JP7029935B2 - 地盤改良薬液の注入方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤改良薬液の注入方法に関し、さらに詳しくは、地盤に注入中の薬液のゲル化および沈降を抑制して、現地条件に応じた適切な施工を行うことができる地盤改良薬液の注入方法に関するものである。
地盤改良方法として、地盤の対象領域に地盤改良薬液(以下、薬液という)を注入し、土中で薬液をゲル化(固結)させて改良体を形成する薬液注入工法が行われている。従来、薬液を注入する現地条件(対象領域の土質や周囲にある構造物等)によらず、薬液を注入し終えた直後に薬液がゲル化するように、対象領域に配置した薬液注入手段の注入口からの薬液の1回の注入あたりの注入時間と、薬液のゲルタイムとが同じ長さに設定されている。
しかしながら、対象領域の土質が不均質な場合等には、計画した注入時間どおりに薬液の注入が終了せずに、注入中に薬液がゲル化してしまうことがある。注入中に薬液がゲル化した場合には、注入圧力を増加させて注入を継続するか、注入を中断せざるを得なくなる。注入圧力を増加させて注入を継続させた場合には、薬液が不規則な形状になって固結する可能性がある。対象領域に近接した構造物(建築物や舗装等)がある場合や、注入位置の土被りが小さい場合には、注入圧力の増加に起因して、近接した構造物や地表面に変位が生じる可能性がある。一方で、ゲルタイムを注入時間に比べて過剰に長く設定すると、注入された薬液がゲル化する前に対象領域の下方に沈降して計画どおりの改良体を形成できない。
ゲル化する前に薬液を対象領域に確実に注入する方法として、薬液が注入される地盤内に弾性波測定手段を設置し、弾性波測定手段で得られた弾性波速度の経時変化から薬液の原位置でのゲルタイムを推定する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、薬液をゲル化開始時までに確実に地盤に注入することを意図しているだけである。そのため、地盤に注入中の薬液のゲル化および沈降を抑制して、現地条件に応じた適切な施工を行うには改善の余地がある。
特開2010-37812号公報
本発明の目的は、地盤に注入中の薬液のゲル化および沈降を抑制して、現地条件に応じた適切な施工を行うことができる地盤改良薬液の注入方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の地盤改良薬液の注入方法は、地盤改良薬液を地盤の対象領域に注入して前記対象領域に改良体を形成する地盤改良薬液の注入方法において、前記対象領域に配置した薬液注入手段の注入口から前記対象領域への前記地盤改良薬液の注入開始から注入終了までの1回の注入時間に基づいて、前記地盤改良薬液のゲルタイムの基準範囲を設定して、前記基準範囲と事前に取得した前記対象領域の透水係数とに基づいて前記ゲルタイムの実用範囲を決定し、前記ゲルタイムが前記実用範囲内に調整された前記地盤改良薬液を使用し、前記実用範囲を決定する際には、前記透水係数に基づいて、注入した前記基準範囲内に設定された前記地盤改良薬液の前記対象領域での沈降の有無を予め設定された境界値により事前に判定し、沈降無しと判定した場合は前記実用範囲を前記基準範囲よりも長時間側にシフトさせ、沈降有りと判定した場合は前記実用範囲を前記基準範囲よりも長時間側にシフトさせないことを特徴とする。
本発明によれば、1回の注入時間に基づいて設定した地盤改良薬液のゲルタイムの基準範囲を単純にそのまま施工時のゲルタイムとして用いるのではなく、この基準範囲に対して対象領域の透水係数を考慮してゲルタイムの実用範囲を決定する。地盤の透水係数は注入した地盤改良薬液の沈降に大きく影響するので、ゲルタイムがこの実用範囲内に調整された地盤改良薬液を使用することで、注入している地盤改良薬液のゲル化および沈降を抑制して、現地条件に応じた適切な施工を行うことができる。
