JP7015663B2 - 研磨用組成物及びその製造方法並びに研磨方法 - Google Patents
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Description
このシャロー・トレンチ素子分離の工程では、研磨対象物である酸化ケイ素の研磨を、その酸化ケイ素の下層に設けた窒化ケイ素(Si3N4)で停止させることがある。この窒化ケイ素で形成された膜は、一般にストッパー膜と呼ばれている。
酸化ケイ素の研磨速度を窒化ケイ素の研磨速度に対して大きくした研磨用組成物に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
しかしながら、従来の研磨用組成物は、窒化ケイ素の研磨速度に関するユーザーの要求を充分に満足するものではなかった。
上記一態様に係る研磨用組成物においては、環構造が芳香環を含んだ構造であってもよい。また、環構造が、シクロアルカン環、シクロアルケン環及びシクロジエン環の少なくとも1種を含んだ構造であってもよい。さらに、環構造の環員数が4以上10以下であってもよい。さらに、アニオン性官能基がカルボキシ基又はスルホ基であってもよい。
さらに、上記一態様に係る研磨用組成物は、pHが6以下の状態で正に帯電した領域を有する基板の研磨に用いることができる。
また、本発明の他の態様に係る研磨方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する工程を有することを要旨とする。この研磨方法においては、研磨対象物が窒化ケイ素であってもよい。
さらに、本発明の他の態様に係る基板の製造方法は、上記一態様に係る研磨用組成物を用いて基板の表面を研磨する工程を有することを要旨とする。
このため、本実施形態に係る研磨用組成物及び研磨方法であれば、例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、窒化ケイ素を、酸化ケイ素の研磨におけるストッパー膜として使用することができる。即ち、本実施形態に係る研磨用組成物及び研磨方法であれば、研磨対象物の相違による選択研磨性を促進することができる。
1.研磨抑制物質について
研磨抑制剤に含まれる、環構造を有し、且つその環構造に結合した3個以上のアニオン性官能基を有する化合物又はその塩(以下、研磨抑制物質とも称する)は、特定の研磨対象物の研磨速度の低下に寄与する。特に、窒化ケイ素の研磨速度の低下に有効である。研磨対象物が窒化ケイ素の場合は、研磨抑制物質が窒化ケイ素の表面を覆うため、酸化ケイ素の研磨速度が低下すると考えられる。なお、この研磨速度の低下に関するメカニズムについては、後述する。
ナフタレン誘導体の具体例としては、例えば、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム水和物等があげられる。
シクロペンタン誘導体の具体例としては、例えば、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、2-カルボキシメチル-1,3,4-シクロペンタントリカルボン酸等があげられる。
シクロアルケン誘導体の具体例としては、例えば、シクロヘキセントリカルボン酸等があげられる。
シクロジエン誘導体の具体例としては、例えば、シクロヘキサジエントリカルボン酸等があげられる。
これら研磨抑制物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、これらの研磨抑制物質の中でも、3-スルホフタル酸含有4-スルホフタル酸、ピロメリット酸、メリット酸、フィチン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸一水和物がより好ましい。
また、研磨抑制物質の研磨用組成物全体における濃度は、100mmol/L以下であることが好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物のコストを抑えることができる。
図1(a)は、本実施形態に係る研磨抑制物質が研磨対象物である窒化ケイ素に接近した状態を示している。一方、図1(b)は、本実施形態に係る研磨抑制物質が研磨対象物である酸化ケイ素に接近した状態を示している。
また、本実施形態に係る研磨抑制物質の環構造が芳香環を含んだ構造である場合に、芳香環のπ電子と他の芳香環のπ電子とが相互作用(π-πスタッキング)し、研磨抑制物質は積層体を形成し得る。このような積層体が保護膜として窒化ケイ素の表面に形成されると、窒化ケイ素の研磨速度がさらに低下する等が考えられる。
2-1 種類について
砥粒は、研磨対象物の表面を物理的に研磨する働きをする。砥粒の種類は特に限定されるものではないが、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子や、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子や、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子や、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩や、ダイヤモンド粒子等が挙げられる。
砥粒、即ち研磨粒子のアスペクト比は、1.4未満であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.25以下であることがさらに好ましい。そうすれば、砥粒の形状が原因となる研磨対象物の表面粗さを良好なものとすることができる。
なお、このアスペクト比は、研磨粒子に外接する最小の長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均値であり、走査型電子顕微鏡によって得た研磨粒子の画像から、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の平均一次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて算出される。
砥粒の平均二次粒子径は、25nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、35nm以上であることがさらに好ましい。また、砥粒の平均二次粒子径は、300nm以下であることが好ましく、260nm以下であることがより好ましく、220nm以下であることがさらに好ましい。
なお、ここでいう二次粒子とは、砥粒(一次粒子)が研磨用組成物中で会合して形成する粒子をいい、この二次粒子の平均二次粒子径は、例えば動的光散乱法により測定することができる。
砥粒の粒度分布において、微粒子側からの積算粒子質量が全粒子質量の90%に達したときの粒子の直径D90と、微粒子側からの積算粒子質量が全粒子質量の10%に達したときの粒子の直径D10との比D90/D10は、1.5以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、この比D90/D10は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度比(研磨速度が大きい研磨対象物の研磨速度/研磨速度が小さい研磨対象物の研磨速度)が大きくなり、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。
