以下、データ処理装置、測定システムおよびデータ処理用プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、測定システム1の構成について説明する。図1に示す測定システム1は、「測定システム(検査システム)」の一例である「インパルス試験システム」であって、検査対象Xの良否を検査可能に構成されている。この測定システム1は、「測定装置」の一例である測定装置2と、「データ処理装置」の一例であるデータ処理装置3とを備えて構成されている。なお、検査対象Xは、「測定対象」の一例であって、本例では、一例として巻線部品(コイル)を検査対象Xとして各種の処理を実行する例について説明する。
測定装置2は、一例として、データ処理装置3の制御に従い、検査対象Xを対象とする各種の測定処理を実行可能に構成されている。この測定装置2は、測定信号発生部11、A/D変換部12、処理部13および記憶部14などを備えている。測定信号発生部11は、処理部13の制御に従って検査対象Xの両端間に測定信号としてのインパルス電圧を印加する。A/D変換部12は、一例として、処理部13の制御に従い、指定された周期(「予め規定されたサンプリング周期:測定周期)で測定対象の両端間の電圧の電圧値をA/D変換(サンプリング:測定)して測定値Ds(サンプリング値:「測定値」の一例)を処理部13に順次出力する。なお、電圧値のサンプリングに代えて、測定対象を流れる電流の電流値を指定された周期でA/D変換(サンプリング:測定)して測定値Dsを出力する構成を採用することもできる。
処理部13は、測定装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部13は、測定信号発生部11を制御して測定対象にインパルス電圧を印加させると共に、A/D変換部12を制御して任意の周期で電圧値のA/D変換処理(サンプリング処理)を実行させる。また、処理部13は、A/D変換部12から出力される測定値Dsを記憶部14に記憶させ、かつ測定値Dsに基づいて波形データD0(「波形データ」の一例)を生成して記憶部14に記憶させると共に、生成した波形データD0をデータ処理装置3に出力する。記憶部14は、処理部13の動作プログラムや、上記の測定値Ds(波形データD0)などを記憶する。なお、実際の測定装置2には、測定装置2の動作条件を指示するための各種の操作スイッチや、測定条件の設定画面および測定値の表示画面などを表示する表示部を備えて構成されているが、これらについての図示および説明を省略する。
一方、データ処理装置3は、後述するように測定装置2から取得した波形データD0(「取得した波形データ」の一例)に基づいて検査対象Xの良否を検査する。この場合、本例の測定システム1では、一例として、「データ処理用プログラム」に相当するデータ処理用プログラムDpが既存のパーソナルコンピュータにインストールされてデータ処理装置3が構成されている。具体的には、このデータ処理装置3は、操作部21、表示部22、処理部23および記憶部24を備えている。操作部21は、キーボード、およびマウスやタッチパネルなどのポインティングデバイスを備え(図示せず)、これらに対する操作に応じた操作信号を処理部23に出力する。表示部22は、処理部23の制御に従い、測定結果や検査結果(良否判定の結果)などを示す各種の表示画面を表示する。
処理部23は、「処理部」の一例であって、データ処理装置3を総括的に制御する。具体的には、処理部23は、後述するようにデータ処理用プログラムDpに従い、測定装置2を制御して検査対象Xを対象とする測定処理を実行させる。また、処理部23は、測定装置2から出力される波形データD0に基づき、その「信号波形」における各種の「ノイズ成分」のなかに「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する判定処理を実行する。また、処理部23は、判定結果に基づいて検査対象Xの良否を検査する検査処理を実行して検査結果データDrを生成する。なお、処理部23による「検査処理(判定処理)」については、後に詳細に説明する。記憶部24は、データ処理用プログラムDp、測定システム1から出力される波形データD0、および処理部23によって生成される上記の検査結果データDrを含む各種のデータを記憶する。
次に、測定システム1による検査対象Xの検査方法について、添付図面を参照して説明する。なお、データ処理装置3にデータ処理用プログラムDpをインストールする作業や、測定装置2とデータ処理装置3とを接続する作業については既に完了しているものとする。
検査対象Xの検査に際しては、まず、検査対象Xについての測定装置2による測定処理を実行する。具体的には、図1に示すように、検査対象Xを測定装置2に接続すると共に、データ処理装置3の操作部21を操作して測定処理の開始を指示する。これに応じて、処理部23は、データ処理用プログラムDpに従って測定装置2を制御して測定処理を開始させる。
この際に、測定装置2では、処理部13が、まず、A/D変換部12を制御してデータ処理装置3(処理部23)から指示されたサンプリング周期での電圧値のサンプリング(測定)を開始させる。これにより、A/D変換部12から検査対象Xについての測定値Dsが順次出力されて記憶部14に記憶される。また、処理部13は、測定信号発生部11を制御して検査対象Xにインパルス電圧を印加させる。
この際には、検査対象Xの両端間の電圧についての測定値Dsが、検査対象Xの電気的特性および良否の状態や、測定装置2の特性(測定装置2の測定回路自体の電気的特性、およびA/D変換部12において使用されるデジタルフィルタの特性)などに応じて、例えば、図2に示す波形W0a,W0b、図8に示す波形W0c、図14に示す波形W0e、図22に示す波形W0i、図33に示す波形W0j、および図45に示す波形W0k(「波形データの信号波形」の一例:以下、これらを区別しないときには「波形W0」ともいう)のように変化する。
次いで、処理部13は、一例として、検査対象Xに対するインパルス電圧の印加を開始させる直前の時点から、処理部23によって指示された時間が経過した時点までの間にA/D変換部12から出力された複数の測定値Ds,Ds・・を記録して波形データD0を生成し、生成した波形データD0を記憶部14に記憶させる。また、処理部13は、生成した波形データD0をデータ処理装置3に出力する。また、データ処理装置3では、処理部23が、測定装置2から出力された波形データD0を検査対象Xに関連付けて記憶部24に記憶させる。これにより、検査対象Xについての測定処理が完了する。
一方、データ処理装置3では、波形データD0の取得が完了したときに、処理部23が、データ処理用プログラムDpに従い、検査対象Xが良品か不良品かを検査する検査処理を開始する。この検査処理において、処理部23は、まず、波形データD0の波形W0における各種の「ノイズ成分」のなかに「放電波形成分」が含まれているか否かを判定するための「判定用閾値(基準値)」を波形データD0に基づいて規定する処理と、「判定用閾値」との比較によって「放電波形成分」が含まれているか否かを判定するための「判定用の波形データ」を波形データD0に基づいて生成する処理とを実行する。
具体的には、「判定用の波形データ」を生成する処理では、処理部23は、波形データD0の各測定値Dsを、後述の変換方法(「予め規定された変換方法」の一例)に従って値変換すると共に変換後の値を新たな「測定値」とする「値変換処理」を複数回実行する。より具体的には、処理部23は、複数回の「値変換処理」の一例として、5回の「微分処理」(「Na=5回」の「第1の変換処理」の一例)と、5回の「フィルタリング処理」(「Nb=5回」の「第2の変換処理」の一例)とを組み合わせて合計10回の「値変換処理」を実行する。なお、後述するが、この「微分処理」および「フィルタリング処理」については、その実行順序を任意に規定することができる。
この場合、複数回の「微分処理(第1の変換処理)」は、主として、「波形データD0の波形W0における[インパルス電圧の印加に伴う測定値Dsの本来的な変化(大まかな変化)]」に対応する「処理対象の波形データにおける各測定値の変化」の度合いが、「波形データD0の波形W0における[ノイズ成分]」に対応する「処理対象の波形データにおける各測定値の変化」の度合いよりも小さくなるように値変換をすることで「ノイズ成分」を抽出する(「ノイズ成分」の存在を明確にする)ことを目的とする「値変換処理」である。
具体的には、この「微分処理」では、測定装置2から取得した波形データD0の波形W0における最大振幅部(値が最も大きく増減している部位:図2に示す波形W0a,W0bの例では、矢印A0a,A0bの部位)の各測定値Ds,Ds・・の絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第1の絶対値」が、波形データD0の波形W0における「ノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第2の絶対値」よりも小さくなるように、処理対象の波形データにおける各測定値をそれぞれ値変換する。
なお、「微分処理」および「フィルタリング処理」の実行順序を任意に規定可能な本例では、測定装置2から取得した波形データD0を対象とする「微分処理」においては、波形データD0が「処理対象の波形データ」に相当し、かつ波形データD0の測定値Dsが上記の「変換対象の測定値」に相当する。また、「微分処理」や「フィルタリング処理」を行った後の「波形データ」を対象とする「微分処理」においては、その「波形データ」が上記の「処理対象の波形データ」に相当し、かつその「波形データ」の「測定値」が「変換対象の測定値」に相当する。
この場合、上記の「[第1の絶対値]が[第2の絶対値]よりも小さくなるように各測定値をそれぞれ値変換する[第1の変換処理(微分処理)]」とは、「第1の変換処理(微分処理)」の処理結果において「[第1の絶対値]が[第2の絶対値]よりも小さくなる」との条件が満たされていることを要件とする処理を意図しており、そのような条件が満たされる「測定値」に変換できれば、「変換対象の測定値」を絶対値化する演算(「第1の絶対値」や「第2の絶対値」などの演算)を要件とするものではない。
この「微分処理」に関し、発明者は、一例としてNa=3回からNa=5回程度実行することで、「信号波形の大まかな変化の度合い」を十分に小さくすることができ、「放電波形成分」を含む「ノイズ成分」を好適に抽出できる(「ノイズ成分」の存在を好適に把握し得る「波形データ」を生成できる)ことを確認している。なお、複数回の「微分処理」の実行によって「ノイズ成分」を抽出できることに関しては、後に具体的な例を挙げて説明する。
