以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.通信システム
図1は、本実施形態に係る電子機器100を含む通信システム10の構成を示す図である。通信システム10は、電子機器100と、端末装置200を含む。なお、図1では端末装置200として、PC(Personal Computer)である2台の端末装置200-1及び200-2を示したが、電子機器100と無線接続可能な範囲に設けられる端末装置200の数は3台以上であってもよい。また、端末装置200はPCに限定されず、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置であってもよい。
電子機器100は、例えばプリンター(印刷装置)である。プリンターは、受信する印刷データ、又は、自身が記憶する印刷データに基づいて、印刷媒体に文字や画像等を印刷する装置である。或いは電子機器100は、スキャナー、ファクシミリ装置又はコピー機であってもよい。電子機器100は、複数の機能を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であってもよく、印刷機能を有する複合機もプリンターの一例である。
電子機器100と端末装置200は、無線による通信が可能である。ここでの無線通信は、例えばWi-Fi(登録商標)の規格に準拠した通信である。電子機器100は、無線ネットワークN1を構築するアクセスポイントとして機能し、無線ネットワークN1に接続した端末装置200と直接無線通信する。電子機器100がアクセスポイントとして機能するとは、電子機器100が内部アクセスポイントを動作させることを表す。また、直接無線通信するとは、電子機器100と端末装置200が、外部のアクセスポイントを介さずに通信を行うこと、換言すれば電子機器100の内部アクセスポイントを用いて通信を行うことを表す。
図2は、電子機器100の構成の一例を示すブロック図である。なお、図2は、印刷機能を有する電子機器100(プリンター、複合機)を示している。ただし、電子機器100をプリンター以外に拡張可能な点は上述したとおりである。電子機器100は、処理部110(プロセッサー)、操作部120(操作ボタン)、印刷部130、通信部140(通信インターフェース)、記憶部150(メモリー)を含む。
処理部110(プロセッサー、コントローラー)は、電子機器100の各部(通信部、記憶部、印刷部等)の制御を行ったり、本実施形態の各種の処理を行ったりする。例えば処理部110は、メインCPU(Central Processing Unit)、サブCPUなどの複数のCPU(MPU、マイコン)を含むことができる。メインCPU(メイン制御基板)は、電子機器100の各部の制御や全体的な制御を行う。サブCPUは、例えば電子機器100がプリンターである場合には、印刷についての各種の処理を行う。或いは通信処理のためのCPUを更に設けてもよい。
処理部110が行う本実施形態の各処理(各機能)は、プロセッサー(ハードウェアを含むプロセッサー)により実現できる。例えば本実施形態の各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するメモリー(記憶装置)により実現できる。ここでのプロセッサーは、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置(例えばIC等)や、1又は複数の回路素子(例えば抵抗、キャパシター等)で構成することができる。プロセッサーは、例えばCPUであってもよい。ただし、プロセッサーはCPUに限定されるものではなく、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはDSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。またプロセッサーはASICによるハードウェア回路でもよい。またプロセッサーは、複数のCPUにより構成されていてもよいし、複数のASIC(application specific integrated circuit)によるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。
操作部120は、操作ボタンを備える。図1の例では、操作部120は、操作ボタンとして、電源ボタンB12aと設定ボタンB12bとを備える。電源ボタンB12aは、電子機器100の電源のオンオフを切り替えるための操作ボタンである。設定ボタンB12bは、電子機器100を、無線ネットワークN1を構築するアクセスポイントとして機能させるための操作ボタンである。上述した図1は、例えば電子機器100の設定ボタンB12bが操作された状態でのシステム構成を表す図である。
印刷部130は、印刷媒体としてのロール紙にドットを形成するサーマルヘッド、ロール紙を搬送する搬送機構、ロール紙を切断する切断機構等を備える。印刷部130は、処理部110の制御で、ロール紙を搬送しつつ、ロール紙にドットを形成して画像を記録する。印刷部130は、処理部110の制御で、ロール紙を所定の位置で切断し、文字や画像等が印刷された紙片を発行する。
通信部140は、処理部110の制御で、所定の無線通信の規格に従って、無線通信を実行する。ここでの無線通信は、狭義にはWi-Fiの規格に準拠する通信である。本実施形態では、通信部140は、電子機器100の内部アクセスポイントを動作させることで無線ネットワークN1を構築し、無線ネットワークN1に接続した1又は複数の端末装置200と直接無線通信する。
記憶部150は、データやプログラムなどの各種の情報を記憶する。処理部110や通信部140は例えば記憶部150をワーク領域として動作する。記憶部150は、SRAM、DRAMなどの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置(HDD)などの磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、記憶部150はコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令が処理部110(プロセッサー)により実行されることで、電子機器100の各部(通信部、処理部)の機能が実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、処理部110(プロセッサー)のハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
記憶部150は、図2に示すように第1の記憶部151、第2の記憶部152を含む。第1の記憶部151は、ハードディスクや、EEPROM等の不揮発性メモリーであり、無線接続優先対象である端末装置200の情報を記憶する。第2の記憶部152は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリーであり、無線接続拒否対象である端末装置200の情報を記憶する。無線接続優先対象、無線接続拒否対象については後述する。
また記憶部150は、電子機器100の設定情報を記憶してもよい。記憶部150には、電子機器100の設定に関する設定項目と、設定項目に対応する設定値との組み合わせが記憶される。
