ところで、液体噴射装置の仕様・内部構造に応じた液体噴射ヘッドのヘッド保持部材に対する固定態様や、製造又は修理におけるネジ留め工程の作業条件等に応じて、液体噴射ヘッドのノズルが形成されたノズル形成面に交差する第1方向における一側、即ち、ノズル形成面側からネジ留め工程を行う場合と、第1方向における他側、即ち、ノズル形成面とは反対側からネジ留め工程を行う場合とがある。近年では、これらの両側からのネジ留め工程に対応可能であることが求められている。
本発明は、液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面と、
前記ノズルから液体を噴射するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、
前記液体噴射ヘッドを保持するヘッド保持部材との固定用のネジ穴と、
を備え、
前記ネジ穴は、前記ノズル形成面に交差する第1方向における前記ノズル形成面側である一側と前記ノズル形成面側とは反対側である他側とのそれぞれに開口を有し、
前記ネジ穴の前記一側には、前記ヘッド保持部材と当接される第1当接部が設けられ、
前記ネジ穴の前記他側には、前記ヘッド保持部材に形成された固定ネジ穴に螺合可能なネジの頭部と当接される第2当接部が設けられたことを特徴とする(第1の構成)。
本発明によれば、液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定する際に、第1方向における一側と他側のそれぞれからネジ留め作業が可能となる。
また、上記第1の構成において、前記ネジの頭部が、前記ネジ穴の前記一側に位置する場合と、前記ネジ穴の前記他側に位置する場合とで、前記ネジにおける雄ネジ部の規格が異なる構成を採用することが望ましい(第2の構成)。
この構成によれば、第1方向におけるネジ穴一側と他側の何れからネジ留めをするかに応じた規格のネジを使用すれば良いので、ネジのサイズ、即ち、雄ネジ部の太さ・外径について作業者が選択を迷うことが低減され、作業性がより向上する。
また、上記第1の構成又は第2の構成において、前記第2当接部に設けられた前記開口の大きさは、前記ネジ穴に螺合可能な第1ネジと比較して雄ネジ部の外径が小さい第2ネジの雄ネジ部が挿通可能であって、当該第2ネジの頭部が前記第2当接部に係止可能な大きさに設定された構成を採用することが望ましい(第3の構成)。
この構成によれば、第2ネジがネジ穴内に抜け落ちてしまうことなく、当該第2ネジで液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することができる。
また、本発明は、液体噴射ヘッドを保持するための第1ネジが挿通可能な挿通穴を有する第1ヘッド保持部材と、前記挿通穴に対応する位置に前記第1ネジとは異なる第2ネジが螺合可能な固定ネジ穴を有する第2ヘッド保持部材と、にそれぞれ固定可能な液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面と、
前記ノズルから液体を噴射するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、
前記第1ネジが螺合可能なネジ穴と、
を備え、
前記ネジ穴は、前記ノズル形成面に交差する第1方向における前記ノズル形成面側である一側と前記ノズル形成面側とは反対側である他側とのそれぞれに開口を有する(第4の構成)。
本発明によれば、液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定する際に、第1方向における一側と他側のそれぞれからネジ留め作業が可能となる。
上記第4の構成において、前記ネジ穴は、前記第1ネジと比較して雄ネジ部の外径が小さい前記第2ネジが挿通可能であり、挿通した当該第2ネジが前記第2ヘッド保持部材の前記固定ネジ穴に螺合可能である構成を採用することが望ましい(第5の構成)。
第1方向における一側と他側のそれぞれからネジ穴を用いてネジ留め作業を行うことができるので、つまり、各ネジ止め作業でそれぞれ異なるネジ穴を用いなくても良いので、その分、液体噴射ヘッドの小型化に寄与する。
さらに、本発明は、第1規格の第1ネジが挿通可能な挿通穴を有する第1ヘッド保持部材と、前記挿通穴に対応する位置に、前記第1規格と比較して雄ネジ部の外径が小さい第2規格の第2ネジが螺合可能な固定ネジ穴を有する第2ヘッド保持部材と、にそれぞれ固定可能な液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面と、
前記ノズルから液体を噴射するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、
前記第2ネジが挿通可能であり、前記第1ネジが螺合可能なネジ穴と、
を備え、
前記ネジ穴は、前記ノズル形成面に交差する第1方向における前記ノズル形成面側である一側と前記ノズル形成面側とは反対側である他側とのそれぞれに開口を有することを特徴とする(第6の構成)。
本発明によれば、液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定する際に、第1方向における一側と他側のそれぞれからネジ留め作業が可能となる。
上記第1の構成から第6の構成の何れか一の構成において、前記ネジ穴は、当該ネジ穴の内径よりも小さい内径の位置決め用穴を有する構成を採用することが望ましい(第7の構成)。
この構成によれば、当該ネジ穴への位置決めピン等の挿入により、液体噴射ヘッドの位置決めが可能となる。
上記第1の構成から第8の構成の何れか一の構成において、前記第1方向から見た平面視において、前記ノズル形成面を内包する最小面積の長方形の長辺に平行な中心線が中心を通過する第1部分と、前記中心線から外れた第2部分と、当該第2部分とは前記中心を挟んで対角配置された第3部分と、が前記長辺に平行な第2方向に配列され、
前記ネジ穴は、前記第2部分のうち前記第2方向において前記第1部分とは反対側の端部に設けられ、かつ、前記第3部分のうち前記第2方向において前記第1部分とは反対側の端部に設けられた構成を採用することが望ましい(第8の構成)。
この構成によれば、複数の液体噴射ヘッドを第2方向に沿って直線状に配列する際に隣り合う液体噴射ヘッドの第2部分と第3部分とを干渉させることなく配置することができる。また、第2部分と第3部分との第2方向における第1部分とは反対側の端部にそれぞれネジ穴が形成されているので、両端部のネジ穴同士の中心間距離をより長くすることができる。これにより、ヘッド保持部材における液体噴射ヘッドをより高精度に配置することができる。
また、本発明は、上記第1の構成から第8の構成の何れか一の構成の液体噴射ヘッドが固定されるヘッド保持部材であって、
前記第1方向から見て、前記ネジ穴と重なる位置に、当該ネジ穴の内径よりも大きい内径の挿通穴を備えたことを特徴とする(第9の構成)。
この構成によれば、挿通穴からネジを挿通してネジ穴に螺合させることによって液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することができる。また、挿通穴がネジに干渉しないので、ヘッド保持部材に対して液体噴射ヘッドを安定した姿勢で固定することができる。
上記第9の構成において、前記液体噴射ヘッドを保持する面とは反対側の面に、前記挿通穴を挿通して前記ネジ穴に螺合されるネジの頭部が収容される凹部を有する構成を採用することが望ましい(第10の構成)
この構成によれば、ネジの頭部が、液体噴射ヘッドを保持する面とは反対側の面から突出しないようにすることができる。
また、本発明は、上記第1の構成から第8の構成の何れか一の構成の液体噴射ヘッドが固定されるヘッド保持部材であって、
前記第1方向から見て、前記ネジ穴と重なる位置に、当該ネジ穴の内径よりも小さい内径に設定され、前記ネジ穴を挿通したネジが螺合可能な固定ネジ穴を備えたことを特徴とする(第11の構成)。
本発明によれば、ネジ穴を挿通したネジが固定ネジ穴に螺合することによって液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することができる。
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面、前記ノズルから液体を噴射するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子、及び、ネジが挿通される貫通穴を備える液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが固定され、前記貫通穴と連通する挿通穴を備えるヘッド保持部材と、
