以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、車室内に設置された音場再現システムを例に取り説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る音場再現システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る音場再現システム1は、車室内に設置された複数のスピーカから放出される複数種類の音情報の音圧が車室内の各制御点で所望の値となるように、各スピーカから出力されるオーディオ信号(音情報を再現する信号)の音圧を制御し、車室内という聴取環境において所望の音場を再現するシステムである。
図1に示されるように、音場再現システム1は、音場再現装置100及び複数のスピーカSPを備えている。音場再現装置100は、制御部102、表示部104、操作部106、測定用信号発生部108、チャンネル選択部110、D/Aコンバータ112、パワーアンプ114、マイクアンプ116、A/Dコンバータ118、記憶部120、係数演算部122、信号処理部124及びゲイン部126を備えている。なお、図1では、図面の複雑化を避ける都合上、制御部102と他の構成要素との結線を適宜省略している。
複数種類の音情報は、音源そのものが異なる複数の音情報を意味しており、例えばナビゲーション機器による音声ガイダンス、オーディオ機器による楽曲、ラジオ放送、音場再現装置100と無線接続された情報処理端末(タブレット、スマートフォン等)による電話音声やインターネット上の音声、ミックス音情報等のうち少なくとも2つの音情報を含む。ミックス音情報とは、複数の音情報をミックスした音源(例えば音声ガイダンスと楽曲をミックスしたもの)である。なお、複数台の情報処理端末の夫々による音声など、同種の機器による音情報ではあるが音源が異なる音情報も、複数種類の音情報に含まれる。
音場再現システム1によって再現される音場は、車室内という閉空間に配置された複数の聴取エリアの夫々において複数種類の音情報のうちの1つを独立して聴取することを可能とする音場である。本実施形態では、複数の聴取エリアは、運転席や助手席、後部座席など、車室内の各座席である。音場再現システム1によれば、例えば、運転席では実質的に音声ガイダンスのみが聞き取れるようにすると共に後部座席では実質的に楽曲のみが聴こえるようにする音場を再現することが可能となる。
なお、音場再現システム1における各種処理は、音場再現システム1に備えられるソフトウェアとハードウェアとが協働することにより実行される。音場再現システム1に備えられるソフトウェアのうち少なくともOS(Operating System)部分は、組み込み系システムとして提供されるが、それ以外の部分、例えば、音場測定や音場再現を実行するためのソフトウェアモジュールについては、ネットワーク上で配布可能な又はメモリカード等の記録媒体にて保持可能なアプリケーションとして提供されてもよい。すなわち、本実施形態に係る音場測定機能や音場再現機能は、音場再現システム1に予め組み込まれた機能であっても、ネットワーク経由や記録媒体経由で追加可能な機能であってもよい。
音場再現装置100には、再生装置200が接続されている。再生装置200は、例えばナビゲーション機器やオーディオ機器、タブレット、スマートフォン等の情報処理端末である。図1では、再生装置200は1台の装置として示しているが、複数台あってもよい。音場再現装置100には、再生装置200から出力された音声ガイダンス、楽曲、電話音声、ラジオ放送、インターネット上の音声等の複数種類の音情報が入力される。
図2(a)に、車室内に配置された複数の聴取エリア(破線で囲われたエリアであり、言い換えると座席)を示す。運転席、助手席、右後部座席、左後部座席の各聴取エリアに、それぞれ符号「C_FR」、「C_FL」、「C_RR」、「C_RL」を付す。
図2(b)に、各スピーカSPの設置位置及び車室内に設定された各制御点の位置を示す。運転席の右方のドア部に設置されたスピーカSPに符号「S_FR」を付し、助手席の左方のドア部に設置されたスピーカSPに符号「S_FL」を付し、右後部座席の右方のドア部に設置されたスピーカSPに符号「S_RR」を付し、左後部座席の左方のドア部に設置されたスピーカSPに符号「S_RL」を付す。
このように、各スピーカS_FR、S_FL、S_RR、S_RLは、各聴取エリア外にあるドア部に設置されており、音場再現システム1において複数の聴取エリアの夫々において複数種類の音情報のうちの1つを独立して聴取することを可能とする音場を再現する際には、低域及び中高域を放出する。本実施形態では、スピーカS_FR、S_FL、S_RR、S_RLを聴取エリア外に設置しているが、別の実施形態では、スピーカS_FR、S_FL、S_RR、S_RLを聴取エリア内に設置してもよい。