また、複数回の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」は、主として、「波形データD0の波形W0における[リンギング]などの[周期的なノイズ成分]」に対応する「処理対象の波形データにおける各測定値の変化」の度合いが、「波形データD0の波形W0における[放電波形成分]などの[非周期的なノイズ成分]」に対応する「処理対象の波形データにおける各測定値の変化」の度合いよりも小さくなるように値変換をすることで「非周期的なノイズ成分」を抽出する(リンギング」の影響の度合いを小さくする)ことを目的とする「値変換処理」である。
具体的には、この「フィルタリング処理」では、測定装置2から取得した波形データD0の波形W0における「周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Ds,Ds・・の絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第3の絶対値」が、波形データD0の波形W0における「非周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Ds,Ds・・の絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第4の絶対値」よりも小さくなるように、処理対象の波形データにおける各測定値をそれぞれ値変換する。
なお、「微分処理」および「フィルタリング処理」の実行順序を任意に規定可能な本例では、測定装置2から取得した波形データD0を対象とする「フィルタリング処理」においては、波形データD0が「処理対象の波形データ」に相当し、かつ波形データD0の測定値Dsが上記の「変換対象の測定値」に相当する。また、「微分処理」や「フィルタリング処理」を行った後の「波形データ」を対象とする「フィルタリング処理」においては、その「波形データ」が上記の「処理対象の波形データ」に相当し、かつその「波形データ」の「測定値」が「変換対象の測定値」に相当する。
この場合、上記の「[第3の絶対値]が[第4の絶対値]よりも小さくなるように各測定値をそれぞれ値変換する[第2の変換処理(フィルタリング処理)]」とは、「第2の変換処理(フィルタリング処理)」の処理結果において「[第3の絶対値]が[第4の絶対値]よりも小さくなる」との条件が満たされていることを要件とする処理を意図しており、そのような条件が満たされる「測定値」に変換できれば、「変換対象の測定値」を絶対値化する演算(「第3の絶対値」や「第4の絶対値」などの演算)を要件とするものではない。
この「フィルタリング処理」に関し、発明者は、一例としてNb=3回からNb=5回程度実行することで、「リンギング」等の「周期的なノイズ成分」の大きさを十分に小さくして「放電波形成分」等の「非周期的なノイズ成分」を好適に抽出できる(「放電波形成分」の存在を好適に把握し得る「波形データ」を生成できる)ことを確認している。
一方、測定処理時に「リンギング」が発生するか否かや、どのような特性の「リンギング」がどのように発生するかについては、検査対象Xの電気的特性や、測定環境によって相違する。しかしながら、前述したように、波形データD0の波形W0について「リンギング」の影響を低減するための的確なフィルタイリング処理を行うための分析処理が容易ではなく、単純なフィルタリング処理では、「リンギング」の影響を十分に低減するのが困難となっている。
したがって、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、上記のNb=5回の「フィルタリング処理」において、上記の「第3の絶対値」の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」の前後における変化率が異なる「M=Nb=5種類」のフィルタを使用して処理対象の各測定値を値変換する構成が採用されている。この場合、本例では、一例として、発生が予測される「リンギング」の種類に応じた(検査対象Xの特性やデータ処理装置3の特性に応じた)「M=5種類のフィルタ」がデータ処理装置3の記憶部24に記憶されているものとする。なお、この「M種類のフィルタ」については、測定システム1の提供者(測定装置2の製造者およびデータ処理用プログラムDpの制作者等)が、いずれの「フィルタ」を使用するかを予め定める構成・方法に限定されず、データ処理装置3を使用した「判定処理」を実行する使用者が、いずれの「フィルタ」を使用するかを予め定める構成・方法を採用することもできる。なお、複数回の「フィルタリング処理」の具体的な手順や、「フィルタリング処理」の実行によって誤検出を回避できることに関しては、後に具体的な例を挙げて説明する。
また、前述したように、発明者は、上記のNa回の「微分処理」、およびNb回の「フィルタリング処理」については、どのような順序で実行したとしても、「ノイズ成分」の大きさの相違や「リンギング」の影響による「放電波形成分の誤検出」を好適に回避できることを確認している。つまり、Na回の「微分処理」を実行した後にNb回の「フィルタリング処理」を実行したとき、Nb回の「フィルタリング処理」を実行した後にNa回の「微分処理」を実行したとき、および「微分処理」と「フィルタリング処理」とを任意の順序で組み合わせてそれぞれNa回、Nb回ずつ実行したときのいずれの場合においても、「放電波形成分」の有無を好適に判定し得る波形データを生成できることを確認している。
なお、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、一例として、「フィルタリング処理」によって値変換した測定値を「微分処理」によって値変換する合計2回の「値変換処理」を5回連続して実行する(「予め規定された順序」の一例)ことにより、波形データD0の「各測定値」を10回の「値変換処理」によって値変換する構成・方法が採用されている。これにより、「ノイズ成分」の大きさの相違や「リンギング」の影響による「放電波形成分の誤検出」を好適に回避して、「放電波形成分」の有無を好適に判定し得る「判定用の波形データ」が生成されて記憶部24に記憶される。
一方、「判定用閾値(基準値)」を特定する処理に際して、処理部23は、波形データD0の各測定値Dsを絶対値化した「判定用データ」を生成し、生成した「判定用データ」に基づいて「第1の暫定閾値」を規定する「第1の処理」と、「判定用データ」の「各測定値」のうちの「第1の暫定閾値」を下回る「測定値」の数が標準偏差σに対する予め規定された範囲内の数であるか否かを判別する「第2の処理」とを実行し、「第2の処理」の判定結果に応じて、「第1の暫定閾値」を「第2の暫定閾値」とし、「第2の暫定閾値」に基づいて「判定用閾値(基準値)」を規定する「第3の処理」を実行する。なお、上記の「第1の処理」、「第2の処理」および「第3の処理」の具体的な手順については、後に、具体的例を示して詳細に説明する。
続いて、処理部23は、上記の各処理によって特定した「波形データ」の「各測定値(「処理後の各測定値」の一例)」、および「判定用閾値(基準値)」に基づき、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。
この際に、処理部23は、上記の各処理によって特定した「波形データ」の「各測定値」に「判定用閾値(基準値)」以上の「測定値」が存在しないときに、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれていないと判定する。また、処理部23は、上記の各処理によって特定した「波形データ」の「各測定値」に「判定用閾値(基準値)」以上の「測定値」が存在するときに、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれていると判定する。
この後、処理部23は、上記の放電波形成分の有無の判定処理とは別個に行う他の検査項目に関する判定処理の結果と共に、放電波形成分の有無の判定処理の判定結果を検査対象Xに関連付けて記録して検査結果データDrを生成する。また、すべての検査項目において不良なしと判定したときには、検査対象Xが良品であるとの事項を検査結果データDrに記録すると共に、いずれかの検査項目において不良ありと判定したときには、検査対象Xが不良品であるとの事項を検査結果データDrに記録する。以上により、検査対象Xについての一連の検査処理が完了する。
続いて、上記の検査処理における各処理の具体的な手順およびその効果の一例について、添付図面を参照して説明する。
前述したように、検査処理(判定処理)に際して「判定用の波形データ」を生成するために行った複数回の「値変換処理」のうちの複数回の「微分処理(第1の変換処理)」は、主として波形データD0に含まれている「ノイズ成分」を抽出する(「ノイズ成分」の存在を明確にする)「値変換処理」である。一例として、対応する測定値Dsの波形W0a(図2の(a)参照)に「放電波形成分」が含まれていない波形データD0(以下、「波形データD0a」という)についての「値変換処理」時における複数回の「微分処理」、および対応する測定値Dsの波形W0b(図2の(b)参照)に「放電波形成分」が含まれている波形データD0(以下、「波形データD0b」という)についての「値変換処理」時における複数回の「微分処理」の例について説明する。
上記の波形W0aの波形データD0a、および波形W0bの波形データD0bには、いずれも、測定処理時に発生していた同程度のレベルのノイズの影響によって値が増減した測定値Ds(「ノイズ成分」の測定値Ds)が含まれている。この場合、波形W0a,W0bでは、「ノイズ成分」の存在に起因する測定値Dsの変化量(振幅量)が、波形W0a,W0bにおけるインパルス電圧の印加に伴う測定値Dsの本来的な変化(波形W0a,W0bの大まかな変化)の変化量(振幅量)に対して非常に小さいため、「ノイズ成分」の存在自体を確認することが困難となっている。また、波形W0bには、上記のように「放電波形成分」が含まれているが、この波形W0bでは、「放電波形成分」に対応する測定値Dsの変化量(振幅量)が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値Dsの変化量よりも小さいため、測定値Dsの変化量に基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別することも困難となっている。
また、上記の波形データD0aの各測定値Dsを「微分処理」した波形データD1aにおける各測定値(測定値Dsの一階微分値)の波形W1a、および波形データD0bの各測定値Dsを「微分処理」した波形データD1bにおける各測定値(測定値Dsの一階微分値)の波形W1bは、図3(a),(b)のようになる。この場合、波形W1bにおいて矢印AB1b,AC1bで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しているが、この波形W1bでは、「放電波形成分」の変化量が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量(例えば矢印AA1bで示す部位)よりも小さいため、測定値の変化量に基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別することができない。
