JP7134815B2 - 振動波モータ、駆動制御システム、光学機器および電子機器 - Google Patents

振動波モータ、駆動制御システム、光学機器および電子機器 Download PDF

Info

Publication number
JP7134815B2
JP7134815B2 JP2018185422A JP2018185422A JP7134815B2 JP 7134815 B2 JP7134815 B2 JP 7134815B2 JP 2018185422 A JP2018185422 A JP 2018185422A JP 2018185422 A JP2018185422 A JP 2018185422A JP 7134815 B2 JP7134815 B2 JP 7134815B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vibration
wave motor
vibration wave
diaphragm
damping member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018185422A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019088183A (ja
Inventor
達雄 古田
彰 上林
智大 渡邊
信也 小山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to US16/174,898 priority Critical patent/US11258376B2/en
Publication of JP2019088183A publication Critical patent/JP2019088183A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7134815B2 publication Critical patent/JP7134815B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/64Electric machine technologies in electromobility

Landscapes

  • Lens Barrels (AREA)
  • General Electrical Machinery Utilizing Piezoelectricity, Electrostriction Or Magnetostriction (AREA)

Description

本発明は、振動波モータ、ならびにそれを用いた、駆動制御システム、光学機器および電子機器に関する。
振動型(振動波)アクチュエータは、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子と弾性体から構成された振動子と、振動子に加圧接触する移動体を有する。振動型アクチュエータは、振動子に励起された振動の駆動力によって生じる摩擦を利用して、移動体を相対移動させる振動波モータとして利用されている。
以下に、振動型アクチュエータの代表的な利用形態である、円環状の振動波モータの構造および駆動原理の概略を示す。なお、以下において「円環状」といったときは、当該物品または部材の形態は、所定の厚みをもった円板が同心状の貫通孔を有する形態とみなすことができるものとする。以下その貫通孔に沿った方向に対して、円板の「厚み」、その円板の厚みを決める両表面を「面」と呼ぶ。
円環状の振動波モータは、円環状の振動子と、該振動子に加圧部材によって加圧接触させた円環状の移動体を備えている。振動子と加圧部材の間には、振動子の振動が加圧部材に伝わらないように振動減衰部材が設けられている。
移動体は弾性体よりなり、その材質は金属が一般的である。振動子は円環状の振動板とその一方の面上に設けられた円環状の圧電素子とを備えている。振動板は弾性体よりなり、その材質は金属が一般的である。圧電素子は、円環状の圧電材料(圧電セラミックス)の一方の面上に、当該円環の円周方向に沿って円周をn等分した(nは自然数)複数の領域に分割された電極を有し、他方の面上に1つの共通電極を有している。長さλを単位として円周長をnλで表す。圧電セラミックスの材質はチタン酸ジルコン酸鉛系材料が一般的である。
前記複数の領域に分割された電極は、駆動相電極を構成する2つの領域と、検知相電極を構成する少なくとも1つの領域と、必要に応じて設けられる非駆動相電極を構成する領域にそれぞれ設けられている。
2つの駆動相電極に対しては、円周方向に沿ってλ/2のピッチで交互に逆方向の電界を印加することにより、分極処理が施されている。そのため、圧電セラミックスの伸縮極性は、印加電圧に対してλ/2のピッチで交互に反転する。さらに、それぞれの駆動相電極を構成する2つの領域をλ/4の奇数倍の間隔で隔てる2つの領域(間隔部)には、共通電極と短絡された非駆動相電極が設けられている。この間隔部には、通常、後に述べる検知相電極が設けられる。
このような振動波モータの駆動相電極に交番電圧を印加すると、波長λの第一の定在波および第二の定在波が振動子の全周に亘ってそれぞれ発生する。第一の定在波に対して第二の定在波は円周方向にλ/4だけ回転移動したものとなる。
他方、周波数が同じでかつ時間的位相差がπ/2である2種類の交番電圧をそれぞれの駆動相電極に印加すると、両者の定在波が合成される。その結果として、振動子には全周に亘って円周方向に進行する曲げ振動(振幅が振動子の面に垂直な振動)の進行波(円環に沿った波数n、波長λ)が発生する。
曲げ振動の進行波(以下単に「曲げ振動波」)が発生した面に接する移動体は、振動板から円周方向の摩擦力(駆動力)を受けて駆動する。
しかしながら、駆動時に予め設定されたn次(波数n)とは異なる曲げ振動波、例えば(n-1)次や(n+1)次の曲げ振動の進行波が発生する場合がある。これらの設定外の曲げ振動波を不要進行波と呼ぶ。不要進行波の発生原因は、振動子と移動体の接触面の精度の低さ、移動体に発生する機械的振動のムラ、振動子と移動体の接触圧力の分布の不均一さなどである。振動波モータを駆動させた時に不要進行波が発生すると、不要進行波に起因する異音や出力低下の原因となる。
そのため、不要進行波の発生を低減する手段として、特許文献1には、円環状の移動体と接する側の振動板の面に放射状に溝が形成されており、その溝の深さが正弦波曲線に沿って変化している構成が開示されている。特許文献1のような構成にすることで、溝の深さが正弦波曲線に沿って変化すると、不要な進行波(不要進行波)は抑制される。
しかし、上述のように溝の深さを変化させると、溝の深さが大きい部分の振動板厚さは相対的に小さくなる。そのため、溝の深さが大きい部分と腹部が一致するような定在波の振動振幅が大きくなる。このような定在波(不要定在波)は、振動波モータの回転に対する寄与は無く、異音の発生や出力低下の原因となる。
一方、特許文献2には、振動子を安定して固定することを目的として、分離した支持部材を用いているが、溝の深さを正弦波曲線に沿って変化させている構成でないため、不要定在波は発生しないものの、不要進行波は発生しやすい。また、支持部材について、振動子の円周方向のどの位置に設けるかについての記載は無い。
特許5322431号公報 特開平6-153541号公報
本発明は、上述の課題に対処するためになされたものであり、十分な駆動速度を発揮し、不要進行波および不要定在波の発生がともに抑制される振動波モータ、ならびにそれを用いた駆動制御システムおよび光学機器を提供するものである。
上記課題を解決するための本発明の振動波モータは、
移動体と、
円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
振動減衰部材と、
が順に設けられた振動波モータであって、
前記振動板は前記移動体側に、
前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、
前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さであり、
前記振動減衰部材によって不均等に加圧され、前記振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の一部または全部において前記定在波の腹部以外と比べ前記振動減衰部材によって強く加圧されていることを特徴とする。
上記課題を解決するための本発明の別の振動波モータは、
移動体と、
円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
振動減衰部材と、
が順に設けられた振動波モータであって、
前記振動板は前記移動体側に、
前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、
前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さであり、
前記振動板は前記移動体側に、放射状に伸びる溝部をX箇所に有し、前記X箇所の溝部の中心深さを円周方向に順にD1~DXとしたとき、D1~DXは1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化し、
前記振動減衰部材によって不均等に加圧され、前記正弦波の腹部の一部または全部において前記加圧が局所的に大きくなっていることを特徴とする。
上記課題を解決するための本発明の光学機器は、前記駆動制御システムを備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するための本発明の電子機器は、前記振動波モータを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、振動波モータ、あるいは前記振動波モータを用いた駆動制御システム、光学機器および電子機器において、十分な駆動速度を発揮しながら、不要進行波および不要定在波の発生を有効に抑制することができる。
本発明の振動波モータの一実施形態を示す概略図である。 本発明の振動波モータの一実施形態の一部分の構成を抜粋して示す断面模式図である。 本発明の振動波モータおよび振動子に用いられる円環状の圧電素子における円周長と振動波の波長の関係を示す概略図である。説明の便宜上、電極の表示を省略している。 本発明の振動波モータに用いられる円環状の圧電素子の一実施形態の概略図である。説明の便宜上、つなぎ電極の表示を省略している。 本発明の振動波モータに用いられる円環状の振動板の突起部と溝部の外径側の円周方向の長さの測長方法を示す概略図である。 本発明の振動波モータの一実施形態における振動板の溝部の中心深さの分布を示す概略図である。 本発明の振動波モータの一実施形態における振動板の溝部の中心深さの分布を示す概略図である。 本発明の振動波モータの一実施形態を示す概略分解斜視図である。 本発明の駆動制御システムの一実施形態を示す模式図である。 本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。 本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。 本発明の振動波モータに用いられる円環状の振動板の一例を示す概略図である。 本発明の振動波モータに用いられる円環状の圧電素子の製造方法の一例を示す概略工程図である。 本発明の振動波モータに用いられる振動子のインピーダンス曲線の一例を示す図である。 本発明の振動波モータに用いられる振動減衰部材の設置位置を示す概略図である。 本発明の振動波モータに用いられる振動減衰部材の設置位置を示す概略図である。
以下、本発明の振動波モータと駆動制御システムおよび光学機器の実施形態について説明する。
(振動波モータおよび振動波モータに使用可能な振動子)
本発明の振動波モータは、
移動体と、
円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
振動減衰部材と、
が順に設けられた振動波モータであって、
前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、
前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さであり、
前記振動減衰部材によって不均等に加圧されていることを特徴とする。
また本発明の振動波モータは、
移動体と、
円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
振動減衰部材と、
が順に設けられた振動波モータであって、
前記振動板は前記移動体側に、放射状に伸びる溝部をX箇所に有し、前記X箇所の溝部の中心深さを円周方向に順にD1~DXとしたとき、D1~DXは1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化しており、
前記振動波モータを駆動させた時に発生する定在波の腹部の一部または全部において前記定在波の腹部以外と比べ前記振動減衰部材によって強く加圧されていることを特徴とする。
図1(a)及び1(b)は、本発明の振動波モータの一実施形態を示す概略図である。図1(a)は、振動波モータを斜め方向から見た概略斜視図、図1(b)は、振動波モータを複数の電極(パターン電極)が設けられた側から見た概略平面図である。ただし、図1(b)では、振動減衰部材4と加圧部材5の表示を省略して透視したものとして図示している。また、図2は、本発明の振動波モータの一実施形態の細部の構成を側方から見た模式的部分側面図である。ここでいう側方とは当該円環から半径方向に離れた位置のことである。図1(a)に示すように、本発明の振動波モータは、振動子1と移動体2と振動減衰部材4と加圧部材5を備えている。また、前記振動子1は、円環状の振動板101と、振動板の第一の面(圧電素子側)に設けられた円環状の圧電素子102よりなる。
(円環状)
本発明において、円環状とは、初めに述べたように、所定の厚みをもった円板が同心状の貫通孔を有する形態をいう。その円板および貫通孔の外周形状は、理想的には真円形であるが、模式的に円形とみなし得る限り、楕円形、長円形なども含む。円形が真円形でない場合の半径や直径は同面積の真円を仮定して決定する。円環の一部が欠けた形状、または円環の一部が突出した形状のような略円環状も、実質的に円環状とみなし得る限り、本発明の円環状に含める。従って、製造上のばらつきにより、僅かに変形した略円環状も、やはり実質的に円環状とみなし得る限り、本発明の円環状に含める。略円環状の場合の半径や直径は、その欠陥部や異常部を補った真円を仮定して決定する。
