JP7054346B2 - 水系インクジェットインク組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、水系インクジェットインク組成物に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。近年のインクジェット記録方式技術の革新的な進歩により、これまで写真やオフセット印刷が用いられていた高精細な画像記録の分野にもインクジェット記録方式を用いた印刷方法が利用されている。特にインク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に、高品質な画像を記録することができるインクについて種々の提案がなされている。
ところで、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に記録された画像は、色材が記録媒体の内部に染み込み難いため、十分な耐擦性が得られない場合がある。そのため、画像の表面に被膜を形成するための樹脂微粒子をインクに添加することによって、耐擦性を向上させようとする検討が行われている(例えば特許文献1参照)。
特開2015-160931号公報
しかしながら、特許文献1に示されているインク組成物中に含まれる樹脂微粒子は、画像の表面に被膜を形成するためのものであるため、一般に固着しやすい性質を有している。インクジェットヘッド内に収容されたインク組成物中の樹脂微粒子が一度溶解してインクジェットヘッド壁面などに固着すると、インクが正常に吐出できなくなり吐出安定性が低下するという問題があった。すなわち、インクの吐出安定性と画像の耐擦性との間にはトレードオフの関係があり、これらを両立させることのできるインク組成物が求められていた。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、記録媒体上に記録された画像の耐擦性が良好となると共に、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性が良好となる水系インクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)、及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供する。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る水系インクジェットインク組成物の一態様は下記のものである。
第1の樹脂及び第2の樹脂からなり、SP値(溶解度パラメーター)が9.0~12.0(cal/cm1/2であって、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有する、水系インクジェットインク組成物。
適用例1のインク組成物によれば、連続吐出安定性が良好となる。また、画像の耐擦性が良好となる。すなわち、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とを共に良好なものとすることができる。
[適用例2]
前記適用例において、前記第2の樹脂のSP値が11.0~12.0(cal/cm1/2であり、前記第1の樹脂のSP値が9.0~11.5(cal/cm1/2である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例3]
前記適用例の何れかにおいて、前記第1の樹脂のガラス転移温度が60~95℃である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例4]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子において、前記第2の樹脂と前記第1の樹脂との質量比(第2の樹脂の質量/第1の樹脂の質量)が、1/11~1/2である、水系インクジェットインク組成物。
[適用例5]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子の平均粒径が100~300nmである、水系インクジェットインク組成物。
[適用例6]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子の酸価が5~35mgKOH/gである、水系インクジェットインク組成物。
[適用例7]
前記適用例の何れかにおいて、前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂の相分離構造を有する、水系インクジェットインク組成物。
[適用例8]
前記適用例の何れかにおいて、前記相分離構造は、前記第1の樹脂をシェル部とし、前記第2の樹脂をコア部とするコアシェル構造、および、前記第1の樹脂中に前記第2の樹脂が島状に存在する海島構造、の少なくともいずれかの構造である、水系インクジェット
インク組成物。
[適用例9]
前記適用例の何れかにおいて、さらに、有機溶剤としての環状アミドを含む、水系インクジェットインク組成物。
[適用例10]
前記適用例の何れかにおいて、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、かつ、標準沸点が150~260℃の有機溶剤をさらに含む、水系インクジェットインク組成物。
インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図。 インクジェットヘッドを模式的に示す拡大断面図。
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~」及び「メタクリル酸~」の双方を包括する概念である。また、「~(メタ)アクリレート」とは、「~アクリレート」及び「~メタクリレート」の双方を包括する概念である。
1.水系インクジェットインク組成物
本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、第1の樹脂及び第2の樹脂からなりSP値が9.0~12.0(cal/cm1/2であって、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有する、水系インクジェットインク組成物であることを特徴とする。なお、「水系インクジェットインク組成物」とは、インクジェット記録方式に用いることを主目的とした、溶媒成分として少なくとも水を主要な成分の一つとするインク組成物のことをいう。
インクジェットヘッド内で気泡などにより不吐出が発生したノズルは、インク組成物が圧力室内に滞留し、プラテン等の熱を受けて乾燥が進む。これにより、インク組成物に含まれる樹脂微粒子を構成する樹脂がインクジェットヘッド内で溶解し、溶着し目詰まりとなる問題がある。例えば、ノズルプレートでの樹脂溶着はワイピングにより除去できるが、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりはワイピングでは解消できない場合がある。また、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりは、吸引クリーニングである程度は解消できてもフラッシングでは解消できない場合がある。この様な場合においてインクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりを解消するために吸引クリーニングを行う場合に、吸引クリーニングにより印刷を中断させてしまうことがあり、記録生産性の点で不利である。
また、ノズルからのインク吐出を停止することなく記録を行えばインクジェットヘッド内の樹脂溶着は起こらない場合に、気泡が発生し不吐出となってしまったノズルはインク組成物の乾燥が進み樹脂溶着が発生する場合がある。特に加熱したプラテン上をヘッドが走査する場合にノズルが熱を受けてインクが乾燥しやすい。このようにして目詰まりとなったノズルは吐出安定性に影響を及ぼす。樹脂の溶解は徐々に進行するため、ある程度の時間連続して印刷を行う場合に影響が発生する、吐出安定性を連続吐出安定性と呼ぶことがある。
これに対して、本実施形態に係るインク組成物は、記録媒体上で被膜を形成するための樹脂として特定の複合樹脂微粒子を用いることにより、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とが共に優れることを見出した。当該複合樹脂微粒子は、第1の樹脂及び第2の樹脂より構成されている。SP値が9.0~12.0(cal/cm1/2であり、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子であることにより、複合樹脂微粒子がインク中では溶解し難くなり、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりが発生せず、インクの連続吐出安定性が良好となる。また、複合樹脂微粒子が記録媒体上で速やかに溶解して被膜が形成されるので、画像の耐擦性が良好となる。以下、本実施形態に係るインク組成物の組成について詳細に説明する。
1.1.複合樹脂微粒子
本実施形態に係るインク組成物は、複合樹脂微粒子を含有する。当該複合樹脂微粒子は、第1の樹脂及び第2の樹脂から構成される。当該複合樹脂微粒子は、SP値が9~12
(cal/cm1/2であり、前記第2の樹脂のSP値が前記第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい。
複合樹脂微粒子は、第1の樹脂からなる相(部分)と第2の樹脂からなる相(部分)がお互いに分離した相分離構造を有する。
複合樹脂微粒子の形態としては、第1の樹脂と第2の樹脂が、それぞれ樹脂微粒子の1部と他部を構成するものである。例えば、樹脂微粒子の周辺部と中心部を構成する形態であったり、これ以外の他の形態であっても良い。例えば、第1の樹脂と第2の樹脂のそれぞれの複合樹脂微粒子における位置が単純な構成ではなく複雑に入り組んでいたり、または、第1の樹脂からなる部分及び又は第2の樹脂からなる部分が、それぞれ連続しておら
ず複数に分かれて、複合樹脂微粒子を構成する形態であってもよい。また、複合樹脂微粒子の、第1の樹脂と第2の樹脂との境界は、その境界が明確に分かれている場合に限られず、樹脂の組成が第1の樹脂から第2の樹脂に連続的に変化しているものであってもよい。
