JP7039087B1 - 結合共振型無線電力伝送システム、及び結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法 - Google Patents

結合共振型無線電力伝送システム、及び結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な構成で、2つの共振器間の位置関係が変化し結合係数kが変化した場合であっても、高い伝送効率を維持することが可能な結合共振型無線電力伝送システムを提供すること。【解決手段】電磁的共鳴を用いて、第1共振器から第2共振器に対して非接触での電力伝送を行う結合共振型無線電力伝送システムであって、前記第1及び第2共振器それぞれの外部Qは、事前に、所定の条件下で、前記電力伝送の伝送特性が最平坦特性となるように調整されており、システム運用時、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係が前記所定の条件から変化している場合、制御部により、前記第1及び第2共振器の共振周波数にて中央点整合するように、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを調整した後、前記電力伝送を実行する、結合共振型無線電力伝送システム。【選択図】図16

Description

本開示は、結合共振型無線電力伝送システム、及び結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法に関する。
非接触で給電を行う方法として、2つのコイル間の電磁誘導を用いる方法は古くから知られている。一般に、結合を強めるために磁性体を用いるものはトランスとして使われている。
近年、図1に示すように、送電装置及び受電装置それぞれに、コイルとキャパシタと組み合わせて構成した同一の共振周波数を有する共振器を設け、2つの共振器を電磁的に共鳴させることで遠距離送電を可能とする結合共振型無線電力伝送システム(以下、「無線電力伝送システム」と略称する)が注目されている(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によると、この種の無線電力伝送システムでは、直径50cmで数周のコイルを用いて、1m程度の距離を10MHz程度の正弦波信号を効率よく送電できるとされている。
尚、図1は、共振器を用いた無線電力伝送システムの概念図である。図1では、無線電力伝送システムの左側に送電装置UA、右側に受電装置UBを描いている。送電装置UAは、コイル1とキャパシタ3とで構成される共振器と、当該共振器に対して交流電力を送出する電源5と、を有する。又、受電装置UBは、コイル2とキャパシタ4とで構成される共振器と、当該共振器から交流電力を取得する負荷6と、を有する。尚、受電装置UBと送電装置UAとは、典型的には、分離した状態で配設され、受電装置UBの共振器と送電装置UAの共振器とは、通常、その位置関係が電力伝送を実施するシーン毎に変動するため、その位置合わせがしばしば課題となっている。
特開2021-027778号公報
Andre Kurs, et.al, "Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances", Science Vol.317, 6 July 2007 T. Ohira, "Angular expression of maximum power transfer efficiency in reciprocal two-port systems", Published in 2014 IEEE Wireless Power Transfer Conference, Date of Conference: 8-9 May 2014, INSPEC Accession Number: 14395324 Y. Zhang and Z. Zhao, "Frequency Splitting Analysis of Two-Coil Resonant Wireless Power Transfer", in IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters, vol. 13, pp. 400-402, 2014 A. P. Sample, D. T. Meyer and J. R. Smith, "Analysis, Experimental Results, and Range Adaptation of Magnetically Coupled Resonators for Wireless Power Transfer", in IEEE Transactions on Industrial Electronics, vol. 58, no. 2, pp. 544-554, Feb. 2011 Ikuo Awai, et.al, "Superiority of BPF theory for design of coupled resonator WPT systems", Published in Asia-Pacific Microwave Conference 2011, Date of Conference: 5-8 Dec. 2011, INSPEC Accession Number: 12656013 居村岳広、"磁界共鳴によるワイヤレス電力伝送"p.94, 森北出版 (Janry 31, 2017) I.Awai and A.K.Saha, "Open Ring Resonators Applicable to Wide-band BPF", Proceedings of Asia-Pacific Microwave Conference 2006, ISBN:978-4-902339-08-6
ところで、2つの共振器間で電磁的共鳴を用いて非接触給電をする場合、高い伝送効率を得るためには、共振器のQ値(ここでは、共振器を構成するLC回路の内部抵抗から定まるQ値を表す。以下、「無負荷Q」と称する)が高いことと、2つの共振器間の電磁結合の強さを表す結合係数k(以下、「k値」とも称する)が高いことが必要である(例えば、非特許文献2を参照)。
一般に、共振器の無負荷Qを高めるためには、共振器を構成するコイルの寄生抵抗を下げることで実現できる。
一方、k値は、1を上限値として表され、その値は、2つの共振器間の位置関係に応じて変化する。特に、k値は、2つの共振器のコイル間距離(以下、単に「2つの共振器の距離」とも称する)による影響を受けやすい。k値は、通常、2つの共振器の距離が近いほど大きくなり、このときには、電力伝送時の伝送効率も高効率となる。そして、k値は、2つの共振器間の距離が離れたり、2つの共振器間の相対する向きが変わることでその値は低下してしまう。
但し、共鳴送電で特徴的なことは、2つの共振器の距離が近づくと電磁的な干渉のために2つの共振器で同一に設定していた共振周波数が高周波数側と低周波数側の2つに分離することである(双峰型の周波数特性と称される)。その結果、伝送効率のピークも分離し、そのほぼ中心にある元の共振周波数での伝送効率が低下してしまうことが知られている(例えば、非特許文献3、非特許文献4を参照)。この現象は、周波数分離と呼ばれ、本来高効率の送電が可能な近距離で顕著である。このとき、送電されない高周波電力は、反射として電源に戻される。低周波回路では、それを再度有効な電力に戻すことは可能であるが、周波数が高い場合には、損失として捨てざるを得ない。
従来、周波数分離に伴う伝送効率の低下を克服する手段として、2つの共振器間の位置関係に応じて、これらの共振器又は当該共振器に接続する入出力線路中に配された回路部品のパラメータを変更し、ピーク位置が一定の周波数特性とする手法や、送電する高周波電力の周波数を周波数分離したピークに合わせる手法(周波数トラッキングとも称される)等が試みられている。
しかしながら、前者の手法では、共振器又は当該共振器に接続する入出力線路中に配された回路部品のパラメータを種々に変更する必要があるため、特殊な共振器又は特殊な回路構成を採用する必要があり、コストや汎用性の点で課題がある。又、後者の手法では、送電装置や受電装置において、インピーダンスが一定の回路部品(例えば、高周波電源、負荷の整流回路、又は同軸ケーブル等)が使用されている場合に、送受電に用いる周波数の変化に伴って、伝送効率の低下を招かざるを得ない。加えて、後者の手法は、電波法規上の制約から、現実的ではない。
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、2つの共振器間の位置関係が変化し結合係数kが変化した場合であっても、高い伝送効率を維持することが可能な結合共振型無線電力伝送システム、及び結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法を提供することを目的とする。
前述した課題を解決する主たる本開示は、
電磁的共鳴を用いて、第1共振器から第2共振器に対して非接触での電力伝送を行う結合共振型無線電力伝送システムであって、
前記第1及び第2共振器それぞれの外部Qは、事前に、所定の条件下で、前記電力伝送の伝送特性が最平坦特性(段落[0020]を参照)となるように調整されており、
システム運用時、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係が前記所定の条件から変化している場合、制御部により、前記第1及び第2共振器の共振周波数にて中央点整合(段落[0026] [0046]を参照)するように、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを調整した後、前記電力伝送を実行する、
結合共振型無線電力伝送システムである。
又、他の局面では、
電磁的共鳴を用いて、第1共振器から第2共振器に対して非接触での電力伝送を行う結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法であって、
前記第1及び第2共振器それぞれの外部Qを、事前に、所定の条件下で、前記電力伝送の伝送特性が最平坦特性となるように調整し、
システム運用時、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係が前記所定の条件から変化している場合、前記第1及び第2共振器の共振周波数にて中央点整合するように、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを調整する、
調整方法である。
本発明に係る結合共振型無線電力伝送システムによれば、2つの共振器間の位置関係が変化し結合係数kが変化した場合であっても、一方の共振器の外部Qを調整するだけで、電力伝送時の反射を抑制し、高い伝送効率を維持することが可能である。
共振器を用いた無線電力伝送システムの概念図 直列共振器を用いた一般的な無線電力伝送システムの回路図 並列共振器を用いた一般的な無線電力伝送システムの回路図 図2Aの回路図から送電装置の構成のみを取り出した回路図 図2Bの回路図から送電装置の構成のみを取り出した回路図 直列共振器を用いた場合の第1の実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図 並列共振器を用いた場合の第1の実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図 図4Aの回路図から送電装置の構成のみを取り出した回路図 図4Bの回路図から送電装置の構成のみを取り出した回路図 第1の実施形態に係る無線電力伝送システムの変形例を示す図 直列共振器を用いた無線電力伝送システム(即ち、図5Aの容量分割直列共振回路)に適用するキャパシタの構成の一例を示す図 並列共振器を用いた無線電力伝送システム(即ち、図5Bの容量分割並列共振回路)に適用するキャパシタの構成の一例を示す図 無線電力伝送システムにおいて最平坦整合した状態で得られた伝送特性を示す図 無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk=0.16に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の伝送特性を示す図 無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk=0.004に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の伝送特性を示す図 無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk値が種々に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の通過帯域幅の変化を示す図 無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk値が変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合のピーク伝送効率を示す図 図11及び図12のデータから、ピーク伝送効率と通過帯域幅の関係をプロットした図 共振器を用いた無線電力伝送システムにおいて、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送を実施した際に得られる反射率及び透過率の絶対値の測定結果を示す図 共振器を用いた無線電力伝送システムにおいて、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送を実施した際に得られる反射率を、スミスチャート上に示す図 第1の実施形態に係る無線電力伝送システムのシステム運用時の動作例を示すフローチャート 第2の実施形態に係る無線電力伝送システムの概略構成を示す図 第2の実施形態に係る無線電力伝送システムのオープンリング共振器を平面視した図 第2の実施形態に係る無線電力伝送システムの送受電のオープンリング共振器が対向する状態を平面視した図 オープンリング共振器の最適ポート角度の共振器間距離依存性を示す図 オープンリング共振器の最適ポート角度時における外部Qを示す図 オープンリング共振器の最適ポート角度時における通過帯域幅を示す図 オープンリング共振器の最適ポート角度時におけるピーク伝送効率を示す図
