JP7097331B2 - クレーン - Google Patents
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Description
荷役の際には、スプレッダ、コンテナやワイヤが船の構造物に引っかかることや、コンテナのコーンやラッシングの外し忘れ等が原因で、スプレッダが上昇できない場合がある。
このような状態が続くと、ワイヤが巻き取れず、ドラムが回転できないのにドラムをモータ等で回転させようとする状態になるため、ドラムを回転させようとする力がすべてワイヤに伝達され、スナッグロードと呼ばれる衝撃荷重がワイヤに加えられる。
スナッグロードが発生すると、衝撃のエネルギーでワイヤの切断やスプレッダの損傷が生じる恐れがある。さらにはワイヤにかかる力の反力であるワイヤの張力でクレーンを構成する他の構造物が引っ張られて、クレーンが倒壊する恐れがある。
そのため、ワイヤで吊り具を昇降させるクレーンでは、スナッグロードが発生した場合に、衝撃のエネルギーを吸収する構造が必要になる。また、クレーンを構成する構造物に伝達されるワイヤの張力を低減する構造が求められる。
このような構造としては、せん断ピンを用いた構造が知られている。特許文献1では、クレーンを構成する構造物にワイヤをガイドするシーブの保持部を軸支し、保持部の軸をせん断ピンで固定している。スナッグロードが発生すると、せん断ピンが折れることにより保持部を自由回転させてワイヤの張力を緩めることで、クレーンの構造物に伝達されるワイヤの張力を低減する。
特許文献1のようにせん断ピンのみを用いた構造は、比較的単純な構成でスナッグロード発生時に確実にワイヤの張力を緩められる点で優れた構造であるが、エネルギー吸収を行う部材を別途用意する必要がある。またこの構造ではスナッグロードの発生原因を除去した後で保持部をスナッグロード発生前の位置に戻して、新しいせん断ピンを保持部に挿入する作業が必要になる。しかしながら保持部とせん断ピンは人力での搬送が困難な重量物であり、位置合わせに手間がかかる点は改善の余地がある。
特許文献2では、シーブの保持部に油圧式ダンパを設けた構造が記載されている。この構造では、スナッグロードが発生した場合にダンパが伸縮することで、エネルギー吸収を行っている。また、保持部を回転させてワイヤの張力を緩めることで、クレーンの構造物に伝達されるワイヤの張力を低減する。
油圧式ダンパを用いた構造は、スナッグロード発生時に確実にワイヤの張力を緩められ、かつエネルギー吸収も行える点で優れた技術である。一方でスナッグロードは通常荷役時にワイヤに加えられる荷重の数倍から数十倍にも達する。そのため、スナッグロードを受け止めるためには極めて大流量で高圧の大型油圧式ダンパが必要となり、コストと設置スペースの点では改善の余地がある。
そのため、回転式ブレーキだけでスナッグロード発生時のクレーン構造物に伝達されるワイヤの張力の低減、及びエネルギー吸収ができ、簡易な構造でスナッグロード発生時のクレーンの倒壊及び損傷を防止できる。
さらに、この態様ではブレーキが回転式なので、油圧シリンダと比べて作動時のストロークの制約が小さく、小型化が容易である。
そのため、回転式ブレーキだけでスナッグロード発生時のクレーン構造物に伝達されるワイヤの張力の低減、及びエネルギー吸収ができ、簡易な構造でスナッグロード発生時のクレーンの倒壊及び損傷を防止できる。
さらに、この態様ではシーブ保持部に加えられる回転力を、回転力のままでブレーキの回転軸に伝達できるので、構造がより単純で小型にできる。
まず、図1~4を参照して第1の実施形態に係るクレーン1の構成を説明する。
ここではクレーン1として、岸壁に接岸したコンテナ船48との間でコンテナ10の荷役を行う岸壁クレーンが例示されている。
図1及び図2に示すように第1の実施形態に係るクレーン1は、支持構造体3、スプレッダ5、ワイヤ7、ドラム9、ガイドシーブ11を備える。図3及び図4に示すようにクレーン1は、シーブ保持部13、ラック15、ピニオン17、及び回転式ブレーキ19も備える。
