JP7114954B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂とフェニル基含有オルガノポリシロキサンとを含有するポリカーボネート樹脂組成物、及びそれよりなる成形品に関するものである。
近年、環境への配慮より植物由来の原料であるイソソルビドに代表されるエーテル基含有ジオールを用いたポリカーボネート樹脂が開発されている(例えば、特許文献1~2参照)。イソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐候性や耐衝撃性に優れることが知られており、自動車内外装部品等への適用も知られている(例えば、特許文献3参照)。
一方、イソソルビドに由来する構成単位を含有するポリカーボネート樹脂とシリコーン化合物を含有する樹脂組成物も知られている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4には、シリコーン化合物を含有することにより、耐擦傷性が向上することが記載されている。さらに、特許文献5では、イソソルビドに由来する構成単位を含有するポリカーボネート樹脂とジオルガノシロキサン構造や特定のオルガノシロセスキオキサン構造を有するシリコーン化合物を含有することにより、耐擦傷性が向上し、成形品としたときの透明性が良好であり、初期外観、機械物性等に優れることが記載されている。
国際公開WO2004/111106号パンフレット 国際公開WO2007/063823号パンフレット 特開2013-209585号公報 特開2015-199954号公報 特開2017-8140号公報
近年、イソソルビド由来の構成単位を有するポリカーボネート樹脂を用いた成形品は、自動車などの車両用の内外装部品等に使用されることが検討されている。このような成形品には、使用時に起こる擦り傷を防止するため耐摩耗性を高めることが求められる。さらには、耐摩耗性を高く保ったまま、成形時に起こる成形品末端部における白モヤを抑制して成形品の美観をさらに高めることが望まれるようになってきた。
しかしながら、特許文献4および特許文献5等の従来のポリカーボネート樹脂組成物の成形品には、耐摩耗性を高く保ったまま、成形品末端部の白モヤを抑制して美観を高めるという点において未だ改良の余地がある。さらに、透明性も不十分である。
本発明の目的は、上記の従来品における課題を解決し、耐摩耗性を高く保ったまま、成形品末端部の白モヤを抑制して美観を高めた高品質の成形品を得ることができるポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる成形品を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹脂(A)と特定のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)とを含有するポリカーボネート樹脂組成物が、耐摩耗性を高く保ったまま、成形品末端部の白モヤを抑制して成形品の美観を高めた高品質の成形品を実現できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、下記に存する。
[1]下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、
末端に下記式(2)で表されるシリル基を有するフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)と、を含有し、
下記式(2)におけるR1~R3がアルキル基又はアリール基をからなる、ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0007114954000001
Figure 0007114954000002
[2]前記ポリカーボネート樹脂(A)が、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、及び前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とを含む共重合体からなる、[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対する前記フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の含有量が0.01質量部以上5質量部以下である、[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記式(2)におけるR1~R3がメチル基からなる、[1]~[3]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]前記フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の25℃における動粘度が500mm2/s以上である、[1]~[4]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]さらに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含有する、[1]~[5]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、成形品。
[8]自動車用の内装部品又は外装部品である、[7]に記載の成形品。
前記ポリカーボネート樹脂組成物によれば、耐摩耗性の高い成形品を得ることができる。そのため、成形品の使用時に起こる擦り傷を防止することができる。つまり、成形品は、雑巾、ティシュ等で拭いた場合に発生する擦れ傷が少ない耐擦傷性に優れたものになる。よって、例えば視認性が要求される用途においては、視認性の低下を抑制できる。さらに、成形品は、耐摩耗性を高く保ったまま、成形時に起こりうる成形品末端部の白モヤを抑制できる。よって、美観を高めた高品質の成形品が得られる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を含有する。ポリカーボネート樹脂(A)は、少なくとも下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(以下、これを適宜「構成単位(a1)」という)を含む。ポリカーボネート樹脂(A)は、構成単位(a1)のホモ重合体であってもよいし、構成単位(a1)と、他の構成単位(a2)とを含む共重合体であってもよい。分子量を上げる観点、耐衝撃性をより向上させるという観点からは、ポリカーボネート樹脂(A)は共重合体であることが好ましい。
Figure 0007114954000003
式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(すなわち、ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもISBが、入手及び製造のし易さ、耐候性、光学特性、成形性、耐熱性及びカーボンニュートラルの面から最も好ましい。ISBは、植物由来の資源として豊富に存在すると共に容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られる。