(振動減衰部材)
振動減衰部材4は、図1(a)に示すように、圧電素子102の面上に設けられている。振動減衰部材4を分離させて設けたり、厚みを不均一にしたりすることで、不要定在波の腹部を局所的に押さえ、定在波の腹部以外と比べ強く加圧されているため不要定在波の振幅を抑制することができる。つまり、振動減衰部材によって不均等に加圧することで、不要定在波の振幅を抑制することができる。前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さである場合、定在波の腹部の位置は常に一定となる。そのため、定在波の腹部である振幅の大きな箇所を局所的に継続的に押さえることができる。
振動減衰部材4は、振動子の振動が加圧部材へ伝わりにくい振動絶縁性(除振性)の素材よりなり、例えば、フェルト、織物、ゴム、コルク、樹脂などを素材として用いることができる。これらの中でもフェルトは振動絶縁性が高く、安価で好ましい素材である。
(加圧部材)
加圧部材5は、加圧によって振動減衰部材を介して振動板101を移動体に向かって押しつけ、振動板101の第二の面(移動体側)と移動体の間に所定の力が印加される部材である。加圧部材5を押し付けた状態で固定することで、振動板101の第二の面と移動体の間に任意の力を印加することができる。
さらに、本発明の振動波モータにおいては、加圧部材5を分離させて設けたり、厚みを不均一にしたり、凹凸を設ける。そのことで、振動減衰部材4を介して振動子の不要定在波の腹部を局所的に抑え、不均等に加圧することで、不要定在波の振幅を抑制することができる。
加圧部材5は、例えば平らなワッシャを弓状に曲げて撓ませることで荷重を発生させる波ワッシャや、皿ばねなどのバネ501を、図1(a)に示すように円環状の平板502と重ねた構成にするのが良い。
(振動子)
振動子1は、図1(a)に示すように、円環状の振動板101と、円環状の圧電素子102よりなり、移動体2と接触している。圧電素子は圧電材料と電極からなる。振動板101の外周が、測定箇所によって複数の外径を有する場合は、最大の外径を2Rとする。振動板101の第一の面は、平面であると、圧電素子102の伸縮にともなった振動の伝達が良好になるため、好ましい。振動板101の第一の面上に圧電素子102を設ける手段は限定されないが、振動の伝達を阻害しないように密着させるか、高弾性の接着層(図示を省略)を介在させて接着させることが好ましい。例えば、エポキシ系樹脂が接着層として好適に用いられる。
(移動体)
円環状の移動体2は円環状の振動子1に加圧部材5によって加圧接触させられ、振動子1との接触面に発生する進行波によって生じる摩擦がもたらす駆動力によって回転する。移動体2の振動子1との接触面は平面状であることが好ましい。移動体2は金属であることが好ましい。例えば、アルミニウムが移動体2の素材として好適に用いられる。
(圧電素子の構成)
円環状の圧電素子102は、図1(a)に示すように、円環状の一片の圧電セラミックス1021と、その一方の面上に設けられた共通電極1022と、他方の面上に設けられた複数の電極1023を有している。
本発明において、圧電セラミックス1021とは、金属元素を有する原料粉末を焼成して得られる、組成が均一かつ繋ぎ目の無い塊(バルク体)であって、少なくともその一部の領域が分極処理されている。また、圧電セラミックス1021は、室温における圧電定数d31の絶対値が10pm/Vまたは圧電定数d33が30pC/N以上のセラミックスである。
圧電セラミックスの圧電定数は、当該セラミックスの密度ならびに共振周波数および***振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM-4501)に基づいて、計算により求めることができる。以下、この方法を共振-***振法と呼ぶ。密度は、例えば、アルキメデス法により測定できる。共振周波数および***振周波数は、例えば、該セラミックスに一対の電極を設けた後に、インピーダンスアナライザを用いて測定できる。
(圧電セラミックスにおける鉛の含有量)
圧電セラミックス1021は、鉛の含有量が1000ppm未満、すなわち非鉛系の圧電セラミックスであることが好ましい。
従来の圧電セラミックスはそのほとんどがチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする。そのため、例えば圧電素子が廃却され酸性雨を浴びたり、過酷な環境に放置されたりした際、従来の圧電セラミックス中の鉛成分が土壌に溶け出し生態系に害を成す可能性が指摘されている。しかし、本発明の圧電セラミックス1021のように鉛の含有量が1000ppm未満であれば、鉛成分が環境に及ぼす影響を低く抑えることができる。鉛の含有量は、例えば蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析により定量された圧電セラミックス1021の総重量に対する鉛の含有量によって評価することができる。
(ペロブスカイト型金属酸化物)
圧電セラミックス1021の主成分としては、ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物(ペロブスカイト型金属酸化物)が好適である。
本発明において、ペロブスカイト型金属酸化物とは、岩波理化学辞典 第5版(岩波書店、1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト構造(ペロフスカイト構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト構造を持つ金属酸化物は一般にABO3の化学式で表現される。Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3で表記されているが、元素量の比が若干ずれた場合(例えば1.00対2.94~1.00対3.06)でも、金属酸化物がペロブスカイト構造を主相としていれば、ペロブスカイト型金属酸化物と言える。金属酸化物がペロブスカイト構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
(共通電極)
共通電極1022は、円環状の一片の圧電セラミックス1021の振動板101と対向する側の面、すなわち振動板101に接触する面または上に述べた接着層に接触する面に設けられている。共通電極1022は非駆動相電極10232(図1(b)参照)と導通していると、複数の電極1023の特定の領域のみで駆動電圧を印加できるようになるため、好ましい。共通電極は例えば銀等の金属ペーストを塗布し、乾燥または焼き付けることで形成可能である。
(複数の電極)
電極1023は、図1(b)に示すように、互いに電気的に独立した2つの駆動相電極10231と1つ以上の非駆動相電極10232と1つ以上の検知相電極10233よりなる。
(検知相電極)
検知相電極10233は、振動子1の振動状態を検知して、その振動状態の情報を外部、例えば駆動回路にフィードバックする目的で設けられている。検知相電極10233と接する部分の圧電セラミックス1021には分極処理が施されている。そのため、振動波モータを駆動させると、振動子1の歪みの大きさに応じた電圧が検知相電極10233の部分で発生して、検知信号として外部に出力される。
(非駆動相電極)
非駆動相電極10232のうち少なくとも1つ以上は、共通電極1022と導通しているとグランド電極として使用することが可能となる。
非駆動相電極10232と接する部分の圧電セラミックス1021は、残留分極を有していても、有していなくても良い。ただし、非駆動相電極10232と接する部分の圧電セラミックス1021が残留分極を有している場合は、当該の非駆動相電極10232と共通電極1022とが導通していることが好ましい。
(駆動相電極)
各々の駆動相電極10231は、図1(b)に示すように、6つの分極用電極102311と前記6つの分極用電極102311を電気的に接続したつなぎ電極102312よりなる。
図3は、本発明の振動波モータに用いられる円環状の圧電素子102における円周長と振動波の波長の関係を示す概略図である。図中の円環は圧電セラミックス1021の形状と実質、同一である。円環の面上で任意の位置を指定し、圧電素子102の円環形状と中心を同一として前記任意の位置を通過する円の直径を2Rarb(単位mm)とすると、前記円の円周長は2πRarbとなる。この円周長2πRarbを例えば7λとする。
図4(a)及び4(b)は、圧電素子102における分極用電極102311の配置と圧電セラミックス1021の極性を示す概略図であり、円環状の圧電素子102を複数の電極を設けた側から見たものである。ただし、図4(a)及び4(b)では、説明の便宜上、つなぎ電極102312の表示を省略している。なお、図4(a)及び4(b)の極性の組み合わせは一例であって、本発明を限定するものでは無い。
駆動相電極10231と接する部分の圧電セラミックス1021は、駆動相電極10231に対して略垂直な方向に残留分極を有している。残留分極を有している領域は、分極用電極102311と共通電極1022に狭持された領域における圧電セラミックス1021の一部であっても全部であっても構わない。振動波モータの駆動時の発生力を高める観点では、分極用電極102311と共通電極1022に狭持された全部の領域が残留分極を有していることが好ましい。本発明では、残留分極を有している領域を分極部と称する。残留分極とは圧電セラミックス1021に電圧を印加していない時に圧電セラミックス1021に残留している分極のことを指す。圧電セラミックス1021は、分極処理を施すことで、自発分極の方向が電圧印加方向に揃い、残留分極を有するようになる。圧電セラミックス1021が残留分極を有しているか否かは、圧電素子102を狭持する電極間に電界を印加し、印加電界Eと分極量P(P-Eヒステリシス曲線)を測定することにより、特定することができる。
各駆動相電極10231は6つの分極用電極102311を有しており、それに対応して、分極用電極102311と接する圧電セラミックス1021の部分、すなわち分極部も6つある。6つの分極部および分極用電極102311は、図4(a)及び4(b)に示すように、未分極部を挟んで円周に沿って配置されている。分極部の極性は円周に沿って配置された順に見て交互に反転している。図4(a)及び4(b)において、分極用電極102311の内側に記載された「+」および「-」の記号は、残留分極の方向、すなわち極性を示している。本明細書においては、圧電素子102の製造工程における分極処理において正の電圧を印加した電極部に「+」の記号を記載しているので、「+」電極部分のみで圧電定数d33を測定すると負の値が検出される。同様に「-」電極部分では正の圧電定数d33が検出される。他方、図4(b)において「0」の記号が表示されている電極部分または電極が設けられていない未分極部のみでは、室温における圧電定数d33はゼロまたはごく小さな値、例えば5pC/N以下しか検出されない。図4(a)及び4(b)で例示した圧電素子102においては、圧電セラミックスは紙面に対して下向きに残留分極を有する領域と上向きに残留分極を有する領域を有する。領域によって残留分極の極性が異なることを確認する方法としては、圧電定数を測定して検出された値の正負で判断する方法やP-Eヒステリシス曲線における抗電界の原点からのシフト方向が逆であることを確かめる方法が挙げられる。
各分極部の大きさは、実質的に等しいことが好ましい。また、各分極部(各分極用電極102311)は、投影面積で考えて差が2%未満であることが好ましい。一例として、円環状の圧電素子の円周を7等分した1つの円弧の長さをλとして、2つの駆動相電極の円周方向の長さはそれぞれ3λとする。そして、それらは円周方向にλ/4および3λ/4の長さを有する2つの間隔部により互いに円周方向に離隔され、前記非駆動相電極および前記検知相電極は前記2つの間隔部に設けられているように構成するとよい。
(電極の特性、素材、形成方法)
分極用電極102311、非駆動相電極10232、検知相電極10233、つなぎ電極102312は、抵抗値が10Ω未満、好ましくは1Ω未満の層状あるいは膜状の導電体からなる。電極の抵抗値は、例えば回路計(電気テスター)で測定することで評価できる。各電極の厚みは5nmから20μm程度である。その材質は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。
電極の材料としては、例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。前記電極は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、圧電素子に配置された各電極が、それぞれ異なる材料であっても良い。これらのうち、本発明に用いる電極としては、AgペーストやAgの焼きつけ電極、Au/Tiのスパッタリング電極などが、抵抗値が小さいため好ましい。
(振動板の構成)
前記円環状の振動板の第二の面は、前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さである。
さらに、前記円環状の振動板の第二の面は、放射状に伸びる溝部をX箇所に有し、前記X箇所の溝部の中心深さを円周方向に順にD1~DXとしたとき、D1~DXは1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化していることが好ましい。
(突起部と溝部の数)
図2に示すように、移動体2と接触する振動板101の第二の面は、放射状に伸びる断面U字形の溝部1012を複数本有する。ここでいう「断面U字形」とは、当該振動板の第二の面に対して、実質的に垂直な両壁面と実質的に水平な底面を有する断面形状をいう。ただし、底面と各壁面とが丸く滑らかに接続している所謂U字形状に限らない。底面と各壁面とが直角に角をなして接続している所謂矩形状や、それらの中間的形状、あるいはそれらからの多少の変形など、所謂U字形状に準ずる形状であって「断面U字形」とみなし得るものを広く含む。