スピーカS_FR、S_FL、S_RR及びS_RLは、第1フィルタを通過した複数種類の音情報と第2フィルタを通過した複数種類の音情報のうち、少なくとも前者の音情報を複数のエリアに放出する(詳しくは後述)複数の第1スピーカの具体的一例である。以下、これらのスピーカS_FR、S_FL、S_RR及びS_RLをまとめて「第1スピーカ群」と記す。
運転席のヘッドレストの右寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_FRr」を付し、運転席のヘッドレストの左寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_FRl」を付し、助手席のヘッドレストの右寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_FLr」を付し、助手席のヘッドレストの左寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_FLl」を付し、右後部座席のヘッドレストの右寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_RRr」を付し、右後部座席のヘッドレストの左寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_RRl」を付し、左後部座席のヘッドレストの右寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_RLr」を付し、左後部座席のヘッドレストの左寄りの位置に設置されたスピーカSPに符号「S_RLl」を付す。
このように、各スピーカS_FRr、S_FRl、S_FLr、S_FLl、S_RRr、S_RRl、S_RLr及びS_RLlは、各聴取エリア外にあるヘッドレストに設置されており、音場再現システム1において複数の聴取エリアの夫々において複数種類の音情報のうちの1つを独立して聴取することを可能とする音場を再現する際には、中高域を放出する。本実施形態では、スピーカS_FRr、S_FRl、S_FLr、S_FLl、S_RRr、S_RRl、S_RLr及びS_RLlを聴取エリア外に設置しているが、別の実施形態では、スピーカS_FRr、S_FRl、S_FLr、S_FLl、S_RRr、S_RRl、S_RLr及びS_RLlを聴取エリア内に設置してもよい。
スピーカS_FRr、S_FRl、S_FLr、S_FLl、S_RRr、S_RRl、S_RLr及びS_RLlは、第2フィルタを通過した複数種類の音情報を複数のエリアに放出する(詳しくは後述)複数の第2スピーカの具体的一例である。以下、これらのスピーカS_FRr、S_FRl、S_FLr、S_FLl、S_RRr、S_RRl、S_RLr及びS_RLlをまとめて「第2スピーカ群」と記す。
音場再現システム1では、各聴取エリアに3つずつ、計12個の制御点が設定される。具体的には、各聴取エリアの中心位置に1つの制御点が設定されると共に、各聴取エリアに座った聴取者の左右の耳元近傍の位置に一対の制御点が設定される。なお、この一対の制御点の位置は、例えば音場再現システム1を設計する設計者が人間の体格等に関する統計的な情報に基づいて決めた位置である。
以下、運転席、助手席、右後部座席、左後部座席の各中心位置に設定される制御点に、それぞれ符号「M_FR」、「M_FL」、「M_RR」、「M_RL」を付す。これらの制御点M_FR、M_FL、M_RR、M_RLを「第1制御点」と総称する。第1制御点は、低域を対象とする制御点である。第1制御点では、各スピーカSPから複数種類の音情報が放出されると、複数種類の音情報のうち低域部分について所望の音圧が得られる。
本実施形態では、複数種類の音情報の低域部分は、第1スピーカ群のみから放出される。従って、第1スピーカ群及び第2スピーカ群のうち、第1スピーカ群のみが各聴取エリアの第1制御点の設定に寄与する。
また、運転席に座る聴取者の右、左の各耳元近傍の位置に設定される制御点にそれぞれ符号「M_FRr」、「M_FRl」を付し、助手席に座る聴取者の右、左の各耳元近傍の位置に設定される制御点にそれぞれ符号「M_FLr」、「M_FLl」を付し、右後部座席に座る聴取者の右、左の各耳元近傍の位置に設定される制御点にそれぞれ符号「M_RRr」、「M_RRl」を付し、左後部座席に座る聴取者の右、左の各耳元近傍の位置に設定される制御点にそれぞれ符号「M_RLr」、「M_RLl」を付す。これらの制御点M_FRr、M_FRl、M_FLr、M_FLl、M_RRr、M_RRl、M_RLr及びM_RLlを「第2制御点」と総称する。第2制御点は、中高域を対象とする制御点であり、第1制御点よりも数が多い。第2制御点では、各スピーカSPから複数種類の音情報が放出されると、複数種類の音情報のうち中高域部分について所望の音圧が得られる。
