JP7074953B2 - 表面処理鋼板、有機樹脂被覆鋼板、及びこれらを用いた容器 - Google Patents

表面処理鋼板、有機樹脂被覆鋼板、及びこれらを用いた容器 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理鋼板及び有機樹脂被覆鋼板並びに容器に関し、特にスズめっきが施されつつ硫化黒変の発生が抑制された表面処理鋼板、有機樹脂被覆鋼板及びこれらを用いた缶などの容器に関する。
家電製品や建材、車両、航空機、容器等の分野で用いられる鋼板において,表面に形成する有機樹脂との密着性を向上させる処理として、クロメート処理が知られており、その優れた耐食性と密着性から、幅広く用いられてきた。
例えば飲食缶などの容器として用いられるぶりき(スズめっきが施された鋼板)やスズ系合金めっき鋼板に対しては、重クロム酸ソーダの水溶液中で陰極電解処理を行うクロメート処理が用いられている。このようなクロメート処理が施された錫めっき鋼板やスズ系合金めっき鋼板の表面は、有機樹脂に対する優れた密着性を有するため、塗布やラミネートなどにより有機樹脂のバリア層を良好に形成できる。
一方で例えば魚肉のような高蛋白質を含む食品を容器内に充填した場合、高温殺菌を行うレトルト処理工程で容器内面が黒色に変色する硫化黒変が発生することがある。これは、魚肉中のシステインやメチオニンのような硫黄を含有するアミノ酸成分が熱分解され、分解生成物であるHSあるいはHSイオンがスズや鉄と反応してスズ硫化物や鉄硫化物の皮膜が容器内に形成されるからと考えられる。
なお、クロメート処理によって形成されるクロム水和酸化皮膜(CrOX)は、上記した硫化黒変に対してもある程度の抑制効果は発揮できていた。
しかしながら上記のようなクロメート処理は優れた耐食性と密着性を確保できるのであるが、特にクロメート処理における6価クロムは毒性があって環境に対する負荷が大きい。また、6価クロムの使用に関わらず、そもそもクロメート処理を行うことによって生じる排水処理、排気処理、廃棄物処理等には多額の費用を必要とする。
このため、近年では6価クロムをはじめとして、そもそもクロムを含む化合物の使用を削減し最終的には撤廃しようとする動きが世界的に強まっている。
クロメート処理の代替となるノンクロムの表面処理としては、Al(アルミニウム)を含有する電解処理液を使用して、陰極電解処理により、鋼板の表面に、耐食性を有する酸化アルミニウムの皮膜を形成させた表面処理鋼板(特許文献1)やAlとリン酸化合物皮膜を組み合わせた表面処理鋼板も提案されている(特許文献2~4)。
特開2015-86439号公報 国際公開2016/121275号 国際公開2016/121276号 国際公開2016/121277号
しかしながら、上記した特許文献1~4に記載の技術では、クロムフリーの化成皮膜を用いて硫化黒変の発生を抑制できるものの、少なくとも下記の点において改善の余地は未だにあると言える。
すなわち、上記した特許文献では酸化スズに関する言及は一部にあるものの、酸化スズをSnOとして総括して扱っており、より詳細に酸化第一スズや酸化第二スズによる影響を考察するまでは至っていない。
本発明は、かような課題を解決することを鑑みてなされたものであり、酸化第一スズと酸化第二スズによる影響を考慮しつつ、硫化黒変の発生を抑制可能な表面処理鋼板や有機樹脂被覆鋼板、及びこれらを用いた容器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる表面処理鋼板は、(1)鋼板と、前記鋼板上に形成されたスズめっき層と、前記スズめっき層上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜と、を有し、アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と、酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が、0.36未満となり、前記化成皮膜は、アルミニウム酸素化合物を主成分として更にリン酸化合物を含み、前記化成皮膜におけるアルミニウム量(mg/m及びリン量(mg/mについて前記リン量が2mg/m であり且つ前記アルミニウム量が5mg/m であるか、又は、前記リン量が2mg/m であり且つ前記アルミニウム量が3mg/m である、ことを特徴とする。
また上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる表面処理鋼板は、(2)鋼板と、前記鋼板上に形成されたスズめっき層と、前記スズめっき層上に形成されてクロムおよび有機酸を実質的に含有せず、且つジルコニウムを含む化成皮膜と、を有し、アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と、酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が、0.36未満となることを特徴とする。
さらに(1)又は(2)に記載の表面処理鋼板においては、(3)前記化成皮膜は、さらにリン酸化合物を含むことが好ましい。
また、(1)に記載の表面処理鋼板においては、(4)前記化成皮膜は、ジルコニウムを含むことが好ましい。
