JP7151665B2 - 連続鋳造用水冷鋳型及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳片引き抜き速度が2.0m/min以上の高速鋳造時であっても、鋳片の幅方向及び鋳造方向で均一で且つ高い熱流束で鋳片を冷却することを可能とする連続鋳造用水冷鋳型に関し、更に、この連続鋳造用水冷鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、連続鋳造用水冷鋳型(以下、単に「鋳型」とも記す)の内部空間に溶鋼を注入し、溶鋼が鋳型表面と接触して冷却されて生成した凝固シェル(凝固殻)を外殻とする鋳片を、サポートロールやガイドロールなどの鋳片支持ロールで支持しながら連続的に鋳型下方に引き抜き、鋼鋳片を製造している。使用される鋳型は、一般的に、熱伝導率の高い銅板(銅製または銅合金製の鋳型プレート)を溶鋼側に配し、溶鋼側の反対側には鋼などからなるバックアッププレートを配し、前記銅板には鋳造方向に冷却水の流路となる冷却溝(「冷却スリット」とも呼ばれる)が形成された内部水冷型の構造である。バックアッププレート側には、冷却水の供給路及び排水路が設けられている。
近年、生産効率の向上が図られており、鋳片引き抜き速度(「鋳造速度」ともいう)が2.0m/min以上の極めて高い速度での操業が一般的に実施されている。鋳片引き抜き速度の上昇に伴い、凝固シェルは、鋳型出側でより一層厚みが薄く、より一層不均一成長が発生しやすくなる。その結果、鋳片表面に縦割れが発生したり、凝固シェルが破断して溶鋼が鋳型下端以降で漏れ出すブレークアウトと呼ばれる操業上の大問題が発生したりする。
前述した縦割れが鋳片表面に生じた場合は、熱間圧延前の製鋼過程で表面疵をスカーファーやグラインダーなどによる手入れ処理で除去することが必要であり、経済性のメリットの大きい鋳片の直送加熱や直送圧延などが実施できなくなり、生産性向上の阻害要因となる。
このような連続鋳造鋳片における縦割れやブレークアウトの発生を防止するためには、凝固の初期段階で凝固シェル厚みを迅速且つ均一に成長させ、鋳型出側に至るまでに十分な厚みにできるような鋳型内での鋳片冷却技術を実現することが要求される。
そこで、鋳型内での不均一冷却に起因する縦割れやブレークアウトを回避するために多数の手段が提案されている。
例えば、特許文献1には、鋳片引き抜き速度が1.3m/min以上の高速鋳造用の水冷式連続鋳造用鋳型であって、溶鋼と接する鋳型表面の少なくとも上半分に、(1)水平方向の凹部の幅または直径:3mm超、80mm以下、(2)凹部の深さ:100~1000μm、(3)凹部面積率:50~95%、を満足する凹凸を有する連続鋳造用水冷鋳型が提案されている。特許文献1は、メニスカス(「鋳型内溶鋼湯面」ともいう)付近の熱流束を弱めてメニスカス付近の抜熱量を均一化させ、鋳片の縦割れを防止するという技術である。
特許文献2には、鋳型銅板の熱伝導率に対する比率が所定の範囲である熱伝導率を有する金属または非金属が、溶鋼と接する鋳型表面に設けた凹部に充填された異種物質充填部を、メニスカスを含む領域に複数個有し、且つ、前記異種物質充填部の設置位置における鋳型銅板表面と鋳型銅板の溝形水路(冷却スリット)との間の熱抵抗が所定の値である連続鋳造用鋳型が提案されている。特許文献2は、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束を周期的に増減させ、この熱流束の増減により、凝固シェルに作用する鋼の変態による応力や熱応力を低減し、凝固シェル表面における割れの発生を抑制するという技術である。
特許文献3には、鋳型の溝形水路(冷却スリット)を下部と上部とに分割し、鋳型下部の冷却水の流速を鋳型上部の冷却水の流速よりも速くして、鋳型の下部と上部との抜熱量の比(下部の抜熱量/上部の抜熱量)を1.47以上として連続鋳造する連続鋳造方法が提案されている。特許文献3は、鋳型の上部は緩冷却化し、鋳型の下部は強冷却化し、これによって、中炭素鋼の縦割れ防止及び凝固シェル厚みの増大を図るという技術である。
特許文献4には、連続鋳造用水冷鋳型の溝形水路(冷却スリット)の冷却水の流速を5m/s以下に低下させることで、溝形水路(冷却スリット)の銅板側の温度を冷却水の飽和温度を超える状態にさせて、伝熱形態を核沸騰熱伝達域とし、熱流束を向上させる手段が提案されている。特許文献4は、連続鋳造用水冷鋳型の通常の伝熱形態は強制対流熱伝達域であるが、核沸騰熱伝達域に移行させて熱流束を増大させるという技術である。
特開平9-94634号公報 特開2017-39165号公報 特開平10-58093号公報 特開平3-81049号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
特許文献1は、溶鋼と接する側の銅板表面に溝加工を施しており、溝加工を施した銅板表面は、凝固シェルとの摩擦により摩耗する。したがって、鋳型使用回数の増加に伴って溝深さが減少し、溝加工の効果が得られなくなる。また、溝加工の効果を充分に享受しようとすると、鋳型の使用回数を制限する必要があり、鋼鋳片の製造コストが増大する。加えて、鋳型表面に設けた凹凸による空気層などを鋳型銅板と凝固シェルと間に存在させることは冷却を弱めることになるので、高速鋳造を志向するには限界がある。
