JP7148438B2 - 酸化膜の膜厚測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化膜の膜厚測定方法に関する。
自動車の車体等に用いられる高強度鋼板として、防錆性を付与した表面処理鋼板、中でも防錆性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が公知である。溶融亜鉛めっき鋼板は、一般にはスラブを熱間圧延及び冷間圧延した帯状の鋼板を母材鋼板として用い、この母材鋼板を焼鈍炉で還元性雰囲気のもとで再結晶焼鈍し、その後に溶融亜鉛めっき処理を行って製造される。
このような高強度鋼板では、強度を高めるためSiやMn等の添加が有効である。ところが、鋼板がSiやMnを含む場合、鉄の酸化が起こらない還元性の水素ガスを含有する還元性雰囲気においても酸化が進み、鋼板表面にSiやMnの酸化物を形成する。この酸化物によりめっき処理時に溶融亜鉛と鋼板との濡れ性が低下するため、SiやMn等が添加された母材鋼板を用いる場合、めっき密着性が低下し易い。
SiやMn等が添加された母材鋼板のめっき密着性を改善する方法として、酸化加熱帯及び還元加熱帯を有する焼鈍炉を用いた酸化還元法による製造方法が実用化されている。この製造方法では、鋼板の表面に鉄の酸化膜を形成させ、この酸化膜を水素を含む還元性雰囲気中で還元した後にめっき処理を行う。
この酸化還元法では、めっき密着性を確保するために酸化膜の膜厚が重要である。酸化膜が薄すぎると、SiやMnの酸化物が酸化膜により十分に被覆されず、この酸化膜から還元される鉄の量が不足するため、鋼板表面にSiやMnの酸化物が残存し易くなる。一方、酸化膜の膜厚が厚すぎると、めっき剥離が生じ易くなる。このため、酸化膜の膜厚管理を適性に行う必要がある。
酸化膜の膜厚管理としては、例えば2色型放射計によって被測定物から測定された2つの分光放射輝度信号を用い、予め取得した被測定物(酸化膜)の膜厚と2つの放射率との関係から酸化膜厚を算出して管理する方法が提案されている(特公平6-82044号公報参照)。この酸化膜の膜厚管理方法では、鋼板に形成される酸化層が、予め取得した被測定物と同一組成であることが前提であり、算出される酸化膜厚に誤差が生じ易い。また、放射計は鋼板から放射されるエネルギーを測定するものであるため、機器の汚れ等により誤差が生じ易く、誤差を低減するためには機器のメインテナンスコストも必要とする。
また、酸化膜の膜厚管理として、酸化膜を形成する際の露点や鋼板温度といった酸化条件を管理することで、形成される酸化膜の膜厚を一定に保つ方法も提案されている(特開昭58-77533号公報、特開平5-148534号公報参照)。しかし、この酸化膜の膜厚管理では、比較的少ないパラメータ数で管理を行うため、例えば鋼板の表面性状や加熱時のヒートパターン等考慮されないパラメータにより、十分な再現性が得られず、膜厚を精度よく一定に保つことが難しい。
特公平6-82044号公報 特開昭58-77533号公報 特開平5-148534号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、酸化膜が形成された鋼板の酸化膜厚を低コストで精度よく測定できる酸化膜の膜厚測定方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、還元処理により鋼板の表面で鉄層に還元される酸化膜の膜厚測定方法であって、上記還元処理を行う還元帯の雰囲気ガス量並びに上記還元帯の入口側及び出口側での雰囲気ガスの露点差を用いて上記還元帯で発生する水蒸気量を算出する工程と、上記水蒸気量算出工程で算出した水蒸気量から酸化物質量を算出する工程と、上記酸化物質量算出工程で算出した酸化物質量から酸化膜厚を算出する工程とを備える。
当該酸化膜の膜厚測定方法は、還元帯の入口側及び出口側の雰囲気ガスの露点差を用いて、鋼板表面で鉄層に還元される酸化物質量を算出する。通常、鋼板の還元処理では、酸化膜の全てを鉄層に還元するので、還元された酸化物質量から酸化膜厚を算出することが可能である。従って、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、リファレンスとの比較等を行うことなく、還元処理される鋼板の酸化膜厚を直接的に測定することができる。このため、当該酸化膜の膜厚測定方法では、測定される酸化膜厚の誤差が小さい。また、当該酸化膜の膜厚測定方法では、鋼板の還元処理が完了した時点で、酸化膜厚の測定値が得られる。従って、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、製造中の鋼板に対して速やかに酸化膜厚の管理を行うことができる。さらに、当該酸化膜の膜厚測定方法で必要とされる測定器は露点計のみであり、放射計を用いる場合に比較して低コストであり、またメインテナンス費用も低い。以上のように、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、酸化膜が形成された鋼板の酸化膜厚を、低コストで精度よく測定することができる。
上記水蒸気量算出工程で、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量をさらに用いるとよい。還元帯への外部からの空気の流入等により水蒸気量が増加し、還元帯の入口側及び出口側で供給される雰囲気ガスの露点自体が変化する場合がある。このため、水蒸気量算出工程で、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量を用いてこの変化を補正することで、酸化膜の膜厚測定精度をさらに向上できる。
