発明の詳細な説明
本発明は、とりわけ、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を、必要性のある被験体において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオン、または本明細書で記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の頭蓋顔面投与(例えば、鼻腔内投与)によって処置するための方法を提供する。オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、オキシトシンペプチド単独の投与と比較して、相乗効果または増強された効果をもたらす有効用量で投与される。
(定義)
本明細書中で使用されるとき、「オキシトシンペプチド」とは、天然のオキシトシンに関連する生物学的活性を有する物質のことを指す。オキシトシンペプチドは、天然に存在する内因性のペプチド、そのフラグメント、アナログまたは誘導体であり得る。オキシトシンペプチドは、非内因性のペプチド、そのフラグメント、アナログまたは誘導体でもあり得る。1つの態様において、オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシンである。他の態様において、オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシンのアナログまたは誘導体であり得る。
本明細書中で使用されるとき、「アナログ」または「誘導体」とは、天然に存在するオキシトシンに類似の任意のペプチドのことを指し、そのペプチド中の1つまたはそれを超えるアミノ酸が、置換、欠失または挿入されている。この用語は、1つまたはそれを超えるアミノ酸(例えば、1つ、2つまたは3つのアミノ酸)が例えば化学修飾によって改変された任意のペプチドのことも指す。一般に、この用語は、オキシトシン活性を示すが、所望であれば異なる効力または薬理学的プロファイルを有し得るすべてのペプチドを包含する。
本明細書中で使用されるとき、別段特定されない限り、用語「処置」または「処置する」とは、有益なまたは所望の結果(例えば、臨床結果)を得るためのアプローチをいう。自閉症スペクトラム障害および関連障害に関しては、有益なまたは所望の結果としては、症状の軽減および/または症状の程度、例えば、社会性および/もしくはコミュニケーションの欠陥ならびに/または反復行動ならびに/または不安の減少が挙げられるが、これらに限定されない。社会性およびコミュニケーションの欠陥としては、コミュニケーションスキルおよび/もしくは社会的相互作用における機能障害、アイコンタクトの欠如、ならびに/または社会関係を形成および/もしくは維持できないことが挙げられ得るが、これらに限定されない。
「協力作用」、「相乗作用」または「相乗効果」とは、一方が他方の作用を補完するかまたは増強することにより、所与の用量の2つまたはそれを超える化合物を個別に投与した場合のそれらの化合物の効果を合算することによって予測または予想され得る効果よりも高い効果をもたらすような様式での2つまたはそれを超える化合物の連合作用のことを指す。2つまたはそれを超える薬剤を併用して使用することによって、個々の薬剤の効果を合計することによって予想または予測される、等しい量におけるそれらのいずれかの個々の効果よりも大きな全体的な効果(例えば、社会性およびコミュニケーションの欠陥における改善ならびに/または不安の低減)をもたらすとき、「相乗効果」が達成されたとみなされる。2つまたはそれを超える薬剤を併用して使用することが、等しい量において単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらすとき、同様に「相乗効果」が達成されたとみなされる。
「頭蓋顔面粘膜投与」とは、鼻、鼻腔路、鼻腔の粘膜表面;歯肉(歯ぐき)を含む口腔の粘膜表面、口腔底、***、舌、舌下口腔表面(舌小帯および口腔底を含む)、ならびに眼の粘膜表面または眼の周辺の粘膜表面(結膜、涙腺、鼻涙管を含む)ならびに上眼瞼または下眼瞼および眼の粘膜への送達のことを指す。
「鼻腔内投与」または「鼻腔内に投与される」とは、スプレー、液滴、粉末、ゲル、フィルム、吸入剤または他の手段による鼻、鼻腔路または鼻腔への送達のことを指す。
「鼻腔の下の領域」とは、一般に、中鼻甲介および下鼻甲介が突出していて、三叉神経によって著しく神経支配される鼻腔の領域である鼻腔部分のことを指す。「鼻腔の上の領域」は、嗅覚の神経支配が位置している、上部3分の1および篩板領域によって定義される。
「被験体」または「患者」とは、本明細書中で使用されるとき、哺乳動物のことを指し、ヒトが含まれるがこれに限定されない。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ)、競技用動物、ペット(例えば、モルモット、ネコ、イヌ、ウサギおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、被験体は、ヒトである。
本明細書中で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、別段示されない限り、複数の指示対象を含むことに注意するべきである。さらに、本明細書中で使用されるとき、用語「含む(comprising)」およびその同族言語は、それらの包括的な意味で使用され;つまり、用語「含む(including)」およびその対応する同族言語と等価である。
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間に介在する各値およびその規定範囲内の他の任意の規定値または介在値が、本開示の範囲内に包含されると意図されている。例えば、1μg~8μgという範囲が規定される場合、2μg、3μg、4μg、5μg、6μgおよび7μg、ならびに1μgまたはそれを超える値の範囲かつ8μgまたはそれ未満の値の範囲も明示的に開示されると意図されている。10~14%という範囲が規定される場合、10%、11%、12%、13%および14%も明示的に開示されると意図されている。さらに、ある規定範囲内の任意の規定値または介在値と他の任意の規定値または介在値との間の、その規定範囲内のより狭い各範囲が、本開示の範囲内に包含される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、独立して、その範囲に含められてもよいし、その範囲から除外されてもよく、一方もしくは両方の限界がそのより狭い範囲に含められた各範囲またはいずれの限界もそのより狭い範囲に含められない各範囲も、その規定範囲の明確に除外される任意の限界に制約される本開示に包含される。規定範囲が、一方または両方の限界を含む場合、それらの含められる限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も本開示に含められる。
(オキシトシンペプチド)
オキシトシンは、単離および配列決定された最初のペプチドホルモンの1つであった。天然のオキシトシンは、1位と6位の間にジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基を有する9アミノ酸の環状ペプチドホルモンである。ヒトオキシトシンのアミノ酸配列は、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)である。
オキシトシンを生成するためのプロセスが報告されている。例えば、米国特許第2,938,891号および米国特許第3,076,797号を参照のこと。さらに、オキシトシンは、商業的に入手可能である。種々のペプチドアナログおよびペプチド誘導体が入手可能であり、その他のものは、本発明における使用のために企図され得、公知の方法に従って生成され得、生物学的活性について試験され得る。オキシトシンアナログとしては、4-トレオニン-1-ヒドロキシ-デアミノオキシトシン、4-セリン-8-イソロイシン-オキシトシン、9-デアミノオキシトシン、7-D-プロリン-オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4-ジイソロイシン)-オキシトシン、デアミノオキシトシンアナログ、1-デアミノ-1-モノカルバ-E12-Tyr(OMe)]-OT(dCOMOT)、4-トレオニン-7-グリシン-オキシトシン(TG-OT)、オキシプレシン(oxypressin)、デアミノ-6-カルバ-オキシトキシン(dC60)、L-371,257、ならびにL-374,943などのオルト-トリグルオロ-エトキシフェニルアセチルコアを含む関連するシリーズの化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の例示的なオキシトシンアナログとしては、4-トレオニン-1-ヒドロキシ-デアミノオキシトシン、9-デアミノオキシトシン、グリシンアミド残基の代わりにグリシン残基を含むオキシトシンのアナログ、(2,4-ジイソロイシン)-オキシトシン、ナトリウム利尿活性および利尿活性を有するオキシトシンのアナログ、デアミノオキシトシンアナログ;長時間作用型オキシトシンアナログ、1-デアミノ-1-モノカルバ-E12-[Tyr(OMe)]-OT(dCOMOT)、カルベトシン、(1-ブタン酸-2-(O-メチル-L-チロシン)-1-カルバオキシトシン、デアミノ-1モノカルバ-(2-O-メチルチロシン)-オキシトシン[d(COMOT)])、[Thr4-Gly7]-オキシトシン(TG-OT)、オキシプレシン、Ile-コノプレッシン、デアミノ-6-カルバ-オキシトキシン(dC60)、d[Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、d[Thr(4),Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Thr(4),Lys(8)(5/6Cフルオレセイン)]VT、d[Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、d[Thr(4),Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Thr(4),Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VTおよび1-デアミノ-オキシトシン(残基1と6の間のジスルフィド架橋がチオエーテルに置き換えられている)およびデサミノ-オキシトシンアナログ(ジスルフィド結合がジセレニド結合、ジテルリド結合、テルロセレノ(telluroseleno)結合、テルロスルフィド(tellurosulfide)結合またはセレノスルフィド結合に置き換えられている)(例えば、参照により本明細書中に援用されるPCT特許出願WO2011/120,071に記載されているオキシトシンのペプチドアナログ)が挙げられる。本発明において使用するためのペプチドは、天然に存在するペプチド配列内または天然のペプチド配列内のアミノ酸の部分的な置換、付加または欠失によって入手可能なペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、カルボキシル末端のアミド化(-NH2)、そのペプチドにおけるDアミノ酸の使用、小さな非ペプチジル部分の組み込み、ならびにアミノ酸自体の修飾(例えば、側鎖R基のアルキル化またはエステル化)によって化学的に改変され得る。そのようなアナログ、誘導体およびフラグメントは、天然のオキシトシンペプチドの所望の生物学的活性を実質的に保持するはずである。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、4-セリン-8-イソロイシン-オキシトシンまたは9-デアミノオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、カルベトシンである。本開示は、他の公知のオキシトシンアナログ、例えば、PCT特許出願WO2012/042371およびWisniewskiら、J Med Chem.2014,57:5306-5317(これらの全内容が参照により本明細書中に援用される)に記載されているペプチド性オキシトシンレセプターアゴニストも包含する。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、Wisniewskiら、J Med Chem.2014,57:5306-5317の中の表1~3に記載されている化合物番号1~65から選択される化合物である。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、化合物番号31([2-ThiMeGly7]dOT)、化合物番号47(カルバ-6-[Phe2,BuGly7]dOT)、化合物番号55(カルバ-6-[3-MeBzlGly7]dOT)および化合物番号57(メロトシン(merotocin)とも称されるカルバ-1-[4-FBzlGly7]dOT)からなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、オキシトシンまたはオキシトシンアナログは、異なる原子質量を有する同位体によって置き換えられた1つまたはそれを超える原子を有することによって同位体的に標識される。開示される化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素の同位体(例えば、2Hおよび3H)、炭素の同位体(例えば、13Cおよび14C)、窒素の同位体(例えば、15N)、酸素の同位体(例えば、18Oおよび17O)、リンの同位体(例えば、31Pおよび32P)、フッ素の同位体(例えば、18F)、塩素の同位体(例えば、36Cl)および硫黄の同位体(例えば、35S)が挙げられる。同位体的に標識された化合物は、従来の手法に従って、ある被験体または他の被験体に投与された後、検出されて、有用な診断的および/または治療的な管理データをもたらし得る。さらに、同位体的に標識された化合物は、その必要性のある、ある被験体または他の被験体に投与されて、治療的に有益な吸収、分布、代謝および/または***プロファイルをもたらし得る。オキシトシンペプチド、例えば、ヒトオキシトシンまたはそのアナログもしくは誘導体のすべての同位体バリエーションが、放射性であるか否かを問わず、企図される。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
「国際単位」(IU、UIまたはIE)は、ビタミン、ホルモンおよびワクチンを定量するために使用される活性の国際的に受け入れられている単位である。国際単位は、複数の原料物質由来の調製物を標準化するために、規定の生物学的アッセイを用いて測定される活性の単位を与える物質の量を定義する。同様に、USP単位は、薬物製品の同一性、強度、品質、純度および稠度を保証するために、米国食品医薬品局と協力して米国薬局方が確立した規定の投与量単位である。一般に、USP単位は、協調を試みたことから国際単位と等しい。慣例により、オキシトシンの場合、1単位の活性は、通常、およそ2マイクログラムの合成オキシトシンペプチドに等しいと定義されているか;または1mgが、500単位に等しい(Stedman’s Medical Dictionary)。ゆえに、本明細書中で使用されるとき、1「IU」または1「国際単位」のオキシトシンペプチドは、およそ2マイクログラムの合成ペプチドと同じ生物学的活性を有するかまたは同じレベルの生物学的作用(例えば、ラット子宮片の収縮反応)をもたらすオキシトシンペプチドの量である。活性がより弱いアナログであれば、同じレベルの生物学的作用を達成するためにより多くの物質を必要とするだろう。薬物の効力の測定は、当業者に周知であり、参照として合成オキシトシンを使用するインビトロアッセイまたはインビボアッセイのいずれかを含み得る。Atke and Vilhardt Acta Endocrinol 1987:115(1):155-60;Engstromら、Eur J Pharmacol 1998:355(2-3):203-10。
(マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤)
有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための本発明の方法において、上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物において投与され得る。1つの態様において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安の処置において使用されるとき、相乗効果または増強された効果をもたらす量においてオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含む。
マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤におけるオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの相対的比率は、最適な相乗効果または増強された効果を達成する際に重要である。オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの最適な量は、具体的な障害または症状、所望の相乗効果または増強された効果のタイプ、および投与経路などの他の因子に依存し得る。例えば、マグネシウムの量は、効果をより早く発生させるために重要であり得る;オキシトシンの量は、効果より長く持続させるために重要であり得、オキシトシンとマグネシウムとの相対比は、社会的機能の最大の改善、社会性およびコミュニケーションの欠陥の低減、ならびに/または不安の減少を達成するために重要であり得る。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mLのオキシトシンペプチドを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、約(下限)0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mLまたは2mg/mLより多い。いくつかの実施形態において、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、約(上限)16mg/mL、12mg/mL、10mg/mL、8mg/mL、6mg/mL、4mg/mL、2mg/mL、1.6mg/mL、1.2mg/mL、1mg/mL、0.8mg/mL、0.6mg/mL、0.4mg/mL、0.3mg/mL、0.2mg/mLまたは0.1mg/mLより少ない。すなわち、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、下限が上限より小さい、約0.01~16mg/mLの範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約12mg/mL、約0.05mg/mL~約16mg/mL、約0.1mg/mL~約12mg/mL、約0.1mg/mL~約8mg/mL、約0.1mg/mL~約4mg/mL、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.1mg/mL~約1.6mg/mL、約0.1mg/mL~約1.2mg/mL、約0.1mg/mL~約1mg/mL、約0.1mg/mL~約0.8mg/mL、約0.1mg/mL~約0.4mg/mL、約0.1mg/mL~約0.3mg/mL、約0.2mg/mL~約16mg/mL、約0.2mg/mL~約12mg/mL、約0.2mg/mL~約10mg/mL、約0.2mg/mL~約8mg/mL、約0.2mg/mL~約6mg/mL、約0.2mg/mL~約4mg/mL、約0.2mg/mL~約2mg/mL、約0.2mg/mL~約1.6mg/mL、約0.2mg/mL~約1.2mg/mL、約0.2mg/mL~約1mg/mL、約0.2mg/mL~約0.8mg/mL、約0.2mg/mL~約0.6mg/mL、約0.2mg/mL~約0.4mg/mL、約0.2mg/mL~約0.3mg/mL、約0.3mg/mL~約16mg/mL、約0.3mg/mL~約12mg/mL、約0.3mg/mL~約10mg/mL、約0.3mg/mL~約8mg/mL、約0.3mg/mL~約4mg/mL、約0.3mg/mL~約3mg/mL、約0.3mg/mL~約1mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、約0.5mg/mL~約16mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.5mg/mL~約1mg/mL、約1mg/mL~約16mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLのオキシトシンペプチドを含む。好ましい実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.2mg/mL~約1.2mg/mLのオキシトシンペプチドを含む。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約5IU/mL~約8000IU/mLのオキシトシンペプチドを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、約(下限)5IU/mL、25IU/mL、50IU/mL、75IU/mL、100IU/mL、150IU/mL、200IU/mL、250IU/mL、500IU/mL、750IU/mLまたは1000IU/mLより多い。いくつかの実施形態において、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、約(上限)8000IU/mL、6000IU/mL、5000IU/mL、4000IU/mL、3000IU/mL、2000IU/mL、1000IU/mL、800IU/mL、600IU/mL、500IU/mL、400IU/mL、300IU/mL、200IU/mL、150IU/mL、100IU/mLまたは50IU/mLより少ない。すなわち、液体製剤中のオキシトシンペプチドの量は、下限が上限より小さい、約5~8000IU/mLの範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約500IU/mL~約6000IU/mL、約25IU/mL~約8000IU/mL、約50IU/mL~約6000IU/mL、約50IU/mL~約4000IU/mL、約50IU/mL~約2000IU/mL、約50IU/mL~約1000IU/mL、約50IU/mL~約800IU/mL、約50IU/mL~約600IU/mL、約50IU/mL~約500IU/mL、約50IU/mL~約400IU/mL、約50IU/mL~約200IU/mL、約50IU/mL~約150IU/mL、約100IU/mL~約8000IU/mL、約100IU/mL~約6000IU/mL、約100IU/mL~約5000IU/mL、約100IU/mL~約4000IU/mL、約100IU/mL~約3000IU/mL、約100IU/mL~約2000IU/mL、約100IU/mL~約1000IU/mL、約100IU/mL~約800IU/mL、約100IU/mL~約600IU/mL、約100IU/mL~約500IU/mL、約100IU/mL~約400IU/mL、約100IU/mL~約300IU/mL、約100IU/mL~約200IU/mL、約100IU/mL~約150IU/mL、約150IU/mL~約8000IU/mL、約150IU/mL~約6000IU/mL、約150IU/mL~約5000IU/mL、約150IU/mL~約4000IU/mL、約150IU/mL~約2000IU/mL、約150IU/mL~約1500IU/mL、約150IU/mL~約500IU/mL、約150IU/mL~約250IU/mL、約250IU/mL~約8000IU/mL、約250IU/mL~約5000IU/mL、約250IU/mL~約2500IU/mL、約250IU/mL~約500IU/mL、約500IU/mL~約8000IU/mL、約500IU/mL~約5000IU/mL、または約500IU/mL~約2500IU/mLのオキシトシンペプチドを含む。好ましい実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約50IU/mL~約1000IU/mL、約75IU/mL~約750IU/mL、または約100IU/mL~約600IU/mLのオキシトシンペプチドを含む。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
上記製剤中に存在するマグネシウムの量は、重量パーセント(w/v)(100mLの溶液あたりのマグネシウムまたはMg2+のグラム)、mg/mL(1ミリリットルの溶液あたりのマグネシウムまたはMg2+のミリグラム)またはモル濃度(1リットルの溶液あたりのマグネシウムもしくはMg2+のモルと定義される「M」;または1リットルの溶液あたりのマグネシウムもしくはMg2+のミリモルと定義される「mM」)でも表現され得る。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、上記組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを含む。いくつかの実施形態において、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、約(下限)1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mLまたは12mg/mLより多い。いくつかの実施形態において、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、約(上限)30mg/mL、25mg/mL、20mg/mL、15mg/mL、14mg/mL、13mg/mL、12mg/mL、11mg/mL、10mg/mL、9mg/mL、8mg/mL、7mg/mL、6mg/mLまたは5mg/mLより少ない。すなわち、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、下限が上限より小さい、約1~30mg/mLの範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは約0.15mg/mL~約1.5mg/mL、または約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチド、および約1mg/mL~約30mg/mL(または約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約30mg/mL、約8mg/mL~約30mg/mL、約10mg/mL~約30mg/mL、好ましくは約11mg/mL~約15mg/mL、もしくは約13mg/mL、もしくは約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約50mM~約1500mMのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、約(下限)50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、500mM、550mMまたは600mMより多い。いくつかの実施形態において、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、約(上限)1500mM、1200mM、1000mM、750mM、700mM、650mM、600mM、550mM、500mM、450mM、400mM、350mM、300mMまたは250mMより少ない。すなわち、液体製剤中のマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量は、下限が上限より小さい、約50~1500mMの範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは約75IU/mL~約750IU/mL、または約150IU/mL)のオキシトシンペプチド、および約1mg/mL~約30mg/mL(好ましくは約11mg/mL~約15mg/mL、または約13mg/mL、または約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは約75IU/mL~約750IU/mL、または約150IU/mL)のオキシトシンペプチド、および約50mM~約1200mM(または約100mM~約1200mM、約150mM~約1200mM、約200mM~約1200mM、約300mM~約1200mM、約400mM~約1200mM、好ましくは約400mM~約600mM、または約500mM)のマグネシウムまたはMg2+を含む液体製剤である。
任意のマグネシウム塩(例えば、水溶性マグネシウム塩)は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中でマグネシウムイオンを提供するために使用され得る。上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中で使用されるマグネシウム塩は、多くの因子(例えば、その製剤が投与されるときに送達され得る遊離マグネシウムイオンの量、液体製剤用の媒質におけるマグネシウム塩の溶解度、対イオンの酸性度/塩基性度、および/または塩の解離定数)に基づいて選択され得る。例えば、液体製剤では、マグネシウム塩は、オキシトシンペプチドとともに相乗効果または増強された効果をもたらすために必要とされる濃度においてマグネシウムイオンを送達するために液体媒質に十分に可溶性である必要がある。マグネシウム塩を選択する際、他の因子(例えば、製剤中の他の物質との適合性、および対イオンが製剤において他の機能を発揮する能力)も考慮され得る。例えば、クエン酸マグネシウムは、望ましい量のマグネシウムまたは望ましいマグネシウムイオン濃度を提供するのに十分、水溶液に可溶性であり;クエン酸塩は、薬学的に許容され得;クエン酸塩は、緩衝剤の一部であり得;クエン酸マグネシウムは、製剤にとって好ましい風味を付加し得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウムイオンは、1種またはそれを超えるマグネシウム塩を使用することによって提供され得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウム塩は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を調製する際に最初に使用されたマグネシウム塩であってもよいし、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の調製中にインサイチュで形成されてもよい。例えば、塩化マグネシウムが、製剤の調製において最初に使用され得;その製剤にクエン酸を添加する際に、クエン酸マグネシウムがインサイチュで形成され得る。そのような場合、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウムイオンは、塩化マグネシウムとクエン酸マグネシウムとの両方によって提供される。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム(magnesium maltate)、マグネシウムタウレート、グルコン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウムおよびピロリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種またはそれを超えるマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムを提供する量でマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する量でマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する量で1種またはそれを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量で1種またはそれを超えるマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mL(または約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約30mg/mL、約8mg/mL~約30mg/mL、約10mg/mL~約30mg/mL、好ましくは、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約13mg/mLまたは約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mL(好ましくは、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約13mg/mLまたは約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約750IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび1種またはそれを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約50mM~約1200mM(または約100mM~約1200mM、約150mM~約1200mM、約200mM~約1200mM、約300mM~約1200mM、約400mM~約1200mM、好ましくは、約400mM~約600mMまたは約500mM)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約750IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび1種または
それを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。
本明細書中で詳述されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物中のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの相対量は、重量比によって定義されてもよいし、モル比によって定義されてもよい。製剤または組成物中のオキシトシンペプチドの量とマグネシウムの量またはマグネシウムイオンの量との重量比は、「OT/Mg(w)比」と称される。例えば、約1:40のOT/Mg(w)比を有するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物において、その製剤または組成物中に存在する各1mgのオキシトシンペプチドに対して、その製剤または組成物中に存在するマグネシウムまたはマグネシウムイオンは、約40mgである。製剤または組成物中のオキシトシンペプチドの量とマグネシウムの量またはマグネシウムイオンの量とのモル比は、「OT/Mg(m)比」と称される。例えば、約1:1600のOT/Mg(m)比を有するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物において、その製剤または組成物中に存在する各1μmolのオキシトシンペプチドに対して、その製剤または組成物中に存在するマグネシウムまたはマグネシウムイオンは、約1600μmolである。
いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1:1~約1:1000のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物におけるOT/Mg(w)比は、約(上限)1:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:45、1:50、1:60、1:80、1:100または1:200より小さい。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物におけるOT/Mg(w)比は、約(下限)1:1000、1:800、1:500、1:250、1:200、1:150、1:100、1:80、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10または1:5より大きい。すなわち、上記製剤または組成物におけるOT/Mg(w)比は、上限が下限より大きい、約1:1~1:1000の範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:2~約1:200のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの好ましい実施形態において、その製剤または組成物は、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45、または約1:50のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:2~約1:1000、約1:2~約1:800、約1:2~約1:500、約1:2~約1:250、約1:2~約1:150、約1:2~約1:100、約1:2~約1:80、約1:2~約1:60、約1:2~約1:50、約1:2~約1:40、約1:2~約1:30、約1:2~約1:20、約1:2~約1:10、約1:2~約1:5、約1:5~約1:1000、約1:5~約1:800、約1:5~約1:500、約1:5~約1:200、約1:5~約1:100、約1:5~約1:80、約1:5~約1:60、約1:5~約1:50、約1:5~約1:40、約1:5~約1:30、約1:5~約1:20、約1:5~約1:10、約1:10~約1:1000、約1:10~約1:800、約1:10~約1:500、約1:10~約1:200、約1:10~約1:100、約1:10~約1:80、約1:10~約1:60、約1:10~約1:50、約1:10~約1:40、約1:10~約1:30、約1:10~約1:20、約1:20~約1:1000、約1:20~約1:800、約1:20~約1:500、約1:20~約1:200、約1:20~約1:100、約1:20~約1:80、約1:20~約1:70、約1:20~約1:60、約1:20~約1:50、約1:20~約1:40、約1:20~約1:30、約1:30~約1:1000、約1:30~約1:800、約1:30~約1:500、約1:30~約1:200、約1:30~約1:100、約1:30~約1:80、約1:30~約1:70、約1:30~約1:60、約1:30~約1:50、約1:30~約1:40、約1:35~約1:45、約1:40~約1:1000、約1:40~約1:800、約1:40~約1:500、約1:40~約1:200、約1:40~約1:100、約1:40~約1:80、約1:40~約1:70、約1:40~約1:60、約1:40~約1:50、約1:50~約1:1000、約1:50~約1:800、約1:50~約1:500、約1:50~約1:200、約1:50~約1:100、約1:50~約1:90、約1:50~約1:80、約1:50~約1:70、約1:50~約1:60、約1:60~約1:1000、約1:60~約1:800、約1:60~約1:500、約1:60~約1:200、約1:60~約1:100、約1:60~約1:90、約1:60~約1:80、約1:60~約1:70、約1:80~約1:1000、約1:80~約1:800、約1:80~約1:500、約1:80~約1:200、約1:80~約1:100、約1:100~約1:1000、約1:100~約1:800、約1:100~約1:500、約1:100~約1:200、約1:200~約1:1000、約1:200~約1:800、約1:200~約1:500、または約1:500~約1:1000のOT/Mg(w)比を有する。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンであり、かつ/またはそのマグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムである。