図5(a)は、振動板101を移動体2と接触する面(第二の面)の側から見た模式的部分平面図であり、図5(b)-5(d)は、本発明に含まれる断面U字形の溝部の断面形状の例を示したものである。
(突起部)
振動板101の第二の面は、放射状に設けられた複数の溝部1012を有し、隣接する2つの溝部の間にはそれらを隔てる突起部1011が設けられている。そして、放射状に伸びる複数の溝部1012が円周方向に配列されるのであるから、その間に形成される突起部1011の数は溝部と同じである。突起部1011の上面は、当該円環状振動体の第二の面に相当し、各溝部の深さを定義する際の基準面ともなり、凹部である溝部に対しては凸部とみなせるため、これを「突起部」ということにする。
(中心深さ)
本発明の溝部1012の中心深さは、少なくとも一つは異なる深さであることが特徴である。ただし図2においては同じ中心深さとして描画している。ここでいう「中心深さ」とは、個々の溝部を移動体側から見たときの中心位置における深さのことである。すなわち、半径方向にも円周方向にも個々の溝部の中央に当たる位置における、突起部の頂面(振動体の第二の面)から測った当該溝の深さということになる。通常、溝部1012の底面は、振動板101の第二の面に全体として平行であり、半径方向(溝が伸びる方向)には全体として平らである。また、円周方向(溝が配列される方向)には全体として平らであるか、中央部が平らで両側部(壁面近傍)が盛り上がった凹面状であるから、中心深さは、個々の溝部の最深部の深さを意味することになる。ただし、それは個々の溝部の底面形状がどのようになっているかによって異なるわけであるから、必ずしも最深部の深さを意味するとは限らず、例えば、深さの中央値(底面が一方向に傾斜している場合)を意味することもあり得る。もっとも、当該中心位置における深さが通常は当該溝部の深さの代表値としての意味をもたない値である(例えば特異点である)場合には、当該中心位置に近い他の点における深さであって、その溝部の深さを代表する値を中心深さとする。なお、全ての溝部について、深さの測定位置が固定されている以上、各溝部の底面が同様の形状を有するのであれば、中心深さのもつ意義は全ての溝部で同等となる。
X箇所の溝部1012の中心深さを振動板の円周方向に順にそれぞれD1~DX(単位mm)とする。本発明においてD1~DXは、1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化していることが好ましい。
例えば、本発明が目的とする円環に沿った7波の進行波に対して不要進行波となる4次、5次、6次、8次(円環に沿った波数が4、5、6、8)の進行波を抑制する場合は、1つ以上4つ以下の正弦波を重ね合せた曲線にそってD1~DXを変化させると良い。その場合の正弦波を重ね合せた曲線の一般式は以下の数式(1)のようになる。
D=Dave+Am×sin(4×2×ω+θ)+Am×sin(5×2×ω+θ)+Am×sin(6×2×ω+θ)+Am×sin(8×2×ω+θ) 数式(1)
数式(1)において、ωは円環状の振動板101の放射状に伸びる溝の中心線位置を示す角度である。θは位相差を示す角度であり、実施形態によって後述の条件を満たすように適宜決定される。D(単位mm)は円環状の振動板101の任意の溝の中心位置における理想的な溝の深さを示すものであって、D1~DXはD±0.1mmとする。また、D1~DXの大小関係は、数式(1)で算出したDと一致している。Dave(単位mm)は、D1~DXの平均値として別途設定される溝部1012の標準深さである。
Am(単位mm)は、溝部の中心深さの変化を表す曲線において、重ね合わされる各正弦波の振幅となる実数であり、添え字は低減を意図する不要進行波の次数(波数)を示している。Am4、Am5、Am6、Am8のうち、少なくとも1つ以上は0以外の値を取る。0以外の振幅を有する正弦波の数が、正弦波の重ね合せの数である。正弦波の重ね合せの数は、1つ以上であれば上限は特に定められないが、5つ以上の正弦波を重ね合せても不要進行波を低減する効果があまり向上せず、モータ駆動の効率が低下するおそれがある。よって、正弦波の重ね合せの数は1以上4以下が好ましい。より好ましい正弦波の重ね合せの数は2以上4以下である。
図6(a)-6(f)は、それぞれ、本発明の振動波モータの一実施形態における振動板の溝部の中心深さの変化の様子を示す概略図である。図6(a)、6(c)及び6(e)は、X=90を仮定したときの各溝部の中心深さと標準深さDaveの差分を示す一例である。プロットの横軸は90本の溝部の順番(以下、溝番号と呼ぶ)を示している。0番は本来存在しないが、プロット上では90番目の溝部の深さを2回示すために便宜上用いている。図6(a)及び6(c)における各溝部の深さのプロットは、いずれの場合も2つの正弦波を重ね合せた曲線に沿っている。また図6(e)における各溝部の深さのプロットは、4つの正弦波を重ね合せた曲線に沿っている。図7(a)、7(b)、7(c)、7(d)は、それぞれ4次、5次、6次、8次の進行波を抑制するための溝深さを表す。これらの正弦波を重ね合わせると、図6(e)に示す曲線となる。
図6(b)は、図6(a)で示した各溝部の中心深さを標準深さDave=1.85mmとして、図6(f)は、図6(e)で示した各溝部の中心深さを標準深さDave=1.85mmとしたものである。各図は、それぞれ振動板101に適用した場合の突起部と溝部の高さや深さの関係をグラフプロットして示す模式図である。また図6(d)は、図6(c)で示した各溝部の中心深さを標準深さDave=1.65mmとして、振動板101に適用した場合の突起部と溝部の高さや深さの関係をグラフプロットして示す模式図である。これらの例において振動板の第一の面を起点とした各突起部の高さは等しい。プロットの横軸は90本の溝部の位置(伸びる方向)を円環の中心から見た角度で示している。横軸の値は相対的なものであるが、図6(b)においては、図6(a)における89番の溝の端部を起点としている。また、図6(d)においては、図6(c)における89番の溝の端部を起点とし、図6(f)においては、図6(e)における89番の溝の端部を起点としている。
図6(a)-6(f)のような溝深さにすることで、7次の進行波に対して、選択した不要な進行波(4次、5次、6次、8次)の発生が大幅に抑制される。例えば、4次の不要進行波のみに着目すると、数式(1)の第2項にも示されるように溝部の中心深さは円周に対して8箇所の極大部(深部)と8箇所の極小部(浅部)を均等間隔(π/4の角度)で有するようになる。2つの駆動相電極部で発生する各々の定在波の腹の位置もπ/4の角度でずれているので、一方の定在波は弾性率の低い箇所で振動するために、共振周波数が低周波側にシフトする。他方の定在波は弾性率の高い箇所で振動するために、共振周波数が高周波側にシフトする。相互の定在波の共振周波数が分離するために、結果として、4次の進行波(不要進行波)は発生しなくなる。他の次数の不要進行波についても、抑制の機構は同じである。
振動波モータの振動板101におけるX箇所の溝部1012の中心深さが、少なくとも一つは異なる深さであり、1つ以上の正弦波を重ね合わせた曲線に沿って変化していることを確かめる方法として、以下の方法を例示できる。まず、振動板の外径側の円周長に対する各溝の中心部の座標と深さを実測する。横軸に溝部の座標、縦軸に実測深さを取り、プロット間を補完して、全ての座標に溝深さが存在するような曲線を仮定する。この曲線をフーリエ変換すると、正弦波の存在と個数が分かる。
(検知相電極と溝の中心深さの関係)
X箇所の溝部1012のうち、検知相電極10233に最も近接する溝部の中心深さをDsenとする。ここで「sen」は自然数であり、1以上X以下である。最も近接する溝部は、検知相電極10233の中心を基準点として決定する。最も近接する溝部に隣接する2つの溝部の中心深さをDsen-1、Dsen+1とする。この時、|Dsen+1-Dsen-1|/Dsenが5%以下であることが好ましい。|Dsen+1-Dsen-1|/Dsen≦2%であると、なお好ましい。3つの溝部の中心深さの関係を前記の範囲内にすることで、検知相電極10233を中心とした両隣の溝部の中心深さが近くなる。その結果、振動波モータの駆動時の検知相電極10233近傍での振動子1の振幅は、時計回りの駆動であっても反時計回りの駆動であっても同程度となり、駆動回路による振動波モータの駆動制御が容易となる。
(振動板の材質)
振動板101は、圧電素子102と一体となって曲げ振動の進行波を形成し、移動体2に振動を伝達するという目的から、弾性体であることが好ましい。また、振動板101は弾性体としての性質および加工性の観点から金属よりなることが好ましい。振動板101に使用可能な金属としては、アルミ、真鍮、Fe-Ni36%合金、ステンレス鋼を例示できる。このうち、本発明で用いる室温におけるヤング率が100GPa以上135GPa以下の圧電セラミックス1021と組み合わせて、高い回転速度を得られるのはステンレス鋼である。ここでいうステンレス鋼とは、鋼を50質量%以上、クロムを10.5質量%以上含有する合金を指している。ステンレス鋼の中でも、マルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、SUS420J2が振動板101の材質として最も好ましい。
(振動減衰部材の形状)
図8(a)、8(b)、8(c)は、駆動中のある時刻における振動波モータの様子を模式的に示す斜視図である。それぞれ振動減衰部材4と加圧部材5の形状が異なる場合の一実施形態であり、いずれの形態でも本発明の効果が得られる。また、図8(a)、8(b)、8(c)は、振動波モータを斜め方向から見た図で、実際には振動子と移動体と振動減衰部材は加圧部材によって加圧接触されているが、それぞれ円環の中心軸方向に分離して図示している。ただし、圧電素子の電極の図示は省略している。
振動板は7次の進行波以外の4次、5次、6次、8次の進行波を抑制するために、溝深さは4次、5次、6次、8次の正弦波を重ね合わせた曲線に沿って変化している。
図8の振動子1は、振動波モータを駆動させたときに発生する6次の不要定在波の振幅が最大となるときの変形状態を表しており、6次の不要定在波の腹の位置(腹部)を抑えるように振動減衰部材4が設けられている。ただし、振動子1の変形量については変形倍率を大きくして図示している。図8のように、定在波の腹部の一部または全部に相応する位置に振動減衰部材4を設けることにより、加圧部材5による加圧が不均等になり、振動減衰部材4の位置で局所的に大きくなる。
振動波モータを駆動させたときに発生する任意の次数の定在波の腹部の位置を確かめるには、まず振動子のみの状態で、該振動子の駆動相電極に小電圧の入力信号(例えば1V~10Vの交流電圧)を入力する。そして、例えばレーザードップラー振動計を用いて入力信号の周波数を変化させながら振動子の全ての溝部、もしくは突起部の振動振幅を測定することで確かめられる。振動振幅が極小となる点が節で、その位置を節部と言い、振動振幅が極大となる点が腹で、その位置を腹部と言う。
同じ次数の不要定在波が、複数の周波数で異なる場所に現れる場合は、それぞれの定在波の腹部を抑えるように振動減衰部材4を設ければ良い。振動振幅が大きい方の不要定在波を選択して、その腹部を抑えるように振動減衰部材4を設けても良い。
振動減衰部材を設ける場所は別の方法で決めても良い。
本発明の振動波モータは、振動子と移動体と振動減衰部材と加圧部材を備えた振動波モータであって、前記振動子は、円環状の振動板と、該振動板の第一の面上に設けられた円環状の圧電素子よりなる。前記振動板は前記第一の面とは反対側の第二の面で前記移動体と接触している。また、前記圧電素子は、円環状の一片の圧電セラミックスと、該圧電セラミックスの前記振動板と対向する面上に設けられた共通電極と、圧電セラミックスの共通電極が設けられた面とは反対側の面上に設けられた複数の電極とを有している。
円環状の振動板の第二の面は、放射状に伸びる溝部をX箇所に有し、前記X箇所の溝部の中心深さを円周方向に順にD1~DXとしたとき、D1~DXは1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化していることが好ましい。そして正弦波の腹部の一部または全部において前記加圧が局所的に大きくなっていることが好ましい。
図7(c)は6次の進行波を抑制するための溝深さを表しており、溝深さは数式(1)で表される正弦波曲線に沿うように変化している。
溝深さが極大となる部分を腹とする6次の不要定在波は、振動振幅が大きくなりやすい。そのため、その6次の不要定在波の腹部、すなわち図7(c)の正弦波の腹部に振動減衰部材を設けることで、不要定在波の腹部を抑えて振動振幅を小さくすることができる。これにより、異音の発生や出力低下を抑制できる。
図8(b)のように、一片の振動減衰部材において、振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の一部または全部において、振動減衰部材の厚みを厚くすることで、加圧が局所的に大きくなっているような構成にしても良い。
本発明の振動波モータにおいて、前記振動減衰部材と前記圧電素子の接触部は、複数の箇所に分離していることが好ましい。図8(a)のように、前記振動減衰部材と前記圧電素子の接触部は、複数の箇所に分離していることで、図8(b)の構成よりも、より局所的に加圧できるため不要定在波をより効果的に抑制できる。
振動減衰部材4は、図8(b)、8(c)の例では円環形状であるが、図8(a)のように分離した場合は、各々の振動減衰部材4は扇形となる。
上記構成例では、前記振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の全部において前記加圧が局所的に大きくなるようにした。ほかにも、前記振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の一部において前記加圧が局所的に大きくなるようにしても同様の効果は得られる。ただし、不要定在波をより効果的に抑制するためには、前記振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の全部において前記加圧が局所的に大きくなるようにするのが良い。
(加圧が局所的)
ここで、想定通りの場所で、局所的に加圧が大きくなっているかどうかは、例えば感圧紙やフィルム状の圧力センサーなどを振動子と振動減衰部材の間に入れて加圧部材により加圧することで確認できる。