なお、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすい。したがって、保管中又は製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。例えば、イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の着色を招くおそれがある。さらに、物性を著しく劣化させるおそれがあるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もある。
ポリカーボネート樹脂(A)は、構成単位(a2)として、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、及び式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる一種以上のジヒドロキシ化合物(以下、これらを「他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構成単位(a2-1)を含む共重合体からなることが好ましい。つまり、ポリカーボネート樹脂(A)は、構成単位(a1)と構成単位(a2-1)とを含む共重合体からなることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂(A)の耐衝撃性を向上させることができる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物であっても、分岐鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよく、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ドデカンジオール、1,12-ウンデカンジオールなどが挙げられる。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
エーテル基含有ジヒドロキシ化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150~2000)、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性を高めるという観点から、他のジヒドロキシ化合物としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物がより好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物がさらに好ましい。耐熱性及び耐衝撃性をより高めるという観点から、脂環式ジヒドロキシ化合物の中でも、シクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールがさらにより好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)において、構成単位(a2-1)等の構成単位(a2)の含有割合は、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位100モル%に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が特に好ましい。また60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、45モル%以下が特に好ましい。この範囲で構成単位(a2)の含有割合を調整することにより、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性及び耐熱性の両方をバランス良く高めることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられるポリカーボネート樹脂の製造方法で製造することができる。ポリカーボネート樹脂(A)は、例えば、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とを反応させる溶融重合法のいずれの方法でも製造することができる。好ましくは、重合触媒の存在下に、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法がよい。
溶融重合における重合触媒(エステル交換反応触媒)としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種が使用される。これらは、例えば公知のものを使用することができる。アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物と共に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を補助的に併用することも可能である。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させて製造することができる。ジヒドロキシ化合物としては、上述の式(1)で表される化合物等があり、炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート等がある。詳細には、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによってポリカーボネート樹脂を得ることができる。この場合には、通常、重合触媒の存在下でのエステル交換反応により溶融重合を行う。
エステル交換反応触媒(以下、「触媒」と称する場合がある)としては、例えば長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用され、耐候性の点から、特に好ましくは2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては、通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられる。入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム等が挙げられる。また、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート等が挙げられる。さらに、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。これらの例示の中でもセシウム化合物、リチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらの例示の中でも、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物の少なくとも一方がより好ましい。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。また、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4-アミノピリジン、2-アミノピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、2-ヒドロキシピリジン、2-メトキシピリジン、4-メトキシピリジン、2-ジメチルアミノイミダゾール、2-メトキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記の中でも、第2族金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒として用いることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐候性等の種々の物性をより向上させることができる。この効果を更に高めるという観点から、触媒は、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、及びバリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなることがより好ましく、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなることがさらに好ましい。
