JP7080122B2 - 抽出物、可溶性画分、タンパク質、バイオフィルムを分解する方法 - Google Patents

抽出物、可溶性画分、タンパク質、バイオフィルムを分解する方法 Download PDF

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Description

本発明は、抽出物、可溶性画分、タンパク質、バイオフィルムを分解する方法に関する。
各種設備において濾過工程を担う部分では膜が使用されている。ときに膜にはファウリングによりバイオフィルムが生じ、かかるバイオフィルムが設備の運転の障害となることがある。これまでの研究により、ファウラントにはウロン酸含有多糖の一種が含まれていること、かかる多糖を分解する活性を備える細菌が存在することがわかってきている。近年は、細菌に発現されている酵素によりファウラントを分解する試みも報告されている(特許文献1参照)。
特開2007-268379号公報
そこで、本発明は、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
配列番号1(No.2567)の塩基配列によりコードされる、タンパク質を用いて、バイオフィルムを分解する方法。
[2]
前記バイオフィルムがデンプン、グリコーゲン、ペクチン、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サイリウム、カードラン、プロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載の方法。
本発明によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
活性汚泥から得られた混合菌液の培養上清を用いてキサンタン等を分解する実験を行ったときの結果を示す図である。 混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分についてのSDS-PAGEを行ったときの結果を示す図である。 混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分について陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製を行ったときの分画プロファイルを示す図である。 混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分について陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製を行ったときの各画分についてのSDS-PAGEを行ったときの結果を示す図である。図中、矢印Aは70kDaのバンドの位置を示し、矢印Bは50kDaのバンドの位置を示す。 精製タンパク質A溶液についてのSDS-PAGEを行ったときの結果を示す図である。 ファウラント分解活性を有する混合菌を各種BS培地(グルコース含有BS培地、グルコース及びマンノース含有BS培地、キサンタン含有BS培地)で培養した培養液についてSDS-PAGEを行ったときの結果を示す図である。図中、Mはマーカーを示し、レーン1は20mMグルコース含有BS培地での培養液を示し、レーン2は10mMグルコース及び10mMマンノース含有BS培地での培養液示しを、レーン3は0.05%キサンタン含有BS培地での培養液を示す。図中、レーン1の矢印及びレーン2の矢印はいずれも50kDaのバンドの位置を示し、レーン3の矢印は50kDaのバンドの位置及び70kDaのバンドの位置を示す。 (A)は、コントロールについてのGPCプロファイルを示す。縦軸に強度(mV)を示し、横軸に時間経過(分)を示す図である。(A)の右上図に、特に4分後から7分後の部分のプロファイルを拡大して示す。(B)は、試料についてのGPCプロファイルを示す。縦軸に強度(mV)を示し、横軸に時間経過(分)を示す図である。(A)の右上図に、特に4分後から7分後の部分のプロファイルを拡大して示す。 (A)は、ファウラント分解活性を有する混合菌液から単離された6種類の菌(No.B1~No.B6)の生育状態を示す図である。(B)は、ファウラント分解活性を有する混合菌液から単離された6種類の菌(No.B1~No.B6)のうちNo.B2の生育状態を示す図である。 No.B2培養上清を用いてキサンタンを分解する実験を行ったときの結果を示す図である。 No.B2培養上清についてSDS-PAGEを行ったときの結果を示す図である。図中、Mはマーカーを示し、レーン1はNo.B2培養液を示し、レーン2は精製タンパク質A溶液を示し、レーン3はNo.B2培養上清を示す。 大量発現させた配列番号1(No.2567)でコードされるタンパク質(未精製の)についてのSDS-PAGEの結果を示す図である。図中、Mはマーカーを示し、Cはコントロールを示し、レーン1はペレットを示し、レーン2は培養液上清を示す。また、superは上清を示し、pptは沈殿を示す。 大量発現させた配列番号1(No.2567)でコードされるタンパク質(Ni-Sepharoseにより精製)についてのSDS-PAGEの結果を示す図である。図中、Mはマーカーを示し、Cはコントロールを示し、FTは洗浄液を示し、レーン1は1回目溶出液を示し、レーン2は2回目溶出液を示し、レーン3は3回目溶出液を示し、レーン4は4回目溶出液を示し、レーン5は5回目溶出液を示す。また、superは上清を示し、pptは沈殿を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(抽出物、可溶性画分)
