以下、本発明の下地処理剤を実施形態に即して詳細に説明する。本発明の下地処理剤は、有機溶剤と水と硬化触媒を含有する下地処理剤であって、前記有機溶剤の配合量が前記下地処理剤全体の50~99質量%、前記水の配合量が前記有機溶剤100質量部に対し0.1~5質量部、前記硬化触媒の配合量が前記有機溶剤100質量部に対し0.5~10質量部であることを特徴とする。以下、各成分について詳細に説明する。
まず、有機溶剤について説明する。本発明の下地処理剤に配合する有機溶剤は、被着体である下地材、湿気硬化性組成物、他の被着体である部材(例えば、仕上材等)と反応せず、水との混和性があり、硬化触媒を溶解させるものであれば、特に制限なく使用することができる。本発明の下地処理剤に有機溶剤を配合することで下地処理剤中の各成分(水、硬化触媒を含む)の濃度調整や粘度調整が容易となり、下地処理剤を施与(例えば、塗布による施与、噴霧による施与等)する際の作業性を向上させることができる。なお、下地材や部材が有機材料である場合、有機溶剤との接触により下地材や部材が僅かに膨潤または溶解することも考えられるが、本発明の課題を達成するうえで差し支えない程度であれば、下地処理剤を使用することができる。
本発明の下地処理剤に配合する有機溶剤としては、具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ステアリン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジエチル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤:エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート等のアセテート系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤の有機溶剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記したエステル系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、アセテート系溶剤、カーボネート系溶剤に加えて、さらに、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、n-ヘプタン、n-オクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ノナン、2,2,5-トリメチルヘキサン、n-デカン、n-ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ビフェニル等の芳香族炭化水素系溶剤、石油ナフサ、コールタールナフサ、ソルベントナフサ等の有機溶剤を併用することができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、水との混和性、硬化触媒との溶解性に優れることから、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、カーボネート系の有機溶剤が好ましい。さらに、炭素数2~10のエステル系の有機溶剤、炭素数2~10のケトン系の有機溶剤、炭素数2~10のカーボネート系の有機溶剤がより好ましい。また、下地処理剤を塗布または噴霧等で施与した後の揮発性に優れることから、炭素数2~6のエステル系の有機溶剤、炭素数2~6のケトン系の有機溶剤、炭素数2~6のカーボネート系の有機溶剤が特に好ましい。
有機溶剤の配合量は、下地処理剤全体の50~99質量%の範囲内であれば、特に限定されないが、下地処理剤の全体量の70~98質量%が好ましく、80~97質量%が特に好ましい。
次に、水について説明する。本発明の下地処理剤に配合する水は、後述する硬化触媒と併用することで、下地処理剤を下地材表面に塗布または噴霧等の手段により施与した後、下地処理剤を施与した下地材表面に湿気硬化性組成物を塗布等の手段により施与することで、施与された湿気硬化性組成物の硬化速度を向上させることができる。また、下地材表面や部材(例えば、仕上材等)表面に下地処理剤を塗布または噴霧等の手段により施与し、下地材と部材(例えば、仕上材等)を湿気硬化性組成物を介して貼り合わせることで、下地材と湿気硬化性組成物と部材との接着性を向上させることができる。
水は、特に制限なく使用することができる。具体的には、水道水、地下水、蒸留水、イオン交換水等を挙げることができる。
水の配合量は、有機溶剤100質量部に対し0.1~5質量部の範囲内であれば、特に限定されないが、0.1~3質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましく、0.1~0.7質量部が特に好ましい。
次に、硬化触媒について説明する。本発明の下地処理剤に配合する硬化触媒には、金属触媒とアミン触媒を含むものが挙げられる。
金属触媒としては、具体的には、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス化合物、有機ジルコニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機鉄化合物、有機マンガン化合物、有機アルミニウム化合物、有機銅化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機錫化合物としては、オクチル酸錫、ネオデカン酸錫、ステアリン酸錫、ナフテン酸錫等の錫と有機酸との塩、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジネオデカネート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカネート等の有機錫と有機酸との塩、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)等の錫キレート化合物などが