上記酸化膜が酸化還元法の酸化帯で生成されたものであるとよい。SiやMn等が添加された母材鋼板のめっき密着性の改善は、酸化還元法の酸化帯で生成された酸化膜を還元して行われる場合が多い。このため、当該酸化膜の膜厚測定方法を酸化還元法の酸化帯で生成された酸化膜に対して行うことで、例えば母材鋼板のめっき密着性の改善を好適に行うことができる。
上記水蒸気量算出工程で、上記雰囲気ガス量及び上記雰囲気ガスの露点差に加え、さらに上記還元帯の入口側及び出口側での一酸化炭素の濃度差を用いて上記還元帯で発生する水蒸気量を算出するとよい。ここで、還元処理で発生した水蒸気の一部が上記酸化膜中の炭素と反応(脱炭)し、一酸化炭素が生成する場合がある。このように一酸化炭素が生成すると、その分、露点計で測定される露点差が減少するため、露点差に基づく水蒸気量の算出結果が減少し、その結果、この水蒸気量を用いて算出する酸化物質量、さらには酸化膜厚が小さくなる。しかし、水蒸気算出工程で、露点差に加えて一酸化炭素濃度差を用いることで、露点差の減少を一酸化炭素の濃度差を用いて補正することができるため、より精度良よく酸化膜から本来発生する水蒸気量を算出することができる。よって、酸化膜の膜厚測定精度をさらに向上できる。
ここで、「還元帯の入口側」とは、還元帯の鋼板が送入される入口側を指し、入口から還元帯の全長の20%以内、好ましくは15%以内の領域を指す。また、「還元帯の出口側」とは、還元帯の鋼板が送出される出口側を指し、出口から還元帯の全長の50%以内、好ましくは30%以内の領域を指す。
以上説明したように、本発明の酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、酸化膜が形成された鋼板の酸化膜厚を、低コストで精度よく測定できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る酸化膜の膜厚測定方法を示すフロー図である。 図2は、図1の酸化膜の膜厚測定方法に用いる還元炉を示す模式的断面図である。 図3は、還元炉内の水蒸気量を示す説明図である。 図4は、本発明の他の実施形態に係る酸化膜の膜厚測定方法に用いる還元炉を示す模式的断面図である。 図5は、実施例における露点計の測定結果の一例を示すグラフである。 図6は、実施例におけるリファレンスの酸化膜厚を決定するための到達板温と酸化膜厚との関係を示すグラフである。 図7は、実施例における本発明の第1実施形態の酸化膜の膜厚測定方法により算出した酸化膜厚とリファレンスの酸化膜厚との相関を示すグラフである。 図8は、実施例における本発明の第2実施形態の酸化膜の膜厚測定方法により算出した一酸化炭素濃度差による補正前及び補正後の酸化膜厚と、リファレンスの酸化膜厚との相関を示すグラフである。 図9は、図8の補正前の水蒸気濃度に対する補正後の水蒸気濃度の比と、上記補正後の水蒸気濃度との関係を示すグラフである。 10は、図8の補正前の酸化膜厚及びこの酸化膜厚を補正係数で補正した後の酸化膜厚と、リファレンスの酸化膜厚との相関を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を適宜図面を参照しつつ詳説する。
[第1実施形態]
図1に示す本実施形態の酸化膜の膜厚測定方法は、還元処理により鋼板の表面で鉄層に還元される酸化膜の膜厚測定方法である。当該酸化膜の膜厚測定方法は、水蒸気量算出工程S1と、酸化物質量算出工程S2と、酸化膜厚算出工程S3とを備える。当該酸化膜の膜厚測定方法は、例えば図2に示す還元炉を用いて行うことができる。
<還元炉>
上記還元炉は、還元帯1と、一対の露点計2を主に備える。
(還元帯)
還元帯1は、ロール11を有し、還元帯1の入口1aから送入される帯状の鋼板Mをロール11により送給し、還元帯1の出口1bより送出する。鋼板Mの表面には酸化膜が形成されており、この酸化膜は、この還元帯1での還元処理により鋼板Mの表面で鉄層に還元される。
還元帯1は気密に構成され、雰囲気ガスを還元帯1の内部に導入することにより、還元雰囲気とすることができる。この雰囲気ガスは、還元帯1の出口1bより供給され、入口1aより排出される。
上記雰囲気ガスは、主に水素と窒素とを含む高温の混合ガスである。上記雰囲気ガスの水素濃度の下限としては、3体積%が好ましく、5体積%が好ましい。一方、上記水素濃度の上限としては、30体積%が好ましく、25体積%がより好ましい。上記水素濃度が上記下限未満であると、酸化膜の還元が不十分となるおそれがある。逆に、上記水素濃度が上記上限を超えると、還元能力の上昇に対し、必要な水素ガスの費用が嵩むため、費用対効果が不十分となるおそれがある。
上記雰囲気ガスの水素以外の残部は、窒素及び水分等の不可避的不純物である。上記雰囲気ガスの露点の上限としては、0℃が好ましく、-10℃がより好ましい。上記雰囲気ガスの露点が上記上限を超えると、酸化膜の還元が不十分となるおそれがある。一方、上記雰囲気ガスの露点の下限としては、特に限定されないが、上記雰囲気ガスの露点は通常-80℃以上である。なお、雰囲気ガスの露点は、雰囲気ガスに含まれる水分量により調整することができる。
還元帯1内の還元雰囲気温度(雰囲気ガスの温度)は、鋼板Mの還元温度を所望の温度とできる限り、特に限定されないが、還元帯1内の還元雰囲気温度の下限としては、700℃が好ましく、750℃がより好ましい。一方、上記還元雰囲気温度の上限としては、920℃が好ましく、900℃がより好ましい。上記還元雰囲気温度が上記下限未満であると、鋼板Mの酸化膜が十分に還元されないおそれがある。逆に、上記還元雰囲気温度が上記上限を超えると、還元が完了した後も高温環境下に鋼板Mが長く留まり、鉄の酸化が発生するおそれがある。
上記雰囲気ガスの供給量は、還元炉内の炉圧を所定値に維持できるように炉の形状等似応じて適宜決定され、例えば200Nm/h以上400Nm/h以下とできる。