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる有機樹脂被覆鋼板の製造方法は、鋼板上にスズめっき層が形成されるとともに前記スズめっき層上にアルミニウム酸素化合物からなる化成皮膜が形成された表面処理鋼板の製造方法であって、前記鋼板上にスズめっき層を形成する工程と、アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が0.355以下となるように、硝酸イオン濃度15500重量ppmである電解処理液を用いて前記スズめっき層上にクロムを実質的に含有しないアルミニウム酸素化合物を主成分とした化成皮膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、硫化黒変の要因となる酸化第一スズの成長を抑制できるため、硫化黒変の発生箇所となる起点とその広がりを抑制することが可能となる。さらには酸化第二スズも増加することで、この酸化第二スズが硫黄成分と表面処理鋼板との反応を抑制するバリア層として機能する効果を奏することもできる。
また、硫化黒変の発生に影響するスズの酸化物皮膜(酸化第一錫および酸化第二錫)の反応を、電気化学測定装置を用いて測定することで、簡易的に耐硫化黒変の特性を予測することが可能になる。
本実施形態に係る表面処理鋼板の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係るアノード分極曲線の一例を示した模式図である。
≪実施形態≫
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態に係る表面処理鋼板10は、基材としての鋼板1と、この鋼板上に形成されたスズめっき層2と、このスズめっき層2上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜3(以下、クロムフリー皮膜3と称する)を含んで構成されている。
なお以下で説明する実施形態では、鋼板1の表裏双方の面に皮膜(スズめっき層2、クロムフリー皮膜3など)が形成される例を説明するが、鋼板1の少なくとも一方の面に皮膜が形成されていてもよい。また、本実施形態では、この表面処理鋼板10の表面に有機樹脂層4が更に被覆されて有機樹脂被覆鋼板となっていてもよい。
そして本実施形態の表面処理鋼板10は、アノード分極を用いた測定において、酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と、酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が0.36未満となっている。
以下、本実施形態に係る表面処理鋼板10につき、適宜図面を参照しながら個々の要素を詳述していく。
<鋼板>
基材としての鋼板1は、絞り加工性、絞りしごき加工性、絞り加工と曲げ戻し加工による加工(DTR)の加工性に優れているものであればよく、特に限定されない。一例として、鋼板1としては、例えば厚さが0.1mm~0.5mm程度の鉄や各種の合金などの金属板が用いられる。
この金属板には、例えば、アルミキルド鋼連鋳材などをベースとした熱延鋼板や、これらの熱延鋼板を冷間圧延した冷延鋼板などを用いることができる。なお、上記したアルミキルド鋼などを電解酸洗等で酸洗して表面のスケールを除去した後、冷間圧延し、次いで、電解洗浄、焼鈍、圧延など施したものを冷延鋼板として用いてもよい。
<スズめっき層>
本実施形態のスズめっき層2は、例えば鋼板1の両面に形成される。このスズめっき層2の厚みは特に限定されず、製造する表面処理鋼板10の使用用途に応じて適宜選択すればよいが、例えばスズ量で好ましくは0.5g/m以上、より好ましくは1.0~15g/mである。なお、スズめっき層2は鋼板1の少なくとも一方の面に形成されていてもよいことは上述のとおりである。
鋼板1上にスズめっき層2を施す方法としては、特に限定されず、公知のめっき浴であるフェロスタン浴、ハロゲン浴、硫酸浴などを用いた方法が挙げられる。さらに、本実施形態では、上記した形態でスズめっきを施した後で、スズの溶融温度以上に加熱した後に急冷する処理(いわゆるリフロー処理)を施すことによって、鋼板1とスズめっき層2との間にスズ-鉄合金層を形成させてもよい。このようにリフロー処理を施すことによって、鋼板1とスズめっき層2との間にスズ-鉄合金層が形成されたものとなり、耐食性がより向上する。
一例としてスズめっき浴およびそのめっき条件を以下に示す。
[スズめっき浴およびめっき条件]
フェノールスルホン酸錫を主成分とする公知のフェロスタン浴を用いて、下記条件でスズめっきを鋼板に形成する。
浴温 35~60℃
撹拌:適宜
陰極電流:1~20A/dm
陽極材料:公知の99.999%金属錫
処理時間:通電時間1秒・停止時間0.50秒を1サイクルとし、サイクル数5~15回
リフロー:得られたスズめっき層2を有する鋼板1に直流電流を流し、基材の電気抵抗による発熱によってスズの融点以上まで加熱した後に水をかけて急冷
なお、上記ではフェロスタン浴を例示したが、ハロゲン化錫を主成分とするハロゲン浴を用いてもよい。
<クロムフリー皮膜>
本実施形態のクロムフリー皮膜3は、上記したスズめっき層2上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜である。なお本実施形態において「実質的に含有しない」とは、クロム成分は一切含んでいない形態に加え、不純物としてクロムが不回避的に含有してしまう場合をも含む。
そして本実施形態のクロムフリー皮膜3は、クロムを実質的に含有せず、後述するアノード分極を用いた測定において酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が0.36未満となる限りにおいて種々の化成皮膜を適用することができる。上記電流密度比が0.35を超えると硫化黒変の発生が抑制されず好ましくないからである。
かようなクロムフリー皮膜3としては、例えばリン酸化合物を含む皮膜、アルミニウム酸素化合物を主成分とする皮膜、あるいはジルコニウムを含む皮膜などが例示される。
以下、それぞれ本実施形態に好適な具体的な皮膜について詳述する。
[リン酸化合物を含む皮膜]