また、上記の波形データD1aの各測定値を「微分処理」した波形データD2aにおける各測定値(測定値Dsの二階微分値)の波形W2a、および波形データD1bの各測定値を「微分処理」した波形データD2bにおける各測定値(測定値Dsの二階微分値)の波形W2bは、図4(a),(b)のようになる。この場合、波形W2bにおいて矢印AB2b,AC2bで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しているが、この波形W2bにおいても、「放電波形成分」の変化量が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量(例えば矢印AA2bで示す部位)に対して十分に大きくなっていないため、測定値の変化量に基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別することができない。
さらに、上記の波形データD2aの各測定値を「微分処理」した波形データD3aにおける各測定値(測定値Dsの三階微分値)の波形W3a、および波形データD2bの各測定値を「微分処理」した波形データD3bにおける各測定値(測定値Dsの三階微分値)の波形W3bは、図5(a),(b)のようになる。この場合、波形W3bにおいて矢印AB3b,AC3bで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しており、これを確認することができるのに対し、上記の波形W1b,W2bにおいてインパルス電圧の印加に伴って変化量が大きくなっていた部位(図3(b)における矢印AA1bの部位、および図4(b)における矢印AA2bの部位など)の変化量は十分に小さくなっている。
また、上記の波形データD3aの各測定値を「微分処理」した波形データD4aにおける各測定値(測定値Dsの四階微分値)の波形W4a、および波形データD3bの各測定値を「微分処理」した波形データD4bにおける各測定値(測定値Dsの四階微分値)の波形W4bは、図6(a),(b)のようになる。この場合、波形W4bにおいても、矢印AB4b,AC4bで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しており、これを確認することができるのに対し、上記の波形W1b,W2bにおいてインパルス電圧の印加に伴って変化量が大きくなっていた部位の変化量は十分に小さくなっている。
さらに、上記の波形データD4aの各測定値を「微分処理」した波形データD5aにおける各測定値(測定値Dsの五階微分値)の波形W5a、および波形データD4bの各測定値を「微分処理」した波形データD5bにおける各測定値(測定値Dsの五階微分値)の波形W5bは、図7(a),(b)のようになる。この場合、波形W5bにおいても、矢印AB5b,AC5bで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しており、これを確認することができるのに対し、上記の波形W1b,W2bにおいてインパルス電圧の印加に伴って変化量が大きくなっていた部位の変化量は十分に小さくなっている。
このように、「放電波形成分」が含まれている波形データD0bについては、「微分処理」を繰り返して行った上記の波形W3b~W5bの波形データD3b~D5bにおいて、波形データD0bの波形W0bにおける「最大振幅部」の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する波形データD3b~D5bにおける測定値Dsの絶対値である「第1の絶対値」が、波形データD0bの波形W0bにおける「ノイズ成分の振幅部」の測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する波形データD3b~D5bにおける測定値Dsの絶対値である「第2の絶対値」よりも小さくなっている。
この結果、波形データD3b~D5bの波形W3b~W5bでは、「放電波形成分」(ノイズ成分)に対応する測定値の変化量(振幅量)が、インパルス電圧の印加に伴う測定値の変化量(振幅量)よりも十分に大きくなっている。したがって、波形データD0bについての「微分処理(第1の変換処理)」を複数回(本例では、3回以上)行うことにより、「放電波形成分」を含む「ノイズ成分」だけを好適に抽出できるのが理解できる。
また、「放電波形成分」が含まれていない波形データD0aについては、「微分処理」を繰り返して行った上記の波形W2a~W5aにおいて、「ノイズ成分」であると判定される大きさの測定値が確認できない。したがって、これらの測定値の大きさに基づき、「放電波形成分」が存在しないと判定できることが理解できる。
なお、上記の例では、波形データD0bの測定値Dsに対してNa=3回の「微分処理」を行うことで「放電波形成分」の有無を好適に判定可能な「判定用の波形データ」が生成されるが、判定対象の波形データD0の波形W0における「最大振幅部」の大きさ(波形W0の大まかな変化の大きさ:波形データD0に含まれる低周波成分の大きさ)によっては、Na=4回以上の「微分処理」を行う必要が生じることもある。また、上記の例では、Na=4回以上の「微分処理」を行った波形W4b,W5bにおいても、「放電波形成分」の有無を好適に判定可能な状態が好適に維持されている。
したがって、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、波形データD0に各種大きさ(振幅量)の「放電波形成分」が含まれる可能性を考慮し、「値変換処理」のうちの「微分処理(第1の変換処理)」については、一例として、Na=5回の処理を行って「判定用の波形データ」を生成する構成が採用されている。
一方、前述したように、検査処理(判定処理)に際して「判定用の波形データ」を生成するために行った複数回の「値変換処理」のうちの複数回の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」は、主として波形データD0に含まれている「ノイズ成分」における「リンギング」等の「周期的なノイズ成分」の影響を小さくして、「放電波形成分」等の「非周期的なノイズ成分」を抽出する(「非周期的なノイズ成分」の存在を明確にする)「値変換処理」である。
この場合、「リンギング」の発生時には、検査対象Xの電気的特性、測定装置2の回路特性、および測定処理時の環境(周囲温度等)に応じて測定値Dsが周期的に増減する。また、A/D変換部12における測定値Dsの生成に使用するデジタルフィルタの特性によっても、生成される測定値Dsがリンギングの発生時と同様に周期的に増減した状態となることがある。したがって、波形データD0の各測定値Dsに関し、一例として「任意のmポイントの重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行うことで、「リンギング」に起因して値が周期的に増減している状態を軽減して(「リンギング」等の「周期的なノイズ成分」の影響を小さくして)、「放電波形成分」等の「非周期的なノイズ成分」の存在を好適に特定可能な状態とすることが可能となる。
また、波形データD0に含まれる可能性がある「リンギング」は、検査対象Xの電気的特性、測定装置2の回路特性、測定処理時の環境(周囲温度等)、および測定値Dsの生成時に使用するデジタルフィルタの特性等に応じて周期や信号レベルが相違し、しかも、周期や信号レベルが相違する複数種類の「リンギング」が波形データD0に含まれた状態となることもある。したがって、上記の「重み付け移動平均フィルタ」のポイント数が異なる複数種類のフィルタを使用して複数回の「フィルタリング処理」を行うことで、各種の「リンギング」の影響を軽減できる可能性が高まる。
一例として、測定値Dsの波形W0c(図8参照)に「放電波形成分」が含まれず、かつ「リンギング」の影響が含まれている波形データD0(「リンギング」を模した信号を重畳させた状態で生成した波形データD0:以下、「波形データD0c」という)についての「値変換処理」時における複数回の「フィルタリング処理」の例について説明する。この場合、波形W0cでは、「リンギング」の存在に起因する測定値Dsの変化量が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量に対して非常に小さいため、「リンギング」の存在自体を確認することが困難となっている。
また、上記の波形データD0cの各測定値Dsを対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD1cにおける各測定値の波形W1cは、図9(a)のようになる。また、波形データD0cの各測定値Dsを対象として、「m1ポイント(m1は、予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD1dにおける各測定値の波形W1dは、図9(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD1cの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD2cにおける各測定値の波形W2cは、図10(a)のようになる。また、波形データD1dの各測定値を対象として、「m2ポイント(m2は、m1とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD2dにおける各測定値の波形W2dは、図10(b)のようになる。
この場合、波形W2cにおいて矢印AA2c~AD2cで示す部位の測定値は、「リンギング」によって値が増減した測定値Dsに対応して大きな値となっており、波形W2dにおいて矢印AA2d~AD2dで示す部位の測定値も、「リンギング」によって値が増減して測定値Dsに対応した大きな値となっている。これらの波形W2c,W2dにおいて「リンギング」の発生時における測定値Dsに対応する測定値は、その他の測定値(インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値Dsや、「リンギング」以外の「ノイズ成分」に対応する測定値Dsに対応する測定値)よりも大きな値となっている。このため、波形データD2c,D2dにおける各測定値の大きさに基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別することは困難となっている。