鋼板Mの通板速度(還元帯1の入口1aから出口1bまでの平均速度)は、還元炉の炉長や製造効率により還元時間が確保できるように適宜決定されるが、鋼板Mの通板速度の下限としては、20m/分が好ましく、30m/分がより好ましい。一方、鋼板Mの通板速度の上限としては、50m/分が好ましく、40m/分がより好ましい。鋼板Mの通板速度が上記下限未満であると、還元が完了した後も高温環境下に鋼板Mが長く留まり、鉄の酸化が発生するおそれがある。逆に、鋼板Mの通板速度が上記上限を超えると、鋼板Mの酸化膜が十分に還元されないおそれがある。
当該酸化膜の測定方法の対象となる鋼板Mは、Si、Mn、P、Al等が添加された母材鋼板であるとよい。これらの元素が添加された母材鋼板に対して鋼板のめっき密着性を改善する際、めっき密着性を確保するために酸化膜の膜厚が特に重要であり、当該酸化膜の測定方法を好適に用いることができる。
鋼板MにSiが添加されている場合、Si含有量の下限としては、0.3質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。一方、Si含有量の上限としては、3.0質量%が好ましく、2.5質量%がより好ましい。Si含有量が上記下限未満であると、強度及び加工性を両立させるために他の合金元素が必要となり、製造コストが増大するおそれがある。逆に、Si含有量が上記上限を超えると、酸化膜の形成が抑制されるため、Si酸化物によりめっき密着性が低下するおそれがある。
鋼板MにMnが添加されている場合、Mn含有量の下限としては、1.0質量%が好ましく、1.5質量%がより好ましい。一方、Mn含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。Mn含有量が上記下限未満であると、鋼板の強度及び靭性が不足するおそれがある。逆に、Mn含有量が上記上限を超えると、組織生成のために必要な保時時間が長くなり過ぎるおそれがある。
鋼板MにPが添加されている場合、P含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。一方、P含有量の上限としては、1.0質量%が好ましく、0.8質量%がより好ましい。P含有量が上記下限未満であると、固溶体としての強度改善効果が不足するおそれがある。逆に、P含有量が上記上限を超えると、鋼板の靭性や加工性が低下するおそれがある。
鋼板MにAlが添加されている場合、Al含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましい。一方、Al含有量の上限としては、1.0質量%が好ましく、0.8質量%がより好ましい。Al含有量が上記下限未満であると、固溶体としての強度改善効果が不足するおそれがある。逆に、Al含有量が上記上限を超えると、鋼板の疲労破壊の起点となるおそれがある。
また、鋼板Mは、SiやMn以外には、C、Cr、Ti、S等を含有してもよい。なお、鋼板Mの残部は鉄及び不可避的不純物である。
鋼板Mの表面の酸化膜は、酸化帯で生成されたものであるとよい。SiやMn等が添加された母材鋼板のめっき密着性の改善は、酸化還元法の酸化帯で生成された酸化膜を還元して行われる場合が多い。このため、当該酸化膜の膜厚測定方法を酸化還元法の酸化帯で生成された酸化膜に対して行うことで、例えば母材鋼板のめっき密着性の改善を好適に行うことができる。
酸化還元法の酸化帯で生成された酸化膜の平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、上記酸化膜の平均厚さの上限としては、1.2μmが好ましく、1.0μmがより好ましい。上記酸化膜の平均厚さが上記下限未満であると、めっき密着性の改善効果が不十分となるおそれがある。逆に、鉄酸化層の平均厚さが上記上限を超えると、酸化膜が不必要に厚く、還元時間が長くなり、製造効率を低下させるおそれがある。当該酸化膜の膜厚測定方法は、上記酸化膜の平均厚さが上記範囲内であることを確認し、管理するために用いることができる。
(露点計)
一対の露点計2は、還元帯1の入口1a側に配設される入口側露点計21と、還元帯1の出口1b側に配設される出口側露点計22とを有する。
露点計2としては、露点が検出できる限り特に限定されず、公知の露点計を用いることができる。
入口側露点計21の配設位置は、還元帯1の入口1aに近いほどよい。具体的には、入口側露点計21の配設位置と入口1aとの距離は、還元帯1の全長の10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、0%、つまり入口側露点計21は還元帯1の入口1aに配設されることがさらに好ましい。なお、雰囲気ガスが還元帯1の出口1bから入口1aへ向かって流れているので、この入口側露点計21は、雰囲気ガスの下流側の露点を測定する。
出口側露点計22の配設位置は、鋼板Mの還元が完了する位置よりも鋼板Mの送給方向に対して下流側にあることが好ましい。具体的には、出口側露点計22の配設位置と出口1bとの距離は、還元帯1の全長の20%以下が好ましく、10%以下が好ましく、0%、つまり出口側露点計22は還元帯1の出口1bに配設されることがさらに好ましい。なお、雰囲気ガスが還元帯1の出口1bから入口1aへ向かって流れているので、この出口側露点計22は、雰囲気ガスの上流側の露点を測定する。
また、入口側露点計21と出口側露点計22との離間距離は、還元帯1の全長の50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、100%がさらに好ましい。入口側露点計21と出口側露点計22との離間距離を上記下限以上とすることで、還元帯1の入口1aと出口1bとの雰囲気ガスの露点差をより精度よく測定することができる。
<水蒸気量算出工程>
