JP7017303B2 - アッパー部材、靴、ソール部材、及び、アッパー部材の製造方法 - Google Patents
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Description
この履物物品は、甲部が、機械的に操作された少なくとも1本の糸から形成された編み要素を含み、編み要素が、第1の層および第1の層と少なくとも部分的に同一の広がりを持つ第2の層を有する領域を有し、第1の層が第2の層と一体の構成で形成され、第2の層が第2の層の両側で第1の層に連結される、甲部と、甲部に固定されたソール構造とを有する。
更に、特許文献1の履物物品は、上述した縫い合わせのために、布地が重なる部分が必ず生じ、この重なる部分によって、使用者における違和感を生じ易くなる。
これは同時に、縫い合わせが必須でないため、布地が重なって生じる段差がないことを意味しており、使用者Uの足Fには、段差による違和感を生じ難くなる。
つまり、「製造工程・製造コストの低減」と「使用者の違和感の抑制」の両立が可能となる。
このように編地2が伸びた状態の靴20を履いて使用者Uが走行した時には、この爪先・MP異伸度部4dが屈曲しても、伸びていた編地2(爪先・MP異伸度部4d)が元に戻るに過ぎないため「皺」が生じ難い。
この「皺の抑制」により、靴20を履いた使用者Uが感じる走行時の不快感や、違和感を低減できる。
尚、熱融着性部分5aの含有率Gが60質量%を越えた場合には、保形効果は大きい(又は、横ブレ性及び保形性は高い)ものの、風合いが硬くなり、履き心地を阻害する。
一方、熱融着性部分5aの含有率Gが20質量%を下回った場合には、十分な保形効果(又は、十分な横ブレ性及び保形性)が得られない。
尚、本発明における「アッパー部材1の前後方向長さ1L」とは、アッパー部材1をソール部材30に取り付ける前(アッパー部材1が単独で存在している時(一旦、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた後に、敢えてソール部材30から取り外した時も含む))の当該アッパー部材1の前後方向長さ1Lを意味する。
同様に、本発明における「ソール部材30の前後方向長さ30L」とは、アッパー部材1をソール部材30に取り付ける前(アッパー部材1が単独で存在している時(一旦、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた後に、敢えてソール部材30から取り外した時も含む))の当該ソール部材30の前後方向長さ30Lを意味する。
尚、上記第1~7の何れかの特徴を有したアッパー部材と、使用者が履く靴のソール部材であって、当該ソール部材の踵側の周縁から立設したヒールカウンターを有し、このヒールカウンターには、当該ヒールカウンターを上方から切り欠く切欠部が形成されているソール部材を備えていても良い。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1~5には、本発明に係るアッパー部材1が示されており、このアッパー部材1は、使用者Uが履く靴20の一部である。
この靴20におけるアッパー部材1は、使用者Uの足Fを覆う部分であることから、まずは、靴20を履く使用者Uの足Fについて、以下に詳解する。
図2、3に示したように、使用者Uの足Fは、爪先Tから踵(かかと)Hに向かって順番に、指骨、中足骨、足根骨を有している。
使用者Uの足Fにおける指骨は、人差し指(第2趾)・中指(第3趾)・薬指(第4趾)・小指(第5趾)においては、爪先Tから踵Hに向かって順番に、末節骨と中節骨と基節骨で構成されているものの、親指(第1趾)においてだけは、中節骨がなく、末節骨と基節骨で構成されている。
尚、上述したように、親指は、末節骨と基節骨で構成されるため、これらの間にある趾節間関節(InterPhalangeal joint (IP関節))のみを有している。
尚、足FにおけるMP関節は、詳解すれば、親指の基節骨(第1基節骨)と親指に対応する中足骨(第1中足骨)の間にある関節と、人差し指の基節骨(第2基節骨)と人差し指に対応する中足骨(第2中足骨)の間にある関節と、中指の基節骨(第3基節骨)と中指に対応する中足骨(第3中足骨)の間にある関節と、薬指の基節骨(第4基節骨)と薬指に対応する中足骨(第4中足骨)の間にある関節と、小指の基節骨(第5基節骨)と小指に対応する中足骨(第5中足骨)の間にある関節を合わせた関節であると言え、手におけるMP関節(中手指節間関節(MetaCarpoPhalangeal joint (MCP関節))と区別するためMTP関節とも言う。
ここで、足Fにおける左右方向とは、後述する足Fの前後方向Lに対して、当該前後方向Lが略沿う水平面内で、略直交する方向であるとも言える。
一方、足Fにおける上下方向とは、後述する足Fの前後方向Lに対して、当該前後方向Lが略沿う鉛直平面内で、略直交する方向であるとも言える。
足Fの足根骨における関節は、爪先Tから踵Hに向かって順番に、中足骨(親指・人差し指・中指・薬指・小指に対応する5本の中足骨)と足根骨(内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨・立方骨)の間にあるリスフラン関節や、足根骨内における(立方骨及び舟状骨と距骨及び踵骨の間にある)ショパール関節などを有している。
又、ショパール関節は、舟状骨と距骨の間にある距舟関節と、立方骨と踵骨の間にある踵立方関節を合わせた関節であると言え、横足根関節とも言う。
その他、使用者Uの足Fの足根骨における関節は、上述したリスフラン関節やショパール関節以外にも、外側楔状骨と立方骨の間にある楔立方関節や、楔状骨(内側楔状骨・中側楔状骨・外側楔状骨)と舟状骨の間にある楔舟関節、距骨と踵骨の間にある距骨下関節などを有している。
図2、3に示したように、本発明における使用者Uの足Fの「前後方向L」とは、使用者Uの足Fにおける爪先T(親指・人差し指・中指・薬指・小指のうち、最も前方へ突出した指の先端)と踵H(踵Hにおいて最も後方へ突出した先端)を結ぶ方向を意味する。
よって、使用者Uの足Fは、前後方向Lに沿って前から順番に(爪先Tから踵Hに向かって順番に)、MP関節、リスフラン関節、ショパール関節を有していると言える。
又、本発明では、このような使用者Uの足Fについて、その一方の側部をFS1とし、足Fの底部をFB、他方の側部をFS2とする。
図2、3に示したように、本発明における使用者Uの足Fの「足胴回りW」とは、使用者Uの足Fにおける一方の側部FS1から底部FBを経由して他方の側部FS2までを少なくとも含む部分を意味する。
詳解すれば、足胴回りWは、上述した使用者Uの足Fの前後方向Lの各位置に応じており、例えば、足Fの爪先T近傍(爪先TからMP関節まで)における足胴回りWとは、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の一方側の側部FS1(親指の一方側の側部)から、親指・人差し指・中指・薬指・小指の底部FBを経由して、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の他方側の側部FS2(小指の他方側の側部)も経由して、親指・人差し指・中指・薬指・小指の上部FTも含み、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の一方側の側部FS1まで1周して戻ってくるまでを含む部分であると言える。
一方、足Fの足首下方部分から踵Hまで(ショパール関節から踵Hまで)における足胴回りWとは、足首下方部分の一方側の側部FS1から、足首下方部分の底部FBを経由して、足首下方部分の他方側の側部FS2までを含む部分と言え、足首下方部分の上部は当然含まない(つまり、1周して戻ってはこない)。
詳解すれば、足Fの爪先T近傍における足胴回り方向Cとは、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の一方側の側部FS1から、親指・人差し指・中指・薬指・小指の底部FBと、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の他方側の側部FS2と、親指・人差し指・中指・薬指・小指の上部FTを経由して、親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の一方側の側部FS1の各表面まで略沿って戻る(1周回る)周方向であると言える。
一方、足Fの足首下方部分から踵Hまでにおける足胴回り方向Cとは、足首下方部分の一方側の側部FS1から、足首下方部分の底部FBを経由して、足首下方部分の他方側の側部FS2までの各表面に略沿う周方向であり、足首下方部分の上部は当然略沿わない(つまり、1周回る周方向ではない)。
図2、3、7に示すように、アッパー部材1の前後方向L’は、当該アッパー部材1が足Fを覆った際、その足Fの前後方向Lに略沿う方向であると言えると共に、アッパー部材1における爪先部分1t(爪先部分1t(編地2の爪先部分2t)において最も前方へ突出した部分の先端)と踵部分1h(踵部分1h(編地2の踵部分2h)において最も後方へ突出した部分の先端)を結ぶ方向であるとも言える。
又、アッパー部材1の前後方向長さ(前後長さ)1Lは、当該アッパー部材1が足Fを覆った際、当該アッパー部材1における足Fの前後方向Lに略沿った長さであるとも言えると共に、アッパー部材1における爪先部分1t(爪先部分1tにおいて最も前方へ突出した部分の先端)から踵部分1h(踵部分1hにおいて最も後方へ突出した部分の先端)までの長さとも言える。
ここで、本発明における「アッパー部材1の前後方向長さ1L」とは、アッパー部材1をソール部材30に取り付ける前(アッパー部材1が単独で存在している時(一旦、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた後に、敢えてソール部材30から取り外した時も含む))の当該アッパー部材1の前後方向長さ1Lを意味し、当該アッパー部材1に後述する加熱成形をした後におけるアッパー部材1の前後方向長さ1Lであっても、当該加熱成形をする前におけるアッパー部材1の前後方向長さ1Lであっても良い。
尚、アッパー部材1である一体編成された編地2が、後述するように、丸編で構成されている場合には、アッパー部材1(編地2)の前後方向L’が丸編のコース方向であり、アッパー部材1(編地2)の前後方向長さ1Lが丸編のコース方向長さである。
その他、アッパー部材1における左右方向とは、上述したアッパー部材1の前後方向L’に対して、当該前後方向L’が略沿う水平面内で、略直交する方向であるとも言える。
図2、3、7に示すように、アッパー部材1の足胴回り方向C’は、当該アッパー部材1が足Fを覆った際、その足Fの足胴回り方向Cに略沿う方向であり、アッパー部材1の足胴回りW’は、当該アッパー部材1が足Fを覆った際、その足Fの足胴回り方向Cに略沿った長さであるとも言える。
尚、アッパー部材1である一体編成された編地2が、後述するように、丸編で構成されている場合には、アッパー部材1(編地2)の足胴回り方向C’がウェール方向であり、アッパー部材1(編地2)の足胴回りW’がウェール方向長さである。
図1~5に示されたように、編地2は、アッパー部材1として一体編成されており、この編地1枚で、上述した使用者Uの足Fの全体を覆っている。
