JP7123531B2 - ポリオキシメチレン樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物に関する。
ポリオキシメチレン樹脂は、機械的強度、耐薬品性、摺動性、耐摩耗性のバランスに優れ、かつ容易に加工することができる。そのため、ポリオキシメチレン樹脂は、代表的なエンジニアリングプラスチックスの一つとして、電気機器の機構部品、自動車部品及びその他の部品などに、広範囲に亘って用いられている。
また、ポリオキシメチレン樹脂に対しては、多くの潜在的な用途において、衝撃強度の向上という市場の要求がある。そして、ポリオキシメチレン樹脂等の樹脂に特定の成分を配合することにより衝撃強度を向上させる技術が、種々公開されている。
このような衝撃強度を向上させる技術として、特許文献1には、ポリオキシメチレン樹脂にコアシェルポリマー及び/又は熱可塑性ポリウレタン樹脂を配合した樹脂製の中空成形品が開示されている。また、特許文献2には、ポリスチレン等の脆性プラスチックとゴム混合物とを含む組成物が開示されている。また、特許文献3には、ポリオキシメチレン樹脂と、ポリ(メタ)アクリル酸エステル又はシリコーンゴムを基礎とするゴム弾性グラフト重合体と、重合体とを含む組成物が開示されている。また、特許文献4には、ポリオキシメチレン樹脂と、熱可塑性ポリウレタン樹脂及び/又はコアシェルポリマー系耐衝撃性改良剤とを含む組成物が開示されている。
特開平7-195496号公報 特許第3929896号公報 特開平6-57097号公報 特開平7-126483号公報
しかし、特許文献1に記載の技術は、ブロー成形を主眼とするものである。また、特許文献1には、熱可塑性ポリウレタン樹脂及びコアシェルポリマーを併用した組成物の実施例が開示されているが、かかる組成物は、材料の剛性の点、成形品の色調の点で、改善の余地を有していた。
また、特許文献2には、ポリオキシメチレン樹脂組成物の開示はなされておらず、特許文献2に記載の組成物は、少なくとも、ポリオキシメチレン樹脂組成物での成形品の色調の点で、改善の余地を有していた。
また、特許文献3に記載の組成物は、耐衝撃性と剛性の両立、摺動特性などの点で、改善の余地を有していた。
また、特許文献4に記載の技術も、摺動性や材料の剛性の点で、改善の余地を有していた。
このように、上述した従来の技術においては、ポリオキシメチレン樹脂に関する耐衝撃性、剛性、摺動性、成形品の色調について改善の余地があり、さらなる向上が望まれている。
そのため、本発明は、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ成形品の色調にも優れたポリオキシメチレン樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ色調が優れた成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオキシメチレン樹脂に特定比率の複数成分からなる改質材を含ませることで上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、(B)改質材0.5~50質量部とを含有し、
前記(B)改質材は、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体を含み、
前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、2層以上の構造を有し、
前記(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び前記(b-2)グラフトゴム共重合体の合計における前記(b-1)熱可塑性ポリウレタンの比率が1~16質量%である、
ことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔2〕
前記(b-1)熱可塑性ポリウレタンがエステル系ポリウレタンである、項目〔1〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔3〕
前記エステル系ポリウレタンは、イソシアネート成分を1としたときのエステル成分の比率(mol比)が4~5であり、かつポリオール成分の比率(mol比)が5~6である、項目〔2〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔4〕
前記エステル系ポリウレタンが、2種のポリオール成分を含む、項目〔2〕又は〔3〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔5〕
前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、ICP-MS分析におけるSi元素の量が1~25質量%である、項目〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔6〕
前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、シリコーン/アクリル系重合体を含み、かつ、ICP-MS分析におけるSi元素の量が2~10質量%である、項目〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔7〕
硫酸イオンの濃度が0.01~0.2ppmである、項目〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔8〕
前記(A)ポリオキシメチレン樹脂は、メルトフローレートが0.1~60g/10分である、項目〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔9〕
ペレット形状である、項目〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔10〕
項目〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物からなることを特徴とする、成形体。
本発明によれば、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ成形品の色調にも優れたポリオキシメチレン樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ色調が優れた成形体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、(B)改質材0.5~50質量部とを含有し、上記(B)改質材は、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体を含み、上記(b-2)グラフトゴム共重合体は、2層以上の構造を有する、ことを一特徴とする。また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、任意成分として、(C)着色剤、その他の添加剤を含有してもよい。
さらに、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体の合計における(b-1)熱可塑性ポリウレタンの比率が1~16質量%である、ことを一特徴とする。上記比率が1質量%以上であることにより、成形機などでの熱滞留時の安定性を向上させることができ、また、16質量%以下であることにより、成形品の色調を向上させることができる。同様の観点から、上記比率は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましく、また、14質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
以下、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する各成分について、詳述する。
<(A)ポリオキシメチレン樹脂>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物が含有する(A)ポリオキシメチレン樹脂(本明細書において、(A)成分、又は(A)などと記載する場合がある。以下、(B)成分、(b-1)成分、(b-2)成分、(C)成分についても同様である。)について、詳細に説明する。
本実施形態において使用可能な(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマーが挙げられる。
具体的に、ポリオキシメチレンホモポリマーとしては、ホルムアルデヒド単量体、若しくは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)又は4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる、実質上オキシメチレン単位のみから成るポリオキシメチレンホモポリマーが挙げられる。
また、具体的に、ポリオキシメチレンコポリマーとしては、ホルムアルデヒド単量体、若しくは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)又は4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、コモノマーとしての環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるポリオキシメチレンコポリマーが挙げられる。ここで、環状エーテル又は環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド;プロピレンオキサイド;エピクロルヒドリン;1,3-ジオキソラン;1,4-ブタンジオールホルマールなどのグリコール又はジグリコールの環状ホルマール;等が挙げられる。
トリオキサンを用いてポリオキシメチレンコポリマーを得る場合、上記1,3-ジオキソラン等のコモノマーの使用量は、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1~60molが好ましく、0.1~20molがより好ましく、0.13~10molがさらに好ましい。また、本実施形態において、ポリオキシメチレンコポリマーの融点は、162℃~173℃が好ましく、167℃~173℃がより好ましく、167℃~171℃がさらに好ましい。融点が162℃~173℃であるポリオキシメチレンコポリマーは、トリオキサン100molに対して1.3~3.5mol程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。なお、融点はDSCにより測定することができる。