本発明の地盤改良薬液の注入方法の一例を示すフロー図である。 ゲルタイム試験の結果を例示するグラフ図に基準範囲を決定する手順を記載した説明図である。 注入模擬試験を縦断面視で例示する説明図である。 注入模擬試験で形成した改良体サンプルを縦断面視で例示する説明図である。 透水係数と注入後ゲル化所要時間と薬液の沈降の有無との関係を例示するグラフ図である。 ゲルタイム試験の結果を例示するグラフ図に実用範囲を決定する手順を記載した説明図である。 ゲルタイム試験の結果を例示するグラフ図に実用範囲を決定する別の手順を記載した説明図である。 薬液注入工程を縦断面視で例示する説明図である。
以下、本発明の地盤改良薬液の注入方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
本発明は、図8に例示するように、地盤Gの対象領域に配置した薬液注入手段10の注入口11aから地盤改良薬液L(以下、薬液Lという)を注入することにより、対象領域に改良体Iを形成する。本発明では、施工前の段階で、薬液Lについて従来設定していたゲルタイムの基準範囲を、事前に取得した対象領域の地盤Gの透水係数を用いて調整することで実用範囲を決定する。そして、ゲルタイムをこの実用範囲に調整した薬液Lを使用して施工を行う。以下では、薬液Lとして、酸性の溶液型のシリカ系薬液を使用する場合を例示する。
本発明は、図1のフロー図に例示する5つの工程(基準範囲設定工程、境界値設定工程、判定工程、実用範囲決定工程、薬液注入工程)を有している。基準範囲設定工程は従来から実施されている工程であり、その他の工程は本発明による新たな工程である。以下に、各工程の詳細を説明する。
基準範囲設定工程では、薬液注入手段10の注入口11aから対象領域への薬液Lの注入開始から注入終了までの1回の注入時間に基づいて、薬液Lのゲルタイムの基準範囲を設定する。そのためにこの工程では、薬液Lの1回の注入時間を決定する必要がある。1回の注入時間は、例えば、注入開始から注入終了までの1回の設計注入量(改良体1球あたりの設計注入量)、注水試験で求めた限界注入速度、および施工現場の制約条件(施工可能時間等)に基づいて決定する。注水試験では、対象領域に薬液Lを注入するに際して、事前に地盤Gに水を注入して割裂が生じない薬液Lの限界注入速度を決定する。
また、この工程では薬液Lの配合試験を行うことにより、改良体Iに求められる設計基準強度を満足する薬液Lの薬液濃度を決定する。薬液Lとして、シリカ系薬液を使用する場合には、薬液Lのシリカ濃度(重量比率)は例えば、5%~10%程度に決定される。
次いで、決定した薬液濃度の薬液Lのゲルタイム試験を行うことにより、図2に例示するように、薬液Lのゲルタイムと水素イオン濃度指数(以下、pHという)との関係データ(以下、第1関係データという)を取得する。ゲルタイムは、土中に注入された薬液Lが流動性を失い、粘性が急激に増加するまでの時間を意味している。
ゲルタイム試験は、使用する薬液Lの種類や工法によってそれぞれ確認方法が設定されているため、それぞれの確認方法に従って行う。例えば、浸透固化処理工法におけるゲルタイム試験は、公益社団法人地盤工学会関東支部発行の「薬液注入工法を用いた地盤改良技術の今後の展開に関する調査検討会:活動報告書」(平成24年3月発行)に記載の手順に従って行う。具体的には、200mlの容器に試料砂を120g計り取り、蒸留水を30ml添加して水和状態とした試料を作成する。次いで、その試料に、反応材の添加量を変えた薬液Lをそれぞれ30mlずつ投入し薬さじ等で混合する。そして、薬液L投入後、上澄みの薬液Lがゲル化するまでの時間をゲルタイムとして記録する。
