JP7028849B2 - 能動型防振装置 - Google Patents
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Description
このような能動型防振装置によれば、液室内の軸方向磁路と軸直方向磁路における磁気粘弾性流体の流動が抑制される。これにより能動型防振装置は、軸方向及び軸直方向の外力に対して可変減衰力又は可変剛性を作用させることができる。
つまり、従来の能動型防振装置においては、軸方向に入力される振動振幅が大きいほど減衰性能が不十分になる傾向にある。
この能動型防振装置は、液室内の磁気粘弾性流体に磁場が印加されて磁気粘弾性流体の粘性が変化し、又は磁気粘弾性流体の所定流路における流動抵抗が変化することによって、内筒又は外筒を介して入力される外力に対して可変減衰力、可変剛性が働く。
この能動型防振装置は、内筒及び外筒のうち、いずれか一方に振動源側が連結され、いずれか他方に支持側が連結される。
本実施形態の能動型防振装置は、外筒側から軸直方向内側に延びて液室に臨む第1磁性体部材と、内筒側から軸直方向外側に延びて液室に臨む一対の第2磁性体部材とを有している。そして、本実施形態の能動型防振装置は、軸方向に並ぶように配置された第2磁性体部材の先端部同士の間に第1磁性体部材の先端部が位置していることを主な特徴としている。なお、この能動型防振装置においては、内筒側から軸直方向外側に延びて液室に臨む第1磁性体部材を有するもの(変形例)が考えられるが、この変形例については後に詳しく説明する。
図1に示すように、能動型防振装置Aは、略円柱形状の外形を有している。
そして、能動型防振装置Aは、軸部材1と、軸部材1に対して同軸に取り付けられる内筒2と、この内筒2の外周側で内筒2に対して同軸に配置される外筒3と、を備えている。ちなみに、本実施形態での内筒2と外筒3とは、アルミニウム合金、ステンレスなどの非磁性金属からなるものを想定しているがこれに限定されるものではない。
これら弾性部材4は、内筒2と外筒3とに加硫接着している。これにより内筒2と外筒3との間に形成される液室5(図3参照)は、軸方向の両端部がこの弾性部材4によって液密に封止される。
また、弾性部材4は、次に説明する仕切部6と、内壁部7と、外壁部8とを有している。なお、図1中、これら仕切部6、内壁部7、外壁部8は、隠れ線(点線)で示している。
図2(a)に示すように、弾性部材4の仕切部6は、内筒2側から外筒3側に向けて放射状に延びる肉厚の略板状体からなる。
この仕切部6は、液室5の周方向に等間隔に配置されている。ちなみに、本実施形態での仕切部6は、90度間隔で4つ配置されているが、仕切部6の数については特に制限はない。このような仕切部6は、液室5を周方向に等分割する。
このような仕切部6で仕切られた液室5のそれぞれは、後記する軸方向通路15(図3参照)に連通している。
このような内壁部7は、図3に示すように、後記する磁路形成ユニット10を構成する第2磁性体部材12bに至るまで軸方向に延びている。
このような外壁部8は、図3に示すように、後記する磁路形成ユニット10を構成する第3磁性体部材12cに至るまで軸方向に延びている。
なお、以上の説明は、図1に示す軸方向の一端側(図1の紙面上側)に配置される弾性部材4についてであるが、図1での記載を省略した軸方向の他端側(図1の紙面下側)に配置される弾性部材4についても、図3に示すように、仕切部6aと、内壁部7aと、外壁部8aとを有している。
ただし、仕切部6a、内壁部7a、及び外壁部8aは、仕切部6、内壁部7、及び外壁部8と比べて軸方向に長くなっている。
また、仕切部6aは、仕切部6よりも周方向に(軸周りに)位相が45度シフトしたものを想定している。
したがって、仕切部6は、図2(b)に示す平面視で、径方向の外側に向かって所定角度で広がる略扇状に形成することもできる。
図3に示すように、磁路形成ユニット10は、軸部材1と同軸に形成される円盤状組立体であって、外筒3側と内筒2側とに分離配置されている。
図4に示すように、磁路形成ユニット10は、励磁コイル11と、磁性体部材12と、非磁性体部材13と、を備えている。
本実施形態での励磁コイル11は、第1コイル11aと、第2コイル11bとで構成されている。これらの第1コイル11aと、第2コイル11bとは、軸方向に並ぶように配置されている。そして、第1コイル11aと、第2コイル11bとは、相互に逆向きの磁場を発生させるようになっている。具体的には、第1コイル11aと、第2コイル11bとは、巻回方向が逆向きになっている。ただし、これらの巻回方向を同じ方向に設定した場合には、通電する極性を相互に変えることで、第1コイル11aと、第2コイル11bとは、相互に逆向きの磁場を発生させることができる。