水蒸気量算出工程S1では、還元処理を行う還元帯1の雰囲気ガス量並びに還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差を用いて還元帯1で発生する水蒸気量を算出する。以下、水蒸気量を算出する原理及び手順について説明する。
鋼板Mの表面に形成されている酸化膜は、還元処理により分解され、酸素が雰囲気ガス中の水素と反応して水蒸気となる。この反応は主に還元帯1の入口1a側で生じる。雰囲気ガスは還元帯1の出口1bから入口1aへ向かって流れているので、出口側露点計22は上記反応が生じる前の雰囲気ガスの露点を指すと考えられる。一方、酸化膜が還元されることで生じる水蒸気は、図3に示すように酸化膜MOの還元が完了するまで放出される。雰囲気ガスは還元帯1の出口1bから入口1aへ向かって流れているから、この水蒸気は出口1b側から雰囲気ガスと混合し、入口1aへ向かって積算されていく。従って、図3に示すように入口側露点計21は、この酸化膜MOが還元されることで生じる水蒸気が積算された状態の雰囲気ガスの露点を指すと考えられる。従って、還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差、すなわち入口側露点計21と出口側露点計22との露点差は、水蒸気濃度F(体積%)の増加を表す。
酸素が雰囲気ガス中の水素と反応して水蒸気となっても反応前後で分子数の増減はないので、雰囲気ガスの流量をV(Nm/h)とすると、水蒸気濃度と雰囲気ガスの流量との積F×Vは、発生した水蒸気の体積を表し、これに水蒸気密度q(kg/m)を乗ずれば、還元帯1で発生する水蒸気量H=F×V×q(kg/h)を算出することができる。ここで、水蒸気濃度Fの値は水蒸気の蒸気圧曲線をもとに露点差から算出できる。この蒸気圧としては、例えば公知のテーテンスの実験式を用いることができる。また、水蒸気密度qは温度依存性を持ち、その値は公知である。従って、雰囲気ガスの流量Vが分かれば、雰囲気ガスの温度をもとに水蒸気量を算出することができる。
以上のようにして、還元処理を行う還元帯1の雰囲気ガス量並びに還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差を用いて還元帯1で発生する水蒸気量H(kg/h)を算出することができる。
<酸化物質量算出工程>
酸化物質量算出工程S2では、水蒸気量算出工程S1で算出した水蒸気量から酸化物質量を算出する。以下、酸化物質量を算出する原理及び手順について説明する。
上述のように水蒸気量算出工程S1で算出した水蒸気量Hは、酸化膜が還元されることで生じる水蒸気によるものである。また、酸化膜の還元により生じる水蒸気は、雰囲気ガスの流れにより積算されて還元帯1の入口1aに達するから、水蒸気量算出工程S1で算出した水蒸気量Hは、単位時間に通板されてくる鋼板Mの表面に形成されている酸化膜の還元反応に起因している。つまり、上記水蒸気量Hに含まれる酸素量と、単位時間に通板されてくる鋼板Mの表面に形成されている酸化膜に含まれる酸素量とは等しい。すなわち、単位時間に通板されてくる鋼板Mの表面に形成されている酸化膜質量をW(kg/h)、酸化膜中の酸素割合をαとすると、水(HO;分子量18)中の酸素(分子量16)の割合は16/18であるから、W×α=H×16/18の関係が成立する。
ここで、鋼板Mの表面に形成されている酸化膜は、主として酸化鉄である。酸化鉄には、FeO(酸素割合22.3%)、Fe(酸素割合27.6%)、Fe(酸素割合30.1%)がある。酸化膜中の酸素割合αは、酸化膜中のこれら3種の酸化鉄の存在割合により決まる。例えば、鋼板Mの表面の酸化膜が酸化帯で生成されたものである場合、この酸化膜は通常700℃程度で酸化されて生成され、Fe及びFeが分子数比で1:1である。従って、鋼板Mの表面の酸化膜が酸化帯で生成されたものである場合、酸化膜中の酸素割合αは0.288(28.8%)と決定することができる。このように酸化膜中の酸素割合αは、酸化鉄が生成された条件等にもとづいて適宜決定することができる。
従って、W×α=H×16/18の関係式を解くことで、水蒸気量算出工程S1で算出した水蒸気量Hから酸化物質量Wを算出することができる。
<酸化膜厚算出工程>
酸化膜厚算出工程S3では、酸化物質量算出工程S2で算出した酸化物質量から酸化膜厚を算出する。以下、酸化膜厚を算出する原理及び手順について説明する。
単位時間当たりに送入される鋼板Mの表面積をA(m/h)、酸化膜密度をρ(kg/m)、酸化膜厚をT(m)とすれば、鋼板Mの表面全体に酸化膜が形成されていると考えられるので、酸化物質量W=A×ρ×Tの関係が成立する。
送入される鋼板Mは通常板状であり、その両面に酸化膜が形成されているので、鋼板Mの平均幅をw(m)、通板速度をv(m/h)とすれば、A=2×w×vの関係が成立する。
酸化膜密度ρは、酸化鉄の密度に対応する。上述のように酸化鉄には、FeO、Fe、Feがあり、密度はそれぞれ5700kg/m、5240kg/m、5160kg/mである。また、上述のように鋼板Mの表面の酸化膜は、Fe及びFeが分子数比で1:1で構成されると考えられるから、例えばρ=5200kg/mとすることができる。また、酸化膜の空隙率に応じてこれよりも低い値としてもよい。
従って、W=A×ρ×T=2×w×v×ρ×Tの関係式を解くことで、酸化物質量算出工程S2で算出した酸化物質量Wから酸化膜厚Tを算出することができる。
<利点>
当該酸化膜の膜厚測定方法は、還元帯1の入口側及び出口側の雰囲気ガスの露点差を用いて、鋼板M表面で鉄層に還元される酸化物質量Wを算出する。通常、鋼板Mの還元処理では、酸化膜MOの全てを還元するので、還元された酸化物質量Wから酸化膜厚Tを算出することが可能である。従って、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、リファレンスとの比較等を行うことなく、直接的に還元処理される鋼板Mの酸化膜厚Tを測定することができる。このため、当該酸化膜の膜厚測定方法では、測定される酸化膜厚Tの誤差が小さい。