触媒が1族金属化合物及び2族金属化合物から選ばれる少なくとも1種からなる場合には、触媒の使用量は、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、0.1~300μモルであることが好ましい。より好ましくは0.1~100μモル、さらに好ましくは0.5~50μモル、特に好ましくは1~25μモルの範囲内である。
触媒として、2族金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合には、2族金属化合物の使用量は、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1μモル以上がよい。更に好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以上である。また、上限としては、好ましくは20μモル、更に好ましくは10μモル、特に好ましくは3μモル、最も好ましくは2μモルである。
触媒の使用量を上述の範囲内において調整することにより、重合活性が十分になり、破壊エネルギーが充分な、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ることができると共に、色相がより良好になる。つまり、ポリカーボネート樹脂(A)の品質をより高めることができる。
重合反応の形式は、公知の形式を用いることができ、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として通常100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
押出後の異物混入を防止するという観点から、ポリカーボネート樹脂(A)の押出は、JIS B 9920(2002年)に定義されるクラス7より清浄度の高いクリーンルーム内で実施することが好ましい。より好ましくは、クラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することがよい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で事前に異物を取り除いたものを使用し、空気中の異物の再付着を防ぐことが好ましい。水冷の際に使用する水は、イオン交換樹脂等で金属分を取り除き、さらにフィルターにて異物を取り除いたものを使用することが好ましい。フィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm~0.45μmであることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度が高いほど分子量が大きいことを示す。還元粘度は、0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましい。一方、還元粘度は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。還元粘度を前記範囲内に調整することにより、成形時の流動性を向上させることができ、生産性や成形性をより向上させることができる。したがって、複雑な形状の成形品を生産性良く製造することができ、電気・電子機器部品や自動車内外装部品等に好適になる。なお、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用いてポリカーボネート樹脂の濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃の条件下でウベローデ粘度管を用いて測定する。
ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、90℃以上が好ましい。この場合には、前記ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性がより向上する。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は145℃以下が好ましい。この場合には、成形時の流動性を高め、複雑な形状の成形品であっても成形時に樹脂組成物が成形型の末端まで行き届き易くなり、所望の成形品を得ることができる。また、ウエルド部での強度の低下を抑制できる。これらの効果をより高めるという観点から、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、135℃以下がより好ましく、125℃以下がさらに好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)として、1種の樹脂を単独で含有していてもよいが、他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a2)の種類や共重合割合、物性等の異なる樹脂が2種以上混合されていてもよい。
[フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)]
ポリカーボネート樹脂組成物は、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)を含有する。そのため、耐摩耗性が向上し、成形品の使用時に起こりうる擦り傷を防止することができる。さらに、耐摩耗性を高く保ったまま、成形品末端部の白モヤを抑制して成形品の美観を高めた高品質の成形品を得ることができる。なお、成形品末端部の白モヤは、樹脂組成物の成形時に起こりうるものである。また、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)は、成形時の離型性の向上効果を有する。そのため、複雑形状の成形品の製造が可能になる。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)は、下記式(3)で表されるジオルガノシロキサン構造を含むことが好ましい。式(3)中、R4およびR5の少なくとも一方はアリール基であり、他方はアルキル基又はアリール基を表す。R4およびR5は、同じであっても異なっていてもよい。
Figure 0007114954000004
4、R5としてアルキル基を含有する場合には、アルキル基の炭素数は、相溶性を向上させるという観点から、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~5であることがさらに好ましい。