特許文献2は、鋳型銅板表面の凹部に所定の熱伝導率を有する金属または非金属を充填するので、上記の特許文献1における問題点は軽減されるが、鋳片引き抜き速度を2.0m/min以上とするには、鋳型の冷却が不足し、鋳型下端で充分な凝固シェル厚が確保できないという問題がある。
特許文献3は、鋳造方向に沿って延びる縦長形状の溝形水路(冷却スリット)が鋳型幅方向に複数個並んで設置されており、冷却スリットが形成されている位置の鋳型表面と形成されていない位置の鋳型表面とで、抜熱量が相違するという問題がある。また、高速鋳造に対応するために、冷却水の流速を高めて抜熱量を増加させようとするほど、鋳型幅方向における抜熱量の相違が大きくなり、鋳片の幅方向及び鋳造方向での均一な冷却は難しくなる。ましてや、鋳片引き抜き速度が2.0m/min以上となる高速鋳造時には、均一な冷却は困難である。また、鋳型の上部と下部との境界には冷却水路が形成されておらず、鋳造方向に均一な冷却を阻害している。
特許文献4の方法について、本発明者らが、実機にて、鋳型銅板に埋設された熱電対の温度測定値に基づき確認した結果、特許文献4は、冷却水路が溝形水路(冷却スリット)であることから、鋳型幅方向及び鋳造方向における抜熱量の相違が起こりやすく、特に鋳片引き抜き速度が変化する場合に顕著となることがわかった。
具体的には、鋳片引き抜き速度が低下して鋳型への伝熱量が減少すると、核沸騰の起点となる気泡の発生のしやすさが場所によって著しく異なるようになり、気泡が発生しにくい位置では、伝熱形態が核沸騰熱伝達域から強制対流熱伝達域へと変化する。伝熱形態が強制対流熱伝達域へと変化すると、鋳型による鋳片の抜熱量が低下するので、特に、浸漬ノズルからの吐出流が直接衝突する鋳片短辺などの凝固シェルの成長が不足し、鋳片短辺の凝固シェルが鋳型直下で膨らんでしまうバルジング現象やブレークアウトの発生を完全には抑えることができないことが確認できた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳片引き抜き速度が2.0m/min以上の高速鋳造時であっても、鋳片の幅方向及び鋳造方向で均一で且つ高い熱流束で鋳片を冷却することを可能とする連続鋳造用水冷鋳型を提供することであり、また、この連続鋳造用水冷鋳型を用いて、安定した高速鋳造と鋳片縦割れ抑制の両立を達成する連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]冷却水路が形成されている銅合金製の鋳型プレートと、
前記冷却水路を覆うように前記鋳型プレートに取り付けられているバックアッププレートと、を有する連続鋳造用水冷鋳型であって、
前記鋳型プレートの下部での冷却水路は、鋳型幅方向に配列された複数の溝形水路(冷却スリット)で構成され、該複数の溝形水路の各々は、鋳造方向に延びた縦長形状であり、
前記鋳型プレートの上部での冷却水路は、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で構成され、該箱形水路は、前記鋳型プレートの下部の複数の冷却水路に連通し、
前記鋳型プレートの上部の箱形水路を構成する鋳型プレートの内壁面に、複数の凹部が設けられていることを特徴とする連続鋳造用水冷鋳型。
[2]前記凹部は、一定間隔で周期的に設けられていることを特徴とする、上記[1]に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[3]前記凹部は、半球状、円錐状、円錐台状、円筒状、尖塔状、角錐状のなかから選ばれる1種類の同一形状であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[4]前記凹部は、千鳥状に設けられていることを特徴とする、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[5]前記凹部の深さは、0.1~2.0mmであることを特徴とする、上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[6]前記複数の凹部の一部は、前記鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で埋め込まれていることを特徴とする、上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[7]鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で埋め込まれている前記凹部は、周囲に対して平滑面とされていることを特徴とする、上記[6]に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[8]前記材料の熱伝導率は、前記鋳型プレートの熱伝導率よりも低いことを特徴とする、上記[6]または上記[7]に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[9]前記材料が埋め込まれていない凹部が鋳型幅方向に一列に設置され、前記材料が埋め込まれた凹部が鋳型幅方向に一列に設置され、且つ、前記材料が埋め込まれていない凹部が鋳型幅方向に一列に設置された群と、前記材料が埋め込まれた凹部が鋳型幅方向に一列に設置された群とが、鋳造方向に交互に設置されていることを特徴とする、上記[6]から上記[8]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[10]前記鋳型プレートの下部の冷却水路と前記鋳型プレートの上部の冷却水路との接続位置が、鋳型上端から150~500mmの範囲内であることを特徴とする、上記[1]から上記[9]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[11]前記鋳型プレートの下部での冷却水路における冷却水の流速は7.0~13.0m/sの範囲内であることを特徴とする、上記[1]から上記[10]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型。