本実施形態の抽出物及び可溶性画分は、Paenarthrobacter属に属する細菌の培養物に由来するものである。
Paenarthrobacter属の細菌の種としては、Paenarthrobacter nicotinovorans、Paenarthrobacter histidinolovorans等が挙げられる。
これらの種は、1種単独としても、2種以上の組み合わせとしてもよい。
種としては、特に、高いバイオフィルム分解活性を得ることを可能にするnicotinovoransが好ましい。
なお、Paenarthrobacter属nicotinovoransは、学説的には、Arthrobacter属nicotinovorans(アルスロバクター・ニコチノボランス))とされ得る。
Paenarthrobacter属nicotinovoransに属するものの中でも、より具体的には、18140-B2が好ましい。
18140-B2は、2017年7月7日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受託番号:NITE P-02506として寄託されている。
特に、本実施形態の抽出物は、Paenarthrobacter属の菌株18140-B2(受託番号:NITE P-02506)の培養物からの抽出物としてよい。
特に、本実施形態の可溶性画分は、Paenarthrobacter属の培養物の50kDa以上の画分としてよい。
ここで、可溶性画分とは、培養物の抽出物のうち水に可溶な画分をいう。
本実施形態の抽出物及び可溶性画分によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
[培養方法]
培養方法としては、特に限定されることなく、当該技術分野において通常用いられる方法を用いてよく、バッチ培養(回分培養)、流加培養(半回分培養)、連続培養(灌流培養)等が挙げられる。
[培養条件]
培養条件としては、特に限定されることなく、標準的な細胞培養条件を用いることができる。
宿主細胞の性質に応じて、好気性、無酸素性、又は嫌気性条件下で培養を行うこともできる。
培養温度としては、20℃~37℃が好ましく、培養雰囲気としては、CO2濃度約6%~約84%であることが好ましく、pHとしては、約5~約9であることが好ましい。
[培地]
用いられる培地としては、特に限定されることなく、天然培地、合成培地が挙げられ、細菌の栄養源たる炭素源を含む培地であり、任意選択的に、窒素源、有機微量栄養源、無機物(ミネラル)等を含む培地としてよい。
炭素源としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、転化糖等の炭水化物;炭素数が1の化合物(以下、C1化合物という。);脂質(オイル等);脂肪酸;グリセリン脂肪酸エステル;ポリペプチド;再生可能な炭素源;酵母エキス;リン脂質;グリセロ脂質;グリセロール;アセテート等が挙げられる。
これらの炭素源は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素源についての詳細を以下に記載する。
炭水化物のうちの単糖類としては、ケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)等のトリオース;ケトテトロース(エリトルロース)、アルドテトロース(エリトロース、トレオース)等のテトロース;ケトペントース(リブロース、キシルロース)、アルドペントース(リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、デオキシ糖(デオキシリボース)等のペントース;ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、デオキシ糖(フコース、フクロース、ラムノース)等のヘキソース;セドヘプツロース等のヘプトースが挙げられ、フルクトース、マンノース、ガラクトース、グルコース等のC6糖;キシロース、アラビノース等のC5糖の炭水化物が好ましい。
二糖類としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等が挙げられ、スクロース、ラクトースが好ましい。
オリゴ糖類としては、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;アカルボース、スタキオース等の四糖類;フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)等のその他のオリゴ糖類が挙げられる。
多糖類としては、具体的には、デンプン、グリコーゲン、ペクチン、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サイリウム、カードラン、プロピレングリコールが挙げられ、β-1,4結合を含有することが好ましく、キサンタンガム、ジェランガムが好ましい。
転化糖としては、ショ糖を加水分解したものが挙げられる。
炭素数が1の化合物(C1化合物)としては、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、一酸化炭素、二酸化炭素等が挙げられる。
脂質としては、C4以上の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を1以上含む物質が挙げられ、特に、室温で液体であるオイルが好ましい。
ここで、オイルとしては、大豆、コーン、キャノーラ、ジャトロファ、パーム、ピーナッツ、ヒマワリ、ココナッツ、マスタード、綿実、パーム核油、オリーブ、紅花、ゴマ、亜麻仁、油性微生物細胞、ナンキンハゼ等の植物性オイル、及び動物性オイルが挙げられる。