4、R5としてアリール基を含有する場合には、相溶性を向上させるという観点から、6~30であることが好ましく、6~15であることがより好ましく、6~10であることがさらに好ましい。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)としては、例えば上記式(3)におけるSiに結合したR4及びR5の少なくとも一方がフェニル基であるフェニル変性シリコーンが挙げられる。このようなフェニル変性シリコーンなどのフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の具体例としては、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、テトラフェニルテトラメチルトリシロキサン等が挙げられる。
これらの例示の中でも、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)としては、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコンが好ましい。樹脂組成物にさらに滑り性を付与できるという観点から、ジフェニルジメチコンがより好ましい。また、ジフェニルジメチコンなどにジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルを架橋させた構造を含有する混合物を用いても良い。さらに架橋構造物を用いる場合、シリケート構造、シルセスキオキサン構造が含まれているがことが好ましい。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)は、その高分子鎖の末端に、下記式(2)で表されるシリル基を有する。つまり、フェニル基含有オルガノポリシロキサンは、末端官能基として式(2)で表されるシリル基を有する。式(2)におけるR1~R3は、相互に同じであっても異なっていてもよい。
Figure 0007114954000005
ポリカーボネート樹脂(A)とフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)との相溶性を高めるという観点から、R1~R3は、アルキル基又はアリール基を含有することが好ましい。さらに、R1~R3の全てがアルキル基又はアリール基から成っていてもよく、R1~R3のうち一部がアルキル基であり、残りがアリール基であるように、両方を含有していてもよい。
1~R3として、アルキル基を含有する含有する場合には、アルキル基の炭素数は、例えば1~6である。R1~R3として、アリール基を含有する場合には、アリール基の炭素数は、例えば6~20である。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の製造時の反応性がより良好になるという観点からは、R1~R3はアルキル基であることが好ましい。上述の相溶性をより高めるという観点から、R1~R3のアルキル基の炭素数は1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましく、1が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物の成形体の透明性を高めるという観点から、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)は、屈折率が高いことが好ましい。具体的には、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の屈折率は、1.450以上であることが好ましく、1.500以上であることがより好ましい。フェニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種又は2種以上を用いることができ、その配合などは所望の屈折率に応じて適宜調製することができる。
ポリカーボネート樹脂(A)とフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)との屈折率の差は、±0.1以内であることが好ましく、±0.05以内であることがより好ましく、±0.01以内であることがさらに好ましい。屈折率の差を上記範囲内に調整することにより、透明性がより向上し、さらに着色時の鮮映性を向上させることができる。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)としては、耐摩耗性の観点から、高粘度のものが好ましい。温度25℃におけるフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の動粘度は、15mm/s以上であることが好ましく、500mm/s以上であることがより好ましく、1000mm/s以上であることがさらに好ましく、3000mm/s以上であることがさらにより好ましい。フェニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種又は2種以上を用い、目的の動粘度に調製して用いることもできる。一方、動粘度の上限は、取り扱い性やポリカーボネート樹脂(A)とフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)との混練性等の観点から、15000mm/sであることが好ましく、7000mm/sであることがより好ましい。
フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)としては、例えば市販品を用いることが可能である。フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製:KF-54HV(ジフェニルジメチコン、屈折率:1.503、動粘度:4800mm2/s(25℃))、モメンティブ社製:TSF437(ジフェニルジメチコン、屈折率:1.499、動粘度:22mm2/s(25℃))、信越化学工業(株)製:KF54-SS(ジフェニルジメチコン、屈折率:1.504、動粘度:500mm2/s(25℃))、モメンティブ社製:TSF433(メチルフェニルオイル、屈折率:1.505、動粘度:450mm2/s(25℃))、モメンティブ社製:TSF4300(メチルフェニルオイル、屈折率:1.498、動粘度:140mm2/s(25℃))、信越化学工業(株)製:KF56(フェニルトリメチコン、屈折率:1.500、動粘度:15mm2/s(25℃))、東レ・ダウコーニング(株)製:SH556(フェニルトリメチコン、屈折率:1.459、動粘度:23mm2/s(25℃)))等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂組成物中のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の含有量が上記範囲内であれば、耐摩耗性をより向上させ、成形品の成形時の白モヤをより抑制させることができる。ポリカーボネート樹脂組成物は、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)として1種以上を含有することができる。複数のフェニル基含有ポリシロキサン(B)を含有する場合には、フェニル基含有ポリシロキサン(B)の合計含有量を上記範囲内にすることが好ましい。
[添加剤]
ポリカーボネート樹脂組成物には、上述の所望の効果を損ねない範囲内において、さらに種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、触媒失活剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、着色剤、中和剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、充填剤等がある。
