JP7074953B2 - 表面処理鋼板、有機樹脂被覆鋼板、及びこれらを用いた容器 - Google Patents
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Description
しかしながら上記のようなクロメート処理は優れた耐食性と密着性を確保できるのであるが、特にクロメート処理における6価クロムは毒性があって環境に対する負荷が大きい。また、6価クロムの使用に関わらず、そもそもクロメート処理を行うことによって生じる排水処理、排気処理、廃棄物処理等には多額の費用を必要とする。
このため、近年では6価クロムをはじめとして、そもそもクロムを含む化合物の使用を削減し最終的には撤廃しようとする動きが世界的に強まっている。
すなわち、上記した特許文献では酸化スズに関する言及は一部にあるものの、酸化スズをSnOXとして総括して扱っており、より詳細に酸化第一スズや酸化第二スズによる影響を考察するまでは至っていない。
さらに(1)又は(2)に記載の表面処理鋼板においては、(3)前記化成皮膜は、さらにリン酸化合物を含むことが好ましい。
また、(1)に記載の表面処理鋼板においては、(4)前記化成皮膜は、ジルコニウムを含むことが好ましい。
また、硫化黒変の発生に影響するスズの酸化物皮膜(酸化第一錫および酸化第二錫)の反応を、電気化学測定装置を用いて測定することで、簡易的に耐硫化黒変の特性を予測することが可能になる。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態に係る表面処理鋼板10は、基材としての鋼板1と、この鋼板上に形成されたスズめっき層2と、このスズめっき層2上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜3(以下、クロムフリー皮膜3と称する)を含んで構成されている。
なお以下で説明する実施形態では、鋼板1の表裏双方の面に皮膜(スズめっき層2、クロムフリー皮膜3など)が形成される例を説明するが、鋼板1の少なくとも一方の面に皮膜が形成されていてもよい。また、本実施形態では、この表面処理鋼板10の表面に有機樹脂層4が更に被覆されて有機樹脂被覆鋼板となっていてもよい。
以下、本実施形態に係る表面処理鋼板10につき、適宜図面を参照しながら個々の要素を詳述していく。
基材としての鋼板1は、絞り加工性、絞りしごき加工性、絞り加工と曲げ戻し加工による加工(DTR)の加工性に優れているものであればよく、特に限定されない。一例として、鋼板1としては、例えば厚さが0.1mm~0.5mm程度の鉄や各種の合金などの金属板が用いられる。
本実施形態のスズめっき層2は、例えば鋼板1の両面に形成される。このスズめっき層2の厚みは特に限定されず、製造する表面処理鋼板10の使用用途に応じて適宜選択すればよいが、例えばスズ量で好ましくは0.5g/m2以上、より好ましくは1.0~15g/m2である。なお、スズめっき層2は鋼板1の少なくとも一方の面に形成されていてもよいことは上述のとおりである。
[スズめっき浴およびめっき条件]
フェノールスルホン酸錫を主成分とする公知のフェロスタン浴を用いて、下記条件でスズめっきを鋼板に形成する。
浴温 35~60℃
撹拌:適宜
陰極電流:1~20A/dm2
陽極材料:公知の99.999%金属錫
処理時間:通電時間1秒・停止時間0.50秒を1サイクルとし、サイクル数5~15回
リフロー:得られたスズめっき層2を有する鋼板1に直流電流を流し、基材の電気抵抗による発熱によってスズの融点以上まで加熱した後に水をかけて急冷
なお、上記ではフェロスタン浴を例示したが、ハロゲン化錫を主成分とするハロゲン浴を用いてもよい。
本実施形態のクロムフリー皮膜3は、上記したスズめっき層2上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜である。なお本実施形態において「実質的に含有しない」とは、クロム成分は一切含んでいない形態に加え、不純物としてクロムが不回避的に含有してしまう場合をも含む。
以下、それぞれ本実施形態に好適な具体的な皮膜について詳述する。
クロムフリー皮膜3としてのリン酸化合物皮膜は、リン酸錫を含有する層であり、上述したスズめっき層2が形成された鋼板1(以下、錫めっき鋼板とも称する)に対してリン酸イオンを含む電解処理液に浸漬させ、鋼板1側を陰極とした陰極電解処理を施すことにより形成される。
また、電解処理液のpHは、特に限定されないが、好ましくは1~7である。pH1未満とすると、形成させたリン酸錫が溶解してしまう傾向にある。一方、pH7超とすると、錫めっき鋼板の表面の酸化膜層の溶解が不十分となり、酸化膜層が多く残存している部分にはリン酸化合物皮膜が形成され難いことから、錫めっき鋼板上に均質なリン酸化合物皮膜を形成できなくなるおそれがある。
また、電解処理液の温度は、好ましくは30~60℃である。
このとき、電解処理液の電解電気量は、1~10C/dm2、より好ましくは2~5C/dm2である。
また、錫めっき鋼板に陰極電解処理を施す際には、錫めっき鋼板に対して設置する対極板としては、電解処理を実施している間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムで被覆されたチタン板、又は白金で被覆されたチタン板が好ましい。