脂肪酸としては、式RCOOH(「R」は炭化水素基を表す。)で表される化合物が挙げられ、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸が挙げられる。ここで、不飽和脂肪酸は、「R」に少なくとも1の炭素-炭素二重結合を有する化合物であり、例えば、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、パルミテライジン酸、アラキドン酸等が挙げられる。飽和脂肪酸は、「R」が飽和脂肪族基である化合物であり、例えば、ドコサン酸、イコサン酸、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、テトラデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。脂肪酸としては、C2~C22の脂肪酸が好ましく、特に、C12脂肪酸、C14脂肪酸、C16脂肪酸、C18脂肪酸、C20脂肪酸、C22脂肪酸が更に好ましい。
これら脂肪酸の塩、誘導体、誘導体の塩も挙げられる。塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド等が挙げられる。
ポリペプチドとしては、微生物性ポリペプチド、植物性ポリペプチド等が挙げられ、ここで、微生物性ポリペプチドとしては、酵母又は細菌由来のポリペプチド等が挙げられ、植物性ポリペプチドとしては、大豆、コーン、キャノーラ、ジャトロファ、パーム、ピーナッツ、ヒマワリ、ココナッツ、マスタード、綿実、パーム核油、オリーブ、紅花、ゴマ、亜麻仁由来のポリペプチド等が挙げられる。
再生可能な炭素源としては、バイオマス炭素源が挙げられ、特に、その全部又は一部が加水分解されたバイオマス炭素源が好ましい。ここで、バイオマス炭素源としては、木、紙、及びパルプの廃材、葉状植物、果肉等のセルロース系基質;柄、穀粒、根、塊茎等の植物の一部分が挙げられる。バイオマス炭素源として用いられる植物としては、コーン、小麦、ライ麦、ソルガム、トリティケイト、コメ、アワ、大麦、キャッサバ、エンドウマメ等のマメ科植物、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、サトウキビ、タピオカ等が挙げられる。なお、バイオマス等の再生可能な炭素源を培地中に用いる際には、前処理を行うことが好ましく、前処理としては、酵素的前処理、化学的前処理、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
例えば、炭素源としては、脂質、オイル、油脂、脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステルとグルコース等の炭水化物との組み合わせが挙げられる。
また、炭素源としては、酵母エキス、又は酵母エキスと、グルコース等の他の炭素源との組み合わせが挙げられ、酵母エキスと、二酸化炭素やメタノール等のC1化合物との組み合わせが好ましい。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L-ホモセリンなどの要求物質又は酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。
無機物(ミネラル)としては、これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
用いられる培地としては、市販の標準培地が好ましい。特定の宿主の培養に適した培地を適宜選択して用いることができる。
標準培地としては、特に限定されることなく、標準寒天培地、SCD寒天培地、R2A寒天培地等の既成培地が挙げられる。
抽出方法としては、特に限定されることなく、当該技術分野において通常用いられる方法を用いてよく、遠心分離、フィルター濾過等が用いられてよい。
(タンパク質)
本実施形態のタンパク質は、本実施形態の抽出物や本実施形態の可溶性画分に含まれるものである。
本実施形態のタンパク質としては、具体的には、配列番号1(No.2567)、配列番号2(No.753)、配列番号3(No.246)、配列番号4(No.2584)の塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列を有する塩基配列によりコードされるタンパク質を含むものとしてよく、これらの塩基配列によりコードされるタンパク質としてよい。
本実施形態のタンパク質のアミノ酸配列は、上述の4種の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列に限定されることなく、上記のタンパク質の改変体も用いることができる。改変体としては、例えば、全アミノ酸に対してアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加等を有するものが挙げられる。
なお、置換、欠失、挿入、付加等の全アミノ酸に対する割合は、アミノ酸残基の種類や、そのアミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置により異なるが、10%以下としてよく、好ましくは5%以下であり、更に好ましくは2%以下、より更に好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%である。
本実施形態のタンパク質のアミノ酸配列の、上述の4種の塩基配列によりコードされるアミノ酸配列に対する同一性としては、90%以上としてよく、好ましくは95%以上であり、更に好ましくは98%以上であり、より更に好ましくは99%以上であり、特に好ましくは99.5%以上である。
