JP7133917B2 - 表面性状と耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

表面性状と耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Al含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に係り、特に表面性状および耐硫化腐食性に優れるAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
近年、太陽光発電は、化石燃料に替わる主要なエネルギーの一つに発展しつつあり、太陽電池の技術開発が加速している。従来、太陽電池基板には、セラミックスまたはガラスが広く使用されてきた。
しかしながら、ガラスは脆くて重いため、ガラス表面に光吸収層を形成した太陽電池基板を大量生産することは容易でない。そこで、耐熱性に優れるステンレス鋼板を基板用材料に適用することが検討されてきた。例えば、汎用のフェライト系ステンレス鋼板SUS430(17Cr鋼)の平滑な表面にアルミナ、酸化シリコンまたは窒化シリコン膜をコーティングした絶縁性材料が使用されている。
ここで、太陽電池の中でも、CIS系薄膜等の化合物系太陽電池は、低コストと高効率とを両立した太陽電池として、将来の普及が期待されている。化合物系薄膜太陽電池は、例えば、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上にMo層からなる第一の電極層を製膜し、その上に光吸収層としてカルコパイライト型化合物層を製膜し、さらに第2の電極層を製膜したものである。なお、カルコパイライト型化合物とは、Cu-In-Ga-Se-S系(以下CIS系)に代表される5元系合金である。
例えば、CIS系薄膜系太陽電池の基板として、厚みが20~200μmのSUS430、SUS444(18Cr-2Mo)、SUS447J1(30Cr-2Mo)等のステンレス箔が使用されている。ステンレス箔表面に絶縁被膜を形成し、さらにその上に、Mo層からなる裏面電極を形成した後、被膜形成熱処理を施して、裏面電極上にCu(In1-xGax)Se2からなる光吸収層を形成する。
ここで、特許文献1および2には、化合物系薄膜太陽電池の製膜工程において、光吸収層のプリカーサーであるCu、In、Gaを基板にスパッタリング製膜後、CIS系化合物薄膜に転化するために、硫化水素(H2S)等の腐食性が高いガス雰囲気に曝される熱処理工程(硫化工程)が開示されている。特許文献1では、腐食性が高いガス雰囲気に曝される金属基板の裏面に、例えば、シリカをスパッタ法で製膜して耐腐食層を形成する方法が用いられている。
また、コーティングによらない方法として、特許文献1および2には、Alの含有量が高いフェライト系ステンレス基板を適用することにより、金属基板の裏面に、アルミナ層を形成する方法も開示されている。具体的には、特許文献2では、JFE18-3USR:3.4%のAlを含有したフェライト系ステンレス基板の適用が検討されている。
さらに、特許文献3、4には、コーティングなどによらず太陽電池の変換効率を高位に持続する絶縁性表面を形成することが可能であって、熱膨張係数の小さい太陽電池基板、およびそれに好適なステンレス鋼板について開示されている。鋼板の組成は質量%にて、Cr:9~25%、C:0.03%以下、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Al:0.005~5.0%、Si:0.05~4.0%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al:0.5%以上、及び/又は、Si:0.4%以上で、Cr+10Si+Mn+Al>24.5を満たす組成であること、あるいは、上記組成を満たして、かつ、表面にAl23を50%以上含む、またはAl23とSiO2との合計を50%以上含む酸化皮膜が形成されていることを特徴とする。
特許文献5には、成膜性が良好なステンレス表面として、十点平均粗さRzが0.3μm以下であり、かつ、高さ方向の特徴平均パラメータRskが0.7未満であることを特徴とする材料が開示されている。素材には、質量%で、C:0.01%、Si:0.52%、Mn:0.2%、Cr:18.2%、Nb:0.41%、Cu:0.48%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であるフェライト系ステンレス鋼板と、C:0.04%、Si:0.48%、Mn:0.2%、Cr:18.4%、Ni:8.2%、窒素N:0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であるオーステナイト系ステンレス鋼板が使用されている。
特許文献6には、一般に入手可能なステレンス基板を用いた素子特性が良好な化合物系薄膜太陽電池について開示している。ここで、基板として使用されるステンレスの表面は平均粗さRaが32nm以上かつ62nm以下であり、例えばSUS430のようなフェライト系ステンレス鋼板が用いられる。
