JP7039821B2 - インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット - Google Patents
インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット Download PDFInfo
- Publication number
- JP7039821B2 JP7039821B2 JP2016128885A JP2016128885A JP7039821B2 JP 7039821 B2 JP7039821 B2 JP 7039821B2 JP 2016128885 A JP2016128885 A JP 2016128885A JP 2016128885 A JP2016128885 A JP 2016128885A JP 7039821 B2 JP7039821 B2 JP 7039821B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ink composition
- pretreatment liquid
- mass
- fabric
- urethane
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
- Coloring (AREA)
- Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
Description
カチオン性有機化合物を含有する前処理液により処理された布帛に対して、
架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物を付着させ、
前記布帛を加熱して行われる。
前記捺染インク組成物は、さらに顔料を含有してもよい。
前記カチオン性有機化合物は、カチオン性ポリマー及びカチオン性界面活性剤の少なくとも1種であってもよい。
前記ウレタン系樹脂は、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有してもよい。
前記ウレタン系樹脂は、破断点伸度が170%以上であってもよい。
カチオン性有機化合物を含有する前処理液と、
架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物と、
を含む。
ことができる。
本実施形態のインクジェット捺染方法は、カチオン性有機化合物を含有する前処理液により布帛を処理する工程、処理された前記布帛に対して、架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物を付着させる工程、及び前記布帛を加熱する工程を少なくとも有する。以下、本実施形態に係る捺染方法について、布帛、捺染方法の順に説明する。
本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、布帛を用いて行われる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、顔料のよりすぐれた定着性を得ることができる。
次に、本実施形態に係る捺染方法について工程毎に説明する。
前処理液(後述)を布帛に付着させる工程は、布帛の少なくとも一部の領域に、前処理液を付与する工程である。本工程では、前処理液の付着量が100mg/inch2以上3000mg/inch2以下となるように付与することが好ましく、130mg/inch2以上1500mg/inch2以下となるように付与することがより好ましく、193mg/inch2以上500mg/inch2以下となるように付与することがさらに好ましい。前処理液の付着量を0.02g/cm2以上とすることで、布帛に対して前処理液を均一に塗布しやすくなるので、画像の色ムラを抑制できる。また、前処理液の付着量を0.5g/cm2以下とすることで、画像の滲みを抑制できる。また、前処理液の付着量は、布帛の面積当たりの質量に対して70質量%以上100質量%以下であることも好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
捺染インク組成物(後述)を布帛にインクジェット法により付着させる工程は、上記前処理液を付着させる工程によって前処理液を付与した領域の少なくとも一部に、捺染インク組成物をインクジェット法により付与する工程である。これにより、捺染インク組成物に含まれる顔料等の成分とカチオン性有機化合物とが反応又は相互作用することで、顔料等の成分が凝集するので、発色性に優れた画像が得られる。さらに、カチオン性有機化合物と、捺染インク組成物中の架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋体との相互作用も生じさせることができ、記録される画像の摩擦堅牢性も良好になる。
組成物の付着量が6mg/cm2以下であることで、記録される画像の乾燥性が良好になって、例えば画像の滲みを抑制できる。
本実施形態に係る捺染方法は、布帛に付与したインク組成物(画像)を加熱する加熱工程を含む。
本実施形態のインクジェット捺染方法によれば、カチオン性有機化合物により、捺染インク組成物に含まれる色材を布帛の表面付近に留め、十分な発色性を有する画像(捺染物)を得ることができるとともに、架橋性基を有するウレタン系樹脂が加熱されることにより架橋するとともに、布帛とカチオン性有機化合物との絡み合い、及び、カチオン性有機化合物と架橋されたウレタン系樹脂との絡み合い、等の相互作用により、色材を布帛に対して十分に定着することができ、良好な堅牢性を有する画像(捺染物)を得ることができる。
本実施形態に係る前処理液は、後述の捺染インク組成物をインクジェット法により布帛
に付着させて行う上述のインクジェット捺染方法に用いられる。より具体的には、本実施形態に係る前処理液を布帛に付着させ、その後に捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて、布帛の捺染を行うために用いられる。
本実施形態の前処理液は、少なくともカチオン性有機化合物を含有する。カチオン性有機化合物は、捺染インク組成物(後述)の成分を凝集又は増粘させる。すなわち、カチオン性有機化合物は、捺染インク組成物に含まれる顔料及び樹脂等の成分の少なくとも一部と相互作用することで、顔料を凝集させる機能を有する。これにより、捺染インク組成物により記録される画像の発色性及び定着性を向上させることができる。また、カチオン性有機化合物は、捺染インク組成物に含まれる顔料及び樹脂等の少なくとも一部の成分と相互作用することで、捺染インク組成物の粘度を高める(増粘)ことができる。これにより、捺染インク組成物が布帛の内部に浸透しすぎることを抑制して発色性を高めることができる。また、捺染インク組成物の増粘により、滲みやブリードを軽減させることができる場合がある。
ベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
ーゲンHB-C、アモーゲンAOL(いずれも第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態の前処理液の全体に対するカチオン性有機化合物の合計の含有量(固形分量)は、上述の効果が発揮されるように適宜決定することができ、例えば、前処理液の全質量に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下、特に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