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機ビスマス化合物としては、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマスと有機酸との塩、ビスマストリアセテート、ビスマストリプロピオネート、ビスマストリヘプタネート、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカネート)、ビスマストリラウレート、ビスマストリオレート、ビスマストリステアレート等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機ジルコニウム化合物としては、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウムと有機酸との塩、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)等のジルコニウムキレート化合物などが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機亜鉛化合物としては、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛と有機酸との塩、亜鉛ビス(アセチルアセトナート)等の亜鉛キレート化合物などが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機鉄化合物としては、オクチル酸鉄、ナフテン酸鉄等の鉄と有機酸との塩、第二鉄トリス(アセチルアセトナート)等の鉄キレート化合物などが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機マンガン化合物としては、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン等のマンガンと有機酸との塩、マンガンビス(アセチルアセトナート)等のマンガンキレート化合物などが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
有機銅化合物としては、アセチルアセトン銅等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)等のチタンキレート化合物などが挙げられる。
これらのうち、湿気硬化性組成物の硬化速度をさらに向上させることから、有機錫化合物、有機ビスマス化合物、有機鉄化合物、有機亜鉛化合物が好ましく、有機錫化合物、有機ビスマス化合物、有機鉄化合物が特に好ましい。
アミン触媒としては、湿気硬化性組成物の硬化速度をさらに向上させることから、3級アミン化合物が好ましい。3級アミン化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミスチリルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、テトラメチルプロパンジアミン、1-イソブチル-2-メチル-1H-イミダゾール、N,N,N′,N′,-テトラメチルヘキサンジアミン、N,N,N′,N′,-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化触媒の配合量は、上記した有機溶剤100質量部に対し0.5~10質量部の範囲内であれば、特に限定されないが、1~8質量部が好ましく、2~6質量部が特に好ましい。
金属触媒とアミン触媒の配合割合は、特に限定されないが、質量比(金属触媒/アミン触媒)で0.2~5が好ましく、0.5~2が特に好ましい。
本発明の下地処理剤では、必要に応じて、さらに消泡剤を配合することができる。消泡剤を配合することで、下地処理剤を下地材、湿気硬化性組成物、部材の表面に塗布または噴霧等で施与した際に発生する泡を低減させることができる。消泡剤としては、シリコン系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、ポリマー系消泡剤等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。消泡剤の配合量は、特に限定されないが、下地処理剤の全体量に対し0.01~5質量%が好ましい。
本発明の下地処理剤では、必要に応じて、さらに表面調整剤(レベリング剤)を配合することができる。表面調整剤を配合することで、下地処理剤を下地材、湿気硬化性組成物、部材の表面に塗布または噴霧等で施与する際の濡れ性を向上させることができる。表面調整剤としては、シリコン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。表面調整剤の配合量は、特に限定されないが、下地処理剤の全体量に対し0.01~5質量%が好ましい。
下地処理剤の調製方法としては、特に制限なく従来公知の方法を使用することができる。具体的には、ガラス製やステンレス製等の混合容器に有機溶剤、水、硬化触媒、必要に応じて消泡剤や表面調整剤等の任意成分を仕込み、攪拌して均一な混合物とする方法が挙げられる。各原料の仕込み順序は任意で行うことができる。また、各原料は一括または逐次に仕込むことができる。
次に、本発明の下地処理剤を施与した下地材表面へ施与する、湿気硬化性組成物について説明する。湿気硬化性組成物は、湿気等の水と反応して硬化する硬化性樹脂を含有する組成物である。湿気硬化性組成物は、接着剤組成物、シーリング材組成物、防水材組成物、コーティング材組成物等として使用することができる。また、湿気硬化性組成物は、ウレタン系湿気硬化性組成物、変成シリコーン系湿気硬化性組成物等を挙げることができる。