クロムフリー皮膜3としてのリン酸化合物皮膜は、リン酸錫を含有する層であり、上述したスズめっき層2が形成された鋼板1(以下、錫めっき鋼板とも称する)に対してリン酸イオンを含む電解処理液に浸漬させ、鋼板1側を陰極とした陰極電解処理を施すことにより形成される。
かような電解処理液としては、電解処理液中にリン酸イオンを生成するための化合物として、リン酸(HPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO4)、亜リン酸(HPO)などを用いることができる。これらのリン酸及びリン酸塩類は単独あるいはそれぞれを混合して用いてもよく、その中でも、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合物が、リン酸化合物皮膜としてリン酸錫を良好に析出させることができて好適である。
また、電解処理液中のリン酸イオンの濃度は、特に限定されないが、リン量で、好ましくは5~200g/Lである。電解処理液中のリン酸イオンの濃度を上記範囲とすることにより、錫めっき鋼板上に、良好にリン酸錫を析出させることができる。
また、電解処理液のpHは、特に限定されないが、好ましくは1~7である。pH1未満とすると、形成させたリン酸錫が溶解してしまう傾向にある。一方、pH7超とすると、錫めっき鋼板の表面の酸化膜層の溶解が不十分となり、酸化膜層が多く残存している部分にはリン酸化合物皮膜が形成され難いことから、錫めっき鋼板上に均質なリン酸化合物皮膜を形成できなくなるおそれがある。
また、電解処理液の温度は、好ましくは30~60℃である。
本実施形態では、リン酸イオンを含む電解処理液に浸漬させた錫めっき鋼板を、陰極側にして電流を流すことで、錫めっき鋼板から錫が溶解して2価の錫イオン(Sn2+)が発生する。そして錫めっき鋼板から発生した錫イオンSn2+は、電解処理液中のリン酸イオンPO 3-と反応して、Sn(PO等のリン酸錫として錫めっき鋼板上に析出する。また、錫めっき鋼板から発生した錫イオンSn2+は、酸化錫(SnO)としても錫めっき鋼板上に析出する。
陰極電解処理を行う際における電流密度は、特に限定されないが、好ましくは1~30A/dmである。電流密度を上記範囲とすることにより、錫めっき鋼板上に良好にリン酸化合物皮膜を形成することができる。
このとき、電解処理液の電解電気量は、1~10C/dm、より好ましくは2~5C/dmである。
また、錫めっき鋼板に陰極電解処理を施す際には、錫めっき鋼板に対して設置する対極板としては、電解処理を実施している間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムで被覆されたチタン板、又は白金で被覆されたチタン板が好ましい。
また、陰極電解処理を行う際の通電時間としては、特に限定されないが、好ましくは0.15~3.0秒であり、より好ましくは0.15~1.0秒である。このリン酸化合物皮膜におけるリン含有量が適切なものとなるように通電時間とともに調整すればよい。
リン酸化合物皮膜中のリンの適切な含有量としては、好ましくは0.5~20mg/m、さらに好ましくは0.5~5.0mg/m、特に好ましくは0.9~4.0mg/mである。
なお、上述したリン酸化合物皮膜については、例えば上記した特許文献2~4をさらに参照してもよい。また、リン酸化合物皮膜はクロムフリー皮膜3として必須ではなく、適宜これを省略してもよい。
[アルミニウム酸素化合物を主成分とする皮膜]
クロムフリー皮膜3としてのアルミニウム酸素化合物を主成分とする皮膜(以下、アルミニウム酸素化合物皮膜とも称する)は、スズめっき層2上又はリン酸化合物皮膜上に形成される。より具体的には、例えば錫めっき鋼板に対して水洗を行った後、Alイオンを含む電解処理液中で錫めっき鋼板を電解処理することで、この錫めっき鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を析出させることができる。なお、アルミニウム酸素化合物の具体例としては、例えばAl、Al(OH)、AlFで示されるフッ素との複合酸化物などが挙げられる。また、電解処理液中にAlイオンを生成するための化合物として、例えば硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩酸アルミニウム、フッ化アルミニウムなどを用いることができる。フッ素を含有した電解処理液中で電解することにより、スズめっき層2が形成された鋼板1に、フッ素を含有し、アルミニウムと酸素を主体とするAl化合物皮膜を形成することができる。なお、フッ素は必須ではなく適宜省略してもよいが、電解処理液にFイオンを含有させることにより、Fイオンが電解処理液中におけるAlの溶解性を高めるための錫化剤として作用する。
かような電解処理の方法としては、陽極電解処理及び陰極電解処理のいずれでもよいが、良好にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成できるという観点からは、陰極電解処理が好ましい。
アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液中のAlイオンの含有量は、形成しようとするアルミニウム酸素化合物皮膜の皮膜量に応じて適宜選択することができる。電解処理液中のAlイオンの含有量は、例えば、Al原子の質量濃度で、好ましくは0.5~10g/l、より好ましくは1~5g/lである。電解処理液中のAlイオンの含有量を上記範囲とすることにより、電解処理液の安定性を向上させるとともに、アルミニウム酸素化合物の析出効率を向上させることができる。
