JP7038508B2 - フッ素系樹脂水分散体 - Google Patents
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Description
これらは、通常、一次粒子径が数μm~数十μmのフッ素系樹脂粒子を加えて溶融混練時に分散させるため、熱可塑性樹脂表面からフッ素系樹脂がμmオーダーで突出し、フッ素系樹脂が持つ機能を十分に熱可塑性樹脂に付与することができる。しかしながら、その応用範囲は熱可塑性樹脂に限られていた。
水溶性増粘剤を0.01~5質量%含有することが好ましい。
上記フッ素系樹脂水分散体における剪断速度3.83s-1における粘度Aと剪断速度38.3s-1における粘度Bとの比、B/Aが0.7未満であることが好ましい。
重量平均分子量Mwが10万未満のノニオン系界面活性剤を0.3~30質量%を含有することが好ましい。
pH調整剤としてアミン類を含有し、pHが8.5以上であることが好ましく、また、防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤を0.5質量%以上含有しないことが好ましい。
フッ素系樹脂粒子はポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
本発明のコーティング層は、上記構成のフッ素系樹脂水分散体を用いて形成されたことを特徴とする。
上記コーティング層は、分散後のフッ素系樹脂粒子の体積平均粒子径Dvと、フッ素系樹脂粒子を含有させるコーティング層の厚みT1が、下記式(I)を満たす範囲で調整されていることが好ましい。
0.5T1≦Dv≦4T1 ………(I)
本発明の複合めっき層は、上記構成のフッ素系樹脂水分散体を用いて形成されたことを特徴とする。
上記複合めっき層は、分散後のフッ素系樹脂粒子の体積平均粒子径Dvと、フッ素系樹脂粒子を含有させる複合めっき層の厚みT2が、下記式(II)を満たす範囲で調整されていることが好ましい。
0.5T2≦Dv≦4T2 ………(II)
本発明のフッ素系樹脂水分散体は、分散後の体積平均粒子径Dvが1μm~50μmのフッ素系樹脂粒子を1~80質量%含有することを特徴とするものである。
本発明に用いることができるフッ素系樹脂粒子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン-プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン共重合体(CTFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)からなる群から選ばれる1種(各単独)のフッ素系樹脂粒子が挙げられる。
上記フッ素系樹脂粒子の中でも、特に、撥水性、撥油性、摺動性、電気特性などに極めて優れるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)粒子の使用が望ましい。
このようなポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂粒子は、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたフッ素系樹脂粒子は、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種フッ素系樹脂粒子の製造方法を用いることができる。
好ましくは、用いるPTFE粒子などのフッ素系樹脂粒子の比表面積が6.0m2/g以下となるものが好ましく、より好ましくは、0.1~5.0m2/g、特に好ましくは、0.3~4.0m2/gであることが望ましい。
本発明(後述する実施例等含む)において、体積平均粒子径Dvは、日機装社製 マイクロトラックMT3000を用いて測定した値である。また、本発明(後述実施例を含む)において、「比表面積」は、ガス吸着法により、BETの式を用いて得られる値である。
このPTFEなどのフッ素系樹脂樹脂粒子の比表面積が6.0m2/g超過のものであると、分散後の体積平均粒子径Dvが1μm~50μmに調整することが難しくなる。
このフッ素系樹脂粒子の含有量が1%未満では、本発明の効果を発揮することができず、一方、80%を超えると、粘度が高くなりすぎて使用性に劣り、分散機による分散を実現することができない場合がある。
用いることができる増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール等の合成高分子、多糖類、セルロース類からなる群から選ばれた少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)を使用することができる。
合成高分子としては、例えば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビスアクリルアミドメチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリスチレンスルホン酸、ポリプロピレンオキサイドなどが挙げられる。
多糖類としては、キサンタンガム、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、ペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
セルロース類としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、酸化セルロースなどが挙げられる。