本実施形態では、複数種類の音情報の中高域部分は、第1スピーカ群及び第2スピーカ群から放出される。従って、第1スピーカ群及び第2スピーカ群の全てが各聴取エリアの第2制御点の設定に寄与する。
このように、複数種類の音情報の中高域部分を放出するスピーカSPは、複数種類の音情報の低域部分を放出するスピーカSPよりも数が多く、また、第2制御点の設定に寄与するスピーカSPは、第1制御点の設定に寄与するスピーカSPよりも数が多い。
本実施形態では、第1スピーカ群のみが複数種類の音情報の低域部分を放出し、第1スピーカ群及び第2スピーカ群の両方が複数種類の音情報の中高域部分を放出しているが、本発明はこれに限らない。一例として、第1スピーカ群のみが複数種類の音情報の低域部分を放出し、第2スピーカ群のみが複数種類の音情報の中高域部分を放出するように構成してもよい。この場合も、複数種類の音情報の中高域部分を放出するスピーカSPは、複数種類の音情報の低域部分を放出するスピーカSPよりも数が多く、また、第2制御点の設定に寄与するスピーカSPは、第1制御点の設定に寄与するスピーカSPよりも数が多い。
第1制御点及び第2制御点において所望の音圧が得られていれば、少なくとも各聴取エリア内の全域で所望の音場が再現される。なお、制御点(言い換えると、後述のマイクロフォンMIC)は、各聴取エリアを取り囲むようなレイアウトで配置されてもよい。
制御点の位置や数を変えることにより、聴取エリアの位置や形状、サイズを任意に変えることができる。
車室内で所望の音場を再現するため(言い換えると、車室内の各制御点で所望の音圧が得られるようにするため)、まずは、音場測定を行う必要がある。音場測定を行うに際し、車室内の各制御点にマイクロフォンMICが設置される。
本実施形態では、各座席の中心位置(第1制御点)に1つのマイクロフォンMICが設置され、各座席のヘッドレストの所定位置(第2制御点)に一対のマイクロフォンMICが設置される。座席数が4つあるため、車室内には計12個のマイクロフォンMICが設置される。
周波数が高いほど、例えば聴取者の頭部が設計上想定する位置からずれたときに聴取者に聴取される音情報の位相ずれが大きくなる。そこで、本実施形態では、中高域を対象とする第2制御点での音圧の精度を(低域を対象とする第1制御点での音圧の精度よりも優先して)向上させるため、第2制御点が第1制御点よりも多く設定されている。具体的には、本実施形態では、第1制御点が4つ設定されているのに対し、第2制御点が8つ設定されている。
図3は、本発明の一実施形態に係る音場再現システム1において実行される音場測定処理のフローチャートを示す図である。本フローチャートに示される音場測定処理をはじめとする、音場再現システム1内での各種処理は、制御部102の制御下で実行される。制御部102は、表示部104に対する所定のタッチ操作又は操作部106に対する所定の操作を受けると、音場測定条件の入力画面を表示部104に表示する。これにより、本フローチャートに示される音場測定処理が開始される。
表示部102に表示された入力画面に対してユーザによる音場測定条件の入力が行われると、入力された音場測定条件が設定される(ステップS11)。ここで入力される音場測定条件は、例えばチャンネル数(又は測定対象のスピーカの指定)である。本実施形態に係る音場再現システム1には12個のスピーカが搭載されているため、入力可能なチャンネル数は最大「12」である。本実施形態では、12のチャンネル数が入力されたものとして説明を行う。
スピーカSPから不要な音情報が出力される不都合を避けるため、ゲイン部126において信号処理部124からの出力信号がミュートされる(ステップS12)。
信号処理部124からの出力信号がミュートされると、チャンネル選択部110において測定対象のスピーカSPに対応するチャンネルが設定される(ステップS13)。
測定対象のスピーカSPに対応するチャンネルが設定されると、測定用信号発生部108において所定の測定用信号が発生される(ステップS14)。測定用信号は、例示的には、M系列符号(Maximal length sequence)やTSP信号(Time Stretched Pulse)であり、チャンネル選択部110、D/Aコンバータ112及びパワーアンプ114を介して測定対象のスピーカSPから音場測定用音として放出される。
測定対象のスピーカSPから放出された音場測定用音は、車室内の全てのマイクロフォンMICで収音されて、マイクアンプ116及びA/Dコンバータ118を介して記憶部120に入力される。記憶部120では、インパルス応答が演算されて記憶される(ステップS15)。インパルス応答は、例えば、入力された音場測定用音とリファレンスの測定用信号(TSP信号等)を時間軸上で逆転させた逆特性のリファレンス信号をフーリエ変換して周波数上で乗算し、乗算された値を逆フーリエ変換することで求まる。