前記挿通穴に挿通されたネジと、
を備え、
前記貫通穴の内周面には雌ネジが形成され、当該貫通穴に前記ネジが螺合され、
液体噴射ヘッドは、前記ネジの頭部との間に前記ヘッド保持部材を挟持していることを特徴とする(第12の構成)。
本発明によれば、挿通穴を挿通したネジが貫通穴の内周面に形成された雌ネジに螺合することにより液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することが可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面、前記ノズルから液体を噴射するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子、及び、ネジが挿通される貫通穴を備える液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが固定され、前記貫通穴と連通する固定ネジ穴を備えるヘッド保持部材と、
前記貫通穴に挿通され、前記固定ネジ穴に螺合されたネジと、
を備え、
前記貫通穴の内周面には雌ネジが形成され、
液体噴射ヘッドは、前記ネジの頭部と前記ヘッド保持部材とにより挟持されていることを特徴とする(第13の構成)。
本発明によれば、雌ネジに螺合させることなく貫通穴を挿通させたネジを固定ネジ穴に螺合させることで液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することができる。
また、本発明は、第12の構成又は第13の構成の液体噴射装置の製造方法であって、
前記ヘッド保持部材に前記液体噴射ヘッドを固定するネジを特定するネジ特定工程と、
前記貫通穴である前記ネジ穴の前記第1方向における開口のうち、前記ネジ特定工程で特定された前記ネジに応じた側の開口から前記ネジ穴に当該ネジを挿入するネジ挿入工程と、
を有することを特徴とする(第1の方法)。
本発明によれば、液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定する際に、ネジ穴を用いて第1方向における一側と他側のそれぞれからネジ留め作業が可能となる。
上記第1の方法では、前記ネジ特定工程において、前記液体噴射ヘッドを固定する対象が、前記ネジ穴に螺合可能な第1ネジが挿通可能な挿通穴を有する第1ヘッド保持部材である場合、前記ネジとして前記第1ネジを特定し、前記液体噴射ヘッドを固定する対象が、雄ネジ部の外径が前記第1ネジの雄ネジ部の外径よりも細い第2ネジが螺合可能な固定ネジ穴を有する第2ヘッド保持部材である場合、前記ネジとして前記第2ネジを特定することが望ましい(第2の方法)。
この方法によれば、液体噴射ヘッドの固定対象に応じて固定用のネジが予め定められていることにより、作業者がネジの選択を迷うことが低減され、作業性がより向上する。
上記第2の方法では、前記ネジ特定工程で特定された前記ネジが前記第1ネジの場合、前記ネジ挿入工程では前記挿通穴を通じて前記第1方向における前記一側の開口から前記ネジ穴に前記第1ネジを螺合し、当該第1ネジの頭部と前記液体噴射ヘッドとの間に前記第1ヘッド保持部材を挟持させ、
前記ネジ特定工程で特定された前記ネジが前記第2ネジの場合、前記ネジ挿入工程では前記第1方向における前記他側の開口から前記ネジ穴に前記第2ネジを挿入して前記固定ネジ穴に螺合し、当該第2ネジの頭部と前記第1ヘッド保持部材とにより前記液体噴射ヘッドを挟持させることが望ましい(第3の方法)。
この方法によれば、液体噴射ヘッドの固定対象に応じたネジが異なる場合でも、それぞれのネジを用いて液体噴射ヘッドをヘッド保持部材に固定することができる。
上記第1の方法から第3の方法の何れか一の方法では、前記ネジ挿入工程の前に、前記液体噴射ヘッドの位置を規定する位置決めピンを前記ネジ穴へ挿入する位置決めピン挿入工程と、
前記位置決めピンの挿入により、前記液体噴射ヘッドの位置を規定する位置決め工程と、
を有することが望ましい(第4の方法)。
この方法によれば、ネジ穴を位置決め穴として用いて液体噴射ヘッドの位置決めが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明は、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッド20を搭載したインクジェット式記録装置(以下、プリンター1)を例に挙げて行う。
図1は、本発明に係るプリンター1の構成を模式的示す説明図である。プリンター1は、液体の一種であるインクの液滴を印刷媒体Mに噴射・着弾させて当該印刷媒体Mに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行うインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態におけるプリンター1は、印刷用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質の印刷対象を印刷媒体Mとし、これらの各種の印刷媒体Mに対して印刷を行う。以下においては、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向のうち、後述する液体噴射ユニット2の移動方向(換言すると、主走査方向)をX方向とし、当該主走査方向と直交した印刷媒体Mの搬送方向(換言すると、副走査方向)をY方向(本発明における第2方向に相当)とし、液体噴射ユニット2のノズル35が形成されたノズル形成面に平行な面をXY平面とし、当該ノズル形成面、即ち、XY平面に交差する(本実施形態では直交する)方向をZ方向(本発明における第1方向に相当)とする。
プリンター1は、液体容器3と、印刷媒体Mを送り出す搬送機構4と、制御ユニット5と、キャリッジ移動機構6と、液体噴射ユニット2とを備える。液体容器3は、液体噴射ユニット2から噴射される複数種類(例えば、複数色)のインクを個別に貯留する。液体容器3としては、可撓性フィルムで形成された袋状のインクパックや、インク補充が可能なインクタンクなどが利用可能である。制御ユニット5は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、搬送機構4やキャリッジ移動機構6、液体噴射ユニット2等を統括制御する。搬送機構4は、制御ユニット5の制御下で動作し、印刷媒体Mを搬送方向であるY方向に送り出す。キャリッジ移動機構6は、印刷媒体Mの印刷範囲に亘ってX方向に掛け渡された搬送ベルト8と、液体噴射ユニット2を収容して搬送ベルト8に固定されたキャリッジ9とを備える。キャリッジ移動機構6は、制御ユニット5の制御下で動作し、キャリッジ9に搭載された液体噴射ユニット2を主走査方向であるX方向において図示しないガイドレールに沿って往復移動させる。なお、液体容器3を液体噴射ユニット2と共にキャリッジ9に搭載した構成とすることもできる。
液体噴射ユニット2の主走査方向における一側(図2中、右側)の領域には、液体噴射ユニット2のノズル35の開口が形成された面であるノズル形成面(後述)を払拭する払拭部材としてのワイパー10が配設されている。このワイパー10としては、例えばゴムやエラストマー等の弾性・可撓性を有する部材により構成される。ワイピング動作では、ワイパー10の先端部がノズル形成面に接触した状態で両者が相対移動することにより当該ワイパー10によってノズル形成面が払拭される。なお、ノズル形成面を払拭する機構としては、例えば、不織布等のシート状のワイパーにより払拭する構成のもの等、周知の種々の構成のものを採用することができる。
キャリッジ9の待機位置であるホームポジションには、上記ワイパー10に隣接してキャップ11が配設されている。キャップ11は、液体噴射ユニット2のノズル形成面に当接し得るトレイ状に形成されている。このキャップ11では、キャップ11内の空間が封止空部として機能し、この封止空部内に液体噴射ユニット2の後述するノズル35を臨ませた状態でノズル形成面に密着可能に構成されている。また、このキャップ11には、図示しない廃液チューブを介してポンプが接続されており、このポンプの駆動によってキャップ11の封止空部内を負圧化することができる。
