JP7099012B2 - 低発汗被覆用油性食品およびこれに被覆された食品の発汗防止方法 - Google Patents
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Description
これを防止するために、特許文献1に、チョコレート類を製造するに際し、溶解度(20℃の水100gに溶けるグラム数)が80以下の糖類を糖原料の40重量%以上の割合で使用することを特徴とする含水食品用チョコレート類の製造法が提案されているが、使用できる糖類に制約があり、使用量も多くしなければ充分な効果が得られにくい。
また、特許文献2に、油脂中にラウリン系油脂を70%以上、SU2及びU3トリグリセリド(Sは飽和脂肪酸、Uは不飽和脂肪酸)の合計を20%以下含有し、そのSFI(固体脂含有量指数)が、10℃で60~75%、20℃で55~70%、30℃で15~35%であるチョコレート組成物が提案されているが、水分が20~30重量%を含む洋菓子やパン等の含水食品を被覆する場合は有効であるが、これ以上の水分を含む高含水食品になると発汗現象が経時的に生じてしまう。
しかしながら、保水剤として主に用いる澱粉類等は添加量が多くなりがちであったり、デキストリンなどといった特別な原料を加える事でコストが上昇したり、食味に影響が出かねないなどの問題があった。
このように、被覆用油脂組成物の品質改善のため、油脂組成や乳化剤などいくつかの技術が検討されているものの、どれをとっても未だ充分なものでなかった。
成型用モールド内で水性媒体と接触させて固化して得られる成型菓子を、成型用モールドから取り出すことのできる成型菓子用粉末であって、無水ブドウ糖及びα化澱粉を含有し、該α化澱粉は、2.5重量%水懸濁液としたときの25℃の粘度が17.3mPa・s以上であることを特徴とする成型菓子用粉末と、成型用モールドとを備えてなる組合せ菓子という発明が開示されている(特許文献5)。このような無水ブドウ糖を用いる技術は他にもあるが、無水ブドウ糖自体が水性溶媒と接触することで、急速に固化する為、このようなモールド内で固化することの視覚的効果を期待する食品には使われている。
ただし、保存温度とSFC測定温度の関係は、
室温(10~25℃)の場合は25℃を、その5℃高い温度は30℃におけるSFCを
冷蔵(0℃~10℃)の場合は10℃を、その5℃高い温度は15℃におけるSFCを
冷凍(~0℃)の場合は0℃を、その5℃高い温度は5℃におけるSFCを
それぞれ用いる事とする、
また、糖類Aはイソマルツロース、トレハロース、乳糖、無水ブドウ糖から選ばれる1種以上の糖類を指す。
(2)糖類Bが無水ブドウ糖に対して0.1~50重量%である(1)記載の被覆用油性食品、
ただし、糖類Bはイソマルツロース、トレハロース、乳糖から選ばれる1種以上の糖類を指す、
(3)(1)乃至(2)記載の被覆用油性食品にて、水分活性0.7以上の食品を被覆したのちに、閉鎖系包材内に密閉することを特徴とする被覆食品の発汗防止方法である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明において、被覆用油性食品は一般的にはチョコレートに代表されるものであり、その中でも被覆用途に特化したものである。ここで言うところのチョコレートとは、油脂が連続相をなす油脂加工食品であり、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート生地および準チョコレート生地を含むが、これらに限定されるものではなく、カカオマス、ココア、カカオバター、カカオバター代用脂、ハードバター等を利用した油脂加工食品をも包含するものである。またいわゆるグレーズ様食品と呼ばれる、カカオ固形分をあまり含まず、固形分は糖類が主体でシャリシャリとした食感を呈するものも含まれる。油相が連続相であり、固形分がある場合は油相に内包されていることが望ましい。
本発明の被覆用油性食品に含まれる油脂の固体脂含量(SFC) はその被覆用油性食品及び組み合わせる高含水食品の保存温度において50%以上、より望ましくは60%以上であり、またその保存温度より5℃高い温度でのSFCが35%以下、より望ましくは10%以下である。なお、保存温度とSFC測定温度の関係は、室温(10~25℃)の場合は25℃を、その5℃高い温度は30℃におけるSFCを、冷蔵(0℃~10℃)の場合は10℃を、その5℃高い温度は15℃におけるSFCを、冷凍(~0℃)の場合は0℃を、その5℃高い温度は5℃におけるSFCを、それぞれ示している。
これは保存される温度からすぐに喫食される場合、5℃の上昇で堅く凝固している状態から固形分が急激に減少するという口溶けのよい油脂であることを示している。保存温度において50℃を下回ると喫食時にすぐに融解している油脂のオイリー感がでてしまい、また5℃高い温度において15%を上回ると、口どけが低下し、いわゆるワキシーな食感になってしまう。なおSFC値はAOCS official method cd16b-93 (ダイレクト法) に準じて測定する。
