JP7149508B2 - 光学フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
<1>β-1,3-グルカンに炭素数が異なる2種以上のアシル基を導入したβ-1,3-グルカン誘導体を含む材料からなり、下記式(I)から求めた面配向係数ΔPが、-0.005以上0.15以下である、光学フィルム。
ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz (I)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。
<2>前記光学フィルムの下記式(II)から求めた複屈折Δnが、-0.005以上0.1以下である、前記<1>の光学フィルム
Δn=Nx-(Ny+Nz)/2 (II)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。
<3>前記β-1,3-グルカン誘導体が、炭素数が1以上5以下の炭化水素基(A)を有するアシル基と、炭素数が2以上でありかつ炭化水素基(A)よりも炭素数が大きい炭化水素基(B)を有するアシル基とを有する、前記<1>または<2>の光学フィルム。
<4>前記<1>~<3>のいずれかの光学フィルムを製造する方法であり、前記β-1,3-グルカン誘導体を含む材料を製膜してフィルムを得る、光学フィルムの製造方法。
<5>製膜方法が、溶融キャスト法または溶液キャスト法である、前記<4>の光学フィルムの製造方法。
<6>前記フィルムを延伸して延伸フィルムを得る、前記<4>または<5>の光学フィルムの製造方法。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、藻類、菌類等によって生産される多糖類を原料とでき、高耐熱性、高透明性および低複屈折をバランスよく満足する光学フィルムを溶液キャスト法で製造できることは勿論、溶液キャスト法以外の方法でも製造できる。
本発明の光学フィルムは、β-1,3-グルカンに炭素数が異なる2種以上のアシル基を導入したβ-1,3-グルカン誘導体を含む材料からなる。
β-1,3-グルカン誘導体を含む材料は、β-1,3-グルカン誘導体のみからなる材料であってもよく、必要に応じて他の成分(フィラー、酸化防止剤、離形剤、着色剤、分散剤、難燃助剤、難燃剤等の各種添加剤、ポリビニルアルコール等の他の樹脂等)をさらに含んでもよい。
β-1,3-グルカンは、主に藻類、菌類等によって生産される多糖類である。
β-1,3-グルカンは、β-1,3-結合によってグルコースが連結されている点で、β-1,4-結合によってグルコースが連結されているセルロースと、グルコースの結合様式が類似する。また、熱流動性がないことも共通する。しかし、β-1,3-グルカンは、高分子鎖が三重らせん構造をとることができ、シート状の構造をとるセルロースとは高分子鎖の構造が異なっている。この構造の違いによって、β-1,3-グルカンは、セルロースとは異なる独自の物性と反応特性を有している。
β-1,3-グルカン誘導体は、β-1,3-グルカンの主鎖を構成するグルコース中の一部の水酸基が、炭素数が異なる2種以上のアシル基でアシル化されている。すなわち、β-1,3-グルカン誘導体は、炭素数が異なる2種以上のアシル基を有する。炭素数が異なる2種以上のアシル基を有するため、(i)分子鎖の並びが乱れることによって分子鎖間相互作用が弱められるとともに、(ii)水酸基による主鎖間水素結合の形成がなくなることによって分子鎖間相互作用が弱められる。その結果、熱可塑性に優れている。このβ-1,3-グルカン誘導体は、それ自体が熱可塑性を有するので、可塑剤を添加しなくとも成形性に優れている。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環構造を有していてもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基またはアルキニル基)であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、合成のしやすさ、R1およびR2の自由度の高さ等の点から、アルキル基が好ましく、直鎖状または分岐状のアルキル基がより好ましく、直鎖状のアルキル基がさらに好ましい。
β-1,3-グルカン誘導体の製造方法としては、2種以上のアシル基を2段階以上で導入する多段階合成法、2種以上のアシル基を同時に導入する一段階合成法がある。
多段階合成法としては、β-1,3-グルカンを構成するグルコース中の水酸基の一部を脂肪酸でアシル化した後、残存している水酸基の一部を炭素数の異なる脂肪酸でアシル化する二段階合成法(特許第6029155号公報)が挙げられる。
二段階合成法における反応温度、反応時間等の条件は、アシル化剤の種類、置換度等を考慮して適宜設定される。
脂肪酸の無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブチル酸等が挙げられる。
