JP7069687B2 - 光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子及び太陽電池に関する。
近年、化石燃料の代替エネルギーとして、また地球温暖化対策として太陽電池の重要性が高まっている。しかし、シリコン系太陽電池に代表される現行の太陽電池は、現状ではコストが高く、普及を妨げる要因となっている。
そのため、各種低コスト型の太陽電池の研究開発が進められており、その中でもスイスローザンヌ工科大学のGratzelらが発表した色素増感太陽電池は、実用化への期待が高まっている(例えば、特許文献1、非特許文献1、2参照)。この太陽電池の構造は、透明導電性ガラス基板上に多孔質な金属酸化物半導体を設け、その表面に吸着した増感色素と、酸化還元対を有する電解質と、対向電極とからなる。Gratzelらは、酸化チタン等の金属酸化物半導体電極を多孔質化して表面積を大きくしたこと、並びに色素としてルテニウム錯体を単分子吸着させたことにより光電変換効率を著しく向上させた。
しかしながら、増感色素に用いられているルテニウム錯体は、希少金属であり、資源的な制約が存在する。そのため、より資源的制約の無い有機色素の開発が求められている。既に提案されている増感色素としては、エオシンYなどのキサンテン系色素(非特許文献3参照)、ペリレン系色素(非特許文献4参照)、シアニン色素(特許文献2参照)、メロシアニン色素(特許文献3参照)、クマリン色素(非特許文献5参照)、ポリエン色素(非特許文献6参照)、ポルフィリン色素(非特許文献7参照)、フタロシアニン色素(非特許文献8参照)などが報告されている。
しかしながら、エオシンYなどのキサンテン系色素やペリレン系色素は吸収波長領域が600nm程度までしか有しておらず、変換効率が低いのが欠点である。シアニン色素、メロシアニン色素、ポリエン色素、クマリン色素などは共役二重結合を多く有しているため、光照射によるシス-トランス異性化が起きやすく、耐久性が非常に低いのが欠点である。ポルフィリン系色素やフタロシアニン系色素は溶解性が低く、酸化チタンへの吸着力が低いことが欠点であり、酸化チタンから脱着しやすい。また、フタロシアニン色素はエネルギーレベルを酸化チタンに適合することが難しい。
そこで近年では、インドリン環というヘテロ環を用いた増感色素が注目を浴びている(例えば非特許文献9、10参照)。このインドリン環を導入した色素は、特にモル吸光係数が高く、ルテニウム錯体に匹敵する高い変換効率を得ることができる。
しかしながら、これらの色素は高い効率を得ることのみを目標に開発されてきたため、耐久性が低いことが報告されている(例えば、非特許文献11参照)。そこで、近年ではローダニン環やシアノ酢酸を用いないインドリン色素が報告されている(例えば、非特許文献12参照)。
一方、色素増感太陽電池はヨウ素と揮発性溶剤を含んでおり、ヨウ素レドックス系の劣化による発電効率の低下、電解液の揮発や漏れといった問題がある。この欠点を補うものとして、無機半導体を用いたもの(例えば、非特許文献13、14参照)、低分子有機ホール輸送材料を用いたもの(例えば、特許文献4、非特許文献15、16参照)、導電性高分子を用いたもの(例えば、特許文献5、非特許文献17参照)が報告されている。しかしながら、無機あるいは有機半導体はヨウ素レドックスに比較して抵抗が高いため、効率が低下してしまうことが欠点である。
そこで、多孔質酸化チタンの膜厚を2μm程度に薄くし、無機あるいは有機半導体の対極までの輸送距離を短くする検討が行われた(例えば、非特許文献18参照)。
しかしながら、多孔質酸化チタンの膜厚が減少した結果、吸着された増感色素の量も減少してしまうため、ルテニウム錯体よりもモル吸光係数が高いインドリン色素を用いることで変換効率を向上することが報告されている(例えば、非特許文献19参照)。
しかしながら、満足いく耐久性のものが得られていないのが現状である。
また、増感色素の種類によっては、吸着した酸化チタン上で強い相互作用が発現し、結果として効率を低下させてしまうものがあり、共吸着剤(凝集乖離剤とも呼ばれる)を増感色素と一緒の溶媒に溶解し、増感色素間に共吸着剤を存在させ、増感色素間の相互作用を低減させることで、高い効率が得られることが報告されている(例えば、非特許文献20参照)。その共吸着剤としては、ステロイド骨格を有するコール酸誘導体(例えば、非特許文献21参照)、アルキルホスホン酸(例えば、非特許文献22参照)などが知られている。
しかしながら、コール酸誘導体は、アルキル基にカルボン酸が結合しており、増感色素のカルボン酸とは酸性度が異なる。アルキルホスホン酸も増感色素との酸性度が大きく異なっている。酸性度が異なると酸化チタンへの吸着スピードが異なるため、色素溶液を何度か使用すると、増感色素と共吸着剤の比率が著しく変化してしまうことになる。例えば、カルボン酸の増感色素とホスホン酸の共吸着剤を用いた場合、ホスホン酸の共吸着剤が著しく減少するため、何度か使用すると増感色素が高い比率の溶液になってしまい増感色素の相互作用が増え、結果として特性の低い素子しか得られなくなってしまう。
そこで、色素吸着後に、色素溶液中の増感色素と共吸着剤の濃度を測定し、足りない分を加えることで色素溶液を管理する方法が考えられる。
しかしながら、コール酸誘導体やアルキルホスホン酸など、これまでに使用されてきた共吸着剤は254nmに吸収スペクトルを有していないため、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称す)などの簡便な方法で濃度を定量化することが困難であった。
そこで、2種類の増感色素を混合して吸着する方法が報告されている(例えば、非特許文献23参照)。1方の増感色素が254nmに吸収スペクトルを有する共吸着剤と考えればHPLCにて色素溶液を管理することが可能となる。
しかしながら、ここで用いられている色素は、やはり耐久性の低い色素のため、高い耐久性の素子を得る目的には達していない。
本発明は、高効率でありながら長期安定性の高い光電変換素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、第1電極と、該第1電極上に形成された電子輸送層と、電荷移動層と、第2電極と、を有する光電変換素子であって、前記電子輸送層は、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、を担持した電子輸送性化合物を含むことを特徴とする。
Figure 0007069687000001
(式中、X 及びX は酸素原子又は硫黄原子を表し、R はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R は酸性基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R 及びR はアルキル基又はアリール基を表し、R とR は結合して環状構造を形成してもよく、又はそれぞれ独立した非環状構造であってもよい。)
Figure 0007069687000002
(式中、Rはアリール基又はヘテロ環基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキルチオ基又はアリールエーテル基を表す。)
本発明によれば、高効率でありながら長期安定性の高い光電変換素子を提供することができる。
本発明に係る光電変換素子の一例の構造を説明するための断面模式図である。 本発明に係る光電変換素子の他の例の構造を説明するための断面模式図である。 本発明に係る光電変換素子の他の例の構造を説明するための断面模式図である。 本発明に係る光電変換素子の他の例の構造を説明するための断面模式図(A)及び受光部の要部模式図(B)である。 実施例1で使用した色素溶液のHPLC測定図の一例である。 比較例5で使用した色素溶液のHPLC測定図の一例である。
以下、本発明に係る光電変換素子及び太陽電池について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
本発明は、第1電極と、該第1電極上に形成された電子輸送層と、電荷移動層と、第2電極と、を有する光電変換素子であって、前記電子輸送層は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、を担持した電子輸送性化合物を含むことを特徴とする。
Figure 0007069687000003
(式中、X及びXは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Rはメチン基を表し、Rはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rは同一でも異なっていてもよい酸性基を表し、mは1又は2を表し、Z1及びZ2は環状構造を形成する基を表す。)
Figure 0007069687000004
(式中、Rはアリール基又はヘテロ環基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキルチオ基又はアリールエーテル基を表す。)
本実施形態に係る光電変換素子の構成を図1に示す。図1は本実施形態の光電変換素子の断面模式図である。
図1では、基板1上に第1電極2が設けられ、電子輸送層4が順次積層された構造を有している。電子輸送層4は増感色素5と共吸着剤6とを担持する電子輸送性化合物11を含み、第2電極8との間に電荷移動層7を挟み込んだ構成をとっている。また、第1電極2と第2電極8はリードライン9、10を用いて電気を取り出してもよい。
その他の実施形態として、第1電極2と電子輸送層4との間にブロッキング層3を有する構成を図2に示す。図2は図1と同様に光電変換素子の断面模式図である。なお、図1に示す構成と同様の事項については説明を省略する。
更にその他の実施形態として、第1電極2上であって、電子輸送層4とは反対側に吸光波長制御層12を有する構成を図3に示す。図3は図1と同様に光電変換素子の断面模式図である。なお、図1に示す構成と同様の事項については説明を省略する。また、図3ではブロッキング層3を図示しているが、ブロッキング層3と吸光波長制御層12は同時に存在する必要はなく、別個に存在してもよい。