(振動減衰部材の円周方向の長さ)
振動減衰部材を分離して設ける場合、それぞれの振動減衰部材の円周方向の長さは、出来るだけ短い方が好ましい。不要定在波をより効果的に抑制するためには、前記振動波モータを駆動させたときに発生するN次の定在波の波長をPNとすると、N次の定在波の腹部を中心にPN/4より短い方が好ましい。これにより、前記加圧がより局所的に大きくなるため、不要定在波がより抑制される。また、加工性の観点から、振動減衰部材の円周方向の長さの最短部は1mm以上であることが好ましい。
(振動減衰部材の厚みと幅)
振動減衰部材の厚みは、0.3mm以上で2mm以下であることが好ましい。
加圧部材が振動すると異音になるため、振動子の振動が振動減衰部材を通して加圧部材に伝わらないようにするために、0.3mm以上であることが好ましい。また、振動子の振動が移動体に伝わる際に、振動減衰部材の厚みが厚いと、振動波モータを駆動するための所望次数(例えば7次)の進行波を吸収し過ぎて、移動体に反力としての力を伝えにくくなる。好ましい振動減衰部材の厚みは2mm以下である。
また、振動減衰部材の内径は、圧電素子の内径より大きいことが好ましく、振動減衰部材の外径は圧電素子の外径以下であることが好ましい。振動減衰部材の外径が圧電素子より大きいと、振動減衰部材の外縁部が圧電素子の振動を阻害するおそれがある。
以上、振動減衰部材の内径と外径について述べたが、分離して設ける場合も同様で、内径は圧電素子の内径より大きく、外径は圧電素子の外径より小さい方が好ましい。
(加圧部材の形状)
本発明の振動波モータは、前記加圧部材が、前記定在波の腹部を加圧する箇所に凸部を有する構成をとることができる。
図8(c)は、加圧部材を構成する円環状の平らな板に凸部5021を設けている。凸部5021は、プレス加工などにより設けることができ、その位置は振動子の6次の不要定在波の腹部の全部である。加圧部材が、定在波の腹部を加圧する箇所に凸部5021を有することで、振動波モータを駆動させたときに発生する定在波(不要定在波)の腹部の一部または全部において前記加圧が局所的に大きくなる。不要定在波の腹部を抑えて、不要定在波の振動振幅を小さくできる。これにより、不要定在波の異音の発生や出力低下を抑制できる。
ここで、図8(c)では、一片の加圧部材を設けたが、図8(a)の振動減衰部材のように、分離した加圧部材を用いて、振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の一部または全部において加圧部材を設けてもよい。そのように構成することで、前記加圧が局所的に大きくなるようにしても良い。また凸部は、局所的に加圧できる構造であれば良く、三角状に盛り上がった形状や球状に盛り上がった形状でも良い。
(加圧部材の凸部の円周方向の長さ、厚み、幅)
加圧部材に凸部5021を設ける場合、それぞれの加圧部材の円周方向の長さは、出来るだけ短い方が好ましい。不要定在波をより効果的に抑制するためには、前記振動波モータを駆動させたときに発生するN次の定在波の波長をPNとすると、N次の定在波の腹部を中心にPN/4より短い方が好ましい。これにより、前記加圧がより局所的に大きくなるため、不要定在波がより抑制される。また、加工性の観点から、加圧部材の凸部5021の円周方向の長さの最短部は1mm以上であることが好ましい。
また、加圧部材の厚みは、1mm以上、10mm以下であることが好ましい。加圧部材の厚みが1mm以上であると、例えばプレス加工などによる加工が容易となる。加圧部材の厚みが10mmを超えると振動波モータが大型化するため、例えば小型の光学機器などに適用しにくくなる。
また、加圧部材の内径は、振動減衰部材の内径とほぼ同じにすることが好ましい。加圧部材の内径を振動減衰部材の内径とほぼ同じにすることで、加圧部材を振動減衰部材に隣接して設けるときの位置合わせが容易になる。
尚、図8(a)―(c)では、本発明の実施形態の一例として、6次の不要定在波を抑制する方法について説明した。その他の次数の不要定在波を抑制する方法も同様の方法によって実施すれば良く、抑制したい次数の不要定在波の一部または全部において加圧部材による加圧が局所的に大きくなるようにすれば良い。
さらに、本説明では、7次の曲げ振動波を利用する振動波モータを例にとってきたが、本発明は、別の次数の曲げ振動波を利用する場合にも適用可能である。例えば、6次の曲げ振動波を利用する振動波モータにおいて、6次以外の不要定在波を抑制しても良い。抑制したい不要定在波の一部または全部において加圧部材による加圧が局所的に大きくなるようにすれば良い。同様に8次、11次等の任意の曲げ振動波を利用する振動波モータにも本発明を適用できる。
(駆動中に位置関係を維持する)
上記構成により不要定在波を抑制できるが、前記円環状の振動板と、前記振動減衰部材と、前記加圧部材の3つの部材の円周方向の配置が駆動中に変化すると不要定在波を抑制する効果が小さくなる。そのため、本発明の振動波モータは、前記円環状の振動板と、前記振動減衰部材と、前記加圧部材の3つの部材の円周方向の配置が互いに固定されていることが好ましい。固定するためには、互いに接着材を用いて接着しても良いし、部材間にすべり止めの部材を挟んでも良い。また、その他の部品にそれぞれ接着剤などで固定しても良い。
(圧電セラミックスはチタン酸バリウム系材料)
圧電セラミックス1021の組成は、鉛の含有量が1000ppm未満(すなわち非鉛系)であれば、特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム、チタン酸ビスマスナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、ニオブ酸チタン酸ナトリウムバリウム、鉄酸ビスマスなどの組成の圧電セラミックスや、これらの組成を主成分とした圧電セラミックスを本発明の振動波モータおよび振動子1に用いることができる。
本発明の振動波モータを構成する前記圧電セラミックスは、チタン酸バリウム系材料よりなることが好ましい。
チタン酸バリウム系材料とは、主相がペロブスカイト構造であって、チタンとバリウムを含む材料を指す。チタン酸バリウム系材料とすることで、振動波モータを駆動する際に必要な高い圧電定数が得られる。
より好ましいチタン酸バリウム系材料は、一般式(1)
(Ba1-xCax)α(Ti1-yZry)O3 (1)
ただし、
0.986≦α≦1.100、
0.02≦x≦0.30、
0.020≦y≦0.095
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、該圧電セラミックスに含まれる主成分以外の金属成分の含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で1.25重量部以下である。
特に、前記金属酸化物にMnが含有されており、該Mnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることが好ましい。
前記一般式(1)で表わされる金属酸化物は、Aサイトに位置する金属元素がBaとCa、Bサイトに位置する金属元素がTiとZrであることを意味する。ただし、一部のBaとCaがBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTiとZrがAサイトに位置してもよい。
一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、モル比が若干ずれていても、ペロブスカイト構造を主相としていれば良い。
金属酸化物がペロブスカイト構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
一般式(1)におけるAサイトにおけるCaのモル比を示すxは、0.02≦x≦0.30の範囲である。ペロブスカイト型のチタン酸バリウムのBaの一部を前記範囲でCaに置換すると斜方晶と正方晶との相転移温度が低温側にシフトするので、振動波モータおよび振動子1の駆動温度範囲において安定した圧電振動を得ることができる。しかし、xが0.30より大きいと、圧電セラミックスの圧電定数が十分ではなくなり、振動波モータの回転速度が不足するおそれがある。他方、xが0.02より小さいと誘電損失(tanδ)が増加するおそれがある。誘電損失が増えると、圧電素子102に電圧を印加してモータ駆動させた際に発生する発熱が増え、モータ駆動効率が低下するおそれがある。
一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すyは、0.020≦y≦0.095の範囲である。yが0.020より小さいと、圧電セラミックスの圧電定数が十分ではなくなり、振動波モータの回転速度が不足するおそれがある。一方で、yが0.095より大きいと圧電性の天井温度である脱分極温度が、脱分極温度(Td)が80℃未満と低くなり、高温において圧電セラミックス1021の圧電特性が消失するおそれがある。
本明細書において、脱分極温度(Tdともあらわす)とは、分極処理をして十分時間が経過した後に、室温からある温度Td(℃)まで上げ、再度室温まで下げたときに圧電定数が温度を上げる前の圧電定数に比べて減少している温度を指す。本明細書においては温度を上げる前の圧電定数の90%未満となる温度を脱分極温度Tdと呼ぶ。
また、一般式(1)において、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すαは0.986≦α≦1.100の範囲であることが好ましい。αが0.986より小さいと圧電セラミックス1021を構成する結晶粒に異常粒成長が生じ易くなり、圧電セラミックス1021の機械的強度が低下する。一方で、αが1.100より大きくなると圧電セラミックス1021の粒成長に必要な温度が高くなり過ぎ、一般的な焼成炉で焼結ができなくなる。ここで、「焼結ができない」とは密度が充分な値にならないことや、圧電セラミックス内にポアや欠陥が多数存在している状態を指す。
圧電セラミックス1021の組成を測定する手段は特に限定されない。手段としては、X線蛍光分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。いずれの測定手段を用いても、圧電セラミックス1021に含まれる各元素の重量比および組成比を算出できる。
圧電セラミックス1021は、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記金属酸化物にMnが含有されている。そのMnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることが好ましい。
前記範囲のMnを含有すると、絶縁性や機械的品質係数Qmが向上する。ここで、機械的品質係数Qmとは、圧電素子を振動子として評価した際に振動による弾性損失を表す係数であり、機械的品質係数の大きさは、インピーダンス測定における共振曲線の鋭さとして観察される。つまり圧電素子の共振の鋭さを表す定数である。機械的品質係数Qmが大きいと、共振周波数付近で圧電素子の歪量がより大きくなり、効果的に圧電素子を振動させることができる。
絶縁性と機械的品質係数の向上は、TiやZrと価数が異なるMnによって欠陥双極子が導入されて内部電界が発生することに由来すると考えられる。内部電界が存在すると、圧電素子102に電圧を印加し駆動させた際に、圧電素子102の信頼性が確保できる。
ここで、Mnの含有量を示す金属換算とは、圧電セラミックス1021から蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などにより測定されたBa、Ca、Ti、ZrおよびMnの各金属の含有量から算出される。すなわち、それらの含有量から一般式(1)で表わされる金属酸化物を構成する元素を酸化物換算し、その総重量を100としたときに対するMn重量との比によって求められた値を表す。
Mnの含有量が0.02重量部未満であると、圧電素子102の駆動に必要な分極処理の効果が充分でなくなるおそれがある。一方、Mnの含有量が0.40重量部より大きくなると、圧電特性が充分でなくなることや、圧電特性に寄与しない六方晶構造の結晶が発現するおそれがある。
Mnは金属Mnに限らず、Mn成分として圧電材料に含まれていれば良く、その含有の形態は問わない。例えば、Bサイトに固溶していても良いし、粒界に含まれていてもかまわない。または、金属、イオン、酸化物、金属塩、錯体などの形態でMn成分が圧電セラミックス1021に含まれていても良い。より好ましい含有の形態は、絶縁性や焼結容易性という観点からBサイトに固溶することである。Bサイトに固溶された場合、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTi、ZrおよびMnのモル量の比をA2/B2とすると、好ましいA2/B2の範囲は0.993≦A2/B2≦0.998である。
また、圧電セラミックス1021は、一般式(1)に示す金属酸化物100重量部に対して、Biを金属換算で0.042重量部以上0.850重量部以下含有してもよい。前記金属酸化物に対するBiの含有量は、例えばICP発光分光分析によって測定可能である。Biはセラミックス状の圧電材料の粒界にあっても良いし、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3のペロブスカイト型構造中に固溶していても良い。Biが粒界に存在すると、粒子間の摩擦が低減され機械的品質係数が増加する。他方、Biがペロブスカイト構造を形成する固溶体に取り込まれると、相転移温度が低温化することから圧電定数の温度依存性が小さくなり、機械的品質係数がさらに向上する。Biが固溶体に取り込まれた時の位置がAサイトであると、前記Mnとの電荷バランスが良くなるため好ましい。
圧電セラミックス1021は、前記一般式(1)に含まれる元素およびMn、Bi以外の成分(以下、副成分)を特性が変動しない範囲で含んでいてもよい。副成分は、一般式(1)で表現される金属酸化物100重量部に対してその合計が1.2重量部より少ないことが好ましい。副成分が1.2重量部を超えると、圧電セラミックス1021の圧電特性や絶縁特性が低下するおそれがある。また、副成分のうち前記Ba、Ca、Ti、Zr、Mn以外の金属元素の含有量は、圧電セラミックス100重量部に対して酸化物換算で1.0重量部以下、または金属換算で0.9重量部以下であることが好ましい。本発明では、金属元素といったときはSi、Ge、Sbのような半金属元素も含む。Ba、Ca、Ti、Zr、Mn以外の金属元素の含有量が、圧電セラミックス100重量部に対して酸化物換算で1.0重量部、または金属換算で0.9重量部を超えると、圧電セラミックス1021の圧電特性や絶縁特性が著しく低下するおそれがある。
