以下、図面を参照して、この発明の一実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさおよび配置等は、この発明の範囲内で適宜変更することができる。
実施の形態1.
以下、実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機の外観図である。図2は、図1のスクロール圧縮機を側面から見たときの外観図である。図3は、図2のスクロール圧縮機のX-X’断面を矢印方向から見たときの断面図である。図4は、この発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機の一部構成の分解斜視図である。なお、図3においては、シェルおよび圧縮機構等、構成の一部は断面で示しているが、その他の構成は外観図として図示している。
スクロール圧縮機は、シェル1と、メインフレーム2と、スラストプレート3と、圧縮機構部4と、駆動機構部5と、サブフレーム6と、クランクシャフト7と、ブッシュ8と、接続部材9と、を備えている。この実施の形態1の圧縮機は、クランクシャフト7の中心軸が地面に対して略垂直の状態で使用される、いわゆる縦置型のスクロール圧縮機である。以下では、図中の上方向の矢印側を上側としての一端側U、下方向の矢印側を下側としての他端側Lと称して説明する。
シェル1は、金属などの導電性部材からなる両端が閉塞された筒状の筐体であり、メインシェル11と、アッパーシェル12と、ロアシェル13と、吸入管14と、吐出管15と、給電部16と、固定台17と、を備えている。メインシェル11は、円筒状の管である。アッパーシェル12は、略半球状の蓋体であり、その一部がメインシェル11の一端側Uにおいてろう付け等により接続され、メインシェル11の一方の開口を閉じている。ロアシェル13は、略半球状の底体であり、その一部がメインシェル11の他端側Lにおいて、溶接等により接続され、メインシェル11の他方の開口を閉じている。吸入管14は、冷媒をシェル1の内部に導入するための管であり、シェル1の内部空間と連通するように、メインシェル11の側壁に設けられた孔に、一部が挿入された状態でろう付け等により接続されている。吐出管15は、冷媒をシェル1の外部に吐出するための管であり、シェル1の内部空間と連通するように、アッパーシェル12の上部に設けられた孔に、一部が挿入された状態でろう付け等により接続されている。
給電部16は、スクロール圧縮機に給電する部材であり、メインシェル11の外側壁に設けられている。給電部16は、カバー161と、給電端子162と、配線163と、を備えている。カバー161は、カバー部材である。給電端子162は、金属部材からなり、一方がカバー161に囲まれるように設けられ、他方がメインシェル11の内部に設けられている。配線163は、一方が給電端子162と接続され、他方が後述する駆動機構部5のステータ51と接続されている。固定台17は、シェル1を支える支持台である。固定台17はそれぞれにネジ孔が形成された複数の脚部を有しており、ネジ固定することによってスクロール圧縮機を空調室外機の筐体等の他の部材に固定可能になっている。
メインフレーム2は、円筒状の金属フレームであり、シェル1の内部に設けられ、後述する圧縮機構部4の揺動スクロール42を揺動自在に保持している。メインフレーム2は、本体部21と、平坦面22と、収容部23と、軸孔24と、吸入ポート25と、返油孔26と、返油管27と、を備えている。
本体部21は、メインフレーム2を構成する主要な部分である。平坦面22は、本体部21における一端側Uに環状に形成され、収容部23を中心に配置している。収容部23は、シェル1の長手方向、すなわちクランクシャフト7の軸方向に沿って、メインフレーム2の径方向の中央に形成されている。収容部23は、図4に示すとおり、オルダム収容部231と、ブッシュ収容部232と、第1オルダム溝233と、で構成されている。オルダム収容部231は、収容部23の一端側Uに設けられている。ブッシュ収容部232は、収容部23の他端側Lに設けられ、オルダム収容部231と連通している。第1オルダム溝233は、本体部21および平坦面22の一部に形成されたキー溝であり、一対設けられ、オルダム収容部231と連通している。軸孔24は、収容部23の他端側Lに設けられ、ブッシュ収容部232と連通している。すなわち、収容部23および軸孔24により、メインフレーム2の上下方向に貫通し、かつ一端側Uに向かって段状に空間が広くなる空間が形成されいる。なお、この軸孔24が形成されているメインフレーム2の部分は、クランクシャフト7を支持する主軸受部として機能する。
吸入ポート25は、圧縮機構部4に冷媒を供給するための孔であり、メインフレーム2の平坦面22の外端側に、上下方向に貫通して形成されている。返油孔26は、メインフレーム2における他端側Lに形成され、ブッシュ収容部232と連通している。この返油孔26には、収容部23に溜まった潤滑油をロアシェル13の内側の油溜めに戻すための返油管27が挿入されている。なお、吸入ポート25、返油孔26および返油管27は、一つに限らず、複数設けられても良い。
スラストプレート3は、スラスト軸受として機能する鋼板系の薄い金属板であり、メインフレーム2の平坦面22に配置され、圧縮機構部4のスラスト荷重を支持する。スラストプレート3は、切欠き31と、孔部32と、を備える。切欠き31は、リング状のスラストプレート3の外周の一部を切欠く部分であり、メインフレーム2の吸入ポート25に対応して配置される。この際、切欠き31は、吸入ポート25を覆わないよう、吸入ポート25と同じ形状か、それよりも大きく形成されている。孔部32については、後で詳しく説明する。
