以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係るバイオポリマー除去装置は、分画分子量が30,000~500,000であり、水に対する接触角が40~85°である中空糸膜と、前記中空糸膜を定期的に酸洗浄する酸洗浄部とを備える。
前記バイオポリマー除去装置は、被処理水を前記中空糸膜に透過させることによって、被処理水に含まれるバイオポリマーを除去する装置である。また、前記バイオポリマー除去装置1は、図1に示すように、膜ろ過装置2に供給される水を前処理するために用いられることが好ましい。すなわち、水処理システムとしては、図1に示すように、膜ろ過装置2の前段に、前記バイオポリマー除去装置1を備える水処理システムが好ましい。そうすることによって、前記膜ろ過装置における、バイオポリマーによるファウリングを抑制できる。なお、図1は、本実施形態に係るバイオポリマー装置を備える水処理システムの構成を示す概略図である。
前記バイオポリマーは、LC-OCDと呼ばれる、サイズ排除カラムによる液体クロマトグラフィーと有機炭素検出器とを直結した装置によって、保持時間30分前後に検出される最も保持時間が短い成分と定義されている。前記バイオポリマーは、具体的には、水処理システムおける膜ろ過装置に備えられる膜、例えば、逆浸透膜等に被処理水を透過させた後に、前記膜に付着されるファウリングのうち、物理的な洗浄により除去できない不可逆的なファウリングで、かつ、生物由来の物質等が挙げられる。また、前記バイオポリマーは、前記サイズ排除カラムによる液体クロマトグラフィーの保持時間が短いことから、高分子量成分であり、かつ、親水性であると考えられる。また、LC-OCDには、UV吸収の検出器が接続されており、当該ピークからは254nmのUV吸収が観測されないことから、不飽和結合を有しない成分であると考えられる。このことから、前記バイオポリマーとしては、より具体的には、多糖類やたんぱく質等の、水中微生物の代謝物質によって構成される有機物等が挙げられる。一方で、前記バイオポリマーは、多糖類やたんぱく質等の、微生物の代謝物質によって構成される有機物等と推察されるが、詳細な物質の特定は困難である。
前記被処理水は、前記バイオポリマーを含む水であれば、特に限定されない。前記被処理水としては、工業用水、河川水、及び海水等の幅広い原水が挙げられる。なお、海水におけるバイオポリマーは、TEP(Transparent Exopolymer Particles)とも呼ばれる。
前記中空糸膜は、分画分子量が30,000~500,000であり、水に対する接触角が40~85°であれば、特に限定されない。
前記中空糸膜は、前記バイオポリマーが不可逆的なファウリングの原因にならないように、前記バイオポリマーが前記中空糸膜を閉塞しないことが好ましい。このためには、前記中空糸膜の細孔径が、バイオポリマーの実効サイズより小さいことが好ましい。このことから、前記中空糸膜の分画分子量は、上述したように、30,000~500,000であり、30,000~400,000であることが好ましく、50,000~400,000であることがより好ましい。分画分子量は、中空糸膜の通過を阻止できる最小高分子の分子量のことをいい、具体的には、例えば、中空糸膜による阻止率が90%となる高分子の重量平均分子量等が挙げられる。前記中空糸膜の分画分子量が小さすぎると、水の透過性能を充分に確保できなくなる傾向がある。また、水の透過性能を充分に確保できなくなるだけではなく、中空糸膜の強度面が不充分になる場合が多くなる。また、前記中空糸膜の分画分子量が大きすぎると、バイオポリマーの除去性能が低下する傾向がある。中空糸膜がバイオポリマーを充分に除去しない場合は、バイオポリマー除去装置として充分に機能しないことになる。
なお、バイオポリマーの分子量は、おおよそ10万以上とされているが、例えば、自然界に存在するたんぱく質は、三次構造として三次元構造をとっているため、分子量がたんぱく質の大きさをそのまま表してはいない。同じ分子量であっても、例えば、直鎖状たんぱく質と、三次構造によって球状になった球状たんぱく質とでは、中空糸膜の透過しやすさが異なる。直鎖が中空糸膜の細孔を通過しやすいことから、直鎖状たんぱく質のほうが、球状たんぱく質より、中空糸膜を透過しやすい。このため、直鎖状たんぱく質のほうが、球状たんぱく質より、見かけ上、小さくなってしまう。他にも、たんぱく質の表面に存在する親水性基の量などによっても、中空糸膜による除去のしやすさが異なってくる。これらのことから、中空糸膜の細孔径が、バイオポリマーの実効サイズより小さいことが好ましいのであって、前記中空糸膜の分画分子量が、バイオポリマーの分子量より小さくないと、バイオポリマーの除去性能が担保できないわけではない。よって、前記中空糸膜の分画分子量は、上記範囲内であれば、中空糸膜によるバイオポリマーの除去が好適に行われる。
前記中空糸膜の、水に対する接触角は、40~85°であり、40~80°であることが好ましく、40~65°であることがより好ましい。接触角としては、例えば、静的接触角等が挙げられ、具体的には、中空糸膜の表面上に、水滴を滴下したときの、水滴表面が中空糸膜の表面に接する場所における、水滴表面と中空糸膜の表面とがなす角が挙げられる。前記中空糸膜の、水に対する接触角が小さすぎると、前記中空糸膜の親水性が高くなりすぎ、バイオポリマー自体が高い親水性を有しているため、バイオポリマーを中空糸膜から剥離しにくくなる傾向がある。このため、バイオポリマーを洗浄により中空糸膜から除去されにくくなる傾向がある。よって、バイオポリマー除去装置における中空糸膜において差圧が上昇しやすくなる傾向がある。また、前記中空糸膜の、水に対する接触角が大きすぎると、前記中空糸膜の親水性が低くなりすぎて、バイオポリマー以外の水中疎水成分によって、膜目詰まりが発生しやすくなる傾向がある。すなわち、バイオポリマーによるファウリングを抑制できても、バイオポリマーによるファウリング以外のファウリングが発生しやすくなる傾向がある。よって、バイオポリマー除去装置における中空糸膜において差圧が上昇しやすくなる傾向がある。これらのことから、前記中空糸膜の、水に対する接触角を上記範囲内にすることによって、バイオポリマーによるファウリング以外のファウリングを抑制しつつ、バイオポリマーを中空糸膜から剥離しやすくすることができる。このことから、バイオポリマーを洗浄により中空糸膜から除去しやすくなり、バイオポリマーによるファウリングを抑制でき、さらに、バイオポリマーによるファウリング以外のファウリングを抑制できる。よって、中空糸膜によるバイオポリマーの直接的な除去を長期間にわたって実施できる。
なお、前記中空糸膜の被処理水が接触する側の面の、水に対する接触角が、上記範囲内であればよく、前記中空糸膜の両面、水に対する接触角が、上記範囲内であってもよい。また、前記中空糸膜の、水に対する接触角は、前記中空糸膜の長手方向の位置にかかわらず、ほぼ同等である。このことから、前記中空糸膜の被処理水が接触する側の面の、水に対する接触角が、前記中空糸膜の長手方向の位置にかかわらず、上記範囲内であればよい。
前記中空糸膜の素材は、中空糸膜の素材として利用可能な素材であれば、特に限定されない。また、前記中空糸膜は、樹脂を含むことが好ましい。