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
本開示の一実施形態に係る無線電力伝送システムは、送電装置及び受電装置それぞれに、コイルとキャパシタと組み合わせて構成した同一の共振周波数を有する共振器を設け、2つの共振器を共鳴させることで遠距離送電を可能とする結合共振型無線電力伝送システムである。
共振回路の共鳴を用いる無線送電は、機能的には電磁エネルギーを、空間を通して伝搬させるバンドパスフィルター(BPF)である。BPFにおいて、共振周波数付近の伝送特性を落とさずに伝送する形態のものは最平坦型フィルタ、またはバターワース型フィルタと呼ばれる。ここでは、中心周波数付近の効率が高い値でほぼ一定な特性を最平坦特性と呼ぶ。
最平坦特性は、共振器の固有共振周波数(即ち、中心周波数)fを挟んである周波数帯域fからfまでで、伝送効率がほぼ100%となる伝送特性であり、その帯域の外では急速に伝送効率が低下しゼロに近づく。尚、最平坦特性においては、周波数領域f~fとk値との関係が、式(1)のようになることが知られている。
Figure 0007039087000002
この最平坦特性を実現するには共振器の外部Qを1/kにすれば良いことがすでに、マイクロ波のフィルタ理論で知られている(例えば、非特許文献5を参照)。即ち、k値の変化に対応して、外部Qを調整することで、周波数分離の発生を防止することができる。
外部Qは共振器への入出力線路のインピーダンスで決まる値なので、共振器の外部Qを1/kに設定するには、共振器に対する入出力インピーダンスを適当な値に調整すれば良い。しかし、共振器に対する入出力インピーダンスたる電源や負荷のインピーダンスを任意に変えることは、部品の選択から見直さねばならず容易ではない。また、電子部品の高周波特性と耐電力・耐電圧特性のぎりぎりの条件で使用する電力伝送では、高周波の電源や負荷のインピーダンスを、電気的に変更することも困難である。
そこで、本実施形態では、一局面として、電源や負荷のインピーダンスを変更することなく、共振器への給電方法を工夫して外部Qを調整する方法を提案する。コイルとキャパシタを用いた共振器には、共振回路の相違により直列共振器と並列共振器があるが、本実施形態では、いずれの場合においても共振器を構成するキャパシタを分割し、その分割点に給電する手法を採用する(後述する図4A、図4B、図6を参照)。外部Qの調整は、共振周波数を変えないようにしつつ分離されたキャパシタの容量を変えることで実現できる。
又、一般的な無線電力伝送システムでは、多くの場合、送電装置又は受電装置の少なくとも一方は、移動体であり、送電側共振器と受電側共振器との間の位置関係(即ち、k値)は、電力伝送の度に異なるものとなる。かかる構成において、電力伝送の度に、毎回、送電装置と受電装置との間で通信を行って、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの共振器パラメータを、調整するのは、装置の複雑化及び制御系の複雑化を招き、好ましくない。特に、送電装置から電力伝送する対象の受電装置は、必ずしも同一ではなく、受電装置の電気的特性は、受電装置の種類や個体差に応じて変化する。このような場合に、実際の電力伝送時に、毎回、送電装置と受電装置との間で通信を行って、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの共振器パラメータを、両者の電気的特性に応じて最適化するのは、制御系の複雑化を招き、好ましくない。
そこで、本実施形態では、他の局面として、実使用時には、送電側共振器又は受電側共振器の一方の調整のみで、良好な伝送特性を実現し得る外部Qの調整方法を提案する。具体的には、本実施形態に係る無線電力伝送システムでは、事前準備として、予め同一に設定された送電側共振器及び受電側共振器の共振周波数を基準に、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送する際の伝送特性が最平坦特性となるように、送電側共振器の外部Q及び受電側共振器の外部Qそれぞれを調整しておき、実使用時には、送電側共振器又は受電側共振器のうちの一方の外部Q値のみの調整により、共振周波数での反射がゼロの条件(後述する中央点整合条件)を充足させる手法を採用する(後述する実施例を参照)。
[無線電力伝送システムの回路構成]
まず、図2A~図4Bを参照して、一般的な無線電力伝送システムの構成について、説明する。
図2A、図2Bは、一般的な無線電力伝送システムの回路図である。図2Aは、共振器の共振回路として直列共振回路を用いた無線電力伝送システムの回路図、図2Bは、共振器の共振回路として並列共振回路を用いた無線電力伝送システムの回路図である。尚、図2A、図2Bの基本構成は、図1を参照して説明した通りである。尚、以下の各回路図では、左側に送電装置UAの構成を描き、右側に受電装置UBの構成を描いている。
図2Aの回路図では、送電装置UAの直列共振器は、コイル1とキャパシタ3により構成され、受電装置UBの直列共振器は、コイル2とキャパシタ4により構成される。又、送電装置UAの抵抗部5は、電源5のインピーダンス(即ち、電源回路の出力インピーダンスを表す(以下、「外部インピーダンス」とも称する)に相当する。又、受電装置UBの抵抗部6は、負荷6のインピーダンス(以下、「外部インピーダンス」とも称する)に相当する。
尚、電源5は、例えば、バッテリと、当該バッテリから供給される直流電力を高周波電力に変換する発振器と、により構成されている。又、負荷6は、例えば、高周波電力を整流する整流回路と、整流回路で整流された直流電力を使用して蓄電するバッテリと、により構成されている。
図2Bの回路図でも、各回路部品に対して、図2Aの回路図と同様の符号を付している。尚、図2Bの回路図では、コイル1とキャパシタ3とが、送電装置UAの並列共振回路を構成し、コイル2とキャパシタ4とが、受電装置UBの並列共振回路を構成する。
尚、図2A、図2Bの無線電力伝送システムでは、コイル1とコイル2とが互いに対向して配設され、磁気結合するため、図2A、図2Bの回路図では、送電装置UAの共振器と受電装置UBの共振器との電磁結合を2つのコイル間の相互インダクタンスで表現している。
ここで、共振器の外部Qについて、図3Aに示す単独の直列共振回路(図2Aの回路図から送電装置UAの構成のみを取り出した回路図)、及び、図3Bに示す単独の並列共振回路(図2Bの回路図から送電装置UAの構成のみを取り出した回路図)を用いて解析する。
以下では、説明の便宜として、図3Aの回路を「単一容量直列共振型共振器」、図3Bの回路を「単一容量並列共振型共振器」とも称する。
尚、以下では、LC共振器を形成するコイル1のインダクタンスをL、キャパシタ3の容量をC、電源5のインピーダンスをZとする。又、受電装置UB側について考察する際には、受電装置UB側の各部の回路パラメータは、送電装置UA側の各部の回路パラメータと同様に、コイル2のインダクタンスをL、キャパシタ4の容量をC、負荷6のインピーダンスをZとする。
まず、LC共振器の共振周波数fは、以下の式(2)で表される。
Figure 0007039087000003
以降の解析のために共振器の特性インピーダンスZを以下の式(3)のように定義する。尚、この特性インピーダンスZは、抵抗[Ω]の次元の値である。
Figure 0007039087000004
一般に使われる共振器のQ値は、負荷が接続されていない状態でのQ値で無負荷Qと呼ばれる。この無負荷Qは、共振器の特性インピーダンスとコイルの内部抵抗の比である。一方、共振器に信号を入力したり取り出すために接続する電源や負荷のインピーダンスによるQ値は、外部Q(以下、Qeと表す)と称される。
直列型の場合の外部Qは、以下の式(4)のように表される。尚、ここで、Zは、電源5又は負荷6のインピーダンスである。
Figure 0007039087000005
一方、並列型の外部Qは、以下の式(5)のように表される。
Figure 0007039087000006
従来、最平坦特性を実現する条件は、以下の式(6a)及び式(6b)を同時に充足することであるとされている(例えば、非特許文献5を参照)。尚、ここで、サフィックスTは送電側、Rは受電側を示しており(以下同じ)、式(6a)及び式(6b)は、送電側と受電側それぞれで、結合係数kの変動にあわせて外部Qを調整する必要があることを意味している。以下、この条件を、「最平坦整合」と称する。
Figure 0007039087000007
これらの共振器を2つ用いることで非接触給電を行うが、その際の結合係数kは2つのコイルの相互インダクタンスLで表現でき、以下の式(7)のように表される。
Figure 0007039087000008
ここで、L、Lは送受電コイルのインダクタンスである。尚、これらの基本的な回路の解析は、非特許文献6に詳しくある。2つの共振器が直列共振型の場合(図3A)、電源5側から見た送電側共振器、受電側共振器及び負荷6全体の入力インピーダンスZinは、コイル1、2の内部抵抗をゼロとおけば、以下の式(8)の値となる。ここでZSRは負荷6のインピーダンスである。
Figure 0007039087000009
この共振器の組み合わせ回路での反射をゼロにするにはマイクロ波回路でのインピーダンス整合の考えを適用する。それによれば、電源5のインピーダンスZSTをZINに等しくすればよいので、以下の式(9)を充足することが、インピーダンス整合条件を充足することである。
Figure 0007039087000010
式(9)を、式(3)、式(4)、式(7)を用いて変形すると、以下の式(10)のように表される。尚、ZCRは、受電装置UBの共振器のインピーダンス、ZCTは、送電装置UAの共振器のインピーダンスである。
Figure 0007039087000011
式(10)の条件は、最平坦型を実現するための条件(即ち、式(6a)及び式(6b))より、緩和された条件となっている。この条件を以下、「中央点整合」と呼ぶことにする。この条件はあくまでも中心周波数f0での反射率をゼロにするための条件(即ち、インピーダンス整合するための条件)で、それ以外の周波数では反射が起こる。つまり、伝送帯域が最平坦型よりは狭くなる。しかしながら電力伝送では情報通信と異なり、単一の周波数で行われるために広い帯域は不要である。
式(10)が示す中央点整合の条件は、結合係数kが変化した場合に、送電側か受電側の片方の外部Qのみを調整すれば良いことを示しており、非接触給電の実用上重要な発見である。式(10)は直列共振器間の伝送であるが、後に示すように、共振器が直列型か並列型か、単一容量か分割容量か、LC共振器かオープンリング共振器か、などにかかわらず成立している。
ここで、外部Qの調整方法について、説明する。