ウレタン系湿気硬化性組成物は、硬化性樹脂としてイソシアネート基含有樹脂を含有する組成物である。イソシアネート基含有樹脂としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(以下、単に「ウレタンプレポリマー」ということがある。)を好適に使用することができる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基を活性水素含有化合物の活性水素(基)に対してイソシアネート基が過剰となるように一括または逐次に仕込み、仕込んだ有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを反応させて得ることができる。有機イソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素含有化合物の活性水素(基)のモル比(イソシアネート基/活性水素)は、ウレタンプレポリマーの過度な粘度上昇を防止しつつ、イソシアネート基が湿気等の水と反応したときに発生する炭酸ガスの量を抑制して硬化時の発泡を防止する点から、1.2~10が好ましく、1.2~5が特に好ましい。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量は、ウレタンプレポリマーの過度な粘度上昇を防止しつつ、イソシアネート基が湿気等の水と反応したときに発生する炭酸ガスの量を抑制して硬化時の発泡を防止する点から、0.3~15質量%が好ましく、0.5~5質量%が特に好ましい。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて、反応触媒や有機溶剤をさらに配合し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気等の水と反応すると、反応生成物であるウレタンプレポリマーが増粘することがあるため、予め反応容器内を窒素ガスで置換しておくことや、窒素ガス気流下で上記反応を行うことが好ましい。
有機イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体例としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。また、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。また、有機ポリイソシアネートとしては、上記した各種有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合またはウレア結合を1分子中に1個以上有する変性有機ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記した各種有機ポリイソシアネートとともに、有機モノイソシアネートを用いることもできる。すなわち、上記有機イソシアネート化合物として、有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートの混合物を用いることができる。有機モノイソシアネートは、1分子中に1個のイソシアネート基を有する化合物である。具体例としては、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート、p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネートが挙げられる。
活性水素含有化合物は、1分子中に1個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、高分子ポリオール、低分子ポリオール、高分子ポリアミン、低分子ポリアミン、高分子アミノアルコール、低分子アミノアルコール、高分子モノオール、低分子モノオールが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで、活性水素含有化合物の「高分子」とは、数平均分子量が1,000以上の化合物であり、活性水素含有化合物の「低分子」とは、数平均分子量が1,000未満の化合物である。また、本発明における数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値である。
高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、上記「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。また、高分子ポリオールの数平均分子量は、1,000以上であれば、特に限定されないが、1,000~20,000が好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸や上記ポリカルボン酸の無水物またはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルを含むカルボン酸類の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、上記したポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応で得られるポリカーボネートポリオール、上記した低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、上記したポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類、ポリカルボン酸や、 ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の1種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合または共重合(以下、「重合あるいは共重合」を(共)重合ということがある。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダム共重合系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ブロック共重合系ポリオール、上記したポリエステルポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、上記したポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリカーボネートエーテルポリオール等が挙げられる。また、上記した各種ポリオールの水酸基を有機イソシアネート化合物のイソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールも挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールのアルコール性水酸基の数は、1分子中に平均して2個以上であれば特に限定されないが、1分子中に2~4個が好ましく、1分子中に2~3個が特に好ましい。
