以下、本発明の実施形態について説明する。
〔両面粘着シート〕
本発明の一実施形態に係る両面粘着シートの断面図を図1に示す。
図1に示すように、本実施形態に係る両面粘着シート2は、一方の面側の外層としての第1の粘着剤層21と、他方の面側の外層としての第2の粘着剤層22と、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の間に位置する中間層23とを備えている。
本実施形態に係る両面粘着シート2は、2枚の剥離シート31,32の剥離面と接するように当該2枚の剥離シート31,32に挟持されており、この積層体を剥離シート付き両面粘着シート1という。ただし、両面粘着シート2には、剥離シート31および/または剥離シート32は必ずしも積層されていなくてもよい。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
本実施形態では、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22は、それぞれ両面粘着シート2の最外層であり、第1の粘着剤層21は剥離シート31の剥離面と接しており、第2の粘着剤層22は剥離シート32の剥離面と接しているが、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、中間層23と第1の粘着剤層21とが直接積層されており、中間層23と第2の粘着剤層22とが直接積層されているが、これに限定されるものではない。
本実施形態における中間層23のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上、60℃以下である。中間層23のガラス転移温度がかかる範囲にあることにより、中間層23は常温ではある程度硬いものとなる。それによって、両面粘着シート2全体の被膜強度も向上し、加工性が良好になる。例えば、剥離シート付き両面粘着シート1を裁断加工等する際に、両面粘着シート2自体が潰れにくくなり、また、中間層23の存在により、比較的潰れ易い第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の断面積も小さくなるため、切断面にて粘着剤がはみ出して刃に粘着剤が付着してしまう等の問題が発生することを抑制することができる。
一方で、中間層23のガラス転移温度が上記の範囲にあることにより、中間層23は加熱により軟化し、両面粘着シート2全体が柔軟性に優れたものとなる。したがって、段差を有する被着体(例えば表示体構成部材)に両面粘着シート2を貼付するときに、当該両面粘着シート2を加熱することにより、当該両面粘着シート2は段差追従性(初期の段差追従性)に優れたものとなり、段差近傍に隙間、浮き等が生じることが抑制される。
上記の観点から、中間層23のガラス転移温度は、20℃以上であることが好ましく、特に30℃以上であることが好ましい。また、当該ガラス転移温度は、60℃以下であることが好ましく、特に40℃以下であることが好ましい。なお、本明細書におけるガラス転移温度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
ここで、後述するように、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22が活性エネルギー線硬化性である場合、好ましくはさらに中間層23も活性エネルギー線硬化性である場合には、それらの層を活性エネルギー線照射により硬化させることにより、両面粘着シート2は、初期の段差追従性だけでなく、高温高湿条件下でも段差追従性に優れたものとなる。例えば、段差を有する被着体(例えば表示体構成部材)と両面粘着シート2とを備えた積層体が85℃、85%RH条件下に72時間置かれた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。なお、ここで、硬化(硬化した状態)とは、活性エネルギー線照射により新たな高次構造が形成され、さらなる活性エネルギー線照射によっても高次構造のさらなる形成が殆どなくなった状態をいう。高次構造のさらなる形成の有無は、例えば、ゲル分率の変化量等によって判断することができる。具体的には、さらなる活性エネルギー線照射によってゲル分率の増加量が微小(好ましくは5%以下)であった場合には、硬化した状態ということができる。
1.第1の粘着剤層および第2の粘着剤層
第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22は、中間層23による前述した効果が発揮されるものであれば特に限定されず、活性エネルギー線硬化性であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性であってもよいが、少なくとも一方が活性エネルギー線硬化性であることが好ましく、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22のいずれも活性エネルギー線硬化性であることがより好ましい。これにより、両面粘着シート2は、初期の段差追従性だけでなく、高温高湿条件下での段差追従性にも優れたものとなる。なお、第1の粘着剤層を構成する粘着剤および第2の粘着剤層を構成する粘着剤は、互いに同じ粘着剤であってもよいし、異なる粘着剤であってもよい。
第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の少なくとも一方が活性エネルギー線非硬化性である場合、当該粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等のいずれであってもよい。また、上記粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。上記の中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
なお、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤層は、活性エネルギー線によって硬化した後の粘着剤(硬化前には活性エネルギー線硬化性であった粘着剤)によって構成されていてもよい。
第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の少なくとも一方が活性エネルギー線硬化性である場合、当該粘着剤層を構成する粘着剤は活性エネルギー線硬化性の粘着剤(活性エネルギー線硬化性粘着剤)である。活性エネルギー線硬化性粘着剤は、少なくとも、活性エネルギー線硬化性のモノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれか、またはそれらの混合物を含有することが好ましく、それ以外に、活性エネルギー線非硬化性のモノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれか、またはそれらの混合物を含有してもよい。
上記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、活性エネルギー線硬化性化合物(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から得られるものであることが好ましい。粘着性組成物Pは、さらに架橋剤(C)を含有することが好ましい。この場合、得られる粘着剤は、粘着性組成物Pにおける(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋剤(C)により架橋して得られる粘着剤からなる(活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、重合することなく粘着剤層中に存在することが好ましい)。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
(1)活性エネルギー線硬化性粘着剤