ここで、BaおよびCaの市販原料に不可避成分として含まれる程度のSrやMgは、本発明の圧電材料に含んでいてもよい。同じく、Tiの市販原料に不可避成分として含まれる程度のNbと、Zrの市販原料に不可避成分として含まれる程度のHfは、本発明の圧電セラミックス1021に含んでいてもよい。
副成分の重量部を測定する手段は特に限定されない。手段としては、蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。
(駆動制御システム)
次に、本発明の駆動制御システムを説明する。図9は、本発明の駆動制御システムの一実施形態を示す模式図である。駆動制御システムは、本発明の振動波モータと、前記振動波モータに電気的に接続される駆動回路を少なくとも有する。駆動回路は、本発明の振動波モータに7次の曲げ振動波を発生させ、回転駆動させるための電気信号を発する信号発生機構を内蔵する。
駆動回路は、周波数が同じで、かつ、時間的位相差がπ/2の交番電圧を振動波モータの各駆動相電極10231(A相およびB相)に同時に印加する。その結果、A相およびB相で発生する定在波が合成されて、振動板101の第2の面に周方向に進行する7次の曲げ振動波(波長λ)が発生する。
このとき、振動板101のX箇所の突起部1011上の各点は楕円運動をするため、移動体2は振動板101から円周方向の摩擦力を受けて回転する。7次の曲げ振動波が発生すると、検知相電極10233は該電極と接する部分の圧電セラミックス1021の振動の振幅に応じた検知信号を発生し、配線を通じて該信号を駆動回路に出力する。駆動回路は、前記検知信号と、駆動相電極10231に入力した駆動信号の位相を比較して、共振状態からのずれを把握する。この情報から駆動相電極10231に入力する駆動信号の周波数を再度決定することにより、振動波モータのフィードバック制御が可能となる。
(光学機器)
次に、本発明の光学機器について説明する。本発明の光学機器は、本発明の振動波モータを用いた駆動制御システムと前期振動波モータに支持された光学部材を有することを特徴とする。
図10(a)及び10(b)は、本発明の光学機器の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の主要断面図である。また、図11は本発明の光学機器の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の分解斜視図である。カメラとの着脱マウント711には、固定筒712と、直進案内筒713と、前群レンズ701を保持する前群鏡筒714とが固定されている。これらは交換レンズ鏡筒の固定部材である。
直進案内筒713には、フォーカスレンズ702用の光軸方向の直進案内溝713aが形成されている。フォーカスレンズ702を保持した後群鏡筒716には、径方向外方に突出するカムローラ717a、717bが軸ビス718により固定されており、このカムローラ717aがこの直進案内溝713aに嵌まっている。
直進案内筒713の内周には、カム環715が回動自在に嵌まっている。直進案内筒713とカム環715とは、カム環715に固定されたローラ719が、直進案内筒713の周溝713bに嵌まることで、光軸方向への相対移動が規制されている。このカム環715には、フォーカスレンズ702用のカム溝715aが形成されていて、カム溝715aには、前述のカムローラ717bが同時に嵌まっている。
固定筒712の外周側にはボールレース727により固定筒712に対して定位置回転可能に保持された回転伝達環720が配置されている。回転伝達環720には、回転伝達環720から放射状に延びた軸720fにコロ722が回転自由に保持されており、このコロ722の径大部722aがマニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bと接触している。またコロ722の径小部722bは接合部材729と接触している。コロ722は回転伝達環720の外周に等間隔に6つ配置されており、それぞれのコロが上記の関係で構成されている。
マニュアルフォーカス環724の内径部には低摩擦シート(ワッシャ部材)733が配置され、この低摩擦シートが固定筒712のマウント側端面712aとマニュアルフォーカス環724の前側端面724aとの間に挟持されている。また、低摩擦シート733の外径面はリング状とされ、マニュアルフォーカス環724の内径724cと径嵌合しており、更にマニュアルフォーカス環724の内径724cは固定筒712の外径部712bと径嵌合している。低摩擦シート733は、マニュアルフォーカス環724が固定筒712に対して光軸周りに相対回転する構成の回転環機構における摩擦を軽減する役割を果たす。
なお、コロ722の径大部722aとマニュアルフォーカス環のマウント側端面724bとは、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、加圧力が付与された状態で接触している。また同じく、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、コロ722の径小部722bと接合部材729の間も適度な加圧力が付与された状態で接触している。波ワッシャ726は、固定筒712に対してバヨネット結合したワッシャ732によりマウント方向への移動を規制されており、波ワッシャ726が発生するバネ力(付勢力)は、振動波モータ725、更にはコロ722に伝わり、マニュアルフォーカス環724が固定筒712のマウント側端面712aを押し付け力ともなる。つまり、マニュアルフォーカス環724は、低摩擦シート733を介して固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられた状態で組み込まれている。
従って、不図示の信号発生機構を内蔵した駆動回路により振動波モータ725が固定筒712に対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722の径小部722bと摩擦接触しているため、コロ722が軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する(オートフォーカス動作)。
また、不図示のマニュアル操作入力部からマニュアルフォーカス環724に光軸周りの回転力が与えられると以下のように作用する。すなわち、マニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bがコロ722の径大部722aと加圧接触しているため、摩擦力によりコロ722が軸720f周りに回転する。コロ722の径大部722aが軸720f周りに回転すると、回転伝達環720が光軸周りに回転する。このとき振動波モータ725は、移動体725cと振動子725bの摩擦保持力により回転しないようになっている(マニュアルフォーカス動作)。
回転伝達環720には、フォーカスキー728が2つ、互いに対向する位置に取り付けられており、フォーカスキー728がカム環715の先端に設けられた切り欠き部715bと嵌合している。従って、オートフォーカス動作或いはマニュアルフォーカス動作が行われて、回転伝達環720が光軸周りに回転させられると、その回転力がフォーカスキー728を介してカム環715に伝達される。カム環が光軸周りに回転させられると、カムローラ717aと直進案内溝713aにより回転規制された後群鏡筒716が、カムローラ717bによってカム環715のカム溝715aに沿って進退する。これにより、フォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。すなわち、光学部材であるフォーカスレンズ702は、振動波モータ725との力学的な接続によって位置が変化する。
上においては、本発明の光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、本発明は、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ等、カメラの種類を問わず、振動波モータを備えた多様な光学機器に適用することができる。
(電子機器)
上記の振動波モータを備えた電子機器も提供可能であり、さまざまな用途に利用可能である。
次に、実施例を挙げて、本発明の振動波モータ、駆動制御システムおよび光学機器を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
(円環状の一片の圧電セラミックスの製造例)
鉛の含有量が1000ppm未満である円環状の一片の圧電セラミックスをチタン酸バリウム系材料として、以下のように製造した。
前記一般式(1)において、x=0.14、y=0.06、α=1.00の組成に相当する
(Ba0.86Ca0.14)1.00(Ti0.94Zr0.06)O3
へのMnとBiの添加を意図して、相当する原料粉を以下のように秤量した。
原料粉としていずれも平均粒子径が300nm以下でペロブスカイト型構造を有するチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウムを用いて、Ba、Ca、Ti、Zrが
(Ba0.86Ca0.14)1.00(Ti0.94Zr0.06)O3
の組成になるように秤量した。AサイトとBサイトのモル比を示すxを調整するために炭酸バリウムおよび酸化チタンを用いた。前記組成
(Ba0.86Ca0.14)1.00(Ti0.94Zr0.06)O3
の100重量部に対して、Mnの含有量が金属換算で0.14重量部となるように四酸化三マンガンを加えた。同様にBiの含有量が金属換算で0.18重量部となるように酸化ビスマスを加えた。
これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合して混合粉を得た。得られた混合粉を造粒するために、混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、スプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させ、造粒粉を得た。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。円盤状の成形に用いた金型の大きさは、目的物である円盤状の圧電セラミックスの外径、内径、厚みに対して、それぞれ2mm、2mm、0.5mmのマージンを持たせた。
得られた成形体を電気炉に入れ、1340℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。次に、焼結体を所望の外径、内径、厚みを有する円環形状にそれぞれ研削加工して、外径76.9mm、内径67.2mm、厚み0.5mmの円環状の一片の圧電セラミックスを得た。
ICP発光分光分析により圧電セラミックスの組成を評価した。その結果、上記方法によって製造した圧電セラミックスの鉛の含有量は、いずれも1ppm未満であった。また、ICP発光分光分析とX線回折測定の結果を合わせると、圧電セラミックスの組成は
(Ba0.86Ca0.14)1.00(Ti0.94Zr0.06)O3
の組成で表すことができるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記主成分100重量部に対してMnを0.14重量部、Biを0.18重量部含有した組成であることが分かった。
(振動板の製造例)
図12(a)及び12(b)は、本発明の振動波モータおよび振動子に用いられる円環状の振動板の一例を示す概略図である。
本発明に使用する振動板を作製するために、図12(a)に示すような円環状の金属板101aを準備した。金属板101aは、JIS規格の磁性ステレンス鋼SUS420J2により形成されている。SUS420J2はマルテンサイト系のステンレス鋼であり、鋼を70質量%以上、クロムを12から14質量%含有する合金である。
金属板101aの外径、内径および厚みは、外径2Rが77.0mm、内径が67.1mm、厚みが5.0mmの金属板101aとした。
次に、円環状の金属板101aの片方の面(第二の面)に、放射状に90箇所(X=90)の溝部1012を機械的に削って形成した(溝切り)。各溝部1012の壁面は溝切りをしていない振動板101の第一の面から見て垂直となるようにした。各溝部1012の溝底部は図5(c)に示すような中心が最も深い傾斜形状となった。溝切り後の金属板101aにバレル処理、ラップ研磨、無電解ニッケルメッキ処理を施すことで本発明の振動子1に用いる振動板101とした。
振動板101の溝部1012は第二の面側から見て、1.0mm幅の直方体状に形成したので、突起部1011は円環の外径側で幅が広くなる扇形状となった。
振動板101の90箇所の溝部1012の中心深さD1からD90は、図6(f)に示す深さになるようにした。すなわち、D1からD90は4つの正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化している。
また、D1からD45の深さ変動とD46からD90の深さ変動は表1に示す通りであった。このような構成にすることで7次以外の不要進行波を抑制できる。
Figure 0007134815000001
(振動子の製造例)
図13(a)-13(d)は、本発明の振動波モータに用いられる振動子の製造方法の一例を示す概略工程図である。
前記製造例に示した圧電セラミックスと、本発明の振動板とを掛け合わせて振動子を製造した。
まず、図13(a)に示す円環状の圧電セラミックス1021に、銀ペーストのスクリーン印刷によって、一方の面には図13(c)に示すように共通電極1022を形成する。もう一方の面には図13(b)に示すように、12箇所の分極用電極102311、3箇所の非駆動相電極10232、および1箇所の検知相電極10233を形成した。この時、図13(b)に示す各電極の隣り合う電極間距離は0.5mmとした。