図2は、本実施形態における液体噴射ユニット2の一形態について説明する斜視図である。なお、同図において、3つの液体噴射モジュール18のうちの1つが分解された状態で示されている。本実施形態における液体噴射ユニット2は、ヘッド保持部材13と複数の液体噴射モジュール18とを備えている。ヘッド保持部材13は、複数の液体噴射モジュール18を支持する板状部材である。複数の液体噴射モジュール18は、X方向に並べて状態でヘッド保持部材13に固定されている。各液体噴射モジュール18は、接続ユニット15と支持部材16と分配流路17と複数(本実施形態では6個)の液体噴射ヘッド20とをそれぞれ備えている。なお、液体噴射ユニット2を構成する液体噴射モジュール18の個数や液体噴射モジュール18を構成する液体噴射ヘッド20の個数は、本実施形態で例示したものには限定されない。また、ヘッド保持部材13としては、後述する固定ネジ85(本発明におけるネジ、第1ネジ、又は第1規格のネジの一種)が挿通可能な挿通穴86を有する第1ヘッド保持部材13Aと、挿通穴86に対応する位置に、後述する止着ネジ71(本発明におけるネジ、第2ネジ、又は第2規格のネジの一種)が螺合可能な固定ネジ穴62を有する第2ヘッド保持部材13Bの2種類があり、液体噴射ヘッド20は、これらのヘッド保持部材13A,13Bの何れにも固定することができるように構成されている。この点の詳細については後述する。
図3は、液体噴射モジュール18の一形態の構成を示す正面図である。また、図4は、液体噴射モジュール18の斜視図である。図4においては、液体噴射モジュール18のうち液体噴射ヘッド20及びヘッド保持部材13が図示され、他の構成部材の図示は省略されている。なお、図3及び図4では、1つの液体噴射モジュール18が代表として図示しているが、他の液体噴射モジュール18も同様の構成となっている。
本実施形態における液体噴射モジュール18は、接続ユニット15の直下に位置する板状の支持部材16に複数の液体噴射モジュール18がX方向に2列で配置され、複数の液体噴射モジュール18の側方に分配流路17が配置されている。分配流路17は、液体容器3から供給されるインクを、液体噴射モジュール18が有する複数の液体噴射ヘッド20にそれぞれ分配する流路が内部に形成された構成部材である。本実施形態において、分配流路17は、Y方向に沿って長尺に形成され、3つの液体噴射ヘッド20に共通に設けられている。
接続ユニット15は、ケーシング21と中継基板22と複数の駆動基板23とを具備する。ケーシング21は、中継基板22と複数の駆動基板23とを収容する略箱形の構造体である。各駆動基板23は、液体噴射モジュール18毎に対応した配線基板である。後述する圧電素子43を駆動するための駆動信号を生成する信号生成回路が駆動基板23に実装され、インクの噴射の有無をノズル毎に指定する制御信号と電源電圧とが駆動信号とともに駆動基板23から液体噴射モジュール18に供給される。中継基板22は、制御ユニット5と複数の駆動基板23との間で電気信号や電源電圧を中継するための配線基板であり、複数の液体噴射モジュール18に共用される。ケーシング21の底面には、駆動基板23毎に電気的に接続されたコネクター24が設けられている。
液体噴射モジュール18は、液体噴射ヘッド20と連結ユニット25とを備えている。液体噴射ヘッド20は、液体容器3から分配流路17を介して供給されるインクを印刷媒体Mに噴射する。本実施形態における液体噴射ヘッド20は、弁機構ユニット27を備えている。弁機構ユニット27は、分配流路17から供給されるインクの流路の開閉を制御する弁機構を有している。弁機構ユニット27は、液体噴射ヘッド20の側面からX方向に張り出すように設けられている。この弁機構ユニット27の底面には、Z方向における下方、即ち、液体噴射ヘッド20のノズル形成面側に向けて、導入針28が突設されている。この導入針28は、同じく液体噴射ヘッド20の側面に配置された分配流路17の内部に挿入される。そして、この導入針28を通じて分配流路17内の流路と弁機構ユニット27内の流路とが相互に連通するように構成されている。なお、導入針28が弁機構ユニット27から上方、即ち、ノズル形成面とは反対側に向けて突設され、弁機構ユニット27の上方に配置された分配流路17に挿入される構成を採用することもできる。
ヘッド保持部材13(本実施形態においては、第2ヘッド保持部材13B)は、液体噴射モジュール18を構成している各液体噴射ヘッド20を支持する板状部材である。Y方向に並べられた複数の液体噴射ヘッド20は、ヘッド群29を構成しており、このヘッド群29がX方向に2列並べて配置されてヘッド保持部材13に固定されている。本実施形態では、各ヘッド群29は3つの液体噴射ヘッド20によって構成されており、ヘッド保持部材13には、2つのヘッド群29が固定されている。もちろん、ヘッド群29を構成する液体噴射ヘッド20の数やヘッド保持部材13に固定されるヘッド群29の数はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態では、ヘッド群29を構成する3つの液体噴射ヘッド20を、第1液体噴射ヘッド20A、第2液体噴射ヘッド20B、及び第3液体噴射ヘッド20Cと称する。
ヘッド保持部材13には、各液体噴射ヘッド20に対応して開口部30が形成されている。開口部30は、ヘッド保持部材13の厚さ方向(即ちZ方向)に貫通して設けられており、詳しくは後述する液体噴射ヘッド20のインク滴が吐出されるノズル35が設けられたノズル形成面側が挿入可能な開口面積で設けられている。また、開口部30は、各液体噴射ヘッド20に対応して独立して設けられている。即ち、開口部30は、液体噴射ヘッド20に対応してX方向に3つ並設された列が、Y方向に2列設けられている。なお、X方向に並設された複数の液体噴射ヘッド20のノズル形成面が1つの共通の開口部30から露出していてもよい。
液体噴射ヘッド20は、ノズル形成面側がヘッド保持部材13の上面側、つまり、印刷動作時における印刷媒体M側とは反対側から開口部30に挿入された状態でヘッド保持部材13に固定される。すなわち、液体噴射ヘッド20のノズル形成面は、開口部30によってヘッド保持部材13から印刷動作時における印刷媒体M側に露出する。この状態で、液体噴射ヘッド20はヘッド保持部材13にネジ留めされる。
図5は、液体噴射ヘッド20を斜め上方から見た斜視図、図6は、液体噴射ヘッド20を斜め下方から見た分解斜視図、図7は、液体噴射ヘッド20の上面図、図8は、液体噴射ヘッド20の側面図である。なお、図7において、後述する凸部66,67,68,69、及び、止着ネジ71の図示は省略されている。液体噴射ヘッド20は、Z方向に積層された第1ケース33と第2ケース34とから構成されたヘッドケース32を備えている。本実施形態では、本発明における第1方向であるZ方向における下側に第1ケース33が配置され、上側に第2ケース34が配置されている。図6に示されるように、第1ケース33内には、複数の駆動部38が収容されている。駆動部38は、液体噴射ユニット2が静止した状態でZ方向における印刷媒体Mに向けてインクを吐出するノズル35が形成されたノズルプレート36を有している。
図9は、駆動部38の構成の一例を説明する断面図である。本実施形態における駆動部38は、ノズルプレート36、連通板39、アクチュエーター基板40、コンプライアンス基板41、及びホルダー42等の複数の構成部材が積層されて接着剤等によって接合されてユニット化されている。
本実施形態におけるアクチュエーター基板40は、ノズルプレート36に形成された複数のノズル35とそれぞれ連通する複数の圧力室44と、各圧力室44に対応して複数設けられた圧電素子43と、を備えている。圧電素子43は、対応する圧力室44内のインクに圧力変動、即ち、当該圧力室44と連通するノズル35からのインクの噴射に必要なエネルギーを生じさせるエネルギー発生素子であり、圧力発生素子でもある。圧力室44と圧電素子43との間には、振動板45が設けられており、この振動板45によって圧力室44の上部開口が封止されて当該圧力室44の一部が区画されている。そして、この振動板45上における各圧力室44に対応する領域に圧電素子43がそれぞれ積層されている。本実施形態における圧電素子43は、例えば、振動板45上に、下電極層、圧電体層及び上電極層(いずれも図示せず)が順次積層されてなる。このように構成された圧電素子43は、下電極層と上電極層との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると撓み変形する。