更にその他の実施形態として、フレーム構造である場合の構成を図4に示す。図4(A)は断面模式図であり、図4(B)は受光部の要部模式図である。なお、図1に示す構成と同様の事項については説明を省略する。
<第1電極>
本実施形態の第1電極2としては、基板1上に電極材料を設けて基板1と第1電極2を別体としてもよいし、基板1と電極とを一体としてもよい。
本実施形態の第1電極2としては、可視光に対して透明な導電性物質であることが好ましく、通常の光電変換素子、あるいは液晶パネル等に用いられる公知のものを使用できる。例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、ITOと称す)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、FTOと称す)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、ATOと称す)、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物、グラフェン等が挙げられ、これらが単独あるいは複数積層されていてもよい。
第1電極2の厚さは5nm~100μmが好ましく、50nm~10μmが更に好ましい。
また、第1電極2は一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板1上に設けられていてもよく、基板1としては、例えば、ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが用いられる。
電極と基板が一体となっている公知のものとしては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜等が挙げられる。
また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。これらは単独あるいは2種以上の混合、または積層したものでも構わない。
また、抵抗を下げる目的で、金属リード線等を併用してもよい。金属リード線の材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法が挙げられる。
<ブロッキング層>
本実施形態の光電変換素子は上記の第1電極2と下記の電子輸送層4との間にブロッキング層3を設けていてもよい。ブロッキング層3は例えば半導体からなる薄膜とすることができ、例えば第1電極2上に緻密な薄膜を形成し、更にその上に電子輸送層4を積層して積層構造を形成する。
ブロッキング層3は、第1電極2と電荷移動層7との電子的コンタクトを防ぐ目的で形成するものである。従って、第1電極2と電荷移動層7が物理的に接触しなければ、ピンホールやクラック等が形成されていても構わない。
また、ブロッキング層3の膜厚は、特に制限されるものではないが、10nm~1μmが好ましく、20nm~700nmがより好ましい。
ブロッキング層3としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。
金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。
他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が好ましい。
また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
これらの中でも酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブが好ましく、単独、あるいは2種以上の混合で使用しても構わない。これらの半導体の結晶型は特に限定されるものではなく、単結晶でも多結晶でも、あるいは非晶質でも構わない。
<電子輸送層>
本実施形態の電子輸送層4は、第1電極2又はブロッキング層3上に形成され、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、を担持した電子輸送性化合物11(電子輸送性粒子などとも称される)を含んでいる。電子輸送層4は例えば多孔質状となるが、単層であっても多層であってもよい。多層の場合、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布することも、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。一度の塗布で膜厚が不足する場合には、多層塗布は有効な手段である。
一般的に、電子輸送層4の膜厚が増大するほど単位投影面積当たりの担持増感色素量も増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入された電子の拡散距離も増えるため電荷の再結合によるロスも大きくなってしまう。従って、電子輸送層4の膜厚は適宜変更が可能であるが、100nm~100μmが好ましい。
<<電子輸送性化合物>>
電子輸送層4における電子輸送性化合物11としては特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。
金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。
他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が好ましい。
また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
これらの中でも酸化物半導体、特にn型酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブが好ましい。これらは、単独、あるいは2種以上の混合で使用しても構わない。これらの半導体の結晶型は特に限定されるものではなく、単結晶でも多結晶でも、あるいは非晶質でも構わない。
電子輸送層4に用いられる電子輸送性化合物の粒子サイズは、特に制限されるものではないが、一次粒子の平均粒径は1~100nmが好ましく、5~50nmがより好ましい。
また、より大きい平均粒径の半導体微粒子を混合あるいは積層して入射光を散乱させる効果により、効率を向上させることも可能である。この場合の半導体の平均粒径は50~500nmが好ましい。
電子輸送層4の作製方法は特に制限されるものではなく、適宜変更可能であり、例えばスパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法等が挙げられる。製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、第1電極2上に塗布する方法が好ましい。
この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
機械的粉砕、あるいはミルを使用して分散液を作製する場合、少なくとも半導体微粒子単独、あるいは半導体微粒子と樹脂の混合物を水あるいは有機溶剤に分散して形成される。
この時に使用される樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
電子輸送層4の電子輸送性粒子を分散する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α-テルピネオール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、あるいはN-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1-クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒等を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
電子輸送層4の電子輸送性粒子の分散液、あるいはゾル-ゲル法等によって得られた粒子のペーストは、粒子の再凝集を防ぐため、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アセチルアセトン、2-アミノエタノール、エチレンジアミン等のキレート化剤等を添加することができる。
また、製膜性を向上させる目的で増粘剤を添加することも有効な手段である。
この時加える増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高分子、エチルセルロース等の増粘剤等が挙げられる。
電子輸送層4の電子輸送性粒子は、塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために焼成、マイクロ波照射、電子線照射、あるいはレーザー光照射を行うことが好ましい。これらの処理は単独で行ってもあるいは2種類以上組み合わせて行ってもよい。
焼成する場合、焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融することもあるため、30~700℃が好ましく、100~600℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、10分~10時間が好ましい。
焼成後、粒子の表面積の増大や、増感色素から電子輸送層の粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
マイクロ波照射は、電子輸送層形成側から照射しても、裏側から照射しても構わない。照射時間には特に制限がないが、1時間以内で行うことが好ましい。
直径が数十nmの電子輸送層4の電子輸送性粒子を焼結等によって積層した膜は、多孔質状態を形成する。このナノ多孔構造は、非常に高い表面積を持ち、その表面積はラフネスファクターを用いて表わすことができる。このラフネスファクターは、基板に塗布した半導体微粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。従って、ラフネスファクターは大きいほど好ましいが、電子輸送層4の膜厚との関係もあり、本実施形態においては20以上が好ましい。
<<増感色素>>
本実施形態の電子輸送層4では、変換効率の更なる向上のため、電子輸送性化合物11の表面に増感色素を吸着させる。本実施形態における増感色素は下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