これらの水溶性増粘剤の含有量は、フッ素系樹脂水分散体全量に対して、0.01~5%、好ましくは、0.1~3%とすることが望ましい。
この水溶性増粘剤の含有量が0.01%未満では、分散性、再分散性の向上、沈降の抑制を発揮することができず、一方、5%を超えると、粘度が著しく大きくなり、実使用時におけるハンドリングが損なわれ、製造時の歩留り悪化などの不具合も出てくることとなり、好ましくない。
用いることができるノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、少なくとも含フッ素基と親水性基を有するフッ素系添加剤、変性ポリシロキサンを含むシリコーン系添加剤、ポリエステル系添加剤、シリコン変性アクリレート、アクリル系添加剤、ポリウレタン系添加剤、スチレンアクリル系添加剤などの少なくとも1種が挙げられる。
これらのノニオン系界面活性剤は、フッ素系樹脂粒子表面への適切な吸着の点、高剪断領域における流動性確保の点から、重量平均分子量Mwが10万未満であることが必要であり、好ましくは、重量平均分子量Mwが5,000~8万のものが望ましい。なお、本発明において、「重量平均分子量」は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
上記重量平均分子量Mwが10万以上のノニオン系界面活性剤を用いると、分散体の粘度が高くなり、現場で使用の際にハンドリングができなくなる恐れがある。また、分散体の製造において分散機で処理することが不可となる可能性があるため、好ましくない。
また、カチオン系やアニオン系活性剤は、コーティング液や複合めっき液などに配合した際、それらが含有するイオンやpH変化の影響により、フッ素系樹脂粒子の凝集を引き起こす恐れがあるため、好ましくない。但し、ノニオン系界面活性剤に加え、必要に応じてカチオン系やアニオン系、またはベタインなどの両性界面活性剤を複数種併用することで、凝集リスクを大きく低減することも可能である。
含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、アミド基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできる、少なくとも含フッ素基と親水性基を有するフッ素系添加剤としては、市販のパーフルオロアルキル基含有のメガファックシリーズ(DIC社製)の中では、メガファックF-553、メガファックF-556、メガファックF-562など、パーフルオロアルキル基含有のフタージェントシリーズ(ネオス社製)の中では、フタージェント683などを用いることができる。
このノニオン系界面活性剤の含有量が0.3%未満では、分散不良となる恐れがある。一方、30%を超えると、分散体の粘度が高くなり、現場で使用の際にハンドリングができなくなる恐れがある。また、分散体の製造において分散機で処理することが不可となる可能性があるため、好ましくない。但し、フッ素系樹脂粒子配合量を低い水準に抑え、分散体中のイオン交換水比率を高めることで流動性を確保することは可能である。しかし、フッ素系樹脂粒子濃度が低い分散体は、製造や輸送の観点から不経済であるため、好ましくない。
pHが8.5未満となると、分散体にカビが生えたり、雑菌が繁殖して腐敗したりするため、冷蔵保存するなどの余計なコストを発生させることになる。カビや雑菌が繁殖しない酸性領域に調整することも可能だが、多くの産業設備は、接液部にステンレスを用いているため、接液部にライニング処理が必要になるなど、余計なコストを発生させることになる。
用いることができるアミン類としては、例えば、アミン類の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の3級アミン、テトラメチル、テトラエチル、テトラプロピル、テトラブチル、テトラアミル、テトラヘキシル、ベンジルトリメチルのそれぞれの4級アンモニウムヒドロキシド等の少なくとも1種が挙げられる。
これらのアミン類の含有量は、フッ素系樹脂水分散体のpHが上記範囲となる量であれば良く、好適な量を含有せしめることができる。
含有するpH調整剤をアミン類としたのは、水酸化ナトリウムなどの金属イオン等を含むpH調整剤は、コーティング液や複合めっき液などに配合した際、フッ素系樹脂粒子の凝集を引き起こす恐れがあるため、好ましくない。但し、ナトリウムなど特定のイオンに対して不具合を起こさない組み合わせを、十分に考慮すればアミン類以外のpH調整剤を用いても良い。しかし、多くのコーティング液や複合めっき液などに対応させる汎用性は限定される。
防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤などによって、カビや雑菌に対する保存性を高めることも可能だが、コーティング液や複合めっき液などに配合した際に、フッ素系樹脂粒子の凝集など、コーティングや複合めっきなどが本来必要とする特性を損なう恐れが出てくる。特に、防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤などを0.5%以上配合すると、そのリスクはより大きくなる。
防菌剤としては、例えば、エタノールなどのアルコール類、次亜塩素酸塩、N-クロラミン類、ヨウ素、銅化合物、亜鉛化合物、銀化合物、過酸化物、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、8-ヒドロキシキノリンおよびその誘導体、第4級アンモニウム関連化合物、カルバミン酸と尿素誘導体、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの公知の抗微生物活性成分の他、公知の抗菌剤である、ハロゲン化合物、第4級アンモニウム化合物などを挙げることができる。