次に、共通電極1022と、分極用電極102311、非駆動相電極10232、および検知相電極10233の間に、圧電素子の伸縮極性が図4(a)のようになるように、直流電源を用いて空気中で分極処理を行った。電圧は1.0kV/mmの電界がかかる大きさとし、温度および電圧印加時間はそれぞれ100℃、60分とした。また、電圧は降温中40℃になるまで印加した。
次に、図13(d)に示すように、分極用電極102311を繋ぐため、銀ペーストによってつなぎ電極102312を形成し、両種の電極を合わせて2箇所の駆動相電極10231とすることで圧電素子102を得た。銀ペーストの乾燥は圧電セラミックス1021の脱分極温度より十分低い温度で行った。駆動相電極10231の抵抗値を回路計(電気テスター)で測定した。テスターの一方は検知相電極10233に最も近い分極用電極102311の部分の表面に、もう一方は駆動相電極10231のうち円環形状の周方向に最も離れた分極用電極102311の部分の表面に接触させた。その結果、駆動相電極10231の抵抗値は0.6Ωであった。
次に、図13(e)に示すように、圧電素子102の2箇所の駆動相電極10231と2箇所の非駆動相電極10232と検知相電極10233とをまたぐ領域に着目する。これらの領域に、湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて室温プロセスでフレキシブルプリント基板3を圧着した。フレキシブルプリント基板3は、前記電極群への給電および検知信号の取り出しを目的に設けられる部材で、電気配線301、絶縁性のベースフィルム302、外部の駆動回路と接続するためのコネクタ部(不図示)を有する。
次に、図1(a)に示すように、振動板101の第一の面に圧電素子102を湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて室温プロセスで圧着した。振動板101と3箇所の非駆動相電極10232とを銀ペーストからなる短絡配線(不図示)で接続し、振動子1を作製した。銀ペーストの乾燥は圧電セラミックス1021の脱分極温度より十分低い温度で行った。
(振動子の不要進行波の抑制確認と不要定在波の位置の確認)
次に、上記の製造実施例で得た振動子1に対し、周波数を変化させながら交番電圧を印加し、インピーダンスアナライザとレーザードップラー振動計を用いて、共振周波数と発生する曲げ振動波の波数と位置を評価した。
共振周波数の測定は、駆動相電極10231のA相にて実施した。まず、A相電極に交番電圧を印加する目的で、フレキシブルプリント基板3のコネクタ部を利用してB相電極と検知相電極10233を非駆動相電極10232と短絡させて、その短絡部を評価用の外部電源のグランド側と配線接続した。
A相電極に周波数可変で振幅が10Vの交番電圧を印加して室温でのインピーダンスを測定した。周波数は高周波側、例えば50kHzから、低周波側、例えば1kHzまで変化させた。
図14は、前記製造例に示す圧電セラミックスと振動板を用いた振動子1についての室温でのインピーダンス測定結果である。図14には複数の次数の定在波のピークが出ており、それぞれの次数で、下向きのピーク(共振)と上向きのピーク(***振)が近い周波数で組みとなって現れている。
ここで、下向きのピークの極小値を共振周波数とする。各々のピークに対応する波数と位置は、振動板の全ての突起部の振動振幅を実際にレーザードップラー振動計で測定して特定した。交番電圧の印加方法は、インピーダンスを測定するときと同じとした。
その結果、図14のインピーダンス曲線に見られる複数の下向きのピークは、共振による4次、5次、6次、7次および8次の定在波の発生に対応するピークであった。
図14を見ると、溝部の中心深さを本発明に従って変化させた振動板を用いた本発明の振動子では、所望する7次の共振周波数は1つしか現れず、不要である4次、5次、6次および8次の共振周波数は2つの異なる周波数に現れた。すなわち、所望の7次の進行波の発生に対して、不要な進行波の発生が抑制されていることが分かった。
ここで、振動子1においては、図14に示すように、4次、5次、6次および8次の定在波となる共振周波数は、2つの異なる周波数に現れるため、各次数の定在波で、振動振幅が大きくなる方の定在波の位置を確認した。
その結果、4次の不要定在波は8.4kHzで発生し、その腹部の位置は、図7(a)の溝の深い部分とほぼ一致した。また、5次の不要定在波は13.4kHzで発生し、その腹部は、図7(b)の溝の深い部分とほぼ一致した。また、6次の不要定在波は19.4kHzで発生し、その腹部は、図7(c)の溝の深い部分とほぼ一致した。また、8次の不要定在波は33.8kHzで発生し、その腹部は、図7(d)の溝の深い部分とほぼ一致した。
(振動減衰部材の製造例1)
本発明に使用する振動減衰部材を作製するために、円環状のフェルト(東レ(株)製、製品名:GSフェルト)を準備した。
振動減衰部材の外径、内径および厚みは、外径が71.2mm、内径が67.2mm、厚みが1mmとした。
次に、準備した円環状の振動減衰部材において、6次の不要定在波を抑制することを目的として、図7(c)の溝の深い部分に相当する位置を中心に、円周方向に6次の不要定在波の波長P6の1/8の長さとなるように、放射状に切断した。
図15(c)は、図7(c)の溝の深い部分に相当する位置を中心に、円周方向に6次の定在波の波長P6の1/8の長さとなる位置を網掛けしたものである。
このグラフ上の網掛けの位置は、振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部およびその近傍に相当する。
上記方法で作成した振動減衰部材G1の一つ一つは、円環の外径側で幅が広くなる扇形状となった。
作製した振動減衰部材G1を、振動子1の圧電素子側の面に、図15(c)の網掛けの位置となるように、湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて接着した。このように振動減衰部材G1を配することによって、不要定在波の腹に相当する部位を加圧することができ、効果的に不要定在波を抑制することができる。
(振動減衰部材の製造例2)
次に、振動減衰部材G1と同様のフェルトと製造方法によって、別の振動減衰部材G2を作製した。ただし、振動減衰部材G2において、図7(a)、7(b)、7(c)、7(d)の溝の深い部分に相当する位置を中心に、それぞれ円周方向に4次、5次、6次、8次の定在波の波長の1/8の長さとなるように放射状に切断した。図15(a)、15(b)、15(c)、15(d)にそれぞれの振動減衰部材の位置を網掛けで示した。このグラフ上の網掛けの位置は、振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部およびその近傍に相当する。
これらの網掛け位置を重ね合わせた位置に振動減衰部材が設置されるように、振動減衰部材を切断した。図16に振動減衰部材の位置を網掛けで示した。図16の実線は、図6(e)と同じもので、振動子1の溝深さを表す。このように、振動減衰部材G2を作製した。
作製した振動減衰部材G2を、振動子1の圧電素子側の面に、図16の網掛けの位置となるように、湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて接着した。このように振動減衰部材G2を配することによって、不要定在波の腹に相当する部位を加圧することができ、効果的に不要定在波を抑制することができる。
(従来の振動減衰部材の製造例)
また別に、本発明の振動波モータおよび比較用の振動波モータに用いるために、振動減衰部材G1と同様のフェルトと製造方法によって、振動減衰部材RG1を作製した。ただし、切断はせずに一片の円環状のままとした。
(加圧部材の製造例1)
本発明の振動波モータに用いる加圧部材を作製するために、円環状のSUS板を2つと、その間に挟むように波ワッシャを準備した。円環状のSUS板の外径、内径および厚みは、外径が71.2mm、内径が67.2mm、厚みが1mmとした。また、円環状の板バネの外径は71.2mm、内径は67.2mmとし、10Nでたわみ量が0.5mmの硬さのものを用意した。
次に、上記円環状のSUS板一枚に対して、6次の不要定在波を抑制することを目的として、図15(c)の網掛けの位置が高さ1mmの凸部5021となるようにプレス加工を行った。
次に、プレス加工を行ったSUS板、円環状の板バネ、円環状のSUS板の順に重ねて、加圧部材K1を得た。
作製した加圧部材K1の凸部が、前記振動子の図15(c)に示す定在波の腹部の位置になるように、前記振動減衰部材RG1の片面に湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて接着した。
(加圧部材の製造例2)
次に、加圧部材K1と同様の部材と製造方法によって、加圧部材K2を作製した。ただし、加圧部材K2において、4次、5次、6次、8次の不要定在波を抑制することを目的として、図16の網掛けの位置が高さ1mmの凸部となるようにプレス加工を行った。作製した加圧部材K2を、振動子1の圧電素子側の面に、図16の網掛けの位置となるように、湿気硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いて接着した。
(従来の加圧部材の製造例)
また別に、本発明の振動波モータおよび比較用の振動波モータに用いるために、加圧部材K1と同様の部材と製造方法によって、加圧部材RK1を作製した。ただし、プレス加工はせず、SUS板は平板のままで凸部は設けなかった。
(移動体の製造例)
金属板101aの外径、内径および厚みは、外径2Rが77.0mm、内径が67.1mm、厚みが5.0mmの金属板101aとした。
本発明の振動波モータおよび比較用の振動波モータに用いるために外径が77.0mm、内径が67.1mm、厚み5mmの円環状の移動体2を作製した。
移動体の材質にはアルミニウム金属を用いて、ブロック削り出しによって形状を整えた後、表面をアルマイト処理した。
(振動波モータの製造実施例および比較例)
図1(a)および図2に示すように、移動体、振動子1、振動減衰部材、加圧部材の順に重ねて、振動子1の第二の面に移動体2を加圧部材により加圧接触させて本発明の振動波モータP、Q、R、Sを作製した。同様に、比較用の振動波モータTを作製した。いすれの振動波モータにおいても、加圧力は1.5kgfとした。
本発明の振動波モータと比較用の振動波モータに用いた振動減衰部材G1、G2、RG1と加圧部材K1、K2、RK1の組み合わせを表2に示す。
Figure 0007134815000002
(駆動制御システムの製造実施例および比較例)
次に、フレキシブルプリント基板3のコネクタ部を利用して、本発明の振動波モータにおける駆動相電極10231、共通電極1022と短絡している非駆動相電極10232および検知相電極10233と外部の駆動回路を電気的に接続した。このように図9のような構成の本発明の駆動制御システムを作製した。外部の駆動回路は、振動波モータを駆動するための制御機構および制御機構の指示によって7波の曲げ振動波を発生させるための交番電圧を出力する信号発生機構を有している。
同様に、比較用の駆動制御システムを作製し、本発明の駆動制御システムおよび比較用の駆動制御システムの駆動試験を実施した。
移動体2に荷重を掛けて、150gf・cm(約1.5N・cm)の負荷とし、振幅が70Vの交番電圧をA相とB相に印加した。周波数は27kHzで固定し、A相とB相にはいずれの駆動制御システムにおいても時間的位相差π/2で印加されるようにした。
そのとき、検知相電極から出力される電圧信号をFFT解析した結果を表3に示す。振動波モータP、Q、R、S、Tそれぞれにおいて、4波、5波、6波、8波の不要定在波の周波数における電圧値が、振動波モータTのときに出力される電圧信号に対する変化率としてパーセントで表した。ただし、1ケタ目は四捨五入した。また、このときに駆動制御システムから発生する異音も測定した。異音の測定は、一般的な周波数分析器(例えばリオン株式会社のSA-02M)に外部マイクを接続して記録したデータを解析することで音圧レベルを求めることができる。具体的には、人の可聴域である20Hzから20kHzの周波数範囲において、普通騒音計の日本工業規格(JIS C 1502-1990)に定められているA特性補正を施した音圧レベル(A特性音圧レベル)を測定した。ここでA特性音圧レベルとは、前記の日本工業規格で定められたもので、物理的に同じ音圧であっても周波数によって人間が感じる音の大きさが異なるという、人間の聴覚特性を考慮した周波数重み付け特性のことである。本測定においては、測定用のマイクを振動子から2cm離れた位置に設置した。測定した結果を表3に示す。
Figure 0007134815000003
本発明の振動波モータを用いた駆動制御システムにおける駆動時の異音は、比較用の振動波モータを用いた駆動制御システムに比べて抑制されていた。
(光学機器の製造実施例)
本発明の振動波モータP、Q、R、Sを用いた駆動制御システムにより、図10(a)及び10(b)および図11に示される光学機器を作製し、交番電圧の印加に応じたオートフォーカス動作を確認した。いずれの光学機器も駆動時の異音は発生しなかった。
本発明によれば、例えば7次の曲げ振動波によって移動体を回転させる振動波モータであって、十分な駆動速度を発揮し、異音の発生を抑制する振動波モータ、ならびにそれを用いた駆動制御システムおよび光学機器が提供される。環境安全性の高い非鉛系圧電セラミックスを用いることも可能である。
1 振動子
101 振動板
101a 金属板
1011 突起部
1012 溝部
102 圧電素子
1021 圧電セラミックス
1022 共通電極
10231 駆動相電極
102311 分極用電極
102312 つなぎ電極
10232 非駆動相電極
10233 検知相電極
2 移動体
3 フレキシブルプリント基板
301 電気配線
302 絶縁体(ベースフィルム)
4 振動減衰部材
5 加圧部材
501 バネ
502 平板
5021 凸部
701 前群レンズ
702 後群レンズ(フォーカスレンズ)
711 着脱マウント
712 固定筒
713 直進案内筒
714 前群鏡筒
715 カム環
716 後群鏡筒
717 カムローラ
718 軸ビス
719 ローラ
720 回転伝達環
722 コロ
724 マニュアルフォーカス環
725 振動波モータ
726 波ワッシャ
727 ボールレース
728 フォーカスキー
729 接合部材
732 ワッシャ
733 低摩擦シート