ワイヤ7は、通常荷役時に加えられる荷重で損傷しない程度の耐久性を満たすものであれば、構造や材料は特に限定しない。一般には鋼線を撚って束ねたストランドと呼ばれるロープをさらに数本撚り合わせたものがワイヤ7として用いられる。
図2では、クレーン1はドラム9a~9dの4つのドラム9を備える。ドラム9a~9dは図示しないモータで駆動され、このモータを制御することでドラム9の回転の向き及び回転数が調整される。
ガイドシーブ11は、ドラム9からスプレッダ5に至るワイヤ7の経路のうち、ワイヤ7の向きを変える位置に設けられ、ワイヤ7をガイドする。図2のガイドシーブ11は、ワイヤ7の向きをX方向陸側からX方向海側に変える位置に設けられる。
ガイドシーブ11が設けられるX方向位置はスプレッダ5のX方向における移動範囲において、陸側の終端になる、そのため、スプレッダ5のX方向における移動範囲に応じてガイドシーブ11のX方向位置が設定される。図1ではワイヤ7が4本設けられているためガイドシーブ11もガイドシーブ11a~11dの4つが設けられ、各々1本のワイヤ7をガイドする。
シーブ保持部13はガイドシーブ軸27、保持軸29、及び一対のガイドシーブ保持板28を備える。
1対のガイドシーブ保持板28はガイドシーブ11を回転軸方向に挟み込むように配置される。ガイドシーブ軸27の両端はガイドシーブ保持板28の長手方向中央近傍に固定される。これによりガイドシーブ保持板28はガイドシーブ11を図3のA1、A2の向きに回転可能に保持する。
図4に示すように、ガイドシーブ11a、11bは保持桁33のY方向手前側端部に配置される。ガイドシーブ11c、11dは保持桁33のY方向側端部に配置される。
ラック15の長手方向の一端はリンク部材37を介してガイドシーブ保持板28の下端に軸支される。リンク部材37は棒状の部材であり、長手方向の一端がラック15の一端にリンク部材軸37aで軸支されている。リンク部材37の長手方向の他端はガイドシーブ保持板28の下端にリンク部材軸37bで軸支される。
リンク部材軸37a、37bは、いずれも軸方向がガイドシーブ11の回転軸の軸方向と平行である。
ラック15は移動方向を図3のB1及びB2に直動する向きに拘束されている。
具体的には、まず、ラック15の下面はガイドローラ41に接触しており、下方へのラック15の移動はガイドローラ41に規制される。ガイドローラ41は、ローラの軸がラック15の長手方向に直交するように、保持桁33の下方から突出した一対の保持板33aに固定されている。次に、図4に示すように、ラック15の両側面は回転式ブレーキ19のブレーキ部45に挟持されており、側方(Y方向)への移動を規制されている。さらに、ラック15はピニオン17と歯合しているため、上方へのラック15の移動はピニオン17にも規制される。
なお、ラック15の移動を直動に拘束できるのであれば、拘束する部材の構造は図3に示す構造に限定されない。少なくともラック15の下面と両側面と接触して下方及び両側方へラック15が移動するのを規制する部材があれば、上方への移動はピニオン17によって拘束されるため、移動を直動に拘束できる。これらの部材は一体でも別体でもよい。
また、ラック15の移動方向は直動に限定されればよいので、水平方向に対してラック15の移動方向が傾斜していてもよい。
ただし、直動を回動に変換できるのであれば、ラック15とピニオン17は必ずしも直結する必要はない。他のギヤを介してラック15とピニオン17を連結してもよい。
直動を回動に変換できるのであれば、ラック15とピニオン17は必ずしも歯車を備える必要はない。例えば磁気を利用する非接触式の構造でもよい。
さらに、直動を回動に変換できるのであれば。例えばラック15の代わりにシリンダを直動部材とし、ピニオン17の代わりにクランクを変換部材としたシリンダクランク機構を用いてもよい。
また、図3及び図4ではラック15とピニオン17の位置関係を明確にするためにラック15とピニオン17が外部に露出した構造を例示しているが、ラック15とピニオン17は外部に露出している必要はない。例えば錆の発生又はゴミの付着による動作不良を防止するために、ラック15とピニオン17をカバー部材等で覆ってもよい。
回転式ブレーキ19はここでは4つのシーブ保持部13に対応して4つが設けられ、各々保持板33a及び保持桁33を介して桁21に固定される。
また、本実施形態のように、ワイヤ7が複数本ある場合は、少なくとも1本のワイヤ7に通常の荷役で生じない荷重が加えられた場合をスナッグロード発生とする。理由は、スナッグロードの発生原因としてはワイヤ7の引っかかりやコーン又はラッシングの外し忘れが挙げられるが、この場合、まず引っかかった部分や外し忘れの部分に近いワイヤ7にスナッグロードが発生するためである。
回転軸43は、ピニオン17の回転力をブレーキ部45に伝達する部材であり、ここではピニオン17の回転中心に固定されたシャフトである。よって、ピニオン17は回転式ブレーキ19の回転軸43に同軸に固定されている。ただし、回転軸43はピニオン17の回転力をブレーキ部45に伝達できればよいので、必ずしもピニオン17に直結する必要はなく、他のギヤ等を介して動力を伝達する構成でもよい。
ここでいう予め定められた所定値とは、スナッグロードが発生した場合にブレーキ部45に加えられるトルクの値の下限を意味する。
ブレーキ部45は、回転軸43がガイドシーブ11及び保持軸29と平行になるように桁21の保持桁33に固定される。より具体的にはブレーキ部45は、保持桁33の下面に突設された保持板33aに固定される。
図4では2つのブレーキ部45が1つの回転軸43を共有している。2つのブレーキ部45はラック15の側面を挟み込むことで、ラック15のY方向への移動を規制している。ただし、ブレーキ部45の数は2つには限定されない。ラック15の側方へ移動を規制する部材を別途設ける場合は、1つの回転軸43と1つのブレーキ部45が連結された構造でもよい。
また、図4では、回転式ブレーキ19に調整用モータ46が連結されている。調整用モータ46は回転軸43に直接又は間接に回転力を伝達する電動モータである。調整用モータ46は、ブレーキ部45が回転可能な状態で回転軸43を回転させてその位相を調整することで、ラック15、シーブ保持部13の位置を調整する装置である。調整用モータ46は必須の構成ではないが、回転軸43の位相の調整を容易にしたい場合等に、必要に応じて設けられる。
クレーン1がコンテナ10を吊り上げる際、スプレッダ5がコンテナ10をツイストロックピン等で固定した状態で、図1のZ方向上方にスプレッダ5を上昇させる。
この際、上昇直後はコンテナ10の重心位置の変動や、緩んだワイヤ7が急に引っ張られこと等が原因で、一時的にワイヤ7に加えられる荷重が変化する。また、スプレッダ5は通常、吊り上げ時に加減速するため、ワイヤ7に加えられる荷重が加速度でも変化する。さらに、コンテナ10の振れ等の位置変動でもワイヤ7に加えられる荷重が変化する。
通常の荷役で発生する荷重の最大値は、スナッグロードが発生しない条件にて、最大総重量のコンテナ10を吊り上げた際にワイヤ7に加えられる荷重を実測又はシミュレーション等で求め、その最大値を抽出すれば求められる。求めた荷重の最大値における回転軸43に加えられる回転トルクがスナッグロード発生の基準となる回転トルクであり、ブレーキ部45によって回転軸43の拘束が解除される基準となる。
乾式ブレーキ機構とは、ブレーキ部45として、乾式で回転可能に当接する少なくとも1対のブレーキ部材を備えた機構を意味する。この機構では一方のブレーキ部材に回転軸43が設けられる。
この機構では、ブレーキ部材間に生じる静止摩擦力で回転軸43の回転が拘束される。一方で最大静止摩擦力に対応するトルクを越える回転力が回転軸43に加えられた場合はブレーキ部材同士が相対回転することで回転軸43の拘束が解除され、シーブ保持部13が回転することでワイヤ7の張力を緩める。さらにブレーキ部材が相対回転する際に摩擦するため、摩擦熱でスナッグロード発生によるエネルギーの吸収が実現される。
ブレーキ部材の形状は特に限定されない。円板又は円環状の摩擦板を当接させたものでもよいし、ドラムブレーキのようにブレーキ部材の一方又は両方が板状でない機構でもよい。
なお、ブレーキ部材は少なくとも1対が当接していればよいので、複数のブレーキ板を当接させた多板式でもよい。
垂直抗力を変更する手段としては、ブレーキ板が回転する基準となるトルクに応じて、1方のブレーキ板を他方のブレーキ板に押圧する荷重を調整する機構を設ければよい。調整機構としては1対のブレーキ板を挟持するクリップのような機械式の機構でもよいし、コイルを用いた電磁式の機構でもよい。また油圧式でもよい。
摩擦板の数、材料、寸法、垂直抗力の調整機構等の具体的な乾式ブレーキ機構の構造は特に限定しない。これらの条件は、想定されるスナッグロードに対応した最大静止摩擦力を得られる範囲で適宜設定すればよい。想定されるスナッグロードに対応した最大静止摩擦力を得られるのであれば、市販品のように公知の製品を用いてもよい。
湿式多板ブレーキ機構とは、複数のブレーキ板が潤滑油中で回転可能に当接するブレーキ機構を意味する。この機構では、複数のブレーキ板の少なくとも1つに回転軸43が連結される。
一方で湿式多板ブレーキ機構では、ブレーキ板と外気が潤滑油で遮断されるため、乾式よりも外部環境の変化に強い。具体的にはブレーキ板が腐食等の変質を起こし難い。
また、湿式多板ブレーキ機構では、回転の際に発生した摩擦熱が潤滑油も介して放出されるため、乾式よりも大きなエネルギーを短時間で放出できる。
さらに湿式多板ブレーキ機構は、摺動部材間の摩擦係数が乾式よりも小さいため、乾式と比べて動作時にブレーキ板が損傷しにくい点も有利である。
また湿式多板ブレーキ機構では、ブレーキ板や摩擦材の材料だけでなく、潤滑油の組成でも摩擦係数を調整できる点も有利である。
なお、摩擦板の数、材料、寸法、潤滑油の組成等の具体的な湿式多板ブレーキ機構の構造は特に限定しない。これらの条件は、想定されるスナッグロードに対応した最大静止摩擦力を得られる範囲で適宜設定すればよい。想定されるスナッグロードに対応した最大静止摩擦力を得られるのであれば、市販品のように公知の製品を用いてもよい。
回転式の発電機とは、回生電力を出力できる電気モータを意味する。
この機構では、発電機の駆動部である回転子に回転軸43が連結される。また、スナッグロード発生基準以下のトルクで回転軸43が回転しないような回転子拘束機構を備える。
この機構では発生する電気エネルギーを利用できる点で有利である。
また、回転時にブレーキ部45の内部で摺動する部分が駆動部の軸受やブラシであり、摩擦力を利用するブレーキと比べて、摺動する部分に加えられる摩擦力が小さいので作動時にブレーキ部45が損傷しにくい点も有利である。
発電機能を備えていれば、発電機の構造は特に限定しない。直流モータでも交流モータでもよく、ブラシの有無も問わない。交流モータの場合は誘導モータでもよい。また、力行可能でもよい。
まず、せん断ピンを用いた拘束機構を例示できる。
この拘束機構では、回転軸43に、その軸方向に交差する向きに貫通孔を設け、この貫通孔にせん断ピンを挿通させる。さらにせん断ピンの一端を保持桁33等に設けられた図示しない軸穴に固定することで、スナッグロードが発生していない場合、回転軸43の回転を拘束する。スナッグロード発生時は、せん断ピンがせん断応力で破断することで回転軸43の拘束が解除される。
この構造ではスナッグロード発生後は、せん断ピンの交換が必要になる。この際に、貫通孔と軸穴の位置合わせが必要になるが、発電機に電力を供給して回転子を回転させることで貫通孔の位置を容易に調整できるため、せん断ピンを単独で用いる従来技術とは異なり、位置合わせが容易である。
拘束機構としては、誘導モータの場合、回転軸43に加えられるトルクと逆向きに回転子を回転させる誘導電流を印加する機構も例示できる。この機構では誘導電流を印加するために常時電力を消費するが、せん断ピン等が不要である点で有利である。
拘束機構としては、ブラシの接触抵抗やコイルの抵抗等の電気抵抗を大きくすることで、回転抵抗力を上昇させた構造も挙げられる。
拘束機構は上記の機構を組み合わせたものでもよい。拘束力を得られるのであれば、市販品のように公知の製品を用いてもよい。
以上が第1の実施形態に係るクレーン1の構成の説明である。
スプレッダ5を上昇させる場合は、まず、運転手が運転室25の図示しない操縦桿を操作する等して、図示しない制御部にスプレッダ5を上昇させる指示を示す情報を送信する。情報を受信した制御部は、ドラム9を駆動する図示しないモータを回転させることでドラム9を回転させ、ワイヤ7を巻き取る。ワイヤ7は図2に示す経路に沿って移動してドラム9に巻き取られるが、ガイドシーブ11で向きを変えられる際にガイドシーブ11を押圧する。例えばガイドシーブ11は図3のCの向きに押圧される。ガイドシーブ11はシーブ保持部13の保持軸29で保持腕35に軸支されているため、押圧されたガイドシーブ11は保持軸29を中心に図3のA1の向きに回転する力をガイドシーブ保持板28を介してリンク部材37に伝達する。リンク部材37はこの力を図3のA1の向きに回転する力としてラック15に伝達するが、ラック15は図3のB1、B2の向きに移動を拘束されているため、この力はB1の向きに直動する力に変換される。ラック15はピニオン17と歯合しているため、この力はピニオン17に伝達される。ピニオン17に伝達された力は回転力に変換されて回転式ブレーキ19の回転軸43に伝達される。
回転軸43に伝達される回転力による回転トルクが一定値以下の場合は、回転軸43の回転がブレーキ部45に拘束されるため、回転軸43は回転しない。よってラック15、ピニオン17、リンク部材37、及びシーブ保持部13はワイヤ7の張力では直動も回転もしない。
さらに、ブレーキ部45が回転する際に摩擦抵抗あるいは電気抵抗でエネルギー吸収が行われる。そのため、スナッグロード発生で生じたエネルギーが桁21等のクレーン1を構成する部材に加えられてこれらを大きく損傷させるのを防ぐ。
回転式ブレーキ19が乾式又は湿式のブレーキ部45を備える構造の場合は、ブレーキ部45に加える垂直荷重を調整する機構を操作し、垂直荷重を下げて駆動軸を回転可能な状態にする。その後、調整用モータ46を駆動させる等してシーブ保持部13を図3のA2の向きに回転させて、保持軸29に対するガイドシーブ保持板28の回転角を調整することで、シーブ保持部13の位置をスナッグロード発生前の位置に戻す。最後に、ブレーキ部45に加える垂直荷重をスナッグロード発生に対応した荷重に再調整する。
なお、ブレーキ部45がモータの場合は、ブレーキ部45を電源に接続して回転駆動させることで、シーブ保持部13の位置を調整できる。
以上が荷役時のクレーン1の動作の説明である。
さらに、第1の実施形態ではスナッグロード発生時は、シーブ保持部13からラック15に力が伝えられ、その力がピニオン17で回転力に変換されて回転式ブレーキ19に伝えられてブレーキ部45が回転する。
そのため、ラック15とピニオン17のギヤ比で作動時のストロークを容易に調整でき、小型化がより容易である。
さらに第1の実施形態では、回転式ブレーキ19でガイドシーブ11の回転を拘束するので、油圧シリンダを用いた公知のスナッグロード保護機構のように、油圧リークによるガイドシーブ11の回転が生じない。そのため、ガイドシーブ11の回転角を常に監視・調整する機構が必須でない点も有利である。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、保持軸29をガイドシーブ保持板28の長手方向中央に固定したものである。また直動部材としてナット38を用い、回動部材としてネジ軸40を用いたボールネジ機構を用いたものである。
なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
この構造では、リンク部材37はガイドシーブ保持板28の長手方向上端に軸支される。また、保持腕35にX方向に対向するように桁21に設けられたブレーキ保持部35aに回転式ブレーキ19が固定される。
ナット38は第1の実施形態に係るラック15と同様の機能を果たす直動部材であり、図5ではその一端がリンク部材37の右端にX方向に移動可能に軸支されている。ナット38は直動方向、ここでは図5のB1、B2の向きにネジ孔38aが形成されている。
ネジ軸40は第1の実施形態に係るピニオン17と同様の機能を果たす変換部材であり、ネジ孔38aに螺合するネジ棒である。よってネジ孔38aはネジ軸40と同軸で螺合する。ネジ軸40の一端は回転式ブレーキ19の回転軸43と同じ方向の軸回りに回転するように回転軸43に連結される。ここでは同軸に連結される。よって、図5では回転式ブレーキ19の回転軸43の軸方向はナット38の直動方向であるB1、B2の向きに平行である。
第3の実施形態は、第1の実施形態において、回転式ブレーキ19の回転軸43をシーブ保持部13の保持軸29に連結したものである。
なお、第2の実施形態では第1の実施形態と同様の機能を果たす構成については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
この構造では、スプレッダ5の上昇時に巻き取られるワイヤ7はガイドシーブ11を図6のCの向きに押圧する。ガイドシーブ11は保持軸29で保持腕35に軸支されているため、押圧されたガイドシーブ11は保持軸29を中心に図6のA1の向きに回転する力がワイヤ7から加えられるが、この力は直動に変換されずに回転力のままで回転軸43に伝達される。この回転力によるトルクが所定値未満の場合、回転軸43はブレーキ部45に拘束されるため、ガイドシーブ11は回転しない。
この状態では、ピニオン17、ラック15、リンク部材37、及びシーブ保持部13はいずれも駆動を拘束されないので、シーブ保持部13がワイヤ7に押圧されて図のA1の向きに回転することで、ワイヤ7の張力を緩める。これにより、クレーン1aの構造物である桁21に伝達されるワイヤ7の張力が低減される。
さらに、ブレーキ部45が回転する際に摩擦抵抗あるいは電気抵抗でエネルギー吸収が行われる。そのため、スナッグロード発生で生じたエネルギーが桁21等の他の部材に加えられてこれらを大きく損傷させるのを防ぐ。
回転式ブレーキ19のブレーキ部45の構造は第1の実施形態と同様であり、乾式、湿式、発電機のいずれを用いることもできる。
第4の実施形態は第3の実施形態において、シーブ保持部13を保持軸29と平行な軸回りに傾動可能に支持構造体3に保持する傾動機構51を備えたものである。なお第4の実施形態において第3の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第3の実施形態と異なる構成について説明する。
図8及び図9に示すように第4の実施形態に係るクレーン1cは傾動機構51を備える。
傾動機構51は、保持軸支持部53、モータジャッキ55を備える。
保持軸支持部53の右端は保持軸29を保持している。
保持軸支持部53の下端はモータジャッキ55に連結されている。
モータジャッキ55は図8のX方向に伸縮可能な電動式のジャッキであり、図8では右端が保持軸支持部53の下端に図8のA1、A2の向きに回動可能に軸支され、左端が図8のA1、A2の向きに回動可能に保持桁33に軸支される。
このように、モータジャッキ55を設けることで、シーブ保持部13の保持軸29が回転式ブレーキ19に拘束された状態でシーブ保持部13を傾動させることができる。
例えば第1及び第2の実施形態は、ラック15、ピニオン17、リンク部材37、及び回転式ブレーキ19が油圧シリンダを置き換えた構造である。そのため、シーブ保持部13の構造が油圧シリンダを備えた既存のクレーンとほとんど同じであり、シーブ保持部13の交換や大幅な設計変更が不要である点で有利である。
一方で第3及び第4の実施形態は、ラック15、ピニオン17及びリンク部材37が不要であり、ラック15の移動をB1、B2の向きに拘束する機構も不要であるため、クレーン1aにこれらの部材を設けるスペースが確保しがたい場合に有利である。
また、第4の実施形態はシーブ保持部13を傾動させることができるため、シーブ保持部13を回転式ブレーキ19で固定した状態で傾動させる機能を加えたい場合に有利である。
そのため、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
3 支持構造体
3a 脚構造体
3b ポータルタイ
5 スプレッダ
7、7a、7b、7c、7d ワイヤ
9、9a、9b、9c、9d ドラム
10 コンテナ
11、11a、11b、11c、11d ガイドシーブ
13、13a、13b、13c、13d シーブ保持部
15 ラック
17 ピニオン
19 回転式ブレーキ
20 走行装置
21 桁
23 トロリ
23a、23b、23c、23d 第1トロリ用シーブ
24a、24b、24c、24d 第2トロリ用シーブ
25 運転室
25a、25b、25c、25d スプレッダ用シーブ
26a、26b、26c、26d 海側エンドシーブ
27 ガイドシーブ軸
28 ガイドシーブ保持板
29 保持軸
30 機械室
32 固定部
33 保持桁
33a 保持板
33b 台座
35 保持腕
35a ブレーキ保持部
37 リンク部材
37a、37b リンク部材軸
38 ナット
38a ネジ孔
40 ネジ軸
41 ガイドローラ
43 回転軸
45 ブレーキ部
46 調整用モータ
48 コンテナ船
51 傾動機構
53 保持軸支持部
55 モータジャッキ
57 傾動軸
Claims (7)
- 支持構造体と、前記支持構造体にワイヤで保持されて上下動する吊り具と、前記支持構造体に設けられて前記ワイヤを巻き取って保持し、回転により前記ワイヤの巻き取り、繰り出しを行うことで前記吊り具を上下動させるドラムを備えるクレーンであって、
前記ドラムから前記吊り具に至る前記ワイヤの経路のうち、前記ワイヤの向きを変える位置に設けられ、前記ワイヤをガイドするガイドシーブと、
前記支持構造体に前記ガイドシーブの軸と平行な保持軸で回転可能に支持され、前記ガイドシーブを保持するシーブ保持部と、
前記シーブ保持部に連結され、前記シーブ保持部の回転に追従して直動する直動部材と、
前記直動部材に連結され、直動を回動に変換して動力を伝達する変換部材と、
前記変換部材に回転可能に連結され、前記変換部材に加えられる回転力が伝達される回転軸と、前記回転軸に連結されてその回転を拘束し、予め定められた所定値以上のトルクが加えられると回転することで前記回転軸の拘束が解除されるように構成したブレーキ部を有する回転式ブレーキと、
を備えることを特徴とするクレーン。 - 前記変換部材は、前記回転式ブレーキの前記回転軸に同軸に固定されるピニオンであり、
前記直動部材は、前記ピニオンと歯合し、かつその一端が前記シーブ保持部に軸支されたラックである請求項1に記載のクレーン。 - 前記変換部材は、前記回転式ブレーキの前記回転軸に同軸に固定されるネジ軸であり、前記直動部材は、前記ネジ軸と同軸で螺合するネジ孔を備えるナットである請求項1に記載のクレーン。
- 支持構造体と、前記支持構造体にワイヤで保持されて上下動する吊り具と、前記支持構造体に設けられて前記ワイヤを巻き取って保持し、回転により前記ワイヤの巻き取り、繰り出しを行うことで前記吊り具を上下動させるドラムを備えるクレーンであって、
前記吊り具から前記ドラムに至る前記ワイヤの経路のうち、前記ワイヤの向きを変える位置に設けられ、前記ワイヤをガイドするガイドシーブと、
前記支持構造体に前記ガイドシーブの軸と平行な保持軸で回転可能に支持され、前記ガイドシーブを保持するシーブ保持部と、
前記保持軸に回転可能に連結され、前記保持軸に加えられる回転力が伝達される回転軸と、前記回転軸に連結されてその回転を拘束し、予め定められた所定値以上のトルクが加えられると回転することで前記回転軸の拘束が解除されるように構成したブレーキ部を有する回転式ブレーキと、
前記シーブ保持部を前記保持軸と平行な軸回りに傾動可能に前記支持構造体に保持する傾動機構と、
を備えることを特徴とするクレーン。 - 前記ブレーキ部は、
乾式で回転可能に当接する1対のブレーキ板を備えた乾式ブレーキ機構であり、
一方の前記ブレーキ板に前記回転軸が設けられる請求項1~4のいずれかに記載のクレーン。 - 前記ブレーキ部は、
複数のブレーキ板が潤滑油中で回転可能に当接する湿式多板ブレーキ機構であり、
前記ブレーキ板の少なくとも1つに前記回転軸が連結される請求項1~4のいずれかに記載のクレーン。 - 前記ブレーキ部は、回転式の発電機を備え、その駆動部に前記回転軸が連結される請求項1~4のいずれかに記載のクレーン。
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