JP7005941B2 - 樹脂複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエステル繊維からなる布帛に樹脂を複合した樹脂複合体であって、耐候性と難燃性を兼ね備えた樹脂複合体に関する。
トンネル内や高速道路、橋梁等においてコンクリートの剥落防止に使用されるシートは、従来より、合成繊維からなるネット状物が用いられており、該ネット状物は強度や衝撃吸収性等の物理特性を有するだけでなく、難燃性、耐候性、耐薬品性等も付与したものが知られている。
コンクリートの剥落を防止するための難燃性ネット状物として、未硬化性熱可塑性樹脂を含浸させ、ポリエチレンからなる一次被覆層、特定のノンハロゲン難燃性ポリエチレンからなる二次被覆層を有するポリエステル長繊維等の補強用長繊維を製編し、硬化させた無結節網からなるFRPネット(目合い20~150mm)からなる難燃性メッシュ状物、これの一方の面に目合い1~30mmの合成繊維等の平織等の表面に難燃加工を施した難燃性メッシュ状物を配した難燃性メッシュ状物が開示されている(特許文献1)。
また別のコンクリート落下防止ネットとして、難燃成分を含有するポリアミド繊維からなる編目ネットが知られている(特許文献2)。特許文献2の発明は、耐磨耗性と高タフネスなどの特徴を有するポリアミド繊維を用い、かつ、ポリアミド繊維に難燃剤として特定のトリアジン系化合物を1~10重量%含有し、総繊度と単糸繊度を特定範囲に設定してネットを形成することで、十分な強力と柔軟性、難燃性を有するコンクリート落下防止ネットが得られる旨記載されている。また、特許文献2のポリアミド繊維は、銅化合物を10~500ppm含有し、有機または無機顔料を0.1~2重量%含有することで、耐候性を向上したことを特徴としている。
特開2011-202397号公報 特開2007-197869号公報
しかしながら特許文献1記載の方法をそのまま用いても十分な耐候性が得られないことが判明した。すなわち、難燃メッシュ状物において難燃加工する際に樹脂の付着ムラや構成繊維が熱履歴を経ることで生じる収縮等により被覆樹脂中に気泡が発生するなどし、その割れ目等から酸性雨や海水等が侵入して劣化を生じ、結果として難燃加工が部分的に剥がれて難燃性と耐候性を損なうことが判明した。また、特許文献2の発明は、ポリアミド繊維が銅化合物を含むことや、また、有機または無機顔料を含有することで、耐候性が向上するという利点をもたらすと記載されているが、高いレベルで難燃性を付与しようとすれば銅化合物や有機または無機顔料を一定量以上含有させることを要し、その結果製糸性が悪化するという課題があり、実用性を有する品位で耐候性と難燃性を両立させることが困難であった。
本発明はかかる従来技術の課題を鑑み、コンクリートの剥落防止用に設置した際、コンクリート表面の疲労を目視で確認可能な目合い(目開き)があり、剥がれ落ちるコンクリートを保持するのに必要な強力と耐候性を有しており、かつ、橋梁等で必要とされる難燃性、橋梁の形状に追随する柔軟性を兼備した、コンクリート剥落防止用に好適な樹脂複合体を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するために本発明は、下記のいずれかの構成からなる。
(1)ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で被覆した樹脂複合体であって、目開きが一片5mm~20mmの範囲内であり、キセノンウェザーメーターで500時間照射した後の強力保持率が75%以上の耐候性を有し、かつ、JIS L 1091の燃焼試験で区分3に合格する難燃性を有することを特徴とする樹脂複合体。
(2)前記ポリエステル繊維が防炎剤としてリン成分を0.5~0.9重量%含有する前記(1)に記載の樹脂複合体。
(3)前記ポリエステル繊維が顔料を含む原着糸である前記(1)または(2)に記載の樹脂複合体。
(4)前記合成樹脂がポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、軟質塩化ビニル樹脂の中から選ばれるいずれか1つ以上で構成される前記(1)~(3)のいずれかに記載の樹脂複合体。
(5)前記合成樹脂による被覆部分が1mmを超える非被覆部を20%より多く含まず、表面品位に優れる前記(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂複合体。
(6)コンクリート剥落防止用である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の樹脂複合体。
(7)ポリエステル繊維として、原糸の乾熱収縮率が9%以下のものを、少なくとも緯糸に用いて織物に製織し、しかる後に合成樹脂で被覆し、加熱・乾燥させる樹脂複合体の製造方法。
(8)前記の加熱・乾燥を180℃以上の温度で行う前記(7)記載の樹脂複合体の製造方法。