前記中空糸膜に含まれる樹脂は、中空糸膜の素材として利用可能なものであれば、特に限定されない。前記中空糸膜に主成分として含まれる樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリクロロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性セルロース、ポリサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルサルホン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロ二トリルスチレン(AS)樹脂、及びそれらの共重合体等が挙げられる。前記主成分として含まれる樹脂としては、例示した樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記主成分として含まれる樹脂としては、上記例示した樹脂の中でも、フッ素樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。すなわち、前記中空糸膜は、ポリフッ化ビニリデンを主成分として含むことが好ましい。なお、ここで主成分とは、中空糸膜に占める、その樹脂の割合が高いことをいい、例えば、中空糸膜に対して、主成分として含まれる樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン)が85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、また、100質量%未満であることが好ましい。前記中空糸膜に含まれる主成分として含まれる樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン)は、中空糸膜の主成分であり、具体的には、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、また、100質量%未満であることが好ましい。
前記中空糸膜は、前記主成分となる樹脂以外にも、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、親水性樹脂等が挙げられる。例えば、前記中空糸膜の水に対する接触角を上記範囲内に調整するために、前記他の成分として、親水性樹脂を中空糸膜に含有させてもよい。前記親水性樹脂は、親水性基を分子内に含む樹脂であれば、特に限定されない。前記親水性樹脂としては、例えば、セルロースエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムとの共重合体、及びポリアクリル酸エステル等が挙げられる。前記親水性樹脂としては、例示した樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記親水性樹脂としては、上記例示した樹脂の中でも、取扱が容易な点から、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンが好ましい。
前記中空糸膜は、膜間差圧0.1MPaにおける透水量が、100~10000L/m2/時であることが好ましく、100~8000L/m2/時であることがより好ましく、100~5000L/m2/時であることがさらに好ましい。前記透水量が少なすぎると、中空糸膜を用いることによる装置の小型化メリット(中空糸膜式による設置スペース削減メリット)が減る傾向がある。また、前記透水量が多すぎると、分画特性が低下する傾向があり、中空糸膜において、上記範囲の分画分子量を確保することができなくなる場合がある。
前記中空糸膜の破断強度は、中空糸膜として使用できれば、特に限定されない。前記中空糸膜の破断強度は、具体的には、引張強度で、3~25MPaであることが好ましく、3~20MPaであることがより好ましく、3~15MPaであることがさらに好ましい。前記中空糸膜の破断強度として、引張強度が、上記範囲内であれば、中空糸膜として好適に使用することができる。なお、引張強度は、所定の大きさに切った中空糸膜を、所定の速度で引っ張り、中空糸膜が破断したときの荷重から求められるものである。
前記中空糸膜は、酸洗浄されるので、酸に対する耐久性が高いことが好ましい。前記中空糸膜は、具体的には、60℃恒温下にて5質量%の硫酸に浸漬した後における破断強度の、前記浸漬前における破断強度の割合(前記浸漬後の破断強度/前記浸漬前の破断強度×100:破断強度保持率)が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、ここでの破断強度は、例えば、上記のような引張強度等が挙げられる。また、前記浸漬の時間は、酸による中空糸膜の損傷が充分に起こる時間であればよく、具体的には、例えば、30日間等が挙げられる。前記破断強度保持率が低すぎると、酸洗浄による中空糸膜の損傷が大きくなり、定期的な酸洗浄を実施した際に、中空糸膜の劣化により長期にわたる運転を阻害する傾向がある。
前記バイオポリマー除去装置に備えられる前記中空糸膜は、酸洗浄を定期的に行う。具体的には、後述するような、酸性下での逆洗だけではなく、気体を供給することによる気泡を用いた揺動等が定期的に行われる。このため、前記中空糸膜は、前記破断強度や前記破断強度保持率が上記範囲内であることだけでなく、これらの酸洗浄に耐えうることが好ましい。具体的には、前記中空糸膜は、荷重200g/mm2の条件下におけるMIT試験法による耐折回数が1万回以上であることが好ましい。すなわち、前記中空糸膜は、前記耐折回数が1万回以上となる耐久性を有していることが好ましい。前記耐折回数は、1万回以上が好ましく、2万回以上がより好ましく、3万回以上がさらに好ましい。前記耐折回数が少なすぎると、前記酸洗浄、具体的には、前記揺動等に対する耐久性が低くなり、バイオポリマー装置として、長期間にわたる運転を阻害する傾向がある。
MIT試験法は、JIS P 8115(2001)に準じる耐折性試験であって、試験片の折り曲げに対する強度を評価する方法である。本実施形態では、前記中空糸膜の強度として、前記破断強度に加えて、このMIT試験法により、前記揺動等に対する耐久性を評価する。前記MIT試験法は、前記中空糸膜を、荷重200g/mm2の条件下で折り曲げを繰り返し、前記中空糸膜に割れが発生したときの折り曲げ回数を測定する。前記MIT試験法としては、例えば、温度60℃、試料幅15mm、荷重200g/mm2、屈折角135°、屈折サイクル175cpm、及び屈折部局率半径0.38mmの条件下におけるMIT試験法等が挙げられる。
前記中空糸膜の形状は、特に限定されない。中空糸膜は、中空糸状であって、長手方向の一方側は開放し、他方側は、開放していても閉じていてもよい。前記中空糸膜の形状としては、例えば、中空糸状であって、長手方向の一方側を開放したままで、他方側を閉じた形状等が挙げられる。また、前記中空糸膜は、ろ過の方式として、中空糸膜の内側に、被処理水(原水)を流し、外側にろ過水を流す内圧ろ過式と、中空糸膜の外側に、被処理水(原水)を流し、内側にろ過水を流す外圧ろ過式とが挙げられ、これらは特に限定されない。中空糸膜の表面積を稼ぐことができるという観点から、外圧ろ過式が好ましい。
前記中空糸膜の外径は、0.5~3mmであることが好ましく、0.7~2.5mmであることがより好ましく、0.8~2mmであることがさらに好ましい。このような外径であれば、中空糸膜を用いた分離技術を実現する装置に備える中空糸膜として、好適な大きさである。
前記中空糸膜の内径は、0.4~2.5mmであることが好ましく、0.5~2mmであることが好ましく、0.5~1.2mmであることがさらに好ましい。中空糸膜の内径が小さすぎると、透過液の抵抗(管内圧損)が大きくなり、流れが不良になる傾向がある。また、中空糸膜の内径が大きすぎると、中空糸膜の形状を維持できず、膜の潰れやゆがみ等が発生しやすくなる傾向がある。
前記中空糸膜の外径、及び内径が、それぞれ上記範囲内であれば、中空糸膜を用いたバイオポリマー除去装置に備える中空糸膜として、好適な大きさであり、前記装置の小型化が図れる。
前記バイオポリマー除去装置は、バイオポリマーの除去率が、40~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、60~100%であることがさらに好ましい。前記バイオポリマー除去装置において、バイオポリマーの除去は、前記中空糸膜への透過によってなされるので、前記中空糸膜が、前記バイオポリマー除去装置における、バイオポリマーの除去率が上記範囲内になるような中空糸膜であることが好ましい。バイオポリマーの除去率が低すぎると、例えば、前記バイオポリマー除去装置で処理した水を、膜ろ過装置に供給される水として利用した場合、前記膜ろ過装置において、バイオポリマーによる不可逆的なファウリングを充分に抑制できず、膜間差圧が上昇する傾向がある。バイオポリマーの除去率は、前記中空糸膜を透過する前の被処理水におけるバイオポリマー濃度(A)と、前記中空糸膜を透過した後のろ過水におけるバイオポリマー濃度(B)とに基づいて算出される。バイオポリマーの除去率は、(1-B/A)×100(%)により算出される。