置換を有するものとしては、特に、保存的置換を有するものが挙げられる。
「保存的置換」とは、類似の性質を有するアミノ酸間での置換を指し、具体的には、芳香族アミノ酸の場合には、Phe、Trp、Tyr間での置換、疎水性アミノ酸の場合には、Leu、Ile、Val間での置換、極性アミノ酸の場合には、Gln、Asn間での置換、塩基性アミノ酸の場合には、Lys、Arg、His間での置換、酸性アミノ酸の場合には、Asp、Glu間での置換、ヒドロキシル基を持つアミノ酸の場合には、Ser、Thr間での置換を指す。
保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。
本実施形態のタンパク質によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
(遺伝子)
本実施形態の遺伝子は、本実施形態のタンパク質をコードするものである。
本実施形態の遺伝子としては、配列番号1(No.2567)、配列番号2(No.753)、配列番号3(No.246)、配列番号4(No.2584)の塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むものとしてよく、これらの塩基配列にと90%以上の同一性を有する塩基配列としてよい。
この塩基配列は、その塩基配列にコードされるタンパク質の機能を有する限り、上記の塩基配列そのものに限定されることなく、上記の塩基配列の変異体も用いることができる。
変異体は、天然おいて生じる変異により得られたものでもよく、人工的な変異(例えば、部位特異的変異導入)により得られたものでもよい。
塩基配列の変異体の本来の塩基配列に対する同一性は、前述のとおり90%以上としてよく、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、より更に好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。
上記のタンパク質のアミノ酸をコードするコドンは、タンパク質の発現を行う宿主におけるコドンの使用頻度に応じて、変更することができ、これにより、上記のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を変更することができる。
本実施形態の遺伝子によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
(組換えベクター)
本実施形態の組換えベクターは、本実施形態の遺伝子を含むものである。
ベクターの構築は、制限酵素、DNAポリメラーゼ、ライゲース等の酵素を適宜用いて、PCR法、クロスオーバーPCR法、in-fusion法、λ-Red法等の遺伝子工学的手法を用いて行うことができる。
本実施形態の組換えベクターの調製に用いられるベクターとしては、特に限定されることなく、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。ベクターは、DNAベクターであってもRNAベクターであってもよいが、DNAベクターが好ましい。ベクターとしては、モノシストロニックベクター、バイシストロニックベクター、ポリシストロニックベクター等が挙げられる。
ベクターは、用いられる宿主に応じて適宜選択されてよく、例えば、大腸菌(E.coli)の場合には、pBR322誘導体に代表されるColE系プラスミド、p15Aオリジンを持つpACYC系プラスミド、pSC系プラスミド、Bac系等のF因子由来ミニFプラスミド等が挙げられる。
本実施形態の組換えベクターによれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
(形質転換体)
本実施形態の形質転換体は、本実施形態のベクターを含むものである。
本実施形態の形質転換体の調製に用いられる遺伝子導入の方法としては、当該技術分野において公知の方法が挙げられる。
このような方法としては、例えば、酵素等の目的タンパク質をコードする遺伝子を有するプラスミドベクターを、塩化カルシウムで処理された菌体(コンピテントセル)を用いる手法やエレクトロポレーション法等により、宿主細胞に導入する方法、目的タンパク質をコードする遺伝子が導入されたファージベクターを菌体に感染させることによって菌の染色体中に導入する方法等が挙げられる。
宿主としては、特に限定されることなく、あらゆる細胞が挙げられが、細菌又は真菌が好ましい。
細菌としては、グラム陽性菌であってもグラム陰性菌であってもよい。
グラム陽性細菌としては、バシラス(Bacillus)属細菌、リステリア(Listeria)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌等が挙げられ、特に、バシラス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌が好ましい。
グラム陰性細菌としては、エシェリキア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、ビブリオ(Vivrio)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌等が挙げられ、特に、エシェリキア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌が好ましい。
特に、エシェリキア(Escherichia)属細菌としては、特に、大腸菌(Escherichia coli)が好ましい。大腸菌(E. coli)の株としては、当該技術分野において公知のものが挙げられ、例えば、DH5、JM109等が挙げられる。