2.2.1.水
本実施形態に係る前処理液は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、前処理液を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
本実施形態の前処理液は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤は、記録媒体に対する前処理液の濡れ性を向上させることができる場合がある。水溶性有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類及びアルコキシアルキルアミド類の少なくとも一種を例示できる。また、水溶性有機溶剤としては、これら以外の含窒素化合物、糖類、アミン類等であってもよい。また、前処理液は、後述する捺染インク組成物に用い得る水溶性有機溶剤を含有してもよい。
9以下、特に好ましくは6以上9以下である。
前処理液は、樹脂エマルションを含有してもよい。樹脂エマルションを含有することで、インク組成物に含まれる顔料の布帛に対する定着(固着)性をさらに高めることができる場合がある。また、樹脂エマルションは、前処理液及び/又はインク組成物が布帛に浸透するのを抑制する目止め剤として機能させてもよい。
マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルション)、
ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルション)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)(昭和電工社製商品名)、
ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルション、日本ゼオン社製)、
サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルション、サイデン化学社製)、
AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルション)、
AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルション)(日信化学工業社製商品名)、
エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、
タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルション)、
モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、
ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、
NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、
ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、上述のカチオン性の界面活性剤を採用してもしなくても、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。界面活性剤は、前処理液の界面張力を低下させ、布帛への浸透性を高めることができる。
ルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
本実施形態の前処理液は、必要に応じて、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜添加することができる。
また、本実施形態の前処理液は、本発明の効果を阻害しない範囲で多価金属塩をさらに含有していてもよい。多価金属化合物は、2価以上の多価金属イオンとアニオンを含む化合物である。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+、Al3+などが挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl-、NO3-、CH3COO-、I-、Br-、ClO3 -などが挙げられる。これらの中でも、上述した凝集の効果が高い、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩を用いることが好ましい。多価金属塩としては、例えばCaCl2が挙げられる。
本実施形態に係る前処理液は、布帛への浸透性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、30mN/m以上、好ましくは35mN/m以上、より好ましくは38mN/m以上、さらに好ましくは40mN/m以上であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
本実施形態の捺染方法では、上述の本実施形態の前処理液を布帛に付着させ、その後に捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて使用される。以下、捺染インク組成物について説明する。
本実施形態の捺染インク組成物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する。架橋性基(イソシアネート基)は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えばウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。
度70℃)などが挙げられる。
0%モジュラスは、前記引張試験においてフィルムが元の長さに対し100%伸びた時の引っ張り応力を測定して得られる値を採用することができる。測定するフィルムは、架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを用いて形成してもよいし、同種の樹脂を用いて成形により形成してもよいが、エマルション樹脂を用いて形成することが好ましい。
架橋性基を有するウレタン系樹脂は、エマルションの形態で配合されてもよい。このような樹脂エマルションは、いわゆる自己反応型のウレタン系樹脂エマルションであり、親水性基を有するブロック剤でブロック化したイソシアネート基を有するウレタン系樹脂エマルションとして市販されているものを用いることができる。
タケラックWS-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリエーテル由来骨格を有する、ポリエーテル系ポリウレタン)、
WS-5100(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリカーボネート由来骨格を有する、ポリカーボネート系ポリウレタン)、
エラストロンE-37、H-3(以上は主鎖がポリエステル由来骨格を有するポリエステル系ポリウレタン)、
エラストロンH-38、BAP、C-52、F-29、W-11P(以上は主鎖がポリエーテル由来骨格を有するポリエーテル系ポリウレタン)(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルション)、などを例示することができる。