(触媒失活剤)
触媒失活剤は、ポリカーボネート樹脂(A)の重合触媒を失活させる性質を有する。ポリカーボネート樹脂の色調を良好にしたり、熱安定性を向上させる効果を発揮できる。触媒失活剤としては、例えば酸性化合物を用いることができる。このような酸性化合物としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基を有する化合物、又はそれらのエステル体などを用いることができる。好ましくは、下記式(4)又は(5)で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることがよい。
Figure 0007114954000006
Figure 0007114954000007
式(4)又は(5)で表される部分構造を有するリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル等が挙げられる。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているという観点から、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルが好ましく、亜リン酸がより好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、4-メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2-エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert-ブチル、(4-クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
これらのリン系化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた触媒量に応じて調整することができる。樹脂へのリン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえって樹脂が着色してしまったり、特に高温高湿度下での耐久試験において、樹脂が着色しやすくなる。このような観点から、重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、リン系化合物はリン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、0.7倍mol以上、4倍mol以下がより好ましく、0.8倍mol以上、3倍mol以下がさらに好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、樹脂に使用される一般的な酸化防止剤を使用できる。酸化安定性、熱安定性、着色時における良好な漆黒性等の観点から、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤としては、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。
耐候性向上効果などの添加効果を充分に得るという観点から、ポリカーボネート樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.002質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましい。成形性の向上、金型汚染の抑制、成形品の表面外観の向上等の観点からは、酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
<ホスファイト系酸化防止剤>
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。
<イオウ系酸化防止剤>
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール-3-ステアリルチオプロピオネート、ビス[2-メチル-4-(3-ラウリルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-6-メチルベンズイミダゾール、1,1’-チオビス(2-ナフトール)等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
<フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等の化合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましい。
(紫外線吸収剤(C))
ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4‐(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01~2質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましい。
(光安定剤(D))
ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、光安定剤を含有することができる。光安定剤としては、例えばアミン化合物由来の化合物を用いることができる。好ましくは、融点85℃以上かつ第二級アミン構造を有する化合物がよい。第二級アミン構造を有する化合物は、第一級アミンよりも塩基性が高い。アミン化合物等からなる光安定剤の塩基性が高いほど光に対するポリカーボネートの安定性が向上するとともに、加水分解などによる劣化が抑制される。
成形品の耐光性試験後の最大高さの変化率を少なくすることができるという観点から、第二級アミン構造は、窒素が環式構造の一部となっているものが好ましく、ピペリジン構造を有するものがより好ましい。ここで規定するピペリジン構造は、飽和6員環状のアミン構造となっていれば如何なる構造であっても構わず、ピペリジン構造の一部が置換基により置換されているものも含む。ピペリジン構造が有していてもよい置換基としては、炭素数4以下のアルキル基があげられ、特にはメチル基が好ましい。
融点が85℃以上かつ第二級アミン構造を有する化合物としては、第二級アミン構造を複数有するものが好ましい。より好ましくは、ピペリジン構造の第二級アミン構造を複数有する化合物がよい。さらに好ましくは、複数のピペリジン構造がエステル構造により連結されている化合物がよい。
耐ブリードアウト性を向上させるという観点から、ポリカーボネート樹脂(A)とアミン化合物との溶解性パラメータ(つまりSP値)の差の絶対値は、0.0以上、15.0以下が好ましい。SP値はHoy法にて算出される。耐ブリードアウト性をさらに向上させるという観点から、SP値の差の絶対値は、0.0以上、12.0以下がより好ましく、0.0以上、8.0以下がさらに好ましく、0.0以上、6.0以下がさらにより好ましい。
アミン化合物などからなる光安定剤の融点は、85℃以上であることが好ましい。この場合には、耐光試験後の平滑性、耐ブリードアウト性を向上させることができる。この向上効果をより高めるという観点から、光安定剤の融点は、90℃以上、300℃以下がより好ましく、100℃以上、250℃以下がさらに好ましく、110℃以上、200℃以下がさらにより好ましい。
