JP7062437B2 - 無線通信システムおよび無線通信方法 - Google Patents
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Description
一つ目のケースとして、災害現場からのカメラ映像中継については、山岳地帯であれば山越えや谷間に沿って無線通信を行い、無線装置の通信距離が長距離におよぶ場合では、複数の無線装置で中継を行う必要がある。また、都市部では、ビル等の大きな遮蔽物によって通信距離が狭まるため、その分、無線中継段数(以降、ホップ数)が多く必要になってくる。
二つ目のケースとして、医療データや工場でのセンサーデータ等のいわゆるビッグデータ収集については、より広いエリアをカバーし、多くのセンサー端末を収容する必要から、BS配下のRSのホップ数の増大や分岐台数の増加が必要になってくる。
これらのような利用シーンにおいては、前述のセグメント方式やIEEE802.16j中継方式の適用を考えた場合、幾つかの制約があるため、使用不可となる状況もある。
無線中継を実現するための方式の違いは、無線フレーム構成が一番重要な部分であり、そこが制約となるため、無線フレーム構成の違いについて説明する。
ARIB STD-T103では、中継の有無にかかわらず、複信方式はTDD(Time Division Duplex)であり、BSがDLサブフレーム送信、ULサブフレーム受信、MSがDLサブフレーム受信、ULサブフレーム送信となっている。
また、無線多段中継しているときの無線多段中継数をホップ数と呼び、ホップ数の数え方は、1対向目の無線リンクを1ホップとし、2段目以降はそれぞれ1ずつ加算して計算する。
BSからMSへの無線通信は、下り信号として送受信される。
MSからBSへの無線通信は、上り信号として送受信される。
一つ目の中継方式であるセグメント方式は、下り信号領域(以降、DLサブフレームと呼ぶ)と上り信号領域(ULサブフレーム)の無線周波数チャネルを3分割し、BS、MSそれぞれが分割した1/3の無線周波数チャネルを使用することで、最大3ホップまでの無線多段中継が可能な方式である。図1を用いて説明すると、3分割されたセグメントをそれぞれセグメント0、セグメント1、セグメント2と呼び、各セグメントを以下のように使用する。
図1の中段はセグメント1の無線フレーム構成を示しており、時間軸方向は全て使用するが、周波数方向は3分割したうちの中段のみを使用する。
図1の下段はセグメント2の無線フレーム構成を示しており、時間軸方向は全て使用しているが、周波数方向は3分割したうちの下段のみを使用する。
BS1からMS1への無線通信は、図1のDL_0に対応する図3のDL_0で下り信号として送受信される。
BS2からMS2への無線通信は、図1のDL_1に対応する図3のDL_1で下り信号として送受信される。
BS3からMS3への無線通信は、図1のDL_2に対応する図3のDL_2で下り信号として送受信される。
IEEE802.16j中継方式の無線フレーム構成を図2を用いて説明すると、DLサブフレームとULサブフレームを時間軸方向に分割し、さらに、従来のTTG、RTGと同様の目的でTTG2、RTG2が追加になっている。
BSからRSへの無線通信は、図2のDL_Bに対応する図4のDL_Bで下り信号として送受信される。
RSからMSへの無線通信は、図2のDL_Rに対応する図4のDL_Rで下り信号として送受信される。
RSからBSへの無線通信は、図2のUL_Rに対応する図4のUL_Rで上り信号として送受信される。
MSからRSへの無線通信は、図2のUL_Mに対応する図4のUL_Mで上り信号として送受信される。
また、DLサブフレームとULサブフレームがそれぞれ2つに分割されることにより、その分割した間にも無線信号の重なりを防ぐためのGAP時間が設定されることとなり、その時間分、従来方式と比べて無線伝送レートの低下を招くというデメリットが挙げられる。
図5は、3種類(上段、中段、下段)のTDD比率を示している。
図5の上段は上り信号優先の割り当て方式を示しており、前述の災害現場からカメラ映像をMSからBSへ伝送するような場合に適したTDD比率である。
図5の中段は上り下り均等の割り当て方式を示しており、前述のセグメント方式のように、上り方向と下り方向の伝送容量が同等であることが望まれるような場合に適したTDD比率である。
図5の下段は下り信号優先の割り当て方式を示しており、例えば、MS側に複数のPCを接続してインタネットのWEB閲覧を行うといった、ダウンロードを多用するような場合に適したTDD比率である。