圧縮機構部4は、冷媒を圧縮する圧縮機構である。圧縮機構部4は、固定スクロール41と、揺動スクロール42と、オルダムリング43と、チャンバー44と、吐出弁45と、を備えており、これらスクロールにより圧縮室46が形成される。
固定スクロール41は、鋳鉄等の金属からなり、第1台板411と、第1渦巻体412と、チップシール413と、吐出ポート414と、を備えている。第1台板411は、円盤状の基板である。第1渦巻体412は、第1台板411における他端側Lの面から突出して形成された渦巻状の歯である。チップシール413は、例えば硬質プラスチックからなり、第1渦巻体412の先端に形成された溝に設けられている。吐出ポート414は、第1台板411の略中央に、その厚み方向である上下方向に貫通して形成された孔である。
揺動スクロール42は、アルミニウム等の金属からなり、第2台板421と、第2渦巻体422と、チップシール423と、筒状部424と、第2オルダム溝425と、を備えている。第2台板421は、円盤状の基板である。第2渦巻体422は、第2台板421における一端側Uの面から突出して形成された渦巻状の歯である。チップシール423は、例えば硬質プラスチックからなり、第2渦巻体422の先端に形成された溝に設けられている。筒状部424は、第2台板421の他端側Lの面の略中央から突出して形成された円筒状のボスである。筒状部424の内周面には、後述するスライダ81を回転自在に支持する揺動軸受、いわゆるジャーナル軸受が、その中心軸がクランクシャフト7の中心軸と平行になるように設けられている。第2オルダム溝425は、第2台板421の他端側Lの面に形成された長丸形状のキー溝である。第2オルダム溝425は、筒状部424を挟んで一対対向するように設けられている。一対の第2オルダム溝425は、それらを結ぶ線が、一対の第1オルダム溝233を結ぶ線に対して、直交する関係になるように配置される。
オルダムリング43は、揺動スクロール42が自転することを防止するための部材であり、リング部431と、第1キー部432と、第2キー部433と、を備えている。リング部431は、環状であり、メインフレーム2のオルダム収容部231に設けられている。第1キー部432は、リング部431の他端側Lの面に設けられている。第1キー部432は、一対で構成され、メインフレーム2の一対の第1オルダム溝233に各々収容される。第2キー部433は、リング部431の一端側Uの面に設けられている。第2キー部433は、一対で構成され、揺動スクロール42の一対の第2オルダム溝425に各々収容される。揺動スクロール42の第2オルダム溝425をオルダムリング43の第2キー部433に合わせることで、揺動スクロール42の第2渦巻体422の回転方向の位置が決まる。つまり、オルダムリング43により、メインフレーム2に対して揺動スクロール42が位置決めされ、メインフレーム2に対する第2渦巻体422の位相が決定する。
チャンバー44は、固定スクロール41の一端側Uの面に設けられ、吐出ポート414と空間的に連通する吐出孔441を備えている。吐出弁45は、冷媒の圧力に応じて吐出孔441を開閉する弁であり、チャンバー44にねじ止めにされている。吐出弁45は、吐出ポート414と連通する圧縮室46の冷媒が所定の圧力に達したときに、吐出孔441を開状態にする。
圧縮室46は、固定スクロール41の第1渦巻体412と、揺動スクロール42の第2渦巻体422と、を互いに噛み合わせるとともに、第1渦巻体412の先端、チップシール413および第2台板421と、第2渦巻体422の先端、チップシール423および第1台板411と、でシールすることにより、形成される。圧縮室46は、スクロールの半径方向において、外側から内側へ向かうに従って容積が縮小する複数の圧縮室で構成される。
冷媒は、例えば、組成中に、炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素、炭素の二重結合を有しないハロゲン化炭化水素、自然冷媒、又は、それらを含む混合物を使用することができる。炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素は、R1234yf(CF3CF=CH2)、R1234ze(CF3CH=CHF)、R1233zd(CF3CH=CHCl)等のHFO冷媒が挙げられる。炭素の二重結合を有しないハロゲン化炭化水素は、R32(CH2F2)、R41(CH3F)、R125(C2HF3)、R134a(CH2FCF2)、R143a(CF3CH3)、R410A(R32/R125)、R407C(R32/R125/R134a)等のHFC冷媒が挙げられる。CH2F2で表されるR32(ジフルオロメタン)、R41等が混合された冷媒が例示される。自然冷媒は、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、ブタン(C4H10)、イソブタン(CH(CH3)3)等が挙げられる。冷媒は、オゾン層破壊係数がゼロで、低GWPの冷媒が望ましい。
駆動機構部5は、メインフレーム2より他端側Lに設けられている。駆動機構部5はステータ51と、ロータ52と、を備えている。ステータ51は、例えば電磁鋼板を複数積層してなる鉄心に、絶縁層を介して巻線を巻回してなる固定子で、リング状に形成されている。ステータ51は、焼き嵌め等によりメインシェル11の内壁に固定されている。ロータ52は、電磁鋼板を複数積層してなる鉄心の内部に永久磁石を内蔵するとともに、中央に上下方向に貫通する貫通穴を有する円筒状の回転子であり、ステータ51の内部空間に配置されている。