図3は、端末装置200の構成の一例を示すブロック図である。端末装置200は、処理部210(プロセッサー)、表示部220(ディスプレイ)、操作部230(操作ボタン等)、通信部240(通信インターフェース)、記憶部250(メモリー)を含む。
処理部210(プロセッサー、コントローラー)は、表示部220、操作部230、通信部240、記憶部250の各部の制御を行う。
処理部210が行う本実施形態の各処理は、プロセッサーにより実現できる。例えば本実施形態の各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するメモリーにより実現できる。ここでのプロセッサーは、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子で構成することができる。プロセッサーは、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーはCPUに限定されるものではなく、GPU、或いはDSP等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。またプロセッサーはASICによるハードウェア回路でもよい。またプロセッサーは、複数のCPUにより構成されていてもよいし、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。
表示部220は、各種情報をユーザーに表示するディスプレイ等で構成され、操作部230は、ユーザーからの入力操作を受け付けるボタン等で構成される。表示部220及び操作部230は、タッチパネルにより一体的に構成してもよい。なお、端末装置200は、表示以外の態様でユーザーに対する報知を行う報知部を含んでもよい。報知部は、音による報知を行うスピーカーであってもよいし、振動による報知を行う振動部であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。振動部は、振動モーター等により実現される。
通信部240は、処理部210の制御で、所定の無線通信(狭義にはWi-Fi)の規格に従って、無線通信を行う。通信部240は、電子機器100の内部アクセスポイントと、Wi-Fi(無線LAN)に準拠する規格に従って通信する。
記憶部250(記憶装置、メモリー)は、データやプログラムなどの各種の情報を記憶する。処理部210や通信部240は記憶部250をワーク領域として動作する。記憶部250は、半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、磁気記憶装置であってもよいし、光学式記憶装置であってもよい。
記憶部250は、設定用アプリケーションを記憶する。設定用アプリケーションは、電子機器100の初期設定や設定変更等の操作を実行するためのアプリケーションであり、初期設定や設定変更等に係るユーザーインターフェースを提供する。
次に、本実施形態の電子機器100が使用される具体的な状況について説明する。ただし、以下の説明は電子機器100の使用態様の一例であり、他の態様で電子機器100が用いられることは妨げられない。
本実施形態の電子機器100は、POS(Point Of Sale)システムで用いられるプリンターである。POSシステムとは、ショッピングセンターや、コンビニエンスストア、車内販売等の小売業や、レストランや、喫茶店、居酒屋等の飲食業等の業務で利用されるシステムであり、顧客が購入した商品に応じて会計を行う機能や、会計に応じてレシートを発行する機能等を有する。
電子機器100をPOSシステムで使用する場合、種々の初期設定が必要となる。初期設定とは、電子機器100をPOSシステムに導入する際、端末装置200により実行される電子機器100に対する初回の設定である。また初期設定後にも、適宜、設定内容の変更を行うための設定処理が行われる。本実施形態の電子機器100は、図1に示すように、無線ネットワークN1に接続した端末装置200と直接無線通信することで、初期設定等の設定処理が実行される。そして、初期設定が完了した電子機器100がPOSシステムに導入される。
図4は、設定処理後の電子機器100を含む通信システムであるPOSシステム11の構成例である。POSシステム11では、POSプリンターである電子機器100が外部アクセスポイントAPと接続され、当該外部アクセスポイントAPに、印刷実行用の端末装置300が接続される。印刷実行用の端末装置300は、本実施形態に係る端末装置200であってもよいし、本実施形態に係る端末装置200とは異なる装置であってもよい。即ち、本実施形態に係る端末装置200は、設定処理を行う専用端末であってもよいし、設定及び印刷実行の両方を行う端末装置であってもよい。本実施形態の電子機器100は、アクセスポイントとして機能する第1の通信モードと、外部アクセスポイントAPに接続する第2の通信モードを切り替え可能に構成される。第1の通信モードとは、具体的にはアドホックモードであり、図1に対応する。第2の通信モードとは、具体的にはインフラストラクチャーモードであり、図4に対応する。
外部アクセスポイントAPは、外部アクセスポイントAPにより構築される無線ネットワークN2内の装置の無線通信を中継する装置である。電子機器100と端末装置300とは、互いが無線ネットワークN2に接続することで、外部アクセスポイントAPを介して通信可能となる。なお、無線ネットワークN2に接続することは、外部アクセスポイントAPと通信接続することに相当する。
無線ネットワークN2を構築する外部アクセスポイントAPは、無線ネットワークN2を識別するための識別情報であるネットワーク識別情報を有する。また、外部アクセスポイントAPは、無線ネットワークN2へ接続するための認証情報を有する。本実施形態では、無線ネットワークN2を、IEEE802.11xで規定される無線LAN(Local Area Network)とする。この場合において、ネットワーク識別情報は、SSIDである。また、認証情報は、パスフレーズ及び暗号化方式を含む。パスフレーズは、無線LANによる通信を暗号化するために使用される暗号鍵である。パスフレーズは、パスワードであってもよい。暗号化方式は、例えばWEP(Wired Equivalent Privacy)、WPA(Wi-Fi Protected Access)、或いは、これらを拡張/改良した暗号化方式が挙げられる。
端末装置200を用いた初期設定において、外部アクセスポイントAPのSSID及び認証情報を含む設定情報が、電子機器100の記憶部150に記憶される。電子機器100の通信部140は、設定されたSSID及び認証情報を用いて、無線ネットワークN2に接続する。設定処理の詳細については、図5~図7を用いて後述する。また、端末装置300(300-1,300-2)は、外部アクセスポイントAPのSSID及び認証情報を取得することにより、無線ネットワークN2に接続する。端末装置300は、電子機器100から外部アクセスポイントAPのSSID及び認証情報を取得することが可能である。
端末装置300は、無線ネットワークN2を用いて、ジョブデータを電子機器100に送信し、電子機器100は当該ジョブデータに基づきジョブを実行する。ジョブデータとは具体的には印刷データであり、ジョブとは印刷を実行するジョブを表す。
