JP7026454B2 - 固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤、固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法、及び固体ポリビニルアルコールの表面修飾器 - Google Patents

固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤、固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法、及び固体ポリビニルアルコールの表面修飾器 Download PDF

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Description

本発明は、固体化ポリビニルアルコール表面の化学修飾法に関し、具体的には固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤、固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法、及び固体ポリビニルアルコールの表面修飾器に関する。
ポリビニルアルコール(PVA)は、繊維材料や包装材料、光学フィルムなどの母材として幅広く利用されている。また、最近では、PVAの機能化に基づく、触媒や吸着材、センサー、燃料電池、医療用材料などの開発が検討されており、環境やエネルギー、医療分野などにおいて注目を集めている。
固体材料の表面は化学反応や分離、吸着などさまざまな物理化学現象において重要な役割を担うため、固体PVAの表面を化学修飾する手法の開発は、所望の機能を持つ材料を導くための有用な手段である。
これまでも、PVAを化学修飾した例は報告されているが、固体PVAの表面を直接化学修飾した例は極めて少なく、その報告例においても、強塩基条件下や高温加熱といった過酷な条件での化学修飾がほとんどである。
例えば、固体化ポリビニルアルコール(ポバール)の表面修飾法のひとつとして、固体化ポリビニルアルコールの表面に化学修飾剤を固定化する手法があり、この手法は所望の機能を表面に付与できる利点を持つ。具体的には、固体化ポリビニルアルコール表面をパラトルエンスルホン酸やトリアルコキシシラン、無水コハク酸、イソシアナート、過酸化物といった活性化剤で処理した後に、その表面と化学修飾剤を反応させる手法がある。また、酸クロリドやイソシアナート、トリクロロシラン基を導入した化学修飾剤を用いることで、固体化ポリビニルアルコールの表面を化学修飾する手法が提案されている。
しかしながらこの手法で社は、固体化ポリビニルアルコール表面に存在するアルコール性水酸基は反応性に乏しいため、多くの場合、水酸基をパラトルエンスルホン酸やトリアルコキシシラン、無水コハク酸、イソシアナート、過酸化物といった活性化剤で処理する必要があり、その遂行に多段階の工程を必要とする。また、活性化剤は水などに対して反応性の高いため、活性化の際や活性化後のポリビニルアルコーの表面修飾の際に用いる溶媒が制限され、さらに溶媒をあらかじめ脱水する必要があるなど、煩雑な操作が伴う。
また、化学修飾剤に酸クロリドやイソシアナート、トリクロロシラン基といった反応性の高い官能基を導入することで、一段階で固体化ポリビニルアルコールの表面を化学修飾する手法も提案されているが、これら官能基は反応性が高く、水やアルコール等と激しく反応するため、化学修飾剤の保管や取り扱いにおいて除湿条件を必要とするとともに、溶媒としてアルコール系溶媒を用いることができないなど化学修飾時に用いる溶媒が制限され、これら官能基の反応分解を防ぐために、用いる溶媒から水分を除去することで必要があるなど、煩雑な操作が伴うという問題があった。
また、特許文献1には、ポリビニルアルコールとボロン酸とを反応させてポリビニルアルコールの修飾を行うことができる旨提案されている。
特開2007-217613号公報
しかしながら、上述の提案にかかるポリビニルアルコールの修飾方法では、溶剤に溶解したポリビニルアルコールの側鎖にボロン酸化合物を導入するだけであって、固体ポリビニルアルコールの表面を修飾できるものではなかった。
したがって、本発明の目的は、温和な条件で固体ポリビニルアルコールの表面を修飾することが可能な固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤、表面修飾方法及び表面修飾器を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定のケン化度を有する固体ポリビニルアルコールとボロン酸化合物とが温和な条件下で反応可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.ボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなるケン化度が40~99%であるポリビニルアルコールからなる固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤。
2.固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法であって、
ケン化度が40~99%であるポリビニルアルコールからなる固体ポリビニルアルコールにボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなる表面修飾剤を作用させることを特徴とする表面修飾方法。
3.使用者の手で保持するための保持部と、該保持部に設けられた、液剤を収容する液剤収容部と、該液剤収容部に連通されて対象物に該液剤を塗工する吐出部とを具備し、該液剤が1記載の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤を含むことを特徴とする、固体ポリビニルアルコールの表面修飾器。
本発明の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤は、温和な条件で固体ポリビニルアルコールの表面を修飾することが可能なものである。特に、固体化ポリビニルアルコールの表面を一段階で化学修飾でき、水やアルコールとも反応せず、安定であるため、化学修飾剤の保管や取り扱いにおいて除湿条件を必要としない。また、溶剤として、化学修飾時の溶媒にアルコール系溶媒をはじめ、水酸基やアミノ基などを持つ溶媒を用いることができると共に、化学修飾に用いる溶媒から水分を除去する必要がないため、ハンドリングが容易である。
図1は、実施例1で用いたPVA粒子のSEM写真(図面代用写真)である。 図2は、実施例1及び比較例1における表面修飾の流れを示す説明図である。 図3a~dは、それぞれ化合物1a又は1bを用いて表面処理を行った際の表面状態を、紫外線照射を行い、蛍光発光があるかどうかで判別する試験を行った際の写真(図面代用写真)である。 図4は、実施例1及び比較例1で表面修飾した固体PVAの蛍光スペクトル測定結果を示すチャートである。 図5は、実施例1で表面修飾した固体PVAの蛍光顕微鏡写真(図面代用写真)である。 図6は、実施例1で表面修飾した固体PVAの共焦点レーザー蛍光顕微鏡写真(図面代用写真)である。 図7は、実施例1で表面修飾した固体PVAのXPSスペクトルを示すチャートである。 図8は、実施例1で表面修飾した固体PVAのFT‐ATR‐IRスペクトルを示すチャートである。 図9は、実施例1及び比較例1で表面修飾した固体PVAのカーブフィッティング結果を示すチャートである。 図10は、実施例1におけるカーブフィッティング結果とカーブフィッティングを行うための方程式を示すチャートである。 図11は、実施例1での表面修飾に際しての吸着量の時間依存性を示すチャートである。 図12は、実施例1で表面修飾した固体PVAの溶媒安定性を示すグラフである。 図13a~cは、それぞれ実施例1で用いたPVAフィルムの表面処理前、処理後を示す写真(図面代用写真)である。 図14a及びbは、それぞれ実施例1で用いたPVAナノファイバーマットの表面処理前、処理後を示す写真(図面代用写真)である。 図15a~hは、それぞれ化合物3a、3b、4a、4bを用いて表面処理を行った際の表面状態を、紫外線照射を行い、蛍光発光があるかどうかで判別する試験を行った際の写真(図面代用写真)である。 図16は、実施例2及び比較例2、実施例3及び比較例3で表面修飾した固体PVAの蛍光スペクトル測定結果を示すチャートである。 図17は、実施例2及び3で表面修飾した固体PVAの蛍光顕微鏡写真(図面代用写真)である。 図18(a)及び(b)はいずれもPVFスポンジのSEM画像写真(図面代用写真)である。 図19(a)~(c)はそれぞれ化合物1aに対する発光程度を示す写真(図面代用写真)であり、(d)及び(e)は化合物1bに対する発光程度を示す写真(図面代用写真)である。 図20は蛍光スペクトルチャートである。 図21はFT-IRチャートである。 図22は吸着量を平衡濃度に対してプロットしたチャートである。 図23は得られた飽和曲線に対するカーブフィッティングを示すチャートを求める計算式と共に示す図である。 図24は種々pHにおけるスポンジの状態を示す写真(図面代用写真)である。 図25は、本発明の表面修飾器の1実施形態を示す一部破断斜視図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤は、ボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなるボロン酸誘導体溶液である。
<固体ポリビニルアルコール>
本発明の表面修飾剤において表面修飾の対象である上記固体ポリビニルアルコール(以下、PVAという場合がある)は、ポリビニルアルコールからなる固体物であれば特に制限されず、種々形態、例えば、フィルム状、繊維状、不織布状、球状等種々形状のものを用いることができる。
本発明において用いられるポリビニルアルコールは、そのケン化度が40%~99%である。けん化度40%未満だとPVAがメタノール等に溶けてしまうため表面修飾ができず、またけん化度が99%を超えるとボロン酸の吸着が確認されないので、上記範囲内とする必要がある。また、固体ポリビニルアルコールの形態に応じてもケン化度は変更可能であり、特に固体ポリビニルアルコールがナノファイバーである場合には上記範囲内でけん化度を設定することができるが、これ以外の形態の場合には40~94%の範囲とするのが、ボロン酸による表面修飾効果を十分に発揮する観点から好ましく、85~94%とするのがさらに好ましい。
また、上記固体ポリビニルアルコールとしては、スポンジ状のものを用いることもでき、その場合、純粋なポリビニルアルコールでなく、ポリビニルアルコールの水酸基のうち一部を変性してなる、ポリビニールフォルマール(PVF)スポンジとして用いることもできる。この場合には用いる原料としてのポリビニルアルコールのケン化度(すなわち、水酸基を含む重合単位数/総重合単位数×100)が上述のケン化度の範囲内である必要がある。
<ボロン酸誘導体>
本発明において用いられる上記ボロン酸誘導体は、ボロン酸骨格を有する化合物であれば、制限されず種々のものを用いることができるが、種々用途に応じた他の骨格、例えば蛍光性骨格などを同時に持たせることが好ましい。具体的には、ボロン酸骨格と共に蛍光性骨格を有するボロン酸誘導体として、ボロンジピロメテン(BODIPY)、ジフェニルアントラセン、ローダミンなどを挙げることができる。また、ポルフィリン骨格、クマリン骨格、ジメチルアミノナフタレンスルホンアミド骨格、ナフタレンビスイミド骨格を有するボロン酸誘導体を用いることもできる。
ボロン酸は、ジオールと、室温において、添加剤などを加えることなく、短時間でボロン酸エステル結合を形成する性質をもつため、部分構造としてジオール骨格をもつPVAとの穏和な条件での共有結合を形成して、固体ポリビニルアルコール表面に定着する。
上記ボロン酸誘導体としては、具体的には、下記の化合物などを挙げることができる。
Figure 0007026454000001
上述の各ボロン酸誘導体は、それぞれ公知の化合物であるので、それぞれ公知の製造方法により得ることができる。
<溶剤>
本発明において用いることができる上記溶剤としては、アルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。上記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノールなどを挙げることができる。
<濃度>
