と称する。)を含有することができる。
その他の金属酸化物としては、例えば、LiO、MgO、CaO、FeO、Fe、CoO、Co、Mn、NiO、CuO、CuO、ZnOなどが挙げられる。
これらその他の金属酸化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
その他の金属酸化物は、例えば、層状複水酸化物の形成時における余剰の金属イオン(未反応原料)から形成され、無機保護膜17に含有される。また、その他の金属酸化物は、例えば、層状複水酸化物の形成時に副生される不可避的不純物として、無機保護膜17に含有されることもできる。
その他の金属酸化物の含有割合は、無機保護膜17の総量に対して、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、2質量%以下であり、通常、0質量%以上である。
つまり、無機保護膜17は、その他の金属酸化物を含有していなくともよい。とりわけ好ましくは、無機保護膜17は、その他の金属酸化物を含有せず、層状複水酸化物からなる。
層状複水酸化物および無機保護膜17は、特に制限されないが、アニオン交換性高分子膜16の破損を抑制する観点から、好ましくは、以下の方法で製造される。
すなわち、この方法では、まず、アニオン交換性高分子膜16を用意する。また、必要により、アニオン交換性高分子膜16の表面に、結晶成長の起点物質(金属イオン、対アニオンなど)を付着させる。
そして、層状複水酸化物の構成元素を含む原料水溶液を用意し、その水溶液中に、アニオン交換性高分子膜16を浸漬する。
原料水溶液は、例えば、上記構成元素の金属イオン溶液であり、より具体的には、例えば、上記式(I)で示される層状複水酸化物を得る場合には、2価金属イオン(M2+)、3価金属イオン(M3+)および対アニオン(An-)を所定濃度で含む水溶液が挙げられる。
このような水溶液は、例えば、2価金属イオン(M2+)の金属塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩など)および/またはその水和物と、3価金属イオン(M3+)の金属塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩など)および/またはその水和物とを、水中に溶解させることにより得ることができる。
原料水溶液において、2価金属イオン(M2+)の濃度は、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは、0.2mol/L以上であり、例えば、0.5mol/L以下、好ましくは、0.4mol/L以下である。
また、3価金属イオン(M3+)の濃度は、例えば、0.05mol/L以上、好ましくは、0.1mol/L以上であり、例えば、0.25mol/L以下、好ましくは、0.2mol/L以下である。
また、2価金属イオン(M2+)と3価金属イオン(M3+)との合計濃度は、例えば、0.15mol/L以上、好ましくは、0.3mol/L以上であり、例えば、0.75mol/L以下、好ましくは、0.6mol/L以下である。
また、2価金属イオン(M2+)と3価金属イオン(M3+)とのモル比率(M2+/M3+)は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、5以下、好ましくは、4以下である。
また、対アニオン(An-)の濃度は、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは、0.3mol/L以上であり、例えば、1mol/L以下、好ましくは、0.8mol/L以下である。
2価金属イオン(M2+)、3価金属イオン(M3+)および対アニオン(An-)の濃度が上記範囲であれば、副生成物を低減して、効率よく層状複水酸化物を得ることができる。
また、原料水溶液には、好ましくは、尿素が添加される。なお、尿素の添加量は、金属イオンの種類などに応じて、適宜設定される。
原料水溶液に尿素が添加されると、尿素の加水分解により原料水溶液中にアンモニアが発生し、原料水溶液のpHが所定範囲(例えば、7.0を超過し、8.5以下)に調整される。
そして、この方法では、アニオン交換性高分子膜16を、原料水溶液に浸漬し、保持する。
保持条件としては、原料水溶液の温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。
また、原料水溶液にアニオン交換性高分子膜16を浸漬する時間が、例えば、10時間以上、好ましくは、20時間以上であり、例えば、200時間以下、好ましくは、150時間以下である。
これにより、2価金属イオン(M2+)および3価金属イオン(M3+)と、対アニオン(An-)とが、アニオン交換性高分子膜16の表面において、層状複水酸化物を形成する。
その結果、アニオン交換性高分子膜16の表面に、層状複水酸化物を含有する無機保護膜17が形成される。
なお、上記の方法では、アニオン交換性高分子膜16中、原料水溶液中に対して接触している部分に、無機保護膜17が形成される。