サブフレーム6は、金属製のフレームであり、駆動機構部5の他端側Lに設けられ、焼き嵌めや、溶接等によってメインシェル11の内周面に固定されている。サブフレーム6は、副軸受部61と、オイルポンプ62と、を備えている。副軸受部61は、サブフレーム6の中央上側に設けられたボールベアリングである。オイルポンプ62は、シェル1の油溜めに貯留された潤滑油を吸い上げるためのポンプであり、サブフレーム6の中央下側に設けられている。
潤滑油は、シェル1の下部、すなわちロアシェル13に貯留されており、オイルポンプ62で吸い上げられて、後述するクランクシャフト7内の通油路73を通り、圧縮機構部4等の機械的に接触するパーツ同士の摩耗低減、摺動部の温度調節、シール性を改善する。潤滑油としては、潤滑特性、電気絶縁性、安定性、冷媒溶解性、低温流動性などに優れるとともに、適度な粘度の油が好適である。例えば、ナフテン系、ポリオールエステル(POE)、ポリビニールエーテル(PVE)、ポリアルキレングリコール(PAG)の油を使用することができる。
クランクシャフト7は、金属製の棒状部材であり、シェル1の内部に設けられている。クランクシャフト7は、主軸部71と、偏心軸部72と、通油路73と、を備えている。主軸部71は、クランクシャフト7の主要部を構成する軸であり、その中心軸がメインシェル11の中心軸と一致するように配置されている。主軸部71は、ロータ52の中心の貫通孔に焼嵌め等により固定されている。偏心軸部72は、その中心軸が主軸部71の中心軸に対して偏心するように、主軸部71の一端側Uに設けられている。通油路73は、主軸部71および偏心軸部72の内部に、軸方向に沿って上下に貫通して設けられている。このクランクシャフト7は、メインフレーム2の軸孔24に挿入されるとともに、他端側Lがサブフレーム6の副軸受部61の貫通孔に挿入固定される。これにより、偏心軸部72は筒状部424の筒内に配置され、ロータ52は、ステータ51に対応して配置されるとともに、その外周面がステータ51の内周面と所定の隙間を保って配置される。
ブッシュ8は、鉄等の金属からなり、揺動スクロール42とクランクシャフト7を接続する接続部材である。ブッシュ8は、スライダ81と、バランスウエイト82と、を備える。スライダ81は、鍔が形成された筒状の部材であり、偏心軸部72に挿入された状態で、筒状部424に嵌入されている。バランスウエイト82は、一端側Uから見た形状が略C状を呈するウエイト部721を備えたドーナツ状の部材であり、揺動スクロール42の遠心力を相殺するために、回転中心に対して偏芯して設けられている。バランスウエイト82は、例えばスライダ81の鍔に焼嵌め等の方法により、嵌合されている。
接続部材9は、メインフレーム2と固定スクロール41とを接続する部材である。接続部材9は、例えば円柱状の金属棒である。
ここで、シェル1と圧縮機構部4等の関係について、図5を参照してさらに詳しく説明する。図5は、図3の一点鎖線の領域Yの拡大図である。
図5に示すとおり、固定スクロール41は、シェル1の内壁であるメインシェル11の第1内壁面111に固定されている。より具体的には、メインシェル11は、第1内壁面111と、第1内壁面111から突出し、固定スクロール41を位置決めする第1突出部112と、第1突出部112において一端側Uに向けて形成されている第1位置決め面113と、を有しており、固定スクロール41は、第1位置決め面113で位置決めされた状態で、焼嵌めや溶接等により、第1内壁面111に固定されている。つまり、メインシェル11は、他端側Lに向かって内径が大きくなる段状の部分を備えており、その段差を利用して固定スクロール41の位置決めと固定を行っている。なお、メインフレーム2も、メインシェル11の第2内壁面114から突出する第2突出部115の第2位置決め面116で位置決めされた状態で、第2内壁面114に焼嵌め等により固定されている。
このように、固定スクロール41をメインシェル11の内壁面に固定することにより、スクロール圧縮機のフレーム外壁レス構造を実現できる。従来のスクロール圧縮機は、メインフレームが固定スクロールとのネジ止めのために外壁を備えることが一般的である。しかし、メインフレームが外壁を備えると、揺動スクロールはその外壁内の空間に配置されることから、揺動スクロールのサイズはメインフレームの外壁に制約させてしまう。揺動スクロールのサイズに制約があると、スクロールの渦巻歯のサイズも制約されるため、圧縮機の最大馬力を大きくすることができない。これに対して、フレーム外壁レス構造では、メインフレーム2が固定スクロール41とのネジ止めのための外壁を備えないため、揺動スクロール42の第2台板421の側面とメインシェル11の内壁面との間に空間が形成されることになる。換言すると、揺動スクロール42が配置されるメインシェル11の内部の径方向の空間が広がるため、第2台板421の外径や第2渦巻体422の巻径を従来よりも大きくすることができる。すなわち、シェル1は従来設計のままで、第1渦巻体412および第2渦巻体422の直径を大きくすることで圧縮機の最大馬力を大きくしたり、第2台板421を大きくすることでスラスト荷重を低減する設計が可能となる。若しくは、揺動スクロール42のサイズはそのままで、メインシェル11の直径を小さくすることで、最大馬力を下げずに圧縮機を小型化する設計も可能になる。
さらに接続部材9の周辺構造について、図6~図9を参照してさらに詳しく説明する。図6は、図5の二点鎖線の領域Zの拡大図である。図7は、スラストプレートに配置された揺動スクロールを上側から見た図である。図8は、図7において揺動スクロールが吸入ポート側に揺動したときの図である。図9は、実施の形態1の揺動スクロールを上から見た図である。