アクチュエーター基板40の下面には、基板積層方向から見た平面視においてアクチュエーター基板40よりも広い面積を有する連通板39が接合される。本実施形態における連通板39には、圧力室44とノズル35とを連通するノズル連通口46と、各圧力室44に共通に設けられた共通液室47と、この共通液室47と圧力室44とを連通する個別連通口48と、が形成されている。共通液室47は、ノズル35が並設された方向に沿って延在する空部である。本実施形態においては、ノズルプレート36に設けられた2つのノズル35の列にそれぞれ対応して2つの共通液室47が形成されている。個別連通口48は、各圧力室44にそれぞれ対応してノズル列方向に沿って複数形成されている。この個別連通口48は、圧力室44のノズル連通口46と連通する部分とは反対側の端部と連通する。
上記の連通板39の下面の略中央部分には、複数のノズル35が形成されたノズルプレート36が接合される。本実施形態におけるノズルプレート36は、平面視で連通板39よりも小さい外形の板材である。このノズルプレート36は、連通板39の下面において、共通液室47の開口から外れた位置であって、ノズル連通口46が開口した領域に、これらのノズル連通口46と複数のノズル35とがそれぞれ連通する状態で接着剤等により接合される。本実施形態におけるノズルプレート36には、複数のノズル35が列設されてなるノズル列が合計2条形成されている。また、連通板39の下面において、ノズルプレート36から外れた位置にコンプライアンス基板41が接合される。このコンプライアンス基板41は、連通板39の下面に位置決めされて接合された状態で、連通板39の下面における共通液室47の開口を封止している。このコンプライアンス基板41は、インク流路内、特に共通液室47内の圧力変動を緩和する機能を有する。
アクチュエーター基板40及び連通板39は、ホルダー42に固定されている。このホルダー42の内部において、アクチュエーター基板40を間に挟んだ両側には、連通板39の共通液室47と連通する導入液室49が形成されている。また、ホルダー42の上面には、各導入液室49と連通する導入口50がそれぞれ開設されている。導入口50は、弁機構ユニット27と連通する。このため、弁機構ユニット27から送られてきたインクは、導入口50、導入液室49、及び共通液室47へと導入され、共通液室47から個別連通口48を通じて各圧力室44に供給される。そして、上記構成の駆動部38では、導入液室49から共通液室47及び圧力室44を通ってノズル35に至るまでの流路内がインクで満たされた状態で、圧電素子43が駆動されることにより、圧力室44内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動(換言すると、圧力振動)によって所定のノズル35からインクが噴射される。なお、駆動部38としては、例示した構成には限られず、周知の種々の構成のものを採用することができる。例えば、エネルギー発生素子としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって流路の容積を変化させて流路内のインクに圧力変化を生じさせてノズル35からインク滴を吐出させるものや、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル35からインク滴を吐出させるものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル35からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
図6に示されるように、複数(本実施形態においては、4つ)の駆動部38は、ノズル列方向をY方向に沿わせた姿勢で、且つ、X方向における位置を交互にずらした状態(換言すると、互い違いにした状態)でY方向に沿って配置されてヘッドケース32に保持されている。即ち、Y方向に並設された駆動部38の列がX方向に2列並設され、2列の駆動部38の列がY方向に所定ピッチだけずらして配置されている。このように駆動部38がY方向に沿って互い違いに配置されることで、駆動部38のノズル35がY方向において部分的に重複して配置されるので、Y方向に亘って連続したノズル35の列を形成することができる。
このような駆動部38の配置に合わせて、図7に示されるように、Z方向から見た際、すなわち、Z方向から平面視した際の液体噴射ヘッド20の外形形状が規定されている。なお、本実施形態では液体噴射ヘッド20の最外周はヘッドケース32の外周であるため、液体噴射ヘッド20の外形形状とは、ヘッドケース32の外形形状と一致する。具体的には、図7に示されるように、液体噴射ヘッド20を第1方向であるZ方向から平面視した際に、当該液体噴射ヘッド20を内包する最小面積の仮想的な長方形をRとした場合、当該長方形Rの長辺E1はヘッドケース32のY方向に沿う辺に重なり、長方形Rの短辺E2はヘッドケース32のX方向に沿う辺に重なっている。また、長方形Rの中心Cv(即ち、仮想的な中心)を通り、長方形Rの長辺E1に平行な中心線(即ち、仮想的な中心線)をLとする。
ヘッドケース32の平面形状は、中心Cvを有し、中心線Lが通過する第1部分P1(図7中においてハッチングされた部分)と、中心線Lが通過しない第2部分P2及び第3部分P3とを備えている。第2部分P2及び第3部分P3のX方向における寸法、即ち幅は、それぞれ、第1部分P1のX方向における寸法(換言すると、幅)の半分よりも少し小さく設定されている。そして、第2部分P2は、Y方向における第1部分P1の一側(図7中、左側)において、中心線LよりもX方向における一方(図7中、上側)に偏らせて設けられており、第3部分P3は、第1部分P1の他側(図7中、右側)において、中心線LよりもX方向における他方(図7中、下側)に偏らせて、第2部分P2とは中心Cvを挟んで対角配置されている。本実施形態における液体噴射ヘッド20は、Z方向からの平面視で、矩形状、即ち、長方形Rを基準形状として、対角の一対を略矩形状に切り欠き、Cvを中心とした概ね点対称な形状を有する。このように第2部分P2、第3部分P3をX方向の両側から突出して設けることで、上述したように駆動部38をY方向に互い違いに配置した際に、駆動部38を第2部分P2及び第3部分P3に配置することができる。したがって、液体噴射ヘッド20をY方向に並設させた際に隣り合う液体噴射ヘッド20において一方の液体噴射ヘッド20の第3部分P3の駆動部38と、他方の液体噴射ヘッド20の第2部分P2の駆動部38とをX方向で重なる位置に配置することができ、複数の液体噴射ヘッド20によってY方向に沿って一直線上に配置された一連のノズル35の列を形成することができる。
図6に示されるように、第1ケース33には、当該第1ケース33の下面に開口する凹形状を有する収容部52が形成されており、固定板51に固定された複数の駆動部38が収容部52内に収容される。また、収容部52の開口は固定板51によって封止される。すなわち、固定板51と収容部52とによって形成された空間の内部に駆動部38が収容される。なお、収容部52は、駆動部38毎に設けられていてもよく、複数の駆動部38に亘って共通に設けられていてもよい。固定板51は、例えば、金属製の板状部材からなり、各駆動部38に対応した位置に、当該駆動部38のノズルプレート36を露出する露出開口部53が設けられている。露出開口部53は、本実施形態では、駆動部38毎に独立して設けられている。なお、固定板51は、露出開口部53の周縁部において、駆動部38のノズルプレート36又はコンプライアンス基板41と固定されている。本実施形態において、この固定板51の下面、即ち、印刷動作において印刷媒体Mと対向する面と、この固定板51の露出開口部53内のノズルプレート36の露出面が、本発明におけるノズル形成面に相当する。
また、図7に示されるように、第2部分P2に対応する第1ケース33のY方向における第1部分P1側とは反対側の端部)には、Y方向における外側に向かって突出した第1フランジ部54が設けられている。この第1フランジ部54の上面、即ち、ノズル形成面と側はZ方向における反対側の面には、円筒部59が突設されており、この円筒部59の内部には、ネジ穴60が、Z方向において第1フランジ部54及び円筒部59を貫通する状態で形成されている。このため、ネジ穴60は、Z方向における一側、即ち、ノズル形成面側と、他側、即ち、ノズル形成面側とは反対側にそれぞれ開口を有している。また、第3部分P3に対応する第1ケース33のY方向における第1部分P1側とは反対側の端部には、Y方向における外側に向かって突出した第2フランジ部55が設けられている。この第2フランジ部55の上面には、第1フランジ部54と同様に円筒部59が突設されており、この円筒部59の内部には、ネジ穴60が、Z方向において第2フランジ部55及び円筒部59を貫通する状態で形成されている。このネジ穴60は、本発明におけるネジ穴の一種であり、また、貫通穴の一種でもある。