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチルまたは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有することが好ましく、特に50質量%以上含有することが好ましく、さらには60質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有すれば、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に好適な粘着性を付与させることができる。また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを90質量%以下含有することが好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を90質量%以下とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分を所望量導入することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に反応性官能基を含有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)を含むことが好ましい。この反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基は、後述する架橋剤(C)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(C)との反応性に優れ、被着体への悪影響の少ない水酸基含有モノマーが特に好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシル基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このアミノ基含有モノマーからは、後述の窒素原子含有モノマーは除かれる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が当該重合体を構成するモノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、下限値として3質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、その含有量は、上限値として35質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには25質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤中に、所定量の水酸基が残存することとなる。水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、常温常湿に戻したときの粘着剤の白化が抑制されることとなる(耐湿熱白化性に優れる)。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、下限値として0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが特に好ましい。また、その含有量は、上限値として20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることが特に好ましい。
なお、被着体が酸により悪影響を受け易い材料、例えば、透明導電膜や金属配線等の場合には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。これにより、例えば、透明導電膜や金属配線を腐食させたり、透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
ここで、「カルボキシル基を有するモノマーを含有しない」とは、カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシル基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜や金属配線等の腐食が生じない程度にカルボキシル基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下の量で含有することを許容するものである。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含むことも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が脂環式構造含有モノマーを構成モノマー単位とすることにより、粘着性組成物Pを架橋させて得られる粘着剤は、初期の段差追従性により優れたものとなる。
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を広げ、粘着剤の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に粘着剤の柔軟性の作用を効果的に発揮させる観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
脂環式構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格、スピロ骨格などを含むものが挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、ジシクロペンタジエン骨格(脂環式構造の炭素数:10)、アダマンタン骨格(脂環式構造の炭素数:10)またはイソボルニル骨格(脂環式構造の炭素数:7)を含むものが好ましく、特にイソボルニル骨格を含むものが好ましい。
上記脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、脂環式構造含有モノマーを5質量%以上含有することが好ましく、特に8質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを40質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の初期の段差追従性がより優れたものとなる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に窒素原子を有するモノマー(窒素原子含有モノマー)を含むことも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤(C)との反応を促進させたり、粘着剤に極性を付与し、粘着剤自体の凝集力を高めることができる。
上記窒素原子含有モノマーとしては、第3級アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。
なお、前述の窒素含有複素環を有するモノマー以外の窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することもできる。
以上の窒素原子含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを40質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには15質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤の凝集力が効果的に向上する。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として10万以上であることが好ましく、特に20万以上であることが好ましく、さらには30万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、得られる粘着剤の被膜強度がより比較的高いものとなると共に、高温高湿条件下の段差追従性が向上する。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として90万以下であることが好ましく、特に80万以下であることが好ましく、さらには70万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる粘着剤の初期の段差追従性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1-2)活性エネルギー線硬化性化合物(B)
粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性化合物(B)を含有すると、得られる粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性となる。なお、粘着剤層における活性エネルギー線硬化性は、活性エネルギー線照射前にあっては粘着性を有し、被着体に貼付後に活性エネルギー線を照射することにより硬化して接着力が向上する性質である。
ここで、当該粘着性組成物Pが、活性エネルギー線硬化性化合物(B)に加えて、後述の架橋剤(C)を含有する場合、得られる粘着剤層においては、前述の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と架橋剤(C)とによる架橋構造が形成され、活性エネルギー線硬化性化合物(B)が未反応のまま(重合することなく)粘着剤層中に存在するものと推定される。そして、上記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射したときに、活性エネルギー線硬化性化合物(B)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性化合物(B)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定され、もって粘着剤層は硬化する。かかる高次構造を有する粘着剤は、凝集力が高く、比較的高い弾性率を示すため、硬化した第1の粘着剤層21および/または第2の粘着剤層22を最外層とする両面粘着シート2(後述する硬化後両面粘着シート2’に該当)は高温高湿条件下での段差追従性に優れたものとなる。
活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる化合物であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)等との相溶性に優れる分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の段差追従性の観点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性化合物(B)としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等が挙げられる。
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、上限値として50,000以下であることが好ましく、特に40,000以下であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、下限値として1,000以上であることが好ましく、特に3,000以上であることが好ましい。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
上記アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、下限値として5万以上であることが好ましく、10万以上であることが特に好ましい。また、当該重量平均分子量は、上限値として90万以下であることが好ましく、50万以下であることが特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、前述した多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマーおよびアダクトアクリレート系ポリマーの中から、1種を選んで用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできるし、それら以外の活性エネルギー線硬化性成分と組み合わせて用いることもできる。
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性化合物(B)の含有量は、得られる粘着剤の凝集力を向上させ高温高湿条件下での段差追従性を優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。一方、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物(B)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と相分離することを防止する観点から、上限値として50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、さらに高温高湿条件下での段差追従性をより良くする観点を加味すると、12質量部以下であることが特に好ましい。
(1-3)架橋剤(C)
粘着性組成物Pは、架橋剤(C)を含有することが好ましい。粘着性組成物Pは、架橋剤(C)を含有することで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋して三次元網目構造を形成し、得られる粘着剤の凝集力を向上させ、高温高湿条件下での段差追従性をより向上させることができる。
架橋剤(C)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する場合、その水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、そのカルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシル基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
粘着性組成物P中における架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.01質量部以上であることが好ましく、さらには0.02質量部以上であることが好ましい。また、上限値として10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。
架橋剤(C)の含有量が上記の範囲にあることにより、得られる粘着剤の凝集力が好ましいものとなり、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性が向上する。
(1-4)光重合開始剤(D)
活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるときに、照射する活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(D)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性化合物(B)を効率良く重合させることができ、また重合による硬化の時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
このような光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着性組成物P中における光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物(B)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましい。また、上限値として30質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましい。
(1-5)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