また、ポリオキシメチレンコポリマーとしては、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる、分岐を有するポリオキシメチレンコポリマー、並びに、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる、架橋構造を有するポリオキシメチレンコポリマー等も挙げられる。
さらに、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、ポリオキシメチレンの繰り返し構造単位とは異なる異種のブロック部分を有するブロックコポリマーを含んでいてもよい。
(A)ポリオキシメチレン樹脂がブロックコポリマーを含む場合には、その異種ブロック部分に、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を含有する、(B)改質材を選択的及び安定的に存在させることができる。これにより、より一層安定した耐摩耗性を発現させることが可能となる。
ここでいうブロックコポリマーとしては、下記一般式(1)~(4)のいずれかで表されるブロック部分の少なくとも一種を有するポリオキシメチレンホモポリマー、若しくはポリオキシメチレンコポリマー(両者をあわせて以下「ブロックコポリマー」とも記す。)が好ましい。
Figure 0007123531000001
Figure 0007123531000002
Figure 0007123531000003
Figure 0007123531000004
上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示し、R1及びR2が複数である場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(1)、(2)、及び(4)中、R3、R5、R6,は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示す。
上記一般式(4)中、R4は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示し、R4が複数である場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、mは2~6の整数を示し、2~4の整数が好ましい。
上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、nは1~1000の整数を示し、10~250の整数が好ましい。
上記一般式(4)中、pは2~6の整数を示し、2つのpはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(4)中、q、rはそれぞれ正の数を示し、qとrとの合計100モル%に対してqは2~100モル%、rは0~98モル%であり、-(CH(CH2CH3)CH2)-単位及び-(CH2CH2CH2CH2)-単位は、それぞれランダム又はブロックで存在する。
上記一般式(1)で表される基は、アルコールの(ポリ)アルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基であり、上記一般式(2)で表される基は、カルボン酸の(ポリ)アルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基であり、上記一般式(3)で表される基は、(ポリ)アルキレンオキシドから水素原子を脱離した残基である。
上記ブロック部分を有するブロックコポリマーは、例えば、特開昭57-31918号公報や特開昭60-170652号公報、特開2002-3696号公報、特開2002-234922号公報、特開2002-3694号公報などに記載の方法を参考に調製できる。
これら式(1)~(4)で表されるブロックコポリマーのブロック部分は、両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有するブロックを構成する化合物を、ポリオキシメチレン樹脂の重合過程で末端部分と反応させることにより得られる。
ブロックコポリマー中における上記式(1)~(4)で表されるブロック部分の挿入量としては、特に限定されないが、ブロックコポリマーを100質量%としたときの上記ブロック部分の割合が、0.001質量%~30質量%であることが好ましい。上記の割合が0.001質量%以上であることにより、安定して摺動性を維持し続けることができ、また、30質量%以下であることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形体の剛性の低下を抑制することができる。同様の観点から、上記の割合は、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
また、ブロックコポリマー中のブロック部分の分子量は、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形体の剛性を低下させない観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましい。一方、ブロックコポリマー中のブロック部分の分子量の下限は、特に限定されないが、安定した摺動性を維持し続ける観点から、100以上であることが好ましい。
ブロックコポリマー中のブロック部分を形成する化合物としては、特に限定されないが、例えば、C1837O(CH2CH2O)401837、C1123CO2(CH2CH2O)30H、C1837O(CH2CH2O)70H、C1837O(CH2CH2O)40Hや、両末端がヒドロキシル基であるポリエチレングリコール、両末端がヒドロキシル基であるポリプロピレングリコール、両末端がヒドロキシル基である水素添加ポリブタジエン、両末端ヒドロキシアルキル化ポリエチレングリコール、両末端ヒドロキシアルキル化ポリプロピレングリコール、両末端ヒドロキシアルキル化水素添加ポリブタジエン、グリシジル化合物(単官能、多官能)などが挙げられる。
ポリオキシメチレンコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン、及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸及びそのエステル又は無水物としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸-3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらの中でも、重合触媒としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、より具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテルを好適な例として挙げることができる。
ポリオキシメチレンコポリマーの製造方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58-98322号公報及び特開平7-70267号公報に記載の方法が挙げられる。また、上記の方法により得られたポリオキシメチレンコポリマーは、熱的に不安定な末端部〔-(OCH2n-OH基〕が存在するため、不安定末端部の分解除去処理を実施することが好ましい。
具体的には、不安定末端部の分解除去処理では、下記式(5)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリオキシメチレンコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で加熱処理を施す。
Figure 0007123531000005
ここで、式(5)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、各々独立して、炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6~20のアリール基;炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6~20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6~20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基においては、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。n'は1~3の整数を示す。Xは、水酸基、又は、炭素数1~20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1~20の有機チオ酸の酸残基を示す。
第4級アンモニウム化合物は、上記式(5)で表されるものであれば特に限定されないが、本実施形態による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、式(5)におけるRa、Rb、Rc及びRdが、各々独立して、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。このような第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6-ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン-ビス-(トリメチルアンモニウム)、トリメチル-3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ-n-ブチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル-2-オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;上記第4級アンモニウム化合物の、塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;上記第4級アンモニウム化合物の、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;上記第4級アンモニウム化合物の、チオ硫酸等のチオ酸塩;上記第4級アンモニウム化合物の、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩;が挙げられる。これらの中でも、上記第4級アンモニウム化合物の、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4-、SO4 2-)、炭酸(HCO3-、CO32-)、ホウ酸(B(OH)4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物とともに、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリオキシメチレンコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記式(6)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、0.05~50質量ppmが好ましく、1~30質量ppmがより好ましい。
