JP7076272B2 - 電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子 - Google Patents
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Description
しかし、このように調製した電気化学素子用セパレータであっても、無機粒子の存在によって多孔質基材の空隙が閉塞するため、尚もイオン透過性の低下が十分に防止されず、放電特性に優れる電気化学素子用セパレータを提供するのには限界があった。
特許文献2は、内部抵抗が小さい電気化学素子用セパレータにかかる発明であり、不織布層にセルロースナノファイバー層を設けた電気化学素子用セパレータを開示し、不織布層やセルロースナノファイバー層にシリカ粒子を混合するのが好ましいことを開示している。
特許文献3は、平均孔径がより小さいため電解液の保持力向上やピンホールの発生を防止した電気化学素子用セパレータにかかる発明であり、カルボキシル基量0.6~2.5mmol/g、好ましくは1.5~2.0mmol/gのセルロースナノファイバーを含むスラリーを、プラスチックシャーレ等の支持体に塗工後、乾燥して得られる電気化学素子用セパレータを開示し、スラリーに無機微粒子を混合できることを開示している。
なお、前記カルボキシル基量は、本明細書における2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)酸化度に相当する。
[1]多孔質基材ならびにシリカ粒子とTEMPO酸化セルロースナノファイバーを有する電気化学素子用セパレータであって、前記TEMPO酸化セルロースナノファイバーのTEMPO酸化度は1.1mmol/g以上1.8mmol/g未満である、電気化学素子用セパレータ、
[2]TEMPO酸化度が1.1mmol/gより大きく、1.8mmol/g未満である、[1]の電気化学素子用セパレータ、
[3][1]又は[2]の電気化学素子用セパレータを用いた電気化学素子
に関する。
そして、本発明の電気化学素子用セパレータを用いた電気化学素子は、ハイレート放電など放電特性に優れる。
多孔質基材は通気性を有する素材であればよく、その種類は適宜選択できる。例えば、布帛(繊維ウェブや不織布、織物、編物などのシート状の繊維構造体)、通気性を有するフィルムや発泡体などを用いることができる。
そのため、本発明に係るシリカ粒子の粒径の50%累積値D50は、下限値が0.2μm以上であるのが好ましい。また、本発明に係るシリカ粒子の粒径の50%累積値D50は、上限値が3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、0.5μm以下であるのが好ましい。
本発明で用いるTEMPO酸化セルロースナノファイバーは、既知の方法により製造されるものでよく、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO)等のN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いてパルプ等のセルロース原料を酸化して得られるTEMPO酸化セルロースを分散液中で高圧ホモジナイザー等による解繊処理を経て得られるものである。TEMPO酸化によりセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が酸化変性されてカルボキシル基となったものである。
TEMPO酸化セルロースナノファイバーのTEMPO酸化度、すなわち、カルボキシル基量の測定は、例えば、乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5~1質量%スラリーを60mL調製し、0.1mol/Lの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式に従いカルボキシル基量を求めることができる。
TEMPO酸化度(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/セルロース質量〕
まず、セパレータを構成する繊維を用意する。繊維としては、シリカ粒子の担持性に優れるように、極細繊維を用いるのが好ましい。また、繊維同士を結合できるように、融着性の複合繊維(極細繊維であるかどうかを問わない)を準備するのが好ましい。
次いで、繊維を開繊して繊維ウェブを形成する。繊維ウェブの形成方法はエアレイ法などの乾式法により形成することができるし、湿式法により形成することもできる。場合によっては、メルトブロー法などの直接紡糸法により直接繊維ウェブを形成することもできる。
他方で、シリカ粒子とTEMPO酸化セルロースナノファイバーを用意しておく。
そして、このシリカ粒子とTEMPO酸化セルロースナノファイバーとを適当な分散媒(例えば、純水、アルコールなど)中で混合し、必要に応じて、更に結合剤(例えば、アクリル系樹脂ディスパージョン)を加えて混合し、塗工液を調製する。所望により、前記塗工液は、ふるいを通すことにより粒子径の大きな粒子を除去することができる。前述の形成した不織布に、塗工液を塗布し、加熱装置へ供することで塗工液中の分散媒あるいは溶液を除去して、本発明のセパレータを製造することができる。