複合樹脂微粒子の1形態として、第1の樹脂と第2の樹脂の一方が複合樹脂微粒子の周辺部付近(シェル部)を主に構成し、他方が樹脂微粒子の中心部付近(コア部)を主に構成するものを、コアシェル構造の複合樹脂微粒子、またはコアシェル樹脂微粒子と呼ぶ。ここで、コアシェル樹脂微粒子の周辺部を構成する樹脂部をシェル樹脂、中心部を構成する樹脂部をコア樹脂と呼ぶ。コア部が、樹脂微粒子の中心部以外の場所にあってもよい。また、樹脂微粒子の最表面にコア樹脂からなる部分が一部露出していてもよい。コア部は球状でも非球状でもよい。中でも第1の樹脂をシェル部とし、第2の樹脂をコア部とするコアシェル樹脂微粒子であることが、連続吐出安定性や耐擦性などがより優れる点で好ましい。
また、複合樹脂微粒子の他の1形態として、第1の樹脂と第2の樹脂の一方からなる部分の海の中に、他方からなる部分が島状に存在する海島構造の複合樹脂微粒子であってもよい。海島構造の複合樹脂微粒子において、樹脂微粒子の最表面に他方の樹脂からなる部分が一部露出していてもよいし、島が複合樹脂微粒子の内部に均一に存在している形態に限らず偏って存在している形態でもよい。また、島の形状は球状や非球状であってよく、島の大きさも様々なものがあってよい。中でも第1の樹脂からなる海と第2の樹脂からなる島からなる海島構造を有する複合樹脂微粒子であることが、連続吐出安定性や耐擦性などがより優れる点で好ましい。
複合樹脂微粒子は、コアシェル構造又は海島構造の複合樹脂微粒子であることが、連続吐出安定性や耐擦性などがより優れる点で好ましい。1つの複合樹脂微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像において、コア部が1個の連続する部分として観察されるものをコアシェル構造とする。コアシェル構造に類似するものの、コア部が連続していない2個以上の部分で観察される場合や、より多数の部分で観察されるものを海島構造とする。コア部と島部については、コア部が1個の場合をコア部と言い、コア部が2個以上やさらに多数の部分に分かれている場合を島部と言う。観察は倍率5万倍で観察するものとする。
複合樹脂微粒子は、第1樹脂と第2樹脂とを独立して樹脂の特性を制御することができるため、樹脂微粒子の溶解性を調整しやすいという観点から好ましい。樹脂の特性としては、例えばSP値が挙げられる。また、樹脂のガラス転移点や架橋の程度などの他の樹脂の特性を制御してもよい。例えば、シェル部や海を第1の樹脂から構成し、第1の樹脂をインク中で溶解し難い樹脂とすることで、樹脂微粒子が記録の際にインク中で溶解し難くなる。また、コア部や島を第2の樹脂から構成し、第2の樹脂を記録媒体上で溶解し易い樹脂とすることで、記録媒体上で樹脂微粒子が溶解しやすい。こうすることにより、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりが発生せず、インクの連続吐出安定性が良好となり、また、記録物の耐擦性が優れる。
<第1の樹脂>
複合樹脂微粒子の一部を構成する第1の樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
第1の樹脂のSP値(溶解度パラメーター)は、10.0~12.0(cal/cm1/2であることが好ましく、10.3~11.0(cal/cm1/2であることがより好ましく、10.5~10.9(cal/cm1/2であることがさらに好ましい。本実施形態において樹脂の「SP値」とは、Fedorsの式から計算した溶解
度パラメーター(cal/cm1/2をいう。Fedorsの式から計算したSP値は、凝集エネルギーとモル分子容を用い算出した、材料の溶解性挙動を示す値である。
樹脂の合成に用いた各モノマーごとの上記SP値に、全モノマーの総モル数に対する各モノマーのモル比をかけて、SP値を加重平均した値を樹脂のSP値とする。
第1の樹脂のSP値が前記範囲内にあると、複合樹脂微粒子がインク中では溶解し難くなり、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりが発生せず、インクの連続吐出安定性が良好となる傾向にある。また、異物抑制や耐擦性やOD値も優れたものにし易い。
第1の樹脂のSP値を上記の範囲にするためには、例えば、樹脂を構成するモノマー成分としてSP値が上記の範囲内にあるものを用いたり、複数種のモノマーを用いる場合、樹脂のSP値が上記の範囲内になるように複数種のモノマーを選択し質量比を決めたりすればよい。
第1の樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)の下限値は、60℃以上が好ましく、63℃以上がより好ましく、67℃以上がさらに好ましく、73℃以上がさらにより好ましく、77℃以上が特に好ましい。上限値は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、87℃以下がさらにより好ましく、83℃以下が特に好ましい。第1の樹脂のTgが95℃以下であることにより、加熱処理等により記録媒体上で第1の樹脂が溶解して被膜が形成されるので、画像の耐擦性が良好となる。また、第1の樹脂のTgが60℃以上であることにより、加熱したプラテン上をヘッドが走査する場合であっても、インク中で第1の樹脂が溶融するのを抑制できるため、インクの連続吐出安定性が良好となる。
第1の樹脂が単独重合体である場合、第1の樹脂のTgは、各種文献(例えばポリマーハンドブック等)に記載されているものを使用することができる。一方、第1の樹脂が共重合体である場合、第1の樹脂のTgは、各種単独重合体のTg(単位:K)と、モノマーの質量分率(W)とから下記FOX式によって算出することができる。
Figure 0007054346000001
ここで、W:各モノマーの質量分率、Tg:各モノマーのホモポリマーのTg(単位:K)、Tg:共重合体のTg(単位:K)
樹脂のTgを上記範囲のものにするためには、該樹脂の調製に用いるモノマーとしてTgが上記範囲内にあるものを使用したり、式で樹脂のTgが上記の範囲になるように樹脂の調製に用いるモノマーを選択したり、質量分率を調整したりすれば良い。
第1の樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂を用いることができる。アクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマー単位を有する樹脂であり、各種物性値の制御がし易く入手しやすい点で好ましい。(メタ)アクリルモノマー単位の含有率は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。(メタ)アクリルモノマー単位の含有率は100質量%でも良く、各種物性が得やすい点で、90質量%以下が好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマー単位と(メタ)アクリルモノマー単位以外の他のモノマー単位とを有する樹脂であってもよく、この場合、樹脂の各種物性値の調整がしやすい点で好ましい。他のモノマー単位としては、ビニルモノマー単位などがあげられる。また、アクリル樹脂は、芳香族モノマー単位を有することが好ましい。芳香族モノマー単位としては、芳香族ビニルモノマー単位や芳香族(メタ)アクリルモノマー単位があげられ、芳香族ビニルモノマー単位を有する樹脂が好ましい。こ
こで、第1の樹脂の全構成単位を100質量%とした場合、芳香族モノマー単位の構成比率の下限値は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。一方、芳香族モノマー単位の含有量の上限値は、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。第1の樹脂における芳香族モノマー単位の含有割合が前記範囲にあると、第1の樹脂が溶解したときに粘着力が生じるので、記録媒体と樹脂被膜との密着性が良好となり、結果として画像の耐擦性も良好となる傾向がある。
(メタ)アクリルモノマー単位としては、特に限定されないが、ガラス転移点を高くするためや、後述する架橋樹脂とするためには、架橋性成分である二官能以上の(メタ)アクリルモノマー単位を少なくとも一部含んでいても良い。
二官能以上の(メタ)アクリルモノマー単位としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、第1の樹脂は、(メタ)アクリルモノマー単位として単官能(メタ)アクリルモノマー単位を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリルモノマー単位としては、例えば、親水性(メタ)アクリレートモノマー単位、炭素数が3以上のアルキル基を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位、環状構造を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位、(メタ)アクリルアミドモノマー単位又はそのN-置換誘導体等が挙げられる。
親水性(メタ)アクリレートモノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。ここで「親水性」とは、水100mL(20℃)に対する溶解度が0.3g以上であることをいう。
炭素数が3以上のアルキル基を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メ
タ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数が3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。ここで「疎水性」とは、水100mL(20℃)に対する溶解度が0.3g未満であることをいう。
環状構造を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリルアミドモノマー単位又はそのN-置換誘導体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はそのN-置換誘導体が挙げられる。
芳香族モノマー単位としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