3.2.1.顔料
本実施形態の捺染インク組成物は、顔料を含有してもよい。係る顔料が布帛に付着されることにより、布帛が捺染され、捺染物(印捺物)が形成される。
は黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製)、Color
Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
本実施形態の捺染インク組成物は、水を含んでもよい。水としては、上述の前処理液において説明したと同様である。水の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお捺染インク組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる顔料分散液、樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、捺染インク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。なお、本明細書において「水系インク」等という表現をする場合には、インクの全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有するインクのことを指す。
本実施形態のインク組成物は、水溶性有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒を含むことにより、インク組成物のインクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。
オール、3-(3-メチルフェノキシ)-1,2-プロパンジオール、3-ヘキシルオキシ-1,2-プロパンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-フェノキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。界面活性剤は、インク組成物の界面張力を低下させ、布帛への浸透性を高めることができる。界面活性剤の具体例は、上記前処理液の項で述べたと同様である。ただし、カチオン系界面活性剤については、捺染インク組成物の成分を凝集させる可能性があるため、微量とするか、他の種の界面活性剤を用いることがより好ましい。
の安定性が増す傾向がある。また、適切な量の界面活性剤の使用は、布帛への浸透性が向上し、前処理液との接触を増やすことができる。これにより、顔料の凝集や、捺染インク組成物の増粘が生じやすくなり、捺染物の発色性をさらに良好にすることができる。適切な量を超えて、インク中に界面活性剤を添加した場合には、余分な界面活性剤が印刷後に染み出すことで、捺染物の画像の堅牢性が不足する場合がある。
本実施形態の捺染インク組成物は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
本実施形態の捺染インク組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、捺染インク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
本実施形態の捺染インク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、捺染インク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、上記「2.2.3.樹脂エマルション」の項で述べた樹脂エマルション(架橋性基を有しないウレタン系樹脂等)を含有してもよく、さらに、保湿剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜含有することができる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、インクジェット法によって布帛に付与される。そのため、捺染インク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るインクジェット捺染用のインクセットは、カチオン性有機化合物を含有する前処理液と、架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物と、を含む。係る前処理液及び捺染インク組成物は、上述の通りであり、詳細な説明を省略する。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合および攪拌し十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各前処理液を得た。表1中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各前処理液の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
表2に実施例、比較例で使用した捺染インク組成物に用いた樹脂を記載した。なお、タケラックWS-6021、タケラックWS-5100は三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有するウレタン系樹脂であり、エラストロンE-37は、第一工業製薬株式会社製の自己架橋性架橋基を有するウレタン系樹脂であり、ハイドランWLS-210は、DIC株式会社製の自己架橋性架橋基を有しないウレタン系樹脂(ポリカーボネート系)であり、モビニール966Aは、日本合成化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有するアクリル系樹脂である。
破断点伸度は、各樹脂のエマルションを用いて、約60μmの厚さのフィルムを作成し、170℃5分間加熱した後、引張試験ゲージ長20mm及び引っ張り速度100mm/分の条件下で測定して得られた値を採用した。また、100%モジュラスは、前記引張試験においてフィルムが元の長さに対し100%伸びた時の引っ張り応力を測定して得られた値を採用した。
表3、表4の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合および攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各捺染インク組成物を得た。表1中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各捺染インク組成物の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。また、表3、表4には、各実施例及び各比較例で使用した前処理液のNo.を記載した。
ン顔料の濃度は、4.5質量%である。)。また、BYK-348は、ビックケミー・ジャパン社製のシロキサン系界面活性剤である。その他、化合物名で記載した成分は、いずれも試薬として購入したものを用いた。
5.4.1.印捺物の作成
表3及び表4に記載した各実施例及び各比較例(比較例6を除く)の前処理液をスポンジローラーに十分に含ませ、該ローラーを、布帛(プリントスター へビーウェイト(白)5.6oz)に対して、上下左右にそれぞれ3~4回ころがし、できるだけ均一に前処理液を塗布した。なお、表3及び表4に前処理液を複数記載しているものは、複数の前処理液を等量比率で混合して用いた(実施例17)。