前記バイオポリマー除去装置は、まず、前記中空糸膜を備える。前記中空糸膜は、例えば、以下のようにモジュール化し、このモジュール化されたもの(中空糸膜モジュール)として、備えられていてもよい。具体的には、前記中空糸膜は、所定本数束ねられ、所定長さに切断されて、所定形状のケーシングに充填され、中空糸束の端部はポリウレタン樹脂やエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂によりケーシングに固定されて、モジュールとなる。なお、このモジュールの構造としては、中空糸膜の両端が開口固定されているタイプ、中空糸膜の一端が開口固定され、他端が密封されているが、固定されていないタイプ等、種々の構造のものが知られており、本実施形態において、前記中空糸膜は、いずれのモジュールの構造においても使用可能である。このような中空糸膜モジュールは、中空糸膜を筐体に封止されているので、中空糸膜が筐体に液密に固定されている。また、中空糸膜モジュールは、前記各中空糸膜と前記筐体とが封止剤によって直接接着されて封止されていてもよいし、前記各中空糸膜が封止剤によって筒状ケースに接着され、この筒状ケースが筐体に固定されることによって、前記各中空糸膜と前記筐体とが封止されていてもよい。
前記バイオポリマー除去装置は、上述したように、前記中空糸膜だけではなく、前記中空糸膜を定期的に酸洗浄する酸洗浄部を備える。
前記酸洗浄部は、前記中空糸膜を定期的に酸洗浄することができれば、特に限定されない。前記中空糸膜は、バイオポリマーを含む被処理水を透過させた後、前記中空糸膜上に存在するバイオポリマーを、前記酸洗浄により、前記中空糸膜から除去できる。
このことは、以下のことによると考えられる。まず、前記中空糸膜は、分画分子量が30,000~500,000であり、水に対する接触角が40~85°であることから、バイオポリマーを含む被処理水を透過させても、閉塞モデルに該当しないと考えられ、バイオポリマーが不可逆的なファウリングの原因になりにくいと考えられる。さらに、バイオポリマーは、多糖類やたんぱく質等であり、酸性の液体で加水分解されやすいと考えられる。このことから、前記中空糸膜は、バイオポリマーを含む被処理水を透過させた後、前記中空糸膜上に存在するバイオポリマーを、前記酸洗浄により、前記中空糸膜から剥離しやすくなると考えられる。このことから、前記酸洗浄により、前記中空糸膜から、バイオポリマーを除去できると考えられる。
前記酸洗浄部は、前記中空糸膜に前記酸洗浄を行うことができれば、特に限定されない。前記酸洗浄部としては、例えば、前記中空糸膜のろ液側から被処理水側へ逆洗用流体を透過させて逆洗する逆洗部と、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体に、酸を添加する酸添加部と、前記逆洗後に、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させる気体供給部とを備えるものが挙げられる。
前記酸洗浄部は、前記酸添加部で、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体に酸を添加し、前記逆洗部で、前記中空糸膜のろ液側から被処理水側へ逆洗用流体を透過させて逆洗する。そして、前記酸添加部は、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体の、前記逆洗後のpHが、5未満となるように、前記逆洗前又は前記逆洗時に、前記液体に酸を添加する。そうすることで、前記中空糸膜を、上記のような酸性条件下で、逆洗することができる。
前記酸は、特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、過酸化水素水、及び次亜塩素酸水溶液等が挙げられる。
前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体は、前記酸を添加することによって、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体の、前記逆洗後のpHが、5未満であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。バイオポリマーに該当する多糖類及びたんぱく質は、pHが低いほうが、加水分解が促進され、例えば、pHが3以下や4以下の領域で加水分解が促進される。このため、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体の、前記逆洗後のpHが、5未満であることが好ましい。なお、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体の、前記逆洗後のpHが低いと、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体のpHが低く、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体の、前記逆洗後のpHが高いと、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体のpHが高い。前記逆洗時に前記中空糸膜に接触する液体のpHが高すぎると、バイオポリマーの加水分解が抑えられすぎて、逆洗しても、充分な洗浄効果を奏さない傾向がある。このpHは、バイオポリマーの加水分解が促進される3以下や4以下でなくてもよいが、高すぎると、例えば、pHが5を超えるようになると、バイオポリマーが加水分解されていない状態で逆洗することになり、充分な洗浄効果を奏さない。
前記酸洗浄部は、前記気体供給部で、前記逆洗後に、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させる。前記のような酸性条件下で逆洗をして、バイオポリマーを中空糸膜から剥離しやすい状態になっているので、この状態で、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させることによって、バイオポリマーを中空糸膜から好適に除去できる。
前記酸洗浄部としては、例えば、前記中空糸膜のろ液側から被処理水側へ逆洗用流体を透過させて逆洗する逆洗部と、前記逆洗後に、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させる気体供給部と、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触する液体に、酸を添加する酸添加部とを備えるものが挙げられる。
前記酸洗浄部は、前記酸添加部で、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触する液体に酸を添加し、前記気体供給部で、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させる。そして、前記酸添加部は、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体のpHが、5未満となるように、前記気体を供給する前又は前記気体を供給する時に、前記液体に酸を添加する。そうすることで、前記中空糸膜を、上記のような酸性条件下で、前記気体により、前記中空糸膜を揺動させることができる。
前記酸は、特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、過酸化水素水、及び次亜塩素酸水溶液等が挙げられる。