そのため、アニオン交換性高分子膜16の両面が原料水溶液と接触するように、アニオン交換性高分子膜16を上記の原料水溶液に浸漬させると、アニオン交換性高分子膜16のアノード電極2側表面とカソード電極3側表面との両面に、無機保護膜17を積層することができる。
また、アニオン交換性高分子膜16の一方面(カソード電極3側の面)のみが原料水溶液と接触するように、アニオン交換性高分子膜16を上記の原料水溶液に浸漬させると、アニオン交換性高分子膜16のカソード電極3側表面のみに、無機保護膜17を積層することができる。
低コスト化と耐久性とのバランスを図る観点から、好ましくは、アニオン交換性高分子膜16の一方面(カソード電極3側の面)のみが原料水溶液と接触するように、アニオン交換性高分子膜16を上記の原料水溶液に浸漬させ、アニオン交換性高分子膜16のカソード電極3側表面のみに無機保護膜17を積層する。
アニオン交換性高分子膜16の一方面(カソード電極3側の面)のみが原料水溶液と接触するように、アニオン交換性高分子膜16を上記の原料水溶液に浸漬させる方法としては、特に制限されないが、例えば、アニオン交換性高分子膜16の他方面(アノード電極2側の面)に空気溜まりが形成されるように、原料水溶液にアニオン交換性高分子膜16を浸漬する方法が挙げられる。
より具体的には、この方法では、まず、図2Aに示されるように、アニオン交換性高分子膜16、および、そのアニオン交換性高分子膜16を把持するための枠状治具20を準備する(準備工程)。
枠状治具20は、一対の枠体としての上側枠体21と下側枠体22とを備えている。上側枠体21および下側枠体22は、所定幅で形成される略矩形枠状の金属部材であって、互いに略同一形状に形成されている。また、互いに略同一形状の四隅に貫通孔23を有することにより、締結部材24(ボルト24aおよびナット24bなど)で互いに締結可能とされている。
次いで、この方法では、図2Bに示されるように、枠状治具20によってアニオン交換性高分子膜16を把持する(把持工程)。
より具体的には、この工程では、上側枠体21および下側枠体22の間隙に、アニオン交換性高分子膜16を挟み込み、上側枠体21および下側枠体22を締結部材24で締結する。
これにより、枠状治具20によってアニオン交換性高分子膜16が把持される。
なお、アニオン交換性高分子膜16が枠状治具20に把持された状態において、アニオン交換性高分子膜16の一方側(紙面上側、カソード電極3側)の表面は、上側枠体21の枠穴から上方に露出され、また、他方側(アノード電極2側)の表面が、下側枠体21の枠穴から下方に露出される。
次いで、この方法では、図3Aに示されるように、枠状治具20、および、枠状治具20によって把持されたアニオン交換性高分子膜16を、上記原料水溶液中に浸漬および保持する(浸漬工程)。
より具体的には、この工程では、枠状治具20およびアニオン交換性高分子膜16により形成される空間に空気を内包させるように、原料水溶液の上方から下方に向かって、枠状治具20およびアニオン交換性高分子膜16を静かに浸漬させる。
これにより、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)に、空気溜まり28が形成される(図3B参照。)。
その結果、アニオン交換性高分子膜16の一方側(カソード電極3側)の表面と原料水溶液とが接触し、かつ、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)と原料水溶液との接触が抑制される。
その後、この方法では、枠状治具20およびアニオン交換性高分子膜16を原料水溶液に浸漬した状態で上記の保持条件で保持する。
これにより、図3Bが参照されるように、アニオン交換性高分子膜16の一方側(カソード電極3側)の表面において、層状複水酸化物が形成される(形成工程)。
また、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)では、空気溜まり28により、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)の表面と、原料水溶液との接触が抑制されている。そのため、層状複水酸化物の形成が抑制される。
なお、空気溜まり28の体積が十分ではなく、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)の表面において、層状複水酸化物が形成される場合、その層状複水酸化物の形成時に発生する気体(酸素ガス、水素ガスなど)が、空気溜まり28の体積を大きくすることができる。これにより、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)と原料水溶液との接触を抑制して、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)の表面における層状複水酸化物の形成を抑制することができる。
その結果、アニオン交換性高分子膜16の一方側(カソード電極3側)の表面のみに、無機保護膜17を形成することができる。