各例の印捺物に対してISO-105 X12に規定の方法に従い、I型(クロックメーター)試験機を用いて摩擦に対する染色堅牢度試験を実施した。乾摩擦はISO-105 X12に規定される乾燥試験、湿摩擦はISO-105 X12に規定される湿潤試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて評価した。評価基準は以下の通りとし、結果を表3、表4に記載した。
乾燥摩擦堅牢性
◎:摩擦堅牢性が4級以上である
○:摩擦堅牢性が3級以上4級未満である
△:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
×:摩擦堅牢性が2級未満である
湿摩擦堅牢性
◎:摩擦堅牢性が3級以上である
○:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
△:摩擦堅牢性が1級以上2級未満である
×:摩擦堅牢性が1級未満である
各例の印捺物のOD値を、測色器(商品名「Gretag Macbeth Spectrolino」、X-RITE社製)により測定し、得られたOD値に基づいて、下記評価基準により発色性を評価し、結果を表3、表4に記載した。
◎:OD値が1.45以上である
○:OD値が1.40以上1.45未満である
△:OD値が1.30以上1.45未満である
×:OD値が1.30未満である
各例の印捺物の印捺部分を手のひらで直接触れ、その際の感触を以下の基準に従って判定した。判定は3人で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とした。判定が1人ずつに分かれた場合は、それらの中間となる意見を判定結果とし、表3、表4に記載した。
◎:印捺部の硬さ、手触りが元の布帛とほぼ変わらず、良好である
○:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べやや変化するが、実用として問題ない
△:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べ悪化するが、許容範囲である
×:印捺部が硬くなり、使用感が悪く実用できない
カチオン性有機化合物として、カチオン性ポリマー(PAA-HCL-3L、PAS-H-1L)又はカチオン性界面活性剤(カチオーゲンTML)を含有するNo.1~5の前処理液を用い、かつ、架橋性基を有するウレタン系樹脂である樹脂A(タケラックWS-6021)、樹脂B(同WS-5100)、樹脂C(エラストロンE-37)を用いた実施例の捺染物は、いずれも摩擦堅牢性及び発色性に優れた結果となった。
Claims (4)
- カチオン性有機化合物を含有する前処理液により処理された布帛に対して、
架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物を付着させ、
前記布帛を加熱して行われ、
前記カチオン性有機化合物は、カチオン性アリルアミン系樹脂であり、
前記ウレタン系樹脂は、ポリカーボネート系骨格を有し、
前記前処理液の前記カチオン性有機化合物の含有量は、全質量に対して7質量%以上15質量%以下である、インクジェット捺染方法。 - 請求項1において、
前記捺染インク組成物は、さらに顔料を含有する、インクジェット捺染方法。 - 請求項1又は請求項2において、
前記ウレタン系樹脂は、破断点伸度が170%以上である、インクジェット捺染方法。 - カチオン性有機化合物を含有する前処理液と、
架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物と、
を含み、
前記カチオン性有機化合物は、カチオン性アリルアミン系樹脂であり、
前記ウレタン系樹脂は、ポリカーボネート系骨格を有し、
前記前処理液の前記カチオン性有機化合物の含有量は、全質量に対して7質量%以上15質量%以下である、インクジェット捺染用のインクセット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016128885A JP7039821B2 (ja) | 2016-06-29 | 2016-06-29 | インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016128885A JP7039821B2 (ja) | 2016-06-29 | 2016-06-29 | インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018003184A JP2018003184A (ja) | 2018-01-11 |
JP7039821B2 true JP7039821B2 (ja) | 2022-03-23 |
Family
ID=60947697
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016128885A Active JP7039821B2 (ja) | 2016-06-29 | 2016-06-29 | インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7039821B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7151132B2 (ja) * | 2018-03-30 | 2022-10-12 | ブラザー工業株式会社 | 画像記録用処理剤、インクと画像記録用処理剤のセット及び記録方法 |
JP7128042B2 (ja) * | 2018-06-28 | 2022-08-30 | 理想科学工業株式会社 | インクジェット捺染用インクセット及び捺染物の製造方法 |
JP7211073B2 (ja) * | 2018-12-27 | 2023-01-24 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェット捺染用インクセット、インクジェット捺染システム及びインクジェット捺染方法 |
JP2022057162A (ja) * | 2020-09-30 | 2022-04-11 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェットインクセット及び記録方法 |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009215506A (ja) | 2008-03-12 | 2009-09-24 | Riso Kagaku Corp | 捺染インクジェット用インク |
JP2011105805A (ja) | 2009-11-13 | 2011-06-02 | Union Chemicar Co Ltd | インクジェット捺染用白色インク |
JP2014129617A (ja) | 2012-12-28 | 2014-07-10 | Matsui Shikiso Chem Co Ltd | インクジェット捺染方法及び布状繊維製品 |
JP2014148564A (ja) | 2013-01-31 | 2014-08-21 | Seiko Epson Corp | インクジェット捺染用のインク、インクジェット捺染方法およびインクジェット捺染装置 |