さらに、上記の波形データD2cの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD3cにおける各測定値の波形W3cは、図11(a)のようになる。また、波形データD2dの各測定値を対象として、「m3ポイント(m3は、m1およびm2とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD3dにおける各測定値の波形W3dは、図11(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD3cの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD4cにおける各測定値の波形W4cは、図12(a)のようになる。また、波形データD3dの各測定値を対象として、「m4ポイント(m4は、m1~m3とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD4dにおける各測定値の波形W4dは、図12(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD4cの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD5cにおける各測定値の波形W5cは、図13(a)のようになる。また、波形データD4dの各測定値を対象として、「m5ポイント(m5は、m1~m4とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD5dにおける各測定値の波形W5dは、図13(b)のようになる。
この場合、3回に亘る「フィルタリング処理」を行った波形データD3dの波形W3dにおいて矢印AA3d~AD3dで示す部位の測定値、4回に亘る「フィルタリング処理」を行った波形データD4dの波形W4dにおいて矢印AA4d~AD4dで示す部位の測定値、および5回に亘る「フィルタリング処理」を行った波形データD5dの波形W5dにおいて矢印AA5d~AD5dで示す部位の測定値は、「リンギング」の発生に伴って大きな値となっている。
しかしながら、「フィルタリング処理」を繰り返して行った波形W3d~W5dの波形データD3d~D5dにおいては、波形データD0cの波形W0cにおける「周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第3の絶対値」が、波形データD0cの当該取得した波形データの波形W0cにおける「非周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第4の絶対値」よりも小さくなっている。
この結果、波形W3dにおいて矢印AA3d~AD3dで示す部位の測定値、波形W4dにおいて矢印AA4d~AD4dで示す部位の測定値、および波形W5dにおいて矢印AA5d~AD5dで示す部位の測定値は、複数回の「フィルタリング処理」により、その他の測定値(インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値Dsや「リンギング」以外の「ノイズ成分」に対応する測定値Dsに対応する測定値)との大きさの差が十分に小さくなっている。つまり、本例では、加重移動平均時の重み付けやポイント数が異なるM=3種類以上の「フィルタ」を使用したNb=3回以上の「フィルタリング処理」によって「リンギング」の影響が十分に軽減されていることが理解できる。
これに対して、「フィルタリング処理」を行わなかった波形データD3cの波形W3cにおいて矢印AA3c~AD3cで示す部位の測定値、「フィルタリング処理」を行わなかった波形データD4cの波形W4cにおいて矢印AA4c~AD4cで示す部位の測定値、および「フィルタリング処理」を行わなかった波形データD5cの波形W5cにおいて矢印AA5c~AD5cで示す部位の測定値も、「リンギング」の発生に伴って大きな値となっている。しかも、これらの測定値は、その他の測定値(インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値Dsや「リンギング」以外の「ノイズ成分」に対応する測定値Dsに対応する測定値)との大きさの差が非常に大きな状態となっている。つまり、本例では、「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」だけを複数回実行したときに「リンギング」の影響を軽減することができず、「リンギング」の発生に対応して大きな値となっている測定値の存在によって「放電波形成分」が含まれていると誤って判定されるおそれがあることが理解できる。
なお、上記の例では、波形データD0cの測定値Dsに対してM=3種類の「フィルタ」を使用したNb=3回の「フィルタリング処理」を行うことで「リンギング」の影響を十分に軽減した「判定用の波形データ」が生成されるが、判定対象の波形データD0に含まれる「リンギング」に対応する測定値Dsの大きさ(「リンギング」の程度)や発生周期によっては、M=4種類以上の「フィルタ」を使用したNb=4回以上の「フィルタリング処理」を行う必要が生じることもある。また、上記の例では、M=4種類以上の「フィルタ」を使用したNb=4回以上の「フィルタリング処理」を行った波形W4c,W5cにおいても、「リンギング」の影響が軽減された状態が好適に維持されている。
したがって、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、波形データD0に各種大きさや周期の「リンギングに対応して大きな値となる測定値Ds(周期的な「ノイズ成分」)」が含まれる可能性を考慮し、「値変換処理」のうちの「フィルタリング処理」については、一例として、M=5種類の「フィルタ」を使用したNb=5回の処理を行って「判定用の波形データ」を生成する構成が採用されている。
この場合、図8~13を参照しつつ説明した例では、M種類の「フィルタ」を使用したNb回の「フィルタリング処理」によって「リンギング」の影響が軽減されることを示すために、「放電波形成分」が含まれていない波形データD0cを対象とする「値変換処理」を実行したが、「放電波形成分」が含まれている波形データD0を対象とする「値変換処理」としてM種類の「フィルタ」を使用したNb回の「フィルタリング処理」を実行した場合においても、「放電波形成分」に対応する大きな値の測定値(「非周期的なノイズ成分」の測定値)が「リンギング」に対応する測定値(「周期的なノイズ成分」の測定値)と共に小さな値に変換されてしまうことはない。
具体的には、一例として、対応する測定値Dsの波形W0e(図14参照)に「放電波形成分」が含まれている波形データD0(以下、「波形データD0e」という)を対象として、「値変換処理」時における複数回の「フィルタリング処理」を実行しない例、および「値変換処理」時における複数回の「フィルタリング処理」を実行する例について説明する。この場合、この波形W0eでは、「放電波形成分」の測定値の変化量(振幅量)が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量(振幅量)よりも小さいため、測定値Dsの変化量に基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別するのが困難となっている。
また、上記の波形データD0eの各測定値Dsを対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD1eにおける各測定値の波形W1eは、図15(a)のようになる。また、波形データD0eの各測定値Dsを対象として、「m1ポイント(m1は、予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD1fにおける各測定値の波形W1fは、図15(b)のようになる。この場合、波形W1eにおいて矢印AA1eで示す部位、および波形W1fにおいて矢印AA1fで示す部位には、測定処理時に発生した放電に起因して値が増減した「放電波形成分」が存在しているが、これらの波形W1e,W1fでは、「放電波形成分」の変化量(振幅量)が、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量(振幅量)よりも小さいため、測定値の変化量に基づいて「放電波形成分」が存在するか否かを判別するのが困難となっている。
さらに、上記の波形データD1eの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD2eにおける各測定値の波形W2eは、図16(a)のようになる。また、波形データD1fの各測定値を対象として、「m2ポイント(m2は、m1とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD2fにおける各測定値の波形W2fは、図16(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD2eの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD3eにおける各測定値の波形W3eは、図17(a)のようになる。また、波形データD2fの各測定値を対象として、「m3ポイント(m3は、m1およびm2とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD3fにおける各測定値の波形W3fは、図17(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD3eの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD4eにおける各測定値の波形W4eは、図18(a)のようになる。また、波形データD3fの各測定値を対象として、「m4ポイント(m4は、m1~m3とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD4fにおける各測定値の波形W4fは、図18(b)のようになる。
さらに、上記の波形データD4eの各測定値を対象として「フィルタリング処理」を行うことなく「微分処理」した波形データD5eにおける各測定値の波形W5eは、図19(a)のようになる。また、波形データD4fの各測定値を対象として、「m5ポイント(m5は、m1~m4とは異なる予め規定された任意の自然数)の重み付け移動平均フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を行った後に「微分処理」した波形データD5fにおける各測定値の波形W5fは、図19(b)のようになる。
この場合、波形W2eにおいて矢印AA2eで示す部位、波形W3eにおいて矢印AA3eで示す部位、波形W4eにおいて矢印AA4eで示す部位、および波形W5eにおいて矢印AA5eで示す部位や、波形W2fにおいて矢印AA2fで示す部位、波形W3fにおいて矢印AA3fで示す部位、波形W4fにおいて矢印AA4fで示す部位、および波形W5fにおいて矢印AA5f示す部位の測定値は、いずれも「放電波形成分」の測定値Dsに対応する測定値であり、その他の測定値よりも大きな値となっている。