ステップS16では、全てのチャンネル(スピーカSP)についてインパルス応答を記憶したか否かが判定される。インパルス応答の記憶が完了していないチャンネルが残っていると(ステップS16:NO)、本フローチャートの処理はステップS13に戻る。
ステップS13~S15の処理は、ステップS13にて設定されたチャンネル毎に実行される。本実施形態では、スピーカSPが12個設定されているため、ステップS13~S15の処理は12回繰り返される。全てのチャンネルについてステップS13~S15の処理が実行されると(ステップS16:YES)、ゲイン部126によるミュートが解除されて(ステップS17)、本フローチャートに示される音場測定処理が終了する。
別の実施形態では、再生装置200が測定用信号を発生させてもよい。この場合、信号処理部124及びゲイン部126を機能させることなく信号処理部124及びゲイン部126にて測定用信号がスルー出力されて、測定対象のスピーカSPから音場測定用音として放出される。
図4(a)、図4(b)に、聴取エリアC_FR内(運転席)の制御点M_FRに設置されたマイクロフォンMICで収音されたスピーカ(低域を対象とする第1制御点である制御点M_FRに対応する第1スピーカ)毎のインパルス応答(リニアスケール)、インパルス応答(デシベルスケール)をそれぞれ示す。図4(c)に、制御点M_FRに設置されたマイクロフォンMICで収音されたスピーカ毎のインパルス応答の振幅特性(周波数応答)を示す。この周波数応答は、例えば信号処理部124のFFT(Fast Fourier transform)部124A(後述)がインパルス応答をフーリエ変換することによって求まるものである。
図4(a)中、縦軸は正規化された振幅(Amplitude)を示し、横軸は時間(Time(単位:s))を示す。図4(b)中、縦軸はパワー(Power(単位:dB))を示し、横軸は時間(Time(単位:s))を示す。図4(c)中、縦軸はパワー(Power(単位:dB))を示し、横軸は周波数(Frequency(単位:Hz))を示す。Powerは、振幅を自乗したものである。また、人間の聴覚特性は、周波数に対して対数的である。図4(c)の横軸は、人間の聴覚特性に合わせて対数表示となっている。図5(a)~図5(c)に、制御点M_FRlについて図4(a)~図4(c)と同様の図を示す。図6(a)~図6(c)に、制御点M_FRrについて図4(a)~図4(c)と同様の図を示す。附言するに、図5(a)~図5(c)及び図6(a)~図6(c)では、中高域を対象とする第2制御点である制御点M_FRl及び制御点M_FRrに対応する第1スピーカ毎及び第2スピーカ毎のインパルス応答及びその振幅特性を示す。
図7は、信号処理部124の構成を示すブロック図である。図7に示されるように、信号処理部124は、FFT部124A、多点音圧制御部124B、IFFT(Inverse Fast Fourier transform)部124C及びEQ(Equalizer)部124Dを備えている。
再生装置200より入力される複数種類の音情報の夫々のオーディオ信号は、FFT部124Aによって時間領域から周波数領域に変換されて、多点音圧制御部124Bに出力される。多点音圧制御部124Bに入力した周波数領域のオーディオ信号は、各聴取エリアで複数種類の音情報のうちの1つを独立して聴取することを可能とするフィルタリングが施される。多点音圧制御部124Bにてフィルタリングされたオーディオ信号は、IFFT部124Cにより周波数領域から時間領域に変換されて、EQ部124Dに出力される。EQ部124Dに入力したオーディオ信号は、イコライザ処理されて、ゲイン部126に出力される。
なお、多点音圧制御部124Bにおいて周波数領域での乗算によるフィルタリングが行われることから、FFT部124AによるFFT及び後段のIFFT部124CによるIFFTは、線形畳み込みを考慮した演算内容となっている。
図8は、多点音圧制御部124Bの構成を示すブロック図である。図8に示されるように、多点音圧制御部124Bは、第1フィルタリング部124Ba、第1ゲイン部124Bb、第2フィルタリング部124Bc、第2ゲイン部124Bd、非制御帯域フィルタリング部124Be、セレクタ部124Bf、第3ゲイン部124Bg、チャンネル連結部124Bh及び加算部124Biを備えている。
FFT部124Aより出力された周波数領域のオーディオ信号は、第1フィルタリング部124Ba、第2フィルタリング部124Bc及び非制御帯域フィルタリング部124Beに入力される。第1フィルタリング部124Baは、オーディオ信号の低域部分を通過させ、第2フィルタリング部124Bcは、オーディオ信号の中高域部分を通過させ、非制御帯域フィルタリング部124Beは、オーディオ信号の非制御帯域(第1フィルタリング部124Baの通過帯域以外でかつ第2フィルタリング部124Bcの通過帯域以外の帯域)を通過させる。