Claims (12)

  1. 移動体と、
    円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
    振動減衰部材と、
    が順に設けられた振動波モータであって、
    前記振動板は前記移動体側に、
    前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、
    前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さであり、
    前記振動減衰部材によって不均等に加圧され、前記振動波モータを駆動させたときに発生する定在波の腹部の一部または全部において前記定在波の腹部以外と比べ前記振動減衰部材によって強く加圧されていることを特徴とする振動波モータ。
  2. 移動体と、
    円環状の振動板と円環状の圧電素子を有する振動子と、
    振動減衰部材と、
    が順に設けられた振動波モータであって、
    前記振動板は前記移動体側に、
    前記円環状の振動板の中心から放射状に伸びる複数の溝部を有し、
    前記複数の溝部のうち少なくとも一つは異なる深さであり、
    前記振動板は前記移動体側に、放射状に伸びる溝部をX箇所に有し、前記X箇所の溝部の中心深さを円周方向に順にD1~DXとしたとき、D1~DXは1つ以上の正弦波を重ね合せた曲線に沿うように変化し、
    前記振動減衰部材によって不均等に加圧され、前記正弦波の腹部の一部または全部において前記加圧が局所的に大きくなっている請求項1に記載の振動波モータ。
  3. 前記振動板と、前記振動減衰部材は円周方向の配置が互いに固定されている請求項1または2に記載の振動波モータ。
  4. 前記圧電素子は、2つの駆動相電極と非駆動相電極と検知相電極を有する請求項1または2に記載の振動波モータ。
  5. 前記円環状の圧電素子の円周を7等分した1つの円弧の長さをλとして、前記2つの駆動相電極の円周方向の長さはそれぞれ3λであり、それらは円周方向にλ/4および3λ/4の長さを有する2つの間隔部により互いに円周方向に離隔され、前記非駆動相電極および前記検知相電極は前記2つの間隔部に設けられている請求項に記載の振動波モータ。
  6. 前記圧電素子に含まれる圧電材料の鉛の含有量が1000ppm未満である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動波モータ。
  7. 前記圧電材料がチタン酸バリウム系材料よりなる、請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動波モータ。
  8. 前記振動減衰部材と前記圧電素子の接触部は、複数の箇所に分離している請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動波モータ。
  9. さらに前記振動板を、前記振動減衰部材を介して前記移動体に加圧する加圧部材を有し、
    前記加圧部材は前記定在波の腹部と対応する箇所に凸部を有する請求項に記載の振動波モータ。
  10. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動波モータと、該振動波モータに電気的に接続される駆動回路とを有する駆動制御システム。
  11. 請求項10に記載の駆動制御システムと前記振動波モータに支持された光学部材を有する光学機器。
  12. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動波モータを備えた電子機器。
JP2018185422A 2017-11-06 2018-09-28 振動波モータ、駆動制御システム、光学機器および電子機器 Active JP7134815B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US16/174,898 US11258376B2 (en) 2017-11-06 2018-10-30 Vibration wave motor, drive control system, optical apparatus, and electronic apparatus