図6に示すとおり、固定スクロール41は、接続部材9によって、メインフレーム2と接続されている。より具体的には、接続部材9の一端側Uは、固定スクロール41の第1台板411の外端付近に形成された第1収容部415に収容され、他端側Lは、メインフレーム2の本体部21の外端付近に形成されている第2収容部211に収容されることによって、固定スクロール41とメインフレーム2とが接続されている。固定スクロール41とメインフレーム2とを接続部材9で接続することにより、固定スクロール41の第1渦巻体412と揺動スクロール42の第2渦巻体422の位相合わせが可能となる。すなわち、揺動スクロール42の第2渦巻体422はオルダムリング43によりメインフレーム2に対して位相決めされ、固定スクロール41の第1渦巻体412は接続部材9によってメインフレーム2に対して位相決めされるため、固定スクロール41と揺動スクロール42の渦巻状歯の噛み合わせが自ずと所定の状態に位置決めされる。つまり、接続部材9によって、固定スクロール41とメインフレーム2とを接続することで、固定スクロール41と揺動スクロール42との位相合わせが間接的に実施される。なお、位相決めは、製造時において固定スクロール41と揺動スクロール42を予め定められた設計上の関係に合わせるものである。
第1収容部415は、第1渦巻体412が形成されている第1台板411の面側からアッパーシェル12の方向に凹んだ形状の凹部であり、第2収容部211は、平坦面22からロアシェル13の方向に凹んだ形状の凹部である。この第1収容部415および第2収容部211に接続部材9が挿入された状態において、第1収容部415および/または第2収容部211には空隙が形成される。縦置型のスクロール圧縮機の場合、接続部材9の自重により、第1収容部415に空隙が形成される。すなわち、第1収容部415の底部と第2収容部211の底部との距離は、接続部材9の長さよりも大きくなるように設定されている。空隙は、メインフレーム2と固定スクロール41の位置決めが完了する前に、接続部材9がメインフレーム2と固定スクロール41の間で突っ張ってしまうことを防止する。
また、スラストプレート3の孔部32には、接続部材9が挿通されている。揺動スクロール42が揺動した際、スラストプレート3はその揺動運動に伴って自転しようとするが、接続部材9が孔部32に挿通されていることで孔部32の内壁面と接続部材9の外周面とが接触するため、スラストプレート3の自転が抑制される。さらに、スラストプレート3とメインシェル11との間には、隙間Dが形成されている。スラストプレート3の外径は、メインシェル11の内径よりもわずかに小さい関係となるように設定されているため、隙間Dは非常に小さい。すなわち、隙間Dは、スラストプレート3の外径やメインシェル11の内径と比較すると非常に小さいため、メインシェル11の内部においてスラストプレート3が動く余地は実質的になくなる。つまり、接続部材9と隙間Dにより、スラストプレート3の固定と自転防止が実現される。
図7に示すとおり、揺動スクロール42は、第1切欠部426を備えている。第1切欠部426は、接続部材9に対応して設けた際に、揺動スクロール42と接続部材9との接触を避けるためのものである。図7は、揺動スクロール42が接続部材9側に揺動した状態であるが、この状態においても接続部材9とは接触しない。すなわち、第1切欠部426は、揺動スクロール42が揺動している何れのタイミングにおいても、接続部材9との接触しない。よって、固定スクロール41とメインフレーム2の接続のために接続部材9を配置すると、接続部材9の少なくとも一部はメインシェル11と揺動スクロール42の間に形成された空間に設けられ、接続部材9が揺動スクロール42の揺動の範囲に位置しやすくなるところ、第1切欠部426によりそれを回避している。
さらに、揺動スクロール42は、第2切欠部427を備えている。第2切欠部427は、吸入ポート25に対応して設けた際に、揺動スクロール42によって吸入ポート25を覆わないようにするためのものである。図8は、揺動スクロール42が吸入ポート25側に揺動した状態であるが、この状態においても揺動スクロール42は吸入ポート25上に位置しない。すなわち、揺動スクロール42の揺動が揺動している何れのタイミングにおいても、吸入ポート25と重ならない。揺動スクロール42が大きくなると吸入ポート25を覆いやすくなり、冷媒吸入時に圧力損失が発生しうるところ、第2切欠部427によりそれを回避している。
第1切欠部426と第2切欠部427とを形成する場合、揺動スクロール42には好適な箇所がある。図9に示すように、第2渦巻体422の最外端である渦巻端部4221から第2渦巻体422の歯に沿って渦巻中心に向かう回転方向において、渦巻端部4221から最初の直線B(揺動スクロール42の中心Oを通り、直線Aに垂直な直線)に至るまでのAB平面を第1象限、次に直線A(揺動スクロール42の中心Oと渦巻端部4221とを結んだ直線)に至るまでのAB平面を第2象限、次に直線Bに至るまでのAB平面を第3象限、次に直線Aに至るまでのAB平面を第4象限としたとき、第1切欠部426は、第2象限または第4象限に形成することが望ましい。第2象限および第4象限における第2台板421の外端部は、圧縮部として利用されていない部分であり、その部分を切欠いても機能的に問題ないためである。第2切欠部427については、第1切欠部426が形成されなかった第2象限または第4象限に形成するのが望ましい。つまり、第1切欠部426と第2切欠部427とを揺動スクロール42の中心Cに対して対称に設けることで、第2台板421および第2渦巻体422のサイズを最大限に大きくしながら、揺動スクロール42による接続部材9との接触や吸入ポート25との重なりを回避できる。