上記ボロン酸誘導体溶液中における上記ボロン酸誘導体濃度は、1.0×10-7M(上記溶液中における上記ボロン酸誘導体のモル濃度)~5.0×10-4Mであるのが好ましく、1.0×10-7M~7.0×10-5Mであるのがさらに好ましい。上記濃度が上述の範囲の下限値未満外であると、上記ボロン酸誘導体と上記PVとの反応が不十分となりPVAの表面修飾が進行しない場合があり、上限値を超えても反応性が良くなることがなく、却って均一な表面修飾を阻害して不均一な反応となる場合があるので好ましくない。
また、上記ボロン酸誘導体溶液の粘度は、使用法・用途に応じて任意であり、浸漬法により使用する場合、インクジェットプリンティングやマーカーペン方式(後述する表面修飾器を用いる方法)、マイクロコンタクトプリンティングやスタンプ方式を用いる場合で、それぞれ最適値が異なるものの、総じて0.5~30cPとするのが好ましい。具体的には以下の通りである。では下記に示した粘度が最適粘度となる。
浸漬法:3cP以下であるのが好ましい。
インクジェットプリンティング・マーカーペン:0.5~10 cP であるのが好ましい
マイクロコンタクトプリンティング・スタンプ方式:30 cP 以下であるのが好ましい
<第3成分>
本発明においては、上記ボロン酸誘導体及び上記溶剤の他に本発明の所望の効果を阻害しない範囲で種々成分を添加することができる。
具体的には、インクの粘度やインク溶剤の揮発速度を調節するために、エチレングリコールやグリセリン、ポリエチレングリコールなどを添加することができる。
本発明の表面修飾剤は、以下の表面修飾方法により、又は、以下の表面修飾器を用いる等して使用することができる。
<表面修飾方法>
本発明の表面修飾方法は、
固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法であって、
ケン化度が40%~99%であるポリビニルアルコールからなる固体ポリビニルアルコールにボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなる表面修飾剤を作用させる(以下、この工程を「作用工程」という)ことにより実施することができる。
以下、詳述する。
〔前工程及び後工程〕
本発明においては、上述の作用工程に先立ちPVA表面を洗浄する等種々の前工程を行うことができる。この前工程については、通常この種の高分子固体物の表面処理に際して用いられる手法を特に制限なく用いて行うことができる。
また、上記作用工程の終了後に洗浄など種々後工程を行うことができる。この後工程については、通常この種の高分子固体物の表面処理に際して用いられる手法を特に制限なく用いて行うことができる。
〔作用工程〕
上記作用工程において修飾対象である固体ポリビニルアルコール、及びこの固体ポリビニルアルコールに作用させる表面修飾剤は、それぞれ、上述した本発明の表面修飾剤の欄で説明した固体ポリビニルアルコール及び表面修飾剤と同じである。
作用条件は、特に制限されるものではなく、常温常圧下等の条件下において上記表面修飾剤を固体PVAの表面に接触させることで行うことができる。温度条件としては、溶剤が凍結しない温度であればよく、好ましくは10~50℃の範囲で行うことができる。作用させる際の圧力は特に制限されない。また、作用させる時間はPVAがどのような形態であるか、作用させる手段がなにかにより任意であるが、好ましくは1分~330時間とするのが好ましい。
作用工程においてって用いられる、上記表面修飾剤と固体PVA表面とを接触させる手法としては、浸漬法、インクジェットプリンティング、マーカーペン方式、マイクロコンタクトプリンティング、スタンプ方式等が挙げられる。
上記浸漬法は、上記表面修飾剤中に固体PVAを浸漬する方法であり、特に上記固体PVAが粒子状、繊維状、不織布状、シート状の場合に有効である。上記インクジェットプリンティングは、固体PVAシートに通常のインクジェットプリンタにインクとして上記表面収縮材を充填し、塗工する方式であり、シート状又は不織布状の固体PVAに対して有効であり、特に所望の図、記号、文字等を描く場合に有効である。マーカーペン方式は、後述する表面修飾器を用いて固体PVAの表面に表面修飾剤を所望の形状に塗工することにより、任意の図形又は文字を描く方式であり、シート状又は不織布状の固体PVAに対して有効である。また、マイクロコンタクトプリンティングは、ソフトリソグラフィーと呼ばれる ナノ構造構築法の一種であり、A. Kumar, G.M. Whiteside et al. Langmuir 10 (1994) 1498 等に詳述されている手法であり、この際にスタンプにより転写されるインクとして上記表面修飾剤を用いる事により、固体PVA表面に所定の微細パターンを形成することができる。この際用いる固体PVAの形態は特に制限されない。また、スタンプ方式は、通常のスタンプにおけるインクとして上記表面修飾剤を用いる手法であり、特にシート状、不織布状の固体PVAに対して任意のパターンを転写するのに有効である。
このように本発明の表面修飾剤を用いることにより種々形態で固体PVAの表面にボロン酸誘導体を介して種々特性の物質を導入して、着色、蛍光作用の付与の他、種々特性を付与することが可能である。
<表面修飾器>
本発明の表面修飾器1は、図25に示すように、使用者の手Aで保持するための棒状の保持部10と、保持部10に設けられた、液剤を収容する液剤収容部20と、液剤収容部20に連通されて対象物に液剤を塗工する吐出部30とを具備する。そして、液剤収容部20に収容されている液剤が上述の本発明の表面修飾剤である。
本実施形態の表面修飾器1は、図25に示すように、通常のマーカーペンと同様の構造を有しており、液剤収容部20は疎水性の中空であり且つ一端が開口となっている、円柱状の容器内に液体保持性を有する不織布材を収納してなり、この不織布材に液剤としての本発明の表面修飾剤を含浸させることで表面修飾剤を収容している(詳細は図示せず)。また、吐出部30はフェルト材からなり、一端が上記開口内に挿入されて上記不織布材に連設されており、他端は保持部の外方に位置するように配されている。これにより該他端から表面修飾剤を所望の固体PVAシートBに転写することができる。
なお、本発明の表面修飾器は、上述の形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。たとえば、ボールペン型のとして吐出部30をインクをボール材を用いて吐出するように構成することも可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが本発明はこれらに制限されるものではない。
〔合成例〕・BODIPY誘導ボロン酸 (1a) と参照化合物 (1b) の合成
まず、本発明の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤としてのボロンジピロメテン(BODIPY)誘導ボロン酸(1a)とボロン酸基をもたない参照化合物(1b)との合成を行った。
すなわち、高いモル吸光係数と高い光安定性をもつボロンジピロメテン(BODIPY)にボロン酸を導入した化合物(1a)を本発明の表面修飾剤として合成した。このように蛍光発色団をもつボロン酸を用いることで、紫外可視分光法や蛍光光度法でその吸着挙動を追跡でき、その定量化も可能になる。これらの合成経路を下記式に示す。
Figure 0007026454000002
上記反応を簡単に説明する。
4‐ヒドロキシベンズアルデヒドと、2,4-ジメチルピロールとの、トリフルオロ酢酸によるジピロメタン化を行った。続いて、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジアミノベンゾキノンを用いた酸化反応によるジピリン化を行い、酸トラップとしてのトリエチルアミン存在下において、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体によりホウ素化をおこなうことで、BODIPY化合物(上記式中2、以下単に2と示す)を前駆体として得た。
次に、塩基存在化において、前駆体であるBODIPY化合物(2)と、3‐ブロモメチルフェニルボロン酸との求核置換反応により、目的化合物であるBODIPY誘導ボロン酸(化1における1a、以下単に1aと示す)を得た。
また同様に、塩基存在下において、前駆体であるBODIPY化合物(2)と、ベンジルブロミドとの求核置換反応により、目的化合物に対する参照化合物として、ボロン酸基を持たない参照化合物(上記式に1b、以下単に1bと示す)を得た。
以下、実施例1と比較例1とで詳細に説明する。
〔実施例1〕
・前駆体 (2) の合成
初めに、目的化合物であるBODIPY誘導ボロン酸(1a)を合成するために、1aの前駆体となるBODIPY化合物(2)を下記式に示す反応により合成した。
Figure 0007026454000003
上記式化2に示す反応は以下の通り行った。
4‐ヒドロキシベンズアルデヒド(0.64g、5.2mmol)と2,4‐ジメチルピロール(1.1g、11.6mmol)をテトラハイドロフラン(THF、90mL)に溶かし、トリフルオロ酢酸を8滴加え、室温で5時間撹拌し、ジピロメタン化を行い、反応中間液Aを得た。得られた反応中間液Aに、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジアミノベンゾキノン(1.2g、5.3mmol)のTHF(120mL)溶液を加え、室温で4時間撹拌し、酸化反応によるジピリン化を行って反応中間液Bを得た。続いて、得られた反応中間液Bに、酸トラップとしてトリエチルアミン(16mL、0.12mol)を加え、氷水浴で冷やし、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(16mL、0.12mmol)を滴下して反応中間液Cを得た。得られた反応中間液Cを室温で一晩撹拌し、溶媒を減圧留去して、最終生成物を含む反応物Dを得た。得られた反応物Dに、ジクロロメタン(100mL)を加え、5%NaHCO水溶液(100mL)で2回洗浄し、混合液Eを得た。得られた混合液Eの有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、展開溶媒をジクロロメタンとして精製を行った。最後に、ジクロロメタン/ヘキサン系で再沈殿を行い、橙色固体を回収した。この橙色固体はH‐NMRよりBODIPY化合物(2)であることが確認され、収量は0.80g、収率は45%となった。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムとして商品名「ワコーゲルC300」を用い、室温下、溶媒はジクロロメタンとして行った。また、H‐NMRについては後述の通りである。
・BODIPY誘導ボロン酸 (1a) の合成
続いて、得られた前駆体となるBODIPY化合物(2)から、下記式に示す反応を行い、BODIPY誘導ボロン酸(1a)(本発明の表面修飾剤)を合成した。
Figure 0007026454000004
上記反応は以下の通り行った。
BODIPY化合物(2)(0.30g、0.88mmol)をTHF(30mL)に溶かし、炭酸セシウム(1.44g、4.4mmol)を加え、反応中間液Fを得た。得られた反応中間液Fに、3‐ブロモメチルフェニルボロン酸(0.22g、1.0mmol)を加え、室温で6時間撹拌し、溶媒を減圧留去して、最終生成物を含む反応物Gを得た。得られた反応物Gに、ジクロロメタン(100mL)と水(100mL)を加え、混合液Hを得た。得られた混合液Hに塩酸を水層が中性になるまで加えて該水層を中和し、分液を行った。水層にジクロロメタン(100mL)を加えて分液し、回収した有機層をまとめて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、精製を行った。展開溶媒として、初めにジクロロメタンを、次に1重量%でメタノールを含むメタノール/ジクロロメタン混合溶媒を使用した。最後に、ジクロロメタン/ヘキサン系で再沈殿を行い、橙色固体を回収した。この橙色固体は、H‐NMR、13C‐NMR、高速原子衝撃質量分析(FAB‐MS)より、BODIPY誘導ボロン酸(1a)であることを確認し、本発明の表面修飾剤を得た。収量は0.40g、収率は96%であった。
FAB‐MSについては後述する。
1H-NMR (500MHz、DMSO-d6)、δ (TMS、ppm):8.08(s、2H)、7.89(s、1H)、7.77(d、1H、J=7.4)、7.51(d、1H、J=7.6)、7.37(t、1H、J=7.5)、7.27(d、2H、J=8.6)、7.20(d、2H、J=8.7)、6.17(s、2H)、5.16(s、2H)、2.50(s、6H)、1.40(s、6H)
13C-NMR (125MHz、DMSO-d6)、δ (TMS、ppm):159.1、154.7、142.8、142.2、135.5、133.9、133.8、131.1、129.8、129.1、127.5、126.2、121.3、115.6、69.9、14.2.