また、当該酸化膜の膜厚測定方法では、鋼板Mの還元処理が完了した時点、より正確には鋼板Mの還元処理が完了し、その完了位置での雰囲気ガスが入口側露点計21に到達した時点で、酸化膜厚の測定値が得られる。従って、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、製造中の鋼板Mに対して速やかに酸化膜厚の管理を行うことができる。さらに、当該酸化膜の膜厚測定方法で必要とされる測定器は露点計2のみであり、放射計を用いる場合に比較して低コストであり、またメインテナンス費用も低い。
以上のように、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、酸化膜MOが形成された鋼板Mの酸化膜厚を、低コストで精度よく測定することができる。
[第2実施形態]
本実施形態の酸化膜の膜厚測定方法は、還元処理により鋼板の表面で鉄層に還元される酸化膜の膜厚測定方法である。本実施形態の酸化膜の膜厚測定方法は、上述した第1実施形態と同様に、水蒸気量算出工程と、酸化物質量算出工程と、酸化膜厚算出工程とを備える。一方、本実施形態の酸化膜の膜厚測定方法は、水蒸気量算出工程で、上述した第1実施形態と同様の雰囲気ガス量及び雰囲気ガスの露点差に加え、さらに一酸化炭素濃度差を用いて水蒸気量(酸化物質量算出工程で用いる水蒸気量)を算出する点以外は、上記第1実施形態と同じ構成を備える。従って、以下、本実施形態の説明では、上述した第1実施形態と異なる構成のみを説明し、同じ構成については説明を省略する。
本実施形態の酸化膜の膜厚測定方法は、例えば図4に示す還元炉を用いて行うことができる。
<還元炉>
図4の還元炉は、還元帯1と、一対の露点計2とに加えて、さらに一酸化炭素濃度計(以下、単に「濃度計」という場合がある。)3を主に備える。この還元炉について、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。また、濃度計3を備える点以外の還元炉の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
(濃度計)
濃度計3は、還元帯1の入口1a側に配設される。還元帯1内で発生した水蒸気が酸化膜中の炭素と反応すると一酸化炭素が生成する。ここで、上述した通り、炭素と反応する水蒸気は、還元帯1の出口1bから入口1aに向かって流れる雰囲気ガスによって発生し、発生した水蒸気は入口1aに向かって積算されていく。このため、還元帯1の出口1b側では、通常、雰囲気ガスの一酸化炭素濃度は0%であり、発生した一酸化炭素は、水蒸気の発生状況に対応して入口1aに向かって積算されていく。よって、濃度計3を還元帯1の入口1a側に配設することで、この濃度計3で測定された一酸化炭素濃度を、還元帯1の入口1a側及び出口1b側の一酸化炭素濃度の差(一酸化炭素濃度差)としてそのまま算出することができる。
濃度計3としては、一酸化炭素濃度が検出できる限り特に限定されず、公知の濃度計を用いることができる。
濃度計3の配設位置は、還元帯1の入口1a側の一酸化炭素濃度を測定できればよく、特に限定されない。例えば濃度計3の配設位置としては、鋼板Mの送給方向において入口側露点計21の配設位置に近い位置が好ましく、入口側位置21と同じ位置がより好ましい。このように濃度計3を入口側露点計21に近い位置に配設することで、還元帯1の入口1a側及び出口1b側の一酸化炭素濃度差をより精度良く測定することができる。なお、上述した通り、還元帯1の出口1b側には濃度計を配設する必要はないが、入口1a側の濃度計3に加えて、出口1b側に濃度計を配設してもよい。
<水蒸気量算出工程>
上述した第1実施形態では、酸化物質量算出工程に用いるべく、水蒸気量算出工程で、雰囲気ガス量及び雰囲気ガスの露点差を用いて還元帯1で発生する水蒸気量を算出する。これに対し、本実施形態では、酸化物質量算出工程に用いるべく、水蒸気量算出工程で、上述した第1実施形態に示す雰囲気ガス量及び雰囲気ガスの露点差に加えて、さらに還元帯1の入口1a側及び出口1b側での一酸化炭素(CO)の濃度差を用いて還元帯1で発生する水蒸気量を算出する。
具体的には、本実施形態の水蒸気量算出工程では、上述した第1実施形態と同様に雰囲気ガスの露点差を用いて水蒸気濃度を算出し、さらに雰囲気ガスの一酸化炭素濃度差を消失した水蒸気濃度(消失水蒸気濃度)として算出し、露点差による水蒸気濃度を消失水蒸気濃度で補正し、この補正された水蒸気濃度(補正後水蒸気濃度)と雰囲気ガス量とを用いて、酸化物質量算出工程に用いるための水蒸気量を算出する。
より具体的には、本実施形態の水蒸気量算出工程は、上述した第1実施形態と同様に還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差を用いて還元帯1で発生する水蒸気濃度を見かけの水蒸気濃度(補正前水蒸気濃度)として算出する工程(補正前水蒸気濃度算出工程)と、還元帯1の入口1a側及び出口1b側での上記雰囲気ガスの一酸化炭素濃度差を消失した水蒸気濃度として算出する工程(消失水蒸気濃度算出工程)と、上記補正前水蒸気濃度、上記消失水蒸気濃度及び還元帯1の雰囲気ガス量を用いて、酸化膜質量の算出に用いる水蒸気量を算出する工程(補正後水蒸気量算出工程)とを備える。以下、補正後水蒸気量を算出する原理及び手順について説明する。
(補正前水蒸気濃度算出工程)