なお、粘着性組成物Pは、粘着剤中に、そのまま、あるいは反応した状態で、残存する各種成分の混合物を表すものであって、乾燥工程等で除去される成分、例えば、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pに含まれない。
(1-6)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、活性エネルギー線硬化性化合物(B)とを混合するとともに、所望により、架橋剤(C)、光重合開始剤(D)および添加剤を加えることで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、活性エネルギー線硬化性化合物(B)、所望により架橋剤(C)、光重合開始剤(D)、添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得ることができる。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
(1-7)粘着剤の製造
活性エネルギー線硬化性粘着剤は、粘着性組成物Pを架橋することにより好ましく得ることができる。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
上記の加熱処理(及び養生)により、(架橋剤(C)が含まれる場合には、当該架橋剤(C)を介して)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。
(2)粘着剤層の厚さ
第1の粘着剤層21の厚さおよび第2の粘着剤層22の厚さは、それぞれ15μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。当該厚さが上記範囲に入っていることにより、前述した段差追従性および加工性の効果が、より良好に発揮されることとなる。なお、第1の粘着剤層21の厚さおよび第2の粘着剤層22の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、段差追従性の観点から、段差を有する被着体に貼付される側の粘着剤層は、他方の粘着剤層よりも厚いことが好ましい場合がある。
2.中間層
中間層23は、前述した通り、ガラス転移温度が0℃以上、60℃以下である。優れた加工性を得る観点から、上記ガラス転移温度は、20℃以上であることが好ましく、27℃以上であることがより好ましい。一方、初期の段差追従性を優れたものとする観点から、上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。
中間層23は、活性エネルギー線非硬化性であってもよいし、活性エネルギー線硬化性であってもよい。しかしながら、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の少なくとも一方が活性エネルギー線硬化性である場合には、中間層23も活性エネルギー線硬化性であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性の粘着剤層と活性エネルギー線硬化性の中間層とが、それらの界面で互いに反応して、化学的な結合を形成するからである。これにより、当該粘着剤層と中間層23の密着強度が高まり、層間剥離が抑制され、両面粘着シート2の高温高湿条件下における段差追従性もより優れたものとなる。
なお、中間層23における活性エネルギー線硬化性は、活性エネルギー線照射前にあっては比較的小さい弾性を示し、被着体に貼付後に活性エネルギー線を照射することにより硬化して弾性が向上する性質である。
上記のガラス転移温度を有する中間層23を得るために、当該中間層23を構成する材料は、ガラス転移温度が0℃以上、60℃以下の樹脂(以下「樹脂(E)」という場合がある。)を含有することが好ましい。すなわち、中間層23は、樹脂(E)を含有する樹脂組成物(以下「樹脂組成物Q」という場合がある。)から構成されることが好ましい。
(1)樹脂組成物
(1-1)樹脂(E)
中間層23を構成する材料(樹脂組成物Q)中に含まれる樹脂(E)のガラス転移温度が0℃以上、60℃以下であることにより、中間層23自体のガラス転移温度が前述した範囲に入り易くなる。かかる観点から、樹脂(E)のガラス転移温度は、20℃以上であることが特に好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(E)のガラス転移温度は、50℃以下であることが特に好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。
樹脂(E)としては、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、中でも両面粘着シート2の初期の段差追従性を特に優れたものにすることのできる酢酸ビニル樹脂が好ましい。酢酸ビニル樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
酢酸ビニル樹脂の重量平均分子量は、下限値として1万以上であることが好ましく、特に2万以上であることが好ましく、さらには10万以上であることが好ましい。酢酸ビニル樹脂の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、中間層23としての製膜性や加工性が向上する。また、酢酸ビニル樹脂の重量平均分子量は、上限値として100万以下であることが好ましく、特に70万以下であることが好ましく、さらには50万以下であることが好ましい。酢酸ビニル樹脂の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、段差追従性がより向上する。
樹脂組成物Qは、上記の樹脂(E)を主成分とすることが好ましく、具体的には、樹脂(E)を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することが特に好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましい。樹脂組成物Qは、樹脂(E)のみからなってもよい。一方、樹脂組成物Qが、他の成分(例えば、後述する活性エネルギー線硬化性化合物(F)や光重合開始剤(G))を含有する場合には、樹脂(E)を95質量%以下含有することが好ましく、93質量%以下含有することが特に好ましく、90質量%以下含有することがさらに好ましい。
(1-2)他の成分
中間層23が活性エネルギー線硬化性である場合、樹脂組成物Qは、上記樹脂(E)に加えて、活性エネルギー線硬化性化合物(F)を含有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物(F)としては、前述の活性エネルギー線硬化性粘着剤で使用可能な活性エネルギー線硬化性化合物(B)と同様の活性エネルギー線硬化性化合物を使用することができる。層間密着性の観点から、特に、粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤が含有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)と同種の活性エネルギー線硬化性化合物を使用することが好ましく、さらには、粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤が含有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)と同一の活性エネルギー線硬化性化合物を使用することが好ましい。