[12]上記[1]から上記[11]のいずれかに記載の連続鋳造用水冷鋳型を用いて溶鋼を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、鋳造開始から鋳造終了までの少なくとも一部の期間で、鋳片引き抜き速度を2.0m/min以上として連続鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、連続鋳造用水冷鋳型の鋳型プレートの上部における冷却水路を、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で形成し、この箱形水路を構成する鋳型プレートの内壁面に、複数の凹部を設けるので、特に高速鋳造条件下や鋳片引き抜き速度の変化が起こる場合でも、連続鋳造用水冷鋳型の上部における均一強冷却を実現でき、凝固初期に形成される凝固シェルを早期に均一且つ十分な厚みに成長させることができる。その結果、鋳片の縦割れやブレークアウトの発生を防止できるようになる。
連続鋳造用水冷鋳型の斜視図である。 大気圧下の水に対し、被冷却体の伝熱面の過熱度と熱流束との関係を示す図である。 本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の一例を示す概略図である。 本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の一例を示す概略図である。 本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の他の一例を示す概略図である。 鋳型抜熱量指数の比較を示す図である。 鋳片表面における縦割れ発生指数の比較を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。
本発明を説明する前に、鋼の連続鋳造方法を簡単に説明する。連続鋳造用水冷鋳型の斜視図を図1に示す。スラブ鋳片を連続鋳造するための連続鋳造用水冷鋳型1(以下、単に「鋳型1」とも記す)は、相対する一対の鋳型長辺2と、この鋳型長辺2に挟持された一対の鋳型短辺3とを有する。鋳型1の上方には、溶鋼5を収容するタンディッシュ(図示せず)が配置されており、タンディッシュの底部には浸漬ノズル4が設置されている。一対の鋳型長辺2と一対の鋳型短辺3とで、鋳型1には矩形の内部空間が形成されており、この内部空間に浸漬ノズル4が挿入されている。後述するように、鋳型長辺2及び鋳型短辺3の溶鋼5と接触する側は、銅合金製の鋳型プレートで構成され、この鋳型プレートの背面にはバックアッププレートが配置されている。
鋳型長辺2及び鋳型短辺3を構成する銅合金製の鋳型プレートには、溶鋼5と接する面の裏側の面に冷却水路が形成されており、この冷却水路に水を通過させて鋳型1を冷却している。鋳型1の内部空間に浸漬ノズル4を介して溶鋼5を注入し、溶鋼5を鋳型1によって冷却して凝固させ、鋳型1との接触面に凝固シェルを形成させる。この凝固シェルを外殻とし、内部を未凝固の溶鋼5とする鋳片を、鋳型1の下方に連続的に引き抜き、鋼のスラブ鋳片を製造する。鋳型1においては、溶鋼5及び高温の鋳片と接触することで、鋳型プレートの表面温度(溶鋼と接触する側の温度)は上昇し、鋳型内のメニスカス(鋳型内溶鋼湯面)の位置近傍で最高値を示す。鋳型プレートとしては、熱応力に対する変形抵抗が高く、且つ、冷却水による冷却効果を高めることのできる熱伝導率の高い銅合金が使用される。
連続鋳造用水冷鋳型1に設置される鋳型プレートなどの被冷却体の表面を冷却水で冷却するときの伝熱形態について説明する。図2に、大気圧下の水に対し、被冷却体の伝熱面の過熱度と熱流束との関係を示す。ここで、被冷却体の伝熱面の過熱度とは、被冷却体の伝熱面が水の飽和温度に対してどの程度過熱されているかを示す値であり、伝熱面温度と水の飽和温度との差で表される。尚、水の飽和温度とは、或る圧力下で水が沸騰する温度であり、また、図2は、刊行物1に記載された図面である(刊行物1;内田秀雄編、大学演習伝熱工学、P.231、昭和54年2月1日発行、裳華房)。
図2に示すように、一般的に、冷却水による冷却(水冷)における伝熱形態としては、強制対流熱伝達域、核沸騰熱伝達域、遷移沸騰熱伝達域、膜沸騰熱伝達域の4つに分類される。強制対流熱伝達域は、伝熱面の過熱度が或る値以下(例えば4℃以下)のときの伝熱形態であり、水の沸騰は起こらず、水の顕熱による伝熱である。図2では伝熱面の過熱度が1℃未満の範囲を記載していないが、この範囲も強制対流熱伝達域である。
伝熱面の過熱度が或る値(例えば4℃)を超えて水の沸騰(「核沸騰」という)が始まると、核沸騰熱伝達域に移行する。核沸騰熱伝達域は、伝熱面上にランダムに分布した発泡点から気泡が発生する形態であり、水が液相から気相に変化する時の潜熱を利用した伝熱になるため、熱流束が強制対流熱伝達域に比較して10~100倍大きくなり、伝熱効率が非常に高い領域である。伝熱面の過熱度が更に大きくなると、気泡が合体するようになり、合体した気泡が伝熱を阻害するようになる。この核沸騰の上限の熱流束を限界熱流束点という。