第4級アンモニウム化合物の使用量=P×14/Q ・・・ (6)
ここで、式(6)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレンコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm以上であることにより、不安定末端部の分解除去速度がより向上する傾向にある。また、50質量ppm以下であることにより、不安定末端部の分解除去後のポリオキシメチレンコポリマーの色調がより優れる傾向にある。
本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂の不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去することができる。この分解除去処理に用いる装置としては、特に限定されないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物とポリオキシメチレンコポリマーとを混合する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合触媒を失活する工程において第4級アンモニウム化合物を水溶液として添加する方法、重合により生成したポリオキシメチレンコポリマーパウダーに第4級アンモニウム化合物を吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリオキシメチレンコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。例えば、ポリオキシメチレンコポリマーが溶融混練され及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリオキシメチレンコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合、ポリオキシメチレンコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリオキシメチレンコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、また、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合には、ポリオキシメチレンコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてポリオキシメチレンコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、非常に熱安定性に優れたポリオキシメチレンコポリマーを得ることができる。
ポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する(A)ポリオキシメチレン樹脂は、分子の総末端数に対する末端部のOH基量が、5~95%であることが好ましい。末端部のOH基量が95%以下であれば、樹脂組成物の製造時に意図的にミクロボイドを形成することが可能であるため好ましく、また、末端部のOH基量が5%以上であれば、(B)改質材の密着性を向上させることができる。同様の観点から、末端部のOH基量は、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましく、80%以下であることが一層好ましく、また、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが一層好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する(A)ポリオキシメチレン樹脂は、末端部のOH基量が、10~200mmol/kgであることが好ましい。末端部のOH基量が200mmol/kg以下であれば、ポリオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性を製造時に非常に優れたものとすることができ、また、10mmol/kg以上であれば、ポリオキシメチレン樹脂の結晶化度が上昇する傾向にあり好ましい。同様の観点から、末端部のOH基量は、150mmol/kg以下であることがより好ましく、100mmol/kg以下であることがさらに好ましく、90mmol/kg以下であることが一層好ましく、また、15mmol/kg以上であることがより好ましく、20mmol/kg以上であることがさらに好ましく、40mmol/kg以上であることが一層好ましい。
なお、末端部のOH基量は、1H-NMR及び13C-NMR等により、直接的及び間接的に測定することができる。
直接的測定では、以下に限定される方法ではないが、1H-NMR及び13C-NMR等の二次元NMR、プレサチュレーション法、WET法等により、直接観測することができる。
間接的測定では、以下に限定される方法ではないが、(A)ポリオキシメチレン樹脂をNMR測定溶媒に溶解させ、次いで、末端部のOH基に反応しうるシリル化剤等を用いて誘導体化した後に、測定することができる。
シリル化剤としては、以下に限定されるものではないが、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N-メチル-N-トリメチルシリルアセトアミド、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、N-トリメチルシリルジメチルアミン、N-トリメチルシリルジエチルアミン、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N-トリメチルシリルイミダゾール、tert-ブチルジメチルクロロシラン、N-メチル-N-tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロアセトアミド等が使用可能である。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー、分岐を有するポリオキシメチレンコポリマー、架橋構造を有するポリオキシメチレンコポリマー、ブロック部分を有するホモポリマーベースのブロックコポリマー、及びブロック部分を有するコポリマーベースのブロックコポリマーのいずれも用いることができ、これらを併用することもできる。
また、(A)ポリオキシメチレン樹脂として、例えば分子量の異なる組み合わせや、コモノマー量の異なるポリオキシメチレンコポリマーの組み合わせ等も適宜使用可能である。
なお、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形体における、コポリマーやブロックコポリマーの比率は、1H-NMR及び13C-NMR等により測定することができる。
また、ブロック部分の構造は、ブロックコポリマーを含有するポリオキシメチレン樹脂組成物又はそれからなる成形体を溶解し、再沈殿やろ別などの操作を行い単離したのちに、当該ブロックコポリマーを塩酸分解することでブロック部分を単離精製することができ、当該ブロック部分について、1H-NMR、13C-NMR、二次元NMRなどの各種測定を行うことにより、決定することができる。
(A)ポリオキシメチレン樹脂のメルトフローレートとしては、特に限定されないが、ISO-1133条件Dに準拠して測定されるメルトフローレートが、0.1~60g/10分であることが好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分以上であることで、成形流動性の面で好ましく、また、60g/10分以下であることで、衝撃強度をより向上させることができる。加えて、メルトフローレートが上記範囲内であれば、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において(B)改質材を均一に分散させることができる。同様の観点から、(A)ポリオキシメチレン樹脂のメルトフローレートは、50g/10分以下であることがより好ましく、20g/10分以下であることがさらに好ましく、10g/10分以下であることが一層好ましく、5g/10分以下であることが特に好ましい。一方、同様の観点から、(A)ポリオキシメチレン樹脂のメルトフローレートは、0.2g/10分以上であることがより好ましく、0.5g/10分以上であることがさらに好ましく、1g/10分以上であることが一層好ましく、2g/10以上であることが特に好ましい。
(A)ポリオキシメチレン樹脂の溶融粘度としては、特に限定されない。例えば、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度が、100~4000Pa・sであることが好ましい。当該粘度が上記範囲内であれば、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において(B)改質材を均一に分散させることができる。また、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度が、3000Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることがさらに好ましく、1500Pa・s以下であることが一層好ましく、1000Pa・s以下であることが特に好ましい。一方、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度が、150Pa・s以上であることがより好ましく、200Pa・s以上であることがさらに好ましく、300Pa・s以上であることが一層好ましく、400Pa・s以上であることが特に好ましい。
さらに、例えば、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度が、50~2000Pa・sであることが好ましい。当該粘度が上記範囲内であれば、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において(B)改質材を均一に分散させることができる。また、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度が、1500Pa・s以下であることがより好ましく、1000Pa・s以下であることがさらに好ましく、500Pa・s以下であることが一層好ましく、400Pa・s以下であることが特に好ましい。一方、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度が、60Pa・s以上であることがより好ましく、75Pa・s以上であることがさらに好ましく、90Pa・s以上であることが一層好ましく、150Pa・s以上であることが特に好ましい。