樹脂組成物Qにおける活性エネルギー線硬化性化合物(F)の含有量は、層間密着性および高温高湿条件下での段差追従性を優れたものとする観点から、樹脂(E)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、初期の段差追従性をさらに優れたものとする観点から、10質量部以上であることがさらに好ましい。一方、上記含有量は、中間層23のガラス転移温度を低下させすぎない観点から、上限値として40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物Qを硬化させるときに、照射する活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、樹脂組成物Qは、光重合開始剤(G)をさらに含有することが好ましい。光重合開始剤(G)としては、前述の活性エネルギー線硬化性粘着剤で使用可能な光重合開始剤(D)と同様の光重合開始剤を使用することができる。
樹脂組成物Qにおける光重合開始剤(G)の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物(F)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましい。また、上限値として30質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましい。
一方、樹脂組成物Qが活性エネルギー線非硬化性である場合、樹脂組成物Qは、上記樹脂(E)に加えて、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22を構成する粘着剤中の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる反応性官能基(反応性官能基含有モノマー由来)と架橋構造を形成し得る架橋性モノマーを含有することが好ましく、さらに、当該架橋構造を形成するための架橋剤を含有することが特に好ましい。架橋性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる反応性官能基と同一の官能基を有するものが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する反応性官能基含有モノマーと同じモノマーを使用することが好ましい。また、架橋剤としては、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22を構成する粘着剤中の架橋剤(C)と同じものを使用することが好ましい。なお、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性粘着剤であってもよい。
上記の場合に第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22を構成するための粘着性組成物および樹脂組成物Qを熱架橋させると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と架橋性モノマーとが上記粘着性組成物中の架橋剤(C)または樹脂組成物Q中の架橋剤を介して架橋し、化学的に結合する。これにより、第1の粘着剤層21と中間層23、第2の粘着剤層22と中間層23との密着性が高まり、中間層23と第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22との界面において層間剥離が生じることが抑制される。
樹脂組成物Qには、所望により、各種添加剤、例えば帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
なお、樹脂組成物Qは、中間層中に、そのまま、あるいは反応した状態で、残存する各種成分の混合物を表すものであって、乾燥工程等で除去される成分、例えば、後述の希釈溶媒は、樹脂組成物Qに含まれない。
(1-3)樹脂組成物・中間層の製造
樹脂組成物Qは、樹脂(E)と、所望により、活性エネルギー線硬化性化合物(F)、光重合開始剤(D)、添加剤等を加えることで製造することができる。この樹脂組成物Qを塗工するときには、所望により希釈溶剤を添加することで、溶剤で希釈された樹脂組成物Q(塗布溶液)を得る。
中間層23は、例えば、樹脂組成物Qの塗布溶液を塗工し、乾燥させることにより形成することができる。この乾燥は、通常は加熱処理により行うことができる。加熱処理の条件は、前述した粘着剤を製造するときの加熱処理の条件と同様である。
なお、中間層23が活性エネルギー線非硬化性である場合であって、樹脂組成物Qが活性エネルギー線硬化性化合物(F)を含有する場合、上記の塗工、乾燥の後、さらに活性エネルギー線照射により樹脂組成物Qを硬化させ、これを中間層23としてもよい。ただし、初期の段差追従性を考慮すると、段差を有する表示体構成部材と他の表示体構成部材とを両面粘着シート2によって貼合した後、活性エネルギー線を照射して、中間層23(を構成する樹脂組成物Q)を硬化させることが好ましい。
(2)中間層の厚さ
第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22の合計厚さに対する中間層23の厚さの比は、0.01以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.15以上であることが好ましい。また、当該比は、2以下であることが好ましく、特に1.5以下であることが好ましく、さらには1以下であることが好ましく、0.5以下であることが最も好ましい。当該比が0.01以上であることにより、前述した段差追従および加工性の効果が、より良好に発揮されることとなる。なお、各層の厚さは、JIS K7130に準じて測定した値とする。
中間層23の厚さは、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。当該厚さが上記範囲に入っていることにより、前述した段差追従性および加工性の効果が、より良好に発揮されることとなる。
3.剥離シート
剥離シート31,32は、両面粘着シート2の使用時まで接する粘着面を保護するものであり、両面粘着シート2を使用するときに剥離される。本実施形態に係る剥離シート付き両面粘着シート1において、剥離シート31,32の一方は必ずしも必要なものではない。
剥離シート31,32としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シート31,32の剥離面(特に両面粘着シート2と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート31,32のうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
剥離シート31,32の厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
4.粘着シートの物性等
両面粘着シート2の総厚みは、50μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましく、さらには150μm以上であることが好ましい。また、当該総厚みは、600μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。両面粘着シート2の総厚みが上記範囲に入っていることにより、前述した段差追従性および加工性の効果が、より良好に発揮されることとなる。
両面粘着シート2のヤング率は、下限値として、0.01Mpa以上であることが好ましく、特に0.5Mpa以上であることが好ましく、さらには5MPa以上であることが好ましい。ヤング率が上記下限値以上であると、両面粘着シート2の被膜強度が高いものとなり、剥離シート付き両面粘着シート1の加工性がより良好になる。また、上記ヤング率は、上限値として、100Mpa以下であることが好ましく、特に50Mpa以下であることが好ましく、さらには20Mpa以下であることが好ましい。ヤング率が上記上限値以下であると、両面粘着シート2の柔軟性が良好なものとなり、両面粘着シート2の初期の段差追従性がより優れたものになる。なお、このヤング率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
5.両面粘着シートの製造