補正前水蒸気濃度算出工程では、上述した第1実施形態と同様にして、水蒸気濃度(補正前水蒸気濃度)を算出する。概説すると、還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差、すなわち入口側露点計21と出口側露点計22との露点差を算出すると、この露点差は水蒸気濃度F(体積%)の増加を表す。ここで、上述の通り、補正前水蒸気濃度Fの値は水蒸気の蒸気圧曲線をもとに露点差から算出できる。この蒸気圧としては、例えば公知のテーテンスの実験式を用いることができる。
(消失水蒸気濃度算出工程)
消失水蒸気濃度算出工程では、還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの一酸化炭素濃度差を算出し、得られた一酸化炭素濃度差を消失水蒸気濃度とする。具体的には、上述した通り、還元帯1の出口1b側では一酸化炭素が発生していない、すなわち、一酸化炭素濃度が0体積%であるため、還元帯1の入口1a側に配設した濃度計3により測定された一酸化炭素濃度を、還元帯1の入口1a側及び出口1b側の一酸化炭素濃度差として算出する。
上述した通り、鋼板Mの表面に形成されている酸化膜は、還元処理により分解され、酸素が雰囲気ガス中の水素と反応して水蒸気となる。ここで、発生した水蒸気が酸化膜中の炭素と反応して一酸化炭素が生成する場合がある。すなわち、発生した水蒸気によって酸化膜に脱炭が生じる場合がある。このように水蒸気が酸化膜中の炭素と反応すると、その分、水蒸気が消失し、入口側露点計21で測定される露点が小さくなる。その結果、入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差が減少する。すなわち、見かけの露点差が減少する。露点差が減少すると、酸化膜質量(又は酸化膜厚)に応じて本来発生するはずの水蒸気濃度よりも小さい水蒸気濃度が算出されてしまう。このため、脱炭が発生する場合、露点差をそのまま用いて水蒸気量を算出し、この水蒸気量を用いて酸化膜質量を算出すると、実際の酸化膜質量よりも小さな値が算出されてしまう。
一方、還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの一酸化炭素濃度差、すなわち濃度計3により測定された一酸化炭素濃度は、一酸化炭素濃度(体積%)の増加を表す。ここで、脱炭の前後での分子数について、式「C(固体)+HO(気体)=CO(気体)+H(気体)」が成立するため、脱炭後の気体の分子数は、脱炭前よりも増加する。また、気体の体積は、温度及び圧力が一定であれば分子数に比例する。よって、脱炭後の気体(一酸化炭素及び水素)の体積は、脱炭前の気体(水蒸気)の体積よりも増加する。具体的には、脱炭によって、水蒸気が消失する代わりに一酸化炭素が発生すると共に水素が発生するため、この水素の分だけ脱炭の前後で気体の体積が増加する。しかし、そもそも還元で発生する水蒸気の体積は、還元炉内の雰囲気ガス全体(気体全体)の体積の約1%程度であり、非常に小さい。このため、脱炭で発生する一酸化炭素及び水素の体積も、それぞれ約1%と非常に小さい。よって、発生した水素の分だけ雰囲気ガス全体の体積が増加しても、その増加による一酸化炭素濃度(雰囲気ガス全体中の一酸化炭素の体積%)の変化は無視できる。従って、発生した一酸化炭素濃度の増加は、脱炭による水蒸気濃度の減少、すなわち、消失した水蒸気濃度Fa(体積%)を表す。
(補正後水蒸気量算出工程)
上記の通り、水蒸気が消失する代わりに一酸化炭素が発生する。よって、上記補正前水蒸気濃度算出工程で算出された水蒸気濃度Fの増加と、上記消失水蒸気濃度算出工程で得られた消失水蒸気濃度Faとを足し合わすと、その和が、酸化膜中で本来発生した水蒸気濃度(補正後水蒸気濃度)Gを表す。すなわち、G=F+Faとなる。雰囲気ガスの流量をV(Nm/h)とすると、補正後水蒸気濃度と雰囲気ガスの流量との積(G×V)は、本来発生した総水蒸気の体積を表し、これに水蒸気密度q(kg/m)を乗ずれば、還元帯1で酸化膜から本来発生する水蒸気量(補正後水蒸気量)I=G×V×q(kg/h)を算出することができる。ここで、上述した通り、水蒸気密度qは温度依存性を持ち、その値は公知である。従って、雰囲気ガスの流量Vが分かれば、雰囲気ガスの温度をもとに水蒸気量を算出することができる。
以上のようにして、還元処理を行う還元帯1の雰囲気ガス量並びに還元帯1の入口1a側及び出口1b側での雰囲気ガスの露点差及び一酸化濃度差を用いて、酸化膜質量算出工程に用いるための水蒸気量(補正後水蒸気量)I(kg/h)を算出することができる。
そして、上述した第1実施形態の酸化物質量算出工程において、露点差を用いて算出した水蒸気量(補正前水蒸気量に相当する)Hに代えて補正後水蒸気量Iを用いることで、上述した第1実施形態と同様、酸化膜の酸化物質量を算出することができる。さらに、このように算出した酸化物質量を用いて上述した第1実施形態と同様に酸化膜厚算出工程を行うことで、上述した第1実施形態と同様、酸化物膜厚を算出することができる。
<利点>
上述した第1実施形態と同様、当該酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、酸化膜が形成された鋼板の酸化膜厚を、低コストで精度よく測定することができる。また、本実施形態では、雰囲気ガスの露点差及び雰囲気ガス量に加えて、さらに雰囲気ガスの一酸化炭素濃度差を用いて酸化物質量算出工程で用いる水蒸気量(補正後水蒸気量)を算出することで、鋼板の酸化膜厚をより精度よく測定することができる。
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記第1実施形態では、入口側露点計と出口側露点計との露点差のみを用いて還元帯で発生する水蒸気量を算出したが、水蒸気量算出工程で、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量をさらに用いてもよい。還元帯への外部からの空気の流入等により水蒸気量が増加し、還元帯の入口側及び出口側で供給される雰囲気ガスの露点自体が変化する場合がある。このため、水蒸気量算出工程で、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量を用いてこの変化を補正することで、酸化膜の膜厚測定精度をさらに向上できる。
酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量を用いた上記補正方法としては、例えば酸化処理されていない鋼板を通板した際に算出される水蒸気濃度Fの増加を還元帯の炉圧P(kPa)に比例する量(a×P;aは比例定数)として表し、還元帯で発生する総水蒸気量、つまり還元帯で発生する水蒸気量H=F×V×q(kg/h)からこの水蒸気量を炉圧Pに応じて減じる補正をする方法が挙げられる。この定数aは、還元炉に固有の値として予め算出しておくとよい。
これと同様に、上記第2実施形態においても、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量をさらに用いて補正後水蒸気量Iを補正してもよい。
上記第2実施形態では、露点差を用いて算出した補正前水蒸気濃度を、一酸化濃度差を用いて補正したが、水蒸気量算出工程で、補正前水蒸気濃度を、補正係数を用いて補正してもよい。補正係数は、予備実験等によって算出することができる。この補正係数は、例えば、上記第2実施形態と同様に一酸化炭素濃度差を用いて補正前水蒸気濃度を補正して補正後水蒸気濃度を算出し、得られた補正後水蒸気濃度の補正前水蒸気濃度に対する比として算出することができる。補正係数としては、例えば1.2以上1.8以下が好ましい。補正係数を用いて補正前水蒸気濃度を補正することで、簡易に補正後水蒸気濃度を算出することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
<還元処理における露点変化の確認>
溶融亜鉛めっきラインで用いる横型酸化還元炉を用意し、鋼板を酸化炉で酸化加熱後、還元炉で還元する酸化還元法により焼鈍し、溶融亜鉛めっき鋼板(ハイテンション鋼)を製造した。
鋼板としては、Siの含有量が1.87質量%、Cの含有量が0.20質量%、Crの含有量が0.02質量%、平均厚さ1.4mm、平均幅990mmの板状のものを用い、通板速度35m/分で還元帯を通板させた。
また、還元帯では、雰囲気ガスとして、水素と窒素とを含む混合ガス(水素濃度12体積%)を用い、鋼板の通板方向とは逆方向に300Nm/hの供給量で流した。なお、雰囲気ガスの露点は-60℃であった。
還元帯には、その入口と出口とにそれぞれ露点計が設けられている。図5に、溶融亜鉛めっき鋼板として、一般鋼とハイテンション鋼とを交互で製造した場合の露点計の変化を示す。なお、一般鋼は、酸化炉で酸化を行わず還元炉で還元のみを行う鋼板を指し、従って、この鋼板に形成されている酸化膜は自然に形成された膜厚が非常に小さい、いわゆる自然酸化膜である。
図5から、還元帯の出口側露点計で測定される雰囲気ガスの入口側露点は、-40℃~-35℃の範囲で比較的安定している。一方、還元帯の入口側露点計で測定される雰囲気ガスの出口側露点は、一般材かハイテンション鋼かに応じて-30℃~+20℃の範囲で変化している。ハイテンション鋼は酸化膜を形成した鋼板であり、この鋼板を還元する際に酸化膜から生じる水蒸気により露点が大きく上昇し、一方、ほとんど酸化膜が形成されていない一般鋼では露点の上昇が小さいことが分かる。
<酸化膜厚測定の精度検証>
酸化炉内の雰囲気温度を変化させて鋼板の温度を変化させることで、ハイテンション鋼の表面に形成される酸化膜厚を変化させ、上述した第1実施形態の酸化膜の膜厚測定方法により酸化膜厚を算出した。すなわち、雰囲気ガスの露点差を用いて水蒸気濃度(補正されていない水蒸気濃度)を算出し、算出した水蒸気濃度を用いて水蒸気量(補正されていない水蒸気量)を算出し、算出した水蒸気量を用いて酸化物質量を算出し、さらに酸化膜厚を算出した。
酸化還元炉では鋼板の酸化後、連続して還元処理が行われるため、酸化炉で形成された酸化膜の膜厚を直接測定することは困難である。そこで、酸化炉から送出される鋼板の温度(到達板温)から酸化膜厚を算出する実験式を算出した。上述のように酸化雰囲気を一定に保ちつつ酸化炉内の雰囲気温度を変化させることで鋼板の温度を変化させて酸化膜を形成する場合に限れば、比較的ヒートパターンが一定に保たれるため、到達板温と形成される酸化膜厚とは強い相関があることが知られている。
具体的には、実験用の酸化還元炉を用い、ハイテンション鋼を製造した場合と同様の条件で酸化のみを行い、その際の到達板温と、形成された酸化膜厚とを測定した。なお、酸化膜厚の測定は、オフラインで鋼板の酸素濃度を測定し、算出した。得られた到達板温と酸化膜厚との関係を図6に示す。到達板温(x℃)と、酸化膜厚(yμm)との関係式として、最小自乗法を用いて以下の式(1)を算出した。なお、最小自乗法における相関係数(R)は0.999と高い相関を示しており、到達板温により酸化膜厚を精度よく算出できることを示している。
Figure 0007148438000001
上記式(1)を用いて算出した酸化膜厚をリファレンスとし、本発明の酸化膜の膜厚測定方法により算出した酸化膜厚との相関を図7に示す。図7から本発明の酸化膜の膜厚測定方法により算出した酸化膜厚は、リファレンスとする酸化膜厚と相関が高く、本発明の酸化膜の膜厚測定方法により精度よく測定できていることが分かる。
[実験例2]
<一酸化炭素濃度差を用いた補正による酸化膜厚測定の精度検証>
鋼板として、Siの含有量が1.80質量%、Cの含有量が0.09質量%、Crの含有量が0.21質量%、平均厚さ1.4mm、平均幅1178mmの板状のものを用い、通板速度35m/分で還元帯を通板させた。