図2に示すように、薬液LのゲルタイムとpHは相関関係を有しているので、薬液LのpHを変化させることでゲルタイムを調節することができる。シリカ系薬液の場合には、酸性の反応材の添加量を変えることで薬液LのpHを操作することができる。薬液LのpHが小さい(強酸性側)ほどゲルタイムが長くなり、薬液LのpHが大きい(中性側)ほどゲルタイムが短くなる。
次に、1回の注入時間と同じ時間をゲルタイムの基準値として、その基準値に所定の許容誤差を含めた範囲をゲルタイムの基準範囲に設定する。例えば、1回の注入時間を100分に決定した場合には、ゲルタイムの基準値は100分となり、許容誤差を±α分(例えば、±20分)とすれば、ゲルタイムの基準範囲は100分±α分(例えば、80分~120分)に設定される。ゲルタイムの基準範囲の時間幅(許容誤差の大きさ)は施工可能時間などの条件に応じて適宜決定できる。
図2では、薬液Lのゲルタイムの基準範囲R2は、薬液LのpHを基準にして設定されている。具体的には、1回の注入時間と同じ時間をゲルタイムの基準値V1とし、その基準値V1に対応する薬液LのpHを第1関連データから求める。そして、その求めた薬液LのpHを基準値Z1として、その基準値Z1に許容誤差(例えば、±0.2)を含めたpHの範囲(Z2~Z3)を、薬液LのpHの基準範囲R3に設定する。そして、その薬液LのpHの基準範囲R3に対応するゲルタイムの範囲(T3~T2)をゲルタイムの基準範囲R2として設定する。
境界値設定工程では、注入した薬液Lの対象領域での沈降の有無を判定するための境界値(境界条件)を設定する。境界値は例えば注入模擬試験の結果に基づいて設定する。注入模擬試験は図3に例示するように、地盤Gを再現した模擬地盤1に薬液Lを注入して改良体サンプルを形成し、ゲルタイム経過後、改良体サンプルの形状を確認して薬液Lの沈降の有無を判別する。
模擬地盤1は、直方体形状のケーシング2の底部に礫材3を敷き詰めて、礫材3の上に不織布4を敷き、不織布4の上にさらに砂材5(例えば、硅砂等)を敷き詰めて作製する。模擬地盤1は、直方体形状に限らず円柱状などの他の形状であってもよい。模擬地盤1には、礫材3で構成された透水層に水Wを注入する注水用配管6と、砂材5で構成された注入領域に薬液Lを注入する薬液用配管7とを埋設した状態にする。
薬液用配管7は中途の位置に薬液Lを注入するための注入口7aが設けられた有底管体である。薬液用配管7の注入口7aは、図3の破線で示している改良体サンプルの形成予定範囲が注入領域に収まる位置に配置する。改良体サンプルの形成予定範囲の下端部と透水層の上端部との離間距離は、薬液Lの沈降が生じた際に、薬液Lが透水層の上端部に達する程度の距離(例えば、10mm~50mm)に設定する。
次いで、注水用配管6によって透水層に水Wを注入し、砂材5を飽和した状態にした後、薬液用配管7の注入口7aから砂材5の注入領域に薬液Lを注入する。そして、薬液Lのゲルタイムが経過した後に、模擬地盤1に形成された改良体サンプルの形状を確認することにより、その条件における薬液Lの沈降の有無を判別する。
この注入模擬試験を、模擬地盤1の透水係数と、薬液Lのゲルタイムとをそれぞれ変えて複数の条件で行う。薬液Lの注入時間、薬液濃度、薬液Lの比重は実質的に同一条件に設定し、薬液Lのゲルタイムはそれぞれ注入時間よりも長く設定する。薬液Lのゲルタイムは、第1関係データに基づいて、薬液LのpHを変化させることによって調節する。
