JP7081603B2 - インキ組成物、印刷物、及び、真贋判定方法 - Google Patents

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Description

本開示の実施形態は、熱によって発光色が変化するインキ組成物、およびそれを用いた印刷物、真贋判定方法に関するものである。
銀行券、有価証券、パスポート、身分証明書、印紙類、回数券、各種チケット等のようにセキュリティが必要とされる印刷物には、偽造や改ざんを防止すること、偽造品と真正品とを識別するために、真贋判定、偽造防止要素の付与が不可欠となっている。
近年はプリンタやスキャナといった電子機器の普及に伴い、有価証券等の無許可複製が横行している。このような偽造の被害が、社会問題化しており、偽造技術は巧妙を極める一方であることから、高度な真贋判定、偽造防止の技術の開発が急務となっている。
例えば、特許文献1にあるように、高度な偽造防止技術として、ホログラムを使用した印刷物があるが、製造コストが高く、単価の低い印刷物への使用には不向きである。また、特許文献2にあるように、可視光では目視不可能で、可視光以外の一定波長の光で蛍光を発する蛍光インキの印刷がされたものが提案されている。また、特許文献3には、偽造防止技術の一つとして感温変色インキを用いて印刷することが行なわれている。
しかし、上記の蛍光インキの印刷や感温変色インキの印刷の場合、偽造技術が進み、また技術の陳腐化により広く周知されたものであり、偽造防止効果が薄いことが問題となっている。
特開平6-278396号公報 特開平6-297888号公報 特開2008-308555号公報
有価証券等の真贋判定乃至偽造防止の他、盗難や詐欺防止用に品物上に付与する、セキュリティマーキングを付与する技術が求められている。
特許文献2のように、可視光では目視不可能で、可視光以外の一定波長の光で蛍光を発する蛍光発光によるセキュリティマーキングは、品物の美観や意匠を損ねない点から好ましいものである。しかし、近年、発光体や蛍光インキ等が比較的容易に入手可能な状況にあることから、容易に入手可能な発光体とは異なる特徴の発光特性を持つ発光体の使用が望まれている。特許文献3の感温変色インキは、温度が高くなると透明化し、温度が低くなると着色するインキであり、熱によって発光色自体が変化するインキは従来知られていなかった。
本開示の実施形態は、可視光以外の一定波長の光照射で蛍光を発し、熱によって発光色が変化するインキ組成物、およびそれを用いた印刷物、真贋判定方法を提供することを目的とする。
本開示の1実施形態は、三価の希土類イオンと、β-ジケトン配位子、カルボン酸配位子、ホスフィンオキシド配位子、及び含窒素芳香族複素環配位子から選ばれる少なくとも1種の有機配位子とを含む、1種又は2種以上の希土類錯体を含有し、
前記1種又は2種以上の希土類錯体に含まれる前記三価の希土類イオンとして、下記グループAから選ばれる少なくとも1種と、下記グループBから選ばれる少なくとも1種とを含む、インキ組成物を提供する。
グループA:Eu3+、Sm3+、Pr3+、及びHo3+
グループB:Tb3+、Er3+、Tm3+、Dy3+、Yb3+、Nd3+、Ce3+、及びGd3+
本開示の1実施形態は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有するインキ層を有する、印刷物を提供する。
本開示の1実施形態は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有するインキ層を摩擦し、その際に生じる摩擦熱によって発光色が変化することにより、真贋判定を行う、真贋判定方法を提供する。
本開示の1実施形態においては、前記希土類錯体は、前記有機配位子として、下記一般式(1)で表されるホスフィンオキシド配位子を含む、インキ組成物、印刷物、及び真贋判定方法を提供する。
Figure 0007081603000001
[一般式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。一般式(1)中、Arは、下記一般式(2a)、(2b)又は(2c)で表される二価の基であり、nは1又は2である。
Figure 0007081603000002
(前記一般式(2a)~(2c)中、Rは、それぞれ独立に、一価の置換基であり、Xは、硫黄原子又は酸素原子であり、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、mは、0から、Rが結合する環における置換可能な部位までの整数である。Rが複数ある場合、Rはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
一般式(1)中、Eは、水素原子又は下記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基である。
Figure 0007081603000003
(一般式(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。)]
本開示の実施形態においては、前記希土類錯体は、ホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して、形成された架橋構造を含む、インキ組成物、印刷物、及び真贋判定方法を提供する。
本開示の実施形態においては、前記希土類錯体は、前記有機配位子として、下記一般式(4)で表されるβ-ジケトン配位子を含む、インキ組成物、印刷物、及び真贋判定方法を提供する。
Figure 0007081603000004
(一般式(4)中、Q及びQは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、Zは、水素原子又は重水素原子である。)
本開示の実施形態においては、前記希土類錯体は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+と、Tb3+とを含む、インキ組成物、印刷物、及び真贋判定方法を提供する。
本開示の実施形態においては、前記希土類錯体は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+1モルに対して、Tb3+を1モル以上300モル以下含む、インキ組成物、印刷物、及び真贋判定方法を提供する。
本開示の実施形態によれば、可視光以外の一定波長の光照射で蛍光を発し、熱によって発光色が変化するインキ組成物、およびそれを用いた印刷物、真贋判定方法を提供することができる。
本開示の1実施形態の印刷物の一例を示す概略断面図である。 本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を示す図である。 本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を示す図である。 発光スペクトル測定を行う装置を示す図である。 実施例1の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 実施例2の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 実施例3の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 実施例4の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である 実施例5の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 実施例6の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である 実施例7の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 比較例1の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 比較例2の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。 比較例3の印刷物のインキ層について、25℃、60℃、および90℃での発光スペクトルを示す図である。
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定が無い限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
1.インキ組成物
本開示の1実施形態のインキ組成物は、三価の希土類イオンと、β-ジケトン配位子、カルボン酸配位子、ホスフィンオキシド配位子、及び含窒素芳香族複素環配位子から選ばれる少なくとも1種の有機配位子とを含む、1種又は2種以上の希土類錯体を含有し、
前記1種又は2種以上の希土類錯体に含まれる前記三価の希土類イオンとして、下記グループAから選ばれる少なくとも1種と、下記グループBから選ばれる少なくとも1種とを含む、インキ組成物である。
グループA:Eu3+、Sm3+、Pr3+、及びHo3+
グループB:Tb3+、Er3+、Tm3+、Dy3+、Yb3+、Nd3+、Ce3+、及びGd3+
本開示の1実施形態のインキ組成物は、可視光以外の一定波長の光照射で蛍光を発し、熱によって発光色が変化するインキ組成物である。その理由は、未解明な部分もあるが、以下のように推定される。
本開示の1実施形態のインキ組成物は、特定の有機配位子を含む1種又は2種以上の希土類錯体を含有し、当該1種又は2種以上の希土類錯体に含まれる三価の希土類イオンとして、前記特定のグループAから選ばれる少なくとも1種と、前記特定のグループBから選ばれる少なくとも1種とを含む。
希土類錯体は可視光では目視不可能で、可視光以外の一定波長の光照射で蛍光を発する。また、希土類錯体は温度に応じて、熱振動失活や配位子への逆エネルギー移動といった熱失活過程を起こす。これらの熱失活過程は、三価の希土類イオンや使用する配位子により挙動が異なる。そのため、三価の希土類イオンとして、前記特定のグループAから選ばれる少なくとも1種と前記特定のグループBから選ばれる少なくとも1種とを含むように選択して組み合わせることにより、前記1種又は2種以上の希土類錯体が異なる波長領域で発光するようになる。このように異なる波長領域で発光する希土類イオンを組み合わせた希土類錯体を用いることで、温度に対する各発光強度の変化度合に差が生じる。結果として熱をかけた際の発光強度の変化の差が発光色の変化として認識可能となる。さらに、多座配位子を介して複数の希土類金属が一分子中に連なる場合、配位子を介した異なる金属間のエネルギー移動が温度により活性化されることでも、発光強度に差を生じさせることが可能となる。
