JP7054346B2 - 水系インクジェットインク組成物 - Google Patents
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Description
本発明に係る水系インクジェットインク組成物の一態様は下記のものである。
第1の樹脂及び第2の樹脂からなり、SP値(溶解度パラメーター)が9.0~12.0(cal/cm3)1/2であって、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有する、水系インクジェットインク組成物。
適用例1のインク組成物によれば、連続吐出安定性が良好となる。また、画像の耐擦性が良好となる。すなわち、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とを共に良好なものとすることができる。
[適用例2]
前記適用例において、前記第2の樹脂のSP値が11.0~12.0(cal/cm3)1/2であり、前記第1の樹脂のSP値が9.0~11.5(cal/cm3)1/2である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例3]
前記適用例の何れかにおいて、前記第1の樹脂のガラス転移温度が60~95℃である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例4]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子において、前記第2の樹脂と前記第1の樹脂との質量比(第2の樹脂の質量/第1の樹脂の質量)が、1/11~1/2である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例5]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子の平均粒径が100~300nmである、水系インクジェットインク組成物。
[適用例6]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子の酸価が5~35mgKOH/gである、水系インクジェットインク組成物。
[適用例7]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂の相分離構造を有する、水系インクジェットインク組成物。
[適用例8]
前記適用例の何れかにおいて、前記相分離構造は、前記第1の樹脂をシェル部とし、前記第2の樹脂をコア部とするコアシェル構造、および、前記第1の樹脂中に前記第2の樹脂が島状に存在する海島構造、の少なくともいずれかの構造である、水系インクジェット
インク組成物。
[適用例9]
前記適用例の何れかにおいて、さらに、有機溶剤としての環状アミドを含む、水系インクジェットインク組成物。
[適用例10]
前記適用例の何れかにおいて、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、かつ、標準沸点が150~260℃の有機溶剤をさらに含む、水系インクジェットインク組成物。
本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、第1の樹脂及び第2の樹脂からなりSP値が9.0~12.0(cal/cm3)1/2であって、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有する、水系インクジェットインク組成物であることを特徴とする。なお、「水系インクジェットインク組成物」とは、インクジェット記録方式に用いることを主目的とした、溶媒成分として少なくとも水を主要な成分の一つとするインク組成物のことをいう。
本実施形態に係るインク組成物は、複合樹脂微粒子を含有する。当該複合樹脂微粒子は、第1の樹脂及び第2の樹脂から構成される。当該複合樹脂微粒子は、SP値が9~12
(cal/cm3)1/2であり、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい。
ず複数に分かれて、複合樹脂微粒子を構成する形態であってもよい。また、複合樹脂微粒子の、第1の樹脂と第2の樹脂との境界は、その境界が明確に分かれている場合に限られず、樹脂の組成が第1の樹脂から第2の樹脂に連続的に変化しているものであってもよい。
複合樹脂微粒子の一部を構成する第1の樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
第1の樹脂のSP値(溶解度パラメーター)は、10.0~12.0(cal/cm3)1/2であることが好ましく、10.3~11.0(cal/cm3)1/2であることがより好ましく、10.5~10.9(cal/cm3)1/2であることがさらに好ましい。本実施形態において樹脂の「SP値」とは、Fedorsの式から計算した溶解
度パラメーター(cal/cm3)1/2をいう。Fedorsの式から計算したSP値は、凝集エネルギーとモル分子容を用い算出した、材料の溶解性挙動を示す値である。
樹脂の合成に用いた各モノマーごとの上記SP値に、全モノマーの総モル数に対する各モノマーのモル比をかけて、SP値を加重平均した値を樹脂のSP値とする。