いくつかの実施形態において、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1:40~約1:40,000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物におけるOT/Mgモル比は、約(上限)1:40、1:80、1:100、1:150、1:175、1:200、1:250、1:280、1:300、1:400、1:500、1:560、1:800、1:1000、1:1100、1:1200、1:1600、1:1700、1:1800、1:2000、1:2400、1:3200、1:4000または1:8000より小さい。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物におけるOT/Mgモル比は、約(下限)1:40000、1:30000、1:20000、1:10000、1:7500、1:5000、1:4000、1:3000、1:2500、1:2000、1:1600、1:1200、1:1100、1:1000、1:800、1:600、1:400または1:200より大きい。すなわち、上記製剤または組成物におけるOT/Mg(w)比は、上限が下限より大きい、約1:40~1:40000の範囲の中のいずれかである。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物は、約1:80~約1:8000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの好ましい実施形態において、上記製剤または組成物は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1200、約1:1400、約1:1600、約1:1700、約1:1800、または約1:2000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの実施形態において、上記製剤または組成物は、約1:80~約1:40000、約1:80~約1:30000、約1:80~約1:20000、約1:80~約1:10000、約1:80~約1:7500、約1:80~約1:5000、約1:80~約1:3000、約1:80~約1:2000、約1:80~約1:1600、約1:80~約1:1200、約1:80~約1:800、約1:80~約1:400、約1:80~約1:200、約1:175~約1:40000、約1:175~約1:30000、約1:175~約1:20000、約1:175~約1:10000、約1:175~約1:5000、約1:175~約1:3000、約1:175~約1:2400、約1:175~約1:2000、約1:175~約1:1700、約1:175~約1:1600、約1:175~約1:1200、約1:175~約1:1100、約1:175~約1:800、約1:175~約1:560、約1:175~約1:400、約1:175~約1:280、約1:200~約1:40000、約1:200~約1:30000、約1:200~約1:20000、約1:200~約1:10000、約1:200~約1:5000、約1:200~約1:3000、約1:200~約1:2400、約1:200~約1:2000、約1:200~約1:1600、約1:200~約1:1200、約1:200~約1:800、約1:200~約1:400、約1:280~約1:40000、約1:280~約1:30000、約1:280~約1:20000、約1:280~約1:10000、約1:280~約1:5000、約1:280~約1:3000、約1:280~約1:2400、約1:280~約1:2000、約1:280~約1:1700、約1:280~約1:1600、約1:280~約1:1200、約1:280~約1:1100、約1:280~約1:800、約1:280~約1:560、約1:280~約1:400、約1:400~約1:40000、約1:400~約1:30000、約1:400~約1:20000、約1:400~約1:8000、約1:400~約1:4000、約1:400~約1:3000、約1:400~約1:2400、約1:400~約1:2000、約1:400~約1:1600、約1:400~約1:1200、約1:400~約1:800、約1:560~約1:40000、約1:560~約1:30000、約1:560~約1:20000、約1:560~約1:8000、約1:560~約1:4000、約1:560~約1:3000、約1:560~約1:2400、約1:560~約1:2000、約1:560~約1:1700、約1:560~約1:1600、約1:560~約1:1200、約1:560~約1:1100、約1:560~約1:800、約1:800~約1:40000、約1:800~約1:30000、約1:800~約1:20000、約1:800~約1:10000、約1:800~約1:5000、約1:800~約1:3000、約1:800~約1:2400、約1:800~約1:2000、約1:800~約1:1600、約1:800~約1:1200、約1:1100~約1:40000、約1:1100~約1:30000、約1:1100~約1:20000、約1:1100~約1:10000、約1:1100~約1:5000、約1:1100~約1:4000、約1:1100~約1:3000、約1:1100~約1:2400、約1:1100~約1:2000、約1:1100~約1:1700、約1:1100~約1:1600、約1:1200~約1:40000、約1:1200~約1:30000、約1:1200~約1:20000、約1:1200~約1:10000、約1:1200~約1:5000、約1:1200~約1:4000、約1:1200~約1:3000、約1:1200~約1:2400、約1:1200~約1:2000、約1:1200~約1:1600、約1:1400~約1:1800、約1:1600~約1:40000、約1:1600~約1:30000、約1:1600~約1:20000、約1:1600~約1:10000、約1:1600~約1:5000、約1:1600~約1:3000、約1:1600~約1:2400、約1:1600~約1:2000、約1:1700~約1:40000、約1:1700~約1:30000、約1:1700~約1:20000、約1:1700~約1:10000、約1:1700~約1:5000、約1:1700~約1:3000、約1:1700~約1:2400、約1:1700~約1:2000、約1:2000~約1:40000、約1:2000~約1:30000、約1:2000~約1:20000、約1:2000~約1:10000、約1:2000~約1:5000、約1:2000~約1:4000、約1:2000~約1:3000、約1:2000~約1:2400、約1:2400~約1:40000、約1:2400~約1:30000、約1:2400~約1:20000、約1:2400~約1:10000、約1:2400~約1:5000、約1:2400~約1:4000、約1:2400~約1:3000、約1:3000~約1:40000、約1:3000~約1:30000、約1:3000~約1:20000、約1:3000~約1:10000、約1:3000~約1:4000、約1:4000~約1:40000、約1:4000~約1:30000、約1:4000~約1:20000、約1:4000~約1:10000、約1:8000~約1:40000、約1:8000~約1:30000、約1:8000~約1:20000、または約1:10000~約1:40000のOT/Mg(m)比を有する。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、1つまたはそれを超える薬学的に許容され得るキャリア(ゆえに薬学的組成物を構成する)および必要に応じて他の成分(例えば、賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、ならびに/あるいは安定性、送達、吸収、半減期、有効性、薬物動態および/もしくは薬力学を高め得るか、有害な副作用を減少させ得るか、または薬学的使用に対して他の利点を提供し得る他の添加物)をさらに含む。例示的な賦形剤としては、可溶化剤、界面活性物質およびキレート剤が挙げられる。例えば、製剤は、メチル-β-シクロデキストリン(Me-β-CD)、エデト酸二ナトリウム、アルギニン、ソルビトール、NaCl、メチルパラベンナトリウム(MP)、プロピルパラベンナトリウム(PP)、クロロブタノール(CB)、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、エチルアルコール、ジデカノイルL-α-ホスファチジルコリン(DDPC)、ポリソルベート、ラクトース、シトレート、タルトレート、アセテートおよび/またはホスフェートを含み得る。
液体キャリアとしては、特に(等張性のとき)溶液に対して水、食塩水、デキストロース水溶液およびグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。そのキャリアは、石油、動物、植物または合成起源の油(例えば、落花生油、オリーブ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)をはじめとした様々な油からも選択され得る。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、滅菌化などの従来の薬学的プロセスに供され得、従来の薬学的添加物(例えば、保存剤、安定化剤、還元剤、抗酸化剤、キレート剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、ゲル化剤(jelling agents)、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤など)を含み得る。液体キャリアは、体液に対して低張性であってもよいし、等張性であってもよく、3.5~8.5の範囲内のpHを有し得る。ペプチドおよび/またはタンパク質に基づく組成物、特に薬学的組成物の調製における添加物の使用は、当該分野で周知である。いくつかの実施形態において、組成物は、約2~約7のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約4~約7のpHを有する。好ましい実施形態において、製剤/組成物のpHは、約4.5である。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、(A)~(K)から選択される1つまたはそれを超える粘膜送達増強剤をさらに含み得る:(A)可溶化剤;(B)電荷改変剤;(C)pH調整剤;(D)分解酵素阻害剤;(E)粘液溶解剤または粘液除去剤(mucus clearing agents);(F)線毛制止剤(ciliostatic agents);(G)膜透過増強剤;(H)上皮の接合部の生理機能の調節剤(例えば、一酸化窒素(NO)刺激物質、キトサンおよびキトサン誘導体);(I)血管拡張剤;(J)選択的輸送増強剤;および(K)オキシトシンペプチドと効果的に組み合わされるか、会合されるか、含有されるか、被包されるか、または結合して、粘膜送達の増強のための活性な作用物質を安定化させる、安定化送達ビヒクル、キャリア、担体または複合体形成種。グループ(G)における膜透過増強剤は、(i)界面活性物質、(ii)胆汁酸塩、(iii)リン脂質もしくは脂肪酸添加物、混合ミセル、リポソームまたはキャリア、(iv)アルコール、(v)エナミン、(iv)NOドナー化合物、(vii)長鎖両親媒性分子、(viii)小分子疎水性透過増強剤;(ix)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体;(x)アセト酢酸のグリセロールエステル、(xi)シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン誘導体、(xii)中鎖脂肪酸、(xiii)キレート剤、(xiv)アミノ酸またはその塩、(xv)N-アセチルアミノ酸またはその塩、(xvi)選択された膜成分に対して分解性の酵素、(xvii)脂肪酸合成の阻害剤、(xviii)コレステロール合成の阻害剤;または(xiv)(i)~(xviii)の膜透過増強剤の任意の組み合わせであり得る。本発明の様々な実施形態において、オキシトシンペプチドは、(A)~(K)に列挙された粘膜送達増強剤の1、2、3、4つまたはそれを超えるものと組み合わされ得る。これらの粘膜送達増強剤は、単独でまたは共に、オキシトシンペプチドと混和され得るか、またはそうでなければ薬学的に許容され得る製剤化ビヒクルまたは送達ビヒクルにおいてそれらと組み合わされ得る。本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、それを哺乳動物被験体の粘膜表面(例えば、鼻腔の粘膜表面)に送達した後に、オキシトシンペプチドのバイオアベイラビリティを上昇させ得る。
本明細書中で論じられるキャリアおよび添加物のリストは、決して完全ではなく、当業者は、医薬品において許可されている化学物質、ならびに局所製剤および非経口製剤において米国食品医薬品局が現在許可している化学物質、ならびに将来許可されるようになる化学物質のGRAS(一般的に安全と認められるもの(generally regarded as safe))リストからキャリアおよび賦形剤を選択することができる(Wangら(1980)J.Parent.Drug Assn.,34:452-462;Wangら(1988)J.Parent.Sci.and Tech.,42:S4-S26も参照のこと)。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物(ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、自閉症スペクトラム障害の処置において使用されたとき相乗的な強化された作用をもたらす量で存在する)は、クロロブタノール、ベンザルコニウム、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、酢酸、クエン酸、グリセロール、塩化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、ソルビトールおよび水からなる群より選択される1つまたはそれを超える溶媒または賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クロロブタノール、酢酸および水をさらに含む。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、キトサン含有賦形剤(例えば、ChiSys(登録商標)、http://www.archimedespharma.com/productArchiDevChiSys.html)をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1%のキトサン含有賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、その優れた吸収増強能力のために、キトサングルタミン酸塩が経鼻送達に好ましいことがある。いくつかの実施形態において、キトサンコポリマーナノ粒子(例えば、キトサングルタミン酸塩および負に帯電したポリマー(例えば、トリポリリン酸五ナトリウム)を含むナノ粒子)が使用され得る。チオール化されたキトサン(例えば、2-イミノチオランで共有結合的に改変されたキトサン)は、インスリンおよび還元型グルタチオンを含む微小粒子において使用されており、本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物における賦形剤としても有用であり得る。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、そのオキシトシンペプチド製剤が鼻腔においてゲルを形成するがゆえにオキシトシンペプチドの経鼻吸収を増強するように、1つまたはそれを超えるゲル化剤をさらに含む。本明細書中に記載される製剤および方法において有用なゲル化系には、任意の公知のゲル化系、例えば、化学的に反応性のペクチンベースのゲル化系(例えば、PecSys(商標),Archimedes Pharma)および熱反応性ポリマーゲル化系(例えば、Pluronic(登録商標)F127,BASF)が含まれ得る。PecSys(商標)は、各液滴が鼻粘膜においてカルシウムイオンと接触するとゲル化する微細なミストとして送達される低粘度のペクチンベース水溶液である。他の低メトキシペクチンも、例えば、約1%濃度において、使用され得る。Pluronic(登録商標)F127は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーを含む。ゲル化温度は、構成要素の比および最終的な製剤中に使用されるコポリマーの量に応じて変動する。ヒトの鼻腔におけるゲル化は、例えば、ビタミンB12ゲルサプリメント(EnerB,Nature’s Bounty,NY)ならびに18%wt/vol Pluronic(登録商標)F127および0.3%wt/vol Carbopol(アニオン性生体接着性ポリマーC934P)を含むゲル化スマトリプタンにおいて使用される、およそ18~20%wt/volのPluronic(登録商標)F127について実証されている。モノマーの比および濃度は、鼻腔内の34℃という標準的な温度付近である25~37℃でのゲル化を保証するように、意図されるオキシトシン製剤に対して調整され得る。ゲル化温度が、25℃未満である場合、その製剤は、室温においてゲル化し得る;ゲル化温度が、37℃より高い場合、その製剤は、鼻粘膜と接触しても完全にゲル化しないだろう。