脂肪酸のビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ヘキサデセン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル等が挙げられる。
一段階合成法としては、例えば、β-1,3-グルカンを、互いに炭化水素基の炭素数が異なるカルボン酸および酸無水物を含むアシル化剤を用いて溶媒中でアシル化させて、β-1,3-グルカン誘導体を得る方法が挙げられる。
塩基としては、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等の公知のものを用いることができる。
本発明の光学フィルムの下記式(I)から求めた面配向係数ΔPは、-0.005以上0.15以下であり、-0.005以上0.8以下が好ましい。面配向係数ΔPが前記範囲の下限値以上であれば、光学的に等方性を担保することができる。面配向係数ΔPが前記範囲の上限値以下であれば、光学的に等方性を担保することができる。
ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz (I)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。
Δn=Nx-(Ny+Nz)/2 (II)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。
R0=(Nx-Ny)×d (III)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、dは光学フィルムの厚さ(nm)である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。
Rth=ΔP×d (IV)
ただし、ΔPは面配向係数であり、dは光学フィルムの厚さ(nm)である。
本発明の光学フィルムの全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
本発明の光学フィルムのL*a*b*表色系におけるb*は、6以下が好ましく、5以下がよりより好ましく、4以下がさらに好ましい。
本発明の光学フィルムは、β-1,3-グルカン誘導体を含む材料を製膜することによって得られる。製膜は、常法によって行うことができる。
製膜方法としては、低複屈折のフィルムが得られやすい点から、溶融キャスト法または溶液キャスト法が好ましく、環境への配慮の点から、溶融キャスト法がより好ましい。
熱プレス法における加熱温度は、β-1,3-グルカン誘導体の融点以上であり、β-1,3-グルカン誘導体の融点以上5%重量減少温度以下が好ましい。
熱プレス法における圧力は、熱プレス法によるフィルムの製造の際に通常設定される範囲内であればよい。
押出成形法における押出時の温度は、β-1,3-グルカン誘導体の融点以上であり、β-1,3-グルカン誘導体の融点以上5%重量減少温度以下が好ましい。
有機溶媒としては、ハロゲン系有機溶媒、非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
以上説明した本発明の光学フィルムにあっては、藻類、菌類等によって生産される多糖類であるβ-1,3-グルカンを原料とできるため、環境負荷が小さい。
また、本発明の光学フィルムにあっては、β-1,3-グルカンに炭素数が異なる2種以上のアシル基を導入したβ-1,3-グルカン誘導体を含む材料からなり、かつ面配向係数ΔPが-0.005以上0.15以下であるため、高耐熱性、高透明性および低複屈折をバランスよく満足する。
また、β-1,3-グルカンに炭素数が異なる2種以上のアシル基を導入したβ-1,3-グルカン誘導体は、(i)分子鎖の並びが乱れることによって分子鎖間相互作用が弱められるとともに、(ii)水酸基による主鎖間水素結合の形成がなくなることによって分子鎖間相互作用が弱められるため、熱可塑性に優れている。そのため、β-1,3-グルカン誘導体を含む材料からなる本発明の光学フィルムは、溶液キャスト法で製造できることは勿論、溶液キャスト法以外の方法でも製造できる。
このような光学フィルムは、画像表示装置等の製造工程における高温にも十分に耐えることから、画像表示装置等に好適な高透明性および低複屈折を兼ね備えた光学フィルムとなる。
なお、実施例4、10~14は参考例である。
(1H-NMR)
製造例1~14のβ-1,3-グルカン誘導体の1H-NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(BRUKER社製、AVANCE500spectrometer)を用いて測定した。
製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体のFT-IRスペクトルは、ZnSeプリズム(日本分光社製、ATR Pro400-S)を備えたフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR-480ST)を用いて測定した。