特許文献7には、洗浄性に優れたフェライト系ステンレス鋼板および製造方法が開示されている。質量%にて、C:0.1質量%以下、Si:0.1~2.0質量%、Cr:10~32質量%であって、残部がFe及び不可避的不純物からなる調質圧延されたステンレス鋼板であって、鋼板表面の圧延方向と垂直な方向の算術平均粗さRaが0.03μm以下であり、鋼板表面において、深さ0.5μm以上且つ開口面積10μm2以上であるマイクロピット存在密度が0.01mm2当たり10.0個以下であり、且つ前記ピットの開口部面積率が1.0%以下で分布していることを特徴としている。
特許文献8には、洗浄性および防眩性に優れたステンレス冷延鋼板として、鋼板表面にダル模様を有するステンレス冷延鋼板が開示されている。鋼板表面における圧延方向と垂直な方向の算術平均粗さRaが0.2~1.2μmであり、鋼板表面におけるダル模様の面積率である転写率が15~70%、鋼板表面に形成された深さが0.5μm以上で開口面積が10μm2以上のマイクロピットは、鋼板表面における存在密度が0.01mm2当たり10.0個数以下で、かつ、鋼板表面における開口部面積率が1.0%以下であることを特徴とする。
特開2014-203936号公報 特開2014-127712号公報 特開2014-218727号公報 特開2014-218728号公報 特許第5837284号公報 特開2014-107510号公報 特開2013-208638号公報 特許第5918127号公報
将来、主要な太陽光発電としてCIS系化合物系薄膜太陽電池の普及を拡大していくためには、発電効率と生産性を向上させることが重要な課題である。そのためには、基板となるステンレス鋼板において、(1)表面性状を高めて製膜工程で生じる製膜層自体の損傷や回路の短絡を防止すること、(2)耐硫化腐食性を高めることによって耐腐食層を形成する煩雑な表面処理を省略することが課題として挙げられる。
特許文献1に開示された技術は、基板の裏面に硫化腐食に対する耐腐食層を形成する工程が含まれており、生産性そのものに課題がある。
さらに特許文献1および2では、基板にAlを含有したフェライト系ステンレス鋼板の使用により、耐腐食層を形成する工程を省略できるとしている。しかしながら、該当技術で開示されている3.4重量%または5.5重量%のAl量を含むフェライト系ステンレス鋼板は、表面粗さなどの表面性状に関して何ら開示されていない。Al含有量が高いため、粗大で硬質なMgO・Al23系介在物を生成し易く、表面性状に課題が残ると考えられる。
特許文献3および4に開示された技術は、Si添加を特徴としたAl含有フェライト系ステンレス鋼板において、Al23とSiO2からなる酸化皮膜の形成を特徴としているものの、耐硫化腐食性については何ら言及されていない。また、表面性状については開示されていない。
特許文献5~8は、表面性状について開示されているものの、いずれもAl非含有ステンレス鋼板を対象としており、CIS系太陽電池の基板として使用した場合、耐硫化腐食性に課題が残る。
以上に述べたように、CIS系太陽電池のステンレス基板として、(1)表面性状、(2)耐硫化腐食性の2つの課題を両立したステンレス鋼板は開示されていない。
本発明は、表面性状に優れ、さらにコーティングまたはめっき等の耐腐食層の表面処理によらず、耐硫化腐食性を具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、Al含有フェライト系ステンレス鋼板において、表面性状と発電効率および表面皮膜と耐硫化腐食性の関係について、鋭意実験および検討を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
(a)通常、Alを含有するフェライト系ステンレス鋼板は、酸化スケールを酸洗で除去することが困難なため、表面の粗い研磨で仕上げられる。研磨ではなく長時間の酸洗、または光輝焼鈍のいずれかで仕上げる場合であっても、Al含有フェライト系ステンレス鋼板は粗大で硬質なMgO・Al23系介在物を生成し易く、これらが冷間圧延によって鋼板表面に微細なクラックや凹凸を形成する原因となり、表面性状は低下しやすい。
(b)上記ステンレス鋼板において、微量のMgとGaを単独または複合添加することで、硬質なMgO・Al23系介在物を微細分散させて、冷間圧延時の介在物の押し込みによるクラックや凹凸を軽減して、表面性状を向上させることができる。
(c)前記した表面性状は、粗さ計で測定される算術平均粗さではなく、表面のミクロ観察による凹凸0.1μm未満である面積率が指標となることを知見した。本発明の目標とする表面性状は、表面凹凸0.1μm未満の面積率を高め、これを40%以上へ高めることであり、そうすることで、発電に関わる皮膜層の製膜工程で生じる製膜層自体の損傷を抑制でき、その結果、発電効率の向上に有効であることを知見した。従来技術では、粗さパラメータやマイクロピットの開口面積を制限してマイクロピットの存在率を規定していたものである。そのため、開口面積が規定から外れ、局所的に存在する深いピットまで考慮されておらず、表面性状(表面凹凸の形態)と製膜層自体の損傷は必ずしも対応しなかった。
(d)SUS430LXおよびSUS430J1Lに代表される高純度フェライト系ステンレス鋼板は、400~700℃の高温で0.5~2h程度、数%の硫化水素ガスを含む雰囲気中に曝されると、鋼板素地の脱落に至るまで硫化腐食が進行する。このような硫化腐食は、ステンレス鋼の構成元素であるFeおよびCrが雰囲気ガス中のSと反応して、FeS2およびFeCr24を形成して鋼を浸食することにより進行する。