FAB-MS m/z=744 [1a+2(m-nitrobenzylalcohol)-2H2O]+
・化合物 (1a) の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトル
次に、得られたBODIPY誘導ボロン酸(1a)の光学特性を測定した。
Figure 0007026454000005
上記BODIPY誘導ボロン酸(1a)の1.0×10-6Mメタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。吸収スペクトルにおいては498nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は8.8×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては506nmに極大蛍光ピークが観測された。また、フルオレセインの1.0×10-6M水酸化ナトリウム水溶液([NaOH]=0.1M、φ=0.90)を参照溶液として、λex=436nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.60であった。これらの値は、類似の構造をもつ既報のBODIPY誘導体の値と似た値であった。また、BODIPY誘導ボロン酸(1a)の1.0×10-5Mメタノール溶液を調製し、紫外光(365nm)を照射したところ、黄緑色の蛍光が観察された。
Figure 0007026454000006
・PVAマイクロ粒子のキャラクタリゼーション
次に、PVAマイクロ粒子のキャラクタリゼーションを行い、固体PVAの表面修飾性を確認した。
固体PVAとして、市販のPVAマイクロ粒子(Aldrich社製、重量平均分子量(M.W.)146000-186000、ケン化度87‐89%)をふるい振とう機でサイズ選別し、メタノールで洗浄したものを用いた。本実施例では、ふるい分けで粒径が212‐425μm区分のPVAマイクロ粒子を用いた。
選別されたPVAマイクロ粒子にネオオスミウムをスパッタリングして、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察を行い、このSEM観察からその平均粒子径を確認した。このSEM写真を図1に示す。観察された粒子の二軸平均径を、下記に示す式1に従い算出したところ、その平均粒子径は405±95μmであった。
((最大径の長さ)+(最大径の長さに対して垂直方向の平均幅))/2・・・(式1)
また、PVAマイクロ粒子の表面積について調査するために、窒素ガス吸着測定(後述する)を行なった。PVA粒子を110℃で5時間前乾燥させ、測定を行った。BET法から比表面積を算出したところ、0.0414g/mであった。
・表面修飾
得られたBODIPY誘導ボロン酸(1a)による、PVAマイクロ粒子の表面化学修飾を行った。表面修飾の流れを示す説明図を、図2に示す。
まず、50mLサンプル瓶101にPVAマイクロ粒子(上述のPVAマイクロ粒子)を50.0mg秤量し、投入する(図2のA)。次に、そこへBODIPY誘導ボロン酸(1a)の2.0×10-5Mメタノール溶液(粘度0.55cp、本発明の表面修飾剤)を5mL加え、振とう機で24時間振とうさせた(図2のB)。その後、ろ過を行ってPVA粒子を回収し、得られたPVA粒子をメタノールでリンスし、乾燥させて表面修飾されたPVA粒子を得た。このPVA粒子をPVA/1aとした。
その結果、PVA/1aは黄色を呈し、紫外光照射下(365nm)では、BODIPY骨格からの蛍光と予想される黄緑色の発光がみられた。PVA/1aを、可視光下において撮影した写真を図3a、紫外光照射下において撮影した写真を図3bに示す。
・固体蛍光スペクトル
次に、得られたPVA/1aの光学特性を試験した。まず、固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した。
PVA/1aを1mmセルに0.2g入れ蛍光スペクトルを測定した(λex=436nm)結果、PVA/1aではBODIPY由来の蛍光が観測された。このことから、1aはPVA粒子に吸着し、その吸着においてはボロン酸基が重要な役割を担っていることが分かった。後述の比較例1におけるPVA/1bの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図4に示す。
・蛍光顕微鏡観察
次に、蛍光顕微鏡観察を行った。
PVA/1aを蛍光顕微鏡で観察したところ、粒子全面から黄緑色の蛍光がみられ、1aがPVA粒子の全面に吸着していることが分かった。図5に、PVA/1aの蛍光顕微鏡写真を示す。
・共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察
続いて、共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察を行った。
PVA/1aを共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察したところ、得られた断面蛍光像において、PVA粒子の表面から選択的に蛍光が検出された。図6に、PVA/1aの共焦点レーザー蛍光顕微鏡写真を示す。このことから、BODIPY誘導ボロン酸1aがPVA粒子の表面に吸着していることが分かった。
・XPSスペクトル測定および赤外吸収スペクトル測定
更に、得られたPVA/1a粒子のXPSスペクトル測定および赤外吸収スペクトル(FT‐ATR‐IR)測定(ATR法)を行なった。なお、この測定では、2.6×10-4MのBODIPY誘導ボロン酸1a溶液(メタノール溶液)に浸漬させて、表面を修飾させたPVA粒子を用いた。
XPSスペクトルを測定したところ、PVA/1aにおいて、酸素や炭素に由来するピークに加え、BODIPY誘導ボロン酸1aの構成元素であるフッ素や窒素、ホウ素に由来するピークが観測された。図7に、得られたXPSスペクトルを示す。
次に、FT‐ATR‐IRスペクトルを測定したところ、PVA/1aにおいて、PVA由来のピークに加え、芳香環のC‐C伸縮振動に帰属されるピークが1543cm-1および1508cm-1に、B‐O伸縮振動に帰属されるピークが1307cm-1に、C‐O‐C伸縮振動に帰属されるピークが1195cm-1にそれぞれ観測された。図8に、得られたFT‐ATR‐IRスペクトルを示す。これらの結果から、1aがPVA粒子に吸着していることがわかった。
PSスペクトル測定及びFT‐ATR‐IRスペクトル測定(ATR法)については後述する。
・吸着量の濃度依存性
次に、浸漬濃度を変化させた時の吸着量の変化を調査し、その吸着挙動を定量化した。
まず、50mLサンプル瓶にPVAマイクロ粒子(上述のPVAマイクロ粒子と同じ)を50.0mg秤量したものを10サンプル用意し、それぞれのサンプル瓶に、BODIPY誘導ボロン酸1aのメタノール溶液(濃度をそれぞれ、10、20、40、70、100、130、160、200、230、260μMに調整した10種の溶液)を5mL加えた。サンプル瓶を振とう機で24時間振とうさせた後、上澄み溶液を回収し、メタノールで20倍に希釈した。得られた希釈溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定し、PVA粒子に吸着したBODIPY誘導ボロン酸1aの量を算出した。
BODIPY誘導ボロン酸1aの吸着量を平衡濃度に対してプロットしたところ、典型的な飽和曲線が得られた。このことからも、ボロン酸基がアンカー部位となって、PVAに吸着にしていることがわかる。後述の比較例1におけるPVA/1bの吸着量の測定結果とあわせて、図9に示す。
・カーブフィッティング
次に、吸着挙動の定量化のため、得られたBODIPY誘導ボロン酸1aの飽和曲線に対して、カーブフィッティングを試みた。BODIPY誘導ボロン酸1aとPVAのジオール部位との1:1での結合を仮定した平衡式に基づいてたてられた、図10に示す下記の方程式を用いてカーブフィッティングを行った場合に、実測値と計算値が良く一致し、ボロン酸エステル結合が吸着の駆動力であることが分かった。また、計算から飽和吸着量は(7.9±0.1)mg/g、見かけの結合定数は(6.5±2.4)×10-1と求まった。また、この計算から、PVAの水酸基の初濃度も算出され、その値は(1.9±0.02)×10-6mol(unit)となった。これは、PVAの水酸基のうち0.16%の水酸基がBODIPY誘導ボロン酸1aとの結合に関与していることになり、このように小さな値となるのは、BODIPY誘導ボロン酸1aがPVA粒子の表面にのみ吸着していて、内部のPVAのOH基には結合していないことを示すものであることが分かった。
・吸着量の時間依存性
また、吸着量の時間依存性を測定するために、BODIPY誘導ボロン酸1aのメタノール溶液(2.0×10-5M)にPVAマイクロ粒子(上述のPVAマイクロ粒子と同じ)を浸漬したときの吸着量を、浸漬時間に対してプロットした。吸着量は、上澄み溶液の紫外可視吸収スペクトル測定から算出した。その結果、概ね2時間で吸着量が飽和(80%)に達することがわかり、PVAの固体表面を比較的短時間で化学修飾できることが分かった。BODIPY誘導ボロン酸1aのメタノール溶液における、PVA粒子の表面修飾に際しての、吸着量の時間依存性を示すチャートを図11に示す。
・溶媒安定性調査
固体表面を化学修飾した材料を実際に応用する際には、化学修飾剤が表面に、安定に固定化されることが要求される。そこで、化学修飾されたPVA粒子を種々の有機溶媒に浸漬したときに、BODIPY誘導ボロン酸1aが粒子表面から遊離するかどうか、溶媒安定性試験を上澄み溶液の紫外可視吸収スペクトル測定から算出した。よく用いられる有機溶媒として、メタノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムを選択し、上述のPVA/1aをそれぞれ24時間浸漬したときの1aのボロン酸保持率を調査した結果、いずれの溶媒においても、保持率が97%以上となり、1aはPVA粒子表面に安定に固定化されていることが示された。図12に、上記の有機溶媒にPVA/1aを浸漬したときの、溶媒安定性を表すグラフを示す。
・PVAフィルム(シート状の固体PVA)の表面修飾
PVAは優れた加工形成性をもち、フィルムやファイバーなどへの加工が可能である。そこで、PVAのフィルム用いて、その表面修飾を検討した。
PVA粒子(ケン化度87‐89%、2.4g)をDMSO/水(7.3v/v、40mL)に溶解させ、ガラスプレートに乗せたシリコンラバーフレームに流し込み、80℃で48時間静置させることで、透明のPVAフィルム(厚さ76μm)を調製した。得られたPVAフィルムを、1cm×1cmに切り、使用した。使用したPVAフィルムを図13aに示す。
上記PVAフィルムをBODIPY誘導ボロン酸1aの2.0×10-5Mメタノール溶液(5mL)に浸漬させ、振とう機で24時間振とうさせた。その後、BODIPY誘導ボロン酸1aのメタノール溶液からフィルムを取り出し、メタノールでリンスし、乾燥させた。その結果、フィルムは黄色に着色し、紫外光照射下では、黄緑色の蛍光が観察された。可視光下において撮影した写真を図13b、紫外光照射下において撮影した写真を図13cに示す。
この結果から、PVAフィルムの表面をボロン酸で直接化学修飾できることが示された。
・ファイバーの表面修飾
次に、PVAのファイバーを用いて、その表面修飾を検討した。
PVA粒子(ケン化度99%)を用いて、エレクトロスピニング法によりPVAのナノファイバーマットを調製した。得られたPVAのナノファイバーマットのSEM写真を、図14aに示す。なお、このナノファイバーマットは企業に依頼して調製してもらった。このナノファイバーマットを1cm×1cmに切り、使用した。
上記PVAナノファイバーマットをBODIPY誘導ボロン酸1aの2.0×10-5Mメタノール溶液(5mL)に浸漬させ、振とう機で24時間振とうさせた。その後、BODIPY誘導ボロン酸1aのメタノール溶液からナノファイバーマットを取り出し、メタノールでリンスし、乾燥させた。得られたナノファイバーマットを共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察したところ、BODIPY誘導ボロン酸1a由来の蛍光が観察された。得られたPVAのナノファイバーマットの蛍光顕微鏡写真を、図14bに示す。