なお、上記の粘度は、ツインキャピラリーレオメーター(マルバーン社製、ロザンド、RH10)等によって測定することができ、所定の温度及びシェアレートで、適宜測定することができる。
<(B)改質材>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(B)改質材を含有する。また、(B)改質材は、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体を含み、(b-2)グラフトゴム共重合体は、2層以上の構造を有する。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(B)改質材を、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して0.5~50質量部含有する。(B)成分の含有量を(A)成分100質量部に対して0.5質量部以上とすることで、耐衝撃性を向上させることができる傾向にあり、また、50質量部以下とすることで、剛性を保持したまま耐衝撃性を向上させることができる傾向にある。
同様の観点から、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物における、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量は、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、また、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物においては、(A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)改質材とが、海島構造を形成することができる。そして、この構造は、電子顕微鏡(透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM))や光学顕微鏡などの機器で観察することができる。これらの機器は一般的であり、例えば、日立製作所製の透過型電子顕微鏡H-7650等が挙げられる。
また、(A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)改質材の識別は、当業者であれば容易に判断できる。具体的には、透過型電子顕微鏡であれば、分子構造に起因した電子線透過性の差による画面の色の濃淡や、オスミウム酸や四酸化ルテニウムなどの染色剤による差や、結晶性高分子に起因するラメラ構造などの差によって判断できる。
本実施形態において、(B)改質材は、ポリオキシメチレン樹脂組成物から再沈殿、溶解後ろ別等の分離操作により、単離精製することができ、組成比、構造、分子量等を算出することが可能である。また、例えば、1H-NMR、13C-NMR、二次元NMR、MALDI-TOF MS、GPCなどの各種測定を行うことにより、繰り返し構造や分岐構造などの分子構造、及び各種官能基の位置情報などを決定することができる。
-(b-1)熱可塑性ポリウレタン-
熱可塑性ポリウレタンとは、主鎖にウレタン結合を有する高分子化合物であり、かつ熱可塑的に処理することができるエラストマーである。高分子の構造としては、例えば、剛直なウレタンセグメント(ハードセグメント)と柔軟なジオールセグメント(ソフトセグメント)とから構成されるマルチブロックコポリマーが挙げられる。
剛直なウレタンセグメントは、例えば、多官能イソシアネート類と鎖延長剤として知られているものとの反応により得られる。多官能イソシアネート類としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート又は脂肪族ジイソシアネートなどを用いることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)(例えば異性体である2,4-トルエンジイソシアネート及び2,6-トルエンジイソシアネートやその混合物が挙げられる)、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロペンチレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ブチレンジイソシアネート等が挙げられる。
鎖延長剤(架橋剤と称される時もある)としては、例えば、分子量(モル質量)500g/mol未満、好ましくは300g/mol未満の短鎖脂肪族、脂環式又は芳香族のジオール類、ジアミン類、及びトリオール類が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレン1,3-グリコール、プロピレン1,2-グリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジヒドロキシ-シクロペンタン、1,4-シクロヘキサンジメチロール、チオジグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ヒドロキノンのジヒドロキシエチルエーテル、水素化ビスフェノールAなどが挙げられる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。トリオール類としては、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられる。
柔軟なジオールセグメントとしては、例えば、数平均モル質量500~5000g/mol、好ましくは1000~3000g/molである、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリエーテルエステルジオール類、ポリカーボネートジオール類などが挙げられる。
ポリエーテルジオール類としては、例えば、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリブタジエンジオールやこれらの共重合物(例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマー、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとのコポリマー)等が挙げられ。また、これらは、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はテトラヒドロフランの開環重合により得ることができる。
ポリエステルジオール類は、上述のポリエーテルジオール類又はジアルコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレン1,3-グリコール、プロピレン1,2-グリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどが挙げられる)と、ジカルボン酸類(例えば、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる)とのエステル化反応により、又は対応するエステル交換反応により、得ることができる。また、これらのポリエステルジオール類は、ラクトン類(例えば、カプロラクトン、プロピオラクトン、バレロラクトンなどが挙げられる)の開環重合により、得ることもできる。
ポリカーボネートジオール類は、上述のポリエーテルジオール類又はジアルコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレン1,3-グリコール、プロピレン1,2-グリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどが挙げられる)を、ジフェニルカーボネート類又はホスゲン類と反応させることにより、得ることができる。
(b-1)熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば、エステル系ポリウレタン(「ポリエステル系ポリウレタン」と称されることもある)、エーテル系ポリウレタン(「ポリエーテル系ポリウレタン」と称されることもある)、エーテルエステル系ポリウレタン(「ポリエーテルエステル系ポリウレタン」と称されることもある)、カプロラクトン系ポリウレタン(「ポリカプロラクトン系ポリウレタン」と称されることもある)が挙げられる。また、(b-1)熱可塑性ポリウレタンは、耐衝撃性をより十分に発現させる観点から、エステル系ポリウレタン、エーテルエステル系ポリウレタンであることが好ましく、エステル系ポリウレタンであることがより好ましい。さらに、エステル系ポリウレタンは、耐衝撃性をより十分に発現させる観点から、2種のポリオール成分(「ポリオール単位」と別称することもできる。)を含むことが好ましい。
(b-1)熱可塑性ポリウレタンの硬度は、約ショアA65~約ショアD75の範囲内に入る。この硬度は、剛直なウレタンセグメントと柔軟なジオールセグメントとの割合によって決定される。
(b-1)熱可塑性ポリウレタンのメルトインデックスは、種々の温度で測定され、剛直なウレタンセグメントの溶融挙動に依存する。これは、付加の度合い(鎖全体のモル質量)の測定でもある。
また、下記の成分割合範囲とすることで、組成物の加工時に(b-1)熱可塑性ポリウレタンが適切な溶融粘度となり、耐衝撃性の向上が期待できる。
エーテル系ポリウレタンは、イソシアネート成分(「イソシアネート単位」と別称することもできる。)を1としたときのエーテルジオール成分(「エーテルジオール単位」と別称することもできる。)の比率(mol比)が、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、また、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、13以上であることがさらに好ましい。
一方、エステル系ポリウレタン、エーテルエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタンは、イソシアネート成分を1としたときのエステル成分(「エステル単位」と別称することもできる。)(カーボネート成分(「カーボネート単位」と別称することもできる。))の比率(mol比)が、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが一層好ましい。エステル成分の比率を上記上限以下とすることで、良好な衝撃吸収性を示す傾向にあり、また、上記下限以上とすることで、より良好な流動性を確保することができる。