Figure 0007069687000005
(式中、X及びXは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Rはメチン基を表し、Rはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rは同一でも異なっていてもよい酸性基を表し、mは1又は2を表し、Z1及びZ2は環状構造を形成する基を表す。)
前記一般式(1)において、X及びXは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。
また、Rはメチン基を表し、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、チエニル基、フリル基などのヘテロ環等が挙げられる。
はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、2-プロピル基、2-エチルヘキシル基などを挙げることができる。
アリール基としては、前述のものを挙げることができる。
ヘテロ環基としては、前述のものを挙げることができる。
また、Rの置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環を挙げることができ、何れも前述のものを挙げることができる。
は同一でも異なっていてもよい酸性基を表し、mは1又は2を表す。酸性基としては、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、フェノール類などが挙げられる。酸性基としては、電子輸送性化合物と結合するものであることが好ましい。
Z1及びZ2は環状構造を形成する基を表し、置換基を有していてもよい。
Z1としては、ベンゼン環、ナフタレン環などの縮合炭化水素系化合物、チオフェン環、フラン環などのヘテロ環等が挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては前述のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、2-イソプロポキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
Z2としては、例えば下記に示す(A-1)~(A-22)等が挙げられるが、これに限られるものではない。なお、ここではベンゼン環やこれと結合する窒素原子等も含めた構造として例示する。
Figure 0007069687000006
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0007069687000007
(式中、X及びXは酸素原子又は硫黄原子を表し、Rはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rは酸性基を表し、R及びRはアルキル基又はアリール基を表し、RとRは結合して環状構造を形成してもよく、又はそれぞれ独立した非環状構造であってもよい。)
Figure 0007069687000008
(式中、X及びXは酸素原子又は硫黄原子を表し、Rはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rは酸性基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R及びRはアルキル基又はアリール基を表し、RとRは結合して環状構造を形成してもよく、又はそれぞれ独立した非環状構造であってもよい。)
なお、R、R、Rは置換基を有していてもよい。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下に示す(B-1)~(B-38)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
Figure 0007069687000009
Figure 0007069687000010
Figure 0007069687000011
Figure 0007069687000012
本実施形態における増感色素は、単独で用いてもよいが、2種類以上の混合で用いても構わない。前記一般式(1)で示される化合物と共に混合して用いてもよい増感色素としては、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物、特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J. Phys. Chem. C, 7224, Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物、同特開2004-95450号公報、Chem. Commun., 4887(2007)等に記載のポリエン化合物、特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号、特開2004-235052号公報、J. Am. Chem. Soc., 12218, Vol.126(2004)、Chem. Commun., 3036(2003)、Angew. Chem. Int. Ed., 1923, Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物、J. Am. Chem. Soc., 16701, Vol.128(2006)、J. Am. Chem. Soc., 14256, Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物、特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号等に記載メロシアニン色素、特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号等に記載の9-アリールキサンテン化合物、特開平10-93118号公報、特開2003-31273号等に記載のトリアリールメタン化合物、特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号、J. Phys. Chem., 2342, Vol.91(1987)、J. Phys. Chem. B, 6272, Vol.97(1993)、Electroanal. Chem., 31, Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J. Porphyrins Phthalocyanines, 230, Vol.3(1999)、Angew. Chem. Int. Ed., 373, Vol.46(2007)、Langmuir, 5436, Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物等を挙げることができる。
電子輸送層4に増感色素を吸着させる方法としては、例えば増感色素溶液中あるいは分散液中に電子輸送層4の電子輸送性粒子を浸漬する方法、溶液あるいは分散液を電子輸送層4に塗布して吸着させる方法等を用いることができる。
前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができ、後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等を用いることができる。
また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させても構わない。
増感色素を吸着させる際、縮合剤を併用してもよい。
縮合剤は、無機物表面に物理的あるいは化学的に増感色素と電子輸送層4の電子輸送性粒子を結合すると思われる触媒的作用をするもの、または化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもののいずれであってもよい。
更に、縮合助剤としてチオールやヒドロキシ化合物を添加してもよい。
増感色素を溶解、あるいは分散する溶媒は、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、あるいはN-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1-クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒等を挙げることができ、これらは単独、あるいは2種以上の混合として用いることができる。
前記一般式(1)で表される化合物の含有量としては、適宜変更することが可能であるが、溶媒100質量部に対して、0.00001~0.01質量部であることが好ましい。
また、本実施形態における電子輸送性化合物11は下記一般式(2)で表される化合物を担持している。下記一般式(2)で表される化合物は、増感色素の化合物間の相互作用を抑制する共吸着剤(凝集解離剤)としての作用を有する。
Figure 0007069687000013
(式中、Rはアリール基又はヘテロ環基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキルチオ基又はアリールエーテル基を表す。)
なお、R及びRは置換基を有していてもよい。
前記一般式(2)で表される化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0007069687000014
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、nは1~3の整数を表す。)
なお、Rは置換基を有していてもよい。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、以下に示す(C-01)~(C-55)等を挙げることができるが、何らこれらに限定されるものではない。
Figure 0007069687000015
Figure 0007069687000016
前記一般式(2)で表される化合物の添加量は、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対して0.01~500質量部が好ましく、0.1~100質量部がより好ましい。
