JP7111347B2 - 磁界検出コイルおよびemiアンテナ - Google Patents
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Description
ノイズ源の特定には、例えば、セミリジットケーブルを円状に一巻回したシールデッドループアンテナ(以下、SLAと記載する)が多く使用されている。
その反面、10[MHz]以下の周波数帯では、感度特性が著しく低下するという欠点がある。
また、最大磁界を検出する場合には、SLAのループ面とケーブル等のノイズ源を平行に配置する必要ある。そのため、一様性に欠けるノイズ電流に起因した最大磁界を捕捉することが難しく、測定値等の再現性が低くなるという欠点がある。
そこで、次のような技術が提案されている。
この磁化プローブは、配線パターンやケーブルなどに生じるノイズ電流の検出を、当該ノイズ電流によって誘起される磁界検出によって行うように構成されており、構造が簡単で使い易いことが特徴である。インピーダンスが50[Ω]となるように構成すると、2~3[GHz]付近の周波数帯域において検出感度が高くなる。
この電流プローブは、上記のように、ループコイル、伝送線路、パッド部を絶縁シートに張付けたものを例えば2個用意し、被測定ケーブルを中心にして対称配置して、被測定ケーブルの周囲に同心円状に発生する磁界を測定する。このように配置することにより、各ループコイルに発生する電圧が重畳し、即ち、互いに強め合った電圧を、当該電流プローブからスペクトルアナライザー等の測定装置へ出力することができる。
この磁気検出プローブは、2つのループ状部分を単一面上に並べて形成し、各ループ状部分に、それぞれ差動回路が接続されている。また、この差動回路には、当該差動回路の出力信号を増幅する増幅回路が接続されている。
この装置は、逆相に巻回された個別コイルに発生した電圧を、それぞれ差動増幅器へ入力してノイズ成分と漏洩磁束成分とを分離し、ノイズ成分を示す電圧を取得することができるように構成されている。
特許文献2の電流プローブは、不特定で多様な周波数のノイズ検知には不向きであり、特に低周波帯域を検知することができないという問題点がある。
特許文献3の磁気検出プローブは、低周波帯において感度特性が低く、また、高周波帯において増幅誤差が生じる要因を回路構成に含んでいるため、広帯域の測定には向いていないという問題点がある。
上記のように、従来の磁界を検出するためのプローブや装置などは、構造的に、ケーブルや伝送線路など様々なものに対応させてノイズ源を特定することが難しく、また、検出結果に再現性を確保することも困難であった。
(実施例)
図1は、本発明の実施例によるEMIアンテナの概観を示す斜視図である。図示したEMIアンテナ1は、被測定対象の導電体21に近接させる検出コイル12と、検出コイル12から出力される電流信号の増幅処理等を行う回路ユニット11とを備えている。
ここで例示するEMIアンテナ1は、例えば略長筒状または略長柱状の筐体等に検出コイル12と回路ユニット11等を収納固定し、一体形成されている。
基材30は、中心孔31からリング状外周へ向かって延設されたスリット32が設けられている。
このスリット32は、均一の空隙幅を有するように形成されている。
検出コイル12のコイル33とコイル34は、各々所定径の銅線を複数回巻回して構成されたもので、基材30のリング中心から対称配置され、また、スリット32を間に挟むように(スリット32を中心として)対称配置されている。
基材30aは、中心孔31aからリング状外周へ向かって延設されたスリット32aが設けられている。
検出コイル12aのコイル33とコイル34は、各々所定径の銅線を複数回巻回して構成されたもので、基材32aのリング中心から対称配置され、また、スリット32aを間に挟むように(スリット32aを中心として)対称配置されている。
なお、検出コイル12aは、前述の検出コイル12と同様に、2つのコイル33,34がどちらも測定対象21と対向配置されるように、EMIアンテナ1の長手方向に対して垂直に設置される。