なお、砥粒の粒度分布は、例えばレーザー回折散乱法により求めることができる。
砥粒の研磨用組成物全体における含有量は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度比(研磨速度が大きい研磨対象物の研磨速度/研磨速度が小さい研磨対象物の研磨速度)が大きくなる。
砥粒は、表面修飾を施されたものでもよい。表面修飾を施された砥粒は、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属又はそれらの酸化物を、表面修飾が施されていない砥粒と混合して、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属又はそれらの酸化物を砥粒の表面にドープすることや、有機酸を砥粒の表面に固定化することにより得ることができる。表面修飾を施された研磨粒子の中で特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。
コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えば、コロイダルシリカの表面に有機酸の官能基を化学的に結合させることにより行われる。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけでは、コロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。
通常のコロイダルシリカは、酸性条件下ではゼータ電位の値がゼロに近いため、酸性条件下ではコロイダルシリカの粒子同士が互いに電気的に反発せず、凝集を起こしやすい。これに対して、表面に有機酸を固定化したコロイダルシリカは、酸性条件下でもゼータ電位が比較的大きな負の値を有するように表面修飾されているため、酸性条件下においてもコロイダルシリカの粒子同士が互いに強く反発して良好に分散する。その結果、研磨用組成物の保存安定性が向上する。
液状媒体は、研磨用組成物の各成分(環構造を有し、且つその環構造に結合した3個以上のアニオン性官能基を有する化合物又はその塩、砥粒、添加剤等)を分散又は溶解することができる液体であればよく、分散媒又は溶媒として機能する液体であれば特に限定されない。液状媒体としては水、有機溶剤があげられ、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることができるが、水を含有することが好ましい。ただし、各成分の作用を阻害することを防止するという観点から、不純物をできる限り含有しない水を用いることが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去した純水や超純水、あるいは蒸留水が好ましい。
研磨用組成物には、その性能を向上させるために、pH調整剤、酸化剤、錯化剤、界面活性剤、水溶性高分子、防カビ剤等の各種添加剤を添加してもよい。
4-1 pH調整剤について
研磨用組成物のpHの値は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。研磨用組成物のpHの値が高いほど研磨対象物の溶解が生じやすいので、このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度比(研磨速度が大きい研磨対象物の研磨速度/研磨速度が小さい研磨対象物の研磨速度)が大きくなる。また、研磨用組成物のpHの値が低くなるにしたがって取扱いが容易になるので、研磨用組成物のpHの値は、12未満であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
研磨用組成物のpHの値は、pH調整剤の添加により調整することができる。研磨用組成物のpHの値を所望の値に調整するために必要に応じて使用されるpH調整剤は、酸及びアルカリのいずれであってもよく、また、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。
アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等があげられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等があげられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等があげられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等があげられる。
さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
これらの塩基の中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びアミンが好ましく、さらに、アンモニア、カリウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化第四級アンモニウム化合物、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムがより好ましい。
また、研磨用組成物には、塩基として、金属汚染防止の観点からカリウム化合物を含むことがさらに好ましい。カリウム化合物としては、カリウムの水酸化物又はカリウム塩があげられ、具体的には水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等があげられる。
金属を酸化して酸化膜を形成し、研磨しやすくするために、研磨用組成物に酸化剤を添加してもよい。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸、過硫酸塩等があげられる。過硫酸塩の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等があげられる。これら酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸化剤の中でも、過硫酸塩、過酸化水素が好ましく、特に好ましいのは過酸化水素である。
また、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量が少ないほど、研磨用組成物の材料コストを抑えることができる。また、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。さらに、酸化剤による研磨対象物の表面の過剰な酸化が起こりにくくなる。よって、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