本実施形態における第2ヘッド保持部材13Bには、これらのネジ穴60に対応して、即ち、液体噴射ヘッド20が位置決めされて配置された状態においてZ方向から見たときにネジ穴60に重なる位置に、固定ネジ穴62がZ方向における上面(換言すると、液体噴射ヘッド20が保持される保持面79)から下面に向けてヘッド保持部材13の板厚の途中まで形成されている(図10参照)。なお、この固定ネジ穴62は、ヘッド保持部材13をZ方向において貫通していても良い。これに対し、後述する第1ヘッド保持部材13Aにおいて、上記ネジ穴60に対応する位置には、当該第1ヘッド保持部材13Aの板厚をZ方向に貫通した挿通穴86が形成されている。そして、本実施形態では、第2ヘッド保持部材13Bに液体噴射ヘッド20が固定される際に、後述する止着ネジ71を円筒部59の上面側、即ち、ネジ穴60の他側の開口からネジ穴60を挿通して固定ネジ穴62に螺合させることで、第2ヘッド保持部材13Bに液体噴射ヘッド20を固定することができる。
このように、第2部分P2の端部と第3部分P3の端部のそれぞれにフランジ部54,55が形成され、ネジ穴60がそれぞれ形成されているので、両端部のネジ穴60同士の中心間距離をより長くすることができる。これにより、ヘッド保持部材13における液体噴射ヘッド20をより高精度に配置することができる。特に、ヘッド保持部材13に複数の液体噴射ヘッド20が固定される構成では、各液体噴射ヘッド20のノズル35の相対位置をより高精度に規定することができる。また、ネジ穴60が設けられた部分であるフランジ部54,55が、液体噴射ヘッド20の本体から当該液体噴射ヘッド20の短辺方向であるX方向に突出しないため、複数の液体噴射ヘッド20を長辺方向であるY方向に並べた際に、液体噴射モジュール18やこれを備える液体噴射ユニット2のX方向の寸法の小型化に寄与する。
第2フランジ部55は、長方形Rの角部に対応する部分が切り欠かれた切欠部56を有し、また、この切欠部56と第1ケース33の本体部との間の領域に、第2フランジ部55をZ方向に貫通する状態で位置決め穴61が形成されている点で、第1フランジ部54とは異なっている。この第2フランジ部55の切欠部56とは、Y方向における第1部分P1を挟んで反対側であって、当該第1部分P1の一側には、第3フランジ部57が形成されている。この第3フランジ部57には、第2フランジ部55の位置決め穴61と対をなす位置決め穴61が第3フランジ部57をZ方向に貫通する状態で形成されている。そして、ヘッド保持部材13には、これらの位置決め穴61に対応して、位置決め貫通穴63がZ方向を貫通する状態で形成されている(図4参照)。ヘッド保持部材13に液体噴射ヘッド20を固定する際に、例えば治具等に設けられた図示しない位置決めピンを位置決め貫通穴63及び位置決め穴61に挿通させることで、ヘッド保持部材13に対する液体噴射ヘッド20の相対位置を規定すること、即ち、位置決めができる。なお、位置決め穴61と対応する位置決め貫通穴63の何れか一方に替えて位置決めピンを立設し、当該位置決めピンを他方の穴に挿通させることで位置決めを行う構成を採用することもできる。
ここで、第2フランジ部55の切欠部56は、Z方向からの平面視において、第3フランジ部57の形状に倣った形状を呈している。より詳しくは、第3フランジ部57の形状と相似で尚且つ、少し大きい形状に設定されている。これにより、液体噴射ヘッド20をY方向に並設させた際に隣り合う液体噴射ヘッド20において一方の液体噴射ヘッド20の第3フランジ部57が、他方の液体噴射ヘッド20の第2フランジ部55の切欠部56内に配置されるため、これらのフランジ部同士が干渉することなく液体噴射ヘッド20をY方向に沿って配置することができる。
これらのフランジ部54,55,57は、Z方向において第1ケース33のノズル形成面側とは反対側である第2ケース34側に設けられている。そして、フランジ部54,55,57は、液体噴射ヘッド20のノズル形成面側をヘッド保持部材13の開口部30に挿入した際に、開口部30が形成された領域よりも外側に外れた位置まで突出して設けられている。このため、液体噴射ヘッド20のノズル形成面側をヘッド保持部材13の開口部30に挿入した際に、これらのフランジ部54,55,57がヘッド保持部材13の上面に当接することで、液体噴射ヘッド20のヘッド保持部材13に対するZ方向の位置が規定される。
第2ケース34の内部には、駆動部38の圧電素子43と電気的に接続された配線や、駆動部38にインクを供給するための流路等が形成されている。また、第2ケース34の内部には、インクに含まれるゴミや気泡を除去するためのフィルターや、駆動部38に供給するインクの圧力を一定に維持するための開閉弁を含む圧力調整手段等が設けられていてもよい。本実施形態では、第2ケース34のZ方向におけるノズル形成面とは反対側の上面には、外部配線が接続される接続部64が突設されている。
また、第2ケース34のY方向における一側の端部、即ち、第2部分P2に対応する部分の端部には、Z方向からの平面視において第1フランジ部54と同様の形状を有する第1凸部66と第2凸部67とが、Z方向において互いに間隔を空けて並設されている。また、第1凸部66と第2凸部67とは、第1フランジ部54の厚さよりもZ方向において厚く形成されている。そして、第1凸部66と第2凸部67とのX方向における両側には凹形状に肉抜きされた肉抜き部70が設けられている。同様に、第2ケース34のY方向における他側の端部、即ち、第3部分P3に対応する部分の端部には、Z方向からの平面視において第1凸部66及び第2凸部67とY方向における左右対称の形状を有する第3凸部68と第4凸部69とがZ2側からZ1側に向かって間隔を空けて並設されている。この第3凸部68と第4凸部69とは、第1凸部66と第2凸部67と同様に、第2フランジ部55よりもZ方向に厚く形成されており、X方向における両側には肉抜き部70が設けられている。
すなわち、ヘッドケース32のY方向における一側には、第1フランジ部54、第1凸部66、及び第2凸部67が突出して設けられており、ヘッドケース32のY方向における他側には、第2フランジ部55、第3凸部68、及び第4凸部69が突出して設けられている。なお、以下においては、これら第1フランジ部54、第2フランジ部55、第1凸部66、第2凸部67、第3凸部68及び第4凸部69を、適宜、凸部と総称する。
本実施形態において、ヘッドケース32のY方向における両端部には、それぞれ1本ずつ止着ネジ71が装着されている。本実施形態において、一側の止着ネジ71は、ヘッドケース32のY方向における一側に設けられた第1凸部66、第2凸部67、及び、第1フランジ部54のそれぞれにZ方向に貫通して設けられたネジ挿通穴66a、ネジ挿通穴67a、及びネジ穴60にそれぞれ挿通されている。また、他側の止着ネジ71は、ヘッドケース32のY方向における他側に設けられた第3凸部68、第4凸部69、及び第2フランジ部55のそれぞれにZ方向に貫通して設けられたネジ挿通穴68a、ネジ挿通穴69a、及び、ネジ穴60に挿通されている。なお、後述するように、固定ネジ穴62を有しない第1ヘッド保持部材13Aに液体噴射ヘッド20を固定する場合には、この止着ネジ71は使用されない。本実施形態における止着ネジ71は、軸部73と、Z方向における軸の先端側に設けられてヘッド保持部材13の固定ネジ穴62に螺合する雄ネジ部74と、Z方向における基端側に設けられて軸部73よりも大きな外径を有するつまみ部75と、を備えている。
ヘッドケース32のY方向における一側に設けられた止着ネジ71の軸部73と雄ネジ部74とは、ネジ挿通穴66a及びネジ挿通穴67aよりも小さな外径を有し、つまみ部75は、ネジ挿通穴66a及びネジ挿通穴67aよりも大きな外径を有する。同様に、ヘッドケース32のY方向における他側に設けられた止着ネジ71の軸部73と雄ネジ部74とは、ネジ挿通穴68a及びネジ挿通穴69aよりも小さな外径を有し、つまみ部75は、ネジ挿通穴68a及びネジ挿通穴69aよりも大きな外径を有する。また、軸部73の外径D3(図10参照)は、雄ネジ部74の外径D1(図10参照)よりも大きく設定されており、この外径の差により軸部73と雄ネジ部74との間には段差面が生じている。即ち、ネジ穴60に雄ネジ部74を挿通する際に後述する円筒部59の被係止面81に対向する段差面は、当該被係止面81に当接して係止する係止面76として機能する。このため、本実施形態における軸部73は、本発明におけるネジの頭部としても機能する。