前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触する液体は、前記酸を添加することによって、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体のpHが、5未満であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。バイオポリマーに該当する多糖類及びたんぱく質は、pHが低いほうが、加水分解が促進され、例えば、pHが3以下や4以下の領域で加水分解が促進される。このため、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体のpHが、5未満であることが好ましい。前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体のpHが高すぎると、バイオポリマーの加水分解が抑えられすぎて、前記気体の供給により前記中空糸膜を揺動させても、充分な洗浄効果を奏さない傾向がある。このpHは、バイオポリマーの加水分解が促進される3以下や4以下でなくてもよいが、高すぎると、例えば、pHが5を超えるようになると、バイオポリマーが加水分解されていない状態で中空糸膜を揺動させることになり、充分な洗浄効果を奏さない。
前記酸洗浄部は、前記気体供給部で、前記逆洗後に、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させる。前記のような酸性条件下で、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させることによって、バイオポリマーを中空糸膜から好適に除去できる。
前記バイオポリマー除去装置は、前記酸洗浄の後に、前記中空糸膜に接触する液体を中性付近に戻すために、水をかけるリンス部、及び、前記中空糸膜に接触する液体を中和させる中和処理部を備えていてもよい。
前記バイオポリマー除去装置としては、例えば、図2に示す装置等が挙げられる。なお、図2は、本実施形態に係るバイオポリマー除去装置1の一例を示す概略図である。
前記バイオポリマー除去装置1は、中空糸膜の外表面側に被処理水(原水)を供給し、中空糸膜の内表面側から処理水(ろ液)を取り出す外圧ろ過式の装置である。前記バイオポリマー除去装置1は、図2に示すように、ハウジング内に収納された中空糸膜が備えられた中空糸膜モジュール31と、送液ポンプ11~13と、エアーコンプレッサ32と、薬液タンク33と、逆洗用水タンク34と、これらを接続する配管と、前記配管に設けられた開閉バルブ21~29と、制御装置35とを備える。
前記送液ポンプ11~13は、原水等の流体を前記配管中に送液する。前記エアーコンプレッサ32は、気体を前記配管中に供給する。前記薬液タンク33は、前記酸洗浄を行うための酸を貯留する。前記逆洗用水タンク34は、前記逆洗時に、前記中空糸膜のろ液側から被処理水側へ透過させるための逆洗用流体を貯留する。前記開閉バルブ21~29は、前記配管中の流体の移動を規制する。
前記制御装置35は、前記送液ポンプ11~13、及び前記エアーコンプレッサ32の駆動を制御し、前記開閉バルブ21~29の開閉動作を制御する。前記制御装置35は、例えば、パーソナルコンピュータ等によって構成されている。前記制御装置35は、バイオポリマー除去のプロセス(ろ過プロセス)において順次実行される各工程(充水工程、ろ過工程、逆洗工程、バブリング工程、排水工程等)のシーケンス情報が格納された記憶部と、前記シーケンス情報に従って、及び前記エアーコンプレッサ32の駆動を制御し、前記開閉バルブ21~29の開閉動作を制御する制御部とを有する。
前記バイオポリマー除去装置1によるバイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄方法について説明する。
まず、洗浄として、酸洗浄を行わない場合について、表1を参照して説明する。表1には、図2に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表1中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)では、バイオポリマー除去装置1の全開閉バルブが閉じられた状態から前記制御装置35によって、開閉バルブ21及び開閉バルブ23が開かれ、送液ポンプ11が駆動する。これにより、原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に原水が充水される。
次に、ろ過工程が実施される。このろ過工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ22が開かれ、かつ、開閉バルブ23が閉じられる。これにより、原水が中空糸膜モジュール31に備えられた中空糸膜の外表面側から内表面側へ透過し、ろ液が得られる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ24,25が開かれ、かつ、開閉バルブ21,22が閉じられ、さらに、送液ポンプ12を駆動させ、且つ、送液ポンプ11を停止させる。これにより、逆洗用水タンク34に貯留された逆洗用流体が、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜のろ液側に供給され、この逆洗用流体が被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。
次に、圧抜き工程が実施される。この圧抜き工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ27が開かれ、かつ、開閉バルブ24,25が閉じられ、さらに、送液ポンプ12を停止させる。これにより、前記逆洗工程により高められた中空糸膜モジュールのハウジング内の気圧を低めることができる。
次に、充水工程(ろ過後)を実施する。この充水工程(ろ過後)では、前記制御装置35によって、開閉バルブ21,23が開かれ、かつ、開閉バルブ27が閉じられ、さらに、送液ポンプ11を駆動させる。すなわち、前記充水工程(ろ過前)と同様の工程を行う。これにより、原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に原水が充水される。
次に、バブリング工程を実施する。このバブリング工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ26が開かれ、かつ、開閉バルブ21が閉じられ、さらに、送液ポンプ11を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、原液が接した状態の中空糸膜に、気体を被処理水側から供給し、前記中空糸膜を揺動させることができる。
次に、排水工程を実施する。この排水工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ24が開かれ、かつ、開閉バルブ26が閉じられ、さらに、エアーコンプレッサ32を停止させる。これにより、前記中空糸膜モジュールのハウジング内に充水された水が排水される。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行わない場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程の前に添加する場合について、表2を参照して説明する。表2には、図2に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表2中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ23、29が開かれ、かつ、開閉バルブ22が閉じられ、さらに、送液ポンプ13を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を原水に添加し、この酸が添加された原水が中空糸膜モジュール31まで供給される。