また、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液には、有機酸(クエン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸など)や、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、フェノール樹脂などのうち、少なくとも1種以上の添加物が添加されていてもよい。電解処理液にこれらの添加物を単独又は組み合わせて適宜添加することにより、形成されるアルミニウム酸素化合物皮膜に有機材料を含有させることができる。これにより、例えばアルミニウム酸素化合物皮膜上に有機樹脂層4を形成する場合には、この有機樹脂層4の密着性を向上させることができる。
また、リン酸化合物皮膜上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成する場合には、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液については、リン酸イオンの含有量を調整することが望ましく、電解処理液におけるリン酸イオンの含有量は、リン量で、好ましくは0.55g/L以下、より好ましくは0.33g/L以下、さらに好ましくは0.11g/Lである。
これによりアルミニウム酸素化合物皮膜が均一なものとなり、得られる表面処理鋼板10の外観品質が向上する。
また、電解処理によりアルミニウム酸素化合物皮膜を形成する際には、通電と通電停止のサイクルを繰り返す断続電解方式を用いることが好ましく、この際においては、基材に対するトータルの通電時間(通電及び通電停止のサイクルを複数回繰り返した際の合計の通電時間)は、好ましくは1.5秒以下、より好ましくは1秒以下である。通電と通電停止のサイクル数は1~10回が好ましく、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム含有量が適切なものとなるように通電時間とともに調整すればよい。なお、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウムの適切な含有量としては、好ましくは3~40mg/m、より好ましくは5~15mg/m、特に好ましくは5.1~10.6mg/mである。
また、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成する際には、基材に対して設置する対極板としては、電解処理を実施している間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、酸素過電圧が小さく電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムで被覆されたチタン板、又は白金で被覆されたチタン板が好ましい。
なお、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液のpHは、1~5であることが好ましい。
また、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液の温度は、30~60℃であることが好ましい。
さらに、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための電解処理液の電解電気量は、0.1~5C/dm、より好ましくは0.2~1.6C/dmである。
なお、上述したアルミニウム酸素化合物を含む皮膜については、例えば上記した特許文献2~4をさらに参照してもよい。
[ジルコニウムを含む皮膜]
クロムフリー皮膜3としてのジルコニウム皮膜は、Zrイオン及びFイオンを含む水溶液の電解処理液中で、スズめっき層2が形成された鋼板1を陰極電解することにより形成できる。この電解処理液を構成するZrイオンを形成するための薬剤としては、特に限定されないが、たとえば、KZrF、(NHZrF、(NHZrO(CO、HZrF、ZrO(NO、ZrO(CHCOO)などを用いることができる。これらの薬剤は単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせ用いてもよい。
これにより、スズめっき層2が形成された鋼板1に、フッ素を含有し、ジルコニウムと酸素を主体とするZr化合物被膜を形成することができる。なお、フッ素は必須ではなく適宜省略してもよいが、電解処理液にFイオンを含有させることにより、Fイオンが電解処理液中におけるZrイオンの溶解性を高めるための錯化剤として作用し、これにより均一な膜厚のZr化合物皮膜を析出させることができる。
このジルコニウム皮膜中におけるZr量は、5~50mg/m、より好適には5~30mg/mの範囲で含有することが好ましい。一方で、フッ素を含有する場合には、F量が0.3~10mg/mの範囲で含有することが好ましい。
また、電解処理液中のZr濃度は、1,000~10,000ppmが好ましい。また、電解処理液中のF濃度は600~13,000ppmが好ましい。
また、ジルコニウム皮膜を形成するための電解処理液のpHは2~5が好ましく、更には2.5~4であることがより好ましい。
また、この電解処理液の温度は、30~60℃であることが好ましい。
また、電解処理液中に含有させるFイオンを形成するための薬剤としては、特に限定されないが、たとえば、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸、フッ化カルシウム、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウムなどを用いることができ、中でも水への溶解度が高い薬剤が好ましい。
また、電解処理を行う場合における電流密度としては、特に限定されないが、好ましくは1~30A/dmである。
また、陰極電解処理を行ってジルコニウム皮膜を形成する場合には、対極板としては、陰極電解処理を実施している間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、酸素過電圧が小さく電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウムで被覆されたチタン板が好ましい。