伝熱面過熱度が限界熱流束点となる過熱度を超えると、遷移沸騰熱伝達域になり、熱流束は伝熱面過熱度の上昇に伴って減少する。伝熱面過熱度が更に上昇すると、膜沸騰熱伝達域に移行し、熱流束は伝熱面過熱度の上昇に伴って増加する。膜沸騰熱伝達域は、発生した気泡が成長して、伝熱面に空気膜を形成し、水に比べて熱伝達率が低い空気層が伝熱面にできることで核沸騰熱伝達域に比較して伝熱効率は低下する。遷移沸騰熱伝達域は、膜沸騰と核沸騰とが、空間的、時間的に共存していると考えられている。
本発明は、鋳型プレートの上部は冷却水の流速を遅くして核沸騰熱伝達域とし、鋳型プレートの下部は、従来と同様に強制対流熱伝達域とすることを図った技術である。
次に、本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の一例を説明する。
図3及び図4は、本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の一例を示す概略図であり、図3は、鋳型プレート及びバックアッププレートで構成される鋳型長辺の概略断面図、図4は、鋳型長辺を構成する鋳型プレートの背面(冷却水路が設置された側の面)の概略図である。尚、図4は、鋳型プレートの鋳型幅方向の一部分を示している。
図3に示すように、鋳型長辺2は、鋳型プレート6とバックアッププレート7とを有しており、バックアッププレート7は、鋳型プレート6に設けられた冷却水路を覆うように、スタッドボルト(図示せず)などで鋳型プレート6に取り付けられている。バックアッププレート7には、その下部に冷却水供給路13が設けられ、その上部に冷却水排水路15が設けられている。冷却水供給路13の鋳型プレート6の側には、鋳型幅方向に広がった給水口14が形成され、同様に、冷却水排水路15の鋳型プレート6の側には、鋳型幅方向に広がった排水口16が形成されている。バックアッププレート7の背面(鋳型プレート6と接する面の裏側の面)には、給水側及び排水側の上下2段の水箱(図示せず)が設置されており、冷却水供給路13及び冷却水排水路15はそれぞれの水箱に連通している。
図3及び図4に示すように、鋳型プレート6の冷却水路は鋳造方向上下で異なっており、鋳型プレート6の鋳造方向下部での冷却水路は、鋳型幅方向に配列された複数の溝形水路8(冷却スリット)で構成されており、この複数の溝形水路8の各々は、鋳造方向に延びた縦長形状である。これに対して、鋳型プレート6の鋳造方向上部での冷却水路は、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路9で構成されている。この箱形水路9は、鋳型プレート6の下部の複数の溝形水路8と接続位置10で連通している。鋳型プレート6の背面側には、このような構成の溝形水路8及び箱形水路9が、鋳型幅方向に設置されている。尚、図4では、7個の溝形水路8が1つの箱形水路9と連通しているが、1つの箱形水路9が連通する溝形水路8は、7個に限ることはなく、複数個であれば幾つでもよい。
バックアッププレート7を鋳型プレート6に取り付けることで、バックアッププレート7に形成された給水口14及び排水口16が、鋳型プレート6に形成された溝形水路8及び箱形水路9に連通し、バックアッププレート7から鋳型プレート6への冷却水路及び鋳型プレート6からバックアッププレート7への冷却水路が形成される。冷却水は、冷却水供給路13から鋳型プレート6の下部の溝形水路8へと供給され、溝形水路8の内部を上昇し、鋳型プレート6の上部の箱形水路9を通って冷却水排水路15から排出される。
連続鋳造用水冷鋳型1の上部については、注入された高温の溶鋼5が接する部分であるので、特にメニスカスを含む鋳型上端から250mmの範囲は、高速鋳造を志向するにあたり、高い冷却能を有することが望まれる。そこで本発明では、鋳型プレート6の上部は核沸騰熱伝達を利用し、抜熱の強化を指向する。
核沸騰熱伝達を生じさせるためには、冷却水の流速を低い値とすることが必要であり、冷却水の流速を概ね5.0m/s以下にすると、強制対流熱伝達から核沸騰熱伝達へと伝熱モードが変化するといわれている。そのため、本発明では、鋳型プレート6の上部、つまり、鋳型1の上部の冷却水路を、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路9として、冷却水の流速を意図的に低下させている。
核沸騰は、鋳型プレート6の冷却水路の内壁面で生成する気泡を起点として生じるが、気泡生成頻度は冷却水路の内壁面の粗度や形状に依存する。特に、気泡は冷却面に凹部が在るとその箇所を優先的な生成サイトとして生じることが知られている。
したがって、本発明では、鋳型プレート上部の箱形水路9を構成する鋳型プレート6の内壁面(以下、「箱形水路の内壁面」とも記す)に複数の凹部11を設け、気泡の生成を促進させる。凹部11を設けることにより、気泡の生成頻度が高まり、鋳片引き抜き速度が低下して鋳型1への伝熱量が減少しても、しばらくの期間は核沸騰状態が維持される。これにより、鋳型1による抜熱は急激に低下せず、鋳片のバルジング現象やブレークアウトの発生が抑制できる。
また、箱形水路9の内壁面に凹部11を一定間隔で周期的に設ければ、設置した凹部11の位置に対応して気泡が生成するので、その結果、核沸騰熱伝達による強冷却効果を箱形水路9の内壁面で均一に享受できる。したがって、凹部11を一定間隔で周期的に設けることが好ましい。