よって、中空糸膜に接する原液には酸が添加された状態になる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ24,25が開かれ、かつ、開閉バルブ21,23,29が閉じられ、さらに、送液ポンプ12を駆動させ、且つ、送液ポンプ11,13を停止させる。これにより、逆洗用水タンク34に貯留された逆洗用流体が、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜のろ液側に供給され、この逆洗用流体が被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。このとき、前記逆洗工程が施される中空糸膜は、前記酸添加工程により、中空糸膜の被処理水側から酸が添加された原水が接する状態である。このため、この逆洗工程では、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体が酸性、すなわち、pHが5未満の状態で、中空糸膜が逆洗される。また、前記逆洗工程において、開閉バルブ24を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程が実施される。これらの、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程と、それぞれ同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程の前に添加する場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程と同時に添加する場合について、表3を参照して説明する。表3には、図2に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表3中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ23、28が開かれ、かつ、開閉バルブ22が閉じられ、さらに、送液ポンプ13を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を、逆洗用水タンク34に供給することができる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ24,25が開かれ、かつ、開閉バルブ28が閉じられ、さらに、送液ポンプ12を駆動させ、且つ、送液ポンプ13を停止させる。これにより、逆洗用水タンク34に貯留された逆洗用流体が、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜のろ液側に供給され、この逆洗用流体が被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。そして、この逆洗用流体には、前記逆洗工程の前に、前記酸添加工程により、酸が添加されている。このため、この逆洗工程では、酸が添加された逆洗用流体を用いて、中空糸膜が逆洗されるので、中空糸膜には、逆洗工程と同時に酸が添加されることになる。また、前記逆洗工程において、開閉バルブ24を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程が実施される。これらの、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程と、それぞれ同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸が逆洗工程と同時に添加される場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸をバブリング工程(気体供給工程)の前に添加する場合について、表4を参照して説明する。表4には、図2に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表4中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、逆洗工程を実施する。この逆洗工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における逆洗工程と同様である。
次に、圧抜き工程を実施する。この圧抜き工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。なお、この酸添加工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過後)も兼ねている。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ21、23、29が開かれ、かつ、開閉バルブ27が閉じられ、さらに、送液ポンプ11、13を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を原水に添加し、この酸が添加された原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に酸が添加された原水が充水される。よって、中空糸膜に接する原液には酸が添加された状態になる。
次に、バブリング工程を実施する。このバブリング工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ26が開かれ、かつ、開閉バルブ21、29が閉じられ、さらに、送液ポンプ12を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、酸が添加された原液が接した状態の中空糸膜に気体を、被処理水側から供給し、前記中空糸膜を揺動させることができる。このとき、前記バブリング工程が施される中空糸膜は、前記酸添加工程により、酸が添加された原水が接する状態である。このため、このバブリング工程では、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体が酸性、すなわち、pHが5未満の状態で、中空糸膜がバブリングされる。また、この液体のpHは、排水工程において、開閉バルブ24を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、排水工程が実施される。この排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における排水工程と同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸をバブリング工程の前に添加する場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
前記バイオポリマー除去装置としては、例えば、上記のような図2に示す装置以外に、図3に示す装置等も挙げられる。なお、図3は、本実施形態に係るバイオポリマー除去装置1の他の一例を示す概略図である。
前記バイオポリマー除去装置1は、中空糸膜の外表面側に被処理水(原水)を供給し、中空糸膜の内表面側から処理水(ろ液)を取り出す外圧ろ過式の装置である。前記バイオポリマー除去装置1は、図3に示すように、ハウジング内に収納された中空糸膜が備えられた中空糸膜モジュール31と、送液ポンプ41、42と、エアーコンプレッサ32と、薬液タンク33と、これらを接続する配管と、前記配管に設けられた開閉バルブ51~59と、制御装置35とを備える。
前記送液ポンプ41、42は、原水等の流体を前記配管中に送液する。前記エアーコンプレッサ32は、気体を前記配管中に供給する。前記薬液タンク33は、前記酸洗浄を行うための酸を貯留する。前記開閉バルブ51~59は、前記配管中の流体の移動を規制する。
前記制御装置35は、前記送液ポンプ41、42、及び前記エアーコンプレッサ32の駆動を制御し、前記開閉バルブ51~59の開閉動作を制御する。前記制御装置35は、例えば、パーソナルコンピュータ等によって構成されている。前記制御装置35は、バイオポリマー除去のプロセス(ろ過プロセス)において順次実行される各工程(充水工程、ろ過工程、逆洗工程、バブリング工程、排水工程等)のシーケンス情報が格納された記憶部と、前記シーケンス情報に従って、及び前記エアーコンプレッサ32の駆動を制御し、前記開閉バルブ51~59の開閉動作を制御する制御部とを有する。