また、少量で耐候性がより向上するという観点から、光安定剤の末端官能基当量は、100g/eq以上、500g/eq以下が好ましい。より少量で耐候性の向上効果が得られるという観点から、光安剤の末端官能基当量は、100g/eq以上、350g/eq以下がより好ましく、100g/eq以上、300g/eq以下がさらに好ましく、100g/eq以上、300g/eq以下がさらにより好ましい。
成形体の耐候性をより向上させるという観点から、光安定剤の分子量は、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましい。耐熱性の低下抑制し、成形時における金型汚染や表面外観の劣化をより抑制するという観点から、光安定剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上がより好ましい。
このような光安定剤(D)としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4‐ピペリジル-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4‐ピペリジル-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,3,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物等が挙げられる。なかでも、融点が高いという観点から、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4‐ピペリジル-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(SP値19.2、融点130℃)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(SP値18.5、融点95℃)が好ましい。光安定剤(D)としては、アミン化合物等のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物中のアミン化合物などの光安定剤(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下が好ましく、0.005質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。光安定剤の含有量を上記範囲内に調整することにより、着色を防止できる。また、着色剤を添加した場合に、例えば深みと清澄感のある漆黒を得ることができる。さらに、耐光性の効果が十分に得られ、例えば自動車内外装品に好適な成形品が得られる。
光安定剤(D)としては、上述のように例えば第二級アミン構造を有するアミン化合物が好ましいが、これら好ましい形態とは異なるアミン化合物をさらに併用してもよい。併用可能なアミン化合物としては、第三級アミン構造を有するアミン化合物が好ましい。この場合には、光安定性の効果がより長期に亘って発揮できる。この効果をより高めるという観点から、光安定剤としては、ピペリジン構造を有する第二級アミンと、ピペリジン構造を有する第三級アミンとを組み合わせることがより好ましい。
(着色剤)
着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び有機染料等の有機染顔料が挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化物系顔料等が挙げられる。酸化物系顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等が挙げられる。
有機染顔料としては、例えば、フタロシアニン系染顔料、縮合多環染顔料、染顔料等が挙げられる。縮合多環染顔料としては、アゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等がある。染顔料としては、アンスラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、メチン系、キノリン系、複素環系、メチル系の等がある。
着色剤としては、無機顔料が好ましい。この場合には、成形品を屋外等で使用した場合でも鮮映性等を長期間保持することができる。
ポリカーボネート樹脂組成物中の着色剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下がさらに好ましい。着色剤の含有量を上記範囲に調整することにより、鮮映性が高い原着成形品を得ることができ、成形品の表面粗さがの増大をより防止することができる。
ポリカーボネート樹脂組成物を漆黒調に調色した場合には、明度Lは、0.1以上10以下であることが好ましく、0.1以上6以下であることがより好ましい。また、光沢度は、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましい。
(充填剤)
ポリカーボネート樹脂組成物は、意匠性を維持できる範囲において、無機充填剤、有機充填剤などの充填剤を含有することができる。無機充填剤としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維、これらのウィスカー等が挙げられる。有機充填剤としては、木粉、竹粉、ヤシ澱粉、コルク粉、パルプ粉などの粉末状有機充填剤;架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体、尿素樹脂などのバルン状・球状有機充填剤;炭素繊維、合成繊維、天然繊維などの繊維状有機充填剤が挙げられる。
(滑剤)
ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤を含有することができる。滑剤は、流動性改質剤とも呼ばれる。滑剤としては、脂肪酸アマイド、パラフィンオイルなどの炭化水素化合物からなるオイル、シリコーンオイル、カルボン酸エステル等のエステル系化合物、フッ素系ワックスなどが挙げられる。透明性を高めという観点、物性維持の観点から、脂肪酸アマイドが好ましい。
脂肪酸アマイドとしては、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、N-ステアリルステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸モノアマイド;N-オレイルパルチミン酸アマイド、N-ステアリルオレイン酸アマイド、N-オレイルステアリン酸アマイド等の不飽和脂肪酸モノアマイド;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アマイド等の飽和脂肪酸ビスアマイド;エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アマイドやN,N’-ジオレイルセバシン酸アマイド等の不飽和脂肪酸ビスアマイド;m-キシリレンビスステアリン酸アマイド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’-システアリルイソフタル酸アマイド等の芳香族系ビスアマイド;ステアロアミドエチルステアレート等の脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性の観点から、飽和脂肪酸ビスアマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、芳香族系ビスアマイドが好ましい。