次に、スクロール圧縮機の製造方法の一例を、図10を参照してさらに詳しく説明する。図10は、メインシェルの一製造方法について説明するための図である。なお、図10は、メインシェル11の一つの壁の断面をわかりやすく図示したものであり、実際の寸法や厚みとは異なる。
まず、(a)のような未加工のメインシェル11の一端側Uから切削用のブラシ等(図示なし)を挿入して、内壁面を厚み方向に切削加工し、(b)のように第2内壁面114および第2突出部115による段差を形成する。次に、第2突出部115から一端側Uの方向に所定距離離れた第2内壁面114において、切削用のブラシ等で内壁面を厚み方向に所定の深さだけ切削加工することで、(c)のように第1内壁面111および第1突出部112による段差を形成する。このため、第1内壁面111の内径r1は、第2内壁面114の内径r2よりも大きくなる。また、第1突出部112は、第2突出部115よりも一端側Uの方向に形成され、その内壁面は第2内壁面114を兼ねた構成となる。第1突出部112を形成した後で、第2突出部115を形成するようにしても良い。メインシェル11の厚みは、例えば4~6mmであるのに対して、突出部の高さ、すなわち点線で示した切削加工による削り深さは、例えば0.3mm前後である。
次に、上記のように形成されたメインシェル11の一端側Uから、メインフレーム2を挿入する。メインフレーム2は、第2突出部115の第2位置決め面116に面で接触し、高さ方向の位置決めがされる。その状態で、メインフレーム2を第2内壁面114に焼嵌めやアークスポット溶接等により固定する。そして、メインフレーム2の軸孔24にクランクシャフト7を挿入したのち、偏心軸部72にブッシュ8を取り付け、さらにオルダムリング43や揺動スクロール42等を配置する。オルダムリング43に揺動スクロール42を配置することで、メインフレーム2に対する揺動スクロール42の位相が決まる。また、メインフレーム2の平坦面22にスラストプレート3を配置したのち、スラストプレート3の孔部32を通過して、第2収容部211に接続部材9を挿入する。
次いで、メインシェル11の一端側Uから、第1収容部415に接続部材9を挿入しつつ、固定スクロール41を挿入し、その後、固定スクロール41を第1内壁面111に焼嵌めにより固着する。固定スクロール41は、第1突出部112の第1位置決め面113に面で接触することで、高さ方向の位置決めがされる。また、メインフレーム2と接続部材9で接続されることで、メインフレーム2に対する固定スクロール41の位相が決まる。メインフレーム2に対する揺動スクロール42は上述の通り、すでに位相に合わせられているため、メインフレーム2と固定スクロール41の接続により、固定スクロール41と揺動スクロール42の位相合わせが完了する。つまり、接続部材9により、特別な位相合わせ工程等を経ずに、固定スクロール41と揺動スクロール42の組立位相を所定のものとすることができる。なお、第1突出部112は、少なくとも固定スクロール41の製造上の位置決めさえできれば良いので、固定スクロール41を第1内壁面111への固定後に、固定スクロール41が第1位置決め面113と接触していることは必須ではない。メインフレーム2と第2突出部115との関係についても同様である。
最後に、メインシェル11の一端側Uから、アッパーシェル12を挿入したのち、メインシェル11とアッパーシェル12を溶接やアークスポット溶接等により固定する。その際、アッパーシェル12で固定スクロール41を第1位置決め面113に押付けるように挿入し、かつその状態を維持して固定スクロール41をメインシェル11に固定することで、スクロール圧縮機ごとの冷媒取込空間の高さのばらつきを抑制し、位置精度を高めるとともに、スクロール圧縮機の駆動時に固定スクロール41が上下方向にずれることを抑制してもよい。
以上で説明したとおり、本実施の形態のスクロール圧縮機は、従来のようにメインフレーム2に固定スクロール41の接続するための外壁を形成することなく、固定スクロール41をメインシェル11に固着しているため、スクロールの台板や渦巻状歯を大型化することができる。すなわち、従来はメインフレームの外壁の内部でスクロール機構を設計しなければならないという渦巻容積限界があったが、フレーム外壁レス構造では、揺動スクロール42の収納空間がメインシェル11の内部空間になったことによって、スクロールの設計自由度が広がり、揺動スクロール42をメインシェル11の内壁まで寸法拡大することができる。
また、メインフレーム2と固定スクロール41とを接続部材9で接続させることで、第1渦巻体412と第2渦巻体422の回転方向の位相を合わせることができ、渦巻状歯同士の噛み合わせを所定の状態とすることができる。渦巻設計は圧縮室設計であり、固定スクロール41と揺動スクロール42とに設けられた渦巻状歯の噛み合わせは、高精度なものが要求される。従来、メインフレームと固定スクロールとをボルト等で固定するが一般的だった。メインフレームと固定スクロールとをボルト固定すると、同時に固定スクロールとメインフレームの位相が決まる。揺動スクロールはオルダムリングによって、メインフレームに対してすでに位相決めが完了しているため、ボルト固定することにより、固定スクロールと揺動スクロールの噛み合わせを予め設定した通りにすることができる。つまり、従来は、ボルト固定により、揺動スクロールと固定スクロールの噛み合わせの精度を高めていた。しかし、フレーム外壁レス構造では、メインフレーム2と固定スクロール41とをボルト等で固定できないため、新たな位相合わせ手段が必要となる。接続部材9は、その新たな位相合わせ手段に相当するものであり、メインフレーム2と固定スクロール41とを接続することで、間接的に固定スクロール41と揺動スクロール42との渦巻状歯同士の位相合わせを行うことができる。