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、Carbopolなどの粘膜付着性物質をさらに含み得る。粘膜接着剤の添加、例えば、最大0.5%のCarbopolの添加によって、ゲル化温度がさらに低下し得る。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート-80)および1つまたはそれを超える緩衝剤、安定剤または等張化剤(tonicifier)などの界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、噴射剤をさらに含む。鼻腔用スプレー溶液のpHは、必要に応じて約pH3.0~8.5であるが、所望であれば、pHは、帯電した高分子種(例えば、治療的なタンパク質またはペプチド)を実質的に電離していない状態で送達するのを最適化するように調整される。使用される薬学的溶媒もまた、わずかに酸性の水性緩衝液(pH3~6)であり得る。これらの組成物において使用するのに適した緩衝剤は、上に記載されたとおりであるか、またはそうでなければ当該分野で公知のとおりである。化学安定性を高めるためまたは維持するために、保存剤、界面活性物質、分散剤またはガスをはじめとした他の構成要素を加えてもよい。好適な保存剤としては、フェノール、メチルパラベン、パラベン、m-クレゾール、チオメルサール、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面活性物質としては、オレイン酸、トリオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート、レシチン、ホスホチジルコリンならびに様々な長鎖ジグリセリドおよびリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。好適な分散剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが挙げられるが、これに限定されない。好適なガスとしては、窒素、ヘリウム、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、二酸化炭素、空気などが挙げられるが、これらに限定されない。好適な安定剤および等張化剤(tonicifying agent)としては、糖および他のポリオール、アミノ酸ならびに有機塩および無機塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クエン酸塩、コハク酸塩またはピロリン酸塩をさらに含む。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含む、上記マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、オキシトシンレセプター発現をアップレギュレートし得る薬剤(例えば、IL-6)をさらに含む。
オキシトシンペプチドの粘膜送達をさらに増強するために、酵素阻害剤、特にプロテアーゼ阻害剤が、さらに上記製剤に含められ得る。プロテアーゼ阻害剤としては、アンチパイン、アルファメニン(arphamenine)AおよびB、ベンズアミジンHCl、AEBSF、CA-074、カルパイン阻害剤IおよびII、カルペプチン(calpeptin)、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、ボロロイシン(boroleucine)、カプトプリル、クロロアセチル-HOLeu-Ala-Gly-NH2、DAPT、ジプロチン(diprotin)AおよびB、エベラクトン(ebelactone)AおよびB、ホロキシミチン(foroxymithine)、ロイペプチン、ホスホラミドン、アプロチニン、ピューロマイシン、BBI、ダイズトリプシン阻害剤、フッ化フェニルメチルスルホニル、E-64、キモスタチン、1,10-フェナントロリン、EDTAならびにEGTAが挙げられ得るが、これらに限定されない。バシトラシンなどの他の酵素阻害剤も上記製剤に含められてもよい。
オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの粘膜表面内への送達もしくは粘膜表面を越える送達および/または吸収を増強するために、吸収増強剤が上記製剤に含められ得る。これらの増強剤は、組成物の放出または溶解度(例えば、製剤送達ビヒクルからの)、拡散速度、透過の能力およびタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、有効な半減期、ピークまたは持続する濃度レベル、クリアランスならびに他の所望の粘膜送達特性(例えば、送達部位において計測されるとき)を高め得る。ゆえに、粘膜送達の増強は、種々の機構のいずれかによって、例えば、オキシトシンペプチドの拡散、輸送、持続性または安定性を高めること、膜流動性を高めること、カルシウムおよび細胞内または傍細胞の透過を制御する他のイオンの利用可能性または作用を調節すること、粘膜の構成要素(例えば、脂質)を可溶化すること、粘膜組織における非タンパク質およびタンパク質のスルフヒドリルレベルを変更すること、粘膜表面を越える水分流動を増加させること、上皮の接合部の生理機能を調節すること、粘膜上皮を覆っている粘液の粘度を低下させること、粘液線毛のクリアランス速度を低下させること、および他の機構によって生じ得る。
粘膜吸収を増強する化合物としては、界面活性物質、胆汁酸塩、ジヒドロフシデート、生体接着剤/粘膜付着性物質、リン脂質添加物、混合ミセル、リポソームまたはキャリア、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NOドナー化合物、長鎖両親媒性分子、小分子疎水性透過増強剤;ナトリウム誘導体またはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸またはその塩、N-アセチルアミノ酸またはその塩、粘液溶解剤、選択された膜成分に特異的に標的化された酵素、脂肪酸合成の阻害剤およびコレステロール合成の阻害剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
本明細書中に記載されるおよび/または企図されるすべてのペプチドが、当該分野で広く公知である自動または手動の固相合成技術を用いる化学合成によって調製され得る。それらのペプチドは、当該分野で公知の分子組換え法を用いても調製され得る。
(送達系)
マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)に適合し得る。いくつかの実施形態において、組成物はさらに粘膜送達用のデバイスを構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、頬側および/または舌下の粘膜送達に適合しており、その組成物はさらに、頬側および/または舌下の粘膜投与用のデバイス(例えば、単位用量容器、ポンプスプレー、滴注器、スクイーズボトル、保存剤非含有エアレススプレー、ネブライザー、用量吸入器(dose inhalers)および加圧式用量吸入器)を構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、眼球送達に適合しており、その組成物はさらに、結膜投与用のデバイス(例えば、滴注器またはスクイーズボトル)を構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、鼻腔内投与に適合しており、その組成物はさらに、鼻腔内投与用のデバイス(例えば、滴注器、ポンプスプレー、スクイーズボトル、保存剤非含有エアレススプレーまたは鼻腔用ポンプ装置、例えば、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える鼻腔用ポンプ装置)を構成し得る。
鼻腔内薬物送達は、長年、研究開発のトピックであるが、物質を効果的に送達するキャリアシステムが考案されたのは、たった10年以内のことである(Sayani and Chien,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1996,13:85-184)。鼻腔内送達は、比較的高いバイオアベイラビリティ、迅速な吸収動態および肝臓での初回通過効果の回避をはじめとしたいくつかの有益な特徴を有する。いくつかの態様では、鼻腔内投与によって、オキシトシンペプチドを鼻腔に送達するのが可能になり得、他の態様では、鼻腔内投与によって、鼻および/または脳の脳神経への標的化送達が可能になり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、オキシトシンペプチドの鼻腔内投与は、嗅覚の神経系もしくは三叉神経系のいずれかまたは両方を標的化し得る。オキシトシンペプチドは、任意の適用可能な形態で鼻腔内に送達され得、その形態としては、液体製剤、固体製剤(例えば、乾燥粉末製剤)、ゲル製剤またはエマルジョン製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
オキシトシンとマグネシウムイオンとの組み合わせが鼻腔内に投与される実施形態において、組成物は、分散剤および/または生理的に許容され得る希釈剤と組み合わされた液体エアロゾル製剤として調製され得る。あるいは、乾燥粉末エアロゾル製剤が企図され、その製剤は、微粉化された固体の形態の主題化合物、およびその乾燥粉末粒子の迅速な分散を可能にする分散剤を含み得る。液体エアロゾル製剤でも乾燥粉末エアロゾル製剤でも、その製剤は、エアロゾル化された用量が確実に鼻腔路の粘膜または肺に到達するために、小さな液体粒子または固体粒子にエアロゾル化される。用語「エアロゾル粒子」は、標的化された粘膜または肺胞膜への鼻(約10ミクロンからの範囲内)または肺(約2~5ミクロンの範囲内)の分布にとって十分に小さな粒子直径の好適な液体粒子または固体粒子を説明するために本明細書中で使用される。他の考慮すべき事柄としては、送達デバイスの構造、製剤中のさらなる構成要素、および粒子の特性が挙げられる。薬物の経鼻投与または肺投与のこれらの態様は、当該分野で周知であり、製剤化の操作、エアロゾル化の手段および送達デバイスの構造は、当該分野の通常の技術レベルの範囲内である。
いくつかの実施形態において、本明細書で記載される方法において有用であり、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンが自閉症スペクトラム障害の処置において使用されたときに相乗効果または増強された効果をもたらす量で存在するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、鼻腔内送達用のデバイスを使用して投与される。そのデバイスは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の鼻腔内投与に適した任意のデバイスであってよい。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔内の特定の領域へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔の下部3分の2へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔の上部3分の1へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔路全体へのオキシトシンペプチドの送達に適している。
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、鼻腔用ポンプ装置である。いくつかの実施形態において、その鼻腔用ポンプ装置は、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。いくつかの実施形態において、そのポンプアクチュエータは、特定の液滴サイズ分布で特定体積(例えば、約5~約1000μL、好ましくは、約50~約150μL、より好ましくは、約50μLまたは約100μL)を送達するように計量供給する。いくつかの実施形態において、その鼻腔用ポンプ装置は、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトル、例えば、Aptar Pharmaが販売するEquadelポンプを備える。いくつかの実施形態において、経鼻投与用のデバイスは、閾値に達したら、ポンプにかかる圧力に関係なく機能する。いくつかの実施形態において、上記鼻腔内投与用のデバイスは、シリンジに付加され得る粘膜噴霧デバイス(例えば、LMA(登録商標) MAD NASALTM)である。大型哺乳動物における投与の場合、その鼻腔用ポンプ装置は、より大きな体積(例えば、約100μL~約600μLまたはそれを超える体積)を送達するように計量供給するポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備え得る。
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、複数用量の薬物製剤を送達するようにデザインされている。例えば、鼻腔用ポンプ装置は、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備え得、ここで、その貯蔵ボトルは、複数用量の液体製剤を保持し、ポンプアクチュエータは、貯蔵ボトルに保持された液体製剤の一部である特定体積を送達するように計量供給する。いくつかの実施形態において、ポンプアクチュエータは、1スプレーあたり約50μLの液体製剤を送達するように計量供給する。鼻腔用ポンプ装置は、貯蔵ボトル内への夾雑物(例えば、細菌)の進入を減少させるために、逆流を防止するためのフィルターを備え得る。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置は、液体製剤を送達するための無金属流路(例えば、プラスチック流路)を備える。いくつかの実施形態において、ポンプ装置は、ガンマ線(鼻腔用装置を滅菌するために使用される)に対して安定なプラスチック材料を使用している。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスには、ポンプアクチュエータに微生物フィルターおよび自動ブロッキング機構を備える複数用量投与ポンプ、例えば、米国特許第5,988,449号に記載されているスプレーデバイスが備え付けられている。
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、呼気によって作動する(breath-actuated)鼻腔用送達デバイス(例えば、米国特許第7,784,460号および同第7,854,227号に記載されているデバイス)である。そのようなデバイスは、鼻腔内の標的部位深部への送達を改善し得る。いくつかの実施形態において、標準的な計量用量スプレーデバイスは、患者がマウスピース内に息を吹き込んでデバイスを作動させるハウジングに組み込まれている。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、従来の機械的スプレーポンプ(例えば、Aptar Pharmaが販売するEquadelポンプ)、チャージ可能なバネ(chargeable spring)および呼気作動機構を組み込んだ、円錐形の密封ノーズピースおよびマウスピースを備える。そのシステムは、単回用量または複数回用量の送達に使用され得る。そのような液体送達デバイスの一例は、OptiNoseが販売するOptiMist(商標)デバイスである。使用する際には、このデバイスのノーズピースを鼻孔に挿入し、マウスピースに向かって息を吐く。これによって、軟口蓋が閉じ、鼻孔に圧力がかかり、鼻中隔の後ろに空気の流れをもたらす通路が開き、空気が他方の鼻孔から出ることができる(二方向の流れ)。そのデバイスは、呼気によって作動するので、小さな粒子は、肺に入ることができない。流速および粒径を改変することによって、特定の鼻領域の標的化が可能になる。
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物の単回投与にふさわしい単位用量の計量供給スプレーデバイスである。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、オキシトシンペプチドの反復投与にふさわしい複数用量の計量供給スプレーポンプ装置である。
滴径、プルーム体積(plume volume)および流速は、特定の鼻領域を標的化するために改変され得る。液体スプレーは、嗅上皮および/または気道上皮を標的化するために5~50ミクロンの液滴サイズを提供し得る。より大きな液滴は、主に鼻咽頭に落ちて嚥下され、より小さな液滴は、肺組織を標的化する。滴径を特定するために空気力学的質量中央径(Mass Median Equivalent Aerodynamic Diameter)(MMAD)が使用される。荷電ペプチドをほぼ電離していない状態で送達するために、鼻腔用スプレーのpHが最適化される。鼻は、通常、約3~8のpHを有する溶液を許容する。鼻粘膜は、通常、飽和が起きるまでおよび液体が鼻の外にしたたり始めるまで、およそ100μLの体積を吸収し得る。ゆえに、プルーム体積は、最大100μL(および100μLを含む)であり得る。大型哺乳動物において使用する場合、プルーム体積は、最大150μL(および150μLを含む)またはそれを超える(例えば、600μLまたはそれを超える)体積であり得る。乳児および小児での使用の場合、または小動物(例えば、げっ歯類、ネコ)における獣医学的使用の場合、より小さなプルーム体積(5~50μL)が使用され得る。
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、患者の服薬遵守を容易にするために人間工学的に設計される(例えば、側面の駆動トリガー機構を有するポンプ装置)。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、ポンプ装置内に空気を進入させないがゆえに空気で運ばれる微生物による汚染を防ぐ閉鎖系として作動する計量供給スプレーポンプを備える。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、フィルターとともに作動する計量供給スプレーポンプを備える。通過する空気は、ポンプ内にアセンブルされたフィルターを通って吸い込まれ、それによって、空気で運ばれる微生物がポンプ装置の外に維持される。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置を備える鼻腔内送達デバイスは、データの伝送および処置のモニタリングを容易にし得るマイクロ電子デバイスをさらに備え得る。
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含み、ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、本明細書中に記載される鼻腔内送達用のデバイスのうちのいずれか1つに含められ、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの濃度は、デバイスと濃度の各組み合わせおよびすべての組み合わせが個別に記載されているかのように、本明細書中に記載される濃度範囲のいずれかの範囲内である。
(方法)
用語「自閉症スペクトラム障害(ASD)」または「自閉症」とは、脳の発達の複雑な障害の群をいう。これらの障害は、種々の程度において、社会的相互作用、言語コミュニケーションおよび非言語コミュニケーションにおける困難、ならびに反復行動によって特徴づけられる。2013年5月に精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)が刊行され、全ての自閉症(autism disorder)は、ASDという1つの包括的診断の中に統合された。以前は、それらは、別個のサブタイプ(自閉性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)およびアスペルガー症候群を含む)として認識されていた。http://www.autismspeaks.org/what-autismを参照のこと。当業者は、自閉症スペクトラム障害の症状は、多くの他の精神障害とかなり重なり合うことを認識する。自閉症スペクトラム障害に示されるものに類似の症状を示す障害の例としては、社会不安障害、強迫性障害、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、および神経発達障害(注意欠陥多動性障害、プラダー・ウィリー症候群、ティモシー症候群、脆弱X症候群、レット症候群、およびウィリアムズ症候群が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
DSM-5は、以下を含むASDの診断基準を提供する:(A)以下の例示によって、現在または履歴として現れているような、複数の文脈にわたる社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の持続的欠陥:(1)社会-情動的相互性の欠陥(例えば、異常な社会的アプローチおよび通常の会話のやりとりができないことから;興味、情動、または愛着の共有の低減まで;社会的相互作用を開始できないまたは社会的相互作用に応答できないことまでの範囲に及ぶ);(2)社会的相互作用に用いられる非言語コミュニケーション的行動における欠陥(例えば、言語コミュニケーションおよび非言語コミュニケーションの不十分な統合から;アイコンタクトおよびボディーランゲージにおける異常性またはジェスチャーの理解および使用における欠陥まで;表情および非言語コミュニケーションの完全な欠如までの範囲に及ぶ);ならびに(3)関係性を発展、維持および理解することにおける欠陥(例えば、種々の社会的文脈に合わせて行動を調節することが困難であることから;創造的な遊びを共有するまたは友人を作ることが困難であることまで;仲間への興味がないことまでの範囲に及ぶ);ならびに(B)現在または履歴として、以下の例示のうちの少なくとも2つによって現れているような、行動、興味、または活動の反復パターンの限局:(1)常同運動もしくは反復運動、物体の使用、または話し方(例えば、単純な常同運動(motor stereotypy)、おもちゃを並べるまたは物体を裏返す、反響言語、特異な言葉遣い);(2)同じことに対してこだわる、決まった手順に頑固に固執する、または儀式化したパターンもしくは言語・非言語行動(例えば、小さな変化での極端な苦痛、移行の困難(difficulties with transitions)、硬直した思考パターン、挨拶儀式、毎日同じ経路をとったり同じものを食べる必要がある);(3)強度または興味の中心において異常な、非常に限局され固着した興味(例えば、珍しい物体に対する強い愛着または没頭、過度に限局されたまたは固執した興味);ならびに(4)感覚入力に対する過敏さもしくは鈍感さ、または環境の感覚的側面における異常な興味(例えば、疼痛/温度に対して無関心のように見える、特定の音もしくは質感に対して敵対的に反応する(adverse reaction)、物体を過度に臭うまたは触れる、光または動きを夢中になって見る)。http://www.autismspeaks.org/what-autism/diagnosis/dsm-5-diagnostic-criteriaを参照のこと。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的相互作用の困難さ、コミュニケーションの難、および反復行動に引き込まれる傾向によって特徴づけられる。しかし、症状およびそれらの重篤度は、これら3つの核となる領域にわたって幅広く変動する。ASDは、知的障害、運動協調の困難、ならびに注意および物理的な健康上の問題(例えば、睡眠および消化管障害)と関連し得る。ASDは、不安およびうつ病を含む精神症状と関連し得る。例えば、Kimら, Autism 2000, 4(2):117-132を参照のこと。
オキシトシンは、自閉症スペクトラム障害における不安ならびに社会性およびコミュニケーションの欠陥を含む多くの状態を処置することが公知であった。しかし、自閉症スペクトラム障害における社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するにあたって、オキシトシンの効果は、患者間で幅広く変動することが観察されてきた。オキシトシンに対するレセプター利用可能性およびレセプター親和性のバリエーションが、効果のバリエーションの原因であることは、考えられる。オキシトシンの市販の製剤(例えば、Syntocinon(登録商標))を使用して、ASDを処置することにおける臨床努力は、有効性の欠如および耐容性が不十分であることによって損なわれている。現在利用可能なオキシトシン製剤の効力が低く、体積が高いことに起因して、鼻腔スプレーによって投与される場合に、吸収される薬物の量は、有効性に関して不十分である。本発明は、より強力な製剤およびより低い体積においてオキシトシンペプチドを投与するための方法を提供し、その結果、上記製剤の効果的な量が、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、または社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するための鼻腔デバイスを使用して送達され得る。
1つの態様において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記有効量は、鼻腔において容易に吸収される体積で鼻腔内投与を介して送達される。いくつかの実施形態において、鼻腔においてオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの容易な吸収を可能にする体積は、約5μL~約1000μLである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
1つの態様において、必要性のある被験体に、有効量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する方法が提供され、ここで上記有効量は、約5μL~約1000μLという体積において鼻腔内投与を介して送達される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態において、上記方法は、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を処置するためである。いくつかの実施形態において、上記方法は、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を現す障害を処置するためである。いくつかの実施形態において、上記方法は、社会性およびコミュニケーションの欠陥を低減するためである。いくつかの実施形態において、上記方法は、不安を処置または減少するためである。
マグネシウムは、生命および健康の多くの局面に関与する(例えば、エネルギー生成、酸素取り込み、中枢神経系機能、電解質バランス、グルコース代謝および筋活動)。マグネシウムはまた、自閉症スペクトラム障害を有する小児において社会性およびコミュニケーションの欠陥を減少させるにあたって臨床上有効であると見出された。Mousain-Boscら, Magnes. Res. 2006, 19(1):53-62を参照のこと。本発明のオキシトシンおよびマグネシウムイオンの同時投与は、オキシトシン単独の投与に対して、社会的行動において相乗的または増強された改善および不安の減少を生じる。これらの効果の根底にある機構は不明であるが、N-メチル D-アスパラギン酸(NMDA)神経伝達分子レセプターの非競合的遮断、またはアロステリックモジュレーターとしてのオキシトシンレセプター作用の親和性の増大のいずれか、または両方を含むようである。
いくつかの態様では、自閉症スペクトラム障害を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの態様では、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を軽減または低減するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの態様では、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を現す障害を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、その症状を軽減または低減することに対する全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、等しい量で単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらす用量で投与される。自閉症スペクトラム障害と関連する症状の例としては、社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の持続的欠陥、社交不安、ならびに反復行動、興味および活動の限局が挙げられるが、これらに限定されない。自閉症スペクトラム障害を有する個体において観察される他の行動および特徴としてはまた、物理的接触の忌避、全般性不安、発声の単調さまたは声量の調節ができないこと、ピア関係を発展させることができないこと、楽しみおよび興味の共有の欠如、ならびに社会または情動的相互性の欠如が挙げられる。自閉症スペクトラム障害において示されるものに類似の症状を示す障害の例としては、社会不安障害、強迫性障害、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、および神経発達障害(注意欠陥多動性障害、プラダー・ウィリー症候群、ティモシー症候群、脆弱X症候群、レット症候群、およびウィリアムズ症候群が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
プラダー・ウィリー症候群は、身体の多くの部分に影響を及ぼし、第15染色体の特定の領域にある遺伝子の機能の喪失によって引き起こされる複雑な遺伝的状態である。プラダー・ウィリー症候群を有する個体はしばしば、軽度から中程度の知的機能障害(intellectual impairment)および学習困難を有し、多くは、行動的な問題を示し、これらとしては、感情の爆発、頑固さ、ごまかし行動(manipulative behavior)、および皮膚を引っ掻くことを含む強迫性行動が挙げられる。プラダー・ウィリー症候群を有する個体にしばしば観察される他の症状は、社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の持続的欠陥、不安ならびに易怒性、ならびに睡眠の問題である。
いくつかの態様では、プラダー・ウィリー症候群を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、等しい量において単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらす用量で投与される。一実施形態において、本発明は、プラダー・ウィリー症候群を処置するための方法を提供し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、液体製剤において鼻腔内に投与され、投与される液体製剤の体積は、約5μL~約1000μLである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
いくつかの態様では、プラダー・ウィリー症候群と関連する1またはこれより多くの症状を軽減または低減するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する。プラダー・ウィリー症候群と関連する症状の例としては、社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の持続的欠陥、不安および易怒性、ならびに睡眠の問題が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、症状を軽減または低減することに対して全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、等しい量において単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらす用量で投与される。プラダー・ウィリー症候群と関連する症状の例としては、社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の持続的欠陥、不安および易怒性、ならびに睡眠の問題が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明は、プラダー・ウィリー症候群を処置するための方法を提供し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、液体製剤において鼻腔内に投与され、投与される液体製剤の体積は、約5μL~約1000μLである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
いくつかの態様では、プラダー・ウィリー症候群と関連する不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、不安を軽減または低減することに対して全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、等しい量において単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらす用量で投与される。一実施形態において、本発明は、プラダー・ウィリー症候群と関連する不安を処置するための方法を提供し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、液体製剤において鼻腔内に投与され、投与される液体製剤の体積は、約5μL~約1000μLである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
1つの態様において、本発明は、社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するための方法を提供し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。1つの態様において、本発明は、不安を処置するための方法を提供し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、社会性およびコミュニケーションの欠陥ならびに/または不安を低減することに対する全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態において、社会性およびコミュニケーションの欠陥は、コミュニケーションスキルおよび/または社会的相互作用における機能障害、アイコンタクトの欠如、ならびに/または社会関係を形成および/もしくは維持できないことである。
いくつかの態様では、自閉症スペクトラム障害と関連する不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、個別に投与されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の等しい用量の効果を合計するより大きな、不安を軽減または低減することに対して全体的な効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、等しい量において単独で使用される個々の薬剤の投与後に起こるものより早い効果の開始および/またはより長く持続する効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、共に投与されてもよいし、連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、同じ単位用量でマグネシウムイオンと同時に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、マグネシウムイオンと同時であるが別個の単位用量または製剤単位で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、連続的に投与される。いくつかの実施形態において、マグネシウムイオンが第1の投与で被験体に投与され、次いで、オキシトシンペプチドが、第2の投与で被験体に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウムイオンの投与の約10分後~約2時間後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウムイオンの投与の約10分後~約2時間後、約10分後~約1時間後、約10分後~約30分後、約20分後~約2時間後、約20分後~約1時間後、約30分後~約2時間後または約30分後~約1時間後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウムイオンの投与の約10分後、約15分後、約20分後、約30分後、約45分後、約60分後、約90分後または約120分後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウムイオンの投与の約10分後、約15分後、約20分後または約30分後に投与される。一実施形態において、オキシトシンペプチドがまず被験体に投与され、次いで、マグネシウムイオンが被験体に投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。
インターロイキン-6(IL-6)は、種々の組織においてオキシトシンレセプター発現の上昇を誘導することが実証された(例えば、Youngら, J. Neuroendocrinology, 1997; 9:859-65)。従って、血清IL-6レベルは、例えば、マグネシウムが鼻に投与されたときに、オキシトシンの潜在的有効性の生体マーカーとして使用され得る。
いくつかの態様では、IL-6は、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための本明細書に記載される方法に従って、被験体においてオキシトシンペプチドの投与の有効性の生体マーカーとして、および上記方法の適用のための被験体を選択するために使用される。いくつかの実施形態において、IL-6は、オキシトシンペプチドの投与(例えば、マグネシウムイオンとの併用でのオキシトシンペプチドの鼻腔投与)のための被験体(例えば、ヒト)を選択するために使用される。
いくつかの実施形態において、被験体は、高レベルのIL-6を有する被験体に基づいて処置のために選択される。IL-6のレベルは、コントロールまたは参照と比較して高い可能性がある。いくつかの実施形態において、IL-6のレベルは、適切な統計分析によって決定される場合に、コントロールまたは参照より有意に大きければ、コントロールまたは参照の比較して高い。いくつかの実施形態において、IL-6のレベルは、コントロールまたは参照より少なくとも1標準偏差大きければ、コントロールまたは参照の比較して高い。いくつかの実施形態において、コントロールは、年齢を合わせたおよび性別を合わせた健康な被験体において決定される場合のIL-6のレベルに関する値である。いくつかの実施形態において、参照は、IL-6のレベルに関する報告された値(例えば、年齢を合わせたおよび性別を合わせた健康な被験体におけるIL-6関して報告された値)である。いくつかの実施形態において、IL-6のレベルは、被験体に由来するサンプル(組織または液体サンプルのような)(全血、血清、血漿、涙液などが挙げられ、これらに限定されない)中のIL-6のレベルとして決定される。サンプル中のIL-6のレベルは、当該分野で公知の任意の方法によって(例えば、イムノアッセイ、例えば、ELISAベースのアッセイによって)決定され得る。例えば、Yang, C-J.,ら Neuroscience 284: 290-296, 2015; Emanuele, E.,ら Neuroscience letters 471(3): 162-165, 2010; Ashwood, P.,ら Brain, behavior, and immunity 25(1): 40-45, 2011;およびMalik, M.,ら Immunobiology 216(1): 80-85, 2011を参照のこと。
いくつかの実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法は、被験体においてIL-6のレベル(例えば、IL-6の血清レベル)を測定する工程、ならびに高IL-6レベルを有する被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含する。
1つの態様において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法であって、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与が、相乗効果または増強された効果をもたらす方法は、上記被験体に、有効量のインターロイキン-6(IL-6)を投与する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記有効量のIL-6は、上記被験体においてオキシトシンレセプター(OTR)の発現の増大を生じる。
いくつかの実施形態において、IL-6が被験体に投与される、本明細書に記載される方法のうちのいずれかによれば、上記オキシトシンペプチドおよびIL-6は、同時に投与されてもよいし、連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、その同じ単位用量においてIL-6と同時に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、IL-6と同時に投与されるが、別個の単位用量または製剤において投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびIL-6は、連続的に投与される。いくつかの実施形態において、IL-6は、第1の投与において被験体に投与され、次いで、オキシトシンペプチドは、第2の投与において被験体に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、IL-6の投与の約1分~約4時間後に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、IL-6の投与の約1分~約4時間後、約10分~約4時間後、約10分~約3時間後、10分~約2時間後、約10分~約1時間後、約10分~約30分後、約20分~約4時間後、約20分~約3時間後、約20分~約2時間後、約20分~約1時間後、約30分~約4時間後、約30分~約3時間後、約30分~約2時間後または約30分~約1時間後に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、IL-6の投与の約1分後、約10分後、約15分後、約20分後、約30分後、約45分後、約60分後、約90分後、約120分後、約150分後、約180分後、約210分後、または約240分後に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、IL-6の投与の約10分後、約15分後、約20分後、または約30分後に投与される。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、被験体に最初に投与され、次いで、IL-6が被験体に投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、マグネシウムイオンは、オキシトシンペプチドおよび/もしくはIL-6と同時に、オキシトシンペプチドおよびIL-6のいずれかもしくは両方の前に、またはオキシトシンペプチドおよびIL-6のいずれかもしくは両方の後に、投与される。
オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、その必要性のある被験体に同じ経路を介して投与されてもよいし、異なる経路を介して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)を介して投与される。一実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウムイオンの両方が、同じ製剤として鼻腔内に投与される。一実施形態において、オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜を介して投与され、マグネシウムイオンは、全身的に、例えば、静脈内、筋肉内、経口的、皮下または髄腔内に投与される。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、鼻腔内投与を介して投与される。オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウムイオンは、鼻腔内送達用の好適なデバイス(例えば、本明細書中に記載される経鼻送達デバイス)を用いて鼻腔内の粘膜組織に投与され得る。鼻腔内の好適な領域としては、鼻腔の下部3分の2もしくは上部3分の1または鼻腔全体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウムイオンは、鼻腔の上部3分の1に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウムイオンは、鼻腔の下部3分の2に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウムイオンは、鼻腔の下部3分の2と上部3分の1の両方に達するように明確に投与される。いくつかの実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状、または自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害を処置するための方法であって、該方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを鼻腔内に投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドおよび該マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす、方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法である。
いくつかの実施形態において、IL-6が被験体に投与される、本明細書に記載される方法のうちのいずれかによれば、IL-6は、鼻腔内投与を介して投与される。IL-6は、鼻腔内送達に好適なデバイス(例えば、本明細書に記載される鼻腔送達デバイス)を使用して鼻腔内の粘膜組織に投与され得る。いくつかの実施形態において、IL-6は、全身に、例えば、静脈内に、筋肉内に、経口的に、皮下に、または髄腔内に投与される。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約1000μg、約1μg~約1000μgまたは約1μg~約2000μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4μg~約1000μg、約8μg~約1000μg、約8μg~約800μg、約8μg~約500μg、約8μg~約400μg、約8μg~約300μg、約8μg~約200μg、約8μg~約100μg、約8μg~約80μg、約8μg~約50μg、約10μg~約1000μg、約10μg~約500μg、約10μg~約200μg、約10μg~約100μg、約16μg~約1000μg、約16μg~約800μg、約16μg~約500μg、約16μg~約400μg、約16μg~約200μg、約16μg~約160μg、約16μg~約120μg、約16μg~約80μg、約20μg~約1000μg、約20μg~約800μg、約20μg~約500μg、約20μg~約200μg、約20μg~約100μg、約30μg~約1000μg、約30μg~約500μg、約30μg~約300μg、約30μg~約120μg、約30μg~約90μg、約50μg~約1000μg、約50μg~約500μg、約50μg~約250μg、約50μg~約100μg、または約50μg~約80μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約8μg、約16μg、約32μg、約48μg、約64μg、約80μg、約96μg、約128μg、約256μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約120μg、約150μg、約200μg、約400μg、約600μg、約800μgまたは約100μgである。好ましい実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約8μg~約120μg、約15μg~約120μg、約30μg~約120μg、または約66μgである。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.25IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.25IU~約500IU、約0.5IU~約500IUまたは約0.5IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約2IU~約500IU、約4IU~約500IU、約4IU~約400IU、約4IU~約250IU、約4IU~約200IU、約4IU~約150IU、約4IU~約100IU、約4IU~約50IU、約4IU~約40IU、約4IU~約25IU、約5IU~約500IU、約5IU~約250IU、約5IU~約100IU、約5IU~約50IU、約8IU~約500IU、約8IU~約400IU、約8IU~約250IU、約8IU~約200IU、約8IU~約100IU、約8IU~約80IU、約8IU~約60IU、約8IU~約40IU、約10IU~約500IU、約10IU~約400IU、約10IU~約250IU、約10IU~約100IU、約10IU~約50IU、約15IU~約500IU、約15IU~約250IU、約15IU~約150IU、約15IU~約60IU、約15IU~約45IU、約25IU~約500IU、約25IU~約250IU、約25IU~約125IU、約25IU~約50IU、または約25IU~約40IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4IU、約8IU、約16IU、約24IU、約32IU、約40IU、約48IU、約64IU、約128IU、約5IU、約10IU、約15IU、約20IU、約25IU、約30IU、約35IU、約40IU、約45IU、約50IU、約60IU、約75IU、約100IU、約200IU、約300IU、約400IUまたは約50IUである。好ましい実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4IU~約60IU、約7.5IU~約60IU、約15IU~約60IU、または約30IUである。
併用におけるオキシトシンの用量または量は、一実施形態において、自閉症スペクトラム障害または関連障害の症状の臨床的に計測可能な改善を提供するのに有効である。オキシトシンとマグネシウムイオンとの併用は、自閉症スペクトラム障害または関連障害を改善する相乗効果または増強された効果を提供する。いくつかの実施形態において、オキシトシンは、単剤として投与されるオキシトシンの用量に対して治療有効用量以下の用量で投与される。単剤としてのオキシトシンの用量は、投与経路に部分的に依存する。したがって、本明細書中に記載される併用療法におけるオキシトシンの用量も、投与経路に部分的に依存する。
マグネシウムイオンの最適な投与量は、具体的な障害または症状、所望の相乗効果または増強された効果のタイプ、および投与経路などの他の因子に依存し得る。最適な用量は、投与されるマグネシウムイオンの全量、または投与される製剤中のマグネシウムイオンの濃度において、測定され得る。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約68mgである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約34mg、または約1mg~約3mgである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウムイオンの有効用量は、約1.3mg、または約2.6mgである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウムイオンの有効用量は、約1.2mg、または約2.4mgである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約17mg、約50μg~約8mg、約50μg~約4mg、約50μg~約2mg、約50μg~約1mg、約50μg~約500μg、約100μg~約68mg、約100μg~約34mg、約100μg~約17mg、約100μg~約8mg、約100μg~約4mg、約100μg~約2mg、約100μg~約1mg、約100μg~約500μg、約200μg~約68mg、約200μg~約34mg、約200μg~約17mg、約200μg~約8mg、約200μg~約4mg、約200μg~約2mg、約200μg~約1mg、約200μg~約500μg、約500μg~約68mg、約500μg~約34mg、約500μg~約17mg、約500μg~約8mg、約500μg~約5mg、約500μg~約4mg、約500μg~約3mg、約500μg~約2mg、約500μg~約1mg、約1mg~約68mg、約1mg~約34mg、約1mg~約17mg、約1mg~約8mg、約1mg~約6mg、約1mg~約5mg、約1mg~約4mg、約1mg~約3mg、約1mg~約2mg、約1.5mg~約8mg、約1.5mg~約6mg、約1.5mg~約5mg、約1.5mg~約4mg、約1.5mg~約3mg、約1.5mg~約2mg、約1.3mg~約2.6mg、または約1.2mg~約2.4mgである。いくつかの実施形態において、マグネシウムイオンは、マグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を使用して提供される。
いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩は、塩化マグネシウムを含み、有効用量のマグネシウム塩は、約0.48mg~約600mgの塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O,MW203.3)である。いくつかの実施形態において、塩化マグネシウム六水和物の有効用量は、約0.48mg~約300mg、約0.5mg~約150mg、約0.5mg~約75mg、約5mg~約150mg、約5mg~約75mg、約5mg~約50mg、約10mg~約600mg、約10mg~約300mg、約10mg~約150mg、約10mg~約75mg、約10mg~約50mg、約10mg~約30mg、または約12mg~約24mgである。いくつかの好ましい実施形態において、塩化マグネシウム六水和物の有効用量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mgまたは約30mgである。
いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムであり、マグネシウム塩の有効用量は、約0.48mg~約600mgのクエン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態において、クエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム、分子量:214.4)の有効用量は、約0.48mg~約300mg、約0.5mg~約150mg、約0.5mg~約75mg、約5mg~約150mg、約5mg~約75mg、約5mg~約50mg、約10mg~約600mg、約10mg~約300mg、約10mg~約150mg、約10mg~約75mg、約10mg~約50mg、約10mg~約30mg、または約12mg~約24mgである。いくつかの好ましい実施形態において、クエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム、分子量:214.4)の有効用量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mgまたは約30mgである。いくつかの実施形態において、クエン酸マグネシウムの有効用量は、約0.48mg~約12mg、約0.5mg~約10mg、約0.5mg~約8mg、約0.5mg~約5mg、約0.5mg~約2.5mg、約0.5mg~約1mg、約1mg~約10mg、約1mg~約8mg、約1mg~約5mg、約1mg~約2mg、約2mg~約10mg、約2mg~約8mg、約2mg~約6mg、約2mg~約4mg、約3mg~約10mg、約4mg~約10mg、約4mg~約8mg、約4mg~約6mg、約5mg~約10mg、約5mg~約8mg、約5mg~約7mg、約5mg~約6mg、約6mg~約10mg、約6mg~約8mg、または約6mg~約7mgである。他のマグネシウム塩がクエン酸マグネシウムの代わりに使用される場合、そのマグネシウム塩の有効用量は、クエン酸マグネシウムによって提供されるものに等しいマグネシウムイオンの量を提供する。
本明細書中に記載されるマグネシウムイオンの各投与量およびすべての投与量が、各組み合わせおよびすべての組み合わせが個別に述べられているかのように、本明細書中に記載されるオキシトシンペプチドの各投与量およびすべての投与量と組み合わされ得ると意図され、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgであり、マグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約15μg~約120μg(例えば、約60μgまたは約66μg)であり、マグネシウムイオンの有効用量は、約10mg~約30mg(例えば、約12mgまたは約24mg)のクエン酸マグネシウムによって提供されるマグネシウムイオンの量に等しい。
いくつかの実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを(例えば、鼻腔内投与によって)投与する工程を包含し、ここで投与されるオキシトシンペプチドの用量と投与されるマグネシウムイオンの用量との重量比は、約1:1~約1:1000、好ましくは約1:2~約1:200、より好ましくは約1:20、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45、約1:50、約1:60、またはマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物に関して本明細書で記載されるOT/Mg(w)比のうちのいずれかである。いくつかの実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを(例えば、鼻腔内投与によって)投与する工程を包含し、ここで投与されるオキシトシンペプチドの用量と投与されるマグネシウムイオンの用量とのモル比は、約1:40~約1:40000、好ましくは約1:80~約1:8000、より好ましくは約1:175、約1:280、約1:500、約1:560、約1:800、約1:1000、約1:1100、約1:1200、約1:1400、約1:1600、約1:1700、約1:1800、約1:2000、約1:2400、約1:3000、またはマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物に関して本明細書で記載されるOT/Mg(m)比のうちのいずれかである。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。この実施形態のうちのいくつかにおいて、マグネシウムイオンは、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムによって提供される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、社会性およびコミュニケーションの欠陥は、コミュニケーションスキルおよび/もしくは社会的相互作用における機能障害、アイコンタクトの欠如、ならびに/または社会関係を形成および/もしくは維持できないことである。
一実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、約0.5μg~約2000μg(例えば、約8μg~約300μg、約15μg~約120μgまたは約66μg)の用量のオキシトシンペプチドおよび約50μg~約68mg、約50μg~約34mg、約1mg~約3mg、約1.3mg、もしくは約2.6mgの用量のマグネシウムまたはマグネシウムイオンを鼻腔内に投与する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、必要性のある被験体に、有効量の本明細書に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を鼻腔内に投与する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、必要性のある被験体に、体積が約5μL~約1000μLの液体製剤において有効量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを鼻腔内に投与する工程を包含する。一実施形態において、その方法は、その必要性のある被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mLおよび約16mg/mL)のオキシトシンおよび約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程を含む。一実施形態において、その方法は、その必要性のある被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約16mg/mLまたは約0.15mg/mL~約1.5mg/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%または約10%~約14%)のクエン酸マグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。一実施形態において、その方法は、その必要性のある被験体の鼻腔内に、約5IU/mL~約8000IU/mL(例えば、約50IU/mL~約8000IU/mLまたは約75IU/mL~約750IU/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約10%~約14%または約12%)のクエン酸マグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。一実施形態において、その方法は、その必要性のある被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mLおよび約16mg/mLまたは約0.15mg/mLおよび約1.5mg/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約8%~約12%または約10%)の塩化マグネシウム六水和物を含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。一実施形態において、その方法は、その必要性のある被験体の鼻腔内に、約5IU/mL~約8000IU/mL(例えば、約50IU/mL~約8000IU/mLまたは約75IU/mL~約750IU/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約8%~約12%または約10%)の塩化マグネシウム六水和物を含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの有効用量は、約0.1%~約2.8%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約0.5μg(または0.25IU)~約2000μg(または1000IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの有効用量は、約0.11%~約1.65%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約8μg(または4IU)~約1000μg(または500IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの有効用量は、約1.1%~約1.6%(例えば、約1.2%または約1.35%)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg(または7.5IU)~約120μg(または約60IU)(例えば、約60μgまたは30IU)のオキシトシンペプチドを含む。一実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの有効用量は、約1.2%または約1.35%のマグネシウムを含む水溶液において投与される約60μg(または30IU)のオキシトシンペプチドを含む。
いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、液体製剤において鼻腔内に投与され、投与される液体製剤の体積は、約5μL~約1000μLである。いくつかの実施形態において、投与される体積は、約5μL~約500μL、約5μL~約250μL、約5μL~約100μL、約5μL~約50μL、約10μL~約1000μL、約10μL~約500μL、約10μL~約250μL、約10μL~約100μL、約25μL~約1000μL、約25μL~約500μL、約25μL~約250μL、約25μL~約100μL、約50μL~約1000μL、約50μL~約750μL、約50μL~約500μL、約50μL~約450μL、約50μL~約400μL、約50μL~約350μL、約50μL~約300μL、約50μL~約250μL、約50μL~約200μL、約50μL~約150μL、約100μL~約500μL、約100μL~約400μL、約100μL~約300μL、または約100μL~約200μLである。いくつかの実施形態において、投与される体積は、約50μL、約100μL、約150μL、約200μL、約250μL、約300μL、約350μL、約400μL、約450μL、または約500μLである。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、本明細書で記載される鼻腔デバイスに含まれる液体製剤において鼻腔内に投与される。
本明細書で記載されるオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンの組み合わせは、オキシトシンによって処置可能な任意の社会性およびコミュニケーションの欠陥(例えば、コミュニケーションスキルおよび/もしくは社会的相互作用における機能障害、アイコンタクトの欠如、ならびに/または社会関係を形成および/もしくは維持できないこと)の処置のために使用され得る。従って、社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで社会性およびコミュニケーションの欠陥は、コミュニケーションスキルおよび/もしくは社会的相互作用における機能障害、アイコンタクトの欠如、ならびに/または社会関係を形成および/もしくは維持できないことである。一実施形態において、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを鼻腔内に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの量とマグネシウムまたはマグネシウムイオンの量とのモル比は、約1:175、約1:280、約1:560、約1:1100、約1:1700、または約1:2000(これらの比の間の任意の範囲を含む)である。
一実施形態において、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体(例えば、ヒトもしくは獣医学的患者)に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを鼻腔内に投与する工程を包含し、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg(または0.25IU)~約2000μg(または1000IU)、好ましくは、約8μg(または4IU)~約1000μg(または500IU)、より好ましくは、約15μg(または7.5IU)~約120μg(または60IU)である。いくつかの実施形態において、マグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約68mgである。いくつかの実施形態において、マグネシウムイオンは、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する量で投与されるマグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウムおよび/またはクエン酸マグネシウム)を用いて提供される。いくつかの実施形態において、有効用量のマグネシウムイオンは、約0.48mg~約600mgのクエン酸マグネシウムを用いることにより提供される。いくつかの実施形態において、有効用量のマグネシウムイオンは、約0.42mg~約540mgの塩化マグネシウム六水和物を用いることにより提供される。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、約1.1%~約1.54%(例えば、約1.2%または約1.35%)(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg(または7.5IU)~約120μg(または60IU)(例えば、約60μgまたは30IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、約10%~約14%(例えば、約12%)(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約10μg~約120μg(例えば、約66μg)のオキシトシンペプチドを含む。
キット
本明細書で記載される方法のうちのいずれかを行うためのキットが、本明細書で提供される。キットは、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安の処置における使用のために提供される。いくつかの実施形態において、上記キットは、好適な包装材に入った、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンであって、ここで上記オキシトシンペプチドおよび上記マグネシウムイオンは、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安の処置において使用されたときに相乗効果または増強された効果をもたらす量にあるオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオン、ならびに頭蓋顔面粘膜投与(例えば、鼻腔内投与)用のデバイスを含む。キットは、プロテアーゼ阻害剤および/または少なくとも1つの吸収促進剤をさらに含み得る。キットは、IL-6をさらに含み得る。他のキットは、本明細書中に記載される方法のいずれか1つを行うためにユーザーおよび/または医療提供者に情報を提供する指示書をさらに含み得る。キットは、被験体においてIL-6レベルを測定するための試薬/ツール;ならびに必要に応じて鼻腔用オキシトシンおよびマグネシウムイオンの有効性を予測するための指示書をさらに含み得る。
頭蓋顔面粘膜投与用のデバイス(例えば、鼻腔用ポンプ装置などの鼻腔内投与用のデバイス)に含められた本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤および好適な包装材を含むキットも提供される。そのキットは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を必要とする被験体にマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与するための指示書をさらに含み得る。
本発明を行うためのキットの使用に関する指示書には、通常、どのようにそのキットの内容物を使用して本発明の方法を行うかが記載されている。本発明のキットに供給される指示書は、代表的には、ラベル上の書面の指示書または添付文書(例えば、キットに含められる紙のシート)であるが、機械可読の指示書(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスクに入った指示書)も許容され得る。
本発明は、例証目的で提供され、限定するように意図されていない、以下の実施例を参照することによりさらに理解され得る。
実施例1:マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の例示的な調製
実施例1A
高張性であり、pH4.5を目標とする薬物製品製剤は、オキシトシンUSP(150IU/mL);塩化マグネシウムUSP(六水和物または無水塩として);クエン酸USP(無水物または一水和物の形態として);水酸化ナトリウムNF;および滅菌注射用水USPからなる。量的組成を表1に提供する。定量的組成を表1に提供する。製剤中のオキシトシン 対 マグネシウムイオンのモル比は、約1:1679である。すべての成分が、対応するモノグラフの公定書(USP/NF)の要件を満たす。
薬物製品は、成分を滅菌注射用水に溶解し、滅菌濾過し、保存剤フリーのポンプにおいてスナップ付きバイアルに充填することによって製造され、2002年7月のFDAの鼻腔用スプレー指針に概ね従って試験される。
一例において、表1に提供された組成に従う10Lバッチのマグネシウム含有オキシトシン製剤を以下のとおり調製した:製剤容器を、要求されるバッチ体積の約60%まで水で満たした。外界温度で撹拌しながら、以下の順序で必要量の塩化ナトリウム、クエン酸および塩化マグネシウム六水和物を加えた。それらの材料は、容易に溶解した。加熱の必要は無く、静かに撹拌するだけでよかった。1N NaOHを加えることによって、溶液のpHを4.5に調整した(過剰滴定の場合、10%HClを用いてpH4.5に逆滴定することができる)。必要量のオキシトシンを加え、溶解するまで撹拌した。そのバッチが最終的な重量/体積になるように水を加えた。溶液が均一になるまで撹拌した。
実施例1B
等張性であり、pH4.5を目標とする、薬物製品製剤は、オキシトシンUSP(150IU/mL);クエン酸マグネシウム、塩化ナトリウムUSP;酢酸ナトリウム三水和物USP;氷酢酸USP;および滅菌注射用水USPからなる。量的組成を表2に提供する。製剤中のオキシトシン 対 マグネシウムイオンのモル比は、約1:1992である。pH4.5またはpH4.5付近における最適な製剤安定性に基づいて4.5という目標pHが選択される(Haweら、Pharmaceut.Res.2009、26:1679-1688)。すべての成分が、対応するモノグラフの公定書(USP/NF)の要件を満たす。
オキシトシン原液を調製するために、凍結乾燥されたオキシトシン(2mg)を、5mLガラス容器内の1mLの水(USP)、0.9%生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水に加える。すべてのオキシトシンが溶解するまでその溶液を撹拌し、pHを3.5~8.5に調整して、1mLの2mg/mL(約1000IU/mL)液体オキシトシン製剤を生成する。
臨床用の材料として使用する場合、オキシトシンおよび賦形剤は、現行の医薬品適正製造基準(Good Manufacturing Practice)に従って製造し、最後に滅菌(0.2ミクロンメンブランフィルターによる無菌濾過)した後、ガラス貯蔵ボトルに充填し、ポンプアクチュエータで密封する。オキシトシンの量を増加または減少させることによって、この実施例から様々な製剤濃度を生成することができる。この1mLのバッチ体積からおよそ10用量のオキシトシンが得られる。
実施例2:社会的行動のラットモデル