図10は、図8における領域Aの拡大図である。なお、図10においては、第1フランジ部54側における第2ヘッド保持部材13Bとの固定状態における周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。図10に示されるように、ネジ穴60は、第1フランジ部54における円筒部59が形成された部分をZ方向に貫通した状態で形成されている。本実施形態におけるネジ穴60は、雌ネジ部77と小径部78とをZ方向に沿った同軸上で相互に連通する状態で有している。雌ネジ部77は、内周面に雌ネジ(換言すると、雄ネジ部74のネジ山が嵌合可能な谷状の溝)が形成された部分であり、Z方向における一側において第1フランジ部54の下面であってヘッド保持部材13との当接面80(本発明における第1当接部に相当)に開口し、Z方向における他側において小径部78と連通している。
また、小径部78は、内径D4が雌ネジ部77の内径D2よりも小さく、尚且つ、止着ネジ71の雄ネジ部74の外径D1よりも大きく設定された部分である。この小径部78は、上端において円筒部59の上面であって止着ネジ71の軸部73の係止面76が係止される被係止面81(本発明における第2当接部に相当)に開口し、下端において雌ネジ部77と連通している。即ち、ネジ穴60は、第1方向としてのZ方向における一側、即ち、ノズル形成面側には、ヘッド保持部材13(本実施形態では第1ヘッド保持部材13A)の上面である保持面79と当接される当接面80が設けられ、ネジ穴60のZ方向における他側、即ち、ノズル形成面側とは反対側には、止着ネジ71の軸部73が係止する被係止面81が設けられている。そして、ネジ穴60の当接面80における開口が、本発明における一側の開口に相当し、被係止面81における開口が、本発明における他側の開口に相当する。このようなネジ穴60は、小径部78及び雌ネジ部77の内径が何れも止着ネジ71の雄ネジ部74の外径よりも大きいので、当該雄ネジ部74が挿通することができるように構成されている。つまり、止着ネジ71の雄ネジ部74は、ネジ穴60とは螺合しない。このネジ穴60には、後述する第1ヘッド保持部材13Aに液体噴射ヘッド20を固定する際に用いられる固定ネジ85の雄ネジ部88が螺合するように構成されている。また、小径部78は、本発明における位置決め用穴としても機能する。この点についても後述する。
図10に示されるように、止着ネジ71の雄ネジ部74の全長L1は、ネジ穴60のZ方向の長さL2よりも長く、また、ネジ穴60の長さL2と固定ネジ穴62の深さDtとを合計した長さL3よりも短く設定されている。本実施形態において、雄ネジ部74のZ方向における先端部分、即ち、固定ネジ穴62に嵌入される部分のみに雄ネジが形成された構成を例示したが、これには限られず、雄ネジ部74の基端(即ち、軸部73側の端)から先端に亘って雄ネジ(換言すると、雌ネジの谷に嵌合するネジ山)が形成されても良い。そして、液体噴射ヘッド20を第2ヘッド保持部材13Bに固定する場合、止着ネジ71をZ方向における上側(即ち、ノズル形成面側とは反対側)から各凸部66,67のネジ挿通穴66a,67aに雄ネジ部74側から順に挿通し、第1フランジ部54におけるネジ穴60のZ方向における他側の開口から当該ネジ穴60に挿入する。そして、ネジ穴60を挿通した雄ネジ部74をヘッド保持部材13の固定ネジ穴62に螺合させ、止着ネジ71をZ方向からの平面視で時計まわり回転させて締め込むことで、第1フランジ部54が係止面76と保持面79との間に挟み込まれた状態となる。同様にして、Y方向における他側の止着ネジ71によるネジ止めにより、第2フランジ部55が係止面76と保持面79との間に挟み込まれた状態となる。これにより、液体噴射ヘッド20が第1ヘッド保持部材13Aに固定される。つまり、本実施形態における液体噴射ヘッド20は、Y方向の両側に設けられた2本の止着ネジ71によってヘッド保持部材13に固定される。この固定状態では、液体噴射ヘッド20(より詳しくは、フランジ部54,55)は、止着ネジ71の頭部、即ち、軸部73の係止面76と第2ヘッド保持部材13Bとにより挟持される。
なお、本実施形態においては、第2ヘッド保持部材13Bに液体噴射ヘッド20を固定する場合に用いられるネジ、第2ネジ、又は第2規格のネジの一例として止着ネジ71を例示したが、これには限られず、第2ヘッド保持部材13Bの固定ネジ穴62に螺合可能であって、第2当接部である被係止面81に係止可能な頭部を備えるものであれば、種々の構成の固定部材を用いることができる。例えば、本実施形態における止着ネジ71は、各凸部66~69のネジ挿通穴66a~69aに挿通される構成であったが、凸部を有しない構成の液体噴射ヘッドでは、凸部に挿通されない構成を採用することができる。また、本実施形態における止着ネジ71はつまみ部75を有さなくてもよい。この場合、頭部にプラス、マイナス、又は六角形状の穴が設けられ、これらの穴にドライバー等の工具を嵌合させてネジを回転させる構成を採用することもできる。また、第1当接部及び第2当接部として、当接面80及び被係止面81を例示したが、これには限られず、面を規定することができる構成であれば、例えば、3つ以上の突起でネジの頭部やヘッド保持部材と当接する構成を採用することができる。
次に、液体噴射ヘッド20を第1ヘッド保持部材13Aに固定する場合について説明する。
図11は、液体噴射ヘッド20を第1ヘッド保持部材13Aに固定した場合の第1フランジ部54の周辺構造を示す断面図である。なお、図10と同一の構成については同一の符号を付してあり、その説明については適宜省略する。また、同図においても図10と同様に、第1フランジ部54の周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。第1ヘッド保持部材13Aにおいて、第2ヘッド保持部材13Bにおける固定ネジ穴62に対応する位置には、挿通穴86が、当該第1ヘッド保持部材13Aの板厚方向、即ち、Z方向を貫通する状態で形成されている。即ち、挿通穴86は、Z方向から見てネジ穴60と重なる位置に形成されている。この挿通穴86は、ネジ穴60の雌ネジ部77の内径D2及び固定ネジ85の雄ネジ部88の外径D6よりも大きい内径D5に設定された挿通部90と、当該挿通部90の内径D5及び固定ネジ85の頭部87の外径D8よりも大きい内径D7に設定された凹部89とを有し、液体噴射ヘッド20のネジ穴60に螺合可能な固定ネジ85が挿通可能となっている。
凹部89は、第1ヘッド保持部材13Aにおける液体噴射ヘッド20を保持する保持面79とは反対側の下面(即ち、ノズル形成面の一部を構成する面)に形成されており、Z方向における一側、つまりノズル形成面側から他側の保持面79側に向けて挿通穴86に挿通された固定ネジ85の頭部87が収容されるように構成されている。この凹部89は、第1ヘッド保持部材13Aの下面からZ方向である第1ヘッド保持部材13Aの厚さ方向に深さDt2だけ窪んだ状態に形成されており、Z方向から見た平面視において例えば円形を呈する窪みである。この凹部89の平面形状は、固定ネジ85の雄ネジ部88が挿通穴86を挿通してネジ穴60に螺合される際又はネジ穴60から雄ネジ部88が取り外される際に、頭部87が凹部89内で雄ネジ部88の軸を中心として回転可能な形状であれば、円形には限られない。この凹部89の深さDt2は、頭部87のZ方向における厚さと同程度か、もしくは、当該厚さよりも深く設定されている。一方、挿通部90は、凹部89の底部から保持面79に亘って一定の内径D5でZ方向を貫通する貫通穴であり、凹部89と同軸上に配置されている。なお、頭部87の平面視における形状は、円形又は六角形等の形状を採用することができる。また、第1ヘッド保持部材13Aの他の構成については第2ヘッド保持部材13Bと同様となっている。