この結果から、PVAナノファイバーマットの表面をボロン酸で直接化学修飾できることが示された。
また、PVAのケン化度を変えて同様に表面修飾を行ったところ、けん化度99%超:目視ではPVAの着色があまり認められなかった。けん化度94.5%~96%:着色が認められた。けん化度94%~85%:著しい着色が認められた。けん化度85%~40%:着色が認められた。けん化度が40%未満:PVAがメタノール等の溶媒に溶解してしまい、所望の形態のPVAの表面修飾ができなかった。
〔比較例1〕
初めに、目的化合物であるBODIPY誘導ボロン酸(1a)の参照化合物として、ボロン酸基を持たない参照化合物(1b)を合成するために、実施例1に記した方法と同様の方法で、1bの前駆体となるBODIPY化合物(2)を合成した。
続いて、得られた前駆体となるBODIPY化合物(2)から、下記式に示す反応を行い、ボロン酸基を持たない参照化合物(以下、単に参照化合物という)(1b)を合成した。
Figure 0007026454000007
上記反応は以下の通り行った。
BODIPY化合物(2)(0.10g、0.29mmol)をTHF(10mL)に溶かし、炭酸セシウム(0.47g、1.4mmol)を加え、混合液Iを得た。得られた混合液Iに、ベンジルブロミド(0.040mL、0.35mmol)を加え、室温で一晩撹拌し、求核置換反応を行って、最終生成物を含む反応液Jを得た。得られた反応液Jをろ過し、溶媒を減圧留去して、最終生成物を含む反応物Kを得た。続いて、シリカゲルカラムクトマトグラフィーにより、得られた反応物Kの精製を行った。展開溶媒として、ジクロロメタン:ヘキサン=4:1(重量比)の混合溶媒を使用した。最後に、ジクロロメタン/ヘキサン系で、再沈殿を行い、橙色固体を回収した。この橙色固体はH‐NMR、13C‐NMR、FAB‐MSより、参照化合物(1b)であることが確認された。収量は0.90g、収率は71%であった。
1H-NMR (500MHz、CDCl3)、δ (TMS、ppm):7.46(d、2H、J=7.4)、7.41(t、2H、J=7.4)、7.35(t、1H、J=7.2)、7.18(d、2H、J=8.3)、7.09(d、2H、J=8.3)、5.97(s、2H)、5.13(s、2H)、2.55(s、6H)、1.43(s、6H)
13C-NMR (125MHz、CDCl3)、δ (TMS、ppm):159.3,155.3、143.2、141.8、136.4、131.8、129.2、128.6、128.2、127.6、127.4、121.1、115.6、70.2、14.6
FAB-MS m/z=430 [1b]+
次に、得られた参照化合物(1b)の光学特性を測定した。
メタノール中における参照化合物(1b)(下記式に示す化合物)の紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
Figure 0007026454000008
上記参照化合物(1b)の1.0×10-6Mメタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。吸収スペクトルにおいては498nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は9.0×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては506nmに極大蛍光ピークが観測された。また、フルオレセインの1.0×10-6M水酸化ナトリウム水溶液([NaOH]=0.1M、φ=0.90)を参照溶液として、λex=436nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.58であった。これらの値は、上記実施例1におけるBODIPY誘導ボロン酸(1a)の値とよく似た値であった。また、ボロン酸基を持たない参照化合物(1b)の1.0×10-5Mメタノール溶液を調製し、紫外光(365nm)を照射したところ、黄緑色の蛍光が観察された。
次に、PVAマイクロ粒子のキャラクタリゼーションを行い、固体PVAの表面修飾性を確認した。
固体PVAとして、市販のPVAマイクロ粒子(上述のマイクロ粒子と同じ)をふるい振とう機でサイズ選別し、メタノールで洗浄したものを用いた。本発明では、ふるい分けで粒径が212‐425μm区分のPVAマイクロ粒子を用いた。
選別されたPVAマイクロ粒子について実施例1と同様にして平均粒子径を求めた。その結果、平均粒子径は405±95μmであった。
また、PVA粒子の表面積を実施例1と同様にして求めたところBET法による比表面積が0.0414g/mであった。
続いて、参照化合物(1b)による、PVAマイクロ粒子の表面化学修飾を実施例1と同様にして行った。得られた処理後のPVA粒子をPVA/1bという。その結果、PVA/1bでは着色はみられず、紫外光照射下(365nm)においても発光はほとんど観測されなかった。PVA/1bを、可視光下において撮影した写真を図3c、紫外光照射下において撮影した写真を図3dに示す。
次に、得られたPVA/1bの固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した。
PVA/1bを1mmセルに0.2g入れ蛍光スペクトルを測定した(λex=436nm)結果、PVA/1bからはほとんど蛍光が観測されなかった。このことから、1bはPVA粒子に吸着されていないことがわかった。上記実施例1におけるPVA/1aの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図4に示す。
次に、浸漬濃度を変化させた時の吸着量の変化を参照化合物1bのメタノール溶液濃度を(2、4、8、12、16、20、28、52、72、100μMに調整した10種)とした以外は、実施例1と同様にして調査し、その吸着挙動を定量化した。
参照化合物1bの吸着量を平衡濃度に対してプロットしたところ、浸漬濃度が上昇してもほとんど吸着がみられなかった。上記実施例1におけるPVA/1aの吸着量の測定結果とあわせて、図9に示す。
〔実施例2〕ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体
実施例1及び比較例1の結果からボロン酸基を有する化合物が種々の固体PVAに吸着することがわかるが、このような吸着特性がBODIPY骨格以外の骨格を持つボロン酸誘導体でも得られるものであるか、下記式に示す、青色蛍光をもつジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体(3a)を用いてPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。なお、ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体(3a)は、通常公知の手法により得、公知の手法により精製したものを用いた。
ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体(3a)の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
Figure 0007026454000009
測定は、ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体3aの2.0×10-6Mメタノール溶液を調製して得られた本発明の表面修飾剤(粘度0.55cp)を用いて行った。紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定することにより行った。吸収スペクトルにおいては372nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は1.2×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては433nmに極大蛍光ピークが観測された。また、ジフェニルアントラセンの2.0×10-6Mエタノール溶液(φ=0.98)を参照溶液として、λex=355nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.82であった。
次に、実施例1に記した方法と同様の方法で、実施例1で用いたものと同じPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体3aのメタノール溶液に浸漬させたPVAマイクロ粒子を、PVA/3aとした。
ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体3aのメタノール溶液に浸漬したPVA粒子(PVA/3a)は紫外光照射下(365nm)において、青色の発光がみられた。PVA/3aを、可視光下において撮影した写真を図15a、紫外光照射下において撮影した写真を図15bに示す。
また、実施例1に記した方法と同様の方法で、PVA/3aの固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した(λex=355nm)。その結果、PVA/3aからはジフェニルアントラセン由来の蛍光が観測された。後述の比較例2におけるPVA/3bの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図16aに示す。
次に、PVA/3aを蛍光顕微鏡で観察したところ、粒子全面から蛍光がみられ、3aがPVA粒子の全面に吸着していることが分かった。図17aに、PVA/3aの蛍光顕微鏡写真を示す。
これらの結果より、ジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体も本発明の固体PVAの表面修飾剤として有用であることが分かった。
〔比較例2〕
実施例2に示す、青色蛍光をもつジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体(3a)の参照化合物として、下記化学式に示す、ジフェニルアントラセン酸誘参照化合物(3b)を用いてPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。
初めに、ジフェニルアントラセン酸誘参照化合物(3b)の合成を行った。
Figure 0007026454000010
9‐ヒドロキシフェニル‐10‐フェニルアントラセン(0.10g 0.29mmol)をTHF(30mL)に溶かし、炭酸セシウム(0.47g 1.44mmol)を加え、混合液Lを得た。得られた混合液Lに、3‐ブロモベンジルブロミド(0.06g 0.35mmol)を加え、室温で一晩撹拌し、反応液Mを得た。得られた反応液Mをろ過し、溶媒を減圧留去して、最終生成物を含む反応物Nを得た。続いて、シリカゲルカラムクトマトグラフィーにより、得られた反応物Nの精製を行った。展開溶媒として、ジクロロメタン:ヘキサン=9:1(重量比)の混合溶媒を使用し、最後に白色固体を回収した。この白色固体はH‐NMR、13C‐NMR、FAB‐MSより、ジフェニルアントラセン酸誘参照化合物(3b)であることが確認された。収量は0.12g、収率は95%であった。
1H-NMR (500MHz、CDCl3)、δ (TMS、ppm):7.76-7.68(m、4H)、7.62-7.55(m、5H)、7.49-7.32(m、11H)、7.22(d、2H、J=8.1)、5.22(s、2H)
13C-NMR (125MHz、CDCl3)、δ (TMS、ppm):158.3、139.1、137.1、137.0、136.9、132.4、131.4、131.1、130.2、129.9、128.7、128.4、128.1、127.7、127.4、127.1、127.0、125.0、124.9、114.8、70.2.
