JP7155887B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電流指令値に基づいてモータを駆動し、モータの駆動制御によって操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に関する。
車両のステアリング機構にモータの回転力でアシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)は、モータの駆動力が減速ギアを介して伝達されて、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力として付与される構成を有する。
かかる電動パワーステアリング装置では、減速ギアやラック・ピニオンにより摩擦が大きく、また、アシストトルクを発生させるためのモータによりステアリング軸回りの等価慣性モーメントが大きい。
そのため、セルフアライニングトルク(SAT:Self Aligning Torque)が小さい低車速域などでは、摩擦の方が大きいことによりハンドル戻りが悪くなる。これは直進状態においてSATのみでは舵角が中立点まで戻ってこないため、運転者の操舵介入により中立点まで戻す必要があり、運転者の負担となる。
一方、SATが大きい高車速域ではSATが大きいため、ハンドル戻りの操舵角速度は低車速域に比べて速くなる傾向にあるが、慣性モーメントが大きいため慣性トルクも大きく、舵角の中立点でハンドルが収束せず、オーバーシュートしてしまうため、車両特性が不安定に感じられることがある。
このように、電動パワーステアリング装置には、車速または操舵状態によって異なった特性の補償が必要であり、それらを達成するためにハンドル戻り時に適度なアシストをするための様々な制御が考案されている。
例えば、下記特許文献1には、ドライバーによる操舵介入時でも滑らかなハンドル戻り制御を行うことを目的とした電動パワーステアリング装置が提案されている。
特許文献1には、車速と操舵角から算出された目標操舵角速度と操舵角速度の偏差に応じてPID(Proportional Integral Differential)制御を行うハンドル戻り制御において、操舵トルクおよびアシスト電流に含まれるドライバーの操舵意図もしくは車両特性のみを目標操舵角速度の算出/補正に用いることで、ドライバーの意図にあったハンドル戻り制御を行うことが記載されている。
国際公開第2018/142650号パンフレット
しかしながら、上記特許文献1では、目標操舵角速度を算出又は補正する際にドライバーの操舵で生じる操舵角速度が考慮されておらず、ドライバーの操舵状態によっては最適な目標操舵角速度にならないという課題があった。
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、ドライバーの操舵状態に応じた最適な目標操舵角速度を設定することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様による電動パワーステアリング装置は、少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算し、電流指令値に基づいてモータを駆動し、モータの駆動制御によって操舵系をアシスト制御する。電動パワーステアリング装置は、ステアリング軸の操舵角を検出する操舵角検出部と、ステアリング軸の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部と、車速を検出する車速検出部と、操舵角、車速、及び操舵角速度に応じて、ステアリング軸を中立位置へ戻すための目標戻り操舵角速度を設定する目標操舵角速度設定部と、目標戻り操舵角速度に基づいてハンドル戻し制御電流を算出するハンドル戻し制御電流算出部と、ハンドル戻し制御電流で補正された電流指令値でモータを駆動する駆動部と、を備える。
本発明によれば、ドライバーの操舵状態に応じた最適な目標操舵角速度を設定することができる。
実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す構成図である。 図1のコントロールユニットの機能構成の一例を示すブロック図である。 図2の電流指令値補正部の機能構成の一例を示すブロック図である。 操舵トルクゲイン部により設定される操舵トルクゲインThの一例を示す特性図である。 第1実施形態の目標操舵角速度設定部の機能構成の一例を示すブロック図である。 操舵角シフト設定部により設定される操舵角シフトΔθの一例を示す特性図である。 目標戻り操舵角速度算出部により算出される目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図である。 (a)は正の実操舵角速度ωに応じて設定された目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図であり、(b)は負の実操舵角速度ωに応じて設定された目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図である。 (a)は切り増し操舵時における作用を示す概略説明図であり、(b)は切り戻し操舵時における作用を示す概略説明図である。 車速ゲイン部により設定される車速ゲインKPの一例を示す特性図である。 粘性係数出力部から出力される粘性係数Cの一例を示す特性図である。 実施形態の電流指令値補正部の動作例を示すフローチャートである。 図11の目標戻り操舵角速度設定処理の一例を示すフローチャートである。 第2実施形態の目標操舵角速度設定部の機能構成の一例を示すブロック図である。 (a)は補正量算出部が算出する補正量Δωtの一例を示す特性図であり、(b)は補正量Δωtで補正された目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図である。 第3実施形態の目標操舵角速度設定部の機能構成の一例を示すブロック図である。 (a)は切り戻し操舵時の補正ゲインKωtの一例を示す特性図であり、(b)は切り戻し操舵時の目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図である。 (a)は切り増し操舵時の補正ゲインKωtの一例を示す特性図であり、(b)は切り増し操舵時の目標戻り操舵角速度ωtの一例を示す特性図である。
本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
(構成)
