JP7138909B2 - Vegf結合阻害ペプチド - Google Patents

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Description

本発明はVEGF結合阻害ペプチドに関する。
血管内皮増殖因子(VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor)は、血管新生を調節するタンパク質である。血管新生は、脊椎動物の胎生期における循環器系の形成や多くの組織の構築に重要な役割を果たすとともに、成熟個体においても性周期における黄体形成、子宮内膜の一過性の増殖、胎盤形成などに関与する。また、がんの増殖転移、慢性関節リューマチの病態形成や促進、糖尿病性網膜症などにも関与し、血管新生はこれら生理的条件、病理的条件において重要視されている。VEGFがVEGF受容体の細胞外ドメインと結合すると、受容体が2量体化し、細胞内ドメインのチロシンキナーゼが活性化されシグナルが下流に伝達される。
VEGFファミリーの一つであるVEGF-Aは最も強力に血管新生を亢進し、それが膜貫通型チロシンキナーゼ受容体VEGFR(VEGFR-1,VEGFR-2)と結合ないし相互作用することで、その生物学的作用を発揮する。従って、VEGFとVEGFRとの結合ないし相互作用を阻害することで血管新生が抑制され、がんの増殖や転移抑制、慢性関節リューマチや糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性の病態促進の抑止等に繋がることが期待される。
ところで、生体内で安定化された抗体様のペプチドとして、ヘリックス-ループ-ヘリックス構造(Helix-Loop-Helix(HLH)構造)を有するペプチド(HLHペプチド)が特許文献1などに開示されている。ヘリックス-ループ-ヘリックス構造を有するペプチドは、N末側のアミノ酸配列(N末端側ヘリックス:Aブロック)と、C末側のアミノ酸配列(C末端側ヘリックス:Cブロック)と、AブロックとCブロックを結合するリンカー(ループ:Bブロック)を有する。AブロックとCブロックは、ループの存在によりそれぞれα-ヘリカルコイルドコイル構造を形成する。このペプチドは低分子構造でありながら溶液中で安定した二次構造を取り、分子中の溶媒側に露出する部分に化学的に異なる性質の官能基を導入しやすい。
HLHペプチドを利用した血管内皮増殖因子(VEGF)と膜貫通型チロシン キナーゼ受容体(VEFGR)との結合ないし相互作用を阻害するVEGF結合阻害剤が特許文献2に開示されている。この阻害剤は、HLH構造のペプチドのN末端にチオレドキシンが結合された融合ペプチドであって、優れたVEGF結合阻害能を示す。
しかしながら、この融合ペプチドはチオレドキシンが融合されているために分子量が大きくなり、体内への吸収性が悪いことが予想される。さらに、発明者らによるその後の研究によって、この融合ペプチドはVEGFのVEGFRと結合する部位に結合するのではなく、この融合ペプチドによるVEGFとVEGFRとの結合ないし相互作用の阻害はチオレドキシン部分の立体障害によるものと推測された。また、製造上においても低分子のものに比べて製造コストが高くなるなどの問題もあり、VEGFのVEGFRと結合する部位に結合して安定かつ低分子のペプチド性VEGF結合阻害剤が求められていた。
特開平10-245397号公報 特開2014-047156号公報
本願発明が解決しようとする課題は、VEGFに対する強い結合性を示し、VEGFのVEGFRと結合する部位に結合するペプチドを得るとともに、低分子構造であるペプチド性のVEGF結合阻害剤を提供することにある。
本願発明に係るペプチドは配列番号1で示されるペプチドである。
本願発明のペプチドは、VEGFとVEGFR の結合に関わるVEGF側の部位に結合することによって、VEGFとVEGFRとの結合ないし相互作用を阻害し、安定性の高いペプチド性のVEGF結合阻害剤が提供される。
図1は2次スクリーニングで得られたHLHペプチドにおいて、ランダム化された部位に高頻度で出現したアミノ酸を示す図である。 図2はペプチドVS42,VS42-1のCDスペクトルである。 図3はペプチドVS42-1のVEGFに対する解離度を示す図である。 図4はペプチドVS42,VS42-1のVEGFに対する結合阻害を示す図である。 図5はペプチドVS42-1の細胞増殖阻害作用を示す図である。
本発明に係るペプチドは、論理的にはN末端側及びC末端側のそれぞれ14アミノ酸残基からなる2本のα-ヘリックスが6つ又は7つのグリシン残基からなるペプチドを介して結合したヘリックス-ループ-ヘリックス構造(HLH構造)を有する。このHLH構造を有するペプチドでは、2本のα-ヘリックスは、内側に存在するロイシン側鎖の疎水相互作用等により安定なHLH構造を形成し、さらに、N末端およびC末端にシステインを導入して分子内ジスルフィド架橋することでさらに立体構造の安定性が向上する(Suzuki, N., Fujii, I., Optimization of the loop length for folding of a helix-loop-helix peptide, Tetrahedron Lett. 40, 6013(1999)、Fujii I, Takaoka Y., Suzuki K., Tanaka, T., A Conformationally Purified α-Helical Peptide Library, Tetrahedron Lett. 42, 3323(2001))。本発明においては、このようなHLH構造を有するペプチドが好ましいが、必ずしもこのようなHLH構造を有するペプチドでなくとも差し支えない。