第1の樹脂のSP値が前記範囲内にあると、複合樹脂微粒子がインク中では溶解し難くなり、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりが発生せず、インクの連続吐出安定性が良好となる傾向にある。また、異物抑制や耐擦性やOD値も優れたものにし易い。
第1の樹脂のSP値を上記の範囲にするためには、例えば、樹脂を構成するモノマー成分としてSP値が上記の範囲内にあるものを用いたり、複数種のモノマーを用いる場合、樹脂のSP値が上記の範囲内になるように複数種のモノマーを選択し質量比を決めたりすればよい。
樹脂のTgを上記範囲のものにするためには、該樹脂の調製に用いるモノマーとしてTgが上記範囲内にあるものを使用したり、式で樹脂のTgが上記の範囲になるように樹脂の調製に用いるモノマーを選択したり、質量分率を調整したりすれば良い。
こで、第1の樹脂の全構成単位を100質量%とした場合、芳香族モノマー単位の構成比率の下限値は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。一方、芳香族モノマー単位の含有量の上限値は、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。第1の樹脂における芳香族モノマー単位の含有割合が前記範囲にあると、第1の樹脂が溶解したときに粘着力が生じるので、記録媒体と樹脂被膜との密着性が良好となり、結果として画像の耐擦性も良好となる傾向がある。
タ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数が3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。ここで「疎水性」とは、水100mL(20℃)に対する溶解度が0.3g未満であることをいう。
第1の樹脂としては、アクリル樹脂以外にも、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂などを用いることができる。ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂は、それぞれ、ポリマーの主骨格中に、ポリウレタン構造、ポリオレフィン構造、ポリエステル構造、ポリエーテル構造を有する樹脂であればよい。
架橋率(モル%)=((架橋剤:モル)/(第1の樹脂の全構成単位:モル))×100
複合樹脂微粒子の一部を構成する第2の樹脂は、SP値が第1の樹脂より高い樹脂であること以外は、前述の第1の樹脂と同様のものに、第1の樹脂とは独立したものとして、構成することができる。
第2の樹脂は、限るものでは無いが、架橋性成分の含有率の少ない樹脂とすることが好ましく、架橋性成分を含有する架橋樹脂ではないことがより好ましい。第2の樹脂が架橋樹脂以外の樹脂であることにより、記録媒体上で速やかに溶解して被膜が形成されるので、記録媒体への密着性や画像の耐擦性がより良好となる。第2の樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。または第2の樹脂の架橋性成分の含有率を第1の樹脂より低いものとすることも上記の点で好ましい。
、複合樹脂微粒子が溶解し易くなるので、記録媒体上で速やかに溶解して被膜が形成される。その結果、画像の耐擦性がより良好となる。SP値の定義は前述と同様である。第2の樹脂のSP値を上記の範囲にするためには、例えば、樹脂を構成するモノマー成分としてSP値が上記の範囲内にあるものを用いたり、複数種のモノマーを用いる場合、樹脂のSP値が上記の範囲内になるように複数種のモノマーを選択し質量比を決めたりすればよい。
当該複合樹脂微粒子は、SP値が9.0~12.0(cal/cm3)1/2である。複合樹脂微粒子のSP値は、複合樹脂微粒子の全体としての構成する樹脂のSP値である。本実施形態において樹脂のSP値は、Fedorsの式から計算した値である。
7~20mgKOH/gであり、特に好ましくは10~15mgKOH/gである。複合樹脂微粒子の相対酸価が前記範囲内であると、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とが共に向上する傾向にある。
(第1の樹脂を構成するモノマーのうちのアニオン性基を有するモノマー1の質量部/第1の樹脂を構成する全モノマーの合計の質量部)/モノマー1の分子量)×モノマー1の分子中のアニオン性基数=A1 (式1)
A1×56.11×1000=複合樹脂微粒子の酸価(mgKOH/g) (式2)
アニオン性基は、カルボキシル基である。第1の樹脂を構成するモノマーのうちのアニオン性基を有するモノマーが複数種ある場合は、モノマー毎に式1と同様の式でA2、A3・・と算出し、A1+A2+A3+・・の合計値を式2のA1として同様に算出する。
複合樹脂微粒子の酸価は、複合樹脂微粒子全体の質量に対して、第1の樹脂が第2の樹
脂微粒子よりも質量が多い場合において、複合樹脂微粒子の最表面に起因する特性が、複合樹脂微粒子の最表面を構成する樹脂に起因すると仮定して、第1の樹脂から求める。