図1は、実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す。ステアリングホイール1のステアリング軸(コラム軸、ハンドル軸)2は、減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ラック・ピニオン機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。
ステアリング軸2には、ステアリングホイール1の操舵トルクTdを検出するトルクセンサ10及びステアリング軸2の操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ステアリングホイール1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3(減速ギア比N)を介してステアリング軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。
コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTdと車速センサ12で検出された車速Vとに基づいて、アシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)50が接続されており、車速VはCAN50から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN50以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN51も接続可能である。
コントロールユニット30は、例えば、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含むコンピュータを備えてよい。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するコントロールユニット30の機能は、例えばコントロールユニット30のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントロールユニット30を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントロールユニット30は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントロールユニット30はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
図2を参照してコントロールユニット30の機能構成の一例を説明する。トルクセンサ10で検出された操舵トルクTd及び車速センサ12で検出された車速Vは、電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、CAN50を介して操舵トルクTd及び車速Vを取得してもよい。
電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTd及び車速Vに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Irefを演算する。
電流指令値補正部32は、操舵トルクTd、車速V、ステアリング軸2の操舵角θ及び実操舵角速度ωに基づいて電流指令値Irefを補正することにより、補正後電流指令値Irefnを取得する。電流指令値補正部32の構成及び動作の詳細は後述する。
補正後電流指令値Irefnは、電流制限部33に入力されて、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部34に入力さる。
減算部34は、フィードバックされているモータ電流値Imを電流指令値Irefmから減算した偏差I(=Irefm-Im)を演算し、その偏差Iは、操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。
モータ20の電流値Imはモータ電流検出器40で検出され、減算部34にフィードバックされる。角速度変換部38は、操舵角θの変化に基づいてステアリング軸2の実操舵角速度ωを検出する。モータの位置を検出する位置センサ(図示せず)から得られたモータ角度情報と減速ギア比Nを考慮して実操舵角速度ωを求めても良い。
インバータ37は、駆動素子としてFET(Field Effect Transistor)を用い、FETのブリッジ回路で構成されている。
次に、電流指令値補正部32について説明する。電動パワーステアリング装置では、アシスト力を伝達するための減速ギアやラック・ピニオンの摩擦により動作が阻害され、直進状態に戻したい走行状態であるのにハンドルが中立点まで戻らず、車両が直進状態になり難いことがある。そのため、操舵角及び車速に応じたハンドル戻し制御電流により電流指令値を補正(補償)することで、直進状態に戻す走行状態においてハンドルを積極的に中立点に戻すことができる。
そのため、電流指令値補正部32は、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに応じて目標戻り操舵角速度(-ωt)を設定し、ステアリング軸2に付加される操舵トルク及びアシストトルク(電流指令値)から算出される目標速度値を目標戻り操舵角速度(-ωt)に加算し、その加算結果に、仮想的な操舵系特性に応じた伝達特性を乗算することで目標操舵角速度ω0を算出する。
電流指令値補正部32は、目標操舵角速度ω0と実操舵角速度ωとの偏差に対してP(比例)制御、I(積分)制御、D(微分)制御のうちの少なくとも1つの制御を実施する。電流指令値補正部32は、目標戻り操舵角速度(-ωt)を、操舵トルクTd及びアシストトルクTaの和を粘性係数Cで除算して算出された目標速度値で補正して求めた目標操舵角速度を用いてフィードバック制御を行うことで、運転者による操舵介入時にも自然なフィーリングのハンドル戻り制御を実現する。
ここで、電流指令値補正部32は、簡易的な仮想車両モデルを用いて目標操舵角速度ω0を算出する。実施形態の簡易的な仮想車両モデルとは、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vから求めた目標戻り操舵角速度(-ωt)と操舵トルクTd及びアシストトルクTaに基づいて求めた目標速度値との合計に、操舵系の仮想的な慣性モーメントJ及び粘性係数Cに応じた操舵系伝達関数を適用することで、目標操舵角速度ω0を算出するモデルである。