(e)3.5%以上のAlを含有するフェライト系ステンレス鋼板の場合、高温環境下において、Al23の連続皮膜が形成されるため、上述した硫化腐食は改善される。一方、Al含有量が3.5%未満のフェライト系ステンレス鋼板の場合、耐硫化腐食性は表面の皮膜組成の影響を受ける。通常、酸洗または研磨後の表面には、数nm程度の薄いFeとCrの不動態皮膜が形成される。硫化腐食は、FeとCrを主体とする不動態皮膜が表面に形成されている場合に生じ易い。
(f)表面皮膜中のFeおよびCr濃度の低減には、Alに加えて微量元素としてのMgとGaの添加が効果的であり、低いAl含有量でも硫化腐食を抑止できる。また、SiO2がAl23の連続皮膜の保護性を損なうため、かえって耐硫化腐食性を低下させることも知見した。
(g)前記の理由は必ずしも明確ではないが、Mgを単独添加、より効果的にはMgと共にGaを同時添加することで、FeまたはCrの他に、SiO2の生成を抑制してAlを主体とした皮膜形成に対して有効に作用する知見を獲得した。この効果によって耐硫化腐食性を維持したまま、Al含有量を低減することが可能となる。
(h)前記の表面凹凸および表面皮膜を形成させるためには、水素ガスを含む雰囲気で700~1100℃の温度範囲で熱処理(光輝焼鈍)することが有効であることを見出した。
(i)光輝焼鈍で仕上げた前述の鋼板について、さらに硝酸溶液中での電解を実施することで、研磨線や介在物の押し込みによって生じた被さりの角がとれ、表面性状を向上させることができる。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記のAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を要旨とする。
(1)質量%にて、
C:0.03%以下、
Si:0.02~2.0%、
Mn:0.03~2.0%、
Cr:13.0~22.0%、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.20~3.5%、
Ti:0.5%以下、
N:0.03%以下、
を含み、更に
Mg:0.0004~0.01%、
を含むか、または
Mg:0.0003~0.01%、Ga:0.1%以下
を含み、
Mg含有量とGa含有量の1/2の合計が0.0004%超、0.06%以下で、
残部がFeおよび不可避的不純物であり、
その表面凹凸0.1μm未満の領域が40%以上であり、膜厚100nm以下、かつAlを含有する表面皮膜を有することを特徴とするAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
(2)前記表面皮膜中に含まれる元素の含有量が、下記(i)~(iv)式を満足することを特徴とする前記(1)に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
Al>60% ・・・(i)
Fe<20% ・・・(ii)
Cr<20% ・・・(iii)
S<5% ・・・(iv)
但し、上記式中の各元素の含有量は、表面皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
(3)さらに表面凹凸0.1μm未満の領域が55%以上であることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
(4)さらに、質量%で、
Ni:1%以下、
Cu:1%以下、
Mo:2%以下、
Nb:0.5%以下、
V:0.5%以下、
Sn:0.2%以下、
Sb:0.2%以下、
W:1%以下、
Zr:0.5%以下、
Co:0.5%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
La:0.1%以下、
Y:0.1%以下、
Hf:0.1%以下、
REM:0.1%以下、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)~(3)のいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
(5)太陽電池基板として用いられる、(1)~(4)のいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
(6)前記(1)または(4)のいずれかに記載の化学組成を有するステンレス鋼板を、水素ガスを含む雰囲気で700~1100℃の温度範囲で熱処理することにより、表面に前記(1)または(2)に記載の表面凹凸および表面皮膜を形成させることを特徴とするAl含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(7)さらに、3~20質量%硝酸水溶液中で電解酸洗することにより、表面に前記(1)または(3)のいずれかに記載の表面凹凸および表面皮膜を形成させることを特徴とする(6)に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明によれば、表面性状に優れ、さらにコーティングまたはめっき等の表面処理によらず耐硫化腐食性を具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板が得られる。
3次元粗さ解析装置による表面の粗さ曲面測定結果を示す図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.母材の化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.03%以下