複合樹脂微粒子の合成方法については特に限定されないが、例えば公知の乳化重合法又はこれを適宜に組み合わせることによって合成することができる。具体的には、一括混合重合法、モノマー滴下法、プレエマルション法、シード乳化重合法、多段階乳化重合法(二段乳化重合法等)、転相乳化重合法等が挙げられる。以下、複合樹脂微粒子の一例として、第2の樹脂によりコア部または島部が構成され、第1の樹脂によりシェル部または海部が構成されたコアシェル樹脂微粒子または海島構造樹脂微粒子の合成方法について詳細に説明する。
まず、水系媒体を用いた通常の乳化重合法により第2の樹脂の粒子を合成する。乳化重合の条件は、公知の方法に準ずればよいが、例えば使用するモノマー全量を100部とした場合に、通常100~500部の水(水系媒体)を使用して重合を行うことができる。重合温度は、-10~100℃が好ましく、-5~100℃がより好ましく、0~90℃がさらに好ましい。また、重合時間は、0.1~30時間が好ましく、2~25時間がより好ましい。乳化重合の方式としては、モノマーを一括して仕込むバッチ方式、モノマー
を分割もしくは連続して供給する方式、モノマーのプレエマルジョンを分割もしくは連続して添加する方式、又はこれらの方式を段階的に組み合わせた方式等を採用することができる。また、通常の乳化重合に用いられる重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤等を、必要に応じて1種又は2種以上使用することができる。
ールAなどのフェノール類とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるレゾール型フェノール樹脂を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1~8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1~8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。
次に、第1の樹脂の部を先に合成する重合方法について説明する。まず、第1の樹脂の部を合成する。具体的には、反応性乳化剤を用いて上述の親水性モノマーを含むプレエマルション溶液を調製し、該プレエマルション溶液を重合開始剤及び架橋剤とともに水系媒体中に滴下、重合反応することで第1の樹脂の部を合成する。
整して、必要に応じてろ過することにより、コアシェル樹脂微粒子分散液が得られる。合成方法において、モノマーの濃度や重合温度や撹拌速度や重合時間などを調整することで、コアシェル樹脂微粒子としたり、海島構造樹脂微粒子としたりすることができる。特に第2の樹脂の合成の際のこれらの重合条件を調整することが好ましい。
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水としては、特に制限されることなく、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。水を含むことで、有機溶剤を少なくすることができ、その結果、環境に配慮したインク組成物とすることができる。
1.3.1.色材
本実施形態に係るインク組成物は、色材を含有することが好ましい。色材としては、特に限定されないが、例えば顔料又は染料が挙げられる。
上記色材のうち顔料は、水に不溶又は難溶であるだけでなく光やガス等に対しても退色しにくい性質を有する。そのため、顔料を用いたインクにより記録された記録物は、耐水性、耐ガス性、耐光性、及び保存安定性が良好となる。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。これらの中でも、発色性が良好であって、比重が小さいため分散時に沈降しにくいことから、無機顔料に属するカーボンブラック及び有機顔料のうち少なくともいずれかが好ましい。
名、キャボット社(Cabot Corporation)製)が挙げられる。
上記色材のうち染料としては、以下に限定されないが、例えば、酸性染料、直接染料、
反応性染料、及び塩基性染料が挙げられる。染料の具体例として、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係るインク組成物は、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂溶解性溶剤、浸透性溶剤、保湿性溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
れ広がり性)や浸透性がより向上する傾向にある。
、11.5~20.0の有機溶剤を含むことがより好ましい。
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。このような界面活性剤を含有することにより、溶解時間を好ましい範囲に制御しやすい傾向にあり、また、入手しやすく、インク組成物の埋まり性も向上する傾向にある。
.5~40mN/mであり、特に好ましくは20~35mN/mである。界面活性剤の表面張力が上記範囲内であることにより、インク組成物の埋まり性が向上する傾向にある。なお、表面張力(mN/m)は、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定することができる。