仮想車両モデルを用いることで、操舵系の仮想的な慣性モーメントJ、粘性係数Cを設定することができる。このため車両特性を任意に決めることが可能となる。また、仮想車両モデルにはアシストトルクTaも加味した運転者の操舵介入も考慮されているため、運転者が操舵している状態でも滑らかなハンドル戻りを提供することができる。
ここにおいて、操舵系に静止摩擦、クーロン摩擦及び弾性項がないと仮定した場合、セルフアライニングトルクSAT、操舵トルクTd、アシストトルクTaの力の釣り合い方程式は、次式(1)となる。
Figure 0007155887000001
ここで、Jは仮想的な操舵系の慣性モーメント、Cは仮想的な操舵系の粘性係数である。実操舵角速度ωは操舵角θの時間微分であるので次式(2)が成立する。
Figure 0007155887000002
よって、目標操舵角速度をω0とすると、次式(3)が得られる。
Figure 0007155887000003
sをラプラス演算子とすると上式(3)は次式(4)のように変換でき、次式(4)を整理すると次式(5)が得られる。
Figure 0007155887000004
Figure 0007155887000005
よって、目標操舵角速度ω0は、次式(6)により与えられる。
Figure 0007155887000006
上式(6)を整理すると、次式(7)が得られる。
Figure 0007155887000007
上式(7)により目標操舵角速度ω0が求まる。ここで、SAT/CはセルフアライニングトルクSATによって発生する操舵角速度として、車両特性に応じて設定する戻り操舵角速度として考えることができる。
Figure 0007155887000008
は、仮想車両モデルから求められる伝達特性である。
Figure 0007155887000009
は、操舵トルクTd、アシストトルクTaによって発生する操舵角速度である。
一般的には、セルフアライニングトルクSATは操舵角θ及び車速Vによって設定されているが、本発明ではセルフアライニングトルクSATの動特性を考慮する。セルフアライニングトルクSATは、コーナリングフォースとキャスタートレールの乗算であるため、セルフアライニングトルクSATの動特性は、コーナリングフォース動特性と等価と考えられる。
いま、タイヤの回転方向と同一方向に進行していたタイヤに横滑り角Bが突然発生した場合を考える。このときタイヤには横力Fが発生し、接地面がタイヤ本体に対して横方向にyだけ変形したと考える。接地面の横方向の速度はyの微分値となるので、接地面の横滑り角は、
Figure 0007155887000010
となる。よって、コーナリングパワーをKとすると、このときのタイヤの横力Fは、
Figure 0007155887000011
となる。また、タイヤの横剛性をkyとすれば、F=ky×yと表すことができる。これらの式よりyを消去すれば次式(12)が得られる。
Figure 0007155887000012
これをラプラス変換し、横滑り角Bに対する横力Fの伝達関数で表すと、
Figure 0007155887000013
となり、T1を時定数とする1次の遅れ要素で近似できる。
このように、セルフアライニングトルクSATは、ステアリングホイール1の操舵に対して1次遅れ特性を有する。このため、目標戻り操舵角速度ωtは車速V、操舵角θ及び実操舵角速度ωに応じて設定できるように構成する。
操舵トルクTdはトルクセンサ10によって検出でき、アシストトルクTaは電流指令値Irefからモータトルク定数、減速ギア比N及びギア効率の乗算値Ktを考慮して算出できる。操舵トルクTdとアシストトルクTaの合計に対して仮想的なステアリングの粘性係数Cで除算することで、操舵トルクTdとアシストトルクTaによって発生する操舵角速度を算出し、それらを合計することで目標操舵角速度ω0とする。
操舵トルクTd、アシストトルクTaには路面外乱による変動成分などが含まれるが、これは運転者の意図によるものではない。これを目標操舵角速度ω0に反映すると、車両は運転者の意図しない挙動となり、違和感となる可能性がある。このため、電流指令値補正部32では、操舵トルクTd及びアシストトルクTaによって算出する目標速度値ω1の後段に、運転者の意図した操舵入力若しくは操舵入力に基づく車両運動特性(ヨーやロールなど)より高い周波数成分を減衰させるフィルタ(LPF)を設け、安定した制御、滑らかな戻り、運転者の意図に合った操舵感を実現する。一般的に運転者の操舵周波数や運転者の操舵による車両運動は10Hz程度までと言われているため、フィルタ特性として10Hzで、ゲイン0より3dB以上低下する減衰特性を有するものとする。
図3を参照して電流指令値補正部32の機能構成を説明する。操舵トルクTdは、操舵トルクゲインThを出力する操舵トルクゲイン部110及び加算部102に入力される。
操舵角θは、目標戻り操舵角速度ωtを設定する目標操舵角速度設定部120に入力される。
車速Vは、目標操舵角速度設定部120、車速ゲインKPを出力する車速ゲイン部130及び粘性係数Cを出力する粘性係数出力部133に入力される。
実操舵角速度ωは、目標操舵角速度設定部120、減算部103に減算入力される。電流指令値Irefは、ゲイン部111でゲインKt倍され、アシストトルクTaとして加算部102に入力される。したがって、加算部102の加算結果は、操舵トルクTdとアシストトルクTaの合計となり、その合計値が伝達関数“1/C”の第1操舵系特性部150に入力される。
第1操舵系特性部150からの目標速度値ω1は、ローパスフィルタ(LPF)151に入力され、LPF151で運転者の操舵入力以上若しくは操舵入力に基づく車両運動特性以上の周波数(10Hz~)を減衰された目標速度値ω2となり、加算部101に入力される。
目標操舵角速度設定部120は、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに基づいてセルフアライニングトルクSATによる目標戻り操舵角速度ωtを設定する。目標操舵角速度設定部120の構成及び動作の詳細は後述する。
目標戻り操舵角速度ωtは、反転部121で符号を反転(-ωt)されて加算部101に入力され、加算部101での加算結果である目標速度値ω3が伝達関数“1/(J/Cs+1)”の第2操舵系特性部160に入力される。
粘性係数出力部133からの粘性係数Cは、第1操舵系特性部150及び第2操舵系特性部160に入力され、第2操舵系特性部160は、慣性モーメントJ、粘性係数C及び上式(8)に基づいて定められた伝達関数を目標速度値ω3に乗じて目標操舵角速度ω0を求める。