なお、加熱装置の種類は適宜選択できるが、例えば、遠赤外線ヒーター装置、フローティングドライヤーを備えた加熱装置、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法などを用いることができる。また、上述した複数種類の加熱装置へ供することで、塗工液中の分散媒あるいは溶液を除去してもよい。なお、セパレータの形状は使用用途によって、例えば、平板状や巻回状など適宜調整できる。
芯成分がポリプロピレン(融点:165℃)、鞘部がポリエチレン(融点:135℃)の芯鞘型複合繊維(繊度:0.4dtex、繊維長:6mm)60質量部と、ポリプロピレン単繊維(融点:160℃、繊度:0.01dtex、繊維長:1.7mm)40質量部とを混合し、湿式抄造法により繊維ウェブを調製した。
その後、前記繊維ウェブを温度140℃の熱風で処理した後、80℃のカレンダーロールに供することで加圧加熱処理し、不織布を調製した。
更に、調製した不織布をプラズマ処理へ供することで、親水化処理した不織布を得た(目付:6.2g/m2、厚さ:15μm)。
表1及び表2に記載の組成物を混合、攪拌し、その後、開口径が20μmのふるいへ通すことで、粒子径の大きな粒子を除去して塗工液を調製した。
なお、塗工液Aは組成物が均等に分散しておらずゲル状の塗工液であった。一方、塗工液B~塗工液Hはゲル状になることなく組成物が均等に分散してなる塗工液であった。
・アクリル系樹脂ディスパージョン:Tg:4℃、固形分濃度:45質量%
・アルミナ粒子:粒径の50%累積値D50:790nm
・シリカ粒子:粒径の50%累積値D50:450nm
・各種セルロースナノファイバー
TEMPO酸化度(mmol/g):0、1.1、1.6、1.7、1.8、2.0
グラビアロールを用いて、親水化処理した不織布の一方の主面に塗工液Aを塗布することを試みた。しかし、塗工液Aは組成物が均等に分散しておらずゲル状の塗工液であったため、グラビアロールを用いた塗布を行うことができなかった。
そのため、親水化処理した不織布ならびにアルミナ粒子とTEMPO酸化セルロースナノファイバーを有するセパレータを調製できなかった。
グラビアロールを用いて、親水化処理した不織布の一方の主面に塗工液Dを塗布した。なお、使用した塗工液はゲル状になることなく組成物が均等に分散してなる塗工液であった。そして、加熱装置へ供することで、塗工液中の分散媒を除去してセパレータ(目付:12.6g/m2、厚さ:18μm、塗布液由来の固形分質量:6.4g/m2)を調製した。
塗工液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
塗工液Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
塗工液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
塗工液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
塗工液Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
塗工液Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを調製した。
セパレータから試験片を採取し、「JIS P 8117:2009(紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)-ガーレ法) a)ガーレ試験機法」において規定されている方法へ供することで、ガーレ値(sec/100mL)を算出した。
なお、一般的にこのガーレ値が高いセパレータであるほど、イオンが透過する空隙が閉塞されたことにより、放電特性の低下したセパレータであることを意味する。
セパレータから、機械方向(製造時の流れ方向)と長さ方向が一致するようにして、試験片(形状:長方形、長さ:200mm、幅:50mm)を採取した。
そして、採取した試験片を、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン、初期つかみ間隔:100mm、引張速度:300mm/分)へ供し、試料片が破断するまで引っ張った時の強度から引張強度(N/50mm)を求めた。
また、試料片が破断するまで引っ張った時の、測定された試験片の最大荷重時のつかみ間隔(mm)の長さを以下の数式へ代入することで、試験片の引張伸度(%)を算出した。
a={(b-c)/c}×100
a:引張伸度(%)
b:最大荷重時のつかみ間隔(mm)
c:初期つかみ間隔(100mm)
(1)正極の作成
コバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末87質量部とアセチレンブラック6質量部、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)7質量部を、N-メチル-ピロリドン(NMP)に溶解させ、ポリフッ化ビニリデン濃度が13質量%の正極剤ペーストを作製した。次いで、このペーストを厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、乾燥した後にプレスして、厚さ90μmの正極を作製した。
負極活物質として天然黒鉛粉末90質量部とポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量部を、N-メチル-ピロリドン(NMP)に溶解させ、ポリフッ化ビニリデン濃度が13質量%の負極剤ペーストを作製した。このペーストを厚さ15μmの銅箔上に塗布し、乾燥した後にプレスして、厚さ70μmの負極を作製した。
非水系電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(比率=50質量%:50質量%)に、LiPF6を溶解させた1mol/L溶液(キシダ化学(株)製)を用意した。
CR-2032型コインセルに負極(直径:12mm)、セパレータ(直径:16mm)、正極(直径:12mm)の順に積層した後、非水電解液を注液し、スペーサーを介して蓋をした後、コイン電池用かしめ機でパッキングを行い、リチウムイオン二次電池をそれぞれ作製した。なお、正極と負極の質量比率は1:1.1とした。
作製した各リチウムイオン二次電池のそれぞれの容量をCと表した場合に、0.2Cで表される充電速度で6時間充電した後、15分間放置し、その後、放電速度8Cにおいて電圧が0.8Vになるまで放電した。
この時の、各リチウムイオン二次電池の放電速度8Cにおける放電容量を測定した。この測定を、各3個のリチウムイオン二次電池において行ない、得られた各値の算術平均値を算出し、小数点第二位以下を四捨五入することで放電容量(mAh)を求めた。
なお、この放電容量が高いセパレータであるほど、放電特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供可能なセパレータであることを意味する。
耐電圧/絶縁抵抗試験器(菊水電子工業株式会社製、型番:TOS9200)を用いて、B5サイズのアルミ電極2枚の間にA4サイズのセパレータ試料を挟み、その上から7.5kgのSUS棒を置いて一定荷重をかけた状態で、両アルミ電極間に電圧250Vを印加したときの両アルミ電極間の電気抵抗値を測定した。なお、測定の下限基準値を1MΩとして、1MΩ以下(表3及び表4において「≦1」と記載)で絶縁不良と見なした。
同測定を比較例および実施例から切り出した、各3枚ずつのA4サイズのセパレータ試料の各々に対して行った。(n=3)
なお、この電気抵抗値(絶縁性)が1MΩよりも高いセパレータであるほど、絶縁性(耐ショート性)に優れるリチウムイオン二次電池を提供可能なセパレータであることを意味する。更に、各セパレータ試料における電気抵抗値の平均値が高いセパレータ、および/または、各セパレータ試料における電気抵抗値の結果において1MΩ以下の発生頻度が低いセパレータであるほど、絶縁性(耐ショート性)に優れるリチウムイオン二次電池を提供可能なセパレータであることを意味する。
(参考例1)と(実施例2)を比較した結果、TEMPO酸化処理してなるセルロースナノファイバーとアルミナ粒子が混合してなるスラリーでは分散が上手くなされず、スラリーがゲル状になり、セパレータ自体を製造できなかった。一方、TEMPO酸化処理してなるセルロースナノファイバーとシリカ粒子が混合してなるスラリーではゲル状になることなく組成物が均等に分散しており、セパレータを製造できた。
一方、上述のTEMPO酸化度を満たさないセルロースナノファイバーを採用した(比較例2~4)のセパレータは、(比較例1)のセパレータ以下の放電特性しか有していないセパレータであった。
(実施例1)と(実施例2~3)を比較した結果、TEMPO酸化度が1.1mmol/gより高く1.8mmol/g未満のセルロースナノファイバーを採用することで、より絶縁性(耐ショート性)に優れるセパレータを提供できた。
Claims (3)
- 多孔質基材ならびにシリカ粒子とTEMPO酸化セルロースナノファイバーを有する電気化学素子用セパレータであって、前記TEMPO酸化セルロースナノファイバーのTEMPO酸化度は1.1mmol/g以上1.8mmol/g未満であって、
前記多孔質基材の空隙全体に、前記シリカ粒子と前記TEMPO酸化セルロースナノファイバーが存在しており、
ガーレ値が10(sec/100mL)より高く55(sec/100mL)以下である、電気化学素子用セパレータ。 - TEMPO酸化度が1.1mmol/gより大きく、1.8mmol/g未満である、請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
- 請求項1又は2に記載の電気化学素子用セパレータを用いた電気化学素子。
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