このため、図14~19を参照しつつ説明した処理手順の例により、波形データD0eの各測定値Dsを対象とする複数回の「値変化処理」に際して複数回の「フィルタリング処理」を行ったとき(波形W1f~波形W5fの例)に、波形データD0eの各測定値Dsを対象とする複数回の「値変化処理」に際して複数回の「フィルタリング処理」を行わなかったとき(波形W1e~波形W5eの例)と同様に「放電波形成分」が存在するか否かを好適に判定可能な状態が維持されることが理解できる。したがって、「リンギング」等の「周期的なノイズ成分」の影響を十分に低減し得る回数、例えば、前述の例では、M=3種類以上の「フィルタ」を用いたNb=3回以上の「フィルタリング処理」を実行することで、「リンギング」の影響を受けることなく、「放電波形成分」が含まれているか否かを好適に判定可能な「判定用の波形データ」を得ることが可能となる。
一方、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、前述したように、「第2の暫定閾値(基準値)」との比較によって「放電波形成分」が含まれているか否かを判定するための「判定用の波形データ」、および「第2の暫定閾値(基準値)」の双方を波形データD0に基づいて生成・規定し、生成した「判定用の波形データ」および規定した「第2の暫定閾値(基準値)」を使用して波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する構成・方法が採用されている。
具体的には、本例のデータ処理装置3(データ処理用プログラムDp)では、前述した例のように、一例として、測定装置2から取得した波形データD0の各測定値Dsを対象として、Na=5回の「微分処理」と、M=5種類の「フィルタ」を使用したNb=5回の「フィルタリング処理」とを「値変換処理」として実行することによって波形データD5を生成する。次いで、波形データD5の各測定値(「放電波形成分が含まれているか否かを判定する各測定値」の一例)を絶対値化して波形データD6(「判定用データ」の一例)を生成する。
一例として、図20に示す波形W6gは、「リンギング」の影響を含み、かつ「放電波形成分」が含まれていない波形データD0を対象とする10回の「値変換処理」(5回の「微分処理」、および5回の「フィルタリング処理」)によって生成された波形データD5の各測定値を絶対値化した波形データD6(以下、「波形データD6g」という)の「信号波形」である。また、他の一例として、図21に示す波形W6hは、「リンギング」の影響を含み、かつ「放電波形成分」が含まれている波形データD0を対象とする10回の「値変換処理」によって生成された波形データD5の各測定値を絶対値化した波形データD6(以下、「波形データD6h」という)の「信号波形」である。
両図の比較により理解できるように、複数回の「微分処理」および複数回の「フィルタリング処理」の実行によって「リンギング」の影響が十分に低減されると共に、「放電波形成分」が含まれている波形データD0に対応する波形データD6hの波形W6hでは、矢印AA6hで示す部位の「放電波形成分」に対応する測定値がその他の測定値よりも十分に大きな値となっているのに対し、「放電波形成分」が含まれていない波形データD0に対応する波形データD6gの波形W6gは、そのような大きな値が存在しない状態となっている。
続いて、上記の波形データD6(波形データD6gや波形データD6h等)に基づいて「判定用閾値(基準値)」を規定する。具体的には、まず、一例として、波形データD6の各測定値における最大値の1/2の値(La=2の例)を「第1の暫定閾値」とする(「第1の処理」の一例)。
この場合、「値変換処理」によって「ノイズ成分」が抽出された状態となっている波形データD6における測定値の分布状態が正規分布であるとしたときに、波形データD6の各測定値のうちの標準偏差σの範囲に含まれる測定値の数は、測定値の総数の68%程度となる。したがって、規定した「第1の暫定閾値」が、標準偏差σの範囲に含まれない測定値を特定可能な値に規定されているか否か(「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が標準偏差σに十分に近づいたか)を判断するために、波形データD6の各測定値のうちの「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が標準偏差σに対する予め規定された範囲内(一例として、標準偏差σ≒68%の±1%の範囲内:すなわち、67%以上69%以下の範囲内)の数であるか否かを判別する(「第2の処理」の一例)。
この際に、「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が上記の予め規定された範囲を外れて少ないときには、一例として、「第1の暫定閾値」の1/2(Lb=2の例)の値を「第1の暫定閾値」に加算した値を新たな「第1の暫定閾値」として、上記の「第2の処理」を再び実行する。また、「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が上記の予め規定された範囲を外れて多いときには、「第1の暫定閾値」の1/2(Lc=2の例)を「第1の暫定閾値」から減算した値を新たな「第1の暫定閾値」として上記の「第2の処理」を再び実行する。
一方、「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が上記の予め規定された範囲内であるときには、「第1の暫定閾値」を「第2の暫定閾値(「ノイズ成分」の測定値の大きさの分布における標準偏差σに対応する閾値と推定した値)」として規定する。なお、上記の各処理時におけるLaの値、Lbの値およびLcの値は、例示のように「2」が好ましいが、「2」以外の任意の正の実数とすることができ、また、Laの値、Lbの値およびLcの値をそれぞれ別個の値とすることもできる。
次いで、規定した「第2の暫定閾値」を標準偏差σに対応する値(「放電波形成分」以外の通常の「ノイズ成分」のレベル)とし、この「第2の暫定閾値」以上の測定値の数に対して存在可能性が十分に低い標準偏差6σ(「標準偏差nσ」が「6σ」の例)に対応する値を「判定用閾値(基準値)」として規定する(「第3の処理」の一例)。この場合、図20における波形W6gの波形データD6gの例、および図21の波形W6hの波形データD6hの例では、実線Lで示す値が「判定用閾値(基準値)」として規定される。
続いて、規定した「判定用閾値(基準値)」、および前述の波形データD6に基づき、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。この際に、「放電波形成分」が含まれていない波形データD0に基づいて生成された波形データD6gの波形W6gでは、実線Lで示す「判定用閾値(基準値)」以上の測定値が存在していない。このため、この波形データD6gを使用した判定時には、対応する波形データD0に「放電波形成分」が含まれていないと判定される。
これに対して、「放電波形成分」が含まれている波形データD0に基づいて生成された波形データD6hの波形W6hでは、矢印AA6hの部位に、実線Lで示す「判定用閾値(基準値)」以上の測定値が存在している。このため、この波形データD6hを使用した判定時には、対応する波形データD0に「放電波形成分」が含まれていると判定される。
このように、このデータ処理装置3では、予め規定されたサンプリング周期で測定された複数の測定値Dsが記録されている波形データD0に基づいてその波形W0における「ノイズ成分」のなかに「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する「判定処理」において、処理部23が、各測定値を予め規定された変換方法に従って値変換して変換後の値を新たな各測定値とする「値変換処理」を複数回実行して処理後の各測定値に基づいて「放電波形成分」が含まれているか否かを判定すると共に、複数回の「値変換処理」として、波形データD0の波形W0における最大振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第1の絶対値」が、波形データD0の波形W0における「ノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第2の絶対値」よりも小さくなるように処理対象の各測定値を値変換するNa回(一例として、Na=5回)の「第1の変換処理(上記の例では「微分処理」)」と、波形データD0の波形W0における「周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第3の絶対値」が、波形データD0の波形W0における「非周期的なノイズ成分」の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である「第4の絶対値」よりも小さくなるように処理対象の各測定値を値変換するNb回(一例として、Nb=5回)の「第2の変換処理(上記の例では「フィルタリング処理」)」とを予め規定された順序で実行し、Nb回の「第2の変換処理」において、「[第3の絶対値]の[第2の変換処理]の前後における[変化率]」が異なるM種類の「フィルタ」を使用して各測定値を値変換する。また、このデータ処理用プログラムDpでは、上記の各処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、Na回の「微分処理(第1の変換処理)」によって、波形データD0の各測定値Dsに重畳する「ノイズ成分」の大きさの相違や、各測定値Dsの本来的な変化(波形データD0の波形W0における大まかな変化)の影響を受けることなく「ノイズ成分」が抽出されるため、不定期に発生する放電に対応する測定値を選択的に大きな値とすることができ、周期やレベルが異なる複数種類の「リンギング」が発生したとしても、M種類の「フィルタ」を使用したNb回の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」によって、その影響を十分に軽減することができるため、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを正確に判定することができる。