FAB-MS m/z=436 [3a]+
ジフェニルアントラセン酸誘参照化合物(3b)の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
3bの2.0×10-6Mメタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。吸収スペクトルにおいては372nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は1.4×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては433nmに極大蛍光ピークが観測された。また、ジフェニルアントラセンの2.0×10-6Mエタノール溶液(φ=0.98)を参照溶液として、λex=355nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.71であった。
次に、実施例1に記した方法と同様の方法で、実施例1で用いたものと同じPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。3bのメタノール溶液に浸漬させたPVAマイクロ粒子を、PVA/3bとした。
3bのメタノール溶液に浸漬したPVA粒子(PVA/3b)は紫外光照射下(365nm)においても発光はほとんど観測されなかった。PVA/3bを、可視光下において撮影した写真を図15c、紫外光照射下において撮影した写真を図15dに示す。また、実施例1に記した方法と同様の方法で、PVA/3bの固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した(λex=355nm)。その結果、PVA/3bからはジフェニルアントラセン由来の蛍光はほとんど観測されなかった。上記実施例2におけるPVA/3aの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図16aに示す。
〔実施例3〕
実施例1及び実施例2の結果から、BODIPY誘導ボロン酸(1a)及びジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体(3a)が種々の固体PVAに吸着することがわかるが、このような吸着特性が他の骨格を持つボロン酸でも見られるか、下記式に示す、赤色蛍光をもつローダミンのボロン酸誘導体(4a)を用いてPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。なお、ローダミンのボロン酸誘導体(4a)は、通常公知の手法により得、公知の手法により精製したものを用いた。
Figure 0007026454000011
ローダミンのボロン酸誘導体(4a)の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
測定は、ローダミンのボロン酸誘導体(4a)の5.0×10-7Mメタノール溶液を調製して得られた本発明の表面修飾剤(粘度0.55cp)を用いて行った。紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定することにより行った。吸収スペクトルにおいては561nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は1.3×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては577nmに極大蛍光ピークが観測された。また、ローダミンBの5.0×10-7Mエタノール溶液(φ=0.70)を参照溶液として、λex=510nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.36であった。
次に、実施例1に記した方法と同様の方法で、実施例1で用いたものと同じPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。ローダミンのボロン酸誘導体4aのメタノール溶液に浸漬させたPVAマイクロ粒子を、PVA/4aとした。
ローダミンのボロン酸誘導体4aのメタノール溶液に浸漬したPVA粒子(PVA/4a)は赤色を呈し、紫外光照射下(365nm)において、赤色の発光がみられた。PVA/4aを、可視光下において撮影した写真を図15e、紫外光照射下において撮影した写真を図15fに示す。
また、実施例1に記した方法と同様の方法で、PVA/4aの固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した(λex=510nm)。その結果、PVA/4aからはローダミン由来の蛍光が観測された。後述の比較例3におけるPVA/4bの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図16bに示す。
次に、PVA/4aを蛍光顕微鏡で観察したところ、粒子全面から蛍光がみられ、4aがPVA粒子の全面に吸着していることが分かった。図17bに、PVA/4aの蛍光顕微鏡写真を示す。
これらの結果より、ローダミンのボロン酸誘導体も本発明の固体PVAの表面修飾剤として有用であることが分かった。
〔比較例3〕
実施例3に示す、赤色蛍光をもつローダミンのボロン酸誘導体(4a)の参照化合物として、下記式に示す、ローダミン酸誘参照化合物(4b)を用いてPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。なお、ローダミンのボロン酸誘導体(4a)は、通常公知の手法により得、公知の手法により精製したものを用いた。
Figure 0007026454000012

ローダミン酸誘参照化合物(4b)の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
4bの5.0×10-7Mメタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。吸収スペクトルにおいては561nmに極大吸収ピークが観測され、モル吸光係数は1.3×10L/molcmであった。蛍光スペクトルにおいては577nmに極大蛍光ピークが観測された。また、ローダミンBの5.0×10-7Mエタノール溶液(φ=0.70)を参照溶液として、λex=510nmにおける蛍光スペクトルから蛍光量子収率を算出したところ、φ=0.42であった。
次に、実施例1に記した方法と同様の方法で、実施例1で用いたものと同じPVAマイクロ粒子の表面修飾を行った。4bのメタノール溶液に浸漬させたPVAマイクロ粒子を、PVA/4bとした。
4bのメタノール溶液に浸漬したPVA粒子(PVA/4b)は着色は見られず、紫外光照射下(365nm)においても発光はほとんど観測されなかった。PVA/4bを、可視光下において撮影した写真を図15g、紫外光照射下において撮影した写真を図15hに示す。
また、実施例1に記した方法と同様の方法で、PVA/4bの固体蛍光スペクトル測定を行い、その発光を定量的に調査した(λex=510nm)。その結果、PVA/4bからはローダミン由来の蛍光はほとんど観測されなかった。上記実施例3におけるPVA/4aの蛍光スペクトル測定結果とあわせて、図16bに示す。
実施例で用いた機器・試薬は以下の通りである。
・各種NMR測定にはBruker AVANCE 500型核磁気共鳴装置(500 MHz)を使用し、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
・高速原子衝撃質量分析(FAB‐MS)測定には、JEOL JMS‐700を使用し、マトリックスには3‐ニトロベンジルアルコール(東京化成)を使用した。
・紫外可視吸収スペクトル測定には、Shimadzu UV‐3600を用いた。
・蛍光スペクトル測定には、JASCO FP‐6300を用いた。
・走査型電子顕微鏡測定には、JEOL JSM‐7500Fを用いた。
・窒素ガス吸着測定には、Micrometric Tristerを用いた。
・蛍光顕微鏡観察には、TS100 LED‐f(λex=330‐380nm、λem>420nm)を用いた。
・共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察には、 を用いた。
・XPSスペクトル測定には、JPS‐9010MXを用いた。
・赤外吸収スペクトル測定(ATR法)には、JASCO FT/IR‐4100を用いた。
合成、調製及び測定に用いた試薬、溶媒などは特に指定のない場合は市販品をそのまま用いた。
・ジフェニルアントラセンは市販品をトルエンで再結晶し、使用した。
・テトラハイドロフラン(THF)は、以下に記す方法で処理したものを使用した。市販のTHFに塩化カルシウムを加え、一晩撹拌させた。その上澄み液を加熱乾燥させたナスフラスコに移した後に、ナトリウムワイヤーおよびベンゾフェノンを加え、窒素雰囲気下、数時間加熱還流させた。溶液の色が青くなった後蒸留した。
〔実施例4及び比較例4〕PVF スポンジ以下の試薬を用いてポリビニールフォルマール(PVF)スポンジを調整した。・PVA (M.W. 89000~98000, ケン化度99% )・ホルムアルデヒド水溶液(36-38重量%)調整は以下の通りに行った。300 mL ビーカーに PVA (6.0 g), 蒸留水 (54 mL) を加え, 完全に溶解するまで油浴 (95℃)で加熱し,10wt% PVA 水溶液を調製した。ビーカーを油浴から取り出し, 冷めないうちにホルムアルデヒド水溶液(37%) (10 mL),「Triton X-100」 (商品名、アルドリッチ社製、1.5 g) を加え, 1000 rpm で 25 分間攪拌し, 泡を形成させた。その泡溶液に 50wt% H2SO4 水溶液 (30 mL) を加え, さらに 2 分間攪拌した。その混合物を乾燥機で 60℃, 5 時間加熱し, 得られたスポンジを水で洗浄後, PVF スポンジの重量が一定になるまで乾燥した (収量:5.72 g)。・PVF スポンジの FE-SEM 観察得られた PVF スポンジにネオオスミウムをスパッタリングし SEM 観察をおこなった。その結果を図18に示す。その表面観察において, 数十マイクロオーダーからなるオープンセル構造が観測された。・空隙率の算出 PVF スポンジを水中に浸漬しても, 水によるスポンジ体積の膨潤がみられないことから, 液浸法による空隙率の算出が可能であり, その値は 86±12%と見積もられた。液浸法:試料を水に浸し, ある時間放置した時の水の重さの差分から試料に含水した体積 (ΔVwater) を算出し, 含水した PVF スポンジの体積 (VPVF/water) から空隙率を決定した。