また、ポリオキシアルキレン系ポリオールに加えて、ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコールを開始剤として、上記したプロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させた、ポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールを使用することもできる。
なお、ウレタンプレポリマーの原料であるポリオール成分について、上記したポリオキシアルキレン系ポリオールやポリオキシアルキレン系モノオール等における「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上がポリオキシアルキレン等の主成分で構成されていれば、残りの部分が、ポリオキシアルキレン等の主成分以外の成分(例えば、エステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等)で変性されていてもよいことを意味する。ポリオキシアルキレン等の主成分は、水酸基を除いた部分の80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体と他のアクリル酸および/またはメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)アルキルエステル単量体とを、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用して、共重合させたもの等が挙げられる。
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
上記した各種活性水素含有化合物のうち、湿気硬化性組成物の硬化速度の向上と下地材と湿気硬化性組成物と部材との接着性から、高分子ポリオールが好ましく、高分子ポリオールのうち、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールがより好ましく、ポリオキシアルキレン系ポリオールが特に好ましい。
ウレタン系湿気硬化性組成物は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに加えて、必要に応じて、水と反応して活性水素(基)を生成する化合物(以下、「潜在性硬化剤」ということがある。)を配合することもできる。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが湿気等の水と接触した際に、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水と反応し尿素結合を形成して硬化する。尿素結合を形成する反応の際に、炭酸ガスが発生して、硬化物中に炭酸ガスによる発泡が生じ、硬化物の外観悪化や接着性の低下等の不具合を生じることがある。一方で、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに加え、さらに潜在性硬化剤を配合すると、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水と反応して炭酸ガスを発生させる前に、潜在性硬化剤が水と反応して加水分解し、アルコール性水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の活性水素(基)を生成する。この潜在性硬化剤から生成した活性水素(基)が、水よりも優先的にイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応して架橋硬化する。このため、湿気硬化性組成物は、炭酸ガスによる発泡を低減しながら硬化して、外観や接着性が良好な硬化物となる。
潜在性硬化剤としては、具体的には、ポリオールのケイ酸エステル、第1級および/または第2級アミノ基を有する化合物のケチミン化合物、アルジミン化合物、オキサゾリジン化合物等を挙げることができる。これらのうち、湿気硬化性組成物の貯蔵安定性と発泡防止性の点から、ポリオールのケイ酸エステル、オキサゾリジン化合物が好ましい。
変成シリコーン系湿気硬化性組成物は、硬化性樹脂として加水分解性シリル基含有樹脂を含有する組成物である。加水分解性シリル基含有樹脂は、加水分解性シリル基が湿気等の水と反応してシロキサン結合を形成することにより架橋硬化する。
変成シリコーン樹脂としては、具体的には、1分子中に1個以上の加水分解性シリル基を含有し、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル系重合体、ポリイソプレンやポリブタンジエン等のジエン系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体であるもの等が挙げられる。変成シリコーン樹脂の主鎖としては、ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体が好ましく、ポリオキシプロピレン系重合体、(メタ)アクリル変性ポリオキシプロピレン系重合体が特に好ましい。
加水分解性シリル基の個数は、特に限定されないが、1分子中に平均して1~4個含まれることが好ましく、1.5~3個含まれることが特に好ましい。また、変成シリコーン樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、1,000以上が好ましく、6,000~30,000が特に好ましい。