また、接続部材9をスラストプレート3の孔部32に挿通することで、スラストプレート3の自転を防止できる。接続部材9は、上述の通り、固定スクロール41と揺動スクロール42の位相合わせに使用しているため、スラストプレート3の自転を防止する構造も兼ねることになる。すなわち、接続部材9は、メインフレーム2と固定スクロール41の接続機能のみならず、スラストプレート3の回転防止機能も有しているため、それぞれを設ける場合と比較して部品点数を低減でき、構造の複雑化やコストアップを回避することができる。
この実施の形態では、揺動スクロール42を揺動自在に保持するメインフレーム2と、揺動スクロール42とともに冷媒を圧縮する圧縮室46を形成する固定スクロール41と、メインフレーム2と揺動スクロール42との間に設けられたスラストプレート3と、メインフレーム2と固定スクロール41とを接続するとともに、スラストプレート3の自転を規制する接続部材9と、を備える。また、シェル1は、両端が開口したメインシェル11を備え、メインシェル11は、第1内壁面111と、第1内壁面111から突出し、固定スクロール41を位置決めする第1突出部112と、第1突出部112に形成された第1位置決め面113と、を有しており、固定スクロール41が、第1位置決め面113に位置決めされた状態で、第1内壁面111に固定されている。したがって、フレーム外壁レス構造において、固定スクロール41と揺動スクロール42の位相合わせを行う接続部材9を利用して、スラストプレート3の自転を抑止することがことができ、スラストプレート3の自転防止用のパーツを新規に設けることで部材が増加することを回避することができる。
揺動スクロール42は、第2渦巻体422が形成された第2台板421を備え、第2台板421は、揺動スクロール42の揺動時に、接続部材9との接触を避ける第1切欠部426を備える。したがって、揺動スクロール42と接続部材9との接触を避けつつ、揺動スクロール42のサイズを大きくすることができる。
揺動スクロール42の中心Cと第2渦巻体422の最外端である渦巻端部4221とを結んだ直線を直線A、揺動スクロール42の中心Cを通り、直線Aに垂直な直線を直線Bとし、渦巻端部4221から第2渦巻体422に沿って渦巻中心に向かう回転方向において、渦巻端部4221から最初の直線Bに至るまでのAB平面を第1象限、次に直線Aに至るまでのAB平面を第2象限、次に直線Bに至るまでのAB平面を第3象限、次に直線Aに至るまでのAB平面を第4象限としたとき、第1切欠部426は、第2象限または第4象限に形成されている。したがって、第2象限および第4象限の第2台板421の端部は圧縮に寄与しない部分であるため、揺動スクロール42と接続部材9との接触を避けつつ、揺動スクロール42のサイズを可能な限り大きくすることができる。
メインフレーム2は、圧縮室46に冷媒を供給する吸入ポート25を備え、スラストプレート3は、吸入ポート25に対応する位置に切欠き31を備え、第2台板421は、切欠き31に対応する位置に第2切欠部427を備える。したがって、揺動スクロール42やスラストプレート3によって吸入ポート25を塞ぐことを回避でき、圧力損失の発生を抑制することができる。
第1切欠部426と第2切欠部427は、揺動スクロール42の中心Cに対して、対称に設けられている。したがって、揺動スクロール42と接続部材9との接触や、吸入ポート25を塞ぐことによる圧力損失発生を避けつつ、揺動スクロール42のサイズを可能な限り大きくすることができる。
スラストプレート3は、接続部材9が挿通される孔部32を備えるため、揺動運動により、スラストプレート3が自転した際に、スラストプレート3と接続部材9とを接触させて、自転を防止することができる。固定スクロール41は、接続部材9の一端側を収容する第1収容部415を備え、メインフレーム2は、接続部材9の他端側を収容する第2収容部211を備える。したがって、固定スクロール41とメインフレーム2との接続を安定して行うことができる。
第1収容部415および第2収容部211は凹部であり、接続部材9を収容した状態において、第1収容部415または第2収容部211の少なくとも一方に空隙が形成されている。したがって、固定スクロール41と揺動スクロール42の渦巻状歯の歯先隙間を好適なものとする際に、接続部材9が突っ張ってしまうことを防止することができる。
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2に係るスクロール圧縮機の断面図、図12は、スラストプレートに配置された揺動スクロールを上から見た図である。以下の実施の形態等では、図1~図10のスクロール圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
実施の形態2では、固定スクロール41Aおよび接続部材9Aの形状を変更している。具体的には、固定スクロール41Aの第1基板411Aは、メインフレーム2の方向に突出する突出部416Aを備えており、接続部材9Aは、その一端側Uが突出部416Aの先端に形成された第1収容部415Aに収容されている。これにより、突出部416Aとスラストプレート3との距離が近づくため、接続部材9Aを短くすることができ、固定スクロール41Aとメインフレーム2の位相ズレを小さくすることができる。これは、接続部材9Aの長さが短くなるほど、接続部材9Aが動くブレ幅が小さくなるためである。