本発明によれば、コンクリート剥落防止用に施工した際、コンクリート表面の疲労を目視で確認可能な目合い(目開き)があり、剥がれ落ちるコンクリートを保持するのに必要な強力と耐候性を有しており、かつ、橋梁等で必要とされる難燃性や、橋梁の形状に追随する柔軟性を兼備した、コンクリート剥落防止用に好適な樹脂複合体を提供することができる。また、コンクリート剥落防止用に必要な強力、耐候性、難燃性を兼備した樹脂複合体の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の樹脂複合体の一例を撮影した写真である。 図2は、実施例3の樹脂複合体を撮影した写真である。 図3は、図2と同じ写真であり、1mmを超える非被覆部のある交差点と、1mm未満の非被覆部のある(もしくは非被覆部の存在しない)交差点を示した写真である。 図4は、比較例1の組織を示した概略図である。 図5は、実施例1の組織を示した概略図である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の樹脂複合体はポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で被覆した樹脂複合体であって、目開きが一片5mm~20mmの範囲内であり、キセノンウェザーメーターで500時間照射した後の強力保持率が75%以上の耐候性を有し、かつ、JIS L 1091の燃焼試験(A-1法)で区分3に合格する難燃性を有するものである。
ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で被覆した樹脂複合体は目開きが一片5mm~20mmの範囲内が必要である。本発明の樹脂複合体を橋梁や高架下にコンクリート剥落防止用として施工した際、コンクリート表面のひび割れや腐食など目視点検するために、目開きは5mm以上が必要である。また、コンクリート表面が劣化して細かなコンクリート片を生じることがあり、コンクリート小片を落下させないために、目開きは20mm以下であることが必要であり、18mm以下であることが好ましい。なかでも一般的なコンクリート剥落片をより多く捕捉できることから、5mm~10mmであることが好ましい。
なお本発明で規定する目開きとは、経糸と緯糸とで形成された開口部分において、隣接した経糸同士、または緯糸同士が最も近い部分の直線距離をいう。図1は、本発明の樹脂複合体の一例を撮影した写真である。経糸同士が最も近い部分の直線距離が緯方向の目開き1となり、緯糸同士が最も近い部分の直線距離が経て方向の目開き2となる。なお、矢印Aの方向を経糸方向とする。
ここで定義する目開きとは、織物の長さ方向で繰り返し発生する、隣接する経糸、隣接する緯糸で囲まれた開口部であって、隣接する経糸同士間の最も近い直線距離、あるいは緯糸同士間の最も近い直線距離で規定されるものとする。なおここで開口部とは、織物全体で見たときに、目視で隙間が空いていると明確に判断できる空間であり、例えば捩り(もじり)合っている2本の経糸の隙間や、同じ筬打ちのタイミングで製織して得られる隣接した複数本の緯糸同士の隙間は除外する。
本発明の樹脂複合体の目開きは、経糸同士間、もしくは緯糸同士間のいずれかが5mm~20mmの範囲内であることが必要であるが、より好ましくは経糸同士間・緯糸同士間のいずれも5mm~20mmの範囲であることが好ましい。経糸同士間・緯糸同士間のいずれも5mm~20mmの範囲であれば、コンクリート表面のひび割れや腐食など目視点検が行いやすく好ましい。
本発明の樹脂複合体を構成する織物は、目開きが一片5mm~20mmの範囲内であれば平織り、変化組織のいずれでも構わないが、経糸を交差させたからみ織りが、前記目開きであっても組織の形態維持に優れるので好ましい。からみ織りとして、緯糸1本ごとに経糸を左右に交差させた紗織、複数本の緯糸をまたいで経糸を左右に交差させた絽織、いずれも好適に用いることができるが形態維持に優れ、また合成樹脂の被覆性が良いことから紗が好ましい。
本発明の樹脂複合体を構成する織物について、織物の経糸及び緯糸の1ストランドあたりの強力は250N以上が好ましい。なぜなら経糸及び緯糸の1ストランドあたりの強力が250N以上あることで、本発明の樹脂複合体の上にコンクリート剥落片が落下しても、樹脂複合体単独でも、変形したり破れたりすることが無いため好ましい。また耐久性の点から、より好ましくは270N以上である。上限としては特に上限はないが、工業的には400N以下であることが好ましい。
また本発明の樹脂複合体を構成する織物は、目付が100~350g/mの範囲内が好ましい。本発明の樹脂複合体を橋梁や高架下にコンクリート剥落防止用として施工する際、樹脂複合体を構成する織物の目付が350g/m以下であることから、全面を接着剤で固定しなくともアンカー固定だけで十分は施工性が得られるので好ましい。より好ましくは100~250g/mである。
前記、ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で複合した樹脂複合体は、キセノンウェザーメーターで500時間照射した後の強力保持率が75%以上の耐候性を有するものである。本発明の樹脂複合体は橋梁や高架下にコンクリート剥落防止用として施工されるが、日光や風雨に曝されてもコンクリート小片の落下を防ぐために、強力保持率が80%以上であることが好ましい。中でもコンクリート剥落防止用として施工する際、全面を接着剤で固定する方法や一部をアンカー固定する方法などが採用できるが、アンカー固定を行う場合、アンカーと接する部分で高い強力保持率が必要なことから、強力保持率は85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。上限としては100%であることが最も好ましいが、上限として現実には98%でも好ましい。ここで、キセノンウェザーメーターのブラックパネル温度は63℃とする。なお、ここでいう強力保持率は後述する方法で決定される値である。
ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で複合した樹脂複合体の強力としては、樹脂複合体を構成する経糸及び緯糸の1ストランドあたりの強力が180N以上であることが好ましい。中でもコンクリート剥落防止用としてアンカー固定を行う場合、アンカーと接する部分で高い強力保持率が必要なことから、樹脂複合体を構成する経糸及び緯糸の1ストランドあたりの強力210N以上であることがより好ましい。
上限としては特に制限はないが、工業的には330N以下であることが好ましい。
また本発明の樹脂複合体は、JIS L 1091の燃焼試験(A-1法)で最も性能の良い区分3に合格する難燃性を有するものである。高速道路や鉄道の橋梁、高架など構造物において防災上から難燃性が必要とされ、JIS L 1091の燃焼試験(A-1法)で最も性能の良い区分3に合格することが必要である。
かかる難燃性を有するために本発明の樹脂複合体は、前記ポリエステル繊維が防炎剤を含有することが好ましいが、防炎剤としては、リン系防炎剤などが挙げられ、リン成分を0.5~0.9重量%含有することが好ましい。前記ポリエステル繊維が防炎剤を含むことで、好ましくはリン成分を0.5重量%以上含むことで、該ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で複合した樹脂複合体において、JIS L 1091の燃焼試験(A-1法)で最も性能の良い区分3に合格するので好ましい。また、前記ポリエステル繊維が防炎剤としてリン成分を0.9重量%以下含むことで、前記ポリエステル繊維の製糸性が良好となり、得られたポリエステル繊維の物理特性、特に強度が十分あり好ましい。
前記防炎剤を含むポリエステル繊維としては、ポリマー中に2官能性リン化合物またはその反応物を含む、あるいはそれが共重合しているポリエステルを含むポリエステル系繊維が望ましい。
かかるポリエステル系繊維を構成するポリエステルとしては、繰り返し単位の少なくとも85モル%がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、繰り返し単位の少なくとも85モル%がブチレンテレフタレートであるポリブチレンテレフタレート、繰り返し単位の少なくとも85モル%がエチレン2、6ナフタレートであるポリエチレン2、6ナフタレートなどのポリエステルであることが好ましい。また、上記ポリエステルはその繰り返し単位の中に、リン元素に換算して好ましくは0.5~1.0重量%の範囲の2官能性リン化合物を共重合したポリマーであることが好ましい。なお前記ポリエステルには、難燃性を阻害しない範囲でその他の共重合成分が含有されていても良い。
前記の2官能性リン化合物としては、ホスホネート類、ホスフィネート類、ホスフィンオキシド類が好ましく使用できる。
ホスホネート類としては、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル等が好ましく使用される。
ホスフィネート類としては、(2-カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2-メトキシカルボニルエチル)メチルホスフィン酸メチル、(2-カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2-メトキシカルボニルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4-メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2-(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸等が好ましく使用される。
ホスフィンオキシド類としては、(1,2-ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3-ジカルボキシプロピル)ジメチルホスフィンオキシド、(1,2-ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3-ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、[1,2-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシド、[2,3-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシド等が好ましく使用される。
中でも特にホスフィンオキシド類がポリエステルとの共重合反応性が良いこと、及び重合反応時の飛散が少ないこと等から好ましく使用される。
本発明に用いるポリエステル繊維は、顔料を含む原着糸であることが好ましい。顔料としては有機または無機顔料をポリエステル繊維に対して0.1~1.0重量%含むことが好ましい。ポリエステル繊維に顔料を含む原着糸とすることで、染色する必要がなく、染色時に発生する廃液を無しにできるので、環境影響面から好ましい。顔料の含有量としては0.1重量%以上とすることで、コンクリートに近いグレー色を表現することが可能となり、コンクリート剥落防止用として好適に用いることが可能となる。また、顔料の含有量が1.0重量%以下とすることで、顔料のような異物の存在が繊維製造工程の製糸性を悪化させることなく、安定して原着糸を得ることができるので好ましい。