この実施形態では、6通りの異なる試験条件で注入模擬試験を行った。図4の(a)~(f)は、それぞれの注入模擬試験によって形成した改良体サンプルA~Fを例示している。改良体サンプルA~Fのそれぞれの試験条件は表1に示すとおりである。薬液Lのシリカ濃度は8%、薬液Lの比重は20℃で1.09、注入時間は約10分に設定した。
Figure 0007029935000001
薬液Lの沈降の有無は、改良体サンプルA~Fの形状を確認することで判別することができる。図4では模擬地盤1と改良体サンプルA~Fの形状との関係が分かり易いように、模擬地盤1の内部に配置された改良体サンプルA~Fを例示しているが、実際には模擬地盤1を解体し、改良体サンプルA~Fの周りの余分な砂材5を落とした状態で改良体サンプルA~Fの形状を目視で確認する。
図4の(e)、(f)に例示する改良体サンプルE、Fのように、破線で示す形成予定範囲に薬液Lが留まり、改良体サンプルE、Fが薬液用配管7の注入口7aを中心にした球形に近い形状である場合には、薬液Lの沈降が生じない条件であると判別できる。一方、図4の(a)、(b)に例示する改良体サンプルA、Bのように、全体的に薬液Lが形成予定範囲よりも下側に沈降して改良体サンプルA、Bの下側が透水層と接触して平坦になっている場合には、薬液Lの沈降が生じる条件であると判別できる。
図4の(c)、(d)に例示する改良体サンプルC、Dのように、改良体サンプルC、Dの大部分は注入口7aを中心にした球形に近い形状であるが、上部や下部に薬液Lの沈降の痕跡が見られた場合には、薬液Lの沈降が生じるか否かの境界に近い条件であると判別できる。特に、改良体サンプルDのように、上部に小さな窪みがあり、下部に小さな膨らみがあるが、透水層と接触せずにほぼ球形であるような改良体サンプルが形成された条件は、薬液Lの沈降が生じるか否かの境界に非常に近い条件であると判別できる。
図5に注入模擬試験の結果を示す。図5は、注入後ゲル化所要時間(ゲルタイム-注入時間)を縦軸として、模擬地盤1の透水係数の対数関数を横軸とした片対数グラフになっている。薬液Lの沈降が生じた条件(改良体サンプルA、B)を黒塗りの四角マーカーで示し、薬液Lの沈降が生じなかった条件(改良体サンプルE、F)を白抜きの四角マーカーで示している。沈降の量は小さいが薬液Lの沈降が若干生じる条件(改良体サンプルC、D)は、半分黒塗りで半分白抜きの四角マーカーで示している。
このようにデータをプロットすることで、図5に例示するように、薬液Lに沈降が生じるか否かの境界値X(境界条件)を示す透水係数と注入後ゲル化所要時間との相関関係データ(以下、第2関係データという)を得ることができる。この実施形態では、薬液Lの沈降が生じなかった改良体サンプルEの条件と、薬液Lの沈降が生じるか否かの境界に非常に近い改良体サンプルDの条件とを結んだ線分を境界値Xとして一点鎖線で示している。
地盤Gの透水係数が大きいほど薬液Lの沈降が生じ易く、注入後ゲル化所要時間が長いほど薬液Lの沈降が生じ易くなるため、境界値Xは右下がりの線分となる。図5では、境界値Xよりも左側(透水係数が小さい側)の領域が薬液Lの沈降が生じない条件となり、境界値Xよりも右側(透水係数が大きい側)の領域が薬液Lの沈降が生じる条件となる。
このように、予め境界値Xを設定することで、薬液Lを注入する対象領域の透水係数に応じて、薬液Lの沈降が生じない条件を満たすゲルタイム(注入後ゲル化所要時間)を把握することができる。また、境界値Xに基づいて、薬液Lを注入する対象領域の透水係数に対応する注入後ゲル化所要時間を求めることで、薬液Lの沈降が生じない条件を満たす最長のゲルタイムを把握することが可能となる。