これらを用い、増感色素及び共吸着剤を電子輸送性化合物に吸着させる際の温度としては、-50℃以上、200℃以下が好ましい。
また、この吸着は静置しても攪拌しながら行っても構わない。攪拌する場合の方法としては、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、あるいは超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
吸着させる時間は、適宜変更が可能であるが、5秒以上、1000時間以下が好ましく、10秒以上、500時間以下がより好ましく、1分以上、150時間が更に好ましい。吸着は暗所で行うことが好ましい。
また、先に増感色素を吸着してから共吸着剤を吸着する方法、先に共吸着剤を吸着させてから増感色素を吸着する方法、あるいは増感色素と共吸着剤を同じ溶媒に溶解しておき、同時に吸着させる方法のいずれの方法を用いても構わない。
本実施形態において、前記一般式(1)で表される増感色素と、前記一般式(2)で表される共吸着剤の組み合わせは、HPLCにて簡便に検出できるため、色素溶液に溶解している増感色素と共吸着剤の濃度が簡便に測定でき、色素溶液の管理方法が容易となる。
<電荷移動層>
本実施形態における電荷移動層7としては、例えば、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料等を用いることができる。
前記電解液としては、電解質、溶媒、及び添加物から構成されることが好ましい。好ましい電解質はヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム等の金属ヨウ化物-ヨウ素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨ-ダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩-ヨウ素の組み合わせ、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物-臭素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩-臭素の組み合わせ、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩、フェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール-アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン-キノン、コバルトなどの金属錯体、ニトロキシドラジカル化合物等が挙げられる。上述の電解質は単独の組み合わせであっても混合であってもよい。また、イミダゾリニウムヨーダイドなどのイオン液体を用いた場合は、特に溶媒を用いなくても構わない。
電解液における電解質濃度は、0.05~20Mが好ましく、0.1~15Mが更に好ましい。電解液に用いる溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましく、また、t-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を併用しても構わない。
本実施形態では、電解質はポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化させることもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合の好ましいポリマーとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合の好ましいゲル化剤としては、ジベンジルデン-D-ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス-(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N-オクチル-D-グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム誘導体等を挙げることができる。
多官能モノマーによって重合する場合の好ましいモノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングルコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。更に、アクリルアミド、メチルアクリレート等のアクリル酸やα-アルキルアクリル酸から誘導されるエステル類やアミド類、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のマレイン酸やフマル酸から誘導されるエステル類、ブタジエン、シクロペンタジエン等のジエン類、スチレン、p-クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ビニル化合物、ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N-ビニルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニリデンフルオライド、ビニルアルキルエーテル類、N-フェニルマレイミド等の単官能モノマーを含有してもよい。
モノマー全量に占める多官能性モノマーは、0.5~70質量%が好ましく、1.0~50質量%がより好ましい。
上述のモノマーは、ラジカル重合によって重合することができる。本実施形態で使用できるゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線あるいは電気化学的にラジカル重合することができる。架橋高分子が加熱によって形成される場合に使用される重合開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が好ましい。これらの重合開始剤の添加量は、モノマー総量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋反応に必要な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。架橋可能な反応性基に好ましい例としては、ピリジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、トリアゾール、モルフォリン、ピペリジン、ピペラジン等の含窒素複素環を挙げることができ、好ましい架橋剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロリド、イソシアネート等の窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬を挙げることができる。
<<無機ホール輸送層>>
電荷移動層7として無機固体化合物を用いて無機ホール輸送層とすることも可能である。無機固体化合物を電解質の代わりに用いる場合、ヨウ化銅、チオシアン化銅等をキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ等の手法により電極内部に導入することができる。
<<有機ホール輸送層>>
また、本実施形態では電解質の代わりに有機電荷輸送物質を用いて有機ホール輸送層とすることもできる。本実施形態における有機ホール輸送層は、単一材料からなる単層構造でも複数の化合物からなる積層構造でも構わない。積層構造の場合、第2電極8に近い有機ホール輸送材料層に高分子材料を用いることが好ましい。製膜性に優れる高分子材料を用いることで多孔質状の電子輸送層の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上することができるためである。また、高分子は多孔質状の電子輸送層内部へ浸透することが困難であるため、逆に多孔質状の電子輸送層表面の被覆にも優れ、電極を設ける際の短絡防止にも効果を発揮するため、より高い性能を得ることが可能となる。
単一で用いられる単層構造において用いられる有機ホール輸送材料としては、公知の有機ホール輸送化合物を用いることが可能であり、その具体例としては特公昭34-5466号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特公昭45-555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物、特公昭52-4188号公報等に示されているピラゾリン化合物、特公昭55-42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物、特開昭56-123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特開昭54-58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン化合物、特開昭58-65440号公報あるいは特開昭60-98437号公報に示されているスチルベン化合物、特表平11-513522号公報に示されているスピロ型化合物等を挙げることができる。特にこの中では、テトラアリールベンジジン化合物やスピロ型化合物が好ましい。
本実施形態に用いられる有機ホール輸送材料としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
Figure 0007069687000017
(式中、R~R12はそれぞれ独立に同一又は異なるアミノ基を表す。)
~R12は置換基を有していてもよい。R~R12としては、例えばジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチル-4-トリルアミノ基等が挙げられる。
前記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、以下に示す(D-1)~(D-20)等を挙げることができるが、何らこれらに限定されるものではない。
Figure 0007069687000018
Figure 0007069687000019