また、第1の樹脂は、上記のモノマー単位以外のモノマー単位、例えばカルボン酸モノマー単位等を有していてもよい。第1の樹脂がカルボン酸モノマー単位を有することにより、複合樹脂微粒子の相対酸価を制御することができる。
カルボン酸モノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで、「カルボン酸モノマー単位」とは、カルボキシル基と重合性不飽和基を有する重合性モノマー単位をいう。
上記モノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第1の樹脂としては、アクリル樹脂以外にも、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂などを用いることができる。ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂は、それぞれ、ポリマーの主骨格中に、ポリウレタン構造、ポリオレフィン構造、ポリエステル構造、ポリエーテル構造を有する樹脂であればよい。
第1の樹脂は架橋されたものであってもよい。架橋されたものとする場合、例えば上述の架橋性成分である二官能以上の(メタ)アクリルモノマー単位を含むものとしたり、(メタ)アクリル基以外の重合性官能基を有する2官能以上のモノマー単位を含むものとしたり、樹脂に架橋構造を付与する架橋剤等を用いて架橋させたものとしたりすればよい。
第1の樹脂の架橋率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。一方、架橋率の下限は0%であり、つまり架橋なしでも良い。第1の樹脂の架橋率が前記範囲にあると、複合樹脂微粒子が記録媒体上で溶解し易く、耐擦性が優れ、OD値がより優れる点で好ましい。また、複合樹脂微粒子がインク中では溶解し難くなり、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着による目詰まりが発生せず、インクの連続吐出安定性が良好となる。また、分散安定性が優れる。
ここで、架橋率とは、第1の樹脂の全構成単位に対する架橋剤の添加割合のことをいい、下記式から求めることができる。
架橋率(モル%)=((架橋剤:モル)/(第1の樹脂の全構成単位:モル))×100
<第2の樹脂>
複合樹脂微粒子の一部を構成する第2の樹脂は、SP値が第1の樹脂より高い樹脂であること以外は、前述の第1の樹脂と同様のものに、第1の樹脂とは独立したものとして、構成することができる。
第2の樹脂は、限るものでは無いが、架橋性成分の含有率の少ない樹脂とすることが好ましく、架橋性成分を含有する架橋樹脂ではないことがより好ましい。第2の樹脂が架橋樹脂以外の樹脂であることにより、記録媒体上で速やかに溶解して被膜が形成されるので、記録媒体への密着性や画像の耐擦性がより良好となる。第2の樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。または第2の樹脂の架橋性成分の含有率を第1の樹脂より低いものとすることも上記の点で好ましい。
第2の樹脂のTgの下限値は、10℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、63℃以上がさらに好ましく、67℃以上がさらにより好ましく、73℃以上が特により好まし。上限値は、95℃以下が好ましく、87℃以下が好ましく、83℃以下がより好ましい。第2の樹脂のTgが95℃以下であることにより、加熱処理等により記録媒体上で第2の樹脂が溶解して被膜が形成されるので、画像の耐擦性が良好となる。また、第2の樹脂のTgが10℃以上であることにより、加熱したプラテン上をヘッドが走査する場合であっても、インク中で第2の樹脂が溶融するのを抑制できるため、インクの連続吐出安定性が良好となる。
第2の樹脂のTgは第1の樹脂の場合と同様にして求めることができる。
第2の樹脂としては、特に限定されないが、第1の樹脂と同様に、(メタ)アクリルモノマー単位を有するアクリル樹脂が好ましい。また、第2の樹脂は、上記の通り架橋樹脂ではないことが好ましく、単官能(メタ)アクリルモノマー単位を有する樹脂が好ましい。
単官能(メタ)アクリルモノマー単位としては、特に限定されないが、親水性(メタ)アクリレートモノマー単位、炭素数が3以上のアルキル基を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位、環状構造を有する疎水性(メタ)アクリレートモノマー単位、(メタ)アクリルアミドモノマー単位又はそのN-置換誘導体等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、上記で例示したものと同様のものが挙げられる。
また、第2の樹脂は、第1の樹脂と同様に上記のモノマー単位以外のモノマー単位、例えばカルボン酸モノマー単位等を有していてもよい。第2の樹脂がカルボン酸モノマー単位を有することにより、複合樹脂微粒子の相対酸価を制御することができる。カルボン酸モノマー単位の具体例としては、上記で例示したものと同様のものが挙げられる。
上記モノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第2の樹脂のSP値は、好ましくは10.5~12.0(cal/cm1/2であり、より好ましくは10.7~11.7(cal/cm1/2であり、さらにより好ましくは11.0~11.5(cal/cm1/2であり、特に好ましくは11.1~11.5(cal/cm1/2である。第2の樹脂のSP値が前記範囲内にあると
、複合樹脂微粒子が溶解し易くなるので、記録媒体上で速やかに溶解して被膜が形成される。その結果、画像の耐擦性がより良好となる。SP値の定義は前述と同様である。第2の樹脂のSP値を上記の範囲にするためには、例えば、樹脂を構成するモノマー成分としてSP値が上記の範囲内にあるものを用いたり、複数種のモノマーを用いる場合、樹脂のSP値が上記の範囲内になるように複数種のモノマーを選択し質量比を決めたりすればよい。
<複合樹脂微粒子の物性>
当該複合樹脂微粒子は、SP値が9.0~12.0(cal/cm1/2である。複合樹脂微粒子のSP値は、複合樹脂微粒子の全体としての構成する樹脂のSP値である。本実施形態において樹脂のSP値は、Fedorsの式から計算した値である。
複合樹脂微粒子のSP値は、複合樹脂微粒子を構成する全ての樹脂から求めることもできるし、第1の樹脂のSP値と第2の樹脂のSP値と複合樹脂微粒子における第1の樹脂と第2の樹脂のモル比とから加重平均して求めてもよい。
複合樹脂微粒子のSP値は、9.5~11.7(cal/cm1/2が好ましく、10.0~11.5(cal/cm1/2がより好ましく、10.5~11.2(cal/cm1/2がさらに好ましい。SP値が上記範囲であることで、連続吐出安定性や耐擦性がより優れさらに、OD値や異物抑制の点でも好ましい。
第2の樹脂のSP値は第1の樹脂のSP値よりも高く、0.1(cal/cm1/2以上高いことが好ましく、0.1~1.0(cal/cm1/2高いことがより好ましく、0.2~0.7(cal/cm1/2高いことがさらにより好ましく、0.3~0.5(cal/cm1/2高いことがさらに好ましい。SP値の差が上記範囲の場合、連続吐出安定性や耐擦性がより優れさらに、OD値や異物抑制の点でも好ましい。
複合樹脂微粒子の平均粒径(単位:nm)は、100nm~300nmであることが好ましく、150nm~250nmであることがより好ましく、160nm~240nmであることがさらにより好ましく、170nm~230nmであることがより特に好ましい。複合樹脂微粒子の平均粒径が前記範囲内にあることにより、樹脂の溶解性のバランスに優れたものとなる。すなわち、インク中では複合樹脂微粒子が溶解し難くそのままの状態で存在するため、インクの連続吐出安定性がより良好となる。また、記録媒体上に吐出された後では、複合樹脂微粒子が溶解し易く速やかに被膜が形成されるので、画像の耐擦性が良好となる。複合樹脂微粒子の平均粒径が前記範囲を超えない場合、複合樹脂微粒子による光の散乱が大きくなることにより画像のOD値が低下し光沢度が不良となるということがない。なお、複合樹脂微粒子の平均粒径は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の平均粒径を意味する。後述する実施例においては、動的光散乱法の中でもレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)を用いた。
複合樹脂微粒子における、第2の樹脂と第1の樹脂との質量比は、第1の樹脂が第2の樹脂より質量が大きいものである。複合樹脂微粒子における、第2の樹脂と第1の樹脂との質量比(第2の樹脂の質量/第1の樹脂の質量)は、好ましくは1/20~1/2であり、より好ましくは1/15~1/2.5であり、さらに好ましくは1/11~1/3であり、特に好ましくは1/7~1/3である。第2の樹脂と第1の樹脂との質量比を前記範囲内とすることで、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とが共に向上する傾向にあり、特にインクの連続吐出安定性がより良好となる。
複合樹脂微粒子の酸価は、好ましくは5~35mgKOH/gであり、より好ましくは
7~20mgKOH/gであり、特に好ましくは10~15mgKOH/gである。複合樹脂微粒子の相対酸価が前記範囲内であると、インクの連続吐出安定性と画像の耐擦性とが共に向上する傾向にある。
酸価は、親水性/疎水性の指標となるパラメーターであり、値が大きくなるほど親水性となり、値が小さくなるほど疎水性となる。したがって、複合樹脂微粒子の酸価が前記範囲未満であると、複合樹脂微粒子と有機溶剤とが馴染みやすくなり、複合樹脂微粒子がインク中で溶解し易くなるので、インクジェットヘッド内での樹脂の溶着により目詰まりし、吐出不良となる場合がある。一方、複合樹脂微粒子の酸価が前記範囲を超えると、複合樹脂微粒子と水とが馴染みやすくなり、記録媒体上に水が揮発せずに残りやすくなるため均質な被膜が形成されず、耐擦性が不良となる場合がある。
複合樹脂微粒子の酸価は、複合樹脂微粒子を構成する第1の樹脂についての、モノマー単位の分子量、含有量、モノマー単位に含まれるアニオン性基の数から計算により求めることができる。具体的には複合樹脂微粒子を構成する第1の樹脂の構成から下記式により計算で求める。