添加効果をより十分に得るという観点から、組成物中の滑剤の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。ブリードアウトや透明性低下の抑制の観点から、滑剤の含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物は、前記成分を所定の割合で、同じタイミングでまたは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。すなわち、少なくともポリカーボネート樹脂(A)とフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)とを混合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。これらの混合時には、必要に応じて添加される紫外線吸収剤、光安定剤等を併用することができる。
[成形品]
成形品は、ポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより得られる。成形は、任意の成形法により行うことができる。例えば、射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形が好適に用いられる。成形に用いられるランナーとしては、コールドランナー方式、ホットランナー方式のいずれを用いることも可能である。また、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、サンドイッチ成形等による成形も可能である。意匠性を高めるという観点から、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形を用いることも可能である。
(用途)
成形品は、例えば塗装によりコーティングを施さなくとも、耐磨耗性に優れ、雑巾やティシュ等で拭いた場合に発生する擦れ傷が少ないという優れた耐擦傷性を発揮できる。従って、塗装のための工程、コストの削減が可能になる。このような効果を有するため、成形品は様々な部品に適用することができる。しかも、成形品は、平滑性にも優れ、更なる材料の選択等により透明性を高めることも可能であるため、例えば、鮮鋭性等の向上も可能である。さらに、光安定剤、紫外線防止剤等を添加することにより、光に曝される環境下においても優れた透明性などの効果を長期に亘って維持することが可能になると考えられる。また、製品末端部の白モヤの発生を防止できる。この白モヤの発生を抑制できるという観点から、成形品全体としての透明性を向上させることができる。ただし、成形品は、透明なものだけでなく、上述の着色剤に着色されたものを含む。
以上のような効果を発揮できるため、成形品は、高級感、重厚感のある高品質の部品の提供を可能にする。成形品の適用用途としては特に制限はないが、インテリア用品、エクステリア用品、自動車等の車両用の内装部品、外装部品に好適である。
成形品が適用される自動車用の外装部品としては、例えばフェンダー、バンパー、フェーシャ、ドアパネル、サイドガーニッシュ、ピラー、ラジエータグリル、サイドプロテクター、サイドモール、リアプロテクター、リアモール、各種スポイラー、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッド、デタッチャブルトップ、ウインドリフレクター、ミラーハウジング、アウタードアハンドル等が挙げられる。自動車用内装部品としては、インストルメントパネル、センターコンソールパネル、メーター部品、各種スイッチ類、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品等が挙げられる。また、オートモバイルコンピュータ部品等に適用することも可能である。成形品は、上記用途が好適ではあるが、何らこれらの用途に限定されるものではない。
<本発明が効果を奏する理由>
本発明が効果を奏する理由は未だ明らかではないが、以下のように推察される。つまり、フェニル基含有オルガノポリシロキサンを用いることによって、耐摩耗性が向上して成形品の使用時に発生しうる擦り傷を防止できる。さらに、極性が弱いアルキル基又はアリール基を末端に修飾させたフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを用いることにより、射出成形などの成形時に成形圧力があまり作用しない例えば成形品末端部のような場所において、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの表面偏析が生じやすくなるため、上述の耐摩耗性を高く保ったままで成形品の成形時に起こる白モヤを抑制でききるものと考えられる。その結果、ポリカーボネート樹脂組成物は、美観を高めた高品質の成形品の製造を可能にする。これに対し、アルコキシ基、カルボキシル基等のような極性が高い末端基を有するシリコーンオイルを用いた場合には、成形圧力が低い箇所において、高い極性を有するがためにシリコーンオイルが十分に表面にブリードアウトせず、成形品末端部に白濁(つまり、白モヤ)が生じると考えられる。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
以下において、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)試験片作成方法
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、100℃で8時間乾燥した。次に、乾燥したペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製EC-75SX)に供給し、樹脂温度240℃、金型温度60℃で、射出成形板(幅100mm×長さ100mm×厚さ2mm)を成形した。この射出成形板を試験片とする。
(2)動摩擦係数
上記(1)で得られた試験片に対し、新東科学製ボール圧子(材質:SUS、サイズ:φ3mm)にて、表面性測定機(新東科学製、形式:HEIDON-14D)を用いて、荷重200gf、移動速度100mm/分で移動させたときの荷重より求めた。動摩擦係数μkは移動開始後4秒から10秒の荷重の平均値を採用した。
(3)耐摩耗試験
耐摩耗試験は、表面性測定機(新東科学株式会社製、形式:トライボギアTYPE-14D)を用いて行った。まず、ティシュ(日本製紙クレシア社製フラワーボックス)を3回折り畳んで、φ28mmの新東科学製スチールウールホルダーに取り付けた。次いで、上記(1)で得られた試験片の表面で、スチールウールホルダーに取り付け他ティシュを200往復させた。往復運動は、荷重9.8N、ストローク50mm、速度3000mm/分の条件で行った。その後、往復運動を行った表面のヘイズを測定し、摩耗試験前後のヘイズ変化率を評価した。つまり、表面に生じうる擦れ傷の量をヘイズ変化率として測定した。ヘイズの測定は、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH2000)、D65光源を使用し、JIS K7105に準拠して行った。
(4)白モヤ評価方法
上記(1)で得られた試験片の末端部を目視観察し、白濁の有無を評価した。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂組成物に配合するポリカーボネート樹脂としては、以下のPC1、PC2を使用した。
