JP7082456B2 - 電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック - Google Patents
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Description
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
図7は、本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法の一例を示すフローチャートである。はじめに、単セル110を作製する(S110)。単セル110の作製方法は、例えば、以下の通りである。
NiO粉末(50重量部)とYSZ粉末(50重量部)との混合粉末(100重量部)に対して、造孔材である有機ビーズと、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエン+エタノール混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルやポリスチレンなどの高分子により形成された球状粒子である。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば200μm~300μm)の燃料極支持層用グリーンシートを作製する。なお、燃料極支持層用グリーンシートのNiO粉末とYSZ粉末との比率は、その性能を満足する限り適宜変更可能であり、例えばNiO粉末:YSZ粉末が60:40や40:60であってもよい。つまり、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末が100重量部となるように、NiO粉末は例えば40~60重量部の間で適宜変更でき、残りをYSZ粉末とすることができる。
NiO粉末(60重量部)とYSZ粉末(40重量部)との混合粉末(100重量部)に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエン+エタノール混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。なお、上述した燃料極支持層用グリーンシートの作製方法と同様に、スラリーの調整の際に、造孔材としての有機ビーズを加えてもよい。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば10μm~40μm)の燃料極活性層用グリーンシートを作製する。なお、燃料極活性層用グリーンシートのNiO粉末とYSZ粉末との比率は、その性能を満足する限り適宜変更可能であり、例えばNiO粉末:YSZ粉末が50:50や40:60であってもよい。つまり、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末が100重量部となるように、NiO粉末は例えば40~60重量部の間で適宜変更でき、残りをYSZ粉末とすることができる。
YSZ粉末(100重量部)に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエン+エタノール混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調整する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば10μm)の電解質層用グリーンシートを作製する。
燃料極支持層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを貼り付けて所定の温度(例えば約280℃)で脱脂する。さらに、脱脂後のグリーンシートの積層体を所定の温度(例えば約1350℃)で焼成する。これにより、電解質層112と燃料極116(活性層350および支持層360)との積層体を得る。
La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作成する。作成した混合液を、上述した電解質層112と燃料極116との積層体における電解質層112の表面に噴霧塗布し、所定の温度(例えば1100℃)で焼成する。これにより、電解質層112の表面上に空気極114が形成され、その結果、燃料極116と電解質層112と空気極114とを備える単セル110を得る。
その後、燃料電池スタック100を発電運転可能な状態とするため、燃料極116の活性層350を還元する(すなわち、活性層350に含まれるNiOをNiに還元する)還元工程を行う(S130)。還元工程は、例えば、燃料極116を、所定の温度の水素雰囲気に所定の時間だけ晒すことにより実現される。なお、還元工程に利用される還元ガスは、水素に限定されず、メタンガス等の他のガスでもよい。以上により、発電運転可能な状態の燃料電池スタック100の製造が完了する。
上述した製造方法により燃料電池スタック100を製造する際に、燃料電池スタック100を構成する単セル110の各特性を、例えば以下のように調整することができる。なお、単セル110の各特性の特定方法は、後述の「A-6.単セル110の分析方法」において説明する。
燃料極活性層用グリーンシート用のスラリーを調製する際に、スラリーの固形分比(全体積に対する固形分(NiO粉末、YSZ粉末)の体積の割合)を小さくするほど、燃料極116の活性層350における平均気孔径を大きくすることができる。また、電解質層112と燃料極116との積層体を作製するための焼成の際に、焼成温度を高くするほど、また焼成時間を長くするほど、燃料極116の活性層350における平均気孔径を大きくすることができる。
燃料極活性層用グリーンシート用のスラリーを調製する際に、造孔材の添加量を多くするほど、燃料極116の活性層350における平均気孔率を高くすることができる。
燃料極活性層用グリーンシート用のスラリーを調製する際に、NiO粉末の粒径を小さくするほど、燃料極116の活性層350におけるNiの平均粒径を小さくすることができる。また、電解質層112と燃料極116との積層体を作製するための焼成の際に、焼成温度を低くするほど、また焼成時間を短くするほど、燃料極116の活性層350におけるNiの平均粒径を小さくすることができる。
上述した燃料電池スタック100の製造方法における還元工程(図7のS130)と上記各特性との関係は、以下の通りである。例えば、還元工程として、燃料電池スタック100の運転温度(例えば700℃)より低い所定の温度(例えば425℃~600℃)の水素雰囲気に所定の時間(例えば1~2時間)だけ晒す第1の還元工程を行った後、上記運転温度より高い所定の温度(例えば770℃~1000℃)の水素雰囲気に所定の時間(例えば1~2時間)だけ晒す第2の還元工程を行う2段階の還元工程を採用することができる。この場合には、第1の還元工程によって燃料極116の活性層350に含まれるNi粒子のサイズが小さくなり、その結果、Niの比表面積が大きくなってNiが凝集し易い状態となるため、その後の第2の還元工程においてNi粒子の凝集が十分に進行する。そのため、還元工程後の活性層350におけるNiの平均粒径は比較的大きくなる。2段階の還元工程を行う場合において、第1の還元工程における温度を低くするほど、還元工程後の活性層350におけるNiの平均粒径は大きくなる。なお、燃料極116の活性層350において、Niの凝集が進行すると気孔径が大きくなる傾向にあるため、上記2段階の還元工程を採用する場合には、活性層350における平均気孔径は比較的大きくなる。
上述した各特性が互いに異なる複数の単セル110のサンプルを作製し、該サンプルを用いて性能評価を行った。図8は、性能評価結果を示す説明図である。
図8に示すように、各サンプル(サンプルS1~S11)は、上述した各特性(燃料極116の活性層350における平均気孔径、平均気孔率、平均Ni粒径)が互いに異なっている。また、各サンプルは、それらの特性の違いに応じて、単セル110の各分極成分の値が互いに異なっている。ここで、単セル110の分極成分には、単セル110を構成する各層の抵抗値や各界面の抵抗値であるIR抵抗(抵抗分極)に加えて、燃料極116における燃料ガスFGのイオン化反応の抵抗値である燃料極活性化分極Pa(a)と、空気極114における酸化剤ガスOGのイオン化反応の抵抗値である空気極活性化分極Pa(c)と、燃料極116における燃料ガスFGの拡散の抵抗値である燃料極ガス拡散分極Pd(a)と、空気極114における酸化剤ガスOGの拡散の抵抗値である空気極ガス拡散分極Pd(c)とがある。上述したように、本実施形態の単セル110は燃料極支持型であり、空気極114は比較的薄いため、空気極ガス拡散分極Pd(c)は無視できる程度に小さい。単セル110における各分極成分の値の特定方法は、後述の「A-6.単セル110の分析方法」において説明する。
本性能評価では、単セル110の初期電圧およびη抵抗の測定を行い、η抵抗の値を基準に性能評価を行った。具体的には、温度700℃、電流密度0.55A/cm2で発電運転を行い、単セル110の初期電圧を測定した。また、上記発電運転条件において、カレントインタラプション法により単セル110のη抵抗を測定した。図8に示すように、単セル110のη抵抗が低いほど、単セル110の初期電圧は高くなる傾向にある。本性能評価では、単セル110のη抵抗が0.2Ωcm2未満の場合に合格(〇)と判定し、単セル110のη抵抗が0.2Ωcm2以上の場合に不合格(×)と判定した。また、単セル110のη抵抗が0.14Ωcm2未満の場合に良好(◎)と判定した。
図8に示すように、サンプルS1,S2,S10,S11では、η抵抗が0.2Ωcm2以上であったため、不合格(×)と判定された。これに対し、サンプルS3,S4,S8,S9では、η抵抗が0.2Ωcm2未満であったため、合格(〇)と判定された。また、サンプルS5~S7では、η抵抗が0.14Ωcm2未満であったため、良好(◎)と判定された。
A-6-1.単セル110の各分極成分の特定方法:
単セル110の各分極成分(燃料極活性化分極Pa(a)、空気極活性化分極Pa(c)、燃料極ガス拡散分極Pd(a))の特定方法は、例えば以下の通りである。なお、上述したように、本実施形態の単セル110は燃料極支持型であるため、空気極ガス拡散分極Pd(c)は無視できる程度に小さい。
・発電運転温度:700℃
・開回路電圧(OCV)基準
・測定周波数帯:0.1Hz~100,000Hz(0.1MHz)
・AC振幅:10mV
・ガス温度:(空気極側)酸素20vol%と窒素80vol%の混合ガス
(燃料極側)水素96vol%と水蒸気4vol%の混合ガス
(1)21Hz未満の時の抵抗値を、燃料極ガス拡散分極Pd(a)とし、
(2)21Hz以上、510Hz未満の時の抵抗値を、空気極活性化分極Pa(c)とし、
(3)510Hz以上の時の抵抗値を、燃料極活性化分極Pa(a)とする。
(活性層350の特定方法)
燃料極116における活性層350の特定方法は、例えば以下の通りである。反応ガス(酸化剤ガスOGまたは燃料ガスFG)の流れ方向(図2に示すように本実施形態では酸化剤ガスOGの流れ方向はX軸方向であり、燃料ガスFGの流れ方向はY軸方向である)に沿って並ぶ任意の3つの位置で、反応ガス(酸化剤ガスOGまたは燃料ガスFG)の流れ方向に略直交する断面(燃料極116と電解質層112と空気極114とが積層されている方向に平行な断面であり、図4に示すように本実施形態ではZ軸方向に平行な断面)を設定し、各断面の任意の3カ所で、燃料極116の活性層350が写ったFIB-SEM(加速電圧1.5kV)におけるSEM画像(例えば5000倍)を得る。つまり、9つのSEM画像が得られる。各SEM画像は、例えば、活性層350の上下方向における全体が確認できる画像であって、電解質層112と燃料極116との境界B1(図6参照)と推測される部分が、当該画像を上下方向に10等分に分割して得られる10個の分割領域の内、最も上の分割領域内に位置し、活性層350と支持層360との境界B2(図6参照)と推測される部分、あるいは、燃料極116の下端が、最も下の分割領域内に位置している画像である。
燃料極116の活性層350における平均Ni粒径の特定方法は、例えば以下の通りである。なお、平均Ni粒径を特定する際には、還元後の活性層350を用いることが好ましい。上記各SEM画像において、上下方向に直交する複数の直線を所定の間隔(例えば1μmから5μm間隔)で引く。ここで、活性層350内におけるNi粒子とYSZ粒子と気孔との識別は、例えば、各SEM画像における明暗差を用いて行うことができる。具体的には、各SEM画像を解析することにより、各SEM画像を、明度に応じた3つの領域に分類することができる。各直線上のNiにあたる各部分の長さを測定し、Niにあたる各部分の長さの平均値に所定の係数を乗算した値(具体的には、水谷惟恭著「セラミックプロセシング」(技報堂出版)のp.192-195の記載を参考に、Niを球形と考えて平均値に係数1.5を乗算した値)を、当該線上におけるNiの粒子径とする。活性層350に引かれた複数の直線におけるNiの粒子径の平均値を、活性層350における平均Ni粒径とする。
燃料極116の活性層350における平均気孔径の特定方法は、例えば以下の通りである。上述した平均Ni粒径の特定方法と同様に、上記各SEM画像において、上下方向に直交する複数の直線を所定の間隔(例えば1μmから5μm間隔)で引き、各直線上の気孔にあたる各部分の長さを測定し、気孔にあたる各部分の長さの平均値に所定の係数を乗算した値(具体的には、上記Ni粒径と同様に、気孔を球形と考えて平均値に係数1.5を乗算した値)を、当該線上における気孔径とする。活性層350に引かれた複数の直線における気孔径の平均値を、活性層350における平均気孔径とする。
燃料極116の活性層350における平均気孔率の特定方法は、例えば以下の通りである。上述したNiの平均粒径の特定方法と同様に、上記各SEM画像において、上下方向に直交する複数の直線を所定の間隔(例えば1μmから5μm間隔)で引き、各直線上の気孔にあたる各部分の長さを測定し、直線の全長に対する気孔にあたる各部分の長さの合計の比を、当該線上における気孔率とする。活性層350に引かれた複数の直線における気孔率の平均値を、活性層350における平均気孔率とする。
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
Claims (4)
- 電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備える電気化学反応単セルにおいて、
運転開始前において、前記電気化学反応単セルの分極成分を、開回路電圧基準で、測定周波数帯:0.1Hz~0.1MHz、AC振幅:10mV、温度:700℃、使用ガス:前記空気極側は酸素20vol%、窒素80vol%の混合ガス、前記燃料極側は水素96vol%、水蒸気4vol%の混合ガスという条件による交流インピーダンス測定の結果に基づく等価回路解析により、前記燃料極におけるガスのイオン化反応の抵抗値である燃料極の活性化分極(Ω)と、前記空気極におけるガスのイオン化反応の抵抗値である空気極の活性化分極(Ω)と、前記燃料極と前記空気極との内の前記第1の方向の厚さが厚い方である特定電極におけるガス拡散の抵抗値であるガス拡散分極(Ω)と、の3つの抵抗成分に分けたときの前記特定電極の前記活性化分極Paに対する前記ガス拡散分極Pdの比(Pd/Pa)が、1.0以上、4.0以下であり、
前記特定電極は、燃料極であり、
前記燃料極は、第1の燃料極層と、前記第1の燃料極層と前記電解質層との間に配置される第2の燃料極層と、を含み、
前記燃料極は、NiとYSZとからなり、
前記第1の燃料極層の気孔率は、前記第2の燃料極層の気孔率より高いことを特徴とする、電気化学反応単セル。 - 請求項1に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第2の燃料極層は、遷移金属を含み、
前記第2の燃料極層における平均気孔径は、0.55μm以上であり、
前記第2の燃料極層における前記遷移金属の平均粒径は、1.10μm以下であることを特徴とする、電気化学反応単セル。 - 請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記特定電極の前記活性化分極Paに対する前記ガス拡散分極Pdの比(Pd/Pa)が、1.7以上、2.5以下であることを特徴とする、電気化学反応単セル。 - 前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルであることを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
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