なお、ジルコニウム皮膜はクロムフリー皮膜3として必須ではなく、適宜これを省略してもよい。
<有機樹脂層>
上記した表面処理鋼板10上には、有機樹脂層4がさらに形成されて有機樹脂被覆鋼板となっていてもよい。なおこの有機樹脂層4には、公知の塗料などの塗膜も含まれる。なお、有機樹脂層4についても上記と同様に、鋼板1の少なくとも一方に形成されていてもよい。
より具体的な有機樹脂層4としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムやポリ塩化ビニリデンフィルム等の未延伸フィルム又は二軸延伸したフィルム、又はナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルムなどを用いることができる。その中でも、イソフタル酸を共重合化してなる無配向のポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、このような有機樹脂層を構成するための有機材料は、単独で用いてもよく、異なる有機材料をブレンドして用いてもよい。また複数の有機樹脂層からなる多層構成であってもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ-フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
このうちポリエステル樹脂は、塗装や焼付けが容易であり、加工性や金属との密着性、耐レトルト性に優れ、更には焼却時に有毒、腐食ガスを発生しない点から好適である。かようなポリエステル樹脂としては、例えば、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジメチルテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンイソフタレート、エチレンアジペート、ブチレンアジペート、エチレンナフタレート、ブチレンナフタレートのいずれか1種類以上のエステルを含有するポリエステル樹脂などが例示される。
<容器>
本実施形態の表面処理鋼板10は、たとえば、有機樹脂被覆層4を更に形成して有機材料被覆鋼板を得た後で、これを加工することにより容器として成形することができる。
かような容器の具体例としては、たとえばシームレス缶(ツーピース缶)やスリーピース缶(溶接缶)などが挙げられる。かような容器は、例えば絞り加工、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造することができる。
<酸化第一スズ(SnO)と酸化第二スズ(SnO)に着目した電流密度比>
本発明者らは、スズめっきが施されたぶりきが優れた耐硫化黒変性を示す要因について、酸化第一スズと酸化第二スズの割合に注目した。すなわち、上記した硫化黒変の原因である硫化スズ(もしくは硫化鉄)の発生は、スズめっきが施された鋼板(ぶりき)表面の酸化第一スズの存在が影響していると考えられる。そしてこの酸化第一スズ(SnO)は、例えば製缶の工程で塗装・焼付(約150~210℃)の熱処理を行うと増加することが判明している。
また、上記塗装・焼付(約150~210℃)の熱処理では酸化第一スズだけでなく酸化第二スズも成長するが、酸化第一スズが硫化黒変の原因となる硫化スズ発生の起点となる一方で、酸化第二スズは上記した硫黄成分と鋼板側との反応を抑制するバリア層として機能することも判明している。ただし、この酸化第二スズも単純に多量に存在すればよいというわけではなく、酸化第二スズの過剰な成長は塗料密着性の低下などにも影響してしまう。
したがって、例えば上記の熱処理を受けた後においても、表面処理鋼板10において酸化第一スズと酸化第二スズが特定の関係を有すれば、硫化黒変の原因となる硫化スズの発生を抑制することができる。
しかしながら、かような酸化第一スズ及び酸化第二スズの絶対量を定量することはX線光電子分光法、グロー放電発光表面分析装置、X線回折法など様々な手法で検討されているが、技術的に大変困難であるという現状もある。
このような知見の下で本実施形態では、アノード分極測定を利用した電気化学的な測定結果に基づき、硫化スズ又は硫化鉄の発生が抑制される好適な酸化第一スズと酸化第二スズの比を見出すことに至った。換言すれば、アノード分極による反応を利用することで、酸化第一スズと酸化第二スズにおける反応の違いが電位差として明確に表れ、表面処理鋼板10における酸化第一スズと酸化第二スズを切り分けられるという点にも特徴がある。
そして酸化第一スズ及び酸化第二スズがこの比を満足するようにスズめっき層2上にクロムフリー皮膜3を形成することで、硫化黒変の要因となる熱処理後の酸化第一スズ(SnO)の成長を抑制可能とした。
なお、本実施形態に示すクロムフリー皮膜3は、従来用いられていたクロム水和酸化皮膜のように優先的にスズめっき上に析出する形態ではなく、スズめっき全体を均一に覆うようにアモルファス状の皮膜が析出しているものと考えられる。従って、本実施形態のクロムフリー皮膜3をスズめっき上に施すことで、錫めっき鋼板上のSnOの量が処理浴中の酸によるエッチングや電解等によって全体的に減少し、これによってSnS発生の活性点を減少させていると考えられる。
また、従来はクロメート処理前にスズめっき表層のSnO減少のため、酸性又はアルカリ水溶液中で浸漬若しくは電解処理を行う前処理の工程も別途必要であった。しかしながら本実施形態によれば、上述したクロムフリー皮膜3の形成時における強いエッチング作用によって、従来必要とされていた上記の前処理と同じ作用を皮膜形成中に同時に行えてしまう効果も奏している。すなわち、本実施形態によれば、従来の前処理工程が不要となり、表面処理鋼板10の製造コストを抑制することも可能となっている。