JP2015040347A (ja) | 2013-08-20 | 2015-03-02 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェット捺染方法 |
-
2016
- 2016-06-29 JP JP2016128885A patent/JP7039821B2/ja active Active
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009215506A (ja) | 2008-03-12 | 2009-09-24 | Riso Kagaku Corp | 捺染インクジェット用インク |
JP2011105805A (ja) | 2009-11-13 | 2011-06-02 | Union Chemicar Co Ltd | インクジェット捺染用白色インク |
JP2014129617A (ja) | 2012-12-28 | 2014-07-10 | Matsui Shikiso Chem Co Ltd | インクジェット捺染方法及び布状繊維製品 |
JP2014148564A (ja) | 2013-01-31 | 2014-08-21 | Seiko Epson Corp | インクジェット捺染用のインク、インクジェット捺染方法およびインクジェット捺染装置 |
JP2015040347A (ja) | 2013-08-20 | 2015-03-02 | セイコーエプソン株式会社 | インクジェット捺染方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2018003184A (ja) | 2018-01-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10584257B2 (en) | Treatment liquid composition and printing method | |
JP6794746B2 (ja) | 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 | |
EP3521507B1 (en) | Treatment liquid composition for ink jet pigment textile printing, treatment liquid composition set for ink jet pigment textile printing, and ink jet textile printing method | |
JP7052208B2 (ja) | 前処理液、インクセット及び記録方法 | |
JP7013980B2 (ja) | 顔料捺染インクジェットインク組成物、顔料捺染用インクセット及びインクジェット記録方法 | |
JP7073835B2 (ja) | 顔料捺染インクジェットインク組成物及び顔料捺染インクジェット記録方法 | |
CN110776787B (zh) | 处理液组合物、喷墨印染组合物组、喷墨印染方法及布帛 | |
JP7059527B2 (ja) | 処理液組成物、インクジェット捺染方法、および布帛 | |
JP7039821B2 (ja) | インクジェット捺染方法及びこれに用いるインクセット | |
JP6794650B2 (ja) | 捺染方法 | |
JP2018053171A (ja) | 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 | |
JP6776775B2 (ja) | 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 | |
JP2021154701A (ja) | 処理液組成物、記録方法、組成物セット及び布帛 | |
JP2018053124A (ja) | 反応液及びインクジェット記録方法 | |
JP7017051B2 (ja) | インクセットおよび記録方法 | |
EP3524728B1 (en) | Pigment textile printing ink jet ink composition, pigment textile printing ink jet ink composition set, and ink jet pigment textile printing method | |
JP2018030943A (ja) | 非白色インクジェット捺染インク組成物およびインクジェット捺染方法 | |
JP2021070880A (ja) | インクジェット記録方法 | |
JP2020176223A (ja) | インクジェット捺染インク組成物及びインクジェット捺染方法 | |
JP2019042997A (ja) | インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 | |
JP2024030291A (ja) | インクジェット記録方法 | |
JP2023120631A (ja) | 処理液組成物、インクジェットインク組成物と処理液組成物のセット及び処理方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190517 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20200424 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200616 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200811 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210126 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210329 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20210907 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20211203 |
|
C60 | Trial request (containing other claim documents, opposition documents) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60 Effective date: 20211203 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20211220 |
|
C21 | Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21 Effective date: 20211221 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20220208 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220221 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7039821 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |