JP7097042B2 - 塩素発生用電極 - Google Patents

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Description

本発明は、食塩濃度100~10000ppmの食塩水中で陽極として使用し殺菌能力の高い電解水を生成せしめるのに有用な電解用電極に関し、さらに詳しくは、極性を切替える条件下において、安定かつ高い塩素発生効率特性を有している電解用電極に関する。
食塩濃度が数百から数千ppmの食塩水を電解して、殺菌水を生成する装置では、添加した食塩を有効活用するために塩素発生効率のより高い電極が強く要望されている。例えば、酸性の殺菌水を連続的に得るため、水道水を直接電解する場合と異なり(例えば、切り替え時間3分毎)、極性切替を30分以上と長くすることが行われている。
酸化チタン層を有するチタン又はチタン基合金電極基体に、多孔性白金被覆層と、白金被覆層上に担持せしめられた酸化イリジウム30~65モル%、酸化タンタル10~40モル%及び白金25~60モル%の複合体である電極触媒層とからなる海水電解用電極が提案されている(特許文献1参照)。この提案の電極は、塩素発生効率が高く、酸洗時の卑なる電位環境下でも安定であるという利点があるものの、陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行なう環境では寿命が十分ではないという問題がある。
また、陽極に酸素発生を伴う海水の電解、金属箔製造、回収等の電解における陽極として使用する電解用電極が提案されている(特許文献2参照)。この提案の電極の中間層は、分散被覆白金と混合金属酸化物又は単一金属酸化物とから構成される中間層であり、電極の外層は、酸化イリジウム5~94モル%と、白金1~30モル%と、酸化ニオブ、酸化タンタル及び酸化ジルコニウムより選ばれる少なくとも1種の金属酸化物5~94モル%からなる混合金属酸化物から構成される外層である。この提案の電極は、卑なる電位環境下でも安定であるという利点があるものの、陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行なう環境では寿命が十分ではないという問題がある。
また、 飲料水としてのアルカリイオン水が得られ、塩素発生の少ない飲料水電解用電極として、導電性基体上に、金属換算で白金30~99モル%、タンタル1~70モル%を含有する白金金属と酸化タンタルとの被覆層、あるいは、さらにその被覆層に金属換算でイリジウム40モル%以下を加えた飲料水電解用電極が提案されている(特許文献3参照)。
特開平08-170187公報 特開平2-200790公報 特開平06-158378公報
以上のようにPtIrTa系の電極では塩素濃度の高い領域(海水)と塩素濃度の低い領域(水道水)用の電極はあったが、その中間の濃度領域で塩素発生用として使用する電極は開示されていない。
食塩濃度が数百から数千ppmの食塩水を電解して、殺菌水を生成する装置では、例えば、酸性の殺菌水を連続的に得るため、水道水を直接電解する場合と異なり(例えば、切り替え時間3分毎)、極性切替を30分以上と長くすることが行われている。添加した食塩を有効活用するために塩素発生効率のより高い電極が強く要望されている。
本発明の目的は、所定の電流密度で陽極と陰極の極性切替えを繰返しながら食塩濃度が100~10000ppmの食塩水を電解し、塩素を生成するに際し、電極触媒層の電気化学的消耗・脱落が抑制でき、且つ、高い塩素発生効率特性を有する電解用電極を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、食塩を添加した水を同一極性で電解する時間を長くする電解条件下で、中間層上に形成した酸化イリジウム、酸化タンタルおよび白金からなる電極触媒層において所定のタンタル濃度(20モル%以上~35モル%未満)添加により電気化学的消耗・膜脱落が抑制でき、且つ、高い塩素発生効率特性を有することを見いだし、本発明を完成するにいたった。
かくして、本発明によれば、チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に中間層を介して電極触媒層を設けてなり、所定の電流密度で陽極と陰極の極性切替えを繰返しながら食塩濃度が100~10000ppmの食塩水を電解し、塩素を生成するための電極であって、前記電極触媒層が、金属換算で、酸化イリジウム3モル%以上~10モル%以下、酸化タンタル20モル%以上~35モル%未満および白金55モル%以上~77モル%以下からなる、ことを特徴とする電解用電極が提供される。
中間層は、見掛密度が8~19g/cm3の範囲内にある多孔性白金被覆層とすることができる。また、中間層は、基体表面が部分的に露出する程度に10~80%の被覆率で分散被覆された白金と、少なくとも基体表面の露出部分を被覆する酸化イリジウム3~30モル%および酸化タンタル70~97モル%の混合金属酸化物とからなる中間層とすることができる。
本発明の電極は、所定の電流密度で陽極と陰極の極性切替えを繰り返しながら食塩濃度が100~10000ppmの食塩水を電解し、塩素を生成するに際し、高い塩素発生効率特性を有する電解用電極を提供できる。
以下、本発明の電極及びその製造法についてさらに詳細に説明する。
〈電極基体〉
本発明において使用される電極基体の材質としては、チタンまたはチタン基合金が挙げられる。チタン基合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され、例えば、Ti-Ta-Nb、Ti-Pd、Ti-Zr、Ti-Al等の組合わせからなる、通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望形状に加工して電極基材として用いることができる。
〈電極基体の前処理〉
上記の如き電極基体には、通常行われているように、予め前処理をするのが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下「チタン基体」ということがある)表面を常法に従い、例えばアルコール、アセトン等で洗浄し及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1~20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸、硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお、粗面化を十分行なうためにブラスト処理を併用してもよい。
〈水素化チタン化処理〉
このように酸処理されたチタン基体表面を濃硫酸と接触させて、該チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに該チタン基体表面に水素化チタンの薄い層を形成する。使用する濃硫酸は一般に40~80重量%、好ましくは50~60重量%の濃度のものが適当であり、この濃硫酸には必要により、処理の安定化を図る目的で少量の硫酸ナトリウム、その他の硫酸塩等を添加してもよい。該濃硫酸との接触は通常チタン基体を濃硫酸の浴中に浸漬することにより行うことができ、その際の浴温は一般に約100~約150℃、好ましくは約110~約130℃の範囲内の温度とすることができ、また浸漬時間は通常約0.5~約10分間、好ましくは約1~約3分間で十分である。この硫酸処理により、チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに、チタン基体の表面にごく薄い水素化チタンの被膜を形成させることができる。硫酸処理されたチタン基体は硫酸浴から取り出し、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で急冷してチタン基体の表面温度を約60℃以下に低下させる。この急冷には洗浄も兼ねて大量の冷水を用いるのが適当である。
このようにしてごく薄い水素化チタンの被膜層を表面に形成せしめたチタン基体は、希フッ化水素酸又は希フッ化物水溶液(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等の水溶液)中で浸漬処理して該水素化チタン被膜を生長させ、該被膜の均一化及び安定化を図る。ここで使用しうる希フッ化水素酸又は希フッ化物水溶液中のフッ化水素の濃度は、一般に0.05~3重量%、好ましくは0.3~1重量%の範囲内とすることができ、また、これらの溶液による浸漬処理の際の温度は、一般に10~40℃、好ましくは20~30℃の範囲とすることができる。該処理はチタン基体表面に、通常0.5~10ミクロン、好ましくは1~3ミクロンの厚さの水素化チタンの均一被膜が形成されるまで行うことができる。この水素化チタン(TiHy、ここでyは1.5~2の数である)は水素化の程度に応じて灰褐色から黒褐色を呈するので、上記範囲の厚さの水素化チタン被膜の生成は、経験的に該基体表面の色調の変化を標準色源との明度対比によってコントロールすることができる。
〈中間層(多孔性白金被覆層)の形成〉
このようにしてチタン基体表面を粗面化するとともに水素化チタンの被膜を形成したチタン基体は、適時水洗等の処理を行った後、その表面に多孔性白金被覆層を形成する。この多孔性白金被覆層の形成は通常電気めっき法により行うことができる。この電気めっき法に使用しうるめっき浴の組成としては、たとえばHPtCl、(NH4)PtCl、KPtCl、Pt(NH)(NO)等の白金化合物を、硫酸溶液(pH1~3)又はアンモニア水溶液に、白金換算で2~20g/l、特に5~10g/lの濃度になるように溶解し、さらに必要に応じて浴の安定化のために硫酸ナトリウム(酸性浴の場合)、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム(アルカリ性浴の場合)等を少量添加した酸性又はアルカリ性のめっき浴が挙げられる。