剥離シート付き両面粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート31の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、粘着性組成物Pの塗布層付きの剥離シート31を得る。また、他方の剥離シート32の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、粘着性組成物Pの塗布層付きの剥離シート32を得る。さらに、別の剥離シートの剥離面に、上記樹脂組成物Qの塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層23付きの剥離シートを得る。
次に、粘着性組成物Pの塗布層付きの剥離シート31と中間層23付きの剥離シートとを、両層が互いに接触するように貼り合わせ、中間層23から剥離シートを剥離する。次いで、その中間層23と、粘着性組成物Pの塗布層付きの剥離シート32とを、両層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された一方の粘着性組成物Pの塗布層が第1の粘着剤層21、他方の粘着性組成物Pの塗布層が第2の粘着剤層22となる。これにより、第1の粘着剤層21、中間層23および第2の粘着剤層22からなる両面粘着シート2が、剥離シート31,32に挟持されてなる剥離シート付き両面粘着シート1が得られる。なお、粘着性組成物の塗布層の養生は、上記のように粘着性組成物の塗布層を貼合して3層にした後に行ってもよいし、貼合する前に行ってもよい。
上記粘着性組成物Pの塗布液および樹脂組成物Qの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
本実施形態に係る剥離シート付き両面粘着シート1は加工性が良好であるため、剥離シート付き両面粘着シート1を裁断加工等する際に、切断面にて粘着剤がはみ出して、刃に粘着剤が付着してしまう等の問題が発生することが抑制される。
〔表示体〕
図2に示すように、本実施形態に係る表示体4は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する第1の表示体構成部材51(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材52(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材51および第2の表示体構成部材52を互いに貼合する両面粘着シート2とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体4では、第1の表示体構成部材51は、両面粘着シート2側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層6による段差を有している。
両面粘着シート2における第1の粘着剤層21、第2の粘着剤層22および中間層23のいずれかが活性エネルギー線硬化性の場合、上記表示体4における両面粘着シート2は、前述した剥離シート付き両面粘着シート1の両面粘着シート2を、活性エネルギー線照射により硬化させた硬化後両面粘着シート2’となる。ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、200~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
両面粘着シート2に対する活性エネルギー線の照射は、当該両面粘着シート2によって第1の表示体構成部材51および第2の表示体構成部材52を互いに貼合した後、第1の表示体構成部材51および第2の表示体構成部材52のうち、活性エネルギー線を透過する部材越しに行うことが好ましい。
両面粘着シート2に対し活性エネルギー線を照射すると、第1の粘着剤層21中の活性エネルギー線硬化性化合物(B)、第2の粘着剤層22中の活性エネルギー線硬化性化合物(B)、および中間層23中の活性エネルギー線硬化性化合物(F)のうちの少なくとも1つが重合し硬化する。活性エネルギー線の照射により硬化してなる硬化後両面粘着シート2’は、高温高湿下での段差追従性が非常に優れたものとなる。また、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22のうちの少なくとも1つの層と中間層23とが活性エネルギー線硬化性である場合には、活性エネルギー線照射により活性エネルギー線硬化性化合物(B)および活性エネルギー線硬化性化合物(F)が互いに反応して化学的に結合するため、活性エネルギー線硬化性の当該粘着剤層と中間層23との密着性が高まり、当該粘着剤層と中間層23との界面において層間剥離が生じることが抑制される。
表示体4としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体4としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
第1の表示体構成部材51は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層6は、第1の表示体構成部材51における両面粘着シート2側に、額縁状に形成されることが一般的である。
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmである。
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmである。
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層がパターニングされていてもよい。
第2の表示体構成部材52は、第1の表示体構成部材51に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
印刷層6を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層6の厚さ、すなわち段差の高さの下限値は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることが最も好ましい。下限値が上記以上であることにより、電気配線を視認者側から見えなくする等の隠蔽性を十分に確保することができる。また、上限値は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。上限値が上記以下であることにより、当該印刷層6に対する両面粘着シート2の段差追従性の悪化を防止することができる。
上記表示体4を製造するには、一例として、剥離シート付き両面粘着シート1の一方の剥離シート31を剥離して、両面粘着シート2の露出した粘着面を、第1の表示体構成部材51の印刷層6が存在する側の面に貼合する。
その後、剥離シート付き両面粘着シート1から他方の剥離シート32を剥離して、両面粘着シート2の露出した粘着面と第2の表示体構成部材52とを貼合する。また、他の例として、第1の表示体構成部材51および第2の表示体構成部材52の貼合順序を入れ替えてもよい。
上記の貼合を行うにあたり、剥離シート付き両面粘着シート1を加熱し、両面粘着シート2中の中間層23を軟化させる。加熱温度は、中間層23が軟化する温度であればよく、通常は、25℃以上、70℃以下であることが好ましく、特に、30℃以上、60℃以下であることが好ましく、さらには35℃以上、50℃以下であることが好ましい。上記の加熱により、両面粘着シート2全体が柔軟性に優れ、初期の段差追従性に優れたものとなるため、印刷層6による段差近傍に隙間や浮きが生じることが抑制される。
次に、両面粘着シート2における第1の粘着剤層21、第2の粘着剤層22および中間層23のいずれかが活性エネルギー線硬化性の場合、両面粘着シート2に対して活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化性の層を硬化させる。