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「判定処理」において、「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する各測定値を絶対値化した「判定用データ」の各測定値における最大値の1/La(一例として、1/2)の値を「第1の暫定閾値」とする「第1の処理」と、「判定用データ」の各測定値のうちの「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が標準偏差σに対する予め規定された範囲内の数であるか否かを判別する「第2の処理」とを実行し、「第2の処理」において「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が予め規定された範囲を外れて少ないと判別したきに「第1の暫定閾値」の1/Lb(一例として、1/2)の値を「第1の暫定閾値」に加算した値を新たな「第1の暫定閾値」として「第2の処理」を再び実行し、「第2の処理」において「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が予め規定された範囲を外れて多いと判別したときに「第1の暫定閾値」の1/Lc(一例として、1/2)の値を「第1の暫定閾値」から減算した値を新たな「第1の暫定閾値」として「第2の処理」を再び実行し、かつ「第2の処理」において「第1の暫定閾値」を下回る測定値の数が予め規定された範囲内であると判別したときに「第1の暫定閾値」を「第2の暫定閾値」とすると共に、標準偏差nσに対応する「判定用閾値」を「第2の暫定閾値」に基づいて特定する「第3の処理」を実行し、「判定用閾値」を超える測定値が「判定用データ」に含まれているときに波形データの信号波形に「放電波形成分」が含まれていると判定し、「判定用閾値」を超える測定値が「判定用データ」に含まれていないときに波形データの信号波形に「放電波形成分」が含まれていないと判定する。また、このデータ処理用プログラムDpでは、上記の各処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、「判定用閾値」の規定に際して、複数個の良品の検査対象Xについての測定処理を実行する必要がないだけでなく、検査対象Xの個体差が大きい場合であっても、検査対象Xについての測定処理を1回実行して波形データD0生成することで、その検査対象Xの状態に即し、かつ測定装置2の回路特性や測定環境の影響を受けることがない検査対象X用の「判定用閾値」を規定することができる。
さらに、この測定システム1によれば、上記のデータ処理装置3と、検査対象Xについての予め規定されたサンプリング周期での測定を実行して波形データD0を出力する測定装置2とを備えたことにより、波形データD0の取得(生成)から「放電波形成分」が含まれているか否かの判定までの一連の処理を1つのシステムで実行することができる。
次に、上記の検査処理における「判定用の波形データ」の生成手順に関する他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、図2~21を参照しつつ説明した一連の処理と同様の手順については、重複する説明を省略する。
データ処理装置3による前述の「判定処理」では、対応する波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する波形データD0の各測定値Dsを対象とする複数回の「値変換処理(Na回の「微分処理(第1の変換処理)」、およびNb回の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」等)を実行して「判定用の波形データ」を生成した。この場合、上記の例の構成・手順では、波形データD0の各測定値Dsのすべてに対して同レベルの「フィルタリング処理」が行われている。
したがって、例えば、測定処理時に放電が発生し、かつ、放電の発生部位とは異なる部位において測定値の波形に歪みが生じた状態となったときに、放電に対応する「放電波形成分」のレベルが低いときには、波形において歪みが生じた部位に「放電波形成分」が存在すると誤って判定してしまうおそれがある。そこで、対応する波形に部分的な歪みが生じているような波形データD0において低レベルの「放電波形成分」を好適に検出可能な状態とするために、以下に説明する手順に従って「判定用の波形データ」を生成する。
まず、対応する波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する波形データD0の各測定値Dsにおける「連続するKサンプリング内の変化量」をそれぞれ特定する「変化量特定処理」を実行する。この「変化量特定処理」では、まず、一例として、波形データD0の各測定値Dsに対する2回程度の「微分処理」を行う(各測定値Dsの二階微分値を求める)と共に、その絶対値を測定値とする波形データD10を生成する。次いで、波形データD10の各測定値を対象とするKポイントの「移動平均処理」を行って波形データD11を生成する。この際には、一例として51ポイントの「移動平均処理」(「K=51サンプリング」の例)を行う。なお、「単純移動平均処理」に代えて「重み付け移動平均処理」を行って波形データD11を生成してもよい。
続いて、波形データD11の各測定値を、最大値が「1」となるように正規化する。これにより、波形データD0の各測定値Dsにおいて連続するK=51サンプリング内の変化量が大きい部位に対応する測定値が大きく、連続するK=51サンプリング内の変化量が小さい部位に対応する測定値が小さい波形データD12が生成されて、「変化量特定処理」が完了する。
次に、前述したNb回の「フィルタリング処理(第2の変換処理)」において「波形データD0の波形W0における[周期的なノイズ成分]の振幅部の各測定値Dsの絶対値のうちの最大値に対応する変換対象の測定値の絶対値である[第3の絶対値]の低下量」が少量のM種類の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する(「処理A」の一例)。この場合、「[第3の絶対値]の低下量が少量の[フィルタ]を使用した[フィルタリング処理]」とは、例えば、「リンギング」の周波数と同程度の周波数の「ノイズ成分」の減衰量が少ない「フィルタ」や、「フィルタリング処理」によって減衰する「ノイズ成分」の周波数の種類数が少ない「フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」、または、実質的に値を変化させない「フィルタリング処理(処理しないのと同然の処理)」を意味する。
この「処理A」では、一例として、まず、M=4種類の上記のような「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理(第1の変換処理)」とを実行して波形データD21を生成する。次いで、波形データD21の各測定値を絶対値化して波形データD22を生成する。続いて、波形データD22を対象として、前述した「第1の暫定閾値」を求めた手順と同様の手順に従い、「標準偏差σの範囲内に含まれる[ノイズ成分]」に対応する測定値の大きさ(以下、「標準ノイズ値」ともいう)を求める。次いで、波形データD22の各測定値を上記の標準ノイズ値で除して波形データD23を生成する。これにより、「処理A」による「判定用の波形データ」の生成が完了する。
次いで、前述したNb回の「フィルタリング処理」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時に使用する「フィルタ」よりも多いM種類の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する(「処理B」の一例)。この場合、「[第3の絶対値]の低下量が「処理A」時に使用する「フィルタ」よりも多い[フィルタ]を使用した[フィル
リング処理]」とは、例えば、「リンギング」の周波数と同程度の周波数の「ノイズ成分」の減衰量が上記の「処理A」による減衰量よりも多い「フィルタ」や、「フィルタリング処理」によって減衰する「ノイズ成分」の周波数の種類数が上記の「処理A」において使用する「フィルタ」よりも多い「フィルタ」を使用した「フィルタリング処理」を意味する。
この「処理B」では、一例として、まず、M=4種類の上記のような「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して波形データD31を生成する。次いで、波形データD31の各測定値を絶対値化して波形データD32を生成する。続いて、波形データD32を対象として、前述した「第1の暫定閾値」を求めた手順と同様の手順に従って標準ノイズ値を求める。次いで、波形データD32の各測定値を標準ノイズ値で除して波形データD33を生成する。これにより、「処理B」による「判定用の波形データ」の生成が完了する。
続いて、波形データD0の各測定値について、「変化量特定処理」によって特定した変化量が「予め規定された量」を下回る測定値Dsを「処理A」によって変換された測定値に置き換えると共に、「変化量特定処理」によって特定した変化量が「予め規定された量」以上の測定値Dsを「処理B」によって変換された測定値に置き換える(「第1の置換処理」の一例)。具体的には、波形データD0の各測定値Dsに関し、波形データD12の測定値が規定量を下回る部位の測定値Dsを波形データD23の測定値に置き換えると共に、波形データD12の測定値が規定量以上の部位の測定値Dsを波形データD33の測定値に置き換える。以上により、波形データD41が生成されて「第1の置換処理」が完了する。
なお、上記の「第1の置換処理」に代えて、波形データD0の各測定値について、「変化量特定処理」によって特定した変化量が最も小さい測定値Ds(または、変化量が「0」の測定値Ds)が「処理A」によって変換された測定値に置き換わり、かつ変化量が最も大きい測定値Dsが「処理B」によって変換された測定値に置き換わるとの条件が満たされるように、波形データD0の各測定値Dsを、「変化量特定処理」によって特定した変化量の大きさに応じて(一例として、「変化量」の大きさに比例させて)、「処理A」によって変換された「測定値」から「処理B」によって変換された測定値までの範囲内の値に置き換える処理(「第2の置換処理」の一例)を実行することもできる。
この場合、変化量の大きさに応じて置き換える測定値については、波形データD23の測定値および波形データD33の測定値に基づいて演算する。具体的には、一例として、波形データD0の各測定値Dsを、「[置き換える測定値]=(1-[変化量])×[処理Aによって変換された測定値]+[変化量]×[処理Bによって変換された測定値]」との演算式によって演算される測定値に置き換える処理を「第2の置換処理」として実行すすることができる。
次いで、一例として、前述した「判定処理」時における「判定用閾値(基準値)」の規定手順に従って波形データD41に基づいて「判定用閾値」を規定する。この後、規定した「判定用閾値」と波形データD41の各測定値(「第1の置換処理によって置き換えた各測定値」の一例)との比較によって波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。なお、「第1の置換処理」に代えて「第2の置換処理」を実行した場合には、「第2の置換処理」によって生成した波形データに基づいて「判定用閾値」を規定し、規定した「判定用閾値」と、その波形データの各測定値(「第2の置換処理によって置き換えた各測定値」の一例)との比較によって波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。以上により、「判定処理」が完了する。