<電気化学測定方法>
電気化学測定方法として本実施形態ではアノード分極測定を用いた。より具体的にはポテンショスタット装置を用いて下記条件で、対象とする表面処理鋼板10に対してアノード分極測定を実施することができる。
・モデル液の種類:NaS・9HO水溶液
(NaS・9HOが2g/L)
・液のpH :3~6
・液の温度 :30~50 ℃(好ましくは40~50℃)
・測定方法
・・測定面積 :1 cm
・・分極速度 :10~300mV/min(好ましくは10~100mV/min)
なお、モデル液としては上記の硫化ナトリウム九水和物に限られず、硫酸水溶液など他の腐食性溶液を用いてもよい。ただし本実施形態で後述する皮膜組成の各電位(下記SnOやSnOの電位など)は本実施形態のモデル液での値であることに留意すべきであり、モデル液が異なれば上記各電位の値も変化し得るので適宜実験などで必要な各電位を算出することができる。
測定に際しては、表面処理鋼板10をモデル液に浸漬して測定する。そして浸漬電位からアノード側に電位を印加し、分極速度50mV/minの速度で分極を行いがら一定時間ごとに電流密度を測定する。
なお、アノード分極測定前にサンプルの表面電位が安定するように、先に数十秒(例えば30~300秒など)で浸漬電位を測定した後にアノード分極測定を行ってもよい。
アノード分極測定に基づく分極曲線(一例)を図2に示す。
上記の熱処理を経たサンプルに対し、NaS・9HO水溶液中でアノード分極を行うと、図2に示すように水溶液中のHSとSnO、SnOなどの反応と、金属がイオン化して硫化物となる反応の2つが生じる。
ここでサンプルとしては、(a)クロムフリー皮膜3としてのAl皮膜が形成された錫めっき鋼板、(b)クロムフリー皮膜3が形成されていない錫めっき鋼板、および(c)クロメート処理による皮膜が形成された錫めっき鋼板を用いた。
また、図2では水溶液中のHSと反応する皮膜組成の各電位が矢印で示されており、それぞれ反応式は次式で示される。例えばSnOの電位(-0.24V)は、上記したNaS・9HO水溶液中で酸化還元反応が起こる決まった電位を示している。
Sn + HO → SnO + 2H + 2e (-0.24V)
SnO + HO → SnO + 2H + 2e (-0.18V)
Fe → Fe2+ + 2e(Fe2+ + S2- → FeS) (-0.1V)
Sn → Sn2+ + 2e(Sn2+ + S2- → SnS) (0.38V)
クロムフリー皮膜3(この場合はアルミニウム皮膜)が形成された表面処理鋼板10は、他のサンプルと比べてSnOとの反応が抑制され、さらにFe、SnとHSとの反応も抑制される。換言すれば、本実施形態のクロムフリー皮膜3は、硫化物の発生起点とみられるSnOとの反応を抑制するだけでなく、FeやSnとの反応も抑制できる。
また、本実施形態では、硫化黒変の発生に影響する上記スズの酸化物皮膜の反応を電気化学的に測定することで耐硫化黒変の特性・発生を予測でき、例えばこの測定結果に基づいてスズめっき層2上に被覆すべきクロムフリー皮膜3の種類や厚みなどを選定するなどに応用することもできる。
≪実施例≫
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。
<実施例1>
厚さ0.225mmの低炭素アルミキルド鋼の冷延鋼板を鋼板1(基材)として用いた。まずこの鋼板1を、公知のアルカリ脱脂剤の水溶液を用いて、60℃で10秒間陰極電解により脱脂した。脱脂後の鋼板1を、水道水で水洗した後、酸洗処理剤(硫酸の5%水溶液)を用いて、常温で5秒間浸漬処理して酸洗した。その後、水道水で水洗した後、公知のフェロスタン浴を用いて、下記の条件にて鋼板の表面にめっき厚2.8g/mのスズめっき層2を形成させて、水洗後リフロー処理を施して、錫めっき鋼板を作製した。
[スズめっき条件]
・温度:40℃
・撹拌:適宜
・陰極電流:10A/dm
・陽極電流:5A/dm
・陽極材料:市販の99.999%金属錫
・処理時間:通電時間1秒停止時間0.50秒を1サイクルとしてサイクル数5~15回
・リフロー:得られた錫めっき鋼板に直流電流を流し,基材の電気抵抗による発熱により、錫の融点以上まで加熱後,水道水をかけて急冷
得られた錫めっき鋼板(スズめっき層2が形成された鋼板1)に対して、以下の順序でクロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)を厚み16mg/mで形成した。
より具体的には、得られた錫めっき鋼板を、下記の後処理組成液の成分からなる処理浴中に浸漬し、この処理浴を撹拌しながら、極間距離17mmの位置に配置した酸化イリジウム被覆チタン板を陽極として陰極電解した。そして陰極電解を行った後すぐに、流水による水洗、乾燥の後処理を行った。
[Al処理用の電解処理液]
・電解処理液の組成:Al化合物として硝酸アルミニウムを溶解させて得た、Al濃度1500重量ppm、硝酸イオン濃度15500重量ppm,全フッ素濃度0重量ppmの水溶液
・電解処理液のpH:3.0
・電解処理液の温度:40℃
・電解電気量:1.6C/dm
[Al皮膜量の測定]
クロムフリー皮膜3(PおよびAl酸素化合物皮膜)を形成して得られた表面処理鋼板10におけるPおよびAlそれぞれの皮膜量は、蛍光X線装置(リガク社製、ZSX100e)により測定した。
[塗装条件]
上記した製缶の工程などで発生する塗装・焼付(約150~210℃)の熱処理を想定して、上記で得られた表面処理鋼板10に対し、190℃10分間の熱処理を行ったものについて以下の電気化学測定を行った。更に比較として熱処理を行わなかったものについても以下の電気化学測定を行った。