目標操舵角速度ω0は、減算部103に加算入力され、実操舵角速度ωは減算部103に減算入力される。目標操舵角速度ω0と実操舵角速度ωの偏差SG1が減算部103で算出され、偏差SG1は乗算部132に入力されている。
また、操舵トルクゲイン部110から出力される操舵トルクゲインThは乗算部132及びリミッタ142に入力され、車速ゲイン部130からの車速ゲインKPも乗算部132及びリミッタ142に入力される。
乗算部132は、偏差SG1に操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPを乗算してハンドル戻し制御ゲインSG2(比例制御値)を得る。
ハンドル戻し制御ゲインSG2は、加算部104に入力されると共に、特性改善のための積分部140及び積分ゲイン部141で成る積分制御部に入力され、更に積分ゲイン部141を経てリミッタ142に入力されて、操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPに応じて出力を制限された信号SG4が加算部104で、ハンドル戻し制御ゲインSG2と加算され、ハンドル戻し制御電流HRとして出力される。
積分部140の積分は、摩擦の影響を受け易い低操舵トルク域を補償し、特に手放しで摩擦に負ける領域で積分を利かせる。加算部105で電流指令値Irefにハンドル戻し制御電流HRを加算して補正(補償)されて得られる補正後電流指令値Irefnがモータ駆動系に入力される。
なお、舵角センサ14は特許請求の範囲に記載の操舵角検出部の一例である。角速度変換部38は特許請求の範囲に記載の操舵角速度検出部の一例である。車速センサ12は特許請求の範囲に記載の車速検出部の一例である。減算部103、積分部140、積分ゲイン部141、リミッタ142、加算部104は、特許請求の範囲に記載のハンドル戻し制御電流算出部の一例である。インバータ37は、特許請求の範囲に記載の駆動部の一例である。
操舵トルクゲイン部110が設定する操舵トルクゲインThは、図4に示すような特性を有する。操舵トルクTdがT1に至るまでは、操舵トルクゲインThは一定値ゲインTh1であり、T1を超えると次第に減少し、T2以上でゲイン0となる出力特性となっている。図4では線形に減少しているが、非線形でもよい。
次に、第1実施形態の目標操舵角速度設定部120の構成及び機能を説明する。図5を参照する。
第1実施形態の目標操舵角速度設定部120は、操舵角θ、実操舵角速度ω、及び車速Vに応じて目標戻り操舵角速度ωtを設定する。具体的には、目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωと車速Vに応じた操舵角シフトΔθで操舵角θを補正し、補正後の操舵角(θ-Δθ)と車速Vとに応じて目標戻り操舵角速度ωtを算出する。目標操舵角速度設定部120は、操舵角シフト設定部200と、減算部201と、目標戻り操舵角速度算出部202を備える。
操舵角シフト設定部200は、実操舵角速度ωに応じた操舵角シフトΔθを算出する。操舵角シフトΔθは、図6に示す特性を有する。実操舵角速度ωの絶対値がある値以下では操舵角シフトΔθは0であり、この値を超えると次第に絶対値が大きくなる。また、実操舵角速度ωの符号が正の場合に操舵角シフトΔθの符号は正であり。実操舵角速度ωの符号が負の場合には操舵角シフトΔθの符号は負である。さらに、車速Vが高いほど操舵角シフトΔθの絶対値は大きくなり、操舵角シフトΔθが0である実操舵角速度ωの範囲も狭くなる。
図5を参照する。減算部201は、操舵角θから操舵角シフトΔθを減じて補正した補正後の操舵角(θ-Δθ)を目標戻り操舵角速度算出部202に入力する。目標戻り操舵角速度算出部202は、補正後の操舵角(θ-Δθ)と車速Vに応じて目標戻り操舵角速度ωtを算出する。このように、実操舵角速度ωに応じて操舵角θから操舵角シフトΔθを減じることにより、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクSATの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させることができる。
目標戻り操舵角速度算出部202が算出する目標戻り操舵角速度ωtは、図7に示す特性を有する。目標戻り操舵角速度ωtは、補正後の操舵角(θ-Δθ)の絶対値の増加に応じて絶対値が増加する増加関数であり、操舵角θが大きくなるに従って目標戻り操舵角速度ωtも次第に大きくなる。また、補正後の操舵角(θ-Δθ)が0のとき目標戻り操舵角速度ωtは0であり、補正後の操舵角(θ-Δθ)の符号が正の場合に目標戻り操舵角速度ωtの符号は正であり、補正後の操舵角(θ-Δθ)の符号が負の場合に目標戻り操舵角速度ωtの符号は負である。さらに、車速Vが高いほど目標戻り操舵角速度ωtの絶対値は大きくなる。
次に、実操舵角速度ωによる目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性の変化を説明する。図8の(a)は、操舵角シフトΔθの符号が正である場合の目標戻り操舵角速度(-ωt)の変化を示す。
減算部201が操舵角θから正の操舵角シフトΔθを減じるため、元の操舵角θよりも小さな角度が目標戻り操舵角速度算出部202に入力される。したがって、目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性曲線(実線)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合の特性曲線(破線)よりも操舵角θの正の方向へシフトする。
この結果、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、縦軸方向において実操舵角速度ωによる補正がない場合も増加する。すなわち、縦軸方向において正の方向に移動する。
ここで、操舵角シフトΔθの符号は正であるから実操舵角速度ωの符号も正である。したがって、操舵角θが正である範囲では切り増し操舵が行われている。操舵角θが負である範囲では切り戻し操舵が行われている。
また、操舵角θが正である範囲ではステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向が負の方向となり、操舵角θが負である範囲ではステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向が正の方向となる。