なお、例えば、アニオン交換性高分子膜16の一方側(カソード電極3側)の表面にのみ無機保護膜17を積層する方法としては、上記の他、例えば、アニオン交換性高分子膜16の他方側(アノード電極2側)の表面を、マスキング材によりマスクし、原料水溶液に対する接触を抑制する方法や、例えば、予め形成した層状複水酸化物のスラリーを、アニオン交換性高分子膜16の表面に塗布し、乾燥させる方法なども挙げられる。
アニオン交換性高分子膜16の破損を抑制し、また、耐久性の向上を図る観点から、好ましくは、アニオン交換性高分子膜16の他方面(アノード電極2側の面)に空気溜まりが形成されるように、原料水溶液にアニオン交換性高分子膜16を浸漬し、アニオン交換性高分子膜16の一方面(カソード電極3側の面)に、無機保護膜17を形成する。
なお、無機保護膜17は、単層であってもよく、多層であってもよい。
すなわち、上記のように、層状複水酸化物を1層のみ形成してもよく、さらに、上記の工程を繰り返して、層状複水酸化物を複数層(例えば、2~10層)形成してもよい。
低コスト化と耐久性とのバランスを図る観点から、好ましくは、層状複水酸化物を1層のみ形成する。
無機保護膜17の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
また、電解質層4の厚み(アニオン交換性高分子膜16と無機保護膜17との合計厚み)は、例えば、6μm以上、好ましくは、15μm以上であり、例えば、70μm以下、好ましくは、45μm以下である。
燃料電池セルSは、膜電極接合体15の他、さらに、燃料供給部材5および酸素供給部材6を備えている。燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、アノード電極2に対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、アノード電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7は、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する供給口9および排出口8がそれぞれ連続して形成されている。
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、カソード電極3に対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、カソード電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する供給口11および排出口12がそれぞれ連続して形成されている。
また、図示しないが、燃料電池1においては、必要に応じて、燃料供給部材5とアノード電極2との間、および、酸素供給部材6とカソード電極3との間に、公知のガス拡散層を積層することができる。
そして、この燃料電池1は、実際には、上記した燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成される。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、実際には、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成される。
なお、図示しないが、この燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、集電板に備えられた端子から燃料電池1で発生した起電力を外部に取り出すことができるように構成されている。
また、試験的(モデル的)には、この燃料電池セルSの燃料供給部材5と酸素供給部材6とを外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させて、発生する電圧を計測することもできる。
そして、燃料電池1には、燃料および空気(酸素)が、改質などを経由することなく、直接供給される。
燃料としては、燃料化合物を含む液体燃料が挙げられる。
燃料化合物としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、例えば、ジメチルエーテルなどのエーテル類、例えば、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、カルボンヒドラジド((NHNHCO)などのヒドラジン類、例えば、尿素(NHCONH)、例えば、イミダゾール、1,3,5-トリアジン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾールなどの複素環類、例えば、ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)などのヒドロキシルアミン類などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
なお、上記の燃料化合物をそのまま液体燃料として使用してもよく、また、上記の燃料化合物を水に溶解した水溶液を液体燃料として使用してもよい。
また、液体燃料は、好ましくは、添加剤を含有している。