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017214156 2017-11-06
JP2017214156 2017-11-06

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019088183A JP2019088183A (ja) 2019-06-06
JP7134815B2 true JP7134815B2 (ja) 2022-09-12

Family

ID=66763543

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018185422A Active JP7134815B2 (ja) 2017-11-06 2018-09-28 振動波モータ、駆動制御システム、光学機器および電子機器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7134815B2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017108618A (ja) 2015-11-27 2017-06-15 キヤノン株式会社 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06153541A (ja) * 1992-11-06 1994-05-31 Olympus Optical Co Ltd 超音波モータ

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017108618A (ja) 2015-11-27 2017-06-15 キヤノン株式会社 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019088183A (ja) 2019-06-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7293429B2 (ja) 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子
JP7336556B2 (ja) 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子
JP7293430B2 (ja) 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子
JP7293428B2 (ja) 超音波モータ、駆動制御システム、光学機器および振動子
US10038394B2 (en) Vibration wave drive device, stator for a vibration wave motor, vibration wave motor, driving control system, optical apparatus, and manufacturing method of a vibration wave driving device
JP7302059B2 (ja) 振動子、振動波駆動装置、振動波モータおよび電子機器
JP7254631B2 (ja) 振動波モータ、駆動制御システムおよび光学機器
US11258376B2 (en) Vibration wave motor, drive control system, optical apparatus, and electronic apparatus
JP7134815B2 (ja) 振動波モータ、駆動制御システム、光学機器および電子機器
WO2024090171A1 (ja) 振動型アクチュエータ、光学機器および電子機器
WO2022230713A1 (ja) 振動型アクチュエータ、電子機器および光学機器
US20230378890A1 (en) Vibration-type actuator, electronic device, and optical device

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210608

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220412

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220524

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220624

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220831

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7134815

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151