なお、固定スクロール41Aの突出部416Aとスラストプレート3との間の距離は、揺動スクロール42の第2台板421の厚さよりも大きくしている。これにより、揺動中に揺動スクロール42が突出部416Aに干渉することを防止でき、揺動スクロール42のサイズを大きくすることができる。例えば、図11や図12に示すように、揺動スクロール42の第2台板421の一部が揺動中、常に、または少なくとも一公転あたり一回、突出部416Aとスラストプレート3の間の空間に入り込む、すなわち突出部416Aの内壁面から真下に引いた直線Sを超えるようにすることができる。このように、特に揺動スクロール42が接続部材9Aに最も近接する揺動のタイミングにおいて、第2台板421が突出部416Aとスラストプレート3の間の空間に入り込むようにすることで、揺動スクロール42のサイズを可能な限り大きくすることができる。
この実施の形態では、固定スクロール41Aは、メインフレーム2の方向に突出する突出部416Aを備え、第1収容部415Aは、突出部416Aに形成されている。したがって、実施の形態1と同様の効果が得られるほか、接続部材9Aが短くなるため、固定スクロール41Aとメインフレーム2の位相ズレを小さくすることができる。
また、固定スクロール41Aの突出部416Aとスラストプレート3の間の距離は、揺動スクロール42の第2台板421の厚みよりも大きいため、揺動スクロール42の第2台板421のサイズを大きくすることができる。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3に係るスクロール圧縮機の断面図、図14は、スラストプレートに配置された揺動スクロールを上から見た図である。
実施の形態3では、固定スクロール41B、揺動スクロール42Bおよび接続部材9Bの形状を変更している。具体的には、揺動スクロール42Bの第2台板421Bに延出部428Bが形成されている。延出部428Bは、第2台板421Bにおけるスラストプレート3側の端部から外方向に延びている。また、実施の形態2と同様に、固定スクロール41は、メインフレーム2の方向に突出し、接続部材9Bの一端側を収容する突出部416Bを備えており、突出部416Bとスラストプレート3の間の距離は、揺動スクロール42Bの第2台板421Bの厚みよりも小さく、延出部428Bの厚みよりも大きい。
すなわち、第2台板421Bのうち、スラストプレート3側の一部を薄肉化し、その薄肉化した部分を突出部416Bとスラストプレート3の間に入り込ませることを可能とすることで、揺動スクロール42Bの第2台板421Bのサイズを大きくしつつ、突出部416Bとスラストプレート3の間の距離をさらに小さくすることができる。そのため、接続部材9Bがより短くなり、固定スクロール41Aとメインフレーム2の位相ズレを小さくすることができる。この実施の形態においても、図13や図14に示すように、揺動スクロール42の延出部428Bの一部が揺動中、常に、または少なくとも一公転あたり一回、突出部416Bの内壁面から真下に引いた直線Sを超えるようにすることができる。このように、特に揺動スクロール42が接続部材9Bに最も近接する揺動のタイミングにおいて、延出部428Bが突出部416Bとスラストプレート3の間の空間に入り込むようにすることで、揺動スクロール42Bを拡大することができ、特に第2台板421とスラストプレート3との接触面積が増し、スラスト荷重を低減できる。
この実施の形態では、揺動スクロール42Bは、第2渦巻体422が形成された第2台板421Bと、第2台板421Bにおけるスラストプレート3側の端部から外方向に延びる延出部428Bを備えており、固定スクロール41の突出部416Bとスラストプレート3の間の距離は、揺動スクロール42Bの第2台板421Bの厚みよりも小さく、延出部428Bの厚みよりも大きい。したがって、実施の形態1と同様の効果が得られるほか、接続部材9Aが短くなるため、固定スクロール41Aとメインフレーム2の位相ズレを小さくすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、縦型スクロール圧縮機について説明したが、横型のスクロール圧縮機にも適用できる。その際、横型のスクロール圧縮機においては、メインフレームを基準として、一端側Uは圧縮機構部が設けられている側、他端側Lは駆動機構部が設けられている側に置き換えてみることができる。また、駆動機構部5が配置されたメインシェル11内の空間の圧力がアッパーシェル12内の吐出空間の圧力よりも低くなる低圧シェル方式のスクロール圧縮機に限らず、駆動機構部5が配置されたメインシェル11内の空間の圧力がアッパーシェル12内の吐出空間の圧力と同等か、それよりも高くなる高圧シェル方式のスクロール圧縮機にも適用できる。ただし、スラストプレート3は、駆動機構部5が低圧であるために、圧縮室46にて圧縮された高圧冷媒の圧力により揺動スクロール42が駆動機構部5側に押し付けられ、スラスト荷重が大きくなる低圧シェルにおいて特に採用されるものであるため、低圧シェルの方が有効である。
メインフレーム2は、フレーム外壁レス構造に限らない。例えば、メインフレーム2の外壁に孔部32が形成されているスラストプレート3の外周端を収容する空間を形成し、その空間においてメインフレーム2と固定スクロール41を固定するボルトを孔部32に挿通するようにしてもよい。すなわち、外壁を備えたメインフレーム2において、固定スクロール41をボルト等の接続部材9で固定する際に、接続部材9でスラストプレート3の自転を規制するように構成してもよい。