検出コイル12aにおいても、コイル33とコイル34が相互に逆巻となるように、また、基材30aにおいて同軸上(基材30aの中心軸上)に配置されるように、当該コイル33およびコイル34を備えている。
検出コイル12および検出コイル12aのコイル33,34は、各基材のリング中心における中心角度が同様となる位置範囲に巻回設置されている。換言すると、コイル33とコイル34は、各コイルの両端とリング中心との間に生じる挟み角度が同一となるように配置されている。
また、検出コイル12のスリット32、検出コイル32aのスリット32aは、各々の基材に巻回されたコイル33,34の周波数特性、感度特性等に応じたスリット幅(間隙)を有して形成されている。換言すると、スリット32,32aは、回路ユニット11もしくはEMIアンテナ1の出力信号に、測定対象に対応させた検出空間分解能および感度特性が得られるスリット幅(間隙)を備えて、各々リング状基材30,30aに形成されている。
検出コイル12は、個別に巻回されたコイル33とコイル34とを備えており、コイル33の巻線両端間にはダンプ抵抗51が接続され、コイル34の巻線両端間にはダンプ抵抗52が接続されている。
ダンプ抵抗51は、コイル33の自己共振周波数の共振ピークを低下させるもので、例えば50[Ω]の抵抗値を有し、ダンプ抵抗52は、コイル34の自己共振周波数の共振ピークを低下させるもので、例えば50[Ω]の抵抗値を有する。
詳しくは、コイル33の巻線両端は、図示を省略した差動増幅回路53を構成する第1の電流帰還型オペアンプの入力端に接続され、コイル34の巻線両端は、図示を省略した差動増幅回路53を構成する第2の電流帰還型オペアンプの入力端に接続されている。
即ち、コイル33とコイル34は、差動コイルとして動作するように各回路等と接続されている。
減算回路54は、例えば、電流帰還形オペアンプを用いた差動増幅回路を備えており、差動増幅回路53の2つの出力信号を入力してこれらの差分を求める減算処理を行い、当該減算結果を示す信号を電圧増幅して外部へ出力するように構成されている。
差動増幅回路53および減算回路54は、前述のようにコイル33とコイル34を差動コイルとして動作させ、基材のスリットを挟んで配置した差動コイルによってノイズ電流を検出し、当該検出したノイズ電流を示す信号を、回路ユニット11もしくはEMIアンテナ1に外部接続された測定装置60において、処理可能なレベルまで増幅するように構成されている。
また、回路ユニット11は、電源装置等と接続して電源電力の供給を受ける接続ケーブルまたは接続端子等(図示省略)が設けられている。
EMIアンテナ1は、例えば、検出コイル12あるいは検出コイル12aと、回路ユニット11とを、所定の筐体等に収納固定することによって一体形成して構成してもよい。
以下の説明で例示する検出コイル12は、例えば、基材30の外径が約6.3[mm]、内径(中心孔径)が約2.8[mm]、厚みが約3.5[mm]、スリット幅が約0.7[mm]の大きさに形成されたものである。また、この検出コイル12のコイル33,34は、径が0.16[mm]の銅線を用いて、各々25ターン巻回したものである。
なお、後の説明で例示する検出コイル12aも、スリットを除き、同一あるいは相当する部分は、上記の検出コイル12と同様に構成されている。
例えば、導電体の一端に高周波信号等を出力するジェネレータ等を接続し、この導電体の他端に50[Ω]の第1ダンプ抵抗の一端を接続する。なお、第1ダンプ抵抗の他端は接地させている。また、被験対象の例えば検出コイル12のコイル33両端にスペクトラムアナライザ等の測定装置を接続し、コイル34の両端に50[Ω]の第2ダンプ抵抗を接続し、このような接続状態で検出コイル12等の感度特性を測定した。
100[kHz]におけるインダクタンス(L値)は、コイルAが14[μH]、コイルBが21[μH]となり、リング状基材にスリットのないコイルBがコイルAを上回っている。
この実験結果は、1[MHz]以下の周波数において、コイルAは、コイルBと比較して約5[dB]感度が高くなっている。
このような周波数帯域において磁界成分を検出する場合、理論的には大きなL値を有するコイルが有利であるが、L値による作用効果以上に、基材に設けたスリットが磁界検出感度を向上させることが分かる。