製造例1~14のβ-1,3-グルカン誘導体における置換度DSは、グルコースユニット1つに結合した置換基の平均数である。置換度DSは、炭素数が異なる2種以上のアシル基の1H-NMRスペクトルにおけるメチルプロトンの積分値を、それぞれ、グルコースプロトンの積分値と比較して、炭素数が多い方のアシル基の置換度を「DSmc」とし、炭素数が少ない方のアシル基の置換度を「DSace」として得た。
なお、製造例1~4の「DSace」は「カルボン酸由来のアシル基の置換度」に相当し、「DSmc」は「酸無水物由来のアシル基の置換度」に相当する。また、製造例5~9の「DSace」は「酸無水物由来のアシル基の置換度」に相当し、「DSmc」は「カルボン酸由来のアシル基の置換度」に相当する。
製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体の質量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを、多角度光散乱検出器を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALLS)を用いて測定した。SEC-MALLS測定は、多角度レーザー光度計(Wyatt Technology社製、miniDAWN)、動的光散乱モジュール(Wyatt Technology社製、QELS)およびゲルパーミエーションクロマトグラフィーカラム(KD-805)を備えた、示差屈折率検出器(Wyatt Technology社製、Optilab rEX、移動相:クロロホルム、1.0mL/min、40℃)を用いて行った。溶液は、0.20μmフィルターで精製した。注入量は、約4.0mg/mLの濃度で100μLとした。dn/dc値は、0.0372を用いた。
製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体について、示差走査熱量計(DSC)(リガク社製、Thermo plus EVO II DSC8230)を用いて熱分析を行った。サンプルを走査速度10.0℃/分で25℃から230℃まで加熱した後、230℃で3分間保持した。230℃から25℃まで冷却し、5分間その温度で保持した後、同じ走査速度で250℃まで加熱した。2回目の加熱時に得られたサーモグラムを、ガラス転移温度Tgおよび融点mpの測定に用いた。
融点mpは、吸熱ピークから決定した。表中、mpにおける「-」は融点に相当する明瞭なピークが観測されなかったことを示す。Tgにおける「-」はガラス転移温度が観測されなかったことを示す。
製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体について、熱重量分析計(リガク社製、Thermo plus EVO II TG8120)を用いて熱重量分析(TGA)を行い、5%重量減少温度Td5を測定した。窒素を100mL/分で流しながら、走査速度10.0℃/minで試料を25℃から500℃まで加熱した。
製造例12~14のβ-1,3-グルカン誘導体について、熱重量測定装置(TA Instruments社製、TGA Q50)を用いて熱重量分析(TGA)を行った。
melt indexer(井元製作所社製、IMC-E0F0)を用いて、165℃、210℃、または240℃に加熱した製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体の溶融サンプルについて、一定荷重(37.26Nまたは98.07N)でオリフィスダイ(直径1mm)から押し出し、ピストンが12.5mm移動する時間(t)を測定した。MVRを、以下の式から算出した。
MVR(cm3/10min)=(A×tref×L)/t
ただし、Aは、ピストンの横断面積(0.407cm2)であり、trefは、基準時間(600秒)であり、Lは、移動長(1.25cm)であり、tは、測定時間(秒)である。測定に際しては、試料を240℃で4分間加熱した。
製造例4(165℃)、製造例1(240℃)は、荷重98.07Nで測定し、他は荷重37.26Nで測定した。表中、N/Aは熱可塑性を示さないことを表す。
実施例1~9の光学フィルムの厚さは、高精度デジマチックマイクロメータ(ミツトヨ社製、MDH-25M)を用いて測定した。
実施例10~14の光学フィルムの厚さは、ディジタルリニアゲージ(小野測器製、DG-525H)を用いて測定した。
実施例10~14の光学フィルムのヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH 5000)にて測定し、3つのサンプルの平均値を求めた。
実施例10~14の光学フィルムの全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH 5000)を用いて測定し、3つのサンプルの平均値を求めた。
実施例10~14の光学フィルムについて、JIS Z 8781-4:2013に準拠し、測色色差計(日本電色工業社製、Color Meter ZE2000)を用いてL*a*b*表色系におけるL*、a*、b*を測定し、3つのサンプルの平均値を求めた。