固定ネジ85は、液体噴射ヘッド20のネジ穴60に螺合可能なネジであり、雄ネジ部88と頭部87とを有している。固定ネジ85は、雄ネジ部88の外径D6が上記止着ネジ71の雄ネジ部74の外径D1よりも大きいサイズのネジである。例えば、日本工業規格においてメートルネジの規格で規定されている雄ネジ部の外径(以下、適宜、太さともいう)が、固定ネジ85と止着ネジ71とで異なっている。より具体的には、固定ネジ85は、規格で規定されている第1規格の第1ネジであるとして、上記止着ネジ71は、第1規格と比較して雄ネジ部の外径が小さい第2規格の第2ネジである。つまり、液体噴射ヘッド20の固定対象が第1ヘッド保持部材13Aである場合、第1規格の第1ネジである固定ネジ85が本発明におけるネジとして使用され、液体噴射ヘッド20の固定対象が第2ヘッド保持部材13Bである場合、第1規格の第1ネジである固定ネジ85が本発明におけるネジとして使用される。この固定ネジ85の頭部87には、プラス、マイナス、又は六角形状の穴が設けられ、これらの穴にドライバー等の工具を嵌合させて雄ネジ部88を軸中心として固定ネジ85を回転させる構成を採用することができる。
図11に示されるように、固定ネジ85の雄ネジ部88の全長L6は、ネジ穴60の雌ネジ部77のZ方向の長さL4及び挿通穴86の挿通部90のX方向の長さL5よりも長く、また、L4とL5とを合計した長さL6よりも少し短く設定されている。そして、液体噴射ヘッド20を第1ヘッド保持部材13Aに固定する場合、予め液体噴射ヘッド20が第1ヘッド保持部材13Aに位置決めされて、ネジ穴60と挿通穴86とが連通する状態で、固定ネジ85の雄ネジ部88をZ方向における一側(即ち、ノズル形成面側)から挿通穴86に挿通し、挿通穴86を挿通した雄ネジ部88を液体噴射ヘッド20のネジ穴60のZ方向における一側の開口から当該ネジ穴60に挿入して螺合させる。固定ネジ85をZ方向からの平面視で時計まわり回転させて締め込むことで、第1フランジ部54の当接面80が第2ヘッド保持部材13Bの保持面79に当接した状態、即ち、液体噴射ヘッド20の第1フランジ部54と固定ネジ85の頭部87とにより第1ヘッド保持部材13Aが挟持された状態となる。第2フランジ部55側でも同様にして固定ネジ85をZ方向における一側から挿通穴86に挿通させて雄ネジ部88を第2フランジ部55のネジ穴60に螺合させることで、第2フランジ部55と固定ネジ85の頭部87とにより第1ヘッド保持部材13Aが挟持された状態となる。つまり、本実施形態では、1つの液体噴射ヘッド20は、Y方向の両側に設けられた2本の固定ネジ85によって第1ヘッド保持部材13Aに固定される。
この固定状態では、固定ネジ85の頭部87の全体は凹部89に収容されて、第1ヘッド保持部材13Aの下面からは突出しないように構成されている。これにより、上記ワイパー10等の払拭部材でノズル形成面を払拭する際に、当該ノズル形成面を円滑に払拭することができる。例えば、固定ネジ85の頭部87がノズル形成面より下方、即ち、印刷動作における印刷媒体M側に突出した構成では、上記ワイパー10等の払拭部材でノズル形成面を払拭する際に、払拭部材に頭部87が接触することで、円滑に払拭できなかったり、払拭部材を損傷したりする虞があるが、本実施形態ではこのような不具合を抑制することができる。また、ノズル形成面に付着したインク(ノズル35からのインクの噴射の際にミスト化したものが付着したものも含む)が頭部87に集まり、集まったインクが頭部87から印刷媒体M等に垂れ落ちる不具合を低減することができる。さらに、印刷媒体Mがネジ85の頭部87に接触して液体噴射装置内で詰まってしまう所謂ジャムを引き起こす虞を低減することができる。
また、挿通穴86は、ネジ穴60の内径よりも大きい内径の穴であるため、この挿通穴86から固定ネジ85を挿通してネジ穴60に螺合させる場合に、挿通穴86が固定ネジ85に干渉しない。つまり、例えば、挿通穴86の内周面に雌ネジが形成されて当該雌ネジにとネジ穴60の両方に固定ネジ85の雄ネジ部88が螺合する構成では、当該挿通穴86の雌ネジとネジ穴60の雌ネジとの溝同士が合わない場合があり、この場合、固定ネジ85の締め付けにより第1ヘッド保持部材13Aの保持面79から液体噴射ヘッド20が浮いたり傾いたりすることが考えられる。本実施形態では、このような不具合が生じることなく、第1ヘッド保持部材13Aに対して液体噴射ヘッド20を安定した姿勢で固定することができる。
このように、本発明に係る液体噴射ヘッド20における貫通穴であるネジ穴60は、第1方向であるZ方向におけるノズル形成面側である一側とノズル形成面側とは反対側である他側のそれぞれに開口を有するので、液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定する際にZ方向における一側と他側のそれぞれからヘッド保持部材13との固定用のネジを挿入してネジ留め作業が可能となる。つまり、平面視でネジ穴60に重なる位置に固定ネジ穴62を有する第2ヘッド保持部材13Bに液体噴射ヘッド20を固定する場合(換言すると、液体噴射ヘッド20の固定対象が第2ヘッド保持部材13Bである場合)は、ネジ穴60の他側の開口から止着ネジ71を挿入して当該止着ネジ71の雄ネジ部74を固定ネジ穴62に螺合させることで、液体噴射ヘッド20を第2ヘッド保持部材13Bに固定する、換言すると、ネジ留めすることができる。また、平面視でネジ穴60に重なる位置に挿通穴86を有する第1ヘッド保持部材13Aに液体噴射ヘッド20を固定する場合(換言すると、液体噴射ヘッド20の固定対象が第1ヘッド保持部材13Aである場合)は、挿通穴86に固定ネジ85を挿通して、当該固定ネジ85の雄ネジ部88をネジ穴60の一側の開口から挿入してネジ穴60に螺合させることで、液体噴射ヘッド20を第1ヘッド保持部材13Aに固定する、換言すると、ネジ留めすることができる。このように、固定対象に拘わらず、共通のネジ穴60にネジを挿通させてヘッド保持部材13A、13Bにそれぞれ液体噴射ヘッド20を固定することができるので、つまり、各ネジ止め作業でそれぞれ異なるネジ穴を用いなくても良いので、その分、液体噴射ヘッド20の小型化にも寄与する。
本実施形態において、ネジ穴60のZ方向における一側には、ヘッド保持部材13と当接される当接面80が設けられ、Z方向における他側には、ヘッド保持部材13(本実施形態では第2ヘッド保持部材13B)に形成された固定ネジ穴62に螺合可能なネジ、即ち、止着ネジ71の頭部として機能する軸部73の係止面76と当接される被係止面81が設けられたので、軸部73の係止面76と第2ヘッド保持部材13Bとの間に液体噴射ヘッド20の一部であるフランジ部54,55を挟持させることができ、液体噴射ヘッド20を第2ヘッド保持部材13Bにより安定して固定することができる。つまり、止着ネジ71の頭部である軸部73と液体噴射ヘッド20との当接位置が、Z方向において固定対象の第2ヘッド保持部材13Bに対してより近い位置にあるので、当接位置がこれよりも遠くに配置される構成と比較して、液体噴射ヘッド20の構成部材の歪み・反りを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、ネジ穴60の他側の開口の大きさは、当該ネジ穴60に螺合可能な第1規格の第1ネジである固定ネジ85と比較して雄ネジ部の外径が小さい第2規格の第2ネジである止着ネジ71の雄ネジ部74が挿通可能であって、当該止着ネジ71の頭部である軸部73が第2当接部である被係止面81に係止可能な大きさ(即ち、内径D4)に設定されたので、雄ネジ部74の外径D1がネジ穴60の内径D2よりも小さい止着ネジ71がネジ穴60内に抜け落ちてしまうことが抑制され、当該止着ネジ71で液体噴射ヘッド20を第2ヘッド保持部材13Bにしっかり固定することができる。
このように、本発明に係る液体噴射ヘッド20は、ヘッド保持部材13との固定に使用されるネジの頭部が、Z方向においてネジ穴60の一側、つまりノズル形成面側に位置する場合と、ネジ穴60の他側、つまりノズル形成面側とは反対側に位置する場合とで、ネジにおける雄ネジ部の規格が異なる。つまり、ネジの規格における雄ネジ部の太さが予め定められていることにより、ネジ穴60に対してZ方向における一側と他側の何れからネジ留めをするかに応じた規格のネジを使用すれば良いので、ネジのサイズ、即ち、雄ネジ部の太さ・外径について作業者が選択を迷うことが低減され、作業性がより向上する。
次に、本実施形態におけるプリンター1の製造方法について説明する。