なお、かような熱処理は、容器製造(製缶など)時に実施される一般的な塗装焼付に相当する温度範囲で行われ、例えば本実施形態の表面処理鋼板に対するでは上記のとおり約150~210℃である。しかしながら、この塗装焼付に相当する熱処理は、上記の温度範囲に限られず、例えば処理する表面処理鋼板における基材の材質、めっきの種類やその膜厚などに応じて適切な温度範囲が適宜設定されてもよい。
[電気化学測定]
上記したポテンショスタット装置を用いてアノード分極測定を行った。なお、測定装置は北斗電工(株)製の電気化学測定システムHAG3001を使用した。また、モデル液としてはNaS・9HO水溶液(NaS・9HOが2g/Lで混入)を用いた。また、モデル液のpHは4.7とし、その液温は37℃に調整した。
上記で得られた表面処理鋼板10を上記モデル液に浸漬して測定した。なお実施例1においては、アノード分極測定前にサンプルの表面電位が安定するように、先に50秒浸漬電位を測定した後アノード分極測定を行った。そして浸漬電位からアノード側に電位を印加し、分極速度50mV/minの速度で分極を行いがら一定時間ごとに電流密度を測定した。
<実施例2>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を1.2C/dmとし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを10mg/mとした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例3>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.8C/dmとし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを7mg/mとした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例4>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.6C/dmとし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを5mg/mとした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例5>
Al処理前にリン酸化合物皮膜を形成した以外は、実施例1と同様に行った。
すなわち、まず錫めっき鋼板上にクロムフリー皮膜3(第1クロムフリー皮膜)としてのリン酸化合物皮膜を形成した。より具体的には、上記で得られた錫めっき鋼板を下記の電解処理液に浸漬させ、この電解処理液を撹拌しながら、極間距離17mmの位置に配置した酸化イリジウム被覆チタン板を電極として用い、スズめっき層2上にリン酸化合物皮膜を形成した。
そしてリン酸化合物皮膜を形成した後に、実施例1と同様にしてクロムフリー皮膜3(第2クロムフリー皮膜)としてのAl酸化合物皮膜を厚み2mg/mで形成した。
[P処理用の電解処理液]
・電解処理液の組成:リン酸:10g/L、リン酸水素二ナトリウム:30g/Lで溶解させた水溶液
・電解処理液のpH: 2.5
・電解処理液の温度: 40 ℃
・電解電気量: 3 C/dm
[P皮膜量の測定]
クロムフリー皮膜3(PおよびAl酸素化合物皮膜)を形成して得られた表面処理鋼板10におけるPおよびAlそれぞれの皮膜量は、蛍光X線装置(リガク社製、ZSX100e)により測定した。
<実施例6>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を1.2C/dmとし、Al酸素化合物皮膜の厚みを10mg/mとした以外は、実施例5と同様に行った。
<実施例7>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.6C/dmとし、Al酸素化合物皮膜の厚みを5mg/mとした以外は、実施例6と同様に行った。
<実施例8>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.4C/dmとし、Al酸素化合物皮膜の厚みを3mg/mとした以外は、実施例6と同様に行った。
<実施例9>
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、ジルコニウムイオン源としてフッ化ジルコニウムアンモニウムを溶解した、Zr濃度5500重量ppmを含むpH3.0の処理液を用い、処理液温度40℃、電解電気量を3C/dmとして、クロムフリー皮膜としてのジルコニウム皮膜(Zrox)を厚み10mg/dmとなるように形成した。
<比較例1>
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、クロムフリー皮膜3の形成は行わなかった。
<比較例2>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dmとし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを2mg/mとした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例3>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.4C/dmとし、クロムフリー皮膜3(Al酸素化合物皮膜)の厚みを3mg/mとした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例4>
Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dmとし、Al酸素化合物皮膜の厚みを2mg/mとした以外は、実施例6と同様に行った。
<比較例5>