以上の表示体4においては、両面粘着シート2における第1の粘着剤層21、第2の粘着剤層22、および中間層23のうちの少なくとも1つの層が活性エネルギー線照射により硬化させたものである場合、硬化後両面粘着シート2’が高温高湿条件下でも段差追従性に優れる。そのため、表示体4が高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH、72時間)に置かれた場合でも、段差近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。また、第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層22のうちの少なくとも1つの層ならびに中間層23が活性エネルギー線照射により硬化させたものである場合には、当該粘着剤層と中間層23との界面において層間剥離が生じることも抑制される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、剥離シート付き両面粘着シート1における剥離シート31,32のいずれか一方は省略されてもよく、また、剥離シート31および/または32の替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。さらに、両面粘着シート2における第1の粘着剤層21および/または第2の粘着剤層22と、中間層23との間には、他の層が存在してもよいし、両面粘着シート2における第1の粘着剤層21および/または第2の粘着剤層22の外側(剥離シート31,32側)には、さらに別の層が存在してもよい。
また、第1の表示体構成部材51は、印刷層6以外の段差を有するものであってもよい。さらには、第1の表示体構成部材51のみならず、第2の表示体構成部材52も両面粘着シート2側に段差を有するものであってもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)第1の粘着剤層または第2の粘着剤層を有する積層体の作製
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル65質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
(1-2)粘着性組成物Pの調製
上記工程(1-1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、活性エネルギー線硬化性化合物(B)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)5質量部と、架橋剤(C)としてのトリレンジイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム社製,製品名「BHS-8515」)0.15質量部と、光重合開始剤(D)として、ベンゾフェノンおよび1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1:1の質量比で混合したもの(BASF社製,製品名「イルガキュア500」)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物Pの塗布溶液を得た。
(1-3)積層体の作製
上記工程(1-2)で得られた粘着性組成物Pの塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。次いで、その塗布層上に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面を貼合した。その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/第1の粘着剤層(活性エネルギー線硬化性,厚さ:100μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる第1の積層体を作製した。
また、上記と同様にして、重剥離型剥離シート/第2の粘着剤層(活性エネルギー線硬化性,厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる第2の積層体を作製した。
上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
(2)中間層を有する積層体の作製
(2-1)樹脂組成物Qの調製
樹脂(E)としてのポリ酢酸ビニル(VAc,重量平均分子量(Mw):2万,Tg:32℃)100質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物(F)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)10質量部と、光重合開始剤(G)として、ベンゾフェノンおよび1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1:1の質量比で混合したもの(BASF社製,製品名「イルガキュア500」)1質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、樹脂組成物Qの塗布溶液を得た。
(2-2)積層体の作製
上記工程(2-1)で得られた樹脂組成物Qの塗布溶液を使用し、養生しない以外、前述した粘着性組成物Pと同様にして、重剥離型剥離シート/中間層(活性エネルギー線硬化性,厚さ:10μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる第3の積層体を作製した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
(3)剥離シート付き両面粘着シートの作製
上記(1)で得られた第1の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離するとともに、上記(2)で得られた第3の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した第1の粘着剤層と中間層とが互いに接触するように貼り合わせ、中間層から重剥離型剥離シートを剥離した。次いで、上記(1)で得られた第2の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した第2の粘着剤層と、上記中間層とが互いに接触するように貼り合わせ、第1の粘着剤層、中間層および第2の粘着剤層からなる両面粘着シートが、2枚の重剥離型剥離シートに挟持されてなる剥離シート付き両面粘着シートを得た。
〔実施例2〕
活性エネルギー線硬化性化合物(F)の配合量を5質量部、光重合開始剤(G)の配合量を0.5質量部に変更する以外、実施例1と同様にして樹脂組成物Qの塗布溶液を調製し、第3の積層体を作製した。この第3の積層体を使用する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔実施例3〕
中間層の厚さを25μmに変更する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔実施例4〕
中間層の形成にあたり、樹脂(E)としてのポリ酢酸ビニル(VAc,重量平均分子量(Mw):2万,Tg:32℃)100質量部に替えて、ポリ酢酸ビニル(VAc,重量平均分子量(Mw):20万,Tg:32℃)100質量部を使用した以外は、実施例3と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔実施例5〕
中間層の厚さを50μmに変更する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔実施例6〕
活性エネルギー線硬化性化合物(F)および光重合開始剤(G)を配合しない以外、実施例1と同様にして樹脂組成物Qの塗布溶液を調製し、第3の積層体を作製した。この第3の積層体を使用する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔実施例7〕