したがって、切り増し操舵が行われている範囲では、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合よりも、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(負の方向、縦軸方向において下方向)と反対方向(上方向)に移動している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標戻り操舵角速度(-ωt)の増加方向と考えると、目標戻り操舵角速度(-ωt)は減少している。
反対に、切り戻し操舵が行われている範囲では、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合よりも、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(正の方向、縦軸方向において上方向)と同一方向に移動している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標戻り操舵角速度(-ωt)の増加方向と考えると、目標戻り操舵角速度(-ωt)は増加している。
図8の(b)は、操舵角シフトΔθの符号が負である場合の目標戻り操舵角速度(-ωt)の変化を示す。
減算部201が操舵角θから負の操舵角シフトΔθを減じるため、元の操舵角θよりも大きな角度が目標戻り操舵角速度算出部202に入力される。したがって、目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性曲線(実線)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合(破線)よりも操舵角θの負の方向へシフトする。この結果、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、縦軸方向において実操舵角速度ωによる補正がない場合も減少する。すなわち、縦軸方向において負の方向に移動する。
ここで、操舵角シフトΔθの符号は負であるから実操舵角速度ωの符号も負である。したがって、操舵角θが正である範囲では切り戻し操舵が行われている。操舵角θが負である範囲では切り増し操舵が行われている。
このため、切り増し操舵が行われている範囲では、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合よりも、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(正の方向、縦軸方向において上方向)と反対方向(下方向)に移動している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標戻り操舵角速度(-ωt)の増加方向と考えると、目標戻り操舵角速度(-ωt)は減少している。
反対に、切り戻し操舵が行われている範囲では、実操舵角速度ωに応じて設定した目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合よりも、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(負の方向、縦軸方向において下方向)と同一方向に移動している。
このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向を目標戻り操舵角速度(-ωt)の増加方向と考えると、目標戻り操舵角速度(-ωt)は増加している。
以上のように目標戻り操舵角速度(-ωt)を設定する作用について、図9の(a)及び図9の(b)を参照して説明する。なお、説明を簡略化するため、第2操舵系特性部160による伝達関数を省略する。
実線は正の実操舵角速度ωに応じて設定された目標戻り操舵角速度(-ωt)に基づいて算出される目標速度値ω3の特性曲線であり、破線は実操舵角速度ωによる補正がない場合の目標速度値ω3の特性曲線である。上記の通り、目標速度値ω3は、目標戻り操舵角速度(-ωt)と目標速度値ω2との和であるため、目標戻り操舵角速度(-ωt)に対して目標速度値ω2分だけオフセットされている。また、二点鎖線は実操舵角速度ωの軌跡であり、目標速度値ω3及び操舵角θの平面に示した。
図9の(a)を参照する。いま、実操舵角速度ω及び操舵角θがともに正の範囲にあり、切り増し操舵が行われている状態を想定する。
目標速度値ω3の特性曲線(実線)と、二点鎖線で示す実操舵角速度ωの軌跡との交点では、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの偏差がなくなりハンドル戻し制御電流HRが0となる。この交点よりも操舵角θが大きい領域では、目標速度値ω3が実操舵角速度ωよりも小さいため目標速度値ω3は正の実操舵角速度ωを遅らせるように働く。すなわち、切り増し操舵を妨げる方向に働く。
ここで、図8の(a)のように目標戻り操舵角速度(-ωt)を設定することで、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(負の方向)と反対の正の方向に目標速度値ω3が移動すると、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの間の速度偏差Δ1の大きさは、実操舵角速度ωによる補正がない場合の速度偏差Δ0の大きさよりも小さくなる。この結果、切り増し操舵方向と逆方向のハンドル戻し制御電流HRが小さくなり、切り増し操舵を妨げるダンピング効果が減少する。これによりドライバーは過度の粘性感を感じないで操舵することができる。
次に、実操舵角速度ωが負の範囲に、操舵角θが正の範囲にあり、切り戻し操舵が行われている状態を想定する。図9の(b)を参照する。
二点鎖線で示す実操舵角速度ω及び目標速度値ω3の特性曲線(一点鎖線)との交点よりも操舵角θが大きい領域では、目標速度値ω3が実操舵角速度ωよりも小さいため目標速度値ω3は負の実操舵角速度ωを速めるように働く。すなわち切り戻し操舵を助ける方向に働く。
ここで、図8の(b)のように目標戻り操舵角速度(-ωt)を設定することで、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(負の方向)と同じ方向に目標速度値ω3が移動すると、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの間の速度偏差Δ1の大きさは、実操舵角速度ωによる補正がない場合の速度偏差Δ0の大きさよりも大きくなる。この結果、切り戻し操舵方向と同一方向のハンドル戻し制御電流HRが大きくなり、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