外部Qの調整は、式(4)及び式(5)に示すように、電源5のインピーダンスZSTや負荷6のインピーダンスZSRを変更することで可能である。しかし、高周波を用いる場合、一般に、信号の反射を防ぐために定インピーダンス(典型的には、50Ω)の線路を用いる必要がある。加えて、電源5や負荷6のインピーダンスの変更は、容易ではなく、この電源5や負荷6のインピーダンスを、k値の変化にあわせた値に設定するのは、実用的観点からは極めて困難である。さらに、特性インピーダンス50Ωで固定とすれば、広く普及している電源等をそのまま用いることができるため、製品コストを削減できるというメリットもある。
本実施形態に係る無線電力伝送システムは、かかる問題点を考慮して設計されており、電源5及び/又は負荷6のインピーダンスを一定にしたまま、最平坦特性を実現可能とする。
図4Aは、直列共振器を用いた場合の本実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図であり、図4Bは、並列共振器を用いた場合の本実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図である。
本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいて、直列共振回路を用いた場合には(図4Aを参照)、共振器のキャパシタを並列に分割し、一方のキャパシタと直列に電源5や負荷6を置く構成となっている点で、従来技術に係る無線電力伝送システム(図2Aを参照)と相違する。また、並列共振回路を用いた場合には(図4Bを参照)、キャパシタ(キャパシタ3及び4)を直列に分割し、一方のキャパシタに並列に電源5や負荷6を置く構成となっている点で、従来技術に係る無線電力伝送システム(図2Bを参照)と相違する。
図4Aでは、コイル1から見て並列に配されたキャパシタ3a及びキャパシタ3bが送電装置UAの共振器を構成するキャパシタ3であり、コイル1から見て並列に配されたキャパシタ4a及びキャパシタ4bが受電装置UBの共振器を構成するキャパシタ4である。又、図4Bでは、コイル1から見て直列に配されたキャパシタ3c及びキャパシタ3dが送電装置UAの共振器を構成するキャパシタ3であり、コイル1から見て直列に配されたキャパシタ4c及びキャパシタ4dが受電装置UBの共振器を構成するキャパシタ4である。尚、以下、これらのキャパシタ3a、3b、3c、3d、4a、4b、4c、4dを「分割キャパシタ」と称する。
尚、ここで、送電装置UAの制御部10Aは、送電装置UA側のキャパシタ3を構成する分割キャパシタ3a、3b(3c、3d)の容量値を調整する際に、キャパシタ3の可動電極を駆動する(図7A、図7Bを参照)コントローラであり、受電装置UBの制御部10Bは、受電装置UB側のキャパシタ4を構成する分割キャパシタ4a、4b(4c、4d)の容量値を調整する際に、キャパシタ4の可動電極を駆動するコントローラである。
ここで、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおける外部Qについて、図5Aに示す単独の直列共振回路(図4Aの回路図から送電装置UAの構成のみを取り出した回路図)、図5Bに示す単独の並列共振回路(図4Bの回路図から送電装置UAの構成のみを取り出した回路図)を用いて解析する。
尚、以下では、図5Aに示す共振回路を、「容量分割直列共振回路」と称し、図5Bに示す共振回路を、「容量分割並列共振回路」と称する。
まず、図3Aの単一容量直列共振回路の合成インピーダンスZは、コイル1、キャパシタ3、抵抗5の直列接続なので、以下の式(11)で表される。尚、その際の外部Qは上記した式(4)で与えられる。
Figure 0007039087000012
ここで、図5Aの容量分割の直列共振器において、電源5が接続されていない方の分割キャパシタ3aの容量値をC、電源5が接続されている側の分割キャパシタ3bの容量値をC、電源5のインピーダンスをZとする。そうすると、この回路の全体の合成インピーダンスZは、2πfCが1よりも十分小さいという近似で、以下の式(12)のようになる。
Figure 0007039087000013
ここで、分割キャパシタ3a、3bの容量値C、Cを、以下の式(13)を充足するように設定すると、共振器の共振周波数を図3Aの場合の値と一致させることができる。
Figure 0007039087000014
ここで、分割キャパシタ3aの容量値Cと分割キャパシタ3bの容量値Cとの比率に係るパラメータとして、以下の式(14)の新たなパラメータa値を導入する。尚、a値は式(14)から判るように0と1の間の値である。
Figure 0007039087000015
このa値を式(12)に代入すると、式(12)は、式(11)のZがaに置き換わった式となっていることが分かる。このことから、図5Aの回路の外部Qは、以下の式(15)となることが判る。
Figure 0007039087000016
次に、並列共振回路の場合を解析する。図3Bの単一容量並列共振回路の合成アドミッタンスYは、コイル1、キャパシタ3、抵抗5の並列接続なので、式(16)のように表される。尚、その際の外部Qは上記した式(5)で与えられる。
Figure 0007039087000017
ここで、図5Bの容量分割の並列共振器において、電源5が接続されていない方の分割キャパシタ3cの容量値をCc、電源5が接続されている側の分割キャパシタ3dの容量値をC、電源5のインピーダンスをZとする。2πfCが1より十分大きいという近似で、この回路の合成アドミッタンスYは、以下の式(17)になる。
Figure 0007039087000018
ここで、分割キャパシタ3c、3dの容量値C、Cを、以下の式(18)を充足するように設定すると、共振器の共振周波数を元の並列共振器の共振周波数と一致させることができる。
Figure 0007039087000019
ここで、分割キャパシタ3cの容量値Cと分割キャパシタ3dの容量値Cとの比率に係るパラメータとして、以下の式(19)の新たなパラメータb値を導入する。尚、b値は式(19)から判るように1以上の値である。
Figure 0007039087000020
このb値を式(17)に代入すると、この式は、式(16)のZがbに置き換わった式となっていることが分かる。これから、外部Qは、以下の式(20)で与えられることが判る。
Figure 0007039087000021
以上を纏めると、Qe積が1/kという中央点整合の条件は、送電側の共振器及び受電側の共振器の両方が直列型の場合、式(15)から、以下の式(21)のように式変換できる。
Figure 0007039087000022
尚、この式(21)は、式(3)を用いて共振器の特性インピーダンスを共振周波数とインダクタンス値で表すと、更に、以下の式(22)のように式変換できる。
Figure 0007039087000023
また、同様に、中央点整合の条件は、送電側の共振器及び受電側の共振器の両方が並列型の場合、式(20)から、以下の式(23)のように式変換できる。
Figure 0007039087000024
図6は、本実施形態に係る無線電力伝送システムの変形例を示す図であり、図6の無線電力伝送システムでは、送電装置UAの共振器が容量分割直列共振回路で構成され、受電装置UBの共振器が容量分割並列共振回路で構成された構成となっている。
図6の無線電力伝送システムの場合、中央点整合の条件は、式(15)及び式(20)から、以下の式(24)のように式変換できる。
Figure 0007039087000025
尚、本実施形態に係る無線電力伝送システムの変形例としては、送電側の共振器を直列型、受電側の共振器を並列型とすることも可能であり、この場合、式(24)のTとRを入れ替えれば良い。
これらの式(22)、式(23)、式(24)から、中央点整合条件を充足させる際には、送電側共振器又は受電側共振器の一方のキャパシタ(即ち、キャパシタ3又はキャパシタ4)の分割キャパシタの容量比を調整するだけでよいことが分かる。
[共振器のキャパシタの構成]
ここで、本実施形態に係る無線電力伝送システムに適用する共振器のキャパシタ3、4の構成の一例について説明する。
図7Aは、直列共振器を用いた無線電力伝送システム(即ち、図5Aの容量分割直列共振回路)に適用するキャパシタ3、4の構成の一例を示す図である。
容量分割直列共振回路に適用するキャパシタ3、4は、図5Aに示したように、コイルから見て並列に2分割され、且つ、2分割されて形成された2つの分割キャパシタのうちの一方の分割キャパシタのみに、送電部としての電源5又は受電部としての負荷6が直列に接続された構成を有する。尚、以下では、説明の便宜として、キャパシタ3(又はキャパシタ4)の2つの分割キャパシタのうち一方を「第1分割キャパシタ」と称し、他方を「第2分割キャパシタ」と称する。
そして、このキャパシタ3、4は、式(15)に示したように、共振器の外部Qを調整し得るように、第1分割キャパシタの容量値と第2分割キャパシタの容量値の比を調整することが可能とする3端子可変キャパシタによって構成されている。
具体的には、容量分割直列共振回路に適用するキャパシタ3、4は、容量調整が簡易的に行えるように、図7Aに示す可変キャパシタによって構成されている。この可変キャパシタは、電気的に互いに分離され、同じ向きを向くように並んで配設された第1固定電極E1及び第2固定電極E2と、第1固定電極E1及び第2固定電極E2それぞれに対向するように、第1固定電極E1及び第2固定電極E2それぞれとの間の距離を一定に保ちながら、第1固定電極E1と第2固定電極E2とが並ぶ方向に沿って移動可能に配設された可動電極E3と、を有する。そして、第1分割キャパシタは、第1固定電極E1と可動電極E3との間で構成され、第2分割キャパシタは、第2固定電極E2と可動電極E3との間で構成されている。そして、この可変キャパシタは、可動電極E3を移動させたときに、第1固定電極E1と可動電極E3とが対向する面積と第2固定電極E2と可動電極E3とが対向する面積との和が一定となるように構成されている。
これにより、第1固定電極E1と可動電極E3の重なった部分の面積をS、第2固定電極E2と可動電極E3の重なった部分の面積をSとして、可動電極E3の移動によってもS+Sは常に一定であるとすると(例えば、S+S=Sとする)、第1分割キャパシタの容量値Cと第2分割キャパシタの容量値Cとの並列合成容量Cは、以下の式(25)のように一定となる。
Figure 0007039087000026
つまり、この可変キャパシタを用いることによって、第1分割キャパシタと第2分割キャパシタとの並列合成容量Cを一定にしたまま、第1分割キャパシタの容量値Cと第2分割キャパシタの容量値Cの比を調整することが可能である。これによって、共振周波数を一定に保ちながら、簡易に、共振器の外部Qを調整することが可能となる。
図7Bは、並列共振器を用いた無線電力伝送システム(即ち、図5Bの容量分割並列共振回路)に適用するキャパシタ3、4の構成の一例を示す図である。
容量分割並列共振回路に適用するキャパシタ3、4は、図5Bに示したように、コイルから見て直列に2分割され、且つ、2分割されて形成された2つの分割キャパシタのうちの一方の分割キャパシタのみに、送電部としての電源5又は受電部としての負荷6が並列に接続された構成を有する。尚、以下では、説明の便宜として、キャパシタ3、4の2つの分割キャパシタのうち一方を「第3分割キャパシタ」と称し、他方を「第4分割キャパシタ」と称する。
そして、このキャパシタ3、4は、式(20)に示したように、共振器に接続される入出力回路の外部Qを調整し得るように、第3分割キャパシタの容量値と第4分割キャパシタの容量値の比を調整することが可能とする3端子可変キャパシタによって構成されている。
具体的には、本実施形態に係るキャパシタ3、4は、いずれも、容量調整が簡易的に行えるように、図7Bに示す可変キャパシタによって構成されている。この可変キャパシタは、電気的に互いに分離して対向して配設された第1固定電極E4及び第2固定電極E5と、第1固定電極E4と第2固定電極E5との間で、第1固定電極E4及び第2固定電極E5それぞれと対向する面積を一定に保ちながら、第1固定電極E4と第2固定電極E5とが向き合う方向(図7Bの矢印方向)に沿って移動可能に配設された可動電極E6と、を有する。そして、第3分割キャパシタは、第1固定電極E4と可動電極E6との間で構成され、第4分割キャパシタは、第2固定電極E5と可動電極E6との間で構成されている。そして、この可変キャパシタは、可動電極E6を移動させたときに、第1固定電極E4と可動電極E6との間の距離dと第2固定電極E5と可動電極E6との間の距離dの和が一定となるように構成されている。