これらの磁性体部材12のうち、第1磁性体部材12aと、第2磁性体部材12bと、第3磁性体部材12cとは、環状の板体で構成されている。第4磁性体部材12dは、第3磁性体部材12cの外径に等しい外径を有する、高さの低い管体で形成されている。
第2磁性体部材12bは、軸方向に並ぶ一対からなる。具体的には、一対の第2磁性体部材12bは、軸方向に所定の間隔を開けて内筒2側から軸直方向に延びて液室5内に臨んでいる。
そして、第1磁性体部材12aの先端部は、凹部5aに向き合っている。
好ましくは、第1磁性体部材12aは、第2磁性体部材12bと、軸直方向において一部がラップ長Dcにて重なっている。
そして、第3磁性体部材12cの径方向の内側端部は、液室5に臨むとともに、この液室5を介して第2磁性体部材12bの径方向の外側端部と対向している。
そして、第1非磁性体部材13aは、一対の第2磁性体部材12bの内側端部同士の間に配置されるように、軸部材1に挿嵌されている。
なお、この第1非磁性体部材13aは、特許請求の範囲にいう「スペーサ」に相当する。
これらの第2非磁性体部材13bは、励磁コイル11の内径に略等しい外径を有するリング状部材にて形成されている。
そして、第2非磁性体部材13bのそれぞれは、第1コイル11aと第2コイル11bのそれぞれの内径側で、第2磁性体部材12bの内径側端部と、第1磁性体部材12aとの間に配置されている。なお、これらの第2非磁性体部材13bは、特許請求の範囲にいう「液室側壁」に相当する。
また、第1磁性体部材12aと前記第2磁性体部材12bの軸直方向で重なるラップ長Dcは、第1磁性体部材12aの先端部と第1非磁性体部材13aとの距離Dbよりも大きくなるように設定されている。
なお、ここでの初期状態とは、能動型防振装置Aに振動振幅が加えられておらず、かつ励磁コイル11に通電されていない状態をいう。
これにより液室5には、後記する軸方向通路15(図3参照)を軸直方向に通る軸直方向磁路20a(図4参照)と、後記する軸直方向通路16(図3参照)を軸方向に通る軸方向磁路20b(図4参照)とが形成される。
これにより磁路形成ユニット10周りでは、図3に示すように、第2磁性体部材12bと第3磁性体部材12cとの間で、軸方向に磁気粘弾性流体が流れる軸方向通路15が形成される。また、第1磁性体部材12aの先端部と、第2磁性体部材12bの先端部との間で、軸直方向に磁気粘弾性流体が流れる軸直方向通路16が形成される。
次に、本実施形態の能動型防振装置Aの奏する作用効果について説明する。
本実施形態の能動型防振装置Aは、第1磁性体部材12aが一対の第2磁性体部材12b同士で形成する凹部5aに向き合うように配置される。
このような能動型防振装置Aによれば、軸方向に入力される振動振幅の大きさに関わらずに安定した振動減衰性能、可変剛性性能を発揮する。
参照する図5(a)は、本実施形態の能動型防振装置A(図3参照)において、第1磁性体部材12aと一対の第2磁性体部材12bとの距離と、磁束密度(磁力の大きさ)との関係を表す関係式及び模式図である。図5(b)は、従来例(例えば特許文献1参照)に係る能動型防振装置において、第1磁性体部材12aと単一の第2磁性体部材12bとの距離と、磁束密度(磁力の大きさ)との関係を表す関係式及び模式図である。図6は、本実施形態の能動型防振装置A(実施例)と、従来例に係る能動型防振装置(比較例)とにおける第2磁性体部材12bに対する第1磁性体部材12aの距離変化と、磁束密度(磁力の大きさ)の変化の関係を示すグラフである。
つまり、図6の比較例のカーブに示すように、第2磁性体部材12bから第1磁性体部材12aが離れるほど磁束密度F(T)は、第1磁性体部材12aの振動振幅aが大きくなるほど漸近的にゼロに近付いていく。
つまり、図6に示すように、比較例では、振動振幅aに基づく磁束密度Fの差がΔFcとなるところ、実施例では、前記の相殺によって磁束密度Fの差がΔFcよりも小さいΔFeとなる(ΔFe<ΔFc)。
また、本実施形態の能動型防振装置Aは、図6に示すように、前記の相殺によって、磁束密度Fの最小値(FeMIN)が比較例の磁束密度Fの最小値(FcMIN)よりも大きくなる。
このような能動型防振装置Aによれば、軸方向の振動振幅a(図5(a)参照)による磁力変化が小さく、従来手法に対して安定した制御が可能となる。また、軸方向通路15を横切る軸直方向磁路20aを備えることで、軸直方向の振動に対しても安定した振動減衰性能、可変剛性性能を発揮する。
このような能動型防振装置Aによれば、液室5に軸方向及び軸直方向の磁場をより確実に形成することができる。
また、本実施形態の能動型防振装置Aは、前記のように、磁束密度Fの最小値が比較例の磁束密度Fの最小値よりも大きくなる(図6参照)。