また、実操舵角速度ωの軌跡と目標速度値ω3の特性曲線との交点よりも操舵角θが小さい領域では、目標速度値ω3が実操舵角速度ωよりも大きいため目標速度値ω3は負の実操舵角速度ωを遅らせるように働く。すなわち切り戻し操舵を妨げる方向に働く。
ここで、図8の(b)のように目標戻り操舵角速度(-ωt)を設定することで、ステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向(負の方向)と同じ方向に目標速度値ω3が移動すると、目標速度値ω3と実操舵角速度ωとの間の速度偏差Δ3の大きさは、実操舵角速度ωによる補正がない場合の速度偏差Δ2の大きさよりも小さくなる。この結果、切り戻し操舵を妨げるダンピング効果が減少する。これによりドライバーは過度の粘性感を感じないで操舵することができる。
以上のように、本実施形態によれば、実操舵角速度ωに応じて目標戻り操舵角速度ωtを設定することにより、切り増し操舵において過度の操舵反力の発生を軽減することが可能になり、また切り戻し操舵においてステアリング軸2が中立位置へ戻るのを促すことができる。
再び、電流指令値補正部32の説明に戻る。車速ゲイン部130が設定する車速ゲインKPは図10に示すような特性を有する。車速Vが少なくとも車速V1に至るまでは車速ゲインKPは小さいゲインKP1で一定であり、車速V1以上では次第に大きくなり、車速V2以上では大きなゲインKP2で一定である。ただし、車速ゲインKPはこのような特性に限定されるものではない。
車速Vに応じて粘性係数Cを可変する粘性係数出力部133が設定する粘性抵抗Cは図11に示すような特性を有する。車速Vが少なくとも車速V3に至るまでは粘性係数C小さい粘性係数C1で一定であり、車速V3以上で車速V4(>V3)以下では次第に大きくなり、車速V4以上では大きな粘性係数C2で一定である。ただし、粘性抵抗Cはこのような特性に限定されるものではない。
(動作例)
次に、図12を参照して、電流指令値補正部32の動作例を説明する。
先ず操舵トルクTd、電流指令値Iref、車速V、操舵角θ、実操舵角速度ωを入力(読み取り)し(ステップS1)、操舵トルクゲイン部110は操舵トルクゲインThを出力する(ステップS2)。ゲイン部111は電流指令値IrefにゲインKt倍してアシストトルクTaを算出し(ステップS3)、加算部102で操舵トルクTdと加算して、その合計値を第1操舵系特性部150に入力する(ステップS4)。
また、目標操舵角速度設定部120は、入力された操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに基づいて目標戻り操舵角速度ωtを設定する(ステップS5)。
図13は、目標操舵角速度設定部120による目標戻り操舵角速度設定処理のフローチャートである。
ステップS30において操舵角シフト設定部200は、実操舵角速度ωに応じた操舵角シフトΔθを算出する。
ステップS31において減算部201は、操舵角θから操舵角シフトΔθを減じて補正した補正後の操舵角(θ-Δθ)を目標戻り操舵角速度算出部202に入力する。目標戻り操舵角速度算出部202は、補正後の操舵角(θ-Δθ)と車速Vに応じて目標戻り操舵角速度ωtを算出する。
その後に目標戻り操舵角速度設定処理は終了する。
図12を参照する。反転部121が目標戻り操舵角速度ωtの符号反転を行い(ステップS6)、反転された目標戻り操舵角速度“-ωt”を加算部101に入力して加算を行う。車速ゲイン部130は車速Vに従った車速ゲインKPを出力し(ステップS7)、粘性係数出力部133は車速Vに従った粘性係数Cを出力する(ステップS8)。
粘性係数Cは第1操舵系特性部150に入力され(ステップS9)、伝達特性1/Cを操舵トルクTdとアシストトルクTaの合計値に乗算して目標速度値ω1を出力し(ステップS10)、目標速度値ω1がLPF151に入力されてフィルタ処理される(ステップS11)。
LPF151でフィルタ処理された目標速度値ω2は加算部101で目標戻り操舵角速度“-ωt”と加算され、加算された目標速度値ω3が第2操舵系特性部160に入力される(ステップS12)。
第2操舵系特性部160からの目標操舵角速度ω0は減算部103に加算入力され、実操舵角速度ωは減算部103に減算入力され、減算部103で偏差SG1が算出される(ステップS13)。
偏差SG1は乗算部132に入力され、操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPが乗算され(ステップS14)、その乗算によってハンドル戻し制御ゲインSG2が求められる。
ハンドル戻し制御ゲインSG2は積分制御部で積分処理され(ステップS15)、更に積分ゲイン部141で比例処理され(ステップS16)、ハンドル戻し制御ゲインSG3が出力される。ハンドル戻し制御ゲインSG3はリミッタ142に入力され、リミッタ142で操舵トルクゲインTh及び車速ゲインKPを用いてリミット処理される(ステップS17)。
リミッタ142でリミット処理されたハンドル戻し制御ゲインSG4は加算部104に入力され、ハンドル戻し制御ゲインSG2と加算され(ステップS18)、ハンドル戻し制御電流HRが出力される。ハンドル戻し制御電流HRを加算部105で電流指令値Irefに加算して補正し(ステップS19)、補正後電流指令値Irefnを出力する(ステップS20)。
(第1実施形態の効果)
(1)電動パワーステアリング装置は、少なくとも操舵トルクTdに基づいて電流指令値Irefを演算し、電流指令値Irefに基づいてモータ20を駆動し、モータ20の駆動制御によって操舵系をアシスト制御する。電動パワーステアリング装置は、ステアリング軸2の操舵角θを検出する舵角センサ14と、ステアリング軸2の実操舵角速度ωを検出する角速度変換部38と、車速Vを検出する車速センサ12と、操舵角θ、車速V、及び実操舵角速度ωに応じて、ステアリング軸2を中立位置へ戻すための目標戻り操舵角速度ωtを設定する目標操舵角速度設定部120と、目標戻り操舵角速度ωtに基づいてハンドル戻し制御電流を算出する減算部103、積分部140、積分ゲイン部141、リミッタ142及び加算部104と、ハンドル戻し制御電流で補正された電流指令値Irefnでモータ20を駆動するインバータ37を備える。
これにより、実操舵角速度ωに応じて目標操舵角速度を補正することが可能となる。この結果、ドライバーの操舵状態に応じた最適な目標操舵角速度を設定できる。