(第1の樹脂を構成するモノマーのうちのアニオン性基を有するモノマー1の質量部/第1の樹脂を構成する全モノマーの合計の質量部)/モノマー1の分子量)×モノマー1の分子中のアニオン性基数=A1 (式1)
A1×56.11×1000=複合樹脂微粒子の酸価(mgKOH/g) (式2)
アニオン性基は、カルボキシル基である。第1の樹脂を構成するモノマーのうちのアニオン性基を有するモノマーが複数種ある場合は、モノマー毎に式1と同様の式でA2、A3・・と算出し、A1+A2+A3+・・の合計値を式2のA1として同様に算出する。
複合樹脂微粒子の酸価は、複合樹脂微粒子全体の質量に対して、第1の樹脂が第2の樹
脂微粒子よりも質量が多い場合において、複合樹脂微粒子の最表面に起因する特性が、複合樹脂微粒の最表面を構成する樹脂に起因すると仮定して、第1の樹脂から求める。
複合樹脂微粒子の含有量(固形分換算)は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、0.6質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上10質量%以下が特に好ましい。複合樹脂微粒子の含有量が0.5質量%以上であることにより、耐擦性、密着性により優れる傾向にある。また、複合樹脂微粒子の含有量が20質量%以下であることにより、連続吐出安定性により優れる傾向にある。
<複合樹脂微粒子の合成方法>
複合樹脂微粒子の合成方法については特に限定されないが、例えば公知の乳化重合法又はこれを適宜に組み合わせることによって合成することができる。具体的には、一括混合重合法、モノマー滴下法、プレエマルション法、シード乳化重合法、多段階乳化重合法(二段乳化重合法等)、転相乳化重合法等が挙げられる。以下、複合樹脂微粒子の一例として、第2の樹脂によりコア部または島部が構成され、第1の樹脂によりシェル部または海部が構成されたコアシェル樹脂微粒子または海島構造樹脂微粒子の合成方法について詳細に説明する。
(合成方法1)
まず、水系媒体を用いた通常の乳化重合法により第2の樹脂の粒子を合成する。乳化重合の条件は、公知の方法に準ずればよいが、例えば使用するモノマー全量を100部とした場合に、通常100~500部の水(水系媒体)を使用して重合を行うことができる。重合温度は、-10~100℃が好ましく、-5~100℃がより好ましく、0~90℃がさらに好ましい。また、重合時間は、0.1~30時間が好ましく、2~25時間がより好ましい。乳化重合の方式としては、モノマーを一括して仕込むバッチ方式、モノマー
を分割もしくは連続して供給する方式、モノマーのプレエマルジョンを分割もしくは連続して添加する方式、又はこれらの方式を段階的に組み合わせた方式等を採用することができる。また、通常の乳化重合に用いられる重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤等を、必要に応じて1種又は2種以上使用することができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、2-カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化基を有するラジカル乳化性化合物を含有するラジカル乳化剤、亜硫酸水素ナトリウム、及び硫酸第一鉄等の還元剤を組み合わせたレドックス系を用いることができる。重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えばn-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α-テルネピン、γ-テルネピン、ジペンテン、1,1-ジフェニルエチレンが挙げられる。分子量調節剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;親水基と疎水基とラジカル反応性基とを含有する反応性乳化剤;ビニル系重合体、ポリエステル系重合体等の重合体に親水基を導入した高分子乳化剤等を挙げることができる。乳化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、親水基とは、水に対する親和性が高い原子団のことであり、例えば、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。また、疎水基とは、親水基よりも水に対する親和性が低い原子団のことであり、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、脂環基、芳香環基、アルキルシリル基、パーフルオロアルキル基等が挙げられる。
次いで、得られた第2の樹脂の粒子の存在下において、第1の樹脂用のモノマーを重合させる。具体的には、得られた第2の樹脂の粒子をシード粒子として使用した状態で第1の樹脂用のモノマーをシード重合させることによって、コアシェル樹脂微粒子または海島構造樹脂微粒子を形成することができる。例えば、第2の樹脂の粒子が分散した水系媒体中に、第1の樹脂用のモノマーもしくはそのプレエマルジョン及び必要に応じ架橋剤を一括、分割、又は連続して滴下すればよい。このとき使用する第2の樹脂の粒子の量は、第1の樹脂用のモノマー100質量部に対して、5~50質量部とすることが好ましい。重合に際して架橋剤を用いる場合は、第1の樹脂を架橋させることができる。
架橋剤を用いる場合、架橋剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノールやビスフェノ
ールAなどのフェノール類とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるレゾール型フェノール樹脂を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1~8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1~8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。
重合に際して重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤等を用いる場合には、第2の樹脂の粒子の製造時と同様のものを使用することができる。また、重合時間等の条件についても、第2の樹脂の粒子の製造時と同様にすればよい。
(合成方法2)
次に、第1の樹脂の部を先に合成する重合方法について説明する。まず、第1の樹脂の部を合成する。具体的には、反応性乳化剤を用いて上述の親水性モノマーを含むプレエマルション溶液を調製し、該プレエマルション溶液を重合開始剤及び架橋剤とともに水系媒体中に滴下、重合反応することで第1の樹脂の部を合成する。
次いで、得られた第1の樹脂の部を重合場として、第2の樹脂の部を重合し、本実施形態に係るコアシェル樹脂微粒子または海島構造樹脂微粒子を合成する。具体的には、第1の樹脂の部を含有する水系分散媒体中に上述の疎水性モノマーを含むモノマー混合物を滴下し、第2の樹脂の部を重合し、コアシェル樹脂微粒子または海島構造樹脂微粒子とする。なお、第1の樹脂の部を重合場とする場合、モノマー混合物には乳化剤を含有させる必要がないため、モノマー油滴として滴下することができる。
かかる多段階乳化重合法によれば、反応性乳化剤を用いて第1の樹脂の部を合成し、乳化剤フリーで第2の樹脂の部を合成することができるため、インク組成物中の乳化剤の含有量を容易に0.01質量%以下とすることができる。インク組成物において、含有される乳化剤の含有量が0.01質量%以下であると、インク界面(大気-インクにおける気液界面、インク収容容器等のインク接触部材-インクにおける固液界面)におけるインク成分の凝集が抑制され、保存安定性に優れるため好ましい。また、インク組成物において、含有される乳化剤の含有量が0.01質量%以下であると、起泡性、消泡性に優れるため、インク充填可能な注入口を有するインク収容容器を好ましく用いることができる。ここで、「インク充填可能な注入口を有するインク収容容器」とは、着脱又は開閉可能な注入口を有するインク収容容器のことであり、ユーザーが容易にインク組成物を注入できるようになっている一方で、注入時に泡立ちやすい。なお、注入口の開口面積が20mm以上であるとインク組成物の充填が容易になるため好ましい。このようなインク収容容器は、例えば、特開2005-219483号公報や特開2012-51309号公報に開示されている
また、大量の乳化剤を用いてコアシェル樹脂微粒子又は海島構造樹脂微粒子を合成する場合であっても、コアシェル樹脂微粒子の合成後に過剰な乳化剤を除去することによって、インク組成物に含まれる乳化剤の含有量を0.01質量%以下としてもよい。
最後に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基で中和してpHを調
整して、必要に応じてろ過することにより、コアシェル樹脂微粒子分散液が得られる。合成方法において、モノマーの濃度や重合温度や撹拌速度や重合時間などを調整することで、コアシェル樹脂微粒子としたり、海島構造樹脂微粒子としたりすることができる。特に第2の樹脂の合成の際のこれらの重合条件を調整することが好ましい。
このような海島構造樹脂微粒子やコアシェル樹脂微粒子の製造方法については、例えばColloids and Surfaces A:Physiochemical and Engineering Aspects 153(1999) 255-270を参考にすればよい。
1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水としては、特に制限されることなく、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。水を含むことで、有機溶剤を少なくすることができ、その結果、環境に配慮したインク組成物とすることができる。
水の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは40~95質量%であり、より好ましくは45~90質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%であり、さらにより好ましくは55~75質量%であり、特に好ましくは60~70質量%である。
1.3.その他の添加剤