防カビ剤としては、公知のものを使用でき、具体的には、例えば、前記公知の抗微生物活性成分の他、イソチアゾロン系化合物あるいはイソチアゾロン系化合物の包接化合物などを挙げることができる。また、これらの防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤において、市販品があれば、それらを用いることができる。
用いることができる水溶性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロンパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン-2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5トリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、チオジエタノール、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコールなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの水溶性溶剤の含有量は、フッ素系樹脂水分散体全量に対して、好ましくは、
3~10%とすることが好ましい。
好ましくは、更なる分散性の向上の点から用いる分散剤は、酸価を有することが好ましく、更に、分散剤の重量平均分子量は3000~5万、更に好ましくは、5000~3万であるものが望ましい。なお、本発明(後述する実施例等を含む)において、「酸価」とは分散剤1g中に含まれる酸を中和するのに必要なKOHの重量(単位、mg)を表したものであるこの酸価(単位は、mg・KOH/g)は、JIS K 2501-2003に準拠した方法により測定したものである。
好ましい分散剤としては、アクリル系共重合物、ポリエステル系共重合物、などが挙げられ、市販品では、ビックケミー社製のdisperbyk-180、184、187、190、191、192、194、199、2010、2012、2013、2015、2055、2060、2061、2096、また、BASF社製のEFKA-4550、4575、4585、4560、COATEX社製のBR3、A122、123K、P30、P90などを用いることができる。
これらの分散剤の含有量は、フッ素系樹脂水分散体全量に対して、好ましくは、0.5~15%とすることが好ましい。
本発明では、上記フッ素系樹脂水分散体における剪断速度3.83s-1における粘度Aと剪断速度38.3s-1における粘度Bとの比、B/Aがフッ素系樹脂粒子の沈降抑制の点、作業現場におけるフッ素系樹脂粒子水分散体のハンドリング向上の点から、0.7未満、より好ましくは、0.1~0.5であることが望ましい。
なお、本発明において、上記粘度測定は、コーンプレート型粘度計を用いて各剪断速度3.83s-1(1rpm)、剪断速度38.3s-1(10rpm)で測定される各粘度の比(B/A)をいう。
上記粘度比の範囲とするためには、上記フッ素系樹脂粒子の量、水溶性増粘剤などの量を好適に組み合わせ、好適な混合方法等により、上記粘度比未満となるフッ素系樹脂水分散体を得ることができる。
従って、本発明によれば、分散性、再分散性に優れ、撥水性、撥油性、摺動性、電気特性などに優れるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)などのフッ素系樹脂粒子を含有するフッ素系樹脂水分散体を得ることができ、後述するように、これをコーティング液や複合めっき液等のめっき液などの原料に用いることにより、コーティングや複合めっき表面へフッ素系樹脂粒子を十分に露出でき、PTFE等のフッ素系樹脂粒子が本来有している撥水性や摺動性等を十分に発揮できるコーティング層、複合めっき層などを得ることができる。
本発明では、上記構成のフッ素系樹脂水分散体を用いてコーティング液、複合めっき液などのめっき液を調製し、これを素材表面に、コーティング、めっき処理を施すことにより、上記フッ素系樹脂粒子特有の機能である、撥水性、撥油性、電気特性、高摺動性、電気特性などを付与したコーティング層、または、めっき層、複合めっき層を得ることができる。
コーティング層、めっき層、複合めっき層を形成せしめる素材としては、素材表面に、上記フッ素系樹脂粒子特有の機能である、撥水性、撥油性、電気特性、高摺動性などを付与せしめて本発明の効果を発揮できるものであれば、特に限定されず、例えば、各種端子板、プリント基板、半導体、液晶、有機EL、アンテナ、フィルムコンデンサなどの電気・電子部品用フィルム材料などのコンピューター関連部品等に代表される電機・電子部品用途に適している他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ基板、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品、テレビ部品、音響部品、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、パソコン等の電子機器筐体に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、携帯電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品などに代表される機械関連部品:顕微鏡、カメラ等に代表される光学機器、精密機械関連部品;航空機部品、電車車輌部品、自動車部品などに好適に使用される。