Cは、フェライト相に固溶し、またはCr炭化物を形成して耐酸化性を低下させ、本発明に係る表面皮膜の形成を阻害する。このため、C含有量は低いほどよく、0.03%以下とする。C含有量は0.02%以下であるのが好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、C含有量は0.001%以上とすることが好ましく、0.002%以上とすることがより好ましい。
Si:0.02~2.0%
Siは、本発明の目的とする耐硫化腐食性を確保する上で重要な元素である。SiはAlを主体とした酸化皮膜の形成を促進し、硫化水素(H2S)の鋼中への浸入を抑制して耐硫化腐食性を向上させる。したがってSi含有量は0.02%以上とする。好ましくはSi含有量は0.1%以上、さらに好ましくは0.5%以上である。しかしながら、Siを過剰に含有させると、SiO2が生成し、Al23の連続皮膜の保護性を損ない、耐硫化腐食性を著しく低下させる。また、鋼板の靭性および加工性の低下を招く。したがって、耐硫化腐食性と基本特性との点から、Si含有量は2.0%以下とする。1.8%以下であるのが好ましく、さらには1.5%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.03~2.0%
Mnは、Feの表面酸化を抑制して、Alを主体とする本発明の規定範囲内となる表面皮膜の形成を促す作用を持つ。したがって、Mn含有量は0.03%以上とする。0.1%以上であるのが好ましく、0.2%以上であるのがより好ましい。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、耐酸化性を低下させ、耐硫化腐食性の劣化に繋がるため、Mn含有量は2.0%以下とする。耐酸化性と耐硫化腐食性との点から、Mn含有量は1.0%以下であるのが好ましい。
Cr:13.0~22.0%
Crは、耐食性に加えて、本発明に係る表面皮膜を形成して耐硫化腐食性を確保する上でも基本となる構成元素である。Cr含有量が13.0%未満では目標とする耐硫化腐食性が十分に確保されず、さらに線膨張係数の増加を招く。したがって、Cr含有量は13.0%以上とする。しかしながら、Crを過剰に含有させると、表面皮膜中のCr濃度を高めて、高温硫化水素雰囲気に曝された際、耐硫化腐食性を劣化させることに加え、合金コストの上昇を招く。そのため、耐硫化腐食性と合金コストとの点から、Cr含有量は22.0%以下とする。Cr含有量は15.0%以上であるのが好ましく、16.0%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は20.0%以下であるのが好ましく、19.0%以下であるのがより好ましい。
P:0.05%以下
Pは、製造性および溶接性を劣化させる元素であり、その含有量は低いほどよい。そのため、P含有量は0.05%以下とする。P含有量は0.04%以下であるのが好ましく、0.03%以下であるのがより好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、P含有量は0.003%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましく、0.01%以上とすることがさらに好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、耐硫化腐食性を劣化させる。特に、表面皮膜中に存在するS、または鋼中に存在するMn系介在物もしくは固溶Sは、高温硫化水素雰囲気に曝された際、表面皮膜の破壊起点として作用する。したがって、S含有量は低いほどよく、0.01%以下とする。S含有量は0.002%以下であるのが好ましく、0.001%以下であるのがより好ましい。ただし、過度の低減は原料および精錬のコストの上昇に繋がるため、0.0001%以上とすることが好ましく、0.0002%以上とすることがより好ましい。
Al:0.20~3.5%
Alは、脱酸作用を有する元素であるのに加えて、表面皮膜改質により、本発明の目標とする耐硫化腐食性を達成するために必須の元素である。本発明においては、Al含有量が0.20%以上であれば目標とする耐硫化腐食性が発現される。したがって、Al含有量は0.20%以上とする。一方、Al含有量が3.5%を超えると、硬質なAl系介在物が増加し、表面性状が低下するだけでなく、製造性の悪化および合金コストの上昇を招く。したがって、Al含有量は3.5%以下とする。Al含有量は0.8%以上とするのが好ましく、3.0%以下とするのが好ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、CおよびNを固定する安定化元素の作用による鋼の高純度化を通じて、耐酸化性を向上させることに加えて、皮膜改質により耐硫化腐食性を向上させる作用を有する。そのため、Tiの効果を発現させる場合には、Ti含有量を0.03%以上とする。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、合金コストの上昇および再結晶温度の上昇に伴う製造性の低下に繋がる。そのため、Ti含有量は0.5%以下とする。Ti含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.1%以上とするのがより好ましい。また、Ti含有量は0.35%以下とするのが好ましく、0.25%以下とするのがより好ましい。