本発明に係るペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を有する。このアミノ酸配列中のXはそれぞれ、X18(N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸)が塩基性アミノ酸であり、X19(N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸)が疎水性アミノ酸であり、N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)、N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)、N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)はそれぞれ酸性アミノ酸である。ここで塩基性アミノ酸とは、側鎖に正電荷を持つアミノ酸であり、H、R又はKであるのが好ましい。疎水性アミノ酸とは非電荷の側鎖を持つアミノ酸であり、これらの中でもV、L又はIであるのが好ましい。酸性アミノ酸は側鎖に負電荷を持つアミノ酸であり、E又はDであるのが好ましい。
また、本発明に係るペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチドであって、X18は塩基性アミノ酸以外にもFやQでもあり、X20は酸性アミノ酸であるE以外にもGやLでもあり、X21は酸性アミノ酸であるEやD以外にもSでもあり、X23は酸性アミノ酸であるDやEの他にもNやH、S、Wでもあり得る。また、これらのペプチドの中でも、X18はH又はRであり、X19はV又はLであり、X20はE又はLであり、X21はE又はDであり、X23はD、S又はEであり、さらには、X18はHであり、X19はV又はLであり、X20はE又はLであり、X21、X23はそれぞれE又はDであるのが好ましい。これらに示すアミノ酸は2次スクリーニングで得られたペプチド(表2参照)に出現するアミノ酸の中でも、高頻度で出現するアミノ酸である。そして、より具体的にはペプチドは配列番号6~20に示すペプチドが好ましく、特に好ましいペプチドは配列番号6(VS42-1:CAAELAALEAELAALEGHVEEADFPWGKLNNLIEKLWQLKQAC)のアミノ酸配列を有する。
本発明において、上記ペプチドを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であっても、天然アミノ酸の誘導体や非天然のアミノ酸であってもよい。好ましくは、上記ペプチドを構成するアミノ酸は天然アミノ酸である。天然アミノ酸の誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基が導入されたアミノ酸であるヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等、アミノ基が導入されたアミノ酸であるジアミノプロピオン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。非天然アミノ酸の例としては、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸など;側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するホモアミノ酸(ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)などが挙げられるがこれらに限定されない。
また、本発明に係るペプチドは、各配列番号に示すアミノ酸配列のN末端のシステインとC末端のシステインCがジスルフィド結合して環状化したものが好ましい。環化することでペプチドの立体構造がより安定化する。
上記ペプチドのうち非環状のペプチドは、種々の公知であるペプチド合成方法に従って合成することが出来る。例えばFmoc固相合成法、フラグメント縮合法等の液相合成法が挙げられる。操作が簡便である点から、固相合成法が好ましく用いられる。また、環状のペプチドは、非環状のペプチドを得た後これを環化して得ることができる。例えば、アミノ酸配列中の2つのシステイン間に、公知の手法によってジスルフィド結合を形成することにより環化できる。また、公知の手法によって、分子内でチオエステルやチオエーテル結合を形成することによっても環化できる。さらに、例えば高度希釈法など公知の手法により分子内でカルボキシ基とアミノ基を縮合させることで環化してもよい。
非環状ペプチドは、上述の固相合成法及び液相合成法等の化学合成法によらず、遺伝子工学的手法を用いることでも製造できる。例えば、前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を適切な発現ベクターに組み込み、得られた発現ベクターによって適切な宿主細胞(例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、大腸菌)を形質転換する。そして、上記宿主細胞をペプチドの発現に適する条件下で培養した後、培養物からペプチドを分離すればよい。