0.5T1≦Dv≦4T1 ………(I)
例えば、体積平均粒子径Dvが10μmであれば、コーティング層の厚みT1は5μm~40μmとすることが好ましいものとなる。DvがT1の半分を下回ると、フッ素系樹脂粒子がコーティングの表面に表出することが少ないため、フッ素系樹脂粒子の機能を効果的に発現し難くなる傾向となる。また、DvがT1の4倍を上回ると、コーティング層から脱落しやすくなり保持が難くなり、フッ素系樹脂粒子の機能を効果的に発現し難くなる傾向となる。なお、コーティング層からの脱落は、より不定形の粒子を用いるなどして抑制することも可能である。上記範囲外〔上記式(I)の範囲外、Dvが10μmの際のT1が5μm~40μmの範囲外〕でも、コーティング層を形成しないものよりも本発明の効果を発揮できるが、上記式(I)の範囲内で本発明の効果を高度に発揮できるものとなる。
めっき用の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されない。めっき用の金属は、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金の中から選択することができる。例えば、プリント基板等では、先に導体層(配線パターン)とは逆パターンのめっきレジストを形成しておき、その後、無電解めっきのみで導体層(配線パターン)を形成する方法も採用することもできる。
また、複合めっき方法としては、上記電気めっき法であっても無電解めっき法などであってもよい。例えば、銅-ニッケル複合めっき層、銅-コバルトめっき層、ニッケルめっき層を形成してもよい。
0.5T2≦Dv≦4T2 ………(II)
例えば、体積平均粒子径Dvが5μmであれば、めっき層の厚みT2は2.5μm~20μmとすることが好ましいものとなる。DvがT2の半分を下回ると、フッ素系樹脂粒子がめっき層の表面に表出することが少ないため、フッ素系樹脂粒子の機能を効果的に発現し難くなる傾向となる。また、DvがT2の4倍を上回ると、めっき層から脱落しやすくなり保持が難くなり、フッ素系樹脂粒子の機能を効果的に発現し難くなる傾向となる。なお、めっき層からの脱落は、より不定形の粒子を用いるなどして抑制することも可能である。上記範囲外〔上記式(II)の範囲外、Dvが5μmの際のT2が2.5μm~20μmの範囲外〕でも、コーティング層を形成しないものよりも本発明の効果を発揮できるが、上記式(II)の範囲内で本発明の効果を高度に発揮できるものとなる。
下記表1に示す配合処方(フッ素系樹脂粒子、ノニオン系界面活性剤、増粘剤、pH調製剤、防腐剤、溶剤、水)にて、常法により混練機を用いてフッ素系樹脂水分散体を調製した。得られた各フッ素系樹脂水分散体について体積平均粒子径Dv、粘度比(B/A)、再分散性(1週間、1か月)、静摩擦係数(コーティング、複合めっき)について評価した。
体積平均粒子径Dvは、日機装社製 マイクロトラックMT3000を用いて測定した値である。
また、得られたフッ素系樹脂水分散体を用いて、下記評価方法により、再分散性(1週間、1か月)、静摩擦係数(コーティング、複合めっき)について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
コーンプレート型粘度計(RE110R、東機産業社製)を用いて、25℃での剪断速度3.83s-1(1rpm:A)と剪断速度38.3s-1(10rpm:B)のときの各粘度を測定し、粘度比(B/A)を算出した。
1週間再分散性は30mLのガラス瓶にフッ素系樹脂水分散体を入れ、常温(25℃)下で、1週間静置後に上下反転を繰り返して下記評価基準で評価した。1か月再分散性も上記と同様に評価した。
評価基準:
◎:沈降せず(上下反転せず)
○:反転20回未満
△:20回以上100回未満
×:100回以上
得られたフッ素系樹脂水分散体を用いて、下記調製法により、コーティング液を調製し、80×200mm(t=1mm)のベークライト板へコーティングをした。
また、得られたフッ素系樹脂水分散体を用いて、下記調製法により、複合めっき液を調製し、80×200mm(t=1mm)のベークライト板へ複合めっき処理をした。
上記コーティング、複合めっき処理した各ベークライト板を、JIS K 7125に準拠して静摩擦係数を測定した。
すべり片は、63×63mmのフェルトを用い、すべり片には1.96Nの荷重を加えた。試験速度は100mm/minですべり片を滑らした時の最大引っ張り荷重より静摩擦係数を算出した。
固着剤1(ジョンクリル63J、BAFS社製)70重量部に対して、フッ素系樹脂粒子が9重量部となる比率で、フッ素系樹脂水分散体を添加し、良く攪拌してコーティング液を調製した。
次に、ベークライト板をアプリケータ上に固定し、2milのブレードで塗膜を形成し、100℃に熱せられたホットプレート上において十分に乾燥してコーティング処理をした。
(複合めっき液の調製、めっき方法)
イオン交換水中に、硫酸ニッケル(25g/L)、次亜リン酸ナトリウム(20g/L)、クエン酸(30g/L)を配合し、そこへフッ素系樹脂粒子濃度が10g/Lとなる様にフッ素系樹脂水分散体を添加した。必要に応じてアンモニア水でpHを8~9に調整し、複合めっき液を調製した。