かかる組成のめっき浴を用いての白金電気めっきは、チタン基体表面に形成された水素化チタン被膜の分解をできるだけ抑制するため、所謂ストライクめっき等の高速めっき法を用い約30~約60℃の範囲内の比較的低温で行うのが望ましい。この電気めっきにより、チタン基体の水素化チタン被膜上に物理的密着強度の優れた多孔性の白金被覆層を形成せしめることができる。その際の白金被覆層の見掛密度は8~19g/cm3、好ましくは12~18g/cmの範囲内にあるのが適当である。該多孔性白金被覆層の見掛け密度が8g/cmより小さいと白金の結合強度が低下して剥離しやすくなり、反対に19g/cmを越えると後述する熱分解で得られる白金と酸化イリジウムの安定な担持が困難となる。該多孔性白金被覆層の見掛密度のコントロールは、例えばチタンの前処理条件、白金めっき浴の浴組成及び/又はめっき条件(電流密度や電流波形等)を経験的に調節することによって行うことができる。なお、より多孔性の高い白金被覆層を得たい場合には、多孔性の白金被覆層を形成した後、更に化学的もしくは電気化学的方法によって多孔性を高めることができる。
また、上記白金の電気めっきは上記基体上への白金の被膜量が通常少なくとも0.2mg/cm以上となるまで継続する。白金の被膜量が0.2mg/cmより少ないと、後述する焼成処理に際して水素化チタン被膜部の酸化が進み過ぎて導電性が低下する傾向がみられる。白金の被膜量の上限は特に制限されないが、必要以上に多くしてもそれに伴うだけの効果は得られず、劫って不経済となるので、通常は5mg/cm以下の被膜量で十分である。白金の好適な被膜量は1~3mg/cmの範囲内である。ここで、多孔性白金被覆層における白金の被覆量は、ケイ光X線分析法を用い次の如くして求めた量である。すなわち、前述した如く前処理したチタン基体上に前記の方法で種々の厚さに白金めっき量を湿式分析法及びケイ光X線分析法により定量し、両方法による分析値をグラフにプロットして標準検量線を作成しておき、次いで実際の試料をケイ光X線分析にかけてその分析値及び標準検量線から白金の被覆量を求める。また、白金被覆量の密度(δ(g/cm))は、上記の如くして求めた白金の被覆量(w(g/cm))と試料の断面顕微鏡観察で求めた白金被覆層の厚さ(t (cm))からδ=w/tによって求めたものである。
〈酸化チタンの形成〉
多孔性白金被膜層を設けたチタン基体は、次いで必要により、大気中で焼成する。この焼成により、該白金被覆層の下の水素化チタンの被膜の層を熱分解して、該層中の水素化チタンを実質的にほとんどチタン金属に戻し、さらに少なくとも白金被覆層の多孔部分であって白金で被覆されていない部分のチタンを低酸化状態の酸化チタンに変えることができる。この焼成は一般に約300~約600℃、好ましくは約300~約400℃の温度で10分~4時間程度加熱することにより行うことができる。これによりチタン基体表面にごく薄い導電性の酸化チタンが形成される。この酸化チタンの厚さは一般に100~1,000オングストローム、好ましくは200~600オングストロームの範囲内にあるのが好適であり、また、酸化チタンの組成はTiOx としてxが一般に1<x<2、特に1.9<x<2の範囲にあるのが望ましい。また別法として、白金の分散被覆を行ったチタン基体は、上記の如き焼成処理を行わずに直接次の工程に付してもよい。この場合には、次工程での熱分解処理時にチタン基体表面の水素化チタンの被膜の層は、チタン金属及び低酸化状態の酸化チタンに変換される。このようにして、多孔性白金被覆層とチタン界面との高い密着強度を維持し、更に電気伝導性のある酸化チタン(不働態化膜)が形成され化学的強度をも高めることができる。
上記した中間層(多孔性白金被覆層)の代わりに以下の中間層を設けることもできる。すなわち、中間層は、基体表面が部分的に露出する程度に10~80%の被覆率で分散被覆された白金と、少なくとも基体表面の露出部分を被覆する酸化イリジウム3~30モル%および酸化タンタル70~97モル%の混合金属酸化物とからなる中間層とすることができる。具体的には、先ず分散被覆された白金を形成し、その上に酸化イリジウムおよび酸化タンタルの混合金属酸化物を設ける。
〈分散被覆された白金の形成〉
分散被覆された白金の形成にあたっては、上述した「多孔性白金被覆層の形成」にて説明したものと同じ浴組成のめっき浴を用いる。チタン基体表面に形成された水素化チタン被膜の分解をできるだけ抑制するため、所謂ストライクめっき等の高速めっき法を用い約30~約60℃の範囲内の比較的低温で行うのが望ましい。
その際の白金の分散状態のコントロールは、例えばメツキ条件(電流密度や電流波形等)を経験的に調整することによって行なうことができる。この電気メツキによりチタン基体の水素化チタン被膜上に分散被覆した白金を形成せしめることができる。 かくして、チタン基体上にその基体表面が部分的に露出する程度に分散被覆された白金を析出せしめる。その分散被覆の状態は、5000倍の電子顕微鏡で観察すると、白金がチタン基体表面上に、点状、線状、網目状に分散していることがわかる。白金の析出量としては、一般0.01~2mg/cm、好ましくは0.02~0.5mg/cmとすることができる。白金の析出量があまりにも少ないと得られる電極と耐久性に劣り、また反対にあまりも多過ぎると得られる電極は卑な電位環境下で不安定となる。