第1固定電極E4、第2固定電極E5、及び可動電極E6は、例えば、面積が同じ電極板であり、それぞれの対向面が平行になるように配設されている。ここで、第1固定電極E4、第2固定電極E5、及び可動電極E6の面積をS、第1固定電極E4と可動電極E6の間の距離をd、第2固定電極E5と可動電極E6の間の距離をdとする。又、第1固定電極E4と第2固定電極E5とは位置が固定されており、第1固定電極E4と第2固定電極E5との間の距離は、dで一定となっているとすると、可動電極E6を移動させてもd+dは一定(d+d=d)である。そうすると、第1固定電極E4と可動電極E6からなる第3分割キャパシタの容量値をC、第2固定電極E5と可動電極E6からなる第4分割キャパシタの容量値をCとすると、CとCを直列につないだ場合の直列合成容量Cは、以下の式(26)のように一定となる。
Figure 0007039087000027
つまり、この可変キャパシタを用いることによって、第3分割キャパシタと第4分割キャパシタとの直列合成容量を一定にしたまま、第3分割キャパシタの容量値Cと第2分割キャパシタの容量値Cの比を調整することが可能である。これによって、共振周波数を一定に保ちながら、簡易に、共振器の外部Qを調整することが可能となる。
尚、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、実使用時には、送電側共振器及び受電側共振器のうちの一方の外部Qのみを調整し、中央点整合条件を充足させる。かかる観点から、送電側共振器のキャパシタ3及び受電側共振器のキャパシタ4のうちの、実使用時の調整対象の側のキャパシタのみを図7A又は図7Bの可変キャパシタにより構成し、実使用時の調整対象ではない側のキャパシタについては非可変キャパシタにより構成してもよい。これによって、より一層の装置の簡易化を図ることが可能である。
但し、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、事前準備の段階で、最平坦整合条件(即ち、式(6a)、式(6b))を充足するように、送電側共振器及び受電側共振器の両方の外部Qを調整しておく必要がある。そのため、送電側キャパシタ3及び受電側キャパシタ4の両方を、図7A又は図7Bの可変キャパシタにより構成するのが好ましい。
他方、上記したように実用的観点からはデメリットは多いものの、送電側共振器及び受電側共振器の一方又は両方を、単一容量直列共振回路又は単一容量並列共振回路によって構成することも可能である。この場合、送電側共振器の外部Qの調整は、電源5のインピーダンスの調整により行い、受電側共振器の外部Qの調整は、負荷6のインピーダンスの調整により行うことができる。
[無線電力伝送システムにおける電力伝送時の伝送特性の調整方法]
以下に、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおける電力伝送時の伝送特性の調整方法について、シミュレーションによる検証結果とともに説明する。
本実施形態に係る無線電力伝送システムでは、事前準備として、予め、所定の条件下で、同一に設定された送電側共振器及び受電側共振器の共振周波数を基準に、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送する際の伝送特性が最平坦特性となるように(即ち、式(6a)及び式(6b)を充足するように)、送電側共振器の外部Q及び受電側共振器の外部Qそれぞれを調整しておく。そして、実使用時、送電側共振器と受電側共振器との位置関係(即ち、相対的な位置及び/又は角度)が変わり、その結果結合係数kが所定の条件から変化した場合、送電側共振器及び受電側共振器のうちの一方の外部Qのみを調整することにより、中央点整合条件(即ち、式(22)、式(23)、又は式(24))を充足させ、これにより、反射がゼロの良好な伝送効率にて電力伝送を実施し得るようにする。
以下では、シミュレーションによる検証結果を交えて、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおける電力伝送時の伝送特性の調整方法の有用性について説明する。
具体的には、本シミュレーションでは、まず、結合係数kが0.04の場合に、最平坦整合の条件を充足するように、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Qを調整し、その後、結合係数kを0.04から種々に変化させ、送電側共振器又は受電側共振器のうちの一方のみの外部Qの調整を行って、中央点整合条件を充足させた。尚、本シミュレーションでは、電気自動車のように、受電装置UB側にユーザーが存在する場合を想定して、実使用時には、受電側共振器の外部Qのみの調整を行って、中央点整合条件を充足させる構成となっている。
本シミュレーションでは、上記したように、送電側共振器及び受電側共振器それぞれを、容量分割直列共振回路又は容量分割並列共振回路で構成した。そして、送電側共振器の外部Qの調整は、キャパシタ3を構成する分割キャパシタ3a、3b(又は3c、3d)の容量比の調整により行い、受電側共振器の外部Qの調整は、キャパシタ4を構成する分割キャパシタ4a、4b(又は4c、4d)の容量比の調整により行った。
より詳細には、本シミュレーションでは、受電装置UBの共振器がともに分割容量直列型の場合、送電装置UAの共振器と受電装置UBの共振器がともに分割容量並列型の場合、送電装置UAの共振器が分割容量並列型で、受電装置UBの共振器が分割容量直列型の場合、及び、送電装置UAの共振器と受電装置UBの共振器がともに単一容量直列共振型の場合、の4態様を対象として、シミュレーションを行った。尚、送電装置UAの共振器と受電装置UBの共振器がともに単一容量直列共振型の場合についてシミュレーションを行ったのは、分割容量直列型及び分割容量並列型による共振器の外部Qの調整が、通常の外部Qの調整方法と同様に作用し得ることを確認するためである。
尚、本シミュレーションでは、無線電力伝送システムの各回路パラメータを、電気自動車への適用を念頭に置き、以下のように設定した。送電側共振器のコイル1のインダクタンスを4μH、受電側共振器のコイル2のインダクタンス2を1.2μHとした。又、このコイル1、2の線材には1.2μHのコイルで0.02Ωの内部抵抗があるとしている。ここで、共振周波数を10MHzとすると、式(2)、式(3)から、送電側共振器及び受電側共振器で使用するキャパシタ(ここでは、容量分割する前のキャパシタ3、4)の容量はそれぞれ63.3pF、211pF、共振器の特性インピーダンスはそれぞれ251Ω、75.4Ωと決まる。又、本シミュレーションでは、電源5と負荷6それぞれのインピーダンスを50Ωとした。
ここで、結合係数kが0.04の場合に、最平坦整合の条件を充足する条件は、式(6a)及び式(6b)に示した通り、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Qが、QeT=1/k(=25)、且つ、QeR=1/k(=25)である。
電源5又は負荷6のインピータンスの調整により、最平坦整合の条件を充足させるには、単一容量直列型の場合、式(4)から送電側で10.1Ωと受電側で3.02Ω、単一容量並列型の場合、式(5)から送電側で6283Ω、受電側で1885Ωとなる。容量分割を用いない場合(即ち、単一容量直列型又は単一容量並列型)には、電源5及び負荷6のインピータンスは、いずれにしても広く使われる50Ωとはかけ離れた値となっている。このことからも、単一容量直列型共振器及び単一容量並列型共振器を用いて最平坦整合の条件を充足させるには、特殊な回路設計が必要となり、単一容量直列型共振器及び単一容量並列型共振器は、実用的観点からは現実的な構成とは言えないものであることが分かる。
一方、分割容量の調整により、最平坦整合の条件を充足させるには、分割容量直列型の場合には、パラメータaを送電側キャパシタ3で0.448、受電側キャパシタ4で0.25、分割容量並列型の場合には、パラメータbを送電側キャパシタ3で11.2、受電側キャパシタ4で6.14とすればよい。尚、ここで、送電側キャパシタ3と受電側キャパシタ4で値が異なるのは、コイルのインダクタンスを送電側と受電側で異なる値に設定したためである。
図8は、無線電力伝送システムにおいて最平坦整合した状態で得られた伝送特性を示す図である。
図8中の各グラフは、以下の態様の伝送特性を表す。尚、ここでは、コイル1、2の内部抵抗はゼロと仮定している。
グラフ11:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、電源5又は負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合させた場合の伝送特性
グラフ12:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、送電側キャパシタ3及び受電側キャパシタ4それぞれのa値の調整で、最平坦整合させた場合の伝送特性
グラフ13:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量並列共振回路で構成されている態様であって、送電側キャパシタ3及び受電側キャパシタ4それぞれのb値の調整で、最平坦整合させた場合の伝送特性
グラフ14:送電側共振器が分割容量並列共振回路で構成され、受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、送電側キャパシタ3のa値及び受電側キャパシタ4のb値の調整により、最平坦整合させた場合の伝送特性
グラフ11~14を参照すると、いずれの場合も、略同一の最平坦特性が得られていることが分かる。尚、通過帯域幅を電力伝送での使用状態を考慮して伝送効率80%のレベルで定義すると、グラフ11~14の最平坦特性の通過帯域幅は、いずれも、約400kHzである。以下、他のグラフにおいても、伝送効率80%を基準として、伝送特性の通過帯域幅を算出する。
次に、送電装置UAと受電装置UBの位置関係が上記条件(即ち、最平坦整合を充足する条件)から変化した状況を想定して、結合係数kの値を0.04から、0.16、0.08、0.05、0.03、0.02、0.01、0.004、及び0.001に変化させ、その状況下で、送電側共振器の外部Qを25(QeT=1/k)に固定しつつ、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合を充足させた場合(QeT*QeR=1/k)の伝送特性を算出した。
表1は、受電装置UBの共振器として、分割容量直列型、分割容量並列型、及び単一容量直列共振型それぞれを用いて、中央点整合させた場合の受電装置UBの共振器のパラメータ(即ち、分割容量直列型のa値、分割容量並列型のb値、単一容量直列共振型では負荷6のインピーダンス)を示す。
Figure 0007039087000028
本シミュレーションの演算結果を参照すると、4態様それぞれで中央点整合を充足させた場合の伝送特性そのものには、大きな違いは無かった(後述する図9、図10を参照)。即ち、いずれの伝送特性においても、ピーク位置での伝送効率(以下、「ピーク伝送効率」とも称する)が得られる周波数は、送電側共振器及び受電側共振器の共振周波数付近(ここでは、10MHz付近)であり、その際のピーク伝送効率の値や通過帯域幅は、略同一の値となった。
図9は、無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk=0.16に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の伝送特性を示す図である。
図9中の各グラフは、以下の態様の伝送特性を表す。
グラフ11a:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.16に変化したときに、電源5及び負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合を行った場合の伝送特性
グラフ12a:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.16に変化したときに、受電側キャパシタ4のa値の調整で、中央点整合を行った場合の伝送特性
グラフ13a:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量並列共振回路で構成されている態様であって、k=0.16に変化したときに、受電側キャパシタ4のb値の調整で、中央点整合を行った場合の伝送特性
グラフ14a:送電側共振器が分割容量並列共振回路で構成され、受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.16に変化したときに、受電側キャパシタ4のb値の調整により、中央点整合を行った場合の伝送特性