ラットを、生理食塩水、10μg オキシトシン、12% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:1127のモル比)、または12% クエン酸マグネシウムを含む20μl(10μl/鼻腔)の溶液で、鼻腔内処置した。8匹(8)のラットを、各処置群において使用した。鼻腔内薬物投与の40分後、同じ処置群の2匹の動物を組ませて、試験チャンバの中に入れ、彼らの社会的行動(匂いを嗅ぐ、後追いする、上を這ったり下を這ったりする、社会的グルーミング(allogrooming)[パートナーをグルーミングする]、およびじゃれ合い(play fighting))を、10分間記録した。社会的相互作用に費やした時間を図1に示す。結果は、社会的行動の改善に対する12% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせの増強された効果の証拠を示す。
実施例3:不安のラットモデル
実施例3A
ラットを、生理食塩水、10μg オキシトシン、12% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:1127のモル比)、または12% クエン酸マグネシウムを含む20μl(10μl/鼻腔)の溶液で、鼻腔内処置した。8匹(8)のラットを、各処置群において使用した。鼻腔内薬物投与の50分後、動物を、放射状アーム迷路の中に入れ、彼らの不安を、5分間の間に動物がオープンアームに入った回数によって評価した。そのオープンアームに入った観察された回数を、図2に示す。結果は、不安の低減に対する12% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせの相乗効果の証拠を示す。
実施例3B
ラットを、生理食塩水、3% クエン酸マグネシウム、6% クエン酸マグネシウム、16μg オキシトシン、10μg オキシトシン、3% クエン酸マグネシウムおよび16μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:176のモル比)、または6% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:563のモル比)を含む20μl(10μl/鼻腔)の溶液で、鼻腔内処置した。8匹(8)のラットを、各処置群において使用した。鼻腔内薬物投与の30分後、動物を、5分間の高架式プラットフォームストレスに曝し、直後に、高架式プラス迷路へと5分間入れた。彼らの不安を、5分間の間に動物がオープンアームに入った回数によって評価した。そのオープンアームに入った観察された回数を、図3Aおよび図3Bに示す。3% クエン酸マグネシウムおよび16μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:176のモル比)で処置した動物は、オープンアームに入った回数の増大に示されるとおり、3% クエン酸マグネシウム単独または16μg オキシトシン単独のいずれかで処置した動物より低い不安を有した。対照的に、6% クエン酸マグネシウムおよび10μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:563のモル比)で処置した動物は、オープンアームに入った回数の減少に示されるとおり、6% クエン酸マグネシウム単独または10μg オキシトシン単独のいずれかで処置した動物より大きな不安を有した。
不安をさらに評価するために、オープンアームに入るまでの潜時、オープンアームで過ごした時間、およびクローズドアームに入った回数を決定する。
実験を、クエン酸マグネシウムおよびオキシトシンのさらなる量(例えば、6% クエン酸マグネシウム単独、20μg オキシトシン単独、および6% クエン酸マグネシウムおよび20μg オキシトシンの組み合わせ(オキシトシン 対 マグネシウムイオンが約1:281のモル比)を含む)で反復する。
実施例4:単一被験体症例研究
自閉症スペクトラム障害と診断されている被験体(例えば、小児)に、12~24IUのオキシトシンを含む液体製剤を3日間にわたって毎朝および毎晩、鼻腔内に投与する。被験体の社会的機能および不安を評価する。4日間の休薬後、その被験体に、3%~12% クエン酸マグネシウムを含む液体製剤を、3日間にわたって毎朝および毎晩鼻腔内に投与し、その被験体の社会的機能および不安を評価する。4日間の休薬後、その被験体に、12~24IUのオキシトシンおよび3%~12% クエン酸マグネシウムの組み合わせを含む液体製剤を、3日間にわたって毎朝および毎晩鼻腔内に投与し、その被験体の社会的機能および不安を評価する。
実施例5:ヒト臨床試験
プラセボを対照とした無作為化二重盲検並行デザインを使用して、オキシトシンおよびマグネシウムの組み合わせでの1日に2回の鼻腔内処置の6週間クールの効果を、18~55歳の年齢の自閉症スペクトラム障害と診断された男性および女性被験体において試験する。主要有効性エンドポイントは、二重盲検処置期間の前後で、自閉症診断観察検査II(Autism Diagnostic Observation Schedule-II)によって測定される社会的相互作用のスコアにおける変化である。二次的エンドポイントは、以下のうちの1またはこれより多くからなる:
(1)二重盲検処置期間の完了前および完了時に、自閉症診断観察検査IIによって測定されるとおりのコミュニケーションおよび限局された反復行動のスコアの変化;
(2)二重盲検処置期間の完了前および完了時に評価される状態特性不安尺度によって測定されるとおりの不安の変化;
(3)二重盲検処置期間の完了前および完了時に評価されるうつ病自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)によって測定されるとおりのうつ病の変化;
(4)二重盲検処置期間の完了前および完了時に評価される場の空気に対する視線の変化;
(5)治験期間の間に2週間ごとに記録されるビデオから分析した表情および声の表現における変化;ならびに
(6)治験期間の間に2週間ごとに評価される、臨床全般印象度および機能の全体的評価尺度における変化。
研究包含基準は、以下からなる:
1)DSM-Vに基づいて自閉症スペクトラム障害と診断された;
2)自閉症診断観察-改定版において互恵的な社会的相互作用(ドメインA)における質的異常のカットオフを上回る;ならびに
3)ウェクスラー成人知能検査IIIで測定した85を超える言語性IQおよび80を超える全検査IQ。
研究排除基準は、以下からなる:
1)包含基準1)以外の主な精神医学診断;
2)合併する精神医学診断に起因する現在の不安定性;
3)無作為化の1ヶ月以内での向精神薬の薬物療法または薬物用量の変化の履歴;
4)2種より多くのカテゴリーの向精神薬で現在処置中であること;
5)アトモキセチンまたはメチルフェニデートで現在処置中であること;
6)オキシトシンの継続処置の履歴;
7)オキシトシンに対する感受性の履歴;
8)5分間より長い意識消失を伴う発作または外傷性脳損傷の履歴;ならびに
9)アルコール依存症または物質乱用もしくは物質嗜癖の履歴。
実施例6:社会不安障害におけるオキシトシンおよびマグネシウムの効果
全般型社交恐怖症に関する精神障害の診断・統計マニュアル第4版の基準を満たす被験体を、鼻腔内プラセボ(生理食塩水)-処置A、オキシトシン単独(30IU)-処置B、マグネシウム単独(10%)-処置C、またはオキシトシン(30IU)+マグネシウム(10%)-処置Dでの処置に対して無作為化する。
1週間の単盲検プラセボならし期間の後に、患者は、処置A、B、C、またはDの11週間クールの二重盲検を受ける。患者は、およそ12時間の間隔で1日2回の処置を受ける。
必要に応じて、血清IL-6レベルを、その1週間のならし期間の最後および11週間のクールの最後に調べる。
臨床全般印象度全般改善度項目(Clinical Global Impression Global Improvement Item)(「かなり改善した」または「非常によく改善した」)に基づく応答者の数;リーボヴィッツ社会不安尺度合計スコアに関するベースラインからの平均変化を測定する。必要に応じて、IL-6の血清レベルを有効性の程度と相関させて、有効性の予測生体マーカーとしてIL-6の効果を決定する。
処置群の効果を分析する。
例示的な実施形態
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される。それらの実施形態の各々の特徴は、必要に応じて、および差し支えなければ、他の実施形態のいずれかと組み合わせ可能である。
実施形態1。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法であって、該方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドおよび該マグネシウムイオンの同時投与は、相乗効果または増強された効果をもたらす、方法が提供される。
実施形態2。実施形態1のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、前記マグネシウムイオンと同時に投与される。
実施形態3。実施形態1のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、前記マグネシウムイオンの投与の前または後に投与される。
実施形態4。実施形態1~3のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜投与を介して投与される。
実施形態5。実施形態4のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与される。
実施形態6。実施形態5のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンは、鼻腔内投与を介して投与される。
実施形態7。実施形態1~6のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgである。
実施形態8。実施形態1~7のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記マグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約68mgである。
実施形態9。実施形態1~8のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記マグネシウムイオンは、塩化マグネシウムおよび/またはクエン酸マグネシウムを使用して提供される。
実施形態10。実施形態1のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンの有効用量は、約1.1%~約1.6%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg~約120μgの該オキシトシンペプチドを含む。
実施形態11。実施形態1のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンの有効用量は、約1:40~約1:40000のオキシトシン:マグネシウムモル比を有する。
実施形態12。実施形態1~11のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、自閉症スペクトラム障害を処置するためである。
実施形態13。実施形態1~11のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を現す障害を処置するためである。
実施形態14。実施形態13のさらなる実施形態では、前記障害は、社会不安障害、強迫性障害、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、神経発達障害、注意欠陥多動性障害、プラダー・ウィリー症候群、ティモシー症候群、脆弱X症候群、レット症候群、またはウィリアムズ症候群である。
実施形態15。実施形態1~11のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するためである。
実施形態16。実施形態1~11のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、不安を処置するためである。
実施形態17。実施形態1~16のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシン(配列番号1)である。
実施形態18。一実施形態では、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害と関連する1もしくはこれより多くの症状を現す障害、社会性およびコミュニケーションの欠陥、または不安を処置するための方法であって、該方法は、その必要性のある被験体に、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを投与する工程を包含し、ここで該有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンは、液体製剤において鼻腔内に投与され、投与される該液体製剤の体積は、約5μL~約1000μLである、方法が提供される。
実施形態19。実施形態18のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgである。
実施形態20。実施形態18のさらなる実施形態では、前記マグネシウムイオンの有効用量は、約50μg~約68mgである。
実施形態21。実施形態18のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンの有効用量は、約1.1%~約1.6%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg~約120μgの該オキシトシンペプチドを含む。
実施形態22。実施形態18のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンの有効用量は、約1:40~約1:40000のオキシトシン:マグネシウムモル比を有する。
実施形態23。実施形態21または22のさらなる実施形態では、投与される前記液体製剤の体積は、約50μL~約200μLである。
実施形態24。実施形態23のさらなる実施形態では、前記液体製剤は、約50μL/単位の1~4単位において計量式鼻腔用デバイスを使用して投与される。
実施形態25。実施形態18~24のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、自閉症スペクトラム障害を処置するためである。
実施形態26。実施形態18~24のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、自閉症スペクトラム障害と関連する1またはこれより多くの症状を現す障害を処置するためである。
実施形態27。実施形態26のさらなる実施形態では、前記障害は、社会不安障害、強迫性障害、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、神経発達障害、注意欠陥多動性障害、プラダー・ウィリー症候群、ティモシー症候群、脆弱X症候群、レット症候群、またはウィリアムズ症候群である。
実施形態28。実施形態18~24のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、社会性およびコミュニケーションの欠陥を処置するためである。
実施形態29。実施形態18~24のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記方法は、不安を処置するためである。
実施形態30。実施形態18~29のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシン(配列番号1)である。
実施形態31。実施形態18のさらなる実施形態では、前記液体製剤は、鼻腔内投与用のデバイスの中に含まれる。
実施形態32。実施形態31のさらなる実施形態では、前記鼻腔内投与用のデバイスは、鼻腔用ポンプ装置である。
実施形態33。実施形態32のさらなる実施形態では、前記鼻腔用ポンプ装置は、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。
実施形態34。実施形態33のさらなる実施形態では、前記ポンプアクチュエータは、約50μLという特定体積を送達するように計量する。
実施形態35。実施形態32のさらなる実施形態では、前記鼻腔用ポンプ装置は、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。
実施形態36。実施形態32~35のいずれか1つのさらなる実施形態では、前記鼻腔用ポンプ装置は、以下:
(i)逆流を防止するためのフィルター、
(ii)無金属流路、および
(iii)ガンマ線に対して安定なプラスチック材料
のうちの1つ以上を備える。
実施形態37。一実施形態では、オキシトシンペプチドおよびマグネシウムイオンを含む組成物であって、ここで該オキシトシンペプチドおよび該マグネシウムイオンは、不安の処置に使用されたときに相乗効果または増強された効果をもたらす量で存在する、組成物が提供される。
実施形態38。実施形態37のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシン(配列番号1)である。
実施形態39。実施形態37のさらなる実施形態では、前記組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mLの前記オキシトシンペプチドを含む液体製剤である。
実施形態40。実施形態37のさらなる実施形態では、前記組成物は、約3mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムを提供する量で前記マグネシウムを含む液体製剤である。
実施形態41。実施形態37のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンは、約1:40~約1:40000のモル比を有する。
実施形態42。実施形態41のさらなる実施形態では、前記モル比は、約1:40~約1:800である。
実施形態43。実施形態41のさらなる実施形態では、前記モル比は、約1:800~約1:40000である。
実施形態44。実施形態37~43のいずれか1つのさらなる実施形態では、頭蓋顔面粘膜投与用のデバイスをさらに含む。
実施形態45。実施形態44のさらなる実施形態では、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウムイオンは、前記頭蓋顔面粘膜投与用のデバイスの中に含まれる。
実施形態46。実施形態45のさらなる実施形態では、前記デバイスは、鼻腔内投与用である。
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例証目的および例示目的でいくらか詳細に説明されたが、当業者には、ある特定の変更および改変が本発明から逸脱せずに実施され得ることが明らかであろう。ゆえに、それらの説明および例示は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
本明細書中に引用された特許、特許出願、書類および論文のすべてが、そのまま参照により援用される。