図6から容易にわかるように、上段のDLサブフレームや下段のULサブフレームが2分割され、かつ、TTG2のようにGAP時間が挿入されると、通信に使用可能な帯域が非常に少なくなってしまう。このため、ほとんど片方向のデータが流れなくなってしまうようなケースが発生してしまうデメリットが想定される。
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、無線中継時のホップ数の上限解除、無線中継時の無線伝送レート低下の軽減、無線中継時の無線装置同士の干渉回避などを実現することを目的とする。
すなわち、図8にネットワークトポロジの概要を示すように、無線装置である基地局と移動局とを無線接続し、さらに移動局に他の移動局を接続して連ねることで、無線多段中継を実現する。また、無線装置への無線接続には、複数接続することを許容する。図10の例では、基地局(BS)は2台の移動局(RS1、RS2)と無線接続しており、RS1はRS3とRS4と無線接続しており、RS2はRS5とRS6と無線接続していることを示している。
無線帯域割り当て情報の生成では、前記のように、時間経過で変化する無線帯域要求量への応答やユーザデータの伝送遅延時間を短縮させる目的で、全無線装置の無線帯域要求量を満たしつつ、各無線装置が送受信する間隔を可能な限り短くするような無線帯域割り当て方式を実現する。
そして、スケジューラ部は、収集したセンシング結果に基づき、ネットワークトポロジの最適な形態を計算し、それに必要な無線装置同士の無線接続の切断と再接続の指示を各無線装置に通知することで、ネットワークトポロジの最適化を実現する。
図7を用いて従来の無線フレーム構成について説明する。
前述したとおり、無線フレーム周期がTDDの繰り返し周期で、DLサブフレームとULサブフレームがあり、それらの間には、TTG、RTGが存在する。
DLサブフレームには、プリアンブル、FCH、MAP情報、DLデータバースト領域があり、ULサブフレームには、レンジング領域、ULデータバースト領域がある。
FCH(Frame Control Header)は、以降に続く、MAP情報の無線変調方式やサイズ等のデータである。
MAP情報は、下り信号を無線送信している装置の識別子、無線フレーム番号、DLサブフレーム内のデータ配置などを示す情報である。
DLデータバーストは、リンク維持に必要な制御データやユーザデータを送受信するための領域である。
レンジング領域は、MSがBS側に上り信号の無線特性(タイミング、ゲイン、周波数など)を検出させるための信号を送受信する領域である。
ULデータバーストは、リンク維持に必要な制御データやユーザデータを送受信するための領域である。
無線多段中継の説明に使用する用語について、図8の無線多段中継のネットワークトポロジを用いて説明する。
図8では、BSが複数のRSと接続されており、新規のRSがBS配下のRSに接続するときに管理するスケジューラサーバがインターネットを介してBSと接続されている。さらに、インターネットを介して、ネットワーク全体の保守等を行う回線監視サーバなどが接続されている。
次に、上位RSについて説明すると、BSに近い側で無線接続している無線装置のことを指す。例えば、RS1の上位RSはBSであり、RS5の上位RSはRS2である。
次に、下位RSについて説明すると、BSから遠い側で無線接続している無線装置のことを指す。例えば、RS2の下位RSはRS5とRS6であり、RS4の下位RSは存在しないということになる。
次に、末端RSについて説明すると、下位RSが存在しないRSのことを指す。図8の例では、RS3、RS4、RS5、RS6が末端RSとなる。
次に、分岐接続について説明すると、BS、RS1、RS2はそれぞれ複数の下位RSと接続しているが、このように複数の下位RSが接続している状態を分岐ありと呼び、下位RSが1台だけの接続状態を分岐なしと呼ぶ。
図9には、4台の無線装置が分岐しないで接続されているネットワークトポロジ(分岐なし、3ホップ)を示してある。この場合の各無線装置の無線フレーム構成の一例について、図10を用いて説明する。図10は、無線フレームが3フレーム連続していることを表しており、無線フレーム番号(以降、FN(Frame Number)と呼ぶ)=N、N+1、N+2としている。
FN=N+1は、RS1とRS2のみが無線通信をする無線フレームであり、上位ERS、下位RSの関係に従い、FN=Nのときと同様の無線通信を行う。FN=N+2もまた同様である。