真菌としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、ムコール(Mucor)属の微生物等が挙げられ、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、又はトリコデルマ(Trichoderma)属の微生物が好ましい。
宿主としては、上記細菌及び真菌の他に、例えば、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等が挙げられる。
なお、上記宿主は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
遺伝子導入では、目的遺伝子の染色体上でのコピー数を増加させることによって、目的タンパク質の活性を強化することが好ましい。宿主となる微生物が本来保有していない酵素の遺伝子を導入する場合は、微生物は染色体上にその遺伝子を1コピー以上備えていることが好ましく、また、宿主となる微生物が保有している酵素の遺伝子を導入する場合は、微生物は染色体上にその遺伝子を複数コピー、望ましくは2コピー以上、更に望ましくは3コピー以上備えていることが好ましい。
本発明における遺伝子導入では、目的遺伝子の導入を、宿主細胞にその遺伝子を搭載しているプラスミドを導入することによっても、達成することができる。
ここで、コピー数の増加は、トランスポゾン、Muファージ等を利用して、宿主のゲノム上に目的遺伝子を転移させることによっても達成することができる。
なお、前述の遺伝子導入に用いられるシステムは、常法により、下記の培養において目的遺伝子の発現を誘導することが可能となるように、構築することが好ましい。かかる誘導としては、例えば、IPTG誘導、アラビノース誘導等が挙げられる。ここで、ベクター中に用いられるプロモーターとしては、trcやtac等のトリプトファンプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター等が挙げられる。
以下、形質転換体の培養の詳細について記載する。
[培養方法]
培養方法としては、特に限定されることなく、当該技術分野において通常用いられる方法を用いてよく、バッチ培養(回分培養)、流加培養(半回分培養)、連続培養(灌流培養)等が挙げられる。
[培養条件]
培養条件としては、特に限定されることなく、標準的な細胞培養条件を用いることができる。
宿主細胞の性質に応じて、好気性、無酸素性、又は嫌気性条件下で培養を行うこともできる。
培養温度としては、20℃~37℃が好ましく、培養雰囲気としては、CO2濃度約6%~約84%であることが好ましく、pHとしては、約5~約9であることが好ましい。
[培地]
用いられる培地としては、特に限定されることなく、天然培地、合成培地が挙げられ、細菌の栄養源たる炭素源を含む培地であり、任意選択的に、窒素源、有機微量栄養源、無機物(ミネラル)等を含む培地としてよい。
炭素源としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、転化糖等の炭水化物;炭素数が1の化合物(以下、C1化合物という。);脂質(オイル等);脂肪酸;グリセリン脂肪酸エステル;ポリペプチド;再生可能な炭素源;酵母エキス;リン脂質;グリセロ脂質;グリセロール;アセテート等が挙げられる。
これらの炭素源は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素源についての詳細は、本実施形態の抽出物や本実施形態の可溶性画分を調製するための培養物の調製について前述したとおりとしてよい。
特に、多糖類としては、具体的には、デンプン、グリコーゲン、ペクチン、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サイリウム、カードラン、プロピレングリコールが挙げられ、β-1,4結合を切断する活性を備える形質転換体を効率的に得る観点から、キサンタンガム、ジェランガムが好ましい。
本実施形態の形質転換体によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
(バイオフィルムを分解する方法)
本実施形態のバイオフィルムを分解する方法は、本実施形態の抽出物、本実施形態の可溶性画分、又は本実施形態のタンパク質を用いるものである。
本実施形態のバイオフィルムを分解する方法においては、20℃以上の好気条件で混合を行うことが好ましい。
以上、図面を参照して、本発明の抽出物、可溶性画分、タンパク質、バイオフィルムを分解する方法等の実施形態について例示説明したが、上記実施形態には適宜変更を加えることができ、本発明は上記例示の実施形態に限定されることはない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<活性汚泥の発見>
膜分離活性汚泥法で濾過に用いられている濾過膜にファウリングが生じていた。
ファウラントについて解析したところ、ウロン酸等を含有する多糖の一種が含まれることがわかった。
一方、製糖工場の廃水処理活性汚泥由来の汚泥を上記ファウラントに添加したところ、ファウラントが分解されることがわかった。
上記汚泥約1gを20mLスケールでキサンタン培地中で28℃で72時間培養した培養物の培養上清2mLを、それぞれ、キサンタンガム500mg、ポリガラクツコン酸500mg、グルクロン酸500mg、ガラクツロン酸500mg、グルコース500mgに加えて、サンプル溶液を調製し、