前記の顔料としてはカーボンブラック、弁柄、群青等の無機系顔料や、シアニン系、スチレン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系等の有機系顔料が例示できる。施工対象となるコンクリートの色相に応じ、これら顔料を適宜選択し、単独またはブレンドして使用することが好ましい。
本発明で用いる合成樹脂は、本発明の樹脂複合体が得られるようにポリエステル繊維からなる織物を被覆することが可能であれば特に限定はなく、アクリル系樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリスチレン系樹脂など例示できる。用いる合成樹脂としては、ポリエステル繊維との濡れ性が高いものを選択することが好ましいが、濡れ性が低い場合には、あらかじめ織物表面にエポキシ樹脂などで下処理をして濡れ性を改善した後に被覆することも可能である。
用いる合成樹脂としては耐候性、耐腐食性の点からポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、軟質塩化ビニル樹脂の中から選ばれるいずれか1つ以上で構成されるのが好ましい。軟質塩化ビニル樹脂は塩化ビニル樹脂に可塑剤、安定剤等を配合したものであり、可塑剤の配合量に応じて得られる軟質塩化ビニル樹脂及び半硬質塩化ビニル樹脂が好ましく挙げられ、なかでも合成樹脂として用いると柔軟で屈曲などの耐久性に優れ、かつ、樹脂複合体にした時に付着が均一に出来るので、可塑剤を配合した軟質塩化ビニル樹脂をより好適に用いることができる。
また本発明の樹脂複合体は、用いる合成樹脂の付着量が40~180g/mの範囲内であることが好ましい。合成樹脂の付着量が40g/m以上あることで、樹脂複合体として十分な耐候性、耐腐食性が得られるので好ましい。また、合成樹脂の付着量が180g/m以下とすることで、十分な防炎性能を発揮できるので好ましい。なぜならポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、軟質塩化ビニル樹脂は、いずれも難燃性に優れ、仮に燃焼した際の発熱量も比較的少ないが、樹脂複合体への付着量が180g/mを超えて大きくなると、燃焼場が増えて難燃性が低下する傾向を示し、最終的には付着量が多すぎる結果本発明で規定する難燃性を満たさなくなる。より好ましくは100~170g/mである。
従って本発明の樹脂複合体の好ましい目付は、140~530g/mの範囲内にあることが好ましい。樹脂複合体の目付が140g/m以上あることで、樹脂複合体として十分な強力と耐候性、耐腐食性を有するので好ましい。また、樹脂複合体の目付が530g/m以下であるので、軽量で施工性に優れ、かつ、十分な防炎性能を有することから好ましい。より好ましくは200~420g/mである。
また本発明で用いる合成樹脂は、防炎剤としてリン成分を樹脂複合体に対して1.0~5.0重量%含有することもできる。防炎剤としてリン成分を含有するために、前記合成樹脂にリン系難燃剤を混合する方法が好適に使用できる。
該リン系難燃剤としては、クレジルジフェニルホスフェートやトリエチルホスフェート等のモノマー型りん酸エステル、レゾルシノルビス(ジフェニル)ホスフェートやビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート等の縮合型りん酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェートやトリス(クロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンりん酸エステル、ジエチル-NN‘-ビス(2-ヒドロオキシエチル)アミノメチルホスフェート等、いずれか1種以上、あるいはいずれか1種とハロゲン系難燃剤とを組み合わせた難燃加工など、好適に用いることができる。
前記防炎剤としてリン成分を1.0重量%以上含有することで、りん系難燃剤が作用して固相におけるチャーの生成を促進し、また気相におけるラジカルトラップ効果も十分働いて、難燃性能が発揮されるので好ましい。また防炎剤としてリン成分を5.0重量%以下含有することで、合成樹脂にリン系難燃剤を混合する際に均一な混合が可能となり、合成樹脂の付着ムラや気泡などの発生がなく、また、本発明の樹脂複合体の難燃性能が全体で均一にできるので好ましい。これらの観点からより好ましくは2.0~4.5重量%である。
本発明の樹脂複合体は、目開きが特定の範囲内に製織した織物に前記合成樹脂で被覆するものであるが、経糸と緯糸の交差部分に合成樹脂の気泡が特に発生しやすい。なぜなら、前記合成樹脂を用いて織物を被覆するために合成樹脂を織物の片面、または両面に加工するコーティングを施す際、経糸と緯糸の交差部分が凹凸形状であるため、この部分が特に、合成樹脂が付着しづらい領域となる。また、合成樹脂が付着したとしても歪みやすく、コーティング後の熱履歴により繊維が収縮することで歪みが顕在化し、被覆した合成樹脂層に空間(気泡)を生じたり、それに起因して弱くなった部分に割れ目が入り、結果として、雨水、海水等による劣化を引き起こす原因となりやすい。