ここで、送電側共振器と受電側共振器の両方の外部Qを調整して、伝送特性を最平坦特性に調整した場合、グラフ11aから、通過帯域幅は1.64MHzとなった。一方、受電側共振器の外部Qのみを調整して、伝送特性を中央点整合に調整した場合には、グラフ12a、13a、14aから、通過帯域幅は380~420kHzと減少する。但し、中央点整合の場合であっても、ピーク伝送効率はほぼ100%である。
尚、図9では、最平坦特性の伝送特性の一例として、送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成された態様における伝送特性(グラフ11a)のみを示したが、送電側共振器及び受電側共振器が、分割容量直列共振回路又は分割容量並列共振回路で構成された態様における伝送特性も同様となる。
図10は、無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk=0.004に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の伝送特性を示す図である。
図10中の各グラフは、以下の態様の伝送特性を表す。
グラフ11b:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.004に変化したときに、電源5及び負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合を行った場合の伝送特性
グラフ12b:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.004に変化したときに、受電側キャパシタ4のa値の調整で、中央点整合を行った場合の伝送特性
グラフ11c:グラフ11bと同様の態様において、コイル1、2に内部抵抗を保有させた場合の伝送特性
グラフ12c:グラフ12bと同様の態様において、コイル1、2に内部抵抗を保有させた場合の伝送特性
尚、グラフ11b、グラフ12bでは、コイル1、2の内部抵抗はゼロと仮定している。
ここで、送電側共振器と受電側共振器の両方の外部Qを調整して、伝送特性を最平坦特性に調整した場合、グラフ11bから、通過帯域幅は40.0kHzとなった。一方、受電側の外部Qのみを調整して、伝送特性を中央点整合に調整した場合には、グラフ12bから、通過帯域幅は4.0kHzと減少する。尚、図10の各ブラフの通過帯域幅が、図9の各ブラフの通過帯域幅と比較して狭くなっているのは、図10では、図9と比較してk値を相当小さい値に設定しているためである。
コイル1、2の内部抵抗をゼロ[Ω]と仮定した場合、最平坦整合及び中央点整合のいずれの場合も、ピーク伝送効率はほぼ100%となる。但し、コイル1、2の内部抵抗を現実的な値(例えば、長さ1m当たりで0.02Ω)に仮定すると、ピーク伝送効率も低下する。本シミュレーションでは、最平坦整合のときには96%(グラフ11cを参照)、中央点整合のときにはでは80%(グラフ12cを参照)に低下した。コイル1、2の内部抵抗によるピーク伝送効率の低下は、共振器結合では避けられない問題であるが、中央点整合の場合には、最平坦整合の場合よりも、その影響が顕著に出ることが分かる。
図11は、無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk値が種々に変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合の通過帯域幅の変化を示す図である。
図11中の各グラフは、以下の態様の伝送特性における通過帯域幅を表す。
グラフ31a:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、各k値において、電源5及び負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合を行った場合の通過帯域幅
グラフ32a:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.04からk値が変化したときに、受電側キャパシタ4のa値の調整で、中央点整合を行った場合の通過帯域幅(電源5及び負荷6のインピータンスは50Ωに設定されている)
各k値で最平坦整合した場合には、通過帯域幅はフィルタ理論通りに1/kに比例して変化する(グラフ31aを参照)。これに対し、最平坦整合させない場合には、中央点整合を行った後でも、通過帯域幅は、k=0.04(即ち、最平坦整合となるk値)以外ではk値が高くても低くても最平坦整合の場合より狭くなっている(グラフ32aを参照)。又、この場合、k値が、k=0.04(即ち、最平坦整合となるk値)から外れるほど、中央点整合を行った後も、通過帯域幅は、狭くなっている。
つまり、図11から、中央点整合させたときのk値に係る条件(即ち、QeT*QeR=1/k)が、最平坦整合させるk値に係る条件(即ち、QeT=1/k、且つ、QeR=1/k)に近いほど、中央点整合を行った後の通過帯域幅が広くなることが分かる。
図12は、無線電力伝送システムにおいて、図8に示した最平坦整合を充足する条件下(k=0.04)からk値が変化したときに、受電側共振器の外部Qを調整して中央点整合させた場合のピーク伝送効率を示す図である。
図12中の各グラフは、以下の態様の伝送特性のピーク伝送効率を表す。
グラフ31b:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、各k値において、電源5及び負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合を行った場合のピーク伝送効率(コイル1、2に内部抵抗を保有させた場合)
グラフ32b:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.04からk値が変化したときに、受電側キャパシタ4のa値の調整で、中央点整合を行った場合のピーク伝送効率(電源5及び負荷6のインピータンスは50Ωに設定されている)(コイル1、2に内部抵抗を保有させた場合)
グラフ33b:グラフ32bと同様の態様において、コイル1、2に内部抵抗をゼロとした場合のピーク伝送効率
コイル1、2の内部抵抗をゼロと仮定すると、k=0.001の場合でもピーク伝送効率は100%である(グラフ33bを参照)。しかしながら、現実の配線素材である銅やアルミの抵抗値を仮定すると、最平坦整合をしていてもk値の小さいところではピーク伝送効率は低下する(グラフ31bを参照)。そして、中央点整合の場合は、ピーク伝送効率の低下がさらに顕著となる(グラフ32bを参照)。
図13は、図11及び図12のデータから、ピーク伝送効率と通過帯域幅の関係をプロットした図である。
図13中の各グラフは、以下の態様の伝送特性のピーク伝送効率と通過帯域幅の関係を表す。
グラフ31c:送電側共振器及び受電側共振器が単一容量直列共振回路で構成されている態様であって、各k値において、電源5及び負荷6それぞれのインピータンスの調整で、最平坦整合を行った場合のピーク伝送効率と通過帯域幅の関係
グラフ32c:送電側共振器及び受電側共振器が分割容量直列共振回路で構成されている態様であって、k=0.04からk値が変化したときに、受電側キャパシタ4のa値の調整で、中央点整合を行った場合のピーク伝送効率と通過帯域幅の関係(電源5及び負荷6のインピータンスは50Ωに設定されている)
中央点整合を行った場合のピーク伝送効率は、通過帯域幅で決まり、中央点整合を行った場合に高いピーク伝送効率を得るためには、広い通過帯域幅を有する伝送特性を得ることが重要なことが判る(グラフ32cを参照)。この結果は、図11の結果と併せて考察すると、中央点整合させたときの外部Q(即ち、QeT*QeR=1/k)が、最平坦整合させる外部Q(即ち、QeT=1/k、且つ、QeR=1/k)に近いほど、中央点整合を行った後の伝送効率が高くなることを意味する。尚、この事象は、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの構成に関わらず見出された(ここでは図示せず)。
このように、事前に、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを、所定の条件(即ち、所定のk値)で、最平坦整合するように調整しておくことで、システム運用時、k値が事前設定した所定の条件(即ち、所定のk値)から変動した場合には、送電側共振器と受電側共振器の一方のみの共振器の外部Qの調整を行う(即ち、中央点整合させる)だけでも、高い伝送効率を確保することが可能である。
換言すると、事前に、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを最平坦整合の条件を充足するように調整せず、システム運用時、k値が事前設定した所定の条件(即ち、所定のk値)から変動したときに、受電側共振器の外部Qのみを調整して中央点整合(QeT*QeR=1/k)を充足させたとしても、十分に高い伝送効率を確保することができない。
これは、事前に、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを最平坦整合の条件を充足するように調整していない状態で、k値が事前設定した所定の条件(即ち、所定のk値)から変動したときに、受電側共振器の外部Qのみを調整して中央点整合を充足させると、受電側共振器の外部Qが、最平坦整合条件の場合と比較して非常に偏った値となるためである。即ち、送電側共振器又は受電側共振器の外部Qが偏った値となると、コイル1、2の内部抵抗による影響を受けやすくなり、反射電力が大きくなり、伝送効率が低下してしまうという現象が働いていると考えられる。
この点、事前に、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Qを、システム運用時のk値を想定して電力伝送の伝送特性が最平坦特性となるように調整しておくことで、実際のシステム運用時に、k値の変化に対応して、一方の共振器の外部Qを調整して、中央点整合を充足させた場合にも、最平坦整合に近い条件下となるため、十分に高い伝送効率を維持することが可能となる。
かかる観点から、最平坦整合させるk値に係る条件(即ち、QeT=1/k、且つ、QeR=1/k)は、実使用時に想定されるk値から離れすぎないように設定されるのが好ましい。そのためには、固定される側の共振器の外部Qについても、最適な値に設定できることが重要であり、送受電両側で外部Qを任意に設定できる構成が有用である。この点で、送電側共振器と受電側共振器の両方を、図5A、図5Bに示した容量分割直列共振回路又は容量分割並列共振回路で構成し、それらを構成するキャパシタ3、4を、図7A及び図7Bで示した可変キャパシタとするのが好ましい。
<具体的調整手法>
ここで、図14~図16を参照して、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいて、電力伝送を実施する前に行う共振器の外部Qの調整方法の具体例について、説明する。
上記したように、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、事前に、所定の条件で、最平坦整合するように、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを調整するのが重要である。
この事前準備の段階では、まず、無線電力伝送システムの実使用時の送電側共振器と受電側共振器の位置関係(即ち、k値)の変動幅(即ち、送電側共振器と受電側共振器との間の位置ずれの許容度)を設定する。実使用時のk値が、最平坦整合条件を充足するk値よりも低くなると、通過帯域幅は狭くなり、ピーク伝送効率が著しく低下する傾向にある。そのため、事前準備の段階(即ち、最平坦整合の条件を充足させる際)では、ピーク伝送効率が小さくなり過ぎない範囲で最もk値の小さい付近で、QeT=1/k、且つ、QeR=1/kの外部Qを設定するのが好ましい。そうすることで、実使用時には、それよりも大きなk値の範囲で、中央点整合させた際の伝送効率を高い値に維持することが可能となる。
次に、送電側共振器と受電側共振器との間の位置ずれの許容度に応じて決定したk値(即ち、外部Q)にあわせて、送電側キャパシタ3と受電側キャパシタ4それぞれの分割容量(a値又はb値)を設定し、図7A、図7Bに示したような可変キャパシタを用いて、電極位置の調整により、送電側キャパシタ3と受電側キャパシタ4それぞれの外部Qを調整する。
最平坦整合(QeT=1/k、且つ、QeR=1/k)しているか否かは、例えば、ネットワークアナライザを用いた反射率の位相変化(図15を参照)により判定することができる。