また、上記に示した有機ホール輸送化合物に各種添加剤を加えても構わない。
添加剤としては、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄、ヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム、臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅、塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀、酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩、フェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール-アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ヨウ化1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾイニウム塩、ヨウ化1-メチル-3-n-ヘキシルイミダゾリニウム塩、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムトリフロオロメタンスルホン酸塩、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムノナフルオロブチルスルホン酸塩、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル)スルホニルイミド等のInorg. Chem. 35 (1996) 1168に記載のイオン液体、ピリジン、4-t-ブチルピリジン、ベンズイミダゾール等の塩基性化合物、リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムジイソプロピルイミド等のリチウム化合物等を挙げることができる。
また、導電性を向上させる目的で、有機ホール輸送化合物の一部をラジカルカチオンにするための酸化剤を添加しても構わない。その酸化剤としては、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、コバルト錯体、銅錯体等が挙げられる。この酸化剤の添加によって全ての有機ホール輸送材料が酸化される必要はなく、一部のみが酸化されていればよい。また添加した酸化剤は添加した後、系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
無機又は有機ホール輸送化合物を用いてホール輸送層を形成する場合、増感色素を表面に有する電子輸送層4上に、直接ホール輸送層を形成する。これら固体型ホール輸送層の作製方法には特に制限はなく、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げられる。製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、電子輸送層上に塗布する方法が好ましい。
湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
また、超臨界流体あるいは亜臨界流体中で製膜してもよい。
超臨界流体としては、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
この超臨界流体は、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどのエルコール系溶媒、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が好適である。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるともに、不燃性で取扱いが容易であり、特に好ましい。
また、これらの流体は、単独であっても2種以上の混合であっても構わない。
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上述した超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下が特に好ましい。
さらに、上述の超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
このような有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、あるいはN-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1-クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
本実施形態では、増感色素を表面に有する電子輸送化合物を設けた電子輸送層4上にホール輸送材料を設けた後、プレス処理工程を施しても構わない。このプレス処理を施すことによって、ホール輸送材料がより多孔質電極と密着するため効率が改善すると考えている。プレス処理方法に特に制限はないが、IR錠剤整形器に代表されるような平板を用いたプレス成型法、ローラーなどを用いたロールプレス法を挙げることができる。圧力としては10kgf/cm以上が好ましく、30kgf/cm以上がより好ましい。プレス処理する時間に特に制限はないが、1時間以内で行うことが好ましい。また、プレス処理時に熱を加えても構わない。
また、上述のプレス処理の際、プレス機と電極間に離型材を挟んでも構わない。離型材としては、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂等を挙げることができる。
上記プレス処理工程を行った後、第2電極8を設ける前に、有機ホール輸送化合物と第2電極8に間に金属酸化物を設けてもよい。この金属酸化物としては、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケル等を挙げることができ、特に酸化モリブデンが好ましい。
これら金属酸化物をホール輸送材料上に設ける方法としては特に制限はなく、スパッタリングや真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げることができる。
湿式製膜法においては、金属酸化物の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
電荷移動層7の膜厚としては、適宜変更することが可能であるが、0.1~50nmが好ましく、1~10nmがより好ましい。
<第2電極>
本実施形態において、電荷移動層7の形成方法は大きく2通りの方法が挙げられる。1つは増感色素を有する電子輸送層4上に、先に第2電極8を貼り合わせ、その隙間に液状の電荷移動層を挟み込む方法、もう一つは、電子輸送層4上に直接電荷移動層7を付与する方法である。後者の場合、第2電極8はその後新たに付与することになる。
前者の場合、電荷移動層7を挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセス等が挙げられる。後者の場合、湿式の電荷移動層7においては未乾燥のまま第2電極8を付与し、エッジ部の液漏洩防止を施す必要がある。また、ゲル電解液の場合においては、湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もある。その場合、乾燥、固定化した後に第2電極8を付与してもよい。
電解液の他、有機電荷輸送材料の溶解液やゲル電解質を付与する方法としては、半導体微粒子含有層や色素の付与と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワイヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等が挙げられる。
第2電極8としては、通常前述の第1電極2と同様に導電性を有する基板を用いることもできるが、強度や密封性が十分に保たれるような構成であれば基板は必ずしも必要ではない。
第2電極に用いる材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、炭素、ITO、FTO等の導電性金属酸化物等が挙げられる。第2電極8の厚さは特に制限はなく、適宜変更することが可能である。
電荷移動層7に無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料を用いた場合、第2電極8は、個体ホール輸送層形成後あるいは上述の金属酸化物上に新たに付与する。第2電極8は、通常前述の第1電極2と同様のものを用いることができ、強度や密封性が充分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要ではない。第2電極8材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素系化合物、ITO、FTO等の導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子が挙げられる。
第2電極8の膜厚には特に制限はなく、また単独あるいは2種以上の混合で用いても構わない。第2電極8の塗設については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせ等の手法により形成可能である。
光電変換素子として動作するためには、第1電極2と第2電極8の少なくとも一方は実質的に透明であることが好ましい。本実施形態の光電変換素子においては、第1電極2側が透明であり、太陽光を第1電極2側から入射させる方法が好ましい。この場合、第2電極8側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましい。また、太陽光の入射側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
<吸光波長制御層>
本発明の光電変換素子は、吸光波長制御層12を有していてもよい。吸光波長制御層12により電極内部へ入射する光を制御することで、高い発電性能を長期間維持することができる。吸光波長制御層12は、図3に示されるように、第1電極2上であって、電子輸送層4とは反対側に設けられている。なお、図3ではブロッキング層3が図示されているが、ブロッキング層3と吸光波長制御層12は同時に存在していてもよいし、別個に存在していてもよい。