研磨対象物の相違による選択研磨性を促進するために、即ち研磨速度の小さい研磨対象物に対する研磨速度の大きい研磨対象物の研磨速度比を高めるために、研磨用組成物に錯化剤を添加してもよい。錯化剤は、研磨対象物の表面を化学的にエッチングする作用を有する。錯化剤の具体例としては、無機酸又はその塩、有機酸又はその塩、ニトリル化合物、アミノ酸、キレート剤等があげられる。これらの錯化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの錯化剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
また、有機酸の具体例としては、カルボン酸、スルホン酸等があげられる。カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、安息香酸、サリチル酸等の一価カルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸があげられる。また、スルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等があげられる。
さらに、アミノ酸の具体例としては、グリシン、α-アラニン、β-アラニン、N-メチルグリシン、N,N-ジメチルグリシン、2-アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リシン、タウリン、セリン、トレオニン、ホモセリン、チロシン、ビシン、トリシン、3,5-ジヨードチロシン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン、チロキシン、4-ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S-(カルボキシメチル)システイン、4-アミノ酪酸、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ-ヒドロキシリシン、クレアチン、ヒスチジン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、トリプトファンがあげられる。
また、研磨用組成物全体における錯化剤の含有量が少ないほど、研磨対象物の溶解が生じにくく段差解消性が向上する。よって、研磨用組成物全体における錯化剤の含有量は、20g/L以下であることが好ましく、15g/L以下であることがより好ましく、10g/L以下であることがさらに好ましい。
研磨用組成物には界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、研磨後の研磨対象物の研磨表面に親水性を付与する作用を有しているので、研磨後の研磨対象物の洗浄効率を良好にし、汚れの付着等を抑制することができる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。
さらに、両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドがあげられる。
さらに、非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドがあげられる。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量が少ないほど、研磨後の研磨対象物の研磨面への界面活性剤の残存量が低減され、洗浄効率がより向上するので、研磨用組成物全体における界面活性剤の含有量は10g/L以下であることが好ましく、1g/L以下であることがより好ましい。
なお、界面活性剤を研磨用組成物に添加しない場合には、スラリーライン(研磨パッドに研磨用組成物を供給するライン)中に気泡が発生しにくいため、研磨用組成物の取り扱いが容易となる。
研磨用組成物には水溶性高分子を添加してもよい。研磨用組成物に水溶性高分子を添加すると、研磨後の研磨対象物の表面粗さがより低減する(平滑となる)。
水溶性高分子の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリイソプレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン、及びキトサン塩類があげられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、研磨用組成物全体における水溶性高分子の含有量が少ないほど、研磨対象物の研磨面への水溶性高分子の残存量が低減され洗浄効率がより向上するので、研磨用組成物全体における水溶性高分子の含有量は、10g/L以下であることが好ましく、1g/L以下であることがより好ましい。
なお、水溶性高分子を研磨用組成物に添加しない場合には、スラリーライン中に気泡が発生しにくいため、研磨用組成物の取り扱いが容易となる。
研磨用組成物には防カビ剤、防腐剤を添加してもよい。防カビ剤、防腐剤の具体例としては、イソチアゾリン系防腐剤(例えば2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノールがあげられる。これらの防カビ剤、防腐剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、環構造を有し、且つその環構造に結合した3個以上のアニオン性官能基を有する化合物又はその塩を含む研磨抑制剤と、砥粒と、所望により各種添加剤とを、水等の液状媒体中で攪拌、混合することによって製造することができる。
混合時の温度は特に限定されるものではないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を向上させるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
研磨対象物の種類は特に限定されるものではないが、一実施態様としては、単体シリコン、シリコン化合物、金属等があげられる。単体シリコン及びシリコン化合物は、シリコン含有材料を含む層を有する研磨対象物である。
単体シリコンとしては、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等があげられる。また、シリコン化合物としては、例えば窒化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素等があげられる。シリコン化合物膜には、比誘電率が3以下の低誘電率膜が含まれる。
また、研磨対象物は、研磨用組成物のpHが6以下の状態で正に帯電した領域を有する基板であってもよい。また、研磨対象物は、研磨用組成物のpHが6以下の状態で正に帯電した領域と、研磨用組成物のpHが6以下の状態で、負に帯電した領域又は帯電していない領域と、を有する基板が好ましい。ここで、「研磨用組成物のpHが6以下の状態で正に帯電」とは、pHが6以下に調整された研磨用組成物が研磨対象物に接触している状態で正に帯電していることを意味する。