図12は、プリンター1の製造方法において主に液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定する工程について説明するフローチャート、図13及び図14は、液体噴射ヘッド20を第2ヘッド保持部材13Bに固定する工程について説明する図、図15及び図16は、液体噴射ヘッド20を第1ヘッド保持部材13Aに固定する工程について説明する図である。なお、図13及び図15では、1つめの第1液体噴射ヘッド20Aの第2ヘッド保持部材13Bへの固定が完了した状態が示されている。このため、以下においては、Y方向において第1液体噴射ヘッド20Aに隣接した位置に、第2液体噴射ヘッド20Bをヘッド保持部材13(13A,13B)に固定する(即ち、ネジ留めする)工程について説明する。また、以下の説明においては、図10及び図11も適宜参照する。さらに、液体噴射ヘッド20の固定対象が第1ヘッド保持部材13Aである場合と第2ヘッド保持部材13Bである場合とで共通する工程・作業については、これらのヘッド保持部材13A,13Bの区別を付けずに、単にヘッド保持部材13として説明する。
液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に取り付ける場合、固定対象であるヘッド保持部材13が第1ヘッド保持部材13A又は第2ヘッド保持部材13Bの何れであるかによって、使用されるネジが異なる(換言すると、規格で規定されている雄ネジ部の太さが異なる)ので、まず、固定対象であるヘッド保持部材13に応じたネジを特定するネジ特定工程が行われる(S1)。例えば、液体噴射ヘッド20の固定対象が第2ヘッド保持部材13Bである場合、第2規格の第2ネジの一種である止着ネジ71が固定用のネジとして特定され、液体噴射ヘッド20の固定対象が第1ヘッド保持部材13Aである場合、第1規格の第1ネジの一種である固定ネジ85が固定用のネジとして特定される。
次に、固定対象のヘッド保持部材13に対する液体噴射ヘッド20の配置位置を決定する位置決め工程が行われる(S2)。なお、ステップS1とステップS2との順序は逆であっても良い。この位置決め工程では、図13及び図15に示されるように、ヘッド保持部材13の上面側に配置された液体噴射ヘッド20のノズル形成面をヘッド保持部材13の開口部30に対向させた状態で、当該液体噴射ヘッド20がZ方向における下方に移動されてノズル形成面側から開口部30内に挿入される。このようにノズル形成面側が開口部30に挿入されることで、即ち、第1ケース33が開口部30内に配置されることで、ヘッド保持部材13に対する液体噴射ヘッド20のXY平面方向における凡その位置が規定される。また、第1フランジ部54、第2フランジ部55、及び第3フランジ部57がヘッド保持部材13の開口部30の周縁部の保持面79に当接することで、液体噴射ヘッド20のヘッド保持部材13に対するZ方向の位置が規定される。
また、位置決め工程では、図示しない位置決め用の治具に設けられた位置決めピンを、ヘッド保持部材13の下面側から位置決め貫通穴63に挿通させてヘッド保持部材13の上面より突出させると共に、当該位置決めピンの突出部分を液体噴射ヘッド20の位置決め穴61に挿通させることで、ヘッド保持部材13に対する液体噴射ヘッド20のXY平面方向における相対位置がより高い精度で規定される。この位置決め状態では、固定対象が第2ヘッド保持部材13Bの場合、液体噴射ヘッド20のネジ穴60と第2ヘッド保持部材13Bの固定ネジ穴62とがZ方向における平面視で重なり、固定対象が第1ヘッド保持部材13Aの場合、液体噴射ヘッド20のネジ穴60と第1ヘッド保持部材13Aの挿通穴86とがZ方向における平面視で重なる。つまり、前者ではネジ穴60と固定ネジ穴62とが連通し、また、後者ではネジ穴60と挿通穴86とが連通する。
液体噴射ヘッド20の位置決めがされた後、Z方向におけるネジ穴60のZ方向における両側の開口のうち、ネジ特定工程で特定されたネジに応じた側の開口からネジ穴60に当該ネジを挿入するネジ挿入工程が行われる(S3)、即ち、固定対象が第2ヘッド保持部材13Bの場合、Z方向における他側、即ち、ノズル形成面側とは反対側の被係止面81に設けられた開口からネジ穴60に止着ネジ71の雄ネジ部74が挿入される。また、固定対象が第1ヘッド保持部材13Aの場合、固定ネジ85の雄ネジ部88が、第1ヘッド保持部材13AのZ方向における一側から挿通穴86に挿通され、さらにネジ穴60のZ方向における一側の開口から当該ネジ穴60に挿入される。そして、図14及び図16に示されるように、ネジ穴60に挿入されたネジの雄ネジ部が螺合されて締め込まれることで、固定対象のヘッド保持部材13の所定位置に液体噴射ヘッド20が固定される(ステップS4)。即ち、固定対象が第2ヘッド保持部材13Bの場合、止着ネジ71の頭部である軸部73の係止面76と第2ヘッド保持部材13Bとにより液体噴射ヘッド20が挟持される。また、固定対象が第1ヘッド保持部材13Aの場合、凹部89に収容された固定ネジ85の頭部87と液体噴射ヘッド20との間に第1ヘッド保持部材13Aが挟持される。
以上説明したように、本発明に係る液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定する際に、Z方向における一側と他側のそれぞれからネジ留め作業が可能となる。このため、液体噴射ヘッド20を搭載する液体噴射装置の仕様や内部の構造等に応じた向きからネジ留め作業を行うことが可能となる。また、液体噴射ヘッド20の固定対象に応じたネジが異なる(即ち、雄ネジ部の太さが異なる)場合でも、それぞれのネジを用いて液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定することができる。この点に関し、液体噴射ヘッド20の固定対象に応じて固定用のネジが予め定められていることにより、作業者がネジの選択を迷うことが低減され、作業性がより向上する。なお、上記で説明した液体噴射装置の製造方法は、例えば、ヘッド保持部材に固定された液体噴射ヘッド20の修理や交換の際にも同様に適用することができる。
図17は、位置決め治具93による液体噴射ヘッド20の位置決め状態を説明する第1フランジ部54側の周辺構造を示す断面図である。また、図18は、位置決め治具93による液体噴射ヘッド20の位置決め工程について説明するフローチャートである。なお、図17において、図10又は図11と同一の構成については同一の符号を付してあり、その説明については適宜省略する。また、同図においても図10及び図11と同様に、第1フランジ部54の周辺構造が図示されているが、第2フランジ部55側の周辺構造は図示されたものとは左右対称で概ね同様となっている。ここで、液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定する前の工程において、例えば、液体噴射ヘッド20自体の組み立て工程や、液体噴射ヘッド20の検査工程等が行われる。そして、それぞれの工程で液体噴射ヘッド20を所定の位置に位置決めする際に、上記の位置決め穴61を使用することも考えられる。しかしながら、それぞれの工程で位置決め穴61に位置決めピンをその都度挿通すると、当該位置決めピンが位置決め穴61の内壁面を擦ることにより当該位置決め穴61の内面が削れ、これにより、位置決め穴61によるヘッド保持部材13との位置決め精度が低下する虞がある。
このため、本発明に係る液体噴射ヘッド20では、位置決め穴61とは別に、ネジ穴60に小径部78を設けることにより、液体噴射ヘッド20をヘッド保持部材13に固定する前の工程(より具体的には、少なくともネジ挿入工程よりも前の工程)において当該小径部78を位置決め穴として用いて液体噴射ヘッド20の位置決めができるように構成されている。したがって、位置決め治具93に立設された位置決めピン92の外径は小径部78の内径よりも僅かに小さく設定されている。そして、図17及び図18に示されるように、位置決め工程では、位置決め治具93に立設された位置決めピン92をネジ穴60の一側から小径部78に挿入され(位置決めピン挿入工程S10)と、当該位置決めピン92の外周面と小径部78の内周面とにより液体噴射ヘッド20のXY平面における位置が規定される(位置決め工程S11)。なお、液体噴射ヘッド20のZ方向における位置は、各フランジ部54,55,57が、位置決め治具93の保持面に当接することで規定することができる。このように、位置決め穴61とは別に、ネジ穴60に小径部78を設けることにより、当該小径部78を位置決め穴として用いて液体噴射ヘッド20の位置決めができるので、位置決め穴61による位置決め精度が低下することを防止することが可能となる。
この他、本発明は、液体噴射ヘッドをヘッド保持部材にネジ留めする他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を複数備える液体噴射ヘッド、及び、これを備える液体噴射装置にも本発明を適用することができる。