これら各溶液を、28℃で培養し、バイオフィルムの分解により生じるウロン酸の溶液中での濃度(ppm)を経時的に測定した。
なお、培養上清のみとしたコントロールも用意した。
ファウラント分解活性を有する汚泥(活性汚泥)から得られた混合菌液の培養上清中に、細胞由来の多糖であるキサンタン等を含むバイオフィルムを分解する活性があることが見出された。
図1に、活性汚泥から得られた混合菌液の培養上清を用いてキサンタン等を分解する実験を行ったときの結果を示す。
<バイオフィルム分解活性タンパク質の同定>
キサンタン等を含むバイオフィルムを分解する活性を備えるタンパク質を同定する実験を行った。
上記混合菌を、BS-キサンタン培地(キサンタン終濃度0.5%)において2週間培養し、その後、ファーメンターにおいて2日間培養した。
培養液について、遠心分離を行い、上清を採取し、この上清について限外濾過膜(旭化成株式会社製、AHP-0013)による分画を行い、約10倍に濃縮された50kDa以上の可溶性画分を得た。
50kDa以上の可溶性画分をフィルター滅菌し、タンパク質成分を10%トリクロロ酢酸(TCA)で沈殿させ、SDS-PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて、CBB染色及び銀染色を行った。
図2に、混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分についてのSDS-PAGEを行ったときの結果を示す。
50kDa以上の可溶性画分について、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、分子量に応じた画分を得た。
陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製は下記に従って行った。
カラム:Q Sepharose High Performance(GEヘルスケア社製)5mL
条件及び操作:
・20mM Tris-HClバッファ(pH7.4)を50mL(カラムの約10倍)用いてカラムを平衡化した。
・NaClをそれぞれ0.1M、0.25M、0.4M、0.5Mで含む20mM Tris-HClバッファ(pH7.4)4mLずつを用いて、NaCl濃度を上げながらステップワイズ溶出を行い、1mLずつサンプリングして、各画分を得た。
図3に、混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分について陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製を行ったときの分画プロファイルを示す。
また、各画分をSDS-PAGEに供した。電気泳動後のゲルについて銀染色を行った。
図4に、混合菌の培養液の50kDa以上の可溶性画分について陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製を行ったときの各画分についてSDS-PAGEを行ったときの結果を示す。図中、矢印Aは70kDaのバンドの位置を示し、矢印Bは50kDaのバンドの位置を示す。
図4に示すとおり、分子量約50kDaのタンパク質(以下、「タンパク質A」ともいう。)や、分子量約70kDaのタンパク質(以下、「タンパク質B」ともいう。)等が、上記精製により見出された。
上述の図4に示される精製により得られた主としてタンパク質Aを含む画分(図4において画分7等)について、50kDaカットのスピンカラム(タカラバイオ社製)を使用して、バッファを純水に置換することで脱塩し、調製した精製タンパク質A溶液についてSDS-PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて、CBB染色を行った。
図5に、精製タンパク質A溶液についてのSDS-PAGEを行ったときの結果を示す。
上述のとおり精製により見出されたタンパク質Aやタンパク質B等の特徴的なタンパク質がキサンタン依存性であれば、これらのタンパク質がキサンタンを炭素源とする菌が特徴的に有するものと言える。
そのため、比較実験として、ファウラント分解活性を有する混合菌を、BS-キサンタン培地で培養すると共に、キサンタン以外の炭素源を含むBS培地でも、培養した。
使用した培地は、20mMグルコース含有BS培地、10mMグルコース及び10mMマンノース含有BS培地、0.05%キサンタン含有BS培地、とした。
培養液について、SDS-PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて、銀染色を行った。
図6にファウラント分解活性を有する混合菌を各種BS培地(グルコース含有BS培地、グルコース及びマンノース含有BS培地、キサンタン含有BS培地)で培養した培養液についてSDS-PAGEを行ったときの結果を示す。図中、Mはマーカーを示し、レーン1は20mMグルコース含有BS培地での培養液を示し、レーン2は10mMグルコース及び10mMマンノース含有BS培地での培養液示しを、レーン3は0.05%キサンタン含有BS培地での培養液を示す。図中、レーン1の矢印及びレーン2の矢印はいずれも50kDaのバンドの位置を示し、レーン3の矢印は50kDaのバンドの位置及び70kDaのバンドの位置を示す。
図6に示すとおり、3つのサンプルのいずれにおいても分子量約50kDaのバンドが観察されたが、0.05%キサンタン含有BS培地での培養液(レーン3)におけるバンドが分子量からみて上述のタンパク質Aに相当するバンドであると結論付けられた。また、レーン3では、分子量約70kDaのタンパク質Bに相当するバンドも確認された。
この結果から、タンパク質Aやタンパク質Bがキサンタンを炭素源とする菌に特有のものであることが示唆された。