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について説明する。まず本実施形態の概要について説明した後、記憶部150の構成例、端末装置200を介して行われる電子機器100の設定処理の例について説明する。その後、状況に応じた処理の具体的な流れについて、図8~図12のシーケンス図を用いて説明する。
2.1 概要
一般に、電子機器100がアクセスポイントとして機能する場合、無線ネットワークN1に接続可能な端末装置200の数には限りがある。なお、ここでは「無線ネットワークN1に接続する」ことは「電子機器100の内部アクセスポイントに接続する」ことに相当するため、電子機器100の内部アクセスポイントに接続可能な端末装置200の数に上限がある、と言い換えることが可能である。そのため、電子機器100の通信部140が内部アクセスポイントを動作させても、ユーザーの意図しない端末装置200が内部アクセスポイントに接続していることに起因して、適切な端末装置200が内部アクセスポイントに接続できない場合がある。上述した電子機器100の初期設定や設定変更の例であれば、設定の意思がある端末装置200、即ち設定用アプリケーションが起動された端末装置200が内部アクセスポイントに接続できない場合がある。
例えば、端末装置200-1が、設定用アプリケーションが起動された端末装置200であり、端末装置200-2が、設定用アプリケーションが起動されていない端末装置200であるとする。また、電子機器100の内部アクセスポイントに接続可能な端末装置200の数が1であるとする。
端末装置200-2が以前に内部アクセスポイントに接続したことがあると、端末装置200-2の記憶部250は、電子機器100の内部アクセスポイントのSSID及びパスフレーズを記憶している。そのため、電子機器100の内部アクセスポイントが起動された場合、端末装置200-2は、記憶しているSSID及びパスフレーズを用いて、内部アクセスポイントへの接続を試行する。OS(Operating System)等の設定にもよるが、記憶しているSSID及びパスフレーズを用いた接続試行は、ユーザーの操作を必要とせず、自動的に行われる場合もある。
結果として、端末装置200-2を使用するユーザーは電子機器100の設定を行う意思がないにもかかわらず、端末装置200-2が、端末装置200-1より先に、内部アクセスポイントに接続する可能性がある。端末装置200-2が端末装置200-1より先に内部アクセスポイントに接続すると、内部アクセスポイントに接続可能な端末装置200の数が1であるため、端末装置200-1は、内部アクセスポイントに接続できず、設定処理を実行できない。
例えば、電子機器100の設定担当者が、端末装置200-2のユーザーから端末装置200-1のユーザーに変更された場合に、上記の問題が発生する。
或いは、複数の電子機器100で、SSID及びパスフレーズの初期値が共通化されている場合も考えられる。この場合、所与のSSID及びパスフレーズを複数の電子機器100の設定処理に流用できるため、ユーザーの利便性向上が可能である。より具体的には、設定処理のための接続に際して、ユーザーはSSIDの選択やパスフレーズの入力を省略できる。この例において、端末装置200-2を用いて所与の電子機器100(第1の電子機器)の設定処理が行われた場合、端末装置200-2は、第1の電子機器の内部アクセスポイントのSSID及びパスフレーズを記憶する。その後、異なる電子機器100(第2の電子機器)の設定を端末装置200-1から行おうとした場合、端末装置200-2が保持しているSSID及びパスフレーズは、第2の電子機器と共通であるため、端末装置200-2が、端末装置200-1より先に、第2の電子機器に接続する可能性がある。
このようなケースは、ユーザーが複数の電子機器100を導入しようとした場合に発生しうる。或いは、複数の電子機器100を導入する場合に、初期設定を専門業者(電子機器100のメーカーや、販売代理店等)が代行することも考えられる。専門業者の使用する端末装置200では、多数の電子機器100に対して設定処理を行うことになるため、上述したような問題が特に発生しやすい。
これに対して、特許文献1のように、アクセスポイントとして機能する電子機器100のSSID、即ち内部アクセスポイントのSSIDを動的に変更する手法が考えられる。SSIDを変更すれば、端末装置200-2が記憶しているSSIDと変更後のSSIDが一致しなくなるため、端末装置200-2と電子機器100との接続が確立されず、所望の端末装置200(端末装置200-1)の接続確立が妨げられない。
しかし電子機器100の内部アクセスポイントのSSIDが変更される場合、端末装置200が電子機器100と無線接続を行うためには、変更後のSSIDを知らなくてはならない。電子機器100が液晶パネル等の表示部を有する場合、当該表示部にSSIDを表示することで、端末装置200のユーザーにSSIDを通知できる。しかし、図1に示したPOSシステム用のプリンターのように、電子機器100が表示部を有さない場合もある。電子機器100がプリンターである場合、SSIDを印刷することで通知することも可能であるが、SSIDを変更する度に紙を消費することになり、好ましくない。また、端末装置200側でも、変更後のSSIDの入力操作、或いは選択操作が必要となるため、ユーザーの利便性が低い。
本実施形態の電子機器100は、図2に示したように、電子機器の内部アクセスポイントを用いた無線通信を行う通信部140と、通信部140の通信制御を行う処理部110を含む。そして通信部140は、接続可能な端末装置200の上限値が設定されており、且つ識別子が固定である内部アクセスポイントを用いた無線通信を行う。処理部110は、内部アクセスポイントを用いて端末装置200との無線接続を確立してから、端末装置200により電子機器100に対する設定処理が行われない時間が第1閾値Th1を超えた場合、端末装置200との無線接続を切断する処理、及び、端末装置200を無線接続拒否対象に設定する処理を行う。そして処理部110は、無線接続拒否対象に設定された端末装置200からの接続要求を拒否する制御を行う。
ここで、内部アクセスポイントの識別子とは、当該内部アクセスポイントを特定するための情報であり、具体的には上述してきたSSIDである。また、設定処理とは、電子機器100の設定を行う処理であり、詳細については図5~図7を用いて後述する。
このように、設定処理を行わない端末装置200との無線接続を切断するとともに、当該端末装置200からの接続要求を拒否することで、不適切な端末装置200により、無線接続が占有されることを抑制できる。結果として、設定処理を行う適切な端末装置200と電子機器100との接続が阻害されることを抑制可能である。
本実施形態では、端末装置200が無線接続拒否対象に設定されているか否かを、接続要求を拒否する条件として用いる。さらに、端末装置200を無線接続拒否対象に設定するか否かを、接続確立後、設定処理が行われない時間に基づいて判定する。このようにすれば、接続が確立された端末装置200のユーザーが、設定処理を意図しているか否かを適切に判定可能である。なお、詳細については後述するが、ここでの設定処理は設定を変更する処理に限定されず、現在の設定内容を取得する処理等、設定に関する種々の処理を含む。