この場合、上記の「第1の置換処理」によって生成された波形データD41では、波形データD0において連続するK=51サンプリング内の変化量が小さい測定値Ds(すなわち、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が小さい測定値Ds)が、「処理A」によって生成された波形データD23の測定値(すなわち、「フィルタリング処理」によって値を大きく変化させられていない測定値)に置き換えられている。したがって、波形データD41に基づく上記のような判定を行うことにより、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が小さい部位において放電が発生していた場合には、その放電に対応する測定値が過剰に小さな値に変換されるのが回避される結果、「放電波形成分」を好適に検出することができる。
なお、図示を省略するが、「第2の置換処理」によって生成された波形データでは、波形データD0において連続するK=51サンプリング内の変化量が小さい測定値Ds(インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が小さい測定値Ds)ほど、「処理A」によって生成された波形データD23の測定値(「フィルタリング処理」によって値を大きく変化させられていない測定値)に近い測定値に置き換えられている。したがって、「第2の置換処理」によって生成された波形データに基づく判定を行ったときにも、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が小さい部位において放電が発生していた場合には、その放電に対応する測定値が過剰に小さな値に変換されるのが回避される結果、「放電波形成分」を好適に検出することができる。
また、上記の「第1の置換処理」によって生成された波形データD41では、波形データD0において連続するK=51サンプリング内の変化量が大きい測定値Ds(すなわち、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が大きい測定値Ds)が、「処理B」によって生成された波形データD33の測定値(すなわち、「フィルタリング処理」によって値を大きく変化させられた測定値)に置き換えられている。したがって、波形データD41に基づく上記のような判定を行うことにより、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が大きい部位において放電が発生していた場合には、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化の影響が十分に軽減されるため、「放電波形成分」を好適に検出することができる。
なお、図示を省略するが、「第2の置換処理」によって生成された波形データでは、波形データD0において連続するK=51サンプリング内の変化量が大きい測定値Ds(インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が大きい測定値Ds)ほど、「処理B」によって生成された波形データD33の測定値(「フィルタリング処理」によって値を大きく変化させられた測定値)に近い測定値に置き換えられている。したがって、「第2の置換処理」によって生成された波形データに基づく判定を行ったときにも、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化量が大きい部位において放電が発生していた場合には、インパルス電圧の印加に伴う本来的な測定値の変化の影響が十分に軽減されるため、「放電波形成分」を好適に検出することができる。
続いて、上記のような生成手順によって生成した「判定用の波形データ」を使用した「判定処理」の効果の一例について、添付図面を参照して説明する。
例えば、測定処理時に放電が発生せず、かつ部分的な歪みが生じていない波形データD0(以下、「波形データD0i」という)の波形W0iは、一例として、図22のようになる。
この波形データD0iを対象とする「変化量特定処理」において各測定値Dsの2階微分値を絶対値化した波形データD10iの波形W10iは、図23のようになる。また、波形データD10iの各測定値を対象とする重み付け移動平均処理を行った波形データD11iの波形W11iは、図24のようになる。さらに、波形データD11iの各測定値を正規化した波形データD12iの波形W12iは、図25のようになる。
また、波形データD0iを対象とする「処理A」において「[第3の絶対値]の低下量」が少量のM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD21iの波形W21iは、図26のようになる。また、波形データD21iの各測定値を絶対値化した波形データD22iの波形W22iは、図27に示すようになる。さらに、波形データD22iの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD23iの波形W23iは、図28のようになる。
さらに、波形データD0iを対象とする「処理B」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時の「フィルタ」よりも多いM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD31iの波形W31iは、図29のようになる。また、波形データD31iの各測定値を絶対値化した波形データD32iの波形W32iは、図30に示すようになる。さらに、波形データD23iの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD33iの波形W33iは、図31のようになる。
また、上記の波形データD12iの各測定値に基づく「第1の置換処理」によって波形データD0iの各測定値Dsを波形データD23iの測定値および波形データD33iの測定値のいずれかに置換した波形データD41iの波形W41iは、図32のようになる。なお、同図における実線Liは、波形データD41iの各測定値に基づいて規定した「判定用閾値(基準値)」を示している。
この場合、上記の例では、「処理A」によって生成した波形データD23iの波形W23i、および「処理B」によって生成した波形データD33iの波形W33iのいずれにおいても、「放電波形成分」に対応する測定値であると判定される大きな測定値が存在していない。このため、この波形データD23iの測定値、および波形データD33iの測定値のいずれかに置換されて生成された波形データD41iの波形W41iにおいても、「放電波形成分」に対応する測定値であると判定される大きな測定値が存在しない状態となっている。
したがって、測定処理時におけるインパルス電圧の印加に伴う測定値Dsの単位時間あたりの変化量が小さく、かつ放電が発生しなかったときに測定装置2によって生成される波形データD0を対象とする「判定処理」において、「変化量特定処理」、「処理A」、「処理B」および「第1の置換処理」を実行して生成した波形データD41i(「判定用の波形データ」)に基づいて、波形データD0iの波形W0iに「放電波形成分」が含まれているか否かを判定することにより、「放電波形成分」が含まれていないと正しく判定することができるのが理解できる。なお、図示および詳細な説明を省略するが、「第1の置換処理」に代えて「第2の置換処理」を行った場合にも、「第1の置換処理」を行った上記の例と同様の効果が奏される。
一方、例えば、測定処理時に放電が発生し、かつ部分的な歪みが生じていない波形データD0(以下、「波形データD0j」という)の波形W0jは、一例として、図33のようになる。この場合、同図に示す波形W0jの例では、矢印AA0jで示す部位(図34の左図参照)、および矢印AB0jで示す部位(図34の右図参照)において「放電」が発生している。
この波形データD0jを対象とする「変化量特定処理」において各測定値Dsの2階微分値を絶対値化した波形データD10jの波形W10jは、図35のようになる。また、波形データD10jの各測定値を対象とする重み付け移動平均処理を行った波形データD11jの波形W11jは、図36のようになる。さらに、波形データD11jの各測定値を正規化した波形データD12jの波形W12jは、図37のようになる。
また、波形データD0jを対象とする「処理A」において「[第3の絶対値]の低下量」が少量のM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD21jの波形W21jは、図38のようになる。また、波形データD21jの各測定値を絶対値化した波形データD22jの波形W22jは、図39に示すようになる。さらに、波形データD22jの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD23jの波形W23jは、図40のようになる。
さらに、波形データD0jを対象とする「処理B」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時の「フィルタ」よりも多いM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD31jの波形W31jは、図41のようになる。また、波形データD31jの各測定値を絶対値化した波形データD32jの波形W32jは、図42に示すようになる。さらに、波形データD23jの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD33jの波形W33jは、図43のようになる。
また、上記の波形データD12jの各測定値に基づく「第1の置換処理」によって波形データD0jの各測定値Dsを波形データD23jの測定値および波形データD33jの測定値のいずれかに置換した波形データD41jの波形W41jは、図44のようになる。なお、同図における実線Ljは、波形データD41jの各測定値に基づいて規定した「判定用閾値(基準値)」を示している。
この場合、上記の例では、「処理A」によって生成した波形データD23jの波形W23jにおいて、波形W0jにおける矢印AA0jで示す部位に対応する矢印AA23jで示す部位と、波形W0jにおける矢印AB0jで示す部位に対応する矢印AB23jで示す部位との2箇所に「判定用閾値(基準値)」よりも大きな値の測定値が存在している。これに対して、「処理B」によって生成した波形データD33jの波形W33jにおいては、波形W0jにおける矢印AA0jで示す部位に対応する矢印AA33jで示す部位に「判定用閾値(基準値)」よりも大きな値の測定値が存在するものの、波形W0jにおける矢印AB0jで示す部位に対応する矢印AB33jで示す部位の測定値は、「判定用閾値(基準値)」よりも小さな値となっている。
このため、この例では、「処理B」におけるNb回の「フィルタリング処理」を行っただけでは、「放電波形成分」の存在を特定できない箇所が存在してしまう。しかしながら、波形データD0jの波形W0jにおける矢印AB0jで示す部位において放電が発生したか否かを正しく特定するために、波形データD23jを「判定用の波形データ」とする判定処理を行うのが好ましいのか、波形データD33jを「判定用の波形データ」とする判定処理を行うのが好ましいのか判らない。したがって、「処理A」時の「フィルタリング処理」と同様の「フィルタリング処理」を実行して生成した「判定用の波形データ」だけたけを使用した「判定処理」では、「放電波形成分」の有無の正確な判定が困難となることがある。