また、加水分解性シリル基は、架橋硬化の容易性と生産性の点から、下記一般式(1)で示される構造が好ましい。
(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。Xは反応性基であり、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基からなる群から選択される。Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうち、Xはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。aは0、1または2の整数であり、0または1が好ましい。)
本発明の下地処理剤を施与した下地材表面へ施与する、湿気硬化性組成物には、上記した硬化性樹脂、潜在性硬化剤に加えて、必要に応じて、さらに、各種添加剤を配合することができる。添加剤は、湿気硬化性組成物の硬化促進や接着性等の各種性能をさらに向上させるために配合する。具体的には、硬化促進触媒、可塑剤、耐候性安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤、有機溶剤等を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進触媒は、湿気硬化性組成物の硬化性樹脂が活性水素含有化合物(及び/または湿気等の水等)と反応して架橋硬化するのを促進させるために使用する。硬化促進触媒としては、本発明の下地処理剤に配合できる上記硬化触媒を使用することができる。
可塑剤は、湿気硬化性組成物の粘度を下げて作業性を向上させるとともに、湿気硬化性組成物の硬化後の引張応力、伸び等のゴム物性を調節するために使用する。可塑剤としては、数平均分子量が1,000未満の低分子量の可塑剤、数平均分子量が1,000以上の高分子量の可塑剤が挙げられる。低分子量の可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;塩素化パラフィン等が挙げられる。高分子量の可塑剤としては、ジカルボン酸類とグルコール類とからのポリエステル系樹脂;ポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールのアルキルエーテル化誘導体やアルキルエステル化誘導体;前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成において挙げたポリオキシアルキレンポリオールまたはポリオキシアルキレンモノオールと、有機モノイソシアネートまたは有機ポリイソシアネートとを反応して得られる、分子内にイソシアネート基も活性水素基も有しない液状高分子ウレタン系可塑剤;低粘度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体樹脂;ポリブタジエンやポリイソプレン等のポリオレフィン樹脂、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のポリアルキレン樹脂などが挙げられる。
耐候安定剤は、湿気硬化性組成物の酸化、光劣化、熱劣化を防止して耐候性や耐熱性を向上させるために使用する。耐光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
充填剤は、湿気硬化性組成物の増量や硬化物の物性補強のために使用する。充填剤としては、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカ等の合成シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン等の無機系バルーン状充填剤等の無機系充填剤;上記した無機系充填剤の表面を脂肪酸等の有機物で処理した充填剤;木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、熱可塑性樹脂の微粉末、熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン粉末等の有機系粉末状充填剤;ポリエチレン中空体、サランマイクロバルーン等の有機系バルーン状充填剤等の有機系充填剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤が挙げられる。
揺変性付与剤は、湿気硬化性組成物のタレ(スランプ)の防止や塗布形状の保持のために使用する。揺変性付与剤としては、微粉末シリカ、脂肪酸処理炭酸カルシウム等の無機揺変性付与剤;有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機揺変性付与剤が挙げられる。
接着性向上剤は、湿気硬化性組成物を介して下地材と部材を接合する際に、湿気硬化性組成物の下地材及び/または部材に対する接着性をさらに向上させるために使用する。接着性向上剤としては、カップリング剤が挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系等の各種カップリング剤またはその部分加水分解縮合物を挙げることができる。
貯蔵安定性向上剤(脱水剤)は、湿気硬化性組成物中の水分量を低減することで、湿気硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させるために使用する。貯蔵安定性向上剤としては、湿気硬化性組成物中に存在する水分と反応することで湿気硬化性組成物中の水分量を低減できる、ビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウム、p-トルエンスルホニルイソシアネートが挙げられる。
着色剤は、湿気硬化性組成物を着色し硬化物に意匠性を付与するために使用する。着色剤は、所望の色彩に応じて適宜選択可能であり、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等の無機系顔料、銅フタロシアニン等の有機系顔料が挙げられる。