前記バイオポリマー除去装置1によるバイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄方法について説明する。
まず、洗浄として、酸洗浄を行わない場合について、表5を参照して説明する。表5には、図3に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表5中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)では、バイオポリマー除去装置1の全開閉バルブが閉じられた状態から前記制御装置35によって、開閉バルブ51、53が開かれ、送液ポンプ41が駆動する。これにより、原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に原水が充水される。
次に、ろ過工程が実施される。このろ過工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ52が開かれ、かつ、開閉バルブ53が閉じられる。これにより、原水が中空糸膜モジュール31に備えられた中空糸膜の外表面側から内表面側へ透過し、ろ液が得られる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ54,55が開かれ、かつ、開閉バルブ51,52が閉じられ、さらに、送液ポンプ41を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、原液が接した状態の中空糸膜のろ液側に、気体が供給され、このろ過工程によりろ過されたろ液の一部(配管に存在するろ液)等が、被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。
次に、圧抜き工程が実施される。この圧抜き工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ57が開かれ、かつ、開閉バルブ54,55が閉じられ、さらに、エアーコンプレッサ32を停止させる。これにより、前記逆洗工程により高められた中空糸膜モジュールのハウジング内の気圧を低めることができる。
次に、充水工程(ろ過後)を実施する。この充水工程(ろ過後)では、前記制御装置35によって、開閉バルブ51,53が開かれ、かつ、開閉バルブ57が閉じられ、さらに、送液ポンプ41を駆動させる。すなわち、前記充水工程(ろ過前)と同様の工程を行う。これにより、原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に原水が充水される。
次に、バブリング工程を実施する。このバブリング工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ56が開かれ、かつ、開閉バルブ51が閉じられ、さらに、送液ポンプ41を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、原液が接した状態の中空糸膜に気体を、被処理水側から供給し、前記中空糸膜を揺動させることができる。
次に、排水工程を実施する。この排水工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ54が開かれ、かつ、開閉バルブ56が閉じられ、さらに、エアーコンプレッサ32を停止させる。これにより、前記中空糸膜モジュールのハウジング内に充水された水が排水される。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行わない場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程の前に添加する場合について、表6を参照して説明する。表6には、図3に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表6中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ53、59が開かれ、かつ、開閉バルブ52が閉じられ、さらに、送液ポンプ42を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を原水に添加し、この酸が添加された原水が中空糸膜モジュール31まで供給される。よって、中空糸膜に接する原液には酸が添加された状態になる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ54,55が開かれ、かつ、開閉バルブ51,53,59が閉じられ、さらに、送液ポンプ41,42を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、原液が接した状態の中空糸膜のろ液側に、気体が供給され、前記ろ過工程によりろ過されたろ液の一部等が、被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。このとき、前記逆洗工程が施される中空糸膜は、前記酸添加工程により、中空糸膜の被処理水側から酸が添加された原水が接する状態である。このため、この逆洗工程では、前記逆洗時に前記中空糸膜に接触されていた液体が酸性、すなわち、pHが5未満の状態で、中空糸膜が逆洗される。また、前記逆洗工程において、開閉バルブ54を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程が実施される。これらの、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程と、それぞれ同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程の前に添加する場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸を逆洗工程と同時に添加する場合について、表7を参照して説明する。表7には、図3に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表7中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ53、58が開かれ、かつ、開閉バルブ51,52が閉じられ、さらに、送液ポンプ42を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を、前記ろ過工程によりろ過されたろ液の一部(配管に存在するろ液)等に供給することができる。
次に、逆洗工程が実施される。この逆洗工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ54,55が開かれ、かつ、開閉バルブ53、58が閉じられ、さらに、送液ポンプ42を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、逆洗用水タンク34に貯留された逆洗用流体が、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜のろ液側に供給され、気体が供給され、このろ過工程によりろ過されたろ液の一部(配管に存在するろ液)等が、被処理水側に透過する。このようにして、中空糸膜モジュール31に備えられる中空糸膜が逆洗される。そして、この逆洗に用いられたろ液には、前記逆洗工程の前に、前記酸添加工程により、酸が添加されている。このため、この逆洗工程では、酸が添加されたろ液を用いて、中空糸膜が逆洗されるので、中空糸膜には、逆洗工程と同時に酸が添加されることになる。また、前記逆洗工程において、開閉バルブ24を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程が実施される。これらの、圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程、充水工程(ろ過後)、バブリング工程、及び排水工程と、それぞれ同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸が逆洗工程と同時に添加される場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