これにより能動型防振装置Aは、外力が加わって軸方向及び軸直方向に振動振幅が入力された際に、従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)と比べて、より確実に安定した振動減衰性能、可変剛性性能を発揮する。
このような能動型防振装置Aによれば、能動型防振装置Aの軸直方向に振動振幅が入力された場合であっても、磁性粘弾性流体が軸直方向通路16と軸方向通路15とを通過することができる。これにより能動型防振装置Aは、軸方向及び軸直方向に振動振幅が入力された際に、これらの振動振幅をより効果的に減衰することができる。
このような能動型防振装置Aによれば、これら第1非磁性体部材13a及び第2非磁性体部材13bによって、対向し合う磁性体部材同士の間での漏れ磁界の形成を効果的に抑制することで、軸直方向磁路20aと軸方向磁路20bとを、より効果的に形成することができる。
このような能動型防振装置Aによれば、初期状態で凹部5aにおける磁性粘弾性流体の良好な流動性を確保することができる。これにより能動型防振装置Aは、軸部材1に対して横力などの外力が入力された際の応答性能に特に優れる。
このような能動型防振装置Aによれば、第1磁性体部材12aと第2磁性体部材12bとの間の磁束が強められる。
これにより能動型防振装置Aは、入力された振動振幅をさらに効果的に減衰することができる。
前記実施形態では、外筒3側に励磁コイル11を有する能動型防振装置Aについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7に示すように、第1変形例に係る能動型防振装置Aは、前記実施形態と異なって、励磁コイル11を内筒2側に有している。
この第1変形例に係る能動型防振装置Aは、内筒2側に励磁コイル11を有するので、励磁コイル11の巻径を小さく設定することができる。
これにより第1変形例に係る能動型防振装置Aは、コンパクト化を達成することができる。
図8は、第2変形例に係る能動型防振装置Aの構成説明図である。なお、図8中、前記実施形態に係る能動型防振装置A(図3参照)と同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
そして、この第2変形例に係る能動型防振装置Aは、各磁路形成ユニット10の液室5が、軸方向に互いに連通している。
また、第2変形例に係る能動型防振装置Aは、軸方向に液室5が連通することで(一方向に積み上げることで)、能動型防振装置A内における磁性粘弾性流体の体積効率を向上させることができる。これにより一方向に長い能動型防振装置Aの構築が可能となる。
図8に示す第2変形例に係る能動型防振装置Aは、前記のように、各磁路形成ユニット10の液室5が、軸方向に互いに連通している。
これに対して第3変形例に係る能動型防振装置Aは、図9に示すように、第2磁性体部材12bと、第3磁性体部材12cとの間に、磁気粘弾性エラストマ(MRE:Magneto-Rheological Elastomer)が配置されている。
また、第3変形例に係る能動型防振装置Aによれば、磁気粘弾性エラストマを配置することで、磁性粘弾性流体に含まれる固形分が、軸方向に偏ることを防止することができる。また、磁気粘弾性エラストマに小孔を設けることによって、各液室内を通じて軸方向に磁性粘弾性流体が移動する際のオリフィス効果が発揮される。
2 内筒
3 外筒
4 弾性部材
5 液室
5a 凹部
6 仕切部
6a 仕切部
7 内壁部
7a 内壁部
8 外壁部
8a 外壁部
10 磁路形成ユニット
11 励磁コイル
11a 第1コイル
11b 第2コイル
12 磁性体部材
12a 第1磁性体部材
12b 第2磁性体部材
12c 第3磁性体部材
12d 第4磁性体部材
13 非磁性体部材
13a 第1非磁性体部材
13b 第2非磁性体部材
15 軸方向通路
16 軸直方向通路
20a 軸直方向磁路
20b 軸方向磁路
A 能動型防振装置
Claims (9)
- 内筒と、
前記内筒の外周側で前記内筒に対して同軸に配置される外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に形成される液室と、
前記液室内で磁気粘弾性流体が保持されるように、前記内筒と前記外筒との間を軸方向の両端でそれぞれ液密に封止する弾性部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか一方に配置される第1コイルと、
前記第1コイルに対して軸方向に並ぶように配置されるとともに前記第1コイルと逆向きの磁場を発生させる第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置されて、前記液室に突出する第1磁性体部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか他方で軸方向に並ぶように一対配置されたそれぞれが前記液室に突出する第2磁性体部材と、