・PVF スポンジの表面化学修飾50mL サンプル瓶に 10 mg になるようにカットした PVF スポンジを入れ, そこに実施例1で得られた BODIPY誘導体 (1a) のメタノール溶液 (20 μM(=2.0×10-5M)、本発明の表面修飾剤、粘度0.55cp) を 25 mL 加えた。振とう機で 15 時間振とうさせた後, 得られたスポンジを回収し,取り出したスポンジをメタノールで洗浄した。このスポンジを PVF/1a とした(実施例4)。また, コントロール分子としてボロン酸基を持たない BODIPY (1b) においても同様の操作をおこない, 得られたスポンジをPVF/1b とした(比較例4)。また, それぞれ得られたスポンジの蛍光スペクトルを測定した。その結果1a のメタノール溶液に浸漬した PVF スポンジは 1a の吸着に起因する黄緑色に着色した。このスポンジは UV 照射下 (365 nm) において緑色に発光した。一方, 1b のメタノール溶液に浸漬した PVF スポンジは着色しなかった。また, 蛍光スペクトル測定をおこなったところ, PVF/1a からは BODIPY 由来の発光 (λem=535 nm) が観測されたのに対し, PVF/1b は発光しなかった。これらの結果から, PVF スポンジへの色素吸着において, ボロン酸基が重要な役割を担っていることがわかった。 PVF/1a (1a:320 μMの溶液に浸漬させたスポンジ) において, PVF 由来のピークに加え, 芳香族の C-C 伸縮振動に帰属されるピークが 1543, 1508 cm-1に, B-O 伸縮振動に帰属されるピークが 1307 cm-1にそれぞれ観測され, PVF スポンジ表面への BODIPY の吸着が裏付けられた。
・吸着量の濃度依存性 浸漬濃度を変化させた時の吸着量の変化を調査し, その吸着挙動を定量化することで, 吸着機構に関する考察をおこなった。50mL サンプル瓶に 4.0 mg になるようにカットした PVF スポンジを入れ, それぞれに 1a のメタノール溶液 (15, 30, 45, 60, 90, 120, 160, 200, 240, 280, 320 μM) を5mL 加えた。振とう機で15 時間振とうさせた後, 上澄み溶液を回収し, メタノールで 20 倍に希釈した。この溶液の UV -Vis 吸収スペクトルを測定し, PVF スポンジに吸着した 1a の量を算出した。その結果、吸着量を平衡濃度に対してプロットしたところ, 1a において典型的な飽和曲線が得られ, ボロン酸基がアンカー部位となって PVF スポンジに吸着していることが示された。・カーブフィッティング吸着挙動の定量化のため, 今回得られた 1a の飽和曲線に対して, カーブフィッティングを試みた。1aと PVF のジオール部位との 1:1 での結合を仮定した平衡式に基づいてたてられた。下記の方程式を用いてカーブフィッティングを行った場合に, 実測値と計算値が良く一致し, ボロン酸エステル結合が吸着の駆動力であることがわかった。また, 計算から飽和吸着量は (114.1 ± 2.7) mg/g, 見かけの結合定数は (2.4 ± 0.3) × 104 M-1と求まった。また, PVA の固体表面修飾に関する研究における飽和吸着量 (7.9±0.1) mg/g に比べ, 今回得られた PVF スポンジの吸着量は約 10 倍高い値を示した。
・PVF/1a の pH 安定性 1 M 塩酸水溶液と 0.1 M 水酸化ナトリウム水溶液から pH の異なる水溶液 (pH=1, 3, 5, 7, 9, 11, 13) を調製し, 2-1 の手順で調製した PVF/1a (10 mg) の入ったペトリ皿にそれぞれ 5 mL 加え, 浸漬 24 時間後に白熱灯下および UV (365 nm) 照射下, 写真撮影をおこなった。 その結果、既報のボロン酸化合物が吸着した PVA 粒子は水に溶解するのに対して, PVF スポンジは水に不溶であり, 吸着した 1a の脱色, 消光等の変化はみられなかった。 さらに, PVF/1a は広範な pH 領域においても変化はみられず, 非常に高い安定性を示した。この結果から, ボロン酸化合物を用いた PVF スポンジへの化学修飾は, 水中で使用可能な材料 (吸着・分離剤, 触媒, センサー, 生体材料) への応用が期待できる。
〔実施例5〕様々なボロン酸色素による PVF スポンジへの表面化学修飾青色蛍光をもつジフェニルアントラセンのボロン酸誘導体 (3a) とその参照化合物 (3b), 赤色蛍光をもつローダミンのボロン酸誘導体(4a) とその参照化合物 (4b) を用いて PVF スポンジの化学修飾をおこなった。
Figure 0007026454000013
実施例1と同様にして種々の色素を用いた PVF スポンジの表面修飾をおこなった。4a, 4b, 3a, 3b のメタノール溶液に浸漬させた PVF スポンジをそれぞれ, PVF/4a, PVF/4b, PVF/3a, PVF/3b とした。その結果、実施例1と同様にボロン酸基を持つ 4a, 3a において有意な吸着が確認された。また, それらスポンジの蛍光スペクトル測定をおこなったところ, ジフェニルアントラセン由来の発光 (λem=437 nm), ローダミン由来の発光 (λem = 598 nm) が観測された。すなわち, ボロン酸化合物による PVF スポンジの化学修飾は, 種々のボロン酸化合物に適用可能であることが示された。
・マルチカラー発光性スポンジの調製1a, 2a および 3a の混合比を調節し, 多様な発光色を示すスポンジの調製を試みた。実施例1及び上述の手順により調製した 20 μM の各種色素 (1a, 4a, 3a) 溶液をその全濃度が 20μM となるように種々調節し,当該溶液に実施例4のスポンジを浸漬させた。溶液の浸漬手順は 実施例1 と同様におこなった。得られたスポンジはそれぞれPVF/cyan, PVF/yellow, PVF/magenta, PVF/white とした。その結果、ぞれぞれ調製した溶液 (cyan:[1a] = 1.6 μM, [3a] = 18.4 μM, [4a] = 0μM, yellow:[1a] = 19.2μM, [3a] =0μM, [4a] = 0.8μM, magenta:[1a] = 0μM, [3a] = 4.0μM, [4a] = 16.0μM, white:[1a] =2.4 μM, [3a] = 16.0μM, [4a] =1.6μM,) に浸漬させたスポンジの実体顕微鏡像, 色度座標へのプロット結果から発光色の調節がなされた。この実験から PVF スポンジへの蛍光性ボロン酸類吸着において, 複数のボロン酸の比率をファインチューニングしながら化学修飾できることが示された。
PVFスポンジへのボロン酸色素吸着における濃度依存性調査により得られた典型的な飽和曲線から, ボロン酸基がアンカー部位となって色素がPVFスポンジに吸着されていることがわかった。 次に, PVFスポンジに吸着していることを機器分析によって明らかにするため, 得られたPVFスポンジ (PVF, PVF /1a PVF /1b) の IR 測定をおこなった。なお, この測定では, 1a あるいは 1b のメタノール溶液 (1.5×10-4M) に浸漬させたPVFスポンジを用いた。 また, スポンジの機能化の一環として, ケモセンサーとして機能するスポンジの作製を試みた。その結果、PVFスポンジにおいて, O-H 伸縮振動に帰属される幅広いピークが 3200-3600 cm-1, アルキル鎖の C-H伸縮振動, アルデヒドの C-H 伸縮振動, C-O-C 伸縮振動に帰属されるピークがそれぞれ 2863-2948, 2777, 1009 cm-1に観測された。ボロン酸基を持つ 1a のメタノール溶液に浸漬させた PVF /1a において, PVFスポンジ由来のピークに加え, 芳香族の C-C 伸縮振動に帰属されるピークが 1547, 1509 cm-1に, B-O 伸縮振動に帰属されるピークが 1307 cm-1にそれぞれ観測された。一方, ボロン酸基を持たない 1b のメタノール溶液を浸漬させた PVF /1b において, PVFスポンジと同様のスペクトルが得られた。IR スペクトルから, 1a が PVA スポンジに吸着していることが示された。
〔実施例6〕 ボロン酸のキノリン誘導体 (上記式における5) で表面修飾したスポンジの金属イオン応答調査 50 mL サンプル瓶に 10 mg になるようにカットしたPVFスポンジを入れ, そこにキノリンのボロン酸誘導体 (5) のメタノール溶液 (20 μM(=2.0×10-5M)、本発明の表面修飾剤、粘度0.55cp)) を 25 mL 加えた。振とう機で 15 時間振とうさせた後, 得られたスポンジを取り出し, メタノールで洗浄した。このスポンジを PVF /5 とし, それを HEPES 緩衝液 (5.0×10-3M,pH7.0)に保存した。<金属イオン溶液への浸漬>50 mL サンプル瓶に, スポンジに吸着した 5に対して 2当量の各種金属イオンを含む HEPES 緩衝液 (5.0×10-3M, pH 7.0, [Mn+] =3.0×10-5M)を10mL入れ, 続いてPVF /5を加え, 30分間振とうした。金属イオン溶液に浸漬させた PVF /5はサンプル瓶から取り出し, 発光スペクトル測定, 積分球を用いた絶対発光量子収率の算出および, 暗視野における UV (365 nm) 光照射時の写真撮影をおこなった。また, 亜鉛イオンを含む HEPES 緩衝液に PVFスポンジを浸漬させた時のその蛍光増大の経時変化について調査した。 その結果、メタノール中における 5のモル吸光係数の算出およびスポンジへの吸着量の算出307 nm における吸光度から, Lambert-Beers 則に従い, モル吸光係数は 6.3×10-3M-1cm-1と算出された。 また, PVFスポンジへの5の吸着量 q (mg/g) は 5.67 mg/gと算出され, この数値は 10 mg のスポンジに対して1.56×10-7mol の 5が吸着していることを示している。これらから, 色素に対して 2 当量の金属イオンを含む HEPES 緩衝液 (5.0×10-3M, pH 7.0, [Mn+] = 3.0×10-5M) が適当であると考えた。・ 金属イオンに対する応答性 用いた金属イオン:Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Zn2+, Cd2+, Hg2+, Al2+, Pb2+の過塩素酸水和物亜鉛イオン水溶液に浸漬したPVFスポンジにおいてのみ, キノリン基由来の蛍光強度が大きく増大した。 また UV (365 nm) 照射下での観察においても, 亜鉛イオンに浸漬したPVFスポンジのみが青色に発光したことから, PVF/5 が亜鉛イオンに対して選択的に蛍光応答することが示された。 この蛍光増大は, 亜鉛イオンがアミノキノリン部位に配位することにより, アミノキノリン部位の光誘起電子移動が妨げられることによるものであると考えられる。すなわち, 吸着特性を有する分子を化学修飾させることにより PVA表面でその機能が有意にはたらくことが示された。なお, 絶対量子収率はφFL (no metal) = 0.05, φFL (Zn2+)= 0.32 と算出された。 また, PVF /5 の亜鉛イオンに対する蛍光強度は時間の経過とともに増大し, それはおよそ 30 分で蛍光増大が視覚的に判断され, ケモセンサーとしての有用
性が示された。・PVFスポンジの窒素ガス吸着測定 PVFスポンジを 100℃ で2時間前乾燥させ, 測定をおこなった。BET 法により比表面積は 1.69 m2g-1と算出された。また, 等温線の分類はII型を示した。