次いで、50kDa以上の可溶性画分を含む抽出物がバイオフィルム分解活性を備えるかどうかを下記の実験により確認した。
キサンタン溶液は、キサンタン(シグマアルドリッチ社製)0.5gに20mMリン酸バッファ1000mLに溶かして作製した。
キサンタン溶液100mLに50mMリン酸バッファ1mL添加したコントロールと、キサンタン溶液100mLに精製タンパク質A溶液1mLを添加し、24時間インキュベーションした試料とについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による解析を行った。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による解析は下記に従って行った。
装置:日立社製 Chromasterシリーズ
分別カラム:Shodex社製 OHpak SB-806 HQ
ガードカラム:Shodex社製OHpak SB-G
測定溶媒:50mM KH2PO4(pH4)
試料濃度:インキュベート後の液を0.45μmのフィルターでろ過し、そのまま用いた
注入量:20μL
測定温度:40℃
流速:1mL/分
較正曲線の作成には分子量の異なるプルラン8種類(分子量:1660000、380000、186000、100000、48000、23700、12200、5800)を用いた。3次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
図7(A)に、コントロールについてのGPCプロファイルを示す。縦軸に強度(mV)を示し、横軸に時間経過(分)を示す。右上図に、特に4分後から7分後の部分のプロファイルを拡大して示す。
図7(B)に、試料についてのGPCプロファイルを示す。縦軸に強度(mV)を示し、横軸に時間経過(分)を示す。右上図に、特に4分後から7分後の部分のプロファイルを拡大して示す。
図7(A)に示すとおり、コントロールの場合には、キサンタン(分子量約106~107)のピークが、保持時間約5分から約6分の間に観察され、ピークトップの保持時間は5.3分であった。
一方、図7(B)に示すとおり、精製タンパク質A溶液を添加した試料の場合には、保持時間約5分から約6分の間にピークが観察されたが、保持時間が5.4分であるピークトップと共に、保持時間が5.8分であるピークトップも、観察された。
この結果から、キサンタンのピークが低分子量側にシフトしたことから、タンパク質Aによってキサンタンが分解されたことがわかり、ピーク面積の分析(データ示さず)から約半分のキサンタンが分解されたことが示唆された。
以上から、分子量約50kDaのタンパク質Aを含む50kDa以上の可溶性画分を含む抽出物にバイオフィルムを分解する活性があることが見出された。
<ファウラント分解活性を有する菌株の同定>
前述のファウラント分解活性を有する混合菌液を、SCD培地(ベクトン・ディッキンソン社製、BBL(登録商標))にて、好気性条件下、30℃で3~5日間培養したところ、6種類の菌(No.B1~No.B6)が単離された。なお、カビや酵母は除外した。
図8(A)に、ファウラント分解活性を有する混合菌液から単離された6種類の菌(No.B1~No.B6)の生育状態を示す。
No.B1~No.B6をBS-キサンタン培地にて、好気性条件下30℃で3~5日間培養したところ、No.B2のみが生育した。
図8(B)に、ファウラント分解活性を有する混合菌液から単離された6種類の菌(No.B1~No.B6)のうちNo.B2の生育状態を示す。
このNo.B2は、18140-B2として、2017年7月7日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受託番号:NITE P-02506として寄託した。
No.B2培養上清にキサンタン分解活性があるかどうかについて解析した。
1g/Lのキサンタン水溶液100mLにNo.B2培養上清10mLを添加し、20日インキュベーションし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による解析を行った。
図9に、No.B2培養上清を用いてキサンタンを分解する実験を行ったときの結果を示す。
図9に示すとおり、培養時間7日でキサンタン濃度はほぼ0となった。
No.B2培養上清中のタンパク質を解析した。
No.B2培養上清についてSDS-PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて、銀染色を行った。このとき、コントロールとして、No.B2培養液(左図)と、精製タンパク質A溶液(中図)とを用意し、比較検討した。
図10に、No.B2培養上清についてSDS-PAGEを行ったときの結果を示す。図中、Mはマーカーを示し、レーン1はNo.B2培養液を示し、レーン2は精製タンパク質A溶液を示し、レーン3はNo.B2培養上清を示す。
図10に示すとおり、分子量約50kDaのバンドが検出され、No.B2培養上清に前述のタンパク質Aが存在することが示唆された。
また、No.B2の菌株の同定を行った。
No.B2の菌体からMO BIO社製UltraClean Microbial DNAキットを製造者のマニュアルに従って用いてNo.B2の菌のゲノムDNAを抽出した。
ゲノムDNAについて次世代シーケンサを使用して配列解析を行った。
配列解析は下記に従って行った。
装置:Illumin-HiSeq
解析方法:Paired End
読み取り塩基長:100塩基/1リード
取得リード数:1000万リードペア(2000万リード)/検体
取得データ量:2Gb/検体