また処理部110は、端末装置200との無線接続を確立してからの経過時間が第2閾値Th2以下の期間に、端末装置200により電子機器100に対する設定処理が行われた場合、当該端末装置200を無線接続優先対象に設定する処理を行う。そして処理部110は、無線接続優先対象に設定された端末装置200との無線接続の確立を、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200との無線接続の確立よりも優先させる。
このように電子機器100は、接続が確立された端末装置200のユーザーが、設定処理を意図していると判定された場合に、当該端末装置200を他の端末装置200に比べて優先的に接続対象とする。これにより、ユーザーによる設定処理を適切に実行させることが可能になる。
設定処理では、一度設定処理を行った後、設定内容を微調整する場合も多い。図5に示すように、印字の速度や濃度を設定した場合、テスト印刷を行い、その結果に応じて、適切な速度や濃度となるように設定内容を微調整する。或いは図6に示すように、ロゴを設定した場合、テスト印刷の結果に応じて、ロゴが所望の位置に、所望の態様で表示されるように設定内容を微調整する。このように、一度設定処理を行った端末装置200は、再度同じ電子機器100を対象として設定処理を行う蓋然性が高い。そのため、所定時間内に設定処理を行ったことを条件に、端末装置200を無線接続優先対象に設定すれば、適切な通信制御を実現可能である。
なお、ここでの「優先させる」とは、無線接続優先対象に設定された端末装置200との接続が確立される蓋然性を、他の端末装置200に比べて高くすることを表す。図11を用いて後述するように、所与の期間において無線接続優先対象に設定された端末装置200からの接続要求を許可し、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200からの接続要求を拒否することで、無線接続優先対象である端末装置200の接続確立を優先してもよい。
本実施形態では、端末装置200が無線接続拒否対象か、無線接続優先対象か、いずれでもないかに応じて、当該端末装置200からの接続要求に対する応答を変化させる。また、端末装置200との接続が確立された場合、接続確立からの経過時間に応じて、当該端末装置200を無線接続拒否対象又は無線接続優先対象に設定したり、設定を解除する。これにより、識別子が固定であり、且つ接続台数に上限がある場合にも、適切な端末装置200との接続を確立することが可能になる。
2.2 電子機器の記憶部の構成例
図2に示したように、電子機器100は、無線接続拒否対象に設定された端末装置200の情報を記憶する第1の記憶部151と、無線接続優先対象に設定された端末装置200の情報を記憶する第2の記憶部152を含む。ここで、第1の記憶部151は、揮発性メモリーであり、第2の記憶部152は、不揮発性メモリーである。
このようにすれば、無線接続拒否対象と無線接続優先対象とで、情報の取り扱いに差を設けることが可能になる。以下、無線接続拒否対象に設定された端末装置200の情報を第1のリスト情報と表記し、無線接続優先対象に設定された端末装置200の情報を第2のリスト情報と表記する。
第1のリスト情報は、無線接続拒否対象に設定された端末装置200の識別情報を含む。ここでの端末装置200の識別情報は、端末装置200のMACアドレスや、機器固有の個体番号等である。また、第1のリスト情報は、最大M台分の識別情報を保持でき、ここでのMは任意の整数を設定可能である。第2のリスト情報は、無線接続優先対象に設定された端末装置200の識別情報を含む。また、第2のリスト情報は、最大N台分の識別情報を保持でき、ここでのNは電子機器100の内部アクセスポイントに同時に接続可能な上限台数に対応する数である。以下、後述する変形例を除いてN=1である例について説明する。
第1の記憶部151は揮発性メモリーであるため、第1のリスト情報は、電子機器100の電源をオフにすることでリセットが可能である。そのため、設定処理を行う端末装置200が誤って無線接続拒否対象に設定された場合にも、電子機器100の電源を入れ直すことで、接続確立が可能になる。電子機器100の設定処理を行うために、電子機器100と端末装置200の接続を確立した後に、突発的な事情で端末装置200のユーザーが離席したり、電話対応等の他の作業を行うことで、設定処理が行われない時間が第1閾値を超えてしまう場合がある。このような場合にも、端末装置200のユーザーは、自席に戻った後、或いは電話対応等の作業の完了後に、一旦電子機器100の電源を入れ直すことで、設定作業を開始可能になる。
また、第2の記憶部152は不揮発性メモリーであるため、第2のリスト情報は、電子機器100の電源をオフにしても失われない。そのため、電子機器100の電源がオンになった場合に、無線接続優先対象との接続が優先的に確立され、ユーザーによる設定処理をスムーズに行わせることが可能になる。電子機器100の構成によっては、外部アクセスポイントAPに接続するか、自身の内部アクセスポイントを動作させるかを変更する際、即ち通信モードを変更する際に、再起動が必要になるものもある。この場合、設定処理を行うために内部アクセスポイントを起動すると、必ず電子機器100の電源が一旦オフにされる。そのため、設定処理の開始時に適切な端末装置200との接続を優先的に確立するためには、無線接続優先対象の情報を不揮発性メモリーに記憶する必要性が高い。
また本実施形態の手法は、電子機器100の内部アクセスポイントを用いて端末装置200と無線通信を行う通信部140と、通信部140の通信制御を行う処理部110と、無線接続拒否対象に設定された端末装置200の情報である第1のリスト情報を記憶する揮発性メモリー(第1の記憶部151)と、無線接続優先対象に設定された端末装置200の情報である第2のリスト情報を記憶する不揮発性メモリー(第2の記憶部152)と、を含む電子機器100に適用できる。電子機器100の通信部140は、接続可能な端末装置200の上限値が設定されており、且つ識別子が固定である内部アクセスポイントを用いた無線通信を行い、処理部110は、第1のリスト情報及び第2のリスト情報の少なくとも一方に基づく判定処理を行い、判定結果に基づいて端末装置200からの接続要求を許可するか否かを決定する。
2.3 設定処理
次に、設定処理について詳細に説明する。ここでは電子機器100がプリンターである例について説明する。本実施形態では、プリンターに関する設定項目は、印刷に係る設定項目と、通信に係る設定項目とに大別される。印刷に係る設定項目は、印字濃度や、印字速度等の印刷動作の設定に係る設定項目や、余白等のプリンターが印刷する文字や画像等の設定に係る設定項目を含む。通信に係る設定項目は、SSIDや、認証情報、プリンターのIPアドレス等の通信の設定に係る設定項目を含む。