ここで、凹部11の形状は、同一の形状とすることが好ましい。同一の形状とすることで、箱形水路9の内壁面に凹部11を、バラツキを抑制して容易に形成することができる。
上述したように、気泡は冷却面の凹部11が優先的な生成サイトとなって生じるが、気泡の生成のしやすさは凹部11の形状に依存する。本発明では、鋳型冷却面内で均一に気泡を発生させ、鋳片の均一強冷却を志向するので、特定の箇所に集中して気泡が発生する状態は望ましくない。そのため、どの凹部11にも同じ気泡発生能を有するように、形状を揃えることが好ましい。即ち、凹部11の形状は、半球状、円錐状、円錐台状、円筒状、尖塔状、角錐状のなかから選ばれる1種類の同一形状とすることが好ましい。
箱形水路9の内壁面に形成する凹部11は、鋳型上端からの鋳造方向距離を揃えて鋳型幅方向に並べて一列に設置し(幅方向列)、この幅方向列を鋳型上端からの鋳造方向距離を変えて複数段設けて凹部11の集団を構成する。ここで、幅方向列を構成する凹部11の群は、鋳造方向に隣り合う幅方向列を構成する凹部11の群に対して千鳥配置となるように配置することが好ましい。即ち、或る段の幅方向列の凹部11の群は、その上段及び/または下段の幅方向列の凹部11の群の幅方向ピッチの半分の位置に形成される。
このように凹部11の群を千鳥状に配置することで、箱形水路9の内壁面において、特に、鋳型幅方向の内壁面において、差の少ない抜熱が可能になる。尚、鋳型幅方向で隣り合う凹部11の中心間の鋳型幅方向の間隔、及び、幅方向列の凹部11の群の中心間の鋳造方向の間隔は、ともに凹部11の直径の0.5~4.0倍の範囲内であることが好ましい。
本発明者らは、冷却面形状と気泡の生成しやすさとの関係について実験室試験を通じて検討を行ない、その結果、深さ0.1~2.0mmの凹部を加工した場合に、安定した微細気泡が生成することを知見した。したがって、箱形水路9の内壁面に形成する半球状、円錐状、円錐台状、円筒状、尖塔状、または角錐状の凹部11の深さは、0.1~2.0mmとすることが好ましい。凹部11の深さが0.1mmよりも浅い場合には、気泡の生成起点となりにくく、一方、凹部11の深さが2.0mmを超えると、生成した気泡が凹部の内部に捕捉されたりして、鋳型プレート6の内壁面の伝熱挙動に影響を及ぼすからである。ここで、凹部11の直径は2~20mmであることが好ましい。
前述したように、鋳型プレート6の下部、つまり鋳型1の下部については、従来から行われてきた方式、つまり、鋳造方向を長手方向とした溝形水路8による冷却方式とする。鋳型下部は、メニスカスから離れた位置となるので、溶鋼5には直接接触せず、且つ、凝固シェルの温度はメニスカス付近よりも低くなる。また、熱流束もメニスカス付近の半分以下と低位になり、鋳型幅方向に熱流束のばらつきがあっても、鋳片の冷却に及ぼす影響は小さくなる。このため、鋳型プレート6の下部は、従来どおりの形状、即ち、冷却水路をスリット状にした溝形水路8で冷却すればよい。
鋳型プレート6の下部の溝形水路8を流れる冷却水の流速は、7.0~13.0m/sの範囲内であることが好ましい。冷却水の流速を7.0m/s以上と速くすることで、冷却水による強制対流による熱伝達が促進され、抜熱効果を高めることができる。更に望ましくは、10m/s以上の流速を確保すると、高速鋳造時でも鋳型下端で変形破断の生じない凝固シェルを、より安定的に形成することができる。
一方、流速をより速めるためには、溝形水路8の幅を狭くして冷却水路の断面積を小さくする必要があるが、冷却水の水質が悪化した際に冷却水路が閉塞する危険性が高くなる、或いは、鋳型プレート6に狭い幅のスリットを加工することが困難になる、などの問題が生じる。また、高流量の冷却水を高圧で供給することによっても、流速を速めることができるが、その場合は冷却水の流量や供給圧力の増加などを可能にする設備投資が必要となる。これらのことから、溝形水路8を流れる冷却水の流速は13.0m/s以下とすることが好ましい。
鋳型1の上部の箱形水路9と鋳型1の下部の溝形水路8との接続位置10は、鋳型上端から150~500mmの範囲内とすることが好ましい。スラブ鋳片の連続鋳造に用いられる鋳型1の全長は800~1000mmが一般的であり、メニスカス位置は鋳型上端から50~200mm下方としている。鋳型1における鋳造方向の熱流束分布を見ると、熱流束は、メニスカス位置から100mm程度(鋳型上端から150mm~300mm程度)鋳造方向下方の位置で大きく低下し、その後は鋳型下端に向かって徐々に低下している。また、メニスカスから300mm程度より下方(鋳型上端から350~500mm程度)では、熱流束がメニスカス付近の熱流束の半分程度まで低下する。これらから、本発明では、接続位置10の好ましい位置として、鋳型上端から150~500mmの範囲とした。尚、更に望ましくは鋳型上端から200~350mmの位置である。
本発明者らは、更なる均一強冷却を図るために研究を重ね、より好適な連続鋳造用水冷鋳型1を想到するに至った。即ち、鋳型1の上部の箱形水路9の内壁面に設けた凹部11の一部に、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料を埋め込むことにより、高速鋳造下でも均一冷却を達成し、鋳片の表面割れやブレークアウトの発生を極めて少なくすることが可能になることを知見した。
