第1の発明は、放電電極と、前記放電電極に電圧を印加し、コロナ放電からさらに進展した放電を前記放電電極に生じさせる電圧印加部を具備する放電装置である。前記放電は、前記放電電極から周囲に伸びるように絶縁破壊された放電経路を、断続的に発生させる放電である。これにより、有効成分の生成量を増大させることができ、かつ、このときにオゾンが増大することは抑えることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記放電電極に液体を供給する液体供給部をさらに具備する。前記放電によって、前記放電電極に供給された前記液体が静電霧化される。これにより、帯電微粒子液の生成量を増大させることができ、かつ、このときにオゾンが増大することは抑えることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記放電電極と対向して位置する対向電極をさらに具備する。前記放電は、前記放電電極と前記対向電極の間で、両者をつなぐように絶縁破壊された放電経路を、断続的に発生させる。これにより、絶縁破壊された放電経路を断続的に発生させる放電を、前記放電電極と前記対向電極の間で安定的に生じさせることができる。
第4の発明は、特に、第3の発明において、前記対向電極は、前記放電電極に対向する針状電極部を備える。これにより、絶縁破壊された放電経路を断続的に発生させる放電を、前記放電電極と前記針状電極部の間で安定的に生じさせることができる。
第5の発明は、特に、第4の発明において、前記針状電極部は、先端部分と基端部分を互いに反対側に有し、前記放電電極は軸方向を有し、前記軸方向における前記先端部分と前記放電電極の距離は、前記軸方向における前記基端部分と前記放電電極の距離よりも小さい。これにより、絶縁破壊された放電経路を断続的に発生させる放電を、前記放電電極と前記針状電極部の間で安定的に生じさせることができる。
第6の発明は、特に、第5の発明において、前記対向電極は、前記軸方向に直交する姿勢で保持される支持電極部と、前記支持電極部と前記針状電極部の間に介在する段差部をさらに備える。前記軸方向における前記基端部分と前記放電電極の距離は、前記軸方向における前記支持電極部と前記放電電極の距離よりも大きい。これにより、前記針状電極部の前記先端部分が大きく突出することを抑え、前記針状電極部が変形することを抑制することができる。
第7の発明は、特に、第4~6のいずれか1つの発明において、前記針状電極部は、前記針状電極部の変形を抑制するための溝部を有し、前記溝部は、前記針状電極部の一部が、前記針状電極部の厚み方向に曲がることで形成されている。これにより、前記針状電極部の断面二次モーメントを増大させ、前記針状電極部の変形を抑制することができる。
第8の発明は、特に、第4の発明において、前記対向電極は、前記針状電極部を支持する支持電極部をさらに備え、前記針状電極部と前記支持電極部は、互いに材質が異なる部材である。これにより、コスト増大を抑えながら前記針状電極部のリーダ放電に対する耐性を高めることができる。
第9の発明は、特に、第4~8のいずれか1つの発明において、前記対向電極は、前記針状電極部を複数備える。これにより、生成された有効成分が外部にむけて効率的に放出される。
第10の発明は、特に、第9の発明において、前記複数の針状電極部のそれぞれの先端部分は、同一円上に位置する。これにより、生成された有効成分が外部にむけてより効率的に放出される。
第11の発明は、特に、第10の発明において、前記複数の針状電極部のそれぞれの先端部分は、前記同一円の周方向において、互いに等距離を隔てて位置する。これにより、生成された有効成分が外部にむけてより効率的に放出される。
第12の発明は、特に、第9~11のいずれか1つの発明において、前記複数の針状電極部はそれぞれ、丸みを帯びた先端部分を有する。これにより、前記複数の針状電極部の製造上のばらつきによって、電界集中の強度に大きなばらつきが生じることが抑えられる。
第13の発明は、特に、第9~12のいずれか1つの発明において、前記複数の針状電極部はそれぞれ、厚みを有する片状の電極部であり、前記複数の針状電極部のそれぞれの厚み方向の端縁部のうち、前記放電電極に近い部分には、面取りが施されている。これにより、前記複数の針状電極部の製造上のばらつきによって、電界集中の強度に大きなばらつきが生じることが抑えられる。
第14の発明は、特に、第9~13のいずれか1つの発明において、前記複数の針状電極部は、互いに離れて位置する3つ以上の針状電極部である。これにより、生成された有効成分が外部にむけてより効率的に放出される。
第15の発明は、特に、第14の発明において、前記対向電極は、前記3つ以上の針状電極部が配置される開口部をさらに備え、前記開口部の開口面積は、前記3つ以上の針状電極部の総面積よりも大きい。これにより、コロナ放電からリーダ放電に進展しやすくなる。
第16の発明は、特に、第3の発明において、前記対向電極は、前記放電電極に対向する少なくとも1つの先鋭状の凸面と、前記放電電極に対向する対向面を備え、前記対向面は、平坦面、凹曲面、またはこれらが組み合わさった形状を有する。これにより、前記放電電極の前記先端部分で電界集中が生じやすくなる。
第17の発明は、特に、第1~第16いずれか1つの発明において、前記電圧印加部に対して並列に電気接続されるコンデンサをさらに具備する。これにより、リーダ放電の放電周波数を調整することができる。
第18の発明は、特に、第13の発明の放電装置を製造する方法において、前記複数の針状電極部のそれぞれの厚み方向の端縁部を、金型装置の一面上で一度に潰すことにより、前記面取りを施す。これにより、前記複数の針状電極部の前記先端部分の位置が一度に揃えられる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されず、以下の各実施形態の構成を適宜に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1には、第1実施形態の放電装置の基本的な構成を示している。本実施形態の放電装置は、放電電極1、電圧印加部2、液体供給部3、対向電極4および通電路5を備える。
放電電極1は、細長く形成された針状の電極である。放電電極1は、その軸方向の一端側に先端部分13を有し、軸方向の他端側(先端部分13の反対側)に基端部分15を有する。本文で用いる針状の文言は、先端が鋭く尖っているものに限定されず、先端が丸みを帯びる場合を含む。
電圧印加部2は、放電電極1に対して7.0kV程度の高電圧を印加するように、放電電極1に対して電気的に接続されている。本実施形態の放電装置は対向電極4を備えており、電圧印加部2は、放電電極1と対向電極4の間に高電圧を印加するように構成されている。
液体供給部3は、放電電極1に対して静電霧化用の液体35を供給する手段であり、本実施形態の放電装置では、放電電極1を冷却して結露水を発生させる冷却部30によって液体供給部3が構成されている。冷却部30は放電電極1の基端部分15に接触し、基端部分15を通じて放電電極1全体を冷却する。液体供給部3が放電電極1に供給する液体35は、放電電極1に生じる結露水である。
対向電極4は、放電電極1の先端部分13に対向して位置する。対向電極4は、その中央部分に開口部43を有する。開口部43は、対向電極4の厚み方向に貫通する。開口部43は、対向電極4のうち、放電電極1の先端部分13に最も近接した領域に設けられている。開口部43が貫通する方向と、放電電極1の軸方向は、互いに平行である。本文中で用いる平行の文言は、厳密に平行な場合に限定されず、略平行な場合を含む。
通電路5は、対向電極4を放電電極1に対して電気的に接続させる通電路であり、その途中に電圧印加部2が配置されている。つまり通電路5は、電圧印加部2と対向電極4を電気的に接続させる第1通電路51と、電圧印加部2と放電電極1を電気的に接続させる第2通電路52を含む。
本実施形態の放電装置では、放電電極1に液体35が保持された状態で、電圧印加部2により、放電電極1と対向電極4の間で7.0kV程度の高電圧を印加する。これにより、放電電極1と対向電極4の間で放電が生じる。
本実施形態の放電装置では、まず放電電極1の先端部分13(先端部分13に保持される液体35の先端)で局所的なコロナ放電を生じさせ、このコロナ放電を、さらに高エネルギーの放電にまで進展させる。この高エネルギーの放電は、放電電極1から周囲に伸びるように絶縁破壊(全路破壊)された放電経路が、断続的に発生する形態の放電である。本実施形態の放電装置では、放電電極1と対向電極4をつなぐように絶縁破壊された放電経路が、断続的に(パルス状に)発生する。このような形態の放電を「リーダ放電」と称する。
リーダ放電では、コロナ放電と比較して2~10倍程度の瞬間電流が、放電電極1と対向電極4の間で絶縁破壊された放電経路を通じて流れる。図2Aにはコロナ放電で流れる電流を概略的に示し、図2Bには、コロナ放電から進展したリーダ放電で流れる電流を概略的に示している。リーダ放電では、コロナ放電と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量のラジカルが生成される。
リーダ放電によってラジカルが生成される際に、オゾンも生成される。しかし、リーダ放電では、コロナ放電と比較して2~10倍程度のラジカルが生成されるのに対して、オゾンが生成される量はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。つまり、コロナ放電をさらに進展させてリーダ放電を生じさせることで、ラジカルの発生量に対するオゾンの発生量が、大幅に抑えられる。これは、生成されたオゾンがリーダ放電に晒されながら放出される際に、高エネルギーのリーダ放電によってオゾンの一部が破壊されるからと考えられる。
ここで、リーダ放電についてさらに説明する。
一般的には、対をなす電極間にエネルギーを投入して放電を生じさせると、投入したエネルギーの量に応じて、放電形態がコロナ放電、グロー放電、アーク放電へと進展する。
コロナ放電は、一方の電極で局所的に発生する放電であり、電極間の絶縁破壊を伴わない。グロー放電とアーク放電は、対をなす電極間での絶縁破壊を伴う放電であり、エネルギーが投入されている間は、その絶縁破壊された放電経路が継続的に存在する。
これに対してリーダ放電は、対をなす電極間での絶縁破壊を伴うが、その絶縁破壊が継続的に存在するのではなく、断続的に発生する。
本実施形態の放電装置では、放電電極1と対向電極4の間でこのような形態のリーダ放電が生じるように、電圧印加部2の電気的な容量(単位時間に放出可能な電気の容量)を設定している。つまり、本実施形態の放電装置では、コロナ放電から進展して絶縁破壊に至ると、絶縁破壊された放電経路を通じて大きな瞬間電流が流れるが、その直後に電圧が低下して放電が停止し、また電圧が上昇して絶縁破壊に至るということを繰り返すように、電圧印加部2の電気的な容量が設定されている。この容量設定によって、グロー放電やアーク放電のように絶縁破壊が継続されるのではなく、瞬間的な絶縁破壊と放電停止が交互に繰り返されるリーダ放電が、実現される。
現状確認される一例として、リーダ放電における放電周波数(瞬間電流の頻度)は50Hz~10kHz程度であり、1回のパルス幅は大きくて200ns程度である。このように、瞬間的な放電(エネルギーの高い状態)と放電停止(エネルギーの低い状態)を繰り返す点において、グロー放電やアーク放電とは明確に相違する。
本実施形態の放電装置では、液体供給部3によって放電電極1に液体35が供給される。そのため、断続的な絶縁破壊を伴う高エネルギーのリーダ放電によって、液体35が静電霧化され、内部にラジカルを含有するナノメータサイズの帯電微粒子液が生成される。生成された帯電微粒子液は、開口部43を通じて外部に放出される。
リーダ放電で生成された帯電微粒子液は、コロナ放電で生成された帯電微粒子液と比較して大量のラジカルを含み、しかもオゾンの生成はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。
以上、図1等に基づいて説明した本実施形態の放電装置は、帯電微粒子液を生成するために液体供給部3を備えた装置(静電霧化装置)であるが、液体供給部3を備えずに構成することも可能である。この場合、放電電極1と対向電極4の間で生じるリーダ放電によって、空気イオンが生成される。
また、本実施形態の放電装置は対向電極4を備えているが、対向電極4を備えずに構成することも可能である。この場合、放電電極1と、放電電極1の周辺の何らかの部材との間でリーダ放電を生じさせれば、リーダ放電によって帯電微粒子液が生成される。本実施形態の放電装置において、液体供給部3と対向電極4をともに備えないことも可能である。この場合、放電電極1と、放電電極1の周辺の何らかの部材との間でリーダ放電を生じさせれば、リーダ放電によって空気イオンが生成される。
(第2実施形態)
第2実施形態の放電装置について、図3A、図3Bに基づいて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
図3Aには、本実施形態の放電装置の基本的な構成を示している。本実施形態の放電装置は、対向電極4が針状電極部41とこれを支持する支持電極部42を一体に備える点において、第1実施形態と相違する。
針状電極部41は、支持電極部42のうち放電電極1に対向する対向面420から、放電電極1に近づく側にむけて突出する電極部である。針状電極部41は、先鋭状の凸面を有する。対向電極4の全体のうち、針状電極部41の先端が最も放電電極1に近く位置する。針状電極部41は、対向電極4が有する開口部43の近傍に位置する。本実施形態の放電装置では、針状電極部41を一つ備えるが、針状電極部41を複数備えることも可能である。
支持電極部42は、平坦な対向面を有する平板状の電極部421と、凹曲した対向面を有するドーム状の電極部422で構成されている。電極部421と電極部422の対向面によって、支持電極部42の対向面420が構成されている。支持電極部42の対向面420は、平坦面と凹曲面が組み合わさった形状を有する。
本実施形態の放電装置は、上記構成を備えるので、対向電極4の針状電極部41と放電電極1の先端部分13(つまり先端部分13に保持される液体35の先端)で電界集中が生じ、対向電極4の針状電極部41と放電電極1の先端部分13の間で、絶縁破壊によるリーダ放電が安定的に発生する。加えて、支持電極部42の対向面420によって、放電電極1の先端部分13での電界集中が一層高められる。
図3Bには、本実施形態の放電装置の変形例を示している。この変形例では、支持電極部42が、凹曲した対向面を有するドーム状の電極部423で構成されている。支持電極部42の対向面420は、放電電極1の先端部分13を中心として凹状に湾曲した凹曲面である。
この変形例においても、対向電極4の針状電極部41と放電電極1の先端部分13の間で、絶縁破壊によるリーダ放電が安定的に発生するという利点や、放電電極1の先端部分13での電界集中が一層高められるという利点がある。なお、対向電極4の支持電極部42の対向面420は、適宜の平坦面、凹曲面、またはこれらが組み合わされた形状の面であればよい。
(第3実施形態)
第3実施形態の放電装置について、図4A、図4Bに基づいて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
図4Aには、本実施形態の放電装置を示している。本実施形態の放電装置においては、放電電極1と対向電極4を電気的に接続させる通電路5の途中に、リーダ放電の電流ピークを調整するための制限抵抗6を設けている。具体的には、通電路5のうち、電圧印加部2と対向電極4を電気的に接続させる第1通電路51の途中に、制限抵抗6を配している。
リーダ放電では、絶縁破壊された放電経路を通じて瞬間電流が流れ、その際の電流抵抗が非常に小さくなるので、本実施形態の放電装置では、第1通電路51に制限抵抗6を設けて瞬間電流の電流ピークを抑えている。瞬間電流の電流ピークを抑えることで、NOxの発生が抑えられるという利点や、電気的ノイズの影響が大きくなり過ぎることが抑えられるという利点がある。制限抵抗6は、専用の素子を用いて構成されるものに限らず、設定どおりの電気的抵抗を有する構造であれば、適宜の構成が採用可能である。
図4Bには、本実施形態の放電装置の変形例を示している。この変形例では、電圧印加部2と放電電極1を電気的に接続させる第2通電路52の途中に、制限抵抗6を配している。この変形例においても、制限抵抗6によってリーダ放電の瞬間電流のピーク値が抑えられる。
(第4実施形態)
第4実施形態の放電装置について、図5に基づいて説明する。なお、第3実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
本実施形態の放電装置においては、通電路5の途中に、リーダ放電における放電周波数を調整するコンデンサ7を配している。コンデンサ7は、電圧印加部2に対して並列に電気接続されている。上述したように、リーダ放電では、瞬間電流が流れるときの電流抵抗が非常に小さくなるので、通電路5にこのようなコンデンサ7を配置することで、リーダ放電の放電周波数が効果的に調整される。
コンデンサ7は、専用の素子を用いて構成されるものに限らず、設定どおりの容量を有する構造であれば、適宜の構成が採用可能である。
(第5実施形態)
第5実施形態の放電装置について、図6Aに基づいて説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
本実施形態の放電装置では、絶縁破壊を伴うリーダ放電を安定的に発生させるための手段として、第2実施形態のような先鋭状の凸面を有する針状電極部41を設けるのではなく、互いに平行な2つの棒状電極部46を一体に設けている。対向電極4は、円形状の開口部43を有し、放電電極1の軸方向に沿って視たときに、開口部43の内側に2つの棒状電極部46が位置し、2つの棒状電極部46の間に放電電極1が位置する。2つの棒状電極部46における放電電極1の先端部分13との間の最短距離は、互いに同一である。本文中で用いる同一の文言は、厳密に同一な場合に限定されず、略同一な場合を含む。
本実施形態の放電装置では、対向電極4の各棒状電極部46のうち放電電極1の先端部分13に最も近い部分と、放電電極1の先端部分13との間で、絶縁破壊によるリーダ放電を安定的に発生させることができる。
(第6実施形態)
第6実施形態の放電装置について、図6Bに基づいて説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
本実施形態の放電装置では、リーダ放電を安定的に発生させるための手段として、針状電極部41を設けるのではなく、対向電極4の開口部43の開口縁の形状を多角形状(四角形)に設けている。放電電極1の軸方向に沿って視たときに、開口部43の中央に放電電極1が位置する。開口部43の内周面は、周方向に連続する複数(4つ)の平坦面で構成されている。各平坦面における放電電極1の先端部分13との間の最短距離は、互いに同一である。
本実施形態の放電装置では、放電電極1の先端部分13と、開口部43の内周面を構成する各平坦面のうち放電電極1の先端部分13に最も近い部分との間で、リーダ放電を安定的に発生させることができる。
(第7実施形態)
第7実施形態の放電装置について、図6Cに基づいて説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
本実施形態の放電装置では、リーダ放電を安定的に発生させるための手段として、針状電極部41を設けるのではなく、対向電極4の開口部43の開口縁の形状を楕円形状に設けている。放電電極1の軸方向に沿って視たときに、開口部43の中央に放電電極1が位置する。
本実施形態の放電装置では、放電電極1の先端部分13と、開口部43の内周面のうち放電電極1の先端部分13に最も近い2箇所の部分との間で、リーダ放電を安定的に発生させることができる。
(第8実施形態)
第8実施形態の放電装置について、図7~図14に基づいて説明する。なお、第2実施形態や第3実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
図7~図9に示すように、本実施形態の放電装置は、放電電極1、電圧印加部2、液体供給部3(冷却部30)、対向電極4および通電路5を備え、さらに制限抵抗6を備えている。放電電極1や対向電極4は、筐体80によって所定の位置および姿勢で保持されている。制限抵抗6は、第3実施形態と同様に、電圧印加部2と対向電極4を電気的に接続させる第1通電路51の途中に配されている。
液体供給部3を構成する冷却部30は、一対のペルチェ素子301と、一対のペルチェ素子301に対して一対一で接続された一対の放熱板302を備え、一対のペルチェ素子301への通電によって放電電極1を冷却するように構成された熱交換器である。各放熱板302は、その一部が合成樹脂製の筐体80に埋め込まれ、各放熱板302のうちペルチェ素子301に接続される部分とその周辺部分は、放熱可能に露出している。
一対のペルチェ素子301のそれぞれの冷却側は、放電電極1の基端部分15に対して、半田を介して機械的にかつ電気的に接続されている。一対のペルチェ素子301のそれぞれの放熱側は、一対一に対応する放熱板302に対して、半田を介して機械的にかつ電気的に接続されている。一対のペルチェ素子301への通電は、一対の放熱板302と放電電極1を通じて行われる。
対向電極4は、放電電極1の軸方向と直交する姿勢で保持される平板状の支持電極部42と、支持電極部42よりも放電電極1に近く位置するように支持電極部42によって支持される4つの針状電極部41を備える。本文中で用いる直交の文言は、厳密な意味での直交に限定されず、略直交の場合を含む。
各針状電極部41は、細長い片状の電極部であり、その長手方向の一側に先鋭状の先端部分413を有し、長手方向の他側(先端部分413の反対側)に基端部分415を有する。各針状電極部41は、対向電極4が備える円形状の開口部43の周縁部から、開口部43の中心に向けて伸びるように形成されている。4つの針状電極部41は、開口部43の周縁部のうち周方向に等間隔を隔てた4箇所の部分から、互いに近づく方向に伸びている。本文中で用いる等間隔の文言は、厳密に等間隔な場合に限定されず、略等間隔な場合を含む。
図8に示すように、放電電極1の軸方向に沿って視たときに、各針状電極部41の先端部分413は、放電電極1を中心とした同一円上に位置し、かつ、その同一円の周方向において、互いに等距離を隔てて位置する。
図7や図9に示すように、各針状電極部41は、支持電極部42と平行な姿勢(放電電極1の軸方向に直交する姿勢)から、僅かに傾いた姿勢で保持されている。この傾きは、各針状電極部41の先端部分413を放電電極1に近づける方向の傾きである。放電電極1の軸方向において、先端部分413と放電電極1の距離D1は、基端部分415と放電電極1の距離D2よりも小さい。
各針状電極部41の姿勢をこのように設定することで、各針状電極部41の先端部分413で電界集中が生じやすくなり、その結果、各針状電極部41の先端部分413と放電電極1の先端部分13の間で、リーダ放電が安定的に生じやすくなるという利点がある。
さらに対向電極4は、支持電極部42と各針状電極部41の基端部分415の間に介在する段差部45を備える。段差部45は、開口部43の周縁部を構成する。各針状電極部41は、段差部45から開口部43の中心部に向けて伸びている。支持電極部42と各針状電極部41の間に段差部45が介在することで、放電電極1の軸方向において、基端部分415と放電電極1の距離D2は、支持電極部42と放電電極1の距離D3よりも大きく設けられている。
対向電極4が段差部45を備えることで、針状電極部41の先端部分413が大きく突出することが抑えられる。そのため、搬送や組み立ての際に対向電極4を何らかの平面上に置いたときに、その平面に先端部分413が押し当たって針状電極部41が変形するというリスクが低減される。
さらに各針状電極部41には、基端部分415から先端部分413に向けて伸びるような外形の溝部417が設けられている。溝部417は、針状電極部41の一部が、針状電極部41の厚み方向に押し曲げられることで形成されている。各針状電極部41は、溝部417を備えることで断面二次モーメントが高められ、これにより変形が生じ難くなるとともに曲げ強度が高められている。
以上説明した本実施形態の放電装置は、針状電極部41を4つ備え、各針状電極部41の先端部分413と、放電電極1の先端部分13との間で、絶縁破壊された放電経路をそれぞれ断続的に形成し、リーダ放電を生じさせる。ここで生じるリーダ放電は、針状電極部41が1つだけの場合と比較して、放電電極1と対向電極4の間の三次元的に広範な領域で発生する。このリーダ放電によって生成された帯電微粒子液は、4つの針状電極部41と放電電極1の間に形成される電界の向きに沿って、開口部43を通じて効率的に外部に放出される。
加えて、本実施形態の放電装置では、4つの針状電極部41のそれぞれの先端部分413が同一円上に位置し、かつ、その同一円の周方向において互いに等距離を隔てて位置するので、生成された帯電微粒子液は、開口部43を通じてより効率的に外部に放出される。
なお、針状電極部41は4つに限定されず、複数であればよいが、帯電微粒子液を効率的に外部に放出するためには、針状電極部41は3つ以上であることが好ましい。
図10Aと図10Bには、それぞれ変形例を示している。図10Aに示す変形例は、対向電極4が3つの針状電極部41を備える変形例であり、図10Bに示す変形例は、対向電極4が8つの針状電極部41を備える変形例である。これらの変形例において、溝部417と段差部45は省略されている。
開口部43に3つ以上の針状電極部41が配置された対向電極4においては、放電電極1の軸方向に沿って視たときに、開口部43の開口面積が、3つ以上の針状電極部41の総面積よりも大きく設定されることが好ましい。このように開口面積を設定すれば、各針状電極部41の先端部分413に電界が集中しやすくなり、リーダ放電が安定的に生じやすくなる。
ところで、本実施形態の放電装置のように、対向電極4が複数の針状電極部41を備える場合に、各針状電極部41の先端部分413での電界集中の強度は、なるべく均一であることが望ましい。電界集中の強度に大きなばらつきが生じれば、帯電微粒子液が、開口部43を通じて効率的に放出されにくくなる。
図11には、各針状電極部41の先端部分413の突端4135に、丸みを帯びさせた変形例を示している。突端4135は、各針状電極部41をその厚み方向から視たときに最も先端に位置する角部である。各針状電極部41の先端部分413が丸みを帯びた形状となることで、電界集中が或る程度緩和される。そのため、各針状電極部41を成形する際の製造上のばらつきによって、電界集中の強度に大きなばらつきが生じることが抑えられる。
図12A、図12Bには、各針状電極部41の先端部分413の端縁部4137に、面取りを施した変形例を示している。端縁部4137は、先端部分413の厚み方向T1(図12B参照)の両側の端縁部のうち、放電電極1に近い部分の端縁部である。各針状電極部41の端縁部4137に面取りが施されることで、電界集中が或る程度緩和される。そのため、各針状電極部41を成形する際の製造上のばらつきによって、電界集中の強度に大きなばらつきが生じることが抑えられる。
図13には、各針状電極部41の端縁部4137に面取りを施す金型装置9の要部を示している。金型装置9は、曲げ加工用の上型91と下型92を備える。金型装置9は、上型91と下型92の間で各針状電極部41に曲げ加工を施す際に、下型92の側に設けられた平坦な一面93上で、各針状電極部41の端縁部4137を一括して押し潰し、面取りを施す。この金型装置9によれば、各針状電極部41に曲げ加工を施す際に、あわせて端縁部4137の面取りを施すことができる。加えて、各針状電極部41に面取りを施すときに、各針状電極部41の先端部分413の位置(端縁部4137の位置)が揃えられ、その結果、各針状電極部41の先端部分413と放電電極1との距離が均一化されるという利点がある。
これらの変形例では、各針状電極部41の先端部分413での電界集中が緩和され、電界集中の強度のばらつきが抑えられるが、電界集中が緩和されるとリーダ放電に進展しにくくなるという傾向もある。しかし、上述したように、開口部43の開口面積を、複数の針状電極部41の総面積よりも大きく設定したことによって、リーダ放電への進展は安定的に促進される。
図14には、対向電極4が備える針状電極部41と支持電極部42を、別の材質で形成した変形例を示している。この変形例では、リーダ放電に晒される針状電極部41を、放電に対する耐性が高いチタン、タングステン等の材質で形成し、支持電極部42は、針状電極部41よりも放電に対する耐性の低いステンレス鋼等の材質で形成することができる。この変形例によれば、対向電極4のリーダ放電に対する耐性が、安価な構造で高められるという利点がある。
(第9実施形態)
第9実施形態の放電装置について、図15A~図19に基づいて説明する。なお、第8実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
図15Aに示すように、本実施形態の放電装置が備える制限抵抗6は、専用の素子を用いて形成された高圧用の抵抗器60である。抵抗器60は、抵抗素子601と、抵抗素子601に電気的にかつ機械的に接続された一対のリード線602と、各リード線602の端部に電気的にかつ機械的に接続された端子603を有する。高圧用の抵抗器60において、各リード線602は単線で構成されることが一般的であり、曲げに弱い性質(特に繰り返しの曲げに弱い性質)を有するが、これに対して各リード線602は屈曲を抑制することのできる可撓性のカバー605で覆われている。カバー605に覆われたリード線602は、曲げたときの曲率半径が大きく保たれるので、曲げによる応力集中が緩和される。
図15A、図15Bに示すように、本実施形態の放電装置は、抵抗器60を固定するための固定台81をさらに備える。固定台81は、放電電極1や対向電極4を支持する筐体80に対して、一体に装着されている。
固定台81には、抵抗素子601と各端子603がそれぞれの所定位置に固定される。これにより、各リード線602は固定台81の所定位置に保持され、各リード線602が繰り返し曲げられるリスクが抑えられる。固定台81の周縁部からは、周壁811が起立している。周壁811は、抵抗器60の少なくとも抵抗素子601と一対のリード線602を囲むように位置する。
図15Bに示すように、固定台81には蓋82を着脱自在に被せることが可能である。抵抗素子601と一対のリード線602は、周壁811と蓋82によって、外部から触ることができないように覆われる。
図16と図17には、図15A、図15Bに示すような固定台81を備えずに抵抗器60を設置した変形例を、それぞれ示している。図16の変形例では、対向電極4に対して抵抗器60の一方のリード線602を、電気的にかつ機械的に直接接続させている。
図17の変形例では、対向電極4に対して抵抗器60を、電気的にかつ機械的に直接接続させ、さらに抵抗器60を筐体80の外面に固定している。この変形例では、筐体80の裏面側(対向電極4が位置する側と反対側)の部分が、固定台81を兼ねている。
図16と図17の変形例は、対向電極4に対して制限抵抗6を直付けした例であり、言い換えれば、対向電極4と制限抵抗6の間の配線の長さを0mmに設定した例である。制限抵抗6を第1通電路51中に配置する場合、対向電極4と制限抵抗6の間の配線の長さは、0~30mmの範囲内で設定されることが好ましい。これは、絶縁破壊された放電経路を通じて瞬間電流が流れるときは電流抵抗が非常に小さくなるので、対向電極4と制限抵抗6の間の配線の長さが30mmを超えると、その配線の浮遊容量の影響によって放電が不安定化するからである。
図18Aのグラフに示す測定結果からも、対向電極4と制限抵抗6の間の配線の長さが30mmを超えると、リーダ放電により生成される有効成分量(ラジカル量)が低下することが確認される。図18Aの縦軸には数値を示していないが、発生するラジカル量の上限は5兆個/sec程度である。
また、制限抵抗6を第1通電路51中に配置する場合、第1通電路51における電圧印加部2と制限抵抗6の間の長さは、0~200mmの範囲内で設定されることが好ましい。これは、瞬間電流が流れるときは電流抵抗が非常に小さくなるので、電圧印加部2と制限抵抗6の間の配線の長さが200mmを超えると、その配線の浮遊容量の影響によって放電が不安定化するからである。
図18Bのグラフに示す測定結果からも、印加電極部2と制限抵抗6の間の配線の長さが200mmを超えると、リーダ放電により生成される有効成分量(ラジカル量)が低下することが確認される。図18Bにおいても、発生するラジカル量の上限は5兆個/sec程度である。
図18Aと図18Bのグラフに示す測定結果は、図19に概略的に示す装置を用いて測定された結果である。この装置では、対向電極4と電圧印加部2を電気的に接続させる配線中に制限抵抗6を配置し、制限抵抗6から距離D4(=4mm)だけ隔てた箇所にグラウンドとなる金属板89を配置して、図示略の放電電極との間に7.0kVの高電圧を印加し、リーダ放電により生成されるラジカル量を測定した。
以上の結果は、第1通電路51に制限抵抗6が配置される場合の結果であるが、放電電極1と電圧印加部2を電気的につなぐ第2通電路52に制限抵抗6が配置される場合(図4B参照)も、同様の結果が得られる。
つまり、制限抵抗6が第2通電路52中に配置される場合、第2通電路52における放電電極1と制限抵抗6の間の長さを30mm以内で設定することが、リーダ放電を安定的に生じさせるために好ましい。また、第2通電路52における電圧印加部2と制限抵抗6の間の長さは、200mm以内で設定することが、リーダ放電を安定的に生じさせるために好ましい。
(第10実施形態)
第10実施形態の放電装置について、図20~図22に基づいて説明する。なお、第8実施形態で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
図20は、本実施形態の放電装置の要部を示す平面図である。図21は図20のa-a線断面図、図22は図20のb-b線断面図である。
図20では、放電電極1、対向電極4、一対のペルチェ素子301等を省略して示している。本実施形態の放電装置では、各放熱板302の露出部分(筐体80に埋められていない部分)のうち、ペルチェ素子301が搭載される部分3025の周辺領域において、コーナー部分に面取りが施されている。具体的には、図20~図22に矢印Cで示す部分に、面取りが施されている。ペルチェ素子301が搭載されるステージ状の部分3025には、面取りが施されていない。
各放熱板302の面取りは、各放熱板302を樹脂(たとえばウレタン系の紫外線硬化樹脂)等のコーティング剤にディップしてコーティングを施すときに、このコーティングによって各放熱板302のコーナー部分をより確実に覆わせるために行う。というのも、各放熱板302は、板金を型抜きして製造されるので、型抜き後にはそのエッジに略直角なコーナー部分が形成される。各放熱板302が略直角なコーナー部分を有すると、そのコーナー部分ではコーティングが十分な膜厚で形成され難く、各放熱板302のコーナー部分が露出しやすくなる。
本実施形態の放電装置では、コロナ放電と比較して高エネルギーのリーダ放電を生じさせるので、放電電極1に供給された液体35(結露水)の酸性がより強められる傾向がある。そのため各放熱板302の一部がコーティングから露出すると、その部分から酸化(腐食)して耐久性が低下する。
これに対する別の対策として、コーティングの膜厚を全体的に大きく設定して露出を抑えるという対策も考えられる。しかし、コーティングは各放熱板302と、これに搭載されるペルチェ素子301の冷却側から放熱側に至る全体を覆うように施されるので、コーティングの膜厚が全体に大きくなると、ペルチェ素子301の冷却性能が低下することになる。本実施形態の放電装置によれば、コーティングの膜厚を抑えながら、各放熱板302や半田の劣化を抑制することが可能である。
(第11実施形態)
第11実施形態の放電装置について、図23、図24に基づいて説明する。なお、第8実施形で説明した構成と同様の構成については、詳しい説明を省略する。
本実施形態の放電装置では、リーダ放電における放電周波数(瞬間電流の頻度)を調整するために、第4実施形態の放電装置のように高圧側にコンデンサを配置するのではなく、低圧側に帰還時間制御部85を配置している。
図23は、本実施形態の放電装置の要部を示すブロック図である。図23に示すように、本実施形態の放電装置は、電圧印加部2を構成する高圧発生回路20に加えて、電圧制御部83、電流制御部84、帰還時間制御部85、高圧駆動回路86および入力部87を備える。
入力部87に電源が供給されると、高圧駆動回路86が動作して高圧発生回路20から高電圧が出力される。この出力に関する制御信号が電圧制御部83と電流制御部84に入力されると、電圧制御部83と電流制御部84は、帰還時間制御部85を介して、電圧と電流を所定の値に制御するための制御信号を発生させる。高圧駆動回路86は、この制御信号に基づいて、所定の放電電圧に至るまで出力電圧を上昇させ、絶縁破壊を伴う放電が生じて出力電圧が低下すると、再び出力電圧を所定の放電電圧まで上昇させるといった作業を繰り返す。これにより、リーダ放電が生じる。
本実施形態の放電装置では、出力電圧が低下してから再び所定の放電電圧に復帰するまでの帰還時間を、帰還時間制御部85でコントロールすることができる。帰還時間をコントロールすることで、リーダ放電の放電周波数が調整される。
図24には、本実施形態の放電装置の変形例を示している。この変形例では、高圧駆動回路86がマイクロコンピュータ861と周辺回路部862を含み、マイクロコンピュータ861で帰還時間制御部85を構成している。さらに、マイクロコンピュータ861で電圧制御部83と電流制御部84の少なくとも一方を兼ねるように構成することも可能である。
本実施形態の放電装置では、低圧側に配置した帰還時間制御部85でリーダ放電の放電周波数を調整することができるので、放電特性の調整幅が広いという利点や、高圧側の部材が増加することが抑えられ、その結果としてコストが抑制されるという利点がある。