また、実験例1と同様、還元帯では、雰囲気ガスとして、水素と窒素とを含む混合ガス(水素濃度12体積%)を用い、鋼板の通板方向とは逆方向に300Nm/hの供給量で流した。なお、雰囲気ガスの露点は-60℃であった。
還元帯に、その入口と出口とにそれぞれ露点計が設けられていることに加え、鋼板の送給方向において出口側露点計と同じ位置に一酸化炭素濃度計が設けられていること以外は実験例1と同じである横型酸化還元炉を用いた。
上記のように、用いる鋼板、及び用いる酸化還元炉が異なること以外は、実験例1と同様の条件で鋼板の酸化及び還元を行って、ハイテンション鋼を製造した。また、酸化炉内の雰囲気温度を変化させて鋼板の温度を変化させることで、ハイテンション鋼の表面に形成される酸化膜厚を変化させ、上述した第2実施形態の酸化膜の膜厚測定方法により酸化膜厚を算出した。すなわち、雰囲気ガスの露点差を用いて算出した水蒸気濃度(補正前水蒸気濃度)を、一酸化炭素濃度差(消失水蒸気濃度)を用いて補正し、得られた水蒸気濃度(補正後水蒸気濃度)を用いて水蒸気量(補正後水蒸気量)を算出し、算出した水蒸気量を用いて酸化物質量を算出し、さらに酸化膜厚を算出した。入口側露点計の露点(雰囲気ガスの出口側露点)は、鋼板の通板中、-5℃~10℃であった。
具体的には、各露点計の露点差を用いて補正前水蒸気濃度を算出した。一方、濃度計から一酸化炭素濃度を算出し、この一酸化炭素濃度差を消失水蒸気濃度として算出した。そして、算出した補正前水蒸気量と消失水蒸気濃度とを足し合わせることで、補正後水蒸気濃度を算出した。上記で得られた補正前水蒸気濃度と、雰囲気ガス量とを用いて補正前水蒸気量を算出し、算出した補正前水蒸気量を用いて補正前酸化物質量を算出し、さらに補正前酸化物膜厚(CO補正前の酸化膜厚)を算出した。一方、上記で得られた補正後水蒸気濃度と、雰囲気ガス量とを用いて補正後水蒸気量を算出し、算出した補正後水蒸気量を用いて補正後酸化物質量を算出し、さらに補正後酸化膜厚(CO補正後の酸化膜厚)を算出した。
得られた各酸化膜厚と、実験例1と同様に上記式(1)を用いて算出した酸化膜厚(リファレンス)との相関を図8に示す。CO補正前の酸化膜厚(μm)とリファレンス(μm)との関係式の傾き及び相関係数を、最小自乗法を用いて算出すると共に、CO補正後の酸化膜厚(μm)とリファレンス(μm)との関係式の傾き及び相関係数を算出した。各算出結果を図8に示す。その結果、CO補正後の酸化物膜とリファレンスとの関係式の傾き及び相関係数の方が、いずれもCO補正前の酸化物膜とリファレンスとの関係式の傾き及び相関係数よりも1に近く、CO濃度差を用いることで、酸化膜厚を精度よく算出できていることがわかる。
得られた補正前水蒸気濃度と、補正前水蒸気濃度に対する補正後水蒸気濃度の比との関係を図9に示す。図9に示すように、補正前水蒸気濃度に対する補正後水蒸気濃度の比は概ね数値1.6を中心とし、1.2以上1.8以下の数値範囲に収まっていることが示される。そこで、補正係数として1.6を用い、この補正係数を上記補正前水蒸気濃度に乗じる(補正前水蒸気濃度×1.6)ことによって補正後水蒸気濃度(補正係数による補正後の水蒸気濃度)を算出した。算出した補正後水蒸気濃度と雰囲気ガス量とを用いて補正後水蒸気量を算出し、算出した補正後水蒸気量を用いて補正後酸化物質量を算出し、さらに補正後酸化膜厚(補正係数による補正後の酸化膜厚)を算出した。
上記補正係数による補正後の酸化膜厚と上記リファレンスとの相関を、上記図8に示す補正前(補正係数による補正前に相当する)の酸化膜厚と上記リファレンスとの関係と共に、図10に示す。また、補正係数による補正後の酸化膜厚(μm)とリファレンス(μm)との関係式及び相関係数を、最小自乗法を用いて算出した。算出結果を、上記図8に示す補正前の酸化膜厚(μm)とリファレンス(μm)との関係式及び相関係数の算出結果と共に、図10に示す。
その結果、補正係数による補正後の酸化物膜とリファレンスとの関係式の傾きの方が、補正係数による補正前の酸化物膜とリファレンスとの関係式の傾きよりも1に近く、補正係数を用いることで、酸化膜厚を精度よく算出できていることがわかる。また、補正係数が1.6以上1.8であることで、酸化膜厚を精度良く算出できることが示唆される。
以上説明したように、本発明の酸化膜の膜厚測定方法を用いることで、酸化膜が形成された鋼板の酸化膜厚を、低コストで精度よく測定できる。
1 還元帯
1a 入口
1b 出口
11 ロール
2 露点計
21 入口側露点計
22 出口側露点計
3 一酸化炭素濃度計
M 鋼板
MO 酸化膜

Claims (4)

  1. 還元処理により鋼板の表面で鉄層に還元される酸化膜の膜厚測定方法であって、
    上記還元処理を行う還元帯の雰囲気ガス量並びに上記還元帯の入口側及び出口側での雰囲気ガスの露点差を用いて上記還元帯で発生する水蒸気量を算出する工程と、
    上記水蒸気量算出工程で算出した水蒸気量から酸化物質量を算出する工程と、
    上記酸化物質量算出工程で算出した酸化物質量から酸化膜厚を算出する工程と
    を備える酸化膜の膜厚測定方法。
  2. 上記水蒸気量算出工程で、酸化処理されていない鋼板を上記還元帯に通板した場合の水蒸気増加量をさらに用いる請求項1に記載の酸化膜の膜厚測定方法。
  3. 上記酸化膜が酸化還元法の酸化帯で生成されたものである請求項1又は請求項2に記載の酸化膜の膜厚測定方法。
  4. 上記水蒸気量算出工程で、上記雰囲気ガス量及び上記雰囲気ガスの露点差に加え、さらに上記還元帯の入口側及び出口側での一酸化炭素の濃度差を用いて上記還元帯で発生する水蒸気量を算出する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の酸化膜の膜厚測定方法。
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