図5~図7は、設定処理を行う際に端末装置200の表示部220に表示される設定画面の例である。図5は、印刷制御に関する設定項目、及び設定値を表示する画面の例である。図5では、設定項目として、「用紙幅-桁数」、「印字速度」、「印字濃度」の3つがあり、それぞれ現在の設定値として「80mm-42桁」、「レベル13」、「70%」という値が設定されている。図5の場合、各設定値の表示領域に対する選択操作を行うことで、プルダウン式のメニューが表示される。ユーザーは、当該プルダウン式のメニューから所望の値を選択し、画面右下の設定ボタンを押下する。これにより、端末装置200から電子機器100に対して、設定値の更新指示が行われ、電子機器100の記憶部150では、設定値が更新後の値に上書きされる。
また、図6は印刷媒体の上部に所定のロゴを表示する場合の、ロゴの設定処理を行う画面の例である。図6の画面により、ロゴに対応する画像ファイルの選択、ロゴの表示倍率、表示位置の設定が可能である。所望の設定値を選択した後に、「プリンターに登録」ボタンが押下されることで、電子機器100の記憶部150に記憶される設定値が更新される。
図7は、通信制御に関する設定項目、及び設定値を表示する画面の例である。通信制御に関する設定項目とは、「バンド」、「通信モード」、「SSID」等であり、図7の例ではそれぞれ現在の設定値として「2.4GHz帯」、「インフラストラクチャー」、「Printer」という値が設定されている。なお、図7に示すように、「通信規格」、「チャンネル」、「セキュリティータイプ」等の設定項目を追加可能である。
「通信モード」が「インフラストラクチャー」である場合、電子機器100は、外部アクセスポイントAPに対して接続を行う。「通信モード」が「アドホック」である場合、電子機器100は、内部アクセスポイントを動作させ、端末装置200からの接続を受け付ける。通信モードは、設定画面から変更されてもよいし、図1に示す設定ボタンB12bの操作により変更されてもよい。図7では不図示であるが、電子機器100が「インフラストラクチャー」モードで動作する場合に、接続先となる外部アクセスポイントAPのSSIDやパスフレーズを、設定項目に追加してもよい。
「SSID」とは、電子機器100の内部アクセスポイントのSSIDであり、本実施形態では固定であることが想定される。ただし、本実施形態のSSIDは、電子機器100により自動的に変更されないものであればよく、ユーザーが自身の操作に基づいてSSIDを変更することは妨げられない。
なお、図5~図7では、設定用アプリケーションで用いられる画面の例を説明した。ただし、設定処理は専用のアプリケーションではなく、Webブラウザー等により実行されてもよい。電子機器100の通信部140はWebサーバーを起動し、端末装置200の通信部240は、Webブラウザーを用いて電子機器100との通信を行う。この場合、Webブラウザーの表示領域に、図5~図7と同様の画面が表示される。専用の設定用アプリケーションと、Webブラウザーとで、設定用の画面や、設定可能な項目を変更してもよい。
本実施形態における設定処理とは、狭義には図5~図7を用いて説明した設定画面を用いて設定値を変更し、変更結果を電子機器100に反映させる処理であるが、これには限定されない。例えば設定処理は、端末装置200の設定用アプリケーションを起動したり、Webブラウザーを用いて電子機器100のWebサーバーに接続する処理を含んでもよい。
図5~図7からわかるように、設定処理において、端末装置200は現在の設定値を取得し、ユーザーに対して提示する処理を行う。つまり設定値の変更前であっても、端末装置200と電子機器100の間での通信が行われ、電子機器100では設定用アプリケーションやWebブラウザーによる接続があったことを検出できる。端末装置200のユーザーに設定処理を行う意図がない場合、そもそも設定用アプリケーションの起動等が行われない。つまり電子機器100からすれば、設定用アプリケーション等を用いた接続があった時点で、端末装置200のユーザーに設定を行う意図があると推定できる。つまり「設定処理が行われたか否か」の判定は、実際に設定値が変更されたか否かの判定により実現されてもよいし、端末装置200の設定用アプリケーション等からの接続があったか否かの判定により実現されてもよい。
2.4.処理の流れ
以下、状況に応じた処理シーケンスについて説明する。
2.4.1 第1のリスト情報及び第2のリスト情報が空の場合
図8は、第1のリスト情報及び第2のリスト情報が空である場合の処理を説明するシーケンス図である。第1のリスト情報及び第2のリスト情報が空とは、接続要求をしてくる端末装置200が、無線接続拒否対象と無線接続優先対象のいずれにも設定されていないことに対応する。また、第2のリスト情報が空、且つ第1のリスト情報が空でない場合であって、接続要求をしてくる端末装置200が無線接続拒否対象でない場合も、図8と同様に考えられる。
まずユーザーは電子機器100の電源をオンにする(S101)。この時点で、第1のリスト情報はリセットされて空になっている。また、図8の例ではそれ以前に端末装置200が無線接続優先対象に設定されておらず、第2のリスト情報も空であるケースを想定している。
この状態において、設定処理を行わない端末装置200-2が、自身が記憶しているSSID及びパスフレーズを用いて電子機器100の内部アクセスポイントに対する接続要求を行った(S102)。電子機器100の処理部110は、まず端末装置200-2が無線接続優先対象に設定されてるか否かを判定する(S103)。具体的には、第2のリスト情報に含まれる識別情報と、端末装置200-2の識別情報の照合処理を行う。端末装置200-2の識別情報は、S102の接続要求の際に取得可能である。例えば、端末装置200-2は、電子機器100の内部アクセスポイントのSSIDの選択後、自身の識別情報を含むマネージメントフレームを電子機器100に対して送信する。図8では、照合処理の結果、第2のリスト情報が空であると判定された(S104)。
S103、S104の処理により、端末装置200-2は、無線接続優先対象ではないことがわかる。ただし、端末装置200-2以外の装置が無線接続優先対象に設定されていないこともわかるため、端末装置200-2の接続要求を許可する余地は残っている。
次に電子機器100の処理部110は、端末装置200-2が無線接続拒否対象に設定されてるか否かを判定する(S105)。具体的には、第1のリスト情報に含まれる識別情報と、端末装置200-2の識別情報の照合処理を行う。図8では、照合処理の結果、端末装置200-2の識別情報は第1のリスト情報に含まれていないと判定された(S106)。
S105、S106により、電子機器100の処理部110は、端末装置200-2からの接続要求を、積極的に拒否する必要はないと判定できる。よってS103~S106の処理に基づいて、電子機器100の処理部110は、端末装置200-2からの接続要求を許可する制御を行い(S107)、電子機器100と端末装置200-2との接続が確立される。
しかし、端末装置200-2のユーザーは設定処理を行う意図が無かったため、接続が確立されてからの経過時間が第1閾値Th1を超えても、設定処理が行われなかった(S108)。ここでの第1閾値Th1は数十秒程度であるが、具体的な値については種々の変形実施が可能である。上述したように、「設定処理が行われたか否か」の判定は、端末装置200の設定用アプリケーション等からの接続があったか否かの判定により実現されてもよい。この場合、第1閾値Th1が数十秒程度の短い時間であっても、端末装置200のユーザーに設定処理を行う意図があるか否かを適切に判定できる。