吸光波長制御層12としては、例えば、波長カットフィルムやフィルタ等を用いることができる。また、吸光波長制御層12は、全光線透過率90%以上であり、波長385nm以下の紫外光カット率99%以上であることが好ましい。
吸光波長制御層12を設けることにより、光電変換への寄与率の低い紫外から近紫外光域(250~350nm)の光を排除し、光電変換への寄与率の高い可視光域(350~800nm)のみ選択的に電極内部へ取り込むことができる。これにより、増感色素や電解質などの有機材料の光劣化を防止することができる。
本実施形態において、吸光波長制御層の形成方法は、例えば2通りの方法が挙げられる。一つは、あらかじめ接着層を有している波長カットフィルムを、直接、光を入射させる側の基板(あるいは電極)表面に貼り付ける方法である。また、もう一つは、接着層を有していない波長カットフィルムやフィルタを、接着剤を介して、基板(あるいは電極)表面に貼り付ける方法である。
前者の場合、波長カットフィルムを貼り付けた後、ローラー、プレス等により、波長カットフィルムを基板表面と密着させることになる。
後者の場合、波長カット領域に含まれない領域で硬化する光硬化樹脂や、硬化のために光を必要としない2液混合硬化樹脂等を使用して、波長カットフィルムやフィルタを、基板表面と接着する。接着に使用する樹脂は、硬化後に高い全光線透過率を有する樹脂が好ましい。
<フレーム構造>
本発明において、光電変換素子の電極端子取り出し部として、ピンヘッダーを介したフレーム構造を形成することができる。
例えばガラス面に製膜された透明導電膜である場合、平滑性が高いことや、また半田付けが困難であることから、電極端子の接続不良が生じることがある。これに対し、フレーム構造を形成する場合、光電変換素子の電極端子の接続性を良好にすることができ、高い変換効率をより長期にわたって維持することができる。
本実施形態では、第1電極2とピンヘッダーを接続することによるフレーム構造を形成する。第1電極2とピンヘッダーを接続する方法として、例えば、ピンヘッダー自体がガラス基板を挟み込む力を有する構造と、ピンヘッダーと透明導電膜を外部応力により密着させる構造の2つが挙げられる。
前者の場合は、挟み込む力を有するために、十分な接続長を有していることが好ましい。具体的な接続部品として、例えばクリップ端子(WAKO社製、537-0.7)が挙げられる。
後者の場合は、透明導電膜とピンヘッダーとをゴムコネクター等の弾性を有する部材を介し、物理的な応力による接続する構造となる。具体的には、ポリカーボネート等の樹脂フレームでネジ止めや、超音波溶着等で、物理的に応力を維持したまま固定化する方法が挙げられる。超音波溶着方法としては、自動車分野等でも実用化されている樹脂溶着が可能な超音波接着条件が適応できる。
フレーム構造の一例を図4に示す。図4(A)はフレーム構造である場合の断面模式図であり、図4(B)は受光部の要部模式図である。図示されるように、光電変換素子20が封止樹脂24によりカバーガラス22で封止されている。ここでは取出電極23が形成され、封止されている。更に、ポリカーボネート樹脂27、カーボンゴム25、金属ピン26を図のように構成し、フレーム構造を形成している。なお、図4の符号21は、基板1又は第1電極2であってもよい。
<用途>
本実施形態の光電変換素子は、太陽電池及び太陽電池を用いた電源装置等に応用できる。応用例としては、従来からの太陽電池やそれを用いた電源装置を利用している機器類であれば、いずれのものでも可能である。例えば電子卓上計算機や腕時計用の太陽電池に用いてもよく、その他本実施形態の光電変換素子の特徴を活用する一例として、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等の電源装置が挙げられる。また充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることもできる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下、参考例1とあるのは、参考例1Aとし、実施例1~31、36~39とあるのは、本発明に含まれない参考例1~31、36~39とする。
(実施例1)
<電子輸送層4の作製>
チタニウムテトラ-n-プロポキシド2ml、酢酸4ml、イオン交換水1ml、2-プロパノール40mlを混合した溶液を、FTOガラス基板(第1電極2)上にスピンコートし、室温で乾燥後、空気中450℃で30分間焼成した。再度同一溶液を用いて、第1電極2上に膜厚100nmになるようにスピンコートで塗布し、空気中450℃で30分間焼成してブロッキング層3を形成した。
酸化チタン(日本アエロジル社製P-25)3.0g、アセチルアセトン0.3gを水5.5g、エタノール1.2gと共にビーズミル処理を12時間施して分散液を得た。得られた分散液に界面活性剤(和光純薬社製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3g、ポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストを、ブロッキング層3上に膜厚2.0μmになるように塗布し、室温で乾燥後、空気中500℃で30分間焼成し、多孔質状の酸化チタン半導体電極を形成した。
上記酸化チタン半導体電極を、0.5mMに調整した例示化合物(B-5)で示される増感色素、及び1.0mMに調整した例示化合物(C-12)の2-エトキシエタノール溶液(色素溶液)中に沈め、室温で1時間、暗所にて静置して増感色素を吸着させて電子輸送層4を作製した。
<光電変換素子の作製と評価>
電子輸送層4上に、例示化合物(D-7)(0.1M)、トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(27mM)、4-t-ブチルピリジン(0.11M)をクロロベンゼンに溶解し、得られた溶液をスピンコートにて製膜し自然乾燥した。これにより電荷移動層7を形成した。この上に銀を約100nm真空蒸着させて第2電極8を形成し、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子に対し、第1電極2側からソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm)から発生した疑似太陽光を照射して、太陽電池特性を評価した。その結果、開放電圧0.91V、短絡電流密度6.70mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.90%と良好な値を示した。
(実施例2~8)
実施例1における例示化合物(C-12)を、表1に示す例示化合物に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0007069687000020
実施例1~8を比較すると、全て良好な変換効率を有しているが、共吸着剤としてはC-12、13、16、22、28といった炭化水素系芳香環にアルコキシ基が導入された化合物が特に優れた性能を示し、チオフェン環にアルキル基が導入されたもの、並びにアルキル基を有するフェノキシ基が導入された炭化水素系芳香環が次に優れた性能を示した。
(実施例9~16)
次に、得られた光電変換素子に対して耐久性試験を行った。耐久性試験としては、実施例1~8で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた後に光電変換素子の特性を評価したものである。その結果を表2に示す。いずれも、初期値に対する耐久性試験後の比は95%以上(言い換えると、低下率が95%以内)であり、良好な耐久性を有していることが分かる。
Figure 0007069687000021
(比較例1~9)
実施例1における例示化合物(C-12)を、表3に示す共吸着剤に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表3に示す。
Figure 0007069687000022
実施例1~8と比較例1~3を比較すると、同じ安息香酸誘導体であっても、p位に強い電子供与性を有するもの(4-ジメチルアミノ安息香酸)や、p位に強い電子吸引性を有するもの(4-シアノ安息香酸、4-ブロモ安息香酸)では性能が劣ることが分かる。これは、各化合物のカルボン酸の酸性度が異なり、何らかの影響を及ぼしているためだと考えられる。
また、比較例4と5から、コール酸やケノデオキシコール酸は、初期の変換効率は比較的良好な性能を示すことが分かった。しかしながら、これらの化合物はUV吸収しないため、HPLCなどを用いた溶液の管理が困難であり、これらの化合物を溶解した溶液を使い続けると、色素の定量化は可能であるが、共吸着剤の定量化が困難な問題がある。
比較例6~8から、ホスホン酸やスルホン酸は、初期の性能が非常に劣ることが分かる。この理由も、上述の通りホスホン酸やスルホン酸の酸性度が、上記実施例におけるカルボン酸に比較して強すぎるためであろうと考えられる。
比較例9から、アルキル基とベンゼン環を有する3-フェニルプロピオン酸は、カルボン酸にアルキル基が結合されているため、やはりカルボン酸の酸性度が異なり、結果として特性が低下することが分かる。
(比較例10~18)
比較例1~9で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。得られた光電変換素子に対して実施例9等と同様の耐久性試験を行った。その結果を表4に示す。いずれも、初期値に対する耐久性試験後の比は60%以下であり、上記実施例に比較して耐久性が低いことが分かる。
Figure 0007069687000023
(比較例19)
実施例1における例示化合物(B-5)で示される増感色素を、下記化合物(E-1)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.81mA/cm、形状因子0.62、変換効率3.80%と良好な値を示した。