この実施形態では、6通りの条件で行なった試験結果A~Fに基づいて境界値Xを設定したが、より多くの試験結果に基づいて境界値Xを設定すると、境界値Xをより精度よく設定することができる。
判定工程では、対象領域の透水係数に基づいて、ゲルタイムが基準範囲内に設定された薬液Lを対象領域に注入した場合の薬液Lの沈降の有無を、予め設定された境界値Xにより判定する。対象領域の透水係数を取得する方法としては、原位置透水試験(現地注水試験)や、室内透水試験(定水位透水試験や変水位透水試験等)が例示できる。対象領域の透水係数は、対象領域から採取した土サンプルの粒度から推定することもできる。透水係数を粒度から推定する方法としては、クレーガーによる透水係数の推定方法等が例示できる。
図5に例示するように、薬液Lのゲルタイムを設定した基準値V1にした場合(注入後ゲル化所要時間が0秒の場合)の境界値Xにおける透水係数と、対象領域の透水係数とを比較して対象領域での薬液Lの沈降の有無を判定する。この実施形態では、ゲルタイムを基準値V1にした場合の境界値Xにおける透水係数X0は4×10-4(m/s)であるので、対象領域の透水係数が4×10-4(m/s)以上である場合には沈降有りと判定し、4×10-4(m/s)より小さい場合には沈降無しと判定する。
実用範囲決定工程では、ゲルタイムの基準範囲と、対象領域の透水係数とに基づいてゲルタイムの実用範囲を決定する。判定工程で沈降有りと判定した場合には、薬液Lの沈降を出来るだけ小さくするために、一回の注入時間とゲルタイムとの時間差(注入後ゲル化所要時間)を小さくすることが望ましい。そのため、沈降有りと判定した場合には、薬液Lのゲルタイムの実用範囲を基準範囲よりも長時間側にシフトさせずに、基準範囲の数値範囲を実用範囲として決定する。即ち、1回の注入時間を基準値として設定した基準範囲をそのままゲルタイムの実用範囲として決定する。
一方、図5に示すように、判定工程で沈降無しと判断した場合には、薬液Lのゲルタイムを1回の注入時間よりも長く設定しても、注入後ゲル化所要時間が対象領域の透水係数における境界値Xを越えない範囲であれば、薬液Lが沈降することなく良質な改良体Iを形成することができる。そのため、判定工程で沈降無しと判断した場合には、薬液Lのゲルタイムの実用範囲を基準範囲よりも長時間側にシフトさせる。
ゲルタイムを基準範囲よりも長時間側にシフトさせる際の実用範囲の上限値は、対象領域の透水係数と境界値Xとに基づいて決定するとよい。具体的には、図5に示すように、対象領域の透水係数において境界値Xに対応する注入後ゲル化所要時間を求める。例えば、対象領域の透水係数が1.5×10-4(m/s)である場合には、境界値Xに対応する注入後ゲル化所要時間は200分となる。
その求めた注入後ゲル化所要時間(200分)を図6に示すように、1回の注入時間に加算した時間がゲルタイムの実用範囲の上限値U1となるように、ゲルタイムの実用範囲P1を基準範囲R1よりも長時間側にシフトさせる。即ち、この実施形態の場合には、1回の注入時間100分に注入後ゲル化所要時間200分を加算した300分が実用範囲P1の上限値U1となるように、基準範囲R1よりも実用範囲P1を長時間側にシフトさせて、ゲルタイムの実用範囲P1を260分~300分に決定する。