N:0.03%以下
Nは、Cと同様に耐硫化腐食性を劣化させる元素である。そのため、N含有量は低いほどよく、0.03%以下とする。N含有量は0.02%以下であるのが好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、N含有量は0.002%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Mg:0.0003~0.01%
Mgは、前述のように、表面に濃縮してFeおよびCrの酸化を抑制し、Alを主体とした皮膜形成を促進するとともに硬質なMgO・Al23系介在物を微細分散させる作用を有する元素である。そのため、Mg含有量は0.0003%以上とする。しかしながら、Mgを過剰に含有させると、鋼の精錬コストを上昇させ製造性を悪化させるだけでなく、前述の硬質な介在物を多量に生成し、表面性状を悪化させるとともに、皮膜生成が阻害され、耐硫化腐食性の劣化を招く。したがって、Mg含有量は0.01%以下とする。Mg含有量は0.001%以上とするのが好ましく、0.008%以下とするのが好ましい。
Ga:0.1%以下
Gaは、Mgと同様に、表面に濃縮してFeおよびCrの酸化を抑制し、Alを主体とした皮膜形成に作用する元素である。そのため、Gaを含有することができる。Ga含有量は0.0003%以上とすると効果発現が顕著である。しかしながら、Gaを過剰に含有させると、鋼の精錬コストを上昇させ製造性を悪化させるだけでなく、かえって耐硫化腐食性の劣化を招く。したがって、Ga含有量は0.1%以下とする。Ga含有量は0.02%以下であるのが好ましい。
本発明においては、上記のMgの1種またはMgとGaの2種を含有する。
なお、Mg+0.5Gaの合計含有量は、0.0003%以上、0.060%以下である。0.001%を超えて含有することが前記の効果発現に、特に有効である。Mg+0.5Gaの合計含有量は、0.002%を超える量とすることがより好ましい。Mg+0.5Gaの合計含有量の上限値は、好ましくは0.02%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。
本発明のAl含有フェライト系ステンレス鋼板は、上記のCからGaまでの元素を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有する。
ここで「不可避不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼板は、上記の元素に加えて、必要に応じて、下記に示す量のGa、Ni、Cu、Mo、Nb、V、Sn、Sb、W、Co、B、Ca、Zr、Hf、REMおよびTaから選択される1種以上を含有させても良い。
Ni:1.0%以下
Cu:1.0%以下
Mo:2.0%以下
Nb:0.5%以下
V:0.5%以下
Sn:0.2%以下
Sb:0.2%以下
W:1.0%以下
Co:0.5%以下
上記の元素は、ステンレス鋼板の高温強度および耐食性を高めるのに有効な元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、合金コストの上昇および製造性の悪化に繋がる。そのため、Ni、CuおよびWの含有量は1.0%以下とする。また、Moは線膨張係数の低下による高温変形の抑制にも有効な元素であるため、Mo含有量は2.0%以下とする。さらに、Nb、VおよびCoの含有量は0.5%以下とする。そして、SnおよびSbの含有量は、製造性の点から0.2%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合には、上記元素の少なくともいずれかを0.05%以上含有させることが好ましい。
B:0.005%以下
Ca:0.005%以下
BおよびCaは、熱間加工性および2次加工性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、製造性の悪化に繋がるため、BおよびCaの含有量はそれぞれ0.005%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合には、上記元素の少なくともいずれかを0.0001%以上含有させることが好ましい。
Zr:0.5%以下
La:0.1%以下
Y:0.1%以下
Hf:0.1%以下
REM:0.1%以下
上記の元素は、熱間加工性および鋼の清浄度を向上するとともに、耐酸化性改善に有効な元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、本発明の目標とする耐硫化腐食性は、これら元素の添加効果に頼るものではない。そのため、各元素の上限値を上記のように規定する。なお、上記の効果を得たい場合には、Zr:0.01%以上、La:0.001%以上、Y:0.001%以上、Hf:0.001%以上、REM:0.001%以上の少なくともいずれかを満足させることが好ましい。
ここで、REMとは、前述に記載されていないランタノイド元素を指し、REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲での不純物元素の混入は許容される。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se等は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn:500ppm以下、Bi:100ppm以下、Pb:100ppm以下、Se:100ppm以下の1種以上が含有されていてもよい。