次に、得られた光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。得られた光電変換素子に対して実施例9等と同様の耐久性試験を行った。その結果、開放電圧0.68V、短絡電流密度3.17mA/cm、形状因子0.51、変換効率1.10%という性能が得られた。初期値に対する耐久性試験後の比は28.9%であり、上記実施例に比較して耐久性が劣っていることが分かる。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007069687000024
(比較例20)
実施例1における例示化合物(B-5)で示される増感色素を、下記化合物(E-2)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.93V、短絡電流密度4.89mA/cm、形状因子0.63、変換効率2.87%と比較的良好な値を示した。
次に、得られた光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。得られた光電変換素子に対して実施例9等と同様の耐久性試験を行った。その結果、開放電圧0.77V、短絡電流密度3.44mA/cm、形状因子0.59、変換効率1.56%という性能が得られた。初期値に対する耐久性試験後の比(低下率)は54.3%であり、上記実施例に比較して耐久性が劣っていることが分かる。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007069687000025
(比較例21)
実施例1における例示化合物(B-5)で示される増感色素を、下記化合物(E-3)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.77V、短絡電流密度2.59mA/cm、形状因子0.60、変換効率1.20%と上記実施例に比較して低い変換効率であった。
次に、得られた光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。得られた光電変換素子に対して実施例9等と同様の耐久性試験を行った。その結果、開放電圧0.62V、短絡電流密度3.07mA/cm、形状因子0.51、変換効率0.97%という性能が得られた。初期値に対する耐久性試験後の比(低下率)は80.8%であり、比較的良好な耐久性を有していることが分かる。しかしながら、この組み合わせでは初期の変換効率が低く、上記実施例の方が優れていることが分かる。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007069687000026
(比較例22)
実施例1における例示化合物(C-12)を、前記化合物(E-2)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.87V、短絡電流密度4.55mA/cm、形状因子0.60、変換効率2.38%と実施例1に比較して低い変換効率であった。増感色素(E-2)を共吸着剤の代わりとして用いたが、上記実施例の共吸着剤のような効果は得られず、特性が低かった。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007069687000027
表5の比較例19~21において、上段は初期値であり、下段は耐久性試験後の値を示すものである。
比較例19~21より、例示化合物(C-12)を用いても、増感色素が異なると耐久性試験で劣ることが分かる。
(実施例17)
実施例1で使用した色素溶液をHPLCで測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
HPLC:島津製作所製LC-2010A
カラム:GLサイエンス製Intersil ODS-3
溶離液:THF/水=65/35
検出波長:254nm
得られた結果を図5に示す。図5より、増感色素は約6.8分に、共吸着剤は約5.3分にピークを有しており、いずれの化合物も検出することができた。
(比較例23)
比較例5で使用した色素溶液をHPLCで測定した。HPLCの条件は実施例17と同一である。結果を図6に示す。図6より、増感色素は約6.9分に検出されたが、共吸着剤であるケノデオキシコール酸は検出できなかった。
以上、実施例17と比較例23より、本発明ではHPLC測定によって濃度管理が簡易に行えることが明らかである。
(実施例18)
実施例1における1.0mMに調整した例示化合物(C-12)で示される共吸着剤を、0.5mMに調整した例示化合物(C-12)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.44mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.71%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例19)
実施例1における1.0mMに調整した例示化合物(C-12)で示される共吸着剤を、1.5mMに調整した例示化合物(C-12)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.91mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.98%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例20)
実施例1における1.0mMに調整した例示化合物(C-12)で示される共吸着剤を、3.0mMに調整した例示化合物(C-12)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.89V、短絡電流密度6.02mA/cm、形状因子0.63、変換効率3.38%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例21)
実施例1における2-エトキシエタノールを、3-メトキシプロピオニトリルに変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.91V、短絡電流密度7.02mA/cm、形状因子0.63、変換効率4.02%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例22)
実施例1における2-エトキシエタノールを、2-メトキシエタノールと3-メトキシプロピオニトリルの体積比率1:1の混合溶液に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.79mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.91%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例23)
実施例1における2-エトキシエタノールを、t-ブタノールとアセトニトリルの体積比率1:1の混合溶液に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.71mA/cm、形状因子0.63、変換効率3.80%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例24)
実施例1における2-エトキシエタノールを、ジエチレングリコールジメチルエーテルに変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.88V、短絡電流密度6.99mA/cm、形状因子0.62、変換効率3.81%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例25)
実施例1における室温で1時間、暗所にて静置して増感色素を吸着させる条件を、60℃に加熱したオーブン中で15分、暗所にて静置して増感色素を吸着させる条件に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.90V、短絡電流密度6.80mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.92%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例26)
実施例1における室温で1時間、暗所にて静置して増感色素を吸着させる条件を、室温で2時間、暗所にて静置して増感色素を吸着させる条件に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.91V、短絡電流密度6.70mA/cm、形状因子0.64、変換効率3.90%と良好な値を示した。得られた結果を表6に示す。
(実施例27)
実施例1における例示化合物(D-7)を、下記化合物(E-4)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.91V、短絡電流密度6.20mA/cm、形状因子0.61、変換効率3.44%と実施例1に比較して若干低い効率ではあるが、良好な値を示した。
次に、この光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。その結果、開放電圧0.91V、短絡電流密度6.06mA/cm、形状因子0.61、変換効率3.36%という性能が得られた。この値は、耐久性試験後の低下率が初期値の97.7%であり、良好な耐久性を有していることが分かる。得られた結果を表6に示す。
Figure 0007069687000028
Figure 0007069687000029
実施例1と実施例18~20より、0.5mMに調整した増感色素に対する共吸着剤の濃度が、0.5mM~1.5mMの範囲内では非常に良好な特性を有しており、3.0mM用いた場合には0.5~1.5mMに比較すると若干特性が低くなるものの、良好な特性を有していることが分かる。
実施例1と実施例21~24より、本発明において用いられる有機溶媒としては、様々な溶媒を用いても良好な特性を有することが分かる。
実施例1と実施例25と実施例26より、本発明において色素を吸着する時の温度や時間は、様々な条件を用いても良好な特性を有することが分かる。
(実施例28~31)
実施例1における0.5mMに調整した例示化合物(B-5)で示される増感色素を、表7に記載の増感色素に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果を表7に示す。
Figure 0007069687000030
実施例1と実施例28~31を比較すると、全て良好な変換効率を有しているが、増感色素としては例示化合物(B-5)に対して例示化合物(B-6)と例示化合物(B-21)がほぼ同等、例示化合物(B-13)と例示化合物(B-19)は若干変換効率が低いことが分かる。
(実施例32)
実施例1における例示化合物(B-5)を、例示化合物(B-37)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.95V、短絡電流密度6.85mA/cm、形状因子0.67、変換効率4.36%と良好な値を示した。
(実施例33)
実施例32で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。その結果、開放電圧0.93V、短絡電流密度6.92mA/cm、形状因子0.66、変換効率4.24%と良好な値を示した。耐久性試験後の変換効率は、初期値の97%であり、良好な耐久性を有していることが分かる。
(実施例34)
実施例1における例示化合物(B-5)を、例示化合物(B-38)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.94V、短絡電流密度6.92mA/cm、形状因子0.66、変換効率4.29%と良好な値を示した。
(実施例35)
実施例34で作製した光電変換素子の外周をエポキシ樹脂とガラスで封止し、60℃に加熱したオーブンに100時間入れた。その結果、開放電圧0.92V、短絡電流密度7.15mA/cm、形状因子0.65、変換効率4.27%と良好な値を示した。耐久性試験後の変換効率は、初期値の99%であり、良好な耐久性を有していることが分かる。
(比較例24)
実施例32における例示化合物(C-12)を、上記化合物(E-2)に変更した以外は実施例32と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.88V、短絡電流密度4.35mA/cm、形状因子0.59、変換効率2.25%と実施例32に比較して低い効率であった。増感色素(E-2)を共吸着剤の代わりとして用いたが、本発明の共吸着剤のような効果は得られず、特性が低かった。
(比較例25)
実施例34における例示化合物(C-12)を、上記化合物(E-2)に変更した以外は実施例34と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.89V、短絡電流密度4.43mA/cm、形状因子0.58、変換効率2.28%と実施例34に比較して低い効率であった。増感色素(E-2)を共吸着剤の代わりとして用いたが、本発明の共吸着剤のような効果は得られず、特性が低かった。
(実施例36、参考例1)
実施例9で作製した光電変換素子のFTOガラス基板上に、吸光波長制御層12として全光線透過率が90%であり、波長385nm以下の紫外領域の光を99%カットするUVカットフィルム(日本理化製紙社製UV50)を図3のように貼り付け、白色LED200lux環境下での特性値を実施例9と比較評価した。その後、作用電極側からソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm)から発生した疑似太陽光を150時間連続照射し、再度、白色LED200lux環境下での特性値をUVカットフィルムの有無で比較した。
その結果、UVカットフィルム有りの場合(実施例36)、疑似太陽光150時間連続照射後も出力低下-1.76%と良好な値を示した。一方で、UVカットフィルム無しの場合(参考例1)、疑似太陽光150時間連続照射後では、出力低下-68.82%となった。このことから、白色LED200lux環境下での特性値を維持するためには、UVカットフィルムが有効であることが分かる。
Figure 0007069687000031
(実施例37)
本実施例では実施例36で作製した光電変換素子について図4に示すフレーム構造を形成する。実施例36で作製した光電変換素子を、封止樹脂24としてアクリル硬化樹脂(TB-3035B、スリーボンド社製)を用いてカバーガラス22で封止した。なお、ここでは取出電極23を形成し、封止している。更に、封止したサンプルについて、ポリカーボネート樹脂27とカーボンゴム25と金属ピン26から構成されるフレーム構造を形成し、白色LED500lux環境下での特性を評価した。フレーム構造は、ポリカーボネート樹脂からなる上筐体と下筐体を超音波溶着装置(2000Xdt、ブランソン社製)を用いて作製した。溶着条件としては、コラプス:0.15mm、振幅:40%、シリンダー圧力:200kPa、トリガー圧力:22Nとした。
その結果、開放電圧:0.85V、短絡電流密度:41.3μA/cm、形状因子:0.76、出力電力:26.68μW/cmであった。
(実施例38)
実施例1における酸化チタン(日本アエロジル社製P-25)を、酸化亜鉛(シーアイ化成社製)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.80V、短絡電流密度5.40mA/cm、形状因子0.63、変換効率2.72%を示した。実施例1の酸化チタンを用いたものには及ばないが、良好な特性を示した。
(実施例39)
実施例1における酸化チタン(日本アエロジル社製P-25)を、酸化スズ(シーアイ化成社製)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.77V、短絡電流密度5.90mA/cm、形状因子0.66、変換効率3.00%を示した。実施例1の酸化チタンを用いたものには及ばないが、良好な特性を示した。
以上明らかなように、本発明の増感色素と共吸着剤を組み合わせることで、良好な変換効率と高い耐久性を有していることが分かる。また、いずれの本発明の増感色素と共吸着剤の組み合わせは、HPLCにて簡便に検出できるため、色素溶液の管理方法が容易となることが明らかである。
1 基板
2 第1電極
3 ブロッキング層
4 電子輸送層
5 増感色素
6 共吸着剤
7 電荷移動層
8 第2電極
9、10 リードライン
11 電子輸送性化合物
12 吸光波長制御層
20 光電変換素子
21 第1基板
22 カバーガラス
23 取出電極
24 封止樹脂
25 カーボンゴム
26 金属ピン
27 ポリカーボネート樹脂
特開平1-220380号公報 特開平11-86916号公報 特開平11-238905号公報 特開平11-144773号公報 特開2000-106223号公報
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Claims (9)

  1. 第1電極と、該第1電極上に形成された電子輸送層と、電荷移動層と、第2電極と、を有する光電変換素子であって、
    前記電子輸送層は、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、を担持した電子輸送性化合物を含むことを特徴とする光電変換素子。
    Figure 0007069687000032
    (式中、X 及びX は酸素原子又は硫黄原子を表し、R はアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R は酸性基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R 及びR はアルキル基又はアリール基を表し、R とR は結合して環状構造を形成してもよく、又はそれぞれ独立した非環状構造であってもよい。)
    Figure 0007069687000033
    (式中、Rはアリール基又はヘテロ環基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキルチオ基又はアリールエーテル基を表す。)
  2. 前記一般式(2)が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
    Figure 0007069687000034
    (式中、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、nは1~3の整数を表す。)
  3. 前記第1電極と前記電子輸送層との間に、ブロッキング層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記電子輸送性化合物が、酸化物半導体であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光電変換素子。
  5. 前記酸化物半導体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブの少なくとも1種以上から選ばれたことを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
  6. 前記電荷移動層が、有機ホール輸送材料又は無機ホール輸送材料を含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光電変換素子。
  7. 前記有機ホール輸送材料が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
    Figure 0007069687000035
    (式中、R~R12はそれぞれ独立に同一又は異なるアミノ基を表す。)
  8. 前記第1電極上であって、前記電子輸送層とは反対側に吸光波長制御層を有し、
    前記吸光波長制御層は、全光線透過率90%以上であり、波長385nm以下の紫外光カット率99%以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光電変換素子。
  9. 請求項1~のいずれかに記載の光電変換素子を備えることを特徴とする太陽電池。
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