を備え、
前記第1磁性体部材は、前記第2磁性体部材同士の間に形成される凹部に突出することで、前記第1磁性体部材の先端部は、前記凹部に向き合っていることを特徴とする能動型防振装置。 - 前記第1磁性体部材の軸方向両側には、前記磁気粘弾性流体で満たされる軸方向通路と軸直方向通路とがそれぞれ形成され、
前記第1コイルと前記第2コイルとに励磁電流が流された際に、前記軸方向通路を軸直方向に通り、かつ前記軸直方向通路を軸方向に通る磁路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。 - 前記第2磁性体部材は、前記第1磁性体部材から軸方向両側に離間して配置され、
前記第1磁性体部材と前記第2磁性体部材とは、軸直方向において一部が重なることを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。 - 前記弾性部材の前記液室に臨む側には、前記液室を周方向に仕切る仕切部を有し、前記仕切部で仕切られた前記液室のそれぞれは、前記軸方向通路に連通していることを特徴とする請求項2に記載の能動型防振装置。
- 前記液室に臨む前記第1コイルの液室側壁と、前記液室に臨む前記第2コイルの液室側壁と、前記第2磁性体部材同士の間に配置されるスペーサとは、非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。
- 前記第1磁性体部材と前記スペーサの軸直方向の距離は、前記第1磁性体部材と前記第2磁性体部材の軸方向の距離よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の能動型防振装置。
- 前記第1磁性体部材と前記第2磁性体部材の軸直方向で重なるラップ長は、前記第1磁性体部材と前記スペーサの軸直方向の距離よりも大きいことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の能動型防振装置。
- 内筒と、
前記内筒の外周側で前記内筒に対して同軸に配置される外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に形成される液室と、
前記液室内で磁気粘弾性流体が保持されるように、前記内筒と前記外筒との間を軸方向の両端でそれぞれ液密に封止する弾性部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか一方に配置される第1コイルと、
前記第1コイルに対して軸方向に並ぶように配置されるとともに前記第1コイルと逆向きの磁場を発生させる第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置されて、前記液室に突出する第1磁性体部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか他方で軸方向に並ぶように一対配置されたそれぞれが前記液室に突出する第2磁性体部材と、
を備え、
前記第1磁性体部材は、前記液室内で向き合う一対の前記第2磁性体部材同士の間に形成される凹部に突出しており、
前記第1磁性体部材と一対の前記第2磁性体部材とを有するユニット単位は、軸方向に複数配置され、各ユニット単位の前記液室は、軸方向に互いに連通していることを特徴とする能動型防振装置。 - 内筒と、
前記内筒の外周側で前記内筒に対して同軸に配置される外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に形成される液室と、
前記液室内で磁気粘弾性流体が保持されるように、前記内筒と前記外筒との間を軸方向の両端でそれぞれ液密に封止する弾性部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか一方に配置される第1コイルと、
前記第1コイルに対して軸方向に並ぶように配置されるとともに前記第1コイルと逆向きの磁場を発生させる第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置されて、前記液室に突出する第1磁性体部材と、
前記内筒及び前記外筒のうちいずれか他方で軸方向に並ぶように一対配置されたそれぞれが前記液室に突出する第2磁性体部材と、
を備え、
前記第1磁性体部材は、前記液室内で向き合う一対の前記第2磁性体部材同士の間に形成される凹部に突出しており、
前記外筒側に配置された前記第2磁性体部材と前記内筒側との間を連結し、又は前記内筒側に配置された前記第2磁性体部材と前記外筒側との間を連結する磁気粘弾性エラストマを備えることを特徴とする能動型防振装置。
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