本発明の油脂としては、動植物性油脂及びそれらの硬化油脂の単独又は2種以上の混合物或いはこれらのものに種々の化学処理又は物理処理を施したものが例示できる。かかる油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、カカオ脂、ヒマワリ油、落花生油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示できる。
上記SFCの規定をみたしていれば得に限定はされないが、室温の場合はヤシ油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、サル脂を主に他の油脂と組み合わせ、冷蔵の場合は前記油脂にそれ以外の液状油脂を組み合わせ、さらに冷凍の場合は、液状油脂の割合をより多くする事で適当なSFCのものを得やすい。
本発明の被覆用油性食品に含まれる油脂の含有量は被覆用油性食品に対して20重量%以上、望ましくは30重量%以上であることが好ましい。これは従来の被覆用油性食品に用いられる油脂含有量でかまわないが、本発明の発汗抑制効果には固形分の種類や量に特に影響を受けないため、油脂の含有量の上限は特に設けられない。よって作業性や風味食感の商品設計上の規定に従って含有量を決めてよく、その点からは30~50重量%が好ましい。
固形分の中でも糖類は必須であり、以下の条件を満たしている必要がある。
糖類Aが含有する全糖類に対して70~100重量%、望ましくは80%以上である。本発明において、発汗を抑制する機能は糖類Aがになうのだが、商品設計上、発汗を促進させる他の糖質の配合が避けられない場合でも、糖類Aが70重量%、配合が残余の30重量%程度までは許容されるが、それ以上配合すると、発汗抑制効果を失いかねない。本発明において糖類Aはイソマルツロース、トレハロース、乳糖、無水ブドウ糖から選ばれる1種以上の糖類を指す。
糖類Aは単独で吸水性に特異な機能を持っていたり、べたつきを防止したりといった、発汗抑制に機能の似た特性がすでに知られているものがある。
糖類Aの中でも無水ブドウ糖は他の糖質である糖類Bと事なる。無水ブドウ糖は吸湿性が比較的強く、含水ブドウ糖となる。この含水ブドウ糖は、単に水を含んでいるのではなく、結晶内に水分子を強く閉じ込めるため、一度とらえた水分を再び分離するには大きなエネルギーが必要である。これにより、無水ブドウ糖は他の糖類に比して大きな吸水力と一度吸水した水分の強い保持力を発揮する。
ただ、含水結晶となったブドウ糖自体の挙動は無水ブドウ糖の結晶と大きく異なり、それ自体別の糖類のような挙動を示す。無水ブドウ糖が含水ブドウ糖になるに際し、特許文献5にもあるが、急速な固化により、いわゆるラムネ菓子のような堅い物性の塊状の構造物をつくる。この物性の急激な変化が、被覆用油性食品の塗布の作業性を悪化させたり、あるいは塗布後の被覆用油性食品を堅く脆くすることによる、保存時・喫食時の割れや剥がれを助長させかねない。
しかし、糖類Bを配合することで上記作業性、保存時・喫食時の欠点を抑制することができる。
また、そのそれぞれの糖において甘味度やコストなどが異なる為、商品設計に応じて、適宜組み合わせて用いる事ができるが、その中でも特に望ましいのは、糖類Bは無水ブドウ糖に対する配合比率が、0.1~50重量%、のぞましくは1%~40重量%であり、前述のコストと甘味などのバランスが望ましく好適に用いられる。
糖類以外の固形分は上記の通り、その量においてその下限はなく、添加されなくても構わない。そのため固形分自体も可食性でありさえすれば限定されない。上限は油脂の下限時の80%であるが、作業性と商品設計に応じて適宜選択できる。一例としては、カカオマス等原料由来のカカオ固形分などが挙げられる。
また、被覆用油性食品、特に被覆といった他の食品と組み合わせる用途のものにおいては、粘度や様々な機能を付与する為に乳化剤などが規定されるが、本発明においては特に限定はされず、従来よりある被覆用油性食品の粘度、あるいは用いられる乳化剤を適宜選択し、用いる事が出来る。
一般に、チョコレートに代表される油性食品はカカオ豆をあらかじめ細かく砕き、すりつぶしたカカオマス、ココアパウダー、ココアバター、ココアバター代用脂、甘味料及び粉乳等を適宜混合し、ロールリファイニング(微粒化)工程、コンチング工程を行って製造される。
本願発明における被覆用油性食品の製造方法としては特に限定されるものはなく、既存の製造工程を適宜用いることが出来るのではあるが、上記の通り固形分は必ずしも必要なかったり、粒度が粗いことを是とする商品設計もあるため、その場合はロールリファイニング工程が不要であったりといったケースもあるため、適宜工程を組み合わせて用いる事が出来る。
本発明において被覆対象となる食品は水分活性が0.7以上の食品でありさえすれば得に限定はされない。望ましくは0.85以上である方が本発明の効果が従来のものより明確になる。0.7を下回ると、本発明を用いるまでもなく、従来の被覆用油性食品であっても、発汗しにくく、本発明の効果が得られにくい。