活性エネルギー線硬化性化合物(F)の配合量を30質量部、光重合開始剤(G)の配合量を3質量部に変更する以外、実施例1と同様にして樹脂組成物Qの塗布溶液を調製し、第3の積層体を作製した。この第3の積層体を使用する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔比較例1〕
実施例1の(1)で得られた第1の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離するとともに、実施例1の(1)で得られた第2の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とが互いに接触するように貼り合わせ、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層からなる粘着剤層が、2枚の重剥離型剥離シートに挟持されてなる粘着シートを得た。この粘着シートを使用する以外、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを作製した。
〔比較例2〕
実施例1の(1)で得られた第1の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した第1の粘着剤層に中間層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm,Tg:80℃)を貼合した。次いで、実施例1の(1)で得られた第2の積層体から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した第2の粘着剤層と、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムとが互いに接触するように貼り合わせ、第1の粘着剤層、中間層(ポリエチレンテレフタレートフィルム)および第2の粘着剤層からなる両面粘着シートが、2枚の重剥離型剥離シートに挟持されてなる剥離シート付き両面粘着シートを得た。
〔試験例1〕(ガラス転移温度の測定)
実施例および比較例で作製・使用した中間層のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製,製品名「DSC Q2000」)によって、昇温・降温速度20℃/分で測定した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(粘着剤層のヤング率の測定)
実施例および比較例で作製した両面粘着シートを、1000μm程度の厚さとなるよう複数積層し、10mm×70mmの試験片に裁断した。そして、JIS K7161:1994に準拠して、23℃、50%RHにおけるヤング率を測定した。具体的には、上記試験片を、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンRTA-T-2M」)にて、チャック間距離20mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、ヤング率(単位:MPa)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:60μm)を有する段差付ガラス板を作製した。
実施例および比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートから第2の粘着剤層(厚さ50μm)側の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、第1の粘着剤層(厚さ100μm)側の剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を上記段差付ガラス板にラミネートした。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した。この段階で、両面粘着シート(特に印刷層による段差の近傍)に気泡がないか否か、目視により確認した。その結果、気泡が全くなかったものを◎、気泡が10個以下のものを○、10個を超える気泡があったものを×と評価した(初期の段差追従性の評価)。結果を表1に示す。
次に、上記両面粘着シートに対して、PETフィルム越しに、下記の紫外線照射条件で紫外線を照射し、当該両面粘着シートを硬化させた。
<紫外線照射条件>
・アイグラフィックス社製 UVコンベア装置使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-36」を使用
上記のように硬化した両面粘着シートを有する積層体を、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、両面粘着シート(特に印刷層による段差の近傍)に気泡がないか否か、目視により確認した。その結果、気泡が全くなかったものを◎、気泡が10個以下のものを○、10個を超える気泡があったものを×と評価した(高温高湿条件下での段差追従性の評価)。なお、実施例6の粘着シートについては、気泡は10個以下であったが、段差の近傍で粘着剤層と中間層との層間剥離が見られた(評価:△)。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(加工性の評価)
<A法>
実施例および比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートを、自動切断機(荻野製作所社製,製品名「スーパーカッター OSS-PN1型N-L」)によって切断した。この切断を10回行った。切断後における粘着シートの切断面(長さ:100mm)を目視にて確認し、以下の基準により加工性を評価した。結果を表1に示す。
◎:10回中、10回とも粘着剤のはみ出しがなかった。
○:10回中、5~9回は粘着剤のはみ出しがなかった。
△:10回中、1~4回は粘着剤のはみ出しがなかった。
×:10回中、10回とも粘着剤のはみ出しがあった。
<B法>
実施例および比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートを、縦100mm×横100mmに裁断した。裁断した剥離シート付き両面粘着シートを、第2の粘着剤層(厚さ50μm)側の剥離シートが上向きになるようにして、水平な台の上に載置し、第1の粘着剤層(厚さ100μm)側の剥離シートを接着剤にて当該台に固定した。
次に、横幅50mmの位置で縦断するように、最下層の剥離シートの手前(第1の粘着剤層が切断される位置)までカッターナイフの刃を入れた。その後、分断された表面側の剥離シートについて、その片側のみを除去した。これにより、表面の半分が剥離シートに覆われ、残り半分が第2の粘着剤層の露出した両面粘着シートを得た。
さらに、縦100mm×横100mmに裁断された粘着テープ(リンテック社製,製品名「PET50(A)PLシン 8LK」)を、その粘着面が上記両面粘着シートに接するように、当該両面粘着シートの全面に貼り合せた。この貼り合せにおいては、上記粘着面と両面粘着シートとの界面に気泡が残らないよう、粘着テープの上から十分な圧力を加えた。
最後に、貼付した粘着テープを両面粘着シートから引き剥がした。これにより、表面に剥離シートが残っていた部分の両面粘着シートは、最下層の剥離シート上に残存し、第2の粘着剤層が露出していた部分の両面粘着シートは、粘着テープと共に最下層の剥離シートから除去された。この作業を10回行った。このようにして現れた両面粘着シートの断面(長さ:100mm)を目視にて確認し、以下の基準により加工性を評価した。結果を表1に示す。
◎:10回中、10回とも粘着剤のはみ出しがなかった。
○:10回中、5~9回は粘着剤のはみ出しがなかった。
△:10回中、1~4回は粘着剤のはみ出しがなかった。
×:10回中、10回とも粘着剤のはみ出しがあった。
表1から分かるように、実施例で得られた両面粘着シートは、初期および高温高湿条件下での段差追従性に優れるとともに、加工性が良好であった。