第1フィルタリング部124Ba及び第2フィルタリング部124Bcのフィルタ伝達関数は、係数演算部122によって演算される。
再現したい音場において車室内の各制御点Miで再現される音情報のオーディオ信号を「Xi(ω)」と記し、実際の再生音場において車室内の各制御点Mk(k=1~M)で再現される音情報のオーディオ信号を「Yk(ω)」と記す。系が因果性を満たす線形な位相遅れ∠φ(ω)を導入すると、再現したいオーディオ信号Xi(ω)と再現されるオーディオ信号Yk(ω)との関係は、次式1で示される。なお、系(システム)に対する入力は何かしらの遅延を持って系から出力される。音情報が各制御点に異なる遅延を持って到達すると、各制御点で観測される音情報は本来再現したい音情報とはもはや別のものとなってしまう一方、音情報が各制御点に一様な遅延を持って到達すると、各制御点で観測される音情報は再現したい音情報と同じとみなすことができる。本実施形態では、後者の一様な遅延を「系が因果性を満たす線形な位相遅れ」と表現する。
再生音場においてオーディオ信号Xi(ω)をMN個のフィルタGij(ω)で処理するものとし、スピーカSPj(j=1~N)と制御点Mk(k=1~M)間の空間伝達関数をHjk(ω)とすると、制御点Mkで再現される音情報のオーディオ信号Xk(ω)∠φ(ω)は、次式2で示される。
オーディオ信号Xi(ω)、位相遅れ∠φ(ω)及び空間伝達関数Hjk(ω)は何れも既知である。具体的には、オーディオ信号Xi(ω)は、制御点での目標値(制御点で再現したい信号)である。位相遅れ∠φ(ω)は、例えば音場再現システム1を提供するメーカ等の業者が試験等の結果に基づいて予め決めた値である。空間伝達関数Hjk(ω)は、図4(c)等に例示されるインパルス応答の振幅特性である。空間伝達関数Hjk(ω)とインパルス応答の振幅特性は厳密には異なるが、本実施形態では同一視しても実質的に差し支えが無いため、インパルス応答の振幅特性を空間伝達関数Hjk(ω)とみなしている。
オーディオ信号Xi(ω)、位相遅れ∠φ(ω)及び空間伝達関数Hjk(ω)が既知であることから、係数演算部122は、上記式2からフィルタ伝達関数であるフィルタGij(ω)を演算することができる。係数演算部122によって演算されたフィルタGij(ω)は、記憶部120に記憶される。
本実施形態では、2種類の音情報のオーディオ信号が再生装置200から音場再現装置100に入力される。以下、2種類の音情報の夫々を音情報Src1、Src2と記す。本実施形態では、例示として、運転席及び助手席では実質的に音情報Src1のみが聴取できると共に右後部座席及び左後部座席では実質的に音情報Src2のみが聴取できる音場を再現するものとする。この場合において、低域を対象とする第1制御点M_FR、M_FL、M_RR、M_RLについて上記式2を適用すると、次式3に示される通りである。なお、ユーザは、操作部106を操作することにより、どの座席でどの音情報を独立して聴取できるようにするか(すなわち再現対象の音場)を任意に指定することができる。
記憶部120には、例えば上記式3を用いて演算されたフィルタGij(ω)が記憶されている。以下、便宜上、上記式3で例示されるフィルタGij(ω)、すなわち、低域を対象とする第1制御点M_FR、M_FL、M_RR、M_RLについて演算して求められたフィルタGij(ω)を「低域用フィルタGij(ω)」と記す。
記憶部120には、低域用フィルタGij(ω)と対となる中高域用フィルタGij(ω)も記憶されている。「中高域用フィルタGij(ω)」は、中高域を対象とする第2制御点M_FRr、M_FRl、M_FLr、M_FLl、M_RRr、M_RRl、M_RLr及びM_RLlについて演算して求められたフィルタGij(ω)である。本実施形態では、対となる低域用フィルタGij(ω)、中高域用フィルタGij(ω)が、それぞれ、第1フィルタリング部124Ba、第2フィルタリング部124Bcに適用されることにより、運転席及び助手席では実質的に音情報Src1のみが聴取できると共に右後部座席及び左後部座席では実質的に音情報Src2のみが聴取できる音場を再現することが可能となる。
記憶部120には、再現対象の音場毎(例えば運転席及び助手席では実質的に音情報Src1のみが聴取できると共に右後部座席及び左後部座席では実質的に音情報Src2のみが聴取できる音場、運転席及び助手席では実質的に音情報Src2のみが聴取できると共に右後部座席及び左後部座席では実質的に音情報Src1のみが聴取できる音場など)に、対となる低域用フィルタGij(ω)と中高域用フィルタGij(ω)の組が記憶されている。制御部102の制御下で、複数組の中から、操作部106によって指定された音場に対応する低域用フィルタGij(ω)と中高域用フィルタGij(ω)の組が選択され、選択された低域用フィルタGij(ω)、中高域用フィルタGij(ω)がそれぞれ第1フィルタリング部124Ba、第2フィルタリング部124Bcに適用される。