なお、上記のエステル成分は、カルボン酸成分とポリオール成分とが反応することで生成する成分を指す。
また、エステル系ポリウレタン、エーテルエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタンは、イソシアネート成分を1としたときのポリオール成分の比率(mol比)が、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、5以上であることが一層好ましい。ポリオール成分の比率を上記上限以下とすることで、良好な海島構造を示す傾向にあり、また、上記下限以上とすることで、より良好な粘度を確保することができる。
ポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる成形体における(b-1)熱可塑性ポリウレタンの分散粒径は、円相当径換算で、10~2000nmであることが好ましい。(b-1)熱可塑性ポリウレタンの分散粒径が10nm以上であれば、良好な分散性となり、耐衝撃性を効果的に発現することができる。また、(b-1)熱可塑性ポリウレタンの分散粒径が2000nm以下であれば、より十分に耐衝撃性を発現することができる。同様の観点から、ポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる成形体における(b-1)熱可塑性ポリウレタンの分散粒径は、円相当径換算で、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、800nm以下であることが一層好ましく、また、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが一層好ましい。
なお、本明細書において、円相当径とは、投影される対象物質の短径及び直径の積の値を算出し、当該値と同一の面積を有する円の直径を指す。また、成形体における対象物質((b-1)熱可塑性ポリウレタン、(b-2)グラフトゴム共重合体など)の分散粒径は、以下のようにして求めることができる。即ち、透過型電子顕微鏡などで成形体の樹脂流動方向に対して垂直な面を観察し、対象物質の分散ドメインと認められるものの短径及び直径を測定する。次いで、短径及び直径の積の値を算出し、当該値と同一の面積を有する円の直径を求める。そして、任意の10個以上の対象物質について上記円の直径を求め、それらを平均化したものを、分散粒径とすることができる。
-(b-2)グラフトゴム共重合体-
グラフトゴム共重合体とは、コアシェルゴムであり、コア層と、コア層を覆う1層以上のシェル層とから構成される重合体である。ここで、シェル層の層数は、特に限定されるものではなく、2層以上であってもよい。
(b-2)グラフトゴム共重合体のコア層を構成する成分は、耐衝撃性向上のため、ゴム弾性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、シリコーン/アクリル系重合体、スチレン系重合体、ニトリル系重合体、共役ジエン系重合体、ウレタン系重合体、オレフィン系重合体などが挙げられる。また、(b-2)グラフトゴム共重合体のコア層を構成する成分は、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、シリコーン/アクリル系重合体、共役ジエン系重合体、ウレタン系重合体であることが好ましい。中でも、(b-2)グラフトゴム共重合体のコア層を構成する成分は、耐衝撃性及び耐熱エージング性の観点より、シリコーン系重合体、アクリル系重合体、シリコーン/アクリル系重合体が好ましい。
また、コア層を構成する成分としては、ジメチルシロキサン及びフェニルメチルシロキサン等のシロキサン化合物;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及び2―エチルヘキシルアクリレート等のアクリル化合物;などを重合させてなるゴム成分、又はこれらの成分の共重合成分等が好適に挙げられる。
(b-2)グラフトゴム共重合体の最外のシェル層を構成する成分としては、不飽和カルボン酸エステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、又はその他のビニル系単位等を含有する重合体が挙げられる。中でも、耐衝撃性及び耐熱エージング性の観点より、(メタ)アクリル酸エステル系単位を含有する重合体が好ましい。
(b-2)グラフトゴム共重合体は、エージング時の熱安定性や剛性の観点から、ICP-MS分析におけるSi元素の量が、1~25質量%であることが好ましい。また、上記のSi元素の量は、特に限定されないが、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましいく、また、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、2.5質量%以上であることが一層好ましい。
(b-2)グラフトゴム共重合体の製造方法としては、特に限定されるものでなく、公知の重合方法、例えば、モノマーと多官能ビニルモノマーとを特定比率で含む混合物を、懸濁重合、乳化重合等により重合させる方法により、得ることができる。
(b-2)グラフトゴム共重合体の粒径は、20~2000nmであることが好ましい。(b-2)グラフトゴム共重合体の粒径が20nm以上であれば、溶融混練時の分散性を向上させることができ、また、2000nm以下であれば、樹脂組成物の製造時における取扱いをより容易なものとすることができる。同様の観点から、(b-2)グラフトゴム共重合体の粒径は、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが一層好ましく、また、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、800nm以下であることが一層好ましい。
成形体における(b-2)グラフトゴム共重合体の分散粒径は、円相当径換算で、20~2000nmであることが好ましい。(b-2)グラフトゴム共重合体の分散粒径が20nm以上であれば、良好な分散性となり、耐衝撃性を効果的に発現することができる。また、(b-2)グラフトゴム共重合体の分散粒径が2000nm以下であれば、より十分に耐衝撃性を発現することができる。同様の観点から、成形体における(b-2)グラフトゴム共重合体の分散粒径は、円相当径換算で、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、800nm以下であることが一層好ましく、また、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが一層好ましい。
上記(b-2)グラフトゴム共重合体のコア層及びシェル層の質量比は、特に限定されるものではない。
(b-2)グラフトゴム共重合体全体を100質量部としたときのコア層の質量比は、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。コア層の質量比を上記下限以上とすることで、(b-2)グラフトゴム共重合体同士の鎖の絡み合いが少なくなり、分散性をより向上させることができる。
また、(b-2)グラフトゴム共重合体全体を100質量部としたときのコア層の質量比は、95質量部以下であることが好ましく、90重量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがさらに好ましい。コア層の質量比を上記上限以下とすることで、耐衝撃性をより向上させることができる。
(b-2)グラフトゴム共重合体は、硫酸イオンの濃度が0.1~5ppmであることが好ましい。(b-2)グラフトゴム共重合体における硫酸イオンの濃度が0.1ppm以上であれば、溶融混練時に意図的にミクロボイドを形成することが可能であるため好ましく、また、5ppm以下であれば、熱安定性をより向上させることができる。同様の観点から、(b-2)グラフトゴム共重合体における硫酸イオンの濃度は、4ppm以下であることがより好ましく、3ppm以下であることがさらに好ましく、2.5ppm以下であることが一層好ましい。また、(b-2)グラフトゴム共重合体における硫酸イオンの濃度は、0.2ppm以上であることがより好ましく、0.3ppm以上であることがさらに好ましく、0.4ppm以上であることが一層好ましい。
(b-2)グラフトゴム共重合体は、カルシウムイオンの濃度が10~500ppmであることが好ましい。(b-2)グラフトゴム共重合体におけるカルシウムイオンの濃度が10ppm以上であれば、溶融混練時に意図的にミクロボイドを形成することが可能であるため好ましく、また、500ppm以下であれば、熱安定性をより向上させることができる。同様の観点から、(b-2)グラフトゴム共重合体におけるカルシウムイオンの濃度は、400ppm以下であることがより好ましく、350ppm以下であることがさらに好ましく、300ppm以下であることが一層好ましく、また、15ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることがさらに好ましく、30ppm以上であることが一層好ましい。
(b-2)グラフトゴム共重合体の市販品としては、例えば、「メタブレン(登録商標)」(三菱レイヨン社製)、「カネエース(登録商標)」(カネカ社製)、「スタフィロイド(登録商標)」(アイカ工業社製)、又は「パラペット(登録商標)SA」(クラレ社製)、「PARALOID(登録商標)」(DOW社製)、「Clearstrength(登録商標)」(ARKEMA社製)、「Durastrength(登録商標)」(ARKEMA社製)などが挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、(b-2)グラフトゴム共重合体の市販品としては、メタブレン、より具体的には、S2001、S2006、S2030、S2100、S2200、S2501、SX-006、SRK-200、SX-005、MR-01をより好適に用いることができる。
<(C)着色剤>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、付加的成分(任意成分)として、(C)着色剤を含有してもよい。ここで、(C)着色剤とは、可視光の吸収、散乱、反射等の作用により外観に変化をもたらす物質をいう。