〔実施例7及び比較例7〕PVFスポンジを 10 mg となるようにカットして,ボロン酸色素 (1a, 3a, and 4a) のメタノール溶液 (20 μM, 25 mL) にそれぞれ室温で,15 時間浸漬した。 得られたスポンジをそれぞれ PVF/1a, PVF /3a, PVF /4a とした。また, コントロール分子として, ボロン酸基を持たない色素 (1b, 3b, and 4b,) を用いた同様の実験で得られたスポンジを, それぞれPVF /1b, PVF /3b, PVF /4b とした。
PVF/1a, PVF/4a は各色素の色, 黄緑およびピンクに着色した。UV 照射下 (365 nm) ではPVF/1a, PVF/4a およびPVF /3a はそれぞれ緑, 赤,および青色に発光した。また, 積分球を用いた蛍光測定において, 各スポンジは BODIPY 由来の発光 (λem = 535 nm, φFL = 0.42), ローダミン由来の発光 (λem = 598 nm, φFL = 0.26) およびジフェニルアントラセン由来の発光 (λem = 437 nm, φFL = 0.72) が確かめられた。一方, PVF/1b, PVF/3b, PVF/4b は着色, 発光は認められなかった。これらの結果から PVFスポンジへの色素吸着において, ボロン酸基が重要な役割を担っていることがわかった。 表面修飾を機器分析によって検証した。 得られた PVFスポンジ (PVF, PVF /1a PVF /1b) の13C CP-MAS NMR および IR 測定をおこなった。なおこの測定では, PVFスポンジ (100 mg) を 1a, 1b のメタノール溶液 (1.5×10-4 M, 250 mL) に 15 時間浸漬して得られたサンプルを用いた。PVFスポンジの13C CP-MAS NMR スペクトルを測定したところ, PVA 部位のメチレンカーボン (C)とメチンカーボン (B) に由来するピークが 25.6-52.1 ppm, 59.4-83.6 ppm に, アセタール部位のメチレンカーボン (A) に由来するピークが 84.4-101.0 ppm に観測された。PVF /1a では PVFスポンジで観測されたピークに加え, BODIPY 骨格のメチルカーボン, 芳香族カーボンに由来する小さなピークが 6.2-20.9 ppm, 111.5-148.8 ppm に観測された。一方, PVF /1b は PVFスポンジと同様のピークのみ観測された。PVFスポンジにおいて, O-H伸縮振動に帰属される幅広いピークが3200-3600 cm-1, アルキル鎖のC-H伸縮振動, アルデヒドのC-H伸縮振動, C-O-C伸縮振動に帰属されるピークがそれぞれ2863-2948, 2777, 1009 cm-1に観測された。ボロン酸基を持つ1aのメタノール溶液に浸漬させたPVF /1aにおいて, PVFスポンジ由来のピークに加え, 芳香族のC-C伸縮振動に帰属されるピークが1547, 1509 cm-1に, B-O伸縮振動に帰属されるピークが1307 cm-1にそれぞれ観測された。一方, ボロン酸基を持たない1bのメタノール溶液を浸漬させたPVF /1bにおいて, PVFスポンジと同様のスペクトルが得られた。NMRおよびIRスペクトルによる解析から, 1aがPVFスポンジに吸着していることが示された。
1a のメタノール溶液 (20 μM, 10mL) に 4.0 mg の PVFスポンジを浸漬したときの吸着量を浸漬時間に対してプロットした。吸着量は, 上澄み溶液の UV -Vis 吸収スペクトル測定から算出した。その結果, 概ね 15 時間で吸着量が飽和 (>90%) に達することがわかった。浸漬濃度を変化させた時の吸着量を測定し, その吸着挙動を定量化することで, 吸着機構に関する考察をおこなった。本実験では, 1a のメタノール溶液 (15, 30, 45, 60, 90, 120, 160, 200, 240, 280, 320 μM) に 4.0 mg のPVFスポンジを 15 時間浸漬したときの吸着量を算出した。また 1b を用いた実験では, 平衡濃度を考慮して, 7.5, 15, 25, 30, 50, 70, 130, および 150 μM の濃度でおこなった。吸着量を平衡濃度に対してプロットしたところ, 1a において典型的な飽和曲線が得られた。一方, 1b では浸漬濃度が上昇しても, ほとんど吸着がみられなかったことからも, ボロン酸基がアンカー部位となって PVFスポンジに吸着していることがわかった。今回得られた 1a の飽和曲線に対してカーブフィッティングをおこなった。 PVFスポンジが内部構造としてもつジオール部位と 1a との 1:1 結合を仮定した式を用いてカーブフィッティングを行った場合に, 実測値と計算値が良く一致したことから, 吸着の駆動力がボロン酸エステル結合であることがわかった。また, 計算から飽和吸着量は (114.1±2.7) mg/g, 見かけの結合定数は(2.4±0.3) × 104M-1と求まった。この値は, PVA の固体表面修飾に関する研究における飽和吸着量 (7.9±0.1) mg/g に比べ, 今回得られた PVFスポンジにおける 1a の吸着量は約 10 倍大きな値を示した。これは, スポンジが本質的にもつ大きな比表面積に起因すると考察した。
表面修飾された PVFスポンジの水中安定性および pH 安定性を調べるために, 1 M 塩酸水溶液と 0.1 M水酸化ナトリウム水溶液から pH の異なる水溶液 (pH=1, 3, 5, 7, 9, 11, and 13) を調製し, 2-1 の手順で調製した PVF/1a (10 mg) の入ったペトリ皿にそれぞれ 5 mL 加え, 浸漬 24 時間後に各スポンジの UV (365 nm) 照射下での写真撮影および蛍光スペクトル測定をおこなった。PVA は水に溶解するのに対して, PVFスポンジは水に不溶であった。さらに, PVF /1a は広範な pH 領域において,その蛍光特性を保ち, 高い安定性を示した。この結果から, ボロン酸化合物で化学修飾されたPVFスポンジは, 水中で使用可能な材料 (吸着・分離剤, 触媒, センサー, 生体材料) への応用が期待される。
上述の実験から温和な条件で PVA スポンジをボロン酸で化学修飾できることがわかった。そこで, 色素 1a, 2a および 3a の混合比を調節することによる蛍光性 PVA スポンジにおける発光色の調節を試みた。実施例5で調製した 20μMの各種色素 (1a, 2a,3a) 溶液をその全濃度が 20μMとなるように種々調節し, スポンジを浸漬させた。溶液の浸漬手順は 2-1 と同様におこなった。得られたPVFスポンジはそれぞれ PVF -cyan, PVF -magenta, PVF -yellow, PVF -white とした。それぞれ調製した溶液 (cyan:[1a] = 1.6μM, [4a] = 0 μM, [3a] = 18.4 μM, yellow:[1a] = 19.2μM, [4a] = 0.8μM, [3a] = 0μM, magenta:[1a] = 0μM, [4a] = 16.0μM, [3a] = 4.0μM, white:[1a] = 2.4μM, [4a] =1.6μM, [3a] = 16.0μM) を用いて得られたスポンジの実体顕微鏡像, 色度座標へのプロットから発光色の調節が示された。この実験から, PVA スポンジに複数のボロン酸を, その比率をファインチューニングしながら化学修飾できることが示された。
金属イオンに蛍光応答する分子を化学修飾することによる PVA スポンジのケモセンサー材料としての応用可能性を検討した。この調査では上記ボロン酸キノリン誘導体を用いた。PVFスポンジ に色素5を吸着されてなる (PVF /5) に, スポンジに吸着した5の吸着量に対して 2 当量の各種金属イオンを含む HEPES 緩衝液 (5.0×10-3M, pH 7.0, [Mn+] = 3.0×10-5 M) を 10 mL 入れ, 30 分間振とうした。 金属イオン溶液に浸漬させた PVA/4 はサンプル瓶から取り出し, 蛍光スペクトル測定, 積分球を用いた絶対発光量子収率の算出および, 暗視野における UV (365 nm) 光照射時の写真撮影をおこなった。また, PVF /5の亜鉛イオンに対する蛍光応答の速度を調査した。その結果、用いた金属イオン:Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Zn2+, Cd2+, Hg2+, Al3+, Pb2+の過塩素酸水和物亜鉛イオン水溶液に浸漬したスポンジにおいてのみ, キノリン由来の蛍光強度が大きく増大した。またUV (365 nm) 照射下での観察においても, 亜鉛イオンに浸漬したスポンジのみが青色に発光したことから, PVF/5を用いて亜鉛イオンを目視で容易に検出できることを見出した (この蛍光増大は, 亜鉛イオンがアミノキノリン部位に配位することにより, キノリン部位の光誘起電子移動が妨げられることによるものであると考えられる)。また, 亜鉛イオン添加前後でのスポンジの絶対量子収率は積分球を用いた蛍光測定からφFL (no metal) = 0.05,φFL (Zn2+) = 0.32 とそれぞれ求められた。PVF /5 の亜鉛イオンに対する蛍光強度は時間の経過とともに増大し, およそ30分で蛍光応答がほぼ完了することが示された。また, 亜鉛イオンと PVF/5 との反応の一次速度定数を算出したところ, k = 7.21×10-2 min-1 と求まった。
・PVF /5 の亜鉛イオンに対する蛍光強度の時間変化について (再測定)分離法を適用し, 亜鉛イオンの濃度を大過剰 (10eq.) に設定することで, 系を 1 次反応と近似した条件で再度測定をおこない, 擬一次速度定数の算出を試みた。 調製したスポンジ PVF /5 (PVF sponge: 10.0 mg, the amount of an immersed methanol solution of 5: 25 mL, 2.0×10-5 M) に, スポンジに吸着した 5 の吸着量に対して 10 当量の亜鉛イオンを含むHEPES 緩衝液 (5.0×10-3M, pH 7.0, [Zn2+] = 1.5×10-4M) を 10 mL 入れ, 振とうした。 その溶液に浸漬させた PVA/5 はサンプル瓶から取り出し, PVA/4a の亜鉛イオンに対する蛍光応答の速度を調査した。その結果、亜鉛イオン水溶液の浸漬 0~10 分間で急激に蛍光増大が観測され, その後, 蛍光強度はほぼ横ばいとなった。また, 亜鉛イオンと PVF /5 との反応の一次速度定数を算出したところ, k = 1.44×10-1 min-1と求まった。