・PC1:D7340R(三菱化学株式会社製)、屈折率1.500
・PC2:D5380R(三菱化学株式会社製)、屈折率1.499
[フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)]
後述の実施例1~4においては、ポリカーボネート樹脂組成物に配合するフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)として以下のシリコーンオイル1~4を用いた。
・シリコーンオイル1:KF54-HV(信越化学工業株式会社製、トリメチルシリル末端ジフェニルジメチコン、屈折率:1.503、動粘度:4800mm/s(25℃))
・シリコーンオイル2:TSF437(信越化学工業株式会社製、トリメチルシリル末端ジフェニルジメチコン、屈折率:1.499、動粘度:22mm/s(25℃))
・シリコーンオイル3:KF54-SS(信越化学工業株式会社製、トリメチルシリル末端ジフェニルジメチコン、屈折率:1.504、動粘度:500mm/s(25℃))
・シリコーンオイル4:2-2078(東レ・ダウコーニング株式会社製、アミノプロピルフェニルトリメチコンとフェニルトリメチルシリロキシ末端シルセスキオキサンの混合物、屈折率:1.500、動粘度:2000mm2/s(25℃))
また、後述の比較例1、2においては、下記のシリコーンオイル5、6を用いた。
・シリコーンオイル5:KR-510(信越化学工業株式会社製、アルコキシ末端変性メチルフェニルシリコーン、屈折率:1.509、動粘度:100mm/s(25℃))
・シリコーンオイル6:BY16-201(東レ・ダウコーニング社製、カルビノール末端変性ジメチルシロキサン、動粘度:45mm/s(25℃))
[ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(C)]
ポリカーボネート樹脂組成物に配合する紫外線吸収剤(C)として、以下のベンゾトリアゾール系を用いた。
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:LA-29(ADEKA社製、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、融点104℃)
[ヒンダードアミン系光安定剤(D)]
ポリカーボネート樹脂組成物に配合するヒンダードアミン系光安定剤(D)としては、以下のものを用いた。
ヒンダードアミン系光安定剤:LA-57(ADEKA社製、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4‐ピペリジル-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、SP値19.2、融点130℃)なお、融点に温度の幅があるものについては、最低温度と最高温度の平均値を融点とする。
[実施例1]
ポリカーボネート樹脂(A)として、PC1とPC2を用い、フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)としてシリコーンオイル1を用い、紫外線吸収剤(C)として、ADEKA社製のLA-29を用い、ヒンダードアミン系光安定剤としてADEKA社製のLA-57を用いた。具体的には、まず、90質量部のPC1と、10質量部のPC2と、0.3質量部のシリコーンオイル1と、0.1質量部のLA-29と、0.1質量部のLA-57とを予めブレンドしておき、二軸混練機(日本製鋼所社製、TEX30SST42BW:スクリュー径30mm)に投入して混練した。混練機の途中一カ所から真空ポンプで絶対真空圧10~20kPaに減圧調整しながら、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量15kg/hrで混練物をストランド状に押し出し、ストランドカッターを用いてペレット状のポリカーボネート樹脂組成物を得た。これをペレット状のサンプルとする。このペレット状サンプルを、熱風乾燥機で100℃にて5時間乾燥した後、前述の評価法(1)~(4)に従って評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例2~4]
配合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状サンプルを得た。次いで、実施例1と同様に評価を行った。その結果を表1に示す。
[比較例1~3]
配合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状サンプルを得た。次いで、実施例1と同様に評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0007114954000008
表1より知られるように、シリコーンシリコーンオイルを含有していない比較例3では、耐摩耗性が不十分であった。つまり、比較例3の成形品は、擦れ傷が発生しやすい。また、極性のアルコキシ末端を有するシリコーンオイルを含有する比較例1、カルビノール末端を有すると共にフェニル基を含有していないシリコーンオイルを含有する比較例2は、いずれも、成形部末端に白モヤが観察された。これらに対し、実施例1~4のように、特定のポリカーボネート樹脂(A)と特定のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物を用いた実施例においては、耐摩耗性を高く保ったまま、成形品末端部の白モヤを抑制して美観を高めた高品質の成形品が得られることがわかる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、
    末端に下記式(2)で表されるシリル基を有するフェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)と、を含有し、
    下記式(2)におけるR1~R3がアルキル基又はアリール基からなり、
    前記フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下である、ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0007114954000009
    Figure 0007114954000010
  2. 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、及び前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とを含む共重合体からなる、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記式(2)におけるR1~R3がメチル基からなる、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記フェニル基含有オルガノポリシロキサン(B)の25℃における動粘度が15mm2/s以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、成形品。
  7. 自動車用の内装部品又は外装部品である、請求項に記載の成形品。
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