No.B2の菌のゲノムDNAの配列について16S rDNA塩基配列解析を行った。
16S rDNA塩基配列解析は下記に従って行った。
DNA抽出:アクロモペプチダーゼ(和光純薬社製)
PCR増幅:PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)
サイクルシークエンス:BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequwencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)
シークエンス:ABI PRISM 3130 x1 Genetic Analyzer System(アプライドバイオシステムズ社製)
BLAST相同性検索;
ソフトウェア:テクノスルガ・ラボ微生物同定システム(テクノスルガ・ラボ社製)
データベース:DB-BA11.0(テクノスルガ・ラボ社)、国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GeneBank)
その結果、ゲノムDNAは、Paenarthrobacter属nicotinovorans(又は、Arthrobacter属nicotinovorans(アルスロバクター・ニコチノボランス))と99.8%の同一性を有する塩基配列を備えることがわかった。No.B2は、Paenarthrobacter属nicotinovoransと同定された。
また、No.B2の菌のゲノムDNAの配列について、RAST(http://rast.nmpdr.org/)によるアノテーションを行った。
その結果、グルカナーゼをコードする塩基配列に類似性の高い塩基配列が4つ見出された。
4つの塩基配列は、配列番号1(No.2567)、配列番号2(No.753)、配列番号3(No.246)、配列番号4(No.2584)であった。
配列番号1の塩基配列は、エンドグルカナーゼA前駆体をコードする配列と類似していた。配列番号2の塩基配列は、エンド-1,4-β-グルカナーゼをコードする配列と類似していた。配列番号3の塩基配列は、エンドグルカナーゼ、ファミリー26、S層ドメインタンパク質をコードする配列と類似していた。配列番号4の塩基配列は、エンドグルカナーゼ、ファミリー26、S層ドメインタンパク質をコードする配列と類似していた。
添付の配列表に、配列番号1~配列番号4の塩基配列を示す。
特に、配列番号1(No.2567)について、遺伝子組換えにより、大腸菌を用いて、大量発現を行った。
常法により、配列番号1(No.2567)の塩基配列を含むベクターpBIC1を調製した。
常法により、調製したベクターpBIC1を大腸菌に導入して形質転換を行った。
常法により、形質転換した大腸菌を培養し、発現誘導をかけて、配列番号1(No.2567)でコードされるタンパク質の大量発現を行った。得られたタンパク質をカラムを用いて精製した。
得られたタンパク質を解析した。
得られたタンパク質溶液について、SDS-PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて、抗体染色を行った。
図11に、大量発現させた配列番号1(No.2567)でコードされるタンパク質(未精製の)についてのSDS-PAGEの結果を示す。図中、Mはマーカーを示し、Cはコントロールを示し、レーン1は150ngを示し、レーン2は75ngを示す。また、superは上清を示し、pptは沈殿を示す。
図12に、大量発現させた配列番号1(No.2567)でコードされるタンパク質(Ni-Sepharoseにより精製)についてのSDS-PAGEの結果を示す。図中、Mはマーカーを示し、Cはコントロールを示し、FTは洗浄液を示し、レーン1は1回目溶出液を示し、レーン2は2回目溶出液を示し、レーン3は3回目溶出液を示し、レーン4は4回目溶出液を示し、レーン5は5回目溶出液を示す。また、superは上清を示し、pptは沈殿を示す。
図11及び図12に示すとおり、分子量約50kDaのバンドが検出され、No.B2培養上清に前述のタンパク質Aが存在することが示唆された。
上記大量発現させた配列番号1(No.2567)によりコードされるタンパク質について、キサンタン分解活性を確認したところ、キサンタン分解活性が見出された。
タンパク質溶液にキサンタン分解活性があるかどうかについて解析した。
1g/Lのキサンタン水溶液100mLに上述のタンパク質溶液1mLを添加し、24時間インキュベーションし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による解析を行った。
本発明によれば、濾過に使用される膜に生じるファウラント等のバイオフィルムを効果的に分解することができる。
生物材料寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名:旭化成株式会社 マイクローザ技術開発部
受託番号:NITE P-02506
寄託の日付:2017年7月7日

Claims (2)

  1. 配列番号1(No.2567)の塩基配列によりコードされる、タンパク質を用いて、バイオフィルムを分解する方法。
  2. 前記バイオフィルムがデンプン、グリコーゲン、ペクチン、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サイリウム、カードラン、プロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
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