第1フィルタリング部124Baは、一例として、30Hz以上200Hz未満のオーディオ信号を通過させる。第2フィルタリング部124Bcは、一例として、200Hz以上4000Hz未満のオーディオ信号を通過させる。非制御帯域フィルタリング部124Beは、一例として、4000Hz以上のオーディオ信号を通過させる。上記の通り、第1フィルタリング部124Ba及び第2フィルタリング部124Bcでは、系が因果性を満たす線形な位相遅れを考慮していることから、非制御帯域フィルタリング部124Beを通過するオーディオ信号にも、第1フィルタリング部124Ba、第2フィルタリング部124Bcを通過するオーディオ信号と同等の遅延が与えられる。
第1フィルタリング部124Baを通過した低域のオーディオ信号は、第1ゲイン部124Bbにて増幅される。第1ゲイン部124Bbには、第1スピーカ群の各スピーカSPに対応する4チャンネルの出力端が設けられている。4チャンネル分の低域のオーディオ信号は、チャンネル連結部124Bhに入力される。
第2フィルタリング部124Bcを通過した中高域のオーディオ信号は、第2ゲイン部124Bdにて増幅されて、加算部124Biに入力される。第2ゲイン部124Bdには、第1スピーカ群、第2スピーカ群の各スピーカSPに対応する12チャンネルの出力端が設けられている。そのため、12チャンネル分の中高域のオーディオ信号が加算部124Biに入力される。
非制御帯域フィルタリング部124Beを通過した非制御帯域のオーディオ信号は、セレクタ部124Bfに入力される。セレクタ部124Bfは、各スピーカSPに対応したチャンネル設定を行う。例えば本実施形態では運転席において実質的に音情報Src1のみを聴取できる音場を再現するため、セレクタ部124Bfは、聴取エリアC_FR内(運転席)に設置されたスピーカS_FRr、S_FRlから音情報Src1のみが放出されるように出力をセレクトする。
セレクタ部124Bfより出力された非制御帯域のオーディオ信号は、第3ゲイン部124Bgに入力される。第3ゲイン部124Bgには8チャンネルの出力端が設けられており、各出力端は、第2スピーカ群の各スピーカSPに接続されている。8チャンネル分の非制御帯域のオーディオ信号は、チャンネル連結部124Bhに入力される。
チャンネル連結部124Bhでは、第1ゲイン部124Bbからの入力(4チャンネル分の低域のオーディオ信号)と、第3ゲイン部124Bgからの入力(8チャンネル分の非制御帯域のオーディオ信号)とが連結される。連結された12チャンネル分のオーディオ信号は、加算部124Biに入力される。すなわち、チャンネル連結部124Bhによる連結処理により、第2ゲイン部124Bdからの入力と同じく、12チャンネル分のオーディオ信号が加算部124Biに入力される。
第1ゲイン部124Bb、第2ゲイン部124Bd及び第3ゲイン部124Bgのゲイン値は、音場再現システム1を提供するメーカ等の業者が試験等の結果に基づいて予め決めた値であってもよく、ユーザが適宜設定した値であってもよい。第1ゲイン部124Bb、第2ゲイン部124Bd及び第3ゲイン部124Bgの各ゲイン値は、互いに同一の値であっても、それぞれ異なる値であってもよい。係数演算部122がこれらのゲイン値の係数を演算してもよい。
第1フィルタリング部124Baを通過した低域の4チャンネルのオーディオ信号には、第1ゲイン部124Bbによって同一のゲイン値でゲインがかけられる。これにより、各チャンネルの低域部分において、異なるゲイン値でゲインがかけられることによる相対的な振幅差が生じないため、低域部分に対して音質を劣化させることなく音量調整を行うことが可能となる。
第2フィルタリング部124Bcを通過した中高域の12チャンネルのオーディオ信号には、第2ゲイン部124Bdによって同一のゲイン値でゲインがかけられる。これにより、各チャンネルの中高域部分において、異なるゲイン値でゲインがかけられることによる相対的な振幅差が生じないため、中高域部分に対して音質を劣化させることなく音量調整を行うことが可能となる。
非制御帯域フィルタリング部124Beを通過した非制御帯域の各チャンネルのオーディオ信号には、第3ゲイン部124Bgによって同一のゲイン値でゲインがかけられる。これにより、各チャンネルの非制御帯域部分において音量調整を行うことが可能となる。
すなわち、第1ゲイン部124Bbは、第1フィルタを通過した、各スピーカに対応する複数種類の音情報(低域部分)を含むオーディオ信号に対して同一のゲイン値でゲインをかける第1ゲイン部として動作する。第2ゲイン部124Bdは、第2フィルタを通過した、各スピーカに対応する複数種類の音情報(中高域部分)を含むオーディオ信号に対して同一のゲイン値でゲインをかける第2ゲイン部として動作する。