VEGF-VEGFRに対する結合ないし相互作用を阻害するペプチドは、ほ乳類を含む動物、特にヒトの静脈内皮細胞の増殖阻害作用を示す。従って、本発明に係るペプチドは血管新生抑制剤として働き、抗がん剤や慢性関節リューマチや糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性の病態促進の抑止など、VEGFによる異常な血管形成が関与する各種疾病のための治療薬としての利用が期待される。特に、VEGFに対する解離定数(KD)が、プラズモン共鳴法により測定した場合、350nM以下、好ましくは100nM以下、さらに好ましくは50nM以下であるペプチドがこれらの治療薬として用いられる。
本発明に係る医薬組成物は上記ペプチドを有効成分とする。本発明の医薬組成物は、有効量のペプチドの他に薬理学的に許容し得る製剤用の助剤を含み得る。助剤は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、被覆剤、矯味剤、可溶化剤であり得る。当該組成物はヒトを含む動物に経口又は非経口で適用し得る形態(剤型)として提供される。当該剤型は、例えば、錠剤であり、顆粒剤であり、散剤であり、液剤であり、注射剤であり、座剤であり得る。
本発明に係るペプチドの投与量は、性別や体重、年齢、人種、症状等に応じて当業者により適宜決定される。その投与量の下限は、例えば、0.001μg/kg体重であり、0.01μg/kg体重であり、0.1μg/kg体重であり、0.001mg/kg体重であり、0.01mg/kg体重であり、0.05mg/kg体重であり、0.1mg/kg体重であり得る。また、その上限は、例えば、1000mg/kg体重であり、100mg/kg体重であり、10mg/kg体重であり、5mg/kg体重であり、1mg/kg体重であり得る。
以下、下記の実施例に基づき本願発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されないのは言うまでもない。
〔1次スクリーニング〕
配列番号1に示すアミノ酸配列又は配列番号2に示すアミノ酸配列を有するペプチドから構成される2つの1次ライブラリーL1及びL2を、ファージ表層提示法により作製した。ファージ表層提示法は公知の方法(特開2014-245397号公報)であり、ここではM13ファージのマイナーコートタンパク質にペプチドを提示させる方法を用いた。1次ライブラリーL1は、C末端側ヘリックス構造における立体構造の形成に関与しない6個のアミノ酸残基とループ部分の9個のアミノ酸残基がランダム化されている。ランダム化において、ループ部分にはY,W、F、Lの疎水性アミノ酸と、ループを形成しやすくするためにP、Gが選択されるように、BNSコドンが用いられた。また、ヘリックス構造には、ヘリックス構造を不安定化するプロリンが選択されないようにNDKコドンが用いられた。また、1次ライブラリーL2は、ループ部分の9つのアミノ酸残基がランダム化されたものであり、ヘリックス部分は1次ライブラリーL1でランダム化されたアミノ酸残基がすべてアラニンに固定されたものである。
得られた2つの1次ライブラリーから1次スクリーニングを行った。スクリーニングには、VEGF-Aの4つのアイソフォーム(VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206)のうち、VEGF165を用いた。スクリーニングは(1)VEGFとの接触、(2)VEGFと結合しなかったファージの除去、(3)VEGFR2によってVEGFから離脱したファージ回収、(4)大腸菌への感染による増幅、(5)VEGFとの接触という一連の操作を1ラウンドとして、VEGFに対する結合性が高いペプチドを提示したファージを濃縮した(バイオパンニング)。この結果、4ラウンドの操作を行うことで、表1に示すように、1次ライブラリーL1からはヘリックス以外のループ部分にそれと類似したアミノ酸配列を有する配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチド(ペプチドVS41)が、1次ライブラリーL2からは配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペプチド(ペプチドVS42)が高い出現頻度で得られた。また、これらのペプチドは、VEGFR2との競合によりVEGFから離脱したペプチドであるので、VEGF-VEGFR2相互作用を阻害しているといえる。
より高い頻度で出現したペプチドVS42について、Fmoc固相合成法により合成し、VEGFに対する解離定数(K)を測定したところ、解離定数Kは350nMであった。このことから、ペプチドVS42はVEGFのVEGFRと相互作用する部位に結合することでVEGF-VEGFR2相互作用が阻害されるものと結論付けられる。
Figure 0007138909000001
〔2次スクリーニング〕