1.3.1.色材
本実施形態に係るインク組成物は、色材を含有することが好ましい。色材としては、特に限定されないが、例えば顔料又は染料が挙げられる。
<顔料>
上記色材のうち顔料は、水に不溶又は難溶であるだけでなく光やガス等に対しても退色しにくい性質を有する。そのため、顔料を用いたインクにより記録された記録物は、耐水性、耐ガス性、耐光性、及び保存安定性が良好となる。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。これらの中でも、発色性が良好であって、比重が小さいため分散時に沈降しにくいことから、無機顔料に属するカーボンブラック及び有機顔料のうち少なくともいずれかが好ましい。
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、及び酸化チタンが挙げられる。
上記のカーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)が挙げられる。また、カーボンブラックの市販品として、例えば、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上全て商品名、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上全て商品名、デグサ社(Degussa AG)製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上全て商品名、コロンビアカーボン社(Columbian Carbon Japan Ltd)製)、コロンビアンケミカルズ(Columbian Chemicals)製、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(以上全て商品
名、キャボット社(Cabot Corporation)製)が挙げられる。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料が挙げられる。有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、60、65、66、C.I.バットブルー4、60が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213が挙げられる。
また、シアン、マゼンタ及びイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、及び酸化ジルコニウムの白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
また、上記の顔料以外に、パール顔料やメタリック顔料を用いることもできる。パール顔料としては、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<染料>
上記色材のうち染料としては、以下に限定されないが、例えば、酸性染料、直接染料、
反応性染料、及び塩基性染料が挙げられる。染料の具体例として、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
色材の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5~15質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、特に好ましくは1~5質量%である。
1.3.2.有機溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂溶解性溶剤、浸透性溶剤、保湿性溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂溶解性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラスアミド(HMPA)、環状アミド、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらの中でも環状アミドが好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドンがより好ましく、2-ピロリドンがさらに好ましい。樹脂溶解性溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような樹脂溶解性溶剤を用いることにより、複合樹脂微粒子のヘッド、キャビティ内での固着の抑制、並びに、低吸収性又は非吸収性記録媒体に対しての密着性及び耐擦性がより向上する傾向にある。
特にインク組成物が環状アミドを含むことにより、複合樹脂微粒子の安定性がより向上し、インク組成物中の異物の析出を効果的に抑制できるため、保存安定性、特に高温下での保存安定性により優れる傾向にある。また、環状アミドは、保湿性能も有するため、複合樹脂微粒子及びその他の成分が、インク組成物の保管時に水分が蒸発することにより、凝集し固化するのを抑制することができる。これにより、インクジェット記録時にヘッドのノズル近傍における目詰まりを防止し、インク組成物の吐出安定性がより優れる傾向にある。
樹脂溶解性溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは3~25質量%であり、より好ましくは5~20質量%であり、特に好ましくは7~17質量%である。樹脂溶解性溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、インク中の色材及び複合樹脂微粒子の分散安定性やインクの連続吐出安定性がより向上する傾向にある。
浸透性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等の好ましくは炭素数4以上のアルカンジオール;アルキレングリコールモノエーテル、アルキレングリコールジエーテル等のグリコールエーテルが挙げられる。浸透性溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような浸透性溶剤を用いることにより、記録媒体へのインクの埋まり性(ぬ
れ広がり性)や浸透性がより向上する傾向にある。
浸透性溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%であり、特に好ましくは6~12質量%である。浸透性溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、記録媒体へのインクの埋まり性(ぬれ広がり性)や浸透性がより向上する傾向にある。
保湿性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリンなどのポリオール化合物(水酸基が3個以上);エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール等の好ましくは炭素数3以下アルカンジオール又は炭素数3以下のアルキレングリコールからなるポリエーテルを骨格とするアルカンジオールが挙げられる。保湿性溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような保湿性溶剤を用いることにより、インクジェットヘッド内のインクの乾燥がより抑制され、結果として連続吐出安定性がより向上する傾向にある。
保湿性溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは0~12質量%であり、より好ましくは2.5~10質量%であり、特に好ましくは5~7.5質量%である。保湿性溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、インクジェットヘッド内のインクの乾燥がより抑制され、結果として連続吐出安定性がより向上する傾向にある。
本実施形態に係るインク組成物が有機溶剤を含有する場合、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量の下限は0質量%である。標準沸点が280℃超過の有機溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、乾燥性の点で非吸収性又は低非吸収性記録媒体への記録に適したものとなる
一方、本実施形態に係るインク組成物が有機溶剤を含有する場合、標準沸点が150~260℃の有機溶剤を含有することが好ましい。標準沸点が150~260℃の有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、特に好ましくは15~30質量%である。標準沸点が150~260℃の有機溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、インク中の色材及び複合樹脂微粒子の分散安定性、連続吐出安定性、記録媒体へのインクの埋まり性(ぬれ広がり性)や浸透性、インクの耐乾燥がより向上する傾向にある。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは15~40質量%であり、より好ましくは20~35質量%であり、特に好ましくは25~30質量%である。有機溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、インク中の色材及び複合樹脂微粒子の分散安定性、連続吐出安定性、記録媒体へのインクの埋まり性(ぬれ広がり性)や浸透性、耐擦性、インクの耐乾燥がより向上する傾向にある。
有機溶剤は、有機溶剤の前述のSP値が第2の樹脂のSP値以上のSP値である有機溶剤を含むことが好ましく、第2の樹脂のSP値より高いSP値である有機溶剤を含むことがより好ましい。また、有機溶剤が、SP値が11以上の有機溶剤を含むことが好ましく
、11.5~20.0の有機溶剤を含むことがより好ましい。
1.3.3.界面活性剤