つまり、編地2は、使用者Uの足Fの前後方向Lにおける全ての位置で、使用者Uの足Fにおける一方の側部FS1から底部FBを経由して他方の側部FS2までを少なくとも含む足胴回りWを覆っていると言える。
編地2は、足Fの甲部分に対しては、甲部分の一方側の側部FS1から、甲部分の底部FBと、甲部分の他方側の側部FS2と、甲部分の上部FTを経由して、甲部分の一方側の側部FS1の各表面までを、1周回る部分(略筒状の中筒部分2b)で覆っていると言える。
このようにアッパー部材1を編地2で一体編成し、この編地2で、使用者Uの足Fの前後方向Lにおける全ての位置で、使用者Uの足Fにおける一方の側部FS1から底部FBを経由して他方の側部FS2までを含む足胴回りWを覆うことにより、換言すれば、編地2は、使用者Uの足Fに対して、前後方向L及び足胴回り方向Cの段差なく接することとなる。
これは同時に、縫い合わせが必須でないため、布地が重なって生じる段差がないことを意味しており、使用者Uの足Fには、段差による違和感が生じ難くなる。
つまり、「製造工程・製造コストの低減」と「使用者の違和感の抑制」の両立が可能となる。
又、編地2は、上述した編組織を複数重ねて、一部又は全部を構成しても(2重編地や3重編地などでも)良いが、上述した編組織1重で構成して、軽量化を図っても構わない。
このように、1つの編地2が一体編成されているため、多種の材料を積層せず、又、接着剤も使用しないことから、常に外気を取り入れ易く、靴20内部の湿気を放出し易く、蒸れを抑制できる。更には、編地2は、複数種の糸で一体編成されていることから、交編素材であるとも言え、靴20内の汗を発散し易く、水に濡れても排水性が良いため、乾燥も速いに優れているため、靴20内を快適に保ち易い。
尚、編地2は、羽根部分10やタン部分11を有していても良い。
又、編地2の重量も、特に限定はないが、例えば、15g以上35g以下、好ましくは18g以上32g以下、更に好ましくは20g以上30g以下(25gなど)であっても良い。
尚、編地2における一体編成の開始部分は、使用者Uの足Fの爪先T側を覆う爪先部分2tであっても良い(図1~5)。
つまり、編地2を、爪先部分2tから踵部分2hにかけて一体編成しても良く、最初に編成するこの爪先部分2tから、その他の部分を放射状に編成(連結)しても構わない。
又、爪先部分2tは、換言すれば、編地2において最も前方へ突出した部分である。
このように、編目の数が少なければ、爪先部分2tの具体的な編目の数は何れでも良いが、例えば、編地2の前後方向L’(コース方向)においては、5コース以上であったり、編地2の足胴回り方向C’(ウェール方向)においては、3ウェール以上であっても良い。
このように、編地2における一体編成の開始部分を、その他の部分より使われる糸の総繊度が小さい、又は、編目の数が少ない爪先部分2tとすることで、この爪先部分2tを、最初に一体編成される爪先部分2tを土台と出来、その後に編成される爪先部分2t以外の部分を安定して編成できる。
又、編地2における踵部分2hは、左右幅が少なくとも5ウェール分(編目5つ分)の部分が、上下方向に略沿って伸び、使用者Uの足Fの踵H後面を覆っていても良い。
更に、踵部分2hのうち、編地2(アッパー部材1)をソール部材30に取り付けた際に出来る当該ソール部材30の踵部分上縁(後述するヒールカウンター32の上縁)とアッパー部材1の境界近傍部分(編地2(アッパー部材1)をソール部材30に取り付けた際に、当該ソール部材30の踵部分上縁(ヒールカウンター32の上縁)に当るアッパー部材1の部分)については、おって詳解するが、少なくとも後述のPU糸を含むこととしても良い。
これまでとは逆に、編地2を、踵部分2hから爪先部分2tにかけて一体編成しても良く、最初に編成する踵部分2hを、その他の部分より使われる糸の総繊度を小さく、又は、その他の部分より所定長さにおける編目の数を少なくすることによって、最初に一体編成される踵部分2hを土台と出来、その後に編成される踵部分2h以外の部分を安定して編成できる。
これ以外にも、編地2の一体編成の開始部分を、上方開口した履き口2rとし、この履き口2rから使用者Uの足Fの底部(裏)FB側を覆う足裏部分2sにかけて(平面視で当該履き口2rの周方向に沿って足Fを回るように)一体編成しても良い。
又、これとは逆に、編地2の一体編成の開始部分を、上述した足裏部分2s(特に、足裏部分2の左右方向中央部)とし、この足裏部分2sから上述の履き口2rにかけて(使用者Uの平面視における足Fの周方向に沿って、当該足Fを回るように)一体編成しても良い。
編地2において、使用者Uの踵H側を覆う踵部分2hの後面(踵後面)2h’は、その構成に特に限定はないが、例えば、この踵後面2h’が前傾していても良い。
つまり、踵後面2h’は、側面視において、踵後面2h’の上端が踵後面2h’の下端より前方に位置していると言え、更に換言すれば、踵後面2h’は、側面視において、踵後面2h’の何れか(任意)の部位が、当該部位より下方にある部位より前方に位置しているとも言える。
ここで、本発明における「踵前傾角度α」とは、上述したように、側面視において、踵後面2h’の上端と踵後面2h’の下端とを結ぶ直線と、鉛直方向とが成す角度であったり、側面視において、踵後面2h’の何れか(任意)の部位と当該部位より下方にある部位とを結ぶ直線と、鉛直方向とが成す(との間の)角度であっても良く、又、「踵前傾角度α」とは、側面視において、踵後面2h’の何れか(任意)の部位(点)における接線と、鉛直方向とが成す角度であっても構わない。
その他、「踵前傾角度α」とは、特に、踵後面2h’の中途部又は下部2h”が鉛直方向と成す角度であっても良く、側面視において、踵後面の中途部又は下部2h”の上端と踵後面の中途部又は下部2h”の下端とを結ぶ直線と、鉛直方向とが成す角度であったり、側面視において、踵後面の中途部又は下部2h”の何れか(任意)の部位と当該部位より下方にある部位とを結ぶ直線と、鉛直方向とが成す角度であったり、側面視において、踵後面の中途部又は下部2h”の何れか(任意)の部位(点)における接線と、鉛直方向とが成す角度であっても良い。
更に、本発明における「踵前傾角度α」とは、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた後における上述した何れかの踵前傾角度αであったり、アッパー部材1をソール部材30に取り付ける前であっても、アッパー部材1に対して後述する加熱成形をした後における上述した何れかの踵前傾角度αであったり、当該加熱成形をする前における上述した何れかの踵前傾角度αであっても良い。
このような踵後面2h’の踵前傾角度αを65°以上85°以下とすることで、靴20を履く使用者Uの足Fが、当該靴20から脱げにくくなると同時に、使用者Uの踵Hに対する締付けを過度に強くしなくとも良くなる(「靴脱げ抑制」と「踵締付け適正化」の両立が図れる)。
図1~5に示すように、異編部3は、その編組織、編目の数、編目の大きさ、及び、使われる糸のうち少なくとも1つがその他の部分と異なる部分である。
異編部3は、上述した一体編成の開始部分である編地2における爪先部分2tや踵部分2h、履き口2r、足裏部分2sのように、その他の部分より使われる糸の総繊度が小さくした、及び/又は、その他の部分より所定長さにおける編目の数が少なくした疎異編部3aを含むと共に、以下に述べる異伸度部4も含む。
図1~5に示すように、異伸度部4は、編地2において、その他の部分と伸度Dが異なる部分である。
つまり、編地2は、一体編成されているが、その伸度Dが全体で一様でなくとも良く、編地2の一部が、その他の部分より伸度Dが低かったり、その他の部分より伸度Dが高い場合に、当該伸度Dの低い部分や高い部分を、異伸度部4とする。
この伸度ベース部4’は、上述した「その他の部分」であるとも言え、より詳しく述べれば、編地2において最も広い部分、又は、後述する具体的な異伸度部4a~4g以外の部分を言う。
又、異伸度部4は、後述する異伸度部4a~4gのうち、少なくとも1つを有していれば良く、更には、異伸度部4自体が、編地2において存在しなくとも良い。
異伸度部4とその他の部分の相違点が「編組織」である際に、例えば、上述した天竺編やスムース編で編地2を編成していれば、異伸度部4をスムース編として、その他の部分を天竺編としたり、又、その逆としても良い。
又、伸び抑制の異伸度部4(伸び難い異伸度部4、又は、伸び止めのための異伸度部4)であれば、スムース編を含ませたり、編目(ループ)を極力小さくしても良い。
これ以外にも、例えば、アッパー部材1である一体編成された編地2が丸編で構成されている場合には、当該編地2の足胴回り方向C’(ウェール方向)における略同じ位置にある異伸度部4とその他の部分編地2で、前後方向L’(コース方向)の所定長さにおいて、異伸度部4に使われる編目の数をその他の部分より多く又は少なくしたり、異伸度部4に使われる編目の大きさをその他の部分より小さく又は大きくしても良い。
これは逆に、所定長さで使われる編目1つ1つの大きさが大きくなれば、その編目の数は少なくなり、編目1つ1つの大きさが小さくなれば、その編目の数は多くなる傾向にあるとも言える。
又、編目の数は「度目」とも言え、JIS-L-1096:2010には、「度目」とは、1.27cm(1/2(2分の1)インチ)当りのウェ-ル数及びコ-ス数を求め、この両者の和を意味する。この度目の値も、特に限定はないが、例えば、33以上37以下(例えば、35)であっても良い。
特に、異伸度部4とその他の部分の相違点として、使われる糸の素材が異なる場合には、異伸度部4が、後述の熱融着性部分5aを有した熱融着糸5を含んでいても良い。
このような各素材の糸は、異伸度部4の位置や機能に応じて、含まれる量を変更しても構わない。
ここで、ウーリーナイロン糸について詳解すると、ウーリーナイロン糸は、通常の状態で捲縮しているため、編み上がりより編目が小さくなり、編地2にボリュームが出て風合いも向上する。
このようなウーリーナイロン糸が使われた異伸度部4(編地2)を引っ張ると、捲縮したウーリーナイロン糸が伸び且つ編目も開くため、当該異伸度部(編地2)はある程度までは伸びるが、ナイロン樹脂自体は伸び難い素材であるため、ある程度まで伸びた後は、当該異伸度部4の伸びが抑制される。
従って、異伸度部4にウーリーナイロン糸を使うことによって、当該異伸度部4は、使用者Uの走行時には適度に伸び、それ以上は伸びない(使用者Uの足Fをホールドする)という性質を持たせることが出来ると言える。
異伸度部4について、ここまで述べた編組織や編目の数、編目の大きさ、及び、使われる糸の4つの相違点は、何れか1つだけが、その他の部分と異なっていても良いが、4つの相違点のうち、2つや3つだけが同時に異なっていたり、4つ全てが異なっていても良い。
又、異伸度部4と伸度ベース部4’の境界や、異伸度部4同士の境界においては、上述した編組織や編目の数、編目の大きさ、使われる糸などを徐々に変化(連続的に変化)させても良い。
これ以外にも、異伸度部4としては、左右一対の靴20における編地2(アッパー部材1)が、左右方向の内側部分(左右の靴20で互いに近接している(向き合う)側の部分)と、左右方向の外側(左右の靴20で互いに離間している(向き合わない)側の部分)において、伸度Dが異なっていても良く、例えば、編地2の内側部分の伸度Dを、外側部分より高くしたり、又、その逆でも良い。尚、編地2における左右方向の外側(足Fの小指側)には、上述したウーリー糸を使っても良い。
ここまで述べたように、編組織や編目の数、編目の大きさ、使われる糸等がその他の部分と異なる異伸度部4を編地2に設けることで、使用者Uが靴20を履いた際に、使用者Uの足Fの皮膚に、アッパー部材1を追従させ易くなる。
ここまで述べた異伸度部4とは伸度Dによって区別されるが、ここで、この伸度D自体について述べる。
本発明において「伸度D」とは、編地2に使われている糸を、所定方向(編地2の前後方向L’(コース方向)又は足胴回り方向C’(ウェール方向))に引っ張った際の伸び易さ(伸び難さ)を意味する。
又、伸度Dは、伸び易さを表現できるのであれば何れでも良いが、例えば、JIS-K-6900:1994に規定された応力-ひずみ曲線(stress-strain curve 、SSカーブ)で表しても良い。
よって、このSSカーブにあれば、編地2に使われる糸において、伸張時に必要な応力と共に、収縮時に生じる応力も把握でき、使用者Uが靴20を履いて編地2を伸張する時に必要な応力だけでなく、靴20を履いた後に、編地2が収縮して使用者Uの足Fを拘束する様子が明確になり、アッパー部材1の伸度Dを表すものとして適切であると言える。
伸度Dを示す応力-ひずみ曲線を、例えば、縦軸に応力(単位:N(ニュートン))とし、横軸に伸長長さ(単位:m)としても良い。
このようなヒステリシスループとなる応力-ひずみ曲線(SSカーブ)で伸度Dを表した場合、その高低(大小)関係については、例えば、収縮時の傾き平均値(収縮時の区間におけるSSカーブ全体の傾き(例えば、単位はN/m)を平均した値)で高低を比較したり、その他、伸長時の傾き平均値(伸長時の区間におけるSSカーブ全体の傾きを平均した値)や、収縮時の傾き平均値と伸長時の傾き平均値を足して2で割った値などで高低を比較しても良い。
ここで、このヤング率は、JIS-K-6900:1994では「応力とひずみの商(割線弾性率)E=σ/ε、又は、応力-ひずみ曲線に対する接線(接線弾性率)E=dσ/dε」と規定されている。
このヤング率の単位は、N(ニュートン)/m2 (平方メートル)などとなる。
従って、ヤング率で伸度Dを表した場合、その高低関係についても、例えば、ヒステリシスループの収縮時の傾き平均値を表すヤング率同士で高低を比較したり、伸長時の傾き平均値を表すヤング率同士や、収縮時の傾き平均値と伸長時の傾き平均値を表す各ヤング率を足して2で割った値同士、ヒステリシスループ上の所定の点における接線の傾きを表すヤング率同士などで高低を比較することとなる。
図1~5に示されたように、リスフラン・ショパール関節異伸度部4aは、編地2における異伸度部4の1つであり、使用者Uの足Fにおける上述のリスフラン関節近傍からショパール関節近傍までの所定の前後幅4aWの部分を覆う略帯状のものである。
この前後幅4aWは、使用者Uの足Fにおけるリスフラン関節近傍からショパール関節近傍までの所定の前後方向長さの幅の部分を覆うのであれば、その値に特に限定はないが、例えば、4mm以上30mm以下(靴20の前後方向長さ20Lに対してであれば、2%以上12%以下の長さ)であっても良く、好ましくは4mm以上27mm以下(同2%以上11%以下の長さ)、更に好ましくは4mm以上24mm以下(同2%以上10%以下の長さ)でも構わない。
一方、リスフラン・ショパール関節異伸度部4aは、編地2が後述するタン部分11を有さない場合には、足Fの甲部分に対して、甲部分の一方側の側部FS1から、甲部分の底部FBと、甲部分の他方側の側部FS2と、甲部分の上部FTを経由して、甲部分の一方側の側部FS1の各表面までを覆う(つまり、足胴回り方向C’に1周回る)こととなる。
このように、最も伸度Daが低いリスフラン・ショパール関節異伸度部4aを設けることで、足Fにおいて、リスフラン関節からショパール関節の間の付近は他の部分より間隔が鈍いため、異伸度部4による拘束力を上げても問題がなく、使用者Uの足Fの皮膚に、アッパー部材1をより追従させ易くなる。
又、このような伸度D(Da)を実現するために、リスフラン・ショパール関節異伸度部4aは、後述の熱融着糸5を含んでいても良い。
図1~5に示されたように、MP関節異伸度部4bも、編地2における異伸度部4の1つであり、使用者Uの足Fにおける上述のMP関節(中足趾節間関節)から踵Hに向けた所定の前後幅4bWの部分を覆う略帯状のものである。
この前後幅4bWは、使用者Uの足FにおけるMP関節から踵Hに向けた所定の前後方向長さの幅の部分を覆うのであれば、その値に特に限定はないが、例えば、4mm以上36mm以下(MP関節から踵Hに向けて後方へ4mm以上36mm以下とも言え、又、靴20の前後方向長さ20Lに対してであれば、2%以上14%以下の長さ)であっても良く、好ましくは4mm以上33mm以下(同後方へ4mm以上33mm以下、同2%以上13%以下の長さ)、更に好ましくは4mm以上30mm以下(同後方へ4mm以上30mm以下、同2%以上12%以下の長さ)でも構わない。
尚、MP関節異伸度部4bは、編地2が後述するタン部分11の有無に関わらず、足Fの甲部分に対して、甲部分の一方側の側部FS1から、甲部分の底部FBと、甲部分の他方側の側部FS2と、甲部分の上部FTを経由して、甲部分の一方側の側部FS1の各表面までを覆う(つまり、足胴回り方向C’に1周回る)こととなる。
更に、MP関節異伸度部4bが覆う部分を詳解すれば、MP関節異伸度部4bは、使用者Uの足FにおけるMP関節自体を覆っていても、MP関節自体を覆っていなくとも良い。又、MP関節異伸度部4bが使用者Uの足FにおけるMP関節自体を覆っている場合において、当該MP関節を実際に覆っている部分の伸度Dは、連続的に(グラデーション様に)変化する構成であったり、略一様であっても良い。
このように、2番目に(又は最も)伸度Dbが低いMP関節異伸度部4bを設けることで、MP関節後方の動きを抑制して靴20の横ブレを防ぎつつ、MP関節を必要以上に拘束することはない。
又、このような伸度D(Da)を実現するために、リスフラン・ショパール関節異伸度部4aは、後述の熱融着糸5を含んでいても良い。
詳解すれば、MP関節異伸度部4bは、その伸度Dbの複数本の帯状部分と、伸度Dbより伸度Dが高い複数本の帯状部分が、前後方向に交互に配置されたもの(縞々状となったもの)全体を指しても良く、この場合の各帯状部分の前後幅は、それぞれ違っていたり、全て同じ幅であるなど何れでも構わない。
又、MP関節異伸度部4bにおける帯状部分それぞれは、何れの色であっても良く、それらの色の出現する順番や位置なども、周期的であったり、グラデーションをつける(色を連続的に変化させる)等でも良い。
図1~5に示されたように、爪先異伸度部4cも、編地2における異伸度部4の1つであり、使用者Uの足Fの爪先Tから、MP関節より爪先T寄りの位置までを覆うものである。
爪先異伸度部4cは、上述したようなリスフラン・ショパール関節異伸度部4aやMP関節異伸度部4bと同様に、所定の前後幅(前後幅4cW)を持つ略帯状であっても良い。
このとき、略台形状や略三角形状の爪先異伸度部4cにおける高さ(前後方向L’の長さ)が、上述した前後幅4cWと略同じでも構わない。
詳解すれば、爪先異伸度部4cは、使用者Uの足Fの爪先Tから、MP関節より爪先T寄りの位置までにおける、一方側の側部FS1(親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の一方側の側部FS1(親指の一方側の側部))から、底部FB(親指・人差し指・中指・薬指・小指の底部FB)を経由して、他方側の側部FS2(親指・人差し指・中指・薬指・小指を纏めた部分の他方側の側部FS2(小指の他方側の側部))までのみを覆い、上部(上面)FT(親指・人差し指・中指・薬指・小指の上部FT)は覆わなくても良い(つまり、足胴回り方向C’に1周回らなくても良い)。
これ以外にも、爪先異伸度部4cは、使用者Uの足Fの爪先Tから、MP関節より爪先T寄りの位置までにおける、一方側の側部FS1や、他方側の側部FS2、上部(上面)FTのうち、少なくとも1つを覆っても良い。
尚、爪先異伸度部4cにおいても、左右方向の外側(足Fの小指側(小指の他方側の側部)FS2)には、上述したウーリー糸を使っても良い。
ここで、前後幅4cW(高さ、又は、前後方向L’の長さ)は、使用者Uの足Fの爪先Tから、MP関節より爪先T寄りの位置までの部分を覆うのであれば、その値に特に限定はないが、例えば、4mm以上36mm以下(靴20の前後方向長さ20Lに対してであれば、2%以上14%以下の長さ)であっても良く、好ましくは4mm以上33mm以下(同2%以上13%以下の長さ)、更に好ましくは4mm以上30mm以下(同2%以上12%以下の長さ)でも構わない。
このように、3番目に(最も、又は、2番目に)伸度Dcが低い爪先異伸度部4cを設けることで、人の感覚において最も繊細な箇所の1つである足Fの爪先を過度に拘束せずに、アッパー部材1の保形効果を発揮できる。
又、このような伸度D(Da)を実現するために、リスフラン・ショパール関節異伸度部4aは、後述の熱融着糸5を含んでいても良い。
図1~5に示されたように、爪先・MP異伸度部4dも、編地2における異伸度部4の1つであり、MP関節異伸度部4bと爪先異伸度部4cの間(前後方向L’における間)に存在し、使用者Uの足FにおけるMP関節より所定の前後方向長さ(例えば、0mm以上10mm以下(靴20の前後方向長さ20Lに対してであれば、0%以上4%以下の長さ))だけ前方へ進んだ位置から、爪先Tまでの所定の前後幅4dWの部分を覆うものである。
この前後幅4dWは、使用者Uの足FにおけるMP関節から所定の前後方向長さ(だけ前方へ進んだ位置から、爪先Tにかけた所定の前後方向長さの幅の部分を覆うのであれば、その値に特に限定はないが、例えば、4mm以上36mm以下(MP関節から所定の前後方向長さだけ前方へ進んだ位置から爪先Tに向けて前方へ4mm以上36mm以下とも言え、又、靴20の前後方向長さ20Lに対してであれば、2%以上14%以下の長さ)であっても良く、好ましくは4mm以上33mm以下(同2%以上13%以下の長さ)、更に好ましくは4mm以上30mm以下(同2%以上12%以下の長さ)でも構わない。
又、爪先・MP異伸度部4dも、MP関節異伸度部4bと爪先異伸度部4cの間(使用者Uの足FにおけるMP関節より所定の前後方向長さだけ前方へ進んだ位置から、爪先Tまでの所定の前後幅4dWの部分を覆う部分)における上面ではなく、左右外側部や左右内側部、底部のうち少なくとも1つを覆っても良い。
爪先・MP異伸度部4dは、その他の部分と伸度Dが異なるのであれば、その値について特に限定はないが、伸び易い素材であるポリウレタン樹脂製の糸(PU糸)が使われている。
その結果、爪先・MP異伸度部4dの伸度Ddは、上述したリスフラン・ショパール関節異伸度部4aやMP関節異伸度部4b、爪先異伸度部4cをはじめ、それら以外の部分(その他の部分(伸度ベース部4’))より高くなるとも言える。
このように編地2が伸びた状態の靴20を履いて使用者Uが走行した時には、この爪先・MP異伸度部4dが屈曲しても、伸びていた編地2(爪先・MP異伸度部4d)が元に戻るに過ぎないため「皺」が生じ難い。
このような「皺の抑制」により、靴20を履いた使用者Uが感じる走行時の不快感や、違和感を低減できる。
尚、爪先・MP異伸度部4dは、使用者Uが履いていない時(未使用時)には、逆に凹んだ状態となっても良い。
図1~5に示したように、異伸度部4は、上述したリスフラン・ショパール関節異伸度部4aやMP関節異伸度部4b、爪先異伸度部4c、爪先・MP異伸度部4d以外の異伸度部を有していても良く、例えば、足Fの左右の側部を覆う異伸度部4(サイド異伸度部4e)を有していても良い。
このサイド異伸度部4eは、足Fの甲部分の上部から、左右の踝(くるぶし)近傍を通る前後方向L’に略沿った所定の前後方向長さを持つ部分を覆うものである。
サイド異伸度部4eにおける前端や後端の位置を詳解すれば、まず、サイド異伸度部4eにおける前端は、後述するシューホール(貫通孔)10aにおいて最も上方に位置するもの(第1ハトメとも言う)の近傍であったり、この第1ハトメの後方に隣接する部分であっても良い。一方、サイド異伸度部4eにおける後端は、足Fの踝近傍としたり、この踝よりも後方に位置していても良い。
又、サイド異伸度部4eは、甲部分の上部から左右の踝近傍までを覆うものであったり、甲部分の上部から左右の踝近傍までを覆い且つ踝近傍でカーブして上下方向に略沿った部分を覆うものであっても良い。
この履き口異伸度部4fに使われる糸は、特に限定はないが、例えば、ゴム糸(PU糸など)であっても良い。
この履き口・踵異伸度部4gも、使われる糸に特に限定はないが、例えば、ゴム糸(PU糸など)であっても良い。
図6等に示したように、熱融着糸5は、上述した異伸度部4に使われる糸の1種である(つまり、熱融着糸5は、異伸度部4に使われる糸として含まれている)。
熱融着糸5は、熱融着性部分5a及び非熱融着性部分5bを有している。
そこで、まず熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bについて述べる。
図6等に示したように、熱融着糸5における熱融着性部分5aは、熱処理をすることで溶融する部分であって、後述する非熱融着性部分5bより融点が低い。
この熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bの素材は、非熱融着性部分5bの方が先に熱処理によって溶融する(換言すれば、熱融着性部分5aより非熱融着性部分5bの融点の方が低い)のであれば、特に限定はないが、例えば、熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bが、ポリエチレン(PE)樹脂とポリプロピレン(PP)樹脂であっても良い。
このような熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bが、1本の熱融着糸5において所定の割合(含有率G)で存在する。
熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gとは、1本の熱融着糸5における熱融着性部分5aの質量を、熱融着糸5における熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bを合計した質量で割った値を100倍したものである。
この含有率Gは、後述の実施例1-1~1-4にて詳解するが、20質量%以上60質量%以下であっても良く(後述する実施例を参照)、好ましくは30質量%以上50質量%以下、更に好ましくは35質量%以上45質量%以下(39.7質量%や、40質量%など)であっても構わない。
逆に言えば、この場合、熱融着糸5における非熱融着性部分5bの含有率G’は、0質量%より大きく20質量%未満且つ60質量%より大きく100質量%未満となる。
尚、熱融着性部分5aの含有率Gが60質量%を越えた場合には、保形効果は大きい(又は、横ブレ性及び保形性は高い)ものの、風合いが硬くなり、履き心地を阻害する。
一方、熱融着性部分5aの含有率Gが20質量%を下回った場合には、十分な保形効果(又は、十分な横ブレ性及び保形性)が得られない。
例えば、熱融着糸5が芯鞘構造であれば、融点の異なる熱融着性部分5aと非熱融着性部分5bのうち、融点がより高い非熱融着性部分5bを芯とし、融点がより低い熱融着性部分5aを鞘として、1本の糸(単繊維)中に芯と鞘の状態で紡糸することで形成される。
次に、熱融着糸5がカバリング構造である場合について、以下に述べる。
図6等に示したように、熱融着糸5は、非熱融着性部分5bである芯糸5Bに対して、熱融着性部分5aである鞘糸5Aを巻き付けたカバリング構造であっても良い。
このようなカバリング構造とすることによって、熱融着性部分5aが連続せず繊維上(芯糸5Bの表面上)に点在した状態で残るため、この点在する熱融着性部分5aによりアッパー部材1の保形効果を発揮すると同時に、使用者Uが靴20を履いて走行している際に発生する融着部分の崩壊・破断が抑制され、アッパー部材1の寸法が所定距離延びた後には、殆ど変化しない。
このようにすることで、点在する熱融着性部分5aによりアッパー部材1の保形効果を発揮することと、走行時に発生する融着部分の崩壊・破断の抑制が、バランス良く実現できる。
図1~5に示したように、羽根部分10は、靴20の靴紐31を通すシューホール10aを備えたものであって、編地2に一体編成されている。
羽根部分10は、シューホール10aを備え、編地2に一体編成されていれば、その構成に特に限定はないが、例えば、成形前(加熱成形前、又は、加熱成形後でも2重等になった羽根部分10を開いた時(成形を解いた時))は、この羽根部分10も含めた編地2全体では、使用者Uの足Fの前後方向Lにおける全ての位置で、使用者Uの足Fにおける一方の側部FS1から底部FBを経由して他方の側部FS2までを少なくとも含む足胴回りCを覆い、編地2は、使用者Uの足Fに対して、前後方向L及び足胴回り方向Cの段差なく接する構成としても良い。
このように、重ね合せられた際には、羽根部分10自体だけでなく、後述するシューホール10aも、2つ(又は3つ以上)が1つに重なるように構成する。
又、羽根部分10において、成形時に山折り(又は谷折り)をする部分(尾根部分又は谷部分)は、その周囲の部分より、疎に編んでいても良い(編目を大きくしても良い)。
これにより、羽根部分10における折り目(尾根部分等)を認識し易く、又、折り易くなる。
このように、シューホール10aを備えた羽根部分10が、編地2に一体編成で設けられることによって、羽根の生地を縫い合わす必要がなく、更に製造工程・製造コストを低減できると共に、羽根の生地との縫い合わせで生じる段差がないため、より違和感が生じ難くなる。
図1~5に示したように、シューホール10aは、羽根部分10に設けられ、靴20の靴紐31を通す貫通孔である。
シューホール10aは、靴紐31を通せるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、羽根部分10が成形される前から、編地2の足胴回り方向C’(ウェール方向)に孔が、2つで1対となるように形成されていても良い。
尚、上述したように、羽根部分10が3重以上に重ね合さるように成形される場合には、同様に、足胴回り方向C’(ウェール方向)に3つ以上の孔を形成し、3つ以上の各孔の中間点を結ぶ線で山折り又は谷折りする成形を、羽根部分10に行うことで、1つのシューホール10aを形成しても良い。
各シューホール10aの直径も、特に限定はないが、例えば、例えば、編目を幾つか飛ばして(前後方向L’(コース方向)及び/又は足胴回り方向C’(ウェール方向)に幾つか飛ばして)、3mm以上5mm以下(4mm程度)であっても良い。
ここで、編目を飛ばすとは、シューホール10aとなる位置に本来あるはずの編目(例えば、2つ)を、隣接する編目と重なるような位置に移動させることを意味したり、又は、シューホール10aとなる位置に本来あるはずの編目を、ループではなく、直線状の浮き糸(浮き目)を形成させることを意味しても良い。
これによって、シューホール10aを通る靴紐31が引っ張られた際に、シューホール10aに負荷がかかっても、編目(シューホール10a自体)の崩れを抑制できる。
又、一番下の第1ハトメ部分(一番下のシューホール10a周辺部分)は、靴紐31を通した際に持ち上がり易くするために、その他の部分(他のハトメ部分)よりも伸び易くしても良い。
図1~5に示したように、タン部分11は、使用者Uの足Fの上面(上部)FTを覆う舌片状のものであって、編地2に一体編成されている。
タン部分11は、使用者Uの足Fの上面(上部)FTを覆う舌片状のものであれば、その構成に特に限定はないが、例えば、その他の部分より所定長さにおける編目の数が少なく一体編成(ざっくり編成し隙間を有するように)しても良い。
このようなウーリー糸を使うことによって、タン部分11の伸縮性が向上し、よりざっくりとした編上がりとなる。
又、タン部分11は、使われる糸及び/又は編組織を、その他の部分とは異なっていることから、当然、タン部分11の伸度Dも、その他の部分とは異なる。
このようなタン部分11を編地2と一体編成で設けることによっても、タンの生地を縫い合わす必要がなく、更に製造工程・製造コストを低減できると共に、タンの生地との縫い合わせで生じる段差がないため、より違和感が生じ難くなる。
ここまで述べた編地2は、加熱(熱処理)されることによって、成形される(加熱成形)。
又、この加熱成形では、編地2を、人の平均的な足型である「ラスト(Last)K」に履かせた(被せた)状態で熱処理している。
つまり、使用者Uの足Fへの密着性が向上した編地2(アッパー部材1)の加熱成形が可能となり、使用者Uが履いた時(使用時)には、使用者Uの足Fと編地2(アッパー部材1)とのズレが少なく、靴擦れを起こし難く、違和感を低減できる。
加熱成形においては、上述したラストKに編地2を履かせて、アーチャー(樹脂製のスペーサ部材)を入れ、所定の温度条件(例えば、120℃で、30秒間から10分間ほど、湿熱又は乾熱)にて加熱し、その後、冷却する。
このような加熱成形を経て、編地2はアッパー部材1になるとも言える。
図7、8には、本発明に係る靴20が示されている。
この靴20は、使用者Uが履くものであり、当該使用者Uの足Fを覆うこととなる。
又、靴20全体としての重量も、特に限定はないが、例えば、80g以上170g以下、好ましくは100g以上150g以下、更に好ましくは110g以上140g以下(125gなど)であっても良い。
図7、8に示すように、ソール部材30は、靴20において、上述のアッパー部材1の下方から取り付けられる(貼り付けられる)部材である。
ソール部材30は、その素材について、特に限定はないが、例えば、合成ゴムやポリウレタン樹脂などの合成樹脂、又は、合成ゴムやポリウレタン樹脂などの合成樹脂を発泡させたもの、天然ゴム、天然皮革などであっても良い。
ソール部材30の形状などは、靴20の使用用途に応じて、特に限定はないが、例えば、使用者Uの踵Hに対する所定のカウンター機能を有していても良い(詳細は、後述するヒールカウンター32参照)。
ソール部材30の重量も、特に限定はないが、例えば、70g以上130g以下、好ましくは80g以上120g以下、更に好ましくは90g以上110g以下(100gなど)であっても良い。
ソール部材30の前後方向長さ30Lは、特に限定はないが、例えば、上述したアッパー部材1の前後方向長さ1Lより長くても構わない。
このように、ソール部材30の前後方向長さ30Lを、アッパー部材1の前後方向長さ1Lより長くすることによって、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた際に、アッパー部材1全体で、使用者Uの足Fを緩やかに拘束でき、使用者Uが靴20を履いた際に、使用者Uの足Fの皮膚に、アッパー部材1を更に追従させ易くなる。
ここで、本発明における「ソール部材30の前後方向長さ30L」とは、アッパー部材1をソール部材30に取り付ける前(アッパー部材1が単独で存在している時(一旦、アッパー部材1をソール部材30に取り付けた後に、敢えてソール部材30から取り外した時も含む))の当該ソール部材30の前後方向長さ30Lを意味する。
図1、7に示すように、靴紐(シューレース)31は、アッパー部材1において、上述した羽根部分10のシューホール10aに通す紐状の部材である。
靴紐31は、シューホール10aに通すことが出来るのであれば、何れの色・素材・太さ・長さ・構成であっても良い。
図7、8で示したように、ヒールカウンター32は、上述したソール部材30に一体的に形成されているものであって、使用者Uの踵Hを保持(ホールド)するカウンター機能を有する。
ヒールカウンター32は、使用者Uの踵Hを保持するのであれば、特に限定はないが、例えば、ソール部材30の踵側の周縁から所定高さ立設して、使用者Uの踵Hを、後方や左右側方から支える構成でも良い。
このような切欠部33により、使用者Uが靴20を脱ぎ易くなったり、又は、アッパー部材1の加熱成形後にラストKからアッパー部材1を外し易くなると共に、使用者Uの踵Hを保持(ホールド)するカウンター機能の確保も可能となる(「脱ぎ易さ」等と「カウンター機能の確保」が両立できる)。
又、切欠部33で切り欠かれた範囲は、編地2(踵部分2h)のみが存在することとなり、上述の加熱成形で編地2の踵部分2h後面が所定の角度(踵前傾角度)で前傾している場合であっても、使用者Uの足Fから靴20が脱げ難くなると同時に、靴20を脱ぐ時は、この切欠きで露出した編地2(踵部分2h)を持って履き口2rを広げることでも、脱ぎ易さも両立できると言える。
この他、上述したように、編地2(アッパー部材1)をソール部材30に取り付けた際、ヒールカウンター32の上縁と、この上縁に対応する(略沿う)編地2の所定部分が、当たる(当接する)ため、編地2の所定部分(対応部分)にPU糸などを使っても良い。
ここからは、本発明に係るアッパー部材1の実施例1-1~1-4については試験1で比較し、アッパー部材1の実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-13については試験2-1で比較し、特に、実施例2-1-2については試験2-2で耐久性を確認する。
そして、最後にアッパー部材1の実施例3についても言及する。
試験1では、熱融着性部分5aの含有率Gがそれぞれ異なる熱融着糸5をアッパー部材1(編地2)の所定箇所に用いて実施例1-1~1-4を作成し、各実施例の横ブレ性、保形性及び風合いについて評価を行った。
尚、「横ブレ性」とは、使用者Uが各実施例のアッパー部材1をソール部材30に取り付けた靴20を履いて使用した際に、当該靴20(特に、ソール部材30)に対して、使用者Uの足Fが横にズレる(又は、横にズレると感じる)か否かの評価(官能評価)であり、「保形性」とは、アッパー部材1を加熱成形した後、当該加熱成形された形状を保てるか否かの評価であり、「風合い」とは、使用者Uが各実施例のアッパー部材1をソール部材30に取り付けた靴20を履いた際に、当該使用者Uの足Fがアッパー部材1(編地2)に触った感じや見た感じであり、足Fの肌ざわり、履き心地など、当該使用者Uが足Fでアッパー部材1(編地2)に触れた時に感じる材質感の評価(官能評価)である。
まずは、実施例1-1~1-4それぞれを詳解する。
実施例1-1のアッパー部材1(編地2)は、所定箇所に使われた熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは0.0質量%である。
実施例1-1の所定箇所において使われる糸には、非熱融着性部分5bとして、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂製の糸(PTT糸)のみが含まれている(つまり、熱融着性部分5aは含まれていない)。
この実施例1-1における含有率Gや、非熱融着性部分5bであるPTT糸の繊度、熱融着性部分5aの繊度、横ブレ性、保形性及び風合いについて評価は、後述の表1に示している。
実施例1-2のアッパー部材1(編地2)は、実施例1-1と同じ所定箇所に使われた熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、後述するナイロン糸とPTT糸の比重が略同じとすれば、(110dtex)÷(110dtex+167detex)≒39.7質量%(約40.0質量%)である(後述の表1参照)。
実施例1-2の同じ所定箇所において使われる糸には、実施例1-1と異なり、熱融着性部分5aとして、ナイロン(ポリアミド)樹脂製の糸(ナイロン糸)が含まれ、非熱融着性部分5bとして、PTT糸が含まれている。
この実施例1-1における含有率Gや、熱融着性部分5aであるナイロン糸の繊度、非熱融着性部分5bであるPTT糸の繊度、横ブレ性、保形性及び風合いについて評価も、同じく後述の表1に示している。
実施例1-3のアッパー部材1(編地2)は、実施例1-1や1-2と同じ所定箇所に使われた熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、ナイロン糸とPTT糸の比重が略同じとすれば、(110dtex×3)÷(110dtex×3+167detex)≒66.4質量%(約66.0質量%)である(後述の表1参照)。
実施例1-3の同じ所定箇所において使われる糸には、実施例1-2と同様に、熱融着性部分5aとして、ナイロン糸が含まれ、非熱融着性部分5bとして、PTT糸が含まれている。
この実施例1-3における含有率Gや、熱融着性部分5aであるナイロン糸の繊度、非熱融着性部分5bであるPTT糸の繊度、横ブレ性、保形性及び風合いについて評価も、後述の表1に示している。
実施例1-4のアッパー部材1(編地2)は、実施例1-1~1-3と同じ所定箇所に使われた熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、ナイロン糸とPTT糸の比重が略同じとすれば、(110dtex×5)÷(110dtex×5+167detex)≒76.7質量%(約77.0質量%)である(後述の表1参照)。
実施例1-4の同じ所定箇所において使われる糸には、実施例1-2、1-3と同様に、熱融着性部分5aとして、ナイロン糸が含まれ、非熱融着性部分5bとして、PTT糸が含まれている。
この実施例1-4における含有率Gや、熱融着性部分5aであるナイロン糸の繊度、非熱融着性部分5bであるPTT糸の繊度、横ブレ性、保形性及び風合いについて評価も、後述の表1に示している。
表1で示されたように、実施例1-1で含有率Gが0.0質量%の場合の評価は、風合いは「◎」であるものの、横ブレ性と保形性は「×」であり、実施例1-4で含有率Gが76.7質量%の場合の評価は、横ブレ性と保形性は「◎」であるものの、風合いは「×」である。
つまり、適切な含有率Gでなければ、横ブレ性、保形性及び風合いの全てで所定の評価(例えば、「△」以上の評価)を得ること(つまり、横ブレ性、保形性及び風合いの同時実現)は出来ないことがわかる。
適切な含有率Gについて詳解すれば、横ブレ性、保形性及び風合いの評価の全てが「△」以上となる場合における含有率Gの下限値は、実施例1-1で風合いは「◎」且つ横ブレ性と保形性が「×」である含有率G「0.0質量%」と、実施例1-2で横ブレ性と保形性と風合いの全てが「○」以上である含有率G「39.7質量%」との間に必ず存在し、含有率Gの下限値は、「0.0質量%」と「39.7質量%」の略中間である「20.0質量%」であるとも言える。
一方、横ブレ性、保形性及び風合いの評価の全てが「△」以上となる場合における含有率Gの上限値は、少なくとも、実施例1-3で横ブレ性と保形性が「○」且つ風合いが「△」である含有率G「66.4質量%」であるとも言えるが、より厳しく見て、含有率Gの上限値は、「66.4質量%」より小さい「60.0質量%」であるとも言える。
従って、上述したように、熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、20.0質量%以上60.0質量%以下であっても良く、好ましくは30.0質量%以上50.0質量%以下、更に好ましくは35.0質量%以上45.0質量%以下(39.7質量%や、40.0質量%など)であっても構わない。
逆に言えば、この場合、熱融着糸5における非熱融着性部分5bの含有率G’は、0.0質量%より大きく20.0質量%未満且つ60.0質量%より大きく100.0質量%未満となる。
このような含有率G、G’となることによって、アッパー部材1の横ブレ性、保形性及び風合いを同時に実現できる。
尚、熱融着性部分5aの含有率Gが60.0質量%を越えた場合には、横ブレ性及び保形性は高いものの、風合いが硬くなり、履き心地を阻害する。
一方、熱融着性部分5aの含有率Gが20.0質量%を下回った場合には、十分な横ブレ性及び保形性が得られない。
試験2-1では、使われる糸等がそれぞれ異なる所定の大きさの編地を編成して実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-13を作成し、各実施例における所定の伸びに対する負荷を測定した。
尚、「所定の伸びに対する負荷」とは、各実施例を、アッパー部材1の足胴回り方向Cに相当する方向(図9(a)における横方向)に略沿って、つかみ間隔100mm・つかみ幅50mm・引張速度200mm/min(分)である定速伸長型試験機にて引っ張った場合において、実施例2-1-1~2-1-5については、つかみ間隔である100mmから80mmまで伸びた際の当該試験機のつかみ部材にかかる負荷(N(ニュートン))を意味し、実施例2-2-1~2-2-13については、つかみ間隔である100mmから5%、10%、20%伸びた際に、当該試験機のつかみ部材にかかる負荷を意味する。
まずは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-13それぞれを詳解する。
図9(a)で示されたように、実施例2-1-1の編地は、まず、試験用サンプル(サンプル部分を、そのサンプルの縦(経)方向の両側(上下側)に出来る捨て編み(捨て編み部分)と一緒に編成した後、捨て編み部分を切り離したサンプルのみを測定する。尚、サンプルは、横(緯)方向が縦(経)方向より長くなるように編成されていて、編組織は、例えば、スムース編や天竺編などであっても良い。
図9(b)で示されたように、実施例2-1-1のサンプル(編地)は、上述した試験機によって横(緯)に引っ張られることとなる。尚、サンプルが引っ張られる時のテンター幅は、約200mmである。
この実施例2-1-1は、その使われた糸が熱融着糸5であり、熱融着性部分5aとして、ナイロン(ポリアミド)樹脂製の糸(ナイロン糸)が含まれ、非熱融着性部分5bとして、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂製の糸(PTT糸)が含まれていることから、編地2における異伸度部4に相当するとも言える。
尚、ナイロン糸の総繊度は110dtexであり、PTT糸は72フィラメントの総繊度167dtexであり、例えば、非熱融着性部分5bであるPTT糸を芯糸5Bとし、この芯糸5Bの周囲に、熱融着性部分5aであるナイロン糸を鞘糸5Aとして、所定回数(200回/mなど)巻き付けている。又、実施例2-1-1は、例えば、所定温度(120℃など)で加熱成形されており、この加熱成形された際に、実施例2-1-1中の熱融着性部分5aであるナイロン糸が全て溶融するものであっても良い。
実施例2-1-1における熱融着糸5の本数(引き揃え本数)は3本であり、この熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、上述したように、ナイロン糸とPTT糸の比重が略同じとすれば、(110dtex)÷(110dtex+167detex)≒39.7質量%(約40.0質量%)である。
この実施例2-1-1において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ(編地の厚さ)は、後述の表2に示し、実施例2-1-1の伸びに対する負荷は、図10に示している。
実施例2-1-2も、その使われた糸が、実施例2-1-1において使われた糸と同じ熱融着糸5であるため、編地2における異伸度部4に相当するとも言える。
実施例2-1-2における熱融着糸5の本数を4本にしたことが、実施例2-1-1との主な変更点である。
この本数の変化に伴って、実施例2-1-2は、度目、目数、寸法、密度、厚さも、実施例2-1-1と異なっており、実施例2-1-2において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さも、後述の表2に示し、実施例2-1-2の伸びに対する負荷も、図10に示している。
その他、実施例2-1-2は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方、含有率Gなどは、実施例2-1-1と同様である。
実施例2-1-3は、その使われた糸が、実施例2-1-1、2-1-2において使われた熱融着糸5ではなく、ウーリーなナイロン糸(ウーリーナイロン糸、又は、嵩高加工をしたナイロン糸(嵩高加工ナイロン糸))であることが、実施例2-1-1、2-1-2との主な変更点である。
尚、実施例2-1-3におけるウーリーナイロン糸は、繊度78dtexの糸の双糸で総繊度が156dtexであり、ウーリーナイロン糸の本数は、4本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-1-3は、度目、目数、寸法、密度、厚さも、実施例2-1-1、2-1-2と異なっており、実施例2-1-3において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さも、後述の表2に示し、実施例2-1-3の伸びに対する負荷も、図10に示している。
その他、実施例2-1-3は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1、2-1-2と同様である。
実施例2-1-4は、その使われた糸が、実施例2-1-1~2-1-3において使われた熱融着糸5やウーリーナイロン糸ではなく、PTT糸のみであることが、実施例2-1-1~2-1-3との主な変更点である。
尚、実施例2-1-4におけるPTT糸も72フィラメントの総繊度167dtexであり、PTT糸の本数も、4本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-1-4は、度目、目数、寸法、密度、厚さも、実施例2-1-1~2-1-3と異なっており、実施例2-1-4において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さも、後述の表2に示し、実施例2-1-4の伸びに対する負荷も、図10に示している。
その他、実施例2-1-4は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-3と同様である。
実施例2-1-5は、その使われた糸が、実施例2-1-1~2-1-4において使われた熱融着糸5やウーリーナイロン糸、PTT糸ではなく、ウーリーなポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製の糸(ウーリーPET糸1、又は、嵩高加工をしたPET糸(嵩高加工PET糸))であることが、実施例2-1-1~2-1-4との主な変更点である。
尚、実施例2-1-5におけるウーリーPET糸1は48フィラメントの総繊度167dtexであり、ウーリーPET糸の本数も、4本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-1-5は、度目、目数、寸法、密度、厚さも、実施例2-1-1~2-1-4と異なっており、実施例2-1-5において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さも、後述の表2に示し、実施例2-1-5の伸びに対する負荷も、図10に示している。
その他、実施例2-1-5は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-4と同様である。
図10で示されたように、熱融着糸5を使用した実施例2-1-1及び2-1-2は、実施例2-1-3~2-1-5と比べて傾きが急であることから、同じ距離伸びる(変位する)際に必要な負荷は、実施例2-1-1及び2-1-2の方が、実施例2-1-3~2-1-5より大きい(つまり、熱融着糸5を使用した実施例2-1-1及び2-1-2は、実施例2-1-3~2-1-5より伸び難い)ことがわかる。
よって、実施例2-1-1及び2-1-2の熱融着糸5と、実施例2-1-3~2-1-5のウーリーナイロン糸やPTT糸、ウーリーPET糸1を混ぜて(編地2における異伸度部4に相当する部分を)編成することで、伸びが一定まで達すると、それ以上は変位を抑制する方向に働く伸び止め効果がある(熱融着糸5が伸び止めに寄与している)とも言える。
尚、ウーリーナイロン糸やウーリーPET糸1を使用した実施例2-1-3や2-1-5も、それぞれの糸自体の捲縮と各実施例の編地における組織伸びによって、上記と同様の伸び止め効果があるとも考えられる。
又、例えば、熱融着糸5と、ウーリーナイロン糸やウーリーPET糸1などのウーリー糸を交互にレイアウトして編成した編地においては、当該編地が引っ張られたとしても、熱融着糸5による編地部分とウーリー糸による編地部分の界面において、各編地部分における編組織が分断されていて、熱融着糸5による上記の伸び止め効果を確保できるとも言える。
更には、熱融着糸5を含むことで、横ブレ性も向上(横ブレも抑制)していると言え、風合い(履き心地)を考慮しながら、所定の編地部分における熱融着糸5を含ませる比率を上げることで、伸び止め効果と共に横ブレ性にも効果があると考えられる。
そして、何れの実施例も、変位が0~80mmである範囲内では、変位が大きくなればなるほど、かかる負荷も大きくなっている。これは、各実施例に相当する靴20を使用者Uが実際に履いた場合でも、アッパー部材1(編地2)において発生する変位は大きくとも80mmより小さいことから、変位が大きくなればなるほど、かかる負荷も大きくなる傾向は同じであると言える。
実施例2-2-1は、その使われた糸が実施例2-1-3において使われたウーリーナイロン糸であるものの、実施例2-2-1におけるウーリーナイロン糸の本数(引き揃え本数)を3本にしたことが、実施例2-1-3との主な変更点である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-1は、度目、目数、寸法、密度、厚さ(編地の厚さ)、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-3と異なっており、実施例2-2-1において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷は、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-1は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5と同様である。
実施例2-2-2は、その使われた糸が実施例2-1-4において使われたPTT糸であるものの、実施例2-2-2におけるPTT糸の本数を3本にしたことが、実施例2-1-4との主な変更点である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-2は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-4と異なっており、実施例2-2-2において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-2は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1と同様である。
実施例2-2-3は、その使われた糸が実施例2-1-5において使われたウーリーPET糸1であるものの、実施例2-2-3におけるウーリーPET糸1の本数を3本にしたことが、実施例2-1-5との主な変更点である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-3は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-5と異なっており、実施例2-2-3において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-3は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1、2-2-2と同様である。
実施例2-2-4は、その使われた糸が実施例2-1-5において使われたウーリーPET糸1とはまた別のウーリーPET糸2を使ったことが、実施例2-1-5、2-2-3との主な変更点である。
尚、実施例2-2-4におけるウーリーPET糸2の本数は、3本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-4は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-5、2-2-3と異なっており、実施例2-2-4において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-4は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-3と同様である。
実施例2-2-5は、その使われた糸が、実施例2-2-4において使われた糸と同じウーリーPET糸2であるものの、ウーリーPET糸2の本数を4本にしたことが、実施例2-2-4との主な変更点である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-5は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-2-4と異なっており、実施例2-2-5において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-5は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-4と同様である。
実施例2-2-6は、その使われた糸が実施例2-1-5や2-2-3~2-2-5において使われたウーリーPET糸1、2とは更に別のウーリーPET糸3を使ったことが、実施例2-1-5や2-2-3~2-2-5との主な変更点である。
尚、実施例2-2-6におけるウーリーPET糸3の本数は、3本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-6は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-5や2-2-3~2-2-5と異なっており、実施例2-2-6において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-6は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-5と同様である。
実施例2-2-7は、その使われた糸が、実施例2-2-6において使われた糸と同じウーリーPET糸3であるものの、ウーリーPET糸3の本数を4本にしたことが、実施例2-2-6との主な変更点である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-7は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-2-6と異なっており、実施例2-2-7において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-7は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-6と同様である。
実施例2-2-8は、その使われた糸が、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-7において使われた熱融着糸5やウーリーナイロン糸、PTT糸、ウーリーPET糸1~3ではなく、ポリウレタン(PU)樹脂製の糸(PU糸1)であることが、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-7との主な変更点である。
又、この実施例2-2-8は、その使われた糸がPU糸1であることから、編地2における異伸度部4に相当するとも言え、更に、この異伸度部4が、使用者Uの足FにおけるMP関節より所定の前後方向長さだけ前方へ進んだ位置から、爪先Tまでの所定の前後幅4dWを覆う場合には、爪先・MP異伸度部4dであるとも言える。
尚、実施例2-2-8におけるPU糸1は、例えば、強撚タイプの総繊度311dtex(280d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けている(ダブルカバリングしている)。
又、実施例2-2-8のPU糸1の本数(引き揃え本数)は、2本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-8は、度目、目数、寸法、密度、厚さ(編地の厚さ)、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-7と異なっており、実施例2-2-8において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-8は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-7と同様である。
実施例2-2-9は、その使われた糸が実施例2-2-8において使われたPU糸1とはまた別のPU糸2を使ったことが、実施例2-2-8との主な変更点である。
又、この実施例2-2-9も、その使われた糸がPU糸2であることから、異伸度部4や、爪先・MP異伸度部4dに相当するとも言える。
尚、実施例2-2-9におけるPU糸2は、例えば、強撚タイプの総繊度233dtex(210d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けている。
又、実施例2-2-9のPU糸2の本数も、2本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-9は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-8と異なっており、実施例2-2-9において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-9は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-8と同様である。
実施例2-2-10は、その使われた糸が実施例2-2-8、2-2-9において使われたPU糸1、2とは更に別のPU糸3を使ったことが、実施例2-2-8、2-2-9との主な変更点である。
又、この実施例2-2-10も、その使われた糸がPU糸3であることから、異伸度部4や、爪先・MP異伸度部4dに相当するとも言える。
尚、実施例2-2-10におけるPU糸3は、例えば、強撚タイプの総繊度156dtex(140d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けている。
又、実施例2-2-10のPU糸3の本数も、2本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-10は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-9と異なっており、実施例2-2-10において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-10は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-9と同様である。
実施例2-2-11は、その使われた糸が実施例2-2-8~2-2-10において使われたPU糸1~3とは別のPU糸4を使ったことが、実施例2-2-8~2-2-10との主な変更点である。
又、この実施例2-2-11も、その使われた糸がPU糸4であることから、異伸度部4や、爪先・MP異伸度部4dに相当するとも言える。
尚、実施例2-2-11におけるPU糸4は、例えば、強撚タイプの総繊度622dtex(560d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けている。
又、実施例2-2-11のPU糸4の本数は、1本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-11は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-10と異なっており、実施例2-2-11において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-11は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-10と同様である。
実施例2-2-12は、その使われた糸が実施例2-2-8~2-2-11において使われたPU糸1~4とは別のPU糸5を使ったことが、実施例2-2-8~2-2-11との主な変更点である。
又、この実施例2-2-12も、その使われた糸がPU糸5であることから、異伸度部4や、爪先・MP異伸度部4dに相当するとも言える。
尚、実施例2-2-12におけるPU糸5は、例えば、強撚タイプの総繊度622dtex(560d)のポリウレタン樹脂製の糸と、強撚タイプの総繊度311dtex(280d)のポリウレタン樹脂製の糸を引き揃えている。
当然、実施例2-2-12のPU糸5の引き揃え本数は、2本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-12は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-11と異なっており、実施例2-2-12において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-12は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-11と同様である。
実施例2-2-13は、その使われた糸が実施例2-2-8~2-2-12において使われたPU糸1~5とは別のPU糸6を使ったことが、実施例2-2-8~2-2-12との主な変更点である。
又、この実施例2-2-13も、その使われた糸がPU糸5であることから、異伸度部4や、爪先・MP異伸度部4dに相当するとも言える。
尚、実施例2-2-13におけるPU糸6は、例えば、強撚タイプの総繊度622dtex(560d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けている。
又、実施例2-2-13のPU糸6の本数は、2本である。
この使われる糸の変化に伴って、実施例2-2-13は、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-12と異なっており、実施例2-2-13において使われる糸の種類、本数、度目、目数、寸法、密度、厚さ、及び、5%、10%、20%伸びた際の負荷も、後述の表3に示している。
その他、実施例2-2-13は、図9(a)、(b)で示した試験用サンプルの構成や編組織、測定箇所、引っ張り方などは、実施例2-1-1~2-1-5、2-2-1~2-2-12と同様である。
表3で示されたように、PU糸1~6を使用した実施例2-2-8~2-2-13は、ウーリーナイロン糸やウーリーPET糸1~3などのウーリー糸、PTT糸を使用した実施例2-2-1~2-2-7と比べて、各変位における負荷が低いことから、同じ距離伸びる(変位する)際に必要な負荷は、実施例2-2-8~2-2-13の方が、実施例2-2-1~2-2-7より大きい(つまり、PU糸1~6を使用した実施例2-2-8~2-2-13は、実施例2-2-1~2-2-7より伸び難い)ことがわかる。
又、何れの実施例も、変位が5%~20%である範囲内では、変位が大きくなればなるほど、かかる負荷も大きくなっている。これは、各実施例に相当する靴20を使用者Uが実際に履いた場合でも、アッパー部材1(編地2)において発生する変位は大きくとも5%~20%より小さいことから、変位が大きくなればなるほど、かかる負荷も大きくなる傾向は同じであると言える。
試験2-2では、上述の熱融着糸5を使用した実施例2-1-2における耐久性を確認した。
図11で示されたように、熱融着糸5を使用し且つ加熱成形された実施例2-1-2の試験用サンプル(編地、サンプル)は、所定のチャック位置(チャック位置の間隔が2cmの位置など)を把持(チャック)された状態で、所定の振幅(4cmなど)で引張・弛緩(モミ動作)を10000回繰り返された(モミ加工をされた)。
このモミ加工の前後における実施例2-1-2の表面を拡大したものは、図12の(a)、(b)で示し、モミ加工の前後における実施例2-1-2の伸びに対する負荷は、図13に示している。
図12(a)で示されたように、モミ加工前における実施例2-1-2は、加熱成形により融着した(溶融した後に固着した)熱融着糸5における熱融着性部分5a(融着部分5a’)が、連続して(隣接する糸同士で融着して)いると言える。
一方、図12(b)で示されたように、モミ加工(モミ動作10000回)後における実施例2-1-2では、融着部分5a’が分断されている箇所もあるものの、比較的長い融着部分5a’も残っている箇所もあるため、試験2-1で述べた伸び止め効果(伸び抑制効果)は、モミ加工後にも残っている(所定の耐久性はある)と言える。
これは、図13で示されたように、モミ加工の前後における実施例2-1-2の伸びに対する負荷を示すグラフの形状も大差がなく、モミ加工(モミ動作10000回)後においても、伸び止め効果(伸び抑制効果)を有していると言える。
更には、実施例2-1-2のように、熱融着糸5を含むことで、横ブレ性も向上(横ブレも抑制)していると言え、風合い(履き心地)を考慮しながら、所定の編地部分における熱融着糸5を含ませる比率を上げることで、伸び止め効果と共に横ブレ性にも効果があると考えられる。
最後に、実施例3である編地2について言及する。
実施例3で使用される糸は、何れのものでも構わないが、例えば、ウーリーナイロン糸、熱融着糸5、PU糸、また別のPU糸の4種類でも良く、各糸を以下に詳解する。
次に、熱融着糸5も、上述したように、熱融着性部分5aとしてナイロン糸が含まれ、非熱融着性部分5bとしてPTT糸が含まれており、ナイロン糸の総繊度は110dtexであり、PTT糸は72フィラメントの総繊度167dtexであり、例えば、非熱融着性部分5bであるPTT糸を芯糸5Bとし、この芯糸5Bの周囲に、熱融着性部分5aであるナイロン糸を鞘糸5Aとして、所定回数(200回/mなど)巻き付けており、この熱融着糸5における熱融着性部分5aの含有率Gは、上述したように、ナイロン糸とPTT糸の比重が略同じとすれば、(110dtex)÷(110dtex+167detex)≒39.7質量%(約40.0質量%)である。又、この熱融着糸5は、例えば、加熱成形された際に、その熱融着性部分5aであるナイロン糸が全て溶融するものであっても良い。
そして、PU糸は、上述したPU糸1のように、例えば、強撚タイプの総繊度311dtex(280d)のポリウレタン樹脂製の糸を芯糸として、このポリウレタン樹脂製の糸の周囲に、36フィラメントの総繊度83dtex(75d)であるPTT糸を鞘糸として、S方向とZ方向に巻き付けて(ダブルカバリングして)おり、このPU糸全体としての総繊度は478dtex(430d)である。
最後に、また別のPU糸は、例えば、ポリウレタン樹脂製の糸で、且つ、繊度78dtex(70d)の糸の双糸で総繊度が156dtexであり、別の糸に置き換えても良い。
ここで、この表4で示すように、全部で10個のキャリアのうち、No.1とNo.10のキャリアは使用しなかった。
又、ウーリーナイロン糸のキャリアであるNo.4、6、7を合計した糸の編地2における使用量(使用重量)は10.9gで使用率は40.5%であって、熱融着糸5のキャリアであるNo.3、2(異伸度部4とも言える)を合計した糸の編地2における使用量は11.2gで使用率は41.6%、PU糸のキャリアであるNo.9、8(別の異伸度部4とも言える)を合計した糸の編地2における使用量は4.3gで使用率は16.0%、また別のPU糸のキャリアであるNo.5(これも、また別の異伸度部4)の編地2における使用量は0.5gで使用率は1.9%であった。
尚、実施例3の編地2におけるシューホール10aの個数も、何れの数でも構わないが、例えば、5個(5つ孔)や、3個(3つ孔)、6個(6つ孔)であっても良く、使用者Uの足FにおけるMP関節の後方部分の締付調整をするか否かや、タン部分11やアッパー部材1(編地2)のホールド性などで決められる。
表4や上述で示したように、熱融着糸5を使用した部分の合計の割合(使用率)は41.6%であって、これに含有率Gである39.7%をかけると、実施例3の編地2における熱融着性部分5aの割合は、41.6%×39.7%=0.416×0.397=0.165152・・・≒0.17で、約17%となる。
又、実施例3の編地2には、熱融着糸5を使用した部分(図1中の黒色部分であり、伸び止めさせる部分)と、ウーリーナイロン糸を使用した部分(図1中の白色部分であり、伸ばす部分)が存在するが、これら伸び止めさせる部分と、伸ばす部分が急に切り替わると、履き心地が悪くなる(使用者Uにおける違和感を生じる)ため、2つの部分をなだらかに切り替える配置、つまり、グラデーション配置をしている。
このグラデーション配置の例としては、図1に示したように、実施例3の編地2は、爪先部分2tから踵部分2hにかけて徐々に伸ばす部分(白色部分)の割合が高くなっている。
尚、図1中の点線で囲った部分は、PU糸を使用した部分(屈曲時のしわ防止部分)であり、表4中の使用部分のうち、履き口2r下部とは、使用者Uの足Fの足首を覆う部分であるとも言える。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。アッパー部材1、靴20、ソール部材30等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
アッパー部材1(編地2)は、羽根部分10やタン部分11を有さなくとも良い。
アッパー部材1には、プリントを施したり、シールを張り付ける等をしても良い。
靴20は、靴紐31、ヒールカウンター32を有さなくとも良い。
1L アッパー部材の前後方向長さ
2 編地
2t 編地における爪先部分
2h 編地における踵部分
2r 編地における履き口
2s 編地における足裏部分
2h’ 編地における踵後面
3 異編部
3a 疎異編部
4 異伸度部
4a リスフラン・ショパール関節異伸度部
4aW リスフラン・ショパール関節異伸度部の前後幅
4b MP異伸度部
4bW MP異伸度部の前後幅
4c 爪先異伸度部
4d 爪先・MP異伸度部
4dW 爪先・MP異伸度部の前後幅
5 熱融着糸
5a 熱融着性部分
5b 非熱融着性部分
5A 鞘糸
5B 芯糸
20 靴
30 ソール部材
30L ソール部材の前後方向長さ
32 ソール部材のヒールカウンター
33 ソール部材のヒールカウンターの切欠部
U 使用者
F 使用者の足
FS1 使用者の足の一方の側部
FS2 使用者の足の他方の側部
FB 使用者の足の底部
L 前後方向
W 足胴回り
C 足胴回り方向
D 伸度
G 熱融着糸における熱融着性部分の含有率
α 踵前傾角度
Claims (9)
- 使用者が履く靴のアッパー部材であって、
当該アッパー部材は、編地で一体編成され、
この編地は、前記使用者の足の前後方向における全ての位置で、前記使用者の足における一方の側部から底部を経由して他方の側部までを少なくとも含む足胴回りを覆い、
前記編地は、前記使用者の足に対して、前記前後方向及び前記足胴回り方向の段差なく接し、
前記編地は、その編組織、編目の数、編目の大きさ、及び、使われる糸のうち少なくとも1つがその他の部分と異なる異編部を有し、
前記異編部は、その他の部分と伸度が異なる異伸度部を有し、
前記異伸度部は、使われる糸に、熱融着性部分及び非熱融着性部分を有した熱融着糸を含み、
この熱融着糸は、前記熱融着性部分の含有率が39.7質量%以上60質量%以下であり、
前記異伸度部は、前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆う部分を含み、
前記編地は、前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆う部分と、前記熱融着糸を使用せず且つ所定の前後幅を覆う部分を、これら2つの部分における各前後幅がなだらかに変化し且つこれら2つの部分が交互に切り替わったグラデーション状に配置し、
前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆い且つ加熱成形された部分は、前記加熱成形により融着した熱融着性部分が隣接する熱融着糸同士で融着している箇所を有し、
前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆い且つ加熱成形された部分は、間隔が2cmであるチャック位置にて把持された状態で、振幅4cmで引張及び弛緩のモミ動作を10000回繰り返された後においても、前記加熱成形により融着した熱融着性部分が隣接する熱融着糸同士で融着している箇所を有していることを特徴とするアッパー部材。 - 前記異伸度部は、前記使用者の足におけるMP関節より所定の前後方向長さだけ前方へ進んだ位置から、前記使用者の足における爪先までの所定の前後幅を覆う爪先・MP異伸度部を有し、
この爪先・MP異伸度部は、使われる糸に、ポリウレタン樹脂製の糸を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のアッパー部材。 - 前記熱融着糸は、前記非熱融着性部分である芯糸に対して、前記熱融着性部分である鞘糸を巻き付けたカバリング構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアッパー部材。
- 前記異伸度部における前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆う部分は、前記使用者の足のリスフラン関節近傍からショパール関節近傍までの所定の前後幅を覆うリスフラン・ショパール関節異伸度部を有し、
このリスフラン・ショパール関節異伸度部は、その他の部分より伸度が低いことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のアッパー部材。 - 前記異伸度部における前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆う部分は、前記使用者の足のMP関節から踵に向けた所定の前後幅を覆うMP関節異伸度部を有し、
このMP関節異伸度部は、前記リスフラン・ショパール関節異伸度部より伸度が高い又は前記リスフラン・ショパール関節異伸度部と伸度が略同一、且つ、前記リスフラン・ショパール関節異伸度部以外の部分より伸度が低いことを特徴とする請求項4に記載のアッパー部材。 - 前記異伸度部における前記熱融着糸を使用し且つ所定の前後幅を覆う部分は、前記使用者の足の爪先から、前記MP関節より爪先寄りの位置までを覆う爪先異伸度部を有し、
この爪先異伸度部は、前記リスフラン・ショパール関節異伸度部及びMP関節異伸度部より伸度が高い又は前記リスフラン・ショパール関節異伸度部とMP関節異伸度部のうち少なくとも何れか一方と伸度が略同一、且つ、前記リスフラン・ショパール関節異伸度部及びMP関節異伸度部以外の部分より伸度が低いことを特徴とする請求項5に記載のアッパー部材。 - 前記編地における踵後面が前傾し、
この踵後面と鉛直方向とが成す踵前傾角度は65°以上85°以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のアッパー部材。 - 請求項1~7の何れか1項に記載のアッパー部材と、このアッパー部材を取り付けるソール部材を備え、
前記アッパー部材の前後方向長さは、前記ソール部材の前後方向長さより短いことを特徴とする靴。 - 請求項1~7の何れか1項に記載のアッパー部材と、
このアッパー部材を取り付ける使用者が履く靴のソール部材であって、当該ソール部材の踵側の周縁から立設したヒールカウンターを有し、このヒールカウンターには、当該ヒールカウンターを上方から切り欠く切欠部が形成されているソール部材を備えていることを特徴とする靴。
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