一例としては、シュークリーム、エクレア、クリームの注入されたドーナツ、コッペパンなどの水分の多いパンなどが好適にもちいられ、本発明の効果が特に得られやすい。
本発明の被覆用油性食品は、既存の被覆用油性食品と同様に、油脂組成物を40~50℃に加温溶融し、上記の被覆対象となる食品に被覆し、室温にて放置やクーリングトンネルの通過によって冷却、固化して使用することができる。
本発明における被覆用油性食品とは被覆目的用途に用いられる油性食品であり、別途規定の水分量を満たすものの表面を対象に覆うことを指す。
また被覆した被覆用油性食品の厚さは得に限定はされないが、0.5mm以上10mm程度の厚さを有することが好ましい。発汗の防止は0.5mm程度で十分に発揮されるが、薄すぎるとチョコレートに代表される油性食品の風味を感じにくくなりかねない。また厚すぎると、作業性やコスト的に望ましくなく、可食物の商品設計に影響を及ぼしかねない。
本発明における閉鎖系包材内に密閉された状態は、包材内と外界との間に少なくとも水分の移動がほとんどない状態であり、密閉包装内に水分活性0.7の物質を置いて密閉し、その12時間後までにその測定温度における平衡相対湿度に到達し、その後その平衡相対湿度の90%以上が保管の期間維持される状態を指す。
閉鎖系包材内への密閉された状態での保存条件は、さまざまな条件を選択できる。上記の通り室温(10~25℃)の場合は25℃を、冷蔵(0℃~10℃)の場合は10℃を、冷凍(~0℃)の場合は0℃を、その温度帯におけるSFCの規定する基準の温度として用いる事が出来る。
これにより、閉鎖系包材内への密閉された状態でその後の流通、販売時にも、本発明によれば、発汗が低減、防止できるようになった。
表1に示した配合にてラボコンチェで混合および分散し、被覆用油性食品を調製した。
得られた被覆用油性食品を50℃に温調し、市販のドーナツ(Aw0.92)に被覆用油性食品を被覆して密封し25℃で72時間保管して発汗の有無を評価した。評価の内容も表1に合わせて記載した。
なお、発汗評価は、顕著に発汗:×、わずかに発汗:△、発汗なし:○、とした。
また、水分活性(Aw)の測定は、Aqua Lab Series 3TE(Decagon Device Inc製)を使用して行った。数値は、測定開始後にサンプル温度が25℃になった時点で読み取った。
※ 単位:糖類A/全糖類は重量%、他は重量部。
※ 硬化パーム核油:融点38℃、製品名「ニューメラリン38」、SFC(25℃)63%、SFC(30℃)32%、不二製油株式会社製
イソマルツロース:商品名「粉末パラチノースPST-NP」三井製糖株式会社製
アルファ化澱粉:「ミラゲル463」、ステーリー株式会社。
表2に示した配合にてラボコンチェで混合および分散し、被覆用油性食品を調製した。
得られた被覆用油性食品を50℃に温調し、市販のドーナツ(Aw0.92)に被覆用油性食品を被覆して密封し25℃で72時間保管して発汗の他、「はがれ」、「シャリ感(グレーズ様食品において嗜好される独特のシャリシャリとした食感)」、「甘味」有無を評価した。評価の内容も表1に合わせて記載した。
なお、発汗評価は、表1と同じ、
「はがれ」評価基準は、はがれ脱落する:×、わずかにはがれ、浮き上がる:△、はがれなし:○
「シャリ感」評価基準は、はがれ脱落する:×、シャリ感が喪失、やや感じられる:△、明確なシャリ感:○
「甘味」評価基準は、感じにくい:×、やや弱いが感じる:△、明確な甘味:○
を示す。
ただし、シャリ感は口どけがなめらかな商品設計を求める被覆用油性食品においては必要ないし、甘味についても塩味(たとえばチーズ味のような)を意図した用途は従来あるため、シャリ感と甘味については、商品設計上選択しうる幅が広まるメリットはあるものの、発汗抑制という効果が得られれば、課題は解決したと見なす。
本発明の被覆用油性食品を用いる事で、特定の条件の糖類配合と、組み合わせ食品の保存温度に応じたSFC基準をもつ油脂を用いることで、付加的な装置や工程を増やすことなく、発汗の発生を低減させた被覆用油性食品を提供することができる。
Claims (2)
- 組み合わされた食品の保存温度において、含有する油脂の固体脂含量(SFC)が50%以上、その保存温度より5℃高い温度でのSFCが35%以下であり、かつ糖類Aが含有する全糖類に対して70~100重量%である被覆用油性食品。
ただし、保存温度とSFC測定温度の関係は
室温(10~25℃)の場合は25℃を、その5℃高い温度は30℃におけるSFCを
冷蔵(0℃~10℃)の場合は10℃を、その5℃高い温度は15℃におけるSFCを
冷凍(~0℃)の場合は0℃を、その5℃高い温度は5℃におけるSFCを
それぞれ用いる事とする。
また、糖類Aは無水ブドウ糖を必須とし、イソマルツロース、トレハロースから選ばれる1種以上の糖が、無水ブドウ糖に対して0.1~50重量%である。 - 請求項1記載の被覆用油性食品にて、水分活性0.7以上の食品を被覆したのちに、閉鎖系包材内に密閉することを特徴とする被覆食品の発汗防止方法。
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