特に経糸と緯糸の交差部分で1mmを超えるような非被覆部が多く存在している場合には全体として表面品位に劣り、結果として、耐光性が損なわれる傾向にある。
したがって本発明の樹脂複合体は、表面品位に優れることが好ましい。本発明で規定する表面品位とは、合成樹脂による被覆部分として経糸と緯糸の交差する部分に着目し、交差する部分で1mmを超える気泡(気泡は割れやすいので、繊維が露出しやすい)や合成樹脂の被覆が剥がれて合成樹脂が付着していない部分など、織物を構成する繊維が1mmを超えて露出している部分(これらを総称して非被覆部とする)の存在する割合が、0~20%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、1mmを超える非被覆部の存在する割合が、0~10%の範囲内であることが更に好ましい。上記範囲内であれば、コンクリート剥落防止用に現場へ施工した際、酸性雨や海水が侵入し、難燃性能の低下を引き起こすことが無いので好ましい。
前記経糸と緯糸の交差する部分の合成樹脂による被覆部分が1mmを超える非被覆部を含むのを抑制するためには、合成樹脂として出来るだけ均質なものを選定し、かつ、合成樹脂の粘度も最適化する方法、ポリエステル繊維との濡れ性に優れる合成樹脂を選定する等の方法等をそれぞれ単独でまたは複合して採用することができる。合成樹脂として軟質塩化ビニル樹脂を用いる場合、防炎剤と均質な混合物を形成しやすいので、前記被覆部分が1mmを超える非被覆部を含みにくく、かつ高度な難燃性を付与できる点でより好ましい。さらには合成樹脂として均一なコーティング加工が可能な軟質塩化ビニル樹脂を好適に用い、かつ、軟質塩化ビニル樹脂と混合する防炎剤として、りん成分を5.0重量%以下の含有量にして軟質塩化ビニル樹脂に添加することで、当該樹脂と防炎剤とのよりいっそう均一な混合を可能とし、これにより非被覆部の発生をさらに抑制できるので、好ましい。
本発明の樹脂複合体は、コンクリート剥落防止用に好適に用いることができる。特に鉄道や高速道路等の高架下、橋梁等、コンクリートを打設した壁およびまたは天井が設置された場所であることが好ましい。
なぜなら本発明の樹脂複合体は、コンクリート表面の疲労を目視で確認可能な目合い(目開き)があり、かつ、剥がれ落ちるコンクリートを保持するのに必要な強力と耐候性も有しており、それに加えて、橋梁等で必要とされる難燃性や、橋梁の形状に追随する柔軟性も兼備することから、コンクリート剥落防止用に好適に用いることができる。
本発明の樹脂複合体をコンクリート剥落防止用に用いる際、目開きを利用して樹脂複合体をアンカー固定する方法が好適に用いられるが、その他の施工方法についても、適切に固定可能な限りにおいて、特別な制限があるものではない。
かかる樹脂複合体の製造方法は、ポリエステル繊維として乾熱収縮率が比較的低いもの、好ましくは9%以下、より好ましくは5.0%以下のものを用いて織物に製織し、好ましくは少なくとも緯糸に用いて織物に製織し、しかる後に合成樹脂で被覆し、加熱・乾燥させるものである。
本発明の樹脂複合体に用いるポリエステル繊維として、原糸の乾熱収縮率が比較的低いもの、好ましくは9%以下、より好ましくは5.0%以下のものを用いると、ポリエステル繊維からなる織物に合成樹脂を含浸加工やコーティング加工等で被覆した後の合成樹脂の乾燥工程において、織物の寸法変化が大きくないので、被覆した樹脂の付着ムラや気泡発生が抑制できる。なお合成樹脂の乾燥工程の温度は、用いる合成樹脂が十分に乾燥する温度以上を選定する必要がある。なお用いるポリエステル繊維の収縮特性に照らし、収縮が大きいようであれば、乾燥温度を低めかつ乾燥時間を長めに設定して収縮を抑制する方法も採用し得る。
本発明の樹脂複合体を製造するに際し、加熱・乾燥を180℃以上で行うことが好ましい。合成樹脂としてポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、軟質塩化ビニル樹脂等を用いる場合、180℃以上で加熱・乾燥・硬化させることは軟質塩化ビニル樹脂の硬化が十分進み、耐候性や耐腐食性に優れた被覆が得られるので特に有効である。
本発明の樹脂複合体に用いるポリエステル繊維として、乾熱収縮率が比較的低いもの、好ましくは9%以下、より好ましくは5.0%以下のものを用いること、好ましくは少なくとも緯糸に用いることで、ロールを巻き出しつつ180℃以上で加熱・乾燥する際に織物の寸法変化、好ましい態様では緯方向の寸法変化が大きくなく、従って被覆した合成樹脂の付着ムラや気泡発生のない、表面品位に優れた樹脂複合体が得られるので好ましい。中でも特に、ポリエステル繊維の乾熱収縮率が4.5%以下のものを用いると、織物の経糸と緯糸の交差部分において1mmを超える非被覆部の発生が極めて高レベルに抑制でき、優れた表面品位の樹脂複合体となり更に好ましい。下限としては小さいほどよいが、工業的には通常1.5%以上が好ましい。
前記のポリエステル繊維を用いて目開きが特定の範囲内に製織した織物を用い、該織物に合成樹脂を加工する方法としては、例えば、有機溶剤に溶解した軟質塩化ビニル樹脂や、軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル、などを用いるディッピング加工(織物への両面加工)、及びコーティング加工(織物への片面加工、または両面加工)等が例示され、このうちコーティング加工としては、例えばロールコート法、ナイフコート法など、所望の塗布量を付着できればいずれでも構わない。上記において、有機溶剤の使用量は、気泡の生成を十分に押さえつつ、均質な塗膜が形成できる粘度とし得る量であればよい。