加算部124Biにて低域、中高域及び非制御帯域の各帯域が加算された各チャンネルのオーディオ信号は、IFFT部124Cにより周波数領域から時間領域に変換されて、EQ部124Dに入力される。
EQ部124Dでは、例えばPEQ(Parametric Equalizer)を用いて、多点音圧制御帯域間(本実施形態では低域と中高域間)のオーディオ信号の干渉を抑制したり、多点音圧制御帯域外(非制御帯域であり、本実施形態では4000Hz以上)の音質調整が行われたりする。干渉抑制のため、本実施形態では、全てのチャンネル(スピーカSP)に対して同一のパラメータ値(中心周波数、ゲイン値、Q値であり、以下「PEQパラメータ値」と記す。)が適用される。少なくとも多点音圧制御帯域間で同一のPEQパラメータ値が適用されることにより、多点音圧制御帯域間での相対的な振幅差や位相差の発生が避けられて、少なくとも低域から高域に亘って音質の劣化を生じさせることなく、多点音圧制御帯域間のオーディオ信号の干渉が抑制される。
すなわち、EQ部124Dは、第1フィルタを通過した複数種類の音情報(低域部分)及び第2フィルタを通過した複数種類の音情報(中高域部分)を含むオーディオ信号に対して同一のPEQパラメータ値を用いてイコライザ処理するイコライザ部として動作する。
PEQパラメータ値は、音場再現システム1を提供するメーカ等の業者が試験等の結果に基づいて予め決めた値であってもよく、ユーザが適宜設定した値であってもよい。係数演算部122がPEQパラメータ値の係数を演算してもよい。
EQ部124Dより出力された各チャンネルのオーディオ信号は、ゲイン部126、D/Aコンバータ112及びパワーアンプ114を介して各チャンネルに対応するスピーカSPから音情報として放出される。
このように、多点音圧制御部124Bでのフィルタリング処理が施されたオーディオ信号が各スピーカSPから放出されることにより、運転席及び助手席では実質的に音情報Src1のみが聴取できると共に右後部座席及び左後部座席では実質的に音情報Src2のみが聴取できる音場が再現される。附言するに、位相ずれが生じやすい中高域について制御点(第2制御点)を、低域を対象とする第1制御点よりも多く設定することにより、音情報Src1及びSrc2の音圧を精度良く制御することができるため、上記の音場を精度良く再現することが可能となっている。
図9(a)及び図9(b)に、各スピーカSPから音情報Src1及びSrc2が放出されたときに聴取エリアC_FR内(運転席)の第1制御点M_FRで再現されるインパルス応答を示し、図9(c)及び図9(d)に、その振幅特性(周波数応答)を示す。図9では、チャンネル毎(音情報Src1のRチャンネル、Lチャンネル、音情報Src2のRチャンネル、Lチャンネル)のインパルス応答及びその振幅特性を示す。
図9(a)中、縦軸は正規化された振幅(Amplitude)を示し、横軸は時間(Time(単位:s))を示す。図9(b)中、縦軸はパワー(Power(単位:dB))を示し、横軸は時間(Time(単位:s))を示す。図9(c)中、縦軸はパワー(Power(単位:dB))を示し、横軸は周波数(Frequency(単位:Hz))を示す。図9(d)中、縦軸はサンプル数(Sample)を示し、横軸は周波数(Frequency(単位:Hz))を示す。図10(a)~図10(d)に、聴取エリアC_FR内(運転席)の第2制御点M_FRlについて図9(a)~図9(d)と同様の図を示す。図11(a)~図11(d)に、聴取エリアC_FR内(運転席)の第2制御点M_FRrについて図9(a)~図9(d)と同様の図を示す。
なお、図9~図11に示されるインパルス応答及びその振幅特性は、便宜上、第1ゲイン部124Bb、第2ゲイン部124Bd及び第3ゲイン部124Bgのゲイン値及びEQ部124DのPEQパラメータ値を考慮しないものとなっている。
図9(b)及び図9(c)から判るように、第1制御点M_FRでは、主に、音情報Src1の低域部分の音圧が高くなっている。一方、音情報Src2の低域部分の音圧は、音情報Src1の低域部分の音圧と比べて大幅に低くなっている。
図10(b)及び図10(c)並びに図11(b)及び図11(c)から判るように、第2制御点M_FRl及び第2制御点M_FRrでは、主に、音情報Src1の中高域部分の音圧が高くなっている。一方、音情報Src2の中高域部分の音圧は、音情報Src1の中高低域部分の音圧と比べて大幅に低くなっている。
そのため、聴取エリアC_FR内(運転席)では、実質的に音情報Src1のみを聴取することができる。なお、第2制御点M_FRrは、聴取エリアC_FR内にて、音情報Src1のLチャンネルよりもRチャンネルの方が音圧が高くなっている。第2制御点M_FRlは、聴取エリアC_FR内にて、音情報Src1のRチャンネルよりもLチャンネルの方が音圧が高くなっている。