実施例1~14の光学フィルムの屈折率(Nx、Ny、Nz)は、位相差測定装置(王子計測機器社製、KOBRA-HBR)を用いて波長588nmで測定した。
実施例1~14の光学フィルムの屈折率から、面配向係数ΔP、複屈折Δnを求め、光学フィルムの屈折率および厚さから、サンプル傾斜角0゜のときの位相差(面内位相差)R0、サンプル傾斜角40゜のときの位相差R40、厚さ方向位相差Rthを求めた。
実施例1~9の光学フィルムの分光透過率は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-2500)を用いて測定した。
実施例10~14の光学フィルムの分光透過率は、分光光度計(島津製作所社製、UV-3150)を用いて測定した。
(製造例1)
酢酸および無水プロピオン酸からのパラミロンアセテートプロピオネートの合成:
パラミロン(3.00g,18.39mmol)、塩化リチウム(LiCl,2.367g,55.84mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc、150mL)の混合物を窒素雰囲気下、90℃で1.5時間、撹拌しながら加熱した。得られた均一溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP,428mg,3.50mmol)を一括添加した。次いで、この溶液に、窒素雰囲気下90℃で1.5時間加熱した酢酸(3.302g,54.99mmol)およびプロピオン酸無水物(14.462g,111.12mmol)の混合物を滴下した。混合物滴下後、徐々に加熱して108℃まで温度させながら4時間撹拌した後、反応混合物中に、メタノール150mLを添加し、次いで、混合物を水300mLに滴下して白色沈殿物を得た。この沈殿物を、吸引濾過で分離した後、フィルター上で、水100mLで洗浄した。この白色固体をメタノール350mL中で撹拌し、吸引濾過して分離した。この精製工程を3回繰り返した。得られた固体を、クロロホルム150mLに溶解した均一溶液を、メタノール500mL中に滴下して、細い繊維状の沈殿物を得た。この沈殿物をメタノール150mL中で撹拌した。吸引濾過後、空気中で一晩風乾させ、引き続き70℃で7時間真空乾燥して、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートプロピオネート)を白色固体として得た(4.483g,13.97mmol,収率75.9%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.87(brs),4.30(brs)4.02(brs),3.72(brs),3.60(brs),2.40-1.99(m),1.61(s),1.18-1.09(s)
FT-IR(cm-1):945,1737,1386,1389,1365,1155,1051,871,806
酢酸および無水酪酸からのパラミロンアセテートブチレートの合成:
プロピオン酸無水物に替えて無水酪酸を用いた以外は、製造例1と同様の方法で、パラミロン(3.014g,18.47mmol)、酢酸(3.323g,55.34mmol)および無水酪酸(17.608g,111.30mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートブチレート)を得た(1.204g,3.34mmol,収率18.1%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.80(brs),4.35(brs),4.24(brs),4.05(brs),3.72-3.59(m),2.47-2.10(m),1.62-1.52(m),0.94-0.80(m)
FT-IR(cm-1):2963,2874,1739,1457,1391,1369,1219,1154,1041,893,793,750
酢酸および無水ペンタン酸からのアセテートペンタノエートの合成:
プロピオン酸無水物に替えてペンタン酸無水物を用いた以外は、製造例1と同様の方法で、パラミロン(2.534g,15.53mmol)、酢酸(2.813g,46.84mmol)およびペンタン酸無水物(17.447g,93.68mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(アセテートペンタノエート)を得た(収率35.4%、2.145g,5.49mmol)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.81(brs),4.38(brs),4.23(brs),3.73(brs),3.57(brs),2.31-1.99(m),1.61-1.34(m),0.96-0.92(m)
FT-IR(cm-1):2957,2871,1741,1456,1389,1370,1173,1151,1046,892,754,734,594
酢酸および無水ヘキサン酸からのパラミロンアセテートヘキサノエートの合成:
プロピオン酸無水物に替えてヘキサン酸無水物を用いた以外は、製造例1と同様の方法で、パラミロン(3.005g,18.42mmol)、酢酸(3.336g,55.55mmol)およびヘキサン酸無水物(23.501g,109.65mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートヘキサノエート)を得た(6.185g,14.78mmol、収率80.2%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.86(brs),4.79(brs),4.33(brs),4.25(brs),3.76(brs),3.60(brs),3.55(brs),2.35-1.99(m),1.60(s),1.38(s),1.31(s),0.94-0.90(m)
FT-IR(cm-1):2955,2930,2862,1743,1457,1390,1371,1217,1149,1045,889,732,597
無水酢酸および酪酸からのパラミロンアセテートブチレートの合成:
パラミロン(3.009g,18.44mmol)、塩化リチウム(LiCl,0.783g,18.47mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc、50mL)の混合物を、窒素雰囲気下、90℃で1時間撹拌しながら加熱した。得られた均一溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP,146mg,1.20mmol)を一括添加した。次いで、この溶液に、窒素雰囲気下100℃で1.25時間加熱した無水酢酸(11.298g,105.09mmol)および酪酸(4.986g,55.57mmol)の混合物を滴下した。室温から102℃まで昇温させながら3.5時間撹拌した後、反応混合物を水500mL中に滴下して加え、透明な沈殿物を得た。この沈殿物を、吸引濾過で分離した後、水400mL中で1時間撹拌した。沈殿物をクロロホルム500mL中に溶解した後、不透明溶液をメタノール500mL中に注いだ。溶媒を段階的に除去して不均一溶液を得た。吸引濾過により、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートブチレート)を得た(収率78.8%、4.450g,14.72mmol)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.89(brs),4.83(brs),4.36(brs),4.32(brs),4.04(brs),3.74(brs),3.65(brs),2.12-2.00(m),1.64(s),1.02-0.93(m)
FT-IR(cm-1):2920,2852,1739,1647,1368,1211,1030,892,597
無水酢酸およびヘキサン酸からのパラミロンアセテートヘキサノエートの合成:
酪酸に替えてヘキサン酸を用いた以外は、製造例5と同様の方法で、パラミロン(3.002g,18.40mmol)、無水酢酸(10.809g,105.88mmol)およびヘキサン酸(6.500g,55.96mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートヘキサノエート)を得た(4.355g,13.93mmol、収率75.7%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.88(brs),4.83(brs),4.36(brs),4.04(brs),3.74(brs),3.49(brs),2.24-2.00(m),1.62(s),1.44-1.32(m),0.97-0.93(m)
FT-IR(cm-1):2958,2918,2864,1738,1394,1369,1210,1030,891,597
無水酢酸およびヘキサン酸からのパラミロンアセテートヘキサノエートの合成:
酪酸に替えてヘキサン酸を用いた以外は、製造例5と同様の方法で、パラミロン(3.002g,18.40mmol)、無水酢酸(10.809g,105.88mmol)およびヘキサン酸(6.500g,55.96mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートヘキサノエート)を得た(4.355g,13.93mmol、収率75.7%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.89(brs),4.83(brs),4.36(brs),4.32(brs),4.03(brs),3.74(brs),3.65(brs),2.49-2.00(m),1.63-1.38(m),1.38-1.31(m),0.94-0.91(m)
FT-IR(cm-1):2928,2917,2850,1739,1368,1209,1086,1031,892,839,658,596
酢酸および無水ヘキサン酸からのカードランアセテートヘキサノエートの合成:
パラミロンに替えてカードランを用い、プロピオン酸無水物に替えてヘキサン酸無水物を用いた以外は、製造例1と同様の方法で、カードラン(3.007g,18.55mmol)、酢酸(3.301g,54.97mmol)およびヘキサン酸無水物(23.785g,111.00mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(カードランアセテートヘキサノエート)を得た(5.133g,11.55mmol、収率62.7%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.77(brs),4.29(brs),4.00(brs),3.70(brs),3.54(brs),2.23-1.98(m),1.58(m),1.30(m),0.89(m)
FT-IR(cm-1):2937,1739,1646,1434,1370,1216,1119,1022,952,895
無水酢酸およびヘキサン酸からのカードランアセテートヘキサノエートの合成:
パラミロンに替えてカードランを用い、酪酸に替えてヘキサン酸を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、カードラン(3.010g,18.44mmol)、無水酢酸(11.239g,110.09mmol)及びヘキサン酸(6.468g,55.68mmol)から、反応生成物であるβ-1,3-グルカン誘導体(カードランアセテートヘキサノエート)を得た(3.240g,10.31mmol、収率55.9%)。
1H-NMRスペクトルおよびFT-IRスペクトルによって、反応生成物を同定した。DSace、DSmc、Mw、Mn、Mw/Mn、mp、Tg、Td5、MVRを表1および表2に示す。
1H-NMRスペクトル(CDCl3):δ4.88(brs),4.82(brs),4.32(brs),4.03(brs),3.73(brs),3.64(brs),2.09-2.00(m),1.70-1.59(m),1.38-1.31(m),0.94-0.89(m)
FT-IR(cm-1):2928,2920,2851,1740,1635,1368,1210,1167,1031,891,597
(実施例1~9)
製造例1~9のβ-1,3-グルカン誘導体を用いて、熱プレス法によって光学フィルムを作製した。熱プレス法は、次のように行った。
コンパクト熱プレス(井元製作所社製、IMC-180C)を用いて、β-1,3-グルカン誘導体(約100mg)を、1分間、20MPaの圧力で50mm×50mm×約0.05mmの四角形の薄膜に溶融プレスした。加熱温度は、融点mpより10℃程度高い温度とした。
光学フィルムの評価結果を表3に示す。光学フィルムの分光透過率を図1、図2および図3に示す。
(製造例10)
パラミロンアセテートミリステートの合成:
パラミロン(36.4g,224.6mmol)を100℃、24時間にて減圧加熱乾燥し、塩化リチウム(28.6g,676.1mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc,1820mL)を入れ、窒素雰囲気下、120℃にて1時間撹拌し、パラミロンを溶解させた。当該溶液を室温まで冷却し、トリエチルアミン(34.1g,336.6mmol)、DMAc(163mL)で希釈したミリスチン酸クロリド(27.7g,112.2mmol,パラミロンのグルコースユニットに対し0.5当量)を滴下し、120℃まで昇温し、3時間撹拌した。当該反応液に対し、メタノールを加えて、白色沈殿物を析出させた。得られた沈殿物をメタノール/クロロホルム(2/1=v/v,3L)で撹拌洗浄し、続いて、遠心分離を行い、白色固体としてミリストイル化パラミロンを得た(収量56.2g)。
パラミロンアセテートミリステートの合成:
ミリスチン酸クロリドの仕込量を0.5当量から1.0当量に変更した以外は、製造例10の同様の方法でβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートミリステート)を得た(収量21.0g)。1H-NMRスペクトルから求めたDSace、DSmcを表4に示す。
(実施例10~11)
製造例10~11のβ-1,3-グルカン誘導体を用いて、熱プレス法によってプレスフィルムを作製した。熱プレス法は、次のように行った。
天板を230℃に加熱し、天板の上で厚さ2mmのステンレス板を予熱した。ステンレス板を取り出し、天板の上で0.1tのテトラフルオロエチレンシートを予熱した。ステンレス板の上に、テトラフルオロエチレンシート、製造例10のβ-1,3-グルカン誘導体、テトラフルオロエチレンシートの順番にのせ、プレス機に置いた。天板間を2cmに保って1分間加熱し、25MPaで1分間プレスし、厚さ200~250μmの実施例10のプレスフィルムを得た。
製造例11のβ-1,3-グルカン誘導体については、加熱温度を200℃に変更した以外は同様にプレスし、厚さ200~250μmの実施例11のプレスフィルムを得た。
実施例11のホットプレスシートを、延伸機設定温度130℃、予備時間20秒にセットした同時二軸延伸装置を用いて、延伸温度120℃、延伸倍率約2倍にて同時二軸延伸し、二軸延伸フィルムからなる実施例11-1の光学フィルムを得た。同様にして実施例11-2の光学フィルムを得た。