有機溶剤は、湿気硬化性組成物の粘度を調整して、押出し性、打設や塗布時の作業性を向上させるために使用する。有機溶剤としては、湿気硬化性組成物中の他の成分との相溶性が良好で、かつ、他の成分と反応しない有機溶剤であれば、特に制限することなく使用できる。具体的には、ジメチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。
次に、本発明の下地処理剤を用いた接着方法について説明する。本発明の下地処理剤を用いた接着方法は、有機溶剤と水と硬化触媒を含有し、有機溶剤の配合量が全体の50~99質量%、水の配合量が有機溶剤100質量部に対し0.1~5質量部、硬化触媒の配合量が有機溶剤100質量部に対し0.5~10質量部である下地処理剤を被着体となる下地材の表面に塗布、噴霧等の手段にて施与する工程、下地処理剤が施与された下地材の表面に、湿気硬化性組成物を塗布等の手段にて施与する工程、湿気硬化性組成物を介して、下地材と他の被着体となる部材を貼り合わせる工程を含む、接着方法である。上記接着方法により、被着体である下地材が、湿気硬化性組成物を介して、他の被着体である部材と接着される。
まず、本発明の下地処理剤を下地材表面に塗布、噴霧等の手段にて施与する工程について、詳細を説明する。本発明の下地処理剤を湿気硬化性組成物と接する下地材表面(被着面)に塗布または噴霧等にて塗工する。塗布または噴霧の方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、刷毛、フェルト、スポンジ、ヘラ、ローラー、スプレーガン、エアーブラシ、エアゾールスプレー等の用具を使用して塗布または噴霧する方法を挙げることができる。下地処理剤の塗布量は、本発明の課題を損なわない範囲であれば特に制限されないが、20~500g/m2が好ましく、20~300g/m2が特に好ましい。下地処理剤を不要な箇所に塗布または噴霧しないために、事前に養生シートや養生テープを使用してもよい。なお、本発明の下地処理剤は、従来から知られている下地処理用のプライマーと違い、オープンタイム(乾燥時間)を設ける必要がないため、作業時間を短縮することができる。
次に、湿気硬化性組成物を下地材表面に塗布等の手段にて施与する工程について、詳細を説明する。本発明の下地処理剤を下地材表面(被着面)に塗工した後、その塗工面に湿気硬化性組成物を塗布等にて塗工する。すなわち、下地材表面(被着面)には、下地処理剤の層と湿気硬化性組成物の層が積層される。湿気硬化性組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、湿気硬化性組成物を充填密封したカートリッジ、袋、缶等の容器から湿気硬化性組成物を取出し、下地材の塗工面に塗布する。必要に応じて、刷毛、ヘラ、コテ、ローラー等の用具を用いて湿気硬化性組成物の塗布量を調整したり、塗布面を均一にならしたりすることができる。湿気硬化性組成物の塗布量は、本発明の課題を損なわない範囲であれば特に制限されないが、100~1,000g/m2が好ましく、200~800g/m2が特に好ましい。
次に、湿気硬化性組成物を介して、下地材と部材を貼り合わせる工程について、詳細を説明する。下地材表面(被着面)に本発明の下地処理剤及び湿気硬化性組成物を塗工した後、湿気硬化性組成物に各種の部材(例えば、仕上材等)を貼り合わせ、必要に応じて圧締または固定する。ここで、必要に応じて、各種の部材(例えば、仕上材等)を湿気硬化性組成物に貼り合わせる前に、各種の部材(例えば、仕上材等)に対向する湿気硬化性組成物の表面及び/または各種の部材(例えば、仕上材等)の表面(被着面)に、事前に本発明の下地処理剤を施与(例えば、塗布、噴霧等による塗工)してもよい。すなわち、下地材と湿気硬化性組成物の間に下地処理剤を施与するだけでなく、湿気硬化性組成物と各種の部材(例えば、仕上材等)との間にも、下地処理剤を施与(例えば、塗布、噴霧等による塗工)してもよい。湿気硬化性組成物と各種の部材(例えば、仕上材等)との間にも下地処理剤を施与することで、湿気硬化性組成物の硬化速度をさらに速め、湿気硬化性組成物の養生時間の短縮を図ることができる。また、湿気硬化性組成物と各種の部材(例えば、仕上材等)との間にも下地処理剤を施与することで、下地材と湿気硬化性組成物と各種の部材(例えば、仕上材等)との接着性をさらに向上させることができ、接合部の接着信頼性のさらなる向上につながる。
本発明の下地処理剤を施与(塗布または噴霧等)する下地材としては、本発明の課題が解決できる範囲において、特に制限なく公知の下地材を使用することができる。具体的には、モルタル、コンクリート、スレート、漆喰、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)、ガラス、大理石、御影石、サイディング、タイル、瓦、レンガ等の無機材料;鉄、銅、ステンレス、鋼、トタン、アルミニウム、チタン等の金属材料、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene copolymer)、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の合成樹脂製の有機材料;無垢材、合板、集成材等の木質材料を挙げることができる。これらのうち、湿気硬化性組成物との接着性が良好なことから、モルタル、コンクリート、スレート、鉄、鋼、アルミニウム、塩化ビニル樹脂、無垢材、合板、集成材が好ましい。本発明の下地処理剤を施与する下地材は、湿気硬化性組成物を介して、どのような部材との接合にも使用することができる。すなわち、被着体である下地材は、他の被着体である各種の部材(例えば、仕上材等)と同じ部材でもよく、異なる部材でもよい。また、本発明の下地処理剤は、下地材のみならず、各種の部材(例えば、仕上材等)と湿気硬化性組成物の接着性も向上させることができることから、下地材処理に使用が限定されず、各種の部材と湿気硬化性組成物との接合に広く使用することができる。上記から、本発明の下地処理剤は、各種の部材と部材とを、湿気硬化性組成物を介して接合する場合において使用できるため、利用範囲が広い。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