リン酸化合物皮膜中のリンの適切な含有量としては、好ましくは0.5~20mg/m2、さらに好ましくは0.5~5.0mg/m2、特に好ましくは0.9~4.0mg/m2である。
なお、上述したリン酸化合物皮膜については、例えば上記した特許文献2~4をさらに参照してもよい。また、リン酸化合物皮膜はクロムフリー皮膜3として必須ではなく、適宜これを省略してもよい。
クロムフリー皮膜3としてのアルミニウム酸素化合物を主成分とする皮膜(以下、アルミニウム酸素化合物皮膜とも称する)は、スズめっき層2上又はリン酸化合物皮膜上に形成される。より具体的には、例えば錫めっき鋼板に対して水洗を行った後、Alイオンを含む電解処理液中で錫めっき鋼板を電解処理することで、この錫めっき鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を析出させることができる。なお、アルミニウム酸素化合物の具体例としては、例えばAl2O3、Al(OH)3、AlFxOyで示されるフッ素との複合酸化物などが挙げられる。また、電解処理液中にAlイオンを生成するための化合物として、例えば硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩酸アルミニウム、フッ化アルミニウムなどを用いることができる。フッ素を含有した電解処理液中で電解することにより、スズめっき層2が形成された鋼板1に、フッ素を含有し、アルミニウムと酸素を主体とするAl化合物皮膜を形成することができる。なお、フッ素は必須ではなく適宜省略してもよいが、電解処理液にFイオンを含有させることにより、Fイオンが電解処理液中におけるAlの溶解性を高めるための錫化剤として作用する。
アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液中のAlイオンの含有量は、形成しようとするアルミニウム酸素化合物皮膜の皮膜量に応じて適宜選択することができる。電解処理液中のAlイオンの含有量は、例えば、Al原子の質量濃度で、好ましくは0.5~10g/l、より好ましくは1~5g/lである。電解処理液中のAlイオンの含有量を上記範囲とすることにより、電解処理液の安定性を向上させるとともに、アルミニウム酸素化合物の析出効率を向上させることができる。
これによりアルミニウム酸素化合物皮膜が均一なものとなり、得られる表面処理鋼板10の外観品質が向上する。
なお、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液のpHは、1~5であることが好ましい。
また、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液の温度は、30~60℃であることが好ましい。
さらに、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液の電解電気量は、0.1~5C/dm2、より好ましくは0.2~1.6C/dm2である。
なお、上述したアルミニウム酸素化合物を含む皮膜については、例えば上記した特許文献2~4をさらに参照してもよい。
クロムフリー皮膜3としてのジルコニウム皮膜は、Zrイオン及びFイオンを含む水溶液の電解処理液中で、スズめっき層2が形成された鋼板1を陰極電解することにより形成できる。この電解処理液を構成するZrイオンを形成するための薬剤としては、特に限定されないが、たとえば、K2ZrF6、(NH4)2ZrF6、(NH4)2ZrO(CO3)2、H2ZrF6、ZrO(NO3)2、ZrO(CH3COO)2などを用いることができる。これらの薬剤は単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせ用いてもよい。
これにより、スズめっき層2が形成された鋼板1に、フッ素を含有し、ジルコニウムと酸素を主体とするZr化合物被膜を形成することができる。なお、フッ素は必須ではなく適宜省略してもよいが、電解処理液にFイオンを含有させることにより、Fイオンが電解処理液中におけるZrイオンの溶解性を高めるための錯化剤として作用し、これにより均一な膜厚のZr化合物皮膜を析出させることができる。
また、ジルコニウム皮膜を形成するための電解処理液のpHは2~5が好ましく、更には2.5~4であることがより好ましい。
また、この電解処理液の温度は、30~60℃であることが好ましい。
また、陰極電解処理を行ってジルコニウム皮膜を形成する場合には、対極板としては、陰極電解処理を実施している間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、酸素過電圧が小さく電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムで被覆されたチタン板が好ましい。
なお、ジルコニウム皮膜はクロムフリー皮膜3として必須ではなく、適宜これを省略してもよい。
上記した表面処理鋼板10上には、有機樹脂層4がさらに形成されて有機樹脂被覆鋼板となっていてもよい。なおこの有機樹脂層4には、公知の塗料などの塗膜も含まれる。なお、有機樹脂層4についても上記と同様に、鋼板1の少なくとも一方に形成されていてもよい。