白金の分散被覆の程度は、被覆率で表わして、10~80%の範囲内とするのが適当である。本明細書において白金の「被覆率」は、白金を分散被覆したチタンを基体表面を例えば40,000倍の電子顕微鏡写真にとり、その写真よりチタン基体表面1μm当りの白金の被覆面積を測定し下記式により算出される値をいう。
被覆率(%)=(写真平面での白金被覆面積)/(写真平面でのチタン基体表面積)×100
〈酸化チタン層の形成〉
このようにして白金を分散被覆したチタン基体は次いで大気中で焼成することにより、水素化チタンの皮膜の層を熱分解して該層中の水素化チタンの実質的に殆んどをチタン金属に戻し、さらに少なくとも白金が分散被覆されていない部分のチタンを低酸化状態の酸化チタンに変える。この焼成は一般に約300~約600℃、好ましくは約300~約400℃の温度で10分~4時間程度加熱することにより行なうことができる。
これによりチタン基体表面にごく薄い導電性の酸化チタンが形成される。この酸化チタンの厚さは一般に100~1,000Å、好ましくは200~600Åの範囲内にあるのが好適であり、また酸化チタンの組成はTiOxとしてxが一般に1≦x<2、特に1.9<x<2の範囲にあるのが望ましい。
また別法として、白金の分散被覆を行なったチタン基体は、上記の如き焼成処理を行わずに直接次の工程に付してもよい。この場合には、次工程での熱分解処理時にチタン基体表面の水素化チタンの皮膜の層は、チタン金属及び低酸化状態の酸化チタンに変換される。
〈中間酸化物の形成〉
しかる後、白金が分散被覆されたチタン基体表面は、少なくとも基体表面の未被覆部分(露出部分)を、3~30モル%の酸化イリジウムと70~97モル%の酸化タンタル、好ましくは5~15モル%の酸化イリジウムと85~95モル%の酸化タンタルからなる混合酸化物(以下、中間酸化物ということがある)で被覆する。
この中間酸化物は、得られる電極の耐食性を向上させるのに役立つものであり、その被覆量(金属換算)は、一般に0.5~10.0g・m-2、好ましくは1.0~5.0g・m-2の範囲内とすることができる。
上記組成の中間酸化物による被覆は、具体的には、例えば、以下に述べるようにして行うことができる。
前述の如く白金が分散被覆されたチタン基体上に、イリジウム化合物とタンタル化合物を含む溶媒溶液、好ましくは低級アルコール溶液を塗布した後乾燥することにより、イリジウム化合物とタンタル化合物を付着せしめる。ここで使用しうるイリジウム化合物及びタンタル化合物としては、後述する焼成条件下で熱分解してそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに転化しうる、低級アルコール溶媒に可溶性の化合物が包含され、具体的に、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、塩化イリジウム酸カリウム等が例示され、また、タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられる。
一方、これらのイリジウム化合物及びタンタル化合物を溶解しうる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等又はこれらの混合物が挙げられる。
上記溶液中におけるイリジウム化合物とタンタル化合物の割合は、Ir/Taの金属換算モル比で、通常3/97~30/70、好ましくは5/95~15/85の範囲内とすることができる。
該溶液によるチタン基体上の前処理された面もしくはチタン基体上の酸化チタン面の塗布は、例えば、吹き付け法、ハケ塗り法、浸漬法等により行うことができ、このようにしてイリジウム化合物及びタンタル化合物の低級アルコール溶液が塗布されたチタン基体は、一般に、約20~約100℃の範囲内の比較的低温で乾燥させた後、酸化性雰囲気中、通常大気中で焼成する。以上に述べた処理は、被覆量が前記の範囲内に達するまで繰り返して行うことができる。
該焼成は、例えば、電気炉、ガス炉、赤外線炉などの適当な加熱炉中で、通常約450~約600℃、好ましくは約450~約550℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。その際の加熱時間は焼成すべき基体の大きさ等に応じて大体5分~2時間程度とすることができる。この焼成によりイリジウム化合物及びタンタル化合物はそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに変わり、中間酸化物を形成する。
以上のようにして白金が分散被覆されたチタン基体上に耐食性及び電気伝導性を有する中間酸化物層を形成することができ、電極の耐久性を高めることができる。
〈電極触媒層の形成〉
しかる後、このように焼成された白金被覆チタン基体の多孔性白金被覆面に、あるいは中間酸化物層上に、白金化合物、イリジウム化合物及びタンタル化合物を含む溶液を浸透させ、乾燥した後焼成して、酸化イリジウム-酸化タンタル-白金からなる層を形成せしめる。