〔参考例〕PVFスポンジの表面化学修飾においてボロン酸基の重要性を見るために、通常PVA の化学修飾に用いられている官能基について, その化学修飾法を調査した。 他の置換基について PVA への化学修飾法PVA の水酸基を修飾できる官能基として, ホルミル基, イソシアネート基, 酸クロリド, ハロゲン化アルキルについて調査した。反応温度はどの官能基においても差異はないが, ホルミル基やハロゲン化アルキルでは, 触媒として酸, あるいは反応で発生する酸のカウンターとして塩基を必要とする。また, 酸クロリドやイソシアネートでは, 酸や塩基の添加は必要ないが, 反応性が高いがゆえに水やアルコールとも反応するので, それらを化学修飾するためには脱水条件が必要不可欠である。一方, ボロン酸の使用は酸や塩基を使用せず, 溶媒としてアルコールを使用でき, 脱水条件は必要としない。したがって, ボロン酸以外のここに挙げた官能基では, 酸や塩基の添加や脱水条件などが必須であるため, 固体 PVA の機能化において, ボロン酸の使用が最適であると考えた。
〔比較対象例〕・ホルミル基をアンカー部位として用いた色素を用いた PVA スポンジへの吸着特性調査 ホルミル基を有する BODIPY 誘導体(1c)を用いてボロン酸基をもつ 1a の吸着と同様の吸着実験を試み, ボロン酸基をアンカー部位として用いた場合の有用性について調査した。調製は PVA スポンジを10 mg となるようにカットして, 各色素 のメタノール溶液 (20 x 10-6 M, 25 mL) にそれぞれ室温で,15 時間浸漬することでおこなわれ, 得られたスポンジをそれぞれ, PVF /1a, PVF/1cとした。
Figure 0007026454000014
得られたスポンジの蛍光灯および UV 光 (365 nm) 照射下における写真, それらスポンジの蛍光スペクトルの結果から, PVA スポンジにボロン酸が吸着する条件ではホルミル基すなわちアルデヒドが吸着できないことがわかった。PVF /1a の XPS 測定 (キャラクタリゼーションの一環)PVF スポンジ (100 mg) を 1a 又は1cのメタノール溶液 (1.5×10-4M, 250 mL) に 15 時間浸漬して, 測定サンプルを得た。その結果、1cのメタノール溶液 に浸漬したPVF スポンジにおいては, 酸素や炭素に由来するピーク(O1s: 532
eV, C1s: 284 eV) のみが観測された。一方 PVF /1a においては, 酸素や炭素に由来するピーク (O1s: 532 eV, C1s: 284 eV) に加え, 1a の構成要素であるフッ素や窒素, ホウ素に由来するピーク (F1s: 686 eV , FKLL: 599 eV , N1s: 399 eV , B1s: 191 eV) が観測された。
・表面被覆率これまでの結果から, PVA に対する 1a の飽和吸着量 q=114.1 mg/g, PVA の比表面積 VPVA=1.69 m2/g-1が算出された。一方, 理論計算の最適化構造より, 1a の体積は 423.579 Å3と算出された。ここで, 1a を球と仮定し, その時の半径 (Onsager radius) から断面積 (V1a) を求めた。r = [(3×423.579)÷(4π)]1÷3= 4.66 (Å)∴V1a= πr2= π × (4.66)2= 68.22 (Å) = 0.68 (nm2/molecule)これらの値から飽和吸着時における 1a の表面被覆率を算出した。114.1 (mg/g) × 10-3÷ 474.12 (g/mol) × 6.02 × 1023(molecule/mol) = 1.45 × 1020(molecule/g)1.69 (m2/g) × 1018= 1.69 × 1018(nm2/g)∴ 0.68 (nm2/molecule)× 1.45 × 1020(molecule/g) ÷ 1.69 × 1018(nm2/g) × 100 (%)= 5.8 × 104(%)表面被覆率が 100%を超えた理由はさだかではないが、PVA の固体中に色素溶液がいくらか浸透し, 内部の PVA も多少化学修飾されたか、PVA 鎖が表面にブラシのように出ており, そこに色素が結合して修飾されたものと考えられる。
〔試験例〕細胞培養実験1a (2.0×10-5 M) と, ボロン酸基をもつリジン誘導体 6 (2.0×10-4M) のメタノール溶液 (25 mL)を PVA スポンジ (10 mg) に 2 時間浸漬させた。得られたスポンジ (PVA/1a/6) は溶液から取り出し, メタノール, エタノール, 蒸留水で洗浄した。そのPVA/1a/6 (2 mm×2 mm×1 mm) をマイクロプレートに置き, 200 マイクロL の細胞懸濁液 (5×105cell/mL のフェノールレッド-フリーD-MEM 溶液) を加え, 5%CO2, 37℃条件下, 1, 3, 7 日間培養した。培養後のスポンジは, PBS (リン酸緩衝生理食塩水) で洗浄し, 生細胞染色剤である Hoechst (1 mM) で 30 分間培養した。再び PBS でスポンジを洗浄後, フェノールレッド-フリーD-MEM を用いて 14 mm のガラスボトムディッシュ上に置き, 共焦点レーザー顕微鏡で観察した。コントロール実験として,PVA/1a でも同様の操作をおこなった。PVA/1a/6 において細胞の接着が見られ, 時間の経過とともにスポンジ表面上での細胞の増殖が確認された。 この接着は, スポンジ表面に固定化されたリジンに起因する正電荷が細胞と静電的な相互作用により導びかれたものと考えられる。一方, PVA/1a ではほとんど細胞が接着されなかった。 この結果から, 得られた表面修飾スポンジが三次元培養できる基材としての応用可能性が示された。
〔実施例8〕様々なボロン酸色素をインクに用いたポリビニルアルコール薄膜表面の化学修飾 スライドガラス上にシリコン型 (枠内:8 mm×34 mm×1 mm) を置き, その中へ赤色蛍光をもつローダミンのボロン酸誘導体(4a)のメタノール溶液(本発明の表面修飾剤、濃度0.5×10-4M、粘度0.55cp)を図25に示す表面修飾器としてのマーカーペンに充填した。得られた表面修飾剤が液剤として収容されたマーカーペンを用いて、ポリビニルアルコール (PVA) 薄膜の表面に塗布した。なお、本例では、PVA水溶液 (5.66 wt%, 0.3mL) をキャストし、加熱乾燥することで得られる膜厚が36 μmの無色透明薄膜をPVA薄膜として用いた。塗布後の薄膜を大気中、室温下で静置した。5分後に薄膜をメタノール (25 mL) で洗浄し、洗浄後の薄膜をドライヤーで乾かした。得られた薄膜の紫外可視吸収スペクトルから得られる571nmの吸光度と4aのメタノール中におけるモル吸光係数 (1.3×105 Lmol-1cm-1) を用いて, Meyer’s method (Γ=Abs/ε×10-3) から, 4aの固定化量は2.20×10-9 mol/cm2 (1.32×1015個/cm2) と求まった。ボロン酸基を持たない参照化合4bのメタノール溶液(本発明の表面修飾剤、濃度0.5×10-4M、粘度0.55cp)を図25に示す表面修飾器としてのマーカーペンに充填した。得られた表面修飾剤が液剤として収容されたマーカーペンを用いて、ポリビニルアルコール (PVA) 薄膜の表面に塗布した。塗布後の薄膜を大気中、室温下で静置した。5分後に薄膜をメタノール (25 mL) で洗浄し、洗浄後の薄膜をドライヤーで乾かした。得られた薄膜の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、4bに起因する571nmのピークはまったく検出されず,4bは表面に結合しないことが示された。同様にして種々の色素を用いた PVA薄膜の表面修飾をおこなった。1a, 1b, 3a, 3b のメタノール溶液(本発明の表面修飾剤、濃度0.5×10-4M、粘度0.55cp)を図25に示す表面修飾器としてのマーカーペンに充填した。得られた表面修飾剤が液剤として収容されたマーカーペンを用いて、ポリビニルアルコール (PVA) 薄膜の表面に塗布した。その結果、ボロン酸基を持つ 1a, 3a において有意な吸着が確認された。一方、ボロン酸基を有しない1b、3bにおいては吸着していなかった。すなわち、表面修飾剤が液剤として収容されたマーカーペンを用いたPVA薄膜の化学修飾は、種々のボロン酸化合物に適用可能であることがわかった。
〔実施例9〕フルオロアルキル基を持つボロン酸をインクに用いたポリビニルアルコール薄膜表面の撥水化
フルオロアルキル基を持つボロン酸 (7)のメタノール溶液(本発明の表面修飾剤、濃度0.5×10-3M、粘度0.55cp)を図25に示す表面修飾器としてのマーカーペンに充填した。得られた表面修飾剤が液剤として収容されたマーカーペンを用いて、ポリビニルアルコール (PVA) 薄膜の表面に塗布した。なお、本例では、ベンゼン-1,4-ジボロン酸でPVAを架橋した薄膜を用いた。塗布後の薄膜を大気中、室温下で静置した。5分後に薄膜をメタノール (25 mL) で洗浄し、洗浄後の薄膜をドライヤーで乾かした。
このようにして得られた薄膜 (7/PVA フィルム) と未処理のPVA薄膜 (PVA フィルム) について、水の接触角を測定した。未処理のPVA薄膜 (PVA フィルム) を用いたときの接触角は38度となり、PVA filmは親水性をもつことが示された。一方、7を塗布した薄膜 (7/PVA フィルム)では、接触角が85度となり、その表面が撥水性をもつことが示された。このように,フルオロアルキル基を持つボロン酸をインクに用いることで、ポリビニルアルコール薄膜の表面を簡便に撥水化できることがわかった。

Claims (4)

  1. ボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなる、ケン化度が40~94%であるポリビニルアルコールからなる固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤。
  2. 上記ケン化度が85~94%である請求項1記載の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤。
  3. ケン化度が40~94%であるポリビニルアルコールからなる固体ポリビニルアルコールにボロン酸誘導体を溶剤に溶解してなる表面修飾剤を作用させる、固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法であって、
    上記ボロン酸誘導体は、下記化学式1a、1b、3a、3b、4a、4b、5、6及び7で表される化合物からなる群より選択される1つ以上を含み
    Figure 0007026454000015

    上記表面修飾剤中における上記ボロン酸誘導体濃度は、1.0×10-7M(上記溶液中における上記ボロン酸誘導体のモル濃度)~5.0×10-4Mであり、
    粘度は、0.5~30cPである、
    固体ポリビニルアルコールの表面修飾方法
  4. 使用者の手で保持するための保持部と、該保持部に設けられた、液剤を収容する液剤収容部と、該液剤収容部に連通されて対象物に該液剤を塗工する吐出部とを具備し、該液剤が請求項1記載の固体ポリビニルアルコールの表面修飾剤を含み、上記吐出部はフェルト材からなるか又はボール材からなることを特徴とする、固体ポリビニルアルコールの表面修飾器。
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