凹部11に、銅合金製の鋳型プレート6よりも熱伝導率の低い材料が埋め込まれた部位は、熱抵抗が相対的に高くなる。したがって、鋳型プレート6よりも熱伝導率の低い材料が充填された部位を周期的に設けると、箱形水路9の内壁面の熱抵抗も周期的に増減する分布を呈する。これにより、凝固シェルから鋳型プレート6への熱流束が周期的に増減する熱流束の分布が形成される。
一方、凹部11に、銅合金製の鋳型プレート6よりも熱伝導率の高い材料が埋め込まれた部位は、熱抵抗が相対的に低くなるが、凝固シェルから鋳型プレート6への熱流束が周期的に増減する熱流束の分布が形成される点は、鋳型プレート6よりも熱伝導率の低い材料を埋め込んだ場合と同様である。つまり、鋳型プレート6よりも熱伝導率の高い材料が充填された部位を周期的に設けると、箱形水路9の内壁面の熱抵抗も周期的に増減する分布を呈する。
このように、鋳型1の上部の熱流束を周期的に増減させることより、凝固に伴う変態や熱収縮による応力を、低熱流束の領域に分散させることで、凝固シェル表面における表面割れの発生が抑制される。
したがって、本発明では、箱形水路9の内壁面に設けた凹部11の一部に、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料を埋め込むことが好ましい。更には、箱形水路9の内壁面に設けた凹部11の一部に、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料を埋め込んだ後、研削または研磨して周囲に対して平滑面とすることがより好ましい。前記したとおり、気泡生成頻度は冷却水路の内壁面の粗度や形状に依存する。この観点から、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料を埋め込んだ後、研削または研磨して周囲に対して平滑面とすれば、箱形水路9の内壁面を、位置によるバラツキのない一定の性状に容易に形成できる。
図5に、本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型の実施形態の他の一例の概略図を示す。図5は、凹部11の一部に、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料を埋め込み、その後、研削または研磨して周囲に対して平滑面とした部位(以下「異種材料充填部12」と記す)が形成された鋳型プレート6の背面(冷却水路が設置された側の面)の概略図である。
特に、銅合金製の鋳型プレート6の熱伝導率よりも熱伝導率の低い材料を規則的に埋め込んだ場合は、異種材料充填部12の方が銅合金製の鋳型プレート6よりも冷却水側の表面温度が高くなり、核沸騰の起源となる気泡の生成位置となりやすい。
したがって、鋳型プレート上部の箱形水路9の内壁面に設けた凹部11の一部に、鋳型プレート6の熱伝導率よりも低い熱伝導率の材料を埋め込んだ場合、核沸騰の起源となる気泡は、前記材料が埋設されていない凹部11と、鋳型プレート6の熱伝導率よりも低い熱伝導率の材料が埋め込まれた異種材料充填部12との双方から発生する。即ち、箱形水路9における気泡生成位置の数は、熱伝導率の低い材料の埋め込みの有無でさほど変化せず、核沸騰による高い冷却能力はそのまま維持される。
本発明の好適な一形態として、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率の材料が埋め込まれていない凹部11からなる幅方向列の群と、鋳型プレート6の熱伝導率よりも低い熱伝導率の材料が埋め込まれた異種材料充填部12からなる幅方向列の群とを、鋳造方向に交互に配列した形態が挙げられる。
このように配列することで、鋳型プレート6の熱伝導率とは異なる熱伝導率の材料が埋め込まれていない凹部11からなる幅方向列の群で生じた凝固シェルの応力が、鋳造方向直下に設けられた、鋳型プレート6の熱伝導率よりも低い熱伝導率の材料が埋め込まれた異種材料充填部12からなる幅方向列の群で分散され、凝固シェルの応力を緩和することができる。これを繰り返しながら凝固シェルを鋳型1から引き抜くことで、高速鋳造下であっても均一冷却を達成し、鋳片の表面割れやブレークアウトの発生を極めて少なくすることが可能になる。
尚、本発明の実施においては、鋳型プレート6の温度を高温に保持し、核沸騰熱伝達を起こすことが必要となるため、冷却水としてはスケールの生成しにくい純水の利用が望ましいが、水質管理を確実に行うことができれば工業用水を利用しても構わない。
上記構成の本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型1を用いて溶鋼5を連続鋳造する際には、鋳造開始から鋳造終了までの少なくとも一部の期間で、鋳片引き抜き速度を2.0m/min以上として連続鋳造する。
以上説明したように、本発明によれば、連続鋳造用水冷鋳型の鋳型プレートの上部における冷却水路を、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で形成し、この箱形水路の内壁面に、複数の凹部を設けるので、特に高速鋳造条件下や鋳片引き抜き速度の変化が起こる場合でも、連続鋳造用水冷鋳型の上部における均一強冷却を実現でき、凝固初期に形成される凝固シェルを早期に均一且つ十分な厚みに成長させることができる。