織物に合成樹脂を加工した後、加熱・乾燥させるに際しては、あらかじめ乾燥工程を行ってもよい。方法としては、織物を合成樹脂で被覆した後、通常のピンテンター乾燥機やシリンダー乾燥機などの乾燥機を用いて合成樹脂を乾燥することができる。しかる後に加熱して乾燥させる。その乾燥条件については本発明の繊維構造物が得られる限り特に制約は無いが、幅設定の容易なピンテンター乾燥機が好適に用いられる。その際の温度条件は前記加熱・乾燥よりも低めの温度、すなわち180℃未満の温度、好ましくは150~170℃の範囲で行う。
本発明の合成樹脂として有機溶剤に溶解した軟質塩化ビニル樹脂を用いる場合、上記の加熱・乾燥において、180℃未満の温度に設定したピンテンター乾燥機などの乾燥機で、軟質塩化ビニル樹脂の有機溶剤溶液中の有機溶剤を揮発させ、しかる後に180℃以上の温度で軟質塩化ビニル樹脂を加熱するとともに乾燥・硬化を進めることで、1mmを超える非被覆部の発生が十分に抑制でき、優れた表面品位を達成することができるので好ましい。加熱・乾燥工程で180℃未満の処理を行うことで、有機溶剤の揮発が進み、軟質塩化ビニル樹脂のマイグレーションが均一に達成でき、従って織物への軟質塩化ビニル樹脂の付着が均一で、優れた表面品位を達成することが可能となり好ましい。より好ましくは120~170℃である。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本実施例で用いる各種特性の測定方法および総合評価の判断基準は、以下のとおりとした。
[特性の測定方法]
以下の測定方法の内、特に断りのないものは、試料の調整、及び測定は、JIS-L-0105(2006)の標準状態(20±2℃、相対湿度65±4%)で行った。
(1)目開き
JIS-B-7516で規定される金属製直尺を用い、経方向と緯方向それぞれに無作為で5ヶ所の目開きを読みとり、それぞれの平均値を求め、目開きとした。
(2)強力
JIS-L-1096のA法(ストリップ法)に準拠して、ラベルドストリップ法で試料を作成し試験を実施する。試料は幅30mm、長さ約300mm、つかみ間隔200mm、引張速度200mm/分で試料の経糸方向及び緯糸方向について強力を測定した。
なお、経と緯それぞれ無作為に採取した5つのサンプルで計測し、それぞれ平均値を求めた。
ストランド1本当たりの強力は、上記で得られた経糸方向及び緯糸方向の強力をそれぞれ経糸及び緯糸のストランド本数で割り、ストランド1本あたりの強力を求めた。
(3)品位確認
デジタルカメラを用いて写真撮影し、経糸と緯糸の交差部分について1mmを超える非被覆部のある部分(A)と、1mm以下の非被覆部が存在する(もしくは非被覆部が存在しない)部分(B)を数える。画面内の全ての交差部分において、以下の式によって1mmを超える非被覆部のある交差部分の割合を計算した。以下の式で算出される割合が少ないほど優れるが、ここでは20%より多くなければ、本発明で規定する「表面品位に優れる」判定とした。
なおデジタルカメラの写真撮影では、試験サンプルである樹脂複合体を撮影台に載置し、経糸方向または緯糸方向を軸とした平面内で、軸から斜め45度の方向から、レンズの位置を樹脂複合体から6~8cmの高さに構えて撮影する。倍率は1mmの非被覆部が判別できる程度とし、画面内に50±15個程度の交点を観察できるようにするが、一画面に収まらない場合は、複数の画面で観察するものとする。
撮影に際しては、交点を含む樹脂複合体の経糸方向または緯糸方向を軸とした平面内であるが、交点を挟んで経糸の一方の方向から観察した場合と、反対方向から観察した場合、あるいは緯糸の一方の方向から観察した場合とその反対方向から観察した場合、さらにはこれらについて一面上およびその反対面上で非被腹部分に差がある場合には、経糸と緯糸の交差部分において最も非被覆部が多数存在する方向を選定して撮影するものとする。これは、合成樹脂による被覆工程において、塗工装置上の理由等により、被覆状態に方向性がある場合があるためである。なお、非被覆部分が同等に存在する場合、いずれの交点を選定して撮影しても良い(同等の結果が得られるためである)。図2は、実施例3の樹脂複合体を撮影した写真であり、図3は、図2と同じ写真であり、1mmを超える非被覆部のある交差点と、1mm未満の非被覆部のある(もしくは非被覆部の存在しない)交差点を示した写真である。図3中○印は1mmを超える気泡のある交差点(35点)、◇印は1mm未満の気泡のある交差点(7点)である。
A/(A+B)×100
(4)耐候性
スガ試験機社製キセノンウェザーメーターを使用し、ブラックパネル温度63℃設定で500時間照射を行ない、照射前・後の樹脂複合体の経方向の引張強力を上記(2)強力の測定方法に従って測定し強力保持率を求めた。
(5)難燃性
JIS-L-1091(1999)繊維製品の燃焼製試験方法(A-1法(45°ミクロバーナ法))によって樹脂複合体の難燃性を測定した。測定した結果が、同じくJIS-L-1091(1999)に記載の6.燃焼性の区分方法で評価した。「区分3」であれば必要な難燃性を有すると判断した。