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。このような界面活性剤を含有することにより、溶解時間を好ましい範囲に制御しやすい傾向にあり、また、入手しやすく、インク組成物の埋まり性も向上する傾向にある。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S-144、S-145(旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(Dupont社製);FT-250、251(株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤のHLBは、好ましくは6~15であり、より好ましくは7~14であり、さらに好ましくは11~14であり、特に好ましくは11~13である。界面活性剤のHLBが前記範囲内であることにより、溶解時間を好ましい範囲に制御しやすい傾向にあり、また、HLBが前記範囲内である界面活性剤は入手しやすく、インク組成物の埋まり性も向上する傾向にある。ここで、「HLB」とは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略であり、グリフィン法で定義される。
界面活性剤の表面張力は、好ましくは15~45mN/mであり、より好ましくは17
.5~40mN/mであり、特に好ましくは20~35mN/mである。界面活性剤の表面張力が上記範囲内であることにより、インク組成物の埋まり性が向上する傾向にある。なお、表面張力(mN/m)は、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定することができる。
界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.3~3質量%であり、より好ましくは0.4~2質量%であり、特に好ましくは0.5~1.6質量%である。界面活性剤の含有量が3質量%以下であることにより、耐擦性及び連続吐出安定性がより向上する傾向にある。また、界面活性剤の含有量が0.3質量%以上であることにより、得られる記録物の埋まり性がより向上し、かつ、連続吐出安定性がより向上する傾向にある。連続吐出安定性の向上は、樹脂の固着を抑制するほか、仮に樹脂が固着してもはがれやすくなり、ヘッドクリーニング等で固着樹脂を効率的に除去することが可能となるためや、樹脂が固着する際に、樹脂及び顔料の周りに界面活性剤が存在することで、固着した樹脂の塊がほぐれやすくなるためと考えられる。
1.3.4.その他の樹脂
本実施形態に係るインク組成物は、分散樹脂又は水溶性樹脂等の樹脂を含んでいてもよい。分散樹脂又は水溶性樹脂を含むことにより、得られる画像の光沢性がより向上する傾向にある。分散樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル酸共重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。また限るものでは無いがワックスを含んでいてもよい。ワックスとしては、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等があげられる。
1.3.5.その他の成分
本実施形態に係るインク組成物は、保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
1.4.水系インクジェットインク組成物の製造方法
本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、上述の成分(材料)を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを行い、不純物を除去することにより得ることができる。ここで、インクが顔料を含有する場合、当該顔料は、あらかじめ溶媒中に均一に分散させた状態に調製してから混合することが、取り扱いが簡便になるため好ましい。顔料をあらかじめ分散させた状態に調製する際に分散樹脂などの分散剤を用いて分散することが好ましい。
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラーやマグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。ろ過方法
として、例えば、遠心ろ過やフィルターろ過などを必要に応じて行うことができる。
1.5.水系インクジェットインク組成物の物性
<表面張力>
25℃におけるインク組成物の表面張力は、好ましくは20~50mN/mであり、より好ましくは20~40mN/mである。表面張力が前記範囲内にあることにより、吐出安定性が良好となる傾向にある。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定することができる。
<粘度>
25℃におけるインク組成物の粘度は、好ましくは20mPa・s以下であり、より好ましくは10mPa・s以下である。粘度が前記範囲内にあることにより、吐出安定性が良好となる傾向にある。なお、粘度は、粘度計を用いて測定することができる。
<用途>
本実施形態のインク組成物は、後述するインクジェット記録方法に用いるインク組成物であったり、後述するインクジェット記録装置に用いるインク組成物であったりしてもよい。
2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体を加熱する工程と、加熱工程により加熱された記録媒体にヘッドから上述の水系インクジェットインク組成物を吐出して付着させる付着工程と、を備えることを特徴とする。
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、上述のインク組成物を用いることにより、インク中に上述の複合樹脂微粒子を含有しており、該複合樹脂微粒子が記録ヘッドのノズルに付着することを抑制できるため、連続吐出安定性が良好となる。また、記録媒体を加熱処理することにより複合樹脂微粒子が速やかに溶解し、記録媒体上に記録された画像に被膜が形成されるため、耐擦性が向上する。
以下、記録媒体、記録装置、各工程の順に説明する。
2.1.記録媒体
記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性記録媒体、低吸収性記録媒体、非吸収性記録媒体が挙げられる。本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、画像の表面に被膜が形成されることにより耐擦性が付与される。したがって、インクが染み込む吸収性記録媒体よりも、インクが染み込み難い低吸収性記録媒体又はインクが染み込まない非吸収性記録媒体上に記録する場合に耐擦性が良好となるため、本実施形態に係るインクジェット記録方法を用いることが有利となる。
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク組成物の浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙、インク組成物の浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。インクジェット用紙としては、特に限定されないが、具体的には、シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えた用紙が挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インク組成物を受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
ここで、「低吸収性記録媒体」及び「非吸収性記録媒体」は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msecまでの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体をいう。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。
また、非吸収性記録媒体又は低吸収性記録媒体は、記録面の水に対する濡れ性によっても分類することができる。例えば、記録媒体の記録面に0.5μLの水滴を滴下し、接触角の低下率(着弾後0.5ミリ秒における接触角と5秒における接触角の比較)を測定することによって記録媒体を特徴付けることができる。より具体的には、記録媒体の性質として、「非吸収性記録媒体」の非吸収性は上記の低下率が1%未満のことを指し、「低吸収性記録媒体」の低吸収性は上記の低下率が1%以上5%未満のことを指す。また、吸収性とは上記の低下率が5%以上のことを指す。なお、接触角はポータブル接触角計 PCA-1(協和界面科学株式会社製)等を用いて測定することができる。
2.2.記録装置
本実施形態で用い得るインクジェット記録装置は、上記インク組成物を記録媒体に対して吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドを加熱するヘッド加熱手段と、前記インク組成物が付着した前記記録媒体を乾燥する乾燥手段と、を備えている。
図1は、インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図である。図1に示すように、記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、硬化ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、を備えている。
ヘッド加熱手段は、インクジェットヘッド2を加熱するものである。ヘッド加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、温風やIRヒーター3によりインクジェットヘッド2を直接加熱する手段や、プラテンヒーター4により加熱した記録媒体を介してインクジェットヘッド2を加熱する手段が挙げられる。インクジェットヘッド2を加熱することによりインクジェットヘッド2内のインク組成物は粘度が低下し、良好に吐出されることができる。
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から記録媒体を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4など記録媒体の裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体の厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、プラテンヒーター4を用いると、インクジェットヘッド2側と反対側から記録媒体を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2が比較的加熱されにくくなる。