次に、パラジウム蒸着で前処理したベークライト板を、良く攪拌されためっき浴中において90℃、24時間で複合めっき処理をした。
下記表2に示す配合処方で、常法により、フッ素系樹脂水分散体を用いたコーティング液を調製した。
得られたフッ素系樹脂水分散体を用いたコーティング液におけるフッ素系樹脂粒子の体積平均粒子径Dvを測定した。
また、得られたフッ素系樹脂水分散体を用いたコーティング液を、80×200mm(t=1mm)のベークライト板へコーティングして下記表2に示す厚みのコーティング層を形成した。
上記コーティング処理した各ベークライト板を、JIS K 7125に準拠して静摩擦係数を測定した。
すべり片は、63×63mmのフェルトを用い、すべり片には1.96Nの荷重を加えた。試験速度は100mm/minですべり片を滑らした時の最大引っ張り荷重より静摩擦係数を算出した。
これらの結果を下記表2に示す。
下記表3に示す配合処方で、常法により、フッ素系樹脂水分散体を用いた複合めっき液を調製した。硫酸ニッケル(25g/L)、次亜リン酸ナトリウム(20g/L)、クエン酸(30g/L)を含有し、必要に応じてアンモニア水でpH8~9に調整されためっき液を用いて、良く攪拌されためっき浴中において90℃、24時間で処理した。
フッ素系樹脂粒子水分散体は、フッ素系樹脂粒子濃度が10g/Lとなるように調整して配合した。所望の膜厚が得られるまで、繰り返し実施した。
得られたフッ素系樹脂水分散体を用いた複合めっき液を、80×200mm(t=1mm)のベークライト板へ複合めっき処理をした。
上記コーティング処理した各ベークライト板を、JIS K 7125に準拠して静摩擦係数を測定した。
すべり片は、63×63mmのフェルトを用い、すべり片には1.96Nの荷重を加えた。試験速度は100mm/minですべり片を滑らした時の最大引っ張り荷重より静摩擦係数を算出した。
これらの結果を下記表3に示す。
Claims (11)
- 分散後の体積平均粒子径Dvが1μm~50μmであり、かつ、比表面積が6.0m 2 /g以下の下記A群から選ばれるフッ素系樹脂粒子(但し、これらの粒子は、2種以上を混合して用いる場合を除く)を1~80質量%含み、水溶性増粘剤(但し、メチルセルロース系を除く)を0.01~5質量%含むことを特徴とするフッ素系樹脂水分散体
A群:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン-プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン共重合体(CTFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF) - 水溶性増粘剤が下記B群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のフッ素系樹脂水分散体。
B群:ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビスアクリルアミドメチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリスチレンスルホン酸、ポリプロピレンオキサイド、キサンタンガム、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、ペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、ローカストビーンガム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、酸化セルロース - フッ素系樹脂水分散体の剪断速度3.83s-1における粘度Aと剪断速度38.3s-1における粘度Bとの比B/Aが、0.7未満であることを特徴とする請求項2記載のフッ素系樹脂水分散体。
- 重量平均分子量Mwが10万未満のノニオン系界面活性剤を0.3~30質量%含むことを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のフッ素系樹脂水分散体。
- pH調整剤としてアミン類を含み、pHが8.5以上であることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のフッ素系樹脂水分散体。
- 防腐剤、防カビ剤もしくは防菌剤を0.5質量%以上含有しないことを特徴とする請求項5記載のフッ素系樹脂水分散体。
- フッ素系樹脂粒子がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1~6の何れか一つに記載のフッ素系樹脂水分散体。
- 請求項1~7の何れか一つに記載のフッ素系樹脂水分散体を用いて形成されたことを特徴とするコーティング層。
- 分散後のフッ素系樹脂粒子の体積平均粒子径Dvと、フッ素系樹脂粒子を含有させるコーティング層の厚みT1が、下記式(I)を満たす範囲で調整された請求項8記載のコーティング層。
0.5T1≦Dv≦4T1 ………(I) - 請求項1~7の何れか一つに記載のフッ素系樹脂水分散体を用いて形成されたことを特徴とする複合めっき層。
- 分散後のフッ素系樹脂粒子の体積平均粒子径Dvと、フッ素系樹脂粒子を含有させる複合めっき層の厚みT2が、下記式(II)を満たす範囲で調整された請求項10記載の複合めっき層。
0.5T2≦Dv≦4T2 ………(II)
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