図7に示すように、薬液Lのゲルタイムの実用範囲P2は、薬液LのpHを基準にして決定することもできる。具体的には、対象領域の透水係数と境界値Xに基づいて、薬液Lの沈降が生じないゲルタイムの上限値U1を求め、その上限値U1に対応する薬液LのpH(Z4)が、薬液LのpHの実用範囲R4の下限値になるように、薬液LのpHの実用範囲R4をpHの基準範囲R3よりも強酸性側にシフトさせる。そして、その薬液LのpHの実用範囲R4(Z4~Z5)に対応するゲルタイムの範囲(T5~T4)をゲルタイムの実用範囲P2として設定することで、ゲルタイムの実用範囲P2を基準範囲R2よりも長時間側にシフトさせる。
薬液注入工程では、図8に示すように、ゲルタイムを実用範囲内に調整した薬液Lを対象領域に配置した薬液注入手段10の注入口11aから対象領域に注入する。薬液注入手段10は例えば、外管11と、外管11に挿入される内管12と、内管12に接続される薬液供給設備13と、上下2つの内管パッカ12b、12cに接続される加圧設備14とを有する。
注入孔Hに外管11を挿入し、外管11に内管12を内挿して吐出口12aを注入口11aに対応する位置に配置する。次に、加圧設備14から内管パッカ12b、12cにガスgを供給して内管パッカ12b、12cを膨張させ、内管パッカ12b、12cによって内管12の外周面と外管11の内周面との間を密に塞ぐ。そして、薬液供給設備13によって内管12に薬液Lを供給し、吐出口12aから注入口11aを通して対象領域に注入する。
薬液Lを注入し終えたら、加圧設部14によって内管パッカ12b、12cを収縮させて、次に薬液Lを注入する注入口11aの位置まで内管12を移動させて、前述した手順と同様の手順で薬液Lの注入を行なう。注入された薬液Lが固化することで、対象領域には改良体Iが形成される。
このように、本発明によれば、1回の注入時間に基づいて設定した薬液Lのゲルタイムの基準範囲を単純にそのまま施工時のゲルタイムとして用いるのではなく、この基準範囲に対して対象領域の地盤Gの透水係数を考慮してゲルタイムの実用範囲を決定する。地盤Gの透水係数は注入した薬液Lの沈降に大きく影響するので、ゲルタイムがこの実用範囲内に調整された薬液Lを使用することで、注入している薬液Lのゲル化および沈降を抑制することができる。
特に、判定工程で沈降無しと判定される透水係数の比較的小さい対象領域の場合には、ゲルタイムの実用範囲を基準範囲よりも長時間側にシフトさせることで、ゲルタイムの実用範囲を1回の注入時間よりも長く設定することができる。これにより、注入中に薬液Lがゲル化する不具合を回避するには有利になり、薬液Lの注入中に不具合が生じた場合にも、土中で薬液Lがゲル化する前に対処することが可能となる。
より具体的には、例えば、注入位置に近接した構造物がある場合や注入位置における土被りが小さい場合にも、薬液Lがゲル化するまでに時間的な余裕ができるので、注入圧力を計画した圧力よりも小さくして、予定の注入時間よりも長い時間をかけてゆっくりと注入する等の対策を講じることが可能になる。これにより、近接した構造物や地表面に変位が生じる施工トラブルをより確実に回避することができる。そのため、現地条件に応じた適切な施工を行うには有利になる。
また、薬液Lの注入圧力が高い場合や内管パッカ12b、12cによる密閉が不十分な場合には、薬液Lの注入中に内管パッカ12b、12cの隙間から薬液Lが地表などに漏れ出す不具合(リーク)が発生する場合があるが、そのような場合にも、注入圧力を計画した圧力よりも小さくして、薬液Lの漏れ出しが無いように予定の注入時間よりも長い時間をかけてゆっくりと注入する等の対策を講じることが可能になる。
境界値Xは注入模擬試験とは異なる試験やコンピュータシミュレーション等で設定することもできるが、注入模擬試験によって取得した第2関係データに基づいて境界値Xを設定すると、境界値Xを簡易に精度よく設定することができる。