次に、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸をバブリング工程(気体供給工程)の前に添加する場合について、表8を参照して説明する。表8には、図3に示すバイオポリマー除去装置の基本的な運転方法について、各工程と送液ポンプの駆動状態及び開閉バルブの開閉状態との関係を示す。表8中の「○」は、該当する送液ポンプが駆動していることや、該当する開閉バルブが開いていることを意味する。
はじめに、充水工程(ろ過前)を実施する。この充水工程(ろ過前)は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過前)と同様である。
次に、ろ過工程を実施する。このろ過工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合におけるろ過工程と同様である。
次に、逆洗工程を実施する。この逆洗工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における逆洗工程と同様である。
次に、圧抜き工程を実施する。この圧抜き工程も、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における圧抜き工程と同様である。
次に、酸添加工程を実施する。なお、この酸添加工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における充水工程(ろ過後)も兼ねている。この酸添加工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ51、53、59が開かれ、かつ、開閉バルブ57が閉じられ、さらに、送液ポンプ41、42を駆動させる。これにより、薬液タンク33に貯留された酸を原水に添加し、この酸が添加された原水が中空糸膜モジュール31まで供給され、中空糸膜に原液が接する状態になる。具体的には、中空糸膜モジュールのハウジング内に酸が添加された原水が充水される。よって、中空糸膜に接する原液には酸が添加された状態になる。
次に、バブリング工程を実施する。このバブリング工程では、前記制御装置35によって、開閉バルブ56が開かれ、かつ、開閉バルブ51、59が閉じられ、さらに、送液ポンプ41、42を停止させ、エアーコンプレッサ32を駆動させる。これにより、酸が添加された原液が接した状態の中空糸膜に気体を、被処理水側から供給し、前記中空糸膜を揺動させることができる。このとき、前記バブリング工程が施される中空糸膜は、前記酸添加工程により、酸が添加された原水が接する状態である。このため、このバブリング工程では、前記気体を供給する時に前記中空糸膜に接触されていた液体が酸性、すなわち、pHが5未満の状態で、中空糸膜がバブリングされる。また、この液体のpHは、排水工程において、開閉バルブ54を通過して出てきた液体のpHを測定し、このpHが5未満となるように、前記酸添加工程で酸を添加する。
次に、排水工程が実施される。この排水工程は、前記洗浄として、酸洗浄を行わない場合における排水工程と同様である。
以上のような工程により、前記バイオポリマー除去装置は、洗浄として、酸洗浄を行う場合であって、酸をバブリング工程の前に添加する場合において、バイオポリマー除去運転、及び前記運転中に行われる洗浄を行う。
前記バイオポリマー除去装置は、上述したように、前記中空糸膜周辺を被処理水で充たす充水工程、前記中空糸膜による被処理水をろ過するろ過工程、前記中空糸膜を逆洗する逆洗工程、前記中空糸膜の被処理水側から気体を供給して、前記中空糸膜を揺動させるバブリング工程、及び前記中空糸膜周辺から被処理水を排水する排水工程等を行うことによって、バイオポリマーの除去及び中空糸膜の洗浄を実施する。前記バイオポリマー除去装置において、前記送液ポンプと、前記エアーコンプレッサと、前記薬液タンクと、前記逆洗用水タンクと、前記配管と、前記開閉バルブと、前記制御装置とが、前記酸洗浄部に相当する。また、前記酸洗浄は、前記逆洗工程と前記バブリング工程とであって、前記逆洗工程として、上記のような酸性条件下で行う工程に相当する。前記バイオポリマー除去装置は、前記充水工程、前記ろ過工程、前記バブリング工程、及び前記排水工程を順に行う場合、このような酸洗浄となるような前記逆洗工程と前記バブリング工程とを、前記ろ過工程を実施する毎に、前記ろ過工程の後に行ってもよいし、前記ろ過工程を複数回行った後に行ってもよい。前記酸洗浄を行い、次に前記酸洗浄を行うまでの前記ろ過工程の回数は、1~480回であることが好ましく、1~192回であることがより好ましく、1~48回であることがさらに好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1~3、及び比較例1~3]
まず、本実施例において用いる中空糸膜について説明する。
本実施例において用いる膜は、外圧ろ過方式に用いる中空糸膜であり、表1に示すように、主成分として含まれる樹脂及び親水性樹脂を含む中空糸膜である。
(主成分として含まれる樹脂)
PVDF:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ株式会社製のKynar741)
PSF:ポリスルホン(BASFジャパン株式会社製のUltrasonS3010)
(親水性樹脂)
PVA:ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のPVA205)
PVP:ポリビニルピロリドン(BASFジャパン株式会社製のソカランK-90P)
(主成分として含まれる樹脂の含有率)
前記中空糸膜における、主成分として含まれる樹脂の含有率は、以下のようにして算出した。
まず、前記中空糸膜をジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解させた後に、溶解せずに残存した未溶解物の重さを測定した。この未溶解物を親水性樹脂として、中空糸膜における、主成分として含まれる樹脂の重さを算出した。すなわち、ここで測定した未溶解物の重さが、中空糸膜における、親水性樹脂の含有量であり、前記中空糸膜の重さと前記未溶解物の重さとの差分(前記中空糸膜の重さ-前記未溶解物の重さ)が、中空糸膜における、主成分として含まれる樹脂の含有量である。これらの、主成分として含まれる樹脂の含有量と親水性樹脂の含有量とから、前記中空糸膜における、主成分として含まれる樹脂の含有率を算出した。
その結果、前記中空糸膜における、主成分として含まれる樹脂の含有率が、実施例1~3及び比較例1では、95質量%であり、比較例2,3では、100質量%であった。
(分画分子量)
前記中空糸膜の分画分子量は、以下の手順で測定した。
測定対象物である中空糸膜を、エタノール50質量%水溶液に15分間浸漬させ、その後、15分間純水で洗浄するといった湿潤処理を施した。この湿潤処理を施した中空糸膜の一端を封止した、有効長20cmの中空糸膜モジュールを用意した。
原水として、リン酸緩衝液を用いて、マーカータンパク質を全有機炭素量(Total Organic Carbon:TOC)が500mg/lになるように展開した溶液を用意した。マーカータンパク質は、例えば、下記のような重量平均分子量(Mw)が既知なたんぱく質を使用した。なお、TOCは、水中に存在している有機物の濃度指標となる。また、TOCは、測定対象物である水を燃やして発生するCO2量を検出し、その検出したCO2量から推定された、水中に存在している有機物の濃度として測定される。
インスリン(Mw:5720)