本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体中に存在し得る(C)着色剤は、本来の目的の着色以外に、(B)成分と組み合わせることによって、耐摩耗性のさらなる改善という重要な役割を有することができる。そして、優れた耐摩耗性を得る観点から、後述の範囲内の量で、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物中に(C)着色剤を含有させることができる。
(C)着色剤の存在により耐摩耗性が改善される理由は明らかではないが、(C)着色剤により成形体の表面硬度が向上することに起因することなどが考えられる。
(C)着色剤としては、以下に限定されるものではないが、無機系顔料、有機系染顔料等が挙げられる。
無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に使用されている無機系顔料が挙げられ、例えば、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の炭酸塩、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、バライト粉、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、フェロシアン化鉄カリ、カオリン、チタンイエロー、コバルトブルー、ウルトラマリン青、カドミウム、ニッケルチタン、リトポン、ストロンチウム、アンバー、シェンナ、アズライト、マラカイト、アズロマラカイト、オーピメント、リアルガー、辰砂、トルコ石、菱マンガン鉱、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、サンゴ粉、白色雲母、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレッド、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、プルシアンブルー、オーレオリン、タルク、ウォラストナイト、雲母チタン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、植物性黒、骨炭、炭酸カルシウム、紺青等が挙げられる。
なお、上記「金属の酸化物」は、鉄、亜鉛若しくはチタンから選ばれる2種以上の金属からなる「複合金属酸化物」も包含する。
特に、(C)着色剤としては、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、鉄、亜鉛及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の炭酸塩、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、アルミナホワイト、タルク、ホワイトカーボン、シルバーホワイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、炭酸カルシウムが、好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、(C)着色剤としては、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の耐摩耗性の観点から、モース硬度が8以下である着色剤が好ましい。また、(C)着色剤は、モース硬度が7以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
なお、(C)着色剤のモース硬度は、モース硬度計により測定することができる。
有機系染顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の有機系染顔料が挙げられる。
特に、有機系染顔料としては、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性の観点から、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料が好ましい。より好ましくは、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。さらに好ましくは、キノン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(C)着色剤を、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部含有することが好ましい。(C)成分の含有量を(A)成分100質量部に対して0.01質量部以上とすることで、ポリオキシメチレン樹脂組成物に十分な着色性をもたらすことができ、また、3質量部以下とすることで、ポリオキシメチレン樹脂組成物の微小荷重摺動時における摩耗特性の改善効果を十分に得ることができる。
同様の観点から、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物における(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対する(C)着色剤の含有量は、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.5質量部以下であることが一層好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましく、0.8質量部以下であることが最も好ましく、また、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましい。
<その他の添加剤>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、付加的成分(任意成分)として、従来公知の、ポリオキシメチレン樹脂組成物に使用されている各種安定剤などの添加剤を含有することができる。
安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸などの捕捉剤、等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものが、適宜使用可能である。
ホルムアルデヒドやギ酸などの捕捉剤としては、以下に限定されるものではなく、例えば、メラミンやポリアミド系樹脂といったホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。具体例としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられる。上記脂肪酸カルシウム塩における脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。
(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対する酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、0.1~2質量部であることが好ましい。
また、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対する捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体の含有量は、0.1~3質量部であることが好ましい。
また、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対する補足剤、例えばアルカリ土類金属の脂肪酸塩の含有量は、0.1~1質量部であることが好ましい。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の諸性質)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、硫酸イオンの濃度が0.01~2.0ppmであることが好ましい。ポリオキシメチレン樹脂組成物における硫酸イオンの濃度が0.01ppm以上であれば、溶融混練時に意図的にミクロボイドを形成することが可能であるため好ましく、また、2.0ppm以下であれば、熱安定性をより向上させることができる。同様の観点から、ポリオキシメチレン樹脂組成物における硫酸イオンの濃度は、1.0ppm以下であることがより好ましく、0.8ppm以下であることがさらに好ましく、0.7ppm以下であることが一層好ましく、0.6ppm以下であることが特に好ましく、また、0.02ppm以上であることがより好ましく、0.03ppm以上であることがさらに好ましく、0.04ppm以上であることが一層好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、カルシウムイオンの濃度が2~100ppmであることが好ましい。ポリオキシメチレン樹脂組成物におけるカルシウムイオンの濃度が2ppm以上であれば、溶融混練時に意図的にミクロボイドを形成することが可能であるため好ましく、また、100ppm以下であれば、熱安定性をより向上させることができる。同様の観点から、。ポリオキシメチレン樹脂組成物におけるカルシウムイオンの濃度は、90ppm以下であることがより好ましく、80ppm以下であることがさらに好ましく、70ppm以下であることが一層好ましく、また、3ppm以上であることがより好ましく、4ppm以上であることがさらに好ましく、5ppm以上であることが一層好ましい。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、例えば、所定量の(A)ポリオキシメチレン樹脂及び(B)改質材、並びに必要に応じて(C)着色剤、その他の添加剤を、溶融混練することにより得ることができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の組成物を得るための装置としては、公知の装置、例えば、一軸又は多軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられ、中でも、減圧装置やサイドフィーダー設備等を装備した二軸押出機が特に好ましい。
原料成分を混合及び溶融混練する方法としては、特に限定されず、当業者が周知の方法を利用可能である。例えば、(A)成分、(B)成分を、すべて、予めスーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで混合し、二軸押出機で一括溶融混練する方法、(A)成分を二軸押出機等の装置に供給し、溶融混練しつつ、装置の途中から(B)成分を添加する方法、(A)成分の一部を二軸押出機等の装置に供給し、溶融混練しつつ、装置の途中から(A)成分の残りの一部及び(B)成分を添加する方法、等が挙げられる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上記押出機等の装置により製造した場合には、ペレット形状として得られ、成形などに用いることができる。即ち、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物から、成形体を得ることができる。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体の用途)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該ポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形体は、耐衝撃性が要求される用途に好適に使用可能である。具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギア等のギア、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;デジタルビデオカメラ、及びデジタルカメラ等の映像機器用部品;CD、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、その他光デイスクのドライブ;ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。
また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる成形体は、自動車部品として、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品に適用可能である。
さらに、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる成形体は、その他の用品又は部品として、例えば、筆記具のペン先、芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機(開閉部ロック機構、商品排出機構部品)、家具、楽器、住宅設備機器部品としても好適に使用できる。
そして、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる成形体は、これまでポリオキシメチレンが好適に使用されてきた種々用途への適用も可能であり、高い産業上の利用可能性を有している。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<原料成分の調製又は準備>
(A)ポリオキシメチレン樹脂を、それぞれ下記に示すようにして調製するとともに、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体として、下記に示すものを用いた。
(1)ポリオキシメチレン樹脂(A-1)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの二軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。)を、80℃に調整した。この重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとしての1,3-ジオキソランを200g/時間、連鎖移動剤としてのメチラールをトリオキサン1モルに対して1.8×10-3モルの量で連続的に添加した。
さらに、重合機に、重合触媒としての三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルの量で連続的に添加し、重合を行った。重合機より排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。
失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、ベント付き二軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリオキシメチレンコポリマーの不安定末端部の分解除去を行った。このとき、第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。
不安定末端部が分解されたポリオキシメチレンコポリマーに、酸化防止剤としてのトリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機のダイス部よりストランドとして押出し、ペレットにした。
このようにして得られたポリオキシメチレンコポリマーを、ポリオキシメチレン樹脂(A-1)とした。ポリオキシメチレン樹脂(A-1)のメルトフローレートは、9g/10分(ISO-1133条件D)であった。
また、ポリオキシメチレン樹脂(A-1)の溶融粘度に関し、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度は、550Pa・sであり、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度は、250Pa・sであった。
(2)ポリオキシメチレン樹脂(A-2)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの二軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。)を、80℃に調整した。この重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとしての1,3-ジオキソランを200g/時間、連鎖移動剤としてのメチラールをトリオキサン1モルに対して1.10×10-3モルの量で連続的に添加した。
さらに、重合機に、重合触媒としての三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルの量で連続的に添加し、重合を行った。重合機より排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。
失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、ベント付き二軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリオキシメチレンコポリマーの不安定末端部の分解除去を行った。このとき、第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。
不安定末端部が分解されたポリオキシメチレンコポリマーに、酸化防止剤としてのトリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機のダイス部よりストランドとして押出し、ペレットにした。
このようにして得られたポリオキシメチレンコポリマーを、ポリオキシメチレン樹脂(A-2)とした。ポリオキシメチレン樹脂(A-2)のメルトフローレートは、3g/10分(ISO-1133条件D)であった。
また、ポリオキシメチレン樹脂(A-2)の溶融粘度に関し、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度は、900Pa・sであり、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度は、350Pa・sであった。
(3)ポリオキシメチレン樹脂(A-3)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの二軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。)を、80℃に調整した。この重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとしての1,3-ジオキソランを200g/時間、連鎖移動剤としてのメチラールをトリオキサン1モルに対して3.0×10-3モルの量で連続的に添加した。
さらに、重合機に、重合触媒としての三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルの量で連続的に添加し、重合を行った。重合機より排出されたポリオキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。
失活されたポリオキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、ベント付き二軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリオキシメチレンコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリオキシメチレンコポリマーの不安定末端部の分解除去を行った。このとき、第4級アンモニウム化合物の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。
不安定末端部が分解されたポリオキシメチレンコポリマーに、酸化防止剤としてのトリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレットにした。
このようにして得られたポリオキシメチレンコポリマーを、ポリオキシメチレン樹脂(A-3)とした。ポリオキシメチレン樹脂(A-3)のメルトフローレートは、45g/10分(ISO-1133条件D)であった。
また、ポリオキシメチレン樹脂(A-3)の溶融粘度に関し、190℃のシェアレート100sec-1のときの粘度は、350Pa・sであり、190℃のシェアレート1000sec-1のときの粘度は、100Pa・sであった。
(4)熱可塑性ポリウレタン(b-1-1)
繰り返しのハードセグメントとソフトセグメントとで構成されている、市販のエステル系ポリウレタン〔(ESTANE:登録商標)を用いた。各組成のmol比は、ジフェニルメタンジイソシアネート(イソシアネート成分):アジピン酸(エステル成分):テトラメチレングリコール(ポリオール成分):エチレングリコール(ポリオール成分)=1:4.5:3.3:2.2であった。
(5)熱可塑性ポリウレタン(b-1-2)
繰り返しのハードセグメントとソフトセグメントとで構成されている、市販のエーテル系ポリウレタン〔(RESAMINE:登録商標)を用いた。各組成のmol比は、ジフェニルメタンジイソシアネート:テトラメチレングリコール=1:8.8であった。
(6)熱可塑性ポリウレタン(b-1-3)
繰り返しのハードセグメントとソフトセグメントとで構成されている、市販のカプロラクトン系ポリウレタン〔(ミラクトラン:登録商標)を用いた。各組成のmol比は、ジフェニルメタンジイソシアネート:テトラメチレングリコール:ポリカプロラクトンポリオール=1:1:3であった。