1次スクリーニングから得られた結果では、ペプチドVS42とペプチドVS41とでループ部分に共通したアミノ酸配列(FPWG)が見られたので、さらにこの部分を保持しながらループ部分の他の部分についてランダム化を試みた。ペプチドVS42のアミノ酸配列を元にして、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するペプチドから構成される2次ライブラリーを、酵母表層提示法を用いて作製した。酵母表層提示法も公知(Boder, E. T., Wittrup, K. D. Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries. Nat Biotechnol, 16, 553-557 (1997) )であり、ここでは相同組み替え法により酵母表層提示ライブラリーを得た。
得られた2次ライブラリーについて、ビオチンで標識したVEGFと、ビオチンと結合するストレプトアビジン又は抗ビオチン抗体でコートした磁気ビーズを用い、磁気スタンドに固定したカラムにVEGFと結合したペプチド提示酵母を回収することで、1次スクリーニングと同様なバイオパンニングを行った。3ラウンドの操作を行うことで、表2に示すようにVEGFに対して高い結合性を示すペプチドを得た。ここでは、図1に示すように、18残基目(X18)には側鎖に正電荷を持つ塩基性アミノ酸(H,R,K)、19残基目(X19)には非極性の側鎖を持つ疎水性アミノ酸(V,L,I)、20,21,23残基目(X20,X21,X23)には側鎖に負電荷を持つ酸性アミノ酸(E,D)が多く確認できた。1次スクリーニングで得られたペプチドVS42はループ部分には電荷を持つアミノ酸を持たないが、これらのペプチドを前記アミノ酸のように電荷を持つアミノ酸に置換することで、VEGFに対する結合性が高まるものと結論づけられた。
Figure 0007138909000002
〔機能評価〕
次いで、高い頻度で出現した配列番号6に示すアミノ酸配列を有するペプチド(VS42-1)について、Fmoc固相合成法により合成し、円二色性(CD)スペクトルを測定するとともに、VEGFに対する解離定数(K)を測定した。さらに、VEGF-VEGF受容体(VEGF2)相互作用に対する阻害活性を求めた。なお、比較のために、VEGFに対して結合性を示さない安定したHLH構造を有する配列番号21で示すペプチド(YT1-S)、1次スクリーニングで得られたペプチドVS42についてもCDスペクトル及び解離定数を測定した。
(立体構造の保持)
CDスペクトルは円二色分散系を用いて平均残基楕円率(θ)を算出することで測定した。その結果を図2に示したが、ペプチドVS42-1はややヘリックス構造に歪みを生じた部分があるものの、安定したヘリックス構造を維持していた。
(VEGFに対する親和性)
解離定数は、VEGFを固定したセンサーチップを用いた表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)法により、ペプチドVS42-1の濃度に対するResonance Unit (RU)の平衡値をプロットしたセンサーグラムから算出した。その結果、図3に示すように解離定数は約26nMとなった。
(VEGF-VEGFR2相互作用に対する阻害活性)
VEGF受容体を固定したセンサーチップを用いたSPR法により各ペプチドの阻害活性IC50を測定した。各ペプチドとVEGFの混合溶液をサンプルとし、サンプルの濃度に対するResonance Unit (RU)の平衡値のプロットから、VEGF-VEGFR2相互作用に対する各ペプチドの阻害活性IC50を求めた。10nMのVEGFに対して800nM~0.78125nMの範囲で各ペプチドを添加して測定を行い、各添加濃度に対するRUの値をプロットしたセンサーグラムから算出した。その結果、図4に示すように、ペプチドVS42のIC50は200nM、ペプチドVS42-1のそれは35nMとなった。
(細胞増殖阻害)
ペプチドVS42-1について、Human Umbilical Vein Endothelial Cells(HUVEC)を用いた細胞増殖阻害試験を行った。HUVECは細胞表面にVEGFR2を発現しており、VEGFと結合することで増殖する。5.0×103 cells/wellで播種したHUVECに、10nMのVEGFと、161.6μM~4.93×10-3μMの範囲で調整したサンプル溶液を添加して、37℃で48時間培養した。培養後、WST-1試薬により発色させて450nmの吸光度を測定した。VEGFだけを加えて培養した場合の吸光度を100%のコントロール、ペプチドもVEGFも加えずに培養した場合の吸光度を0%のコントロールとして、ペプチド濃度に対する吸光度をプロットしたグラフに対してカーブフィッティングを行うことで阻害活性IC50を求めた。その結果、図5に示すようにペプチドVS42-1の阻害活性IC50は181nMであった。また、ペプチドVS42の阻害活性IC50は1200nMであった。
これらのことから、ペプチドVS42-1は強くVEGF-VEGFR2相互作用を阻害し、VEGF結合阻害剤として使用し得る。また、2次スクリーニングで得られたペプチドVS42-2からペプチドVS42-15の各ペプチドは、ペプチドVS42-1のアミノ酸配列とは、2つのヘリックス部分とループ部分のC末端側にあるAXFPWの共通したアミノ配列を有しており、VEGF-VEGFR2相互作用を阻害する活性が認められたVS42-1と同様にVEGF-VEGFR2相互作用の阻害活性が認められると言える。また上記のように、ループ部分においてX18には側鎖に正電荷を持つ塩基性アミノ酸(H,R,K)を、X20,X21,X23には側鎖に負電荷を持つアミノ酸(E,D)を配置することでVEGFへの結合性が高まる。従って、ヘリックス部分とループ部分にあるAXFPWが保存されたペプチドSV41等の本願発明に係るペプチドはVEGF結合阻害剤として使用し得る。