研磨装置の構成は特に限定されるものではないが、例えば、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと、回転速度を変更可能なモータ等の駆動部と、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤と、を備える一般的な研磨装置を使用することができる。
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、液状の研磨用組成物が溜まるような溝加工が施されているものを使用することができる。
また、研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に限定されるものではなく、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。研磨用組成物の供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨用組成物で覆われていることが好ましい。なお、研磨対象物の研磨においては、本実施形態に係る研磨用組成物の原液をそのまま用いて研磨を行ってもよいが、原液を水等の希釈液で例えば10倍以上に希釈した研磨用組成物の希釈物を用いて研磨を行ってもよい。
このように、本実施形態に係る研磨用組成物は、基板の研磨の用途に用いることができる。すなわち、本実施形態に係る研磨用組成物を用いて基板の表面を研磨することを含む方法により、基板の表面を高研磨速度で研磨して、基板を製造することができる。基板としては、例えば、単体シリコン、シリコン化合物、金属等を含む層を有するシリコンウェハがあげられる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカと、各種の研磨抑制物質と、pH調整剤であるマレイン酸又は水酸化カリウムと、液状媒体(分散媒)である水とを、混合温度が約25℃、混合時間が約10分間の条件で混合して、実施例1~17及び比較例1~4の研磨用組成物を製造した。この際、表1に示されるように、実施例1~17及び比較例2~4においては、各種の研磨抑制物質を使用し、比較例1においては、研磨抑制物質を使用していない。
表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカの研磨用組成物全体における含有量は、実施例1~12、16、17及び比較例1~4のいずれにおいても2質量%である。また、実施例13~15においては、表面にスルホン酸を固定化したコロイダルシリカの研磨用組成物全体における含有量は、0.3質量%である。
さらに、研磨抑制物質の研磨用組成物全体における含有量は、比較例1が0mmol/L(含有しない)であり、それ以外はいずれも10mmol/Lである。
研磨機:200mmウェハ用CMP片面研磨
パッド:ポリウレタン製パッド
研磨圧力:3.2psi(約22.1kPa)
研磨定盤の回転数:90rpm
研磨用組成物の流量:130mL/min
研磨時間:1分間
各ウェハについては、光干渉式膜厚測定装置を用いて、研磨前と研磨後の各膜の膜厚をそれぞれ測定した。そして、膜厚差と研磨時間から、窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜の研磨速度をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
なお、表1に示した「規格化した研磨速度比」とは、実施例1~17及び比較例2~4の各研磨速度比(TEOS膜の研磨速度/Si3N4膜の研磨速度)を、比較例1の研磨速度比(TEOS膜の研磨速度/Si3N4膜の研磨速度)で規格化した値である。つまり、「規格化した研磨速度比」の値が8.1である実施例1の研磨用組成物は、比較例1の研磨用組成物に比べてSi3N4膜の研磨速度が1/8.1倍(0.12倍)であることを意味する。したがって、この「規格化した研磨速度比」の値が大きい程、比較例1の研磨用組成物に比べてSi3N4膜の研磨速度が低下した(Si3N4膜の研磨が抑制された)ことを意味する。
なお、研磨抑制物質を含む研磨用組成物の研磨速度比(TEOS膜の研磨速度/Si3N4膜の研磨速度)が、研磨抑制物質を含まない研磨用組成物の研磨速度比(TEOS膜の研磨速度/Si3N4膜の研磨速度)に対して2.0より大きければ、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、Si3N4膜を、TEOS膜の研磨におけるストッパー膜として確実に使用することができる。
また、実施例9、16、17の研磨用組成物の結果から、コロイダルシリカのサイズ(平均二次粒子径)が大きい程、研磨用組成物の研磨速度比の値が大きいことがわかる。これは、研磨対象物であるTEOS膜の研磨速度が大きくなったためである。
Claims (9)
- 環構造を有し、且つ前記環構造に結合した3個以上のアニオン性官能基を有する化合物又はその塩を含む研磨抑制剤と、
砥粒と、
液状媒体と、を含有し、
前記砥粒は、コロイダルシリカであり、
研磨対象物を単体シリコン、またはシリコン化合物とし、
研磨用組成物のpHが6以下の状態で正に帯電した領域を有する前記研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物。 - 前記環構造は、芳香環を含んだ構造である請求項1に記載の研磨用組成物。
- 前記環構造は、シクロアルカン環、シクロアルケン環及びシクロジエン環の少なくとも1種を含んだ構造である請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
- 前記環構造の環員数は、4以上10以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
- 前記アニオン性官能基は、カルボキシ基又はスルホ基である請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
- 前記アニオン性官能基を有する化合物又はその塩の濃度は、1mmol/L以上100mmol/L以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物を製造する方法であって、
前記研磨抑制剤と、前記砥粒と、前記液状媒体と、を混合する工程を有する研磨用組成物の製造方法。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する工程を有する研磨方法。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて基板の表面を研磨する工程を有する基板の製造方法。
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JP2017181070A JP7015663B2 (ja) | 2017-09-21 | 2017-09-21 | 研磨用組成物及びその製造方法並びに研磨方法 |
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