(6)乾熱収縮率
JIS-L-1013 8.18.2乾熱収縮率 a)かせ寸法変化率(A法)に従って、試料採取時の所定荷重としては5mN/tex×表示テックス数、処理温度としては150℃、また、かせ長測定時の所定荷重としては200mN/tex×表示テックス数として測定する。
(7)ポリエステル繊維中のリン成分含有量
試料としてポリエステル繊維7gを加熱してペレット状に成形し、蛍光X線元素分析装置(Rigaku社製、ZSX100E型)を用いて、含有量既知のサンプルで予め作成した検量線から、リン原子含有量を金属含有量に換算して求めた。
(8)織物の目付
JIS-L-1096(2010)8.3.2標準状態における単位面積当たりの質量のA法(JIS法)に準じて試料を作成し試験を実施した。200mm×200mmの試験片5枚を採取し、平均値を求めた。
(9)合成樹脂の付着量
JIS-L-1096(2010)8.3.2標準状態における単位面積当たりの質量のA法(JIS法)に準じて、樹脂複合体の目付を算出した。試験は200mm×200mmの試験片5枚を採取して平均値を求めた。しかる後に、織物の目付を引いて、合成樹脂の付着量を求めた。
(10)コンクリート剥落防止用としての総合判定
樹脂複合体の物性(目開きが一片5mm~20mmの範囲内、キセノンウェザーメーターで500時間照射した後の強力保持率が75%以上、JIS L 1091の燃焼試験で区分3)を満足し、更に、「表面品位に優れる」ものであれば、総合判定は「良」とした。樹脂複合体の物性を満足するが、「表面品位に優れる」ものでなければ、総合判定は「可」とした。樹脂複合体の物性を満足しない場合、表面品位によらず総合判定は「不可」とした。
[実施例1]
難燃性ポリエステル繊維糸は、テレフタル酸とエチレングリコール、ならびに3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸を共重合して得られる2官能性リン化合物共重合ポリエチレンテレフタレート繊維を用いた。さらに詳細には顔料としてカーボンブラックを混合して溶融紡糸して得られるものであり、3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸の残基をリン元素換算して0.8重量%含む、1840dtex-192FYの難燃性黒原着糸1を用いた。なお、溶融紡糸した後に熱延伸を行うことで、難燃性黒原着糸1の乾熱収縮率は3.5%に制御した。難燃性黒原着糸1を経糸と緯糸に用い、織組織は紗織で製織した。図5は、実施例1の組織を示した概略図である。図5中、6本の経糸31、32、33、34,35、36を用い、経糸31と2本一組である経糸32、33とを左右交差させる(あるいは、経糸34と2本一組である経糸35、36とを左右交差させる)。左右で交差させる間に、緯糸4を3本、挿入して再び経糸同士を左右に交差させた組織となっている。
しかる後に、以下の通りに調合した軟質塩化ビニル樹脂をナイフ式コーティング装置でコーティング加工し、ピンテンター乾燥機を用いて160℃で2分間の予備乾燥、そして同じくピンテンター乾燥機を用いて190℃で2分間の乾燥を行い、樹脂複合体1を得た。
得られた樹脂複合体1は強力と耐候性、難燃性に優れ、品位も良好で、コンクリート剥落防止用として好適に使用できるものである。
<軟質塩化ビニル樹脂>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100重量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(可塑剤) 30重量部
Ba-Zn系複合安定剤 5重量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 1重量部
含ハロゲンリン酸エステル(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート)(難燃剤) 10重量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5重量部
顔料(カーボンブラック) 0.1重量部
顔料(酸化チタン) 0.5重量部
[実施例2]
難燃性ポリエステル繊維糸は、防炎剤を用いない以外は、実施例1と同様の方法で得られた原着糸2を用いた。原着糸2を経糸と緯糸に用い、織組織は紗織で製織した。しかる後に、実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂を用い、コーティング条件を変更して付着量を150g/mとした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂複合体2を得た。
得られた樹脂複合体2は強力と耐候性、難燃性に優れ、品位も良好で、コンクリート剥落防止用として好適に使用できるものである。
以下の実施例3は表中も含め、参考例1と読み替えるものとする。
[実施例3]
難燃性ポリエステル繊維糸は、実施例1と同じ原料を溶融紡糸して得られる1840dtex-144FYの難燃性黒原着糸3であり、溶融紡糸した後の熱延伸条件を変更して、難燃性黒原着糸3の乾熱収縮率は8.0%のものを用いた。難燃性黒原着糸3を経糸と緯糸に用い、織組織は紗織で製織した。しかる後に、実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂を用い、コーティング条件を変更して付着量を130g/mとした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂複合体3を得た。