2.表面性状
CIS系化合物系薄膜太陽電池の基板として用いられるステンレス鋼板には、良好な表面性状が要求される。基板上に製膜される皮膜の損傷を抑制するためには、鋼板表面の形状を平滑にすることが好ましい。具体的には、記載のステンレス鋼板の板表面で、凹凸0.1μm未満の領域が40%以上とする。さらに好ましくは55%以上である。
3.表面皮膜
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼板は、表面に膜厚が100nm以下であり、所定の組成を有する皮膜を備える。皮膜が100nmを超える膜厚にするためには、長時間のBA焼鈍を実施する必要がある。その場合には、皮膜中に含まれるFeおよびCrの含有率が高くなり、耐硫化腐食性が低下する場合がある。また、生産性が悪化することから、皮膜の膜厚は50nm以下とすることが好ましく、30nm以下とすることがより好ましい。なお、一方、膜厚の下限については、特に制限は設けないが、硫化水素中の耐硫化腐食性に効果を発揮するためには3nm以上とすることが好ましい。
また、H2S等による硫化工程中の耐硫化腐食性を向上させるため、皮膜中に含まれるAl含有量を高め、Fe,Cr,S含有量を低下させる必要がある。具体的には、皮膜中に含まれる各元素の含有量が、下記(i)~(v)式を満足する。
Al>60% ・・・(i)
Fe<20% ・・・(ii)
Cr<20% ・・・(ii)
S<5% ・・・(iv)
但し、上記式中の各記号は、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
Alは、表面皮膜の内層から地鉄界面にかけて濃化し、腐食性ガスSの鋼への侵入を顕著に抑制する。これらの効果は、表面皮膜中のAl含有量を、5原子%を超える量とすることで顕著に発現する。Al含有量は、8原子%以上とするのが好ましく、10原子%以上とするのがより好ましい。Al含有量の上限については特に制限は設けないが、焼鈍・酸洗の効率を考慮して95原子%以下とするのが好ましい。
皮膜中に含まれるFeおよびCrは、優先的に硫化し、硫化腐食を促進する。したがって、表面皮膜中のFeまたはCr含有量をそれぞれ20%以下、またはFeとCrの総和を30%以下とする。
高温での硫化水素による腐食起点を抑制するため、皮膜中に含まれるS含有量を5.0原子%未満とすることが好ましい。S含有量は、4.0原子%未満とすることがより好ましく、3.0原子%未満とすることがさらに好ましい。S含有量の下限については特に制限は設けないが、低ければ低い方が好ましく、非検出=ゼロとなることが好ましい。
皮膜組成の分析方法については、定量分析が可能であれば、特に制限はない。例えば、皮膜中のFe、Cr、Al、Sの含有量はオージェ電子分光法(AES)によって測定することができる。
4.製造方法
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法について、前述の表面性状や表面皮膜を造り込むためには、後述する製造方法が好ましいが、必ずしも限定するものではなく、例えば、上記の化学組成を有する鋼素材に対して、以下に示す処理を施すことによって製造することができる。鋼素材として鋼板を用いる場合、例えば、薄板、箔、厚中板を用いることができる。ここで、薄板は0.2mm以上、箔は0.02~0.2mm、厚中板は6mm以上の板厚を有するものとするが、以下においては、まとめて、鋼板と表現する場合がある。表面仕上げはJIS(G 0203)準拠したBA、2B、2D、研磨などであれば良い。
また、鋼素材となる鋼板の種類についても特に制限は設けないが、熱間圧延鋼帯に対して、必要に応じて焼鈍し、デスケーリングの後、冷間圧延した冷延板を用いることができる。該冷延板の表面に本発明で規定する皮膜を形成するためには、冷間加工後に水素ガスを含む低露点雰囲気中で光輝焼鈍を行うことが有効である。光輝焼鈍の雰囲気ガスは、CrとFeの酸化を抑制して上記元素を選択的に表面に酸化させるために、水素ガスを50体積%以上含み、残部は不活性ガスとする。雰囲気ガスの露点は、-40℃以下が好ましく、水素ガスは80体積%以上が好ましく、より好ましくは90体積%以上とする。残部の不活性ガスは、工業的には安価な窒素ガスが好ましいが、ArガスやHeガスでも良い。また、本発明の目標とする表面皮膜の形成を促進または支障ない範囲で、雰囲気ガス中に酸素やその他のガスが5体積%未満の範囲で混入しても構わない。特に、前記した低露点の水素ガス雰囲気下において、0.1体積%以上、3体積%未満の酸素ガスを混入させることで、Al、Mgを選択的に酸化させて、本発明の目標とする耐硫化腐食性に好適な表面皮膜の形成を促進させることができる。