一方、上記の例において、波形データD12jに基づいて波形データD23jの測定値および波形データD33jの測定値のいずれかに置き換えた波形データD41jの波形W41jでは、波形W0jにおける矢印AA0jで示す部位に対応する矢印AA41jで示す部位と、波形W0jにおける矢印AB0jで示す部位に対応する矢印AB41jで示す部位との2箇所に「判定用閾値(基準値)」よりも大きな値の測定値が存在している。このため、本例の手順に従って「判定用の波形データ」を生成することにより、「放電波形成分」の有無を一層正確に判定することができるのが理解できる。
また、例えば、測定処理時に放電が発生せず、かつ部分的な歪みが生じている波形データD0(以下、「波形データD0k」という)の波形W0kは、一例として、図45のようになる。この場合、同図に示す波形W0kの例では、矢印AA0kで示す部位(図46参照)において波形に歪みが生じている。
この波形データD0kを対象とする「変化量特定処理」において各測定値Dsの2階微分値を絶対値化した波形データD10kの波形W10kは、図47のようになる。また、波形データD10kの各測定値を対象とする重み付け移動平均処理を行った波形データD11kの波形W11kは、図48のようになる。さらに、波形データD11kの各測定値を正規化した波形データD12kの波形W12kは、図49のようになる。
また、波形データD0kを対象とする「処理A」において「[第3の絶対値]の低下量」が少量のM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD21kの波形W21kは、図50のようになる。また、波形データD21kの各測定値を絶対値化した波形データD22kの波形W22kは、図51に示すようになる。さらに、波形データD22kの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD23kの波形W23kは、図52のようになる。
さらに、波形データD0kを対象とする「処理B」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時の「フィルタ」よりも多いM=4種類の「フィルタ」を使用したNb=4回の「フィルタリング処理」と、Na=4回の「微分処理」とを実行して生成した波形データD31kの波形W31kは、図53のようになる。また、波形データD31kの各測定値を絶対値化した波形データD32kの波形W32kは、図54に示すようになる。さらに、波形データD23kの各測定値を標準ノイズ値で除して生成した波形データD33kの波形W33kは、図55のようになる。
また、上記の波形データD12kの各測定値に基づく「第1の置換処理」によって波形データD0kの各測定値Dsを波形データD23kの測定値および波形データD33kの測定値のいずれかに置換した波形データD41kの波形W41kは、図56のようになる。なお、同図における実線Lkは、波形データD41kの各測定値に基づいて規定した「判定用閾値(基準値)」を示している。
この場合、上記の例では、「処理B」によって生成した波形データD33kの波形W33kにおいては、波形W0kにおける矢印AA0kで示す部位に対応する矢印AA33kで示す部位に「判定用閾値(基準値)」よりも大きな値の測定値が存在しないものの、「処理A」によって生成した波形データD23kの波形W23kにおいては、波形W0kにおける矢印AA0kで示す部位に対応する矢印AA23kで示す部位に「判定用閾値(基準値)」よりも大きな値の測定値が存在した状態となっている。このため、この例では、「処理A」におけるNb回の「フィルタリング処理」を行っただけでは、波形の歪みを「放電波形成分」であると誤判定するおそれがある。
しかしながら、波形データD0kの波形W0kにおける矢印AA0kで示す部位において波形が歪んでいることを認識していない場合には、波形データD23kを「判定用の波形データ」とする判定処理を行うのが好ましいのか、波形データD33kを「判定用の波形データ」とする判定処理を行うのが好ましいのか判らない。したがって、「処理B」時の「フィルタリング処理」と同様の「フィルタリング処理」を実行して生成した「判定用の波形データ」だけを使用した「判定処理」では、「放電波形成分」の有無の正確な判定が困難となることがある。
一方、上記の例において、波形データD12kに基づいて波形データD23kの測定値および波形データD33kの測定値のいずれかに置き換えた波形データD41kの波形W41kでは、波形W0kにおける矢印AA0kで示す部位に対応する矢印AA41kで示す部位の測定値が「判定用閾値(基準値)」よりも小さな値となっている。このため、本例の手順に従って「判定用の波形データ」を生成することにより、「放電波形成分」の有無を正確に判定することができるのが理解できる。なお、図示および詳細な説明を省略するが、「第1の置換処理」に代えて「第2の置換処理」を行った場合にも、「第1の置換処理」を行った上記の例と同様の効果が奏される。
このように、上記のデータ処理装置3では、処理部23が、「判定処理」において、波形データD0の各測定値Dsにおける連続するKサンプリング内の変化量をそれぞれ特定する「変化量特定処理」と、Nb回(一例として、Nb=5回)の「第2の変換処理(フィルタリング処理)」において「[第3の絶対値]の低下量」が少量のM種類(一例として、M=5種類)の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する「処理A」と、Nb回(一例として、Nb=5回)の「第2の変換処理(フィルタリング処理)」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時に使用する各「フィルタ」よりも多いM種類(一例として、M=5種類)の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する「処理B」と、「変化量特定処理」によって特定した「変化量」が予め規定された量を下回る測定値を「処理A」によって変換された測定値に置き換えると共に、「変化量特定処理」によって特定した「変化量」が予め規定された量以上の測定値を「処理B」によって変換された測定値に置き換える「第1の置換処理」とを実行し、「第1の置換処理」によって置き換えた各測定値に基づいて「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。また、上記のデータ処理用プログラムDpでは、上記の各処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
また、上記のデータ処理装置3では、処理部23が、「判定処理」において、波形データD0の各測定値Dsにおける連続するKサンプリング内の変化量をそれぞれ特定する「変化量特定処理」と、Nb回(一例として、Nb=5回)の「第2の変換処理(フィルタリング処理)」において「[第3の絶対値]の低下量」が少量のM種類(一例として、M=5種類)の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する「処理A」と、Nb回(一例として、Nb=5回)の「第2の変換処理(フィルタリング処理)」において「[第3の絶対値]の低下量」が「処理A」時に使用する各「フィルタ」よりも多いM種類(一例として、M=5種類)の「フィルタ」を使用して各「値変換処理」を実行する「処理B」と、「変化量特定処理」によって特定した「変化量」が最も小さい測定値Dsが「処理A」によって変換された測定値に置き換わり、かつ「変化量」が最も大きい測定値Dsが「処理B」によって変換された測定値に置き換わるように、各測定値Dsを「変化量」の大きさに応じて「処理A」によって変換された測定値から「処理B」によって変換された測定値までの範囲内の値に置き換える「第2の置換処理」とを実行し、「第2の置換処理」によって置き換えた各測定値に基づいて「放電波形成分」が含まれているか否かを判定する。また、上記のデータ処理用プログラムDpでは、上記の各処理をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
したがって、このデータ処理装置3およびデータ処理用プログラムDpによれば、波形データD0の各測定値Dsの変化量が小さい部位については、過剰に小さな値に値変換されないため、放電に対応する測定値が過剰に小さな値となる事態が好適に回避され、波形データD0の各測定値Dsの変化量が大きい部位については、十分に値変換された測定値に置換されて各測定値Dsの変化の影響が十分に軽減されるため、「第1の置換処理」または「第2の置換処理」後の測定値に基づく判定を行うことで、波形データD0の波形W0に「放電波形成分」が含まれているか否かを一層正確に判定することができる。
なお、「データ処理装置」および「測定システム」の構成や、「データ処理用プログラム」による処理の手順は、上記のデータ処理装置3の構成、およびデータ処理装置3を備えて構成された測定システム1の構成の例や、データ処理用プログラムDpの記述の内容の例に限定されない。例えば、複数回の「値変換処理」における「第1の変換処理(微分処理)」の実行回数(「Na」の値)は、上記の各例における例示の回数に限定されず、1回、または3回以上の任意の複数回とすることができる。また、複数回の「値変換処理」における「第2の変換処理(フィルタリング処理)」の実行回数(「Nb」の値)は、上記の各例における例示の回数に限定されず、2回以上の任意の複数回とすることができる。この場合、「第1の変換処理」の実行回数と「第2の変換処理」の実行回数とを異ならせる(「Na」の値と「Nb」の値とを相違させる)こともできる。
さらに、「第1の変換処理」として「微分処理」を実行する構成および方法を例に挙げて説明したが、「微分処理」に代えて、「微分処理」を行ったときと同様の値変換が行われる「[ハイパスフィルタ]や[バンドパスフィルタ]を使用したフィルタリング処理」を「第1の変換処理」として実行する構成および方法を採用することができる。
また、測定装置2と、測定装置2とは別体のデータ処理装置3とを備えて測定システム1を構成した例について説明したが、「測定装置」および「データ処理装置」を一体化した装置を「測定システム」として構成することもできる。加えて、「測定対象」としての巻線部品についてのデータを処理して検査する例について説明したが、「データ処理装置」によるデータ処理の対象や、「測定システム」による検査の対象はこれに限定されず、コンデンサや抵抗体などの各種の電子部品や、回路基板上の任意の検査ポイント間についての「波形データ」に基づいて判定処理(検査処理)を実行することができる。