メインフレーム2の吸入ポート25の形状は、種々の変更が可能である。例えば、図15に示すように、吸入ポート25Cは、半月状の冷媒吸入孔であってもよい。図16のように、吸入ポート25のほかに、吸入ポート251D、252Dを形成してもよい。吸入ポート251D、252Dは、第2収容部211の両側のメインフレーム2に形成することが望ましい。つまり、接続部材9を挟むように吸入ポート251D、252Dを形成することで、揺動スクロール42に新たな切欠き部を形成することなく、メインフレーム2に吸入ポート251D、252Dを形成することができる。また、図17のように、揺動中に揺動スクロール42Eに塞がれないようであれば、接続部材9に対して対向しない位置に一対の吸入ポート253E、254Eを形成してもよい。ここで、吸入ポート25の断面積は、吸入管14から取り込まれた冷媒が吸入ポート25を圧力損失が少なくするために、吸入管14の断面積よりも大きくすることが望ましい。吸入ポート25の形状や個数を変更することによって、吸入管14の断面積よりも大きくなるように吸入ポート25の断面積を調整でき、吸入ポート25での冷媒の圧力損失の発生を抑制することができる。なお、スラストプレート3の切欠き31は、実施の形態1と同様に、吸入ポート25の形状に合わせることで吸入ポート25を覆わないようにすることが望ましい。図15の吸入ポート25Cにおいては、スラストプレート3Cに直線的にカットした切欠き31Cを形成し、図16の吸入ポート251D、252Dにおいては、スラストプレート3Dの孔部32Dの両端に切欠き311D、312Dを形成し、図17の吸入ポート253E、254Eにおいては、スラストプレート3Eに切欠き313E、314Eを形成している。
固定スクロール41の第1収容部415は、凹部に限らない。例えば、図18に示すように、第1収容部415Fは、第1台板411Fを貫通する貫通孔でもよい。この場合でも、実施の形態1と同様に、固定スクロール41Fと揺動スクロール42との位相を合わせることができるとともに、スラストプレート3の自転を防止することができる。また、圧縮機の製造過程において、固定スクロール41Fをメインシェル11の第1位置決め面113に位置合わせしたあとに、第1収容部415Fから接続部材9を挿入して、位相合わせすることができるため、製造を容易化することができる。ただし、第1収容部415Fに接続部材9の一端側Uを収容しても、それらの間には僅かに隙間が形成される。したがって、その隙間によって固定スクロール41Fの一端側Uの高圧空間と他端側Lの低圧空間とが空間的に連通してしまうため、接続部材9を配置後は、第1収容部415Fを封止部材417Fにより孔の少なくとも一方を封じることで実質的に凹部とし、固定スクロール41Fの上下の空間を遮断することが望ましい。
揺動スクロール42の第2台板421は、必ずしも第1切欠部426および第2切欠部427を備える必要はない。図17に示すように、第2台板421Eは、円盤状であってもよい。揺動スクロールに切欠きを形成しない場合でも、従来の外壁を有するメインフレームに揺動スクロールを配置する場合と比較すると、揺動スクロール42Eの第2台板421Eや第2渦巻体422Eのサイズを大きくすることができる。また、第2台板421は、楕円状であってもよい。その場合、接続部材9に近接する部分を短辺とすることで、実施の形態1のように、揺動スクロール42に第1切欠部426および第2切欠部427を形成した場合と同様の効果を得ることができる。
接続部材9は、円柱状に限らない。例えば、図15に示すように、多角形状、具体的には四角柱状の接続部材9Cを使用しても良い。図16に示すように、楕円柱状の接続部材9Dを使用しても良い。図19に示すように、固定スクロール41の第1収容部415に収容される側の端部にテーパ面91Gを備えた接続部材9Gを使用してもよい。テーパ面91Gは、接続部材9Gに固定スクロール41の第1収容部415を挿入する際のガイドとなるため、製造を容易化することができる。ただし、テーパ面91Gの形成範囲が長すぎると、接続部材9Gと第1収容部415の間に位相合わせの際のぐらつきの原因となる隙間が形成されてしまう。そのため、テーパ面91Gは、第1収容部415に収まる寸法、すなわち第1収容部415よりも外側にテーパ面91Gが位置しない寸法とすることが望ましい。また、接続部材9は複数設けても良い。接続部材9を複数で構成することによって、スラストプレート3の自転のみならず、固定もすることができる。ただし、接続部材9が複数になると、接続部材9を収容する固定スクロール41の第1収容部415およびメインフレーム2の第2収容部211について、高い加工精度が要求される。また、接続部材9によって、固定スクロール41とメインフレーム2とを接続する工程も難易度が上がる。したがって、接続部材9は、実施の形態1などのように、1本で構成することが最適である。
また、スラストプレート3の孔部32は、接続部材9の形状に合わせることが望ましい。すなわち、図15の接続部材9Cにおいては、孔部32Cは四角形状とし、図16の接続部材9Dにおいては、孔部32Dは楕円形状とする。また、図15の孔部32Cや、図17の孔部32Eのように、切欠き形状としても良い。つまり、スラストプレート3の孔部32は、接続部材9を挿通でき、かつスラストプレート3が揺動スクロール42の揺動運動に伴って自転しようとした際に、内面が接続部材9の外面と接触することで、自転を抑制できるものであれば良い。