電子機器100の処理部110は、端末装置200-2との無線接続を切断し(S109)、さらに端末装置200-2を無線接続拒否対象に登録する(S110)。S110の処理は、具体的には第1のリスト情報に、端末装置200-2の識別情報を追加する処理である。
また、ユーザーは端末装置200-1に対して電子機器100と接続するための操作を行い(S111)、端末装置200-1が、電子機器100の内部アクセスポイントに対する接続要求を行う(S112)。これに対して、電子機器100は、端末装置200-1の識別情報と第2のリスト情報の照合処理(S113,S114)、端末装置200-1の識別情報と第1のリスト情報の照合処理(S115,S116)を行う。
図8の場合、S113~S116の処理は、S103~S106と同様となり、電子機器100の処理部110は、端末装置200-1からの接続要求を許可する制御を行い(S117)、電子機器100と端末装置200-1との接続が確立される。
端末装置200-1のユーザーは、設定処理を行う意図があるため、無線接続の確立からの経過時間が第2閾値Th2以下の期間に、設定処理が行われる(S118)。この場合、端末装置200-1は、微調整等のために電子機器100に対する設定処理を繰り返す蓋然性が高いと判定される。よって電子機器100は、端末装置200-1を無線接続優先対象に登録する(S119)。S119の処理は、具体的には第2のリスト情報に、端末装置200-1の識別情報を追加する処理である。
電子機器100の使用が完了したら、ユーザーは電子機器100の電源をオフにする(S120)。
ここで、S108~S110の処理で用いられる第1閾値Th1と、S118、S119の処理で用いられる第2閾値Th2は、Th2≦Th1である。Th2=Th1の場合、接続確立から設定処理が行われるまでの経過時間がTh1を超えた端末装置200は無線接続拒否対象に設定され、経過時間がTh1(=Th2)以下である端末装置200は無線接続優先対象に設定される。即ち、無線接続拒否対象と無線接続優先対象のいずれにも設定されていない端末装置200との接続が確立された場合、設定処理の状況に応じて、当該端末装置200は、無線接続拒否対象と無線接続優先対象のいずれか一方に設定される。
Th2<Th1の場合、接続確立から設定処理が行われるまでの経過時間がTh1を超えた端末装置200は無線接続拒否対象に設定され、経過時間がTh2以下である端末装置200は無線接続優先対象に設定され、経過時間がTh2より大きくTh1以下である端末装置200は無線接続拒否対象と無線接続優先対象のいずれにも設定されない。この場合、無線接続優先対象の設定条件が厳しくなり、より設定処理を行う意図が強いと判定される端末装置200を無線接続優先対象に設定することが可能になる。
2.4.2 第1のリスト情報に登録済み
図9は、第1のリスト情報に無線接続拒否対象の端末装置200の識別情報が登録済みであり、且つ無線接続拒否対象に設定された端末装置200から接続要求があった場合の処理を説明するシーケンス図である。
電子機器100の電源がオンにされ(S201)、第1のリスト情報がリセットされた後、端末装置200-2を無線接続拒否対象に登録する処理、即ち端末装置200-2の識別情報を第1のリスト情報に追加する処理が行われた(S202)。S202の処理は、図8のS102~S110の処理に対応する。
上述したように、OS等の設定によっては、無線接続が切断(図8のS109)された後も、同じSSID及びパスフレーズを用いて、自動的に接続が試行される。即ち、端末装置200-2からの接続要求が行われる(S203)。この場合、電子機器100の処理部110は、まず端末装置200-2が無線接続優先対象に設定されてるか否かを判定する(S204)。その結果、第2のリスト情報が空である、即ち、端末装置200-2の識別情報は第2のリスト情報に含まれていないと判定される(S205)。
S204、S205の処理は、図8のS103、S104と同様であり、端末装置200-2は無線接続優先対象ではないこと、端末装置200-2以外の装置が無線接続優先対象に設定されていないことがわかるため、この時点では、端末装置200-2の接続要求を許可する余地は残る。
次に電子機器100は、端末装置200-2が無線接続拒否対象に設定されてるか否かを判定する(S206)。具体的には、第1のリスト情報に含まれる識別情報と、端末装置200-2の識別情報の照合処理を行う。図9の場合、端末装置200-2の識別情報が第1のリスト情報に含まれると判定された(S207)。
S206、S207により、端末装置200-2は設定処理を行う端末装置ではなく、積極的に接続要求を拒否すべき対象であると判定できる。よって電子機器100の処理部110は、端末装置200-2からの接続要求を拒否する制御を行う(S208)。
図9に示した処理により、電子機器100は、不適切な端末装置200からの接続要求を拒否するため、当該不適切な端末装置200により無線接続が占有されることを抑制できる。
2.4.3 第2のリスト情報に登録済み
図10は、第2のリスト情報に無線接続優先対象の端末装置200の識別情報が登録済みである場合の処理を説明するシーケンス図である。
まず、端末装置200-1を無線接続優先対象に登録する処理、即ち端末装置200-1の識別情報を第2のリスト情報に追加する処理が行われ(S301)、その後、電子機器100の電源がオフにされた。S301の処理は、図8のS111~S119の処理に対応する。
その後、電子機器100の電源がオンにされる(S302)。上述したように、第2の記憶部152は不揮発性メモリーであるため、電子機器100の電源が一旦オフにされたとしても、第2のリスト情報はリセットされずに保持される。
電子機器100がアクセスポイントとしての動作を開始することで、端末装置200-2からの接続要求が行われる(S303)。この場合、電子機器100は、まず端末装置200-2が無線接続優先対象に設定されてるか否かを判定する(S304)。その結果、第2のリスト情報に既に識別情報が登録済みであり、且つ、当該識別情報は端末装置200-2の識別情報と一致しないと判定される(S305)。
S304、S305の処理により、端末装置200-2は無線接続優先対象ではないこと、及び端末装置200-2以外の装置が無線接続優先対象に設定されていることがわかる。ここでは電子機器100の内部アクセスポイントに接続可能な上限台数が1台であるため、仮に端末装置200-2の接続要求を許可してしまうと、無線接続優先対象に設定された端末装置200-1から接続要求があった場合に、当該端末装置200-1との無線接続を確立できなくなってしまう。
よって電子機器100の処理部110は、端末装置200-2が無線接続拒否対象に設定されてるか否かを判定することなく、端末装置200-2からの接続要求を拒否する制御を行う(S306)。
また、ユーザーは端末装置200-1に対して電子機器100と接続するための操作を行い(S307)、端末装置200-1が、電子機器100の内部アクセスポイントに対する接続要求を行う(S308)。これに対して、電子機器100は、端末装置200-1が無線接続優先対象に設定されてるか否かを判定する(S309)。その結果、第2のリスト情報に端末装置200-1の識別情報が登録済みであり、端末装置200-1は無線接続優先対象であると判定される(S310)。
よって電子機器100の処理部110は、端末装置200-1が無線接続拒否対象に設定されてるか否かを判定することなく、端末装置200-1からの接続要求を許可する制御を行い(S311)、電子機器100と端末装置200-1との接続が確立される。
端末装置200-1のユーザーは、設定処理を行う意思があるため、設定処理が行われる(S312)。なお、後述する図12の処理を考慮すれば、端末装置200-1による設定処理は、無線接続の確立からの経過時間が第4閾値Th4以下の期間に行われる。第4閾値については、図12を用いて後述する。
2.4.4 第2のリスト情報に登録済みある場合の例外処理1
図11は、第2のリスト情報に無線接続優先対象の端末装置200の識別情報が登録済みである場合の、第1の例外処理を説明するシーケンス図である。
図11のS401~S406については、図10のS301~S306と同様である。即ち、端末装置200-1が無線接続優先対象に登録されている場合、第2のリスト情報を用いた照合処理により、他の端末装置200-2からの接続要求は拒否される。
ただし図11のケースでは、S402で電源がオンになってからの経過時間が第3閾値Th3を超えても、電子機器100と端末装置200の無線接続が確立されなかった(S407)。端末装置200-1以外の装置からの接続要求がS403~S406と同様の流れで拒否されることに鑑みれば、S407は、電子機器100と無線接続優先対象である端末装置200-1との無線接続が、第3閾値Th3だけの時間を経過しても確立されなかったことに対応する。
具体的には、担当者の配置変更等により、端末装置200-1が移動されて、電子機器100との無線通信が行われない場合が考えられる。或いは端末装置200-1がスマートフォン等の携帯端末装置であれば、ユーザーが端末装置200-1を持ったまま離席している場合も考えられる。
いずれにせよ、S407では、無線接続優先対象である端末装置200-1からの接続要求が行われる蓋然性が低いと推定できる。このような場合にまで、端末装置200-1を優先し、他の端末装置200からの接続要求を拒否する合理性は低い。
よって電子機器100の処理部110は、端末装置200-2からの接続要求が行われた場合に(S408)、第2のリスト情報の照合処理をスキップして、端末装置200-2が無線接続拒否対象に設定されてるか否かを判定する(S409)。その結果、端末装置200-2が無線接続拒否対象でなければ(S410)、端末装置200-2からの接続要求を許可する制御を行い(S411)、電子機器100と端末装置200-2との接続が確立される。
図11に示したように、電子機器100の処理部110は、無線接続優先対象に設定されている端末装置200(200-1)が存在する場合、電子機器100の電源オンからの経過時間が第3閾値Th3を超えるまで、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200(200-2)からの接続要求を拒否する制御を行う。さらに言えば、電子機器100の電源オンからの経過時間が第3閾値Th3を超えた場合、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200からの接続要求が許可される可能性がある。
即ち、本実施形態において、「無線接続優先対象に設定された端末装置200との無線接続の確立を、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200との無線接続の確立よりも優先させる」との制御は、上記第3閾値Th3を超えるまでの期間において、無線接続優先対象の端末装置200からの接続要求を許可し、他の端末装置200からの接続要求を拒否する制御により実現される。換言すれば、無線接続優先対象の端末装置200は第3閾値Th3に相当する時間の経過前に接続要求を行えば、電子機器100との無線接続の確立が保証されることになる。
このようにすれば、無線接続優先対象の端末装置200との無線接続の確立を優先しつつ、状況に応じて他の端末装置200との無線接続も確立できるため、柔軟性の高い通信制御が可能になる。
2.4.5 第2のリスト情報に登録済みある場合の例外処理2
図12は、第2のリスト情報に無線接続優先対象の端末装置200の識別情報が登録済みである場合の、第2の例外処理を説明するシーケンス図である。
図12のS501~S507については、図10のS301、S302、S307~S311と同様である。即ち、端末装置200-1が無線接続優先対象に設定されている場合、第2のリスト情報を用いた照合処理により、当該端末装置200-1からの接続要求は許可され、電子機器100との無線接続が確立される。
ただし図12のケースでは、電子機器100と端末装置200-1の接続が確立されてからの経過時間が第4閾値Th4を超えても、設定処理が実行されなかった(S508)。具体的には、端末装置200-1は電子機器100と無線接続が可能な位置に配置されているが、担当者の配置変更等により、端末装置200-1が電子機器100の設定処理に用いられなくなった場合等が考えられる。
この場合、端末装置200-1との無線接続を維持してしまうと、設定処理を行わない端末装置200-1により接続が占有されてしまい好ましくない。また、端末装置200-1が設定処理を行わない以上、当該端末装置200-1との無線接続の確立を、他の端末装置200に比べて優先する意義も薄い。
よって電子機器100の処理部110は、端末装置200-1を無線接続優先対象から解除する処理を行う(S509)。S509の処理は、第2のリスト情報から、端末装置200-1の識別情報を削除する処理である。また電子機器100は、端末装置200-1との無線接続を切断する(S510)。
図12に示した処理により、一旦無線接続優先対象に設定された端末装置200であっても、その後の設定処理の実行状況に応じて、無線接続を切断したり、無線接続優先対象から除外できる。不適切な端末装置200を過剰に優先することがないため、適切な通信制御を実現できる。
3.変形例
以下、いくつかの変形例について説明する。
3.1 複数台への拡張
以上では、アクセスポイントとして機能する電子機器100に同時に接続可能な端末装置200が1台である例について説明した。ただし、同時接続可能な台数は、N(Nは2以上の整数)台に拡張可能である。この場合も、Nが過剰に大きい数とならないため、設定処理を行わない端末装置200が電子機器100に接続することは抑制すべきである。
この場合、無線接続優先対象として設定可能な端末装置200の上限台数、即ち第2のリスト情報に含まれる識別情報の上限数は、Nとなる。無線接続優先対象である端末装置200の数がi(iは0≦i<Nである整数)である場合、無線接続優先対象である端末装置200のための接続枠を確保したとしても、N-i台の端末装置200が電子機器100と接続する余裕がある。