ここで使用する白金化合物、イリジウム化合物及びタンタル化合物は、以下に述べる条件下で分解してそれぞれ白金及び酸化イリジウム及び酸化タンタルに転化しうる化合物であり、白金化合物としては、ジニトロジアンミン白金、塩化白金酸、塩化白金等が例示され、特にジニトロジアンミン白金が好適である。また、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、塩化イリジウムカリ等が挙げられ、特に塩化イリジウム酸が好適である。さらに、タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられる。
一方、これら白金化合物、イリジウム化合物及びタンタル化合物を溶解するための溶媒としては、低級アルコールが好適であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はこれらの混合物等が有利に用いられる。なお、ジニトロジアンミン白金は、低級アルコールに直接溶解しないので、はじめに硝酸水溶液に溶解し、白金金属換算で250~450g/lの濃度に調整した後、低級アルコールに溶解するのが好ましい。
低級アルコール溶液中における白金化合物、イリジウム化合物及びタンタル化合物の合計の金属濃度は、一般に20~200g/l、好ましくは40~150g/lの範囲内とすることができる。該金属濃度が20g/lより低いと触媒担持効率が悪くなり、また200g/lを越えると触媒が凝集しやすくなり、触媒活性、担持強度、担持量の不均一性等の問題が生ずる。
また、白金化合物、イリジウム化合物及びタンタル化合物の相対的使用割合は、それぞれ金属Pt、金属Ir及び金属Taに換算して、白金化合物は55モル%以上~77モル%以下、イリジウム化合物は3モル%以上~10モル%以下、タンタル化合物は20モル%以上~35モル%未満とする。
多孔性白金被覆層、あるいは中間酸化物層上に該溶液を含浸させた基体は、必要により約20~約150℃の範囲内の温度で乾燥させた後、酸素含有ガス雰囲気中、例えば空気中で焼成する。焼成は、例えば電気炉、ガス炉、赤外線炉等の適当な加熱炉中で、一般に約450~約650℃、好ましくは約500~約600℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。加熱時間は、焼成すべき基体の大きさに応じて、大体3分~30分間程度とすることができる。この焼成により、多孔性白金被覆層の表面(孔の内部及び/又は外面)に酸化イリジウム-酸化タンタル-白金からなる層を形成担持させることができる。
そして、1回の担持操作で充分量の酸化イリジウム-酸化タンタル-白金からなる層を形成担持することができない場合には、以上に述べた溶液の浸透-(乾燥)-焼成の工程を所望の回数繰り返し行うことができる。
多孔性白金被覆層、あるいは中間酸化物層上に担持せしめられる酸化イリジウム-酸化タンタル-白金からなる層(電極触媒層/複合体)における各成分の割合は、それぞれ金属Pt、金属Ir及び金属Taに換算して、白金55モル%以上~77モル%以下、酸化イリジウムは3モル%以上~10モル%以下、酸化タンタルは20モル%以上~35モル%未満とする。
多孔性白金被覆層、あるいは中間酸化物層上に担持せしめられる酸化イリジウム-酸化タンタル-白金からなる層(電極触媒層/複合体)における各成分の割合は、それぞれ金属Pt、金属Ir及び金属Taに換算して、白金は55モル%以上~66モル%以下、酸化イリジウムは3モル%以上~10モル%以下、酸化タンタルは31モル%以上~35モル%未満が好ましい。
本願の条件では、複合体中の酸化タンタルの金属換算での割合が20モル%未満、または、35モル%を超えると電極の塩素発生効率が低くなる。タンタルが20モル%未満では白金・酸化イリジウム・酸化タンタルの複合作用が弱まり、タンタルが35モル%を超える場合には、タンタルが、白金・イリジウムの働きを抑制するためであると考えられる。複合体中の白金の金属換算での割合が55モル%未満、または、77モル%を超えると電極の塩素発生効率が低くなる。白金・酸化イリジウム・酸化タンタルの複合作用が弱まるためと考えられる。
このようにして、「電極触媒層(外層)/中間層/基体」から構成される電極を製造することができる。
次に実施例により、本発明の電極の製造法及び特性についてさらに具体的に説明する。
実施例1、2、3、比較例2、3、4
チタン基体として、JIS1種チタン板素材(t0.5mm×100mm×100mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後、20℃の8重量%弗化水素酸水溶液中で2分間処理し、次いで、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。
次いでチタン基体を硫酸水溶液から取りだし、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。更に20℃の0.3重量%弗化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。