得られた樹脂複合体3は強力と難燃性に優れる一方で、品位が若干劣るため、長期間使用した場合の耐候性が若干低いものの、コンクリート剥落防止用として使用可能なものであった。
[比較例1]
難燃性ポリエステル繊維糸は、実施例3で用いた難燃性黒原着糸3を用いた。難燃性黒原着糸3を経糸と緯糸に用い、織組織は3本平絽で製織した。図4は、比較例1の組織を示した概略図である。隣合う一組の経糸3を左右交差させた後、緯糸1本、2本、1本を挿入する毎に経糸と緯糸の組織を構成した後、隣合う一組の経糸3が左右に交差させる組織となっている。
しかる後に精練・熱セットして余分な原糸油剤を洗浄して、樹脂複合体4を得た。
得られた樹脂複合体4は経方向の強力が240N/本と低く、耐候性も低いことから、樹脂複合体単独ではコンクリート剥落防止用に必要な特性を有さないものであった。
[比較例2]
難燃性ポリエステル繊維糸は、実施例1と同様に、テレフタル酸とエチレングリコール、ならびに3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸を共重合して得られる2官能性リン化合物共重合ポリエチレンテレフタレート繊維であり、顔料としてカーボンブラックを混合して溶融紡糸して得られるものであり、3-[ヒドロキシ(フェニル)ホスホリル]プロパン酸をリン元素換算して0.3重量%含む、1840dtex-144FYの難燃性黒原着糸4を用いた。なお、溶融紡糸した後に熱延伸を行うことで、難燃性黒原着糸4の乾熱収縮率は8.0%のものを用いた。
難燃性黒原着糸4を経糸と緯糸に用い、織組織は製織した。しかる後に精練・熱セットして余分な原糸油剤を洗浄して、樹脂複合体5を得た。
得られた樹脂複合体5は難燃性が区分2で劣り、耐候性も低いことから、コンクリート剥落防止用に必要な特性を有さないものであった。
[比較例3]
難燃性ポリエステル繊維糸は、実施例1で用いた難燃性黒原着糸1を用いた。難燃性黒原着糸1を経糸と緯糸に用い、実施例1と同じ紗織で製織し、しかる後に、実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂をコーティング加工し、160℃の予備乾燥、そして190℃での乾燥を行い、樹脂複合体6を得た。ここで軟質塩化ビニル樹脂のコーティング条件を変更し、樹脂複合体6の合成樹脂付着量は200g/mであった。
得られた樹脂複合体6は強力と耐候性こそ良いが、難燃性が区分2で劣り、コンクリート剥落防止用に必要な特性を有さないものであった。
[比較例4]
繊維糸として2100dtex-306FYのナイロン6を用い、実施例1と同じ紗織を製織した。用いたナイロン6繊維糸の乾熱収縮率は6.0%である。しかる後に実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂をコーティング加工し、160℃の予備乾燥、そして190℃での乾燥を行い、樹脂複合体7を得た。得られた樹脂複合体7は樹脂の被覆部分で多数の気泡が見られ、品位不良であった。
Figure 0007005941000001
表1によれば、本発明の樹脂複合体は、コンクリート表面の疲労を目視で確認可能な目合いがあり、必要とされる耐候性と難燃性、そして十分な強力を有するので、高架下や橋梁のコンクリート剥落防止材として単独で使用可能なことが分かる。
1:緯方向の目開き
2:経方向の目開き
矢印A:経糸方向
3:経糸
4:緯糸
31,32,33、34、35,36:経糸

Claims (6)

  1. ポリエステル繊維からなる織物を合成樹脂で被覆した樹脂複合体であって、目開きが一片5mm~20mmの範囲内であり、
    前記合成樹脂がポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、軟質塩化ビニル樹脂の中から選ばれるいずれか1つ以上で構成され、
    前記合成樹脂の付着量が40~180g/m の範囲内であり、
    前記織物の経糸と緯糸の交差部分における、1mmを超える非被覆部の存在する交差部分の割合が、0~20%の範囲内である、
    キセノンウェザーメーターで500時間照射した後の強力保持率が75%以上の耐候性を有し、かつ、JIS L 1091の燃焼試験で区分3に合格する難燃性を有する樹脂複合体。
  2. 前記ポリエステル繊維が防炎剤としてリン成分を0.5~0.9重量%含有する請求項1に記載の樹脂複合体。
  3. 前記ポリエステル繊維が顔料を含む原着糸である請求項1または2に記載の樹脂複合体。
  4. コンクリート剥落防止用である、請求項1~のいずれかに記載の樹脂複合体。
  5. ポリエステル繊維として、原糸の乾熱収縮率が%以下のものを、少なくとも緯糸に用いて織物に製織し、しかる後に合成樹脂で被覆し、加熱・乾燥させる請求項1~3のいずれかに記載の樹脂複合体の製造方法。
  6. 前記の加熱・乾燥を180℃以上の温度で行う請求項記載の樹脂複合体の製造方法。
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