P処理用の電解処理液の電解電気量を4.2C/dmとし、Al処理用の電解処理液の電解電気量を0.2C/dmとし、Al酸素化合物皮膜の厚みを2mg/mとした以外は、実施例6と同様に行った。
<比較例6>
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、実施例9と同様の処理液を用い、電解電気量を1.5C/dmとして、ジルコニウム皮膜(Zrox)を厚み5mg/dmとなるように形成した。
<従来例>
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、従来手法のとおりクロメート処理を施してクロム水和酸化皮膜(CrOX)を厚み6mg/dmとなるように形成した。
<参考例>
実施例1と同様にして錫めっき鋼板を得た後、クロメート処理を施して金属クロム(Cr)およびクロム水和酸化皮膜(CrOX)を積層構造に形成し、それぞれの厚みが10mg /dm、合計の金属Cr換算量で20mg/dmとなるように形成した。
[耐硫化黒変性評価]
各実施例および比較例で得られた表面処理鋼板を40mm角に切断した後、この切断面を3mm幅テープで保護することで試験片を作製した。次いで、作製した試験片を試験容器缶(東洋製罐社製J280TULC)に入れ、その中に下記に示す評価用モデル液を試験片全部が浸漬するように充填した後、アルミ蓋で巻締め、130℃、5時間の条件でレトルト処理を行った。
その後開缶し、試験片の黒変の程度を目視にて観察し、以下の基準で評価した。なお、耐硫化黒変性評価の評価は、上記したすべての実施例および比較例について行った。
・評価用モデル液:リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)を3.0g/L、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)を7.1g/L、L-システイン塩酸塩一水和物を6g/Lの濃度で含むpH7.0の水溶液
なお、耐硫化黒変性の評価は、上記した評価用モデル液を用いる場合に限られず、例えば鮭水煮などの実際に製品として存在する実液を用いてもよい。
≪評価指標≫
◎:目視で判定した結果、従来例と比較して明らかに黒変の程度が薄かった。
○:目視で判定した結果、従来例と比較して黒変の程度が同等であった。
×:目視で判定した結果、従来例と比較して明らかに黒変の程度が濃かった。
なお、評価に際しては、◎のものをCrフリー対応型缶用材料として実用適性があると判断した。
以上説明した各実施例及び比較例に関する仕様値、アノード分極測定による電流密度値、耐硫化黒変性の評価結果を表1に示す。
Figure 0007074953000001
各実施例は、硫化黒変の原因となる硫化スズの発生が抑制されており、優れた耐硫化黒変性を備えていることが確認された。一方で比較例においては、この特性を備えるものはなかったことが確認された。
また、従来手法であるクロメート処理において、各実施例と同等の耐硫化黒変性を得るには3倍程度の皮膜量が必要なことが分かった。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
以上説明したように、本発明の表面処理鋼板、有機樹脂被覆鋼板およびそれを用いた容器は、例えば高蛋白質に接触する状況であったとしても硫化黒変の発生が充分に抑制されており、広い分野の産業への適用が可能である。
1 鋼板(基材)
2 スズめっき層
3 クロムフリー皮膜
4 有機樹脂層


Claims (5)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板上に形成されたスズめっき層と、
    前記スズめっき層上に形成されてクロムを実質的に含有しない化成皮膜と、を有し、
    アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と、酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が、0.36未満となり、
    前記化成皮膜は、アルミニウム酸素化合物を主成分として更にリン酸化合物を含み、
    前記化成皮膜におけるアルミニウム量(mg/m及びリン量(mg/mについて前記リン量が2mg/m であり且つ前記アルミニウム量が5mg/m であるか、又は、前記リン量が2mg/m であり且つ前記アルミニウム量が3mg/m である、ことを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 請求項1の表面処理鋼板に有機樹脂が被覆された有機樹脂被覆鋼板。
  3. 請求項1の表面処理鋼板又は請求項2の有機樹脂被覆鋼板からなる容器。
  4. 前記表面処理鋼板上に焼付塗装が施されてなる請求項3に記載の容器。
  5. 鋼板上にスズめっき層が形成されるとともに前記スズめっき層上にアルミニウム酸素化合物からなる化成皮膜が形成された表面処理鋼板の製造方法であって、
    前記鋼板上にスズめっき層を形成する工程と、
    アノード分極を用いた測定において、150~210℃の塗装焼付相当の熱処理を経た後の酸化第一スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I1と酸化第二スズ(SnO)の反応を示す電位における電流密度I2との合計(I1+I2)に対するI1の電流密度比が0.355以下となるように、硝酸イオン濃度15500重量ppmである電解処理液を用いて前記スズめっき層上にクロムを実質的に含有しないアルミニウム酸素化合物を主成分とした化成皮膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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