本発明によると抗体様の新規VEGF結合阻害剤が提供され、血管新生阻害作用等に基づく抗がん剤などとしての使用が見込まれる。

Claims (9)

  1. 配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチド。
    但し、同アミノ酸配列中、
    N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸(X18)が塩基性アミノ酸であり、
    N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸(X19)が疎水性アミノ酸であり、
    N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)は酸性アミノ酸であり、
    N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)は酸性アミノ酸であり、
    N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)は酸性アミノ酸である。
  2. 配列番号5のアミノ酸配列中、
    N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸(X18)がH、R又はKであり、
    N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸(X19)がV、L又はIであり、
    N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)はE又はDであり、
    N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)はE又はDであり、
    N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)はE又はD、
    である請求項1に記載のペプチド。
  3. 配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチド。
    但し、同アミノ酸配列中、
    N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸(X18)がH、R、F、K又はQであり、
    N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸(X19)がV、L又はIであり、
    N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)はE、G又はLであり、
    N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)はE、D又はSであり、
    N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)はD、N、E、H、S又はWである。
  4. 配列番号5のアミノ酸配列中、
    N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸(X18)がH又はRであり、
    N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸(X19)がV又はLであり、
    N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)はE又はLであり、
    N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)はE又はDであり、
    N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)はD、S又はE
    である請求項3に記載のペプチド。
  5. 配列番号5のアミノ酸配列中、
    N末端のアミノ酸から18残基目のアミノ酸(X18)がHであり、
    N末端のアミノ酸から19残基目のアミノ酸(X19)がV又はLであり、
    N末端のアミノ酸から20残基目のアミノ酸(X20)はE又はLであり、
    N末端のアミノ酸から21残基目のアミノ酸(X21)はE又はDであり、
    N末端のアミノ酸から23残基目のアミノ酸(X23)はE又はD
    である請求項3に記載のペプチド。
  6. 配列番号6~20の何れかのアミノ酸配列を有するペプチド。
  7. 前記アミノ酸配列中、N末端のシステインとC末端のシステインがジスルフィド結合した請求項1~6の何れか1項に記載のペプチド。
  8. 有効量の請求項1~7の何れか1項に記載のペプチドを含む医薬組成物。
  9. 抗がん用組成物、抗慢性関節リウマチ用組成物、抗糖尿病性網膜症用組成物、抗加齢黄班変性用組成物の何れかである請求項8に記載の医薬組成物。
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