光学フィルムの評価結果を表4に示す。光学フィルムの分光透過率を図4に示す。
(製造例12~14)
パラミロンアセテートミリステートの合成:
ミリスチン酸クロリドの仕込量を変更した以外は、製造例10の同様の方法で製造例12~14のβ-1,3-グルカン誘導体(パラミロンアセテートミリステート)を得た。1H-NMRスペクトルから求めたDSace、DSmcを表5に示す。熱重量分析(TGA)の結果を図5に示す。
(実施例12~14)
製造例12~14のβ-1,3-グルカン誘導体を用いて、溶液キャスト法によって実施例12~14の光学フィルムを作製した。溶液キャスト法は、次のように行った。
クロロホルムに溶解させたβ-1,3-グルカン誘導体(約250mg)の均一溶液を、皿(75×100mm)上に置き、8つの孔(直径約0.5mm)を有するアルミニウム箔で覆った。室温で一晩、段階的に溶媒を除去して、透明薄膜を得た。
光学フィルムの評価結果を表5に示す。光学フィルムの分光透過率を図6に示す。
Claims (12)
- β-1,3-グルカンに炭素数が異なる2種以上のアシル基を導入したβ-1,3-グルカン誘導体のみからなる材料からなり、
下記式(I)から求めた面配向係数ΔPが、-0.005以上0.15以下であり、
下記式(III)から求めた面内位相差R0が、0nm以上20nm以下であり、
前記β-1,3-グルカン誘導体の分散度Mw/Mnが、1.2以上1.6以下である、光学フィルム。
ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz (I)
R0=(Nx-Ny)×d (III)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、dは光学フィルムの厚さ(nm)である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。 - 前記光学フィルムの下記式(II)から求めた複屈折Δnが、-0.005以上0.1以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
Δn=Nx-(Ny+Nz)/2 (II)
ただし、Nxは光学フィルムの面内における入射直線偏光の遅相軸の屈折率であり、Nyは光学フィルムの面内における入射直線偏光の進相軸の屈折率であり、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率である。また、屈折率は、波長588nmの光に対する屈折率である。 - 前記光学フィルムの下記式(IV)から求めた厚さ方向位相差Rthが、-20nm以上20nm以下である、請求項1または2に記載の光学フィルム。
Rth=ΔP×d (IV)
ただし、ΔPは前記面配向係数であり、dは光学フィルムの厚さ(nm)である。 - 前記アシル基が、カルボン酸由来のアシル基と、酸無水物由来のアシル基を含み、前記カルボン酸由来のアシル基の置換度が0.3以上1.2以下であり、前記酸無水物由来のアシル基の置換度が1.3以上2.6以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記β-1,3-グルカン誘導体が、炭素数が1以上5以下の炭化水素基(A)を有するアシル基と、炭素数が2以上でありかつ炭化水素基(A)よりも炭素数が大きい炭化水素基(B)を有するアシル基とを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記炭化水素基(B)の炭素数が11以上20以下である、請求項5に記載の光学フィルム。
- 前記β-1,3-グルカン誘導体の質量平均分子量Mwが、3.0×105Da以上7.0×105Da以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記β-1,3-グルカン誘導体の数平均分子量Mnが、1.0×105Da以上5.5×105Da以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記β-1,3-グルカン誘導体の温度240℃、荷重37.26Nまたは98.07Nで測定したメルトボリュームレート(MVR)が、1cm3/10分以上45cm3/10分以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の光学フィルムを製造する方法であり、
前記β-1,3-グルカン誘導体のみからなる材料を製膜してフィルムを得る、光学フィルムの製造方法。 - 製膜方法が、溶融キャスト法または溶液キャスト法である、請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記フィルムを延伸して延伸フィルムを得る、請求項10または11に記載の光学フィルムの製造方法。
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