なお、図10では、各無線リンクが使用する無線フレーム数が1フレームずつであるが、使用する無線フレーム数については、後述する無線帯域割り当て方式にて説明する。
FN=N+1は、BSとRS2のみが無線通信をする無線フレームである。
FN=N+2は、RS1とRS3のみが無線通信をする無線フレームである。
FN=N+3は、RS1とRS4のみが無線通信をする無線フレームである。
FN=N+4は、RS2とRS5のみが無線通信をする無線フレームである。
FN=N+5は、RS2とRS6のみが無線通信をする無線フレームである。
いずれも、上位RSがDLサブフレームで送信し、下位RSがULサブフレームで送信する。
この発展形の無線フレーム構成によれば、ある上位RSは1つの無線フレーム中に複数の下位RSと通信することが可能となるため、結果として、全無線装置に割り当てられる無線フレームの繰り返し周期を短くすることができる。
まず始めに、システム同期について説明する。図9のネットワークトポロジの場合の無線フレーム構成について図10を用いて説明したが、各無線装置の動作について図13を用いて説明する。無線リンクへの割り当てについては、FN=N、N+1、N+2までは図10と同じで、FN=N+3、N+4、N+5は同じ割り当てを繰り返しており、さらにその先も繰り返していることを表している。
RS1の動作を中心に説明すると、FN=N+1、N+4では、RS2との間でDL送信、UL受信をしており、それ以外の無線フレームでは無線送受信をしていないことを表している。RS2、RS3も同様である。
まず、衛星の送信アンテナから無線送信される測位信号を、各無線装置に具備する測位信号受信アンテナで受信する。各無線装置は測位信号受信機を内蔵しており、この測位信号受信機で測位信号から1秒周期の基準信号(以降、1PPS(pulse per second)信号と記載する)を抽出する。そして、全無線装置が1PPS信号と無線フレームの送信開始タイミングとを同期させることで、無線装置すべてで無線フレームを同期させることが可能となる。
ARIB STD-T103の無線フレーム周期は10ミリ秒(以降、msecと記載)であり、1秒間に無線フレームが100回収まる。そこで、FN=N~N+99、N+100~N+199のように100フレーム周期のタイミングを1PPS信号のタイミングと同期させる。これにより、各無線装置が無線フレーム番号(FN)まで情報共有する必要がなく、1PPS信号と無線フレームの同期を取ることが可能となる。
次に、衛星測位システムと連携しないシステム同期の方式に必要となる機能である、UL送信の遅延調整機能について説明する。
前述のようなシステム同期によって、DLサブフレームの無線送信開始タイミングを全無線装置で同期確立済みであっても、そのDLサブフレームの信号が下位RSへ到達する時間は、上位RSと下位RSの無線伝搬路の距離やマルチパスの環境で様々である。従来方式には、その無線伝搬路環境に応じて、無線信号が重ならないように送信タイミングを調整するためのレンジング機能が用意されている。以下では、従来のレンジング機能の一部を用いて、無線多段中継のシステム同期やUL送信の遅延調整機能を実現する方式について説明する。
本発明の方式の説明や従来方式との比較を容易にするため、まず、従来のレンジング機能について説明する。従来方式の無線中継をしない方式でのレンジング機能は、UL送信機能の調整用として使用され、システム同期を実現する機能は有していない。
図15を用いて説明すると、MSは、BSからのDL信号を受信しても、BSからMSへ無線信号が到達するまでの遅延時間であるDelayDLを認識できないので、初回のUL送信では遅延時間を調整しない状態で行う。このときの遅延時間を調整しない状態というのは、DL受信後にTTGの時間が経過してからUL送信を開始することを表している。MSから送信されたUL信号は、DelayULの遅延時間を経てBS側へ到達する。BSとMSのアンテナ間の伝搬路環境は、TDDで通信しているのでほぼ同等とみなすことができ、DelayULはBSとMS間の往復分の遅延時間となるため、DelayULはDelayDLの2倍である。
図16を用いて説明すると、MSは、図15と同様にDelayDL分だけ遅延したDL信号を受信する。その後、BSから通知されるDelayULの値に従い、TTGの値をTTG-DelayULに変更し、UL送信を開始する。このようなBSとMSの連携動作によって、MSから送信されるUL信号は、BSが待ち受けているタイミングに合うように調整される。
本発明では、衛星測位システムを用いることで、前述したBSのタイミングのズレ量の通知を使用せずにUL送信の遅延調整を行う。以下、この方式について説明する。
まず、衛星測位システムを用いることで、各無線装置のシステム同期があらかじめ確立済みであることを前提条件とする。この場合、下位RSが上位RSからのDL信号がどのくらい遅延して受信したのかを、下位RS側で測定することが可能である。つまり、MSは、DL送信の開始タイミングを特定できるので、DL信号の遅延時間であるDelayDLを独自に測定することできる。また、前述のとおり、TDD方式ではDL方向とUL方向の伝搬路は同じとみなすことができるので、下位RSはDL信号の遅延時間であるDelayDLをUL送信タイミングに反映させることが可能となる。つまり、図17に示すように、MSは、TTGの値をTTG-(2×DelayDL)に変更し、UL送信を開始すればよい。
衛星測位システムを用いない場合は当然、衛星測位システムの受信機からの1PPS基準信号の入力がないため、BSの無線フレームタイミングを基準とし、全RSにそのタイミングを伝播させる必要がある。そのためには、従来のレンジング機能で使用される、BSから通知されるタイミングのズレ量であるDelayULが必要となる。この方式について、図18を用いて説明する。なお、図18には、図13のFN=NとFN=N+1の部分を抽出して示してある。
このように、ネットワーク内の各装置が、BSを基準とするUL信号の送信タイミングの遅延時間調整と同時に、下位RSに対するDL送信の開始タイミングを合わせるシステム同期を行うことが可能となる。
従来のARIB STD-T103では、BSと接続するMSが、無線帯域要求量をBSへ通知する。BSは、その要求量を考慮し、MAP情報でMSへ無線帯域割り当て情報を通知する。MSからの無線帯域要求の通知は不定期で行われ、BSからのMAP情報は常にDLサブフレームで送信されるが、無線帯域の割り当て量はBSの裁量に任されており、要求した帯域量が確実に満足さるように割り当てる必要はない。
図19は、図9の無線装置の接続構成に対し、BSが接続されるインターネットと、その先に接続されるスケジューラ部とを追加したネットワークトポロジを想定している。
図19(a)の方法は、各無線装置は上位RSや下位RSへ無線送信すべきデータ量を無線帯域要求量とし、スケジューラ部へ無線多段中継を経て通知する。
図19(b)の方法は、下位RS側から通知された無線帯域要求量をその上位RSが受信し、自RSの無線帯域要求量とまとめて、さらに上位RSへ通知する。この方式は、各無線装置からスケジューラ部に通知する無線帯域要求量の情報の到達タイミングを合わせることができる。
図19(c)の方法は、下位RS側から通知された無線帯域要求量をその上位RSが受信し、自RSの無線帯域要求量と合計して、さらに上位RSへ通知する。この方式は、全無線装置へ配信する無線帯域割り当て情報を小さくし、ネットワーク全体に掛かる負荷を抑えることができる。
図20は、図9の無線装置の接続構成に対し、BSが接続されるインターネットと、その先に接続されるスケジューラ部および映像モニタ部とを追加するとともに、各無線装置にカメラを接続したネットワークトポロジを想定している。本ネットワークの目的は、各無線装置に接続されたカメラからの映像を映像モニタ部へ映像伝送することである。
RS3に接続されたカメラ4の映像データは、無線フレーム番号(FN)=N、N+2、N+5の各無線フレームでRS3、RS2、RS1の順にUL送信され、BSからは有線接続の系のみを介して、映像モニタ部へ伝送される。
RS2に接続されたカメラ3の映像データは、無線フレーム番号(FN)=N+1、N+4の各無線フレームRS2、RS1の順にUL送信され、BSからは有線接続の系のみを介して、映像モニタ部へ伝送される。
RS1に接続されたカメラ2の映像データは、無線フレーム番号(FN)=N+3の無線フレームでRS1からUL送信され、BSからは有線接続の系のみを介して、映像モニタ部へ伝送される。
BSに接続されたカメラ1の映像データは、無線伝送されることなく、有線接続の系のみを介して、映像モニタ部へ伝送される。
つまり、BSに近いRSほど、配下のRSからのデータを伝送するための無線帯域が重複して必要になるため、その分を考慮した無線帯域割り当てを計算しないと、末端RSからの全てのデータがBSまで到達できなくなる。この傾向は、データ伝送の流れが逆となる、BS側から末端RS側への帯域割り当てについても同様である。
さらに、帯域要求情報の通知周期、帯域割り当て情報の計算周期は、運用者がシステムパラメータとして設定することも可能であり、ネットワーク規模や帯域要求量の大きさや変化量によってダイナミックに変化させることも可能である。
本発明の方式での重要なポイントとして、以下の2つが挙げられる。
・システム全体で途切れることなく、新しい無線帯域割り当て情報に移行すること。
・無線中継での伝送遅延の短縮化を考慮すること。
本発明では、「グローバル周期」、「ネットワーク周期」という2つの周期を設定することで、上記2つのポイントの実現を図っている。
そこで、本発明では、全無線装置の帯域要求量を満たすことができ、かつ、帯域要求量が一番大きい無線装置への無線帯域の割り当て量を最小化できる周期を、グローバル周期としている。この部分について、図21を用いて説明する。
図21のパターン2は、各無線装置に対して連続する帯域割り当ての無線フレーム数を2倍にしたもので、グローバル周期も2倍となり、無線フレーム番号(FN)がNからN+11までがグローバル周期となっている。
パターン1の場合は、送信周期が一番長いRS3であっても、無線送信できない期間が無線フレームで5フレームであるのに対し、パターン2では、無線送信できない期間が無線フレームで10フレームとなっている。
パターン2では、10フレームと2フレームというグローバル周期と、10フレームと3フレームというグローバル周期の2種類を繰り返すことを表している。比率に完全に従わず、端数を切り捨てて帯域割り当てを実行した場合でも、そのときの帯域が足りていない無線装置は無線帯域要求量を増加させるので、グローバル周期を短くして無線送信遅延を短くして通信し、新たな帯域要求に従った方がネットワーク性能を高く運用することが可能となる場合が想定される。
まず、グローバル周期と無線多段中継の遅延時間について、図23を用いて説明する。図23は、図20と同じネットワークトポロジで、同じく図20の無線帯域割り当てを繰り返し行っている場合を表している。
前述のとおり、グローバル周期内では、1つの無線装置には、自局の上位RSと下位RSそれぞれとの通信に対して、1フレーム、または、連続する複数フレームが割り当てられる。
このことから、1つのグローバル周期では、BS配下に無線多段接続されるRS群のうち、1つの階層しかデータ伝送できないことになる。つまり、2段中継するためにはグローバル周期が2周期必要になり、30段中継するためにはグローバル周期が30周期必要となることを意味している。
図23のFN=Nでは、RS3がRS2にUL送信しているが、このデータをRS2が最速でRS1へUL送信可能なのは、FN=Nから3フレーム後で、かつ、RS1とRS2用の無線帯域が割り当てられている無線フレームになるので、FN=N+7になる。FN=N+7でRS1に中継されたデータが最速でBSにUL送信できるのは、前述と同様な制約により、FN=N+10になる。
スケジューラ部は各装置の無線転送制約時間に合わせて無線帯域割り当てを計算すべきであるが、説明を簡単にするために、グローバル周期に無線多段中継が1ホップ転送されるという制約で以下の説明を行う。
図24では、BSから末端RSのRS3までの無線多段中継について示しており、RSが受信したデータを送信するまでの遅延時間は、図23と同様とする。
このように、グローバル周期内で各無線装置への帯域割り当ての順番が異なると、遅延時間は多少変化するが、1つのグローバル周期内で最低無線多段中継が1ホップ行われるという部分では、BSから末端RSへの無線中継でも末端RSからBSへの無線中継でも変わらない。
図25は、BSと各RSとの無線通信に必要となる無線帯域要求量が等しい場合の無線帯域割り当てについて示しており、BSに近い側の無線リンクへの無線帯域割り当て量が多くなる配分となっている。この場合のグローバル周期は21フレームとなる。
・無線中継制約時間による無線多段中継の遅延時間が増大すること。
・下り方向と上り方向の無線多段中継の遅延時間に偏りが存在すること。
図23や図24の説明と同様に、無線転送制約時間が3フレームの場合、図25の無線フレーム番号(FN)=Nのときに、RS6からRS5へUL送信したデータを、RS5はFN=N+1、N+2の区間にRS4へUL送信することができず、次のグローバル周期でRS4へUL送信することになる。
分岐なしのネットワークトポロジで図25の無線帯域割り当てのようなケースでは、上記のケース以外はグローバル周期内でBSまで無線中継することが可能である。しかしながら、ある無線装置のUL受信からUL送信までの無線フレーム数が無線中継制約時間に満たない帯域割り当てがなされた場合には、無線中継するには次のグローバル周期まで待たなければならない。つまり、1つのグローバル周期で1ホップしか転送できないことを意味する。
図25の無線帯域割り当てにおいて、BSから末端RSまでの無線多段中継について考えると、図より明らかであるが、1つのグローバル周期に対して1ホップしか転送できない。この遅延時間は無線転送制約時間が0フレームであっても短縮することができない。
まず全体的な説明をすると、グローバル周期は、図25と同じ21フレームで、グローバル周期内の各無線リンクへの無線帯域割り当てのフレーム数も同じである。
図25と図26の違いは、グローバル周期内の各無線装置への無線帯域割り当ての順番が変更となっている点である。
このように、連続する無線多段中継をグローバル周期の前半と後半に分けることで、BSから末端RS方向への無線多段中継と、逆方向である末端RSからBS方向への無線多段中継が、両方向とも1つのグローバル周期で2ホップ転送することが可能となる。
前述のとおり、本発明のシステムでは、時間によりシステム環境が変化していく中で、無線帯域割り当て情報もそれに対応して変化させていく必要がある。システム環境の変化に応じて無線帯域割り当てを適応させるために、以下の3つの段階を経て、無線帯域割り当てを更新する。これらの手順を、図27を用いて説明する。
一つ目の手順は、全無線装置から無線帯域要求量をスケジューラ部まで収集する手順である。図27では区間1に対応している。
二つ目の手順は、一つ目の手順で収集された無線帯域要求量に基づき、無線帯域割り当て情報を計算する手順である。図27では区間2に対応している。
三つ目の手順は、二つ目の手順で計算した無線帯域割り当て情報を全無線装置に配信する手順である。図27では区間3に対応している。
つまり、ネットワーク周期内のグローバル周期の繰り返し回数は、前述の区間1から区間3までのグローバル周期数を合計した値となる。
本発明のセンシング機能とは、個々の無線装置が無線接続可能なすべての無線装置を見つけ出し、スケジューラ部が接続可能なすべての無線装置同士の組み合わせの中から、最適なネットワークトポロジを選択し、反映する機能である。
・他局のDL信号を受信し、データを取得する動作(センシング処理)
・取得したデータ(以降、センシングデータと呼ぶ)のスケジューラ部への通知
・収集したセンシングデータを用いた無線接続形態の最適化
前述のとおり、各無線装置には、グローバル周期内に自局の上位RSとの通信用割り当て帯域と下位RSとの通信用割り当て帯域が配置されるが、それ以外の部分は、他局同士が無線通信していることになる。そこで全無線装置が、自局用割り当て帯域以外で、他局が送信するDL信号を受信する。
DL信号にはMAP情報が含まれており、その中には無線装置識別子が格納されている。このため、DL信号を受信し、MAP情報を正常に解析できた場合は、DL信号を送信した無線装置を識別できるということになる。このように、自局への無線帯域割り当てがない無線フレームで他局のDL信号を受信し、MAP情報を解析する処理を、本発明ではセンシング処理とよぶ。
前述の帯域要求情報のスケジューラ部への通知と同様に、各無線装置は、取得したセンシング情報を自局に割り当てられた無線帯域での無線通信により、無線多段中継でスケジューラ部まで通知する。
前述の無線帯域割り当て情報とグローバル周期の関係から、センシング処理によって同じ無線装置のDL信号を取得することが想定される。そこで、同じ無線装置からのDL信号によって取得したセンシングデータは、1つにまとめたり、RSSIやCINR等は平均値を通知したり、最大値や最小値を通知するなど、各無線装置内で膨大になったセンシングデータを集約して通知してもよい。
無線接続形態の最適化については、以下の2点について説明する。
・ネットワークトポロジの最適化
・無線帯域の再利用(以降、リソースリユースと呼ぶ)による最適化
無線多段中継のシステムにおいては、BSが基準となる通信を開始した後、BS配下から順次、RSが無線接続していき、多段中継の分岐を交えつつ、多段中継数を延伸しながらネットワーク規模を拡大していく。また、無線接続の分岐数には、装置としての制約や、各種無線プロトコルとしての制約が存在することもあり、必ずしも多段中継数の少ない装置を自局の上位RSとして接続できないケースも発生する。
そして、前述のような最適な状態ではないネットワークトポロジを見直し、最適化するために、前述のセンシングデータを用いてネットワークトポロジの再構築を行い、ネットワーク全体としての性能である遅延短縮やスループット増大を図るのが、本発明のセンシング機能である。
前述のとおり、スケジューラ部に全無線装置からのセンシングデータが収集されていることを前提とすると、スケジューラ部は、各無線装置の周辺にそれぞれDL信号のMAP情報の解析が可能な他局がどのくらい存在するのかを把握できる状態にある。また、MAP解析可否以外に、RSSIやCINRの情報を把握できている。
このように、通信中に集計したセンシングデータによりネットワークトポロジの再構築を行うことで、常にネットワーク全体として最適な状態を維持することが可能となる。
図29は、図18と同じ無線装置配置であり、それぞれ実線と破線で無線接続の有無と無線接続の可否について示している。図30は、図29において実線で示した無線接続における無線帯域割り当てについて示している。
図29から明らかなように、BSから末端RSのRS2まで分岐なしのネットワークトポロジになっており、図30のグローバル周期も、BSから末端RSまで1フレームずつ順番に割り当てた形になっている。ここで最適化すべきポイントは、ネットワーク全体のシステム容量と遅延時間である。
この場合には、前記のセンシング情報がスケジューラ部まで収集できている場合には、破線の部分で無線接続できることが認識でき、さらに、各無線装置のBSまでのホップ数が計算できるので、ネットワークトポロジを変更することになる。
図31に示されるように、ネットワークトポロジの変更後は、RS2、RS4、RS5、RS6の上位RSが切替わっている。RS2とRS6は変更前から無線接続しているが、上位RSと下位RSの関係が逆転している。
このように図29から図31のネットワークトポロジに変更することで、BSから各無線装置のホップ数が最大で2ホップとなり、無線多段中継による無線帯域と遅延時間の浪費を抑えることが可能となる。
これまでは、無線帯域割り当ての方式として、ある無線フレームには1つの無線リンクのみに使用許可を与えるような帯域割り当てを行い、他の無線装置はその無線フレームでの無線通信を禁止することで、互いの無線通信の干渉を回避する仕組みについて説明してきた。しかしながら、各無線装置の位置関係や周辺の環境によっては、互いの無線信号が干渉し合わないケースも存在するため、互いに干渉し合わない無線リンク同士に同じ無線フレームを割り当てることで、無線帯域を有効利用する機能がリソースリユースの概要である。
図35は、リソースリユース適用前の無線帯域割り当てを示しており、BSから末端RSであるRS5までは1フレームずつ順番に無線帯域が割り当てられている。グローバル周期は5フレームである。
図36は、リソースリユース適用後の無線帯域割り当てを示しており、図35からの変化した部分に注目すると、BSからRS4までは1フレームずつ順番に無線帯域が割り当てられているが、RS4とRS5との通信用の無線帯域には無線フレーム番号(FN)=N、N+4が割り当てられている。つまり、FN=NとN+4は、BSとRS1、およびRS4とRS5の2つの無線リンクで同時に無線受信を行うことを表している。その結果、グローバル周期は図35のときよりも1フレーム減り、4フレームとなっている。前述のとおり、グローバル周期が短くなることで、システム容量の増大と無線送信遅延の短縮効果が向上する。
このような構成によれば、従来のセグメント方式やIEEE802.16j中継方式よりも多くの段数の無線中継を効率よく行うことができる。
また、本発明は、上述した処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
Claims (7)
- 無線装置である基地局と移動局とを備えた無線通信システムにおいて、
基地局側から移動局側に向かう無線データ伝送の方向を下り方向とし、
移動局側から基地局側に向かう無線データ伝送の方向を上り方向とし、
1回の下り方向の無線データ伝送と1回の上り方向の無線データ伝送とを1つの無線フレームで行い、
前記移動局は、前記基地局と直接的に無線接続され、または、中継局として動作する1以上の他の移動局による無線中継を介して前記基地局と間接的に無線接続され、
無線フレームを繰り返すことで複数段の無線中継を行うとともに、
無線装置のそれぞれに対する無線フレームの割り当て数を計算するスケジューラ部を備え、
各無線装置は、それぞれのユーザデータを送信するために必要な無線帯域量を含む無線帯域要求量情報を前記スケジューラ部に通知し、
前記スケジューラ部は、システム内の全ての無線装置から通知される無線帯域要求量情報に基づいて、無線装置のそれぞれに対する無線フレームの割り当て数を計算し、各無線装置に対する無線フレームの割り当て数をシステム内の全ての無線装置に配信し、
各無線装置は、自身に割り当てられた無線フレーム以外の期間において、他の無線装置に割り当てられた無線フレーム内の下り方向の無線伝送区間の信号を受信し、該信号に基づいて測定される無線品質情報と、該信号に含まれる送信元の無線装置の識別情報とを含む測定情報を前記スケジューラ部に送信し、
前記スケジューラ部は、各無線装置から送信された前記測定情報に基づいて、システム内の全部の無線装置についてネットワーク全体のシステム容量と遅延時間を最適化した接続形態を計算し、該計算結果に基づいて、一部または全部の無線装置に対して無線接続の切断および再接続を指示することを特徴とする無線通信システム。 - 請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
無線中継の段数が同じ複数の無線接続で1つの無線フレームを共用し、該無線フレームの下り方向の無線データ伝送区間と上り方向の無線データ伝送区間とをそれぞれ分割して各無線接続に割り当てることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項1または請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
各無線装置が、無線フレームの開始タイミングを衛星測位システムから取得される1秒周期の基準信号と同期させることで、システム内の全ての無線装置で無線フレームの開始タイミングを同期させることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項1または請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
各無線装置が、無線フレーム内の上り方向の無線伝送区間の送信タイミングの調整に用いられるタイミング調整値を用いて、無線フレームの開始タイミングを調整することで、システム内の全ての無線装置で無線フレームの開始タイミングを同期させることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記スケジューラ部は、各無線装置に対する無線フレームの割り当て数を最小化した割り当てパターンを生成し、
各無線装置は、前記割り当てパターンを繰り返して適用することを特徴とする無線通信システム。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記スケジューラ部は、各無線装置から送信された前記測定情報に基づいて、互いの無線フレームの信号が干渉し合わない複数の無線接続に対して共通の無線フレームを割り当てることを特徴とする無線通信システム。 - 無線装置である基地局と移動局とにより行われる無線通信方法において、
基地局側から移動局側に向かう無線データ伝送の方向を下り方向とし、
移動局側から基地局側に向かう無線データ伝送の方向を上り方向とし、
1回の下り方向の無線データ伝送と1回の上り方向の無線データ伝送とを1つの無線フレームで行い、
前記移動局は、前記基地局と直接的に無線接続され、または、中継局として動作する1以上の他の移動局による無線中継を介して前記基地局と間接的に無線接続され、
無線フレームを繰り返すことで複数段の無線中継を行うとともに、
各無線装置は、それぞれのユーザデータを送信するために必要な無線帯域量を含む無線帯域要求量情報を、無線装置のそれぞれに対する無線フレームの割り当て数を計算するスケジューラ部に通知し、
前記スケジューラ部は、システム内の全ての無線装置から通知される無線帯域要求量情報に基づいて、無線装置のそれぞれに対する無線フレームの割り当て数を計算し、各無線装置に対する無線フレームの割り当て数をシステム内の全ての無線装置に配信し、
各無線装置は、自身に割り当てられた無線フレーム以外の期間において、他の無線装置に割り当てられた無線フレーム内の下り方向の無線伝送区間の信号を受信し、該信号に基づいて測定される無線品質情報と、該信号に含まれる送信元の無線装置の識別情報とを含む測定情報を前記スケジューラ部に送信し、
前記スケジューラ部は、各無線装置から送信された前記測定情報に基づいて、システム内の全部の無線装置についてネットワーク全体のシステム容量と遅延時間を最適化した接続形態を計算し、該計算結果に基づいて、一部または全部の無線装置に対して無線接続の切断および再接続を指示することを特徴とする無線通信方法。
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