(2)目標操舵角速度設定部120は、操舵角θ及び車速Vに応じて算出される目標戻り操舵角速度ωtを、実操舵角速度ωに応じて補正する。これにより、実操舵角速度ωに応じて目標操舵角速度を補正することが可能となる。
(3)目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωに応じて、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させる。これにより、セルフアライニングトルクの位相遅れを考慮した最適な目標戻り操舵角速度ωtを設定できる。
(4)目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωが高いほど切り増し操舵時に目標戻り操舵角速度ωtを減少させ、実操舵角速度ωが高いほど切り戻し操舵時に目標戻り操舵角速度ωtを増加する。
これにより、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
(5)目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度に応じて補正した操舵角(θ-Δθ)と車速Vとに応じて目標戻り操舵角速度ωtを算出する。
これにより、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させることができる。この結果、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態の目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωに応じた補正値Δωtを、操舵角θ及び車速Vに応じて算出した基本目標戻り操舵角速度ωt*に加えることにより、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに基づいて目標戻り操舵角速度ωtを設定する。
図14を参照する。目標操舵角速度設定部120は、補正量算出部203と、目標戻り操舵角速度算出部202と、加算部204を備える。
補正量算出部203は、実操舵角速度ω及び車速Vに応じた補正値Δωtを算出する。補正量算出部203によって算出される補正値Δωtは、図15の(a)に示すような特性を有してよい。実操舵角速度ωの絶対値がある値以下では補正値Δωtは0であり、この値を超えると次第に絶対値が大きくなる。図15(a)では線形に変化しているが、非線形に変化してもよい。
また、実操舵角速度ωの符号が正の場合に補正値Δωtの符号は負であり。実操舵角速度ωの符号が負の場合には補正値Δωtの符号は正である。さらに、車速Vが高いほど補正値Δωtの絶対値は大きくなり、補正値Δωtが0である実操舵角速度ωの範囲も狭くなる。
目標戻り操舵角速度算出部202は、操舵角θと車速Vに応じて基本目標戻り操舵角速度ωt*を算出する。操舵角θに対する基本目標戻り操舵角速度ωt*の特性は図7に示す(θ-Δθ)に対する目標戻り操舵角速度ωtの特性と同様である。加算部204は、基本目標戻り操舵角速度ωt*に補正値Δωtを加算することにより目標戻り操舵角速度ωtを算出する。
図15の(b)は、第2実施形態における目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性の説明図である。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に実操舵角速度ωが正の場合(一点鎖線)には、目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合(破線)よりも増加する。また、実操舵角速度ωが負の場合(実線)には、目標戻り操舵角速度(-ωt)は、実操舵角速度ωによる補正がない場合(破線)よりも減少する。
このため、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果を生じることになる。
(第2実施形態の効果)
目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωに応じた補正値Δωtを、前記操舵角及び前記車速に応じて算出した基本目標戻り操舵角速度ωt*に加えて、目標戻り操舵角速度ωtを設定する。
これにより、第1実施形態と同様に、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させることができる。この結果、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態の目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωに応じた補正ゲインKωtを、操舵角θ及び車速Vに応じて算出した基本目標戻り操舵角速度ωt*に乗じることにより、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに基づいて目標戻り操舵角速度ωtを設定する。
図16を参照する。目標操舵角速度設定部120は、補正ゲイン算出部205と、目標戻り操舵角速度算出部202と、乗算部206を備える。
補正ゲイン算出部205は、操舵角θ、実操舵角速度ω及び車速Vに応じた補正ゲインKωtを算出する。目標戻り操舵角速度算出部202は、操舵角θと車速Vに応じて基本目標戻り操舵角速度ωt*を算出する。操舵角θに対する基本目標戻り操舵角速度ωt*の特性は図7に示す(θ-Δθ)に対する目標戻り操舵角速度ωtの特性と同様である。乗算部206は、基本目標戻り操舵角速度ωt*に補正ゲインKωtを乗算することにより目標戻り操舵角速度ωtを算出する。
補正ゲイン算出部205は、操舵角θの符号と実操舵角速度ωの符号を比較して、切り増し操舵が行われているのか切り戻し操舵が行われているのかを判断する。補正ゲイン算出部205は、操舵角θの符号と実操舵角速度ωの符号が等しい場合に切り増し操舵が行われていると判断し、操舵角θの符号と実操舵角速度ωの符号が異なる場合に切り戻し操舵が行われていると判断する。
補正ゲイン算出部205は、切り戻し操舵時には実操舵角速度ωに応じて補正ゲインKωtを1よりも増加させ、切り増し操舵時には実操舵角速度ωに応じて補正ゲインKωtを1よりも低減させる。したがって、切り戻し操舵時に補正ゲインKωtを1よりも大きくなると目標戻り操舵角速度ωtの絶対値が補正前よりも増大し、切り増し操舵時に補正ゲインKωtが1よりも小さくなると目標戻り操舵角速度ωtの絶対値が補正前よりも減少する。