図14、図15は、無線電力伝送システムにおいて、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送を実施した際に得られる反射率及び透過率の測定結果を示す図である。尚、図14では、測定により得られた反射率と透過率の絶対値の周波数依存性を示し、図15では、測定により得られた反射率の絶対値と位相変化をスミスチャート上に示している。尚、かかる測定は、例えば、ネットワークアナライザを用いて行うことができる。
尚、図14、図15は、k=0.04の場合に最平坦整合となるように調整された送電側共振器及び受電側共振器において、k値を0.02、0.04、0.05、及び0.06と変化させ、そのk値に応じて、受電側共振器で外部Qを変えて中央点整合した場合の反射率及び透過率を測定した結果を示している。
図14中の各グラフは、以下の態様の反射特性と透過特性を表す。
グラフ41:結合係数kが0.02のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射特性
グラフ42:結合係数kが0.03のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射特性
グラフ43:結合係数kが0.04のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射特性
グラフ44:結合係数kが0.05のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射特性
グラフ45:結合係数kが0.06のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射特性
グラフ51:結合係数kが0.02のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た透過特性
グラフ52:結合係数kが0.03のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た透過特性
グラフ53:結合係数kが0.04のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た透過特性
グラフ54:結合係数kが0.05のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た透過特性
グラフ55:結合係数kが0.06のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た透過特性
図14に示す反射率と透過率の絶対値を見ただけでは、どのような条件が最平坦整合条件を充足しているのか判定することは難しい。この点、図15に示すように、反射率の絶対値に加え位相変化に着目することで、最平坦整合条件を充足しているのか否かを容易に判定することが可能である。
図15中の各グラフは、以下の態様の反射率の位相変化を表す。
グラフ61:結合係数kが0.02のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射率の位相変化
グラフ62:結合係数kが0.03のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射率の位相変化
グラフ63:結合係数kが0.04のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射率の位相変化
グラフ64:結合係数kが0.05のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射率の位相変化
グラフ65:結合係数kが0.06のときに、受電側共振器の外部Qの調整で中央点整合した場合の送電側から見た反射率の位相変化
図15では、スミスチャートを用いて、反射率の位相変化の測定結果を示している。ここで示すものは、送電側から見たS11のシグナルである。
図15に示すように、k値が0.04より小さい場合はループ状になり、その頂点が原点にある。一方、最平坦整合条件を充足するk=0.04では、ループが小さくなって点になり、ちょうど原点で鋭い角度のピークを持つ。又、k値が0.04より大きい場合は鋭いピークが原点の位置でなだらかになり、緩いカーブの曲線となる。
受電側から見たS22はその逆の変化をするが、最平坦整合で原点に鋭いピークが来る点は同じである。小さなループを原点付近に作ることで広い周波数範囲で反射率ゼロに近い条件となり、その結果、透過率のピーク範囲も広がる。グラフ63に示すように、反射信号のSパラメータがスミスチャート上の原点で鋭いピークを持つことが最平坦整合条件となる。
尚、Sパラメータ測定は市販のネットワークアナライザで容易に測定可能である。
このような方法で、最平坦整合するように、送電側キャパシタ3と受電側キャパシタ4それぞれの容量値配分を調整する。その後、実際のシステム運用時に中央点整合させる際には、送電側キャパシタ3又は受電側キャパシタ4の一方の容量値配分を固定した状態で、他方の容量値配分を調整する。
図16は、本実施形態に係る無線電力伝送システムのシステム運用時(即ち、実使用時)の動作例を示すフローチャートである。尚、ここでは、図4Aの直列共振器を用いた無線電力伝送システムの動作例のみを示す。
図16に示すフローチャートは、例えば、送電装置UA又は受電装置UBのうち、中央点整合の際に外部Qを調整する対象に設けられた制御部(ここでは、受電装置UB側の制御部10B)が、コンピュータプログラムに従って実行する処理である。このフローチャートの処理は、例えば、送電装置UA又は受電装置UBに設けられた相対位置検出センサ(図示せず)が、送電装置UAに対する受電装置UBの相対位置が所定範囲内に入ったことを検出したことを契機として実行される。
ステップS1において、受電装置UBに設けられた制御部10Bは、送電装置UAに設けられた制御部10Aと通信することで、送電装置UAから受電装置UBに対して、電力伝送の試験実施を実行させる。
尚、このステップS1は、高い伝送効率を確保し得るa値(即ち、分割キャパシタ3a、3bの容量値C、C、及び分割キャパシタ4a、4bの容量値C、C)を特定するための試験的な電力伝送である。そのため、このステップS1で指定される電力値は、ステップS5の本実施に係る電力伝送の場合の電力値よりも、低い電力値に設定されている。
ステップS2において、制御部10Bは、電力伝送の試験実施における伝送効率を測定する。この際、制御部10Bは、例えば、送電装置UAで規定される送電電力、及び受電装置UBで測定される受電電力に基づいて、伝送効率を測定する。
ステップS3において、制御部10Bは、ステップS2で測定された伝送効率が、閾値(例えば、95%)よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップS2で測定された伝送効率が、閾値よりも大きい場合(ステップS3:YES)、ステップS5に処理を進め、閾値以下の場合(ステップS3:NO)、ステップS4に処理を進める。
ステップS4において、制御部10Bは、受電側キャパシタ4のa値(即ち、分割キャパシタ4a、4bの容量値C、C)を所定量だけ変更する。このステップS4では、分割キャパシタ4aの容量値Cと分割キャパシタ4bの容量値Cの並列合成容量を一定にしながら、分割キャパシタ4aの容量値Cと分割キャパシタ4bの容量値Cの容量比を変更する。尚、このステップS4では、送電側キャパシタ3については、分割容量(即ち、分割キャパシタ3a、3bの容量値C、C)を変更することなく、固定した状態のままとする。そして、ステップS1に戻って、再び、電力伝送及び伝送効率の測定を実行する。
本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、このステップS1~S4の処理を繰り返し実行することで、高い伝送効率を確保し得る受電側キャパシタ4のa値(即ち、分割キャパシタ4a、4bの容量値C、C)を特定する。つまり、これによって、2つの共振器間の電磁結合の状態(即ち、結合係数k)に対応して、中央点整合条件を充足するように、分割キャパシタ4a、4bの容量値C、Cを設定することができる。
ステップS5において、制御部10Bは、送電装置UAから受電装置UBに対して、電力伝送の本実施を実行させる。
ステップS6において、制御部10Bは、電力伝送を終了する条件が充足することを待ち受ける(S6:NO)。そして、終了条件を充足した場合(S6:YES)、図16のフローチャートの処理を終了する。尚、制御部10Bは、例えば、受電装置UBの負荷6であるバッテリが満充電の状態に到った場合、終了条件を充足したと判定する。
本実施形態に係る無線電力伝送システムは、以上のような一連の処理によって、高い伝送効率にて、送電装置UAから受電装置UBに対して、電力伝送を実行することができる。
[効果]
以上のように、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、
送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Qを、事前に、所定の条件下で、電力伝送の伝送特性が最平坦特性となるように調整し、
システム運用時、送電側共振器と受電側共振器との間の位置関係が前記所定の条件から変化している場合、送電側共振器及び受電側共振器の共振周波数にて中央点整合するように、送電側共振器又は受電側共振器の一方の外部Qを固定した状態で他方の外部Qを調整することで、電力伝送の伝送特性を調整する。
これによって、実際のシステム運用時に、送電側共振器と受電側共振器との間の位置関係が想定している位置関係から変化している場合であっても、一方の共振器の外部Qを調整するだけで、電力伝送時の反射を抑制し、高い伝送効率を維持することが可能である。これにより、例えば、電気自動車への給電、携帯機器への給電など、特性が固定された送電源に対して、利用する受電側で外部Q(例えば、キャパシタ4の分割容量に係るa値又はb値)を調整することで高効率が実現でき、簡便な方法で高効率の非接触給電が可能となる。
又、特に、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、送電側共振器及び受電側共振器それぞれを構成するキャパシタの分割容量(直列共振器の場合、図7Aに示す第1分割キャパシタの容量値Cと第2分割キャパシタの容量値Cに相当する。又、並列共振器の場合、図7Bに示す第3分割キャパシタの容量値Cと第4分割キャパシタの容量値Cに相当する。)を調整するだけで、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Q値を適切に調整することが可能である。これによって、容易に、事前準備のための最平坦整合にするための調整、及び/又は、システム運用時の中央点整合にするための調整を行うことが可能となる。
特に、本実施形態に係る無線電力伝送システムでは、送電側共振器及び受電側共振器の共振周波数(即ち、共振器単独の固有共振周波数)において、高い伝送効率で無線電力伝送を実施することが可能である。そのため、送電装置UAで、インピーダンスが固定された電源が使用されていたり、受電装置UBで、インピーダンスが固定された負荷(例えば、整流回路)が使用されている場合にも、2つの共振器間の位置ずれに伴う伝送効率の低下を招かない点で好適である。これによって、例えば、広く普及している特性インピーダンスが50Ωの高周波電源や同軸ケーブルを用いることも可能となる。
加えて、本実施形態に係る無線電力伝送システムは、共振器のキャパシタの分割容量(直列共振器の場合、図7Aに示す第1分割キャパシタの容量値Cと第2分割キャパシタの容量値Cに相当する。又、並列共振器の場合、図7Bに示す第3分割キャパシタの容量値Cと第4分割キャパシタの容量値Cに相当する。)を調整することで、送電装置UAと受電装置UBとで、共振器のコイルの形状やインダクタンスが異なる場合や、送電装置UAの電源と受電装置UBの負荷とで、インピーダンスが異なる場合にも、容易に、中央点整合(及び最平坦整合)させることが可能である点で、有用である。
(第2の実施形態)
上記したように、本開示に係る結合共振型無線電力伝送システムの調整方法は、事前に、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを、所定の条件(即ち、所定のk値)で、最平坦整合するように調整しておき、システム運用時、k値が事前設定した所定の条件(即ち、所定のk値)から変動した場合には、送電側共振器と受電側共振器の一方のみの共振器の外部Qの調整を行う(即ち、中央点整合させる)だけで、高い伝送効率を確保する点に、特徴を有する。