これらは、WO2011125540公報などに記載の方法で調整可能である。
(7)グラフトゴム共重合体(b-2-1)
市販のメタブレンS2100を用いた。このグラフトゴム共重合体のSi元素の量は、2.9質量%であった。
(8)グラフトゴム共重合体(b-2-2)
市販のメタブレンS2006を用いた。このグラフトゴム共重合体のSi元素の量は、3.5質量%であった。
(9)グラフトゴム共重合体(b-2-3)
市販のメタブレンS2030を用いた。このグラフトゴム共重合体のSi元素の量は、11.1質量%であった。
(10)グラフトゴム共重合体(b-2-4)
市販のKANE ACE MR-01を用いた。このグラフトゴム共重合体のSiの元素量は、27質量%であった。
(11)グラフトゴム共重合体(b-2-5)
市販のメタブレンC223Aを用いた。
(12)グラフトゴム共重合体(b-2-6)
市販のメタブレンE875Aを用いた。
(13)グラフトゴム共重合体(b-2-7)
市販のKANE ACE FM-53を用いた。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の調製、及び成形体の作製>
以下の手順に従って、ポリオキシメチレン樹脂組成物の調製及び成形体の作製を行った。
(1)ポリオキシメチレン樹脂組成物の調製
表1及び表2に示される配合処方に従い、押出機(東芝機械(株)製TEM-26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いて、シリンダー温度をすべて200℃に設定し、(A)成分の90質量部相当のペレットと、(b-2)成分とを、それぞれ押出機トップのメインスロート部より単独で定量フィーダーから供給した。また、(A)成分の10質量部相当のペレットと、(b-1)成分とを、それぞれ押出機サイド部より単独で定量フィーダーから供給した。場合により、(C)成分、その他の添加剤等の付加的成分を、(A)成分の90質量部相当のペレットと一括混合し、押出機トップのメインスロート部より単独で供給した。押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で樹脂混練物をストランド状に押出し、ストランドバスにて急冷し、ストランドカッターで切断し、ペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物を得た。
(2)成形体の作製
得られたペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械(株)製、EC-75NII)を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度を60℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294-1に準拠した多目的試験片(成形体)を得た。
<特性評価>
得られたペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物又は多目的試験片を用いて、以下の手順に従って各種特性を評価した。
(1)ノッチ付きシャルピー衝撃強度(23°C)
得られた多目的試験片を用いて、ISO179-1に準拠して測定を行った。結果を表1及び表2に示す。値が大きいほど、耐衝撃性に優れると判断した。
(2)引張弾性率
得られた多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して測定を行った。結果を表1及び表2に示す。値が大きいほど、剛性に優れると判断した。
(3)摩擦係数
ボールオンディスク型往復動摩擦摩耗試験機(AFT-15MS型、東洋精密(株)製)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数1万回の条件で、得られた多目的試験片の表面における摺動試験を実施した。ボール材料としては、SUS304ボール(直径5mmの球)を用いた。往復回数1万回に到達した時の摩擦係数を測定した。結果を表1及び表2に示す。値が小さいほど、摺動性に優れると判断した。
(4)熱滞留限界時間
得られたペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械(株)製、EC-75NII)を用いて、シリンダー温度を210℃、金型温度を30℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294-1に準拠した多目的試験片(成形体)を得た。10ショット成形した後、シリンダー内に樹脂を可塑化した状態で、ヒーター加熱は続けたままで成形動作を停止し、所定時間停止後、再度成形を開始し、最初の成形体へのシルバーストリークスの発生状況を確認した。シルバーストリークスの発生状況の確認は、成形機の停止時間10分、20分、30分、40分、50分で実施した。そして、シルバーストリークスが成形体の表面全面に現れた時間を、シリンダー内での熱滞留限界時間とした。結果を表1及び表2に示す。限界時間が長いほど、熱安定性に優れると評価した。
(5)成形品色調
得られたペレット形状のポリオキシメチレン樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械(株)製、EC-75NII)を用いて、シリンダー温度を210℃、金型温度を30℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294-1に準拠した多目的試験片(成形体)を得た。10ショット成形した後、シリンダー内に樹脂を可塑化した状態で、ヒーター加熱は続けたままで成形動作を停止し、30分間停止後、再度成形を開始し、最初の成形体の色調を測定した。また、停止時間30分後の色調と、停止時間0分の色調との差(色差)を測定し、Δbを算出した。この値を、下記に示す基準に従って評価し、A及びBが熱安定性に優れると判断した。結果を表1及び表2に示す。
A:Δbが0~3であり、目視で変色が認められないか、又はかすかに変色が認められる。
B:Δbが3~5であり、目視で変色が認められる。
C:Δbが5以上であり、変色が著しい。
(6)エージング後の引張強度保持率
得られた多目的試験片を用いて、長期熱安定性評価を実施した。具体的には、多目的試験片を145℃環境下のギヤオーブンに入れて、35日間高熱環境下に暴露した。35日後に取り出し、24時間後にISO527-1に準拠した方法で引張強度の測定を行った。暴露前の引張強度と、暴露後の引張強度とを比較し、強度保持率を算出した。結果を表1及び表2に示す。この値が100に近いほど、優れていると判断した。
Figure 0007123531000006
Figure 0007123531000007
表1及び表2より、(A)ポリオキシメチレン樹脂、並びに、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体を含む(B)改質材を含有し、(B)改質材の含有量が、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して0.5~50質量部であり、かつ、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体の合計における(b-1)熱可塑性ポリウレタンの比率が1~16質量%である実施例に係るポリオキシメチレン樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、摺動性、成形品の色調のいずれも、良好であることが分かる。
本発明によれば、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ成形品の色調にも優れたポリオキシメチレン樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、耐衝撃性、剛性、摺動性に優れ、かつ色調が優れた成形体を提供することができる。

Claims (9)

  1. (A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、(B)改質材0.5~50質量部とを含有し、
    前記(B)改質材は、(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び(b-2)グラフトゴム共重合体のみからなり、
    前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、コア層と該コア層を覆う1層以上のシェル層とから構成される、2層以上の構造を有するコアシェルゴムであり、
    前記(b-1)熱可塑性ポリウレタン及び前記(b-2)グラフトゴム共重合体の合計における前記(b-1)熱可塑性ポリウレタンの比率が1~16質量%である、
    ことを特徴とする、ポリオキシメチレン樹脂組成物。
  2. 前記(b-1)熱可塑性ポリウレタンがエステル系ポリウレタンである、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  3. 前記エステル系ポリウレタンが、2種のポリオール成分を含む、請求項2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  4. 前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、ICP-MS分析におけるSi元素の量が1~25質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  5. 前記(b-2)グラフトゴム共重合体は、シリコーン/アクリル系重合体を含み、かつ、ICP-MS分析におけるSi元素の量が2~10質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  6. 硫酸イオンの濃度が0.01~0.2ppmである、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  7. 前記(A)ポリオキシメチレン樹脂は、メルトフローレートが0.1~60g/10分である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  8. ペレット形状である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  9. 請求項1~のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物からなることを特徴とする、成形体。
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