記録装置1は、記録媒体に対してインク組成物が吐出される際に、記録媒体の表面温度が20~70℃となるように加熱する記録媒体加熱手段をさらに備えることが好ましい。記録媒体加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、IRヒーター3、プラテンヒーター4が挙げられる。記録媒体加熱手段を有することにより、記録媒体に付着した複合樹脂微粒子をより速やかに溶解し、均質な塗膜を形成することができる。
乾燥手段は、インク組成物が付着した記録媒体を加熱して乾燥するものである。乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、硬化ヒーター5、温風機構(不図示)、及び恒温槽(不図示)などの手段が挙げられる。乾燥手段が、画像が記録された記録媒体を加熱することにより、インク組成物中に含まれる水分などがより速やかに蒸発飛散して、インク組成物中に含まれる複合樹脂微粒子によって被膜が形成される。このようにして、記録媒体上においてインク乾燥物が強固に定着(接着)して、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
なお、上記の「記録媒体を加熱」するとは、記録媒体の温度を所望の温度まで上昇させることを言い、記録媒体を直接加熱することに限られない。
記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。乾燥後、冷却ファン6により記録媒体上のインク組成物を冷却することにより、記録媒体上に密着性よく被膜を形成することができる傾向にある。
また、記録装置1は、記録媒体に対してインク組成物が吐出される前に、記録媒体を予め加熱する(プレ加熱する)プレヒーター7を備えていてもよい。インク組成物の吐出前に記録媒体がプレ加熱されることにより、記録媒体、特に非吸収性及び低吸収性の記録媒体上に滲みが少ない高画質な画像を形成することができる傾向にある。プレ加熱温度は、80~120℃が好ましい。
さらに、記録装置1は、記録媒体に付着したインク組成物がより効率的に乾燥するように通気ファン8を備えていてもよい。
2.3.インクジェット記録方法の各工程
<加熱工程>
記録媒体を加熱する工程である。加熱工程では、記録媒体の表面温度の上限が、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下、よりさらに好ましくは40℃以下、特に好ましくは38℃以下となるように加熱する。また、記録媒体の表面温度の下限が、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、特に好ましくは30℃以上となるように加熱する。記録媒体の表面温度が70℃以下であることにより、インクジェットヘッドの加熱が抑制され、印刷中のノズルの抜けが抑制され、連続吐出安定性がより向上する傾向にある。また、記録媒体の表面温度が20℃以上であることにより、記録媒体、特に塩化ビニルのような非吸収性記録媒体上のインク組成物のドットの埋まり性がより向上し、画質がより向上する傾向にある。
上記の記録装置1を用いる場合、記録媒体の表面温度は、IRヒーター3及びプラテンヒーター4の少なくともいずれかを用いて制御することができる。
<付着工程>
加熱工程により加熱された記録媒体に、ヘッドから上記インク組成物を吐出して付着させる工程である。例えば上述のヘッド加熱手段によりインクジェットヘッド2を加熱すると、インクジェットヘッド2内のインク組成物は粘度が低下するため、インクの連続吐出安定性が向上する。
図2は、インクジェットヘッド2を模式的に示す拡大断面図である。インクジェットヘッド2は、圧力室21と、該圧力室21内のインク組成物に圧力を付与してノズル22から吐出させる素子23を備え、前記圧力室21において、前記ノズル22に向かい前記水系インク組成物が移動する出口と対向する位置以外の場所に前記素子23が配置されているものである。インクをノズルから押し出す力の点で素子23がノズルの直上にあると樹脂の固着24解消の観点から有利であるが、ヘッドの設計上の理由で好ましくなく、ノズルの直上以外の場所に素子23がある場合、設計上有利であり、このような場合に本発明が特に有用である。素子23は、機械的な変形によりキャビティの容積を変化させる圧電素子などの電気機械変換素子や、熱を発することによりインクに気泡を発生させ吐出させる電子熱変換素子などを用いて形成することができる。
圧力室21においてノズル22に連通する出口25と対向する位置は、図1において、出口25の壁から仮に図の上方に向かい線を延長した場合に、延長線及び延長線で囲まれた中の領域である。例えば図1のヘッドであれば、出口25は、インクが吐出する方向に垂直な方向における面積がノズル22と同じである部分である。当該位置以外の場所に素子23が配置されているとは、この領域の少なくとも一部に素子23の少なくとも一部がないことをいう。この場合、圧電素子や圧力室の設計の自由度が高い点で好ましい。
インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルからインク組成物を排出させる工程を行うことなく記録を1時間以上行うことが好ましい。ここで、外部から付与する圧力は、吸引(負圧)や、ヘッドの上流から正圧を付与することであり、ヘッド自身の機能によるインク排出(フラッシング)ではない。なお、外部から圧力を付与してインクを排出しない限り、記録は連続でなくてもよく、休止してもよい。この場合、記録の時間の累積時間が1時間以上である。上記記録時間は、好ましくは1~4時間であり、より好ましくは2~3時間である。このような、インクジェット記録方法であれば、樹脂が比較的固着しやすい状態にあるため、本実施形態の効果をより発揮することができる。また、回の記録に際し、記録中に、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルからインク組成物を排出させる工程を行わないこととすることが好ましい。さらに、記録の前または後の少なくともいずれかに、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルからインク組成物を排出させる工程を行うこととすることも好ましい。上記の場合、記録速度を高速にでき、本実施形態の効果をより発揮し、吐出安定性を一層優れた点にできる点で好ましい。
<乾燥工程>
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記付着工程の後、インク組成物が付着した記録媒体を乾燥させる乾燥工程を有していてもよい。これにより、記録媒体上のインク組成物に含まれる複合樹脂微粒子が、溶解し、埋まり性の良い記録物を形成することができる。乾燥工程における記録媒体の表面温度は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上100℃以下である。乾燥温度が前記範囲内であることにより、耐擦性がより向上する傾向にある。
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.複合樹脂微粒子の製造
<製造例1>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水2600g及びラウリル硫酸ナトリウム0.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム0.5gにアクリルアミド2gにメチルメタクリレート180g、ブチルアクリレート25g、及びメタクリル酸2gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。熟成終了後、予めイオン交換水500g、ラウリル硫酸ナトリウム1.5gにアクリルアミド30gにスチレン1200g、2-エチルヘキシルメタクリレート200g、及びメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水とを添加して固形分30重量%、pH8に調整した。得られた粒子は海島構造であった。このようにして架橋を有しない樹脂微粒子を製造した。
<製造例2>
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水2600g及びラウリル硫酸ナトリウム0.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム0.5gにアクリルアミド2gにメチルメタクリレート180g、ブチルアクリレート25g、及びメタクリル酸2gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。熟成終了後、予めイオン交換水500g、ラウリル硫酸ナトリウム1.5gにアクリルアミド30gにスチレン1200g、2-エチルヘキシルメタクリレート200g、メタクリル酸30g、及びエチレングリコールジメタクリレート15gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水とを添加して固形分30重量%、pH8に調整した。得られた粒子はコアシェル構造であった。このようにして第1の樹脂(シェル)が架橋を有する樹脂微粒子を製造した。
架橋を有しない樹脂微粒子は製造例1を基本とし、第1の樹脂に架橋を有する樹脂微粒子は製造例2を基本として、用いた各モノマーの種類や質量を調整して、表2の各例毎の物性値等を有する樹脂微粒子を製造した。表2中の架橋有無や架橋率は第1の樹脂のものであり、第2の樹脂は架橋なしである。得られた複合樹脂微粒子の各樹脂について、前述の様にしてガラス転移温度Tg(℃)をそれぞれ算出した。
また、上記で得られた複合樹脂微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社)により測定して、複合樹脂微粒子の平均粒径(nm)を求めた。さらに、第1の樹脂及び第2の樹脂のSP値、複合樹脂微粒子酸価や架橋率については、上述の「1.水系インクジェットインク組成物」に記載の方法に従ってそれぞれ求めた。第2の樹脂と第1の樹脂の質量比は複合樹脂微粒子の製造の際に用いたモノマーの質量から求めた。
3.2.水系インクジェットインク組成物の調製
各材料を下表1に示す組成となるように混合し、十分に撹拌することにより、水系インクジェットインク組成物を得た。なお、下表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100質量%である。
Figure 0007054346000002
3.3.評価方法
<インクジェット記録方法>
記録装置として、プラテンヒーターと、図2に記載のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンター(商品名PX-G930、セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用いた。記録装置のヘッドのノズル列(1ノズル列は180ノズル)の一つに上記で調製した各水系インクジェットインク組成物を充填し、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に吐出し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、付着量が12mg/inchとなるように付着させた。この印字中における、記録媒体の一次乾燥時の表面温度は35℃となるようにプラテンヒーターを作動させた。また、記録装置から排出された記録媒体をオーブンで100℃で2分、二次乾燥させた。
<OD値の評価>
印刷後、記録物を一般環境で1時間放置した。放置後、ベタ部分についてGretag濃度計(Gretag Macbeth社製)を用いてOD値を測定した。得られたOD値に基づき、下記評価基準によりOD値を評価した。
(評価基準)
A:OD値が1.9超。
B:OD値が1.6以上1.9以下。
C:OD値が1.6未満。
<耐擦性の評価>
上記のようにして得られた記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB-301(テスター産業株式会社製)を用いて、金巾3号布を500gの荷重で50往復させる試験(JIS P 8136)を行った。下記評価基準により耐擦性を評価した。
(評価基準)
A:傷や剥離がない。
B:ストローク面積の1%以下の傷または剥離がある。
C:ストローク面積の1%超の傷または剥離がある。
<異物の評価>
上記で得られた水系インクジェットインク組成物をポリエチレン製インクパックに封入し、70℃6日間放置した後、10ccを採取してAフィルターに通液評価を行った。#4300金属メッシュフィルターに10mL通液し、フィルター上の異物の有無を確認し
た。
(評価基準)
A:異物は認められない。
B:フィルター面積の10%以下の面積で覆う異物が認められる。
C:フィルター面積の10%超の面積で覆う異物が認められる。
<連続吐出安定性の評価>
上記インクジェット記録方法で記録を行った。まず、ノズル表面を布で軽く2、3回叩き、インクを吐出しなくなったノズルをノズル列中に半分程度設けた。この吐出しなくなったノズルはそのままにした状態で、吸引クリーニングは行わないまま2時間連続で印刷を行った。印刷は、プリンターを設置した部屋を温度35℃相対湿度20%の環境下で行い、印刷後、次のような吐出安定性の試験を行った。下記評価基準により連続吐出安定性を評価した。なお、別途、上記のインクを吐出しなくなったノズルがノズル列中に半分程度設けた状態で印刷前に直ちに吸引クリーニングを1回行ったところ、全例とも全ノズル回復した。
(評価基準)
A:1回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。もしくは吸引クリーニングなしで全ノズル正常だった。
B:2回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。
C:3回の吸引クリーニングで全ノズル回復した。
D:3回の吸引クリーニングで回復しないノズルがあった。
3.4.評価結果
各実施例及び各比較例で用いた、複合樹脂微粒子の各物性と評価結果を下表2に示した。
Figure 0007054346000003
評価の結果、第1の樹脂と第2の樹脂からなり、SP値が9.0~12.0(cal/cm1/2で、第2の樹脂のSP値が第1の樹脂のSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子を含有する水系インクジェットインク組成物である実施例は何れも、連続吐出安定性と耐擦性が共に優れていることがわかった。これに対し、そうではない水系インクジェットインク組成物である比較例は何れも、連続吐出安定性と耐擦性の何れかが劣っていた。
詳細には、実施例1と実施例3の比較から、複合樹脂微粒子の平均粒径が比較的小さいほうが、耐擦性やOD値が特に優れていた。
実施例4~8、1の比較から、第1の樹脂のSP値が大きいほうが、耐擦性が特に優れ、小さいほうが連続吐出安定性や異物低減が特に優れていることがわかった。
実施例9~12の比較から、第2の樹脂の質量が小さいほど、連続吐出安定性や異物低減が特に優れていた。
実施例13~18、1の比較から、樹脂微粒子の酸価が比較的小さいほうが、連続吐出安定性や異物低減が特に優れ、耐擦性も特に優れ、一方、酸価が小さすぎないほうが、異物低減が特に優れていた。
実施例19~25、1の比較から、第1樹脂の架橋率が大きいほうが連続吐出安定性や異物低減が特に優れ、小さいほうが耐擦性やOD値が特に優れていた。実施例20~22から、架橋率を比較的小さくして耐擦性が特に優れるようにする場合に、樹脂微粒子の平均粒径や第2の樹脂のSP値や第1の樹脂のSP値などの他の物性値を調整することで、連続吐出安定性や異物低減も優れたものにでき、こうすることで、耐擦性が特に優れたも
のにできる点で有用であることがわかった。なお、表中には記載しなかったが、二次乾燥の温度を95℃×1分にして同様に記録を行ったところ、全例とも耐擦性が低下する傾向があったが、実施例19~22は耐擦性評価がA又はBを維持していた。このことから、二次乾燥温度が安定しないなど、耐擦性が若干低下するような場合でも優れた耐擦性を維持することができる点で、架橋率は低いほうが好ましいことがわかった。
実施例26~29、1の比較から、第1樹脂のTgが高いほうが連続吐出安定性が特に優れ、低いほうが異物低減が特に優れた。第2樹脂のTgが高いほうが連続吐出安定性や異物低減や耐擦性が特に優れた。
これに対し、比較例1~3は、樹脂微粒子が1つの樹脂からなる樹脂微粒子であるが、比較例1、2は耐擦性が少なくとも劣っていた。比較例3は、連続吐出安定性が少なくとも劣っていた。
比較例4,5は、質量比が大きい方の樹脂のSP値が、質量比が小さい方の樹脂のSP値より低くなっていない樹脂微粒子であるが、比較例4は、連続吐出安定性が劣り、比較例5は、耐擦性が劣っていた。
比較例6は、樹脂微粒子がSP値が12を超えている樹脂微粒子であったが、連続吐出安定性が劣っていた。
比較例7は、樹脂微粒子がSP値が9未満の樹脂微粒子であったが、耐擦性が劣っていた。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…記録装置、2…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…硬化ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、21…圧力室、22…ノズル、23…素子、24…樹脂の固着、25…出口

Claims (8)

  1. 第1の樹脂及び第2の樹脂からなり、Fedorsの式で算出されるSP値が9.0~12.0(cal/cm1/2であって、前記第2の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が11.0~12.0(cal/cm 1/2 であり、前記第1の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が9.0~11.5(cal/cm 1/2 であり、前記第2の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値が前記第1の樹脂のFedorsの式で算出されるSP値より高く、前記第1の樹脂が前記第2の樹脂より質量が大きい複合樹脂微粒子、を含有
    前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂をシェル部とし、前記第2の樹脂をコア部とするコアシェル構造、および、前記第1の樹脂中に前記第2の樹脂が島状に存在する海島構造の、少なくともいずれかの構造を有する、水系インクジェットインク組成物。
  2. 前記第1の樹脂のガラス転移温度が60~95℃である、請求項1に記載の水系インクジェットインク組成物。
  3. 前記複合樹脂微粒子において、前記第2の樹脂と前記第1の樹脂との質量比(第2の樹脂の質量/第1の樹脂の質量)が、1/11~1/2である、請求項1又は2に記載の水系インクジェットインク組成物。
  4. 前記複合樹脂微粒子の平均粒径が100~300nmである、請求項1~のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  5. 前記複合樹脂微粒子の酸価が5~35mgKOH/gである、請求項1~のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  6. 前記複合樹脂微粒子が、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂の相分離構造を有する、請求
    項1~のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  7. さらに、有機溶剤としての環状アミドを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  8. 標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、かつ、標準沸点が150~260℃の有機溶剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
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