添加剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウムなどのアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などの電解質などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカリ金属水酸化物が挙げられ、より好ましくは、水酸化カリウムが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
液体燃料が添加剤を含有すれば、後述する水酸化物イオン(OH)の移動を促進することができる。
添加剤の添加量は、燃料化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
そして、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した燃料を供給すれば、カソード電極3においては、次に述べるように、アノード電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e)と、水(HO)と、酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH)は、電解質層4をカソード電極3からアノード電極2へ移動する。そして、アノード電極2においては、電解質層4を通過した水酸化物イオン(OH)と、燃料とが反応して、電子(e)が生成する。生成した電子(e)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、カソード電極3へ供給される。このようなアノード電極2およびカソード電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
そして、このような電気化学的反応には、アノード電極2において、燃料に水酸化物イオン(OH)を直接反応させる一段反応と、燃料を、水素(H)と窒素(N)とに分解した後に、分解により生成した水素(H)に水酸化物イオン(OH)を反応させる二段反応との2種類の反応がある。
例えば、燃料としてヒドラジン(NHNH)を用いた場合には、一段反応は、アノード電極2、カソード電極3および全体として、次の反応式(1)~(3)で表すことができる。
(1) NHNH+4OH→4HO+N+4e (アノード電極)
(2) O+2HO+4e→4OH (カソード電極)
(3) NHNH+O→2HO+N (全体)
また、二段反応は、アノード電極2、カソード電極3および全体として、次の反応式(4)~(7)で表すことができる。
(4) NHNH→2H+N (分解反応;アノード電極)
(5) H+2OH→2HO+2e (アノード電極)
(6) 1/2O+HO+2e→2OH (カソード電極)
(7) H+1/2O→HO (全体)
一方、燃料電池1を長期間使用に供すると、燃料電池1の内部にOHラジカルが生じる。そして、電解質層4が無機保護膜17を備えていない場合には、アニオン交換性高分子膜16中のアニオン交換基とOHラジカルとが反応し、アニオン交換性高分子膜16の損傷および劣化を惹起する。
このようなアニオン交換性高分子膜16の損傷を抑制するため、例えば、引用文献1に記載の層状複水酸化物を、カソード電極3ではなく、アニオン交換性高分子膜16の表面に積層することも検討される。
しかし、引用文献1に記載の層状複水酸化物は、硝酸マグネシウム六水和物20mmolと、硝酸アルミニウム九水和物10molとから形成されているため、マグネシウムおよびアルミニウムの全てが層状複水酸化物を形成するものではなく、マグネシウムを含まないアルミニウム酸化物が多量に形成されている。
このような層状複水酸化物およびアルミニウム酸化物をアニオン交換性高分子膜16の表面に積層すると、アニオン交換性高分子膜16のイオン伝導性の低下を惹起し、発電効率が低下するという不具合がある。
これに対して、上記の膜電極接合体15では、電解質層4は、アニオン交換性高分子膜16と、アニオン交換性高分子膜のカソード電極3側の表面に配置される無機保護膜17とを備えており、その無機保護膜17は、無機保護膜17の総量に対して90質量%以上の割合で層状複水酸化物を含有する。
つまり、上記の膜電極接合体15では、アニオン交換性高分子膜16のカソード電極3側の表面に、層状複水酸化物を含有する無機保護膜17が形成されている。そのため、カソード電極3側においてOHラジカルが発生しても、そのOHラジカルとアニオン交換性高分子膜16との接触が、無機保護膜17によって阻害されており、アニオン交換性高分子膜16の劣化を抑制できる。その結果、電解質層4およびその電解質層4を備える膜電極接合体15は、高い耐久性を有する。
しかも、上記の膜電極接合体15では、無機保護膜17が90質量%以上の割合で層状複水酸化物を含有するため、イオン導電性に優れており、優れた発電効率を得ることができる。
なお、この燃料電池1の運転条件は、特に限定されないが、例えば、アノード電極2側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、カソード電極3側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、燃料電池セルSの温度が0~120℃、好ましくは、20~80℃として設定される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