補正ゲイン算出部205は、切り戻し操舵時に図17の(a)に示すような特性を有する補正ゲインKωtを算出する。実操舵角速度ωの絶対値がある値以下では補正ゲインKωtは1であり、この値を超えると次第に絶対値が大きくなる。図17(a)では線形に変化しているが、非線形に変化してもよい。補正ゲインKωtが上限値に至ると、その上限値で一定となる。また、車速Vが高いほど補正ゲインKωtが1である実操舵角速度ωの範囲も狭くなる。
図17の(b)は、図17の(a)の補正ゲインKωtにより補正された目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性の説明図である。補正ゲインKωtが1より大きくなることにより、補正後(実線)の目標戻り操舵角速度(-ωt)の絶対値は、補正しない場合(破線)よりも大きくなる。
一方で切り増し操舵時には、補正ゲイン算出部205は、図18の(a)に示すような特性を有する補正ゲインKωtを算出する。実操舵角速度ωの絶対値がある値以下では補正ゲインKωtは1であり、この値を超えると次第に絶対値が小さくなる。図18(a)では線形に変化しているが、非線形に変化してもよい。補正ゲインKωtが下限値に至ると、その下限値で一定となる。また、車速Vが高いほど補正ゲインKωtが1である実操舵角速度ωの範囲も狭くなる。
図18の(b)は、図18の(a)の補正ゲインKωtにより補正された目標戻り操舵角速度(-ωt)の特性の説明図である。補正ゲインKωtが1より小さくなることにより、補正後(実線)の目標戻り操舵角速度(-ωt)の絶対値は、補正しない場合(破線)よりも大きくなる。
このように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に切り戻し操舵時にはステアリング軸2を中立位置へ戻す操舵角θの変化の方向に目標戻り操舵角速度(-ωt)が増加し、切り増し操舵時には減少する。このため、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果を生じることになる。
(第3実施形態の効果)
目標操舵角速度設定部120は、実操舵角速度ωに応じた補正ゲインKωtを、操舵角θ及び車速Vに応じて算出した基本目標戻り操舵角速度ωt*に乗じることにより目標戻り操舵角速度ωtを設定する。
これにより、第1実施形態と同様に、操舵角θの変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを目標戻り操舵角速度ωtに反映させることができる。この結果、切り増し操舵時や切り戻し操舵時に、操舵を妨げるハンドル戻し制御電流を低減できる。これによりドライバーは過度の反力を感じないで操舵することができる。また、切り戻し操舵を助けるハンドル戻し制御電流を増加できる。このため、ステアリング軸2を中立位置へ戻すのが楽になる。
1…ステアリングホイール、2…ステアリング軸、3…減速ギア、4a、4b…ユニバーサルジョイント、5…ラック・ピニオン機構、6a…タイロッド、6b…タイロッド、7a、7b…ハブユニット、8L…操向車輪、8R…操向車輪、10…トルクセンサ、11…イグニションキー、12…車速センサ、13…バッテリ、14…舵角センサ、20…モータ、30…コントロールユニット、31…電流指令値演算部、32…電流指令値補正部、33…電流制限部、34…減算部、35…PI制御部、36…PWM制御部、37…インバータ、38…角速度変換部、40…モータ電流検出器、101、102、104、105、204…加算部、103、201…減算部、110…操舵トルクゲイン部、111…ゲイン部、120…目標操舵角速度設定部、121…反転部、130…車速ゲイン部、132、206…乗算部、133…粘性係数出力部、140…積分部、141…積分ゲイン部、142…リミッタ、150…第1操舵系特性部、151…ローパスフィルタ、160…第2操舵系特性部、200…操舵角シフト設定部、202…目標戻り操舵角速度算出部、203…補正量算出部、205…補正ゲイン算出部

Claims (5)

  1. 少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算し、前記電流指令値に基づいてモータを駆動し、前記モータの駆動制御によって操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置であって、
    ステアリング軸の操舵角を検出する操舵角検出部と、
    前記ステアリング軸の操舵角速度を検出する操舵角速度検出部と、
    車速を検出する車速検出部と、
    前記操舵角、前記車速、及び前記操舵角速度に応じて、前記ステアリング軸を中立位置へ戻すための目標戻り操舵角速度を設定する目標操舵角速度設定部と、
    前記目標戻り操舵角速度に基づいてハンドル戻し制御電流を算出するハンドル戻し制御電流算出部と、
    前記ハンドル戻し制御電流で補正された前記電流指令値で前記モータを駆動する駆動部と、
    を備え
    前記目標操舵角速度設定部は、前記操舵角速度に応じて前記操舵角の変化に対するセルフアライニングトルクの位相遅れを前記目標戻り操舵角速度に反映させることにより、前記操舵角及び前記車速に応じて算出される前記目標戻り操舵角速度を補正することを特徴とする記載の電動パワーステアリング装置。
  2. 前記目標操舵角速度設定部は、前記操舵角速度が高いほど切り増し操舵時に前記目標戻り操舵角速度を減少させ、前記操舵角速度が高いほど切り戻し操舵時に前記目標戻り操舵角速度を増加することを特徴とする請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記目標操舵角速度設定部は、前記操舵角速度に応じて補正した前記操舵角と前記車速とに応じて前記目標戻り操舵角速度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記目標操舵角速度設定部は、前記操舵角速度に応じた補正値を、前記操舵角及び前記車速に応じて算出した前記目標戻り操舵角速度に加えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記目標操舵角速度設定部は、前記操舵角速度に応じた補正ゲインを、前記操舵角及び前記車速に応じて算出した前記目標戻り操舵角速度に乗じることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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