シトクロムC(Mw:12500)
オバルブミン(Mw:43000)
アルブミン(Mw:67000)
アルドラーゼ(Mw:158000)
アポフェリチン(Mw:440000)
チログロブリン(Mw:669000)
ブルーデキストラン(Mw:2000000)
ろ過圧力が0.1MPa、温度が25℃の条件で濾過して、得られた膜ろ過水のTOCと原水のTOCとから除去率[(1-膜ろ過水のTOC/原水のTOC)×100]を算出した。得られた除去率と、マーカータンパク質の分子量との関係を以下の式に代入し、フィッティングすることで分画曲線を作成し、90%の除去率の分子量(Mw)を分画分子量と定義した。
R=100/(1-m×exp(-a×log(S)))
上記式中のaおよびmは、中空糸膜によって定まる定数であって、少なくとも2種類以上の阻止率の測定値をもとに算出される。Rに、実験値での阻止率を代入し、Sに、実験に使用したマーカータンパク質の分子量を代入することで、aとmとを決定することで分画曲線を定めることができる。
その結果、得られた中空糸膜の分画粒子径を表9に示す。
(水に対する接触角)
水に対する接触角(水接触角)は、以下のようにして測定した。
中空糸膜の表面上に水滴を滴下し、その瞬間の画像を撮影する。そして、水滴表面が中空糸膜表面に接する場所における、水滴表面と中空糸膜の表面とのなす角を測定した。この角を、中空糸の表面における水に対する接触角とした。水に対する接触角の測定装置としては、協和界面科学株式会社製の「Drop Master 700」を用いた。
その結果、得られた中空糸膜の水に対する接触角(水接触角)を表9に示す。
(中空糸膜の破断強度)
中空糸膜の破断強度は、以下のように測定した。
まず、測定対象物である中空糸膜を長さが5cmとなるように切断した。この切断した中空糸膜を、オートグラフ(株式会社島津製作所製のAG-Xplus)を用いて、25℃の水中で、100mm/分で引っ張る引張試験を行い、中空糸膜が破断した際の荷重を測定した。この測定した荷重から引張強度を求めた。この引張強度を破断強度とした。
その結果、得られた中空糸膜の破断強度を表9に示す。
(中空糸膜の酸処理後の破断強度保持率)
薬液として、5質量%の硫酸水溶液を用い、60℃に加温した薬液に、得られた中空糸膜を、30日間浸漬した。そして、薬液に浸漬させていない中空糸膜の引張強度と、前記薬液に30日間浸漬した後の中空糸膜の引張強度とを、上記中空糸膜の破断強度と同様の方法でそれぞれ測定した。この得られた値から、60℃恒温下にて5質量%の硫酸に浸漬した後における破断強度の、前記浸漬前における破断強度の割合(前記浸漬後の破断強度/前記浸漬前の破断強度×100:破断強度保持率)を算出した。なお、この破断強度保持率は、耐薬品性の指標となる。この破断強度保持率が高いほど、耐薬品性が高いことがわかる。
その結果、得られた中空糸膜の破断強度保持率を表9に示す。
(中空糸膜の内径及び外径)
中空糸膜の内径及び外径は、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-5000を用いて、測定した。
その結果、得られた中空糸膜の内径及び外径を表9に示す。
(中空糸膜のMIT試験法による耐折回数)
中空糸膜のMIT試験法による耐折回数は、以下のように測定した。
MIT耐折疲労試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、中空糸膜のMIT試験法による耐折回数を測定した。具体的には、中空糸膜の外径と内径とから、中空糸膜の面積(=(外径/2)^2×π-(内径/2)^2×π)を算出し、試験片に対して、200g/mm2の荷重をかけた。その後、屈折角135°になるまで屈曲を繰り返し行い、中空糸膜を破断させた。その破断するまでの回数を耐折回数とした。
その結果、得られた中空糸膜の耐折回数を表9に示す。なお、屈曲回数は、10000回までとし、その段階で破断していなければ、耐折回数としては、「>10,000」と示す。
(中空糸膜の透水量)
中空糸膜の透水量は、以下のように測定した。
測定対象物である中空糸膜を、エタノール50質量%水溶液に15分間浸漬させ、その後、15分間純水で洗浄するといった湿潤処理を施した。この湿潤処理を施した中空糸膜の一端を封止した、有効長20cmの中空糸膜モジュールを用い、原水として純水を利用し、ろ過圧力が0.1MPa、温度が25℃の条件で濾過して、時間当たりの透水量を測定する。この測定した透水量から、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透水量に換算して、膜間差圧0.1MPaにおける透水量(L/m2/時:LMH)を得た。
その結果、得られた中空糸膜の膜間差圧0.1MPaにおける透水量を表9に示す。
(バイオポリマーの除去)
図2に示すバイオポリマー除去装置に、前記中空糸膜を用いたときの、バイオポリマー除去率を測定した。なお、前記中空糸膜は、有効長1mで100本用いた。
まず、被処理水(原水)及びろ液(処理水)に含まれるバイオポリマーの濃度は、Liquid Chromatography-Organic Carbon Detection(LC-OCD:DOC-Labor Dr.Huber社製のLC-OCD Model18)を用いて測定した。具体的には、原水及び処理水を0.45μmのメンブレンフィルターで懸濁物を除去した後に、前記LC-OCDにオートサンプラーを用いて、測定を行った。TOCが5ppmをこえる場合には、純水を用いて希釈し、5ppm以下になるように調整した後、オートサンプラーにかけた。また、解析については、付属のソフトであるChromCALCを用いて、解析し、保持時間30分前後に検出される最も保持時間が短い成分濃度をバイオポリマー濃度と定義した。
その結果、原水のバイオポリマー濃度及び処理水のバイオポリマー濃度をそれぞれ表9に示す。
(バイオポリマーの除去率)
バイオポリマー除去率は、上記のようにして求めた、原水のバイオポリマー濃度(A)と処理水のバイオポリマー濃度(B)とに基づいて算出した。すなわち、バイオポリマーの除去率は、(1-B/A)×100(%)により算出した。
その結果、バイオポリマーの除去率を表9に示す。
(洗浄)
(差圧上昇速度)
図2に示すバイオポリマー除去装置に、前記中空糸膜を用い、表3に示すように、逆洗工程と同時に、酸が添加されるように酸洗浄を行ったときの、差圧上昇速度を測定した。なお、前記中空糸膜は、有効長1mで100本用いた。具体的には、バイオポリマー除去装置を、膜ろ過流束3.0m3/m2/dで、物理洗浄を行いながら、ろ過工程30回毎に、pHを3に調整した硫酸を用いて、逆洗と同時に酸洗浄を行うろ過を行った。この運転に伴う、差圧上昇速度を測定した。
その結果、差圧上昇速度を表9に示す。
(連続運転時間)
また、このバイオポリマー除去装置を用いて処理した水を、分画分子量13,000のPSF製中空糸膜(有効長1m)を100本で束ねた膜モジュールを用意し、3.0m3/m2/dで通水し、このUF膜の透水性が10%低下するまでの時間を測定した。
その結果、このUF膜の透水性が10%低下するまでの時間を表9に示す。
表9からわかるように、分画分子量が30,000~500,000であり、水に対する接触角が40~85°である中空糸膜を用いて、酸洗浄部により、この中空糸膜を定期的に酸洗浄するバイオポリマー除去装置である場合(実施例1~3)は、そうでない場合(比較例1~3)と比較して、バイオポリマーの除去率が高く、運転を継続しても差圧上昇速度が低く、得られた処理水を後段の膜ろ過装置に供給することによって、その膜の透水性の低下が抑制された。
なお、比較例1に係るバイオポリマー除去装置は、中空糸膜の分画分子量が50万を超えており、バイオポリマー除去率が低く、また、得られた処理水を後段の膜ろ過装置に供給しても、その膜の透水性の低下を充分に抑制できなかった。
また、比較例2及び比較例3に係るバイオポリマー除去装置は、中空糸膜の親水性が不充分であり、中空糸膜を酸洗浄しても、洗浄が充分になされず、差圧上昇速度が高かった。