なお、上記燃料電池1の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
実施例1
(1)原料水溶液の調製
硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、および、尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。
そして、金属イオン比(Mg2+/Al3+)が2になり、かつ、金属イオンの合計濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lになるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物とを秤量し、ビーカーに入れた後、イオン交換水をさらに加えて、全量75mlに調整した。
次いで、得られた金属イオンの溶液を撹拌し、尿素を、硝酸イオンに対する尿素のモル比(尿素/NO3-)が4になるように添加し、さらに撹拌した。
これにより、原料水溶液を得た。
(2)電解質層の製造
ステンレス製ジャケットを装備したテフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100mL)に、原料水溶液を注いだ。
一方、枠状治具にてアニオン交換性高分子膜としてのA201(トクヤマ製)を把持し、空気溜まりを含むように、枠状治具およびアニオン交換性高分子膜を、原料水溶液に浸漬させた(図2および図3参照。)。
その後、原料水溶液を70℃に加熱して、144時間保持した。
これにより、アニオン交換性高分子膜の表面に層状複水酸化物を形成し、無機保護膜を形成した。その結果、アニオン交換性高分子膜と、その一方面に形成される無機保護膜とを備える電解質層を得た。
(3)アノード触媒インクの調製
ニッケル粉末を担持させたカーボン(ケッチェンブラック)の粉末(Ni:50質量%、C:50質量%、キャタラー社製)を、アニオン交換樹脂と混合させ混合物を得た。次いで、この混合物を、アルコールに分散させた。
これにより、アノード触媒インクを調製した。
(4)カソードインクの調製
ナイカルバジンFe錯体(NPC-2000、Pajarito社製)を、アニオン交換樹脂と混合させ混合物を得た。次いで、この混合物を、アルコールに分散させた。
これにより、カソード触媒インクを調製した。
(5)膜電極接合体の製造
アノード触媒インクを、電解質層の無機保護膜が形成されていない側の表面(アニオン交換性高分子膜の露出面)の表面に、スプレー法により塗布し、25℃で乾燥させた。これにより、アノード電極(アノード触媒層)を形成した。
なお、アノード触媒層の触媒担持量は、3.2mg/cmとした。
次いで、カソード触媒インクを、電解質層の無機保護膜が形成されている側の表面(無機保護膜の表面)に、スプレー法により塗布し、25℃で乾燥させた。これにより、カソード電極(カソード触媒層)を形成した。
なお、カソード触媒層の触媒担持量は、1.25mg/cmとした
これにより、膜電極接合体を製造した。
比較例1
電解質層として、無機保護膜が形成されていないアニオン交換性高分子膜を直接使用した以外は、実施例1と同様にして、膜電極接合体を製造した。
<耐久試験>
燃料電池評価セル(ラボセル、ダイハツ工業社製)に、実施例1および比較例1で得られた膜電極接合体をセットして、アノード電極へ0.02mol/Lの水加ヒドラジン水溶液を2mL/minの流速で供給した。また、これとともに、カソード電極へ酸素を、0.02L/minの流速で供給した。
そして、以下の条件で16時間運転し、その運転前後における膜電極接合体の質量変化を測定した。
セル温度:60℃
運転時間:16時間
背圧;アノード電極:0kPa
カソード電極:10kPa
その結果、実施例1の膜電極接合体の耐久試験後の質量は、耐久試験前の質量に対して、100%であった。
一方。比較例1の膜電極接合体の耐久試験後の質量は、耐久試験前の質量に対して、91%であった。
1 燃料電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質層
15 膜電極接合体
16 アニオン交換性高分子膜
17 無機保護膜

Claims (1)

  1. 電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、燃料が供給されるアノード電極、および、酸素が供給されるカソード電極とを備え、
    前記電解質層は、アニオン交換性高分子膜と、前記アニオン交換性高分子膜の前記カソード電極側の表面に配置される無機保護膜とを備え、
    前記無機保護膜は、前記無機保護膜の総量に対して90質量%以上の割合で、層状複水酸化物を含有する
    ことを特徴とする、膜電極接合体。
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