以上のことから、三価の希土類イオンとして、前記特定のグループAから選ばれる少なくとも1種と、前記特定のグループBから選ばれる少なくとも1種と、特定の有機配位子とを含む1種又は2種以上の希土類錯体を含有することにより、熱によって発光色が変化するインキ組成物となる。
このような熱によって発光色が変化するインキ組成物の固化物を含有するインキ層は、当該インキ層を加熱したり、擦ることで生じる摩擦熱によって、発光色が変化するため、発光挙動の特殊性によって真贋判定性、偽造防止性が高いものであり、セキュリティマーキングの付与に広く適用可能である。
なお、本開示において、「熱によって発光色が変化する」とは、異なる波長領域の発光強度の差を熱により制御可能であればよい。発光色の波長は必ずしも可視光領域の波長でなくても良く、近赤外領域や近紫外領域に該当する波長であってもよい。例えば、強くなる発光色の波長に、可視光領域以外の、例えば近赤外領域や近紫外領域に該当する波長を含む場合、適宜、当該波長領域の光を検出できる検出器を用いることができる。
また、前記特定の1種又は2種以上の希土類錯体を用いた蛍光体は、前記有機配位子によって励起光の吸収効率が高く、励起光を効率的に利用でき、無機蛍光体に比べて発光強度が高い。さらに、前記特定の1種又は2種以上の希土類錯体を用いた蛍光体は、有機溶剤への溶解性、媒体への分散性、樹脂との相溶性に優れることから、所望のインキ組成物を調製し易く、所望のインキ層を形成し易く、各種セキュリティーマーキングに適用し易いというメリットもある。
なお、前記特定の1種又は2種以上の希土類錯体の励起光としては、可視光線以外の電磁波が挙げられ、例えば、紫外線、赤外線等が挙げられる。
本開示のインキ組成物は、少なくとも、前記特定の1種又は2種以上の希土類錯体を含有するものであり、効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このようなインキ組成物の各成分について、順に詳細に説明する。
<前記特定の1種又は2種以上の希土類錯体>
(希土類イオン)
本開示のインキ組成物に用いられる、1種又は2種以上の希土類錯体は、三価の希土類イオンとして、下記グループAから選ばれる少なくとも1種と、下記グループBから選ばれる少なくとも1種とを含む。
グループA:Eu3+、Sm3+、Pr3+、及びHo3+
グループB:Tb3+、Er3+、Tm3+、Dy3+、Yb3+、Nd3+、Ce3+、及びGd3+
ここで、グループAの希土類イオンを含む希土類錯体の発光強度が最大となる波長(λ1)と、グループBの希土類イオンを含む希土類錯体の発光強度が最大となる波長(λ2)との差の絶対値は、50nm以上である。
そのため、加熱した際の発光強度の変化の差が、発光色の変化として認識可能となる。発光色の波長に、可視光領域以外の、例えば近赤外領域や近紫外領域に該当する波長を含む場合、発光色の変化は、前述のように、適宜、当該波長領域の光を検出できる検出器を用いて認識することができる。
また、加熱前後の発光色は、グループAの希土類イオンと、グループBの希土類イオンとの比率を適宜変更することにより、調整することが出来る。例えば、グループAの希土類イオン1モルに対して、グループBの希土類イオンを1モル以上300モル以下含むことが、挙げられる。
中でも、前記希土類錯体は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+と、Tb3+とを含むことが、加熱した際の発光強度の変化の差が大きく、発光色の変化の視認性が高い点から、好ましい。Tb3+は、金属-配位子逆エネルギー移動の性質が顕著であるため、Tb3+を含むと発光色の変化の視認性が高くなりやすい。
中でも、前記希土類錯体は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+と、Tb3+とを含む場合に、Eu3+1モルに対して、Tb3+を1モル以上300モル以下含むことが、発光色の変化の視認性が向上する点から、好ましい。
(有機配位子)
前記三価の希土類イオンに配位する配位子としては、β-ジケトン配位子、カルボン酸配位子、ホスフィンオキシド配位子、及び含窒素芳香族複素環配位子から選ばれる少なくとも1種の有機配位子を含む。
一般に、希土類錯体に吸収された励起光は、配位子から希土類イオンに受け渡され、発光する光のエネルギーに変換される。希土類錯体が、上記した有機配位子を含むことで、希土類錯体が吸収した励起光の光エネルギーを、希土類イオンに効率よく供給することができ、また、希土類イオンにおいて、供給された光のエネルギーを高効率で、発光する光のエネルギーに変換することができる。
前記三価の希土類イオンに配位する配位子としては、本開示の効果が損なわれない限り、β-ジケトン配位子、カルボン酸配位子、ホスフィンオキシド配位子、及び含窒素芳香族複素環配位子から選ばれる少なくとも1種の有機配位子とは異なる配位子を含んでいてもよい。
有機配位子は、錯体の安定性の点から、アニオン性配位子を含むことが好ましく、β-ジケトン配位子及びカルボン酸配位子の少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、β-ジケトン配位子は、吸光係数が高いため、励起光のエネルギーを配位した希土類イオンへ効率よく供給することができ、発光強度を向上する点から好ましい。
また、有機配位子は、発光強度を高くする点から、中性配位子である含窒素芳香族複素環配位子及びホスフィンオキシド配位子の少なくとも1種を含むことが好ましい。含窒素芳香族複素環配位子は、吸光係数が高いため、励起光のエネルギーを配位した希土類イオンへ効率よく供給することができ、発光強度を向上する。また、ホスフィンオキシド配位子は、低振動なP=O骨格を含むため、配位した希土類イオンが受け取ったエネルギーを振動失活させないように機能する。低振動な骨格を含むと、光エネルギーの変換時における熱失活が抑制されるため、発光効率が高められ、発光強度が向上する。
また、C-X(Xはハロゲン原子:F、Cl、Br及びI)結合のようにハロゲン原子が置換されている炭素原子は、低振動な骨格(C-X結合)を含むため、上記と同様に発光効率を向上し、発光強度を向上する。低振動な骨格としては、例えば、パーハロゲン化アルキル基が挙げられ、具体例としてトリフルオロメチル基が挙げられる。
以上のことから、有機配位子としては、β-ジケトン配位子及びカルボン酸配位子の少なくとも1種のアニオン性配位子と、ホスフィンオキシド配位子及び含窒素芳香族複素環配位子の少なくとも1種とを含むことが好ましく、中でも、β-ジケトン配位子の少なくとも1種のアニオン性配位子と、ホスフィンオキシド配位子及び含窒素芳香族複素環配位子の少なくとも1種とを含むことが好ましく、これらの組み合わせの有機配位子中に、更に、ハロゲン原子が置換されている炭素原子を含むことがより更に好ましい。
β-ジケトン配位子としては、例えば、下記一般式(4)で表されるβ-ジケトン配位子が挙げられる。
Figure 0007081603000005
(一般式(4)中、Q及びQは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、Zは、水素原子又は重水素原子である。)
一般式(4)中Q及びQにおいて、炭化水素基とは、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、及びこれらの組合せが挙げられ、前記脂肪族炭化水素基としては、飽和、若しくは不飽和の、直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基が更に挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ジベンゾ[c,g]フェナントリル基等が挙げられる。
また、前記脂肪族炭化水素基のうち、飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上20以下の飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基が挙げられ、炭素数1以上10以下の飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基が更に挙げられる。このような飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基やシクロアルキル基が挙げられる。
また、前記脂肪族炭化水素基のうち、不飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数2以上20以下の不飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基が挙げられ、炭素数2以上10以下の不飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。このような不飽和の直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、イソプロぺニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2-エチルヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニシル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、及びアルキニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基の組合せとしては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。
及びQにおいて、芳香族複素環基としては、O(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、且つ環形成炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が挙げられ、更に環形成炭素数2以上10以下の芳香族複素環基が挙げられ、より更に4員環から7員環の芳香族複素環基が挙げられる。このような芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾフラニル基、キノリル基等が挙げられる。
前記炭化水素基、及び前記芳香族複素環基は、必要に応じて重水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI)、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基及びメルカプト基などの置換基を有していてもよい。また、前記炭化水素基、及び前記芳香族複素環基は、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基などの置換基を有していてもよい。
更に、前記芳香族炭化水素基、及び前記芳香族複素環基は、炭素数~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基で置換されていても良い。
中でも、置換基として、ハロゲン原子を有し、C-X(Xはハロゲン原子:F、Cl、Br及びI)結合を有する場合には、低振動の骨格になることから、当該構造を含むと、希土類金属が受け取ったエネルギーを振動失活させないように機能し、発光効率を向上し、発光強度を向上する点から好ましい。
及びQとしては、それぞれ独立に、中でも、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上20以下のパーハロゲン化脂肪族炭化水素基、炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基、炭素数6以上22以下のパーハロゲン化芳香族炭化水素基、環形成炭素数2以上10以下の芳香族複素環基、及び、環形成炭素数2以上10以下のパーハロゲン化芳香族複素環基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、炭素数3以上6以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上20以下のパーハロゲン化脂肪族炭化水素基、炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基、及び環形成炭素数2以上10以下の芳香族複素環基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
前記一般式(4)中のZは、水素原子Hであっても重水素原子Dであってもよいが、水素原子Hであることが好ましい。ZがHである希土類金属錯体に、重水素化剤を作用させて、重水素置換反応することにより、重水素化錯体(Zが重水素原子Dである錯体)を得られる。
そのような重水素化剤は、例えば、重水素を含むプロトン性化合物、具体的には、重水;重水素化メタノール及び重水素化エタノールなどの重水素化アルコール;重塩化水素;及び重水素化アルカリなどを含む。重水素置換反応を促進するために、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどの塩基剤及び添加剤を加えてもよい。
β-ジケトン配位子としては、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-(2-フラニル)-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-(3-ピリジル)-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-{5-(2-メチルチエニル)}-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-(2-ナフチル)-1,3-ブタンジオン、及び2,2-ジメチル-6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-3,5-オクタンジオン等のβ-ジケトンから誘導される配位子等が挙げられる。
カルボン酸配位子としては、カルボキシラート基(-COO)を有する配位子が挙げられ、例えば、ギ酸(ホルマト)配位子、酢酸(アセタト)配位子、プロピオン酸(プロピオナト)配位子、クエン酸配位子、サリチル酸配位子、テレフタル酸配位子、イソフタル酸配位子、2-ヒドロキシテレフタル酸配位子、1,4-ナフタレンジカルボン酸配位子、トリメシン酸配位子、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン配位子、及びビフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸配位子等が挙げられる。
ホスフィンオキシド配位子としては、例えば、下記一般式(5)で表されるホスフィンオキシド配位子が挙げられる。
Figure 0007081603000006
[一般式(5)中、Q11及びQ12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、Q13は、二価の有機基であり、n’は1~20の整数である。
一般式(1’)中、E’は、水素原子又は下記一般式(6)で表されるホスフィンオキシド基である。
Figure 0007081603000007
(一般式(6)中、Q14及びQ15は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。)]
一般式(5)中のQ11及びQ12、並びに、一般式(6)中のQ14及びQ15は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。
当該置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、前記一般式(4)で表されるQ及びQにおける、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基と同様であって良い。
11及びQ12、並びに、Q14及びQ15は、それぞれ独立に、中でも、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上20以下のパーハロゲン化脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、パーハロゲン化芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、及び、パーハロゲン化芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上6以下のパーハロゲン化脂肪族炭化水素基、炭素数6以上22以下の芳香族炭化水素基、及び環形成炭素数2以上10以下の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(5)中のQ13は、二価の有機基である。当該二価の有機基は少なくとも炭素原子を含む基であり、特に限定されず、複数の基が連結した基であっても良い。Q13は、例えば、二価の不飽和基、二価の芳香族基、オキシアルキレン基、及びこれらの組み合わせ等が挙げられ、これらの基には更に他の基が結合していても良い。Q13は、これらの二価の基が複数結合して構成される基であっても良く、ポリマー状の構造を有する基であっても良い。
一般式(5)中のQ13における、二価の有機基は、耐熱性が良好な点から、少なくとも1つの芳香環を含む基であることが好ましく、複数の芳香環を含む基であることがより好ましい。
また、一般式(5)中のQ13としては、耐熱性が良好な点から、後述する、下記一般式(2a)、(2b)又は(2c)で表される二価の基であることが好ましい。
前記二価の不飽和基としては、例えば、ビニレン基等のアルケニレン基が挙げられる。
前記二価の芳香族基としては、二価の芳香族炭化水素基と、二価の芳香族複素環基が挙げられる。前記二価の芳香族炭化水素基と、前記二価の芳香族複素環基としては、それぞれ、前記一般式(4)で表されるQ及びQにおける、一価の芳香族炭化水素基と、一価の芳香族複素環基から、更に1つの水素原子を除いた2つの結合手を有する基が挙げられる。前記二価の芳香族基に含まれる芳香族環としては、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、カルバゾール環等が好適に用いられる。
前記オキシアルキレン基としては、オキシメチレン基等が挙げられる。また、これらの二価の基が複数結合した基としては、例えば、2つ以上の芳香環が結合した基や、両末端でリン原子と結合するポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)からなる基等が挙げられる。
一般式(5)中のQ11、Q12、及びQ13、並びに、一般式(6)中のQ14及びQ15が有していても良い置換基としては、炭素数1以上20以下の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基等が挙げられる。当該置換基としての炭素数1以上20以下の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
一般式(5)中、E’が前記一般式(6)で表されるホスフィンオキシド基であると、前記一般式(5)で表される前記ホスフィンオキシド配位子が二座配位子となり、該ホスフィンオキシド配位子が二つの前記希土類イオンに配位して形成された架橋構造を含む希土類錯体を形成することができる。当該架橋構造を含む希土類錯体について、以下、錯体ポリマーという場合がある。この場合、ホスフィンオキシド二座配位子が配位する二つの前記希土類イオンは、同一であっても異なっていても良く、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンのうちの2つであってもよいし、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンのうちの2つであってもよいし、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンの1つと前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンの1つであっても良い。
ホスフィンオキシド配位子としては、前記一般式(5)で表されるホスフィンオキシド配位子の中でも、耐熱性が高い点から、下記一般式(1)で表されるホスフィンオキシド配位子が好ましい。
Figure 0007081603000008
[一般式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。一般式(1)中、Arは、下記一般式(2a)、(2b)又は(2c)で表される二価の基であり、nは1又は2である。
Figure 0007081603000009
(前記一般式(2a)~(2c)中、Rは、それぞれ独立に、一価の置換基であり、Xは、硫黄原子又は酸素原子であり、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、mは、0から、Rが結合する環における置換可能な部位までの整数である。Rが複数ある場合、Rはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
一般式(1)中、Eは、水素原子又は下記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基である。
Figure 0007081603000010
(一般式(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。)]
一般式(1)中のAr及びAr、並びに、一般式(3)中のAr及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。
当該芳香族基としては、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が挙げられる。ここでの芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、前記一般式(4)で表されるQ及びQにおける、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様であって良い。
一般式(1)中のAr及びAr、並びに、一般式(3)中のAr及びArの芳香族基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ジベンゾ[c,g]フェナントリル基、ピリジル基、チエニル基等が挙げられる。一般式(1)中のAr及びAr、並びに、一般式(3)中のAr及びArの芳香族基としては、中でも、フェニル基、ピリジル基、又はチエニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましいものとして挙げられる。
一般式(1)中のAr及びAr、並びに、一般式(3)中のAr及びArが有していても良い置換基、及び、Rとしての一価の置換基は、それぞれ、炭素数1以上20以下の炭化水素基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基等が挙げられる。
一般式(1)中のRは、水素原子又は炭化水素基であり、当該炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は、前記一般式(4)で表されるQ及びQにおける、炭化水素基と同様であって良い。一般式(1)中のRの炭化水素基としては、中でも、フェニル基、及び炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記一般式(2a)、(2b)及び(2c)中、mは、0から、Rが結合する環における置換可能な部位までの整数であり、中でも、0以上2以下の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記一般式(1)中、nは1又は2であり、Arが前記一般式(2c)で表される二価の基である場合、nは1であることが好ましい。
前記一般式(1)中、Eは、水素原子又は前記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基である。前記一般式(1)中、Eが前記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基であると、前記一般式(1)で表される前記ホスフィンオキシド配位子が二座配位子となり、該ホスフィンオキシド配位子が二つの前記希土類イオンに配位して形成された架橋構造を含む希土類錯体を形成することができる。
含窒素芳香族複素環配位子を構成する含窒素芳香族複素環式化合物としては、単環化合物の他に、環集合化合物、縮合環化合物も含まれる。芳香環を構成する原子数は、通常5以上30以下であり、5以上18以下が好ましく、入手が容易で性能も優れることから原子数が6以上10以下のものが特に好ましい。
前記含窒素芳香族複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2,6-ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、3-(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H-インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6-ジ-t-ブチルピリジン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、5,5'-ジメチル-2,2'-ビピリジル、6,6'-t-ブチル-2,2'-ジピリジル、4,4'-ジフェニル-2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン、2,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン等が挙げられる。前記含窒素芳香族複素環式化合物としては、中でも、例えば、1,10-フェナントロリン、2-2’-ビピリジル、2-2’-6,2”-ターピリジル、2,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール等の二座配位子となるフェナントロリン類、ピリジン類が好ましく用いられる。
前記希土類錯体は、ホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して、形成された架橋構造を含むことが好ましい。このような架橋構造を有する場合には、発光強度が高くなり、且つ、当該二座配位子を介した異なる金属間のエネルギー移動が温度により活性化されることで、発光強度に差を生じさせやすく、発光色の色変化が顕著になりやすい。
また、前記希土類錯体がホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、一般式(1)で表され、一般式(1)中のEが一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基であるホスフィンオキシド二座配位子の場合には、中でも耐光性に優れ、且つ耐溶剤性にも優れる点から、更に好ましい。従来の発光強度の高い希土類錯体は溶剤に溶けやすいため、インキ組成物や印刷物にしたときの耐溶剤性が悪く、医療現場のようなアルコールや有機溶剤を使用する現場において使用される医療用管理ラベル等へのセキュリティ性付与には不向きであるという課題があった。更に、セキュリティ印刷物は、溶剤を用いた改ざんを防止することが求められており、改ざん防止の観点からも従来の希土類錯体は適していないという課題があった。それに対して、一般式(1)で表され、一般式(1)中のEが一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基であるホスフィンオキシド二座配位子を含む希土類錯体は、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタンなどの有機溶媒に不溶であるため、当該二座ホスフィンオキシド配位子を含む希土類錯体を含むインキ組成物は、印刷物にしたときの耐溶剤性が高く、有機溶剤を用いる現場で使用されるセキュリティ性付与においても利用可能であり、更に、溶剤を用いた改ざんを防止できる。
発光強度に優れる点から、好ましい前記希土類錯体の少なくとも1種としては、例えば、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する希土類錯体及び下記一般式(8)で表される希土類錯体の少なくとも1種が挙げられる。中でも、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する希土類錯体を含むと、耐熱性、耐光性、及び耐溶剤性に優れた印刷物を作成することができる。
Figure 0007081603000011
(一般式(7)中、Ln3+は三価の希土類イオンを表し、前記グループA及びグループBから選ばれる少なくとも1種であり、Ar、Ar及びArは前記一般式(1)と同様であり、Ar及びArは前記一般式(3)と同様であり、Q、Q及びZは前記一般式(4)と同様である。複数のAr、Ar、Ar、Ar及びAr、並びに、Ln3+、Q、Q及びZは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
前記一般式(7)のLn3+が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとを含む場合には、前記一般式(7)中のホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して、形成された架橋構造を含むことになり、発光強度に差を生じさせやすく、発光色の色変化が顕著になりやすい点から好ましい。
Figure 0007081603000012
(一般式(8)中、Ln3+は三価の希土類イオンを表し、前記グループA及びグループBから選ばれる1種であり、Ar、Ar及びArは前記一般式(1)と同様であり、Q、Q及びZは前記一般式(4)と同様である。n1は1以上5以下の整数であり、n2は1以上4以下の整数である。)
前記一般式(8)において、発光強度が向上する点から、n1は1又は2であることが好ましく、n2は2、3又は4であることが好ましく、n1が2であり且つn2が3であることが中でも好ましい。
前記希土類錯体は、例えば、希土類イオンの原料である希土類金属化合物と配位子となる化合物とを、必要に応じて触媒の存在下で、これらを溶解又は分散できる溶媒中にて拡販する方法によって合成することができる。溶媒としては、希土類金属化合物及び配位子となる化合物に対して好適なものを混合して用いてもよく、例えば、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒を適用することができる。触媒としては、例えば、必要に応じて、トリメチルアミンや水酸化リチウム等を添加することができる。
<その他の成分>
インキ組成物には、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更にその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、ビヒクルの他、インキに印刷に使用されている既知の補助剤、例えば、分散剤、架橋剤、乾燥促進剤、重合禁止剤、ワックス、体質顔料、着色剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、整面助剤、裏移り防止剤、消泡剤、又は界面活性剤等が挙げられる。
(ビヒクル)
ビヒクルは、前記希土類錯体を分散させ、塗布乃至印刷した場合に塗膜形成能力をもつ媒体である。本開示に用いられるビヒクルは、インキに使用されている既知のビヒクル成分、例えば、樹脂、溶剤、光硬化性成分等を含んでよい。
ビヒクルに含まれる樹脂としては、既知の樹脂を適宜選択して用いることができる。例えば、インキに使用されている既知の樹脂を使用してよく、油性インキに含まれる樹脂、又はUVインキに含まれる樹脂を使用してよい。
樹脂は、天然樹脂又は合成樹脂でよく、かつホモポリマー又はコポリマーでよい。油性インキの粘性を確保するためには、樹脂が固形であることが好ましい。天然樹脂としては、例えば、松脂、琥珀、シェラック、ギルソナイト等が挙げられる。
合成樹脂としては、例えば、ロジン、フェノール樹脂、変性アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のマレイン酸樹脂、環化ゴム、アクリル樹脂、1液型ウレタン樹脂、2液型ウレタン樹脂、及びその他の合成樹脂が挙げられる。
また、水性インキとする場合には、例えば、水溶性樹脂、コロイダルディスパージョン樹脂、エマルジョン樹脂等を含んでよい。
上記で列挙した樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
ビヒクルに含まれる溶剤としては、既知の溶剤を適宜選択して用いることができる。
溶剤としては、有機溶剤、乾性油、半乾性油、鉱物油、水等が挙げられる。
ビヒクルに含まれる光硬化性成分としては、既知の光硬化性成分を適宜選択して用いることができる。光硬化性成分は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤等を含む。
モノマーとしては、従来から光重合に使用されていたエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。また、オリゴマーは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を、オリゴマー化することにより得られる。
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸系化合物;マレイン酸系化合物;ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリオール系、植物油系化合物等で変性したエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。
光重合開始剤は、例えば紫外線照射によって活性酸素等のラジカルを発生する化合物である。光重合開始剤としては、印刷に使用されている既知の光重合開始剤を適宜選択して含有させればよい。
本開示のインキ組成物は、インキ組成物の固形分全量に対する前記希土類錯体の合計の含有割合が、発光強度の点から、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがより更に好ましい。一方でインク層を形成し易い点から前記その他の成分を含有する場合は、前記希土類錯体の合計の含有割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがより更に好ましい。なお、本開示において固形分とは、溶剤以外の成分をいう。
本開示のインキ組成物が前記その他の成分を含有する場合は、インキ組成物の固形分全量に対する前記その他の成分に由来する固形分の割合が、発光強度の点から、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることがより更に好ましい。
また、本開示のインキ組成物が溶剤を含有する場合、溶剤を含むインキ組成物全量に対する溶剤の割合は、印刷方法に応じて適宜調節され、特に限定はされないが、印刷適性の点から、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
<インキ組成物の製造方法>
本開示のインキ組成物の製造方法としては、前述した本開示のインキ組成物が得られる方法であれば特に限定はされず、前記希土類錯体、及びビヒクル等のその他の成分を、任意の順序で混合及び分散することにより、製造することができる。各成分の混合及び分散は、例えば一軸ミキサー及び二軸ミキサー等のミキサーや、例えば3本ローラーミル、ビーズミル、ボールミル、サンドグラインダー及びアトライター等の練肉機(ink mill)により行なうことができる。
<インキ組成物の用途>
本開示のインキ組成物は、可視光では目視不可能で、可視光以外の励起光の照射により蛍光を発し、熱によって発光色が変化するため、当該発光の特殊性から、真贋判定用途、偽造防止用途、各種セキュリティ用途に好適に用いられる。
2.印刷物
本開示の1実施形態の印刷物は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有するインキ層を有する、印刷物である。
図1は、本開示に係る印刷物の一例を示す概略断面図である。印刷物1は、基材10の一方の面にインキ層11を有している。インキ層11は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有する層であり、前記本開示の1実施形態のインキ組成物を用いて形成されている。
本開示に係る印刷物1は、単数又は複数のインキ層11を有していてよい。基材10上に複数のインキ層11が設けられている場合には、各インキ層を形成するインキ組成物の組成等は、同じであっても異なっていてもよい。インキ層11としては、任意のパターンを有することができる。
また、本開示の印刷物は、少なくともインキ層を有し、本開示の効果を損なわない範囲において、必要に応じて更に、前記インキ層を支持するための基材、及びその他の層を有していてもよい。
<インキ層>
本開示の印刷物が有するインキ層は、前記本開示のインキ組成物の固化物を含有するインキ層であり、すなわち、前記本開示のインキ組成物を用いて形成されたインキ層である。
前記本開示のインキ組成物については、前述した通りなので、ここでの説明を省略する。
本開示において、固化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化した物をいう。前記固化物としては、例えば、硬化反応により硬化した硬化物、乾燥により固化した物、熱可塑性樹脂の冷却により固化した物等が挙げられる。
前記インキ層は、例えば、支持体となる基材上に、前記本開示のインキ組成物を塗布し、固化することにより形成することができる。
前記塗布の方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、特に限定はされないが、例えば、フレキソ印刷、活版印刷、オフセット印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、又はインクジェット印刷や、一般的な塗布方式、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法 、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法等により、得ることができる。
これらの印刷方式の中でも、印刷物の偽造を防止するためには、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、凹版印刷又はオフセット印刷が好ましい。
前記インキ組成物を固化する方法は、前記インキ組成物が含有する成分に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記インキ組成物が溶剤を含有する場合は、乾燥により当該溶剤を除去する方法、前記インキ組成物が光硬化性成分を含有する場合は、光照射により当該光硬化性成分を硬化させる方法、前記インキ組成物が熱硬化性成分を含有する場合は、加熱により当該熱硬化性成分を硬化させる方法、前記インキ組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合は、溶剤に溶解した後溶剤を除去する方法や、溶融樹脂を冷却により固化させる方法、及びこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
前記インキ層は、基材の片面又は両面の全体に形成されたものであってもよいし、パターン状に形成されたものであってもよい。
インキ層が、前記本開示のインキ組成物の固化物を含有することは、インキ層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、例えば、ESI-Mass等の質量分析、NMR、IR、ICP発光分析、原子吸光分析、蛍光X線分析、X線吸収微細構造解析(XAFS)、およびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。希土類金属の分析は、例えば島津製作所製、マルチ型ICP発光分析装置 ICPE-9000を用いて行うことができる。
<基材>
前記基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート等の各種合成樹脂のプラスチックシート、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、あるいは基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)等が挙げられる。前記基材は、必ずしもフィルム乃至シート状でなくてもよく、立体的な形状を持つ樹脂成形体等であってもよい。
<印刷物の用途>
本開示の印刷物の用途は、特に限定はされないが、本開示に係る印刷物1は、前記インキ層が、例えば紫外線等で蛍光を発し、且つ、加熱により当該発光色が変化するため、インキ層に励起光源による励起光照射を行いながら、適宜加熱を行い、発光色の変化を目視又は検知器等で読み取ることにより、各種の情報管理をすることができる。
また、本開示に係る印刷物1は、前記インキ層の発光の特殊性から、真贋判定性、偽造防止性が高いものである。
印刷物としては、例えば、手形、小切手、株券、社債券、各種証券等の有価証券、銀行券、商品券、交通機関の乗車券、有料施設やイベントの入場券、宝くじ、公営競技の投票券の当たり券、印紙類、クレジットカード等のカード、パスポート、身分証明書、各種商業印刷物、ポスター等が挙げられる。
3.真贋判定方法
本開示の1実施形態の真贋判定方法は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有するインキ層を摩擦し、その際に生じる摩擦熱によって発光色が変化することにより、真贋判定を行うものである。
本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を、下記に示すが、これらの実施形態に限定されるものではない。
図2及び図3はそれぞれ、前記本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を示す図である。図2は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物の固化物を含有するインキ層11に励起光源による励起光照射12を行いながら、インキ層11を、例えば、摩擦部13を有する摩擦具14によって、摩擦している様子を示している。すると、図3に示されるように、摩擦した部位15のみは、摩擦する際に生じる摩擦熱によって、発光色が変化する。このようなインキ層の発光の特殊性から、本開示の1実施形態の真贋判定方法は、優れた真贋判定性を有する。
インキ層を摩擦するための用具としては、摩擦することによって、摩擦熱が生じる摩擦部を有する摩擦具を用いればよい。前記摩擦部としては、例えば、低摩耗性の弾性材料からなるものが挙げられ、例えば市販の熱変色性筆記具のラバー部分などの摩擦部を用いてもよい。
摩擦熱によって生じる発光色の変化は、熱により制御される異なる波長領域の発光強度の差を、当該各波長に応じた各種検知器で検出してもよい。
4.熱変色性発光材料
本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、三価の希土類イオンと、下記一般式(1’)で表され、前記希土類イオンに配位するホスフィンオキシド二座配位子とを含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、下記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、下記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して形成された架橋構造を含む。
グループA:Eu3+、Sm3+、Pr3+、及びHo3+
グループB:Tb3+、Er3+、Tm3+、Dy3+、Yb3+、Nd3+、Ce3+、及びGd3+
Figure 0007081603000013
[一般式(1’)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。一般式(1’)中、Arは、下記一般式(2a)、(2b)又は(2c)で表される二価の基であり、nは1又は2である。
Figure 0007081603000014
(前記一般式(2a)~(2c)中、Rは、それぞれ独立に、一価の置換基であり、Xは、硫黄原子又は酸素原子であり、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、mは、0から、Rが結合する環における置換可能な部位までの整数である。mが2以上の整数である場合、Rはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
一般式(1’)中、Eは、下記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基である。
Figure 0007081603000015
(一般式(3)中、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。)]
前記一般式(1’)におけるAr、Ar、及びArは、前記一般式(1)におけるAr、Ar、及びArと同様であって良く、一般式(3)中のAr及びArは、前述しているので、ここでの説明を省略する。
本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、前記ホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して形成された架橋構造を含む。
本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、前記ホスフィンオキシド二座配位子を介した異なる希土類イオン間のエネルギー移動が、温度により活性化されることで、異なる希土類イオンの発光強度に差を生じさせやすい。そのため本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、加熱前後で、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンによる波長領域の発光強度と前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンによる発光強度との差が生じ、色変化が生じるものである。
本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、前記ホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとに配位して形成された架橋構造を含むことから、2種以上の希土類イオンを含む複合錯体ポリマーであり、耐熱性に優れ、更に、耐光性及び耐溶剤性に優れるものである。
本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、少なくとも前記ホスフィンオキシド二座配位子を含むものであるが、更に、前述のβ-ジケトン配位子を含むことが発光強度を高くする点から好ましい。
好ましい本開示の1実施形態の熱変色性発光材料としては、例えば、前記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する希土類錯体のうち、前記一般式(7)のLn3+が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンと、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンとを含む場合が挙げられる。
また、本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+と、Tb3+とを含むことが、加熱した際の発光強度の変化の差が大きく、発光色の変化の視認性が高い点から、好ましい。
中でも、本開示の1実施形態の熱変色性発光材料は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+と、Tb3+とを含む場合に、Eu3+1モルに対して、Tb3+を1モル以上300モル以下含むことが、発光色の変化の視認性が高くなる点から、好ましい。
下記IR測定は、日本光学社製、FT/IR-4600を用いて行った。
下記H-NMR測定は、日本電子社製、ESC400(400MHz)を用いて行い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として化学シフトを決定した。
下記ESI-Mass測定は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Thermo Scientic Exactiveを用いて行った。
下記元素分析において、有機微量元素分析は、エグゼター・アナリティカル社製、CE440を用いて行った。
(合成例1:Tb/Eu複合錯体ポリマー(化合物1)の合成)
(1)1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)の合成
100mLの三口フラスコをフレームドライして、内部をアルゴンガスで置換した。この三口フラスコに、1.9g(6.0mmol)の4,4’-ジブロモビフェニル及び30mLのテトラヒドロフラン(THF)を入れ、液体窒素/エタノールで約-80℃に冷却した。この溶液に、9.3mL(15mmol)の1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液をシリンジでゆっくり添加した。この添加は、約15分かけて行い、この間、黄色の析出物が生成した。この溶液を-10℃で3時間攪拌した。次に、溶液を再び-80℃に冷却した後、2.7mL(15mmol)のジクロロフェニルホスファイドを滴下し、14時間攪拌させながら徐々に室温に戻した。その後、反応を止め、酢酸エチルで抽出を行った。得られた溶液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで溶媒を留去した。得られた粗生成物を、アセトン及びエタノールで複数回洗浄することにより精製し、白色の粉末を得た。
次に、上記で得られた白色の粉末及び約40mLのジクロロメタンをフラスコに入れ、この溶液を0℃に冷却し、そこに30%の過酸化水素水(約5mL)を加えた。この混合物を、2時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した後、抽出液を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレータで溶媒を留去して、白色の粉末を得た。この白色の粉末をジクロロメタンで再結晶して、1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニルの白色の結晶を得た。
白色の結晶の分析結果は以下の通りであった。
IR(ATR):1119(st、P=O)cm-1
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ7.65-7.80(m、16H;P-C,C),7.43-7.60(m、12H;P-C,C)ppm.
ESI-Mass(m/z)=555.2[M+H]
元素分析:(C3628の計算値):C,77.97;H,5.09%、(実測値):C,77.49;H,5.20%
(2)Tb/Eu複合錯体ポリマー(化合物1)の合成
Eu(III)イオンの原料である酢酸ユーロピウムと、1,1,1,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオンとを混合して、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト(hfa))ユーロピウム(III)2水和物を合成した。
また、Tb(III)イオンの原料である酢酸テルビウムと、1,1,1,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオンとを混合して、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)2水和物を合成した。
次いで、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)2水和物0.02当量、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)2水和物0.98当量と、前記(1)で得た1,4-ビス(ジフェニルホスホリル)ビフェニル(dpbp)1当量とを、メタノール(20mL)に溶解した。この溶液を8時間攪拌しながら還流した。その後、反応溶液中に析出した白色紛体をろ別し、メタノールで複数回洗浄した後、減圧乾燥することで、TbとEuのモル比(Tb/Eu)が50/1(下記化学式で表されるx/y=50/1)のTb/Eu複合錯体ポリマー(化合物1)を合成した。
下記化学式で示されるように、当該Tb/Eu複合錯体ポリマーは、三価の希土類イオンと、前記一般式(1’)で表され、前記希土類イオンに配位するホスフィンオキシド二座配位子とを含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、前記グループAから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンであるEu3+と、前記グループBから選ばれる少なくとも1種の希土類イオンであるTb3+とに配位して形成された架橋構造を含んでいる。
Figure 0007081603000016
得られたTb/Eu複合錯体ポリマー(化合物1)の分析結果は以下の通りであった。
IR(ATR):1649(st,C=O)、1250(st,C-F)、1123(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1681.2 [Tb(hfa)(dpbp) 、1911.2 [[Tb(hfa)(dpbp)] + Na]、 1675.2 [Eu(hfa)(dpbp)、 1905.2 [[Eu(hfa)(dpbp)]+ Na ]
元素分析:([C5131Tb0.98Eu0.0218の計算値):C,45.90;H,2.34%、(実測値):C,45.85;H,2.19%
(合成例2~4:Tb/Eu複合錯体ポリマー(化合物2~4)の合成)
合成例1において、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)とトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)2水和物のモル比を表1のTb/Eu比率になるように変更した以外は、合成例2と同様にして、TbとEuのモル比(Tb/Eu)が表1に示されるような値になるTb/Eu複合錯体ポリマー(化合物2~4)を合成した。
Figure 0007081603000017
得られたTb/Eu複合錯体ポリマー(化合物2~4)の分析結果は以下の通りであった。
(化合物2)
IR(ATR):1652(st,C=O)、1250(st,C-F)、1123(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1681.2 [Tb(hfa)(dpbp) 、1911.2 [[Tb(hfa)(dpbp)] + Na]、 1675.2 [Eu(hfa)(dpbp)、 1905.2 [[Eu(hfa)(dpbp)]+ Na ]
元素分析:([C5131Tb0.99Eu0.0118の計算値):C,45.90;H,2.34%、(実測値):C,45.84;H,2.20%
(化合物3)
IR(ATR):1652(st,C=O)、1250(st,C-F)、1123(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1681.2 [Tb(hfa)(dpbp) 、1911.2 [[Tb(hfa)(dpbp)] + Na]、 1675.2 [Eu(hfa)(dpbp)、 1905.2 [[Eu(hfa)(dpbp)]+ Na ]
元素分析:([C5131Tb0.993Eu0.00718の計算値):C,45.90;H,2.34%、(実測値):C,46.14;H,2.25%
(化合物4)
IR(ATR):1650(st,C=O)、1250(st,C-F)、1123(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1681.2 [Tb(hfa)(dpbp) 、1911.2 [[Tb(hfa)(dpbp)] + Na]、 1675.2 [Eu(hfa)(dpbp)、 1905.2 [[Eu(hfa)(dpbp)]+ Na ]
元素分析:([C5131Tb0.996Eu0.00418の計算値):C,45.90;H,2.34%、(実測値):C,46.14;H,2.31%
(合成例5:Tb錯体ポリマー(化合物5)の合成)
合成例2において、使用する原料錯体をトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)2水和物のみを1当量使用する以外は合成例2と同様にして、下記化学式で表されるTb錯体ポリマー(化合物5)を合成した。
Figure 0007081603000018
得られたTb錯体ポリマー(化合物5)の分析結果は以下の通りであった。
IR(ATR):1651(st,C=O)、1250(st,C-F)、1123(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1681.2[Tb(hfa)(dpbp) 、1911.2[[Tb(hfa)(dpbp)] + Na]
元素分析:([C5131TbF18の計算値):C,45.90;H,2.34%、(実測値):C,45.86;H,2.19%
(合成例6:Eu錯体ポリマー(化合物6)の合成)
合成例1において、使用する原料錯体をトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)2水和物のみを1当量使用する以外は合成例1と同様にして、
下記化学式で表されるEu錯体ポリマー(化合物6)を合成した。
Figure 0007081603000019
得られたEu錯体ポリマー(化合物6)の分析結果は以下の通りであった。
IR(ATR):1652(st,C=O)、1250(st,C-F)、1122(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1675.2 [Eu(hfa)(dpbp)、1905.2 [[Eu(hfa)(dpbp)]+ Na ]
元素分析:([C5131EuF18の計算値):C,46.14;H,2.35%、(実測値):C,46.10;H,2.17%
(合成例7:Tb錯体(化合物7)の合成)
前記合成例1と同様の方法により合成したトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)、及び、トリフェニルホスフィンオキサイド(TPPO)を含むメタノール溶液を準備し、この溶液を還流しながら12時間攪拌した。その後、メタノールを減圧留去により取り除き、白色粉体を得た。この粉体をトルエンで洗浄し、未反応のトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)を吸引ろ過により取り除いた後、トルエンを減圧留去した。得られた生成物をヘキサンで洗浄し、粉体を得た後、さらにトルエン、ヘキサンの混合溶媒により再結晶を行うことにより精製して、下記化学式で表されるTb錯体[Tb(hfa)3(TPPO)2](化合物7)を合成した。
なお、得られた生成物が、下記化学式で表されるTb錯体(化合物7)であることは、IRと元素分析により確認した。分析結果を以下に示す。
IR(ATR):1653(st,C=O)、1251(st,C-F)、1122(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1129.1[Tb(hfa)(TPPO) 、1359.1[Tb(hfa)(TPPO)] + Na]
元素分析:([C5133TbF18の計算値):C,45.83;H,2.49%、(実測値):C,45.35;H,2.24%
Figure 0007081603000020
(合成例8:Eu錯体(化合物8)の合成)
前記合成例1と同様の方法により合成したトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)、及び、トリフェニルホスフィンオキサイド(TPPO)を含むメタノール溶液を準備し、この溶液を還流しながら12時間攪拌した。その後、メタノールを減圧留去により取り除き、白色粉体を得た。この粉体をトルエンで洗浄し、未反応のトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユーロピウム(III)を吸引ろ過により取り除いた後、トルエンを減圧留去した。得られた生成物をヘキサンで洗浄し、粉体を得た後、さらにトルエン、ヘキサンの混合溶媒により再結晶を行うことにより精製して、
下記化学式で表されるEu錯体[Eu(hfa)3(TPPO)2](化合物8)を合成した。
なお、得られた生成物が、下記化学式で表されるEu錯体(化合物8)であることは、IRと元素分析により確認した。分析結果を以下に示す。
IR(ATR):1652(st,C=O)、1251(st,C-F)、1121(st,P=O)cm-1
ESI-Mass(m/z)=1123.1[Eu(hfa)2(TPPO)2]、1353.1[[Eu(hfa)3(TPPO)2]+Na]
元素分析:([C5133EuF18の計算値):C,46.07;H,2.50%、(実測値):C,46.10;H,2.34%
Figure 0007081603000021
(実施例1)
(1)インキ組成物の製造
発光材料として化合物1を30重量部と、ビヒクルとして、紫外線硬化型ビヒクル(商品名 UV BF SG A メジウム、DICグラフィックス製) 70重量部とを3本ロールにて混練することでインキ組成物を得た。
(2)印刷物の製造
得られたインキ組成物をバーコーターで印刷紙に塗布後、紫外線照射により光硬化することで、インキ組成物の固化物を含有するインキ層を有する、実施例1の印刷物を得た。
(実施例2~4)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物2~4をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られた各インキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
(実施例5)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物5を10重量部と化合物6を1重量部との混合物とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
(実施例6)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物7を10重量部と化合物8を1重量部との混合物とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
(実施例7)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物7を290重量部と下記化学式で表される化合物9(Eu(TTA)Phen、東京化成製)を1重量部との混合物とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
Figure 0007081603000022
(比較例1)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物5を用いた以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
(比較例2)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、化合物6を用いた以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
(比較例3)
実施例1において、発光材料として化合物1の代わりに、赤色発光無機酸化物(D1124、ネモト・ルミマテリアル製、YS:Eu)を70重量部と緑色蓄光材(GLL-300FF、ネモト・ルミマテリアル製、SrAl:Eu,Dy)を 30重量部との混合物とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、印刷物を得た。
[評価]
<発光スペクトル測定>
得られた実施例および比較例の印刷物1のインキ層についてそれぞれ、図4に示すように、ホットプレート25上に設置し、UV(励起光)照射用ランプ24(ハンディーUVランプ SLUV―6、アズワン製)で照射しながら、小型ファイバ光学分光器22(USB2000+、オーシャンオプティクス製)を用いて、25℃、60℃および90℃における波長365nmで励起した発光スペクトルをそれぞれ得るとともに、発光色を目視で確認した。実施例1~実施例7および比較例1~3で得られた印刷物のインキ層について25℃、60℃および90℃での発光スペクトルを図5~図14に示した。
また、評価結果を表2に示す。25℃の時と比較して60℃または90℃において色変化を確認できたものをA、確認できなかったものをBと示している。
<発光色の摩擦熱による色変化の確認>
得られた実施例および比較例の印刷物のインキ層について、UV(励起光)照射用ランプ24(ハンディーUVランプ SLUV―6、アズワン製)を用い365nmで励起した発光状態における摩擦熱による色変化を観察した。摩擦熱はインキ層表面を、FRIXION BALL(登録商標、パイロット社製)のラバー部分で擦ることにより生じさせた。一般に前記ラバー部分で擦ることによって生じる摩擦熱は60~80℃と言われている。
評価結果を表2に示す。常温および摩擦後で色変化を確認できたものをA、確認できなかったものをBと示している。
Figure 0007081603000023
(結果のまとめ)
少なくともEuとTbが配位金属として導入された錯体ポリマーを用いた実施例1~4の印刷物のインキ層は、金属間のエネルギー移動や金属-配位子間のエネルギー移動により、温度によってその発光色が変化し、加熱前後の発光色はEuとTbの比率を変えることにより調整できることが明らかにされた。配合するTbとEuの比率(Tb/Eu)が100/1~250/1である実施例2、3および4は、色の変化幅(コントラスト)が大きいため、熱による色変化が大きく視認性が高いことから、中でも好ましいものであった。
前記グループAから選ばれる1種の希土類イオンを含む発光材料と、前記グループBから選ばれる1種の希土類イオンを含む発光材料と、2種の発光材料を混合した実施例5~7でも、温度によってその発光色を変化することが明らかにされた。発光強度はポリマー錯体どうしの混合物である化合物5および化合物6を用いた実施例5の方が比較的高くなることも明らかにされた。
一方、導入された金属が1種類のみの錯体を用いた比較例1および2は発光色の変化は起きなかった。
また、赤色発光無機酸化物と緑色蓄光材とを組み合わせた比較例3は、実施例の印刷物のようにホットプレート上で加熱した際に、温度によってその発光色の変化を確認することが出来なかった。図14に示されるように、比較例3では、温度を上げると赤色と緑色の発光強度がほぼ同じ割合で若干低下しているので、発光色の変化を目視でも確認できない。一方で、比較例3については、UV照射中のインキ層を摩擦した場合には、常温および摩擦後で色変化を確認できた。蓄光材と発光体とを含むインキ層を摩擦することによって色変化を確認できることは、初めて見いだされたことである。この現象は、蓄光材の“UV照射中に摩擦熱によって室温から一瞬だけ高温状態にすると、トラップしたエネルギーの解放速度を一気に上昇させて発光が一瞬強くなり、次いでエネルギーを一気に放出しきるため発光が弱く乃至無くなる”という性質に起因すると考えられる。比較例3は、UV照射中のインキ層を摩擦した場合には、常温および摩擦後で色変化を確認できたものの、実施例のインキ層を摩擦した場合の色変化に比べて、視認性が低いものであった。
1 印刷物
10 基材
11 インキ層
12 励起光照射
13 摩擦部
14 摩擦具
15 摩擦した部位
20 光ファイバ
21 集光レンズ
22 小型ファイバ光学分光器
23 制御パソコン
24 UV(励起光)照射用ランプ
25 ホットプレート(加熱手段)
26 UV(励起光)カットフィルタ

Claims (5)

  1. 三価の希土類イオンと、β-ジケトン配位子の少なくとも1種と、ホスフィンオキシド配位子及び含窒素芳香族複素環配位子の少なくとも1種とを含む、1種又は2種以上の希土類錯体を含有し、前記1種又は2種以上の希土類錯体に含まれる前記三価の希土類イオンとして、Eu 3+ と、Tb 3+ とを含むインキ組成物の固化物を含有するインキ層を摩擦し、その際に生じる摩擦熱によって発光色が変化することにより、真贋判定を行う、真贋判定方法
  2. 前記希土類錯体は、前記ホスフィンオキシド配位子として、下記一般式(1)で表されるホスフィンオキシド配位子を含む、請求項に記載の真贋判定方法。
    Figure 0007081603000024
    [一般式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。一般式(1)中、Arは、下記一般式(2a)、(2b)又は(2c)で表される二価の基であり、nは1又は2である。
    Figure 0007081603000025
    (前記一般式(2a)~(2c)中、Rは、それぞれ独立に、一価の置換基であり、Xは、硫黄原子又は酸素原子であり、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、mは、0から、Rが結合する環における置換可能な部位までの整数である。Rが複数ある場合、Rはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
    一般式(1)中、Eは、水素原子又は下記一般式(3)で表されるホスフィンオキシド基である。
    Figure 0007081603000026
    (一般式(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい一価の芳香族基である。)]
  3. 前記希土類錯体は、ホスフィンオキシド二座配位子を含み、当該ホスフィンオキシド二座配位子が、Eu 3+ と、Tb 3+ とに配位して、形成された架橋構造を含む、請求項又はに記載の真贋判定方法。
  4. 前記希土類錯体は、前記β-ジケトン配位子として、下記一般式(4)で表されるβ-ジケトン配位子を含む、請求項のいずれか1項に記載の真贋判定方法。
    Figure 0007081603000027
    (一般式(4)中、Q及びQは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、Zは、水素原子又は重水素原子である。)
  5. 前記希土類錯体は、前記三価の希土類イオンとして、Eu3+1モルに対して、Tb3+を1モル以上300モル以下含む、請求項のいずれか1項に記載の真贋判定方法。
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