より具体的な有機樹脂層4としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルム等の未延伸フィルム又は二軸延伸したフィルム、又はナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルムなどを用いることができる。その中でも、イソフタル酸を共重合化してなる無配向のポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、このような有機樹脂層を構成するための有機材料は、単独で用いてもよく、異なる有機材料をブレンドして用いてもよい。また複数の有機樹脂層からなる多層構成であってもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ-フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
本実施形態の表面処理鋼板10は、たとえば、有機樹脂被覆層4を更に形成して有機材料被覆鋼板を得た後で、これを加工することにより容器として成形することができる。
かような容器の具体例としては、たとえばシームレス缶(ツーピース缶)やスリーピース缶(溶接缶)などが挙げられる。かような容器は、例えば絞り加工、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造することができる。
本発明者らは、スズめっきが施されたぶりきが優れた耐硫化黒変性を示す要因について、酸化第一スズと酸化第二スズの割合に注目した。すなわち、上記した硫化黒変の原因である硫化スズ(もしくは硫化鉄)の発生は、スズめっきが施された鋼板(ぶりき)表面の酸化第一スズの存在が影響していると考えられる。そしてこの酸化第一スズ(SnO)は、例えば製缶の工程で塗装・焼付(約150~210℃)の熱処理を行うと増加することが判明している。
しかしながら、かような酸化第一スズ及び酸化第二スズの絶対量を定量することはX線光電子分光法、グロー放電発光表面分析装置、X線回折法など様々な手法で検討されているが、技術的に大変困難であるという現状もある。
そして酸化第一スズ及び酸化第二スズがこの比を満足するようにスズめっき層2上にクロムフリー皮膜3を形成することで、硫化黒変の要因となる熱処理後の酸化第一スズ(SnO)の成長を抑制可能とした。
電気化学測定方法として本実施形態ではアノード分極測定を用いた。より具体的にはポテンショスタット装置を用いて下記条件で、対象とする表面処理鋼板10に対してアノード分極測定を実施することができる。
・モデル液の種類:Na2S・9H2O水溶液
(Na2S・9H2Oが2g/L)
・液のpH :3~6
・液の温度 :30~50 ℃(好ましくは40~50℃)
・測定方法
・・測定面積 :1 cm2
・・分極速度 :10~300mV/min(好ましくは10~100mV/min)
なお、アノード分極測定前にサンプルの表面電位が安定するように、先に数十秒(例えば30~300秒など)で浸漬電位を測定した後にアノード分極測定を行ってもよい。
上記の熱処理を経たサンプルに対し、Na2S・9H2O水溶液中でアノード分極を行うと、図2に示すように水溶液中のHS-とSnO、SnO2などの反応と、金属がイオン化して硫化物となる反応の2つが生じる。
ここでサンプルとしては、(a)クロムフリー皮膜3としてのAl皮膜が形成された錫めっき鋼板、(b)クロムフリー皮膜3が形成されていない錫めっき鋼板、および(c)クロメート処理による皮膜が形成された錫めっき鋼板を用いた。
Sn + H2O → SnO + 2H+ + 2e- (-0.24V)
SnO + H2O → SnO2 + 2H+ + 2e- (-0.18V)
Fe → Fe2+ + 2e-(Fe2+ + S2- → FeS) (-0.1V)
Sn → Sn2+ + 2e-(Sn2+ + S2- → SnS) (0.38V)
また、本実施形態では、硫化黒変の発生に影響する上記スズの酸化物皮膜の反応を電気化学的に測定することで耐硫化黒変の特性・発生を予測でき、例えばこの測定結果に基づいてスズめっき層2上に被覆すべきクロムフリー皮膜3の種類や厚みなどを選定するなどに応用することもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。
<実施例1>
厚さ0.225mmの低炭素アルミキルド鋼の冷延鋼板を鋼板1(基材)として用いた。まずこの鋼板1を、公知のアルカリ脱脂剤の水溶液を用いて、60℃で10秒間陰極電解により脱脂した。脱脂後の鋼板1を、水道水で水洗した後、酸洗処理剤(硫酸の5%水溶液)を用いて、常温で5秒間浸漬処理して酸洗した。その後、水道水で水洗した後、公知のフェロスタン浴を用いて、下記の条件にて鋼板の表面にめっき厚2.8g/m2のスズめっき層2を形成させて、水洗後リフロー処理を施して、錫めっき鋼板を作製した。
・温度:40℃
・撹拌:適宜
・陰極電流:10A/dm2
・陽極電流:5A/dm2
・陽極材料:市販の99.999%金属錫
・処理時間:通電時間1秒停止時間0.50秒を1サイクルとしてサイクル数5~15回
・リフロー:得られた錫めっき鋼板に直流電流を流し,基材の電気抵抗による発熱により、錫の融点以上まで加熱後,水道水をかけて急冷
より具体的には、得られた錫めっき鋼板を、下記の後処理組成液の成分からなる処理浴中に浸漬し、この処理浴を撹拌しながら、極間距離17mmの位置に配置した酸化イリジウム被覆チタン板を陽極として陰極電解した。そして陰極電解を行った後すぐに、流水による水洗、乾燥の後処理を行った。
・電解処理液の組成:Al化合物として硝酸アルミニウムを溶解させて得た、Al濃度1500重量ppm、硝酸イオン濃度15500重量ppm,全フッ素濃度0重量ppmの水溶液
・電解処理液のpH:3.0
・電解処理液の温度:40℃
・電解電気量:1.6C/dm2
クロムフリー皮膜3(PおよびAl酸素化合物皮膜)を形成して得られた表面処理鋼板10におけるPおよびAlそれぞれの皮膜量は、蛍光X線装置(リガク社製、ZSX100e)により測定した。
上記した製缶の工程などで発生する塗装・焼付(約150~210℃)の熱処理を想定して、上記で得られた表面処理鋼板10に対し、190℃10分間の熱処理を行ったものについて以下の電気化学測定を行った。更に比較として熱処理を行わなかったものについても以下の電気化学測定を行った。
なお、かような熱処理は、容器製造(製缶など)時に実施される一般的な塗装焼付に相当する温度範囲で行われ、例えば本実施形態の表面処理鋼板に対するでは上記のとおり約150~210℃である。しかしながら、この塗装焼付に相当する熱処理は、上記の温度範囲に限られず、例えば処理する表面処理鋼板における基材の材質、めっきの種類やその膜厚などに応じて適切な温度範囲が適宜設定されてもよい。
上記したポテンショスタット装置を用いてアノード分極測定を行った。なお、測定装置は北斗電工(株)製の電気化学測定システムHAG3001を使用した。また、モデル液としてはNa2S・9H2O水溶液(Na2S・9H2Oが2g/Lで混入)を用いた。また、モデル液のpHは4.7とし、その液温は37℃に調整した。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を1.2C/dm2とし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを10mg/m2とした以外は、実施例1と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.8C/dm2とし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを7mg/m2とした以外は、実施例1と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.6C/dm2とし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを5mg/m2とした以外は、実施例1と同様に行った。
Al処理前にリン酸化合物皮膜を形成した以外は、実施例1と同様に行った。
すなわち、まず錫めっき鋼板上にクロムフリー皮膜3(第1クロムフリー皮膜)としてのリン酸化合物皮膜を形成した。より具体的には、上記で得られた錫めっき鋼板を下記の電解処理液に浸漬させ、この電解処理液を撹拌しながら、極間距離17mmの位置に配置した酸化イリジウム被覆チタン板を電極として用い、スズめっき層2上にリン酸化合物皮膜を形成した。
そしてリン酸化合物皮膜を形成した後に、実施例1と同様にしてクロムフリー皮膜3(第2クロムフリー皮膜)としてのAl酸化合物皮膜を厚み2mg/m2で形成した。
・電解処理液の組成:リン酸:10g/L、リン酸水素二ナトリウム:30g/Lで溶解させた水溶液
・電解処理液のpH: 2.5
・電解処理液の温度: 40 ℃
・電解電気量: 3 C/dm2
クロムフリー皮膜3(PおよびAl酸素化合物皮膜)を形成して得られた表面処理鋼板10におけるPおよびAlそれぞれの皮膜量は、蛍光X線装置(リガク社製、ZSX100e)により測定した。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を1.2C/dm2とし、Al酸素化合物皮膜の厚みを10mg/m2とした以外は、実施例5と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.6C/dm2とし、Al酸素化合物皮膜の厚みを5mg/m2とした以外は、実施例6と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.4C/dm2とし、Al酸素化合物皮膜の厚みを3mg/m2とした以外は、実施例6と同様に行った。
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、ジルコニウムイオン源としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解した、Zr濃度5500重量ppmを含むpH3.0の処理液を用い、処理液温度40℃、電解電気量を3C/dm2として、クロムフリー皮膜としてのジルコニウム皮膜(Zrox)を厚み10mg/dm2となるように形成した。