[調製例1]
攪拌機付きの混合容器に酢酸エチルを1,000g、蒸留水を5g仕込み、攪拌しながら金属触媒である有機錫化合物(ジブチル錫ジラウレート、ネオスタンU-100、日東化成社製)を20g、アミン触媒である3級アミン化合物(N,N,N´,N´-テトラメチルヘキサンジアミン、カオライザーNo.1、花王社製)を20g仕込み、室温で1時間攪拌して下地処理剤を調製した。
[実施例1]
調製例1の下地処理剤を使用した。
[比較例1]
下地処理剤を使用しなかった。
[比較例2]
調製例1の下地処理剤に代えて、蒸留水を使用した。
<試験方法>
実施例1及び比較例2の下地処理剤による下地処理後(比較例1では下地処理剤による下地処理をせず)、下記に示す接着性試験を行った。実施例1、比較例1~2の組成および試験結果をまとめて表1に示す。
[接着性試験]
<被着体:アルマイトアルミ>
常態養生
縦30mm×横25mm×厚さ10mmのアルマイトアルミAを用意し、アルマイトアルミAの縦25mm×横25mmの範囲(片面)に調製例1の下地処理剤(実施例1)または蒸留水(比較例2)を約100g/m2塗布した。次いで、オープンタイムを取らずアルマイトアルミAの塗布面にウレタン系湿気硬化性組成物(製品名:オートンアドハー777、ウレタン樹脂30~40wt%、無機系充填材50~60wt%、高沸点炭化水素1~10wt%、オート化学工業社製)を約500g/m2塗布した。
縦30mm×横25mm×厚さ10mmのアルマイトアルミBを用意し、アルマイトアルミBの縦25mm×横25mmの範囲(片面)に調製例1の下地処理剤(実施例1)または蒸留水(比較例2)を約100g/m2塗布した。次いで、オープンタイムを取らずアルマイトアルミBの塗布面を、アルマイトアルミAの塗布面のウレタン系湿気硬化性組成物に貼りつけて固定し、試験体を作製した。また、比較例1として、下地処理剤を塗布しないこと以外は実施例1と同様の方法にて、被着体がアルマイトアルミである試験体を作製した。試験体形状は、JIS K 6852(1994):接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法の6.3試験片の作製に準拠した。試験体を23℃50%RHで8時間、16時間、24時間、48時間養生し、これを常態養生とした。
低温養生
常態養生と同様の試験体を作製した。試験体を0℃で24時間、96時間養生し、これを低温養生とした。
<被着体:硬質塩ビ>
低温養生
縦30mm×横25mm×厚さ5mmの硬質塩ビAを用意し、硬質塩ビAの縦25mm×横25mmの範囲(片面)に調整例1の下地処理剤(実施例1)または蒸留水(比較例2)を約100g/m2塗布した。次いで、オープンタイムを取らず硬質塩ビAの塗布面にウレタン系湿気硬化性組成物(製品名:オートンアドハー777、ウレタン樹脂30~40wt%、無機系充填材50~60wt%、高沸点炭化水素1~10wt%、オート化学工業社製)を約500g/m2塗布した。
縦30mm×横25mm×厚さ5mmの硬質塩ビBを用意し、硬質塩ビBの縦25mm×横25mmの範囲(片面)に調整例1の下地処理剤(実施例1)または蒸留水(比較例2)を約100g/m2塗布した。次いで、オープンタイムを取らず硬質塩ビBの塗布面を、硬質塩ビAの塗布面のウレタン系湿気硬化性組成物に貼りつけて固定し、試験体を作製した。また、比較例1として、下地処理剤を塗布しないこと以外は実施例1と同様の方法にて、被着体が硬質塩ビである試験体を作製した。試験体形状は、JIS K 6852(1994):接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法の6.3試験片の作製に準拠した。試験体を0℃で24時間、96時間養生し、これを低温養生とした。
接着力
常態養生と低温養生の試験体をJIS K 6852(1994)接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法の「8.操作」に準拠して圧縮せん断時の接着力を測定した。
接着破壊状況
圧縮せん断時の試験体の破壊状況(破壊面)を目視で観察し、湿気硬化性組成物の凝集破壊率が75%以上の場合を○、湿気硬化性組成物の凝集破壊率が50%以上75%未満の場合を△、湿気硬化性組成物の凝集破壊率が50%未満の場合を×と評価した。
CF:湿気硬化性組成物の凝集破壊(CF100は湿気硬化性組成物の凝集破壊率が100%(すなわち、下記の被着体と湿気硬化性組成物の界面剥離率が0%)である)
AF:被着体と湿気硬化性組成物の界面剥離(AF100は被着体と湿気硬化性組成物の界面剥離率が100%(すなわち、CF0)である)
表1の結果より、調製例1の下地処理剤を使用した実施例1では、23℃50%RHおよび0℃の硬化が速くなり、養生時間を短縮化することができた。また、実施例1では、接着破壊状況(目視)が被着体と接着剤間の界面剥離ではなく、湿気硬化性組成物の凝集破壊となることから、被着体と湿気硬化性組成物の接着性が向上していることが判明した。さらに、実施例1では、下地処理剤を塗布した後のオープンタイム(乾燥時間)を取る必要がなく、作業性に優れることが判明した。
一方で、下地処理剤を塗布しなかった比較例1は、常態養生と低温養生において実施例1よりも硬化が遅く、養生時間を長くとる必要があるので作業工程の短縮化を図ることができなかった。また、比較例1では、接着破壊状況(目視)が被着体と湿気硬化性組成物の界面剥離となり、被着体と湿気硬化性組成物の良好な接着性は得られなかった。なお、硬化促進効果を期待して蒸留水を塗布した比較例2では、アルミニウムおよび硬質塩ビの表面で、蒸留水がはじかれてしまい、蒸留水を均一に塗布できない状態だったので、接着性試験を行うことができなかった。