図12に、音情報Src1及びSrc2のオーディオ信号の特性を示す。音情報Src1、Src2のオーディオ信号は、何れも2/3オクターブ毎にピークが現れる信号である。音情報Src1及びSrc2のオーディオ信号は、夫々のピークが1/3オクターブ毎に交互に現れるタイミングで各スピーカSPから放出される。図12(a)中、縦軸は正規化された振幅(Amplitude)を示し、横軸は時間(Time(単位:s))を示す。図12(b)中、縦軸はパワー(Power(単位:dB))を示し、横軸は周波数(Frequency(単位:Hz))を示す。
図13、図14は、それぞれ、音情報Src1及びSrc2が放出された時に聴取エリアC_FR(運転席)、聴取エリアC_RR(右後部座席)で得られる音響特性を示す。図13及び図14に示される音響特性は、パワー(Power(単位:dB))を縦軸にとり、周波数(Frequency(単位:Hz))を横軸にとる。
図13から判るように、聴取エリアC_FR(運転席)では、多点音圧制御帯域(低域から高域であり、本実施形態では30Hz以上4000Hz未満)において音情報Src1が音情報Src2よりも20dB以上大きい。そのため、聴取エリアC_FRでは、実質的に音情報Src1だけが聴取可能となっている。
図14から判るように、聴取エリアC_RR(右後部座席)では、多点音圧制御帯域において音情報Src2が音情報Src1よりも20dB以上大きい。そのため、聴取エリアC_RRでは、実質的に音情報Src2だけが聴取可能となっている。
多点音圧制御帯域外(非制御帯域)では、聴取エリアC_FR、C_RRの何れにおいても音情報Src1と音情報Src2間で音圧差が無い。但し、4000Hz以上の非制御帯域ではパワーが微弱である。そのため、聴取エリアC_FR(運転席)において4000Hz以上の音情報Src2が聴取者による音情報Src1の聴取を実質的に妨げることはなく、また、聴取エリアC_RR(右後部座席)において4000Hz以上の音情報Src1が聴取者による音情報Src2の聴取を実質的に妨げることはない。
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
上記の実施形態では、多点音圧制御帯域が30Hz以上4000Hz未満に設定されているが、多点音圧制御帯域はこれに限らない。例えばスピーカSPの設置数や制御点の設定数を増やすことにより、音圧を制御することが可能な帯域(すなわち多点音圧制御帯域)を拡げることができる。
図8に示される多点音圧制御部124Bの構成は適宜変えてもよい。例えば上記の実施形態では、多点音圧制御帯域が低域と中高域の2つに設定されているが、別の実施形態では、3つ以上の多点音圧制御帯域が設定されてもよい。一例として、低域、中高域、及び中高域よりもさらに高い高域の3つを多点音圧制御帯域として設定してもよい。この場合、多点音圧制御部124Bには、低域、中高域、高域の夫々に対応するフィルタリング部及びゲイン部が設けられる。チャンネル連結部124Bh及び加算部124Biの構成は、フィルタリング部及びゲイン部の設置数や各ゲイン部と各スピーカSPとの接続関係等に応じて適宜変更される。また、例えばEQ部124Dでは高域に対応するPEQパラメータ値が追加され、また、車室内には、高域に対応するスピーカSPが設置されたり高域に対応する制御点が設定されたりする。
上記の実施形態では、IFFT部124Cの後段にEQ部124Dが設置されているが、別の実施形態では、例えば、第1ゲイン部124Bb、第2ゲイン部124Bd及び第3ゲイン部124Bgの各ゲイン部の前段又は後段にEQ部(すなわち合計で3つのEQ部)が設置されてもよい。この場合、第1フィルタリング部124Baを通過した低域の4チャンネルのオーディオ信号に対して同一のPEQパラメータ値を用いたイコライザ処理が施され、第2フィルタリング部124Bcを通過した中高域の12チャンネルのオーディオ信号に対して同一のPEQパラメータ値を用いたイコライザ処理が施され、非制御帯域フィルタリング部124Beを通過した非制御帯域の各チャンネルのオーディオ信号に対して同一のPEQパラメータ値を用いたイコライザ処理が施される。この実施形態では、オーディオ信号の低域部分、中高域部分、非制限帯域部分のそれぞれに対し、異なるPEQパラメータ値を用いたイコライザ処理を施すことが可能となる。
上記の実施形態では、音場再現システムは車室内で音場を再現する構成となっているが、本発明はこれに限らない。別の実施形態では、音場再現システムは、住宅内など、他の特定空間で音場を再現するものであってもよい。
また、上記の実施形態では、単一の装置(音場再現装置100)が音場測定機能及び音場再現機能を有しているが、本発明はこれに限らない。別の実施形態では、音場再現システムが複数の装置で構成されており、音場測定機能と音場再現機能とがシステムを構成する別々の装置に備えられていてもよい。一例として、スマートフォン等の情報処理端末が音場測定を行い、その測定結果に基づいて車載器等の装置が音場再現を行う構成が考えられる。