第1の実施形態では、LC共振器を用いた結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法を示した。同様な調整方法は、オープンリング共振器を用いた結合共振型無線電力伝送システムでも利用可能である。
本願の発明者らは、先願である特許文献1において、オープンリング共振器を用いた無線電力伝送システムで、共振器間の位置関係が変動した際に、送電側共振器及び受電側共振器それぞれを構成するオープンリング共振器のポート角度を調整することで、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Q値を調整し、電力伝送時の周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることが可能であることを示した。
本実施形態に係る無線電力伝送システムは、例えば、特許文献1に開示した無線電力伝送システムを利用する。
図17、図18、図19は、本実施形態に係る無線電力伝送システムの概略構成を示している。尚、ここでは、オープンリング共振器のポート角度を調整可能とするための構成の概略のみ説明する(詳細については、特許文献1を参照されたい)。
図17は、無線電力伝送システムの全体構成を側面視した図であり、図18は、オープンリング共振器111を平面視した図であり、図19は、オープンリング共振器111とオープンリング共振器211とが対向する状態を平面視した図である。
図17において、UAは無線電力伝送システムの送電装置であり、UBは受電装置である。送電装置UAは、例えば、オープンリング共振器111、オープンリング共振器111に対する給電線たる入出力線路112(例えば、同軸線路)、グラウンド板113、制御部114、駆動部115、電源等が搭載された回路基板120を備えている。又、受電装置UBは、例えば、オープンリング共振器211、オープンリング共振器211に対する給電線たる入出力線路212(例えば、同軸線路)、グラウンド板213、制御部214、駆動部215、及び、電気負荷等が搭載された回路基板220を備えている。
尚、ここでは、オープンリング共振器の支持構造としては、送電装置UAと受電装置UBとで、同一の構造が採用されている。
本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、例えば、オープンリング共振器111、211を、回路基板120、220とは別個に構成し(例えば、金属板により構成する)、回路基板120、220からオープンリング共振器111、211に向けて入出力線路112、212を延在させ、オープンリング共振器111、211の先端の電極部112a、212aを介して、オープンリング共振器111、211と入出力線路112、212とを電気接続する構成としている。そして、オープンリング共振器111、211を、上下方向に延在する支持棒111S、211Sにて、当該共振器111、211の中心軸の位置で回転可能に支持し、駆動部115、215を駆動させて支持棒111S、211Sを回転動作させることで、オープンリング共振器111、211と電極部112a、212aとの位置関係を変更し、これにより、オープンリング共振器111、211に接続される入出力線路112、212のポート角度を調整可能としている。
尚、ポート角度は、上記したように、オープンリング共振器のリング周方向において、オープンリング共振器と入出力線路とが電気接続する位置を表す。以下では、説明の便宜として、ポート角度の値を、オープンリング共振器111の中心点Aとオープンリング共振器111に電極部112aが電気接続する位置Aとを結ぶ線と、オープンリング共振器111の中心点Aとオープンリング共振器111の長手方向の中心位置Aとを結ぶ線との間のなす角度(即ち、位置Aと位置Aとの間のオープンリング共振器111の周方向における角度)∠Aにより定義付ける(図18のθを参照)。
一般に、オープンリング共振器の外部Qは、オープンリング共振器に接続する入出力線路のインピーダンスをZ、オープンリング共振器のリング導体部の特性インピーダンスをZ、オープンリング共振器のポート角度をθとすると、以下の式(27)で算出できることが知られている(非特許文献7を参照)。
Figure 0007039087000029
本実施形態に係る無線電力伝送システムは、かかる理論を利用するものであり、オープンリング共振器のポート角度を調整可能とすることによって、オープンリング共振器に接続する入出力線路のインピーダンス、負荷インピーダンス、及び電源インピーダンス等の変更を行うことなく、オープンリング共振器の外部Qを適切に調整可能とする。つまり、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、送電側共振器及び受電側共振器それぞれを構成するオープンリング共振器のポート角度を調整することで、送電側共振器及び受電側共振器それぞれの外部Q値を適切に調整する。
本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいて、伝送特性を調整する具体的な調整方法自体は、第1の実施形態で示した手法と同様の手法を用いることができる。
まず、事前準備の段階では、所定の条件下で、送電側共振器から受電側共振器に対して電力伝送する際の伝送特性が最平坦特性となるように(即ち、式(6a)及び式(6b)を充足するように)、送電側共振器の外部Q及び受電側共振器の外部Qそれぞれを調整しておく。
この事前準備の調整プロセスは、例えば、第1の実施形態と同様に、ネットワークアナライザを用いた反射率の位相変化を確認しながら、送電側共振器の外部Q(即ち、送電側のオープンリング共振器のポート角度)及び受電側共振器の外部Q(即ち、受電側のオープンリング共振器のポート角度)を調整することで行う。尚、この際、式(6a)及び式(6b)の条件(QeT=1/k、且つ、QeR=1/k)より、典型的には送受電のリングは同じ構造にしているため、式(27)で分かるように送電側のオープンリング共振器のポート角度と、受電側のオープンリング共振器のポート角度とは、同一の角度となる。
そして、システム運用時、送電側共振器と受電側共振器との位置関係(即ち、相対的な位置及び/又は角度)が変わり、その結果、結合係数kが所定の条件から変化した場合、送電側共振器及び受電側共振器のうちの一方の外部Q(例えば、受電側のオープンリング共振器のポート角度)のみを調整することにより、中央点整合の条件(式(21)に示すQeT*QeR=1/k)を充足させる。
このシステム運用時の調整プロセスは、例えば、図16のフローチャートと同様の処理により行うことができる。具体的には、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいては、例えば、図16のフローチャートで、ステップS4の処理において、「送電側キャパシタを固定した状態で受電側キャパシタの分割容量を変更する」処理を行う代わりに、「送電側オープンリング共振器のポート角度を固定した状態で受電側オープンリング共振器のポート角度を変更する」処理を行い、伝送効率が閾値以上となるポート角度をサーチし、これにより、中央点整合させる。
ここで、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいても、上記調整方法により、高いピーク伝送効率を確保することが可能であることを実証するため、電磁界シミュレータによる検証実験を行った。
図20~図23は、電磁界シミュレータによる検証実験の結果を示す図である。
本シミュレーションでは、送電側のオープンリング共振器と受電側のオープンリング共振器との間の距離(以下、「共振器間距離」と称する)が変化して結合係数kが、最平坦整合をとる条件から変化した際に、受電側オープンリング共振器のポート角度のみを変更することで中央点整合条件を充足させた場合に、高い伝送効率を維持できるか否かを検証した。
尚、本シミュレーションでは、送電装置UAと受電装置UBとで、同一のオープンリング共振器の支持構造を採用し、両者の設計パラメータについても、同一の値とした。具体的には、共振周波数が920MHzになるようにオープンリング共振器のリング中心線の直径を27mm、オープンリング共振器のリング幅を20mm、オープンリング共振器と裏面グラウンド基板との間の距離を8mmと設定し、その結果オープンリング共振器のリング導体部の特性インピーダンスは約75Ωとなった。また、オープンリング共振器に対する入出力線路の特性インピーダンスZは50Ωと設定した。
まず、共振器間距離が90mmの条件で最平坦整合をとるように、送電側のオープンリング共振器のポート角度、及び受電側のオープンリング共振器のポート角度を調整した。その際、最平坦整合を充足するポート角度θは8°であった。
次に、最平坦整合を充足する条件下から共振器間距離(即ち、k値)を種々に変化させ、受電側オープンリング共振器のポート角度を調整して中央点整合させた。ここでは、共振器間距離が75mm、62mm、50mm、42mmのときに、送電側のオープンリング共振器のポート角度を8°に固定したまま、受電側のオープンリング共振器のポート角度を調整して中央点整合させた。
図20は、オープンリング共振器での最適ポート角度の共振器間距離依存性を示す図である。
図20中の各グラフは、以下のポート角度を表す。
グラフ71:送電側共振器のポート角度(8°固定)
グラフ72:効率極大となる受電側共振器のポート角度
グラフ73:各共振器間距離で最平坦整合を実現するポート角度
図20から分かるように、共振器間距離が75mm、62mm、50mm、42mmそれぞれのとき、受電側のオープンリング共振器のポート角度が16°、32°、64°、128°のときに伝送効率がピークになり、中央点整合した状態となった(グラフ72を参照)。尚、共振器間距離が75mm、62mm、50mm、42mmそれぞれのとき、送電側のオープンリング共振器のポート角度と受電側のオープンリング共振器のポート角度との両方を調整し、最平坦整合を充足させた場合のポート角度は、11°、15°、21°、26°となった(グラフ72を参照)。これらのポート角度から、上式(27)を用いて各共振器の外部Qを求めることができる。
図21は、オープンリング共振器での最適ポート角度時における外部Qを示す図である。尚、図21に示す外部Qは、図20で算出されたポート角度をもとに、求められている。
図21中の各グラフは、以下の外部Qを表す。
グラフ74:ポート角度が8度に固定された送電側共振器の外部Q
グラフ75:効率極大となる場合の受電側共振器の外部Q
グラフ76:各共振器間距離で最平坦整合の場合の外部Q
グラフ77:グラフ74とグラフ75の幾何平均
図21には、比較のため、中央点整合した状態(即ち、ポート角度16°、32°、64°、128°のときの)の受電側のオープンリング共振器の外部Q(グラフ75を参照)と8°に固定された送電側のオープンリング共振器の外部Q(グラフ74を参照)との幾何平均も示す(グラフ77を参照)。この幾何平均は、最平坦整合を充足させた状態における受電側のオープンリング共振器の外部Q(グラフ76を参照)とほぼ一致している。即ち、以下の式(28)が成立しているおり、この関係は、式(10)と同一である。
Figure 0007039087000030
図22は、オープンリング共振器の最適ポート角度時における通過帯域幅を示す図である。
図22中の各グラフは、以下の通過帯域幅を表す。
グラフ80:中央点整合の場合の効率80%の通過帯域幅(完全導体を仮定)
グラフ81:最平坦整合の場合の効率80%の通過帯域幅(完全導体を仮定)
図22のグラフ80は、図20で算出した中央点整合した状態(即ち、ポート角度16°、32°、64°、128°のときの)における通過帯域幅を示している。又、図22のグラフ81は、最平坦整合時における通過帯域幅を示している。尚、グラフ80及びグラフ81は、いずれも、伝送効率が80%の帯域幅である。又、グラフ80及びグラフ81は、いずれも、オープンリング共振器を完全導体と仮定して算出している。
図22から、最平坦整合時における通過帯域幅は、共振器間距離が縮まるにつれて、急速に増大するが(グラフ81を参照)、中央点整合時における通過帯域幅は、共振器間距離が縮まった状態においても共振器間距離の遠い状態とほぼ同じ狭い帯域幅のままである(グラフ80を参照)ことが分かる。尚、電力伝送は、典型的には、単一の周波数で行われるので、中央点整合時に通過帯域幅が狭いこと自体は、問題とはならない。
図23は、オープンリング共振器の最適ポート角度時におけるピーク伝送効率を示す図である。
図23中の各グラフは、以下のピーク伝送効率を表す。
グラフ82:中央点整合の場合のピーク伝送効率(アルミの抵抗率を仮定)