本実施形態に係るインク組成物は、分散樹脂又は水溶性樹脂等の樹脂を含んでいてもよい。分散樹脂又は水溶性樹脂を含むことにより、得られる画像の光沢性がより向上する傾向にある。分散樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル酸共重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。また限るものでは無いがワックスを含んでいてもよい。ワックスとしては、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等があげられる。
本実施形態に係るインク組成物は、保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、上述の成分(材料)を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを行い、不純物を除去することにより得ることができる。ここで、インクが顔料を含有する場合、当該顔料は、あらかじめ溶媒中に均一に分散させた状態に調製してから混合することが、取り扱いが簡便になるため好ましい。顔料をあらかじめ分散させた状態に調製する際に分散樹脂などの分散剤を用いて分散することが好ましい。
として、例えば、遠心ろ過やフィルターろ過などを必要に応じて行うことができる。
<表面張力>
25℃におけるインク組成物の表面張力は、好ましくは20~50mN/mであり、より好ましくは20~40mN/mである。表面張力が前記範囲内にあることにより、吐出安定性が良好となる傾向にある。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定することができる。
25℃におけるインク組成物の粘度は、好ましくは20mPa・s以下であり、より好ましくは10mPa・s以下である。粘度が前記範囲内にあることにより、吐出安定性が良好となる傾向にある。なお、粘度は、粘度計を用いて測定することができる。
本実施形態のインク組成物は、後述するインクジェット記録方法に用いるインク組成物であったり、後述するインクジェット記録装置に用いるインク組成物であったりしてもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体を加熱する工程と、加熱工程により加熱された記録媒体にヘッドから上述の水系インクジェットインク組成物を吐出して付着させる付着工程と、を備えることを特徴とする。
記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性記録媒体、非吸収性記録媒体が挙げられる。本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、画像の表面に被膜が形成されることにより耐擦性が付与される。したがって、インクが染み込む吸収性記録媒体よりも、インクが染み込み難い低吸収性記録媒体又はインクが染み込まない非吸収性記録媒体上に記録する場合に耐擦性が良好となるため、本実施形態に係るインクジェット記録方法を用いることが有利となる。
本実施形態で用い得るインクジェット記録装置は、上記インク組成物を記録媒体に対して吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドを加熱するヘッド加熱手段と、前記インク組成物が付着した前記記録媒体を乾燥する乾燥手段と、を備えている。
<加熱工程>
記録媒体を加熱する工程である。加熱工程では、記録媒体の表面温度の上限が、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下、よりさらに好ましくは40℃以下、特に好ましくは38℃以下となるように加熱する。また、記録媒体の表面温度の下限が、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、特に好ましくは30℃以上となるように加熱する。記録媒体の表面温度が70℃以下であることにより、インクジェットヘッドの加熱が抑制され、印刷中のノズルの抜けが抑制され、連続吐出安定性がより向上する傾向にある。また、記録媒体の表面温度が20℃以上であることにより、記録媒体、特に塩化ビニルのような非吸収性記録媒体上のインク組成物のドットの埋まり性がより向上し、画質がより向上する傾向にある。
加熱工程により加熱された記録媒体に、ヘッドから上記インク組成物を吐出して付着させる工程である。例えば上述のヘッド加熱手段によりインクジェットヘッド2を加熱すると、インクジェットヘッド2内のインク組成物は粘度が低下するため、インクの連続吐出安定性が向上する。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記付着工程の後、インク組成物が付着した記録媒体を乾燥させる乾燥工程を有していてもよい。これにより、記録媒体上のインク組成物に含まれる複合樹脂微粒子が、溶解し、埋まり性の良い記録物を形成することができる。乾燥工程における記録媒体の表面温度は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上100℃以下である。乾燥温度が前記範囲内であることにより、耐擦性がより向上する傾向にある。
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<製造例1>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水2600g及びラウリル硫酸ナトリウム0.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム0.5gにアクリルアミド2gにメチルメタクリレート180g、ブチルアクリレート25g、及びメタクリル酸2gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。熟成終了後、予めイオン交換水500g、ラウリル硫酸ナトリウム1.5gにアクリルアミド30gにスチレン1200g、2-エチルヘキシルメタクリレート200g、及びメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水とを添加して固形分30重量%、pH8に調整した。得られた粒子は海島構造であった。このようにして架橋を有しない樹脂微粒子を製造した。
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水2600g及びラウリル硫酸ナトリウム0.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム0.5gにアクリルアミド2gにメチルメタクリレート180g、ブチルアクリレート25g、及びメタクリル酸2gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。熟成終了後、予めイオン交換水500g、ラウリル硫酸ナトリウム1.5gにアクリルアミド30gにスチレン1200g、2-エチルヘキシルメタクリレート200g、メタクリル酸30g、及びエチレングリコールジメタクリレート15gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水とを添加して固形分30重量%、pH8に調整した。得られた粒子はコアシェル構造であった。このようにして第1の樹脂(シェル)が架橋を有する樹脂微粒子を製造した。
各材料を下表1に示す組成となるように混合し、十分に撹拌することにより、水系インクジェットインク組成物を得た。なお、下表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100質量%である。
<インクジェット記録方法>
記録装置として、プラテンヒーターと、図2に記載のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンター(商品名PX-G930、セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用いた。記録装置のヘッドのノズル列(1ノズル列は180ノズル)の一つに上記で調製した各水系インクジェットインク組成物を充填し、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に吐出し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、付着量が12mg/inch2となるように付着させた。この印字中における、記録媒体の一次乾燥時の表面温度は35℃となるようにプラテンヒーターを作動させた。また、記録装置から排出された記録媒体をオーブンで100℃で2分、二次乾燥させた。
印刷後、記録物を一般環境で1時間放置した。放置後、ベタ部分についてGretag濃度計(Gretag Macbeth社製)を用いてOD値を測定した。得られたOD値に基づき、下記評価基準によりOD値を評価した。
(評価基準)
A:OD値が1.9超。
B:OD値が1.6以上1.9以下。
C:OD値が1.6未満。
上記のようにして得られた記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB-301(テスター産業株式会社製)を用いて、金巾3号布を500gの荷重で50往復させる試験(JIS P 8136)を行った。下記評価基準により耐擦性を評価した。
(評価基準)
A:傷や剥離がない。
B:ストローク面積の1%以下の傷または剥離がある。
C:ストローク面積の1%超の傷または剥離がある。
上記で得られた水系インクジェットインク組成物をポリエチレン製インクパックに封入し、70℃6日間放置した後、10ccを採取してAフィルターに通液評価を行った。#4300金属メッシュフィルターに10mL通液し、フィルター上の異物の有無を確認し
た。
(評価基準)
A:異物は認められない。
B:フィルター面積の10%以下の面積で覆う異物が認められる。
C:フィルター面積の10%超の面積で覆う異物が認められる。
上記インクジェット記録方法で記録を行った。まず、ノズル表面を布で軽く2、3回叩き、インクを吐出しなくなったノズルをノズル列中に半分程度設けた。この吐出しなくなったノズルはそのままにした状態で、吸引クリーニングは行わないまま2時間連続で印刷を行った。印刷は、プリンターを設置した部屋を温度35℃相対湿度20%の環境下で行い、印刷後、次のような吐出安定性の試験を行った。下記評価基準により連続吐出安定性を評価した。なお、別途、上記のインクを吐出しなくなったノズルがノズル列中に半分程度設けた状態で印刷前に直ちに吸引クリーニングを1回行ったところ、全例とも全ノズル回復した。
(評価基準)
A:1回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。もしくは吸引クリーニングなしで全ノズル正常だった。