上記説明は、スラブ鋳片を連続鋳造する際に使用する連続鋳造用水冷鋳型について行ったが、本発明の適用は、スラブ鋳片を連続鋳造する際に使用する連続鋳造用水冷鋳型に限るわけではなく、銅合金製の鋳型プレートと、鋳型プレートに形成された冷却水路を覆うように鋳型プレートに取り付けられているバックアッププレートと、を有する連続鋳造用水冷鋳型である限り、本発明の適用が可能である。
鋳型上端から鋳造方向下流側に250mmまでの範囲が、図3及び図4に示すような箱形水路であり、250mmより下部の冷却水路は複数の溝形水路(冷却スリット)で構成され連続鋳造用水冷鋳型を用いて、溶鋼の連続鋳造を行い、スラブ鋳片を製造した。これを本発明例1とする。一方、鋳型上端から下端まで複数の溝形水路(冷却スリット)で構成される連続鋳造用水冷鋳型を用いて、溶鋼の連続鋳造を行い、スラブ鋳片を製造する場合を従来例とする。
本発明例1及び従来例においては下記の条件とした。本発明例1では、箱形水路の内壁面に、直径2.0mm、深さ2.0mmの半球状の凹部を、鋳型幅方向に隣り合う凹部の中心間距離を4.0mmとし、幅方向列の鋳造方向距離を2.0mmとして、千鳥状に配置した。また、冷却水路における冷却水の流速は、鋳型上部の箱形水路の範囲は5.0m/sに制御し、鋳型下部の溝形水路の範囲は、10.0m/sに制御した。従来例では、鋳型の上端から下端の全ての範囲で冷却水路における冷却水の流速を10.0m/sに制御した。
また、図5に示すように、箱形水路の内壁面に、鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料が埋め込まれていない凹部の幅方向列の群と、鋳型プレートの熱伝導率よりも低い熱伝導率の材料として金属ニッケル(20℃における熱伝導率;90W/(m×K))が埋め込まれた異種材料充填部からなる幅方向列の群とを、鋳造方向に交互に設置した場合を本発明例2とする。本発明例2における凹部及び異種材料充填部の設置間隔、並びに、冷却水路における冷却水の流速は、本発明例1と同一である。金属ニッケルの凹部への埋め込みは、鍍金処理によって行った。鋳型プレートは、本発明例1、本発明例2及び従来例のいずれも、20℃における熱伝導率が360W/(m×K)の銅合金製である。
上記の3種類の連続鋳造用水冷鋳型を用いて、鋳片幅が1000~1600mm、鋳片厚みが260mmの、炭素含有量が0.10質量%の炭素鋼のスラブ鋳片を2.0m/minの鋳片引き抜き速度で連続鋳造した。尚、使用した連続鋳造機は2ストランドのスラブ連続鋳造機であり、比較のために、2ストランドの片方のストランドに本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型を設置し、他方のストランドに従来の連続鋳造用水冷鋳型を設置し、鋳片幅、鋳片引き抜き速度及び使用するモールドパウダーの種類など、鋳造条件が同等の条件で、本発明例1及び本発明例2と従来例とを比較した。
図6に、鋳片引き抜き速度が2.0m/minの鋳造条件での鋳型抜熱量指数の比較を示す。鋳型抜熱量は、連続鋳造時における鋳型冷却水の入側水温(供給側水箱での温度)と出側水温(排水側水箱での温度)の温度差と冷却水量とを用いて算出された値であり、従来例の値を基準(1.0)として、従来例の値との比率を鋳型抜熱量の指数として示した。図6に示すように、本発明例1及び本発明例2では、冷却水量は従来例と同量のままで抜熱量指数を15~25%向上できることが確認できた。
また、図7に、鋳片表面における縦割れ発生指数の比較を示す。鋼種としては縦割れ発生率の高い炭素含有量が0.10質量%の中炭素鋼を対象としている。縦割れは鋳造後の表面手入れ処理工程で確認した値であり、従来例の縦割れ発生率を基準(1.0)として従来例の値との比率を縦割れ発生指数として示した。
図7に示すように、本発明例1では縦割れ発生指数が0.2以下に低減されており、更に本発明例2においてはほぼ縦割れ発生がゼロに抑制できていることが確認できた。鋳片表面を無手入れで、鋳片の直送加熱や直送圧延を実施するには、熱間圧延工程での手入れ制約との関係から本指標で0.3以下にすることが必要であり、本発明を実施することにより、製鋼段階で無手入れのまま、次工程にスラブ鋳片の搬送が可能となることが確認できた。
また、上記の本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型を用いて、約180日間の連続鋳造操業を様々な鋼種、鋳造条件で実施した。本発明に係る連続鋳造用水冷鋳型を用いた場合も、ブレークアウト及び操業上の問題なく使用可能であることが確認された。また、鋳型寿命についても従来の連続鋳造用水冷鋳型と変わらない性能が確認できた。
1 連続鋳造用水冷鋳型
2 鋳型長辺
3 鋳型短辺
4 浸漬ノズル
5 溶鋼
6 鋳型プレート
7 バックアッププレート
8 溝形水路
9 箱形水路
10 接続位置
11 凹部
12 異種材料充填部
13 冷却水供給路
14 給水口
15 冷却水排水路
16 排水口

Claims (13)

  1. 冷却水路が形成されている銅合金製の鋳型プレートと、
    前記冷却水路を覆うように前記鋳型プレートに取り付けられているバックアッププレートと、を有する連続鋳造用水冷鋳型であって、
    前記鋳型プレートの下部での冷却水路は、鋳型幅方向に配列された複数の溝形水路(冷却スリット)で構成され、該複数の溝形水路の各々は、鋳造方向に延びた縦長形状であり、
    前記鋳型プレートの上部での冷却水路は、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で構成され、該箱形水路は、前記鋳型プレートの下部の複数の冷却水路に連通し、