グラフ83:最平坦整合の場合のピーク伝送効率(アルミの抵抗率を仮定)
グラフ84:中央点整合で、完全導体を仮定した場合のピーク伝送効率
図23のグラフ82、グラフ84は、図20で算出した中央点整合した状態(即ち、ポート角度16°、32°、64°、128°のときの)におけるピーク伝送効率を示し、グラフ83は、最平坦整合時におけるピーク伝送効率も示している。
図23から分かるように、オープンリング共振器を完全導体と仮定すると、最平坦整合でも中央点整合でもピーク伝送効率はほぼ100%で一定である(グラフ84を参照)。一方、オープンリング共振器を通常のアルミの伝導率を有する導体と仮定すると、ピーク伝送効率は、共振器間距離が増大するにつれて、LC共振器の場合と同様に、最平坦整合の場合(グラフ82を参照)及び中心点整合の場合(グラフ83を参照)、ともに低下する。
このことから、LC共振器ほど明確ではないが、オープンリング共振器のピーク伝送効率は、単純に共振器間距離で一意に決まるのではなく、通過帯域幅に大きく影響を受けると推察される。これは、上記実施形態で考察したように、送電側共振器又は受電側共振器の外部Qが偏った値となると、オープンリング共振器の内部抵抗による影響を受けやすくなり、反射電力が大きくなり、伝送効率が低下してしまうという現象が働いていると考えられる。そのため、上記実施形態で考察したように、中央点整合を行った場合に高いピーク伝送効率を得るためには、中央点整合を行った場合の外部Qは、最平坦整合させた際の外部Qに近い外部Qに設定されるのが好ましいと言える。
以上のように、本実施形態に係る無線電力伝送システムのように、送電側共振器及び受電側共振器それぞれをオープンリング共振器で構成した態様においても、事前に、送電側共振器の外部Qと受電側共振器の外部Qそれぞれを、所定の条件で、最平坦整合するように調整しておき、システム運用時、k値が事前設定した所定の条件から変動した場合には、送電側共振器と受電側共振器の一方のみの共振器の外部Qの調整を行う方法は、有用であることが分かる。換言すると、本実施形態に係る無線電力伝送システムにおいても、上記した2段階の調整方法によって、k値の変化に対応した最適伝送を実現することが可能であると言える。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形態様が考えられる。
例えば、上記実施形態では、無線電力伝送システムにおいて、中央点整合させる際、受電装置UB側に設けられた制御部10Bの制御により、受電側共振器の外部Qを制御する態様を示した。しかしながら、受電側共振器の外部Qを調整する手法は、必ずしも、制御部10Bによる自動制御である必要はなく、作業者による手動操作によって行われてもよい。
又、中央点整合させる際に外部Qを調整する対象は、受電側共振器に代えて、送電側共振器であってもよい。
又、上記実施形態では、事前に、使用対象となる送電側共振器と受電側共振器とのセットを準備し、実際にこれらの間で電力の授受を行って、電力伝送時の伝送特性が最平坦特性となるように、送電側共振器と受電側共振器それぞれの外部Qを調整する態様を示した。かかる態様は、送電側共振器及び/又は受電側共振器が、製品毎に個体差を含む場合に有用である。
しかしながら、送電側共振器及び/又は受電側共振器の個体差が無視できるほどに小さい場合には、送電側共振器と受電側共振器それぞれの外部Qの規格値を設定し、当該規格値を充足するように、送電側共振器及び受電側共振器それぞれを製品設計するだけであってもよい。これにより、実際に、初期設定としての最平坦整合を充足させるための外部Qの調整作業を行うことなく、送電側共振器と受電側共振器それぞれの外部Qが、事前に、所定の条件下で、電力伝送の伝送特性が最平坦特性となるように調整されることになる。そうすることで、かかる規格通りに製品設計された送電側共振器と受電側共振器とを組み合わせることで、初期設定としての最平坦整合を充足させるための外部Qの調整作業を省略することができる。但し、実際には、送電側共振器及び受電側共振器は、個体差を含む場合が多いため、使用対象となる送電側共振器と受電側共振器とのセットした際に、電力伝送時の伝送特性が最平坦特性となるように、送電側共振器と受電側共振器それぞれの外部Qを調整するのが好ましい。
又、上記実施形態では、送電装置UA及び受電装置UBそれぞれが制御部10A、10Bを有する態様を示した。しかしながら、共振器を構成するキャパシタ3、4の分割キャパシタの容量値の調整は、作業者による手動操作で行われてもよい。その場合、送電装置UA及び/又は受電装置UBに制御部(10A、10B)を設けない構成であってもよい。
又、上記実施形態では、送電側共振器及び受電側共振器が、分割容量直列型又は分割容量並列型で構成された態様を示した。しかしながら、送電側共振器及び/又は受電側共振器としては、実用的観点からは好ましい態様ではないが、単一容量直列共振回路又は単一容量並列共振回路が用いられてもよい。この場合、共振器の外部Qの調整は、電源5のインピーダンスや負荷6のインピーダンスの調整で行う構成とする。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本発明に係る結合共振型無線電力伝送システムによれば、2つの共振器間の位置関係が変化し結合係数kが変化した場合であっても、一方の共振器の外部Qを調整するだけで、電力伝送時の反射を抑制し、高い伝送効率を維持することが可能である。
UA 送電装置
UB 受電装置
1 コイル(送電側コイル)
2 コイル(受電側コイル)
3 キャパシタ(送電側キャパシタ)
3a、3b、3c、3d 分割キャパシタ
4 キャパシタ(受電側キャパシタ)
4a、4b、4c、4d 分割キャパシタ
5 電源
6 負荷
10A 制御部
10B 制御部
E1 第1固定電極
E2 第2固定電極
E3 可動電極
E4 第1固定電極
E5 第2固定電極
E6 可動電極
111、221 オープンリング共振器
111S、211S 支持棒
112、212 入出力線路
112a、212a 電極部
113、213 グラウンド板
114、214 制御部
115、215 駆動部
120、220 回路基板

Claims (7)

  1. 電磁的共鳴を用いて、第1共振器から第2共振器に対して非接触での電力伝送を行う結合共振型無線電力伝送システムであって、
    前記第1及び第2共振器それぞれの外部Qは、事前に、前記第1及び第2共振器の共振周波数において、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係がシステム運用時の基準位置にある条件下で、前記電力伝送の伝送特性が最平坦特性(但し、最平坦特性は下記の式(1a)及び(1b)を同時に充足するときに得られる伝送特性を意味する)となるように調整されており、
    システム運用時、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係が前記基準位置から変化している場合、制御部により、前記共振周波数にて中央点整合(但し、中央点整合は下記の式(2)を充足するときに得られる伝送特性を意味する)するように、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを調整した後、前記電力伝送を実行する結合共振型無線電力伝送システムであって
    前記制御部は、前記システム運用時、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを変化させながら、前記第1及び第2共振器間において試験的に前記電力伝送を実施し、その際に得られる伝送効率の変化に基づいて、前記中央点整合する前記他方の前記外部Qを特定する、
    結合共振型無線電力伝送システム。
    Figure 0007039087000031
    Figure 0007039087000032
  2. 前記第1及び第2共振器は、それぞれ、
    キャパシタとコイルとから構成され、
    前記キャパシタが、前記コイルに対して並列接続する第1分割キャパシタと第2分割キャパシタとに分離され、且つ、前記第1分割キャパシタ若しくは前記第2分割キャパシタのいずれか一方に、外部インピーンダンスが直列に接続され、前記第1分割キャパシタと前記第2分割キャパシタの並列合成容量を一定にしつつ、その容量比を調整することが可能となった構造、又は、
    前記キャパシタが、前記コイルに対して直列接続する第3分割キャパシタと第4分割キャパシタとに分離され、且つ、前記第3分割キャパシタ若しくは前記第4分割キャパシタのいずれか一方に、外部インピーンダンスが並列に接続され、前記第3分割キャパシタと前記第4分割キャパシタの直列合成容量を一定にしつつ、その容量比を調整することが可能となった構造を有する、
    請求項1に記載の結合共振型無線電力伝送システム。
  3. 前記制御部は、前記システム運用時、前記第1及び第2共振器の前記他方の前記キャパシタの前記容量比を変化させながら、前記第1及び第2共振器間において試験的に前記電力伝送を実施し、その際に得られる伝送効率の変化に基づいて、前記電力伝送を本実施する際の前記他方の前記キャパシタの前記容量比を決定する、
    請求項2に記載の結合共振型無線電力伝送システム。
  4. 前記第1及び第2共振器は、それぞれ、
    オープンリング共振器で構成され、
    前記オープンリング共振器は、自身に電気接続される入出力線路のポート角度(但し、ポート角度は、前記オープンリング共振器のリング周方向において、前記オープンリング共振器と前記入出力線路とが電気接続する位置を表す)が調整可能な状態で支持されている、
    請求項1に記載の結合共振型無線電力伝送システム。
  5. 電磁的共鳴を用いて、第1共振器から第2共振器に対して非接触での電力伝送を行う結合共振型無線電力伝送システムにおける伝送特性の調整方法であって、
    前記第1及び第2共振器それぞれの外部Qを、事前に、前記第1及び第2共振器の共振周波数において、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係がシステム運用時の基準位置にある条件下で、前記電力伝送の伝送特性が最平坦特性(但し、最平坦特性は下記の式(3a)及び(3b)を同時に充足するときに得られる伝送特性を意味する)となるように調整し、
    システム運用時、前記第1共振器と前記第2共振器との間の位置関係が前記基準位置から変化している場合、前記第1及び第2共振器の共振周波数にて中央点整合(但し、中央点整合は下記の式(4)を充足するときに得られる伝送特性を意味する)するように、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを調整する、
    調整方法であって、
    前記システム運用時、前記第1及び第2共振器の一方の前記外部Qを固定した状態で他方の前記外部Qを変化させながら、前記第1及び第2共振器間において試験的に前記電力伝送を実施し、その際に得られる伝送効率の変化に基づいて、前記中央点整合する前記他方の前記外部Qを特定する、
    調整方法
    Figure 0007039087000033
    Figure 0007039087000034
  6. 前記第1及び第2共振器は、それぞれ、
    キャパシタとコイルとから構成され、
    前記キャパシタが、前記コイルに対して並列接続する第1分割キャパシタと第2分割キャパシタとに分離され、且つ、前記第1分割キャパシタ若しくは前記第2分割キャパシタのいずれか一方に、外部インピーンダンスが直列に接続され、前記第1分割キャパシタと前記第2分割キャパシタの並列合成容量を一定にしつつ、その容量比を調整することが可能となった構造、又は、
    前記キャパシタが、前記コイルに対して直列接続する第3分割キャパシタと第4分割キャパシタとに分離され、且つ、前記第3分割キャパシタ若しくは前記第4分割キャパシタのいずれか一方に、外部インピーンダンスが並列に接続され、前記第3分割キャパシタと前記第4分割キャパシタの直列合成容量を一定にしつつ、その容量比を調整することが可能となった構造を有する、
    請求項5に記載の調整方法。
  7. 前記第1及び第2共振器は、それぞれ、
    オープンリング共振器で構成され、
    前記オープンリング共振器は、自身に電気接続される入出力線路のポート角度(但し、ポート角度は、前記オープンリング共振器のリング周方向において、前記オープンリング共振器と前記入出力線路とが電気接続する位置を表す)が調整可能な状態で支持されている、
    請求項5に記載の調整方法。
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