電力系統における周波数の異常(以下、周波数異常)とは、電力系統内の負荷量と発電量のバランス、すなわち電力の需要と供給のバランス(以下、需給バランス)が崩れ、周波数が規定の範囲(以下、規定範囲)から逸脱した状態のことである。
周波数異常は、電力の需要家や電力系統内の各種設備の運転に悪影響を及ぼす。このため、日本国内の多くの電力会社では、周波数の規定範囲、すなわち周波数を管理する範囲を、標準とする周波数(以下、標準周波数)±0.2Hz、一部の電力会社では標準周波数±0.3Hzと定め、この規定範囲内に周波数を維持するように電力系統を運用している。
電力の需要が変動することに伴って発生する緩やかな需給アンバランス(電力の需給バランスが崩れた状態)に対しては、負荷周波数制御(LFC、Load Frequency Control)や、調速機によって、発電機出力、すなわち電力の供給量を制御する。このため、周波数が規定範囲内に維持されるために周波数異常に至ることは少ない。なお、調速機は、発電機のタービンの回転速度を制御する装置である。
送電線ルートが遮断されるような事故や、複数の母線にまたがる事故である両母線事故などの重大な系統事故に伴って、電力系統から大容量の発電機が解列(電源脱落)されたり、負荷に電力供給する系統が分離(負荷脱落)されたりすると、急激な需給アンバランスを生じる。この場合、周波数が規定範囲を逸脱して周波数異常に至る可能性がある。そのため、電力系統には、周波数異常を解消させる、または未然に防止する周波数リレーシステムが設置されている。
周波数リレーシステムは、電力系統における周波数の状況に応じて、負荷制限や、発電機遮断などの制御を行うことにより、電力の需給バランスを維持するシステムである。周波数リレーシステムには、周波数異常の発生を検出して制御を行う分散制御方式の不足周波数リレー(UFR、Under Frequency Relay)と、過周波数リレー(OFR、Over Frequency Relay)と、中央制御方式の電力系統安定化システムとがある。
電力系統安定化システムは、予め、周波数異常に至る可能性の高い事故(想定事故)を想定し、想定事故が発生した場合に周波数を規定範囲内に維持するための制御内容(負荷制限や発電機遮断など)を事前に演算、記憶しておく。そして、電力系統安定化システムでは、実際に想定事故の発生を検出した際に、直ちに制御を実施する。
電力系統安定化システムでは、想定事故が発生した後、電力系統が周波数異常に至る前に、制御を行うことができる。このため、周波数異常を確認してからの制御では電力系統の安定運転を維持できない急激な需給アンバランスを生じる系統事故にも対応できる特長がある。
周波数異常には、標準周波数に対して周波数が低下(周波数低下)する場合と、上昇(周波数上昇)する場合の両側面がある。電力系統安定化システムは、周波数低下に対して揚水機の遮断や負荷制限を行い、周波数上昇に対して発電機遮断を行う。揚水機は、揚水発電に用いる水をくみ上げるポンプ運転中の発電機であり、負荷と同様に電力を消費する機器である。
ここで、従来の電力系統安定化システムの構成と作用について図1、及び図2を用いて説明する。
以下では、説明を簡素化するため、周波数低下時の応動について説明する。周波数上昇時の応動については、制御対象が異なるのみであり、周波数低下時と同様の考え方が適用できる。
図1及び図2は、従来の電力系統安定化システムの構成を示す図である。図1及び図2に示すように、従来の電力系統安定化システムは、中央演算装置10と、事故検出端末装置11と、制御端末装置12とで構成される。
図2において、1は発電機、2は負荷、3は母線、4は送電線あるいは変圧器、5は遮断器、6は電流計測器(CT)、7は電圧計測器(VT)、8は通信設備、9は直流連系設備、10は従来の電力系統安定化システムの中央演算装置、11は従来の電力系統安定化システムの事故検出端末装置、12は従来の電力系統安定化システムの制御端末装置である。
事故検出端末装置11は、発電所などに設置されることが多い。制御端末装置12は、変電所などに設置されることが多い。中央演算装置10は、事故検出端末装置11や制御端末装置12との通信が可能、かつ、系統容量、発電機の有効電力出力(以下、発電機出力)、負荷が消費する有効電力(以下、負荷量)などの系統情報を、給電情報網から受信できる給電制御所や主要な電気所に設置されることが多い。
事故検出端末装置11は、図1に示すように、事故検出部11Aを備え、発電機の脱落事故を検出する。事故検出端末装置11は、図2に示すように、制御対象の電力系統における発電機1側の送電線4に設けられる遮断器5の開閉状態や、電流計測器6及び電圧計測器7により測定された電流及び電圧から演算した発電機出力を用いて、発電機1の脱落事故の有無を検出する。事故検出端末装置11は、検出結果を、通信設備8を介して中央演算装置10へ送信する。
中央演算装置10は、図1に示すように、事前演算部10Aと、事後演算部10Bとを備える。以下では、中央演算装置10の処理について図3を用いて説明する。
図3は、従来の中央演算装置10の処理を説明するための図である。事前演算部10Aは、発電機1の発電機出力、負荷2の負荷量、系統容量P0などの系統情報を給電情報網から受信する。事前演算部10Aは、系統情報と、予め設定された電力周波数特性K、及び目標周波数偏差ΔfCを用いて、例えば、電源脱落の想定事故が発生した場合における周波数維持に必要な目標制御量PCを、以下の(1)式で演算する。
PC=ΔP-K×ΔfC×(P0-ΔP) …(1)式
ここで、
PC :目標制御量[MW]
ΔP :想定事故発生時の需給アンバランス量[MW]
K :電力周波数特性(系統定数)[1/Hz]
ΔfC:目標周波数偏差[Hz]
P0 :系統容量[MW]
なお、(1)式において、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPの極性は、発電量が負荷量より少ない場合に+(プラス、つまり正の値)とする。すなわち(1)式では、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPが+である場合に、その大きさに応じた負荷制限を行う。
事前演算部10Aは、演算した目標制御量PCに基づいて、負荷制限する負荷(以下、制御内容)を複数の負荷2の中から選択し、記憶する。
なお、中央演算装置10は、給電情報網を介さずに、事故検出端末装置11により計測された発電機1の発電機出力を取得してもよいし、制御端末装置12により計測された負荷2の負荷量を取得するようにしてもよい。
事前演算部10Aは、制御内容として、負荷制限した場合における負荷量ができるだけ目標制御量に近くなるように、負荷制限の対象とする負荷2の組合せを選択する。事前演算部10Aは、以上の処理を、常時所定の時間間隔で繰り返し実施し、制御内容を更新する。
ここで、従来の電力系統安定化システムにおける想定事故、及び制御内容について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、従来の想定事故を示す情報の構成例を示す図である。図5は、従来の制御内容を示す情報の構成例を示す図である。
図4に示すように、想定事故の情報は、例えば、想定事故ケース番号、監視点、及び事故様相などの項目を備える。想定事故ケース番号には想定事故に付される番号が示される。監視点には想定事故の発生が想定されている地点が示される。事故様相には想定事故の内容が示される。
図5に示すように、制御内容の情報は、例えば、想定事故ケース番号、需給アンバランス量ΔP、制御内容のなどの項目を備える。また、制御内容として、目標制御量PC、制御対象などの項目を備える。想定事故ケース番号は図4の想定事故ケース番号に対応する番号である。需給アンバランス量ΔPは想定事故が発生した場合の需給アンバランス量を示す。制御対象は、負荷制限する負荷2を示す。
図4及び図5の例では、想定事故ケース番号1の事故として示される、A発電所においてX送電線のルート遮断事故が発生した場合、目標制御量PCはPC-1であり、制御対象とする負荷2としてのL1、L2、及びL3を負荷制限する設定となっている。
事故検出端末装置11は、X送電線の遮断器5が閉状態から開状態へ変化した場合、又はX送電線を流れる電力または電流が所定の閾値以下に減少した場合に、このA発電所におけるX送電線のルート遮断事故の発生を検出する。また、事故検出端末装置11は、X送電線の保護装置や、A発電所の母線保護装置の動作信号を取得することにより、X送電線のルート遮断事故を検出する場合もある。保護装置は、送電線や母線の事故を検知した場合に遮断器を遮断する動作信号を出力することにより、事故の影響を最小限に抑え、電力系統を保護する装置である。
事後演算部10Bは、事故検出端末装置11から起動信号を受信する。起動信号は、事故検出端末装置11により系統事故が検出されたことに伴い、制御内容を実行する旨を指示する信号である。事後演算部10Bは、受信した起動信号に基づいて、事前演算部10Aにより記憶された制御内容を参照する。事後演算部10Bは、記憶された制御内容から、当該想定事故の制御内容を実施する。具体的に、事後演算部10Bは、制御内容として選択されている負荷2(図5の例では、L1、L2及びL3)を制御する制御端末装置12に、制御信号を送信する。制御信号は、制御端末装置12が制御対象としている負荷2を負荷制限する(負荷2への電力の供給を遮断する)旨を指示する信号である。
図1に戻り、制御端末装置12は、制御部12Aを備える。制御端末装置12は、中央演算装置10から制御信号を受信した際、負荷2の遮断器5を開極する。以下、制御端末装置12が行う処理を、図6を用いて説明する。
図6は、従来の制御端末装置12の構成を示すブロック図である。制御端末装置12は、例えば、フェイルセーフリレー95Fを備える。フェイルセーフリレー95Fは、負荷2に供給する電力を誤って遮断する誤動作を防止する周波数リレーである。
フェイルセーフリレー95Fは、電圧計測器7から母線電圧を取得し、取得した母線電圧から周波数を算出する。フェイルセーフリレー95Fは、算出した周波数が所定の閾値(整定値f95F)未満(又は、所定の閾値以下)である場合に、その旨を示す信号(95F動作)を出力する。
制御端末装置12は、制御信号と、フェイルセーフリレー95Fからの周波数の低下を示す信号(95F動作)とのAND条件で、負荷2が繋がる遮断器5に遮断指令を出力し、遮断器5を開極する。遮断指令は、負荷2に供給する電力の遮断を指令する信号である。これにより、制御端末装置12は、中央演算装置10から制御信号を受信するだけではなく、実際に周波数が所定の整定値f95Fより低下した場合に負荷制限を行うようにすることで、誤動作を防止する。ここで、フェイルセーフリレー95Fの整定値f95Fは、フェイルセーフリレー95Fの周波数が規定範囲を逸脱したことを検出できるよう、規定範囲の下限近くに設定する。
ここで、従来の電力系統安定化システムにおける周波数の規定範囲と整定値f95Fの関係を、図7を用いて説明する。図7は、周波数の規定範囲と整定値f95Fの関係を説明する図である。図7の横軸は時間、縦軸は周波数[Hz]を示す。標準周波数f0は電力系統において標準となる周波数を示す。周波数f95Fはフェイルセーフリレー95Fの整定値に対応する周波数を示す。周波数fUFRは電力系統安定化システムとは別に、電力系統に設けられるUFR(不足周波数リレー)の整定値に対応する周波数である。また、図7では、標準周波数f0から所定の範囲にある周波数を規定範囲として示している。
図7に示すように、整定値f95Fは、例えば、電力系統における周波数の規定範囲の下限近くに設定される。これは、電力系統安定化システムにより、出来るだけ高速に、負荷制限の制御を行うためである。一方、UFRは、周波数の低下による周波数異常の継続を確認して負荷制限を行う装置であるため、その整定値fUFRは、周波数f95Fより低い値に設定される。
ここで、従来の電力系統安定化システムにおける各装置間において情報の伝送に用いられる伝送フォーマットについて図8を用いて説明する。電力系統安定化システムにおける各装置とは、中央演算装置10、事故検出端末装置11、及び制御端末装置12の各装置のことである。
図8は、従来の伝送フォーマットの例を示す図である。図8では、電流差動保護方式の送電線保護装置が各種の信号を出力する場合と同じフォーマットを使って各装置間の伝送が行われる例を示している。具体的に、事故検出端末装置11から中央演算装置10へ送信される起動信号、及び中央演算装置10から制御端末装置12へ送信される制御信号が、この伝送フォーマットに従って、ビット情報(0または1)で伝送される。
伝送フォーマットは、例えば、12[フレーム]、1080[ビット]で構成される。また、伝送フォーマットは、1080[ビット]の情報が、20[ms]で伝送され、54[kbps]の伝送速度により伝送が行われる。伝送フォーマットの1[フレーム]は、90[ビット]からなり、内訳としてフレーム同期、第1ワード、第2ワードなどにより構成される。
例えば、中央演算装置10から制御端末装置12へ制御信号を送信する場合、制御対象の制御端末装置12へ送信する制御信号のビット情報が「制御あり」(例えば「1」)に設定される。ここで、制御対象の制御端末装置12とは、負荷制限の対象とする負荷2への電力を供給又は遮断する遮断器5を制御する制御端末装置12であって、当該遮断器5に遮断指令を出力する制御端末装置12のことである。
一方、中央演算装置10は、その他の制御端末装置12へは「制御なし」(例えば「0」)に設定して送信する。その他の制御端末装置12とは、負荷制限の対象としない負荷2への電力を供給又は遮断する遮断器5を制御する制御端末装置12のことである。
なお、図6、及び図8では、記載を省略しているが、図2に示すように、制御端末装置12は、複数の負荷2を制御することが多い。このため、中央演算装置10から制御端末装置12へ送信する制御信号は、負荷2ごとに、「制御あり」又は「制御なし」が設定される。制御端末装置12は、受信した制御信号に従って、該当する負荷の遮断器5を遮断する。
次に、直流連系設備9の緊急時潮流制御機能について説明する。図1に示すように、電力系統において、制御対象の電力系統が、外部の電力系統(以下、外部系統)と周波数変換所や、直流連系線で連系される場合がある。このような電力系統では、外部系統と、制御対象の電力系統との間に、直流連系設備9を設ける。直流連系設備9は、外部系統から受電する電力、あるいは外部系統へ送電する電力、すなわち連系潮流の方向と大きさを、周波数変動に応じて制御する。
直流連系設備9は、緊急時潮流制御機能を備える。直流連系設備9の緊急時潮流制御機能は、緊急時AFC(Auto Frequency Control)、又はEPPS(Emergency Power Presetting Switch)と呼ばれ、周波数が規定範囲を逸脱した場合に、需給バランスを保つ方向へ連系潮流を制御して、制御対象の電力系統の周波数を規定範囲内に維持する。つまり、緊急時潮流制御機能は、周波数異常などの緊急時に、連系潮流の方向と大きさを制御する機能である。
直流連系設備9は、周波数低下時に、外部系統からの受電量を増加させるか、又は外部系統への送電量を減少させる。一方、直流連系設備9は、周波数上昇時には、外部系統への送電量を増加させるか、又は外部系統からの受電量を減少させる。
このように、直流連系設備9の緊急時潮流制御機能による周波数制御では、連系潮流を制御し、需要家の停電を伴うような負荷制限は行わない。このため、電力の安定供給の観点を鑑みると、電力系統安定化システムによる制御より、直流連系設備9の緊急時潮流制御機能による制御を優先する方が望ましい。
以下、実施形態の電力系統安定化システムを、図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明では、説明を簡素化するため、周波数低下時の応動について説明する。周波数上昇時の応動については、制御対象が異なるのみであり、周波数低下時と同様の考え方が適用できる。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。本実施形態の電力系統安定化システムの構成は、従来の電力系統安定化システムと同様である。つまり、すでに説明した、図1、図2、図3、及び図6に示す構成である。このため、本実施形態の電力系統安定化システムの構成については、その説明を省略する。
以下、本実施形態の電力系統安定化システムの作用について説明する。
本実施形態の電力系統安定化システムでは、直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先する。ここで、直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先するとは、本実施形態の電力系統安定化システムによる負荷制限が行われる前に、直流連系設備9による緊急時潮流制御が行われるようにすることをいう。
本実施形態の電力系統安定化システムでは、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPのうち、一部については、直流連系設備9による緊急時潮流制御により解消されることを前提とする。また、残りのアンバランス量については電力系統安定化システムにより解消させるものとする。つまり、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPのうち、一部のアンバランス量は、直流連系設備9の緊急時潮流制御により調整されることが期待される電力量とする。また、残りの制御量は、緊急時潮流制御で対応できないアンバランス分であり、本実施形態の電力系統安定化システムにより制御すべき電力量とする。
中央演算装置10の事前演算部10Aは、給電情報網から連系潮流PTを受信し、予め設定しておいた直流連系設備9の容量PTmaxとの差を、(2)式で求め、緊急時潮流制御によって調整可能な連系潮流の調整幅、すなわち、連系潮流の期待値ΔPT(以下、調整期待値ΔPT)とする。
ΔPT=PTmax-PT …(2)式
ここで、
ΔPT :直流連系設備の緊急時潮流制御による連系潮流の調整期待値[MW]
PTmax :直流連系設備の容量[MW]
PT :連系潮流[MW]
なお、(2)式では、連系潮流PTおよび容量PTmaxの極性は、受電方向を+(プラス、つまり正の値)としている。すなわち(2)式では、制御対象の電力系統が、外部系統から受電する方向を+とする。
事前演算部10Aは、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPから調整期待値ΔPTを差し引いた量を、(3)式で求める。事前演算部10Aは、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPを、想定事故の内容と、給電情報網から受信した発電機1の発電機出力などの系統情報を用いて求める。すなわち、事前演算部10Aは、想定事故によって脱落する発電機の発電機出力を、当該想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPとして求める。
事前演算部10Aは、(3)式で求めた、想定事故発生時の需給アンバランス量ΔPから調整期待値ΔPTを差し引いた量を、本実施形態の電力系統安定化システムで対応する対応需給アンバランス量ΔPSSC(以下、対応需給アンバランス量ΔPSSC)とする。
ΔPSSC=ΔP-α×ΔPT …(3)式
ここで、
ΔPSSC :電力系統安定化システムで対応する対応需給アンバランス量[MW]
ΔPT :直流連系設備の緊急時潮流制御による連系潮流の調整期待値[MW]
α :係数(0<α≦1)
ここで、(3)式における係数αは、調整期待値ΔPTを考慮する度合いを調整する係数である。係数αは、0<α≦1の範囲で予め設定される。調整期待値ΔPTの全量を考慮する場合、つまり、直流連系設備9の緊急時潮流制御により、調整期待値ΔPTの全量が調整されることを想定する場合、係数αは、「1」に設定される。一方、直流連系設備9の緊急時潮流制御が全量完了するのを待たずに、本実施形態の電力系統安定化システムで制御を行う場合、係数αは、1より小さい値に設定される。
事前演算部10Aは、(3)式で求めた、対応需給アンバランス量ΔPSSCが正の場合に、そのアンバランス量を解消させるための制御量を、(4)式で求め、目標制御量PCとする。
PC=ΔPSSC-K×ΔfC×(P0-ΔP) …(4)式
ここで、
PC :目標制御量[MW]
ΔPSSC :電力系統安定化システムで対応する対応需給アンバランス量[MW]
K :電力周波数特性(系統定数)[1/Hz]
ΔfC :目標周波数偏差[Hz]
P0 :系統容量[MW]
以上説明したように、第1の実施形態の電力系統安定化システムは、直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先し、直流連系設備9による緊急時潮流制御で対応できない需給アンバランス分(つまり、対応需給アンバランス量ΔPSSC)について対応する。
これにより、第1の実施形態の電力系統安定化システムでは、直流連系設備9による緊急時潮流制御が行われることを見込んで、直流連系設備9で対応できない需給アンバランス分を解消させるためにのみ電力系統安定化システムによる制御が行われる。このため、直流連系設備9による緊急時潮流制御を活用できる。直流連系設備9による緊急時潮流制御が行われることにより、電力系統安定化システムによる負荷制限などの制御が過剰に実施されることを防止することが可能である。且つ、直流連系設備9で対応できない需給アンバランス分については、電力系統安定化システムで対応することができるために、広域停電に至ることを防止できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、直流連系設備9による緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に備えた制御を行う点において、上述した実施形態と相違する。ここで、直流連系設備9による緊急時潮流制御が正しく動作しない場合とは、直流連系設備9による連系潮流の調整が行われないか、又は調整が行われているが期待した潮流量が調整されていないことを意味する。
本実施形態の電力系統安定化システムは、想定事故が発生した場合に備えて、後述する第1制御、及び第2制御の二つの制御を演算しておく。第1制御は、上述した実施形態で説明した、対応需給アンバランス量ΔPSSCに対応する負荷制限の内容であって、直流連系設備9による緊急時潮流制御が行われることを想定した制御である。第2制御は、直流連系設備9による緊急時潮流制御により実施されること期待されていた制御に対応する、電力系統安定化システムによる負荷制限の内容である。
本実施形態の電力系統安定化システムは、想定事故が発生した場合に、第1制御を行うとともに、連系潮流を監視する。そして、本実施形態の電力系統安定化システムは、第1制御を実施後、直流連系設備9による緊急時潮流制御が正しく動作していないと判定される場合、第2制御を追加で実施する。
本実施形態の電力系統安定化システムの構成と作用について図9~図11を用いて説明する。図9及び図10は、第2の実施形態の電力系統安定化システムの構成を示す図である。図11は、第2の実施形態の電力系統安定化システムの中央演算装置10の処理を説明するための図である。
図9及び図10に示すように、本実施形態の電力系統安定化システムは、直流監視端末装置13を備える。直流監視端末装置13は、連系潮流などに関する潮流連系情報を、中央演算装置10に送信する。
直流監視端末装置13は、直流連系監視部13Aを備える。直流連系監視部13Aは、電流計測器6、電圧計測器7から入力された電流及び電圧を用いて、連系潮流PTを演算する。直流連系監視部13Aは、演算した連系潮流PTを直流連系情報として、中央演算装置10へ送信する。ここで、連系潮流PTなどの直流連系情報は、アナログ量である。連系潮流PTなどの直流連系情報は、例えば、図8に示した伝送フォーマットの第2ワード等に、2進数、つまりビット情報(0または1)で設定されることで、伝送される。
図11に示すように、中央演算装置10の事前演算部10Aは、給電情報網または直流監視端末装置13から受信した連系潮流PTを用いて、調整期待値ΔPTを(2)式で求める。また、事前演算部10Aは、想定事故が発生した場合に生じる需給アンバランス量ΔPから、調整期待値ΔPTを差し引いた、対応需給アンバランス量ΔPSSCを、(3)式で求める。
事前演算部10Aは、対応需給アンバランス量ΔPSSCが正の場合に、対応需給アンバランス量ΔPSSCを解消する制御量を、(5)式で求め、第1制御の目標制御量PC1とする。
PC1=ΔPSSC-K×ΔfC×(P0-ΔP) …(5)式
ここで、
PC1 :第1制御の目標制御量[MW]
ΔPSSC :電力系統安定化システムで対応する対応需給アンバランス量[MW]
K :電力周波数特性(系統定数)[1/Hz]
ΔfC :目標周波数偏差[Hz]
P0 :系統容量[MW]
また、事前演算部10Aは、直流連系設備9の緊急時潮流制御に期待する制御量を、(6)式で求め、第2制御の目標制御量PC2とする。(6)式における係数αは、(3)式で用いた係数αの値と同一の値である。
PC2=α×ΔPT …(6)式
ここで、
PC2 :第2制御の目標制御量[MW]
α :係数(0<α≦1)
ΔPT :直流連系設備の緊急時潮流制御による連系潮流の調整期待値[MW]
事前演算部10Aは、第1制御と、第2制御それぞれについて、負荷制限する負荷量ができるだけ目標制御量に近くなるように、負荷2の組合せを選択する。なお、事前演算部10Aは、初めに第1制御の制御内容を選択し、次に第1制御で選択されていない負荷2の中から第2制御の制御内容を選択する。事前演算部10Aは、選択した第1制御及び第2制御の内容を制御内容として保存する。
ここで、本実施形態の電力系統安定化システムにおける制御内容について、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態の制御内容を示す情報の構成例を示す図である。
図12に示すように、本実施形態の制御内容の情報は、想定事故ケース番号、需給アンバランス量ΔP、第1制御の制御内容、及び第2制御の制御内容の項目を備える。また、第1制御の制御内容、及び第2制御の制御内容として、目標制御量PC1、目標制御量PC2、制御対象などの項目を備える。想定事故ケース番号、需給アンバランス量ΔP、及び、制御対象の各項目については、図4及び図5と同様であるため、その説明を省略する。第1制御の制御内容は、第1制御にて目標とする目標制御量PC1に対して負荷制限する負荷2を示す。第2制御の制御内容は、第2制御にて目標とする目標制御量PC2に対して負荷制限する負荷2を示す。
図12の例では、想定事故ケース番号1の系統事故として示される、A発電所においてX送電線のルート遮断事故が発生した場合、第1制御の目標制御量PC1はPC1-1であり、制御対象とする負荷2としてのL1、L2、及びL3を負荷制限する設定となっている。また、第2制御の目標制御量PC2はPC2-1であり、制御対象とする負荷2としてのL4及びL5を負荷制限する設定となっている。
事後演算部10Bは、事故検出端末装置11から起動信号を受信した際、受信した起動信号に基づいて、事前演算部10Aにより記憶された制御内容を参照する。事後演算部10Bは、記憶された制御内容から、発生した系統事故に対応する第1制御の制御内容を、初めに実施する。具体的に、事後演算部10Bは、第1制御の制御内容として選択されている負荷2(図12の例では、L1、L2及びL3)を制御する制御端末装置12に、これらの負荷2の負荷制限を指示する制御信号を送信する。
また、事後演算部10Bは、起動信号を受信してから、例えば、予め設定した一定時間、または周波数が規定範囲内に回復するまでの時間、直流監視端末装置13から受信した連系潮流PTを監視する。事後演算部10Bは、連系潮流PTが増加方向に変化しない場合、緊急時潮流制御が正しく動作していないと判定する。事後演算部10Bは、緊急時潮流制御が正しく動作していないと判定した場合、第2制御の制御内容を参照して、制御端末装置12へ追加で制御信号を送信する。つまり、事後演算部10Bは、第2制御の制御内容として選択されている負荷2(図12の例では、L4及びL5)を制御する制御端末装置12に、これらの負荷2の負荷制限を指示する制御信号を送信する。
事後演算部10Bは、連系潮流PTが増加方向に変化したか否かを、一定の時間間隔ΔTにおける、連系潮流PTの変化量で判定する。例えば、(7)式が成立するとき、事後演算部10Bは、連系潮流PTが増加方向に変化していないと判定する。
PT(t)<PT(t-ΔT) …(7)式
ここで、
PT(t):時刻tにおける連系潮流
t :現在時刻
ΔT:時間間隔
なお、緊急時潮流制御の動作判定に用いる直流連系情報は、連系潮流PTに限定しない。緊急時潮流制御の動作判定とは、緊急時潮流制御は正しく動作しているか否かの判定である。つまり、上記では、緊急時潮流制御は正しく動作しているか否かの判定を、連系潮流PTが増加方向に変化したか否かに応じて判定する場合を例に説明したが、これに限定されることはない。
例えば、事後演算部10Bは、直流連系設備9の状態(例えば、正常/異常の2値情報)に基づいて、緊急時潮流制御の動作判定を行ってもよい。この場合、直流監視端末装置13は、直流連系設備9の状態を取り込んで中央演算装置10へ送信する。そして、事後演算部10Bは、直流監視端末装置13から取得した直流連系設備9の状態を示す情報に、異常が示されていた場合、緊急時潮流制御は正しく動作していないと判定し、第2制御を実施させる制御信号を制御端末装置12に送信する。
また、事後演算部10Bは、直流連系設備9に接続する母線3や送電線4の電力の状態(例えば、電圧値)に基づいて、緊急時潮流制御の動作判定を行ってもよい。この場合、直流監視端末装置13は、直流連系設備9に接続する母線3や送電線4に設けられた電圧計測器7から入力された電圧を、中央演算装置10へ送信する。そして、事後演算部10Bは、想定事故発生時における、直流連系設備9に接続する母線3や送電線4の電圧値が、予め設定した値より低下した場合、緊急時潮流制御は正しく動作していないと判定し、第2制御を実施させる制御信号を制御端末装置12に送信する。
また、事後演算部10Bは、周波数の状態、に基づいて、緊急時潮流制御の動作判定を行ってもよい。この場合、直流監視端末装置13、又は事故検出端末装置11、又は制御端末装置12は、電圧計測器7から入力された電圧から周波数を計測し、計測した周波数を、中央演算装置10へ送信する。そして、事後演算部10Bは、第1制御を実施した後の周波数が回復傾向に変化していないと判定した場合、緊急時潮流制御は正しく動作していないと判定し、第2制御を実施させる制御信号を制御端末装置12に送信する。
以上説明したように、第2の電力系統安定化システムでは、中央演算装置10は、第1制御と第2制御とを設ける。第1制御は直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先して実施される制御である。第2制御は緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に実施される制御である。中央演算装置10は、第1制御と第2制御それぞれの制御内容を演算して求める。中央演算装置10は、事故検出端末装置から起動信号を受信したとき、初めに第1制御の制御信号を制御端末装置へ送信する。中央演算装置10は、事故発生前後の直流連系情報を用いて緊急時潮流制御の動作状態を監視し、緊急時潮流制御が正しく動作していないと判定した際、第2制御の制御信号を制御端末装置へ追加で送信する。
これにより、第2の実施形態の電力系統安定化システムは、上述した第1の実施形態の効果に加え、直流連系設備9による緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に、電力系統安定化システムで対応できる。このため、緊急時潮流制御が不良(正しく動作しない)時にも、事故の影響を抑え、広域停電に至ることを防止できる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、中央演算装置10により第1制御及び第2制御それぞれを区別するための情報が付された二つの制御信号が、事故発生時に制御端末装置12に送信される点、及び、制御端末装置12により第2制御を実施するか否かが判断される点において、上述した実施形態と相違する。
本実施形態の電力系統安定化システムの構成は、後述する制御端末装置12を除き、上述した従来の電力系統安定化システム、及び第1の実施形態と同様である。つまり、すでに説明した、図1、図2、図3、及び図6に示す構成である。このため、本実施形態の電力系統安定化システムの構成については、その説明を省略する。
本実施形態の制御端末装置12の構成について、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態の制御端末装置12の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御端末装置12は、制御信号を保持する機能部(制御信号の保持)と、フェイルセーフリレー95F1と、フェイルセーフリレー95F2とを備える。
制御信号を保持する機能部(制御信号の保持)は、制御端末装置12が中央演算装置10から受信した第1制御と第2制御の制御信号を、互いに区別して保持する。制御信号を保持する機能部(制御信号の保持)は、それぞれの制御信号に付与された、第1制御と第2制御とを互いに区別する信号に基づいて、第1制御と第2制御とを区別して保持する。
フェイルセーフリレー95F1は、第1制御の誤動作を防止する周波数リレーである。フェイルセーフリレー95F1は、所定の整定値f95F1で動作する。つまり、フェイルセーフリレー95F1は、電圧計測器7から取得した電圧に基づいて測定される周波数が、所定の整定値f95F1未満(又は、整定値f95F1以下)である場合、その旨を示す信号(95F1動作)を出力する。このフェイルセーフリレー動作により、制御端末装置12は、第1制御の制御信号を受信し、且つ、周波数が所定の整定値f95F1未満(又は、整定値f95F1以下)となった場合に、遮断器5へ遮断指令を出力する。ここで遮断指令が出力される遮断器5は、第1制御において負荷制限の対象となる負荷2を制御(負荷2への電力を供給又は遮断)する遮断器5である。
フェイルセーフリレー95F2は、第2制御の誤動作を防止する周波数リレーである。フェイルセーフリレー95F2は、所定の整定値f95F2で動作する。つまり、フェイルセーフリレー95F2は、電圧計測器7から取得した電圧に基づいて測定される周波数が、所定の整定値f95F2未満(又は、整定値f95F2以下)である場合、その旨を示す信号(95F2動作)を出力する。このフェイルセーフリレー動作により、制御端末装置12は、第2制御の制御信号を受信し、且つ、周波数が所定の整定値f95F2未満(又は、整定値f95F2以下)となった場合に、遮断器5へ遮断指令を出力する。ここで遮断指令が出力される遮断器5は、第2制御において負荷制限の対象となる負荷2を制御(負荷2への電力を供給又は遮断)する遮断器5である。
以下、本実施形態の電力系統安定化システムの作用について説明する。
本実施形態の電力系統安定化システムでは、上述した第2の実施形態と同様に、直流連系設備9の緊急時潮流制御を優先する第1制御、及び緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に備えた第2制御が、中央演算装置10により予め演算される。
中央演算装置10の事前演算部10Aは、給電情報網から受信した連系潮流PTを用いて、調整期待値ΔPTを、(2)式で求める。また、事前演算部10Aは、想定事故が発生した場合に生じる需給アンバランス量ΔPから、調整期待値ΔPTを差し引いた、対応需給アンバランス量ΔPSSCを、(3)式で求める。そして、事前演算部10Aは、対応需給アンバランス量ΔPSSCが正の場合に、対応需給アンバランス量ΔPSSCを解消する制御量を(5)式で求め、第1制御の目標制御量PC1とする。また、事前演算部10Aは、直流連系設備9の緊急時潮流制御に期待する制御量を、(6)式で求め、第2制御の目標制御量PC2とする。
事前演算部10Aは、第1制御と第2制御それぞれについて、負荷制限する負荷量ができるだけ目標制御量PC1、PC2に近くなるように負荷2の組合せを選択する。なお、事前演算部10Aは、初めに第1制御の制御内容を選択し、次に第1制御で選択されていない負荷2の中から第2制御の制御内容を選択する。事前演算部10Aは、選択した第1制御及び第2制御の内容を制御内容として保存する。制御内容は、例えば、図12に示すような内容である。
事後演算部10Bは、事故検出端末装置11から起動信号を受信した際、受信した起動信号に基づいて、事前演算部10Aにより記憶された制御内容を参照する。事後演算部10Bは、記憶された制御内容から、発生した事故に対応する第1制御及び第2制御の制御内容をそれぞれ示す二つの制御信号に、互いの制御信号を区別できる信号を付与して、制御端末装置12に送信する。
ここで、互いの制御信号を区別できる信号について図14を用いて説明する。図14は、本実施形態の伝送フォーマットの例を示す図である。本実施形態の伝送フォーマットのフレーム構成は、図8に示す従来の伝送フォーマットと同様であるため、その説明を省略する。
中央演算装置10は、例えば、第1ワードにおいて、従来の制御信号が設定されるビットに第1制御の制御信号(制御信号1)を設定する。また、中央演算装置10は、第1制御の制御信号の次のビットに第2制御の制御信号(制御信号2)を設定する。このように、中央演算装置10は、例えば、伝送フォーマットにおいて、第1制御及び第2制御の制御信号を設定するビットの位置を互いに異なる位置とすることにより、互いを区別できる信号を付与する。
ここで、整定値f95F1と、整定値f95F2との関係について図15を用いて説明する。図15は、第3の実施形態における整定値f95F1と、整定値f95F2との関係を説明する図である。図15の横軸、縦軸、標準周波数f0、周波数fUFR、及び規定範囲については、図7と同様であるため、その説明を省略する。
図15に示すように、第1制御は、緊急時潮流制御の動作を待たずに実施される制御である。このため、フェイルセーフリレー95F1の整定値f95F1は、規定範囲の下限近くに設定される。一方、第2制御は、緊急時潮流制御が正しく動作しなかった場合のバックアップとして実施される制御である。このため、フェイルセーフリレー95F2の整定値f95F2は、整定値f95F1よりも低い値に設定される。
以上説明したように、第3の実施形態の電力系統安定化システムでは、中央演算装置10は、第1制御と第2制御とを設ける。第1制御は直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先して実施される制御である。第2制御は緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に実施される制御である。中央演算装置10は、第1制御と第2制御それぞれの制御内容を演算して求める。中央演算装置10は、事故検出端末装置から起動信号を受信したとき、第1制御及び第2制御の制御信号を、互いに区別できる信号を付与して制御端末装置12へ送信する。制御端末装置12は、第1制御及び第2制御それぞれに対応するフェイルセーフリレーを備える。
これにより、第3の実施形態の電力系統安定化システムは、上述した第1の実施形態の効果に加え、直流連系設備9による緊急時潮流制御が正しく動作しない場合に、電力系統安定化システムで対応できる。このため、緊急時潮流制御が不良(正しく動作しない)時にも、事故の影響を抑え、広域停電に至ることを防止できる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、直流連系設備9による緊急時潮流制御を優先し、直流連系設備9による緊急時潮流制御で対応できない需給アンバランス分(つまり、対応需給アンバランス量ΔPSSC)について電力系統安定化システムにより対応する。これにより、直流連系設備9による緊急時潮流制御を活用でき、電力系統安定化システムによる負荷制限などの制御が過剰に実施されることを防止することが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。