第2のリスト情報を用いた処理では、まず、接続要求をしてきた端末装置200が無線接続優先対象であるか否かが判定され、無線接続優先対象である場合、接続要求が許可される。この処理は、図10のS309~S311,図12のS505~507に対応する。この場合、同時接続可能な台数がN台になった場合も同様の処理を行う。即ち、第2のリスト情報に含まれる識別情報の各識別情報と、接続要求をしてきた端末装置200の識別情報の照合処理が行われる。
また接続要求をしてきた端末装置200が無線接続優先対象でないと判定された場合、第2のリスト情報を参照することで、無線接続優先対象でない端末装置200からの接続要求を許可する余地が残っているか否か、が判定される。この処理は、図8のS103~S104、S113~S114、図9のS204~S205、図10のS304~S305、図11のS404~S405に対応する。
接続要求を許可する余地があれば第1のリスト情報の参照処理に移行するし(S105、S115、S206)、許可する余地がなければ接続要求を拒否する(S306、S406)。接続可能な端末装置200の台数が1台である場合、接続要求を許可する余地が残っているか否かの判定は、第2のリスト情報が空であるか否かを判定すれば足りた。
同時接続可能な台数がN台である場合、第2のリスト情報が空であるか否かの判定を、第2のリスト情報が上限に達しているか否かの判定に拡張する。具体的には、第2のリスト情報を参照した結果、無線接続優先対象である端末装置200の数がi(0≦i<N)であれば、N-i台の余裕があるため、第1のリスト情報の参照処理に移行する。一方、第2のリスト情報を参照した結果、無線接続優先対象である端末装置200の数がNであれば、余裕がないため、接続要求を拒否する。
以上のように拡張することで、電子機器100に同時に接続可能な端末装置200が複数台の場合にも、図8~図12と同様の処理を行うことが可能である。特に図11を拡張した場合、以下のようになる。即ち、内部アクセスポイントに接続可能な端末装置200の上限値がN(Nは2以上の整数)である場合において、処理部110は、無線接続優先対象に設定されている端末装置200の台数がN台である場合、電子機器100の電源オンからの経過時間が第3閾値Th3を超えるまで、無線接続優先対象に設定されていない端末装置から200の接続要求を拒否する制御を行う。また処理部110は、無線接続優先対象に設定されている端末装置200の台数がN台未満である場合、電子機器100の電源オンからの経過時間が第3閾値Th3以下であっても、無線接続優先対象に設定されていない端末装置200からの接続要求を許可する制御を行う。
3.2 無線接続拒否対象に関する変形例
また以上では、所与の端末装置200が無線接続拒否対象に登録された場合、当該登録は電子機器100の電源をオフにすることで解除される例を示した。ただし、無線接続拒否対象の登録/解除については種々の変形実施が可能である。
電子機器100の処理部110は、操作部120に対する操作入力を受け付けた場合に、無線接続拒否対象の登録をリセットする、即ち、第1の記憶部151に記憶された第1のリスト情報を初期化する処理を行う。このようにすれば、ユーザーの操作により、端末装置200を無線接続拒否対象から除外することが可能になる。設定処理を行う端末装置200が誤って無線接続拒否対象に設定された場合、電子機器100の再起動をせずとも、設定処理を開始できるため、ユーザーの利便性向上が可能になる。この際、第1のリスト情報の全てを初期化してもよいし、第1のリスト情報のうち、いずれかの端末装置200の情報を指定して消去してもよい。
また処理部110は、内部アクセスポイントを用いて端末装置200との接続を確立してから、端末装置200により電子機器100に対する設定処理が行われない時間が第1閾値Th1を超えた場合、端末装置200を、所与の設定時間、無線接続拒否対象に設定する処理を行ってもよい。換言すれば、端末装置200が無線接続拒否対象に登録された後、所与の設定時間の経過後に、当該端末装置200は無線接続拒否対象から除外される。
このようにすれば、設定処理を行わなかった端末装置200との接続を抑制しつつ、設定時間経過後には当該端末装置200からの接続要求を許可することも可能になるため、柔軟な通信制御が可能になる。設定処理を行う端末装置200が誤って無線接続拒否対象に設定された場合、ユーザーは電子機器100の再起動や解除操作を行わなくても、設定処理を実行することが可能である。
ただし、所与の設定時間を過剰に短くしてしまうと、不適切な端末装置200との接続確立を抑制するという効果が損なわれる。一方、設定時間を過剰に長くしてしまうと、設定処理を行う端末装置200が誤って無線接続拒否対象に設定された場合に、ユーザーが待機する時間が長くなり利便性に欠ける。
よって処理部110は、端末装置200が無線接続拒否対象に設定された回数が多いほど、無線接続拒否対象に設定される上記設定時間を長くする処理を行う。例えば、初めて無線接続拒否対象に設定された場合、上記設定時間を10秒とし、2回目を20秒、3回目を30秒とする。なお、回数と設定時間の関係については種々の変形実施が可能である。
このようにすれば、端末装置200が設定処理を行わない蓋然性が高いほど、無線接続拒否対象に設定される時間が長くなるため、不適切な端末装置200との接続確立を抑制できる。また、設定処理を行う端末装置200が誤って無線接続拒否対象に設定されたとしても、無線接続拒否対象に設定された回数が少ないことが想定されるため、比較的短い時間で設定処理を開始できる。
この場合、第1の記憶部151は、第1のリスト情報として、端末装置200の識別情報と、当該端末装置200が無線接続拒否対象に設定された回数を関連付けて記憶する。無線接続拒否対象に設定された回数は、電子機器100の電源がオフにされた時点で0にリセットされる。また記憶部150は、無線接続拒否対象に設定された回数と、上記設定時間を関連付ける情報を記憶する。回数と設定時間を関連付ける情報は、電子機器100の電源オフで消去されないことが好ましいため、第2の記憶部152等の不揮発性メモリーに記憶される。回数と設定時間を関連付ける情報は、ルックアップテーブル等の情報であってもよいし、関係式の情報であってもよい。
処理部110は、不図示の計時部を用いた計時処理を行い、無線接続拒否対象に設定された各端末装置200について、回数に対応する設定時間が経過したか否かを監視する。設定時間が経過したと判定されたら、処理部110は第1のリスト情報から、処理対象である端末装置200の識別情報を削除する処理を行う。
なお、本変形例における情報の形式、管理手法については種々の変形実施が可能である。例えば無線接続拒否対象に設定された回数を、第1のリスト情報とは別の情報として管理してもよい。或いは、第1のリスト情報にアクティブ/非アクティブを表すフラグ情報を追加し、第1のリスト情報に識別情報が記憶されており、且つ、フラグ情報がアクティブである端末装置200を、無線接続拒否対象として処理してもよい。この場合、設定時間が経過した端末装置200を無線接続拒否対象から解除する処理は、識別情報を削除する処理ではなく、フラグ情報を非アクティブにする処理により実現される。
以上、本発明を適用した実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。