水洗後ジニトロジアンミン白金を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/l、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中で、30mA/cmで約6分間のめっきを行って、見掛密度16g/cmで電着量が1.7mg/cmの多孔性の白金被覆層をチタン基体上に形成した。
次に、イリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液と、タンタル濃度200g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と、白金濃度70g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液を、Ir-Ta-Ptの金属換算の組成比が表1に示すモル%になるようにそれぞれ秤量し、各金属成分の金属換算値を足した合計濃度が75g/Lになるようにブタノールにて希釈し、表1に示す金属換算の組成比で電極触媒層塗布溶液を作製した。塗布溶液をピペットで250μl秤量し、それをチタン基体に塗布し、ピンセットを用いてチタン基体を傾けて、溶液をチタン基体全面に塗り拡げた後、室温で乾燥し、さらに530℃の大気中で10分間焼成した。この塗布・乾燥・焼成を4回繰り返し、実施例1、2、3、比較例2、3、4の電極を作製した。
比較例1
チタン基体として、JIS1種チタン板素材(t0.5mm×100mm×100mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後、20℃の8重量%弗化水素酸水溶液中で2分間処理し、次いで、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。
次いでチタン基体を硫酸水溶液から取りだし、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。更に20℃の0.3重量%弗化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。
水洗後ジニトロジアンミン白金を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/l、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中で、30mA/cmで約6分間のめっきを行い、見掛密度16g/cmで電着量が1.7mg/cmの多孔性の白金被覆層(中間層)をチタン基体上に形成し、15mA/cmで、電着量が9.0mg/cmの白金触媒層を形成した。
作製した実施例並びに比較例の電極を用いて、以下の様に、塩素発生効率を評価した。電解液には、塩化物イオンが1000ppmのNaClの水溶液500mlを用いた。電極間距離5mm、電流密度2.0A/dmの定電流制御にて30分間電解し、電解した液から5ml採取しヨウ素法により塩素発生量を求めた。求めた塩素発生量と理論塩素発生量から塩素発生効率を算出した。
作製した実施例並びに比較例の電極を用いて、以下の様に、寿命を評価した。電極を試料面積0.01dm(10mm×10mm)として、25℃の塩化物イオンが1000ppmのNaCl水溶液中にて、2.0A/dmで30分間毎に極性切替しながら電解する電解試験を行った。電解試験により、塩素発生効率が初期の50%になった時の極性切替回数を求め、極性切替回数が6000回以上となったものを○、2000~6000回となったものを△、2000回以下を×とした。耐久寿命3000時間の場合、寿命に達するまでの極性切替回数は6000回である。
Figure 0007097042000001
得られた実施例、比較例のデータを表1に示す。
実施例1、2、3は、塩素発生効率が61%、59%、56%という高い値を示し、且つ、耐久性判定は○となった。一方、比較例1、2、3、4では塩素発生効率が3%、47%、43%、43%という値を示した。
以上の結果より、金属換算で、酸化イリジウム3モル%以上~10モル%以下、酸化タンタル20モル%以上~35モル%未満および白金55モル%以上~77モル%以下からなる電極触媒層を備える電極は良好な特性を示すことがわかる。

Claims (1)

  1. チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に中間層を介して電極触媒層を設けてなり、食塩濃度100~10000ppmの食塩水を所定の電流密度で陽極と陰極の極性切替えを繰返しながら電解し、塩素を生成するための電極であって、
    前記電極触媒層が、金属換算で、酸化イリジウム3モル%以上~9モル%以下、酸化タンタル20モル%以上~35モル%未満および白金55モル%以上~77モル%以下からなる、
    ことを特徴とする電解用電極。
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