仕上げ焼鈍における加熱温度が700℃未満では、鋼板の軟質化と再結晶とが不十分となり、所定の材料特性が得られない場合がある。そのため、加熱温度は700℃以上とすることが好ましい。雰囲気ガスの露点を下げるためには、加熱温度は800℃以上とすることがより好ましく、850℃以上とすることがさらに好ましい。一方、加熱温度が1100℃を超えると、結晶粒が粗大になり、鋼板の靭性および延性が劣化するおそれがある。そのため、加熱温度は1100℃以下とすることが好ましく、1000℃以下とすることがより好ましい。本発明の目標とする表面皮膜の形成には、加熱時間を5秒以上とするのが好ましく、10秒以上がさらに好ましい。一方、3600秒以上では、表面皮膜中のFeおよびCrの含有率が高くなり、耐硫化腐食性が低下する場合がある。そのため、加熱時間は3600秒未満が好ましい。生産性と耐硫化腐食性への効果から、300秒以下が好ましく、60秒以下がさらに好ましい。
また、BA、2B、2D、研磨の表面に対して、硝酸水溶液中で電解酸洗を行うと良い。表面を溶解して表面疵やマイクロクラックを減少させるとともに、表面に付着したSおよびFeを電解で除去するために、硝酸濃度を3~20重量%の範囲とするのが好ましい。硝酸濃度が3%未満の場合、電解酸洗の効果が得られ難い。一方、硝酸濃度が20%を超えると、表面皮膜へのCrの濃化が進行し、耐硫化腐食性が劣化することに繋がる。硝酸電解は、工業的な電解酸洗装置で実施することが好ましく、例えば、前処理槽および複数の電解酸洗槽を備えた設備において、水洗いおよび希硫酸電解酸洗などの洗浄工程を施した後、硝酸電解を実施しても良い。硝酸電解の電流密度および温度は、皮膜組成を害さない限り、特に限定するものではない。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼(鋼A~Z)を溶製し、熱間圧延および焼鈍を実施し、冷間圧延を行い板厚0.1~1.5mmの箔または薄板とした後、各鋼板に対して下記の処理を施した(試験No.1~30)。該箔または薄板は、いずれも再結晶が完了する900~950℃で光輝焼鈍または大気焼鈍し、大気焼鈍後は55℃、2.5%HF-5%HNO3で酸洗、または研磨を行った。試験No.8,11、13、15の鋼板については、さらに8%硝酸水溶液中で硝酸電解酸洗を実施した。なお、表1におけるGaについては、グロー放電を利用した質量分析GD-MSによって分析した。
Figure 0007133917000001
得られた鋼板について、AES分析により表面皮膜の組成の測定を行った。AES分析には、走査型FEオージェ電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製)を用い、電子銃の加速電圧は10kV、イオン銃(Ar)の加速電圧は3kV、スパッタレートは10nm/min(SiO2実測値)とし、板厚方向の膜厚に換算した。
得られたオージェ電子スペクトルから、Fe、Cr、Mn、Al、Si、Ti、Sなどの検出された元素全てのオージェピーク高さ(微分スペクトルでのピーク間の高さ)を読み取って相対濃度を算出した。皮膜厚さはOのプロファイルを測定し、Oの強度が半分の値となる半値幅で求めることとした。皮膜厚さおよび組成について、表2に示す。
Figure 0007133917000002
また、上記の鋼板を用いて、粗さ曲面を測定した。脱脂後、500μm×500μmの範囲を4視野測定した。このときピッチ間隔は0.1μmとした。粗さ曲面の数値データを元に、粗さパラメータならびに凹凸0.1μm未満の領域を、算出した。装置は(株)ミツトヨ製SURFPAC(高精度粗さ測定機-3次元粗さ解析装置)を用いた。
上記の測定例を図1に示す。図1において、淡色で表現された部分が粗さパラメータならびに凹凸0.1μm未満の領域である。
続いて、上記の各鋼板を用いて、太陽電池の発電効率に影響を及ぼす製膜層の損傷程度を「製膜層の劣化度」として評価した。鋼板表面に1.0μm厚のSiO2膜の絶縁膜を
形成し、その上に10mm×10mm×0.2μm厚のAl電極を20箇所蒸着して、テスターの測定子を置いて電気抵抗を測定した。1MΩを超える場合に絶縁と判断し、絶縁達成箇所の割合が90%以上を「◎」、70%以上90%未満を「○」、50%以上、70%未満を「△」、50%未満を「×」とした。本発明においては、上記結果が「◎」および「○」、「△」に該当する場合に製膜層の劣化度が小さく、発電効率が優れると判断することとした。
続いて、上記の各鋼板を用いて、耐硫化腐食性の評価を行った。具体的には、各鋼板に対して、700℃、2%H2S-bal.N2の雰囲気中に1h保持する熱処理を実施した。そして、腐食生成物の剥離がなく、腐食増量が1.0mg/cm2未満のものを「◎」、1.5mg/cm2未満のものを「○」、2.5mg/cm2以下であったものを「△」とし、剥離が生じて、腐食増量が2.5mg/cm2を超えたものを「×」とした。本発明においては、上記結果が「◎」および「○」、「△」に該当する場合に、耐硫化腐食性が優れると判断することとした。
上記の結果を表2に併せて示す。
試験No.1~16は、本発明の規定を満足する本発明例に係る鋼板である。
表2から分かるように、本発明例の鋼板は、発電に関わる製膜層の劣化度が小さく、優れた耐硫化腐食性を有することが分かる。
これらに対して、化学組成が本発明の規定から外れる鋼板を用いた試験No.17~30では、製膜層の劣化度または耐硫化腐食性の両方、または一方が劣る結果となった。具体的には、表面凹凸0.1μm未満の領域が40%未満の鋼板は、絶縁達成率が70%未満となり、製膜層の劣化度が「×」となった。また、本発明で規定する化学成分から外れ、かつ、本発明の規定する皮膜の化学組成からも外れたものは、耐硫化腐食性が「×」となった。
本発明によれば、表面性状に優れ、さらにコーティングまたはめっき等の表面処理によらず耐硫化腐食性を具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板が得られる。したがって、本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼板は、油炊きまたは燃焼環境において硫化水素ガス等の硫化雰囲気に曝される熱処理を含む製膜プロセスを経て製造される化合物系薄膜太陽電池の基板に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 質量%にて、
    C:0.03%以下、
    Si:0.02~1.83%、
    Mn:0.03~2.0%、
    Cr:13.0~22.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.35~3.5%、
    Ti:0.03%以上、0.5%以下、
    N:0.025%以下、
    を含み、更に
    Mg:0.0003~0.01%、Ga:0.1%以下
    を含み、
    Mg含有量とGa含有量の1/2の合計が0.0007%以上、0.06%以下で、
    残部がFeおよび不可避的不純物であり、
    鋼板表面において
    1視野500μm×500μmの範囲の領域をピッチ間隔0.1μmとして4視野測定した際に、
    表面凹凸0.1μm未満の領域の面積率が40%以上であり、膜厚8nm以上、100nm以下、かつAlを9%以上含有する表面皮膜を有することを特徴とするAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
  2. 前記表面皮膜中に含まれる元素の含有量が、(i)~(iv)式を満足することを特徴とする請求項1に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
    Al>60% ・・・(i)
    Fe<20% ・・・(ii)
    Cr<20% ・・・(iii)
    S<5% ・・・(iv)
    但し、上記式中の各元素の含有量は、表面皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
  3. 質量%にて、
    C:0.03%以下、
    Si:0.02~1.83%、
    Mn:0.03~2.0%、
    Cr:13.0~22.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.35~3.5%、
    Ti:0.03%以上、0.5%以下、
    N:0.025%以下、
    を含み、更に
    Mg:0.0007~0.01%、
    を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物であり、
    鋼板表面において
    1視野500μm×500μmの範囲の領域をピッチ間隔0.1μmとして4視野測定した際に、
    表面凹凸0.1μm未満の領域の面積率が40%以上であり、
    膜厚8nm以上、100nm以下の表面皮膜であり、
    前記表面皮膜中に含まれる元素の含有量が、(i)~(iv)式を満足することを特徴とするAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
    Al>60% ・・・(i)
    Fe<20% ・・・(ii)
    Cr<20% ・・・(iii)
    S<5% ・・・(iv)
    但し、上記式中の各元素の含有量は、表面皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
  4. さらに、表面の凹凸0.1μm未満の領域が55%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
  5. さらに、質量%で
    o:1.5%以下、
    Nb:0.13%以下、
    V:0.15%以下
    r:0.01%以下
    0.0005%以下、
    Ca:0.005%以下、
    La:0.01%以下、
    Y:0.01%以
    ら選択される1種以上を、総量で1.665%以下含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
  6. 太陽電池基板として用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板。
  7. 請求項1、3または5のいずれかに記載の化学組成を有するステンレス鋼板を、水素ガスを含む雰囲気で700~1100℃の温度範囲で熱処理することにより、表面に請求項1~4のいずれか1項に記載の表面凹凸および表面皮膜を形成させることを特徴とするAl含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  8. さらに、3~20質量%硝酸水溶液中で電解酸洗することにより、表面に請求項1~4のいずれか1項に記載の表面凹凸および表面皮膜を形成させることを特徴とする請求項6に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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