    前記鋳型プレートの上部の箱形水路を構成する鋳型プレートの内壁面に、複数の凹部が設けられており、
    前記凹部の深さは、0.1~2.0mmであることを特徴とする、連続鋳造用水冷鋳型。
  2. 冷却水路が形成されている銅合金製の鋳型プレートと、
    前記冷却水路を覆うように前記鋳型プレートに取り付けられているバックアッププレートと、を有する連続鋳造用水冷鋳型であって、
    前記鋳型プレートの下部での冷却水路は、鋳型幅方向に配列された複数の溝形水路(冷却スリット)で構成され、該複数の溝形水路の各々は、鋳造方向に延びた縦長形状であり、
    前記鋳型プレートの上部での冷却水路は、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で構成され、該箱形水路は、前記鋳型プレートの下部の複数の冷却水路に連通し、
    前記鋳型プレートの上部の箱形水路を構成する鋳型プレートの内壁面に、複数の凹部が設けられており、
    前記複数の凹部の各々は、前記鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で埋め込まれていないことを特徴とする、連続鋳造用水冷鋳型。
  3. 冷却水路が形成されている銅合金製の鋳型プレートと、
    前記冷却水路を覆うように前記鋳型プレートに取り付けられているバックアッププレートと、を有する連続鋳造用水冷鋳型であって、
    前記鋳型プレートの下部での冷却水路は、鋳型幅方向に配列された複数の溝形水路(冷却スリット)で構成され、該複数の溝形水路の各々は、鋳造方向に延びた縦長形状であり、
    前記鋳型プレートの上部での冷却水路は、鋳造方向に延び且つ鋳型幅方向に広がった箱形水路で構成され、該箱形水路は、前記鋳型プレートの下部の複数の冷却水路に連通し、
    前記鋳型プレートの上部の箱形水路を構成する鋳型プレートの内壁面に、複数の凹部が設けられており、
    前記複数の凹部の一部は、前記鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で埋め込まれ、
    前記材料が埋め込まれていない凹部が鋳型幅方向に一列に設置され、前記材料が埋め込まれた凹部が鋳型幅方向に一列に設置され、且つ、前記材料が埋め込まれていない凹部が鋳型幅方向に一列に設置された群と、前記材料が埋め込まれた凹部が鋳型幅方向に一列に設置された群とが、鋳造方向に交互に設置されていることを特徴とする、連続鋳造用水冷鋳型。
  4. 鋳型プレートの熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で埋め込まれている前記凹部は、周囲に対して平滑面とされていることを特徴とする、請求項3に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  5. 前記材料の熱伝導率は、前記鋳型プレートの熱伝導率よりも低いことを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  6. 前記凹部の深さは、0.1~2.0mmであることを特徴とする、請求項2から請求項5のいずれかに1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  7. 前記凹部は、一定間隔で周期的に設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  8. 前記凹部は、半球状、円錐状、円錐台状、円筒状、尖塔状、角錐状のなかから選ばれる1種類の同一形状であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  9. 前記凹部は、千鳥状に設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  10. 前記鋳型プレートの下部の冷却水路と前記鋳型プレートの上部の冷却水路との接続位置が、鋳型上端から150~500mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型を用いて溶鋼を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、前記鋳型プレートの下部での冷却水路における冷却水の流速7.0~13.0m/sの範囲内として連続鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法
  12. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の連続鋳造用水冷鋳型を用いて溶鋼を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、鋳造開始から鋳造終了までの少なくとも一部の期間で、鋳片引き抜き抜き速度を2.0m/min以上として連続鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
  13. 鋳造開始から鋳造終了までの少なくとも一部の期間で、鋳片引き抜き抜き速度を2.0m/min以上として連続鋳造することを特徴とする、請求項11に記載の鋼の連続鋳造方法。
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