図5は、図1のEMIアンテナを用いてノイズ電流を検出するときの概略態様を示す説明図である。この図は、回路ユニット11に例えば検出コイル12を設置してEMIアンテナ1とし、基板20に設けられている測定対象21にEMIアンテナ1を近付けて(載置して)、測定対象21に流れるノイズ電流を測定する状態を示している。
略長形状の回路ユニット11の先端には、当該略長形状の長手方向に対して、リング状の径方向が直交するようにコイル12が設置固定されている。
また、回路ユニット11には、当該回路ユニット11の出力信号を所定の様式で画面表示し、また、例えば、回路ユニット11の出力信号を所定のデータ形式に変換して外部へ出力する機能などを備えた、前述のスペクトラムアナライザ等の測定装置60が接続されている。
測定対象21には、高周波信号もしくはノイズ電流を発生するジェネレータ62が接続されている。
また、測定対象21は、例えば、高周波信号等の電流が流れる導電体などであり、図5に示したものは、測定結果の評価を明確なものとするため、直線状に形成され、均一な太さ、厚さ等を有している。
図6(a),(b)は、それぞれの最上段に基板20、測定対象21および検出コイル12(または検出コイル12a)を側方視したものを示し、その下側には、基板20、測定対象21、検出コイル12(または検出コイル12a)を上方視し、測定対象21に対する検出コイル12(または検出コイル12a)の向きを様々に変化させたものを示している。
図8の実験結果は、コイルAを、図5に示したように回路ユニット11に設置し、また、これにダンプ抵抗52,53を接続してアンテナAを構成させ、このアンテナAと測定装置60および電源装置61を接続し、測定対象21にジェネレータ62を接続した状態において、ジェネレータ62から各周波数の信号を測定対象21へ出力し、このとき測定装置60で測定された各電圧を示している。
なお、上記の測定は、図6(a)に示したように、直線状の測定対象21の中心軸上にコイルAのリング中心を載置し、この中心点を回転中心として当該コイルAを回転させ、各回転角度(スリット32と測定対象21との間に生じる挟み角度)を有する状態で行っている。
なお、上記の測定は、図6(b)に示したように、直線状の測定対象21の中心軸上にコイルBの円状中心点を載置し、この中心点を原点としてコイルBを回転させ、各回転角度(スリット32aの中心位置と測定対象21との間に生じる挟み角度)を有する状態で行っている。
アンテナAは、上記の回転角度(スリット32が測定対象21からずれる大きさ)が感度特性に影響を与えているが、図8に示した周波数帯域内の感度特性は安定していることが分かる。
アンテナCは、回転なしの状態に比べて、左右45°回転させた状態でも大幅な感度特性の劣化が見られない。また、アンテナAと比較すると低周波帯の感度が良好になっている。これらのことから、測定対象21に対する位置ずれに強く(位置ずれによる影響が抑制され)、低周波帯において高感度な測定が必要な場合には、リング状基材にカット部分(スリット)を設けることが有効であると分かる。換言すると、リング状基材に適当なスリットを設けることにより、測定に関する自由度を高めることが可能になる。
図10は、従来の差動型磁界プローブ(従来品A)の概略構成を示す説明図である。
図11は、従来の差動型磁界プローブ(従来品A)の評価結果を示す説明図である。ここで例示する従来品Aは、低周波帯用ユニットと高周波帯用ユニットがあり、測定帯域に応じて使い分けるように構成されている。図11(a)は、低周波帯用ユニットの評価結果を示し、図11(b)は、高周波帯用ユニットの評価結果を示している。
従来品Aは、2つのユニットを用意しなければならず、アンテナAならびにアンテナCに比べて、この帯域内の信号(ノイズ電流)を全て検出するためには多くの手間が必要になる。また、ユニットを取り換えて検出することが必要であるため、ノイズ電流の存在を一度に察知することが難しい(ノイズ発生源の特定が困難になる)ことが分かる。また、構造的に、測定対象に対する位置ずれにより感度が変化することが避けられない。
