JP7083141B2 - 筋肉量減少又は筋力低下を改善するための組成物及びその利用 - Google Patents
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Description
(2)前記筋肉は、骨格筋である、(1)に記載の組成物。
(3)被筋肉増強部位への注入用である、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)歯髄幹細胞を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)凍結歯髄幹細胞を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含む、サルコペニアの治療又は改善用組成物。
(7)歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含む、糖尿病に伴うサルコペニアの治療又は改善用組成物。
(8)歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含む、糖尿病に伴う筋肉量の低下又は筋力の低下を抑制又は改善するための組成物。
(9)歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含む、筋束サイズの増大のための組成物。
(10)歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清の有効量を投与する、非治療的な筋肉の増強方法。
本組成物は、歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含むことができる。本組成物によれば、筋肉量の増大及び/又は筋力の増大のほか、筋束サイズの増大という効果を得ることができる。これにより、筋力の増強が可能となる。
歯髄幹細胞は、歯髄から得られる歯髄に由来した幹細胞であれば特に限定されない。永久歯歯髄幹細胞であってもよいし、乳歯歯髄幹細胞であってもよいが、好ましくは、細胞増殖能の観点から、脱落した乳歯もしくは若年時の抜去歯(矯正治療による抜歯もしくは第三大臼歯抜歯)に由来する歯髄幹細胞を用いる。本組成物を適用する個体との関係においては、拒絶反応を抑制又は回避するため、同一生物種(ヒトであればヒト由来)の歯髄幹細胞であることが好ましく、他家歯髄幹細胞であってもよいが、より好ましくは自家歯髄幹細胞を用いる。
自然に脱落した乳歯(又は抜歯した乳歯、或いは永久歯)をクロロヘキシジンまたはイソジン溶液で消毒した後、歯冠部を分割し歯科用リーマーにて歯髄組織を回収する。
(2)酵素処理
採取した歯髄組織を基本培地(10%ウシ血清・抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地)に懸濁し、2mg/mlのコラゲナーゼ及びディスパーゼで37℃、1時間処理する。5分間の遠心操作(5000回転/分)により酵素処理後の歯髄細胞を回収する。セルストレーナーによる細胞選別はSHEDやDPSCの神経幹細胞分画の回収効率を低下させるので原則、使用しない。
(3)細胞培養(接着性細胞の選択)
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて3日間培養した後、コロニーを形成した接着性細胞を0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離した歯髄細胞を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1~8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は、例えば、-198℃)。なお、以下の別法も挙げられる。
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。培養液(例えば、10%FCS含有DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium))を添加した後、5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて2週間程度培養する。培養液を除去した後、PBS等で細胞を1回又は数回洗浄する。この操作(培養液の除去及び細胞の洗浄)に代えて、コロニーを形成した接着性細胞(歯髄幹細胞)を回収することにしてもよい。この場合には例えば、0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理し、ディッシュから細胞を剥離する。
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞を回収することができる。このようにして回収した歯髄幹細胞を用いて本組成物を調製することができる。
歯髄幹細胞の培養上清は、歯髄幹細胞を培養して得られる細胞培養液の上清である。すなわち、実質的に細胞成分(歯髄幹細胞又は歯髄細胞)を含んでいない液性成分である。培養した歯髄幹細胞は、培養後に細胞成分を分離除去することによって、培養液の液性成分から除去される。培養液からの細胞成分の分離は、当業者に周知の方法で可能である。さらに、培養液に対して各種処理(例えば、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存等)を適宜施した培養上清を用いることにしてもよい。
歯髄幹細胞の培養には、通常幹細胞に用いられる条件をそのまま適用あるいは適宜変更して適用できる。歯髄幹細胞培養上清の製造は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、以下のような操作で培養上清を取得してもよい。
さらに、その目的のみならず、筋肉量維持の観点から、筋肉の減衰を抑制(防止)するため、又は筋肉量の低減を抑制(防止)するためにも使用されることができる。また、本発明の筋肉増強剤は、筋肉の萎縮(例えば、廃用性筋萎縮等)等により減少又は減衰した筋肉(筋肉量、筋力等)を回復させるためにも使用されることができる。
歯髄幹細胞及び/又は歯髄幹細胞の培養上清を含む本組成物は、有効成分の種類や形態等に応じて各種態様を採ることができる。本組成物は、液体状(液状、ゲル状など)及び固体状(粉状、細粒、顆粒状など)の形態を採りうる。また、本組成物は、後述する投与方法及び投与量に応じて、公知の各種製剤形態を採りうる。
本組成物は、筋肉を増強するために用いることができる。また、筋肉を増強するためにという観点から、筋肉を増強するための医薬、すなわち、医薬組成物として使用することができる。この場合、本組成物は、筋肉量減少又は筋力低下に関連する疾患又は症状の予防又は治療薬として取り扱うことが可能である。かかる疾患及び症状(症候群)としては、例えば、サルコペニア、糖尿病に伴うことがあるサルコペニア、炎症性筋疾患、内科的疾患に伴うミオパチー、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア脳筋症、糖原病、緊張縮退症、筋萎縮症、筋異栄養症、筋肉退化、筋無力症等が挙げられる。なお、筋萎縮症は、筋タンパク質の分解速度が合成速度を上回ることにより筋タンパク質量が減少して筋細胞が減少若しくは縮小し、筋量又は筋力が低下することをいう。筋萎縮症は、不活動に起因する重力曝露の低減による廃用性筋萎縮と、筋萎縮性側索硬化症等の疾病による進行性筋萎縮とを包含している。
実験動物には6週齢雄性、Sprague-Dawley(SD)ラット(ChubuKagaku Shizai,Nagoya,Japan)に一晩絶食後、ストレプトゾシン(STZ)(Sigma Chemical Co., MO,USA)を腹腔内投与した(60mg/kg)。STZ投与1週間後、血糖値を測定し、14mmol/l以上を糖尿病とした。動物は、12時間の明暗サイクルの人工照明下、室温(23+1.0℃)及び湿度(45±10%)で飼育し、自由飲水下で固形飼料を与えた。
6週齢雄性SDラット及びGFPラット(SD-Tg(CAG-EGFP)Cz-0040sb)(Japan SLC,Inc., Hamamatsu,Japan)にペントバルビタール(1.5mg/kg)を腹腔内投与し屠殺後、上下顎中切歯の抜歯を行った。抜去歯より歯髄組織を採取し、0.1%コラゲナーゼおよび0.25%トリプシン/EDTA溶液を用いて酵素処理を行った後、プラスチックディッシュに播種し、α-minimum essential medium(α-MEM) (GIBCO Lab Inc., Grand Island, NY)に20%ES細胞用ウシ胎児血清(GIBCO)、および1%penicillin-streptomycin(G1BCO)を、添加した培養液を用いて、歯髄幹細胞の分離、培養を行った。
6週齢雄性GFPラット歯髄より分離・培養した3出断t目の歯髄幹細胞(GFP-OPSCs)を用いて同定を行った。抗体はPE標識ハムスター抗ラットC029モノクロナール抗体、PE標識マウス抗ラットCD90、CD45モノクロナール抗体(Becton Dickinson, F ranklin Lakes, NJ)を用いた。コントロールとして、PE標識ハムスター19Mモノクロナール抗体、PE標識マウス19Gモノクロナール抗体(Becton Dickinson)を使用した。MACS (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany) を用いてフローサイトメトリーを行い、解析ソフトはMACSQuant (Miltenyi Biotec)を使用した。
歯髄幹細胞を脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞の分化誘導培地で培養し、多分化能の検討を行った。脂肪細胞分化誘導培地は、10%FBS含有α-MEM培地に1%Adipogenic Supplement(R&D systems, Minneapolis, MN, USA) を添加した。14日間培養後、oil red 0(Polysciences, Warrington, PA)染色およびfattyacid-binding protein-4 (FABP-4)免疫染色を行った。骨芽細胞分化誘導培地は、10%FBS含有α-MEM培地に5% Osteogenic Supplement (R&D systems)を添加した。21日間培養後、1%Alizarin red S (Merck, Darmstadt, Germany)染色およびosteocalcin(R&D systems)免疫染色を行った。軟骨細胞分化誘導培地は、1%ITS Supplement (R&D systems)含有Dulbecco’s Modified Eagle' s Medium(D-MEM)/F-12培地(GIBCO)を用いた。21日間のペレッ卜培養後、5μmの凍結切片を作製し、Aggrecan(R&D systems)免疫染色を行った。
糖尿病誘導8週後に6適齢雄性GFPラットから採取したGFP-DPSCs(lx106cells/rat)を正常ラット及び糖尿病ラット片側後肢骨格筋に10か所に分けて移植した。対照側に
は生理食塩水を投与した。移植4週間後に以下の測定を行った。
握力メーター(Columbus 社)を用いて、常法によりラット後肢の筋力を測定した。結果を図1に示す。図1に示すように、正常ラット及び糖尿病ラットともに、歯髄幹細胞の投与により筋力が増大した。投与前に対する投与後の筋力の増大程度は、糖尿病ラットのほうが大きかった(約1.2倍)。
腓腹筋湿潤量を測定した。結果を図2に示す。正常ラットでは、投与前後で筋肉量に変化はなかったが、糖尿病ラットでは筋肉量の増大が観察された。
後肢骨格筋の筋束1本あたりの面積をImageJを用いて計測した。結果を、図3に示す。図3に示すように、正常ラット及び糖尿病ラットの双方で、歯髄幹細胞の投与により筋束サイズの増大を確認できた。糖尿病ラットでは,正常ラットと比較して本来的に筋束サイズが小さい傾向があったが、歯髄幹細胞の移植は,特に、比較的大径サイズの筋束を増大させる傾向があった。一方、糖尿病ラットでは、1000μm2~2000μm2の小さいサイズの筋束の割合が、全体の4分の1程度を占めていたが、歯髄幹細胞投与によってサイズの小さい筋束は1割程度に減少し、9000μm2~10000μm2など、従来全く存在しなかった筋束サイズ領域の筋束を観察することができた。
レーザー血流計(OMEGAFLO, OMEGAWAVE, Inc, Japan)を用いて後肢骨格筋血流を測定した。すなわち、正常ラット及び糖尿病ラットにつき、ペントパルビタールを用いて、深く麻酔し、後肢を切開し、切開部にセンサーをあてて、計測値を読み取った。また、切開部位の切片を常法により調製し、免疫染色により筋束あたりの血管数を計測した。その結果、歯髄幹細胞の移植により、移植部位の筋肉血流が増大することがわかった。また、歯髄幹細胞の移植により、移植側骨格筋の毛細血管数がお増大することがわかった。また、正常ラットにおいてよりも、糖尿病ラットにおいて、血流及び血管数とも増大程度が大きいこともわかった。
後肢骨格筋における増殖・栄養因子(basic fibroblast growth factor(bFGF)、vascular endothelial growth factor(VEGF)、nerve growth factor (NGF)及びneurotrophin-3(NT-3)の遺伝子発現をreal-time PCR法により解析した。結果を図4に示す。すなわち、骨格筋をホモジナイズ後、常法によりRNAを回収して、これらの増殖因子に対応するプライマー及びプローブを用いてリアルタイムPCRを実施した。その結果、正常ラット・糖尿病ラットともに、bFGF発現増強を認めたが,VEGF、NGF及びNT-3においては,糖尿病ラットでのみ増殖・栄養因子の発現増強を確認できた。
後肢骨格筋における移植した歯髄幹細胞の存在を蛍光免疫染色により確認した。その結果、後肢体骨格筋の筋束と筋束との間に歯髄幹細胞が存在していることがわかった。
後肢骨格筋における筋萎縮マーカー(Atrogin-1、MuRF-1)の遺伝子発現をreal-time PCR法により解析した。すなわち、骨格筋をホモジナイズ後、常法によりRNAを回収して、これらの増殖因子に対応するプライマー及びプローブを用いてリアルタイムPCRを実施した。その結果、糖尿病ラットにおいては、歯髄幹細胞の移植によってAtrogin-1、MuRF-1が顕著に減少していた。これに対して正常ラットにおいては、歯髄幹細胞移植前後で大きな変化はなかった。
ラット骨格筋由来のL6筋芽細胞を用い、2%ウマ血清を含むDMEM培地で7日間培養してL6筋管細胞へ分化させた。その後、PBSで細胞を洗浄後、無血清培養液(通常グルコースのDMEM及び高グルコース(25mM)DMEM)に交換した。24時間培養した歯髄幹細胞の培養上清を回収し、L6筋管細胞に添加して、24時間後にRNAを回収し、筋合成マーカー(PGC-1α、PPARα、PPARδ、UCP-3)の遺伝子発現解析を行った。その結果、通常グルコース濃度では、歯髄幹細胞の培養上清を添加しても、PGC-1αのみ増大したが、他は培養上清添加なしと同等か減少した。一方、高グルコース濃度では、PGC-1α、PPARδ、UCP-3が培養上清添加により増大していた。
Claims (7)
- 歯髄幹細胞及び/又は前記歯髄幹細胞の培養上清を含む、サルコペニアによる骨格筋量
の減少又は骨格筋力の低下を改善するための組成物。 - 前記サルコペニアは、糖尿病に伴うサルコペニアである、請求項1に記載の組成物。
- 骨格筋の筋束サイズを増大することで前記骨格筋量の減少又は前記骨格筋力の低下を改
善する、請求項1又は2に記載の組成物。 - 骨格筋への注入用である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
- 前記歯髄幹細胞を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
- 凍結した前記歯髄幹細胞を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
- 前記歯髄幹細胞の培養上清を含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
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Stem Cell Research & Therapy, 2015, Vol. 6, 162 ,retrived from internet,DOI 10.1186/s13287-015-0156-4,検索日2020/05/22 |
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