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、クロムフリー皮膜3の形成は行わなかった。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dm2とし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを2mg/m2とした以外は、実施例1と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.4C/dm2とし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを3mg/m2とした以外は、実施例1と同様に行った。
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dm2とし、Al酸素化合物皮膜の厚みを2mg/m2とした以外は、実施例6と同様に行った。
P処理用の電解処理液の電解電気量を4.2C/dm2とし、Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dm2とし、Al酸素化合物皮膜の厚みを2mg/m2とした以外は、実施例6と同様に行った。
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、実施例9と同様の処理液を用い、電解電気量を1.5C/dm2として、ジルコニウム皮膜(Zrox)を厚み5mg/dm2となるように形成した。
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、従来手法のとおりクロメート処理を施してクロム水和酸化皮膜(CrOX)を厚み6mg/dm2となるように形成した。
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、クロメート処理を施して金属クロム(Cro)およびクロム水和酸化皮膜(CrOX)を積層構造に形成し、それぞれの厚みが10mg /dm2、合計の金属Cr換算量で20mg/dm2となるように形成した。
各実施例および比較例で得られた表面処理鋼板を40mm角に切断した後、この切断面を3mm幅テープで保護することで試験片を作製した。次いで、作製した試験片を試験容器缶(東洋製罐社製J280TULC)に入れ、その中に下記に示す評価用モデル液を試験片全部が浸漬するように充填した後、アルミ蓋で巻締め、130℃、5時間の条件でレトルト処理を行った。
その後開缶し、試験片の黒変の程度を目視にて観察し、以下の基準で評価した。なお、耐硫化黒変性評価の評価は、上記したすべての実施例および比較例について行った。
なお、耐硫化黒変性の評価は、上記した評価用モデル液を用いる場合に限られず、例えば鮭水煮などの実際に製品として存在する実液を用いてもよい。
≪評価指標≫
◎:目視で判定した結果、従来例と比較して明らかに黒変の程度が薄かった。
○:目視で判定した結果、従来例と比較して黒変の程度が同等であった。
×:目視で判定した結果、従来例と比較して明らかに黒変の程度が濃かった。
なお、評価に際しては、◎のものをCrフリー対応型缶用材料として実用適性があると判断した。
また、従来手法であるクロメート処理において、各実施例と同等の耐硫化黒変性を得るには3倍程度の皮膜量が必要なことが分かった。
2 スズめっき層
3 クロムフリー皮膜
4 有機樹脂層
Claims (5)
- 鋼板と、
前記鋼板上に形成されたスズめっき層と、
前記スズめっき層上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜と、を有し、
アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と、酸化第二スズ(SnO2)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が、0.36未満となり、
前記化成皮膜は、アルミニウム酸素化合物を主成分として更にリン酸化合物を含み、
前記化成皮膜におけるアルミニウム量(mg/m2)及びリン量(mg/m2)について、前記リン量が2mg/m 2 であり且つ前記アルミニウム量が5mg/m 2 であるか、又は、前記リン量が2mg/m 2 であり且つ前記アルミニウム量が3mg/m 2 である、ことを特徴とする表面処理鋼板。 - 請求項1の表面処理鋼板に有機樹脂が被覆された有機樹脂被覆鋼板。
- 請求項1の表面処理鋼板又は請求項2の有機樹脂被覆鋼板からなる容器。
- 前記表面処理鋼板上に焼付塗装が施されてなる請求項3に記載の容器。
- 鋼板上にスズめっき層が形成されるとともに前記スズめっき層上にアルミニウム酸素化合物からなる化成皮膜が形成された表面処理鋼板の製造方法であって、
前記鋼板上にスズめっき層を形成する工程と、
アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と酸化第二スズ(SnO2)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が0.355以下となるように、硝酸イオン濃度15500重量ppmである電解処理液を用いて前記スズめっき層上にクロムを実質的に含有しないアルミニウム酸素化合物を主成分とした化成皮膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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