従来品Bは、測定分解能がループ径に依存する。この分解能を高めるためにはループ径を小さく構成することが必要になるが、このように構成すると感度特性が劣化するという特徴がある。
従来品Aは、低周波帯用ユニットは高周波帯の感度が低下し、高周波帯用ユニットは低周波帯の感度が低下する。そのため、いずれのユニットも評価を行った周波数帯全体における感度特性の偏差は、本発明によるアンテナAならびにアンテナC(開発品)に比べて大きくなる。
従来品Bは、前述のように測定分解能と感度特性を共に良好にすることが困難であり、図13に示したように、本発明による開発品は、測定帯域幅の広さ、感度特性の帯域内偏差について、従来品Bよりも良好なものとなる。
例えば、リング状の基材30にスリット32を設けることにより、基材30周辺の磁界を当該基材30へ引き寄せることが可能になる。スリットを設けていない基材を用いた検出コイルと比較した場合、低周波帯の感度特性が向上することが分かる。
また、例えば、基材30に設けるスリット32の幅を適当な大きさに設定することにより、測定分解能(検出空間分解能)、感度特性を向上させることができ、また、測定対象21に対する検出コイル12の位置ずれによって生じる測定分解能(検出空間分解能)、感度特性等の変化を抑制することができる。
11 回路ユニット
12,12a 検出コイル
20 基板
21 測定対象
30,30a 基材
31,31a 中心孔
32,32a スリット
33,34 コイル
51,52 ダンプ抵抗
53 差動増幅回路
54 減算回路
60 測定装置
61 電源装置
62 ジェネレータ
100プローブ本体
101差動型検出コイル
Claims (7)
- 中心孔を有するリング状の磁性材料からなり、前記リング状の径方向に延設されたスリットを有する基材と、
前記基材に巻回された第1コイルおよび第2コイルと、
を備え、
前記第1コイルおよび前記第2コイルが、前記基材のポロイダル方向において相互に逆巻きとなるように巻回されて、前記スリットを中心として前記基材に対称配置され、
前記基材の前記中心孔を有する面が測定対象の表面と対向するように設置されて、前記測定対象に生じる磁界を検出する、
ことを特徴とする磁界検出コイル。 - 前記スリットは、
前記リング状の径方向に沿って同じスリット幅で形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁界検出コイル。 - 前記スリットは、
前記基材のリング状中心から外周に向かって扇状に広がるように形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁界検出コイル。 - 前記スリットは、スリット幅が広い程前記磁界の感度特性が良好になる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁界検出コイル。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁界検出コイルと、
前記磁界検出コイルの前記第1コイルに流れる電流と前記第2コイルに流れる電流とをそれぞれ電圧増幅する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路から出力された前記第1コイルに流れる電流を示す信号と前記第2コイルに流れる電流を示す信号との差分を求める減算回路と、
を備え、
前記差動増幅回路および前記減算回路により前記第1コイルと前記第2コイルとを差動コイルとして動作させて、検出された前記磁界によって生じる、前記第1コイルに流れる電流および前記第2コイルに流れる電流から前記測定対象に流れるノイズ電流を求める、
ことを特徴とするEMIアンテナ。 - 前記第1コイルの共振周波数の共振ピークを低下させる第1ダンプ抵抗と、
前記第2コイルの共振周波数の共振ピークを低下させる第2ダンプ抵抗と、
を備える、
ことを特徴とする請求項5に記載のEMIアンテナ。 - 前記磁界検出コイルと、
前記差動増幅回路と、
前記減算回路と、
を一体形成して備えたことを特徴とする請求項5または6に記載のEMIアンテナ。
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