B:2回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。
C:3回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。
D:3回の吸引クリーニングで回復しないノズルがあった。
各実施例及び各比較例で用いた、複合樹脂微粒子の各物性と評価結果を下表2に示した。
実施例4~8、1の比較から、第1の樹脂のSP値が大きいほうが、耐擦性が特に優れ、小さいほうが連続吐出安定性や異物低減が特に優れていることがわかった。
実施例9~12の比較から、第2の樹脂の質量が小さいほど、連続吐出安定性や異物低減が特に優れていた。
実施例13~18、1の比較から、樹脂微粒子の酸価が比較的小さいほうが、連続吐出安定性や異物低減が特に優れ、耐擦性も特に優れ、一方、酸価が小さすぎないほうが、異物低減が特に優れていた。
実施例19~25、1の比較から、第1樹脂の架橋率が大きいほうが連続吐出安定性や異物低減が特に優れ、小さいほうが耐擦性やOD値が特に優れていた。実施例20~22から、架橋率を比較的小さくして耐擦性が特に優れるようにする場合に、樹脂微粒子の平均粒径や第2の樹脂のSP値や第1の樹脂のSP値などの他の物性値を調整することで、連続吐出安定性や異物低減も優れたものにでき、こうすることで、耐擦性が特に優れたも
のにできる点で有用であることがわかった。なお、表中には記載しなかったが、二次乾燥の温度を95℃×1分にして同様に記録を行ったところ、全例とも耐擦性が低下する傾向があったが、実施例19~22は耐擦性評価がA又はBを維持していた。このことから、二次乾燥温度が安定しないなど、耐擦性が若干低下するような場合でも優れた耐擦性を維持することができる点で、架橋率は低いほうが好ましいことがわかった。
実施例26~29、1の比較から、第1樹脂のTgが高いほうが連続吐出安定性が特に優れ、低いほうが異物低減が特に優れた。第2樹脂のTgが高いほうが連続吐出安定性や異物低減や耐擦性が特に優れた。
比較例4,5は、質量比が大きい方の樹脂のSP値が、質量比が小さい方の樹脂のSP値より低くなっていない樹脂微粒子であるが、比較例4は、連続吐出安定性が劣り、比較例5は、耐擦性が劣っていた。
比較例6は、樹脂微粒子がSP値が12を超えている樹脂微粒子であったが、連続吐出安定性が劣っていた。
比較例7は、樹脂微粒子がSP値が9未満の樹脂微粒子であったが、耐擦性が劣っていた。
Claims (8)
- 第1の樹脂及び第2の樹脂からなり、Fedorsの式で算出されるSP値が9.0~12.0(cal/cm3)1/2であって、前記第2の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が11.0~12.0(cal/cm 3 ) 1/2 であり、前記第1の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が9.0~11.5(cal/cm 3 ) 1/2 であり、前記第2の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が前記第1の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有し、
前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂をシェル部とし、前記第2の樹脂をコア部とするコアシェル構造、および、前記第1の樹脂中に前記第2の樹脂が島状に存在する海島構造の、少なくともいずれかの構造を有する、水系インクジェットインク組成物。 - 前記第1の樹脂のガラス転移温度が60~95℃である、請求項1に記載の水系インクジェットインク組成物。
- 前記複合樹脂微粒子において、前記第2の樹脂と前記第1の樹脂との質量比(第2の樹脂の質量/第1の樹脂の質量)が、1/11~1/2である、請求項1又は2に記載の水系インクジェットインク組成物。
- 前記複合樹脂微粒子の平均粒径が100~300nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
- 前記複合樹脂微粒子の酸価が5~35mgKOH/gである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
- 前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂の相分離構造を有する、請求
項1~5のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。 - さらに、有機溶剤としての環状アミドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
- 標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、かつ、標準沸点が150~260℃の有機溶剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
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