ゲルタイムの実用範囲を基準範囲よりも長時間側にシフトさせる際の実用範囲の上限値を、対象領域の透水係数と境界値Xとに基づいて決定すると、対象領域での薬液Lの沈降を確実に回避しつつ、ゲルタイムの実用範囲を最大限に長く設定することができる。それ故、薬液Lの注入中における薬液Lのゲル化および沈降のリスクを低減するには益々有利になる。
薬液Lの注入位置(外管11の管軸芯)の所定距離以内(例えば、10m以内)に構造物が無い場合や、対象領域の土質が均一な場合などの施工の不具合が生じ難い現地条件の場合には、判定工程において、ゲルタイムの実用範囲を基準範囲よりも長時間側にシフトさせないと判定することもできる。
薬液Lを作液する際には、薬液LのpHを調整する反応材の添加量によって薬液Lの比重が若干変化するが、薬液Lの比重の差は非常に小さい。それ故、上記で例示した実用範囲決定工程のように、反応材の添加量による薬液Lの比重の変化を考慮しなくても、現地条件に応じた適切なゲルタイムの実用範囲を決定することが可能である。ただし、薬液Lの比重の大きさは薬液Lの沈降に少なからず影響を与えるため、薬液Lの比重の大きさに応じてゲルタイムの実用範囲を補正すると、ゲルタイムの実用範囲をより精度よく設定することができる。例えば、薬液Lの比重が所定値よりも大きくなる場合には、ゲルタイムの実用範囲をシフトさせる際の実用範囲の上限値を低くする補正を行い、薬液Lの比重が所定値よりも小さくなる場合には、実用範囲の上限値を高くする補正を行う。
尚、上記の実施形態で例示したグラフや数値データは一例である。対象領域の土質や使用する薬液Lの仕様等によって、境界値Xの傾きや切片、薬液Lのゲルタイムを基準値V1にした場合の境界値Xにおける透水係数X0の数値等は例示したデータと異なる場合がある。
1 模擬地盤
2 ケーシング
3 礫材
4 不織布
5 砂材
6 注水用配管
7 薬液用配管
7a 注入口
10 薬液注入装置
11 外管
11a 注入口
12 内管
12a 吐出口
12b、12c 内管パッカ
13 薬液供給設備
14 加圧設備
G 地盤
L 地盤改良薬液
I 改良体
A~F 改良体サンプル
H 注入孔
W 水
g ガス

Claims (2)

  1. 地盤改良薬液を地盤の対象領域に注入して前記対象領域に改良体を形成する地盤改良薬液の注入方法において、
    前記対象領域に配置した薬液注入手段の注入口から前記対象領域への前記地盤改良薬液の注入開始から注入終了までの1回の注入時間に基づいて、前記地盤改良薬液のゲルタイムの基準範囲を設定して、前記基準範囲と事前に取得した前記対象領域の透水係数とに基づいて前記ゲルタイムの実用範囲を決定し、前記ゲルタイムが前記実用範囲内に調整された前記地盤改良薬液を使用し、
    前記実用範囲を決定する際には、前記透水係数に基づいて、注入した前記基準範囲内に設定された前記地盤改良薬液の前記対象領域での沈降の有無を予め設定された境界値により事前に判定し、沈降無しと判定した場合は前記実用範囲を前記基準範囲よりも長時間側にシフトさせ、沈降有りと判定した場合は前記実用範囲を前記基準範囲よりも長時間側にシフトさせないことを特徴とする地盤改良薬液の注入方法。
  2. 前記地盤改良薬液を模擬地盤に注入して改良体サンプルを形成する注入模擬試験を行うことにより、前記模擬地盤の透水係数と、前記地盤改良薬液を土中に注入し終えてから前記地盤改良薬液がゲル化するまでの注入後ゲル化所要時間と、前記模擬地盤における前記地盤改良薬液の沈降の有無との関係データを取得し、その関係データに基づいて前記境界値を設定する請求項1に記載の地盤改良薬液の注入方法。
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